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クラウド、世界で連携 富士通とマイクロソフト
拠点、サービス共同で 年内にも
 富士通と米マイクロソフト(MS)はインターネット経由で利用者にソフトウエアや情報システムを提供する「クラウドコンピューティング」事業を共同展開する。両社が各国で運営するデータセンターを共同利用、MSのソフト開発力と富士通の顧客支援体制を組み合わせ、企業への提案力を高める。連携により両社はクラウド事業の世界市場開拓に弾みをつけ、先行する米セールスフォース・ドットコムや米グーグルに対抗する。
 富士通は世界16カ国、約90カ所でデータセンターを運営する。年内にも群馬県館林市のデータセンターでMSとの協業サービスを開始。米国や英国、シンガポールなどに広げる計画で、これらのデータセンターに、協業に必要な専用設備を配備する。富士通は自社サービスだけではクラウド需要の海外市場の開拓に限界があると判断し、MSとの協業に踏み切った。
 MSは昨年、米シカゴとアイルランドに巨大データセンターを建設するなど世界各地でクラウド事業展開を急いでいるが、アフターサービスなど顧客支援体制で手薄なため、富士通の協力を得ていく。また、富士通と組めばグローバル展開する日本企業との契約がしやすくなると判断した。
 両社で投資してデータセンターを増強することも検討している。データセンター建設には1棟あたり数百億円かかるため、共同利用で投資を効率化できる。
 MSは今年1月にクラウド専用サービスとして「ウィンドウズ・アジュール」の販売を始めた。アジュールはウィンドウズを利用している企業がこれまで使っていた自前の顧客管理、会計処理などの機能をそのまま使える特長がある。富士通は協業により海外のウィンドウズの利用企業を囲い込んでいく。
 クラウド専業のセールスフォースは世界で約7万7000社の顧客企業を持ち、日本でも経済産業省や損害保険ジャパンにサービスを提供している。グーグルは2006~09年に計7000億円規模を投じてデータセンターなどを整備しており、日本ではTOTOなどと契約している。
 米欧のクラウド事業で実績を持つセールスフォースやグーグルが日本市場で攻勢をかけ、日本のIT(情報技術)大手にとって脅威になっている。米調査会社のIDCによると、09年に160億ドルだった世界のクラウド市場は14年に555億ドルに拡大する見通し。



富士通、海外で競争力強化 大型M&Aも視野に
 富士通が海外戦略を加速する。米マイクロソフト(MS)と、ネットワーク経由でソフトウエアや情報システムを提供する「クラウドコンピューティング」事業で提携。海外で大型M&A(合併・買収)の検討にも着手した。クラウド分野では米国勢が大きく先行し、日本市場でも攻勢を強めている。富士通は提携やM&Aをテコに海外での競争力を強化、生き残りを目指す。
 「グローバルでサービスを提供するには、もはや自社のリソース(資産)だけではまかなえない」。9日の富士通の経営方針説明会で、山本正已社長はこう強調した。
 説明会では言及しなかった今回のMSとの提携も、技術・サービス力の補完が狙いだ。富士通は1990年代に英ICLと米アムダールのコンピューター大手2社を買収。両社をサービス会社に衣替えして、一定の顧客を獲得してきたが、海外で確実に売れるクラウドサービスは持っていなかった。今回、富士通はMSが持つソフト技術力を自社サービスに取り込み、クラウド事業の世界展開を本格化する。
 山本社長は9日の説明会でM&Aにも言及。「フリーキャッシュフロー(純現金収支)は今後毎年1500億円程度の黒字が見込め、資金の使い道としてM&Aは重要な手段だ」と述べた。買収相手としては海外のソフト開発会社や情報システム会社を想定しており、1000億円規模の買収も視野に入れている。同社はここ数年の構造改革で財務が大幅に改善しており、攻めの経営に転じて海外展開を加速する。2009年度に37%だった海外売上高比率を、11年度に40%に引き上げる方針だ。



