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「Facebookと違う“極”を作りたい」 mixiの戦略、笠原社長に聞く
 ミクシィは9月10日に開いた業界関係者向けイベントで、大胆なAPIの開放や、他社との協業を発表し、オープン化に大きくかじを切った。mixiのソーシャルグラフを開放し、ソーシャルネットワークサービス(SNS)から「ソーシャルグラフプロバイダー」(SGP)に転換。中国・韓国最大のSNSと国際的なアライアンスを結んだことも発表した。
 その戦略は、2007年からプラットフォームのオープン化に取り組み、5億人が利用する世界最大のSNSに成長したFacebookに似通っている。「目指しているものは、Facebookにすごく近い」と笠原健治社長は認めつつ、「Facebookに対抗するというわけではないが、もう1つ別の極を作っていきたい」と意気込む。
オープン化でネットを活性化したい
 mixiはオープン当初から最近まで、ユーザーからの招待状がないと利用できないなど「クローズド」なサービスだった。だが07年末、アプリプラットフォームやAPIを開放する方針を示し、09年には「mixiアプリ」を公開。10年3月には招待状がなくても使える登録制を導入するなど、徐々にオープン化してきた。
 今月10日には、外部サイトにHTMLコードを貼り付けるだけで、mixiと手軽に連携させられる「mixi Plugin」と、外部サイトや情報家電に組み込めるAPI「mixi Graph API」の提供を発表。第1弾として、ヤフーや楽天、ディー・エヌ・エー(DeNA)などの30社50サービスが、「mixiチェック」に対応した。パナソニックなど家電メーカーとも連携を協議。今後、ネット家電がmixiにつながる例も増えていくとみられる。
 オープン化の狙いは、「全体のパイを広げる」ことだと笠原社長は話す。mixiのソーシャルグラフがさまざまなサービスと連携することで、インターネット全体のユーザーやネットの利用シーンの拡大につながっていくことを期待する。「ソーシャル化によってサービスの付加価値が上がり、ネットを使う時間が増え、活性化していけばいい」
 例えば「Yahoo!トピックス」に「mixiチェック」が導入されれば、気になるニュースについて友人とシェアでき、ニュースやサービスそのものへの注目度や利用者数が増えると見込まれる。テレビレコーダーがmixiにつながり、録画予約情報が「mixiカレンダー」で共有されれば、友人が見ている番組をチェックしようとmixiの利用率が高まるかもしれない。
 「インターネットはソーシャルネットになっていく」――mixiのオープン化や、Twitterのようなソーシャルグラフを持ったサービスの普及で、Webでトラフィックを集める手段が検索エンジン最適化(SEO)からSGO(ソーシャルグラフ最適化)に移っていくと展望。その上で、「SGOは“魔法の杖”ではない」とし、「SEOが試行錯誤の後に成熟していったように、チェックを使うのが最適なのか、ボイスやカレンダーと連携したほうがいいのかなど試行錯誤してもらいたい」と期待する。
課金や広告の仕組みも開放へ
 mixiにとっては、ソーシャルグラフをハブにしたサービスが広がることで、mixiの利用者・利用頻度が拡大し、広告収益アップにつながる。mixiのAPIを使っている企業向けに、課金や広告インフラを提供し、収益の一部をシェアするといった取り組みも計画している。
 例えば、mixiチェックと連携したECサイトやGroupon型サービスで、mixiの課金インフラを使って決済まで可能になったり、mixiチェックを導入したネットメディアで、mixiに登録されたユーザー属性に基づくターゲティング広告を導入したり――といったことが可能になる見込みだ。
どこも競合ではない
 オープン化に伴い、ヤフーやDeNAなどこれまで競合とみられてきた企業とも手を組んだ。「どこも競合ではなく、パートナーだと思っている。お互いに自社の強みを生かし合いながら、ユーザーの利便性を上げ、パイを広げられる」と笠原社長は話す。
 一方グリーは9月10日、ミクシィの発表に合わせるように、GREEの「いいね!」ボタンをオープン化。mixiと正面から対決していく姿勢を明確にしている。
 笠原社長は、「GREEさんもmixiチェックをご利用いただけるといいのではと思う」と余裕の構え。mixiのソーシャルグラフは現実にひも付いているが、GREEのそれはゲーム中心に構築されているため競合しないと考えているため。DeNAはその考えのもと、ソーシャルグラフはmixiに依存し、モバゲータウンはゲームサービスに特化する方針を打ち出している。
 「ゲームコミュニティーとソーシャルネット両方を同じサービス内で追求していくというのは結構難しいのではないかと思う。GREEもソーシャルネットでやっていくならガチンコになるが、今はゲームコミュニティーだと思っている。その場合はチェックも使っていただければ、お互いメリットがあるのでは」
Facebookとは違う“極”を作りたい
 ソーシャルグラフをオープン化し、サードパーティーと連携していく戦略では、Facebookが大きく先行。「Facebookはmixiと同じ04年2月に始まった。目指しているものはごく近く、動きもしっかり見ているので、影響される部分というのはあるとは思う」と笠原社長は認め、「ソーシャルで何ができるかがよく分かっている企業」と評価する。
 中国最大のSNS「人人網」(Renren)、韓国最大のSNS「Cyworld」との連携も発表。欧米などで「(Facebook以外の)現地にナンバーワンSNSと話をしている」という。mixiにアプリや連携サービスを提供する企業が国際展開しやすいよう、APIの仕様統一などを図っていく。
 国際的なアライアンスの狙いを笠原社長は「Facebookが現状、世界最大のプラットフォームになっている。そこに対抗するわけではないが、もう1つ別の極を作っていきたい」と語る。「例えば、米国で有力なアプリ事業者が今後世界展開する際、Facebookに出して終わるのではなく、もう1つの選択肢として存在感を打ち出したい」
 Facebookは今年1月に日本法人を設立。日本の携帯電話に対応したり、位置情報と連動サービス「スポット」機能をスタートするなど、日本での攻勢を強めつつある。
 「SNS市場は発展段階。世界の利用者数トータルでも10億人行っておらず、世界全人口68億人と比べるとまだまだ。いまからFacebook対抗とまでは考えていないが、Facebookで十分という感じになるのはもったいないいし、早過ぎると思っている。今の段階から、もう1つの“極”を作りたい」



