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電波割り当て競売浮上 次世代通信など対象
 総務省は電波の割り当てを巡り、オークション(競売)方式を解禁する検討に入る。30日に同省で開く電波利用料に関する調査会で方向性を示す。次世代の高速通信など新サービス導入時を念頭に置いており、公開入札で最高額を提示した事業者に免許を与える。国の裁量で電波を割り当てる現状を改め、透明性を高めるのが狙いだ。
 現状は有限資源である電波について国が管理し、利用を希望する事業者を総務省が審査。これを通った事業者に同省が無償で割り当てている。同省はこれまで競売方式だと落札額が高騰し、利用者に負担が及びかねないとして消極的だったが、調査会では「選択肢から排除しない」などとして事実上、方針を転換する姿勢を示す見通しだ。
 背景にあるのが政権交代。民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で同方式導入の方針を掲げた。原口一博総務相もかねて「限りある電波を有効利用し、国民にしっかりと還元していく責任は重い」と述べてきた。競売方式にすれば国が収入を得られることもあり、財政面からも後押しする声がある。
 競売の対象とする電波など詳細については今後議論する。将来、新しい無線通信サービスなどを導入する際に競売を採用する案などが出ている。
 現行の携帯電話の周波数を広げる場合では、割り当て方式で獲得した既存業者と競売方式で参入する業者との間の不公平が表面化しかねないと判断。当面は競売方式の対象にしない方針だ。
 同方式の本格実施には電波法改正も必要。衆参ねじれ国会の下では実現は困難との見方もある。自民党政権時代は競売方式は実現しなかった。
 競売方式に対しては「経営資本が潤沢でない企業の新規参入の障壁となる」(ソフトバンクモバイル)などの声もある。海外ではIT(情報技術)バブルなどと軌を一にして落札額が急騰、負担に耐えられずに事業を断念した例もあった。
 経済協力開発機構(OECD)加盟国では3分の2以上がオークションを導入済み。米国では1994年の開始から2009年3月までに携帯電話などで70回以上を実施、合計落札額は8兆4千億円に達した。



孫正義社長の後継者求む! ソフトバンクアカデミアが開講
 7月28日午後6時、東京・汐留のソフトバンク本社で、孫正義社長の後継者発掘・育成を目的にした「ソフトバンクアカデミア」の第1回講義が開かれた。
 現在52歳の孫社長は60代のうちに後継者に社長の座を譲ることを明言している。今回の講座は来るべき10数年後に備え、その候補を選抜、育成するためのものだ。この日集まったのは、グループ会社を含め社内から志願した約1000名。20~30代の若手社員が半数を占めた。
 「皆さんにこれから20~30年間伝授していくことを1ページで表すとこの25字になる」。自ら教壇に立った孫社長は「我こそは」と野心と熱意でぎらつく聴衆に向け、まずこの日のテーマを掲げた。
 道天地将法
 頂情略七闘
 一流攻守群
 智信仁勇厳
 風林火山海
 これは、孫社長がかねてより「孫の二乗の法則」と呼んでいる経営哲学。古代中国の思想家、孫子の兵法に自身の独自の解釈を付け加えたものだ。
 「この25字を片時も忘れたことはない。新しい事業をやるとき、試練にぶつかったとき、新しいビジョンを立てるとき、つねにこの25字にマッチしているかを自問自答しながらやってきた」。いわば、孫社長の経営思想のエッセンスが凝縮された25字だ。約2時間半にわたる講義では、この1字1字について、自身の解釈をかみくだいて解説してみせた。
 ここでは、そのなかから一部をかいつまんで紹介しよう。
 この日、孫社長が再三にわたって強調したのが、撤退する勇気の重要性だ。孫社長は「七」の項で、事業進出は七割方成功するという公算が立ったタイミングですべしという持論を展開した。3割以上のリスクを冒さない、また進出後も3割以上組織を痛めないうちに撤退するという考えだ。
 「五分五分の勝率で勝負を仕掛けるのはバカがやることだ。武田勝頼になる。『このまま行くと負けるぞ』という状況で、突っ込んで負けてしまう。退却ができないヤツとは、クルマで言えば、ブレーキのできないクルマ。私が勝頼の状況なら、恥も外聞もなく逃げる。勝頼は3割失った時点で、『これで退いたらもったいない。取り戻さないと』と、意地になってしまったのだろう。これはバカの典型だ。意地で会社をやると、会社をつぶすことになる。株式投資でもそう。失敗するのは撤退の時機を見きわめられなかったときだ」
