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新聞、テレビはツイッターの速報に追いつけない 
尖閣ビデオ流出があぶり出した大メディアの権威崩壊
 深夜、「そろそろ原稿でも書くか」とマックの画面でワードを開いて打っていた。横のウインドウにはツイッターのタイムラインが流れている。
 ツイッターは簡単に言ってしまえば巨大な井戸端会議のようなものだ。面白いニュースがあると口コミで流れてくる。ラジオ代わりにちょうどいい。
 と、急にツイートがどかどか増え始めた。「尖閣の中国漁船が衝突する場面がYouTubeに流れてますよ」「漁船衝突ビデオが流出したって本当か」「どこで見れるんだ」と、文字通りウインドウが「蜂の巣をつついたような騒ぎ」になった。
 あれよあれよという間に「ここで動画発見」とリンクが張られ、「時事通信が『政府、本物の動画と確認』と速報」と、まあ、すごいスピードだ。とうとう、ツイートが増え過ぎたのか、しばらくサーバーがダウンしてしまった。
記者も読者もフラットに同じ場所に並んでしまった
 ふと「この猛スピードで生ニュースが流れ込んでくる感覚、どこかで経験したことがあるな」と考えてみると、新聞社時代の泊まり勤務とそっくりだ。
 「デスク」と呼ばれるニュースの編集責任者のアシストをするのだが、「六角デスク」と呼ばれる文字通り六角形の机に座っていると、支局が送ってく る全国のニュースはもちろん、全日本や海外のテレビニュース、共同や時事通信の速報やフラッシュ等々、世界のあらゆるニュースが滝壺のように流れ込んでくる。あの時のスリルに似ている。
 考えてみるとすごいことだ。ツイッターにつながったパソコンや携帯端末を持っている人は、どこにいようと全員、新聞社やテレビ局のニュースセンターと同じスピード、同じ量のニュースを受け取っているのだ。
 企業メディアの記者も読者、視聴者も、フラットに同じ場所に並んでしまった。新聞社でそういう現場にいた私でもエキサイトするのだから、1次ニュースが発生する場面にリアルタイムで居合わせた(これを記者たちは「現場」と呼ぶ)ことがない人には、麻薬的な面白さだろう。これでは新聞・テレビの「読者、視聴者より早く大量のニュー スに接することができる」特権的な立場など、こっぱみじんである。
 さあ、続報がどんどん来たぞ。「産経新聞はウェブ版で流出を速報した」「さあ、新聞各紙さん、朝刊はどうしますか? 締め切りギリギリですよ」(締め切り時間は社外秘なんだが。泊まりの新聞記者がツイートしているんじゃないか?)と、見透かしたようなツイートが並ぶ。
 確かにその通り、ギリギリである。ここまで手の内を明かされては新聞社のみなさんもさぞかしイヤだろう。ニュースルームに見学者が立ち並んでヤジを飛ばしているようなものだ。
 私もYouTubeでその「流出ビデオ」を見た。なるほど。4~6分のビデオに何本かつきあっていると、確かに中国漁船が海上保安庁の船に横から突入している。こりゃひでえなあ。この漁師、なんて乱暴なヤツだ、と思う。ホントに漁師か? 「偽装工作船」じゃないか? しかし「sengoku38」って一体誰だ?
