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スクエニHD、FF14がめざす新たな挑戦
 9月22日午前0時過ぎ。東京・秋葉原のゲームソフト販売店の店頭に数百人が並んだ。スクウェア・エニックス・ホールディングスの最新作「ファイナルファンタジー(FF)14」を買い求める列だ。ソフト発売初日に行列ができるのはよくある光景だが、今回はスクエニHDにとって別の意味で勝負をかけた商品。これまでと違い、主要タイトルのなかでパソコン(PC)向けオンラインゲームとして先行投入した初めての作品だからだ。
 FF14の値段はオープン価格(実際の店頭販売価格は7000円前後)。初回プレー時から30日間は無料で遊べ、その後は30日単位で利用料が発生する。キャラクターなどの追加購入には別途費用が必要。ソフト販売時だけでなく、利用に応じてスクエニHDに収入が上がるしくみだ。
 スクエニHDが主力タイトルでPC用ゲームを投入したのは収益安定が1つの目的だ。一般にゲームソフト会社の収益はヒット作の有無で波が生まれやすい。セグメント別でゲームソフト販売が主力の「ゲーム事業」の収益をみると、2007年3月期から3年間の部門売上高は513億円、415億円、363億円と推移。ヒット作の状況次第でソフト売上高は変動するだけに、オンラインゲームなどで月々定期的に入る利用料収入は魅力的だ。
 ただ、オンラインゲームはファン層が固定化しており、国内では大きな伸びが見込みにくい。スクエニHDは02年、FF11でPC用作品を投入したことがある。同作品は「最高で登録ユーザーが50万人を超えた」(経営企画部)といい、一定の成果を収めた。主に同タイトルの運営が中心であるオンラインゲーム事業の09年3月期の売上高営業利益率は29%。会社全体の9%に比べ20ポイント高いが、利益は伸び悩んでいる。
 ゲーム専門誌のエンターブレイン(東京・千代田)によると、国内の10年度上半期の家庭用ゲーム市場規模は前年同期比13%減の1865億円と3期連続で減少。スクエニHDの地域別割合は、ソフト販売本数ベースで国内がここ数年は4割超を占めており、ソフト販売、オンラインゲームともに海外比率向上が大きな課題となっている。
 そこでスクエニHDは今回、オンラインゲームのFF14で英、独、仏語版を同時に投入。中国市場では、現地オンラインゲーム運営大手の盛大遊戯(上海市)と提携し、ソフトを投入していくと発表した。現時点で価格や販売時期は未定だが、同社に中国本土内での独占販売権を与え、ゲーム運営に必要なシステム管理も委託する見通しだ。
 新作を巡る盛大遊戯との提携効果はどの程度出るのか。UBS証券の中安祐貴アナリストによると、「(盛大遊戯の)有料会員数は1000万人を超えており、全ゲーム平均の月間利用料は6ドル強(09年7~9月期)」という。FF11に比べると、中国市場を取り込めた場合には今後の収益に大きく寄与する可能性がありそうだ。
 株式市場では「こうした取り組みはある程度材料視されている」(独立系調査会社TIWの鈴木崇生アナリスト)という。ゲーム関連株は、任天堂が9月末に新型ゲーム機「ニンテンドー3DS」の発売日を来年2月に遅らせると発表したことで下落傾向が続いているが、スクエニHD株は9月の高値圏に比べ約8%安と、バンダイナムコホールディングス(11%安)、ハドソン(14%安)に比べ下げ幅は小さい。
 株価が反転して上値を追うには「一連の取り組みが実際の収益に結びついているかを判断できることが必要」(中安アナリスト)という。来年2月前後に発表する第3四半期決算で、FF14に関する日米欧の売上高や会員数などの状況がどこまで伸びるかが最初の試金石となる。



フェースブック創業者がヒーローに 米国に新たな起業熱
 米国で新たな起業ブームが起きている。雇用情勢の改善が遅れるなか、独自のビジネスで成功する若者が増えているためだ。彼らのヒーローは世界最大の人脈サイト「フェースブック」の創業者マーク・ザッカーバーグ氏。20代で「ビリオネア(億万長者)」となり、半生が早くも映画化されたスター起業家の登場が、不況で沈んだ若者の心をかき立てている。
元弁護士志望のレブ・エクスターさんは、就職難の打開策としてカップケーキ会社を起業した
 「無職のまま時間を無駄にしたくなかった」。元弁護士志望のレブ・エクスターさん(26)がカップケーキの製造・販売業を立ち上げたのは、1年半前のことだ。
 ロースクール(法科大学院)の学生として弁護士を目指していたが、2008年秋の米証券大手リーマン・ブラザーズ破綻後の金融危機で状況が一変。2年間のインターン後に就職できると思った法律事務所から「採用がない」と告げられた。
「屋台」から出発
 起業資金10万ドルは、貯金と両親からの借金で調達。屋台風のトラック1台から始めたケーキ店は今ではトラック2台、店舗2店で販売するまでに成長した。従業員20人を抱える「社長」の重圧に悩むことも多いが「起業に後悔はない」と語る。
 今回の起業ブームの特徴は「不況対応型」の増加。起業初心者向け講座を開くデビッド・ロニックさん(43)によると、「少ない資金で効率的に起業するコツを学ぼうと、毎月定員があっという間に埋まる」。花形の職業を辞めてまで起業に賭ける若者も現れ始めた。
 ジェームズ・モランさん(28)は約3年前、世界的に有名な投資ファンドを辞め、安売り情報収集サイトを立ち上げた。「ウォール街のマネーゲームより、地元企業の活性化につながるサービスの方が社会の役に立つ」と感じたからだ。
高給を捨てて
 だが「投資銀行家」の肩書とケタ外れの高給を捨てたモランさんの選択を支持する友人は少なかった。最初の2年は給料ゼロ。もう1人の共同創業者と自宅でソフトウエア開発に明け暮れる日々。疎遠になった友人もいるが「誰にでも世界を変えるような製品を作ることができると証明してくれたヒーローの存在が支えになった」という。
 ヒーローとは、ザッカーバーグ氏や米ネット検索最大手グーグルの共同創業者ら、20代で起業し数年で世界一に育て上げた起業家たち。若者の間で彼らは「かっこいいお手本」であり、英雄だ。「自分と年の変わらない創業者が身近で革新的なサービスを生み出したことが、若者の起業熱を盛り上げている」と、ロニックさんは分析する。
 今月上旬、フェースブック起業の内幕を描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」が全米公開され、2週連続で興行収入1位に。製作した米ソニー・ピクチャーズの国際配給部門プレジデント、ローリー・ブルアーさん(57)は「こんなに反響が大きいとは」と驚く。
 1987年の大ヒット映画「ウォール街」の続編が同時期に公開されたが、ソーシャル・ネットワークは興行収入で上回り、米国人の関心が「金融」から「起業」に移っていることを印象づけた。
 「不況の時こそ起業」――。米国人が前向き思考を維持できるのも、挑戦や成功をたたえ、社会への貢献を善とする風土が変わっていないからだろう。



