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成熟期迎えたSNSはテレビを“凌駕” マーケティング大転換
 Twitterに比べると利用者数が多く成熟期を迎えた感の強い、「mixi」や「GREE」などのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)。時にはテレビCMを凌駕(りょうが)するほどのマーケティング効果を得ることができる。ホンダと、うどんチェーンのはなまる(東京都中央区)の最新の成功事例を紹介しよう。ホンダは、テレビとの接触時間が短く、「自動車離れ」も深刻化しつつある若年層の取り込みにmixiを活用した。はなまるは、店舗が近所にはない消費者への認知度を高めるためにGREEを使った。店舗が全国に点在する同社にとってテレビCMは費用対効果が低いのだ。
 「ガッチャンCR-Z」「しのっちCR-Zのんのん」――。2010年2月から3月にかけて、ニックネームに「CR-Z」を加えたユーザーがSNS「mixi」上に一気に増えた。ホンダが2月11日からハイブリッドカー「CR-Z」の認知向上を狙って展開した「mixiアプリ」の「Ole!Ole!CR-Z」の“成果”だ。
テレビCM以上の効果を実感
 CR-Zが当たるプレゼントキャンペーンを目当てに、3月31日までのキャンペーン期間で80万人超がアプリの利用登録をした。登録者だけではなく周りにいる「マイミク」(ミクシィ上の友人)もCR-Zという単語を目にすることとなった。この成果に、当初1万人の利用を想定していたというホンダの日本営業本部営業開発室マーケティング戦略ブロック主任の原寛和氏は、「見通しが甘かった。ソーシャルメディアのパワーを大きく感じた」と驚きを隠さない。
 様々なメディアを用いたCR-Zのプロモーションにおいて、ネットに課せられたミッションは、20代~30代の製品認知を最大化することだった。そこで、同年代が多く利用するmixiを施策展開の場と決定。Ole!Ole!CR-Zの利用には、ニックネームにCR-Zという単語を加えることを条件とした。「CR-Zという記号的で愛着がわきにくいネーミングを逆手にとって、名前をネタにして遊んでもらい親しんでもらう」(原氏)ことが狙いだ。商品を売り込むより、ユーザーに面白がってもらってmixi上に自然に広まることを目指した。
 アプリへの接触頻度を増やし、クチコミの広がりを後押しするためにアプリの設計には工夫を凝らした。まず20時間に1回、当選倍率が高まるサイコロを振れるようにして毎日のアクセスを促した。また、ユーザー間での広がりも意識して、20時間で5回までマイミクにサイコロを振る権利を与えられるといった、友人間で楽しめる仕組みを用意した。
 ユーザーが爆発的に増えたポイントは2つあった。まずパソコン版に続き、2月25日にmixiアプリのケータイ版を提供した点。「増加ペースが提供前の1.5倍以上になった」(原氏)。もう1点は、周りの人のニックネームが急に変わったことを疑問に思った人が、その理由を尋ねるといったクチコミの連鎖が起こったことだ。
 キャンペーンの成果から原氏は、「バナー広告を張り続けても80万人ものユーザーを動かすことは難しい。(mixiユーザーのような)特定の層に対しては、テレビCM以上の効果を得られる」とソーシャルメディアに大きな可能性を見いだしている。
 企業が一方的にメッセージを発信し続けても大きな“うねり”は作り出せない。ユーザーを「協力者」と意識することが重要だ。
“乗っ取り”には不快感も
 ホンダと似た事例に、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とデジタルガレージが4月1日から開催した、ツイートで「Tポイント」がたまるキャンペーンがある。この企画では、Twitterのアイコンに「I Love Tポイント」マークを張ると、10万ポイントが当たるWチャンスが用意されていた。Twitter公式ガイドサイト「twinavi」提供のツール「きせかえアイコン」を利用すれば、自分のアイコンに簡単にマークを張ることができた。
