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ソニー、ネットTVに活路 米で発売、新収益源狙う
 ソニーは16日、米グーグルの基本ソフト(OS)をテレビとして初めて搭載した「ソニー・インターネットTV」を米国で発売する。高精細なテレビ放送と、パソコン並みのネット検索機能を同時に楽しめるのが特徴。ソニーは新製品発売を機に、テレビ向けのビデオ配信サービスも展開し新たな収益源に育てる。テレビの事業モデルが大きく変わるきっかけにもなりそうだ。
 新製品は「テレビも視聴できるパソコン」のようだ。キーボードの付いたリモコンのボタンを押すと、グーグルでおなじみの検索ボックスが画面に表示される。キーワードを入力すれば、ネット上の動画や放送番組を分け隔てなく検索でき、クリック一つで目的の画面に切り替わる。
 あらかじめ備わっているソフト「ツイッター」を起動すれば、番組を見ながら感想をつぶやくといった使い方もできる。
 ソニーがネット対応テレビを投入する狙いは大きく3つある。
 第1はサムスン電子など韓国勢との競争で激しさを増す値下げ合戦を脱することだ。ソニーのテレビ事業は2009年度まで6期連続の赤字。新製品は599ドル99セント(24型)~1399ドル99セント(46型)の4機種で、同社の通常のテレビより200ドルほど高く設定した。
 第2はテレビを「売り切り型」から、販売後も利益に貢献する製品に転換すること。ネットテレビには動画共有サイト「ユーチューブ」など15種類のサービスを標準搭載した。ソニー自身も独自のビデオ配信サービス「キュリオシティ」を始める。米国ではすでに900タイトル以上の映像を配信しており、テレビ購入者が有料コンテンツを利用すれば、そのたびにソニーに収入が入る。
 今後は音楽やゲーム、電子書籍などの配信も計画する。グループ内で映画や音楽の子会社を持つ強みを生かし、ソフトとハードの融合を収益に結びつける要にネットテレビを位置付ける。
 第3はテレビを軸とした家電製品全般の競争力の底上げ。テレビがネットにつながれば、例えばカメラで撮影した写真や動画をテレビに送信したり、テレビ番組の続きを携帯電話で見たりするなど製品の利用方法が広がる。テレビ以外の製品でも互換性が高いソニー製を選んでもらえる可能性が出てくるとみる。
 グーグルは半年後にはネットテレビの基本技術を一般公開する予定で、ソニー以外にも同様の製品を開発する企業が出てくる。ソニーは先行する優位性を生かし機能改良などで常に他社をリードしたい考え。日本や欧州、新興国にもいち早く販売地域を広げ、ネットテレビならソニーといったブランドを確立できるかが課題になる。



ネットTV、機能パソコン並みに 世界各社が競う
 インターネットに接続可能なテレビにいかに付加価値をつけるか、電機各社は知恵を絞る。ソニーの新製品は、ネット検索最大手グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」と、米インテルのMPU(超小型演算処理装置)「アトム」を搭載。パソコンと同じ作業ができる点で、従来のネット対応テレビと一線を画す。テレビを進化させる競争が加速しそうだ。
 テレビ世界首位の韓国サムスン電子は、ネット経由でゲームなどのソフトを取り込める「スマートテレビ」を今春発売した。パナソニックはヤフーと共同でネット競売サイトを利用できるテレビを、2011年春に発売する。東芝は番組をより楽しめる情報をテレビに提供する「クラウド」型サービスに注力する。
 米ディスプレイサーチによると、ネット接続型テレビの世界出荷台数は14年に09年比8倍の1億1850万台と、市場の4割を占める見通しだ。
 これまでも電機各社はネット接続型テレビを販売している。だが、利用できるのはテレビ向け専用に映画などを配信する「アクトビラ」のような一部のネットサービスに限られていた。米アップルの高機能携帯電話「アイフォーン」のように、ネットからソフトを取り込み、製品購入後に機能を加えていくような事業モデルを、テレビでだれが構築するかが焦点だ。



