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発足10年を迎えるKDDIが社長交代、その背景にあるものとは?
 2010年9月10日、KDDIは急遽記者会見を開き、代表取締役社長兼会長の小野寺正氏に代わり、新たに田中孝司氏が代表取締役社長に就任することを発表した。KDDI発足当初から10年という長きにわたって社長職をつとめていた小野寺氏が、その座を譲ることとなったのにはどのような経緯があったのだろうか。
 今回の人事では、小野寺氏が代表取締役社長兼会長から代表取締役会長に、田中孝司氏が代表取締役社長になる。つまり小野寺氏が社長と会長を兼任していたのが、田中氏を社長に起用することで、小野寺氏は会長職のみを務めることとなる。これにより、KDDIの運営は田中氏が中心となって遂行し、小野寺氏は取締役会の議長や対外的な業務を担当するようだ。
 田中氏といえば、発足当初から最近までUQコミュニケーションズの代表取締役社長を務めていたことでご存知の方も多いことだろう。現在はKDDIの代表取締役執行役員専務となり、コンシューマー事業本部を担当している。
 なお、この人事は2010年12月1日付けで実施されるとのことで、それまでは現在の体制が維持されるようだ。とはいえ、KDDIの発足当初から、およそ10年と長きにわたって社長職をつとめてきた小野寺氏から田中氏へと変わるということは、同社にとって非常に大きな変化であることは確かであろう。
 このタイミングで社長交代となった経緯について、小野寺氏は後継者の育成に目処が立ったことが大きいと話している。
KDDIにおける小野寺氏の取り組みを振り返る
 小野寺氏は、現在のKDDIが発足して間もない2001年から同社の代表取締役社長に就任し、のちに現職となった。この10年におけるKDDIの体制を築いてきた人物といえるだろう。
 2001年当時のKDDI、特に現在の主力である携帯電話事業の動向を振り返ってみると、こと前身であるDDIセルラーやIDOの携帯電話事業に関しては、現在の主軸であるCDMAへのインフラ切り替えの影響や、端末・サービス面で他社に後れをとったことにより、NTTドコモに引き離され、J-Phone(後にソフトバンクモバイル)に猛追されるなど、とても良いといえる状況ではなかった。
 こうした状況下にありながら、DDI、KDD、IDOという3つものグループを統合して円滑に運営し、さらに携帯電話事業を立て直すという難題に取り組み、かつ結果を出してきた小野寺氏の功績は大きかったといえるだろう。
 多くの人が感じているように、すでにKDDIという名前は一般に定着しており、DDIやKDDといったかつての名称を口に出す人はほとんどいない。また携帯電話事業も、学生の基本料や通話料を半額にする「ガク割」や、パケット定額制などの大胆な料金施策、そして着うた、ワンセグなど現在の携帯電話に必須といえるサービスを先導することで、2004~2007年までは純増数でトップを記録するに至っている。
 この間、NTTドコモは2度社長が交代しているし、J-Phoneに至っては会社そのものが2度も大きく変化している。長きにわたって小野寺氏が社長に就任してきたのには、KDDIそのものの成功と安定が背景にあったといえる。
大きく変わる市場に対応するには変化が必要と判断か
 とはいえ、モバイルにおける市場動向の変化は非常に早い。現在、各社の携帯電話純増数を支えているのは、スマートフォンやフォトフレームなど、いわゆる携帯電話の形をしていないデバイスが中心だ。またアップルやGoogleといった事業者が通信の世界に影響を及ぼすようになるとは、10年前には考えられなかったことであり、競争軸そのものが劇的に変化している。
 「過去の成功体験から抜け出すことができなかったのが心残り」と小野寺氏が話しているように、ここ最近のauは成功と安定が続いたことで、かつてのような市場をリードする勢いや取り組みが失われてしまっていたというのが、今回の社長交代にも影響しているようだ。
 最近ではスマートフォンに対する出遅れが多く取りざたされているが、それ以前にも販売奨励金から分離プランへの移行で他社に後れをとるなど、後追いの姿勢が目立っている印象があった。1つ1つの取り組みは決して悪くないものの、ボリュームを重視するようになったがゆえに、特に先進性を求めるユーザーに対するアプローチが消極的になり、印象が弱くなってしまっていたことが、現在の評価につながっているといえる。
 10年間で成功は得たものの、停滞している現在の状況から脱却し、今後の市場環境に対応していくには変化が必要であること。そしてその変化に対応できる後継者が育ち、準備が整ったという判断が、社長交代へとつながったといえそうだ。
田中氏の経験がどのような形で生かされるか?
