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ゲーム産業を支える産官学のハッピーな関係
 カナダ・バンクーバー地域のゲーム産業を視察して、日本との違いを感じたことの1つは、「知識労働者(Knowledge Worker)」という考え方の定着ぶりである。バンクーバーがゲーム産業のクラスター(集積)地域としてどのように競争力を高めているのかを、このキーワードから読み解いていこう。
ゲーム開発者は知識労働者
 経営学者のP.F.ドラッカーは、「ネクスト・ソサエティ」(ダイヤモンド社)の中で、「知識労働者の特質は、自らを労働者ではなく専門家とみなすことにある」とし、知識労働者に不可欠な2つの教育を挙げている。1つは、知識労働者としての知識を身につけるための学校教育であり、もう1つは知識労働者としての知識を最新に保つための継続教育である。
 日本では、ゲーム産業は「娯楽」や「おもちゃ」という枠組みに入れられることが多い。しかし、現代のゲーム産業は数多くの専門知識で成り立っている。高度な専門教育を受けた知識労働者が求められる知識産業なのである。
 バンクーバーに限らず、日本とカナダのゲーム産業に対する認識の決定的な違いはここにある。カナダの政府関係者は当たり前のように「知識労働者」という単語を使う。少なくともカナダでは、ゲーム開発は単なる「娯楽」に関わる仕事ではない。
専門大学院に企業も協力
 バンクーバーでは、ゲーム産業の強さを維持するためには優秀な教育機関を持ち、高度なスキルを持った人材を育てていく必要があるとの認識が、産官学にしっかりと根付いている。
 その象徴が、2007年にスタートした「Centre for Digital Media」だ。これはゲーム、映画などデジタルメディア教育の専門大学院で、現地の総合大学であるブリティッシュコロンビア大学とサイモン・フレーザー大学、それにエミリー・カー美術大学、技術系の公立職業訓練校BCITの4校の学生が進学する。定員は70人で、専門分野の異なる人材が集まり実践的な教育を受けられる環境が特徴だ。
 もともと、バンクーバー地域最大のゲーム開発スタジオを持つエレクトロニックアーツ(EA)が中心となり、人材育成の必要を行政に働きかけたのがきっかけだった。これを受けて、ブリティッシュコロンビア州政府が06年に約40億円の設立予算を拠出し、この大学院が作られた。現在は行政からの直接的な援助はなく、授業料と企業などからの寄付金によって運営されている。
 現地のゲーム会社やCGスタジオなどに在籍している人材が、教育に深く関わっている点でも特徴がある。特にEAはゲーム開発者を養成するためのカリキュラム開発まで手がけたという。
 家庭用ゲーム機市場の低迷で、最近はバンクーバー地域でも多くのゲーム開発スタジオがリストラを実施しているが、「学生が就職先に困るということはない」とエグゼクティブディレクターのゲリー・シンクレア氏は語る。米ピクサーなど大手CGスタジオが進出したことで、デジタルメディア産業では常に人材が不足しているという。起業支援のプログラムは特に用意していないが、卒業生が設立したベンチャー企業はすでに7社に上っている。
狭い都市だから強い「コミュニティー」
 バンクーバーは都市の中心部がそれほど広くない。ダウンタウンの中心部は徒歩15分程度でほとんど歩いて回れるし、少し離れたところでも地下鉄で30分ほどしかかからない。街中を歩いていて、友人同士が偶然出会って挨拶するといった姿をよく見かけた。これは東京のような巨大都市ではありえないことだ。
 バンクーバーで産業クラスターが発展した理由として、多くの人が挙げるのが「コミュニティーの強さ」だった。お互いがお互いのことを知っている環境では、新しいビジネスを起こすときに協力者や助言役を見つけやすく、リストラ時にはセーフティーネットとしても機能する。
