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急成長続けた米ソーシャルゲーム市場に変調の兆し
 米シアトルで7月19日から3日間、「Casual Game Connect」という商談イベントが開催された。2006年にスタートしたこのイベントは日本ではほとんど知られていないが、パソコンを中心とした手軽な「カジュアルゲーム」や交流機能を持つ「ソーシャルゲーム」の国際商談会として急拡大している。今年は世界35カ国から632社、2000人が参加したが、ここで明らかになったのはソーシャルゲーム市場に起きつつある「異変」だった。
 Casual Game Connectが他のゲームイベントと違うのは、参加企業のほとんどが1人から数人の小さな開発会社である点だ。シアトルにはパソコン向けのゲームコンテンツ配信事業者や販売会社が集積しており、会場はリラックスした雰囲気ながらも商談に熱が入っていた。なお、今回の取材は、日本貿易振興機構(ジェトロ)と福岡市の委託による産業地域クラスター(集積)調査の一環として行ったことをお断りしておく。
Facebookで起きた「アタリショック」現象
 ゲーム産業は今、事業構造の急激な変化に見舞われている。その最大の要因は「フリー(無料)」を前提としたビジネスモデルの台頭にある。米Facebook(フェースブック)に代表されるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて配信される無料ゲームが急成長し、従来型のパッケージ販売モデルを揺るがしはじめた。今回のイベント参加企業もそうした新興勢力なのだが、急成長を続けてきたはずのFacebook市場に変調の兆しが出ているという。
 世界で3億人のユニークユーザーを抱えるFacebookは、プラットフォームをオープン化する戦略をいち早く採用した。その結果、ゲーム開発会社などの参入コストが下がり、08年に約5万種類だったアプリケーション数は今年1月には55万種類へと急増した。
 しかし、Facebookのユーザー数がこの半年間で14%増加したにもかかわらず、アプリの利用率は20%低下し、毎日特定のアプリを利用しているユーザー数も13%減少したという。トップ3のゲーム会社のゲームに毎日アクセスするアクティブユーザーも10~50%低下している。一体、何が起きたのか?
 「Facebookのプラットフォームとしての性質がこの半年間で大きく変化した」。英大手ソーシャルゲーム会社PlayFishのダン・フィデン氏はこう指摘する。これまではSNSの口コミで情報が広がりユーザーが求めるタイトルを見つけ出すことができた。しかし、供給が適正水準をはるかに超えたことで「市場がスパム状態になってしまった」とフィデン氏はいう。ゲーム業界では1980年代に米アタリ社のゲーム機向けソフトが乱造され、「アタリショック」と呼ばれる急激な販売不振を招いたことがある。今回のケースも構図はアタリショックと同じだ。
 フィデン氏はこうした状況に懸念を示しつつも、「常に多くの友人とつながることのできるゲームを注意深くデザインし、Facebookだけでなくスマートフォンなどにも展開していけば、人気を保つことはできる」と前向きな見通しを語った。しかし、米Inside Social Gamesの調査によると、PlayFishのアクティブユーザーは今年6月から7月にかけて約200万人減少している。5000万人規模のユーザー数からすれば減少幅は微々たるものだが、わずか1年前までソーシャルゲーム各社は飛ぶ鳥落とす勢いでユーザー数を増大させていた。市場は予想を超える速さで動いている。
資本力で勝負する段階に
 米ベンチャーキャピタルNorwest Venture Partnersのティム・チャン氏も、Facebook上のアプリ市場に起きている変化を別の観点から指摘する。チャン氏は「Facebookというお菓子はもう甘くない」と語る。
 ソーシャルゲームはこれまで、「急速な成長(チョコレート)と収益(ピーナッツバター)を享受できる最高の市場環境」だった。しかも、Facebookには口コミ効果が期待できるという特典もあった。しかし、「もはや、無料のチョコレートは存在しないのではないか。ピーナッツバターを得るためには、プロモーションなどさらなるコストが必要になっているのではないか」とチャン氏は指摘する。
 特に北米市場では今後、プラットフォーム間の資本力による競争が本格化するとみられる。エレクトロニックアーツやアクティビジョンなど既存の大手ゲーム会社が市場に入り込もうとしているうえ、映画会社のディズニーやテレビネットワークのABCなどメディア系の大型資本も参入を狙っているからだ。
 北米以外の地域の企業も存在感を増している。チャン氏が名前を挙げたのは、韓国NHNやドイツのGame Fuel、ロシアのDSTなどだ。それぞれが国内のソーシャルゲーム市場で成功し、海外に目を向けている。
 ソーシャルゲーム市場ではこれまでFacebookの急成長の波に乗ることで、ユーザー数2億人のZyngaや4000万人のPlaydomといった新興勢力が成長を謳歌(おうか)してきた。しかし、大手企業が資本力や資本効率を競うような段階に入れば、こうしたサクセスストーリーも今後は見ることができなくなるだろう。
日本企業の動向にも関心
 チャン氏の講演で興味深かったのは、日本の携帯電話を中心としたソーシャルゲーム市場の急成長にも言及していた点だ。ミクシィ、ディー・エヌ・エー(DeNA)、グリーの3社のほか、アップルの「iPhone」を持ちゲーム企業との提携に積極的なソフトバンクにも注目しているという。
 日本のSNSは会員規模でみれば2000万人以下とFacebookに比べてはるかに小さいが、アイテム課金などの売り上げが伸びており収益性は高い。それらの企業の海外進出に伴い、「国際提携が広がる可能性がある」とチャン氏は予測する。
 一方、現在は高成長を続けている日本のソーシャルゲーム市場にも、いずれFacebookで起きたような現象が訪れるリスクはある。ソーシャルゲーム市場の変化はあまりに急速で、昨日の勝者が明日も勝者であり続ける保証はどこにもない。