ツイッター、画像・動画も一覧表示 初のHP刷新
 【シリコンバレー=奥平和行】ミニブログ大手の米ツイッターは14日、ホームページ「twitter.com」を刷新すると発表した。これまでは画面全体に利用者の投稿を掲示していたが、画面を真ん中で分割して右側に投稿に関係する画像や動画などを一緒に表示できるようにした。画面を切り替えることなく必要な情報を得られるようにして利便性を高める。
 米サンフランシスコの本社でエバン・ウィリアムズ最高経営責任者(CEO)が記者会見して説明した。投稿に含まれるURLをもとに関連する画像や地図などを表示する仕組みで、米グーグル傘下の動画共有サイト「ユーチューブ」や動画中継サイト「ユーストリーム」など16のサービスに対応する。同日から順次、新ページに切り替える。
 画像や動画に加え、投稿した人のプロフィルや関連する投稿も同じ画面で見られるようにした。従来、こうした情報を見るためには画面を切り替える必要があった。ツイッターは2006年にサービスを開始、ホームページの全面的な見直しは今回が初めてになる。
 記者会見でウィリアムズCEOは1日あたりの平均投稿件数が7月に9000万回になったと説明。さらに高機能携帯電話(スマートフォン)などに比べてホームページを通じてツイッターを使う利用者が多く、ホームページの刷新により「より素早く必要な情報を探せるようになる」と説明した。
 ページ刷新による収益への貢献については言及を避けたが、「様々な可能性がある」と指摘した。同社幹部は、ページ刷新で「これまで以上にサービスにどっぷりとつかってもらえるようにしたい」と説明。新ページの導入により1つの画面でできる作業が増えれば利用者がそこにとどまる時間が長くなり、広告媒体としての価値が高まるなどの効果がありそうだ。
 利用者が手軽に情報の発信や共有をできるソーシャルメディアをめぐっては、各社がサービスを拡充して“越境”するケースが増えている。
 交流サイト(SNS)最大手の米フェースブックは8月に位置情報を利用したサービスを開始、同分野に特化していた米フォースクエアなどの“陣地”に攻め入った。ツイッターもホームページの刷新で関連する情報をまとめて表示できるようになると利便性が高まり、フェースブックなどと一部で競合する場面も出てきそうだ。



