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アップル、家電量販選別の舞台裏
「売る側への配慮がない」――。米アップルが多機能携帯端末「iPad」を日本で発売して10日。販売店舗を制限、ネット通販を認めないなど、厳しい販売ルートの選別に、家電量販店の恨み節が続いている。昨年末から続いたアップルと量販店との販売戦略を巡る綱引き。アップルの圧勝に終わった舞台裏を追った。
アップル主導の交渉
都内の家電店。操作を体験してみたいという客が専門コーナーに列をつくるなど発売後1週間以上がたってもiPad人気は続いている。アップル日本法人も「とても好調」と説明する。取扱店は全国で約180店に厳選、通信販売はアップル公式サイト限定とし、販路を大胆に絞り込む戦略転換を断行したが、ライバル不在の圧倒的な商品力を前に影響は全く出ていないようだ。
アップルの販売戦略の見直しが表面化したのは4月。しかし、準備は周到だったようだ。
アップル日本法人の幹部が、ある大手家電量販店の本社を訪ねたのは昨年末。「米国本社の意向」として見直しの内容を伝えるアップル側に、量販幹部は表情を曇らせながら聞き入った。
量販店へのアップル側の要求は、携帯音楽プレーヤー「iPod」などを含むアップル製品を、アップル側が指定した店だけで販売すること。店以外では売らず、通販業者などへの商品供給もしないこと。さらに、今までより納入価格を高くすることも取引の条件として提示したようだ。その代わり、アップルの指示に従って販売実績を上げた社に対しては、販売奨励金などの名目で実質的な利益を増やす特典を付けた。
有力な量販店には直接乗り込み、複数回の協議を重ねた。規模が小さい通販の専業会社になるとアップル側に呼び出され、取引条件の変更を迫られたという。
交渉が詰めの段階を迎えたのが2月から3月。「顧客にアップルの世界観を堪能してもらうためです。小型店の狭い売り場で他社製品と一緒に並べられてはブランドイメージが保てない」とアップルは扱い店舗の絞り込みを迫る。これに対して量販幹部は「取扱店を減らすとなると、その店を利用していた消費者はどうなる。通販でも売れないなんて」と反論した。アップル側の答えは「ごもっともですが、米国本社の方針です」と結局アップル主導のまま、量販店側の意見が留意されることはなかった。
中間流通業者も絞り込み
アップルが販売店を選別する際に基準にしているのは、売り場面積や販売数量だけではない。「専用の棚をつくる」「一定水準以上の販売員を何人置く」など、販売店の営業施策にかかわる部分にも踏み込んで要望する。ある家電量販店大手の首脳は「ここまで要求するメーカーは今までなかった。本音では自由に販売したいが、アップルには逆らえない」と打ち明ける。その姿はルイ・ヴィトンなど人気高級ブランドと百貨店との関係にも似ている。商品単価は高くても販売側にとって取引条件は厳しく、アップル製品の利幅は「ポイント還元もできないほど」とこぼす大手量販店首脳もいる。それでも消費不況下、集客には絶大な力を発揮するため、要求を受け入れざるを得ない。
既存商品の販売見直しを求めた後、iPadの販売店舗数の絞り込みについて打診してきたのは4月。ここでもアップルの豪腕ぶりは際立った。
例えば、アップルが通販での同社製品の販売を停止するよう依頼したにもかかわらず、唯一4月下旬までネット通販を続けていた業界7位の上新電機。意向に従わなかったせいか、上新でiPadを扱えるのは直営約170店のうち、わずか1店。全店舗数では上新の半分以下に過ぎないノジマやPCデポでも2~4店。競合他社からも「アップルも極端なことをする」と驚きの声が上がる。
家電量販店は5月28日のiPad発売に先駆けて同10日に事前予約を実施した。だが2日後の午後3時、アップルから突然、「30分後には予約を締め切ってください」との連絡が入る。もちろん事前に入荷数量は知らせない。ある量販店の首脳は「あまりにも売る側への配慮がない」と憤る。改善を要望しているが、「のれんに腕押し」という。
販売ルートの絞り込みに向け、アップルは販売体制の抜本的な見直しにも着手した。
もともとアップルはキヤノンマーケティングジャパン、加賀ハイテックなど10社近くの中間流通業者を介して大小の数千店規模の販売店に商品を供給していた。しかし、今春からはヤマダ電機、ヨドバシカメラなど主要家電量販8社と直接取引を始め、ほかの取引のほぼすべてをダイワボウ情報システム、ソフトバンクBBの2社に集約した。
アップル日本法人の元幹部は「苦しいときもあれだけ世話になった取引先を切るなんて、いくら外資系でもドライすぎる」と指摘する。「あれだけブランド力が確立したのに地方の店で販売をやめるなんて消費者からひんしゅくを買うだけ。長年在籍した幹部が辞めるなど組織の流動化も激しく、日本市場に応じた営業戦略が立てられていないのではないか」(元社員)と指摘する声もある。取引を打ち切られたあるシステム系企業の社長は「アップルについて何も言うことはない」とぶぜんとする。
