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動画配信サイトが躍進 “革命”でテレビ脅かす 「ユーチューブ」や「ユーストリーム」といったインターネットの動画配信サイトの勢いが止まらない。世界中の誰もが映像を投稿してテレビ局になれるという“革命”に加え、動画サイトに手軽に接続できる米アップルの「iPad(アイパッド)」の登場で、視聴者を既存のテレビ局から奪っている。敵対してきたテレビ局も動画サイトと手を組む動きが広がっており、新たなメディアの勃興(ぼつこう)が加速している。
小林麻耶もビックリ
「ツイッターと組み合わせて面白い番組ができることを期待している」
ソフトバンクの孫正義社長が、テレビ局を巻き込んだ新たな野望に燃えている。孫社長が仕掛けたのは、TBS系列で5月30日から始まった新番組「革命×テレビ」だ。
番組では、ソフトバンクが今年1月に約18億円を出資した米ユーストリームの技術を活用。世界各地に飛んだリポーターが現地から映像を送り生中継する。
ユーストリームは、携帯電話がつながる場所ならば、米アップルの携帯端末「iPhone(アイフォーン)」でも生中継を行える。テレビ中継のように、衛星通信などの機材はいっさい不要だ。
「これまで知らなかったけど、本当に革命的」。番組の司会を担当するアナウンサーの小林麻耶さんも驚きを隠さない。
ユーストリームのジョン・ハムCEO(最高経営責任者)は「米国ではCNNなどのテレビ局とウィン・ウィンの関係を築いた。その成功例を日本にも広げたい」と意気込む。
調査会社ネットレイティングスによると、ユーストリームの国内アクセスは4月に99万2千人に上り、前年同月に比べ約11倍にも急増した。
ソフトバンクは、孫社長の対談や携帯電話の新モデル発表会をユーストリームで中継するなど多用しており、自ら情報を発信するメディア企業への飛躍をもくろむ。
広告出稿も流出
動画サイトには、視聴者だけではく、広告も流出している。ドワンゴグループが運営する「ニコニコ動画」は、今年1~3月期に四半期ベースで初めて黒字化を達成した。
人気コンテンツの「ニコニコ生放送」の4月のアクセス数が138万3千人と前年の約3・3倍に増えるなど、好調な“視聴率”を背景に、広告出稿を伸ばしたことが主因だ。
ニコニコ動画を担当するのは、かつてNTTドコモでiモードを成功させた辣腕(らつわん)で知られる夏野剛ドワンゴ取締役(慶大教授)。「おそらくネット動画サイトが黒字化した例は世界中でも初めてだろう」と胸を張る。
動画サイトで絶大な影響力を誇る米グーグル傘下のユーチューブは、5月に1日当たりの視聴回数が20億回を突破した。「プライムタイム」と呼ばれる視聴率の最も高い夜の時間帯に、米三大テレビを視聴する人の倍近くに上る規模だ。創業からわずか5年で偉業を達成した。
iPad追い風
これまでユーチューブには、テレビ番組や映画などをコピーした著作権を侵害する違法コンテンツが氾濫(はんらん)。既存メディアから目の敵にされてきた。しかし、違法コンテンツの排除に積極的に取り組み、最近はテレビ局や映画会社などとのパートナーシップを深めている。
日本でもNHKや民放キー局と友好関係を結び、グーグルの徳生裕人シニアプロダクトマネージャーは「さらに提携パートナーを増やしたい」と勢力拡大に余念がない。
動画サイトを後押しするのが、iPadの存在だ。すでに全世界で200万台超を販売。ユーザーからは「好きな映像を探し出して楽しめるiPadを使う時間が増え、テレビを見る時間が減った」(30代男性)との声が上がる。
「電子書籍が注目されているが、まずは動画サイトのポータル(玄関)として普及する」(メディアアナリスト)との指摘は多い。
