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携帯ゲームバブル!で終わらない、SNSから沸き出すネット「新」金脈
 「携帯海賊ゲームもグリーで検索。無料です」
 「盗んでよろしい。怪盗ロワイヤルもモバゲーで検索」
 芸能人が携帯電話を夢中になって操作するシーンなどの後にこんな決め文句が入るCMシリーズが、民放のスポット枠を席巻している。携帯ゲームサイトを運営するグリーとディー・エヌ・エー(サービス名は「モバゲータウン」)のCMだ。両社はCM放送回数上位陣の常連になっており、関東地区における7月の放送回数はサントリー、花王に次ぐ3位がグリー、4位がディー・エヌ・エーだった(シーエムナビ調べ)。
 今、このSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手2社が競い合う形で、携帯電話で遊ぶゲームが異様なほどの盛り上がりを見せている。両社の会員数はそれぞれ2000万人を突破。テレビCMの効果もあり、10代の若者だけでなく、20~40代までユーザーが広がってきている。
 数百タイトルに及ぶゲームメニューの中には、1人で遊ぶ単純なものもあるが、人気が爆発しているのはユーザーが協力し合う、あるいは対戦するなどの交流要素が埋め込まれた「ソーシャルゲーム」だ。
 グリーは2007年に投入した『釣り★スタ』『クリノッペ』、モバゲーは昨年投入した『怪盗ロワイヤル』『海賊トレジャー』などの自社製ソーシャルゲームが多くのユーザーを集める牽引車だ。自社製ゲームによる圧倒的な集客力を武器に、ゲームプラットフォームを外部事業者にも開放。多くのベンチャー企業が両社向けにソーシャルゲームを投入している。この夏以降は大手ゲームメーカーもビッグタイトルを引っ提げて殺到。関係者からは「ヒートアップしすぎ」「明らかにバブっている」と警戒する声も聞かれる。
 では、現在の無料ゲームブームは、一過性のバブルなのだろうか。1990年代後半からのインターネットベンチャーの歴史を振り返ると、バブル崩壊は2度あった。このときは、いずれもベンチャー投資やM&Aなどが目先の収益力とはかけ離れた高株価を演出し、文字どおりバブルが噴き上げた。
 それに対し、今回のブームは以前と比べものにならないほど“堅実”だ。確かにディー・エヌ・エー、グリーは株式市場から高い評価を受けてはいる。しかし、それは好調な業績に連動しているものだ。
 ソーシャルゲームの基本は無料だが、定額コースもあるうえ、自分の分身が着飾るためのアバター課金、釣り竿や武器などを購入するアイテム課金など、さまざまな収入源がある。両社ともこうした課金収入で大きな利益を稼いでおり、その利益率は非常に高い。
 そして、この収益力を武器に、積極的に新しい展開を図ることが可能だ。携帯からパソコンへのゲームの移植、2000万人を超える会員を活用した新しいソーシャルビジネスの創造、さらに海外展開、という具合に、積極的な成長戦略を描くことができる。
 同じ大手SNSでも、ゲームから距離を置くミクシィの収益力は大きく見劣りするが、その経営手法は“堅実”そのもの。海外SNSとの提携などにより、中長期的な成長に向けた布石を打つ。こうした多様なプレーヤーが育っていることからも、第3次ブームが短期ではじけることはないだろう。
 交友関係をネットの上で管理し、写真やビデオ、購買履歴など膨大なライフログ(個人の生活履歴)を蓄積していくのがSNSの根幹。この膨大な情報「ソーシャルグラフ」を活用したネットビジネスが勃興する動きは、何も日本特有のものではない。最も盛んなのがSNS先進国の米国だ。
 04年創業のフェイスブックは今年7月にアクティブユーザー(月に1度以上ログインするユーザー)が世界で5億人を突破。圧倒的なSNSプラットフォームに上り詰めた。07年9月に自社プラットフォームを外部事業者へ開放したため、フェイスブック会員を対象にしたアプリは55万本以上ある。「ソーシャル」を軸とする独自の生態系が育ってきた。
 そうした「フェイスブック生態系」の中で、特に注目されている“ベンチャー御三家”がある。ジンガ、グルーポン、フォースクエアだ。創業から日が浅いこの3社は、いずれもソーシャルネットワークを活用した新しいビジネスジャンルを生み出し、瞬く間に世界に広げた。
 ジンガは07年1月に創業。フェイスブック上で、友達と交流しながら遊ぶソーシャルゲームの運営を行っており、ソーシャル・アプリ・プロバイダ(SAP)というジャンルにおけるガリバーになっている。
 08年11月創業のグルーポンは、地域密着型の共同購入クーポンビジネスを展開する。これは時間限定で大幅安売りのクーポンを売るものだが、そこで欠かせないのがフェイスブックやツイッターよる口コミ。最低販売枚数に達するまで、熱心なユーザーが宣伝をしてくれるので、宣伝費いらずだ。
 昨年3月設立のフォースクエアはスマートフォンのGPS機能を活用し、ゲーム感覚で友達と自分の居所を共有できる。その位置情報は自動的にフェイスブックのニュースフィードやツイッターに反映させることができる。位置情報を軸とした新しいSNSのあり方を示し、多くの類似サービスも生まれている。
フェイスブックvs.グーグル
 各社とも、SNSをベースにした特徴的なアプリを生み出し、それを世に広めた点で共通している。いわばフェイスブック生態系が産み落とした申し子だ。
 瞬く間に発展したこの新しい生態系を苦々しい思いで眺めているのが、検索サービス最大手のグーグルだ。グーグルはフェイスブックに対抗するため、共通の技術仕様「オープンソーシャル」を策定し、多くの賛同者を集めることに成功した。また、短文のつぶやきサービス「グーグル・バズ」のように、自社サービス内にソーシャル機能を盛り込む動きも強めている。
 SNSには、アイフォーン、アイパッドで今をときめくアップルも関心を寄せる。9月には音楽販売サイトに「ピング」というSNS機能を搭載した。マイクロソフトは、パソコンのほかXboxでも使える「ウィンドウズ・ライブ」と「ホットメール」のIDが5億を数える。写真共有や日記帳などSNS的な機能を磨いている。
 急激なソーシャル化の流れは、グーグルの圧倒的な覇権を揺るがしている。かといって、収益力の弱いフェイスブックも、まだ磐石ではない。変動期の今は大きなチャンス。携帯ゲームにおける強みを生かして独自性のあるプラットフォームを発展させれば、ネットの世界でも日本発のグローバルプレーヤーが誕生するかもしれない。