公取委は静観
こうしたアップルの営業姿勢に業界では「取引条件としては極端。独占禁止法に触れないのか」との声も上がる。
公正取引委員会は現段階では静観の構えだ。「専門店やネット通販といった流通経路は、アップルが営業施策として決められること」(取引企画課)としている。販売店絞り込みの行為自体が即座に独禁法に抵触することはないとの認識だ。例えば、化粧品では使い方を丁寧に説明するために、量販店に卸さず、百貨店にある専門店でしか扱わない商品もある。「ブランドを維持するということが目的であれば、客観的な事実だけみれば、アップルの件も化粧品と同じ」という。ただ、値崩れを防ぐために販路を絞り込んでいるなら、「独禁法に抵触する恐れがある」として、公取委はアップルの動向を注意深く見守る構えだ。
10年前の2000年、公取委はパソコン「iMac」「iBook」の価格を拘束していた疑いで独禁法違反に当たる恐れがあるとしてアップルの日本法人に警告を出した。当時もアップル側は「違反はない」と反論。あくまで在庫を圧縮し、リベートを排除した販売手法の結果だったとしている。
今回、アップルと交渉にあたった量販店幹部の1人は、「彼らはどんなに話を振っても小売価格については触れず、ブランドイメージの話だけを強調する。独禁法対策で、弁護士から指導を受けているとしか思えない」と明かす。
水道の水のごとく、消費者に手軽に商品を行き渡らせる「水道哲学」とは逆をいく「高級りんご哲学」――。ブランドを守るために、厳しいルールで市場に臨むのはおかしいことではない。持続的に利益をあげるためには、批判を浴びるぐらいの強い商品力を備えることも必要だ。ただIT(情報技術)産業は(人間の約18倍の速度で年を取る)マウスイヤーに例えられるように、あっという間に主役が交代する。ある家電チェーンの首脳は「今はアップルの要求をのまざるを得ないが、iPadに勝る製品はいずれ出てくる。そうなれば違う対応も考えられる」と主導権の奪還に意欲をにじませる。アップルと量販店との力関係は、その時点でどちらが消費者を味方に付けられる企業力を持っているかにかかっている。
世界の富裕層14%増 09年末 中国など躍進、日本は1%増どまり
世界の富裕層が2009年末に1119万人と1年前から14%増えたことが、米ボストンコンサルティンググループが公表した調査で明らかになった。経済の高成長や昨年の株高を追い風に、国別で3位の中国などアジア勢の躍進が目立つ。日本は世界2位の座を維持したが、1%増と主要国で最も低い伸びにとどまった。
調査は金融資産を100万ドル(約9100万円)以上保有する個人を富裕層と定義。首位の米国は15%増の471万人と世界全体の4割強を占めた。株式相場の上昇で金融資産が増えたようだ。2位の日本(123万人)に続き、3位の中国は31%増の67万人だった。
中国製造業に賃上げ広がる 日本の電機、対応に苦慮
【台北=新居耕治】中国の製造拠点での賃上げが広がりをみせている。発端となったEMS(電子製品の製造受託サービス)最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業は約1カ月にわたって従業員の相次ぐ自殺への対応に揺れ、大幅な待遇改善に踏み切った。賃上げの波及は続いており、中国生産への依存度を高める日本の電機業界などは戦略の見直しを迫られそうだ。
「中国の低賃金に頼ることはもうできない。賃上げは我々だけの問題ではない」
鴻海の董事長、郭台銘は8日こう語り、賃上げの動きが中国全体に広がると強調した。約1カ月の模索の末、2度にわたる合計2倍超の賃上げを決断。この日、3時間半に及ぶ株主総会を乗り切った直後だった。
震源は中国子会社、富士康科技集団(フォックスコン)の深センの工場群(広東省)。米アップルの「iPad(アイパッド)」や「iPhone(アイフォーン)」の生産を一手に引き受け、今年のグループ売上高が7兆円を超えるとみられる鴻海の主力拠点だ。
合計45万人が働く工場はさながら巨大な町。敷地内には工場や宿舎、商店がすき間無く立ち並ぶ。香港メディアは「現代の紫禁城」と呼び、郭を皇帝に例える。ここで今年に入り連続飛び降り自殺が発生。5月上旬から中国メディアで大きく報じられたのだ。
事件の背景として労働環境の悪さを指摘する報道が続き、株価も下落。郭は自家用ジェット機で台北と深センを何度も往復した。「従業員の自殺を伝える電話のことを考えると夜も眠れなかった」
自動車にも波及
深セン工場の宿舎に泊まる夜が続く中、郭が出した答えが、大幅賃上げと残業時間の最大3時間への短縮だった。郭は賃上げによるコスト上昇について「顧客も理解してくれると信じる」と発言。アップルなどに生産受託料の引き上げを求める可能性に言及した。