 孫社長は「退却は10倍の勇気がいる」とも強調した。
 「僕は過去おびただしい数の退却をしてきた。(退くとなったら)僕は早いよ。メディアにめちゃくちゃに書かれます。恥ずかしい思いをする。これに耐える勇気を身に付けないと、リーダーにはなれない。うまく行っているときはいい。皆が割れ先にと、飛び出していくから。だが、退却の決断はトップしかできない」
 「流」の項では、避けなくてはならない失敗のパターンについて触れた。それは流れに逆らった経営のあり方だ。斜陽産業に自ら進出することは決してしてはいけないと孫社長は言う。次の流れを読んで、仕掛けて待つ。これが経営の本流だという。
 「かつて富士通がパソコンのOS(基本ソフト)にマイクロソフトを選ばず、(80年前半までのパソコン黎明期に主流だった)CP/Mを選んだことがあった。そのとき僕は役員にバカだと言いました。そうしたら、『孫さん、あなた技術のことはわからないだろうけど、CP/Mはここがこう優れていてね……』と枝葉末節のことを説明する。しかし、そんなものはすぐに追いつかれる。事業家は、時代の流れの王道を進まければ失格だ。通信方式でも同じ。CDMA2000を選んだ事業者(au)がいる。悲しいばかりの失敗。(高速通信で)一時的に先行する、成功する……ただそれだけのために、最後までメインになれないところを選んだ。沈みゆくもの、枝葉になるものを選んではいけない」
 ハイテンションの孫社長は2時間半の講義中、立ちっぱなし。毎週水曜日に開催していくこのアカデミアでは、今後入校生各自にプレゼンテーションを行わせ、互いの採点をさせる予定だ。
 最初の課題は「社長在任の10年で、どうやって時価総額を5倍にするか」に決まった。どの事業領域で、どんな方法で、資金調達をどう工面して……これらを具体的に論じさせる。下位10%を半年ごとに入れ替える形で選考を進め、10数年後までに後継者を選ぶ壮大な計画だ。年商3兆円近い企業の社長候補を半ば公開の形で選考していくという、ソフトバンクの新たな試み。最終的にどんな人物が選ばれることになるのか。今から楽しみだ。



東芝の日野工場閉鎖、市が影響を調査 商業も含め対策検討
 富士通との携帯電話事業の統合に伴い、東芝が日野工場(東京都日野市)を来年3月末に閉鎖すると発表したことで、日野市は対応策の検討を始めた。今後、取引のある地元の中小企業への影響を調査する。関係会社を含めると従業員1100人の転勤が必要になるとあって、商業も含めた対策を検討する。工場跡地の利用方法など東芝との交渉も必要になる。
 東芝日野工場は1964年に設立。携帯電話機の開発や設計、品質保証、アフターサービスなどを手がけている。従業員の一部は富士通と東芝が共同出資する新会社(川崎市)をはじめ富士通グループへ出向、転籍する。残りは東芝の他の事業所に異動となる。
 日野市にとって大規模な工場の閉鎖は、86年に自動車部品メーカー、千代田自動車工業(現ソーシン)が埼玉県入間市に移転して以来。日野市によると、移転する人は千代田自動車工業の場合、数百人程度だったが、今回はけた違いに多い。日野市在住者は東芝本体だけで140人おり、日野市外からの通勤者も含め、地元商業に与える影響は大きい。
 工場周辺で日野工場と取引している中小企業は数社あり、日野市は今後こうした企業の売り上げへの影響などを調べる。
 ただ、日野工場からの法人税収は2009年度に300万円で、市財政へ影響は軽微にとどまる見通しだ。
 今後は約9万7580平方メートルという広大な敷地の活用が焦点となるが、東芝は「売却するか再利用するか、まだ何も決めていない」(広報室)としている。



楽天、生保に本格参入 アイリオ生命への出資引き上げ
 楽天はアイリオ生命保険と資本・業務提携を結び、生保事業に参入する。30日に発表する。楽天がアイリオの筆頭株主のエキスパートグループホールディングス(東京・中央)から保有株式の一部を取得。出資比率を33.89%に引き上げ、役員も派遣する。楽天の生保事業参入で、ネットを通じた生保販売が広がる可能性がある。
 アイリオは生保に近い共済事業から2008年に生保会社に移行して発足。医療保険や生活習慣病保険などを取り扱っている。資本提携を受けて、両社はインターネットで簡単に契約手続きができるネット専用の生命保険を開発し、ホームページを通じて販売する。
 また、楽天が傘下の金融事業などの顧客にアイリオの保険商品を紹介。契約を希望する顧客をアイリオの販売代理店約7700店に紹介するなどの相乗効果も見込む。
