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任天堂、「誤算」の背景
 任天堂の2010年4~6月期の連結最終損益が252億円の赤字(前年同期は423億円の黒字)となった。04年に携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」を発売して以来、快走を続けてきた同社のまさかの失速。最終赤字計上はいくつかの誤算が重なった結果といえる。
 29日の決算発表はホームページなどでの資料開示のみ。自ら記者会見を開いて業績について説明することが多い岩田聡社長も、今回は姿を見せなかった。いまの胸の内は推測するしかないが、ここまでの収益の落ち込みは想定外だったに違いない。
 最大の誤算は円高。「どんな経営をしても、これ(だけの急激な円高)でも大丈夫なようにするのは無理だと思う」。岩田社長は6月に日本経済新聞の取材に応じた際、欧州の経済不安に伴う大幅なユーロ安についてこうこぼしていた。同社の連結海外売上高比率は8割を超す。円高で売上高が100億円以上目減りするなど収益低下の一因となった。
 さらに痛手だったのは外貨建てで保有する資産の為替差損だ。6月末時点で保有する現預金はドル建てが約26億ドル、ユーロ建てが約30億ユーロ。8億ドルと4億ユーロの売掛金もあった。一方、買掛金は2億ドル弱で、3月末に比べて対ユーロで円相場が17円の円高となったことなどを受け705億円もの為替差損が発生した。
 豊富な現預金を持つのは任天堂の伝統的ともいえるスタイル。浮き沈みの激しいゲーム産業にあって、取引先からの信頼確保など事業基盤の安定に一定の役割を果たしてきた。ただ短期にこれだけの円高が進むと今回のように為替差損が膨らんでしまう。以前は金利の高い外貨建てで預金を持つ利点も大きかったが、今後は見直しも必要になりそうだ。
 本業の不振も想定内とはいえそうにない。「特別な眼鏡なしに完全な3D(3次元)表示をお見せします」。6月中旬、岩田社長は米ロサンゼルスで開かれた世界最大のゲーム見本市「E3」でこう宣言し、任天堂として約6年ぶりとなる新しい携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」を公開した。
 具体像が明らかになったことで3DSへの期待が膨らんでいるが、皮肉にもそのことが既存のDSシリーズへの関心を薄れさせている可能性がある。4~6月期のDSの販売台数は315万台と前年同期でほぼ半減。対応ソフトも23%減の2242本と振るわなかった。
 ゲーム機の端境期を迎えた現在は、過去数年と比較して任天堂にとって最も苦しい局面。4~6月期は売上高が1886億円、営業利益は233億円にとどまった。現段階で期初の業績予想は変えていないが、9月中間期の見通しを達成するには7~9月期に売上高で4~6月期の2倍の約3600億円、営業利益で4倍の約960億円を達成しなければならないことになる。
 3DS向けにはスクウェア・エニックスやカプコンなども人気ソフトの供給を決めており、ユーザーの期待は高い。現在の苦境を乗り越えて再び浮上できるのか。任天堂の底力が問われる。



高精細パネルにアップル特需 iPad、iPhone4向け利益率高く 技術前面、国内勢巻き返しへ
 高精細な中小型液晶パネルの需要が伸びている。けん引役は米アップルの新端末。多機能携帯端末「iPad」、高機能携帯電話「iPhone4」に使うパネルは従来品より高性能で単価が高い。生産規模で韓国や台湾のメーカーに押される日本メーカーには技術力を生かし、利益率を高める好機になりそうだ。
 韓国のLGディスプレーは京畿道坡州市の工場で、斜めからでも画面が見やすい高精細なIPS液晶パネルを増産する。同社がiPad向けに出荷しており、アップルへの供給が間に合わないうえ、端末メーカーの注文が殺到しているためだ。