読者が体験した1次ニュースを後追いで報じる大メディア
 一夜明けて11月5日。朝日新聞は朝刊の最終版1面にギリギリ、関連記事なしに突っ込んでいる。その日の夕刊では、1面トップから社会面まで全面展開していた。
 しかし、夕刊を読んでいて愕然とした。記事が紹介する「ビデオの内容」を、全部すでに知っていることに気づいたのだ。そう言えば、記事の見出 しは「尖閣ビデオ、ネット流出」とある。私が前の夜にマックで見ていたビデオが「直接情報」で、新聞の報道はそのビデオの記事、つまりは「間接情報」なのだ。
 なぜ12時間以上遅れて、自宅の机の上で起きた出来事(尖閣ビデオ流出)を、「記者が取材→紙面を編集→輪転機で印刷→トラックで配送→販売店から配達」と回り回って読まねばならないのか。まったく呆然とするほかない。
 他のメディアの中で起きた出来事を新聞が追いかけ、ニュースとして報道することは、これまでにもあった。例えば、テレビの討論番組に出た政治家の発言を、新聞が記事にする。先日、小沢一郎氏がインターネットの「ニコニコ動画」のインタビューに出演した時の報道も、それと似ている。
 が、今度は「インターネットに流れ出たビデオの内容」がニュースではなく「インターネットにビデオが流れ出て、多数の国民がそれを見た」ことそのものがニュースなのだ。読者の方が1次ニュースを先に体験してしまうなんて、過去にはなかった。
尖閣ビデオは国民に見せて当たり前
 流出そのものは、どっちみち馬鹿げた空騒ぎだと思う。なぜなら、こんなビデオはさっさと洗いざらい公開しておけばよかったからだ。
 YouTubeに動画をアップして、政府・首相官邸なり外務省なりのウェブサイトのエンベッドURLを張り付けるだけのことだ。ノーカットで流せばよかったのだ。隠したから、インターネットで話題沸騰、議論百出、沸点まで上昇したところで流出した。それだけのことだ。
 もともと、すべての政府が持つ情報は国民のものなのだ。だから本来尖閣ビデオの公開は「情報公開」ではなく「情報返還」と呼ぶべきである。敵や不穏の輩が知ると国民の安全に支障が出る情報だけ、例外的に「機密」扱いが許されるのだ。
 官僚(外交官)も国会議員も政治家も、記者クラブ系マスコミも、長年の情報独占にすっかり頭脳がふやけてしまったのだろう。ビデオが撮影された時点で「これは一刻も早く国民に見せなければ」「インターネットに流出したら、そっちの方がダメージが大きい」というリスク感覚があれば、こうはならなかったと思う。記者クラブ系メディアさえ押さえてしまえば、情報を統制できるという時代は終わっているのだ。
 ビデオを見た国民が中国への態度を決めればいいのだ。「中国漁船はけしからん」「船長起訴」と民意が沸騰するなら、政府もそうすればいい。政府は国民の代表ではないか。
 そしてギャアギャア噛みつく中国に「我が国は貴国と違い民主主義国なので、民意が最優先する」と胸を張って言えばいい。ビデオを見た国民が「中国を怒らせてはまずい」と言うなら船長を釈放すればいい。
 米国が文句を言ってきたら「我が国は貴国と同じ民主主義国なので、民意が最優先する」と堂々と主張すればいい。そういう「情報公開」プラス「民意の判断」こそが、長期的には国内外の味方を増やし、外交力として蓄えられる。それこそが「戦略的思考」というものではないか。
古びた権力インナーサークルがある限り、流出は不可避だった
 それにしても物悲しい。「政府~政治家~記者クラブ系マスコミ」という、1955年体制のまま変わらない、カビの生えたような日本の権力インナーサークルでは、今回の惨事は不可避だっただろう。
 (1)政府がインターネットでビデオを公開しようとすれば、記者クラブ系マスコミが反対する。地上波テレビは時間枠が有限だから、ノーカット44分はつらい。どうしても編集せざるを得ない。米国なら、ケーブルテレビでCNN、それが無理でもC-SPANがノーカットに近い形でやってしまう。もちろん ネットニュースメディアにも流れまくるだろう。
 (2)編集してマスコミに流すにしても、国会議員が「その前に国民の代表である我々に」と言い出す。そして見せたとたんに「これを一般公開すると影響が懸念される」とか言い出して、公開しない。実際、そうなった。