 では、田中氏が後継として起用された要因はどのような所にあるのだろうか?
 会見において、小野寺氏がその要因として上げたのは、1つに携帯電話の法人向けのソリューションを立ち上げたこと。発足当初は音声のサービスしか提供していなかったが、そこにモバイルのソリューションという新しい概念を入れるなど新しいことにリスクをとって積極的に取り組んできたという。
 そしてもう1つは、UQコミュニケーションズを立ち上げたということ。免許取得以前から会社を立ち上げ、株主を取りまとめ、システムや営業などにもゼロから取り組んできたという。こうした田中氏の経験が、今後のKDDIの発展に不可欠なものだと判断したようだ。
 特にコンシューマー事業におけるKDDIの当面の課題は、他社と比べ不調といわれる携帯電話事業の立て直しと、ケーブルテレビ事業者の買収・提携などで増えた、固定通信網との連携をいかにすすめるかというところになるだろう。特に後者は、FMBC(Fixed Mobile and Broadcast Convergence)の戦略を打ち出して以降、さまざまな取り組みは示しているものの、明確な形での成果に結びついてはいないだけに、何らかの施策が求められるだろう。
 田中氏が社長に就任し、新しい体制に本格移行するのは12月となる。それゆえ新体制の方針が発表されるのは、もう少し先になるようだ。同社が今後、田中氏の体制下でどのような取り組みを見せてくるのか、大いに注目していきたい。



ハリウッド何が何でも3D 興行収入増加 人気は下降
 ハリウッドの映画会社は、興行収入の増加を目指して、3D(3次元)映画に力を注ぐ姿勢を継続するとみられる。しかし肝心の3D映画の興行収入は「アバター」で人気に火がついた時に期待されたほどには伸びていない。
 調査会社ハリウッド・ドットコム・ボックスオフィスによると、来年公開が予定されている3D映画は少なくとも26本あり、今年公開の22本を上回る。2012年には「アバター」のヒットを受けて制作が決まった多くの作品が公開されることから、競争が激化するとみられている。
 ブルームバーグ・リサーチの調査で、3D映画の今年の売上高は、米国の映画興行収入の約20%を占める14億9000万ドル(約1280億円)となることがわかった。米国映画協会によると、09年通年の3D映画の売上高は、全体の11%を占める11億ドルだった。
 ボックス・オフィス・モジョによると、製作費2億3000万ドルの「アバター」の興行収入は27億7000万ドルで、そのうち20億ドルは今年に入ってからの売り上げだという。同作品は昨年12月18日に封切られた。製作費2億ドルの「トイ・ストーリー3」は6月18日に公開され、これまでに10億4000万ドルを稼ぎ出している。
 「トイ・ストーリー3」のヒットによって、ディズニーの映画部門は第3四半期に、1億2300万ドルの営業利益を計上した。同社は前年同期に1200万ドルの営業損失を計上していた。ニューズ・コープの映画部門は8月4日に「アバター」と3D版「アイスエイジ3 ティラノのおとしもの」のヒットで、通年の営業利益が過去最高の13億5000万ドルになったと発表した。
 しかしながら、3D技術の導入がチケットの売れ行きを保証するわけではない。ボックス・オフィス・モジョによると、タイムワーナーが8500万ドルで制作した「キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争」の世界の興行収入は9840万ドルにとどまった。ワインスタインの「ピラニア 3D(原題)」は2400万ドルをかけて制作されたが、8月20日の公開から2430万ドルしか売り上げていない。
 また、3D版の売り上げが通常版を含めた売り上げに占める割合は「アバター」が80%を記録して以来、下落の一途をたどっている。ブルームバーグ・リサーチによると「トイ・ストーリー3」では、3D版の売上高は全体の57%だった。ここから観客が3D版の追加料金を嫌い、通常版を選んでいることがうかがえる。