 米アイサプライによると、iPadに使う9.7インチのIPS液晶パネルの価格は1枚65ドル。一方、低価格パソコンのネットブックに使う標準的な10インチパネルは30ドル台前半のため、ほぼ倍になる。高い技術が必要なため生産効率は落ちるが、メーカーの利益率は高い。
 アップルが6月に発売したiPhone4にはLGディスプレーのほか東芝モバイルディスプレイがパネルを供給している。同製品に使う3.5インチパネルの価格は1枚28.5ドル(アイサプライ調べ)と、大量生産される2.2インチの携帯電話用パネルの3倍以上だ。旧世代のiPhone3Gに比べても5割高い。
 アップルに触発され、端末各社はiPadのようなタッチパネル付きで板状のスレートパソコンや高機能携帯電話の新機種を来年から本格投入する。その中で高精細な中小型パネルの需要拡大は確実視される。「新製品はハード面でアップルと同等以上を求められる。特に一目で差が出るディスプレーの美しさは大事になる」(米ディスプレイサーチの早瀬宏ディレクター)ためだ。
 汎用品と同様、高精細パネルも単価下落は続きそうだ。「高機能携帯電話向けパネルも年率3~5%の値下がりは避けられない」(国内パネル大手)。アップルはブランド力と大量調達に加え、複数のパネルメーカーを競争させることで値下げを求める可能性がある。
 それでも積極投資や大型ライン転用で増産を進める韓台勢の攻勢を受ける日本メーカーにとって、高精細パネルの市場拡大は巻き返しの好機だ。アップルの新製品向けに最も早い時期にパネルを供給したのは日本メーカーとされる。各社は3次元などの新技術で市場をリードする構えだ。
 日立ディスプレイズは7月、台湾の奇美電子に中型パネルの生産を委託する一方、IPS液晶の技術を供与することを決めた。「自社の生産設備が不足するなかで供給を増やす」(日立ディスプレイズ)。今年度中にも供給を始める。アップル特需で火が付いた高精細パネルの競争は技術だけでなく、価格や数量の面でも激しさを増す。



コールセンター業務、クラウド使い1000人在宅勤務
アデコとNTT東が遠隔支援
 人材サービス世界大手のアデコ(スイス)とNTT東日本は、インターネットを使った在宅人材サービスを年内に日本で始める。在宅の主婦や高齢者をネットで結び、自宅でコールセンター業務などができるようにする。人材サービス大手のパソナグループも参入する。働き方の多様化につながり、少子化に伴う労働力不足を補う効果も期待される。
 ネット経由でソフトウエアや情報システムを提供するクラウドコンピューティングの技術を活用する。自宅に高性能コンピューターがなくてもオフィスと同じ作業ができ、セキュリティーの確保も容易になる。
 アデコはクラウドを使い、分散した在宅勤務者の労働状況を遠隔で管理する。問い合わせ内容が難しい場合は、対応をアデコ本部の熟練オペレーターに切り替える。
 年内に事業を始め、3年以内に約1千人の在宅勤務者との契約を目指す。企業のコールセンターのほか、データ入力の仕事が多い官公庁やネット通販会社の需要を見込んでいる。
 企業や官公庁は現在、これらの業務で、仕事量のピークに合わせた人員を抱えている。在宅人材サービスを使えば、仕事量が増えたときに対応人数を増やし、閑散期の人件費を抑制できる。
 クラウド型の業務システムはNTT東日本と開発する。システムは在宅勤務者のパソコンに組み込む専用ソフト、本人認証用装置、企業の本部と映像でやりとりできるテレビ電話システムなどで構成し、光ファイバー通信回線を介して利用する。
 NTT東はアデコの顧客に対し、クラウド技術の導入を支援する。利用者が増えれば、ブロードバンド(高速大容量)通信サービスの需要を喚起できる。