若年層収入、女性が上回る
製造業不振、介護など伸びる 09年、産業構造変化映す
 単身世帯を対象にした総務省の2009年の調査によると、30歳未満の女性の可処分所得は月21万8100円と男性を2600円上回り、初めて逆転した。男性比率の高い製造業で雇用や賃金に調整圧力がかかる一方、女性が多く働く医療・介護などの分野は就業機会も給与水準も上向きという産業構造の変化が背景にある。諸外国に比べ大きいとされてきた日本の男女の賃金格差も転換点を迎えつつある。
 総務省がまとめた09年の全国消費実態調査によると、勤労者世帯の収入から税金などを支払った後の手取り収入である可処分所得は、30歳未満の単身世帯の女性が21万8156円となった。この調査は5年ごとに実施しており、前回の04年に比べて11.4%増加した。同じ単身世帯の若年男性は21万5515円で、04年と比べ7.0%減少。調査を開始した1969年以降、初めて男女の可処分所得が逆転した。
 背景にあるのは産業構造の変化だ。円高や中国をはじめとする新興国の経済成長に伴い、製造業では生産拠点などの海外移転が加速。就業者数は09年までの5年間で77万人減少した。
 仕事を持つ男性の20%超は製造業で働いており、女性の10%と比べて比率が高い。第一生命経済研究所の熊野英生氏は「ボーナスの削減や雇用形態の非正規化の影響を製造業で働く男性が大きく受けた」と分析する。男性の雇用者に占める非正規労働者の比率は07年時点で3割を超えた。女性は4割以上を占めるが、増加率は男性の方が大きくなっている。
 リーマン・ショックで製造業が打撃を受ける一方、女性の比率が高い医療・介護などは高齢化の進展で労働力需要が高まり、医療・福祉分野は09年までの5年間で就業者数が90万人増加した。完全失業率もこのところ女性が男性を下回っている。
 


(ものづくり 逆風下の挑戦)人件費圧縮の限界 税制・横並び戦略 見直しを
 「ここまで進んでいるのか」。米アップルが6月に発売したスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone4(アイフォーン4)」を分解した電機大手の技術者は息をのんだ。
 彼が驚いたのはアップルの設計力ではなく、それを中国の工場で組み立てた台湾EMS(電子機器の受託製造サービス)の技術力だ。
均質化する工場
 iPhone4の基板上に並ぶごま粒大の超小型電子部品。一つの部品の表面は0.4ミリ×0.2ミリメートルで、人間の手では扱えない。台湾EMSが日本製の先端実装機を使いこなしている証拠である。
 「台湾EMSは日本製の先端工作機械を年に数百台も導入している」(台湾の業界アナリスト)。iPhone4は制服を着た女性工員が並ぶ昔ながらの「中国の工場」ではなく、自動化が進んだ静かな工場で作られる。
 2010年3月期の日本の上場企業の製造原価に占める労務費の割合(単独ベース)は10.84%。10年前の13.39%から大きく減った。
 さらに自動化が進めば、世界のどこで作ってもコストは同じになる。もはや「中国や台湾の工場が強いのは人件費が安いから」という常識は通じない。先端技術は世界の生産現場を均質にしていく。
 では何が競争の優劣を決めるのか。一つは制度だ。
 「台湾でも広島でも製造コストは同じ。だからこそ、ビジネスの条件を同じにしてもらわないと(日本への)投資意欲がなえる」。エルピーダメモリの坂本幸雄社長は7月、日本経団連のシンポジウムで訴えた。
 日本の法人税率が高く補助金が少ないのは今に始まったことではないが、これまで日本企業は現場の生産性を高める「カイゼン」で不利を補ってきた。だがテクノロジーによる均質化はカイゼンの余地を奪う。
 自動車用金型で国内2位の富士テクニカと同3位の宮津製作所(群馬県大泉町)が、企業再生支援機構の出資を受けて経営統合する。日本のお家芸とされた金型産業が衰退した一因は、コンピューターを使った設計が増え試作部品用の金型需要が減ったことにある。「匠(たくみ)の技」はデジタルに置き換わった。