 ウンダーリッヒ・セキュリティーズのアナリスト、マシュー・ハリガン氏は、この結果を受けて映画会社は、なんでもかんでもではなく選択して3D版を制作するようになるのではないかとみている。
 3D映画の製作費は、通常の映画よりも500万~2000万ドルほど高くなるが、映画各社は今年公開された作品の多くについては、入場料に上乗せする3~3.5ドルの3D料金で増加分を十分に回収することができたと話している。
 20世紀FOXの元会長で09年公開の3D映画「コララインとボタンの魔女」のプロデューサー、ビル・メカニック氏は「興行収入が10~15%増加すれば、3D版を制作する価値は十分にある」と述べた。ストップモーション・アニメーションの同作品は、製作費が6000万ドルで、全世界で1億2460万ドルの興行収入を上げた。



中韓家電メーカー、日本市場へ攻勢本格化
 白物家電で世界最大手の中国・海爾集団(ハイアール)は、日本市場向けに開発したドラム式洗濯乾燥機を今年11月以降に発売すると発表した。
 これまでは単身者向けの小型機種が中心だった製品を中・大型機種にも拡大し、日本市場の本格攻略に乗り出す。
 薄型テレビ分野で日本から撤退していた韓国LGエレクトロニクスも再参入を図るほか、サムスン電子もNTTドコモに高機能携帯電話(スマートフォン)を供給するなど中韓家電メーカーの攻勢が激化している。
 ◆本格参入◆
 ハイアールが15日発表した洗濯乾燥機「JW―MD1080A」は、洗濯容量10キロ、乾燥容量8キロとふとんが洗えるサイズで、ドラム式としては国内最大規模。市場想定価格は10万円台前半と国内大手メーカーより2割程度安くした。洗濯物の偏りを検知して振動や騒音を抑える機能を備えるなど「成熟した日本市場のニーズを満たせる」と胸を張る。
 ハイアールは日本人のデザイナーと技術者を雇用して消費者ニーズを意識した製品開発を進め、2012年までに中型冷蔵庫・洗濯機、エアコンを相次いで投入し、販売機種を80種類と現在の2倍に拡大する。
 これにより、日本での約100億円の年間売上高を15年には約300億円に引き上げ、白物家電の市場シェア(占有率)を3%台から10%以上に高める目標だ。
 ◆韓国勢も攻勢◆
 韓国のLGエレクトロニクスも年末商戦に向けて薄型テレビの販売を日本で再開する方針だ。LGは05年に日本市場に参入したが、ブランドイメージが壁となり08年にいったん撤退した。
 しかし、国内の携帯電話市場ではLGの端末は06年の参入後、累計で350万台を販売しており、若年層を中心にブランドイメージが回復。技術力も先端の3次元(3D)映像対応テレビを投入すれば日本市場でも評価されると判断した。
 サムスンも、NTTドコモが米アップルの「iPhone(アイフォーン)」に対抗して販売する高機能携帯電話「ギャラクシーS」を供給する。
 国内家電各社は、海外では韓国勢などと激しい競争に苦しみ、ホームグラウンドの日本を収益源としてきた。その日本で中韓勢との競争が激しくなれば、各社の経営環境は一段と厳しくなりそうだ。



ノートPC、携帯向けに 高効率の燃料電池を小型化する技術開発
 燃料電池の中でもエネルギー効率が高い「固体酸化物型」を小型化する技術を開発したと、物質・材料研究機構(茨城県つくば市)などが20日付の英科学誌ネイチャーマテリアルズ(電子版)に発表した。
 これまで一部の業務用などには使われていたが、内部が高温にならないと作動せず断熱材などが必要になり、小型化が難しかった。今回の技術で実用化できれば、ノート型パソコンや携帯電話などに使える。
 燃料電池は、水素と酸素の化学反応で電気を取り出す。反応を促す「電解質」に固体酸化物を使うタイプのうち、これまで実用化されているものは、千度という高温が必要だった。
 研究グループは、固体酸化物に「イットリウム添加ジルコン酸バリウム」という物質を採用。化学反応の効率を低下させないよう結晶と結晶のすきまを埋めると、350度でも作動できる可能性が高いと確認。小型化にめどをつけた。



環境規制で数値目標、未達なら罰金百万円 「民間介入」に反発