 株式の譲渡価格は20億円前後とみられる。楽天は子会社が運営するファンドを通じてアイリオにすでに20億円を出資。発行済み株式の16.95%を保有している。出資比率の引き上げに伴い、楽天はアイリオに2人の役員を派遣し、経営に関与する。エキスパートグループは50%超の出資比率を維持する。




「iPad、iPhoneの最強アプリ」と孫社長 ソフトバンクとZynga合弁、年内にサービス開始
 「Zyngaのゲームは、iPhoneとiPadの最強アプリになるのでは」――ソフトバンクの孫正義社長は7月29日の決算会見で、ソーシャルゲーム大手・米Zynga Game Networkと合弁新会社を設立することに触れ、期待を述べた。
 新会社は「ジンガジャパン」という名称。日本のソーシャルゲームプラットフォーム向けに、PC/携帯電話向けゲームを年内に投入する計画だ。プラットフォームが対応次第、iPhone/iPadゲームも提供したい考えだ。
 Zyngaは2007年の創業以来、急成長を続け、世界最大級のソーシャルアプリプロバイダー(SAP)となっている。Facebook(世界5億ユーザー)向けアプリで人気上位を独占。月間アクティブユーザー数は2億3000万人に上り、一番人気の農場ゲーム「FarmVille」は6200万ユーザーが利用しているという。
 ソフトバンクはZyngaに1億5000万ドル(約137億円)を出資。ジンガジャパンは、両社の折半出資となる。新会社のCEOには、Zyngaのロバート・ゴールドバーグ氏が就任する予定だ。
 年内に、国内の複数のソーシャルアプリプラットフォームにソーシャルゲームを投入するとしており、mixiやGREE、モバゲータウン(Yahoo!モバゲー)などに、PC/携帯電話向けゲームを提供していくとみられる。「iPhone/iPadにも対応していきたい」としており、プラットフォームの対応にあわせてiPhone/iPadゲームを投入していきたい考えだ。
 ソフトバンクは米国のソーシャルゲーム大手RockYouにも出資。RockYouと合弁で昨年2月、日本法人ロックユーアジアを設立し、日本や韓国、中国向けにソーシャルゲームを提供している。



統合や買収遅れる日本勢、収益力強化急ぐ
 電機業界で再編が止まらない。パナソニックや日立製作所は戦略子会社の完全子会社化に動き、経営資源を中核事業に集め始めた。携帯電話機や半導体でもライバル同士が事業統合に踏み切る。日本の電機産業が国際競争力を失い始めて十数年。過剰なプレーヤーの解消など、失地回復に向けた基盤固めは待ったなしだ。
 再編の一つの潮流がグループ企業の完全子会社化だ。ちょうど1年前、日立製作所は「脱・総合電機」を掲げ、日立プラントテクノロジーなど上場5社の完全子会社化を決定。2557億円を投じて日立本体に取り込み、中核事業の社会インフラや情報通信分野などを強化した。
 富士通と東芝は29日、携帯電話事業を10月に統合することで最終合意した。新会社は国内出荷シェアでシャープに次ぐ2位に浮上、海外市場開拓も狙う。世界3位の半導体メーカーとして4月に発足したルネサスエレクトロニクスは同日、従業員4000人の削減を発表した。収益力強化に向け構造改革を急ぐ。いずれもグローバルな競争を視野に入れた取り組みだ。
 海外では、選択と集中による経営体質の強化で先行してきた欧米、アジアの企業が立ちはだかる。
 欧州を代表する電機メーカー、独シーメンスは発電システムや医療機器などを主力にするが「過去10年間、非中核事業の売却と中核事業の買収を年間50件ペースで繰り返し収益力を強化」(ATカーニーの竹村文伯氏)してきた。09年度の最終損益は、シーメンスが約2800億円の黒字。これに対し、日立は1069億円、東芝も197億円のそれぞれ赤字だった。
 ただ、ここ数年のリストラ効果で国内各社の資金余力は高まっており、M&A(合併・買収)をテコに巻き返しを狙う環境は整いつつある。半導体から重電まで幅広い事業領域で、グローバル競争に耐えうる経営基盤をつくる――そんな再編を模索する経営者が確実に増えている。



経営トーク◇ソニー決算会見速報、加藤優CFO「業績改善のトレンド変わらず」
 ソニーが29日発表した2010年4~6月期の連結決算(米国会計基準)は最終損益が257億円の黒字(前年同期は370億円の赤字)だった。加藤優・最高財務責任者(CFO)は記者会見で、「液晶テレビが国内外で販売が好調だったうえ、事業構造改革の成果も利益を押し上げた。業績改善トレンドは変わっていない」と強調。同時に11年3月期の連結純利益が600億円になる見通しだと発表した。従来見通しを100億円上回る。主なやり取りは以下の通り。