KDDIが企業用スマートフォン、ヤマト運輸に5万台
 KDDI(au)は企業向けスマートフォン(高機能携帯電話)の開発・販売に乗り出す。基本ソフト(OS)に米マイクロソフトの「ウィンドウズモバイル」を採用し、ビジネス用に使い勝手を高めた新機種を東芝と開発。まず10月、ヤマト運輸の宅配便配達員向けに5万3000台納入する。金融機関や製薬会社などにも拡販を目指す。
 ヤマト運輸に導入するスマートフォンは無線で他の機器や情報端末と接続できる。モバイル決済端末から無線で決済情報を受信し、クレジット決済センターに送信したり、業務サーバーに15分ごとに集荷配送情報を自動送信したりする。
 インターネットを経由して新しい機能を入手したり、利用を制限したりするなど「クラウドコンピューティング」も可能にした。指紋による個人認証や紛失時には遠隔操作でデータを消去できる。防水・防じんで、大容量電池を搭載。屋外での業務や外回りの営業などで長時間外出していても電池切れせず、壊れにくい設計にした。
 個人向けスマートフォン市場では米アップルの「iPhone(アイフォーン)」やグーグルの「アンドロイド」が先行し、ウィンドウズモバイルは普及が遅れている。ただ企業で使われるパソコンと親和性が高く、業務システムと連携しやすいと判断、採用を決めた。これにKDDIの独自の画面操作ノウハウを組み合わせ、通話やメール、インターネット閲覧、カメラなどの使い方が一目で分かるようにするなど使い勝手を高めた。
 KDDIは製薬会社の薬品管理や銀行員や保険販売員の営業などでも需要が見込めるとみている。ヤマト運輸向けの端末をベースに、企業ニーズに応じた製品を設計し、導入を働き掛ける。



ファストリ、研究開発を中国に移管 工場との連携素早く
 カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、商品開発などを手掛ける中核機能を中国へ移管する。生産拠点などとの連携を強化し、海外市場での競争力を引き上げる。海外シフトを強める同社は幹部人材の育成などでも国際化を急いでいる。他のアパレルや玩具など内需型企業でも国外での成長力を確保すべく、日本中心の組織や人事を改める動きが相次ぐ。
 ファストリが移管するのは、ユニクロの商品のデザインなどを担う「R&D」部門と、生産管理を担当する「生産部」。両部門の大半の人員を移す考えで、規模や移転先などを詰めている。
 現在、ユニクロ商品の約85%は中国の委託工場が生産している。人民元の切り上げリスクなどを考慮して中国国外での生産を増やす方針だが、それでも7割近くの生産は中国に残る見通し。機能移転で開発過程での商品サンプルのチェックなど、生産現場との連携を緊密化し、商品の完成度を高める狙いがある。
 ユニクロの海外売上高比率は現在約1割だが、5年後に海外の販売額を国内と逆転させる目標。海外の店舗網が拡大すれば生産量の管理の精度が一段と重要になる。本部機能の中国移転によって、売れ筋商品の増産など「生産管理の面でも工場と距離が近いメリットが出る」(同社)という。
 ファストリは「海外出店の加速には人材の採用と育成が必要」(柳井正会長兼社長)と、人材のグローバル化も急速に進める。2011年の新卒採用は全体約600人の半分を外国人とする方針だ。これとは別に、取引先工場への技術指導を担う熟練技術者「匠(たくみ)」制度でも、日本人100%だった従来の方針を改めて、近く中国人などの登用を始める。
 さらに12年をメドに、社内の会議や文書を原則として英語を共通語にする。「会議は参加者のうち1人でも母国語が異なる場合は英語とし、文書では世界に流すものは英語に一本化する」(同社)というルールも決めた。コミュニケーションの円滑化に加え、社内に迎えた外国人が日本人と比べ処遇面で不公平を感じないようにする配慮でもある。



中国、グーグルの業務許可証更新
 米インターネット検索大手グーグルは9日、中国政府から中国でのネット業務に必要な許可証の更新を受けたと発表した。グーグルと中国政府はネット検閲をめぐり対立してきたが、中国側が業務許可証を更新したことで決定的な事態は回避した。
 グーグルは3月に中国本土での中国語のネット検索サービスから撤退。中国本土向けサイトの利用者には香港のサイトへ自動転送する形でサービスを提供していたが、6月末で中国での業務許可が期限を迎えたため新たなサイトで香港のサイトにリンクさせる方式に変更。新サイトの許可を中国側に申請していた。
 9日に新サイトを見ると、許可証の番号が記されている。グーグルは「中国政府が許可証を更新し、中国のユーザーにネット検索などのサービスを提供し続けられることを喜んでいる」との談話を出した。