鴻海の問題が表面化したのとほぼ同時期にあたる5月17日。広東省にあるホンダの変速機工場が止まった。賃上げを求める突然のストライキで、ホンダが中国に持つ完成車工場の一時停止にまで至った。EMSなどに比べ、待遇が良いと言われる自動車産業でのストは波紋を呼ぶ。携帯電話部品などを生産する台湾の美津実業も従業員のストを受け、深セン工場での賃上げを受け入れた。
賃上げの動きはどこまで広がるのか。コスト低減を狙ってEMSへの委託比率を引き上げてきた日本の電機メーカーには深刻な問題だ。
液晶テレビの外部生産委託比率を2009年度の2割強から10年度に4割まで引き上げるソニー。液晶テレビだけでなく、デジタルカメラ、ゲーム機など幅広い製品を外部委託しており、その多くを鴻海に任せている。だが、現地から十分な情報を得られず、明確な対応策を決めかねているもようだ。
コスト削減急務
賃上げの一部が受託料の引き上げという形で転嫁されれば、新たなコスト低減策を探る必要が出てくる。外部委託比率が高いデジカメメーカーは「EMSと協力して設計効率化や調達改革を進め、労務費の安さに頼らないコスト低減策を練る必要がある」と強調する。
東南アジアの拠点との分業を模索する局面も出てきそうだ。ハイテク調査会社テクノ・システム・リサーチのアシスタントディレクター、大森鉄男は「長期的に賃金上昇が続く場合は、脱・中国を視野に入れた生産体制を検討しなければならないだろう」と指摘する。
ただ、根本的な問題は電機メーカーの利益率の低さにある。アップルのように独創的な商品・サービスを開発したり、携帯電話事業の統合交渉に入った東芝、富士通のような事業再編をさらに進めたりしなければ、アジア地域の人件費上昇に悩み続ける状況からは抜け出せない。
三洋電機、次世代の太陽電池を13年度に商品化 変換効率23% 三洋電機は世界最高の発電性能を持つ次世代の太陽電池を2013年度に商品化する。セル(発電素子)が光を電気に変える効率を量産レベルで従来品の約20%から23%以上にする計画。21%台で現在首位の米サンパワーを抜く。セルの厚みも約半分にし材料費も抑える。パナソニックグループが15年度に世界シェア3位入りをめざすための戦略商品となる。
新製品は三洋独自の「HIT太陽電池」を基に開発する。HITはシリコンウエハーとシリコン薄膜を重ねた構造。新製品では薄膜の高品質化やウエハーの清浄化などにより、接合面で電気が消失するのを抑える。太陽光の吸収率を上げる技術や、発生した電気を効率よく電極に集める技術にもメドを付けた。
一方で、独自の薄型化技術を使い厚さを約100マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルに抑える。シリコンの使用量が減ることで、生産コストを削減できる。
神戸市の研究所で量産に向けて最終調整した後、12年度末にも量産を始める。当初はパナソニックの兵庫県尼崎市のプラズマパネル工場内で生産する方針で、13年度以降にハンガリーや米国など、海外での生産も検討する。
三洋はこれまでも変換効率の向上に取り組んできたが、過去5年間の成果は通算1ポイント未満だった。新技術の導入で高性能化のスピードを速める。
【W杯】韓国で爆発的視聴率50・7%! 対ギリシャ戦
【ソウル=水沼啓子】サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会で1次リーグ突破を目指す韓国は12日、初戦をギリシャに2-0で圧勝し、韓国中が初勝利の祝杯ムードに酔った。韓国の応援団“赤い悪魔”たちが赤いTシャツを着込み街に繰り出して応援する、おなじみの光景も、ソウル市庁前広場など各地で見られた。
この日の試合を単独で衛星中継した韓国の民放テレビ、SBSのソウル地域での視聴率は48%を記録した。後半7分、キャプテンの朴智星が3大会連続ゴールを決めた午後9時37分の視聴率は50・7%に上った。
日証協、社債売買の価格透明に
時価などネット開示 活性化へ制度整備 低格付け債の発行後押し
日本証券業協会は社債市場を活性化するため、社債の時価情報開示を柱とした制度整備に乗り出す。社債の取引価格を毎日ネット上で公表するほか、低格付け社債については金融機関が投資家に代わって経営を監視する仕組みを導入する。市場の透明性を高めて内外の投資家が社債を保有しやすくし、幅広い企業に資金調達の機会を与える。米国の10分の1程度にとどまる社債市場の拡大を目指す考えだ。
日証協は今月下旬に、時価情報開示などの市場改革案を決定。金融庁や法務省、日本公認会計士協会とも連携し、年末から実施していく方針だ。
日証協は現在、証券会社から情報提供を受け、発行後の各銘柄の「参考価格」を公表している。ただ、参考価格と実際の取引価格の違いが大きいとの批判がかねてある。
米国では約3万銘柄の社債の取引価格を個人投資家が無料で見られるようになっている。英国でも発行額の大きい社債について、取引価格情報が毎日公表されている。