インテルもアプリ販売サイト ゲームなど800タイトル
 【シリコンバレー=奥平和行】半導体最大手の米インテルは14日、同社のMPU(超小型演算処理装置)を搭載したノートパソコン向けに、ゲームなどのアプリケーションソフト(アプリ)の販売サイトを開設したと発表した。スマートフォンなどで普及するアプリの仕組みをノートパソコンにも導入、省電力MPU(超小型演算処理装置)「アトム」の普及につなげる。
 「インテル・アップアップ・センター」を米国で開設した。日本など海外では2011年から始める見通し。
 米国では第1弾として、アトムを搭載した小型パソコン「ネットブック」での利用に適したゲームや音楽、電子書籍など約800のアプリをそろえた。書店大手の米バーンズ・アンド・ノーブルやゲーム大手のコナミなどがアプリを提供する。有料アプリは1日試用してから購入できる。
 アプリの販売サイトでは米アップルや米グーグルなど携帯電話や多機能携帯端末に搭載する基本ソフト(OS)を手掛ける企業が先行している。インテルは台湾のパソコン大手、華碩電脳(アスース)や米家電量販大手のベストバイなどと組んで認知度や利便性を高め、アプリストアの利用を促したい考えだ。



ソニーのPSP 国内累計1500万台を突破
 ゲーム雑誌出版のエンターブレインは15日、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」シリーズの国内累計販売台数が1500万台を超えたと発表した。2004年12月の発売から5年9カ月での大台突破となった。
 国内累計販売台数は今月12日で1500万9120台。ただ、ライバルである任天堂の携帯型機「ニンテンドーDS」は発売から2年3カ月で国内累計販売台数1500万台を突破しており、PSはほぼ2倍の年月を要した格好となる。
 エンターブレインによると、PSP向けソフトで国内最多販売本数を記録したのは、カプコンが08年3月に発売した「モンスターハンターポータブル2nd G」の約400万本(廉価版を含む)だった。



ソニー、ウォークマン新機種 騒音低減機能を強化
 ソニーは15日、携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」の新機種12モデルを10月9日以降、順次発売すると発表した。騒音低減機能を強化するなど「音楽専用プレーヤー」としての使い勝手の良さや高音質を前面に打ち出した。
 ウォークマンは8月、国内販売台数シェアで、米アップルの「iPod(アイポッド)」を抜いて月間1位となっており、新機種の投入でトップを死守したい考えだ。
 新機種のうちSシリーズは、音楽の進行に合わせて歌詞を表示する機能のほか、カラオケ練習用に楽曲のボーカル音量だけを小さく流す機能も搭載した。
 店頭価格は、専用スピーカー付属モデルを含めて8000円から4万円程度を想定している。



朝日新聞社がiPad向け英語学習アプリ公開、英字新聞記事を厳選収録
 朝日新聞社は14日、iPad向けの英語学習用アプリ「AWS(Asahi Weekly Select)」をリリースした。同社の週刊英字新聞「Asahi Weekly」に掲載された記事の中から、映画、旅、英語学習コラムなど一部の内容を収録している。コンテンツは毎週水曜に更新され、購読料は各号115円。
 AWSでは3ジャンルに分けて記事を掲載する。「MOVIE」では最新映画の1場面について、そのシナリオを収録。対訳は赤いスライドで覆い隠されているが、画面タッチで範囲をずらせるので、意味を確認しながら段階的に読める。関連インタビュー、映像なども無料で楽しめる。
 「TRAVEL」では、世界の旅行記をスライドショー付きで紹介。「学習コーナー」は英訳版の社説など、おもに大学受験生向けのコンテンツになっている。コラム「天声人語」などを元にした、河合塾講師による模擬試験問題も掲載する。




政府・日銀が市場介入、一時85円台まで急落
 政府・日本銀行は15日、急激な円高を食い止めるため、円売り・ドル買いの市場介入を実施した。
 野田財務相が緊急記者会見を行い、日銀総裁も異例の談話を発表した。介入実施前には円相場は1995年5月以来、約15年3か月ぶりの円高水準となる1ドル=82円87銭まで円高が進んでいたが、介入を受けて一時、85円台まで急落した。政府・日銀の市場介入は2004年3月以来、約6年半ぶりとなる。
 今回の介入は、欧米の通貨当局とともに行う協調介入ではなく、日本の金融当局のみによる単独介入だ。午後1時現在、前日(午後5時)比1円60銭円安・ドル高の1ドル=84円81~83銭で取引されている。
 野田財務相は「為替相場の過度の変動を抑制するため、為替介入を実施した。今後もマーケットの動向を注視し、必要な時には介入を含め断固たる措置を取る」と述べた。財務省は15日午前10時30分に日銀に介入を要請し、10時35分には日銀が介入を実施した。その後も断続的に介入を行い、介入規模は数千億円から1兆円台とみられる。