 パソナは子会社のパソナテックを通じて今夏にもコールセンター向けにクラウド型の在宅人材サービスを開始する。同社が運営するコールセンターの業務の一部をネット経由で在宅の契約社員に割り振り、繁忙時の人手不足を補う。初年度200人前後と契約する。
 IT(情報技術)ベンチャーのブロードアース(東京・渋谷、中岡聡社長)が開発したクラウド技術を使う。
 高速インターネットやスマートフォン(高機能携帯電話)の普及により、パソコンや携帯電話を使ってオフィス外で働く人の割合が増えている。しかし高性能コンピューターがない自宅では、セキュリティー上の問題があり、業務内容に限りがあった。
 クラウドを使った在宅人材サービスはこうした制約が少なく、自宅で短時間なら働ける主婦や高齢者の労働力を企業が活用できる。



DeNA、驚異の急成長、上期売上高500億円に 「グローバルナンバーワン」目指す
 「非常に順調です」――ディー・エヌ・エー(DeNA)が7月30日に発表した2010年4~6月期連結決算は、売上高が前年同期比2.7倍の241億円、営業利益が同3.8倍の119億円と急成長をとげた。ソーシャルゲームの急拡大によるもので、売上高・営業利益ともに過去最高を更新した。
 2010年度上期(4~9月)の業績予想は、売上高が500億円、営業利益が240億円。前期1年間の売り上げ(481億円)を半期で上回る計算だが、「これも単なる通過点」と、南場智子社長は冷静だ。
 ソーシャルゲームのグローバルナンバーワン企業を目指し、マルチプラットフォーム展開や世界展開を進めていく。10月にはPCサイト「Yahoo!モバゲー」をスタートするほか、年内に「モバゲータウン」をスマートフォン対応させる計画だ。
ゲーム順調、アバター回復 PVは「本当にクレイジーなレベル」
ソーシャルメディア事業の伸び
 主力の「モバゲータウン」では、内製のソーシャルゲームと他社製のオープンゲームがどちらも順調で、成長のエンジンとなっている。アイテム課金やゲーム内広告、mixiアプリへ提供している内製ゲームの売り上げなどを合わせた、4~6月期のソーシャルゲーム売上高は、前四半期比1.5倍の159億だった。
 「怪盗ロワイヤル」など内製ゲームは毎月売上高の最高記録を更新しているという。オープンゲームは7月27日現在でタイトル数が350、パートナー企業が154社に拡大。オープンゲームでの仮想通貨「モバコイン」の1日当たりの消費高は、1月からの半年間で11倍に伸びた。今後「信長の野望」「モンスターハンター」など有名ゲームも投入予定だ。
 低迷していたアバター販売は「V字とまで言えるかどうか(分からない)」が回復基調に。1~3月期の売上高は18億円だったが、4~6月期は20億円となった。オープンゲームでのアバター利用もスタートしており、回復は「ユーザーのアクティビティレベルが向上した」ためと見ている。
 ソーシャルゲーム人気でページビュー(PV)も増加し、6月の1日当たり平均23.8億に。国内の携帯電話サイト全体のPVのうち、モバゲーが約2割を占めていると南場社長は説明し、「本当にクレイジーなレベルにいっている」と話した。
 今後は、モバゲーのマルチプラットフォーム展開を進める。PCサイト「Yahoo!モバゲー」を10月にスタートするほか、年内にスマートフォンに対応する予定だ。
 海外展開にも注力する。ソーシャルゲームと、ゲームを提供するプラットフォーム両方を持っている点を「ユニークな強み」として生かしていく方針だ。「ソーシャルゲームのグローバルナンバーワン企業になる。現実的に非常に近いポジションにいると思う」と話した。



電波利用料、携帯電話の負担割合を軽減 総務省が基本方針案
 総務省は30日、2011年度に改定する電波利用料の基本方針案を提示した。携帯電話端末など無線局ごとにかかる電波利用料の負担割合を軽減。携帯電話事業者が払う利用料が下がれば、基地局整備などが進む可能性がある。電波を入札で割り当てるオークション(競売)制度を巡っては「十分検討に値する」とし、導入に向けた方向性を打ち出した。