中国ネット人口4億2000万人 5年で4倍
 【大連=進藤英樹】中国でインターネット世論を形成するネット利用者は急増している。ネット関連団体、中国インターネット情報センター(CNNIC)の調査によると、ネット利用者数は2010年6月時点で総人口の約3分の1に当たる4億2000万人。05年12月時点の1億1100万人から5年足らずで4倍近くに増えている。
 ネット利用者を属性別にみると、反日デモ参加者に多いとされる層での普及が目立つ。10年6月時点で利用者の性別は男性が5割強で、年齢別では10~20代の若年層が58%を占める。職業別では学生が30.7%で、無職・失業中も4.2%あった。
 ネット世論が形成される場所のひとつが掲示板だ。中国では共産党の機関紙、人民日報のニュースサイト「人民網」内の「強国論壇」のほか、ポータルサイトが運営する「新浪社区」や掲示板専門の「天涯社区」で、市民が活発に意見を書き込んでいる。



民力低下 遅れた産業再編 危機なければ企業動かず
 バブル崩壊、日産ゴーン・ショック、金融と産業の一体改革、そしてリーマン・ショック……。激動の20年を経てもなお、ニッポン株式会社は高炉5社、電機10社、自動車11社を温存させてきた。人口減や資源高、新興国台頭を受け、企業には規模の拡大を通じたバーゲニングパワーの強化が必要なはずだった。活力回復への組み換えを拒んだ理由は何だったのか。
 1999年3月27日。小雨混じりのなか、東京・大手町の旧経団連会館は数百人のメディアでごった返した。「日産とルノー、力強い成長のために」。2兆5000億円の連結有利子負債を抱えた日産自動車と仏ルノーの資本提携を発表する記者会見場には、こんな言葉が掲げられた。ルノーから日産再建のために送られたカルロス・ゴーン社長(当時は最高執行責任者=COO)は5工場閉鎖、系列見直しなど欧米流の手法で業績をV字回復させた。
 その仕事ぶりには「剛腕」「冷血」などの批判も浴びせられた。だが一方で「変わろうとしない日本をたたき直してほしい」とエールを送る声も少なくなかった。大手金融機関の破綻や終身雇用制度の崩壊。そんな事態に陥っても行動しない政府や経営者への不満がうっ積していた。
 ゴーン改革は関連業種の再編も促した。取引先の絞り込みによる玉突きで、2002年に鉄鋼2位、3位のNKKと川崎製鉄が経営統合を決断する。日産系の部品メーカーも統合や他社系列への組み換えが一気に進んだ。
 03年には「金融と産業の一体改革」を掲げた小泉政権が産業再生機構を立ち上げる。4年間でカネボウ、ダイエーなど41の支援案件を手がける成果を上げた。
過剰解消先送り
 ただ日本全体でみると、多くの業種で「プレーヤーの過剰」が解消されることはなかった。00年代半ばには市場統合が軌道に乗る欧州、株高に沸く米国の景気が拡大し、日本企業の業績も回復。設備の過剰解消や再編に先送りムードが漂った。
 「どうするんですか」。05年1月、経営危機に陥った三菱自動車について、当時の竹中平蔵経済財政担当相から法的措置か救済かを迫られた三菱グループの首脳は「責任を持って対処する」と回答。三菱重工業などグループ企業の支援額は4800億円に上った。国内市場の縮小や新興国企業の台頭で状況は激変したが、日本の自動車メーカーの数はずっと変わっていない。
 産業再生機構の専務を務めた経営共創基盤最高経営責任者(CEO)の冨山和彦氏は「日本の企業社会で内発的な業界再編は難しい」と話す。金融危機や敵対的買収などの外圧がないと動かない。圧力がかかったとしても「会社や組織の緩やかな均衡を捨て切れない」(冨山氏)。企業同士の株式持ち合いもあり、市場の圧力も働きにくい。
 「過剰」の構図は潜在的な危機として温存された。リーマン・ショックは過剰解消の好機だったが、半導体大手のエルピーダメモリは公的支援で救われた。法的整理に追い込まれた日本航空も国主導で再建が進む。今年9月には企業再生支援機構の支援で自動車用金型の2位と3位の企業が事業統合を発表したが、3位の企業は実質的に経営が行き詰まった状態だった。国がどんな業種、企業に手を差し伸べるかという基準はあいまいなままだ。
デフレの一因に
 09年、キリンホールディングスとサントリーホールディングスの経営統合計画が表面化した。株式市場は「世界を意識して規模を追求する初の自発的再編」と期待した。だが経営者同士の意図に反し、組織内の意思統一は難航。結局、白紙に戻った。
 東芝の米原子力大手買収、王子製紙の同業企業へのTOB(株式の公開買い付け)提案。成長シナリオを描き、それを世に問う経営者も出始めている。問題は変化を嫌う組織がついていけるかだ。
 鉄鋼、家電、工作機械。かつて日本の牙城だった分野で国内企業がシェアを落とす。安住してきたニッポンという市場が縮むなか、再編なしで共存できた時代はもう遠い昔だ。「小粒な老舗」が過当競争を続ける現状では、デフレの日本病も根治できない。
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ドコモが3D対応スマートフォン 冬~春商戦に投入
壊れにくい携帯も
 NTTドコモは2010年冬~11年春の商戦向けに新機能を取り入れた携帯電話を投入する。国内初となる3次元(3D)画像が見られる高機能携帯電話(スマートフォン)を発売するほか、耐衝撃性や防水性を高めた携帯を用意する。携帯電話の売れ行きが鈍化するなか、購買意欲を刺激するための開発競争が加速している。
 3D対応のスマートフォンは裸眼で3D画像が見られる。米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を採用し、シャープが端末を供給する見通し。テレビやパソコンで広がってきた3D需要を開拓する。
 壊れにくい携帯電話は米国防総省が基準としている「MIL規格」を採用。従来の防水・防じんに加え、耐衝撃、耐塩害性を高めた。端末はNECカシオモバイルコミュニケーションズが開発する。カシオ計算機の時計の「Gショック」などの技術を応用した。環境意識の高い消費者向けに、ひのきの間伐材を外装に使ったタッチパネル式の携帯電話も発売する。
 ドコモは冬~春商戦向けに既存の携帯電話を20種類前後、スマートフォン7機種をそろえる方針。スマートフォンの本格普及を背景に、年2回それぞれ計20前後だった機種数を大幅に増やす方針だ。
 電子情報技術産業協会(JEITA)によると、09年度の携帯電話の国内出荷台数は約3100万台で、ピークとなった00年の約6割の水準に落ち込んでいる。ただ、需要が低迷するなかでも、ソフトバンクモバイルは米アップルの「iPhone(アイフォーン)」で契約数を伸ばしている。
 携帯電話2位のKDDI(au)も「おサイフケータイ」の機能を加えたスマートフォンを11月下旬に発売するなど巻き返しに向けた製品開発を強化している。普及が進むスマートフォンを中心に、年末から来春の需要期に向けて消費者の機種選択の幅が広がりそうだ。