 ――欧州経済の見通しは。
 「ギリシャ危機の発生後、経済が停滞するのではないかという見方が多い。ソニーの売上高のうち25%程度を欧州が占めるが、4~6月期は商品によっては想定を上回る販売となった。足元では(欧州は)不安材料ではない。ただ、先行きは予断を許さない状況ではある。強い商品を出すことが重要で、そうすればマーケットのなかで勝ち残れると思う」
 ――通期の設備投資額は2300億円と100億円上乗せしました。
 「主にデジカメの心臓部分のイメージセンサーの需要が増えており、半導体分野で追加投資をする。外販もしており、引き合いが強い」
 ――パナソニックが三洋電機とパナソニック電工を完全子会社化します。ライバルの動きをどう見ますか。
 「他社の動きについての言及ははばかられる。業界は変化が激しい。ソニーは映画、音楽、エレクトロニクス、金融など多様な事業を持つ。お互いが連携を取りながら事業を進める。(企業や事業を)売り買いするのは選択としてあるが、内部で連携を取りながら事業を展開する」
 ――通期見通しを上方修正した理由は。
 「4~6月期は(想定より)上振れした。通期では連結営業利益が従来予想を200億円上回り1800億円になる見通し。先行きは慎重に見ているが、強い商品力でがんばるしかない。為替の影響を除くと(液晶テレビなど)コンスーマー・プロフェッショナル&デバイス分野が上振れするかという感じだ。プレイステーションも堅調で、ネットワークプロダクツ&サービス分野も堅調だ」
 ――第1四半期の結果と通期の上方修正幅を考慮すると、第2四半期以降は当初見込みより業績が悪くなるという想定になります。
 「為替の影響が大きい。ドルの想定レートは変えていないが、ユーロは従来の1ユーロ=125円から110円と円高に修正した。1ユーロ1円動くと、損益に約70億円の影響が出る。大まかにいって、年間通して為替の影響は約900億円程度と見ている。第2四半期から第4四半期は(為替で)800億円強影響を受けると見ている。4~6月期は想定より(営業利益で)900億円の業績上振れがあるのにもかかわらず、年間で200億円にとどまるのは、大半は為替の影響だ。為替の影響を除くと、(環境は)だいたいは想定通り」
 ――テレビ好調の理由は。
 「良い商品を出している。昨年は少し他社に後れを取った。今年はデザインも変え、発光ダイオード(LED)バックライトを使った商品や3D(3次元)テレビも投入した。材料費や固定費の削減など継続したコスト対策の効果が出ている。4~6月期はテレビの供給の方が逼迫(ひっぱく)していた。パネルの供給がタイトになった面もある。販売面では日本は増加、北米は見通しより下回った。それ以外の地域は予定通りだった」
 ――テレビは年間で2500万台を計画していますが上方修正の可能性は。エレキ分野の業績も回復の兆しがありますが、エレキの拡大策は。
 「2500万台は昨年(の販売台数)1500万台と比較すると6割を超えるアグレッシブな目標だ。2500万台を掲げたのは、失ったシェアをもとのレベルまで盛り返すためだ。まずはこの目標をきっちり達成する。そのためテレビのラインアップをそろえた。年末商戦をすぎると、来年には新モデルが出てくる。そこで手応えを確かめたい。目標を上げる見通しは今のところはない」
 「成長投資に関しては、リーマン・ショックもあり過去数年は収益に結びつかない時期があった。まずは赤字部門を黒字に転換することだ。テレビ、ゲーム関連を黒字化する。昨年後半から良い商品も投入してきており、(業績拡大への)モメンタムを作ってきた。前期は資金・財務面で緊張感のある時期だった。キャッシュフローも改善しており、少し余裕が生まれ、攻めに入れるようになった。これからは成長に向けて投資をしたい。経営方針説明会で説明したように、3D関連を幅広に展開したい。テレビやカメラ、ゲーム、劇場用ディスプレーなどを持っており、3Dの収益源だ。ネット社会に応じたハードやソフト、サービスを拡充し投資も進めたい」
 ――電子書籍端末の需要拡大をどうみますか。
 「電子書籍はiPad(アイパッド)が発売されて、マーケットが広がっている。競争をどう勝ち抜くか。いろいろな見方があるが、多機能な携帯タブレットが伸びるのではないか。読みやすい端末やコンテンツの豊富さなどニーズは多様。読みやすさに関しては、(ソニーは)使いやすさなど特徴のある商品を出せるのではないか。ニュースを素早く見るのと、読み物をじっくり読むのとでは状況が違う。ニーズに合わせて商品やサービスを出していく」
