忍者ブログ
00430000s@merumo.ne.jp に空メールすると、ブログと同じ内容のメルマガをが配信されます。twitterはhttps://twitter.com/wataru4 です。
[153]  [152]  [151]  [150]  [149]  [148]  [147]  [146]  [145]  [144]  [143
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ソフト会社と小売店の険悪な関係 日本のゲーム産業の課題(COLUMN)
 日本のゲーム産業が抱える課題を考える2回目は、ゲームソフトの流通を取り上げる。ここ数年間、中古品の流通増大やゲーム会社とゲームショップの関係悪化など、好ましくないいくつかの変化が起きた。こうした阻害要因を取り除くためにゲーム会社がとり得る戦略は何なのだろうか。
 2009年は、「プレイステーション・ポータブル(PSP)2」の発表があってもおかしくないだろうと思っている。初代PSPが04年に発表されてから5年目に入り、「ニンテンドーDSi」と同様に、そろそろ本格的なバージョンアップ版が出てもいい時期だからだ。
■「PSP」次世代機が流通を変える?
 最大のポイントは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が、PSP用の独自メディア「UMD」を維持するかどうかにある。順当にいけば、搭載されないと考えるべきであろう。PSPのバッテリーの持続時間を伸ばすにあたり、UMDディスクの回転がボトルネックになっている。また、フラッシュメモリー価格の急激な下落で、UMDの優位性であった1.8ギガバイトというメディア容量が意味のないものに変わりつつあるからだ。
 UMDを非搭載にした場合、SCEは流通政策でもこれまでの手法を大きく見直す貴重な機会を得られる。既存のパッケージソフトと同じく、独自フォーマットにしたメモリースティックにデータを記録して店頭で売るのか、それともダウンロード販売によるネット流通を前面に押し出すのか、2つの選択肢があるからだ。この決定によって将来のゲーム流通のあり方が根本的に変わる。
 ちなみに、SCEは「プレイステーション3(PS3)」向けに07年末に投入した「グランツーリスモ5プロローグ」では、店頭でのパッケージ販売とオンライン機能を使ったネット販売の両方を行うというやり方を日本と欧州で実施した。
■ゲームユーザーが遊ぶ3割は中古
 PSPに限らず、流通はゲーム業界にとって大きなウエイトを占めている。現在、日本のゲーム流通に強い影響を及ぼしているのは、02年に決着した中古裁判だ。中古ソフトを販売するゲーム専門店をゲーム会社が訴えたが、小売店側の全面勝利に終わり、中古ソフトはゲーム専門店の重要な商材になった。
 しかし、これによってゲーム会社と小売店との関係は決定的に悪化し、ゲーム会社は小売店のマージンをできるだけ減らそうとする戦略を採った。その結果、ゲーム専門店では新品ソフトを売る動機が相対的に低下し、新品の販売本数を減らして利益が大きい中古ソフトをさらに売るというビジネス構造が進んだ。2000年代に入っての日本の市場規模の縮小には、この状況が一役買っている。
 昨年、あるゲーム会社で、20万本ヒットとなった「プレイステーション2(PS2)」向けタイトルの新品と中古の販売状況を調査したデータを見せてもらい、唖然とした。特定ショップの定点観測に基づくデータだが、新品は2週間で販売が終わり、その後は中古が販売価格をだんだんと下げながらも1年以上売れ続けている。ざっくりとした推計で、新品とほぼ同じ本数の中古が売れたのではないかという。当然、そのゲーム会社にとっては、とてつもない販売機会の損失である。
 フランチャイズの小売りチェーンは中古ソフトの販売本数や収益をあまり公開しておらず、正確な市場規模はわからない。「CESAゲーム白書2008」では、東京ゲームショウに来場したユーザーへアンケート調査の結果をまとめている。それによると、年間平均購入本数は6.4本で、そのうち1.7本(27.2%)が中古だった。つまり東京ゲームショウに来るような積極的なゲームユーザーの遊ぶ約3割は、中古ソフトなのである。
 ゲームは、デジタルデータでありコンテンツとして劣化しない。ユーザーが中古ということに抵抗を持たない限り、新品と同じように遊べる。PS2向けは特に中古ソフトの占める割合が高く、「CESA一般生活調査報告書2007」によると、06年時点で44.6%が中古ソフトで占められるという。
■小売店が在庫リスクを負う流通構造
 中古流通の増大はいびつな現象であるが、ある意味では当然の結果ともいえる。中古裁判などの影響もあるものの、原因をつきつめれば、日本の商慣習に行き着くからだ。
 日本のゲーム産業では、在庫リスクを小売店が負う形になっている。通常、一度仕入れたゲームは小売店からゲーム会社に返品できない契約である。小売店に出荷した段階で、ゲーム会社は確実に収益を得られるが、その先のユーザーに売れるかどうかは小売店の責任であり、売れずに残った在庫による損失は小売店がすべて被る。小売店側へのマージンは少なく、10本仕入れて1本残れば赤字といわれる。
 ゲーム専門店が中古に依存したビジネスへと傾斜していったのは、そのためだ。ゲーム会社が新作ソフトのキャンペーンを行っている間に、いち早く遊び終えたユーザーから中古を安価で仕入れる。それをだんだんと値を下げながら販売することが、最大の利益となるのだ。人気タイトルは高値で扱われ、そうでないタイトルはすぐに安くなる。市場での価格形成を中古が主導するという構造になっている。
 「ドラゴンクエスト」シリーズなどの開発を手がけるレベルファイブは、07年に投入したニンテンドーDS用「レイトン教授」シリーズで、下請けの開発会社から独自ブランドを持つゲーム会社へと鞍替えした。これができるのは返品リスクのない日本の流通構造のおかげでもある。手持ち資金が少なくとも発売して小売店に納入した時点で現金化できる。
