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モバイルアプリの業界団体「WAC」と「JIL」が統合
 世界の通信事業者により設立された非営利団体「The Wholesale Applications Community」(WAC)は27日、法人化すると発表した。あわせて、ソフトバンクなどが設立した合弁会社「Joint Innovation Lab」(JIL)が合流することも明らかにされている。JILとの統合は9月に完了する見込み。
 WACは、今年2月に設立された組織で、日本からはNTTドコモ、ソフトバンクモバイルが参画するほか、AT&Tやチャイナ・モバイル、KT、ボーダフォン、Orange、ドイツ・テレコム、テレフォニカ、テレノール・グループなど世界の主要通信事業者が名を連ね、オープンな携帯電話向けアプリケーションの開発環境構築などを目指していた。設立当初から、JIL(ソフトバンク、チャイナ・モバイル、ベライゾン・ワイヤレス。ボーダフォンが設立)が推進する仕様などを採用する方針が示されていた。
 今回、非営利団体として設立されたWACの法人化、およびJILの合流が発表された。JIL CEOのPeters Suh氏がWACのCEOに任命され、「我々の目標は、開発者による革新的なアプリ配信と世界中のユーザーへサービスを提供するための、エコシステムの構築」とコメント。ボードメンバーの議長として、ボーダフォンヨーロッパのCEOを務めるMichel Combes氏を、副議長としてフランステレコムCEO代理のJean-Philippe Vanot氏を任命している。日本からは、NTTドコモ執行役員マーケティング部長の永田清人氏や、ソフトバンクモバイル取締役副社長の松本徹三氏がボードディレクターとなっている。
 WACではアプリケーション配信のビジネスモデルに関しても案内している。それによれば、通信事業者が通信料と合算して請求できる課金代行サービスを手がけ、開発者はアプリケーションの価格を設定して、その収益は通信事業者との間で分配され、さらにその一部はWACにももたらされる。いわゆるレベニューシェアモデルだが、将来的にはアプリ内課金、広告、位置情報の利用といった機能拡充を図る。WACではSDKや仕様書を11月にも提供する。仕様は、W2Cの標準にのっとったもので、リッチなモバイル向けWebアプリケーションになるという。今回合流するJILでは既に、モバイル向けウィジェットの仕様を公開していたが、WACが提供するものはJILの仕様、および携帯向けプラットフォームの技術を検討するOMTP(Open Mobile Terminal Platform)が進める「BONDI」の仕様と互換性を持たせたものになるという。詳細な開発者向けロードマップやプレビューは9月にも利用できるようになる。
 ドコモでは「プラットフォームや端末に依存しないアプリの提供と、開発者の増進といったエコシステムの構築というWACのコンセプトに同意して参画してきたが、今後もWACの中で積極的に活動を推進したい」とコメント。WACの仕様を導入する時期は未定ながら、1年以内に何らかの動きがある見込みという。どういった端末に採用するかは未定なものの、WACとしてはオープンな組織として展開する方針とのこと。今年2月のWAC設立時には、企業が協力しあうアライアンスという形態か、法人の設立か定まっていないところがあったものの、約5カ月経過して、何らかの組織が存在したほうが事務的な手続きが進めやすいといった背景もあり、法人化することにしたという。またJILの合流について、ソフトバンクモバイルでは「WACとJILで同じことを行っても、ということで一緒にやることになた。JILで行ってきたことは引き継がれる」としている。
 ドキュメントの日本語化や、日本の開発者向けコミュニティの推進といった面については、NTTドコモ、ソフトバンクモバイルともに何も予定はないとのこと。



グーグルがオンラインゲーム会社と協議、フェースブックに対抗へ
 [ニューヨーク 27日 ロイター] 米グーグルは、米ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)大手フェースブックに対抗する新サービス開発のため、複数のオンラインゲーム会社と話し合いを行った。27日付ウォールストリート・ジャーナル紙が関係筋の話として報じた。
 協議に参加したのはプレイドム、エレクトロニック・アーツ>傘下のプレイフィッシュ、ジンガ・ゲーム・ネットワークなどのオンラインゲーム開発会社。
 同紙によると、新サービスの開始時期は未定。
 グーグルはすでにSNSサイト「Orkut」を所有・運営している。同社のコメントは得られていない。