 電波利用料は電波の有効利用に向けた研究開発や監視などに使う目的で、携帯電話事業者や放送事業者などから徴収しており、3年ごとに改定する。今回の見直しでは使い道に関し、周波数の再編に伴って発生する費用の一部を支援したり、電波の共同利用実現に向けた環境整備に充てたりする方針を盛った。
 内藤正光総務副大臣は電波競売について「これまで行政は門前払いしてきたが、方向性を出せた」と指摘。専門の研究会などで本格的に議論する考えを示した。



三洋電機元会長、井植敏氏インタビュー
 パナソニックによる完全子会社化が決まり、「SANYO」ブランドが原則消滅することになった三洋電機。創業者、井植歳男氏の長男の敏氏はトップとして20年間君臨し、同社を2兆円企業に押し上げた。その後の経営不振から一線を引いたが、5月に経営評論家の片山修氏と共著「三洋電機よ、永遠なれ!」(PHP研究所)を出版、過去の総括を始めている。昨年末に三洋がパナソニック傘下となってから初のインタビューに応じた。
 --三洋のパナソニックグループ入りをどう思う
 「本のタイトル(三洋電機よ、永遠なれ!)の通りだ。他に何もない。パナソニックはライバルと思って必死で競争してきた。私よりも、現場で戦ってきた人たちにとっては何とも言えない気持ちだろう。しかし、それが最善の道ならそうせざるをえない。社員が路頭に迷うことは避けなければならない」
 --父親が創業した会社が他社の傘下に入ることには
 「そんなことを思うぐらいならば、上場しなければいい。この企業規模で(創業家が)経営権を握るのは無理だ。創業した会社が後につながり、三洋の心をしっかりと持ち続けてほしいことぐらい。ウォームハート(温かい心)の会社であってほしい」
 --上場企業における創業家はどうあるべきか
 「オーナー経営をできる人はやればよい。だが、求心力にならないのなら辞めなければおかしい。社員が幸せになるためにどうしたらいいかということだ」
 --半導体部門など三洋の“事業切り売り”が進む
 「今の時代ではせざるをえない。国内の電機メーカーは過剰で、世界のマーケットを狙える状態にない。日本市場で消耗戦のようなことをしている。再編は日本の中だけではダメだ。アジア連合などを構想しないと生き残れないのでは」
 〈トップ在任中、中国の家電メーカー、ハイアールと業務提携した。アジア企業の台頭に、国内電機業界の再編は避けられないと感じたという〉
 --ハイアールとの提携のきっかけは
 「2000年ごろドバイなど中東へ行ったとき、日本メーカーの商品はほとんどなく、ハイアールなんていう聞いたことのない商品があふれていた。ハイアールに視察に行くと、生産規模がわれわれと比較にならないほど巨大で、工作機械も最新だった。国際競争に勝つには(事業の)整理が必要と思った」
 --どんなビジョンをもっていた
 「太陽電池などエネルギーに注力しようとしていた。白物家電は負けると思ったね。海外市場を切り開かないと、三洋は伸びないが、その力はない。このため大日(大阪府守口市)にあった冷蔵庫工場を閉めて縮小整理を始めた。三洋の販売店でハイアールの商品を売ってもらい、何年かかけてシフトしていこうと思った。(社内の反発などで)おかしくなってしまうから、社員にはすべてを話さなかったけど。でも、それぐらいのスピードが必要と考えていた」



スマートフォン、ウイルスにご注意! 基本ソフト公開で感染拡大
 米アップル社の「iPhone(アイフォーン)」をはじめとする高機能携帯電話「スマートフォン」の人気が高まる中、コンピューターウイルス感染が懸念されている。従来の携帯電話に比べ、スマートフォンは基本ソフトの技術情報が公開されており、ユーザーが自由にアプリケーションをダウンロードして機能を拡張できる。このため、安易にダウンロードすれば感染の恐れがある。普及が進む海外では被害も報告されており、専門家は警戒を呼びかけている。
