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民主議連“乱入”でどうなる携帯向け放送の電波争奪戦
 2011年7月に終了するアナログテレビ放送用電波の空き地を利用して2011年度にも始まる予定の携帯端末向け次世代放送。現在、NTTドコモと民放テレビ局などが主体となるマルチメディア放送(東京・千代田)と、KDDIと米クアルコムがタッグを組むメディアフロージャパン企画(東京・千代田)が周波数獲得に向けて激しいバトルを展開している。ここに思わぬ伏兵が割って入り、事業者選びは一段と混沌(こんとん)としてきた。
 今回の周波数帯は、VHF帯の207.5MHzから222.0MHzまでの14.5MHz幅で、事業者1社だけに与えることが総務省の開設指針として示されている。2陣営はこの1枠を巡って、総務省の2回の公開説明会や1回の非公開ヒアリングで譲らない議論を繰り広げてきた。
 2陣営の主張を整理するとこうなる。まず設備投資について、マルチメディア放送は「東京スカイツリーにアンテナを設置するなど大電力方式で電波を送出することで設備コストを438億円に抑え、安価なサービスを開始する」とコストメリットを強調する。一方、メディアフロージャパンは「有料サービスなので、いつでもどこでも受信できなくてはならない。設備コストは961億円かかるが、屋内でも確実に受信できる性能を確保する必要がある」と訴えている。
 料金については、マルチメディア放送陣営のNTTドコモが「(現在、サービス提供している動画配信サービスの)BeeTV(ビーティービー)が成功したのは、315円という価格設定が絶妙だったから。次世代放送も月額300円程度の価格に設定するため、設備コストを抑える必要がある」と説明。これに対してメディアフロージャパンは「事業者の創意工夫を生かせる枠組みが必要。多様なサービスが登場するのであれば月500~800円程度でも問題ない」と反論している。
2陣営の発言、泥仕合の様相も
 双方とも論旨は明確で理もある。しかし公開説明会や非公開ヒアリング、その後の囲み取材で耳にする両者の発言はこれだけで終わらず、まるで泥仕合のような様相を呈す場面も少なくなかった。
 一方が「そちらの受信感度のシミュレーションは間違っているのではないか」といえば、一方は「東京タワーにアンテナを新設するには鉄塔の耐震補強が必要で、間に合わないのではないか」といった具合で、両陣営とも相手側が出した開設計画の重箱の隅をつつこうとする。そこには「次世代放送でユーザーの生活を変える」とか「新たなメディアでコンテンツ市場を活性化させる」といった前向きな姿勢は皆無で、双方の発言にがく然とさせられることが何度もあった。
 原口一博総務相は8月中にも周波数を割り当てる事業者を決めるとの方針を打ち出している。しかし、両陣営に明確な優劣を付けるのは難しく、1社に絞る作業は相当な苦労を伴うと見られる。実際は電波監理審議会の答申を受けて総務省が決めるのだが、どちらに割り当てたとしても遺恨が残る展開となるだろう。
「なぜ1事業者?」とちゃぶ台返し
 こうした状況のなか、突如として議論に割り込んできたのが、民主党の情報通信議員連盟だ。8月3日、総務省とマルチメディア放送、メディアフロージャパンの3者を呼んで作業部会を開催した。
 ここで議員たちから飛び出したのが、ちゃぶ台返しのような「なぜ1事業者にするのか」という疑問だった。勝又恒一郎衆議院議員は「電波監理審議会が正当に判断できるかは疑問。政府がそこまで決めてしまうのがよいことなのか」と発言した。
 さらに元財務官僚の岸本周平衆議院議員は「これまで官僚は誰一人として責任を取ってこなかった。私は元官僚だから手の内はよくわかる。審議会という隠れ蓑(みの)を使って政策を決定するのでは公平といえない。2社に競争させて設備投資をさせれば、雇用も生まれ景気対策にもつながる。従来通りに進めてしまっては政権交代した意味がない」と総務省を一喝した。
