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ゲーム会社の考えをリセットした 「ニコゲー」の挑戦
 14日、ニコニコ動画系列にまた新しいサービスが加わった。「ニコゲー」だ。これまでもあったゲームサービス「ニコニコ遊園地」とは毛色が違う。
 ニコゲーはFLASHベースのゲームをウェブ上で作って投稿するサービス、いわば「ゲーム投稿サイト」だ。SNS機能も持ち、アバターシステムも採用している。
 ニコゲーを開発したのは、ドワンゴの子会社であるゲーム会社・スパイク。幕末の浪人を主人公にした「侍道」、不良になって街中でケンカをふっかける「喧嘩番長」など、一風変わったゲームで人気を集めていた。
 ゲーム会社がオンラインゲームを作ることはあっても、ゼロからプラットフォームビジネスに挑むというのは類例がない。その狙いはどこにあるのか、同社 ニコゲーグループマネージャーの配野良太氏に話を聞いた。
「GREE」がきっかけ、SNSとCGMの融合めざす
―― 開発をはじめたのはいつごろからだったんでしょうか。
配野 2009年の3月くらいですね。ドワンゴのグループ会社に入っていたんですが、まだニコニコ動画はビジネスとして収益を上げていなかった。そこにゲームというコンテンツを作る側として何かできないかというのが課題に挙がっていたんですよ。
―― そのときに初めて「ゲームのCGM」という発想が?
配野 いや、アイデアは2008年からあったんです。でも、パワーと予算がいる。ゲームの作り方はわかっても、ウェブの作り方はわかんない。そんな理由で具体化しなかったんです。ただその頃はコンシューマーゲーム(ビデオゲーム)が厳しくなってきた時期だった。
 ニンテンドーDSもブームが終わり、PlayStation 3やXBoxは開発費がかかる。海外のパブリッシャーと同じ勝負はできないし、人気シリーズだけ作るのも限界だと。それを機にプロジェクトをはじめることになったのが1年半前でした。
―― それであたためていた構想を出したと。そのときはもうニコゲーをやろうというイメージで進んでいたんですか。
配野 迷ってました。ただ、普通にオンラインゲームをやろうというのは考えなかったです。オンラインゲームはどこも海外から買っている。そこで自社開発というのはリスクが大きすぎると。その中で「GREE」が成長していたので、SNSがいいのではないかと。
 せっかくなのでニコニコ動画のユーザー層にささるものを。会員数は1000万人を超えていることだし、「ニコ厨」(ヘビーユーザー)だけをターゲットにしてもしょうがない。広く浅く人気になるために、SNSとゲームCGMを合成させようと。
―― 「ゲームを出せるプラットフォーム」を作ろうと。
配野 そこで提供型のコンテンツを入れる代わりに、「素材」を提供しようと思ったんです。「侍道」シリーズの素材を置いたりすることで「侍道風シューティング」なんかを作ってもらえればいいんじゃないかと思ってるんですよ。
おじさんがジャンプするだけなのに、それが再現できない
―― ジェネレーターのレベルを考える際、意識したことはありますか。
配野 「女性」です。ニコニコ動画は男性が圧倒的に多いサイトです。なので、女の子が生放送に出たりすると、すごい人気が出ますよね。なので「女性も作れる」というのを1つの基準にしておきたかったんです。そこでどうやって分母を大きくできるかと。
―― ニコニコのような場所の場合、ハイアマチュア層のユーザーが「どうせならもっとこだわりたい!」と考えることもありそうです。
配野 もっとあれやりたい、これやりたいという意見は社内でもあったんですが、そうするとどんどん敷居が上がっていくんです。ユーザーが増えて要望が高まったら高機能版を上げようと。キャラクターのパラメーターを数値で指定できるようにするとか。
 それに、同じ条件で工夫をする方が、センスが求められると思うんですよ。音楽や画像は自由に変えられますし、調整のうまさはゲームに出ます。たとえば、ジャンプしたときの滑り方とかを、すごくうまくまとめてる人がいるんですよ。
 作ってみれば分かりますが、思ったとおりにいかない。任天堂のすごさがよく分かると思います。ぼくらも(ニコゲーで)ゲームを作ってみて「マリオすげー!」と思いましたよ。「おじさんがジャンプするだけなのに、なんでそれが再現できないんだ!」と。
―― なるほど。同じツールを使っている以上、こだわるところはどこにでもあると。