 2009年12月には同様の仕組みで、自分のアイコンにサンタ帽を追加することがTwitter上で流行。これをネタにコミュニケーションしたユーザーも目立った。
 だが一方で、ネット上の人格を構成する重要要素であるニックネームやアイコン画像を、“乗っとる”手法について、「えげつない」と不快感を示すユーザーもいることは確か。ネガティブ反応も一定割合出てくることは覚悟する必要がある。
 ホンダは短期的に認知を獲得する施策の一方で、長期的なコミュニケーションを目指してキャラクター化したCR-Zを育てるmixiアプリ「クルっくー」も提供している。クルっくーでは、より長い間利用してもらうために、企業色を極力抑えた。「短期的な施策だけではなく、(ユーザーが)能動的に接触する機会を作る」(原氏)のが目的だ。その登録者数は6万人を超えたところ。今後はケータイ版の展開も検討する。
 このように企業がキャンペーンでSNSを活用する際、その舞台は会員数2000万人(2010年4月時点)を擁する最大手mixiとなることが多いが、これを猛追しケータイユーザーを中心に1673万人(2009年12月時点)会員に達した「GREE」もソーシャルメディアとしての集客、訴求パワーが上昇している。
ユーザーからメニュー提案も
 セルフ式うどん店「はなまるうどん」をチェーン展開するはなまる(東京都中央区)は、2010年3月17日から4月14日まで、GREE上でクーポンキャンペーンを開催した。同社のキャラクター「はなどんくん」を前面に立て、「友だちリンク」を結んだユーザーには50円割引クーポンのほか、プロフィールページをカスタマイズできる壁紙「きせかえプロフ」のはなまるオリジナル版を進呈。友だちリンクを1カ月で9万2000人以上を獲得した。
 経営企画室販売促進担当で、同社のTwitterアカウント(@Hanamaru_Udon)の“中の人”である西脇有希子氏は、「当店は安さが魅力の一つだが、『安かろう悪かろう』ではない。品質のこだわりをしっかり伝えたかった」と語る。そのこだわりは企業サイトで何ページにもわたって掲載しているが、詳述するほど説明調になり、じっくりとは読んでもらいにくい。
 そこでGREE上では、「今日は、えび天くんと一緒に、『うどんマイスター』の試験を見学に行ったんだ」など、はなどんくんの語り口調で興味を引く日記を用意。新メニューが決まる裏話には、「こんなメニューがあったら食べたい」というユーザーの声が自然と集まり、コミュニケーションが活性化した。
 同社はこれまでほとんど広告を打ってこなかった。店舗数は現在全国270店ほど。アンケートで「はなまる未利用者」に理由を尋ねれば「近くにないから」が圧倒的多数を占める。テレビCMを流すには商圏外の人が多すぎる。それでもこの春に東京・新宿東口店がオープンするなど人口カバー率が高まり、認知度の向上に取り組むフェーズに差しかかっていた。「マス広告より1けた少ない額で、当初予想の5万人の倍近いユーザーと交流を持てたことの意味は大きい」(経営企画室長の佐野博章氏)。
 好反響を得たことで第2回開催の機運も高まっている。ユーザー側がリンクを外さない限り友だちリンクは残るため、次回開催時には約9万人のユーザーから再スタートし、さらに“友だち”を積み上げていくことができる。単発ではなく継続・蓄積が効くソーシャルメディアのパワーが本領を発揮するのはこれからだ。



世界シェア 日本勢、薄れる存在感 液晶パネル、シャープ1ケタ台 白色LED 、日亜化学も守勢
 世界シェアでは、調査対象26品目のうち自動車や白色発光ダイオード(LED)など6品目で日本企業が首位を確保した。ただ、中国企業の台頭や韓国勢の攻勢を受け、シェアを落とすケースも相次いでいる。世界市場で日本企業の存在感が薄れる傾向が一段と強まってきた。