これまでに700個
 「スマートフォンについては、これから非常に危険な状態になってくるでしょう」。平成14年から携帯電話のセキュリティーに取り組んでいるマカフィー(東京都渋谷区)のモバイルエンジニアリングプログラムマネジャー、石川克也さんはこう語る。
 同社によると、これまで見つかった携帯電話を狙ったウイルスは約700個。初期のころは画面に不適切な画像を表示するなどいたずら的なものが多かったが、近年ではユーザーを悪質なウェブサイトに誘導して個人情報を盗もうとするウイルスも確認されている。日本に比べ、スマートフォンが普及している海外ではウイルス感染は頻繁だという。
 なぜ従来の携帯電話に比べ、スマートフォンのほうが危険性が高いのか。従来の携帯電話と異なり、スマートフォンは基本ソフトの技術情報がある程度公開されている。
 このため、アプリケーションソフトを作りやすい環境となっており、悪意を持った人間が有害なソフトを作成し、ユーザーがダウンロードする危険性が高まっているという。
 さらにスマートフォンの場合、携帯電話用のサイトではなく、多くの人に開かれたインターネット上のサイトに接続することが多い。携帯電話通信社ごとの閉じられたネットワークと異なり、開かれたインターネットには有害なサイトがあふれている。石川さんは「開かれたインターネットに直接接続できるのはユーザーにとって利便性は高いが、裏にはセキュリティーリスクが隠されている」と指摘する。
疑うことが大切
 平成12年ごろから携帯電話対象のウイルス対策に取り組むエフセキュア(港区)のテクノロジ&サービス部長、八木沼与志勝(よしかつ)さんも「スマートフォンは持ち歩くコンピューターなのでリスクは高い」と話す。
 両社ともスマートフォンの普及が進む海外では、すでにスマートフォン対象のウイルス対策ソフトを販売。日本でも発売を検討している状況という。
 八木沼さんは「アプリケーションをダウンロードをする前に、そのサイトは安全なのかなどを確認してほしい。一番大切なのは疑ってかかることです」と話す。個人の危機管理意識を高めることが何よりも重要といえそうだ。



記者の目◇東芝、戻ってきた勝ちパターン
 「電子デバイスが売り上げ、利益ともに想定以上に回復した」。東芝が29日発表した2010年4~6月期決算。村岡富美雄副社長の発言は、電子デバイス部門の好調に支えられた決算内容を象徴するものだった。
 東芝にとって4~6月期は本来なら電力など社会インフラが不需要期なこともあり、利益が出にくい期間。しかし、今年は本業のもうけを示す営業利益が295億円と2000年度途中から四半期決算の開示を始めて以来、4~6月期としては過去最高となった。
 けん引したのはフラッシュメモリーや中小型液晶パネルなど電子デバイス部門。原子力を核とする社会インフラと半導体を2本柱とする東芝の勝ちパターンの姿がおぼろげながら見えてきた。
 主力のフラッシュメモリーが好調だ。米アップル向けの供給が高水準で推移したもよう。メモリーカードやデジタル家電向け以外の用途も拡大しており、需給がタイトな状況が続いている。事実上、韓国サムスン電子との2グループ体制であるため市況も安定。微細化進ちょくでコスト競争力も増し半導体事業の営業利益は従来計画よりも約70億円上振れし250億円となった。
 今4~6月期の特長は、従来まで不採算だったデバイスの改善も業績を下支えしたことだ。代表的なのが中小型液晶パネル。スマートフォン(高機能携帯電話機)やカーナビ向けなどが伸び、生産が需要に追いつかない状況が続いている。コスト削減活動も寄与して7四半期ぶりに営業黒字に転換。半導体のシステムLSIの赤字幅も縮小し目立って足をひっぱる事業が減った。