政党CM、テレビ離れ 「費用対効果が…」
 今回の参院選で、各政党のテレビコマーシャル(CM)離れが進んでいる。昨年の衆院選ではインターネットの政党CMが話題を呼び、各党はさほど費用をかけず“ヒット作”次第で注目される「ネットCM」へシフトしている。一方、テレビCMには「多額な金をかけるなら演説など他のことに使う」と冷淡で、中には経費削減策でとりやめる党も現れた。
 「テレビはとにかく金がかかる。財政難もあり、今後は減らさざるを得ない」
 自民党広報戦略局はこう明かす。自民は今回、谷垣禎一総裁が出演するテレビCMに加え、小泉進次郎衆院議員(29)出演のCMを数億円の広告料を支払って放映しようとした。しかし日本民間放送連盟(民放連)の「政党CMは党首の出演が原則」との基準などから、各局が断った。
 小泉氏のCMはもともとネット用に制作しネット上で公開中。広報戦略局は「今後は低コストでも有権者の心をつかむネットの利用法を模索したい」と話す。
 平成13年の参院選からテレビCMを続けてきた共産党は、「費用対効果が疑問」(広報部)として今回は中止。幸福実現党は昨年の衆院選で放映したが、今回は新聞広告に絞った。
 民主党と公明党は今回も放映中だが、国民新党は広告効果を考え、亀井静香代表がピッチャーにふんし元野球選手の候補を応援する形のCMを関西のローカル局で放映した。
 選挙プランナーの松田馨さん(30)は「国民の9千万人がネットを利用する現在、マスメディアの情報をミニブログのツイッターで議論するなどすでに活用は広がっている。今後は政党側もテレビCMから携帯電話の政党ホームページへ誘導するなど、既存メディアとネットを組み合わせた手法が進む」とみる。



米為替政策報告書、中国の動向注視
 【ワシントン=岡田章裕】米財務省は8日、主要な貿易相手国・地域の為替政策に関する為替政策報告書を公表し、人民元相場の弾力化方針を評価した上で、中国の為替操作国への認定は見送った。
 ただ、「注意深く定期的に人民元の切り上げを監視していく」とし、引き続き、中国の為替政策を注視する考えを示した。 今回の報告書では人民元は「過小評価されている」と指摘したものの、厳しい表現は盛り込まなかった。オバマ大統領は6月の記者会見で、「過小評価された人民元により、中国は貿易上、著しく有利になっている」と厳しく批判したが、報告書では「対中圧力」の“さじ加減”に配慮して中国の反発を避けることで、切り上げの成果を得る狙いがあると見られる。
 米中両国の人民元切り上げを巡る駆け引きは、複雑さを増している。強い圧力には中国が反発し、切り上げが遠のく一方、圧力をかけないと動かないことが明確になってきたためだ。
 米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は9日、ガイトナー米財務長官が今年4月、「人民元を切り上げなければ為替操作国に認定する」と中国側にひそかに圧力をかけていた、と報じた。米財務省は、4月に予定されていた報告書の公表を6月下旬の主要20か国・地域(G20)サミット(首脳会議)後に延期した。米国は中国の出方をうかがう姿勢に転じたとの見方が強まる一方で、水面下では圧力もしっかりとかけていたことになる。
 オバマ大統領はその後、切り上げの機運が乏しいとみるや、6月中旬にG20首脳に書簡を送り、人民元問題をサミットの主要議題として取り上げるよう働きかけ、人民元相場の弾力化方針を引き出した経緯がある。
 オバマ大統領はG20サミット後の記者会見で、中国の切り上げ姿勢は、「3か月ではっきり分かる」として、期限を明示した上で中国側に対応を迫った。10月の次回の報告書発表までの人民元相場の動きを見定めた上で、切り上げペースが不十分なら、為替操作国に認定することも辞さない構えとみられる。
 為替操作国に認定すれば、正式な2国間協議に移ることになるが、協議は難航が必至だ。硬軟を使い分けながら切り上げを迫る米国に、中国がどう対応するのか。両国の駆け引きはますます激化しそうだ。