配野 それに、お金をとらないからこそ出せるアイデアというのはあると思うんですよね。たとえば、投稿されたゲームには「脱衣シューティング」なんてのがありました。下着姿の女性をボスキャラにして、同じサイズの「服」を重ねてあるんです。撃つと脱げると。ゲームそのものは単なる連打ゲーなんですけど、プレイ回数はもう1万回を超えてます。
―― そういう変化球のようなゲームが、ニコニコ動画と同じようにタグやジャンルといった形で広がることを想定しているわけですか。
配野 それで言うと「BAD」があります。これもつけるかどうか悩んだんですけど。でもクソゲーはクソゲーってみんな言いたいんじゃないかって。動画よりもゲームの方が「クソ」と言いやすいけど、それがネガティブとは言いきれないところがあると思うんです。
 むしろ自分で「BAD」多い順にソートをかけて、上からやってみたくなるって気持ちがあったりする。そこまで言うならやってみたいと。すごく作りこまれてるクソゲーとか、考えただけでやってみたいじゃないですか。そこも1つ面白さになるのかなと思います。
ゲーム会社としての考えをリセットする
―― 難点は、どこに収益を持ってくるかだと思います。
配野 悩みましたね、どうすればビジネスになるのか。ゲームのプレイヤーから100円もらう、ゲームの作り手から100円もらう……という形も考えてました。でも、最終的に決めたのは「ゲームでお金はもらえない」です。ゲームメーカーとしてそこをあきらめようと。
 そこでニコニコ動画を見てみると、アバターや、SNSとしてのコミュニケーションが希薄だった。「コミュニケーションを求めないのがニコ動ユーザーなんだ」という意見もあって、やったことはなかったわけです。そこにトライしてみようと。
―― 最初からアバタービジネスだけ考えていたわけではなかったんですね。
配野 当初は「クリエイターに還元を」ということも考えたんですよ。ただ、プレイしようと思ったら100円でもお金を払うわけじゃないですか。それがたった2秒でクリアできるようなゲームだったら「こんなサイト二度と来ねえよ!」ということになりかねない。
 ぼくたちはもちろんゲーム会社として、ゲームを売っていた。それまでに出したゲームを信頼して、ユーザーに「先行投資」をしてもらっていたわけです。だから「金返せ」と言われることもあるし「面白かった」と言われることもあった。でも、それとは(ニコゲーで作ったゲームは)やっていることがまったく違うと思うんです。
―― そうやってニコゲーのシステムを作る上で、最も苦労したところは。
配野 ゲーム会社としての考えをリセットすることですね。5800円するソフトには、「作り込み度」があるんですよ。でも、その考えでやっていくとひたすらゴージャスな作りになってしまう。それじゃダメなんです。
 たとえばゲームの場合、1つのボタンを押すだけで、すごいエフェクトがかかったり、音が鳴ったりするじゃないですか。でも、ウェブでそんなの見たことないですよね。そういうところをウェブ、「利用は無料」に合わせて考えていこうと。



市民を巻き込んだ調査報道 こんなネットメディア目指す
「ピューリッツァー賞」受賞プロパブリカに聞く
米ジャーナリズムの最高峰「ピューリッツァー賞」に2010年、インターネットメディアとして初めて選ばれたのが「プロパブリカ(ProPublica)」だ。調査報道にこだわる独自のスタイルを貫くプロパブリカは、どのようなオンラインメディアを目指しているのか、編集部に聞いた。
――プロパブリカの編集方針を教えてください。
プロパブリカ 「プロパブリカ」とはラテン語で「市民のために」という意味です。私たちは「政府や企業、その他公共の機関による、市民に対する権力の乱用や裏切り行為を暴きだす」を目標として掲げています。「強い者が弱い者を搾取する」実態に読者の興味をひきつける上で、私たちは「調査報道」の手法をとっています。
例を挙げましょう。「葬られた秘密」という長期連載では、米国で行われている天然ガスの採掘が飲料水にどのような影響を与えるのかを明らかにすると同時に、石油業界の実態についても伝えています。2008年から取材、報道をリードしてきた結果、ニューヨーク州やコロラド州など複数の州が、採掘を規制する法律の制定に向けて動き出しました。
――調査報道は時間がかかり、それだけコスト負担も増えます。
パロパブリカ 「サンドラー財団」のように、何年にもわたって経済的支援を続けてくれている組織があるのは私たちにとって幸運です。組織の運営はもとより、元ウォールストリートジャーナル紙の編集長ら強力な「首脳陣」を外部から迎えることができました。今では、調査報道専門の編集部としては全米最大規模を誇ります。 