米ディスニー、ゲーム開発会社買収へ 最大670億円
 米メディア大手のウォルト・ディズニーは27日、ゲーム開発会社の米プレーダム(カリフォルニア州)を買収すると発表した。買収額は最大7億6320万ドル(約670億円)。米フェースブックなど交流サイト(SNS)を通じて遊ぶソーシャルゲームが人気を集めており、ディズニーはプレーダム買収でこの分野を強化する。
 プレーダムの既存株主に5億6320万ドルを支払うほか、業績に応じて追加的に最大2億ドルを拠出する。買収は当局の承認を前提としており、今年9月までに手続きを完了する見通し。
 プレーダムは2008年にサービスを始め、現在は月間4200万人が利用している。ディズニーのロバート・アイガー最高経営責任者(CEO)は「ディズニーやABCなど当社のブランドとプレーダムの能力を組み合わせることで成長の可能性が高まる」との声明を発表した。
 ソーシャルゲームを巡っては今月、この分野の大手である米ジンガ(カリフォルニア州)に米グーグルが1億ドル以上を出資したと米メディアが報じている。フェースブックの利用者数が5億人を超えるなどSNSの普及が加速しており、関連ビジネスを巡る合従連衡も活発になっている。



KDDI、データの取り込み時間を2割短縮 携帯の品質向上へ
 KDDIは28日、携帯電話の通信品質を向上させる取り組みについて都内で説明会を開いた。基地局を増強することや、利用者の動向に合わせて基地局の性能を高めることに加え、携帯電話のCPU(中央演算処理装置)の高速化を進め、データをやりとりする時間を短縮した。音楽配信「着うたフル」など大容量のデータをダウンロードする時間は、2009年4月に比べると10年6月時点で約2割短くなったという。
 希望の多かった地下鉄駅でのインターネット接続や鉄道でのメール送信時間も短縮した。1台の携帯電話で複数の電波を同時に利用できる新技術「マルチキャリア」を導入。これまで使い切れていなかった電波の空きを有効活用し、時間の短縮化につなげる。NTTドコモが現在提供している第3世代通信規格で最速とされるHSDPAと同等かそれを上回るスピードを実現できるという。10年の秋冬モデルから対応する機種を投入する。
 出席した湯本敏彦モバイルネットワーク開発本部長は「これまで培った技術はスマートフォンにも適応させていきたい」と述べた。



多くの途上国「人民元は割安」の認識にNO
 【ワシントン=岡田章裕】国際通貨基金(IMF)は27日、対中国年次審査報告書に関するIMF理事会の意見書を公表した。
 人民元相場が過小評価されているとの認識について、24の理事国の一部が「同意する」としたが、多くの国は「同意しない」との意見を表明した。関係者によると、不同意の多くは開発途上国といい、今後の人民元切り上げ論議に影響が出そうだ。
 ロイター通信によると、報告書は「5~27%過小評価されている」と指摘し、大幅な切り上げの必要性を示唆している。
 意見書では、過小評価に同意しない理由として、中国の経常黒字の見通しが不透明だという点を挙げている。経常黒字額はこのところ伸び悩んでおり、人民元がドルやユーロに対して不当に安いことが輸出を押し上げているとは言い切れないというわけだ。
 ただ、多くの国は、「長い時間をかけて人民元が強くなることが、輸出や投資主導の経済から、内需主導の経済への転換を促す」と、中長期的にみると人民元相場は上昇するとみている。
 IMFは2009年の意見書では、「複数の国が、大幅に過小評価されているとの見方を支持する」と指摘しており、明確な反対意見は掲載されなかった。
 しかし今回は、「大幅に」という部分を削除した上、理事会の意見も割れた。
 米議会にはなお強硬意見が強いが、中国に対する切り上げ圧力は、米国の思惑通りの同調を得られない可能性がある。
 審査報告書そのものは、対象国の同意を経て公表される。中国は人民元相場への言及などを嫌っているとみられ、07年から報告書の公表に同意していない。



