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日経社説 アジア経済再生へ日本の役割は重い(2/16)
 米国発の金融危機は信用と需要の大幅な収縮を招き、海外からの直接投資と輸出を成長の原動力にしてきたアジア諸国の実体経済を急速に悪化させている。東南アジア諸国連合(ASEAN)などは、経済再生に向けた日本の指導力に期待しているが、「1997年のアジア通貨危機の当時と比べて日本の存在感が薄い」との厳しい声も聞かれる。
 日本自身が苦境に立たされているとはいえ、世界2位、アジアでトップの経済大国である。域内の危機対応や将来の成長戦略を主導する責務があるのではないか。
通貨融通を多国間に
 国際通貨基金(IMF)は1月末の世界経済見通しで、今年のアジア発展途上国の成長率を5.5%と予測した。高成長が続いてきた中国は6.7%、インドは5.1%、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナムのASEAN5カ国は2.7%に減速するとみる。
 新興工業経済群(NIES)と呼ばれる韓国、台湾、シンガポール、香港の4カ国・地域の状況はさらに深刻で、今年の成長率がマイナス3.9%まで落ち込むと予想する。軒並みマイナス成長が見込まれる日米欧の主要国より厳しい数字だ。
 世界経済をけん引してきたアジア経済は総じて輸出依存度が高い。特にシンガポールや香港は名目の国内総生産(GDP)と比べた輸出の割合が150%を上回る。最大の消費市場だった米国を中心に需要が急減した結果、アジア経済は輸出の不振→雇用や所得環境の悪化→消費の低迷という悪循環に陥っている。
 米国の消費依存からの構造転換を迫られたアジア諸国・地域は内需喚起の景気対策に躍起だ。中国政府は名目GDPの13%に相当する4兆元(約52兆円)の景気刺激策を発表。シンガポールも法人税率引き下げなどを打ち出し、台湾は個人消費を刺激しようと全住民に約1万円相当の「消費券」を配布した。
 だが、経済構造を内需主導に転換するといっても、現実には容易ではない。中国やインドのような大国を除けば、国内の経済規模は小さく、内需だけの危機克服は難しい。
 底が見えない金融危機への警戒心もぬぐえない。自国通貨の急落に見舞われた韓国など一部を除けば、アジア通貨危機当時と比べた金融市場の混乱はまだ限定的だが、いつ、どのような危機に直面するかは想定しにくい。各国とも経済の先行きに不安を隠せないのが実情だ。
 危機は地域の連携を強める好機でもある。苦境の今こそ日本が主導してアジアの不安を取り除き、経済再生に一役担うべきである。
 課題は山積している。金融協力で緊急なのは流動性危機への備えだ。日中韓とASEANには危機の際、2国間で外貨を融通しあう「チェンマイ・イニシアチブ」という枠組みがある。多国間の通貨融通協定に拡大し、機動的に運営する協議が進んでいるが、早期に実現すべきだ。
 実現に向けては、融通枠の拡大や融通条件の共通化、経済政策の相互監視体制の整備などが不可避になる。IMF融資との連動を外貨融通の原則にする現行の取り決めも見直す必要がある。危機の予防を重視し、迅速かつ効果的に機能する枠組みを作らなければ意味がない。
 中国は昨年末から韓国、香港、マレーシアとの間で多額の通貨スワップ協定を相次ぎ締結している。日本が手をこまぬいていれば、主導権を中国に奪われかねない。
まずは日本の内需拡大
 内需拡大への貢献では、政府開発援助(ODA)などを利用したインフラ整備支援の拡充が急がれる。
 麻生太郎首相はダボス会議でアジアに総額1兆5000億円以上のODA供与を表明した。アジア諸国は歓迎している。通貨危機の際にIMF融資を受け入れた国々は厳しい緊縮財政を強いられ、総じてインフラ整備が立ち遅れている。経済規模からみても景気刺激効果が大きい。
 アジアの連携を強め、域内需要を創出することも大切だ。2国間の経済連携協定(EPA)締結を加速して経済活動を活性化するとともに、将来的には日中韓とASEAN、インドや豪州などを視野に入れた東アジア全体の経済統合実現への具体策を提唱していくべきだろう。
 そのためにもまず、日本の内需拡大が求められるのは言うまでもない。政府も企業もあらゆる方策を使って内需を喚起し、アジアからの輸入を増やしていく必要がある。
 4月の20カ国・地域(G20)緊急首脳会合(金融サミット)で、保護主義の動きに警鐘を鳴らし、自由貿易の重要性を訴えていくことも重要だ。保護主義は貿易依存度が高いアジア経済に深刻な打撃を与える。
 アジアでの存在感を強め、地域経済再生へ指導力を発揮することは、ひいては日本自身の持続的成長にも寄与するはずである。