在庫処分開始か、販売不振の「PSP Go」の価格が一気に暴落
 従来のPSPシリーズに採用されていた記録メディア「UMD」を廃して、ゲームソフトをダウンロード販売のみに限定した「PSP Go」が昨年11月に発売されたものの、好調な旧モデルとは対照的に売れ行きの不振が続いている。
 本体価格の高さや従来のソフトウェア資産が使えないこと、ダウンロード販売されるソフトがあまり多くないことなどが売れ行きの不調につながったと思われるが、本体の販売価格が一気に下がり、在庫処分が始まったかのような状態となったことが明らかになった。
 大手価格比較サイト「価格.com」によると、「PSP Go」のパール・ホワイトモデルが2010年10月23日23:45現在、1万6975円で販売されている。なお、発売当初の希望小売価格は2万6800円であったため、およそ1万円値下がりした計算に。
 また、ピアノ・ブラックモデルの販売価格は2010年10月23日23:45現在1万7618円と、パール・ホワイトモデルよりも少しだけ高価という結果に。
 ちなみにゲームビジネスを中心としてリサーチやコンサルティングなどを手がけるメディアクリエイトが行った2010年10月11日~10月17日の調査結果によると、「PSP go」の販売台数は「Xbox360(2342台)」や「PS2(1715台)」を下回る1590台で最下位となったのに対して、従来モデルのPSPは3万7127台を売り上げてトップに躍り出るなど、対称的な結果となっているため、PSPシリーズ自体の需要が低迷しているというわけではないようだ。
 なお、ソニー・コンピュータエンタテイメントのCEO(最高経営責任者)、平井一夫氏は8月に「必ずしも世界各国でダウンロード販売を行うのに十分なネットワークインフラが整備されているわけではない」とした上で、ゲームソフトをダウンロードのみで購入できるハードウェアを発売しない予定であることを明かすなど、PSP Goの不調はソニーにも大きな教訓を残したとみられているため、この教訓がどのような形で新たなゲーム機に生かされるのかといったところに注目が集まりそうだ。



楽天、発売前の書籍を一部公開 ネット通販拡大狙う
 楽天は書籍のインターネット通販サイト「楽天ブックス」で本の中身の一部を公開するサービスを始める。出版社から許諾を受けた書籍データをサイト上で公開し、利用者が中身を確認してから購入できるようにする。一部書籍のデータは発売前に先行公開する。利便性を高めて書籍ネット通販の拡大を目指す。
 新サービスは「チラよみ」で、25日にも始める。開始時には講談社、小学館、幻冬舎などの大手を含む出版社約50社と協力する。書籍1千冊程度、雑誌400冊程度の中身を公開する。そのうち、約100冊は早ければ発売の1週間前にも公開する見通し。楽天は、出版社側が指定する20~30ページ分を公開する。今後も協力先の出版社を増やす。
 同様のサービスは、米アマゾン・ドット・コムなどが日本向けにも展開中だが、出版前の書籍の中身を閲覧できるのは楽天のサービスが初めてとみられる。
 楽天は、新機能の追加で書籍ネット通販で先行するアマゾンを追い上げる。ネット利用者が、出版前に書籍の中身をどの程度閲覧したかなどのデータは出版社に提供し、初版印刷部数の決定などに役立ててもらうサービスも展開する。



パナソニック組織再編、重複事業の解消課題 三洋の不採算事業、撤退も
 パナソニックは2012年1月をめどにグループの組織を抜本的に再編する。現在16ある事業部門を9部門程度に集約して、環境エネルギー関連分野への経営資源の集中を狙う。子会社の三洋電機のモーターなどの不採算事業の撤退や売却などを通じ、グループ内の重複事業を整理していくことが課題になる。
 パナソニックは11年4月に三洋とパナソニック電工を完全子会社化し、その後、3社で事業を抜本的に再編し競争力を高める。三洋は今年に入り物流子会社を売却し、半導体事業も米国メーカーに売ることを決めたが、不採算のモーター事業も組織再編の前に売却する必要に迫られる。
 家電事業では12年春にブランドをパナソニックに統一する。家庭用エアコンなど三洋の競争力の弱い製品は開発・生産から撤退する方針だ。組織再編の過程で閉鎖する拠点の従業員の配転も今後の課題になる。
 パナソニックは省エネ家電や空調設備、太陽電池などの環境エネルギー分野の製品を一括供給する「まるごと」事業を強化する方針だ。次世代送電網(スマートグリッド)では制御技術で日立製作所と提携するなど、目標に必要な経営資源を見極めながら、グループ再編や提携戦略を急ぐ。



まんまと他社回線にタダ乗り
ソフトバンクの家庭内基地局
 一時は、通信業界関係者による“ソフトバンク(SB)包囲網”ができそうな雲行きだったのだが、事態は思わぬ進展を見せている。
 ソフトバンクモバイルの孫正義社長は、今年3月28日に開催された“創業30周年記念イベント”で、インフラの増強を公約する「電波改善宣言」を発表した。
 そして5月21日より、希望者には「フェムトセル」(家庭内小型基地局)を無償提供する受付を開始した。この、いわばホームアンテナを自宅に設置すれば、自宅で使っているインターネットのブロードバンド回線を、携帯電話用の回線として利用できるようになる。
 だが、SB傘下のYahoo! BBのサービスに限定するのならば問題はなかったのだが、受付開始直前に孫社長がツイッターで「すべてのブロードバンドサービスに対応する」と宣言。2008年に総務省が制定したガイドラインにある運用ルール、つまり「各事業者との事前協議」を経ず、いきなり消費者向けにフライング発表してしまったことから大騒動に発展した。
 というのも、SBは、アクセスライン(通信サービスを家庭まで届けるための最後の区間)のインフラを持つケーブルテレビやISP(接続会社)などの事業者に仁義を切ることなく、“ユーザーから直接無料で借りる”という論理で受付を先行させたからだった。
 これまで、汗を流してコツコツとインフラ整備をしてきた事業者にとっては言語道断の行為であり、関西電力系の通信事業者のケイ・オプティコムは、間髪を入れずSBの“タダ乗り”を牽制するリリースを出したほど。その他多くの事業者も、SBに対して感情的な反発の姿勢を崩さなかった。
 ところが、SBは、事態を重く見た総務省によりクギを刺されたことで、事業者ごとに事前協議を行う方針に切り替えた。スジから言えば、そちらのほうが先にくるべきだが、すると今度は少しずつ、有料でSBに回線を貸す事業者が増えてきた。すでに、近鉄ケーブルネットワークなど30社以上のケーブルテレビ事業者や独立系のISPが応諾しているのだ。
 関西のあるケーブルテレビ事業者によると、その理屈は単純明快である。「仮に、自社の契約者から『SBのフェムトセルを使ってみたい』と言われた場合、『ウチではできません』とは言えない。協議のうえでルールができて、少ないながらも利用料が入るのなら、無料よりはマシだ。その際、『できません』と言えば、SBの営業マンは契約者に『Yahoo! BBを無料で提供します。この機会にSBの回線に切り替えませんか?』と攻勢をかけてくる。そうなると、契約者を奪われてしまうだろう?」。
 じつは、置かれた環境は、規模の大小を問わず、すべての事業者にとって同じだ。SBは、これまで同様に、自ら回線に投資せずに全国的にアクセスラインを使わせてもらえるようになる。各事業者に個別の利用料を払うとはいえ、“事実上のタダ乗り”が実現する。結局、SBの思惑どおりの展開になったが、後味の悪さが残る。