テレビ局側も「緊張すべき状況を迎えた。メディア間の競争が熱を帯びる中、テレビの優位を失わないようにしたい」(広瀬道貞日本民間放送連盟会長)と危機感をあらわにする。
動画サイトがさらに躍進するには、「テレビ局が持つマス(大衆)向けコンテンツを拡充していけるかがカギになる」(ネットレイティングスの鈴木成典シニアアナリスト)。
主導権を握るのは、「メディアの王様」を自負するテレビ局か、それとも新興勢力の動画サイトか。メディア攻防が幕を開けた。
食品、国内工場を集約 コカ・コーラ、関東で削減 森永製菓は半分に
食品大手による国内工場の集約が広がってきた。清涼飲料大手の米コカ・コーラグループは関東で工場合理化に3年で500億円前後を投じ、11カ所ある拠点の一部を閉鎖する方針。森永製菓は菓子工場を数年で3~4カ所に半減させる。少子高齢化と人口減で食品の内需が縮む中、キリンホールディングスなども国内拠点を再編する一方で海外事業強化を急いでいる。国内外で生き残りをかけた選択と集中が加速しそうだ。
コカ・コーラセントラルジャパン、東京コカ・コーラボトリング、利根コカ・コーラボトリング、三国コカ・コーラボトリングの関東4社が共同で生産体制を見直す。11工場を持つ4社はコカ・コーラグループの国内販売量の4割強を担う。
全工場に順次、殺菌や瓶詰めなど主要工程に最新設備を導入。4社合わせた生産能力は現行に比べて横ばい、または減る見通し。複数の工場を閉鎖して拠点を集約する方向で検討に入った。一連の合理化で年100億円のコストを削減する。
同グループは日本に、米本社から原液を仕入れて生産販売する会社が4社を含め12社ある。国内グループの年間売上高は約1兆2000億円。炭酸飲料「コカ・コーラ」や缶コーヒー「ジョージア」を抱え、清涼飲料市場で約3割のシェアを握る最大手。だが内需は2009年まで2年連続の減少に転じており、他のグループ会社にも集約の動きが広がりそうだ。
食品大手は競争力のある定番品に経営資源を集中しつつある。全国に6工場を抱える菓子4位の森永製菓も来夏、群馬県高崎市に新鋭工場を稼働させて定番のビスケットなどを増産する。これを機に、新工場を含めて3~4工場に集約する。
元高誘導の再開示唆 中国、切り上げ圧力回避狙い?
【上海=河崎真澄】中国国営新華社通信は19日、中国人民銀行(中央銀行)が同日、「人民元の為替制度改革を一歩進め、相場変動の弾力性を高める」との声明を発表したと報じた。声明は人民銀が相場の決定権を握る現行の「管理型変動相場制」に従って調整を行うとしている。週明けの21日以降、2年前に凍結した年10%程度の緩やかな元高誘導の再開を示唆したものとみられる。
金融危機を理由に中国は2008年夏ごろから1ドル=6・82元前後にほぼ固定する通貨政策をとり続け、割安な人民元の相場を武器に輸出攻勢を強めている。人民銀が毎日決める基準値から上下に0・3%(07年5月から同0・5%に拡大)までは変動を認める管理型の相場制度で、05年から08年まで約20%、元相場が上昇した経緯もある。
19日の声明には、凍結状態にあるこの制度を再開することで自主的な元高誘導の姿勢をアピールし、26日からカナダで開かれる20カ国・地域(G20)の首脳会議(金融サミット)で人民元切り上げの圧力をかわす狙いがあるもようだ。
国内の輸出企業支援のため1ドル=6・82元前後で推移していることに対し、米議会などは中国製品が不当に安く輸入されていると非難し、早期切り上げを求めていた。米政府も今月18日、財務省が先送りしていた「外国為替報告書」を金融サミット後に議会に提出すると表明。金融サミットまでに改革を実行しなければ「為替操作国」認定もあり得るとの警告姿勢を示した。今回の措置について中国は「自主的政策判断」としているが、対米配慮が働いたのは間違いない。これに関連し、ガイトナー米財務長官は19日、「精力的に実行することで力強くバランスのとれた世界経済の成長に大きく貢献する」と述べた。