 新興国が追い上げるなか、日本勢が強みを発揮しているのはカメラの分野だ。デジタルカメラではコンパクト型の販売拡大に成功したニコンのシェアが上昇。ビデオカメラでも世界最軽量の機種が欧州で好調だったパナソニックがシェアを上げるなど、両品目とも上位を日本企業が占めた。
 このほかNAND型フラッシュメモリーでは東芝がシェアを初の30%台に乗せ、サムスン電子との差を1ケタに縮めた。需要回復に合わせ、素早く減産緩和に踏み切ったことが奏功した。海水淡水化などに使う水処理膜(RO膜)でも、日東電工や東レが中東やアジアでの大型受注をテコにシェアを伸ばしている。
 半面、IT(情報技術)関連では苦戦が目立つ。液晶パネルでは韓国の2社がさらにシェアを伸ばし、合計で4割を突破。シャープは5位を維持したものの、シェアは1ケタ台に低下した。
 白色LEDでも日亜化学工業が4年連続で首位を守ったが、シェアは4.5ポイント低下した。大胆な投資戦略を進める韓国勢に押される状況が鮮明だ。
 旺盛な新興国需要を背景に市場が拡大する分野も多いが、日本企業は追い風を生かしきれていない。自動車は中国などで需要が伸びているが、トヨタ自動車のシェアは1.1ポイント低下。新興国に強い独フォルクスワーゲンなどがシェアを上げた。
太陽電池でも存在感を増す中国企業(サンテックパワー製を使った米ネバダ州の大型発電所)
 高成長が続く太陽電池でも、前年首位の独Qセルズが失速した代わりに上位に入ったのは、増産に積極的な米ファーストソーラーや中国サンテックパワーだった。シャープや京セラは好機を生かせず伸び悩んでいる。
 成長分野を的確に見極めて攻めの戦略を打ち出せるかが、日本企業のシェア回復のカギを握っているといえそうだ。



(経営の視点)「挑戦者=アップル」が崩れる日 ブランド力揺らぐ危機に
 高機能携帯端末「iPhone(アイフォーン)4」の受信トラブルで近年では珍しい逆風を浴びた米アップルは、20日に発表した4~6月期決算で改めて強さを見せつけた。売上高が前年同期比61%増の157億ドル(1兆3700億円)、純利益は78%増の33億ドル(2900億円)と、新興企業並みの高成長だ。
 受信トラブルを巡っては購入者から訴えられ、米有力消費者専門誌に「購入を推奨しない」と宣言されるなど批判を浴びた。強気で知られるスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)も16日に記者会見を開き、不具合を陳謝。トラブルを防げるケースを無償配布することにした。
 それでもiPhone4はトラブル発覚後も高い人気が続き、供給が追いつかない。日本でも購入申し込みから入荷まで1カ月以上待たされる状態だ。年内に「驚くべき新製品」を出すとも宣言しており、トラブルをはねのける快進撃がなお続きそうに見える。
 だが実は、同社にとってより本質的な危機が、この快進撃そのものに潜んでいる。このまま成長すると、1976年の創業以来維持してきた、大多数の大衆とは一線を画す「非主流派」あるいは「挑戦者」といったブランドイメージが揺らぎかねないという難題だ。
 IBM、マイクロソフト(MS)といった同時代で最強のIT(情報技術)企業を専制君主に見立て、自らは「革命家」の役割を演じることで、少数派が愛用する「かっこよい」イメージをまとってきたのがアップル。それが今年になって時価総額でMSを抜き、世界最大のIT企業になってしまった。
 市場の人気投票結果である時価総額だけでなく、実業面でもアップルの直近四半期の売上高はMSの160億ドル(1兆3900億円)にほぼ並ぶ。しかも7~9月期の売上高は180億ドル(1兆5700億円)に伸びる見込みで、売り上げでもMSを超えそうな勢いだ。
 これまでも多くの企業や製品が大きく強くなり過ぎることでブランド力を失ってきた。モノでもサービスでも普及すれば「ありふれたもの」になるリスクが高まり、強くなれば若い挑戦者ではなく老練な王者にみられるからだ。