日証協は来年中にも、売買の多い社債の取引価格をネット上で1日1回公表。段階的に対象銘柄や公表の回数を増やす。企業の財務状態などに応じて日々変わる社債の時価がわかるようになれば、個人投資家でも機動的に売買し、損益を確定できるようになる。
現在は発行の道が事実上閉ざされている低格付け企業の社債発行も後押しする。信用力の低い企業には財務状態を監視する社債管理会社を必ず付ける仕組みを検討。管理会社となる金融機関が投資家の代わりに、企業の財務状況をチェックし、必要に応じて経営情報の開示を求める。破綻した場合でも適切に債権を保全・回収し、投資家が他の債権者より不利な扱いを受けないようにする。
さらに、引受証券会社の審査作業の見直しなどにより、発行手続きを簡素にする。社債が発行可能な期間が年間で7~8カ月にとどまっている現状を改め、9~10カ月程度発行が可能なようにする。資金需要のある企業が素早く社債を発行できるようにして、市場の拡大につなげる。
証券界が社債市場の改革に踏み切るのは、国内の社債発行残高が59兆円(2009年末)と、米国(約620兆円)の10分の1以下に低迷しているためだ。発行企業が一部の高格付け企業に偏り、資金調達手段として定着していない。個人や海外投資家の保有割合も1~2%程度にとどまる。
政府は今月1日から、海外投資家が保有する社債の利子を原則非課税にした。社債市場に海外からも投資マネーを呼び込む狙いがある。日証協は政府と足並みをそろえつつ、改革案の実行で新たな企業や投資家を社債市場に定着させる考えだ。
地方公務員共済のホテル、赤字穴埋めに巨額公金
総務省所管の「地方公務員共済組合」が経営するホテルの赤字を穴埋めするため、自治体が拠出した公費で不適切な補填(ほてん)を続けていることが、同省の調べでわかった。
2004~08年度だけで総額193億円に上り、組合員の積立金からも同額を投入していた。補填は約40年間にわたり続いており、公費だけで700億円以上がつぎ込まれたと試算している。同省は、不採算ホテルの閉鎖など抜本的な改善を指導する方針だ。
同省によると、組合が経営するホテルの赤字総額は04年度以降、毎年65億~97億円。08年度は91か所のホテルのうち、黒字は2施設。赤字穴埋めのため、公費35億円と職員の共済積立金35億円の計70億円が76施設に投入された。
最高は、当時、37施設を所有していた、道府県職員が加入する「地方職員共済組合」の11億8200万円。
補填は、人間ドック受診費用など組合員の健康増進のための資金を管理する経費や、組合員の住宅ローン資金を管理する経費から繰り入れ名目で行われた。いずれも自治体が拠出している公費と、組合員の積立金で折半して賄われている。
組合からホテルへの資金繰り入れについて、総務省は、割引料金で利用した組合員の宿泊費を補助する場合に認めているが、赤字穴埋めは対象外としている。同省は、補填は1960年代後半から行われているとしており、「公共のホテルであっても民間と同じように独立採算が原則。毎年赤字を垂れ流すような施設は廃止すべきだ」と指摘する。
北海道市町村職員共済組合は今年度から、赤字補填を取りやめた。経営していた二つのホテルの赤字は、毎年計1億2000万円前後。実際には赤字額を上回る資金を組合から繰り入れてきたが、「公費投入は住民の理解を得られない」と判断した。3月末で閉館した札幌市のホテルは、12年前に35億円を投じて建て替えたばかり。だが、売却額はその10分の1程度だった。
土居丈朗・慶大教授(財政学)の話「赤字を公費で埋めるという考え方は不適切であり、非効率な経営につながる。公的な組織がホテルを持つ必要性も希薄で、事業自体を見直すべきだ」
メキシコ湾原油流出、英BPの負担「数兆円か」
【ロンドン=是枝智】米ルイジアナ州沖のメキシコ湾の原油流出事故で、施設を運営する英石油大手BPが信用失墜のがけっぷちに立たされている。
4月20日の事故発生から2か月近くも原油流出は止まらず、環境汚染が深刻になり、株価も急落した。
米国ではBPへの批判が強まり、政治問題にもなってきた。
BPは国際石油資本(メジャー)の一角で、英国を代表する企業グループだ。これまでに負担した費用は14億ドル(約1300億円)を超えた。最終的な負担額は「数百億ドル(数兆円)に達する」との見方もあり、年間の純利益(2009年は約166億ドル)を大幅に超える可能性がある。BPの全世界での石油販売量の4割を占める米国市場での企業イメージの悪化は、流出事故が止まった後も経営に打撃となりそうだ。
英国のキャメロン首相は11日、BPのカールヘンリック・スバンベリ会長に電話した。首相は、BPの事故対応に不満を見せながらも、「BPが強く安定した企業であることがみんなの利益だ」と伝えた。
キャメロン首相は12日にオバマ米大統領とも電話で会談し、対応を協議した模様だ。
一方、日本企業でも、三井物産子会社の三井石油開発が、油田開発に参画しており、費用負担を求められる可能性がある。