 滞在中に、たまたま「SIGGRAPHバンクーバー支部」という組織の月例会合があったので参加した。SIGGRAPHは米国のCG分野の学会組織だが、独立した支部が北米地域を中心に存在する。SIGGRAPHバンクーバーは月に1~2度の勉強会を行っており、毎回100~150人が参加しているという。その日は映画館を借り切り、映画「アリス・イン・ワンダーランド」のCGによるキャラクターデザイン手法についてメイキング講演が行われ、最後に映画を鑑賞して深夜に終わるという構成だった。
 SIGGRAPHバンクーバーは、現地のCGスタジオやゲーム会社、ベンチャーキャピタリストなどが中心となって運営している。ビジネスや技術の情報を常に交換できるこうした環境が、クラスター地域の下支えとなっている。
産業界が要望したゲーム開発減税
 ブリティッシュコロンビア州は今年2月、ゲーム開発会社向けの新たな減税措置を9月1日に導入すると発表した。同州で「ビデオゲーム開発」に携わる労働者にかかるコストの17.5%相当を減税するという新しい政策だ。
 この減税は、産業界の要望で実現した。ディズニーインタラクティブカナダのハワード・ドナルドソン副社長が地元の主要ゲーム会社13社に呼びかけて「BCインタラクティブ」という経営者団体を組織し、週1回のミーティングで政策提言の素案を作り、行政に働きかけたという。
 カナダ国内では、バンクーバーだけでなく他の都市や州もゲーム開発スタジオの誘致に力を入れている。この10年でゲームクラスター地域として急成長したモントリオールがあるケベック州は、最大37.5%もの給与を直接負担する仕組みを持つ。自動車産業など製造業の業績悪化でトロントが疲弊しているオンタリオ州は今年6月、景気刺激策として仏UBIの開発スタジオに今後10年間で2億6300万カナダドルを投じると発表した。このスタジオは約800人規模で、同社の看板タイトルの1つ「スプリンターセル」シリーズを開発している。
 そのため、ブリティッシュコロンビア州の減税は、他の2州に比べてまだ不十分という意見がある。しかし、北米のゲーム、映画産業の中心地でありベンチャーキャピタルなどの投資も活発なカリフォルニア州に近い西海岸地域という地の利があり、「少なくとも、他の地域と競争できる状態にはなる」と、ドナルドソン氏は期待を寄せていた。
地の利を生む戦略が重要に
 ブリティッシュコロンビア州も90年代までは、大学で専門教育を受けても就職先がなく、多くの優秀な学生が米国に流出していた。しかし、行政もデジタルメディア産業の育成に本腰を入れるようになったことで、米国からゲーム開発者がUターンする現象も起きているという。さらに、移民の条件を緩和するなどして、米国から優秀な人材を呼び込もうともしている。
 ゲーム開発は、本質的には場所を選ばない。人がすべてだ。だからこそ、バンクーバーのように産官学や地域コミュニティーが綿密に連携し、地の利を生み出す成長戦略がより重要になるのである。



与党大敗、過半数割れ…民主40議席台に
 第22回参院選は11日、投票が行われ、即日開票された。
 昨年9月に民主党が政権を獲得して以降、初の全国規模の国政選は、民主、国民新の連立与党が非改選議席を含め参院の過半数(122議席)を割り込み、大敗した。
 民主党は菅首相の設定した勝敗ラインの改選議席(54議席)を下回り、40議席台にとどまった。改選定数1の1人区で自民党に大きく負け越し、選挙区全体でも水をあけられた。
 自民党は堅調で、改選議席(38議席)を超えて50議席台となり、改選第1党になった。
 みんなの党は順調に議席を積み重ね、躍進した。首相は引き続き政権を担う意向を表明したが、民主党では首相と執行部の責任を問う声があがっている。同党は他党に連携を呼び掛けるなど、参院での多数派確保のための動きを始めた。ただ、野党には現状での連携に慎重論が強く、困難な国会運営を強いられそうだ。



消費増税論議、失速の懸念高まる 与党過半数割れで