孫社長の後継、一般公募を開始 ソフトバンク
 ソフトバンクは28日、孫正義社長の後継者の一般公募を始めた。後継者の発掘・育成を目的に同日開校する育成機関「ソフトバンクアカデミア」の募集要項は年齢が20~50歳で人数は30人。応募に必要なインターネット上での登録期間は28日~8月20日。9月1日~2011年2月中旬にかけて選考し、メールで合否を連絡する。
 登録後は3回のプレゼンテーションと、孫正義社長による最終審査を経て合格者を選定する。プレゼンテーションのテーマや表現方法は自由。ソフトバンクは6月に長期的経営戦略となる「新30年ビジョン」を示した。その中で後継者を育成するための機関設立を宣言していた。



【インタビュー】NTTドコモ社長・山田隆持さん(62)
 ■LTE提供開始へ 基地局投資前倒し
 --総務省は6月末、携帯電話を特定の通信会社でしか使えないようにする「SIMロック」の解除を求めるガイドライン(指針)を決定した
 「来年4月1日から販売する携帯電話端末は原則、SIMロック解除機能を搭載する方向で準備を進める。来年の夏モデル以降になる。今はSIMロックが簡単にはずれないようになっているが、利用者が端末をドコモショップに持ち込めばソフトウエアを修正してSIMロックを解除できるようにする。基本的には(ドコモにKDDI、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルを加えた)携帯電話4社で足並みをそろえる必要がある」
 --今年12月には次世代高速データ通信規格「LTE」の商用サービス提供が始まる予定だ
 「12月にデータ端末を、来年からは携帯電話端末を提供する予定だ。LTEの特徴は高速・大容量・低遅延で、周波数効率がいい。需要の高い東京・名古屋・大阪から導入を始め、5年後に51%のエリアカバー率を目指す。これまでは基地局整備に2010~14年度の5カ年で約3500億円の投資を計画していたが、これを少し前倒しして、10~12年度の3カ年で3000億円程度の投資を行いたい。(積極投資で)LTEへの移行を促していく」
 --KDDI陣営と一騎打ちとなっている「携帯端末向け次世代マルチメディア放送」では、総務省が8月中旬にも1陣営のみを事業者として認定する見通しだ
 「ドコモ陣営の強みは3つある。1つ目は、各放送局が出資しているので優良なコンテンツを多く集められることで、これは事業の成功に欠かせない。2つ目は、首都圏で東京スカイツリー(建設中)を活用するなどしてインフラ投資を抑制し、リーズナブルな料金水準が可能となること。(ドコモの動画配信サービスである)『BeeTV』の月額315円と同程度の水準にしたい。3つ目は、ソフトバンクモバイルも陣営に加わっているので対応端末数が多いこと。現状、ワンセグ(携帯端末向け地上デジタル放送)は携帯電話端末の8割程度に搭載されているが、それぐらいの搭載率を目指したい」
 --成長が見込まれるスマートフォン(高機能携帯電話)の戦略は
 「スマートフォン市場は拡大していくだろう。今年度の市場規模は300万台程度とみているが、ドコモとしては100万台の販売を目指す。ゆくゆくはシェア5割に近づけたい。4月に発売したソニー・エリクソン製の『エクスペリア』は10月以降にOS(基本ソフト)のバージョンアップを予定している。また、今年の冬モデルではこれまで5機種の投入を予定していたが、7機種程度に増やしたい。廉価版やワンセグを搭載したもの、タブレット(平板)型などを考えている」 



