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音楽業界を牛耳るiPodやiTunesストアを脅かす
インターネットラジオ「パンドラ」の秘密
 インターネットラジオ「Pandora(パンドラ)」の露出度が高まっている。ラジオなど、古くさいメディア。それが今頃人気になることなどありえないと、思われるだろうか。だが、それは早とちりだ。
 パンドラは、インターネット経由で好きな曲を聴けるサービスで、iPhoneやアンドロイド携帯用のアプリもあり、いずれも人気を呼んでいる。先だって発表されたソニーのグーグルTVにも搭載されているほか、来年にはフォードやメルセデスの新車にも登場する。新しいタイプの音楽体験として、世間の注目度は高い。
 パンドラ人気の背景にはもちろん、車を運転する時間が長いというアメリカ特有の事情があるだろう。統計によると、アメリカ人は毎週平均17時間ラジオを聞いているが、その半分は車の中。ちょうど日本のサラリーマンが通勤時間中に携帯電話に見入っているように、アメリカ人はラジオに耳を傾けているのだ。
ユーザーが自分で気に入ったラジオ局を構築できるサービス
 だが、もうひとつの人気の理由は、もはや単純なラジオとは呼べないような仕組みが、パンドラにあることが挙げられる。
 パンドラの特徴は、ユーザーが自分で気に入ったラジオ局を構築できることである。ユーザーはまず、自分の好きなアーティストや楽曲を選び、そこへどんどん曲を加えていくことができる。その時に役に立つのが、パンドラが独自に開発した音楽検索のしくみである。
 この音楽検索は、「ミュージック・ゲノム・プロジェクト」というパンドラの楽曲分析技術に基づくもの。あるひとつの曲を複数の項目に分類して、いわばその楽曲のDNA(遺伝子) 構造を特定するようなものだ。曲の流れ、リズム、ハーモニー、歌詞、ヴォーカルのタイプ、楽器など、分類項目はおよそ400にも及ぶ。
 その分類方法に従って、パンドラは最初に選んだ曲に似た他のアーティストの曲や、同じようなメロディーを持つ楽曲を選び出してユーザーに推薦してくれるのである。ユーザーはそうしたお薦めを元にして自分のコレクションを作り、ジャンル別、アーティスト別など自分だけのラジオ局を100までつくることができる。その時の気分によって好きなラジオ局をクリックすれば、あとは気に入った曲、知らなかったけれどいい曲などが、次々とプレーされるという仕組みだ。
 パンドラという会社もユニークである。社員は現在120人。その99%が、現在あるいは過去にプロのミュージシャンだった経歴を持つ人間や、音楽の専門教育を受けた人間で、まさに音楽の専門組織とも言える。
 よく音楽サイトやCD購入サイトでも「お薦め」が出るが、それは「この楽曲を買った他のユーザーは、この曲も買っています」というもの。つまり、そのリコメンデーションは、自分と同じ普通のユーザーの集団的経験に基づいているわけだが、パンドラの場合は違う。鋭い耳と深い知識を持つ音楽のプロがそれをやってくれるのだ。
ベーシックサービスは無料、有料サービスでも年間36ドル
 ところで、2000年に創設されたパンドラは、長い間ビジネスの芽が出ないままだった。ベンチャーキャピタルから受けた資金も使い果たし、一時は社員の給料も払えない状態が続いたが、その窮状からパンドラを救ったのは他でもないiPhoneだった。パンドラがリリースしたiPhone用のアプリが大人気を呼んで、同社は息を吹き返し、その後ユーザーを加速度的に増やして、ビジネスも新しい局面に突入したのだ。
 現在の登録ユーザー数は1億人。昨年の収入は1昨年の倍以上増えて5000万ドル。今年は、さらに加速的に拡大して1億2500万ドルを見込んでいるという。
 面白いのは、アップルが現在iPhoneやiPad、iTunesストアなどで主導権を握っているインターネット音楽の世界を、パンドラが脅かす可能性もあることだ。 なんといっても、パンドラのベーシックサービスは無料だ。1ヵ月に40時間までの利用が可能。1時間に3つのコマーシャルが入ることや、1時間以内に6回以上曲を飛ばすことができないといった制限はあるものの、ユーザーは100万曲近いパンドラのライブラリーから何でも好きな曲を聴くことができる。40時間を超えると、99セント払うだけで1ヵ月の残りの時間を同じ条件で利用が可能だ。
 有料サービスは年間36ドル。こちらは広告も入らず、上記のような制限がないというピュアな音楽局となる。アップルのiTunesストアの値段は、1楽曲あたり69セント~1.29ドル。無制限に音楽を聴きたい場合は、実はパンドラの方がずっと安くつくだろう。
 パンドラのお勧めの音楽が気に入るかどうかは、相性の問題かもしれない。だが、インターネット上にラジオ局を作って、そこから自分向けに局をストリーミングするという方法は、従来のラジオ放送とも音楽のダウンロードとも異なるまったく新しいモデル。また、ユーザーの属性や好みを特定できる点で、広告主からの注目も大きく、パンドラはすでにメジャーなブランドを集めている。
 音楽ビジネスの新興勢力がもうひとつ出現したことを、よく見極めておくべきだろう。