ただ、欧米各国は「対中貿易赤字の元凶」と指摘する現在の元相場について、人民元を金融当局の管理下からドルや円などと同じように市場の需給に応じて変動する制度に変更するよう求めている。G20では、中国の通貨制度改革も重大なテーマになりそうだ。
「新幹線」計画に影響も ベトナム国会、決議案を否決
ベトナム国会は会期最終日の19日、南北高速鉄道の建設計画に関する決議を反対多数で否決した。政府は日本の新幹線方式の採用方針を決めていたが、影響が出る可能性もある。建設計画は今国会で承認され、日本の協力による事業化調査に進む見通しだった。
南北高速鉄道はグエン・タン・ズン首相肝いりのプロジェクトで、日本の産業界にとっても大きな商機となる。しかし、総額560億ドル(約5兆円)とされる巨額の事業費調達や採算性への懸念などから、国会審議で反対論や慎重意見が相次いだ。
政府計画では高速鉄道は首都ハノイと南部の商都ホーチミン(約1570キロ)を最短5時間半で接続。2014年に着工し、ハノイ-中部ビンと、南部のニャチャン-ホーチミンの2区間を20年までに部分開業、35年までの全線開業を目指していた。
スト独自報道を制限 中国当局
中国各地の工場でストライキが続発していることを受け、中国当局は19日までに国内メディアに対し、ストの独自報道を控えるように指示した。中国紙関係者が明らかにした。ストが拡大し、社会の安定が損なわれることを警戒した措置とみられる。
中国メディアは5月以降、ホンダの部品工場で起きたストなどを大きく報道していたが、同関係者によると、数日前に当局からの指示を受け、各地で起きたストについて独自の報道を控えるようになった。
トヨタ自動車が中国・天津市にある完成車工場の操業を、部品メーカーのストの影響で18日に停止したことも、主要メディアは報道していない。一部の中国紙は伝えたものの、ストという言葉を使わずに部品メーカーの「操業停止」が原因だと伝えている。(共同)
オバマ米大統領、クリントン国務長官を副大統領に起用? 2016年大統領選にらみ急浮上
【ワシントン=佐々木類】オバマ米大統領が、11月の中間選挙後、クリントン国務長官を副大統領に起用する可能性が取りざたされている。代わりに外交に意欲を示すバイデン副大統領を国務長官にすえる“超大型人事”で、クリントン氏が副大統領になれば、2016年の大統領選を狙う絶好のポストになる。
18日付の米紙ワシントン・ポストによると、バイデン、クリントン両氏の交代説は、両氏がそれぞれ互いのポストに意欲を示していることが背景にある。
クリントン氏は国務長官就任以降、米外交の顔として、「予想以上の働きをみせている」(同紙)という評価が定着。副大統領への起用に関し、オバマ大統領周辺でくすぶっていた反対論も今ではすっかり下火になっているという。
2016年の大統領選に立候補したとしても、現在62歳のクリントン氏はまだ60代後半。70歳で就任式に臨んだレーガン大統領や、2年前に72歳で大統領候補となった共和党のマケイン上院議員よりも若い。
16年の大統領選には、全米的な人気を誇る共和党のペイリン元アラスカ州知事の出馬が取りざたされている。この際、減税や財政規律を求めて影響力を強めている保守派運動「ティー・パーティー」が同氏を支持する可能性がある。ただ、「ペイリン氏に勝てるのは、実績のあるクリントン氏だけだ」(米政府関係者)ともいわれており、こうした見方もクリントン氏の副大統領起用説がささやかれる背景にありそうだ。
