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次世代ケータイが遅くて高い?何か変だよ通信事業(COLUMN)
 「他人の畑を借りて収穫を待つまえに、自分がタダでもらった土地を耕すべきだ」。
 3月6日、ソフトバンクモバイルとイーモバイルが華々しく〝協業〟を開始しました。その内容とは、ソフトバンクがイーモバイルから第3世代携帯電話(3G)の電波(正しくは周波数帯域ですが、以下簡易に「電波」とします)を借りて、月額1000円~4980円でパソコン向けデータ通信サービスを開始する、というものです。
 両社のサービスをうまく組み合わせているため、同じ1人の新規加入者を両社でカウントできるという“魔法”が仕込まれていることもさることながら、この“協業”には、通信事業者の本質にかかわる問題が潜んでいます。
 この“協業”が2月に発表された際に、通信業界から上がったのが、冒頭のような声でした。
 電波は有限・希少で、国民共有の財産です。私たちの身の回りには、テレビ、ラジオ、無線、携帯・・・と無数の電波が飛び交っていますが、電波は無限ではありません。「○○ヘルツから△△ヘルツまではAMラジオとし、××ラジオ局にその使用権限を与える」というように、細かく国(総務省)が配分しているのです。
 携帯電話の「電波」は、現在、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイル、イーモバイルの4社に割り当てられています。この「電波割り当て」のやり方は、実は国によって異なります。
 欧米ではオークション方式が一般的です。より高い金額を提示した企業に電波を使うための「免許」が与えられます。一方日本では、役所の裁量で免許を与える企業を選びます。その代わりに、計画的なインフラ整備とサービス実現を企業に義務付けます。当然、ソフトバンクも国から3Gの免許をタダでもらった通信事業者であるわけです。
 しかし今回、免許を持っているはずのソフトバンクが、イーモバイルから電波を借りることになったわけです。免許を持つ企業から、電波を借りて通信事業に参入するこの手法は、「MVNO(仮想移動体通信事業者)」と呼ばれています。MVNOはすでに広く一般化しており、たとえば、ソフトバンクの回線を借りるディズニーモバイルはその一つです。
 MVNO制度の目的はそもそも、既存の携帯電話事業者ではない、メーカーや商社、ITベンチャー企業などの異業種が既存の携帯会社から電波を借りて参入することで移動通信市場を活性化させることにありました。
 ただこのMVNOのガイドラインには、「免許をもっている企業が借りてはいけないという規定はない」(総務省総合通信基盤局・電気通信事業部事業政策課の松田昇剛課長補佐)。
 通信業界に詳しいある経営コンサルタントはこう解説します。「ソフトバンクとイー・モバイルはこの制度の隙間をついた」。
 「設備投資の努力をせずに安易に他社の電波を借りるのはMVNO制度の悪用ではないのか」。こんな声があがっていますが、今のところ、監督官庁である総務省が裁定に乗り出す気配はありません。
 ソフトバンクはここ数年、家族間無料や割引サービス拡充による加入者数の純増や、データ通信量の増加で電波事情が逼迫しています。イー・モバイルの回線を借りることで、同社は従来のラインアップにはなかった使い放題のデータ通信サービスを拡充できたわけで、「国民の共有財産である電波を有効利用したのだから不当ではない」という孫正義・ソフトバンク社長兼CEOの主張は一理あるようにもみえます。
狙いはドコモからの回線借り?
 しかし、免許事業者同士のMVNOは後戻りできない麻薬的効果を持っています。安易に電波を借りることができれば、自らがインフラ設備投資をするインセンティブが失われるからです。「ソフトバンクやイー・モバイルの真の狙いは、最大手NTTドコモから借りることだ」と前出のコンサルタントは指摘します。
 実際、ドコモ幹部は昨年末、ソフトバンクなどから打診を受けたと打ち明けています。
 実は、こうした「麻薬」を許した背景には、総務省の通信政策の誤謬があります。免許事業者間MVNOという「パンドラの箱」を開けたのは、ほかならぬ総務省だからです。
 発端は2年前にさかのぼります。総務省は2007年12月、3G携帯に次ぐ無線通信技術である次世代高速無線の免許をKDDI系のUQコミュニケーションズと、PHSのウィルコムに与えました。
 UQは米インテルの技術をもとにしたWiMAXという方式で、ウィルコムは国産技術の次世代PHS方式で事業計画をたてましたが、最初につまづいたのがウィルコムでした。ウィルコムはKDDIから身売りされ、米投資ファンド・カーライルの傘下となりましたが、昨年秋にカーライルがウィルコム株の転売を画策したものの頓挫。ウィルコム自身の加入者数減少もあって、次世代PHSの整備は遅れが懸念されています。
 PHSは旧郵政省や旧電電公社が育て上げた国産技術。その灯を消してはならぬと、総務省が動き、ドコモに対し、MVNOでウィルコムに周波数提供するよう促しました。通信速度が陳腐化し、3Gへの流出に歯止めがかからない現行PHSが、次世代PHSに移行する橋渡しの期間、ドコモの3G回線を借用するというシナリオです。実際に3月9日から提供開始となりました。