日本車、米市場で販売奨励金膨らむ 6月1台21万6000円
 米国市場でホンダなど日本車メーカーの販売促進費用が膨らんでいる。販売店での値下げ原資となる販売奨励金は6月、3社平均で1台当たり2439ドル(約21万6000円)と2カ月連続で上昇。リコールなどの影響で販促を強化し過去最高水準だった3月(2542ドル)に迫った。米景気の減速懸念が広がる中、販売維持のために積み増しを余儀なくされている状況だ。高水準が続くようだと2011年3月期の収益が圧迫される可能性がある。
 米調査会社オートデータの集計によると、6月の3社平均の米販売奨励金は金融危機の影響が出ていた前年同月より15%増えた。ゼネラル・モーターズ(GM)など米ビッグスリー平均も3513ドルと5カ月連続で増えたが、米ビッグスリーは金融危機時の08年9月比で1割減少。逆に日本勢は5割増え、差が縮まっている。
 特にホンダの6月の奨励金は2135ドル(5月比では4ドル増)と過去最高水準だった。ガソリン価格下落でホンダの品ぞろえが少ない大型車に需要が流れているうえ、中・小型車分野で韓国・現代自動車との競争も激化。主力の「アコード」などで膨らんだ。トヨタ自動車も5月比60ドル増の1983ドルと3月に次ぐ高さ。日産自動車を含め3社がそろって前月よりも増えた。
 6月の全体の米新車販売台数は前年同月比では増えたものの、2カ月ぶりの100万台割れとなった。個人消費回復にブレーキがかかっており、足元の販売増は高水準の奨励金に支えられている面もある。
 7月以降も今の水準が続くようだと、北米事業の収益が悪化する懸念がある。例えば、ホンダは今期の奨励金を前期比横ばいの1台当たり1400ドルと想定しているが、4~6月平均は2100ドル弱と想定を上回るペースで推移している。前年同期との比較でもトヨタの4~6月は2割強、日産も同4%増えている。
 また「奨励金頼みでしか車が売れない状況が続くと中古車の価値も下がりかねない」(外資系証券)。前期まで北米事業の収益を支えてきた金融事業で、リース車両の価値低下に伴う思わぬ評価損が発生するリスクも増す。



(日経社説)世界の電池市場で日本の技術を生かせ
 温暖化対策で太陽電池や蓄電池の需要が拡大している。技術のある日本企業にとって大きな商機だ。
 ただし電池には海外企業も力を入れ、急速に日本勢を追い上げている。液晶パネルのように価格競争に陥っては、せっかくの成長分野を生かせない。企業は技術を利益に結びつける工夫をし、巻き返してほしい。
 太陽電池の世界需要は2020年に、08年の5倍の10兆円になるという試算がある。蓄電池は電気を効率的に使う次世代送電網用だけで、向こう20年間に日米欧で約70兆円の需要が生まれるといわれている。
 こうした有望市場に海外企業も次々に進出している。太陽電池は世界の生産量(発電能力の合計)に占める日本企業のシェアが05年は5割近かったが、中国や欧米勢に押され現在は1割ほどとみられる。韓国のサムスン電子や現代重工業は今後、積極的に設備投資する計画だ。
 蓄電池の代表格であるリチウムイオン電池も韓国や中国企業が技術を高め、世界の生産量シェアの6割をもつ日本企業の強敵になっている。
 量産効果でコストを下げ、安さで勝負するのが海外企業の戦略だ。太陽電池は日本製の半値以下の輸入品も出てきた。日本勢は海外生産拡大などコスト削減を急ぐ必要がある。
 だが、価格競争に陥っては利益があがりにくい。三洋電機や三菱電機は太陽電池で世界最高の発電効率を競い、日本企業は電池技術で優位にある。技術力を生かす知恵がいる。
 重要なのは電池だけでなく、送配電設備などを含めたインフラとして提案し、付加価値を高めることだ。
 インド西部のグジャラート州では日立製作所、京セラ、東京電力などが、太陽電池、蓄電池、送配電網を合わせた電力システムや水処理設備などを一体で建設する計画だ。電池単体の価格競争と一線を画せる。
 電力設備の需要は海外が旺盛だ。国内では、家庭や企業が太陽電池などで起こした自然エネルギーを電力会社が買い取る制度が11年度にも本格導入される。電池の需要が増えるが、電池メーカーは電力会社などと組み海外受注にも注力すべきだ。
 家庭で電気を自給自足できるよう、大和ハウス工業は来年、太陽電池と蓄電装置を組み合わせたシステムを販売する。これも電池の付加価値を高める例だ。
 蓄電池や送電網などを制御する日本の技術を国際標準にする努力も必要だ。実現すれば電池や制御機器が世界で売りやすくなる。国際標準をとるために、経済産業省は世界各国への働きかけを強めてもらいたい。
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