日経社説
この合意では「通貨戦争」は止められない
 各国の利害が複雑に絡む通貨摩擦をどう打開するか。難題を背に韓国の慶州で開いた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、経済の実力を映す為替相場の仕組みに移行し「通貨の競争的な切り下げを避ける」と共同声明で表明した。
 混乱の原因である経常収支の過度の不均衡を直す方針も確認したが、具体策の合意は何もない。この程度の合意では「通貨戦争」は止められない。来月のソウル・サミットに向けてG20の首脳はさらに知恵を絞り、一段と歩み寄りを探るべきだ。
 金融危機後、G20は先進国と新興国の政策協調の枠組みとして機能した。だが最近は景気回復にもたつく米国などの先進国と、高成長の新興国との間のひずみが広がり、対立が生じてきた。通貨摩擦も一つだ。
 米国など先進国は人民元相場を割安にして輸出を有利にする中国を批判し、中国は急激な元上昇は世界経済に悪影響が及ぶと反論する。新興国は人民元が安値のうえ、日米欧の金融緩和であふれた資金の流入で自国通貨高に苦しむ。介入や資本規制で対抗する動きもある。
 レアル高が進む現状を「通貨戦争」と非難したブラジルの財務相がG20会議を欠席したように、国際協調に亀裂が広がり始めていた。
 「協調的でない対応は、すべての国にとってより悪い結果をもたらす」とG20声明は指摘した。各国が自国優先に走り、自由な貿易や資本の流れが損なわれて世界経済が打撃を受ける展開は避けねばならない。
 とはいえ、行動が伴わなければ、通貨摩擦や不均衡の改善は進まない。中国の人民元切り上げ、住宅市場の不振を抱えた米経済の低迷打開など、懸案は明らかだ。対立を埋め、各国の実行を担保する必要がある。
 G20会議の直前、米国は経常収支の赤字や黒字を2015年までに国内総生産の4%以内に抑える数値基準を提案し、議長国の韓国も支持した。人民元切り上げを促す狙いがあるといわれるが、中国は消極的で、黒字水準の高いドイツも反対だ。
 声明は「過度の不均衡を減らし、経常収支を持続可能な水準で維持するために、あらゆる政策を追求する」と指摘したものの、数値は見送った。あまり数字が独り歩きして、国内外の自由な経済活動を縛るようでは良くない。日本が硬直的な目標設定に慎重であるのは妥当だろう。
 だがそれだけに、日本はデフレ脱却と成長促進への強力な政策運営が求められる。過度の円高を阻止する市場介入も、世界経済への貢献度を高めないと、理解を得られない。
音楽業界を牛耳るiPodやiTunesストアを脅かす
インターネットラジオ「パンドラ」の秘密
 インターネットラジオ「Pandora(パンドラ)」の露出度が高まっている。ラジオなど、古くさいメディア。それが今頃人気になることなどありえないと、思われるだろうか。だが、それは早とちりだ。
 パンドラは、インターネット経由で好きな曲を聴けるサービスで、iPhoneやアンドロイド携帯用のアプリもあり、いずれも人気を呼んでいる。先だって発表されたソニーのグーグルTVにも搭載されているほか、来年にはフォードやメルセデスの新車にも登場する。新しいタイプの音楽体験として、世間の注目度は高い。
 パンドラ人気の背景にはもちろん、車を運転する時間が長いというアメリカ特有の事情があるだろう。統計によると、アメリカ人は毎週平均17時間ラジオを聞いているが、その半分は車の中。ちょうど日本のサラリーマンが通勤時間中に携帯電話に見入っているように、アメリカ人はラジオに耳を傾けているのだ。
ユーザーが自分で気に入ったラジオ局を構築できるサービス
 だが、もうひとつの人気の理由は、もはや単純なラジオとは呼べないような仕組みが、パンドラにあることが挙げられる。
 パンドラの特徴は、ユーザーが自分で気に入ったラジオ局を構築できることである。ユーザーはまず、自分の好きなアーティストや楽曲を選び、そこへどんどん曲を加えていくことができる。その時に役に立つのが、パンドラが独自に開発した音楽検索のしくみである。
 この音楽検索は、「ミュージック・ゲノム・プロジェクト」というパンドラの楽曲分析技術に基づくもの。あるひとつの曲を複数の項目に分類して、いわばその楽曲のDNA(遺伝子) 構造を特定するようなものだ。曲の流れ、リズム、ハーモニー、歌詞、ヴォーカルのタイプ、楽器など、分類項目はおよそ400にも及ぶ。
 その分類方法に従って、パンドラは最初に選んだ曲に似た他のアーティストの曲や、同じようなメロディーを持つ楽曲を選び出してユーザーに推薦してくれるのである。ユーザーはそうしたお薦めを元にして自分のコレクションを作り、ジャンル別、アーティスト別など自分だけのラジオ局を100までつくることができる。その時の気分によって好きなラジオ局をクリックすれば、あとは気に入った曲、知らなかったけれどいい曲などが、次々とプレーされるという仕組みだ。
 パンドラという会社もユニークである。社員は現在120人。その99%が、現在あるいは過去にプロのミュージシャンだった経歴を持つ人間や、音楽の専門教育を受けた人間で、まさに音楽の専門組織とも言える。
 よく音楽サイトやCD購入サイトでも「お薦め」が出るが、それは「この楽曲を買った他のユーザーは、この曲も買っています」というもの。つまり、そのリコメンデーションは、自分と同じ普通のユーザーの集団的経験に基づいているわけだが、パンドラの場合は違う。鋭い耳と深い知識を持つ音楽のプロがそれをやってくれるのだ。
ベーシックサービスは無料、有料サービスでも年間36ドル
 ところで、2000年に創設されたパンドラは、長い間ビジネスの芽が出ないままだった。ベンチャーキャピタルから受けた資金も使い果たし、一時は社員の給料も払えない状態が続いたが、その窮状からパンドラを救ったのは他でもないiPhoneだった。パンドラがリリースしたiPhone用のアプリが大人気を呼んで、同社は息を吹き返し、その後ユーザーを加速度的に増やして、ビジネスも新しい局面に突入したのだ。
 現在の登録ユーザー数は1億人。昨年の収入は1昨年の倍以上増えて5000万ドル。今年は、さらに加速的に拡大して1億2500万ドルを見込んでいるという。
 面白いのは、アップルが現在iPhoneやiPad、iTunesストアなどで主導権を握っているインターネット音楽の世界を、パンドラが脅かす可能性もあることだ。 なんといっても、パンドラのベーシックサービスは無料だ。1ヵ月に40時間までの利用が可能。1時間に3つのコマーシャルが入ることや、1時間以内に6回以上曲を飛ばすことができないといった制限はあるものの、ユーザーは100万曲近いパンドラのライブラリーから何でも好きな曲を聴くことができる。40時間を超えると、99セント払うだけで1ヵ月の残りの時間を同じ条件で利用が可能だ。
 有料サービスは年間36ドル。こちらは広告も入らず、上記のような制限がないというピュアな音楽局となる。アップルのiTunesストアの値段は、1楽曲あたり69セント~1.29ドル。無制限に音楽を聴きたい場合は、実はパンドラの方がずっと安くつくだろう。
 パンドラのお勧めの音楽が気に入るかどうかは、相性の問題かもしれない。だが、インターネット上にラジオ局を作って、そこから自分向けに局をストリーミングするという方法は、従来のラジオ放送とも音楽のダウンロードとも異なるまったく新しいモデル。また、ユーザーの属性や好みを特定できる点で、広告主からの注目も大きく、パンドラはすでにメジャーなブランドを集めている。
 音楽ビジネスの新興勢力がもうひとつ出現したことを、よく見極めておくべきだろう。