 今後のポイントの1つはこのデバイス活況がどこまで続くのか。村岡副社長は「半導体はこれからもっとよくなり、中小型液晶も黒字が続く」と話し、電子デバイスの一段の業績拡大に自信を見せた。仮に4~6月期の調子が年間を通して続けば電子デバイス部門だけで軽く1000億円(計画は900億円)の利益が出る計算。7~9月期決算時には通期業績(営業利益計画2500億円)の上方修正も視野に入ってくる。
 ただし、上方修正にはもうひとつ条件がある。社会インフラ事業が確実に利益を出すことだ。やや気になるのは4~6月期に社会インフラが11億円の営業赤字に転落した点。原子力は好調だったものの、前年度の受注低迷の影響を受け売り上げが減少し、営業損益は前年同期に比べ76億円悪化した。「7~9月以降は増収に転じる」(村岡副社長)としているが、今後の回復はどの程度なのか。欧米など景気の先行き不透明感が強まる中、稼ぎ時の1~3月期までにできるだけ利益を上げておきたいものだ。
 11年3月期は始まったばかりとはいえ、4~6月期決算で2本柱とする成長シナリオの復活は見えてきた。この流れを確実なものにできるかどうか。ポイントは半導体と原子力の競争力強化だけではない。
 改善傾向にあるとはいえ、もはや飛躍的な利益拡大が期待できない中小型液晶パネルやシステムLSIなど課題事業の抜本策をどう打ち出すのか。追い詰められてからではなく、課題事業が改善傾向にある今こそ、選択と集中を進め2本柱への経営資源シフトを加速する時期なのかもしれない。



エコカー支援 補助金打ち切りは時期尚早だ(7月31日付・読売社説)
 せっかく効果を上げている景気刺激策を、なぜやめるのか。
 政府は30日、省エネ性能に優れたエコカーを購入する際に支給する補助金を、期限である9月末で打ち切ることを決めた。
 直嶋経済産業相は「臨時、異例の措置としてやってきた。自動的に9月末で終了することになる」と述べた。
 しかし、最近は、景気回復の足取りがもたついている。消費の下支え策をなくすには、タイミングが悪いのではないか。経済界にも存続を求める声が強い。
 経済危機対応のため今年度予算に盛り込まれた1兆円の予備費を使えば、財源の手当ては可能だ。政府は、補助金の支給を当面続けるよう、再考すべきである。
 エコカー補助金は、麻生政権が今年3月末までの時限措置として導入した後、鳩山政権も予算を追加して6か月延長した。
 乗用車で最大25万円をもらえる内容が好評で、省エネ家電のエコポイントとともに、消費拡大に高い効果を上げてきた。
 支援の財源として2009年度の補正予算で約6000億円が計上された。これで450万台分の購入支援が可能となり、すでに300万台分の利用が決まった。
 補助金は1000億円ほど残っており、期限切れまで、まだ2か月あるが、影響はすでに出始めているようだ。
 新車登録が9月末に間に合わないと補助金の対象にならないが、人気車は契約から納車まで2か月以上かかることも珍しくない。
 販売店の説明で、今すぐ買っても補助金がもらえない恐れがあると知り、購入をあきらめる客もいるという。
 今後、補助金制度の終了で、本格的に自動車の販売が落ち込むことが懸念される。
 昨年1月に新車購入支援制度を導入したドイツでは、9月に予算を使い果たして制度が廃止された。その後、新車の販売台数は、支援の実施中より2割以上も落ち込んだまま低迷が続いている。
 終了後の販売減少を見込んで、トヨタ自動車は国内生産を、10月から2割ほど減らす。主要産業の自動車が減産に動けば、回復のペースが落ちてきた工業生産が、さらに冷え込みかねない。
 財政は厳しいが、打ち切りは景気への副作用が大きい。対象車種を絞って支援規模を縮小するなど、財政と景気の両面に配慮しながら補助金を継続させる知恵を出してほしい。
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