「売る側への配慮がない」――。米アップルが多機能携帯端末「iPad」を日本で発売して10日。販売店舗を制限、ネット通販を認めないなど、厳しい販売ルートの選別に、家電量販店の恨み節が続いている。昨年末から続いたアップルと量販店との販売戦略を巡る綱引き。アップルの圧勝に終わった舞台裏を追った。
アップル主導の交渉
都内の家電店。操作を体験してみたいという客が専門コーナーに列をつくるなど発売後1週間以上がたってもiPad人気は続いている。アップル日本法人も「とても好調」と説明する。取扱店は全国で約180店に厳選、通信販売はアップル公式サイト限定とし、販路を大胆に絞り込む戦略転換を断行したが、ライバル不在の圧倒的な商品力を前に影響は全く出ていないようだ。
アップルの販売戦略の見直しが表面化したのは4月。しかし、準備は周到だったようだ。
アップル日本法人の幹部が、ある大手家電量販店の本社を訪ねたのは昨年末。「米国本社の意向」として見直しの内容を伝えるアップル側に、量販幹部は表情を曇らせながら聞き入った。
量販店へのアップル側の要求は、携帯音楽プレーヤー「iPod」などを含むアップル製品を、アップル側が指定した店だけで販売すること。店以外では売らず、通販業者などへの商品供給もしないこと。さらに、今までより納入価格を高くすることも取引の条件として提示したようだ。その代わり、アップルの指示に従って販売実績を上げた社に対しては、販売奨励金などの名目で実質的な利益を増やす特典を付けた。
有力な量販店には直接乗り込み、複数回の協議を重ねた。規模が小さい通販の専業会社になるとアップル側に呼び出され、取引条件の変更を迫られたという。
交渉が詰めの段階を迎えたのが2月から3月。「顧客にアップルの世界観を堪能してもらうためです。小型店の狭い売り場で他社製品と一緒に並べられてはブランドイメージが保てない」とアップルは扱い店舗の絞り込みを迫る。これに対して量販幹部は「取扱店を減らすとなると、その店を利用していた消費者はどうなる。通販でも売れないなんて」と反論した。アップル側の答えは「ごもっともですが、米国本社の方針です」と結局アップル主導のまま、量販店側の意見が留意されることはなかった。
中間流通業者も絞り込み
アップルが販売店を選別する際に基準にしているのは、売り場面積や販売数量だけではない。「専用の棚をつくる」「一定水準以上の販売員を何人置く」など、販売店の営業施策にかかわる部分にも踏み込んで要望する。ある家電量販店大手の首脳は「ここまで要求するメーカーは今までなかった。本音では自由に販売したいが、アップルには逆らえない」と打ち明ける。その姿はルイ・ヴィトンなど人気高級ブランドと百貨店との関係にも似ている。商品単価は高くても販売側にとって取引条件は厳しく、アップル製品の利幅は「ポイント還元もできないほど」とこぼす大手量販店首脳もいる。それでも消費不況下、集客には絶大な力を発揮するため、要求を受け入れざるを得ない。
既存商品の販売見直しを求めた後、iPadの販売店舗数の絞り込みについて打診してきたのは4月。ここでもアップルの豪腕ぶりは際立った。
例えば、アップルが通販での同社製品の販売を停止するよう依頼したにもかかわらず、唯一4月下旬までネット通販を続けていた業界7位の上新電機。意向に従わなかったせいか、上新でiPadを扱えるのは直営約170店のうち、わずか1店。全店舗数では上新の半分以下に過ぎないノジマやPCデポでも2~4店。競合他社からも「アップルも極端なことをする」と驚きの声が上がる。
家電量販店は5月28日のiPad発売に先駆けて同10日に事前予約を実施した。だが2日後の午後3時、アップルから突然、「30分後には予約を締め切ってください」との連絡が入る。もちろん事前に入荷数量は知らせない。ある量販店の首脳は「あまりにも売る側への配慮がない」と憤る。改善を要望しているが、「のれんに腕押し」という。
販売ルートの絞り込みに向け、アップルは販売体制の抜本的な見直しにも着手した。
もともとアップルはキヤノンマーケティングジャパン、加賀ハイテックなど10社近くの中間流通業者を介して大小の数千店規模の販売店に商品を供給していた。しかし、今春からはヤマダ電機、ヨドバシカメラなど主要家電量販8社と直接取引を始め、ほかの取引のほぼすべてをダイワボウ情報システム、ソフトバンクBBの2社に集約した。
アップル日本法人の元幹部は「苦しいときもあれだけ世話になった取引先を切るなんて、いくら外資系でもドライすぎる」と指摘する。「あれだけブランド力が確立したのに地方の店で販売をやめるなんて消費者からひんしゅくを買うだけ。長年在籍した幹部が辞めるなど組織の流動化も激しく、日本市場に応じた営業戦略が立てられていないのではないか」(元社員)と指摘する声もある。取引を打ち切られたあるシステム系企業の社長は「アップルについて何も言うことはない」とぶぜんとする。
公取委は静観