全国一律のサービス義務、IP電話も選択肢 総務省方針
 総務省は全国一律のサービス提供義務である「ユニバーサルサービス」の対象に、新たに光ファイバーを使ったIP(インターネットプロトコル)電話を加える検討に入った。現在、ユニバーサルサービスの義務を負っているNTT東西はメタル回線を全国一律で展開しなければならない。IP電話が加われば、光ファイバーかメタル回線のいずれかを提供すれば済むようになる。
 27日の情報通信審議会(総務相の諮問機関)に諮問した。審議会は今後、通信事業者へのヒアリングを通じて、サービスの対象に加える光IP電話の種類や料金水準などについて議論する。12月にも最終答申をまとめる見通しだ。
 ユニバーサルサービスは過疎地など採算をとりにくい地域にも、都市部と同様のサービスの提供を求める制度。サービスを維持するためのコストは基本的に事業者などが負担する。実態的には携帯電話などの利用者も1カ月当たり8円を負担金の一部として支払っている。
 固定電話の回線数は昨年度末に3792万に落ち込んだ。これに対して、2003年度にゼロだった光IP電話は1453万回線に増えており、12年度には両者の回線数は逆転するとみられている。
 ユニバーサルサービスの義務を負っているNTT東西では、毎年3000~4000キロ分のメタル回線を新敷してきた。光ファイバーとの選択が可能になれば、二重投資を回避できるほか、光ファイバーの敷設コストの補てんとして交付金を受け取ることもできる。政府内には15年にブロードバンド網の普及率100%を目指す「光の道」構想の実現につなげる狙いもある。



デジタル教材協議会発足 15年までに電子教科書導入
 パソコンなどの電子端末を使って読む電子教科書の普及を進める「デジタル教科書教材協議会」が27日、東京都内で発足した。米マイクロソフト(MS)日本法人やソフトバンクなどIT(情報技術)関連企業や出版社など約70社が参加。実証実験などを通じて電子教科書普及のための課題整理を行い、文部科学省などに提言する。雑誌や書籍に続いて、教科書でも電子化をめぐる動きが本格化しそうだ。
 協議会は、電子教科書に適した端末の標準機能のガイドラインの策定のほか、学校向けに普及・啓発活動を行う。ガイドラインの有効性を検証するために実際に学校で実証実験を行う計画だ。
 協議会の会長を務める小宮山宏・三菱総合研究所理事長は同日のシンポジウムで「世界で電子教科書の取り組みが進む中で、ピッチを上げないと間に合わない」と述べ、2015年までに全国の小中学校などへの電子教科書の導入を目指すとの考えを示した。
 発起人として名前を連ねるソフトバンクの孫正義社長は「日本の競争力を取り戻すためにも、学生と教師に無料で電子教科書を配らないといけない」とし、電子教科書を利用する上で必要な通信回線などを無償提供するなどの支援を行うと述べた。MS日本法人でも、ソフトウェアの提供を検討する。