 MSはとっくの昔にブランド戦略の目標を特別感ではなく、「親しみやすさ」に定めている。同社のスティーブ・バルマーCEOは昨秋、「アップルは少数のためのぜいたく品を作っているが、MSは大衆全員のための実務ソフトを作っている」と語った。
 元来、MSに対する挑戦者というブランドイメージで支持を拡大してきたグーグルも、検索とネット広告で圧倒的なシェアを獲得したことでブランド戦略の難しさに直面している。ことあるごとに欧米独禁当局の調査をうけ、消費者団体や政府からプライバシー侵害の指摘を受けるようになった。独占力を持った「脅威」とみられる局面が増えているのだ。
 人気が拡大するほどブランド力を失う危機が高まるというパラドックスをどう乗り越えるのか。マーケティングの天才と評されるジョブズ氏にとって、創業以来、最も難しい挑戦になるかもしれない。



ソニー、2四半期ぶりの営業黒字に
4~6月期 電機大手、相次ぎ転換
 ソニーの2010年4~6月期は、本業のもうけを示す連結営業損益(米国会計基準)が100億~300億円の黒字に転換したもようだ。前年同期は257億円の赤字。新興国でデジタルカメラやパソコンの販売が拡大した。これまでの合理化に増収効果が加わり、4~6月期はパナソニックや東芝など電機大手が相次いで営業黒字に浮上したもようだ。
 ソニーが四半期ベースで営業黒字を計上するのは2四半期ぶり。主要製品の売り上げが中国などで増えた。デジカメはレンズ交換式の新製品が好調だ。パソコンやビデオカメラも伸びた。液晶テレビは国内外で好調で、価格の下落幅が想定を下回る範囲に収まった。ゲームや携帯電話部門もコスト削減効果で黒字に転換したもようだ。
 10年3月期には工場の統廃合や人員削減などで3300億円以上のコストを削った。この結果、売り上げが増えると利益が伸びやすくなり円高・ユーロ安の影響も吸収した。7月以降も増収は続いているようだ。
 電機大手は08年秋の金融危機後の需要急減で業績が悪化。09年4~6月期は日立製作所や東芝などの営業損益が赤字になり、各社は人件費などの削減を急いできた。



富士通、アジア・北米に低価格帯パソコン投入
 富士通は世界市場でのパソコン販売をテコ入れする。これまで手薄だった中国を含むアジアおよび北米市場での製品構成を見直し、400~600ドル程度の低価格帯モデルを投入する。製品ラインアップの拡充により伸びが見込める両市場での販売を強化、2012年度に世界でのパソコン販売台数を現在の1.8倍に当たる1000万台とする計画だ。
 アジアで新たに市場投入するのは、液晶サイズ14型程度のノートパソコンなど。中国などアジアではこれまで、ブランドを維持するため800ドル以上の中・高級機種を中心に販売していたが、現地の販売店から低価格モデルへの要望が多いことから低価格機の投入に踏み切る。12年度までに販売台数を現在の3倍に当たる200万台に伸ばし、最終的には全体に占める低価格モデルの販売台数を約半分にする計画だ。
 企業向けを中心に手掛けていた北米市場では、個人向け市場に新たに参入する。低価格モデルを中心に拡販し販売数量を確保しながら、企業向けも同社が手掛けるサーバーなどと抱き合わせてパソコンを販売するなどして、アジアと同様に販売台数を200万台程度に引き上げる。
 富士通は09年4月に独シーメンスとの合弁会社との合弁を解消、富士通テクノロジー・ソリューションズ(FTS)として完全子会社化したのを機に、パソコン事業の立て直しに着手。世界的に製品プラットフォームの共通化や、部品調達の一本化を進めてきた。今後は製品戦略の見直しにより、これまで手薄だったアジアや北米市場の販売台数をテコ入れし、部品調達コストの低減など製品競争力を高める。