電子書籍の貸し借り可能に アマゾンが新サービス
 【シリコンバレー=奥平和行】米アマゾン・ドット・コムは22日、電子書籍端末「キンドル」向けに販売したコンテンツを、購入者が友人などに貸すことができるようにすると発表した。年内に新サービスを始める。紙の本では友人らとの貸し借りが一般的なため、電子書籍でも同様のサービスを追加することで利便性を高める。
 電子書籍端末のほか、キンドルに対応したソフトを組み込んだパソコンや高機能携帯電話(スマートフォン)などとの間でも貸し借りができるようになる。コンテンツを貸すことができる期間は14日間で、その間は購入者自身はそのコンテンツの閲覧ができなくなる。
 また、著作権を持つ出版社等が同意しないコンテンツについては、新サービスの対象にならない。同様のサービスは米書籍販売大手のバーンズ・アンド・ノーブル(B&N)も、既に電子書籍端末「ヌック」を対象として始めている。



東京都が「電子図書館」 大日本印刷が協力 文芸書など無料配信
 東京都は11月下旬、パソコンを使って読む電子書籍のインターネット配信を始める。著作権が切れたり、出版社から無償提供を受けたりした文芸書や資格試験の問題集など約1千点が対象。本の電子化技術を持つ大日本印刷が協力する。電子図書館サービスと位置付け、都民が無料で利用できるようにする。
 都立中央図書館(港区)が都民からモニター1千人を募り、試験的に実施する。大日本印刷が電子化する書籍について、出版社などと調整しており、数社から許可が得られる見通しという。
 一部には簡単な操作で本人の代わりに音読する機能などを付け、高齢者らが利用しやすくする。複製を防ぐため、ダウンロードや印刷に制限をかける。利用状況などを踏まえ、2012年度にも本格的に電子書籍の配信を始める計画だ。
 公共図書館では国立国会図書館が明治・大正期の作品を中心に、書籍のページをそのままスキャナーで読み取った画像を配信している。公共図書館が本格的な電子書籍をネット配信するのは極めて珍しいという。