電子書籍の貸し借り可能に アマゾンが新サービス
 【シリコンバレー=奥平和行】米アマゾン・ドット・コムは22日、電子書籍端末「キンドル」向けに販売したコンテンツを、購入者が友人などに貸すことができるようにすると発表した。年内に新サービスを始める。紙の本では友人らとの貸し借りが一般的なため、電子書籍でも同様のサービスを追加することで利便性を高める。
 電子書籍端末のほか、キンドルに対応したソフトを組み込んだパソコンや高機能携帯電話(スマートフォン)などとの間でも貸し借りができるようになる。コンテンツを貸すことができる期間は14日間で、その間は購入者自身はそのコンテンツの閲覧ができなくなる。
 また、著作権を持つ出版社等が同意しないコンテンツについては、新サービスの対象にならない。同様のサービスは米書籍販売大手のバーンズ・アンド・ノーブル(B&N)も、既に電子書籍端末「ヌック」を対象として始めている。



東京都が「電子図書館」 大日本印刷が協力 文芸書など無料配信
 東京都は11月下旬、パソコンを使って読む電子書籍のインターネット配信を始める。著作権が切れたり、出版社から無償提供を受けたりした文芸書や資格試験の問題集など約1千点が対象。本の電子化技術を持つ大日本印刷が協力する。電子図書館サービスと位置付け、都民が無料で利用できるようにする。
 都立中央図書館(港区)が都民からモニター1千人を募り、試験的に実施する。大日本印刷が電子化する書籍について、出版社などと調整しており、数社から許可が得られる見通しという。
 一部には簡単な操作で本人の代わりに音読する機能などを付け、高齢者らが利用しやすくする。複製を防ぐため、ダウンロードや印刷に制限をかける。利用状況などを踏まえ、2012年度にも本格的に電子書籍の配信を始める計画だ。
 公共図書館では国立国会図書館が明治・大正期の作品を中心に、書籍のページをそのままスキャナーで読み取った画像を配信している。公共図書館が本格的な電子書籍をネット配信するのは極めて珍しいという。



クーポン共同購入に参入 電子マネー「エディ」運営会社
 楽天子会社で電子マネー「エディ」を運営するビットワレット(東京・品川)は、格安クーポンの共同購入サービスを始める。まず25日から12月上旬までの期間限定で、飲食店などが割安に利用できるクーポンを販売する。同社は電子マネーの決済手数料が収入の大半を占めるが、新規事業で収入源の多角化を目指す。
 25日から東京、愛知、福岡の3都県で始める。クーポンを使えば飲食店などが通常の半額以下で利用できる。クーポン購入は、携帯電話の「おサイフケータイ」機能を使って、インターネット上でエディで決済する。クーポンは週ごとに変え、期間内に一定人数の購入希望者が集まった場合にのみ販売する。



iPhoneで介護記録 現場の負担軽減
 システム開発のユニバーサルソリューションシステムズは、高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」で介護記録を入力できるシステムを業界で初めて開発、年内にも販売を始める。同社は携帯情報端末などによる介護記録システムをすでに実用化し、400施設以上の納入実績がある。アイフォーンの採用で利便性を一段と高め、2014年3月期までに5000施設への納入を目指す。
 介護記録は、要介護者に行った入浴や食事などの介護情報を施設内の介護スタッフ全員が共有し、効率よく介護を行うために活用される。介護保険請求の基本情報でもあり、介護施設の運営に欠かせない。だが、現在は紙に手書きで記録する施設が多く、現場の介護スタッフに負担がのしかかる。
 新システムは、アイフォーンの画面に指で触れるだけで必要項目を入力できるため、介護記録に要する労力と時間を大幅に軽減できる。入力情報はネット経由で同社のサーバーに蓄積され、システムを導入した施設は情報の共有と管理を容易にできる仕組みだ。入力項目のほかに、注釈などを音声で残せる。
 システムの利用料金は、1施設内1サービスごとに初期費用5万2500円、3端末まで月額1万8900円。



日経社説
首相は環太平洋経済協定に参加決断を
 米国やオーストラリアなど9カ国が交渉を進める環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)をめぐり、民主党内の意見が割れている。菅直人首相は所信表明演説で交渉参加を検討すると明言したが、農産物市場の開放に反対する議員グループが結束して抵抗している。
 このまま路線対立が長引き、意思決定が遅れれば、日本は世界の自由貿易協定(FTA)競争から完全に取り残される恐れがある。TPP交渉への参加問題は、日本経済の将来を左右する重大な岐路である。菅首相は、いまこそ交渉への参加を政治決断すべきだ。
 TPP交渉を重要政策に掲げる米国は、日本に「ぜひとも参加してほしい」と求めているわけではない。オバマ政権の支持基盤である労組はむしろ貿易自由化に消極的だ。
 米国内ではオバマ政権の支持率低下が目立ち、11月の中間選挙で民主党の敗色が濃厚とされる。農業問題を抱え、厄介な交渉相手となる日本を無理に誘い込む余裕はない。
 だが日本にとっては、米国を核とする枠組みへの参加は死活問題である。日本と産業の得意分野が重なる韓国は、米国、欧州連合(EU)とのFTA交渉を既に終えている。
 米欧との協定がないままでは、日本企業は韓国企業と対等に競争できない。日本から海外への工場移転にも拍車がかかり、国内雇用を損ないかねない。競争力の源泉である技術の流出が進む懸念もある。
 TPPへの日本の参加は、日米FTAと同等の意味がある。日米同盟のきずなは太くなるはずだ。台頭する中国への対抗力を高めることもできる。日本とのFTAに消極的なEUや韓国を刺激し、交渉の座につかせるきっかけにもなるだろう。
 TPP交渉は既に始まっている。現在の参加国による交渉が進んだ後では日本の主張を反映できなくなる。11月中旬に横浜で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)が、参加表明の唯一の機会だと考えるべきだ。判断の先送りは許されない。
 参加するための条件は明白だ。農産物の関税削減に備え、農業改革に道筋をつける必要がある。現行の農家への戸別所得補償制度は、ばらまきの色彩が濃い。これを見直し、農業生産性を高める政策をTPP参加表明と併せて打ち出すべきだ。
 全品目での関税の即時撤廃が原則とされるが、米国や他の参加国にも実質的な例外品はある。国内改革を急ぎながら、貿易自由化の速度を調節すればよい。菅首相の国内指導力と、対外交渉力が問われている。
パナソニック、事業を9部門に集約 電工・三洋含め再編
三洋ブランドは12年春に廃止
 パナソニックが事業・組織再編に乗り出す。2012年1月をメドに現在の16部門を9部門程度に集約。来春に完全子会社化する三洋電機とパナソニック電工の事業を製品やサービスごとに仕分けし、新組織に吸収していく。三洋の国内向け家電製品ブランドは12年4月にパナソニックに一本化する。グループ一体で事業を推進する体制を再構築し、成長戦略を加速する。
 パナソニックは01年から事業部制を段階的に廃止、03年にデジタル家電や電池など「ドメイン」と呼ぶ14部門に再編した。現在はパナソニック電工、三洋電機の2社を加えた16のドメインで収益や人事などを管理している。今回の改革はドメイン制を導入して以来の大規模な事業・組織改革になる。
 新しい改革では大きく「消費者向け製品」「デバイス」、エネルギー機器などをシステムとして提供する「ソリューション」の3分野に分け、製品やサービスごとに9事業前後に再編する。
 再編の過程で三洋電機やパナソニック電工の事業は実質的に新しい部門に吸収されていくが、三洋電機は当面、単独企業として存続する。これまでパナソニックと三洋電機が家電や車載用電池を展開。パナ電工とは発光ダイオード(LED)照明などが重複している。2社の事業を仕分けし、可能な限り同一ドメインに集約する。
 パナソニックの今期の連結純利益は850億円を見込んでいるが、大坪文雄社長は「12年度に純利益を(完全子会社化前に比べ)800億円押し上げる」としており、事業・組織再編で達成を確実にしたい考え。
 パナソニックは02年に旧松下通信工業や旧九州松下電器など5子会社を完全子会社化。当時の中村邦夫社長(現会長)は「破壊と創造」を掲げ、似たような事業を展開する弊害が目立ってきた事業部制を解体し、03年に14のドメインに再編した。
 04年にパナソニック電工を子会社化し、昨年12月に三洋電機を傘下に収めたことでドメインが増えており、完全子会社化後に組織を半減することで事業を効率化する必要があると判断した。
 パナソニックと三洋電機でブランドが異なっている国内向け家電は、三洋が11年3月で同社ブランドでの新製品投入を終了。1年間の移行期間を経て、12年4月にパナソニックブランドに一本化する。全国に約1500ある三洋の系列販売店の多くは11年度後半から順次、パナソニックの系列店に衣替えする。
 カーナビゲーションシステムなど三洋電機が強みを持つ家電は従来通り生産を続けるが、競争力の低い家電は生産中止を検討する。海外でも原則的に、12年4月に三洋ブランドを廃止し、パナソニックに一本化する。
 パナソニックの09年度の連結売上高は7兆4180億円で、これを12年度には10兆円に高める計画だ。デジタル家電は韓国勢などとの価格競争が厳しく、単品販売から家電や住宅、太陽電池などグループ一体となった事業モデルへ転換し、収益力を高める。
 特に成長分野に位置付ける太陽電池やリチウムイオン電池などを合わせた「エナジーシステム事業」の売上高は09年度の5400億円から12年度に8500億円、18年度には3兆円以上を目指す。