「コメント控える」米財務省 日本の介入を実質容認か
 米財務省高官は14日、共同通信の取材に対し、日本政府が東京外国為替市場で円を売ってドルを買う為替介入を実施したことについて「(財務省として)コメントを差し控える」と述べた。
 米政府としても、ドルへの信認低下につながるような急激なドル安は望んでいない。為替政策では日本の財務省とも連絡を取り合っており、為替相場の安定を図るための介入については事実上容認したとみられる。



株、「為替注視」から転換の政府に驚き 見直し買いの機運も
 15日午前の日経平均は乱高下の末、171円高と急反発して終えた。きっかけは財務省・日銀による円売り介入の実施。午前10時半過ぎに円売り介入観測が広がると、1ドル=82円台後半で推移していた円相場は一気に84円台前半に急落。トヨタやソニー、キヤノンなど主力の輸出関連株を中心に買いが膨らみ、日経平均を押し上げた。市場関係者が待ち望んだ円高対策がようやく実施されたことで、当面は戻りを試す展開が期待できるとの声が増えている。
 このタイミングでの円売り介入は意外感があった――。市場関係者からはこんな声が聞かれた。前日は菅直人首相と小沢一郎前幹事長との一騎打ちとなった民主党代表選が行われ、どちらかというと円売り介入に慎重とみられていた菅首相が当選。「予想以上の大差で菅首相が勝利したほか、代表選を前に身動きが取りにくかった閣僚も安心して政策遂行に移れる可能性が出てきた」(いちよし証券の高橋正信チーフ・ストラテジスト)との声もあったが、当面は機動的な政策対応を見込みにくいとの雰囲気も広がっていたためだ。
 野田佳彦財務相は午前の会見で、為替介入を実施したことを認めた上で介入は単独介入であったことを明らかにした。円は対ドルで1995年5月以来の高値水準にあるが、「15年前の日米の物価水準などを考慮すると現在の80円台が決して高いとはいえず、円売り介入に各国の理解を得られにくい」(国内投資顧問)。単独介入では円高基調を反転させるほどの効果は乏しいとの声が広がっている。
 それでも、「限られた外需の取り込みを目指し自国通貨安を志向する欧米諸国の流れに日本も乗ったことで、少なくともこれ以上の円高進行をストップできる」(立花証券の平野憲一執行役員)との観測が広がることは、日本株にとって追い風になることは間違いない。
 円高による企業業績の圧迫懸念は根強いが、実は弱気見通しが増えているわけではない。アナリストが予想する連結純利益を3カ月前と比較し、3%以上上方修正された企業の割合から、3%以上下方修正された企業の割合を引いて算出する「QUICKコンセンサスDI」によると、8月は全産業ベースでプラス16と、期間中に円高が一段と進行したにもかかわらず7月(プラス10)から改善した。円高が止まるとの観測が広がれば見直し買いのきっかけには十分になり得る。
 米景気の不透明感などもあり、「現時点では売り方の買い戻しエネルギー以上の買いはまだ見込みにくい」(平野氏)との声が多い。ただ、これまで「注視する」といっては静観してきた政府がようやく動きだしたことで、相場の地合いは好転する可能性が高そうだ。



日経社説、菅首相は捨て身で政策の実現めざせ
 民主党代表選で菅直人首相(党代表)が小沢一郎前幹事長を破り、再選を果たした。国会議員票はほぼ互角だったが、党員・サポーター票で大差をつけた。代表選は何とか乗り切ったものの、今後の首相の政権運営はいばらの道だ。首相は捨て身で政策の実現を目指す覚悟が要る。