 経済産業省が来年度から導入する新たな環境規制に電力やガス、石油業界が困惑している。規制は、太陽光などの再生可能エネルギーによる発電比率や高効率設備の導入比率といった数値目標を設け、違反すれば最大100万円の罰金を科すもの。罰金そのものはたいした金額ではないが、「環境に優しくない企業」とのレッテルをはられかねない。各業界は渋々受け入れる方向だが、「過度の民間介入」との不満は強い。
 規制は昨年7月に成立した「エネルギー供給構造高度化法」に基づく措置。現在、来年度からの義務化に向け目標を公表し一般から意見を募集している。
 「新規の投資ができない会社は再編・淘汰(とうた)の対象にされる」。公表された目標に最も驚愕(きょうがく)したのが、石油業界だ。
 目標は、処理が難しく有効利用されていない重質油の分解装置の導入率を現状の10%から平成25年度までに13%に引き上げること。しかし、装置の新設には1千億円前後の投資が必要で、石油連盟の天坊昭彦会長は「国内のガソリン需要が縮小する中、採算がとれない」と悲鳴を上げる。
 導入率を高めるには、業界全体の設備を縮小するしかなく、「再編への圧力」と受け止める向きは多い。
 電力業界は、原子力や太陽光など発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない「ゼロエミッション電源」の比率を、現状の30%台から10年後に50%以上に、20年後に70%以上に引き上げることを求められた。
 原発の新設を計画通りに進めれば、達成は可能とみられるが、予定地の反対など障害は多い。電気事業連合会の広江譲理事は、13日に開かれた審議会で「今回の規制強化には、違和感を覚える」と、国のバックアップが不十分な中での目標設定に不満を表明した。
 このほか、ガス業界は、27年に下水処理場などで発生する余剰バイオガスの80%以上を再利用することが求められる。
 これまでエネルギー業界は、温暖化対策の重要性を認めながらも、「企業の自主性と創造性が十分に発揮されることが必要」(電事連前会長の森詳介関西電力会長)と訴えてきた。
 今回は「不満ばかり言っていると抵抗勢力とみなされる」(関係者)との判断もあり、受け入れる方向だ。ただ、民主党政権の環境政策に対する産業界の不満は強く、官民のミゾが広がり、今後の政策に影を落とす懸念もある。
 ■エネルギー供給構造高度化法 エネルギー供給事業者に、原子力発電や太陽光などの非化石エネルギーの利用拡大と化石燃料の有効活用を促す法律。中長期の目標を設定し、事業者に計画の作成・提出を求め、取り組みが不十分な事業者には罰則を科す。



三菱化学、LED向け主要材料を量産 150億円投資
 三菱化学は照明などに使う発光ダイオード(LED)向け材料の量産に乗り出す。2015年度までに約150億円を投じ、光を発する素子の土台となる基板と、素子の生産体制を整備する。基板の生産コストを従来の10分の1にする手法の開発にも取り組む。来年にはLED電球を売り出す計画で、材料から製品まで成長市場を幅広く取り込み、15年度に1千億円の売り上げを目指す。
 同社はブルーレイ・ディスクレコーダーの読み書き装置用の素子の基板で高いシェアを占めており、LED用にもそのノウハウを生かす。原料に窒化ガリウムを使用し、一般的なサファイア製の基板と比べLEDの消費電力を3分の1に抑えるのが特長で、12年度までに筑波事業所(茨城県牛久市)にLED向けのラインを新設して量産を始める。
 特殊な液体の中で基板の結晶を育て、生産コストを大幅に減らす製法も開発する。青色LEDの開発で知られる米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二教授と共同研究を進め、12年度にも実用化。15年度までに新製法による量産設備を設ける計画だ。
 LED素子は現在、月産4千万個の生産能力を1億個まで増強する。その後は他社への技術供与による生産委託などで、能力を月10億個に高める。同社の素子は紫色で、三原色の蛍光体を通じて白色の光にするタイプ。自然光により近い光を出せる特長を世界のLEDメーカーに売り込む。