韓国・LG電子第2四半期は営業利益90%減、TVや携帯電話が不振
 [ソウル 28日 ロイター] 韓国のLG電子が28日発表した第2・四半期決算は、営業利益が前年比90%減と、予想よりも悪化した。テレビや携帯電話機の販売が振るわなかった。
 米アップルや韓国のサムスン電子などとの競争が激化するなか、スマートフォンの品ぞろえの弱さが今年下半期も引き続き、LG電子の業績の足を引っ張るとみられている。
 SK証券のあるアナリストは「業績は第3・四半期もさえないだろう。しかしアンドロイドを搭載したスマートフォンが発売されるため、第4・四半期には一定の回復が見込まれる」との見方を示した。
 営業利益は1260億ウォン(約1億0660万ドル)。前年同期の1兆2400億ウォンから減少した。トムソン・ロイターがまとめたアナリスト12人の予想コンセンサスは2100億ウォンだった。
 テレビ部門が不振。第2・四半期にユーロが対ドルで10%近く下落したため、薄型スクリーンやその他資材のドル建て決済コストが膨らんだ。LG電子はテレビの売上高の約40%を欧州で稼いでいるとみられている。
 携帯電話機部門は、営業損益が1200億ウォンの赤字となった。前年同期は6200億ウォンの黒字だった。
 テレビ部門の利益率は前年同期の5.9%から0.5%に急低下。
 この日のLG電子株は、スマートフォン事業に対する根強い懸念を背景に約3%安で取引を終えた。
 同社は、携帯電話機市場でノキアやサムスン電子の後塵を拝している。薄型テレビ市場では、ソニー、パナソニックと競合している。



二輪4社、原付二種の普及策提言 免許取得の負担軽減を具体化
 ホンダやヤマハ発動機など国内の二輪車メーカー4社は28日、東京都内で共同会見を開き、125ccの原付き二種クラスの普及拡大を目指して、免許取得制度の簡易化のほか、駐車場の整備や高速道路の独自料金設定などを警察庁に提案する方針を示した。
 4社は昨年も警察庁に同様の要望を出している。今年の提言では、現行制度で免許取得に必要な「技能検定試験」を「判定講習」に置き換えるなど具体策に言及。負担軽減イメージとして、短縮される取得時間・日数などの数字を盛り込んだ。
 ヤマハ発動機の柳弘之社長は「国内二輪車市場は10%の落ち込みが予想されるなど厳しい環境にある。原付き二種は社会で特に有用性の高い乗り物。制度の整備を多くの人に地道に訴えていく」と述べた。