 参院選で与党が過半数を割り込んだことで、菅直人首相が前のめりで打ち出した消費税増税の議論が失速する可能性が高まった。自民党などが対決姿勢を強めることが確実なためだ。増税で獲得した財源を成長分野に集中投資し、「強い経済、強い財政、強い社会保障」を実現するとした菅首相の「第三の道」路線も停滞を余儀なくされそうだ。
 消費税について、首相は参院選で与野党協議を呼びかけてきた。だが、首相が参考にするとした税率10%を掲げた自民党は「与野党協議は民主党のばらまき政策の撤回が前提だ」(谷垣禎一総裁)と主張。独り勝ちとなったみんなの党も消費税の増税には反対するなど各党の隔たりは大きく、与野党協議の実現は困難な情勢だ。
 また、首相が消費税増税を争点化させたことで厳しい選挙結果になったことを受け、民主党内の増税慎重派が勢いを増せば、論議自体が仕切り直しとなる可能性も十分にある。
 首相は消費税増税と合せて、所得税の最高税率引き上げや法人税率の引き下げにも前向きな姿勢だったが、一連の税制論議に影響が及ぶことは確実。その場合、ただでさえ主要国で最大の借金を抱える日本の財政に対する市場の評価はさらに厳しくなりそうだ。
 政府は7月下旬までに概算要求の基本方針を策定する予定だが、このまま政権運営が不安定化すれば、予算編成作業にも影響が及びそうで、菅首相が“生煮え”で持ち出した消費税問題の代償は大きい。



NEC、人事業務を中国移管 コスト減へ10万人分
まず給与計算や出張費精算
 NECはグループ全体の7割にあたる10万人分の人事関連業務を中国にある子会社に移管する。人件費やオフィス費用などが安い中国に移すことで、該当する業務のコスト半減を狙う。間接業務の中国への移管はソニーやヤマト運輸など国内企業に広がりつつあるが、規模ではNECが最大とみられる。生産や開発などの現地化に加え、間接業務でも中国を戦略的に活用する動きが活発になってきた。
 NECはまず給与計算や出張費の精算などの業務を移管。将来は財形貯蓄など福利厚生制度の利用登録、育児支援制度の申請内容のチェックなども担当させ、人事関連の業務量の4割程度を移す。社印が必要な証明書の発行などは日本に残す。



かつて30兆円市場を誇ったパチンコ業界、淘汰の時代へ
 産業界の規模を表すものに「1兆円産業」という言葉があるが、パチンコ業界もピークだった1995年には市場規模が、30兆円と報じられた。しかしそんなパチンコ業界も、最近ではきびしい状況に直面している。
 6月25日には、現代のパチンコ台の原形とされる「正村ゲージ」を開発したパチンコ店運営会社「正村商会」が、名古屋地裁に破産の申し立てを行うことが明らかになった。同社は、大手パチンコチェーンの出店攻勢によって経営が悪化したとみられている。今やパチンコ業界でも再編が行われる時代となり、大手のみが生き残る状況になりつつある。
 帝国データバンクは2008年1月のレポートで、すでに趣味の多様化によるライトユーザーの減少のほか、貸し付けを年収の3分の1以下と制限する総量規制を盛り込んだ改正貸金業法により、借金をしてまでパチンコ店に通うヘビーユーザーは減少すると指摘していた。
 改正貸金業法は今年6月18日に完全施行され、この指摘が現実化する。ある大手パチンコホール運営会社は今年1月、改正貸金業法が与える影響を試算し、6月の完全施行後、売上高が10%前後減少するという結果が出たという。
 近年のパチンコ業界の一つの大きな転換点となったのは2007年。この年に「パチスロ5号機問題」と呼ばれる規制が行われた。大当たりの連チャンが人気だった4号機パチスロ機が撤去されたことで、射幸性の高いパチスロを好むユーザーの足がホールから遠のいた。
 これによりパチンコホールは、機種入替のために多額の費用負担を強いられたが、金融機関・リース会社の融資意欲も一気に冷え込んだ。見込んでいた新規融資を受けられないといった事態に陥る業者が増え、パチンコ業界の倒産件数が2007年には96件、2008年には92件と高水準で続いた。
 ホール側はファンを呼び戻すため、設置する遊技機をパチスロからパチンコに変更し、また「1円ぱちんこ」など、少ない資金で長く遊べることをうたう低貸玉営業に力を入れる店舗も多く見られるようになった。