 世界のパソコン市場は今後、新興国を中心に伸びが加速する見込み。こうした成長市場での低価格モデルの投入による販売台数の拡大戦略は、日系メーカーでは東芝が399ドル以下の新興国モデルの投入を始めているほか、ソニーが低価格機種の専任部署を設置。各社とも伸びしろの大きい新興国市場で販売台数を増やしたい考え。



ニッセン、iPadに通販カタログを配信 9月開始
 ニッセンホールディングスは9月上旬、米アップルの多機能端末「iPad(アイパッド)」向けに通信販売カタログの配信を始める。婦人服や家具などを掲載し、指先のタッチでページをめくったり、商品の画像を拡大したりできる。値引きなどの情報も随時更新し、新規顧客の拡大につなげる。
 8月に発行する婦人服カタログの秋号800ページを、アップルのソフト販売サイト「アップストア」から無料でダウンロードできるようにする。モデルの香里奈さんが薦めるセーターやスカート、薄くて暖かいダウンジャケットなどがある。商品の検索や口コミ紹介などの機能も追加していく計画だ。



キヤノンMJとアドビ、電子文書保全サービスで提携
 キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は米アドビシステムズと電子文書の保全サービスで提携する。アドビの電子文書保全システムをキヤノンMJグループを通じて販売する。日本企業の海外展開が広がる中、機密情報の外部流出を防ぐ同システムのニーズは高まると判断。電子文書に強いアドビと連携を深め、主力のデジタル複合機の販売拡大につなげる。
 キヤノンMJと同社のIT(情報技術)サービス子会社、キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS、東京・港)が8月からアドビの電子文書保全システム「PDFポリシーサービス」を大手企業を中心に販売する。
 システムはインターネットを経由してソフトを提供する「SaaS(サース)」と呼ぶ仕組みを採用し、サービスは12月に始める。
 PDFポリシーサービスは、図面や仕様書など機密のPDFの閲覧や編集、印刷などの利用権限を企業内の組織ごとに細かく設定できる。キヤノンの複合機とも連動し、複合機で読み取った電子文書に同様に利用権限を定められる。アドビとキヤノンITS、キヤノンソフトウェア(東京・港)の3社でシステムを開発した。



オリコン、新人発掘支援でサイト
 オリコンは芸能プロダクションなどによる新人発掘を支援する。芸能デビューを目指す全国の中高校生らの登録サイトを新設。俳優や歌手など志望分野別に閲覧できるようにし、プロダクションが効率よくスカウトできるようにする。
 新サイトは「ORICONCASTINGNET(オリ☆キャス)」。個人情報や写真、自己PRなどを無料で登録できる。年齢制限は設けないが、未成年者については保護者の同意が条件。プロダクションは登録者を検索・閲覧したうえで面接などにより手軽に人材を発掘できる。
 26日にパソコン向け、9月には携帯版の開設を予定する。一定の登録者を集め、サイトを通じてスカウトしたいプロダクションに10月から有料でサービスを提供する。原則月額制で、人材発掘による成功報酬などは発生しない。サイトを活用したオーディションも可能で、テレビ局や映画制作会社もエキストラなどを募集できる。初年度は20万人の登録を目指す。
 オリコンはオーディション情報誌も発行しており、サイト内で雑誌の宣伝も展開し紙媒体の拡販も狙う。



日経社説
リスク恐れず世界で商機得る人と組織に
 日本企業の経営者や従業員は世界で勝ち残っていけるだろうか。
 日産自動車のカルロス・ゴーン社長はこの2年で60件も国際提携を実現した。独ダイムラーと小型車開発で、ロシアやインドのメーカーとは両国向けの戦略車で手を組んだ。
 ブラジル出身で、母国語はポルトガル語。英語とフランス語も自在に操り、世界中を動き回る。日本の企業には、これほどグローバルに活躍できる経営者はいないだろう。
20億人の市場をつかめ