日本製紙、豪3位を買収 内需企業、海外に活路
 国内製紙2位の日本製紙グループ本社はオーストラリア製紙3位のオーストラリアンペーパー(AP、ビクトリア州)を買収する。日本の製紙会社の海外M&A(合併・買収)としては過去最大規模。国内の紙需要が頭打ちとなるなか、円高を生かして海外に本格進出する。国内景気の急激な悪化と少子化に直面する内需型企業が、金融危機の影響が比較的小さいアジア・オセアニア市場に成長機会を求める動きが広がってきた。
 日本製紙は5月をめどに、AP社の親会社である豪州紙商社ペーパーリンクスから全株を譲り受ける。買収額は6億豪ドル(約360億円)。工場については、AP社の豪州4工場のうち、生産の8割強を占める主力2工場を買収対象とする。買収資金はコマーシャルペーパー(CP)発行や銀行借り入れで賄う。



米主要500社の09年配当予想、第2次大戦以来の13%減
 【ニューヨーク=山下茂行】米主要500社の今年の配当は前年比で13.3%減少し、第2次大戦中の1942年(16.9%減)以来の大幅な落ち込みとなる見通しだ。企業業績が急速に悪化、金融不安に備えて手元資金を確保する動きも配当減につながっている。オバマ政権が新たな金融安定化策で金融機関の配当を制限するのも響く。歴史的な景気悪化のなかで、米企業は株価の下支え要因である配当も絞らざるを得なくなっている。
 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が主要企業の配当予想をまとめた。今年の配当総額は2150億ドル(約20兆円)弱と前年に比べて約330億ドル減少する見通し。米主要企業の配当はIT(情報技術)バブル崩壊を受けて2000年、01年に減少したが、02年以降は7年連続で増加していた。



日本・ペルー両政府、EPA交渉へ 乗用車関税など撤廃も
 日本・ペルー両国政府は経済連携協定(EPA)を締結するための交渉を始める方針を固めた。日本は乗用車などの輸出拡大や鉱物資源の安定調達に貢献し、ペルーは日本企業の投資や進出に弾みがつくと期待している。今月下旬にペルーの外相と貿易・観光相が来日する予定で、両国間の予備協議入りなどで合意する見通しだ。
 日本は現在、10カ国・地域とEPAを署名・締結済みで、5カ国・地域と交渉中(大筋合意を含む)。南米諸国とのEPA交渉は、2007年9月に発効したチリに続き2カ国目となる。



電子部品メーカー、給与カット広がる
 電子部品メーカーが業績悪化を受け、一般社員の給与を相次ぎカットする。パワー半導体のサンケン電気は今春から3―5%、携帯電話などに使うセラミックコンデンサー大手の太陽誘電は4月から数%を減らす。世界景気悪化で足元の受注が前年の半分程度にとどまっているため、人件費圧縮で固定費削減を急ぐ。
 サンケンはこのほど給与カットを労働組合に打診した。主力の自動車やテレビ向け部品の販売が不振で、2009年3月期に連結営業赤字に転落する見通しのため。