こうしたアップルの営業姿勢に業界では「取引条件としては極端。独占禁止法に触れないのか」との声も上がる。
公正取引委員会は現段階では静観の構えだ。「専門店やネット通販といった流通経路は、アップルが営業施策として決められること」(取引企画課)としている。販売店絞り込みの行為自体が即座に独禁法に抵触することはないとの認識だ。例えば、化粧品では使い方を丁寧に説明するために、量販店に卸さず、百貨店にある専門店でしか扱わない商品もある。「ブランドを維持するということが目的であれば、客観的な事実だけみれば、アップルの件も化粧品と同じ」という。ただ、値崩れを防ぐために販路を絞り込んでいるなら、「独禁法に抵触する恐れがある」として、公取委はアップルの動向を注意深く見守る構えだ。
10年前の2000年、公取委はパソコン「iMac」「iBook」の価格を拘束していた疑いで独禁法違反に当たる恐れがあるとしてアップルの日本法人に警告を出した。当時もアップル側は「違反はない」と反論。あくまで在庫を圧縮し、リベートを排除した販売手法の結果だったとしている。
今回、アップルと交渉にあたった量販店幹部の1人は、「彼らはどんなに話を振っても小売価格については触れず、ブランドイメージの話だけを強調する。独禁法対策で、弁護士から指導を受けているとしか思えない」と明かす。
水道の水のごとく、消費者に手軽に商品を行き渡らせる「水道哲学」とは逆をいく「高級りんご哲学」――。ブランドを守るために、厳しいルールで市場に臨むのはおかしいことではない。持続的に利益をあげるためには、批判を浴びるぐらいの強い商品力を備えることも必要だ。ただIT(情報技術)産業は(人間の約18倍の速度で年を取る)マウスイヤーに例えられるように、あっという間に主役が交代する。ある家電チェーンの首脳は「今はアップルの要求をのまざるを得ないが、iPadに勝る製品はいずれ出てくる。そうなれば違う対応も考えられる」と主導権の奪還に意欲をにじませる。アップルと量販店との力関係は、その時点でどちらが消費者を味方に付けられる企業力を持っているかにかかっている。
世界の富裕層14%増 09年末 中国など躍進、日本は1%増どまり
世界の富裕層が2009年末に1119万人と1年前から14%増えたことが、米ボストンコンサルティンググループが公表した調査で明らかになった。経済の高成長や昨年の株高を追い風に、国別で3位の中国などアジア勢の躍進が目立つ。日本は世界2位の座を維持したが、1%増と主要国で最も低い伸びにとどまった。
調査は金融資産を100万ドル(約9100万円)以上保有する個人を富裕層と定義。首位の米国は15%増の471万人と世界全体の4割強を占めた。株式相場の上昇で金融資産が増えたようだ。2位の日本(123万人)に続き、3位の中国は31%増の67万人だった。
中国製造業に賃上げ広がる 日本の電機、対応に苦慮
【台北=新居耕治】中国の製造拠点での賃上げが広がりをみせている。発端となったEMS(電子製品の製造受託サービス)最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業は約1カ月にわたって従業員の相次ぐ自殺への対応に揺れ、大幅な待遇改善に踏み切った。賃上げの波及は続いており、中国生産への依存度を高める日本の電機業界などは戦略の見直しを迫られそうだ。
「中国の低賃金に頼ることはもうできない。賃上げは我々だけの問題ではない」
鴻海の董事長、郭台銘は8日こう語り、賃上げの動きが中国全体に広がると強調した。約1カ月の模索の末、2度にわたる合計2倍超の賃上げを決断。この日、3時間半に及ぶ株主総会を乗り切った直後だった。
震源は中国子会社、富士康科技集団(フォックスコン)の深センの工場群(広東省)。米アップルの「iPad(アイパッド)」や「iPhone(アイフォーン)」の生産を一手に引き受け、今年のグループ売上高が7兆円を超えるとみられる鴻海の主力拠点だ。
合計45万人が働く工場はさながら巨大な町。敷地内には工場や宿舎、商店がすき間無く立ち並ぶ。香港メディアは「現代の紫禁城」と呼び、郭を皇帝に例える。ここで今年に入り連続飛び降り自殺が発生。5月上旬から中国メディアで大きく報じられたのだ。
事件の背景として労働環境の悪さを指摘する報道が続き、株価も下落。郭は自家用ジェット機で台北と深センを何度も往復した。「従業員の自殺を伝える電話のことを考えると夜も眠れなかった」
自動車にも波及
深セン工場の宿舎に泊まる夜が続く中、郭が出した答えが、大幅賃上げと残業時間の最大3時間への短縮だった。郭は賃上げによるコスト上昇について「顧客も理解してくれると信じる」と発言。アップルなどに生産受託料の引き上げを求める可能性に言及した。
鴻海の問題が表面化したのとほぼ同時期にあたる5月17日。広東省にあるホンダの変速機工場が止まった。賃上げを求める突然のストライキで、ホンダが中国に持つ完成車工場の一時停止にまで至った。EMSなどに比べ、待遇が良いと言われる自動車産業でのストは波紋を呼ぶ。携帯電話部品などを生産する台湾の美津実業も従業員のストを受け、深セン工場での賃上げを受け入れた。