パナソニック 事業モデル転換急ぐ
 パナソニックが大規模な組織改革に踏み切るのは、大坪文雄社長が経営目標とする創業100周年の2018年に世界電機首位に立つため事業モデルを大転換する狙いがある。価格競争が激しい家電製品の単品売りから脱却、太陽電池など環境エネルギー製品を組み合わせて提供するソリューション事業に経営資源を集中させるため「聖域なき改革」に再び着手する。
 組織改革の最大の狙いは収益源に育てるソリューション事業での顧客窓口の明確化だ。三洋電機とパナソニック電工の完全子会社化を機に、家やビル、街にパナソニック製品を一括供給する「まるごと」事業を収益の柱とするため、組織を抜本的に見直す。
 パナソニックの強みは家電から空調設備、太陽電池などの製品をグループ内でほぼ調達できる点だ。これまでは顧客に対してパナソニックのAV(音響・映像)機器や白物家電の各事業体に加え、三洋とパナ電工が個別に営業を展開したため効率が悪く顧客企業から不満もあった。
 中村邦夫前社長(現会長)が「破壊と創造」を掲げ構造改革を進めてから約10年。中村氏は「松下幸之助創業者の経営理念以外、聖域はない」として、子会社を含め重複部門見直しや研究開発、人事制度などを抜本改革した。今回の組織改革ではパナソニックの成長をけん引してきた白物家電やAV機器も再編の対象となる。
 グループ各社に分散していた事業分野を「Panasonic」ブランドに結集させるのも中村改革の狙いだった。三洋とブランド統一することで大坪改革の目玉である「まるごと」事業を進めやすくなる。
 パナソニックは三洋とパナ電工の完全子会社化で世界の環境エネルギー市場で戦う経営環境を整えた。だが、ライバルのサムスン電子やLG電子も太陽電池やリチウムイオン電池に巨額投資を相次ぎ打ち出す。韓国勢の猛追を防ぐにもグループの垣根を越えた聖域なき組織再編を急ぐ必要がある。



「カセット」ウォークマン販売終了 デジタル化で30年の歴史に幕 
 ソニーは22日、カセットテープ対応の携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」の国内販売を終了することを明らかにした。今年4月末の段階で最後の5モデルの出荷をすでに終えており、店頭の在庫が順次なくなり次第、姿を消すことになる。中国メーカーで委託生産している海外向けは販売を続ける。
 ウォークマンは1979年に登場し大ヒット。「音楽を持ち歩く」とのコンセプトで若者のライフスタイルも大きく変えた。名称はカセットタイプからCD、MD対応を経て、ネットからメモリーにダウンロードするデジタル方式の現行タイプへと継承された。
 カセットタイプは、録音用に使う人向けなどで細々と販売を続けていたが、国内ではついに30年余りの歴史に幕を閉じることになる。
 ウォークマンの累計販売台数は、今年3月末までで約4億台。デジタル方式のウォークマンは最近、米アップルの「iPod(アイポッド)」と抜きつ抜かれつの激しいシェア争いを繰り広げている。
 CDやMD対応機種も販売は低調だが、当面は生産・販売を続けるという。



米アップル、批判に応えアプリの審査プロセス透明化へ 
 米アップルが2年前に、同社のスマートフォン(多機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」向けのアプリ配信サイト「iPhone App Store(アイフォーン・アップストア)」を開設したとき、サイトに出品するアプリの承認プロセスついて、その不透明さが批判の的となった。何の説明もなしに出品が拒否されることがあったためだ。だがアップルは同じ過ちは繰り返していないようだ。
 同社は20日にパソコン「Mac(マック)」向けのアプリ配信サイト「マック・アップストア」を向こう3カ月以内に開設することを明らかにしたが、その翌日にはアプリの審査プロセスに関するガイドラインを公表した。ガイドラインには、アプリの仕組みやユーザーインターフェースから、どのようなコンテンツが不採用となり得るかまで、あらゆることが詳述されている。
 ガイドラインの冒頭には「新設の『マック・アップストア』が、利用者にとって最もアプリを検索・購入したくなるような場所になると期待している」と記載されており、さらに「(ガイドラインは)開発したアプリが承認プロセスを問題なく通過できるようにするためのもの」であると付け加えられている。
 アップストアでは現在、アイフォーンのほか、多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」や携帯音楽プレーヤー「iPod touch(アイポッドタッチ)」向けのアプリも配信されているが、ガイドラインはアップルのアップストアで当初生じていた多くの問題に対処している。
 例えば、ガイドラインには、アプリの開発者がユーザーによる評価、「カスタマーレビュー」を改ざんしようとした場合、その開発者は除外され、あるいは、アプリの名称に含まれるアップル製品名の表記が間違っていた場合は却下される、といった基準が記載されている。
 またプライバシーに関する項目では、ユーザーに関するデータを事前に本人の許可なく配信することを禁じているほか、ユーザーに関するデータがどこで、どのように利用されるかを本人が確認できるようにすることを規定している。
 このほか、アプリ上でほかのソフトウエアを販売・配信する機能を組み込んだものや、何らかの機能を改ざんすることを目的としたもの、不正なサイトに勧誘するスパムアプリなども拒否の対象になるとしている。
 ガイドラインにはアプリのコンテンツに関する基準も規定されている。暴力的または性的描写を含むものや「他人を誹謗(ひぼう)中傷したり、悪意のある」ものは禁じるとしている。ただし、アイフォーン・アップストアでは、政治的風刺については他人を誹謗中傷したり、悪意があるものとは判断されないとしている。 このほかギャンブルやコンテスト、くじ、募金を目的としたアプリに関する規定もある。
 今回の基準は、アップルが9月初めに公表した最初のアップストア向けガイドラインとおおむね似た内容だ。前回同様、今回のガイドラインでも、マック・アップストア向けガイドラインは「新たなアプリの登場や状況の変化に応じて改訂される」としている。
 アップルは20日、マック向けアプリの申請受け付けを11月に開始することを明らかにした。