米GM、労使交渉が決裂 再建計画策定危うく
 【ニューヨーク=小高航】米政府に提出する経営再建計画を巡る米ゼネラル・モーターズ(GM)と全米自動車労組(UAW)の労働条件改定交渉が決裂した。複数の米メディアが14日報じた。同じく政府支援を求めているクライスラーもUAWとの交渉が難航。両社にとってUAWの譲歩を引き出せるかは政府支援を得る上で最重要課題だったが、17日の提出期限を目前に控え、計画が策定できるか危うくなってきた。
 ロイター通信などによると、GMとUAWの担当者間の協議は米時間13日夜に決裂。14日夜段階で再交渉入りのめどは立っていない。クライスラーの協議もほとんど進展していないという。
 交渉の最大の焦点は、UAW主導で運営している退職者向け医療保険基金にGMが拠出金をどれだけ出すか。GMは現在、同基金に約200億ドル(約1兆8000億円)の現金を拠出する義務を負っている。しかし昨年12月、政府が金融支援の条件として、拠出金の半分をGM株式で賄うよう要求。GMは再建計画提出を控えUAWの合意を取り付ける必要があった。



ニッセン、携帯電話使い手軽にギフト
 通販大手ニッセンホールディングスはソフトバンクギフト(東京・港)と組み、携帯電話を使って手軽にギフト商品を贈れるサービスを16日に始める。ソフトバンクギフトの携帯電話サイトでニッセンの商品を選んで相手のメールアドレスを入力すると、通知を受け取った相手が指定する場所に商品が届く。雑貨や衣料など約60品目を用意し、その後300に増やす。
 初年度3億円の売り上げを見込む。中元や冠婚葬祭向けなど昔ながらの贈答市場は縮小傾向だが、気軽に個人間で商品を贈るカジュアルギフト市場は成長が続いている。



G7、財政出動で協調 長期金利に上昇圧力
 【ローマ=河浪武史】14日閉幕した7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、世界的な金融危機と景気悪化の克服に向け、財政出動などの協調行動をとる方針を確認した。ただ市場は景気刺激効果を疑問視しており、国債増発の懸念から長期金利が上昇しやすいとの声も出ている。G7会議の共同声明には円相場への直接的な言及がなく、円高傾向が続くとの見方も強い。
 「16日に発表する2008年10―12月期の国内総生産(GDP)は大幅なマイナス成長が予想されるが、債券は買いにくくなった」(日興シティグループ証券の佐野一彦チーフストラテジスト)。G7声明は経済成長と雇用を維持するため「各国が財政政策を前倒しし、迅速に実施する」との方針を盛り込んだ。これに債券市場の関係者が最も敏感に反応。長期金利に上昇圧力がかかり、新発10年物国債利回りが再び1.3%台に乗るとの予想が出ている。



コソボ独立1年 民族問題、欧州に深い傷
 コソボがセルビアからの独立を一方的に宣言して17日で1年。日本を含む54カ国がコソボを国家承認し、懸念されたセルビアとコソボの衝突は回避できた。ただ、コソボの後見役である欧州は拙速に独立を押し切った結果、結束が弱まった。ロシアのグルジア侵攻、金融・ガス危機などの問題が起こるたびに欧州内での亀裂が深まり、危機対応能力の低下を印象づけている。
 昨年8月のグルジア侵攻後、ロシアは南オセチア自治州などを国家承認し、独立を既成事実にしようと狙っている。コソボの一方的な独立は「グルジアからの独立を志向する南オセチアの住民と類似している」とし、ロシアの行動を正当化する余地を与えてしまった。ロシア政府筋は「コソボが良い先例になってくれた」とほくそえむ。



自民逆風、地方選にも 内閣支持率低迷響く
 麻生内閣の支持率低迷を背景に、各地の地方選では自民党の退潮が鮮明になっている。最近では麻生太郎首相のおひざ元である北九州市議選で議席を減らしたほか、保守王国である山形県知事選などでも県連が支援する現職候補が敗北。追い風を受ける民主党は首長選での与党との相乗り禁止を徹底する方針で、地方の与野党対決の行方は首相の衆院解散戦略にも影響を与えそうだ。
 「地方組織はむちゃくちゃな状況だ。何としてでも政権を支えないといかんが、大変だわね」。11日夜、自民党の青木幹雄前参院議員会長が古賀誠選挙対策委員長、二階俊博経済産業相を前にこぼすと、会合は沈うつな雰囲気に包まれた。結局、3氏は当面の政権支持を確認するにとどまった。
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