■究極の中古対策はネット販売だが・・・
 一方、小売店の力が強く返品が完全に認められている北米では、こうしたことは今後も起こりえない。大手パブリッシャーでなければ在庫リスクを負うことができないからだ。
 日本では結局、在庫リスクを誰に回すかという駆け引きのなかで小売店への押し付けが起き、小売店はそのリスク回避のために中古を販売し、結果として新品が売れずにゲーム会社の収益が伸びないという、産業としては誰の得にもならない状況を招いている。
 ゲーム会社では開発の際に、すぐに遊び終わって中古に回らないように「やりこみ」要素を追加するべきという戦略が一般に説かれる。しかし、それが本当に効果を上げているかどうかを裏付けるデータがあるわけでもない。
 結局、中古対策として有効なのはネット販売だ。ダウンロードしたゲームは誰かに転売することができない。市場が抱える矛盾を少なくともゲーム機メーカーとゲーム会社は解決できる可能性がある。一方、ゲーム専門店側は、売る商品自体がなくなる事態として警戒している。
■任天堂が「毎日触るゲーム」を出す狙い
 この長年の状況を別のアプローチで動かした企業がある。またもや任天堂である。
 任天堂は、まず自社のタイトルが中古で出回りにくくなるように、ゲームの構造自体を考えた。毎日ちょっとした変化が起きる「どうぶつの森」、一日にできる問題数を限って毎日アクセスさせる「脳トレ」など、DS向けのゲームはとにかく毎日ユーザーに触るように働きかける仕掛けがある。その結果、短期間でクリアして中古として売ってしまうということが起きにくくなる。
 昨年10月に発売された「わがままガールズファッションモード」では、ゲーム内の店が服の仕入れを行うのだが、現実の世界の曜日によって仕入れられる服のブランドや種類が違っている。日常性とはあまり関係なさそうなタイトルにまで「毎日」という要素が徹底されている点に驚く。
 一方、販売チャネルに関しても、力を付けてきた大手家電量販店やトイザらスなど新作を中心に扱う小売店を重視する流通政策を採っている。これらの小売店は利ザヤは薄くても在庫回転率を上げてスケールメリットで勝負する業態であり、あくまで新品の販売が主力になる。06年にDSの品不足が起きたときは、町のゲーム専門店には数台しか入荷しないが、トイザらスには毎週何十台もの入荷があり、入荷予定日も示されていた。
■流通と築いた「ウィン-ウィン」関係
 任天堂は価格戦略でも他と一線を画し、発売して一定期間が経過すると実質的に値下げをする、いわゆる「廉価版」をほとんど出していない。岩田聡社長は昨年10月の中間決算発表時の質疑応答で、時間が経過するとゲームが安く売られる現状に疑問を呈し、「一見業界の常識のようになっているけど、本当にそれ以外の売り方はないのか」「なるべく最初の値段を維持するモデルでチャレンジしたい」と述べている。
 これは流通側から見れば、既存タイトルを一定期間在庫として抱えても値下がりリスクが少ないという安心感につながると考えられる。
 任天堂はゲームソフトの価格を低めに設定する戦略を採り、DSやWiiのゲームでは実売価格が5000円を切るタイトルが多い。これもユーザーがゲームを中古ショップに売ろうとするインセンティブを削いでいると見られる。価格が安くても、販売本数が増加して中古の流通量が相対的に減少すれば、収益性は高まるという判断があったものと思われる。
 一方で、新品で6000~7000円という相場が当たり前となったPS3や「Xbox360」のゲームはいかにも高く感じられる。中古が出回ることがわかっているため、各社とも値段を下げられないのだが、ユーザーにしてみれば高いから余計に「中古ショップに売る」「中古を買う」という気持ちになる。
 任天堂の現在の成功は、流通政策もその一部であると考えていい。任天堂は量販店と「ウィン-ウィン」の関係を作り上げ、流通全体を自らに有利な方向に変えることに成功したのである。
■「KORG DS-10」の成功が示すヒント
 しかしこれらは、任天堂のプラットホームホルダーとしての強みがあればこそ生きた戦略でもある。他のソフトウエア企業が同じことをしても難しい。任天堂が強すぎて、打つ手がないという話も聞く。
 ただ、チャンスがないわけではない。AQインタラクティブは昨年7月、テクノシンセサイザーソフトのDS用「KORG DS-10」をアマゾンのみでの限定販売にした。通常の販売チャネルで発売すれば、下手をすると1000本程度の注文しか集まらないと容易に予想できたためだ。
 しかし、動画サイトを活用したプロモーション方法なども効果を上げ、販売本数はアマゾンの08年販売ランキングで9位というヒット商品になった。アマゾンは販売本数を一切公開しないので正確な数はわからないが、関係者によると数万本単位で売れたようだ。最大手企業でなくとも、ウィン-ウィンの関係が築けた例だ。
 流通ルートは今後数年で、店頭でのパッケージ販売からネットからのダウンロード販売へと移行が進むであろうが、劇的に変化する兆しはまだ見えていない。しかし、緩やかな変化は進んでおり、ゲーム会社は、KORG DS-10のような小さな予想外の成功に着目するべきだ。流通やユーザーニーズの時代による変化はこうしたところにも顔を出している。
 次回は、日本のゲーム産業が抱える「人材」面の課題を取り上げる。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
wa-wa-
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
P R
アクセス解析
アクセス解析
アクセス解析

Designed by IORI
Photo by 有毒ユートピアン

忍者ブログ [PR]