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日経社説 同時不況と保護主義の克服へ行動急げ(2/15)
 深刻な同時不況の克服へ世界の主要国が動き出した。米議会は総額約7870億ドル(約72兆5000億円)にのぼる景気対策法案を可決した。ローマで開いた7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は財政出動などの景気浮揚策と保護主義の回避で緊密な協調を確認した。一刻も早く決定を具体的な行動に移すのが、各国の重い責務となる。
 主要国の昨年10―12月期の国内総生産(GDP)は米国が前期比年率3.8%減、ユーロ圏も通貨統合後で最大のマイナスだった。日本も年率で二ケタ減となる見通しだ。
 米景気対策は一歩前進
 金融危機の波が世界の実体経済を揺さぶっている。350万人の雇用創出を掲げた米国の景気対策法が、オバマ大統領が期限とした16日までの成立にこぎつけるのは、世界景気の立て直しにとって一歩前進といえる。上院と下院はいったん内容の異なる法案を可決したが、民主・共和両党が法案一本化で歩み寄り、修正案ができた。
 景気対策は環境分野の投資で雇用創出を狙う「グリーン・ニューディール」や老朽化した橋、道路の改修といった歳出拡大策と、勤労者層向けの減税などを盛り込んだ。金融危機の震源地で世界経済の柱である米国が、過去に例のない大規模な景気対策を円滑に議決したのは評価できる。決まった対策を可能な限り迅速に実行し、景気を支えてほしい。
 もちろん大規模な対策の実施に伴い、米国はGDP比10%に迫る財政赤字を一時的であれ覚悟しなければならない。米連邦準備理事会(FRB)も巨額の資金供給で財務が悪化している。米経済やドルへの信頼が急激に低下すれば、世界の経済や市場にとっての打撃は大きい。米政府とFRBは慎重にも慎重を期して市場との対話に努めるべきだ。
 あいまいな点が多く市場の不評を買った米国の金融安定化策の詰めも急がれる。官民共同で設けるファンドが金融機関から不良資産を買い取りやすくする条件の整備や、萎縮した金融市場を安心させる公的資金の追加投入など、有効な対策を極力早く打ち出してもらいたい。
 G7会議は主要国が成長と雇用の維持、そして金融部門の強化へ「あらゆる政策手段を用いて協働する」との声明を出した。昨年11月に米国で開いた20カ国・地域(G20)による緊急首脳会合(金融サミット)の合意を再確認した形だ。特に需要や雇用の創出に向けた各国の財政政策が議論の焦点になった。
 金融の収縮や自動車などの世界的な買い控えで世界の需要は急激に冷え込んだ。G7声明は財政支出の追加や前倒し実施を通じ、景気の底割れを防ぐ意志を共有した。
 米国の新政権が打ち出す大規模な対策に続き、日本や欧州の対応も問われる。日本では景気の急激な悪化を受け、政府・与党で追加経済対策を探る動きが始まっている。温暖化対応と省エネルギーの投資促進策や、失業の急増に備えた雇用安全網の強化など、緊急度が高く将来の成長にもつながる大胆な政策を具体化すべきだ。
 欧州各国では大手銀行の経営に対する疑念から、金融不安が再び募りつつある。金融安定化と実体経済のテコ入れへ域内各国が協調した対策を打ち出すことが急務になる。
 中央銀行の対応も重要だ。照準を定めて金利を下げる「信用緩和」を進める米FRBとともに、欧州中央銀行(ECB)や日銀もカネ詰まりの解消に向け、旧来の発想にとらわれない政策を考えてほしい。
 自国優先の歯止め必要
 今回のG7会議は4月に英国で開く第2回金融サミットへの橋渡しという性格が色濃かった。だが、各国の雇用確保や産業育成策が保護主義の連鎖につながることの懸念を真剣に議論したのは特筆される。拡大会合には世界貿易機関(WTO)のラミー事務局長も急きょ出席した。
 昨年11月の金融サミットで各国は「今後1年間、貿易に対する新たな障壁を設けない」ことで合意している。ところが、米国が景気対策に盛り込んだバイアメリカン(米国製品優先購入)条項や、フランス政府による自動車大手への低利融資など、自国優先の端緒とみられかねない材料が増えている。
 米仏とも保護主義には当たらないと他国の批判に反論した。G7声明も保護主義の回避に向けた努力の継続を確認した。だが単なる決意表明では抑止力が弱い。各国は危機対応の景気対策を急いでいるが、保護主義かどうかの判断が微妙な灰色の分野をできるだけ減らすべきだ。
 自由貿易をゆがめる「自国優先」をどう判別するか。G20サミットの本格開催でG7会議の存在意義が問われかねないが、主要国の立場から明確で公平なルール作りを主導していくことは引き続きG7の重要な役割となるのではないか。