自動車各社“つぶやき”戦術加速 拡販にツイッター活用
 国内自動車メーカーが簡易投稿サイト(ミニブログ)「ツイッター」を新車の拡販に活用する動きが広がってきた。ホンダが今月発売した主力小型車「フィット」のハイブリッド車(HV)の広告に使い始めたほか、日産自動車も年末に投入する電気自動車(EV)「リーフ」でサイトを開設。国内自動車市場の縮小が続く中、消費者と双方向の対話が可能な新媒体を武器に「車離れ」にブレーキをかけたい考えだ。
 ツイッターでは、「つぶやき」と呼ばれる1回当たり最大140文字の文章を投稿し、サイトの登録者らが閲覧、返信できる。
 ホンダはフィットHVのデモカーを走らせてツイッターを活用。例えば「もう川越はすぎました」「標識には○○と書いています」などとつぶやく。これをヒントにフィットの居場所を探し出し、発見者にプレゼントを贈る仕組みだ。同社は「ゲーム感覚で楽しんでもらい、フィットHVへの関心を高めたい」という。
 日産は8月から、ツイッターで閲覧者とリーフについて“質疑応答”を繰り広げている。「フォロワー」と呼ばれる定期的な閲覧者は6千人以上に達した。
 開発段階からツイッターを活用するメーカーも出てきた。川崎重工業は来年にも欧州で発売する大型バイク「ニンジャZX-10R」について、ツイッター上で開発コンセプトや秘話を英語で発信。バイクファンのひと言が開発の参考になるほか、情報を小出しにして「ファンの反応や関心度もうかがえる」という。
 各社がツイッターによる販売促進を行う背景には、人口減少や景気低迷で国内販売が頭打ちになっている事情がある。平成12年度に約597万台だった国内の新車販売台数は21年度に約488万台まで減った。
 また、ツイッターによる広告はテレビCMなどに比べてコストが少ない。ある自動車大手関係者は「景気低迷で広告費は軒並み減っている。メーカーはより確実に、直接、顧客とつながる効果的な広告媒体を模索している」と指摘。実際の広告効果には未知数の面もあるものの、手軽にメッセージを届ける媒体としてメーカー側の期待は高まる一方となっている。
米アマゾンやフェースブック、SNS関連ファンド
有力VCが設立、普及を後押し
 【シリコンバレー=奥平和行】ベンチャーキャピタル(VC)の米クライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ(KPCB)は、アマゾン・ドット・コムなど米有力IT(情報技術)企業と組み、交流サイト(SNS=ソーシャル・ネットワーキング・サービス)関連に投資するファンドを設立した。米国を代表するIT企業を育ててきた有力VCの本格的な参画はSNSの普及が加速する契機になりそうだ。
 「ソーシャルは1980年代のパソコン、90年代半ばのインターネットに次ぐ第3の波だ」。21日に米シリコンバレーのフェースブック本社で開いた記者会見で、KPCBのパートナー、ジョン・ドーア氏はこう切り出した。傍らにはアマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)やSNS最大手フェースブックのマーク・ザッカーバーグCEOなど米IT業界のリーダーが並び、米メディアは「オールスターラインアップ」と報じた。
 新設する「sファンド」の規模は2億5000万ドル(約200億円)で、KPCBとアマゾンに加えて、SNS最大手のフェースブック(カリフォルニア州)、SNSを通じて遊ぶソーシャルゲームのジンガゲームネットワーク(同)、メディア大手のコムキャストやリバティメディアなども出資。SNSと連動するソフトやサービスの立ち上げを支援する。
 2004年にサービスを始めたフェースブックの利用者は7月には5億人を突破。米調査会社のニールセンによると米国のインターネット利用者は利用時間のうち交流サイトの利用に費やす時間が22.7%(6月時点)で最長だ。2年前にフェースブックがサイト内の機能を外部から使うことができるようにしたことがきっかけとなり、連携サービスが増えて普及が加速した。
 すでにSNSは十分に市民権を得ているようにも見えるが、KPCBのもうひとりのパートナー、ビング・ゴードン氏は「まだ始まったばかり」という。KPCBはフェースブックやツイッターなどSNSの有力プレーヤーへの出資でライバルに後れを取り、こうした発言は“強がり”とも受け取れるが、それでも「ソーシャルが第3の波」という説には説得力がある。
 というのも、KPCBには多少の出遅れを補ってあまりある実績があるからだ。
 ドーア氏は70年代に米インテルでパソコンの頭脳であるMPU(超小型演算処理装置)の開発に従事。KPCBに移ってからはブラウザー(閲覧ソフト)のネットスケープ、ネット小売りという分野を切り開いたアマゾン、ネット検索最大手のグーグルなどを発掘して育てた。これまでの「波」を自ら起こし大きくする役割を担ったといえる。
 そしてSNS。21日の記者会見で司会役も務めたドーア氏は新しい波がIT業界、そして社会を5年後にどう変えているかを出席者に尋ねた。会場では既にジンガなどソーシャルゲームが既存のゲーム業界を大きく揺さぶっていることが話題に上り、フェースブックのザッカーバーグCEOはこう“予言”した。「今後5年間ですべての産業はソーシャルの流れに対応するために大きく姿を変えざるを得ない」。
 フェースブックは検索サービスで米マイクロソフトと組むなど、KPCBの出資先でドーア氏が取締役を務めるグーグルにとっては目の上のたんこぶのような存在だ。だが、「次の波はソーシャル」という一点において、これまでのシリコンバレーを作ってきたドーア氏と、現在のシリコンバレーを代表するザッカーバーグ氏は未来予想図を共有しているようだった。



KDDI社長、来月発売の高機能携帯「他社から顧客奪い取る」
 KDDIの小野寺正社長兼会長は22日の記者会見で、11月下旬に発売するスマートフォン(高機能携帯電話)の新機種「IS03」について「顧客の流出を止めるだけでなく、他社から奪い取ることができる」と期待を示した。
 IS03には「おサイフケータイ」や「ワンセグ」などの機能を盛り込んでおり「2台目の端末としてスマートフォンを使っていた人が、これで1台で済むことになるだろう」と話した。