 しかし、それを知ったソフトバンクやイー・モバイルが、ドコモに向かったのはすでに述べたとおり。ドコモ幹部は「PHSは業態が別なのでMVNOは問題ないが、同じ3Gの免許をもつ御社に貸すのは勘弁していただきたいと断った」と認めます。ドコモや総務省がそれを突っぱねたのは、3G事業者とPHSは業種が違うという論理です。
 PHSは「異業種」として3GへのMVNOを認める――。ただそのロジックに無理があるのは言うまでもありません。この無理なロジックが「ソフトバンクとイー・モバイルは互いに協業することで3G事業者同士のMVNOを既成事実化しドコモの門戸をこじ開けようとしている」(同コンサルタント)という戦略を生み出したわけです。
たいして使えない? 次世代ケータイ
 次世代高速無線の免許は、4陣営が手を挙げていましたが、電波を広く使えるようにするために、免許交付は2社に絞られました。しかし、2社だと寡占状態になるため、競争を活発化するために、免許事業者が異業種にMVNOで電波を貸し出すことを義務化しました。これは、既存事業者に画一的に免許を割り振っていた総務省のそれまでの電波行政から見れば画期的なことでした。
 しかし、ウィルコムのつまづきでMVNOを免許事業者間まで拡大解釈せざるをえなくなった総務省は、そうとうアタマを痛めたようです。次世代高速無線の次に位置し、2010年から本格化するといわれる次世代携帯電話、いわゆる3.9世代のLTE方式携帯では、その免許方針が大きくダッチロールします。
 「当初は免許は2社程度に絞るはずだったのだが」。総務省関係者は自嘲気味に語ります。LTEは、1月23日に免許交付方針が示されましたが、ふたを開ければなんのことはない、既存事業者であるドコモ、KDDI、ソフトバンク、イー・モバイルの4社にそれぞれ免許を与えるという肩透かしの結果に終わりました。
 限られた電波に多くの事業者が参入すれば、通信スピードは落ちてしまいます。LTEは技術的に、光ファイバーを超える最高150メガビットの伝送速度を出すことができますが、4社で分けたために、速度が落ち込むのは確実とみられています。実際には10分の1程度との見方が大勢です。こうなると、WiMAXや次世代PHSと比べても変わり映えのしない代物になってしまいます。
 「4社仲良く免許をあたえる、という悪平等が、移動通信の高度化を妨げている」(同コンサルタント)。 この“4社免許”に、先の“免許事業者間MVNO”が組み合わさると事態はさらに悪化します。
 そもそもLTEへの投資に熱心なのは、3G設備がそろそろ償却を終えるドコモだけとみられています。KDDIは過去に先延ばしにした800メガヘルツ帯の再編で手一杯。ソフトバンクは昨年11月の公開ヒアリングで、自ら、MVNOを含む地方でのローミングという、インフラを全て自前で持たない手法に言及したほど。ドコモ以外がどこまでインフラ投資に傾注するかは不透明です。
 結局ドコモだけがLTE全国網を敷き、他社はやっても都市部だけで、あとはドコモから借りるとなれば、まさに光ファイバーと同じ状況が発生します。NTTが7割を超えるシェアを握る光ファイバーは、価格が高止まりして普及がなかなか進んでいません。
 それでも、もともと参入障壁が高く、NTTの独占性が高いとされた固定電話は、移動通信よりも規制が強くかかっています。NTTは光ファイバーにかかっている原価を、決められたルールでかなり細かく開示しなければなりませんが、移動系は原価計算の手法さえ決まっていません。
 このままだと、まともにLTEを整備するのは1社だけ、他の免許事業者はMVNOで電波を借りる。原価は明らかにしなくてよいから、サービス末端価格は高止まり、となるかもしれません。その上ムダに4社に分け与えたために、速度も遅いとなると、何が“次世代”だかわかりません。
 本来なら2社に絞って免許を与え、インフラ投資義務を厳しく課し、免許を持たない事業者へのMVNOのみ促進すればよかったはずですが、そうできなかったのは、過去を否定できない行政のあり方に原因があるように思われます。
 総務省も問題意識はあるようで、原価計算のあり方やローミングのあり方について、審議会での議論が始まりました。今後も注目し、続報していきます。



【北ミサイル発射】テレビ各局も臨時特番 テレ東は独自路線
 NHKと民放各局は、北朝鮮が飛翔体を発射した5日午前11時半すぎ、一斉にニュース速報のテロップを流し、通常番組を中断して特別番組に切り替えた。
 NHKはスタジオに専門家を呼んで解説を交えながら、刻々と入ってくる情報を伝えた。また首相官邸や防衛省、秋田県などとも中継で結び、正午からの河村官房長官の会見を生で流すなど列島の動きを追い、午後0時半に15分遅れで「のど自慢」の放送になった。
 フジテレビも通常番組をストップし、スタジオに専門家を呼んでミサイルの落下地点などを地図上で示しながら解説。またエムネットのファクスをそのまま画面で映したほか、常に画面にテロップで最新情報を流し続けた。
 またテレビ朝日も通常番組が情報系の番組だったこともあり、スタジオで解説を交えながら放送。同時にテロップで最新情報を流した。
 一方、TBSは発射直後に特番に切り替えたが、午前11時45分に通常の「アッコにおまかせ!」をスタート。ただ河村官房長官の会見では生中継に切り替えたほか、番組中でも画面下にテロップで文字情報で伝えた。
 テレビ東京はニュース速報のテロップは流したものの、通常の「太一×ケンタロウ 男子ごはん」の放送を続けた。
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