 この指摘に対し総務省は「周波数帯を2事業者に割り当てれば、利用できる帯域幅が半分になり、インフラは二重投資になる。同じ番組が両方のインフラで配信される可能性がある一方で、片方では他方の番組を見られないということもある。様々な関係者にヒアリングして、最善策として1事業者に割り当てる方針にした」と説明した。
競争促進に反する不可解な決定
 しかし、そもそも携帯端末向け次世代放送の免許は、多くの関係者が2事業者に割り当てられると認識していた。ところが、いつのまにか総務省の開設方針が「1事業者」となり、両陣営が入り口で争うことになったのだ。
 2事業者がサービスで競えば、コンテンツの提供料金にも競争原理が働き、ユーザーが手ごろさを感じる水準に落ち着くはずだ。NTTドコモの山田隆持社長は「月額300円程度にするには設備投資は安価でなくてはならない」と主張するが、ユーザーに使ってもらおうと思えば、設備投資も料金も抑えつつサービス内容の向上を目指さざるを得なくなるはずだ。
 両陣営はこれまでの議論で、互いのネットワークの「受信できないエリア」を指摘し合ってきた。しかし、2事業者が競争する環境になれば、言われなくても自陣営の圏外エリアを解消しようとする力学が働くだろう。つまりネットワーク、料金、コンテンツのどれも、2事業者が競争すれば、自ずとユーザーの支持を得るべく品質が高まっていくのは明らかだ。
 技術的に見ると、14.5MHz幅という周波数帯のうち、メディアフロージャパンが推すMediaFLO方式は米国の例では6MHz幅があればサービスを提供できる。マルチメディア放送のISDB-Tmm方式も、技術仕様によれば最小約5.6MHzあれば十分とされている。つまり、2事業者がサービスを提供してもなんら問題はないのだ。
 総務省はここ数年、番号ポータビリティー制度やMVNO(仮想移動体通信事業者)の参入促進、端末を他の通信会社でも使えるようにするSIMロック解除の導入など、携帯電話業界の競争促進に向けた政策を躍起になって展開している。しかし携帯端末向け次世代放送では、1事業者に絞り競争環境をあえて排除しているように見える。この姿勢はまったく不可解だ。
電波オークションにらむ民主
 民主党議連の“乱入”により降ってわいたような「2事業者への割り当て」案に、NTTドコモは「利用できる帯域が半分になるため、委託(放送事業者)向け料金が上昇する可能性がある」と難色を示す。一方、KDDI側は「2者への割り当てであっても参入したい」と前向きな意向を見せる。
 民主党は将来的に、電波免許の割り当てにオークション制度を導入することを視野に入れている。今回は時間的制約で難しいと見ているようだが、あえてこのタイミングで割って入ったのは、今後に向けたケーススタディーととらえているからだろう。
 まさかの民主党の介入によって、複雑さを増した携帯端末向け次世代放送の免許割り当て。現時点では、まったく先が読めなくなってしまった。「8月中にはメドをつけたい」と語っていた原口総務相が、今後どのような判断を下すのか。関係者にとっては、猛暑以上に寝苦しい夜が続きそうだ。



飲食店の喫煙、濃度規制導入へ 従業員保護で厚労省
 厚生労働省は、飲食店や宿泊施設の喫煙規制に乗り出す。接客する従業員の受動喫煙を防ぐため、室内のたばこの煙の濃度を一定基準以下に抑えるよう、法律で義務づける方針だ。十分な換気設備を調えるのが難しい場合は、禁煙を迫られることになり、多くの飲食店でたばこが吸えなくなる可能性が出てきた。
 厚労省は職場の受動喫煙対策を義務づける労働安全衛生法改正案を来年の通常国会に出す考え。すでに事務所や工場は原則禁煙とし、喫煙室の設置は認める方針が固まっている。焦点は飲食店など客が喫煙するサービス業の扱いで、たばこの煙に含まれる有害物質の空気中濃度を規制する方向で検討している。