 LEDは照明向けを中心に需要が急拡大している。調査会社の富士キメラ総研(東京・中央)は15年の世界のLED市場が10年見通しの1.5倍の約1兆2300億円になると試算。三菱化学も自社の材料を使って来年以降、日米欧でLED電球を発売する。
 薄型テレビの画質向上や省電力化にもつながるため、電機メーカーも調達を積極化。今春にはLED不足が深刻化し、テレビの発売が延期されるケースも発生した。
 LED関連の材料は技術力のある日本の化学メーカーが高いシェアを持つ分野。今後の市場拡大を見据え、主要各社は増産や新製品の開発を加速させている。



小型デジカメに一眼レフ並み機能 富士フイルム
12~15万円、来春発売
 富士フイルムはデジタル一眼レフ並みの撮影機能を持つ高級コンパクトデジタルカメラを開発した。一眼レフと同等の撮像素子を採用し、撮影直後の画像を光学ファインダー内に映す世界初の機能も装備する。2011年春に12万~15万円で製品化する。価格下落が激しく技術的な差異化が難しくなったコンパクト型で新領域を開拓、発売後1~2年で10万台の販売を目指す。
富士フイルムが開発した高級コンパクトデジカメ「FinePix X100」の試作品
 開発した「FinePix X100」の有効画素数は1230万画素で、デジタル一眼レフと同サイズのCMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーを内蔵した。解像度にこだわった高級ガラスレンズを採用し、画像劣化を招くズーム機能は搭載しない。



【産経主張】尖閣漁船事件 組織的な背景を解明せよ

 事(こと)は日本の主権にかかわる。安易な処理など許されない問題だ。
 沖縄・尖閣諸島(石垣市)付近の日本領海で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件で、検察当局が公務執行妨害容疑で取り調べている中国人船長の勾留(こうりゅう)期間延長を裁判所が認めた。
 検察当局には、国内法にのっとった厳正な捜査によって勾留期限の29日までに立件するよう求めたい。
 東シナ海の石油や天然ガス資源が確認されてから尖閣諸島の領有権を主張し始めた中国政府は船長の即時釈放を要求する強硬姿勢を続けている。東シナ海のガス田共同開発をめぐる日中両政府の条約締結交渉の延期を通告したのに加え、ガス田の一つに掘削用のドリルとみられる機材を搬入する新たな圧力もかけてきた。
 前原誠司外相は、中国側の掘削開始が確認されれば「しかるべき措置をとる」と言明した。当然である。日本単独での試掘や国際海洋法裁判所への提訴といった対抗措置を念頭に、毅然(きぜん)とした姿勢を示すべきだ。
 日本の司法が外国からの政治的圧力の影響を受けてはならないのは言うまでもない。それにもまして日本政府として解明しなければならないのは今回の中国漁船衝突事件の背景である。単に違法操業の範囲内でのみとらえるわけにはいかない。
 尖閣諸島海域では中国漁船の領海侵犯が急増している。海保によれば、事件発生当日には160隻ほどの中国船籍とみられる漁船が同海域で確認され、そのうち約30隻が日本の領海を侵犯していた。これらの船舶がすべて漁船であったのかも問題視すべきだ。
 海洋権益の拡大を狙う中国は海軍力の増強によって実効支配をめざす海域を広げる動きを加速させている。南シナ海では中国の漁船団に武装した漁業監視船が同行するのが常態化し、今年6月には中国漁船を拿捕(だほ)したインドネシア海軍艦船と交戦寸前の状態にまでなったという。
 尖閣諸島での事件は中国がこうした強引な手法を東シナ海にも広げてきたことを示している。
 米政府は、日本の施政下にある尖閣諸島を「日米安保条約の適用対象」とする立場をとる。日米両政府が情報共有を密にし、組織性が疑われる事件の背景を徹底的に解明する必要がある。
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