定額給付金3月開始は2割、6月ずれこみも…読売調査
 政府が2008年度内の支給を目指している総額2兆円規模の定額給付金について、3月末までに「支給開始可能」とした市区町村が全体の2割にとどまっていることが、読売新聞の調べで分かった。
 申請書の発送や口座の確認、住所不特定者の対策など作業量が膨大となるためで、6月までずれ込むとの見通しの自治体もあり、政府の目標は、破綻(はたん)していることが浮き彫りになった。
 給付金支給は、財源を確保するための08年度第2次補正予算関連法案が国会で成立後に可能となる。民主党は、参院での法案採決を20日以降に先送りする方針で、与党が衆院で再可決できるのはそれ以後になる見通し。



海外ブランド、国内販売急減 LVMH、08年10%減
 海外高級ブランドの日本国内での販売が急速に落ち込んでいる。最大手の仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)の2008年10―12月期の日本国内売上高が二ケタ減になるなど、昨秋以降の減収が目立つ。各社は相次いで値下げを実施したが、効果は限定的で、再値下げや店舗閉鎖など一段の対策を迫られそうだ。
 LVMHの08年の日本での売上高は未公表だが、世界全体の171億9300万ユーロ(約2兆280億円)のうち10%の2000億円程度。同社の発表によると円ベースで前の年に比べて10%減少。08年10―12月の減収幅は1―9月期の前年同期比7%減から拡大した。



中国人漫画家、日本で連載 角川書店、アジア開拓狙う
 角川書店は中国人漫画家の育成に乗り出す。オリジナル作品を漫画雑誌に連載して日本でデビューさせるほか、年内に単行本を日中両国で同時発売する。日本の出版社が中国から漫画家を招き育成するのは珍しい。日本の漫画は中国をはじめアジアで高い人気があり、現地の才能を発掘してアジア市場の開拓につなげる狙い。
 角川グループホールディングスは中国の出版社「広州漫友文化科技発展公司」と2008年9月に出版事業などで提携した。漫画家育成もその一環で、第1弾としてこのほど00年に中国でデビューした人気女性漫画家、丁冰(ディン・ビン)さん(27)が来日した。角川の編集者が執筆を支援する。



ゼネコン各社、海外の収益改善急ぐ
 大手ゼネコン(総合建設会社)各社は相次ぎ海外工事の収益改善に乗り出す。大成建設は2009年春以降、中東やアフリカなどに目立つ不採算工事が多い地域での新規受注を停止する。清水建設は工事を管理する外国人社員を増やし、コスト削減につなげる。世界景気の悪化で海外工事の採算は一段と厳しくなると判断、管理を徹底する。
 大成建設は政府開発援助(ODA)案件で経験を積んだ東南アジアなどに経営資源を集中させ、中東やアフリカ諸国などで採算が合わない国での営業をやめる。赤字が予想される案件向けに専門の対策チームを新設。現地の弁護士の助言を受けながら工事の追加金請求、代金回収にあたる。