 各遊技機メーカーは生き残りをかけて、「北斗の拳」「新世紀エヴァンゲリオン」といった漫画やアニメ、特撮、ハリウッド映画といったキャラクターものから、韓国ドラマ冬のソナタ、歌手の倖田來未などの芸能人を起用したタイアップを多数展開している。芸能界ではタレントの神田うの、伊藤美咲などがパチンコチェーンやメーカーの社長と結婚するなど、華やかな側面も話題となっている。
 その一方で毎年のように、パチンコホールの駐車場の車内に放置された子どもが、熱中症で死亡するといった事故が後を絶たない。パチンコ・パチスロの攻略法や、打ち子、モニターといった名目の詐欺も多発している。パチンコ依存症の問題もある。全日本遊技事業協同組合連合会は、こういった問題に対し、非営利の相談機関のリカバリーサポート・ネットワークの設立を支援するなど対処を行っているが問題は根深い。パチンコが健全な庶民の娯楽となる日は来るのだろうか。


フィギュア付けた男性誌、即日完売 休刊が相次ぐ中、付録付き雑誌だけが大人気
 雑誌業界は1997年をピークに総販売額が減り続け、2010年に入ってからもその傾向は続いており、約60誌が部数の減少や広告収入の落ち込みなどで休刊を発表し、店頭から姿を消した。
 そんな中、好調なのが付録付き雑誌だ。20代の若い女性をターゲットにした宝島社のファッション雑誌「sweet」は、ヤングアダルト・ミセス対象のレディース向け雑誌では、これまで何度も売り上げ1位を記録している。「sweet」は毎号ブランドとコラボしたバッグや小物が付録となっていることで知られている。
 また、昨年11月には、宝島社はコスメティックブランド「イヴ・サンローラン・ボーテ」の付録付きのブランドムックを発売したが、この初版は同社の過去最高となる100万部だった。これに追随した各社は、こぞって「付録」で競い合っている状況だ。
 ネット上では、このような付録付き女性誌の情報交換を行う「フロクナビ」も登場し、多くの読者から口コミが寄せられている。
 最近では男性向け雑誌でも付録付きが増えつつある。美少女情報を紹介した雑誌「電撃G'smagazine」8月号では、美少女キャラクター「ねんどろいどぷち かなで」のフィギュアを付録に付けたところ、数日で売り切れとなった。またこの付録を大量に手に入れるため、同誌を数十冊も購入した男性がネット上で注目を集めた。
 あたかも付録との主従関係が逆転してしまったような雑誌。インターネットや携帯端末の普及により、その存在意義が薄れつつある中、今後の動向に注目したい。



エクソンがBP買収検討か…英紙報道
 【ロンドン=是枝智】11日付の英紙サンデー・タイムズは、米石油大手エクソンモービルが、メキシコ湾で原油流出事故を起こした英BPの買収を検討していると報じた。
 買収総額は最大1000億ポンド(約13・3兆円)にのぼる可能性がある。実現すれば、時価総額が4000億ドル(約35・2兆円)を超える巨大石油会社が誕生するだけに今後の推移が注目される。
 同紙は、オバマ米政権が10日、エクソンモービルや、シェブロンとみられる米石油大手に、BPの買収を阻まないと伝えたことなどを石油業界筋の話として紹介した。ただ、「実際に買収に動くかどうかは確実ではない」としている。
 BPの株価は、事故前と比べて4割以上も値下がりしており、ライバル会社からの買収リスクが高まっていると指摘されている。BPは買収に対抗するため、中東の政府系ファンドなどに協力を求めたとされる。



参院選民主敗北 バラマキと迷走に厳しい審判(7月12日付・読売社説)
 昨年夏の衆院選で政権交代を果たし、その後の政権運営の評価を問う民主党に対し、有権者は厳しい審判を下した。
 11日投開票の参院選で民主党は、菅首相が目標に掲げた改選54議席を大きく下回り、敗北した。千葉法相も落選した。連立与党の議席も、非改選を含め過半数に届かなかった。