<ゲーム市場予測>「ソーシャルゲームがカンフル剤」に エンターブレイン浜村社長
 ゲーム出版大手「エンターブレイン」の浜村弘一社長は、業界担当記者向けのセミナー「ゲーム産業の現状と展望」で講演した。上半期比較では、07年をピークに3年連続で縮小を続けるゲーム業界について、グーグルのソーシャルゲーム参入など世界規模の例を挙げながら「ソーシャルゲームがカンフル剤になる」との見方を示した。
 「ソーシャルゲーム」とは、SNSで配信され、仲間とのコミュニケーションを重視し、会話をしたり、ゲーム内アイテムを交換したりして楽しむ。浜村社長は「ソーシャルゲーム」を持つ「mixi」や「モバゲータウン」「GREE」の会員数が2000万人に達し、携帯ゲーム機の販売数に匹敵する顧客を抱えていると解説。さらに世界的に見ると、米グーグルが資本を投下した米の「Zynga(ジンガ)」や、エレクトロニック・アーツが買収した英の「Play fish」、同じく米ディスニー傘下の米の「Playdom」など5社で大半を占め、ここ3年で急速に成長していることを明かしながら、次代のゲームの潮流が「ソーシャルゲーム」に向いているとの見方を示した。
 日本の大手ゲームメーカーも「ソーシャルゲーム」に進出しようとしているが、ソーシャルゲームが家庭用ゲーム機開発費用の数十分の1以下となる1000万円の低予算と少人数、短期間でゲームを仕上げて市場へ投入、強力なマーケティングによってゲームを調整する仕組みに慣れていないと説明。「モバゲータウン」や「mixiアプリ」「GREE」の人気ゲームランキングのトップテンに入れない状況になっているという。
 浜村社長は「『モンスターハンター』にも『どうぶつの森』にもソーシャルゲームの要素がある」と指摘しながら、家庭用ゲーム機だけでゲーム市場ととらえるのでなく、ソーシャルゲーム市場を加えるとゲーム市場が右肩上がりで成長するとの考えを示した。来年2月に発売される携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」も、この流れでみることができるといい、3D映像よりも強力になった「すれちがい通信」などに注目し、携帯ゲーム機でもソーシャルゲームができると考えている開発者も多いことを明かした。



情報の質 競う時代 報道の責任重く 「ものいう日本」へ転換
 混迷の時代が続いている。世界経済危機はなお収束せず、発展するアジアには緊張の火種がある。そのなかで指針を示すメディアの役割は高まり、ジャーナリズムの使命は一段と重くなっている。電子化がジャーナリズムの新たな地平を開くなかで、メディアは「質の競争」の時代を迎えた。
 日本は「失われた時代」から抜け出せない。自省を込めていえば、経済ジャーナリズムは政府や日銀の失態をあげつらうだけでなく、危機打開に確固たる指針を示す責任を負う。政治ジャーナリズムは「井の中の権力闘争」を追う「政局」報道から「政策」報道に転換しなければならない。検察の構造問題にメスを入れることも肝心だろう。
 グローバル社会は米欧先進国から中国、インドなど新興国へのパワーシフトという大転換期にある。メディアはこの歴史的転換をあますところなく伝える責任がある。さらには国際発信力を飛躍的に高める必要がある。世界経済フォーラムのダボス会議で日本に関する討議につけられた題が「忘れられた日本」だったこともある。日本の存在感の乏しさは国際発信力の弱さにも起因する。
 こうしたなかで、求められるのはメディアの再生である。「井の中のメディア」から脱して、世界を向いた「質の競争」に乗り出すときである。国際共通語である英語の発信力強化は大前提だが、それだけではない。
 発信する情報の質を高めることが何より重要である。世界のメディアを引用するだけでなく、世界にどれだけ引用されるかを競うべきだ。「忘れられた日本」から「ものいう日本」に転換するうえで、メディアの責任はこれまで以上に大きい。
 電子化はメディアにとって好機である。ジャーナリズムの原点はスクープと彫りの深い解説である。電子化は「速報性」と「情報容量の大きさ」という2つの武器を与える。スクープを競い、質量ともに豊富な解説を書くうえで電子媒体は格好のメディアといえる。国際発信を含め、ジャーナリズムの地平は大きく広がることになる。
 新聞が最も完成された媒体であることに変わりはない。ニュースの価値判断を示す一覧性、記録性、携帯性など利点は大きい。電子媒体は読者とのやりとりなど双方向性をもつ。電子媒体で読者のニーズをくみ取り、新聞の編集に生かすのは可能だ。新聞と電子媒体は相乗作用を通じてともに発展し共存できる。
 肝心なのは、世界を向いた「質の競争」のために、建設的な批判精神をもち歴史感覚と国際感覚を備えたジャーナリストをどう育て、どう生かすかである。メディアの盛衰はそこで決まる。

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