 均質化が進むにつれ、日本という国に本拠を持つこと自体が、抜き差しならぬハンディになってきた。だから日本の経営者が切実に「法人税減税」を訴える。日本の法人課税の法定実効税率は約40%。アジア諸国は20%台。この差はカイゼンでは埋まらない。
突然変異で進化
 均質化した競争の勝敗を左右するもう一つの要因は「戦略」だ。
 高機能携帯端末「GALAPAGOS(ガラパゴス)」を12月に発売するシャープ。日本製品が国内でしか売れないガラパゴス現象を逆手に取り「進化の象徴」との思いを込めた。町田勝彦会長は「世の中にないものを作って新しい需要を生み出す」ことが日本の突破口になると見る。
 同じものを安く作る競争だけでは、いずれ新興国にのみ込まれる。「日本固有の技術をもっと打ち出していくべきだ」(町田会長)。誰もが同じものを作れる均質化の時代。一歩抜け出すには「突然変異」を生む経営戦略と、それを後押しする政策が必要だ。
 法人税など制度面の不利、横並びの経営戦略、そして円高。日本の製造業は様々なハンディを、下請け企業を含めた現場のカイゼンで克服してきた。
 だがこれからは、それだけでは勝ち抜けない。制度や戦略のほんのわずかな差が、圧倒的な収益の違いとなって表れる。世界のものづくりは今、そんな緊張感の中にある。



日経社説
企業の“倒産先延ばし”は長く続かない
 景気実感が厳しさを増しているのに、企業倒産は低い水準にある。
 民間調査会社の東京商工リサーチによれば、2010年度上半期(4~9月)の全国の倒産件数は6555件と前年同期に比べ15.2%減った。上半期の倒産件数が7000件を下回ったのは4年ぶりだ。同業の帝国データバンクの集計では、倒産件数が前月までに13カ月続けて前年同月を下回った。
 6月から改正貸金業法が完全施行され、消費者金融がお金を貸しにくくなった。中小事業主の資金繰りが苦しくなると懸念されたが、倒産の増加にはまだ至っていないようだ。
 倒産が少ない舞台裏には、からくりがあり、素直に喜べない。
 1つは、亀井静香前金融担当相の肝いりでつくられた「中小企業金融円滑化法」だ。企業が借りているお金の期限が来て返済猶予を求めた場合、銀行はそれに応じる努力をせよと定めた。昨年12月の施行から今年6月末までに、同法に基づく猶予は累計で39万738件、13兆3959億円に達した。
 自見庄三郎金融担当相は13日の衆院予算委員会で、円滑化法について来年3月の期限延長も視野に入れ取り扱いを検討する考えを述べた。
 しかし、円滑化法を利用している企業の倒産は9月末までに30件発生した。地方の建設業や小売業を中心に返済猶予を2度、3度と繰りかえしてもなお、銀行との間で事業計画の練り直しが進まない例が増えた。
 展望のない企業の経営破綻のリスクを銀行が過度に抱え込めば、金融システムが再び不安定になりかねない。円滑化法は延長しないのが筋。もし延長を議論するなら、借り手の実態をきちんと調べるべきだ。
 倒産が少ないもう1つの理由は、信用保証協会の「景気対応緊急保証」だ。赤字の中小企業でも借り入れの保証を受けやすくしている。利用額は先週末現在で22兆円にのぼる。だが利用企業の倒産は1~9月に前年同期よりも2割近く増えた。
 政府は補正予算案に信用保証の拡充を盛り込むが、保証供与の効果が薄れつつあるほか、財政負担を伴う。放置すれば倒産するような企業については、こうした政策でいつまでも延命させるのは無理だ。
 倒産を抑えるには、第一に金融・財政政策で短期的な需要の落ち込みを最小限に抑えること。第二に内需分野での規制緩和など成長戦略を早く実行し、企業、特に海外展開をしにくいような中小企業が仕事を確保できるようにする必要がある。企業の業種転換を促す政策も大事だ。
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