賃上げの動きはどこまで広がるのか。コスト低減を狙ってEMSへの委託比率を引き上げてきた日本の電機メーカーには深刻な問題だ。
液晶テレビの外部生産委託比率を2009年度の2割強から10年度に4割まで引き上げるソニー。液晶テレビだけでなく、デジタルカメラ、ゲーム機など幅広い製品を外部委託しており、その多くを鴻海に任せている。だが、現地から十分な情報を得られず、明確な対応策を決めかねているもようだ。
コスト削減急務
賃上げの一部が受託料の引き上げという形で転嫁されれば、新たなコスト低減策を探る必要が出てくる。外部委託比率が高いデジカメメーカーは「EMSと協力して設計効率化や調達改革を進め、労務費の安さに頼らないコスト低減策を練る必要がある」と強調する。
東南アジアの拠点との分業を模索する局面も出てきそうだ。ハイテク調査会社テクノ・システム・リサーチのアシスタントディレクター、大森鉄男は「長期的に賃金上昇が続く場合は、脱・中国を視野に入れた生産体制を検討しなければならないだろう」と指摘する。
ただ、根本的な問題は電機メーカーの利益率の低さにある。アップルのように独創的な商品・サービスを開発したり、携帯電話事業の統合交渉に入った東芝、富士通のような事業再編をさらに進めたりしなければ、アジア地域の人件費上昇に悩み続ける状況からは抜け出せない。
三洋電機、次世代の太陽電池を13年度に商品化 変換効率23% 三洋電機は世界最高の発電性能を持つ次世代の太陽電池を2013年度に商品化する。セル(発電素子)が光を電気に変える効率を量産レベルで従来品の約20%から23%以上にする計画。21%台で現在首位の米サンパワーを抜く。セルの厚みも約半分にし材料費も抑える。パナソニックグループが15年度に世界シェア3位入りをめざすための戦略商品となる。
新製品は三洋独自の「HIT太陽電池」を基に開発する。HITはシリコンウエハーとシリコン薄膜を重ねた構造。新製品では薄膜の高品質化やウエハーの清浄化などにより、接合面で電気が消失するのを抑える。太陽光の吸収率を上げる技術や、発生した電気を効率よく電極に集める技術にもメドを付けた。
一方で、独自の薄型化技術を使い厚さを約100マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルに抑える。シリコンの使用量が減ることで、生産コストを削減できる。
神戸市の研究所で量産に向けて最終調整した後、12年度末にも量産を始める。当初はパナソニックの兵庫県尼崎市のプラズマパネル工場内で生産する方針で、13年度以降にハンガリーや米国など、海外での生産も検討する。
三洋はこれまでも変換効率の向上に取り組んできたが、過去5年間の成果は通算1ポイント未満だった。新技術の導入で高性能化のスピードを速める。
【W杯】韓国で爆発的視聴率50・7%! 対ギリシャ戦
【ソウル=水沼啓子】サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会で1次リーグ突破を目指す韓国は12日、初戦をギリシャに2-0で圧勝し、韓国中が初勝利の祝杯ムードに酔った。韓国の応援団“赤い悪魔”たちが赤いTシャツを着込み街に繰り出して応援する、おなじみの光景も、ソウル市庁前広場など各地で見られた。
この日の試合を単独で衛星中継した韓国の民放テレビ、SBSのソウル地域での視聴率は48%を記録した。後半7分、キャプテンの朴智星が3大会連続ゴールを決めた午後9時37分の視聴率は50・7%に上った。
日証協、社債売買の価格透明に
時価などネット開示 活性化へ制度整備 低格付け債の発行後押し
日本証券業協会は社債市場を活性化するため、社債の時価情報開示を柱とした制度整備に乗り出す。社債の取引価格を毎日ネット上で公表するほか、低格付け社債については金融機関が投資家に代わって経営を監視する仕組みを導入する。市場の透明性を高めて内外の投資家が社債を保有しやすくし、幅広い企業に資金調達の機会を与える。米国の10分の1程度にとどまる社債市場の拡大を目指す考えだ。
日証協は今月下旬に、時価情報開示などの市場改革案を決定。金融庁や法務省、日本公認会計士協会とも連携し、年末から実施していく方針だ。
日証協は現在、証券会社から情報提供を受け、発行後の各銘柄の「参考価格」を公表している。ただ、参考価格と実際の取引価格の違いが大きいとの批判がかねてある。
米国では約3万銘柄の社債の取引価格を個人投資家が無料で見られるようになっている。英国でも発行額の大きい社債について、取引価格情報が毎日公表されている。
日証協は来年中にも、売買の多い社債の取引価格をネット上で1日1回公表。段階的に対象銘柄や公表の回数を増やす。企業の財務状態などに応じて日々変わる社債の時価がわかるようになれば、個人投資家でも機動的に売買し、損益を確定できるようになる。
