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官と民を震撼させた“転向劇”の内幕 NTTと手を組むソフトバンクの狙い(COLUMN)
 事実は小説よりも奇なり、である。ソフトバンクといえば、既存の通信業界のあり方を“正論”で痛烈に批判し、孫正義社長による“義憤”を交えたパフォーマンスで、世間を味方につけてきた。そのたびに、NTTとKDDIは狼狽させられたわけだが、今になってNTTと協働する奇策に出たソフトバンクの狙いは何か。
 すべての始まりは、2008年の夏前だった。
 ソフトバンクグループで、ブロードバンドサービスを担当するソフトバンクBBの佐々木一浩・コンシューマ事業推進本部副本部長は、付き合いのあるNTT東日本の相互接続推進部の担当者に、意を決してある構想を打ち明けた。
 その内容は、「NTTさんの『フレッツ光』(光ファイバーを使った高速大容量ブロードバンドサービス)と、ソフトバンクBBがコラボレートして、なにかできないでしょうか?」という提案だった。
 NTT東日本の担当者は、半信半疑の表情を浮かべて、「まさか本気じゃないですよね? ソフトバンクさん、なにかよからぬことでも考えているんじゃないでしょうね?」と切り返した。佐々木副本部長はすぐさま、「ぼくの目を見てください。本気です」と畳みかける。担当者は、「うーむ。にわかには信じがたい」と再び返した。
 無理もない話である。これまでソフトバンクは、NTTグループとことごとく反目し続けてきた経緯がある。加えて、ソフトバンクは自ら波風を起こしてはNTTを攻撃する作戦が、自陣に有利な展開を持ち込むことにつながり、それが会社の成長を支えてきた。
 その象徴的な出来事が、世間にソフトバンクの存在を知らしめるきっかけとなったADSL(非対称デジタル加入者線)だ。これは、NTTが所有する電話回線(銅線)の音声サービスには使われていない高周波数の帯域を活用することで、高速のデータ通信を実現する地味な技術だった。
  01年、ADSLに着目したソフトバンクは、国内最大のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフーと協働して固定ブロードバンドサービス「Yahoo! BB」を立ち上げる。当時の相場の半額以下という料金設定と、赤いパラソル部隊が街頭で無料のモデムを配る前代未聞の電撃作戦で、NTTの顔色をなからしめた。
 その結果、NTTは、当時考えていたISDN(総合デジタル通信網サービス)から、最先端のFTTH(アクセス系光通信)への移行を中断せざるをえなくなり、ソフトバンクに追随する格好で自らもADSLに注力する羽目に陥った。
さらに続けて、04年には直収電話(NTT以外の事業者が提供する固定電話)の「おとくライン」で、ソフトバンクは旧電信電話公社時代から“聖域”と考えられてきたNTTの「基本料金」をも下げさせたのである。
断りたくても断れないNTTが抱える苦悩
 そんなソフトバンクは、昨年の12月16日より、栃木県と群馬県、長野県で、NTT東日本の「フレッツ光」回線向けのISP(インターネット・サービス・プロバイダ)サービスの提供を開始した。ヤマダ電機やケーズデンキなど、9社55店舗の店頭で「Yahoo! BB with フレッツ」の申し込み受付を始めたのだ。
 今回の取り組みは、NTT東日本と西日本が提供する「フレッツ光」を、将来的にソフトバンクBBが販売できるかどうか判断するためのテストマーケティングと位置づけている。
 その結果によっては、ソフトバンクBBがNTT東と西の代理店となる。すでに、業界の常識では考えられない“一物二価”のパンフレットも作成し、「さまざまなパターンで実験している」(宮内謙・ソフトバンクBB代表取締役副社長兼COO)。
 過去の経緯を考えれば、犬猿の仲であったはずのNTTとソフトバンクが協力したり、看板商品の名称を使わせたりすることは理解に苦しむ。実際、NTTグループの司令塔である、誇り高きNTT(持ち株会社)の社内からは「ウチがどうして競合他社、しかもソフトバンクのようなところと組むのか?」という怒りの声が聞こえてくる。
 それもそのはず、NTTグループには、すでに「フレッツ光」で高速大容量ブロードバンドを楽しむためのISPサービス「OCN」や「ぷらら」がある。
 しかも、ソフトバンクは、NTTが法律で協働を禁じられている、固定ブロードバンドの「Yahoo! BB」と携帯電話のセット販売ができるし、NTTにはできないIP電話と携帯電話の通話が24時間無料になるサービスも始めた。
 それでも、NTTがソフトバンクから持ち込まれた提携の話を受け入れざるをえなかったのは、断る理由が見つからなかったからである。NTTは、過去には通信インフラを独占する国営企業体だったので、今でも他の事業者と比べれば圧倒的に強い。
 それゆえに、独占禁止法の「差別的取り扱いの禁止」や電気通信事業法の「禁止行為」などを考慮せざるをえない。だから、「KDDIなら許せるけど、ソフトバンクだけはダメだ」と言いたくても言えないのだ。
ソフトバンクが描く驚天動地のシナリオ
 現時点で、ソフトバンクは明言を避けているが、将来的には必ずADSL事業を切り離さざるをえなくなる時期がやって来る。
 それは、ADSLの貸し手であるNTTが、2010年度中に電話回線をどうするのか基本的な方針を表明しなければならないことになっているからだ。すでに、時代の趨勢はFTTHだが、「事業者との契約の関係で、NTTが電話回線を止めると決めた時点から4年後でないと、実際にはFTTHに置き換えることができない」(持ち株会社の幹部)。
 ソフトバンクの目のつけどころは、ここにある。つまり、いくらFTTHが主流でも、ユニバーサルサービスがDNAに染み付いているNTTにとって、地方に住む電話だけで十分な高齢者などを切り捨てることはできない。ユーザーがいるうちは電話回線の完全撤廃に踏み切れず、2010年以降もADSLは続く。
 その間、ソフトバンクは、各種の新サービスを繰り出しつつ、日本のブロードバンド人口の約10%に当たる400万~500万人のADSLユーザーの離脱を防ぎながら、ISPサービスと同時にNTTの「フレッツ光」を売りまくって手数料を稼ぐ。
 そうすれば、06年に孫社長がブチ上げたものの、実際には進展していない自前のアクセス系光通信計画への株主からの批判をかわすことができるし、多額の設備投資もしないですむ。
 ソフトバンクが本気でFTTHを売りまくれば、08年9月時点で約73%のNTTのシェアは90%を超えてしまうはず。となると、NTTは、電話局から家庭までをつなぐアクセス系光通信で、意図せずして、再び独占に向かう。
 そうなれば、ソフトバンクが事を荒立てなくても、世間の批判はNTTに集中する。そして、技術の世代交代を見計らって、自社のユーザーを失わずに、ADSLからFTTHに乗り換える――。
 なるほど。これでは、総務省としても、頭を抱えるはずである。