“マイクロソフト化”進むグーグルのジレンマ
 パソコン基本ソフト(OS)で実質的独占を築いたマイクロソフト(MS)を「悪」に見立て、「悪にならない」ことを社是に掲げてきたグーグルの行動様式が、結果的にMSに似通ってきていると感じるのは筆者だけだろうか。
 過去5年、グーグルが新規に参入してきた市場を羅列してみよう。ウェブメール、ワープロ、表計算、プレゼン用スライド、スケジュール管理グループウエア、動画配信、地図ソフト、翻訳・辞書、携帯端末OS、パソコン用ブラウザー、パソコンOS・・・。
 すべての分野で検索機能が有効で、検索技術の利便性をあらゆるネット利用者に届ける試みという点では、「世界中の情報を整理し、アクセス可能にする」という企業ミッションをまさに地で行っている。しかしそれぞれの市場には既存企業がおり、それなりの雇用を生み、ビジネスモデルを築いてきた。グーグルはそれらの市場に検索との連動性と「フリー(無料)」を売り物に土足で踏み込んでいるのもまた事実だ。ワープロや表計算、グループウエアなど、それぞれ独立したプレーヤーがそれなりの市場を築いてきたソフトウエアの各分野に、資本・開発力とOSとの連動性を武器に次々に乗り込んでいった80~90年代のMSと驚くほど似た展開だ。
 特にこの1~2年は企業買収攻勢が加速し、「あれもこれもやりたがる」傾向に拍車がかかっている。この7月だけでも、トピック別データベースをネット上で運営する米メタウェブと、航空会社やネット旅行予約サイトの情報基盤となっている航空運行情報ソフト会社ITAを買収した。それ以前にも、ネット広告の米インバイト・メディア、ネット音楽共有ソフトの英シンプリファイ・メディア、音声・映像ネット処理のグローバルIPソリューションズなど、今年に入ってから10件以上の買収を決めている。
 2009年はスマートフォン向け広告配信最大手のアドモブの買収決定が大きな話題を呼んだ。同社はアップルのスマートフォン「iPhone」アプリ向け広告配信のパイオニア。グーグルによる買収は、グーグル対アップルの敵対関係を確定付けた。そのほかにも動画圧縮技術のOn2など、昨年も6社を買収した。
 焦燥感さえ感じさせる買収攻勢に出ているのはなぜか。理解できる1つの軸は、グーグルの特徴である「1つの検索エンジンですべての種類の情報をまとめて検索する」というやり方だけでは、人々の本当のニーズに応えられないというジレンマ。買収企業のいくつかはバーティカル(分野ごとの)検索の企業だ。
 もう一つは急速に利用者が増えているiPhoneの世界でのプレゼンスの確立だ。今後は携帯端末経由のネット利用が、従来のパソコン経由に比べはるかに大きな市場に育つ。しかしiPhone向けアプリや広告はアップルの支配下だ。これを打開するにはiPhone向け広告で急成長しているアドモブの買収は非常に魅力的だ。ネット広告ですでに高シェアを確立しているグーグルによるアドモブの買収は米独禁当局の調査対象になったが結局、携帯向け広告という枠組みでのシェアがそれほど高くないことから今年5月になって承認された。いずれにしろ、iPhoneの世界でアップルの支配力が固まる前にくさびを打ち込もうと、必死に関連企業買収を急いでいるようにみえる。
 つまり相次ぐ買収は営利上場企業であるグーグルの行動パターンとしては非常に合理的な判断といえる。しかし、グーグルが標榜(ひょうぼう)してきた「悪にならない」という企業理念との折り合いはどうだろう?
 日本ではヤフーが今後、検索と検索連動広告のエンジンにグーグルを採用することに決めた。これで日本のネット検索、検索連動広告の市場はグーグルの独占状態になる。「独占企業」のイメージが少なくとも企業社会の中では今後ますます強まりそう。グーグルは今後、企業として競争に勝とうとすると、社是の考え方からどんどん乖離(かいり)してしまう矛盾にますます悩むことになるだろう。



