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少子化は危機か好機か・日本のゲーム産業の課題(COLUMN)
日本のゲーム産業は果たして生き残っていけるのだろうか――。少子化や日本独自の商慣習など、日本のゲーム産業が抱えている課題を今回から3回に渡って考えていく。1回目はゲーム産業に大きな影響を与える要因「人口」について考える。
■団塊ジュニアが育てた日本のゲーム産業
昨年は、未曾有の金融危機が世界経済を揺るがした。しかし、金融危機が引き起こした不況による短期的な景気変動と、長期的に起きている変化は切り離して考えなくてはならない。
経済に最も影響を与える要因は人口だ。人口のトレンドは経済・社会・政治など複雑な要因によって決まり、あらゆる将来予測にかかわる基礎的な指標となる。世界のゲーム産業も、この人口構成の変化により大きく影響を受けている。
そもそも、世界屈指のゲーム産業が日本で成立した背景には、この人口のボリュームと経済成長の要素が重なり合ったことが大きな要因として存在している。
1983年に任天堂が「ファミリーコンピュータ」を発売したころは、現在60歳前後の「団塊世代」が人口のボリュームゾーンとして経済成長を支えていた。そして、その子供で、現在の30歳代にあたる「団塊ジュニア世代」が、小学校高学年を迎える時期にあたっている。
家庭で自由に使うことができる可処分所得は上昇を続け、70年から80年では実に3倍に増えている。普通に働けば可処分所得が増えていくという幸福な時代だ。
経済成長のなか、がむしゃらに働くだけでなく、レジャーにもっとお金を使うべきという主張が登場してきた時期であり、同じ83年には「東京ディズニーランド」もオープンしている。
ファミコンはハード単体で1万4800円という、とんでもなく高額なオモチャだったが、各家庭にはそれを子供に買い与える余裕が生まれていた。
この団塊世代と団塊ジュニア世代の親子セットは、その後の日本のゲーム産業の成長に貢献し続ける。ゲームセンターでの「バーチャファイター」(セガ)を中心とした格闘ゲームの大ヒットや、94年に発売されたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション」の成功は、団塊ジュニアが青年世代となり、より複雑で高度なゲームを求めるようになったタイミングと合致したのが理由だ。
家庭の可処分所得はバブル崩壊後の90年代に入ると頭打ちになるが、98年にピークを迎えるまでは、ゆるやかに上昇を続けている。日本の家庭用ゲーム機向けソフトウエア販売金額のピークは97年であり、ほぼ時期が重なる。団塊ジュニアがゲームにお金を払い続けるだけの資金余力をまだ十分持っていたことが要因として考えられる。
■PS3はなぜ苦戦したか
しかし、2000年代に入って状況は変わる。可処分所得は減少に転じ、07年の水準は90年と同等にまで低下している。また、団塊ジュニア世代は30歳代に入り、ゲームを遊ぶ時間を十分に持てなくなった。
日本での「プレイステーション3(PS3)」の苦戦は、この人口動態が大きく関わっていると考えられる。現在、プレステの成功を支えてきた団塊ジュニア世代は仕事を持ち、家庭を持ち、子供を持つという状況で、自由にゲームを遊べる所得と時間的余裕を持ちにくくなっている。そして、現在の日本の人口動態からは、日本市場の今後も確実に予測できる。
日本では少子化が急激に進行しており、団塊ジュニア世代に続くボリュームゾーンは生まれていない。現在も18歳以下人口は減少し、ピーク時の3分の2近くになっている。今後も、数の少ない今の0-4歳人口が歳を重ねて若年層に育っていくだけであり、今のままで考えれば、日本市場の潜在成長性はないと言い切ることができる。
しかし、これは失望すべきことではない。人口の減少は産業構造の変換の契機にすぎない。そうした変化が起きない産業などないからだ。逆に、そこに着目して企業戦略を組み替えることで、チャンスを作らなければならないタイミングにいる。
■2050年まで人口増が確実なアメリカ
一方で、北米と欧州の市場についても、日本市場と対比する形で考えておきたい。
北米では、映画やテレビアニメとタイアップした、必ずしも出来がよいとはいえないゲームのなかからでも100万本以上のヒット作が毎年登場する。
例えば、昨年発売の映画とタイアップした「カンフーパンダ」(アクティビジョン)は、「Xbox360」「PS3」「Wii」「ニンテンドーDS」「プレイステーション・ポータブル(PSP)」「プレイステーション2(PS2)」とすべてのプラットホームでリリースされ、完成度は高くないにもかかわらず、北米だけで300万本以上販売した。いわば「ドラえもん」のゲームが毎年200万本売れるようなもので、日本では起こりえない状況が現在も続いている。