 日本企業は岐路に立つ。人口減など国内市場の限界に直面し、海外に活路を求めても、現地での意思疎通や経営の能力に富む人材はあまりいないと気づかされる。結果的にグローバルな変化の波に乗り切れない。
 ファーストリテイリングや楽天は2012年から英語を社内の共通語にする。世界の需要を追う経営へと脱皮し、売上高を現在の7~11倍に増やす計画だ。その成否は、10年後に20億人に達するというアジアの中間層の需要獲得にかかる。カギを握るのは、先兵となる意思疎通能力のある人材の確保と育成だ。
 アジアの成長を自社の今後の成長にどう結びつけるかが日本企業の共通課題だが、新興国市場では韓国や中国の企業との競争も激しい。
 日本の代表企業も、今やアジアのナンバーワンとはいえない。昨年の粗鋼生産量で中国の鉄鋼メーカー3社が新日本製鉄を抜き、韓国のポスコも新日鉄より上位だった。日用品ではユニ・チャームが新興国市場への進出で先んじたが、同社の株式の時価総額は新興メーカーの中国・恒安国際集団に逆転されている。
 自動車では、独フォルクスワーゲン(VW)のヴィンターコーン社長が「もはや日本のメーカーには脅威を感じない」と語る。新興国市場に成長の重心が移ってから、日本企業の販売の伸びはパッとしないという意味だ。一方でライバル視するようになったのは韓国の現代自動車。中国や南米、アフリカで急速に販売を伸ばし、VWとぶつかっている。
 グローバルな競争の構図は急激な変化を続けている。変化に取り残されないためには、迅速かつ的確に対応して意思決定できる人材、新たな成長市場に精通した人材が必要だ。
 韓国では1997年のアジア通貨危機を機に業界再編を進め、各業種の大企業を1~2社に減らした。並行して進めたのが人材のグローバル化だ。サムスン電子は毎年、優秀な人材を世界各国に派遣して地域専門家を育て、人脈づくりや製品を売り込む原動力にしていった。
 韓国は国全体が追い込まれた危機に直面して変革が進み、国も企業も一変した。「失われた20年」といわれる日本でも変化の兆しはある。
 日立製作所は最近、海外勤務を経験せずに役員にはなれない決まりを設け、総合職の半分以上に海外経験をさせることも義務付けた。東芝は採用条件から日本語を外し、アジアから数十人を本社採用している。
 だが、韓国の変化は企業カルチャーにも及ぶ。サムスン電子は「韓国で最も働きやすい会社」に選ばれている一方、1年で役員の半分が入れ替えられることも多い。役員の年間報酬は平均4億円。報酬も手厚いが責任も重く、成長のためにリスクを取るカルチャーを浸透させている。
照準を外に合わせる
 日本は日本人の新卒一括採用、年功序列型の人事制度を真ん中に据えたままだ。リスクを取らない傾向が以前よりも強まり、これが日本の最大の弱点との指摘もある。人づくりのあり方で見直すべき点は多い。
 米国ではIBM、ゼネラル・エレクトリック(GE)などが早い段階から幹部候補を、世界中で採用する従業員の中から絞り込み、帝王学を植え付ける体制ができている。
 日本でも日産自動車、ソニーなどが似たシステムを採用しつつある。日産は社長直轄の人事諮問委員会を設け、数百ある幹部ポストの後継プランをつくり、絶えず進ちょく状況をみている。登用する人材の国籍や性別は問わず、逆に幹部候補には出身国や地域を超えた人事異動も受け入れるよう求めている。
 日本中心ではなく世界市場に照準を合わせ直す企業も少しずつ出てきた。旭硝子はガラス事業の本部をブリュッセルに移し、東京はアジアの本部にした。日本たばこ産業(JT)は、旧RJRナビスコから買収した海外子会社の日本人副社長に、JTの社長より高い報酬を払う。
 日本の本社にいるだけでは世界の動きは見えない。グローバルに活躍できる人材を確保して激しい変化についていき、リスクをとって一歩前に出ていく企業に――。人事と組織のあり方を見直し、これからの成長の土台づくりを進めよう。
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