ブラックベリー規制回避か サウジが合意と報道
 サウジアラビアでの高機能携帯電話(スマートフォン)「ブラックベリー」の一部機能の規制をめぐり、AP通信は7日、同国通信当局とブラックベリーを開発したカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)社が規制を回避することで合意に達したと報じた。
 APによると、サウジ当局がデータの監視ができるよう、RIM社が同国内にサーバーを置く。同様の規制を導入予定だったアラブ首長国連邦(UAE)やインドでの動きにも影響を与えそうだ。
 ブラックベリーは電子メールなどのデータが暗号化され、外国のサーバーにいったん送られる仕組み。UAEなどの当局は、データにアクセスできないため「国内法の規制が及ばず治安上の懸念がある」として、電子メールなどを規制すると発表していた。



財政健全化への要望強まる 国民もバラマキや財政危機を懸念 内閣府が国民生活世論調査
 政府に対し「財政健全化の推進」を求める人が急増していることが7日、内閣府の「国民生活に関する世論調査」結果で明らかになった。前年調査と比べて約5割も伸びており、過去最高。民主党政権のバラマキ政策への懸念の表れともいえそうだ。
 前年と今年の調査では、選択肢名が異なるため、単純比較はできないが、「政府に対する要望(複数回答可)」という質問に対し、前年調査で「財政構造改革」との回答は16・9%だった。これに対して、今年の調査で、「財政健全化の推進」と回答した人は25・5%に達した。
 このほかの要望では、トップが「医療・年金などの社会保障の整備」で69・6%(前年比1・2ポイント減)、「景気対策」が69・3%(同6・8ポイント増)。生活に直結する医療、年金などに関する項目が上位を占めるのは例年通りだが、国家財政への要望の伸びは異例。赤字財政の常態化にもかかわらず、民主党政権が子ども手当や農家への戸別所得補償などを強行したことが影響しているとみられる。
 調査は6月3~20日、全国の成人男女1万人を対象に実施。有効回収率は63・6%だった。



高齢者医療制度で公聴会 新制度案に批判相次ぐ
 厚生労働省は7日、75歳以上を対象とする「後期高齢者医療制度」を廃止した後の新制度案(中間報告案)について、一般公募の市民を集めた公聴会を開いた。参加者からは民主党政権の新制度案に批判が続出。出席した長妻昭厚生労働相が強調した「野党側の理解」が得られる見通しもなく、新制度をめぐる厳しい状況が改めて浮き彫りとなった。
 公聴会では高齢者や健康保険組合の関係者など約100人が6グループに分かれて議論し、長妻氏とも意見交換した。
 厚労省の新制度案は、75歳以上の高齢者は国民健康保険(国保)か健康保険組合などの被用者保険に加入し、国保の高齢者部分は別勘定とすることが柱。参加者からは「みんなの負担が下がっていいことばかりだと言っているが、財源はどうするのか」などとの指摘が相次いだ。「後期高齢者医療制度がスタートしたときは騒がれたが、最近は落ち着いてきた。制度がころころ変わると分からなくなる」との批判もあった。
 これに対し、長妻氏は「ねじれ国会なので、野党にも丁寧に説明して理解を得る。政権交代しても変わらない仕組みにしたい」と説明した。



日経社説
ソフト面に知恵絞り新興国需要を拓け
 新興国のインフラ受注競争が激しさを増している。日本企業の技術への評価は高いが、ものづくりの力があっても受注に結びつけられなければ意味はない。インフラ需要を拓(ひら)くには、現地の要望に合わせたソフト面に知恵を絞るときだ。
 アジア開発銀行によれば2010年から20年までにアジア域内だけで8兆ドル(約680兆円)のインフラ投資が必要になる。中心は新興国と途上国である。
人材育成に力を入れよ
 日本としては、まず新興国や途上国が何を求めているか見定め、応えることが必要だ。自国の産業を担う技術者の養成はニーズが高い。