現在は発行の道が事実上閉ざされている低格付け企業の社債発行も後押しする。信用力の低い企業には財務状態を監視する社債管理会社を必ず付ける仕組みを検討。管理会社となる金融機関が投資家の代わりに、企業の財務状況をチェックし、必要に応じて経営情報の開示を求める。破綻した場合でも適切に債権を保全・回収し、投資家が他の債権者より不利な扱いを受けないようにする。
さらに、引受証券会社の審査作業の見直しなどにより、発行手続きを簡素にする。社債が発行可能な期間が年間で7~8カ月にとどまっている現状を改め、9~10カ月程度発行が可能なようにする。資金需要のある企業が素早く社債を発行できるようにして、市場の拡大につなげる。
証券界が社債市場の改革に踏み切るのは、国内の社債発行残高が59兆円(2009年末)と、米国(約620兆円)の10分の1以下に低迷しているためだ。発行企業が一部の高格付け企業に偏り、資金調達手段として定着していない。個人や海外投資家の保有割合も1~2%程度にとどまる。
政府は今月1日から、海外投資家が保有する社債の利子を原則非課税にした。社債市場に海外からも投資マネーを呼び込む狙いがある。日証協は政府と足並みをそろえつつ、改革案の実行で新たな企業や投資家を社債市場に定着させる考えだ。
地方公務員共済のホテル、赤字穴埋めに巨額公金
総務省所管の「地方公務員共済組合」が経営するホテルの赤字を穴埋めするため、自治体が拠出した公費で不適切な補填(ほてん)を続けていることが、同省の調べでわかった。
2004~08年度だけで総額193億円に上り、組合員の積立金からも同額を投入していた。補填は約40年間にわたり続いており、公費だけで700億円以上がつぎ込まれたと試算している。同省は、不採算ホテルの閉鎖など抜本的な改善を指導する方針だ。
同省によると、組合が経営するホテルの赤字総額は04年度以降、毎年65億~97億円。08年度は91か所のホテルのうち、黒字は2施設。赤字穴埋めのため、公費35億円と職員の共済積立金35億円の計70億円が76施設に投入された。
最高は、当時、37施設を所有していた、道府県職員が加入する「地方職員共済組合」の11億8200万円。
補填は、人間ドック受診費用など組合員の健康増進のための資金を管理する経費や、組合員の住宅ローン資金を管理する経費から繰り入れ名目で行われた。いずれも自治体が拠出している公費と、組合員の積立金で折半して賄われている。
組合からホテルへの資金繰り入れについて、総務省は、割引料金で利用した組合員の宿泊費を補助する場合に認めているが、赤字穴埋めは対象外としている。同省は、補填は1960年代後半から行われているとしており、「公共のホテルであっても民間と同じように独立採算が原則。毎年赤字を垂れ流すような施設は廃止すべきだ」と指摘する。
北海道市町村職員共済組合は今年度から、赤字補填を取りやめた。経営していた二つのホテルの赤字は、毎年計1億2000万円前後。実際には赤字額を上回る資金を組合から繰り入れてきたが、「公費投入は住民の理解を得られない」と判断した。3月末で閉館した札幌市のホテルは、12年前に35億円を投じて建て替えたばかり。だが、売却額はその10分の1程度だった。
土居丈朗・慶大教授(財政学)の話「赤字を公費で埋めるという考え方は不適切であり、非効率な経営につながる。公的な組織がホテルを持つ必要性も希薄で、事業自体を見直すべきだ」
メキシコ湾原油流出、英BPの負担「数兆円か」
【ロンドン=是枝智】米ルイジアナ州沖のメキシコ湾の原油流出事故で、施設を運営する英石油大手BPが信用失墜のがけっぷちに立たされている。
4月20日の事故発生から2か月近くも原油流出は止まらず、環境汚染が深刻になり、株価も急落した。
米国ではBPへの批判が強まり、政治問題にもなってきた。
BPは国際石油資本(メジャー)の一角で、英国を代表する企業グループだ。これまでに負担した費用は14億ドル(約1300億円)を超えた。最終的な負担額は「数百億ドル(数兆円)に達する」との見方もあり、年間の純利益(2009年は約166億ドル)を大幅に超える可能性がある。BPの全世界での石油販売量の4割を占める米国市場での企業イメージの悪化は、流出事故が止まった後も経営に打撃となりそうだ。
英国のキャメロン首相は11日、BPのカールヘンリック・スバンベリ会長に電話した。首相は、BPの事故対応に不満を見せながらも、「BPが強く安定した企業であることがみんなの利益だ」と伝えた。
キャメロン首相は12日にオバマ米大統領とも電話で会談し、対応を協議した模様だ。
一方、日本企業でも、三井物産子会社の三井石油開発が、油田開発に参画しており、費用負担を求められる可能性がある。
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