GM、破産法も選択肢 再建計画、米紙報道
 【ニューヨーク=小高航】米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は14日、米ゼネラル・モーターズ(GM)が政府に提出する経営再建計画の中で、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請を選択肢の1つに盛り込む見通しだと報じた。破産法に基づく再建で必要な金融支援を政府に求めるとしている。一方、複数の米メディアはGMの計画提出が17日の締め切りに間に合わない可能性を指摘した。
 ウォール紙はGMが再建計画の中で、追加の政府支援による再建という従来の方針に加え、破産法の適用を申請する際の資金援助という新たな選択肢を盛り込むと報じた。GMはこれまで一貫して破産法の申請を否定。ただ、米新車販売の激減など再建を巡る経営環境は悪化しており、GMのワゴナー会長らも態度を軟化させているという。
 再建計画には、北米で10以上の工場閉鎖を含む大規模なリストラ策が含まれる見通し。GMは債権者や全米自動車労組(UAW)との交渉を続けているが、債務の株式化の比率を巡り債権者の反発が続いている。



米、対シリア関係に改善の予兆か オバマ政権、議員外交も始動
 米政府がシリアへの輸出禁止措置に例外を設け、航空機部品の輸出を認める方向で検討に入った。2004年大統領選の民主党候補、ケリー上院外交委員長が月内にシリアを訪問し、アサド大統領との会談を予定するなど議員外交も始動。オバマ政権が対シリア関係の改善に動く予兆との見方が出ている。
 禁輸措置緩和の検討は13日、米政府関係者の話で明らかになった。ハイテク技術が詰まった航空機部品の輸出容認となれば、外交方針の転換といえる。シリアの航空会社のボーイング機を修理するための部品を提供するなどの具体案も浮上している。



日銀総裁「経済厳しい」 財務相「予算成立、最大の対策」 会見で
 【ローマ=藤田剛】日銀の白川方明総裁は14日のG7会議閉幕後の記者会見で「経済と金融の状況に大変厳しい認識を持っており、次回の金融政策決定会合ではデータを踏まえて丁寧に点検したい」と述べ、急激な景気悪化に適切な対応をとる方針を示した。G7会議では、「(企業金融支援など、日銀が実施している)非伝統的な金融政策は適正と評価された」と語った。
 同時に会見した中川昭一財務相は政府の対応について、「2009年度予算案と08年度の第二次補正予算の関連法案を成立させることが最大の景気対策だ」と言明。野党に国会審議での協力を求めた。日銀の金融政策に関しては「金利は非常に低いうえ、いろんなことをやっており評価している」と述べた。



米自動車部品メーカー、政府に支援要請 最大2兆3000億円
 【ニューヨーク=小高航】米自動車部品メーカーの業界団体、米国自動車部品工業会(MEMA)などは13日、米政府に対し最大255億ドル(約2兆3000億円)の金融支援を正式に要請した。ビッグスリー(米自動車大手3社)の経営危機に伴い、部品の売上高が激減。政府支援による破綻回避を訴えるが、政府がどこまで支援に乗り出すかは不透明だ。
 要請額のうち、185億ドルが部品会社への融資やビッグスリー向け債権の政府保証など、部品メーカー向けの支援。残りの70億ドルは、完成車メーカーの部品代金支払いを迅速化するため、ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーに融資するよう求めた。



クリントン米国務長官、アジア歴訪出発へ
 【ワシントン=丸谷浩史】ヒラリー・クリントン米国務長官は15日、就任後初の外遊として日本、中国などアジア4カ国訪問に出発する。各国では首脳との会談のほか、市民との対話集会もそれぞれ実施し、オバマ政権のアジア重視の姿勢を示す。クリントン長官は各国で2国間問題だけでなく経済危機、北朝鮮核問題、地球温暖化問題など国際的な課題への協調も訴える。
 最初の訪問地となる日本では、オバマ政権の高官として初めて北朝鮮による拉致被害者家族と面会する。クリントン長官は「国務長官というより妻、母、娘、姉妹として会いたい」「家族を失い、こんなにも長年にわたって消息が分からないとは、想像を絶する」と、拉致問題解決を後押しする姿勢を鮮明にしている。
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