 この点で台頭してきた韓国勢の手法は注目に値する。アブダビの原子力発電所の商戦に勝った後も、6月にトルコ政府と原発事業で協力する覚書を結び受注が有力になった。
 アブダビのケースでは60年にわたる原発の運転保証が受注の決め手になったが、相手国の人材育成を積極的に手助けする点も韓国の強みのひとつだ。原発受注の中心となる韓国電力公社は来年、原子力技術を教える大学院を釜山に設け、アジア、中東などから学生を受け入れる。
 アブダビへは理工系大学の韓国科学技術院が現地大学に原子力工学の講座を開き、教員を送った。今年1~6月の韓国の海外発電所・プラント受注額は前年同期の4.9倍だ。
 日本ではプラント建設会社、日揮のサウジアラビアでの活動が好例だ。08年に現地に天然ガスなどの中小規模のプラント工事会社、JGCガルフインターナショナルを設立。サウジアラビア人社員に配管の設計や電気・機械技術を教えている。
 サウジは石油以外の産業振興を急ぎ、技術者育成の協力要請に日揮が応えた。JGCガルフ社には約100人の大卒技術系社員が在籍し、今後増員する。日揮は支援を通じ国営石油会社サウジアラムコとの関係を深め、プラント商談を活発にした。
 15年後には世界の原子力技術者の半数が高齢のため第一線を退く。新興国では自前で技術者を育てる必要性が高まる。原子力分野の人材養成へも、もっとかかわるべきだ。
 多くの新興国では設備の運転や修理の技術を十分に身につけていない。それらを設備と一緒に提供するのが重要である。
 上下水道設備など水関連のインフラは新興国需要が増え、経済産業省によると20年の世界市場は07年の36兆円から72兆円へと2倍になる。設備の運営・管理サービスが32兆円を占め、ソフトの需要が急増する。
 そこで東洋エンジニアリングなどはベトナム・ホーチミン市での上水道施設の商戦で、水道を運営する大阪市と組む。設備の運営も請け負って受注をめざす。公共サービスを営む自治体との連携も役立つ。
 技術革新がすすむなか、設備の保守や修理にも専門技能が要る。サービス面の要望も強まっている。
 三菱重工業は、発電機を動かす力をつくり、発電所の中核設備となるガスタービンの保守管理体制をこの10年で整えた。設備を点検し部品を取り換えるサービス拠点を南北米州、欧州・中東にも設け、域内に常駐の技師を置いた。
 ガスタービンは発電機に伝える力を大きくするため以前より高温高圧の設備になり、部品は十分に保守点検しないといけない。三菱重工は電力事業者を日本に招き、故障時の応急対策などのセミナーも開催。ガスタービンではメキシコで5割、インドネシアで4割のシェアを握る。
現地企業とも連携を
 その国の事情に通じた現地企業と組む必要もある。中国政府は11年までの3年間に、電子カルテシステムなど医療分野の情報化に8500億元(約10兆7千億円)を投資する。同時に主要な医薬品を保険の対象にするなどの医療制度改革を進める。
 この情報インフラ需要を獲得するには中国の医療保険制度に熟知することが欠かせない。NECは中国の有力な医療情報システム会社、重慶中聯信息産業(重慶市)と提携した。電子カルテや医療事務のシステムを設計・提案する要員として中聯社の社員を中心に現在30人を確保し、12年には100人に増やす計画だ。
 インドでは4カ所で次世代送電網や水道の建設などの大型プロジェクトを日本の企業連合が優先的に取れることが内定している。デリー―ムンバイ間の貨物専用鉄道の建設に日本政府が資金面で協力する見返りだ。インド西部のグジャラート州では三菱重工などが太陽光発電や都市交通の整備を計画している。
 日本企業が勝つため経済外交は重要だ。そのうえで継続して受注できるかどうかのカギは、企業が現地のニーズに応え信頼を得られるかだ。
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