その理由はやはり人口にある。アメリカは多くの先進国と違い、若年層人口の減少が起きていない。現在の人口予測では、ヒスパニック系や中国系などマイノリティー層の人口増加が主因となって、2050年まで人口は増加すると予測されている。顧客層や所得層の変化は当然起こりうるだろうが、今後ともゲームを遊んでくれるユーザー基盤の減少は起きない。
ある北米企業と取引のある業界関係者の話では、北米のゲーム販売会社に企画提案すると、必ず全機種へのマルチプラットホーム展開を求められるという。必ずしも完成度が高くなくとも売れるので、機種展開は多ければ多いほどいいということのようだ。
日本企業は、大型タイトルでも同じ内容のものをDSやPSPに迅速にマルチ展開するという販売方法をあまり採らないが、そこにはベースとなる市場の違いがある。
欧州は、EU圏全体をまとめた使いやすいデータがないが、まもなく近年の急成長は止まると予測される。今までは、市場になりにくかったスペインなどを取り込むことで大きく成長した面があるが、フランスを除けば少子化が進行しており、特にドイツが激しい。その層が若年層の中心となる時期に入りつつあるからだ。
■人口問題にいち早く取り組んだ任天堂
先に述べたように、人口がゲーム産業に与える影響は大きいが、それにいち早く着目して戦略を転換すれば、成功のチャンスはある。それを実現した日本企業は言うまでもなく、任天堂である。任天堂はDSやWiiを展開するうえで、「ゲーム人口の拡大」という主張を何度も繰り返している。
同社が強い子供市場以外に、幅広い年齢層に売れるゲームを作るという取り組みは、考えてみればコロンブスの卵的な「市場を別の視点から見直す」考え方だった。
岩田聡社長がカンファレンスなどで講演する時に必ずといっていいほど示すのが、DSとWii所有者の年齢層別のデータだ。幅広い年齢層に受け入れられている証明として見せるが、同時にいかに企業として人口の変化に注意を払って戦略を組み立てているのかをよく示している。
■ゲーム産業のマーケティングはまだ稚拙
このところ、さまざまなゲーム会社の経営幹部や開発責任者に会うたびに、「開発するゲームの顧客を定義することができていますか」という質問を投げかけてきた。業界内では、ゲームを多く遊んでくれる「コアゲーマー」という言い方や「ライトユーザー」という区分がよく使われる。
ヒットを狙うために、「できるだけライトユーザー層を取り込みたい」といったような主張を各社がするわけだが、「ライトユーザーとは誰なのか」と突っ込んで聞くと、漠然とした答えしか返ってこないことも多い。これは、何も言っていないのと等しい。
日本のゲーム産業は、まだマーケティング手法という面では、稚拙な段階にある。マーケティングの本質は、開発と営業とがしっかりと連動するような形で商品企画から開発、販売までのプロセスを行うことであり、商品を単にプロモーションするだけがマーケティングなのではない。国内企業のマーケティングは一般的にこのレベルにとどまっている。
任天堂は「クラブニンテンドー」というマイレージサービスを通じて、ユーザー調査を行っている。ゲームを買ってパッケージに書かれている番号をウェブサイトで入力するとポイントが貯まる仕組みで、貯めたポイントはオリジナルグッズの購入などに使える。
任天堂はこれにより、ユーザーから購買情報を直接収集でき、こうした調査を含めた複数の指標を組み合わせて市場動向を分析していると思われる。これは、SCEやマイクロソフトといった他の競合企業にもできていないことだ。任天堂の現在の優位の礎になっている。
■もっと顧客に近づき声を聞け
人口減少に対してまず行うべきことは、どの規模の企業であれ、自分たちのゲームの顧客が誰であるのかを明確に定義し、それらの情報を複数の指標から確認する手段を構築することだ。そして、それを起点に開発と販売とを深くリンクさせる企業内スキームを確立する必要がある。
実は、人口は本質的な問題なのではなく、今までと同じことを続けて市場の変化に期待するだけでは、生き残れないというだけのことだ。今後数年の大きな変化のなかで生き残れるのは、現代的なマーケティングを軸とした体制への移行に取り組める企業であろうことは、これもまた比較的容易に予測ができる。
もっと顧客に近づき、顧客の声を反映した製品を作らなければならない。当たり前のことだが、それをどう推し進めるかが鍵となる。
【東京新聞社説】
少子化対策 経済危機だからこそ