ヤフーをなびかせたグーグルの“つぶやき”
動画も含め検索新技術で大差
 日本のポータル(玄関)サイト最大手であるヤフーは27日、米グーグルの検索エンジンを採用すると発表した。日本では50%を超える検索シェアを維持しているヤフーだが、技術力や資本力で他を圧倒するグーグルとは、すでに検索サービスの内容で大きな差が付いていた。
 ヤフーは現在、米ヤフーが開発した検索エンジン「ヤフー・サーチ・テクノロジー」を基盤として使い、日本語や日本の市場環境に合わせて改良して検索サービスを提供している。基本的な検索技術はグーグルと同じ「ロボット型検索」で、ウェブサイトをロボットが巡回してデータを収集し、それをインデックス化して検索キーワードに最も適した検索結果として表示する。
 ただ、検索サービスに詳しいSEM総合研究所の渡辺隆広所長は「世界で過半数のシェアを握るグーグルに比べると、ヤフーの検索サービスは技術開発力はもちろんインフラの規模やスピードの点で大きく見劣りしていた」と指摘する。
 例えば最近は、ミニブログ「ツイッター」のようにリアルタイム性の高い情報への検索ニーズが高まっているが、ヤフーはグーグルに比べて対応が遅れていた。また、動画の中の音声を認識して検索結果に反映させる「動画検索」などの新技術でも、グーグルとは差が付いている。検索キーワードに応じて広告を表示する検索連動型広告でも「配信時間や地域の指定などでグーグルに比べて使いにくい面があった」(渡辺所長)という。
 ヤフーがいずれ他社の検索エンジンに乗り換えることは既定路線だった。2009年に米ヤフーが米マイクロソフトと提携し、2012年までに世界規模でマイクロソフトの検索技術「Bing」に切り替えることを決めていたからだ。ただ、Bingは日本向けに最適化するための開発が遅れ気味といわれており、Bingの検索サービスと対になる検索連動型広告「MS アドセンター」も日本ではまだ始まっていない。
 一方、米ヤフーの検索技術もエンジニアの流出などで開発や維持に滞りが出ており、ヤフーがこのまま今の技術を使い続けることも難しくなっていた。日本のヤフーはソフトバンクが株式の約4割を保有しており、米ヤフーとは一線を画してこのタイミングでグーグルの検索エンジンを採用することを決めたようだ。
 ただ、今回のグーグルとヤフーの提携により、日本市場ではグーグルの検索エンジンが単純合計で9割のシェアを握ることになる。ネット業界では「これまでは検索結果に不満があればグーグルとヤフーを比較できたが、これからはグーグルの結果に頼るしかなくなる。両社の競争がなくなることで日本向け開発における技術革新が停滞する可能性もある」との指摘が出ている。



ドコモ、高速携帯の通信技術を初めて提供 台湾半導体大手に
 NTTドコモは27日、年内にサービス開始を予定している高速携帯電話サービスの通信技術を台湾の半導体大手メディアテック社に提供すると発表した。同技術を外部に供給するのは初めて。ライセンス収入を見込むとともに、ドコモが次の成長の核に据える高速携帯電話サービスをアジア地域で広げるのが狙い。
 提供するのはLTEと呼ばれる現行の携帯電話の約5倍の通信速度を可能にする次世代携帯サービス。ドコモは12月に国内各社に先駆けてサービス開始を予定している。
 メディアテック社はドコモにライセンス料を支払ってLTEの技術を自社の半導体に組み込み、中国の携帯端末メーカーなどに販売する。
 同日開いた記者会見でメディアテック社の蔡明介会長兼最高経営責任者(CEO)は「今後ドコモとの提携をさらに拡大していきたい」と話した。



広告団体が懸念表明 グーグル、ヤフー提携で
 インターネットで広告や販売などを手掛ける海外企業で組織する団体「ICOMP」(本部・英国)は27日、日本のヤフーと米グーグルが発表した提携について「日本のオンライン市場の健全な発展を阻害し、独禁法上の観点から阻止されるべきだ」との見解を表明した。
 ICOMPは、提携により両社が日本のネット検索市場で占めるシェアが約9割に達すると指摘。競争が阻害されることにより、ネット上の出版社や広告主、消費者に不利益をもたらすと主張している。