クーポン共同購入に参入 電子マネー「エディ」運営会社
 楽天子会社で電子マネー「エディ」を運営するビットワレット(東京・品川)は、格安クーポンの共同購入サービスを始める。まず25日から12月上旬までの期間限定で、飲食店などが割安に利用できるクーポンを販売する。同社は電子マネーの決済手数料が収入の大半を占めるが、新規事業で収入源の多角化を目指す。
 25日から東京、愛知、福岡の3都県で始める。クーポンを使えば飲食店などが通常の半額以下で利用できる。クーポン購入は、携帯電話の「おサイフケータイ」機能を使って、インターネット上でエディで決済する。クーポンは週ごとに変え、期間内に一定人数の購入希望者が集まった場合にのみ販売する。



iPhoneで介護記録 現場の負担軽減
 システム開発のユニバーサルソリューションシステムズは、高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」で介護記録を入力できるシステムを業界で初めて開発、年内にも販売を始める。同社は携帯情報端末などによる介護記録システムをすでに実用化し、400施設以上の納入実績がある。アイフォーンの採用で利便性を一段と高め、2014年3月期までに5000施設への納入を目指す。
 介護記録は、要介護者に行った入浴や食事などの介護情報を施設内の介護スタッフ全員が共有し、効率よく介護を行うために活用される。介護保険請求の基本情報でもあり、介護施設の運営に欠かせない。だが、現在は紙に手書きで記録する施設が多く、現場の介護スタッフに負担がのしかかる。
 新システムは、アイフォーンの画面に指で触れるだけで必要項目を入力できるため、介護記録に要する労力と時間を大幅に軽減できる。入力情報はネット経由で同社のサーバーに蓄積され、システムを導入した施設は情報の共有と管理を容易にできる仕組みだ。入力項目のほかに、注釈などを音声で残せる。
 システムの利用料金は、1施設内1サービスごとに初期費用5万2500円、3端末まで月額1万8900円。



日経社説
首相は環太平洋経済協定に参加決断を
 米国やオーストラリアなど9カ国が交渉を進める環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)をめぐり、民主党内の意見が割れている。菅直人首相は所信表明演説で交渉参加を検討すると明言したが、農産物市場の開放に反対する議員グループが結束して抵抗している。
 このまま路線対立が長引き、意思決定が遅れれば、日本は世界の自由貿易協定(FTA)競争から完全に取り残される恐れがある。TPP交渉への参加問題は、日本経済の将来を左右する重大な岐路である。菅首相は、いまこそ交渉への参加を政治決断すべきだ。
 TPP交渉を重要政策に掲げる米国は、日本に「ぜひとも参加してほしい」と求めているわけではない。オバマ政権の支持基盤である労組はむしろ貿易自由化に消極的だ。
 米国内ではオバマ政権の支持率低下が目立ち、11月の中間選挙で民主党の敗色が濃厚とされる。農業問題を抱え、厄介な交渉相手となる日本を無理に誘い込む余裕はない。
 だが日本にとっては、米国を核とする枠組みへの参加は死活問題である。日本と産業の得意分野が重なる韓国は、米国、欧州連合(EU)とのFTA交渉を既に終えている。
 米欧との協定がないままでは、日本企業は韓国企業と対等に競争できない。日本から海外への工場移転にも拍車がかかり、国内雇用を損ないかねない。競争力の源泉である技術の流出が進む懸念もある。
 TPPへの日本の参加は、日米FTAと同等の意味がある。日米同盟のきずなは太くなるはずだ。台頭する中国への対抗力を高めることもできる。日本とのFTAに消極的なEUや韓国を刺激し、交渉の座につかせるきっかけにもなるだろう。
 TPP交渉は既に始まっている。現在の参加国による交渉が進んだ後では日本の主張を反映できなくなる。11月中旬に横浜で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)が、参加表明の唯一の機会だと考えるべきだ。判断の先送りは許されない。
 参加するための条件は明白だ。農産物の関税削減に備え、農業改革に道筋をつける必要がある。現行の農家への戸別所得補償制度は、ばらまきの色彩が濃い。これを見直し、農業生産性を高める政策をTPP参加表明と併せて打ち出すべきだ。
 全品目での関税の即時撤廃が原則とされるが、米国や他の参加国にも実質的な例外品はある。国内改革を急ぎながら、貿易自由化の速度を調節すればよい。菅首相の国内指導力と、対外交渉力が問われている。
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