 国会議員、党員・サポーター、地方議員の票を合計した点数を争った代表選の結果は、菅首相が721ポイント、小沢氏は491ポイントだった。

結果は小沢氏不信任

 2週間にわたって党内を二分した首相と小沢氏の争いは過熱し、深刻な亀裂が残った。

 与党第1党の民主党の代表選は首相選びに直結する。民主党の代表の任期は2年間だが、政権を安定させるためには、与党の間は代表任期を設けないなどの工夫が必要だろう。在日外国人に投票を認めていることも、事実上首相を選ぶ選挙だけに疑問だ。選挙期間を含めて代表選規則を見直す必要がある。

 世論調査では首相の続投を望む声が多数派だった。世論を反映し、党員・サポーター票は首相249ポイント、小沢氏51ポイントと、首相が圧勝した。

 ただ国会議員を含め、首相を支持する理由では「3カ月で首相を代えるのはよくない」という声が多かった。「政治とカネ」の問題を抱える小沢氏が首相に就任することへの抵抗感も、菅首相に支持が流れた一因だ。いずれも消極的な支持である。首相の勝利ではなく、小沢氏が負けた代表選というのが実態だろう。

 国会議員票は首相412ポイント、小沢氏400ポイントと拮抗(きっこう)した。国会議員票は小沢氏が有利という予想を覆したが、首相は党内に強力な「野党勢力」を抱えた格好だ。

  当面の焦点は内閣改造・党役員人事。小沢氏やその支持グループの処遇が焦点となる。首相は14日の記者会見で人事について「全くの白紙」と強調した。「脱小沢」の政治姿勢が支持されてきただけに、首相が挙党態勢に配慮しすぎれば、求心力は一気に低下しかねない。

 国会は衆参両院の多数派が異なる「ねじれ国会」になっている。法案を成立させるには、自民党など野党各党の協力を得ることが不可欠だ。国会運営で政権が行き詰まる可能性があり、その巧拙は内閣の死命を制しかねない。首相は真剣に政策実現への協力を呼びかけてほしい。

 首相が代表に再選された結果、経済路線の基本は維持されよう。円高やデフレに対応した当面の経済対策や今後の新成長戦略を、着実で迅速に実行してもらいたい。
 目前の懸案は円高である。首相再選の一報を受けて外国為替市場で円高・ドル安が進むなど、菅政権が円高阻止にどこまで真剣かを市場は瀬踏みしている。急な円高には果断な円売り介入など強力な対抗策を準備しておくべきだ。金融政策を担う日銀との緊密な協力も欠かせない。

 次の試練は2011年度の予算編成だ。約40%と主要国で最も高い法人実効税率の引き下げをはじめ、日本経済を強い成長に戻す税制と予算の詰めに全力を挙げてほしい。一律10%削減の予算要求で政治主導の予算が組めるのかという小沢氏の批判には一理ある。メリハリと財政規律の両立が問われる。

 09年衆院選の民主党マニフェスト(政権公約)の着実な実施を訴えた小沢氏が敗れたのは、財源を明示できずに子ども手当の満額支給など給付増を訴える手法の限界が表れたといえる。財源に応じて公約の内容を柔軟に修正する現実路線を首相は追求すべきだろう。

雇用増は経済の強化で

 第三の課題は経済の足腰を強くする改革である。首相は「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と繰り返すが、職業紹介の強化などは一時的な失業の対策にとどまる。民間投資を促す規制改革、環境技術や医療など成長産業の育成を通じ、経済の規模を大きくするのが王道だ。

 主要国の中で突出して高水準の債務を抱える財政の立て直しも急がなくてはならない。首相は代表選で、年金や医療制度の改革に触れていない。負担論を避けていれば社会保障制度の設計もできない。消費税率引き上げを含めた税制・社会保障の改革にいち早く着手すべきである。

 日米関係の修復も優先順位が高い。6月に就任して以来、懸案の米軍普天間基地の移設問題は全くといっていいほど、進んでいない。11月にはオバマ米大統領の来日を控えている。普天間問題のあおりで停滞している日米同盟深化の作業を加速するためにも、首脳間で改めて安保の認識を共有してもらいたい。

 日本を取り巻く安保環境は厳しさを増している。海軍力の増強を背景に中国は南シナ海での行動を活発にし、尖閣諸島周辺の海域でも強気の姿勢に出ている。こうした火種に対応するためにも、日米同盟の強化とアジア諸国との連携は欠かせない。
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