エコポイント年末終了、家電量販が早くも特需対策
 省エネ家電の購入を後押しするエコポイント制度が今年末に終了するのをにらみ、家電量販各社が早くも駆け込み特需の対策に動いている。中堅のノジマは年末商戦に向けて物流施設を一時的に増強。セールの開始時期を秋に前倒しする動きもある。年末は薄型テレビの売れ行きが例年の数倍に達するとの予想が多く、混乱回避に力を入れる。
 ノジマは神奈川県愛川町に約6600平方メートルの物流倉庫を借りた。近隣にある既存の物流センターとほぼ同規模で、年末特需用の在庫積み増しに備える。アルバイトなどの短期販売員も増強。昨年の2倍強の約1000人とする計画で、10月から募集を始める。
 コジマはエコポイント終了をにらんだ買い物需要を分散させるため、年末セールを秋スタートに前倒しすることを検討している。また、ビックカメラは全国約30店でテレビ売り場の相談カウンターを2~3倍に拡大。エコポイント申請についての顧客の相談に迅速に対応できるようにして、買い物しやすい環境を整える。
 エコポイント制度はテレビ、エアコン、冷蔵庫を対象に昨年5月にスタート。今春にはテレビの対象機種の基準変更で駆け込み需要が発生し、3月の販売台数が前年の3倍を上回った店舗もあった。購入や配送手続きに混乱が生じたケースもあったことから、各社は年末商戦の準備を入念に進めることにした。



プリウス次期モデル 16年投入、海外生産も視野
 トヨタ自動車がハイブリッド車(HV)「プリウス」の次期モデルを2016年をめどに投入し、北米など海外での生産にも踏み切る方針であることが27日、分かった。
 現行のプリウスは国内で生産し、海外に輸出しているが、為替変動による収益リスクがある。
 トヨタはカムリのHVなどについてはアメリカの現地工場などでも生産している。ただ、ハイブリッド専用車であるプリウスについては、愛知県豊田市の堤工場など国内でしか生産していない。
 プリウスはモーターやバッテリーなどのユニットに先進的な技術が使用されており、改良が続いている。そうした段階で、海外生産に踏み切れば、生産設備の変更などのコストが後で生じる可能性があるからだ。
 一方、トヨタは需要のある地域や国での生産を拡大する姿勢を打ち出している。市場に合った商品を投入できるほか、日本で生産した車を海外に輸出する場合、為替の変動リスクや関税などのコストアップ要因があるためだ。
 このため、4代目となる次期プリウスからは生産技術も進展するとみており、海外生産にも踏み切る方針だ。
 プリウスの今年上期(1~6月)の国内販売台数は約17万台で、6月まで13カ月連続で新車販売のトップに立っている。



(日経社説)新携帯放送はニーズ優先で
 来年7月の地上アナログ放送の終了に伴い、総務省は空いた周波数帯の電波を新しい携帯端末向けの放送に割り当てる。NTTドコモとKDDIの2陣営が免許を申請中だ。電波の有効利用は重要な課題だが、「ワンセグ放送」に加え新しい携帯放送を始めるからには、国民に真に役立つサービスにしてほしい。
 新しい携帯放送は有料を予定。一方的に映像を流す従来型の放送のほか、視聴者が端末に情報を蓄積して見る形など様々な使い方を想定している。フジテレビジョンなど民放やドコモが推す「マルチメディア放送」と、KDDIなどの「メディアフロー」の2方式が競っている。
 民放とドコモによる方式は地上デジタル放送の延長技術で、大きな出力で広い地域を一度にカバーする。新設する「東京スカイツリー」など放送用の送信設備を活用できるので事業者にとっては専用の基地局への投資が少なくて済む。
 KDDIなどの方式は米通信技術会社のクアルコムが開発した技術で米国の携帯電話会社がすでに採用している。専用の基地局を数多く設けることで、ビルの陰や屋内でもよく映るようにした。その分、設備投資にかかる費用は多い。
 総務省は技術と経済性の両面から8月半ばに事業者を選ぶ考えだが、重要なことは利用者が本当に使えるサービスかどうかだ。ワンセグ放送は屋内など映らない場所がある。新しい携帯放送は放送にとどまらず、電子書籍端末などへの情報配信手段としても使えるようにすべきだ。
 ドコモは国産、KDDIは海外の技術を使うが、世界に開かれた方式かどうかも重要だ。日本メーカーが海外に端末を売れなければ携帯電話の二の舞いとなりかねない。
 携帯放送は地デジ移行で生まれる新サービスだけに、総務省は2012年春の開始を期待している。だが空いた周波数を拙速で割り当て、利用者の要望に沿わないサービスを始めても意味がない。過去に「モバイル放送」など衛星技術を使った携帯端末向け放送で失敗例もある。
 両陣営による公開での技術説明会を開いた総務省の試みはよいが、もっと聞かなくてはならないのは利用者の声である。
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