2009年1月10日
雇用情勢は悪化の一途だ。若者たちの雇用確保など早急な対策が必要だが、将来の日本社会を支える子供たちのことを忘れては困る。少子化も「待ったなし」。政府も企業も対策を進めてほしい。
政府は「仕事と育児」を両立させるための少子化対策として、昨年二月に「新待機児童ゼロ作戦」を策定した。昨年十月に打ち出した新総合経済対策では、保育所整備などに充てるため「安心こども基金」を各都道府県に設置することが盛り込まれた。
保育制度改革も議論が進んでいる。先月に厚生労働省がまとめた制度改革の素案では、保育所を利用できる対象を、専業主婦世帯にも広げる。ニーズに合わせるなど保育所運営により柔軟性を持たせる。これまで開所を認めるかどうかの裁量を都道府県が持っていた認可保育園の仕組みも変え、一定基準を満たしていれば機械的に指定事業者として認めるなど、保育事業への参入をしやすくする。
課題は財源だ。昨年十一月にまとめられた社会保障国民会議の最終報告では、少子化対策に二〇一五年度に最大二・一兆円が必要と試算した。小渕優子少子化担当相は「消費税アップの1%分を少子化対策に」と訴えるが、国民の理解が必要だ。増税へは景気低迷の“逆風”が吹くが、少子化対策が私たち社会全体の問題であることを粘り強く訴える必要がある。
保育サービスの充実とともに対策の「車の両輪」は、「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)」の推進だ。厚労省の審議会では、従業員が育児しながら働き続けられるよう育児・介護休業法改正に向けた案がまとめられた。育児中の従業員に短時間勤務の拡充や残業免除を認める内容だ。ただ、議論の過程で、経営側は「百年に一度の金融危機」を理由に、制度拡充に消極的だった。
だが、経営環境の悪化を口実に、少子化対策を棚上げすべきではない。従業員が育児や介護をしながら働ける労働環境を整えることは、優秀な人材を確保でき、結果的に企業体力を向上させることを理解するべきだ。
長時間労働は依然、改善されていない。長時間労働抑制を狙い労働基準法が改正され、残業代の割増率が引き上げられるが、リストラで職場の人材が減れば、残った従業員の負担は増えかねない。経営側は危機だからこそ、対策に取り組んでほしい。労働組合も雇用問題と同時に、引き続き目配りしてほしい。
日本のゲーム産業は果たして生き残っていけるのだろうか――。少子化や日本独自の商慣習など、日本のゲーム産業が抱えている課題を今回から3回に渡って考えていく。1回目はゲーム産業に大きな影響を与える要因「人口」について考える。
■団塊ジュニアが育てた日本のゲーム産業
昨年は、未曾有の金融危機が世界経済を揺るがした。しかし、金融危機が引き起こした不況による短期的な景気変動と、長期的に起きている変化は切り離して考えなくてはならない。
経済に最も影響を与える要因は人口だ。人口のトレンドは経済・社会・政治など複雑な要因によって決まり、あらゆる将来予測にかかわる基礎的な指標となる。世界のゲーム産業も、この人口構成の変化により大きく影響を受けている。
そもそも、世界屈指のゲーム産業が日本で成立した背景には、この人口のボリュームと経済成長の要素が重なり合ったことが大きな要因として存在している。
1983年に任天堂が「ファミリーコンピュータ」を発売したころは、現在60歳前後の「団塊世代」が人口のボリュームゾーンとして経済成長を支えていた。そして、その子供で、現在の30歳代にあたる「団塊ジュニア世代」が、小学校高学年を迎える時期にあたっている。
家庭で自由に使うことができる可処分所得は上昇を続け、70年から80年では実に3倍に増えている。普通に働けば可処分所得が増えていくという幸福な時代だ。
経済成長のなか、がむしゃらに働くだけでなく、レジャーにもっとお金を使うべきという主張が登場してきた時期であり、同じ83年には「東京ディズニーランド」もオープンしている。
ファミコンはハード単体で1万4800円という、とんでもなく高額なオモチャだったが、各家庭にはそれを子供に買い与える余裕が生まれていた。
この団塊世代と団塊ジュニア世代の親子セットは、その後の日本のゲーム産業の成長に貢献し続ける。ゲームセンターでの「バーチャファイター」(セガ)を中心とした格闘ゲームの大ヒットや、94年に発売されたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション」の成功は、団塊ジュニアが青年世代となり、より複雑で高度なゲームを求めるようになったタイミングと合致したのが理由だ。