もうひとつのカギは、大手テレビ局や新聞、雑誌、ネットメディアなど広く協力を得て記事を有料配信していることです。例えば、カリフォルニア州当局が免職処分や免許停止になっている大量の看護師を実際には処分せず、医療現場に勤務させたままにしていた問題に焦点を当て、ロサンゼルスタイムズ紙と共同で連載記事を制作しました。2009年にはこのような記事138本を、38の協力メディアに配信しています。
米アリゾナ州立大学が2005年、全米の大手日刊紙100社にアンケート調査を実施したころ、「専任の調査報道担当記者ゼロ」との回答が37%に上りました。情報があふれている今日だからこそ、実際に起きたことから世の中の動きを理解する報道機関が必要なのです。
――オンラインメディアとして初めて、ピューリッツァー賞「調査報道」部門で受賞しました。
プロパブリカ 「メモリアル病院で下された死の決断」という見出しの記事です。2005年8月、「ハリケーン・カトリーナ」に襲われたニューオリンズの病院「メモリアル・メディカルセンター」は洪水に見舞われ、停電と断水で患者たちがまともに治療を受けられない状態が数日間続きました。絶望的な状況で瀕死の患者たちに、医師や看護師は最終的に薬物を注射し、安楽死させる道を選びます。この「事件」を取り上げたのです
――なぜこの出来事に注目したのでしょう。
プロパブリカ この病院で実際に何が起こったのかは明らかにされていなかった。将来同じ過ちを繰り返さないために、なぜこのようなことが起きたのかを読者だけでなく議員たち、そして医学会は知る必要があると考えました。
記事が掲載された後、医療専門家の間では、究極の非常事態に陥った際に何をすべきなのかが話し合われて、新たな指針づくりが始まりました。このようなインパクトを社会に与えることを、私たちは望んでいます。
ピューリッツァー賞の受賞は、もちろん大変うれしい知らせでした。プロパブリカの名が広く知られるキッカケになったようですし、実際に多くの人から小口の寄付が寄せられるようになりました。メキシコ湾原油流出で「市民ジャーナリズム」展開
――既存メディアとは違うプロパブリカの独自性はどこですか。
プロパブリカ テレビや新聞といった既存メディアとは協力関係にあり、業務内容や方法論には共通する部分もあります。しかしニュースメディアの多くは、1人の記者に1つの記事内容だけを追わせたり、たった1つの題材に半年以上もかけさせたりすることは不可能です。プロパブリカでは、記者が長期間の取材をまっとうできるように、必要な支援を惜しみません。
――では、その独自性を伸ばしてオンラインメディアとして成長するために、カギとなるのは何だと考えますか。
プロパブリカ ソーシャルメディアを重視しています。SNSの「フェースブック」やツイッターは有効だと思います。私たちのプロジェクトを読者に知らせるツールとして利用したり、読者同士がフェースブックで経験や意見を共有したりしています。ソーシャルメディアは、プロパブリカが目指す「市民ジャーナリズム」、つまり読者を巻き込んだ報道の形を実現する一助となります。
市民ジャーナリズムの実践では、こんな事例があります。2010年4月に発生したメキシコ湾原油流出事故で「BPへの賠償請求プロジェクト」を立ち上げました。これは、大手石油会社のBPに賠償請求を行った人々に呼びかけて、その詳細を記者と読者で共有するもので、プロパブリカのウェブサイトにはさまざまな意見、体験談が寄せられています。フェースブックでも「特設サイト」で読者に情報提供を呼びかけると同時に、ツイッターへの投稿も促しています。
ピューリッツァー賞を受賞したとはいえ、私たち自身に何か変化が起きたわけではありません。今まで積み重ねてきたことを、これからも続けていくのみですし、インパクトのある調査報道を心がけたいと考えています。
プロパブリカ(ProPublca)
2007年に設立された、非営利のオンラインメディア。ウォールストリートジャーナルの元編集長ポール・シュタイガー氏が編集長を務める。調査報道を専門に、32人の専属記者を抱える。ウェブサイトほか、ソーシャルメディアやポッドキャストを活用する一方、大手メディアを通じて記事を配信している。編集部は米ニューヨーク・マンハッタン。



トヨタ・日産、韓国製部品を本格調達へ
 トヨタ自動車、日産自動車など国内自動車大手が、割安な韓国製部品の本格調達に乗り出すことが18日、分かった。
 韓国・ソウルで今月29日から開かれる見本市に参加し、韓国の大手部品メーカーと商談会を行う。国内自動車大手は円高で国際的な競争力が低下しており、韓国から部品を輸入して製造コストを引き下げる。今後、部品の海外調達が各社に広がれば、自動車メーカーを支えてきた国内の系列部品会社が打撃を受ける恐れもある。