 この結果、衆参両院で多数派が異なる「ねじれ国会」になる。民主党は、参院の過半数を確保するため、野党との連立を模索せざるを得ない状況だ。
 菅首相は記者会見で「責任ある政権運営を続けたい」と、続投の意向を表明したが、求心力の低下は否めない。首相を含めた党執行部の責任問題が浮上する可能性もあり、混乱は避けられまい。
 民主党の最大の敗因は、菅首相の消費税問題への対応だ。
 自民党の消費税率10%への引き上げ公約に乗る形で税率引き上げに言及したが、税率アップの狙いや使途などについて十分説明を尽くさず、低所得者対策に関する発言も揺らいだ。
 首相の方針に対して、民主党内から公然と批判が出るなど、党内不一致も露呈した。
 無論、鳩山前首相、小沢一郎・前幹事長の「政治とカネ」の問題をはじめ、米軍普天間飛行場移設問題の迷走、子ども手当などバラマキ政策の行き詰まりなど、前政権の失政も響いた。
 ◆自民が改選第1党に◆
 自民党は、今回の改選議席では民主党を上回った。公募による新人候補の擁立など選挙戦術も功を奏したとみられる。
 もっとも、自民党が本格的に復調したと考えるのは早計だ。
 民主党の敵失に乗じた面が大きく、比例選では民主党に及ばなかった。有権者は、民主党の“独走”を阻む役割を自民党に期待したのではないか。
 みんなの党は、公務員の大幅削減や天下り根絶などを唱えて、2大政党にあきたらない人々の票を吸い上げ、躍進した。
 しかし、今後は、その議席数にふさわしい責任を果たさねばならない。ポピュリズム(大衆迎合主義)的な政策や言動は、改めざるを得ないだろう。
 キャスチングボートを握ることを目指していた渡辺代表は、今回の獲得議席を基に、政局を混乱させることがあってはなるまい。
 ◆消費税協議を進めよ◆
 今回の選挙戦の特徴は、民主、自民の2大政党が、消費税率引き上げという増税論議を避けずに戦ったことである。
 選挙中の本紙世論調査では、税率アップについて3人に2人が「必要」と答えていた。消費増税への理解は着実に進んでいるとみていいようだ。
 菅首相は、選挙戦で消費税を含む税制の抜本改革に関する超党派の協議を呼びかけた。自民党も同種の「円卓会議」を主張した。
 だが、子ども手当などのバラマキ政策を放置し、協議を開始するのは無理がある。これらの政策を見直したうえ、消費税率引き上げに向けて協議を進めることが政治の責任と言える。
 民主、自民両党は互いに歩み寄って協議に入るべきだ。
 普天間問題では、工法決定などの約束期限が8月末に迫っている。日米合意を誠実に履行し、日米関係を修復の軌道に乗せて、11月のオバマ米大統領の来日につなげる努力が欠かせない。
 今回の参院選敗北を受けて、民主党内では、小沢前幹事長支持グループなどが、9月の党代表選に向けて、執行部への揺さぶりを強める可能性がある。
 しかし、首相が、消費税や普天間の問題で示した方針を変更するようなことがあれば、国民の信頼を一層、失うだけだ。
 鳩山前政権から大きく舵(かじ)を切った内政、外交の現実路線は、しっかり堅持すべきであろう。
 民主党は、衆院では絶対安定多数を維持しているが、国民新党を加えても、参院で否決された法案を衆院で再可決するための3分の2以上の議席には達しない。
 この点では、自民党の安倍、福田、麻生の歴代政権よりも、厳しい国会運営が迫られる。
 ◆連立は政策本位で◆
 菅首相は記者会見で、野党との連立を視野に入れ、政策面の協議を行う考えを表明した。
 その際、安全保障政策で隔たりのある社民党との連立が政治を混乱させたことを忘れてはなるまい。連立政権は、基本政策の一致を大前提とすることが肝要だ。
 各野党は、次期衆院選をにらみ、連立政権には参加しないとしている。このため、閣外協力や、法案ごとに協力し合う「部分連合」も追求せざるを得ないだろう。
 菅政権の前途には、臨時国会や党代表選など、多くのハードルが待ち構えている。
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