ソニーの「PlayStation Move」、米で好調 供給追いつかず
 ソニーは10月21日、モーションコントローラー「PlayStation Move」が米国市場で、発売から1カ月で100万台売れたと報告した。需要が供給を上回っているという。
 Sony Computer Entertainment of America(SCEA)の社長兼CEO、ジャック・トレットン氏は、2011年2月までは十分な供給ができそうにないと語った。
 「生産を2倍に増やさなければならなかった。今は全力で作っている」(同氏)
 ソニーは9月19日に米国でMoveを発売した。同製品はプレイステーション 3(PS3)用のコントローラーで、価格はカメラが39.99ドル、モーションコントローラーが49.99ドル。
 Moveは米国の3万を超える小売店で販売されている。ソニーは以前、欧州ではMoveはもっと売れており、150万台を超えたと話していた。日本では発売したばかりだ。
 Microsoftは11月4日にXbox 360用のモーションコントローラー「Kinect」を発売する。同製品は150ドルで、手持ち式のコントローラーは必要ない。
 Microsoftは今年のKinectの販売台数を300万台と予想している。
 ゲームメーカーは、ソニー、Microsoft向けモーションゲーム開発に投資する前に、モーションセンサー技術の需要を注視しているとアナリストは語る。
 トレットン氏は、Move向けに24作のゲームソフトが提供されており、3月末までには合計で40作になるとしている。



米3大ネット、一部番組配信を停止 ソニーネットTV警戒
 【ニューヨーク=共同】米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は21日、ソニーが米グーグルと提携して先週発売したインターネット対応テレビに対し、米テレビ局の3大ネットワークがネット上の一部番組の配信を停止していると伝えた。
 大手放送局のネットに対する警戒感が根強いことを示した。新型の「ソニー・インターネットTV」はグーグルの検索機能を使い、放送番組とネット上の動画などを一度に検索できるようにしてネットとテレビの融合を目指しており、販売に影響が出る可能性がある。
 同紙によると、放送局側が違法コンテンツをサイト上に載せてきたグーグルの姿勢に懸念を抱いている。ABCとCBS、NBCがサイト上で公開しているドラマ番組は「インターネットTV」で見ることができない。FOXは現在、配信を止めていないが、対応を決めていないとしている。
 一方、NBCの親会社NBCユニバーサル傘下のCNBCや、ケーブルテレビのCNNなどはこのネット対応テレビにサービスを提供している。



オバマ大統領、米経済の立て直しでアップルCEOに意見仰ぐ
 オバマ米大統領は21日、遊説先のカリフォルニア州サンフランシスコで、米電子機器大手アップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)と会談、低空飛行を続ける米国経済について意見交換した。
 アップルは、高機能携帯電話iPhone(アイフォーン)と多機能携帯端末iPad(アイパッド)の驚異的な売り上げで過去最高の業績を記録したばかり。景気立て直しに苦労しているオバマ氏は、絶好調のジョブズ氏にアドバイスを求めたとみられる。
 ギブズ大統領報道官によると、両者は雇用創出やエネルギー資源の対外依存などの課題についても話し合った。
 オバマ氏は11月2日の中間選挙に向け、民主党候補の応援のために同州など西部州を訪問中。



「誰も不利益被らない」 ヤフー社長、楽天の公取調査要請を静観
 ヤフーの井上雅博社長は22日の連結中間決算の席上、米グーグルの検索エンジンの導入に対して楽天が公正取引委員会に調査を求めたことについて、「(楽天が)何を心配しているのか理解できず、対策も考えていない。不利益を被る人はいないはずだ」と述べ、静観する姿勢を示した。
 年内には、検索エンジンをグーグル製に切り替える方針だが、両社のシェアが9割を占めることから、楽天のほか、米マイクロソフトも「競争を阻害する」などと問題視している。



Windows 7が1周年、販売本数は2億4000万本以上
 米Microsoftは21日、「Windows 7」が発売から1年間で2億4000万ライセンス以上を販売したと発表した。
 Windows 7は、2009年9月1日に法人向けライセンス販売を開始し、10月22日に一般向けの販売を開始。2010年7月の決算発表時には、Windows 7の累計販売数が1億7500万本以上に達したことを公表していたが、その後3カ月でさらに6500万本以上が販売された。
 Microsoftでは、9月に販売されたコンシューマー向けPCの93%にはWindows 7が搭載されていると説明。また、米Net Applicationsの調査によれば、Windows 7は全世界のOSシェアの17%を占めているとしている。



電子書籍時代あえて日本最大200万冊…ジュンク堂が新店、大阪駅周辺が激戦地に
 米アップルの新型多機能端末「iPad(アイパッド)」の登場などで電子書籍が盛り上がる一方、紙の本を取り扱う書店が苦境に立たされている。こうした中、大阪・キタの繁華街・梅田に年末、国内最大となる書店が出店し、全国屈指の“激戦地”となる。出版不況の中で勝算はあるのか-。
 ■20年ぶり改装の紀伊國屋、駅ナカ阪急系、静観の旭屋…
 梅田北部の茶屋町に今春開業した複合商業ビル「チャスカ茶屋町」。ビルの上部と下部がねじれたような奇抜な外観は、安藤忠雄建築研究所が手がけた。
 12月下旬、このビルに日本最大の書店がオープンする。ジュンク堂書店の新店が地下1階から地上7階に入り、200万冊を取り扱う。現在、大阪最大の規模を誇る同社の大阪本店に比べ、取り扱い冊数は約2倍となり、店舗面積も約1.4倍に広がる。
 「あまりに広くて、本が集めきれない」
 担当者がこう悲鳴を上げるほど、全分野にわたって品ぞろえを充実させるという。当初は月商2億円を目標とするが、軌道に乗れば3億~4億円を目指す。
 電子書籍が急成長するなか、書店は右肩下がりの業界といわれるが、岡充孝社長は「縮こまってしまうのではなく、積極的に頑張りたい。日本最大の書店で改めて本選びの楽しさを味わってほしい」と意気込む。
 ジュンク堂新店を迎え撃つのが、約300メートル南西の紀伊國屋書店梅田本店で、9月17日に20年ぶりの全面リニューアルを終了。新規出店並みの約3億円を投じ、2カ月間にわたる改装工事で店内のレイアウトを完全に変えてスタートした。
 凹形の店舗の中央へ人が進みやすいよう、両側の出入り口から中央へ向かってV形のメーン通路(幅約2.5メートル)を設置した。これにより出入り口付近での混雑が少なくなり、改装後の来店客は前年と比べて10%アップしたという。
 昭和44年の開業以来、大阪を代表する書店だった同店の売上高は平成5年度の140億円をピークに減少に転じた。現在は100億円を切る水準だが、起死回生の改装で、ジュンク堂新店に先手を打った形だ。
 紀伊国屋書店では、来店客の趣味や好みに応じて書籍を紹介する「本のコンシェルジュ」を育成するとともに、電子書籍事業への参入も検討しているといい、同社企画広報課では「ジュンク堂出店の影響は避けられないが、梅田地区の書籍需要が大きくなれば」と期待する。
 両書店に対し、「ブックファースト」を運営する阪急電鉄は梅田駅の改札口近くに3店のブックファーストを展開しており、「駅ナカの立地を生かして、雑誌を中心に旬な書籍で差別化する」と対抗心を燃やす。
 旭屋書店本店の中村不士夫店長は「JR大阪駅の北側にできるジュンク堂や紀伊國屋書店と、南側の当店はほとんど競合しない」と静観するが、キタの書店バトルは年末から来年にかけて激しさを増しそうだ。
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