 見本市は日韓政府の主催による「日韓部品素材調達展示商談会」で、日本自動車工業会の協力で自動車メーカー約10社が参加する。商談会は今年で2回目だが、昨年は電機大手などが中心で、自動車メーカーが参加するのは今回が初めてとなる。



菅改造内閣 まず景気回復に全力を挙げよ(9月18日付・読売社説)
 菅改造内閣が17日、発足した。
 内閣の要である仙谷由人官房長官、財政再建重視の野田佳彦財務相ら5閣僚を留任させる一方、厚生労働相や経済産業相など12ポストは新たに選任した。
 内閣の陣容を大幅に入れ替えたのを機に、内政・外交の諸課題の解決に、果断に取り組まなければならない。
 真っ先に対応すべきは円高・景気対策である。
 6年半ぶりの為替介入で円高の流れにひとまず歯止めがかかっているが、予断は許さない。野田財務相は、日銀と緊密に連携し、円高阻止に全力を挙げてほしい。
 ◆成長戦略を軌道に◆
 菅首相は、追加の経済対策を盛り込んだ今年度補正予算を編成する意向だ。景気の先行き不安を考えれば妥当な判断である。
 企業の活力を引き出し、国際競争力を高める成長戦略も大事だ。先に政府が発足させた「新成長戦略実現会議」が十分に機能するよう、関係の経済閣僚は、指導力を発揮しなければならない。
 来年度予算編成に向けた各府省の要求総額は96兆円超と、今年度予算額を大きく上回っている。財政事情は厳しく、要求の絞り込みが課題となるが、景気を冷え込ませては元も子もない。
 地方の経済は疲弊している。景気を刺激し、新たな雇用創出が期待できる事業には、むしろ予算を増やす「選択と集中」が大切だ。
 経済効果が期待できない子ども手当や高速道路無料化など、衆院選政権公約によるバラマキ政策こそ大幅に見直すべきだ。
 財政の健全化と社会保障費の安定財源確保には、消費税率の引き上げが避けて通れない。
 菅首相はかねて、消費税問題や社会保障に関する超党派協議を唱えてきた。野党側に働きかけ、早期に協議入りする必要がある。
 10月召集予定の臨時国会は、衆参ねじれ状況の下、自民党など野党の協力が欠かせない。
 自民党の石原伸晃幹事長は、協議に前向きな姿勢を示している。だが、「民主党がバラマキを続けている限りはだめだ」とし、政権公約の修正・撤回が協議入りの前提としている。当然のことだ。
 菅首相は、政権公約を大胆に見直すことで、超党派協議を実現すべきだ。それが、政策ごとに与野党が協力する部分連合への道を開くことにもなろう。
 ◆国益踏まえた外交を◆
 党幹事長に転じた岡田克也外相の後任には、前原誠司前国土交通相が横滑りした。
 安全保障通の前原氏は、米国の知日派にも多くの人脈を持つ。鳩山前内閣で亀裂が入った対米関係を改善するうえで適任とみなされての起用だろう。
 留任した北沢俊美防衛相とともに、5月の日米合意に沿って米軍普天間飛行場の移設実現に全力で取り組んでほしい。
 尖閣沖漁船衝突事件では、中国は高圧的な姿勢をみせている。前原氏は党代表時代から、中国の軍事力増強について厳しい見方をしてきた。対中外交は、国益をしっかりと踏まえ、主張すべきは主張する姿勢で臨んでもらいたい。
 政府と党の関係や「政と官」のあり方についても、立て直しが急務である。
 鳩山前内閣では、内閣と党の意思疎通を欠き、いったん決まった方針が二転三転するなど、政策決定に乱れが生じていた。
 国家戦略相を兼務する玄葉光一郎政調会長は、党の政策調査会と内閣との橋渡し役をしっかり務める必要があろう。
 非議員ながら総務相に抜擢(ばってき)された、旧自治省出身の片山善博前鳥取県知事は、知事時代に行政の透明化に取り組んだ。政府の行政刷新会議では、公務員改革について積極的に発信している。
 民主党政権における政官関係は絶えずぎくしゃくしてきた。「政治主導」の意味を履き違えて、官僚の進言に耳を貸さなかったり、官僚のやる気をそいだりするのでは、行政の停滞を招く。
 改造内閣の各閣僚は、霞が関の官僚たちの能力を最大限引き出すため、官僚を使いこなす姿勢に徹してもらいたい。
 ◆残った党内抗争の火種◆
 今回の内閣・党役員人事では、首相が党代表の座を争った小沢一郎元代表のグループからは一人も起用されなかった。
 小沢グループは若手議員が多数を占めている。首相としては、副大臣や政務官に積極的に登用し、挙党態勢を築きたい考えだ。
 ただ、小沢氏は、首相が要請した党代表代行への就任を断った。菅政権がいずれ行き詰まるとみて「党内野党」の立場に徹するつもりなのだろう。
 党内抗争の火種を抱え、菅首相は引き続き、厳しい政権運営を迫られることになる。
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