家庭の可処分所得はバブル崩壊後の90年代に入ると頭打ちになるが、98年にピークを迎えるまでは、ゆるやかに上昇を続けている。日本の家庭用ゲーム機向けソフトウエア販売金額のピークは97年であり、ほぼ時期が重なる。団塊ジュニアがゲームにお金を払い続けるだけの資金余力をまだ十分持っていたことが要因として考えられる。
■PS3はなぜ苦戦したか
しかし、2000年代に入って状況は変わる。可処分所得は減少に転じ、07年の水準は90年と同等にまで低下している。また、団塊ジュニア世代は30歳代に入り、ゲームを遊ぶ時間を十分に持てなくなった。
日本での「プレイステーション3(PS3)」の苦戦は、この人口動態が大きく関わっていると考えられる。現在、プレステの成功を支えてきた団塊ジュニア世代は仕事を持ち、家庭を持ち、子供を持つという状況で、自由にゲームを遊べる所得と時間的余裕を持ちにくくなっている。そして、現在の日本の人口動態からは、日本市場の今後も確実に予測できる。
日本では少子化が急激に進行しており、団塊ジュニア世代に続くボリュームゾーンは生まれていない。現在も18歳以下人口は減少し、ピーク時の3分の2近くになっている。今後も、数の少ない今の0-4歳人口が歳を重ねて若年層に育っていくだけであり、今のままで考えれば、日本市場の潜在成長性はないと言い切ることができる。
しかし、これは失望すべきことではない。人口の減少は産業構造の変換の契機にすぎない。そうした変化が起きない産業などないからだ。逆に、そこに着目して企業戦略を組み替えることで、チャンスを作らなければならないタイミングにいる。
■2050年まで人口増が確実なアメリカ
一方で、北米と欧州の市場についても、日本市場と対比する形で考えておきたい。
北米では、映画やテレビアニメとタイアップした、必ずしも出来がよいとはいえないゲームのなかからでも100万本以上のヒット作が毎年登場する。
例えば、昨年発売の映画とタイアップした「カンフーパンダ」(アクティビジョン)は、「Xbox360」「PS3」「Wii」「ニンテンドーDS」「プレイステーション・ポータブル(PSP)」「プレイステーション2(PS2)」とすべてのプラットホームでリリースされ、完成度は高くないにもかかわらず、北米だけで300万本以上販売した。いわば「ドラえもん」のゲームが毎年200万本売れるようなもので、日本では起こりえない状況が現在も続いている。
その理由はやはり人口にある。アメリカは多くの先進国と違い、若年層人口の減少が起きていない。現在の人口予測では、ヒスパニック系や中国系などマイノリティー層の人口増加が主因となって、2050年まで人口は増加すると予測されている。顧客層や所得層の変化は当然起こりうるだろうが、今後ともゲームを遊んでくれるユーザー基盤の減少は起きない。
ある北米企業と取引のある業界関係者の話では、北米のゲーム販売会社に企画提案すると、必ず全機種へのマルチプラットホーム展開を求められるという。必ずしも完成度が高くなくとも売れるので、機種展開は多ければ多いほどいいということのようだ。
日本企業は、大型タイトルでも同じ内容のものをDSやPSPに迅速にマルチ展開するという販売方法をあまり採らないが、そこにはベースとなる市場の違いがある。
欧州は、EU圏全体をまとめた使いやすいデータがないが、まもなく近年の急成長は止まると予測される。今までは、市場になりにくかったスペインなどを取り込むことで大きく成長した面があるが、フランスを除けば少子化が進行しており、特にドイツが激しい。その層が若年層の中心となる時期に入りつつあるからだ。
■人口問題にいち早く取り組んだ任天堂
先に述べたように、人口がゲーム産業に与える影響は大きいが、それにいち早く着目して戦略を転換すれば、成功のチャンスはある。それを実現した日本企業は言うまでもなく、任天堂である。任天堂はDSやWiiを展開するうえで、「ゲーム人口の拡大」という主張を何度も繰り返している。
同社が強い子供市場以外に、幅広い年齢層に売れるゲームを作るという取り組みは、考えてみればコロンブスの卵的な「市場を別の視点から見直す」考え方だった。
岩田聡社長がカンファレンスなどで講演する時に必ずといっていいほど示すのが、DSとWii所有者の年齢層別のデータだ。幅広い年齢層に受け入れられている証明として見せるが、同時にいかに企業として人口の変化に注意を払って戦略を組み立てているのかをよく示している。
■ゲーム産業のマーケティングはまだ稚拙
このところ、さまざまなゲーム会社の経営幹部や開発責任者に会うたびに、「開発するゲームの顧客を定義することができていますか」という質問を投げかけてきた。業界内では、ゲームを多く遊んでくれる「コアゲーマー」という言い方や「ライトユーザー」という区分がよく使われる。