株、「好業績と円安」で心理好転 リスク緩和の流れも楽観は禁物
 28日前場の日経平均株価は178円高と反発した。27日発表の1~6月期決算が大幅増益となったキヤノンなど主力企業の好業績が確認されたところに為替の円安基調が追い風となり、幅広い銘柄に買いが入った。企業業績などミクロ面は好調な半面、米国の景況感に下振れがみられるなど、マクロ面では不透明感が残る状況は変わらない。投資家心理の好転が続くかどうかは未知数と言える。
 キヤノンは前場、4%強上昇した。売買高も前場で313万株に達し、27日の日通し売買高(327万株)に迫った。キヤノンは下期(7~12月)の想定為替レートを対ユーロで15円も円高方向に見直した。下期だけで営業利益を約400億円下押しする要因となるが、その上で10年12月期通期の業績予想を据え置いており、年後半の景気回復ペースの鈍化による企業収益への圧迫懸念をやや緩和する内容と市場は受け止めた。
 円の対ドル相場は1ドル=87円台と、主力企業の多くが想定する為替レート(90円)を上回る円高水準だが、過度に警戒する雰囲気が和らぎつつあるとの声も聞かれる。足元で投資家のリスク回避姿勢の緩和を示唆する動きが見られるためだ。例えば金先物相場の動き。景気の先行き不透明感が強い局面では安全資産とされる金に資金が集まりやすいが、27日の米金先物は3日続落し、一時は5月以来の安値水準を付けた。
 金融引き締め策を受け調整色を強めていた中国・上海株も7月後半にかけて戻り歩調にある。日興コーディアル証券の小林久恒シニアマーケットアナリストは「政策を平時に戻す『出口戦略』に動く(中国など)新興国で引き締めスピードの『緩和』も見え始め、市場環境は少しずつ改善している」と話す。出口戦略の「出口」が見えつつあるという訳だ。「投資家のリスク許容度が回復すれば、少なくとも円高圧力は薄まる」(いちよし投資顧問の秋野充成運用部長)。
 ただ、最近のリスク回避姿勢の緩和は好調な企業業績などミクロ面に依存している点は否めない。7月の米消費者信頼感指数は市場予想以上に悪化したが、要因は内訳の期待指数が低下したためだ。大和証券投資信託委託の長野吉納シニア・ストラテジストは「そろそろ米企業の4~6月期決算発表も一巡し、今後はマクロ面の動向に関心が向かう可能性が高い。その局面で下振れる指標が相次げば、投資家心理が再び萎縮するリスクはある」と話す。市場心理は移ろいやすいだけに、楽観は禁物だろう。



【東京新聞社説】
欧州の銀行 甘い検査で大丈夫か
2010年7月28日
 欧州が域内銀行の健全性を調べた特別検査(ストレステスト)の結果が金融市場に不透明感を残している。検査基準が甘かったためだ。円相場をはじめ、しばらく神経質な局面が続きそうだ。
 今回の検査は、ギリシャの財政危機を受けて、欧州の銀行監督委員会(CEBS)が欧州の銀行九十一行を対象に実施した。
 欧州連合(EU)の成長率が見通しよりも落ち込むなど景気悪化を想定して、銀行の経営がどうなるかを調べた。
 金融市場ではドイツやフランスの銀行などが不安視されていたが、ふたを開けてみると、資本不足を指摘されたのはドイツの不動産金融会社やギリシャの農業銀行、スペインの貯蓄銀行など、わずか七行にとどまった。
 資本不足の合計額も三十五億ユーロ(約三千九百億円)と少なく、EUが用意している最大七千五百億ユーロ(約八十四兆円)の金融支援枠からみて十分に対応可能だった。金融市場はひとまず結果を好感して、ユーロやドルの為替相場や株式市場も落ち着いている。
 ただ、これでひと安心とはいかない。そもそも欧州が特別検査を実施したのは、ギリシャ危機で国債の債務不履行懸念が浮上し、国債を大量保有する域内銀行の健全性に黄色信号が灯(とも)ったためだ。
 ところが、今回の検査は銀行が顧客と取引する国債だけに限定し、銀行自身が満期まで保有する国債は対象から除いた。
 実際には、銀行保有分の割合がはるかに大きい。市場関係者の間には「今回の検査は当局のアリバイづくり。十分とはいえない」という批判的見方が広がっている。
 市場が好感したといっても、一時的な動きにとどまり、再び欧州の財政金融問題に焦点が当たれば、新たな不安材料になる可能性は残っている。
 銀行の健全性が問題になるのは、資産劣化が景気に大きな影響を及ぼすからだ。ある銀行が危ないとみられると、疑心暗鬼が広がって銀行間取引が収縮する。その結果、各行が融資に慎重になって貸し渋りが起きる。
 企業は設備投資削減を余儀なくされ、やがて景気が落ち込む。これは日本がかつて経験した事態だ。悪循環を防ぐために、銀行の健全性チェックが重要になる。
 欧州の銀行は日本や米国に比べても、経営の情報公開が不十分と指摘されてきた。監督当局には今回のテストで一件落着とせず、引き続き監視の強化を望む。
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