ソニー、今期営業赤字 14年ぶり、1000億円規模
 世界的な消費低迷でソニーの業績が急速に悪化している。2009年3月期の連結営業損益(米国会計基準)は昨年10月に予想した2000億円の黒字から一転、1000億円規模の赤字(前期は4752億円の黒字)になる見通しだ。営業赤字は1995年3月期以来14年ぶり。金融危機が深刻化した昨秋以降、欧米中心に液晶テレビなどの販売が落ち込んでいるうえ、円高で採算が悪化している。輸出企業の業績低迷は自動車から電機に広がってきた。
 本業のもうけを示す営業損益の赤字は58年の上場以来2度目。エレクトロニクス(電機)部門の不振が主因の赤字は上場来初めてとなる。95年3月期の赤字は米映画事業の不振で発生した一時的な損失が主因だった。今期の下方修正は3度目。テレビなどの在庫が積み上がっており、1―3月の在庫処理次第では赤字幅が2000億円規模に拡大する可能性もある。



富士通、アジアで携帯販売 ドコモとソフト開発
 富士通は携帯電話機でアジア市場の開拓に乗り出す。NTTドコモと海外向け機種用のソフトを共同で開発。台湾を皮切りにドコモが提携する携帯電話会社に製品を供給する。富士通が海外で携帯を販売するのは初めて。日本の携帯市場は2008年10月の出荷台数(PHSを含む)が前年同月比57.8%減となるなど急速に縮小しており、国内に依存していた日本のメーカーは事業モデルの転換を迫られている。
 日本で販売している機種を、ハングル文字や中国で使われている漢字などの表示ができるようにするソフトをドコモと共同で開発した。メールや携帯用ネットサイトが現地の言語で使用できる。従来機種を簡単に海外仕様に切り替えられ、開発コストの抑制につながる。



米、アルバム離れ進む 08年の音楽販売14%減
 米調査会社ニールセンによると、2008年の米音楽アルバム販売は前年比14%減の4億2840万枚だった。ネット配信は3割増と好調だったが、CDの不振を補えなかった。好みの楽曲だけを1曲ごとにネットで買う消費パターンの定着が、アルバム離れに拍車をかけているとみられる。
 アルバム販売全体の85%を占めるCDは2割減の約3億6000万枚。ネット配信によるアルバム販売は32%増の6580万枚と過去最高だったが、市場全体の縮小に歯止めをかけられなかった。08年のアルバム販売はピークだった00年を45%下回る水準まで落ち込んだ。
 シングル曲を含むネット配信数は27%増の10億7000万曲と初めて10億曲の大台に乗った。アルバム収録曲でも1曲99セントで「ばら売り」するアップルの配信サービス普及が背景。CD販売を収益源とする音楽ソフト会社の経営は一段と苦しくなりそうだ。



水資源ビジネス、官民で本格参入 政府は融資で支援
 政府と民間企業は協力して、世界の水資源ビジネスに本格参入する。民間企業を中心に近く協議会を設置、水需要が高まるアジアや中近東を念頭に官民連携で市場開拓を目指す。日本企業が強みを持つ水処理膜や排水処理技術での進出を足がかりに、長期的に利益が見込める上下水道の運営に進出する計画だ。政府は政府系金融機関の融資や貿易保険を通じて支援。年内にもアジアで試験事業を始め、他地域に広げていく方針だ。
 世界の水資源ビジネスを巡っては「水メジャー」と呼ばれる欧州の大企業が大きなシェアを占め、日本企業の進出は遅れているのが実情。今後、水ビジネスの市場拡大が見込まれ、国際貢献にもつながることから、官民一体で取り組む必要があると判断した。



個人マネーも銀行シフト 定期預金5.6%増、08年11月末
 個人マネーが株式や投資信託から、預金など安全資産へのシフトを加速している。定期預金の残高が昨年11月末時点で前年より6%近く伸びる一方、投信は4割ほど減った。金融混乱で家計が保有する株や投信で100兆円を超える評価損が発生。相場の変動で元本が目減りするリスクを再認識した個人は安全志向を強めている。資金調達では大企業も社債などから借り入れにシフトしており、マネーの銀行依存が一段と鮮明になってきた。
 日銀によると、個人の定期預金残高(国内銀行)は08年11月末に約190兆7000億円と前年同月に比べ5.6%増えた。外国銀行と信用金庫を加えても同5.1%の伸び(残高は約256兆9000億円)となった。定期預金は日銀が量的緩和政策を解除した06年春に底を打ち、07年後半から伸び率を高めた。
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