ヒットを狙うために、「できるだけライトユーザー層を取り込みたい」といったような主張を各社がするわけだが、「ライトユーザーとは誰なのか」と突っ込んで聞くと、漠然とした答えしか返ってこないことも多い。これは、何も言っていないのと等しい。
日本のゲーム産業は、まだマーケティング手法という面では、稚拙な段階にある。マーケティングの本質は、開発と営業とがしっかりと連動するような形で商品企画から開発、販売までのプロセスを行うことであり、商品を単にプロモーションするだけがマーケティングなのではない。国内企業のマーケティングは一般的にこのレベルにとどまっている。
任天堂は「クラブニンテンドー」というマイレージサービスを通じて、ユーザー調査を行っている。ゲームを買ってパッケージに書かれている番号をウェブサイトで入力するとポイントが貯まる仕組みで、貯めたポイントはオリジナルグッズの購入などに使える。
任天堂はこれにより、ユーザーから購買情報を直接収集でき、こうした調査を含めた複数の指標を組み合わせて市場動向を分析していると思われる。これは、SCEやマイクロソフトといった他の競合企業にもできていないことだ。任天堂の現在の優位の礎になっている。
■もっと顧客に近づき声を聞け
人口減少に対してまず行うべきことは、どの規模の企業であれ、自分たちのゲームの顧客が誰であるのかを明確に定義し、それらの情報を複数の指標から確認する手段を構築することだ。そして、それを起点に開発と販売とを深くリンクさせる企業内スキームを確立する必要がある。
実は、人口は本質的な問題なのではなく、今までと同じことを続けて市場の変化に期待するだけでは、生き残れないというだけのことだ。今後数年の大きな変化のなかで生き残れるのは、現代的なマーケティングを軸とした体制への移行に取り組める企業であろうことは、これもまた比較的容易に予測ができる。
もっと顧客に近づき、顧客の声を反映した製品を作らなければならない。当たり前のことだが、それをどう推し進めるかが鍵となる。
【東京新聞社説】
少子化対策 経済危機だからこそ
2009年1月10日
雇用情勢は悪化の一途だ。若者たちの雇用確保など早急な対策が必要だが、将来の日本社会を支える子供たちのことを忘れては困る。少子化も「待ったなし」。政府も企業も対策を進めてほしい。
政府は「仕事と育児」を両立させるための少子化対策として、昨年二月に「新待機児童ゼロ作戦」を策定した。昨年十月に打ち出した新総合経済対策では、保育所整備などに充てるため「安心こども基金」を各都道府県に設置することが盛り込まれた。
保育制度改革も議論が進んでいる。先月に厚生労働省がまとめた制度改革の素案では、保育所を利用できる対象を、専業主婦世帯にも広げる。ニーズに合わせるなど保育所運営により柔軟性を持たせる。これまで開所を認めるかどうかの裁量を都道府県が持っていた認可保育園の仕組みも変え、一定基準を満たしていれば機械的に指定事業者として認めるなど、保育事業への参入をしやすくする。
課題は財源だ。昨年十一月にまとめられた社会保障国民会議の最終報告では、少子化対策に二〇一五年度に最大二・一兆円が必要と試算した。小渕優子少子化担当相は「消費税アップの1%分を少子化対策に」と訴えるが、国民の理解が必要だ。増税へは景気低迷の“逆風”が吹くが、少子化対策が私たち社会全体の問題であることを粘り強く訴える必要がある。
保育サービスの充実とともに対策の「車の両輪」は、「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)」の推進だ。厚労省の審議会では、従業員が育児しながら働き続けられるよう育児・介護休業法改正に向けた案がまとめられた。育児中の従業員に短時間勤務の拡充や残業免除を認める内容だ。ただ、議論の過程で、経営側は「百年に一度の金融危機」を理由に、制度拡充に消極的だった。
だが、経営環境の悪化を口実に、少子化対策を棚上げすべきではない。従業員が育児や介護をしながら働ける労働環境を整えることは、優秀な人材を確保でき、結果的に企業体力を向上させることを理解するべきだ。
長時間労働は依然、改善されていない。長時間労働抑制を狙い労働基準法が改正され、残業代の割増率が引き上げられるが、リストラで職場の人材が減れば、残った従業員の負担は増えかねない。経営側は危機だからこそ、対策に取り組んでほしい。労働組合も雇用問題と同時に、引き続き目配りしてほしい。
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