 つまり日本の権力インナーサークルは、「新聞」「地上波テレビ」(プラス通信社)という70年代のメインメディアを軸に情報戦略を組み立てている。その外にあるインターネットは、ないものとして考えるか、できるだけ軽視しようとする(だから、記者クラブにネットメディアを加入させたがらない)。そんな情報統制感覚は、ネットメディア時代の感性から30年も40年も取り残されている。
 「誰でもいつでもどこでもマスへ発信できるメディア」がすぐ横に完備しているのに、民意が沸騰しているビデオが非公開のままにされたのだから、むしろ流出しない方が不思議だ。
 まるで、昭和の木造家屋のような老朽化した建物に、ガスがぴちぴちに充満していたようなものだ。火花ひとつで大爆発である。そして本当にそうなった。愚かの極みである。
ソ連崩壊を彷彿させる歴史的な権威崩壊だ
 権力サークルにいない国民も、喜んでいてはいけない。尖閣ビデオ事件の本当の敗者・被害者は日本国民である。流出したビデオが、撮影された元データ全部であるという保証はどこにもないからだ。
 当面、日本人は「あのビデオにはまだ公開されていない部分があるのではないか」「まだ政府は何かビデオの他にも隠しているのではないか」とう疑心暗鬼に振り回されるだろう。
 これからも、政府が何か大きな政策決定をする時(例えば消費税値上げなど)には、国民の間でこの「何か隠しているのではないか」という不安が強迫神経症的に反復するだろう。ウォーターゲート事件以降の米国人が連邦政府をまったく信用しなくなったのと同じように。
 こうして「官僚~政治家~記者クラブ系マスコミ」という権力インナーサークルは、情報戦でインターネットに歴史的敗北を期した。
 ナチス・ドイツを負かして以来「不敗のヨーロッパ解放軍」神話を誇っていたソ連陸軍が、89年にアフガニスタンでゲリラ軍にケチョンケチョンに負けたのに似ている。「ソ連って意外に弱いな」と見抜いた東欧諸国が離反し、ソ連は3年後に崩壊してしまう。
 そういう歴史的な権威崩壊を、今、私たちは目撃している。



KDDI、位置情報ゲームの総合サイト開設 コロプラと提携
 KDDI(au)は10日、同社の携帯電話向けサービスとして、位置情報を使ったゲームの総合サイトを11日にも開設すると発表した。位置ゲーム開発・運営の実績があるコロプラ(東京・渋谷)がゲーム開発の仕組みを公開し、様々な企業からコンテンツを募る。位置ゲームは消費者の誘導や販売促進などで注目が集まっており、KDDIはコンテンツを強化して他社との差別化を図る。
 位置ゲームは利用者が携帯電話の全地球測位システム(GPS)機能を使って、自分のいる場所や実際に移動した距離をゲームサイトに申告し、移動距離に応じて得点を稼いだり、ゲーム内で使える仮想通貨やアイテムを入手したりする。提携店での購入額も得点の目安になる場合もあり、販促ツールとしても注目が集まっているという。
 KDDIは利用者が複数の位置ゲームサイトに自分の位置情報を一斉送信したり、仮想通貨を共通で利用したりできる環境を整備。まず11日に従来型の携帯電話向けに提供し、11月下旬にはスマートフォンにも対応させる。コロプラのゲーム会員数は現在150万人を超えているという。



米電子書籍市場3.2倍に ペーパーバック抜く公算
米調査会社のフォレスター・リ サーチは9日までに、2010年の米国の電子書籍市場が前年比3.2倍の9億6600万ドル(約790億円)に達するとの予測をまとめた。米アマゾン・ドット・コムが割安な専用端末を発売するなど電子書籍を読むための環境が整いつつあり、手ごろな価格で人気を集めたペーパーバックの売上高を上回る可能性が高まっている。
 米出版社協会(AAP)によると、スーパーや空港などで販売する割安な「マスマーケット・ペーパーバック」の市場は09年に10億4200万ドルだった。10年は8月まで6カ月間連続で売上高が前年同月比で2ケタ減になるなど市場縮小に歯止めがかからず、この基調が続くと電子書籍に抜かれる可能性が高い。
 フォレスターが4~6月期に過去6カ月間に1冊以上の書籍を読んだ成人約2800人を対象に調べたところ、本の入手手段は「図書館での貸し出し」(38%)などが多く、「電子書籍を購入」は7%にとどまった。
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