 ――今期も資産売却を続けるとのことでした。方向性や業績への影響は。
 「工場の数は1年前は57程度あったが、現在は42まで減らす意向を示している。今後も売却する方向だが、これまでと同じペースというわけにはいかない。どことは具体的には言えない」
 ――年末にエコポイントが終わります。来年には地デジが始まります。この影響をどう見ますか。
 「液晶テレビの販売は、北米が2割弱、欧州が3割半ば、日本その他が約5割を占める。日本の市場は4~6月は想定より若干上にいっている。エコポイントがなくなると影響は出てくるだろうが、補って余るだけの良い商品を出す」
 ――リチウムイオン電池で、自動車事業への参入計画は。
 「検討中だ。車載バッテリーは遅れているという指摘もあるが、新しい産業領域の立ち上がりの時期にある。それなりに特徴のある技術や商品をそろえたい。来年など短期ではなく、5年、10年でソニーらしいマーケットの入り方を検討している」
 ――エレキ分野は新興国でどのくらい伸びていますか。
 「エレクトロニクス分野では新興国で前年同期比40%伸びている」
 ――ソフトとハードの融合を打ち出しています。その戦略が業績に反映されていますか。
 「今後の戦略として、ハードやコンテンツをつなげて魅力的な商品やサービスを出すことだ。まだ道半ば。たとえば、コンテンツを1回買えば、家のテレビだけでなく携帯端末でも楽しめるなどの仕組みを作るというのが目標だ。個別の商品はあるが、全体としてはできあがっていない。ネットワークサービス関連はここ数年、売り上げが上がってきている。前期はこうしたネットワーク関連の売上高は400億円弱までになっている。毎年成長を続けている。今期は倍になると見ている。ただ、収益に大きく貢献しているとはいえず、来期以降に成果が出てくると見ている」



(日経社説)「100メートル走の経営」に挑むパナソニック
 パナソニックが、三洋電機とパナソニック電工を完全子会社にする。「SANYO」ブランドは原則なくなり、「Panasonic」に一本化される。3社合計で売上高が9兆円近くにのぼるだけに、経営展開は日本の産業を占う試金石になる。
 完全子会社化の狙いは2つだ。ひとつは意思決定のスピードを上げ、設備投資などで韓国や中国のメーカーに負けない体制をつくること。「世界の同業他社は100メートル競走の速さで変革している。我々は中距離走のスピードだったのではないか」(大坪文雄パナソニック社長)との危機感が背景にある。
 もうひとつは消費者の要望にまるごと応えられる製品やサービスのラインアップ作りだ。同社はそれを「家まるごと」戦略と呼ぶ。
 例えば、各社のテレビ、音響機器や照明を単品で売れば、厳しい価格競争に陥る。だが設計や施工、保守点検をまとめて売り込めば、消費者にとっても便利だし、グループ全体の相乗効果も高まる。
 「家やオフィスビルの内部を一括して引き受ける、一種のソリューション(問題解決型)事業」を進めるには、意思決定をひとつにする必要があったわけだ。「2018年に電機業界で売り上げ世界一になる」との目標を達成できるかどうかは、内外で相乗効果を発揮できるかどうかにかかってくる。
 日本は市場規模の割に家電や自動車などの社数が多く、メーカーは国内勢同士の競争で体力を消耗しているといわれてきた。この点で、パナソニック以外の電機メーカーも、生き残りを懸け事業の選択と集中に取り組みだしたことが注目される。
 日立製作所は三菱重工業と水力発電機で提携、東芝は原子力発電と半導体に投資を集中し、ソニーは映画や音楽などのコンテンツ事業に独自性を打ち出そうとしている。
 そうした経営の変革を通じ、世界の標準になるような製品やサービスを次々と生み出していくことが重要だ。最近の電機の成長分野はスマートフォンや電子書籍、インターネット経由でソフト機能を提供するクラウドコンピューティングなどだが、日本にはそうした領域で世界の主役企業がない。
 原子力発電、リチウムイオン電池、太陽光パネルなど、日本にも先端分野はある。問題は世界でどう稼ぐかの経営モデルだ。大きな見取り図を描き、大胆な意思決定で新技術を生かし、新興市場を切り開く。どのメーカーもそんな気概を持ち、企業変革に取り組んでほしい。
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