早まる危機循環 余剰マネー 制御難しく
「スペインの銀行や企業の多くが金融市場から締め出されている」。14日、同国第2位の大手銀行BBVAのゴンザレス会長が嘆いた。
そのBBVAがドルの調達に行き詰まったという憶測が流れたのは5月26日。4月中旬は0.3%程度だったロンドン銀行間取引金利(LIBOR)ドル3カ月物がじわじわと上がり、0.54%に迫る。市場関係者は「見えない恐怖に血の気が引いた」と振り返る。
ユーロ不安がくすぶる市場で、次の「標的」がささやかれる。愚か者(STUPID)――。スペイン、ポルトガル、イタリアのユーロ圏3カ国に、トルコと英国、ドバイ首長国を加えた頭文字。バブルを謳歌(おうか)してきた国こそがリスクを抱える。
金融資産200兆ドル
危機のサイクルは確実に早まっている。2008年のリーマン・ショックから2年足らずで起きたユーロ不安。市場にあふれるマネーが世界経済を揺さぶるからだ。
各国は危機のたびに大量の資金供給で乗り切った。マッキンゼー・グローバル・インスティチュートによると、1990年に48兆ドル(約4400兆円)だった世界の金融資産は今や200兆ドルに迫る。国内総生産(GDP)が約2.7倍に増える間、金融資産は約4倍に膨らんだ。
リーマン・ショックで市場は16兆ドルを失ったが、米国のGDPに匹敵する14兆ドルの危機対応が穴を埋めた。民間の損失は国家が背負い、標的は国債に、通貨に変わる。
危機を封じ込める資金供給の処方せん。それがいつしか毒を帯び、新たな危機の発火点となる。
5日、米国の債券運用大手ピムコが世界各地の運用担当者にメッセージを送った。「資金はより安全な国債に流れる。遅れてはならない」
マネーの行く手に先回りして稼ぐピムコ。4月、米国やカナダの国債を大量に仕込み、ギリシャなどは残らず売った。運用統括のビル・グロス氏は言う。「市場が国家を選ぶ時代が来た」
「安全」を求めて米国債や日本国債に逃げ込んだ投資マネー。だが本当に安全な逃避先なのか。
米国債に不気味なシグナルが点滅している。2年債の利回りが金融危機前の2%台から1%以下に低下するなか、30年債の利回りが4%台で動かない。「5年後には、準備通貨としてのドルに疑問符が付く」(ハーバード大学のファーガソン教授)との見方を裏付けているようにも見える。
日本国債にも死角がある。BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「90年代初めから国債のバブルが続いている」と言う。92~08年に土地の時価総額は約840兆円減ったが、代わって国債など政府債務が約640兆円増えた。不動産バブルを生んだ、気まぐれなマネーが国債消化を左右する。
行き場探す資金
余剰マネーのもう一つの行き先は新興国だ。
家を買うので離婚します――。中国では不動産投資を狙った「偽装離婚」が話題を集める。
4月導入の住宅ローン規制。不動産バブルを抑えるために2軒目の住宅を購入する際の融資条件を厳しく変えた。ところが形だけの離婚で世帯を分けて住宅を買うケースが後を絶たない。
「熱銭」の制御に四苦八苦する中国。19日夜、中国人民銀行は人民元相場の「弾力性を高める」方針を表明。余剰マネー流入とインフレの抑制に動き始めた。
危機と対策、過熱と崩壊、そして次の危機――。実体経済に比べて極端にマネーが膨らんだ世界経済。この状態が修正されないかぎり、危機の種はいつか芽をつける。
【産経主張】オランダ戦惜敗 1次突破へ敢闘精神貫け
サッカーの熱気が、地球をぐるっと回って日本列島を覆い尽くしているかのようだ。
ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会1次リーグE組第2戦で、日本は優勝候補の一角を占めるオランダと対戦し、0-1と惜敗した。しかしカメルーンに勝った初戦と同様、強豪と堂々と渡り合った試合ぶりは称賛に値する。日の丸を背負った選手たちの奮闘にはサッカーファンならずとも元気をもらったはずだ。
日本には25日(日本時間)のデンマーク戦の結果しだいで決勝トーナメント進出の可能性が十分ある。試合後、キャプテンの長谷部誠選手は「次にすべてを懸ける」と意気込みを語った。最後まで全力で戦ってほしい。
オランダ戦では日本らしいサッカーが展開された。相手に走り負けしない豊富な運動量で、最後まで集中力は途切れなかった。国際サッカー連盟(FIFA)の世界ランキングでオランダは現在4位、日本は45位だが、その差を感じさせない戦いぶりだった。
今回のW杯は、日本が大会前の国際親善試合で4連敗するなど戦力・戦術面での不安材料が多く、日本国内では事前の盛り上がりを欠いていた。開催地南アフリカの治安の悪さもあって、恒例化している日本代表サポーターの応援ツアーの出足も低調だった。
ところが、14日のカメルーン戦に日本が勝つと様相が一変し、旅行会社には観戦ツアーの追加申し込みが相次いだ。公式ユニホームのレプリカなど応援グッズの売れ行きも急上昇した。経済面でのW杯効果にも注目したい。
それにしても、金融危機以来、意気消沈していた人々に元気を与えてくれたW杯は、やはりサッカーを超えたイベントである。日本人の心を一つにするという意味では、次のデンマーク戦も東京五輪(1964年)の女子バレーボール決勝戦に匹敵するといえるかもしれない。
今回のW杯1次リーグでは優勝候補のスペインや、前回大会準優勝のフランス、さらにドイツなど強豪チームが思わぬ敗北を喫するなど波乱含みの展開だ。それがまた、観客も一体となって民族の誇りをぶつけ合う、W杯という名の祝祭の醍醐味(だいごみ)でもある。
日韓大会以来2大会ぶりの決勝トーナメント進出へ、誇りと感動を共有しながら、日本代表選手を応援したい。
小林麻耶もビックリ
「ツイッターと組み合わせて面白い番組ができることを期待している」
ソフトバンクの孫正義社長が、テレビ局を巻き込んだ新たな野望に燃えている。孫社長が仕掛けたのは、TBS系列で5月30日から始まった新番組「革命×テレビ」だ。
番組では、ソフトバンクが今年1月に約18億円を出資した米ユーストリームの技術を活用。世界各地に飛んだリポーターが現地から映像を送り生中継する。
ユーストリームは、携帯電話がつながる場所ならば、米アップルの携帯端末「iPhone(アイフォーン)」でも生中継を行える。テレビ中継のように、衛星通信などの機材はいっさい不要だ。
「これまで知らなかったけど、本当に革命的」。番組の司会を担当するアナウンサーの小林麻耶さんも驚きを隠さない。
ユーストリームのジョン・ハムCEO(最高経営責任者)は「米国ではCNNなどのテレビ局とウィン・ウィンの関係を築いた。その成功例を日本にも広げたい」と意気込む。
調査会社ネットレイティングスによると、ユーストリームの国内アクセスは4月に99万2千人に上り、前年同月に比べ約11倍にも急増した。
ソフトバンクは、孫社長の対談や携帯電話の新モデル発表会をユーストリームで中継するなど多用しており、自ら情報を発信するメディア企業への飛躍をもくろむ。
広告出稿も流出
動画サイトには、視聴者だけではく、広告も流出している。ドワンゴグループが運営する「ニコニコ動画」は、今年1~3月期に四半期ベースで初めて黒字化を達成した。
人気コンテンツの「ニコニコ生放送」の4月のアクセス数が138万3千人と前年の約3・3倍に増えるなど、好調な“視聴率”を背景に、広告出稿を伸ばしたことが主因だ。
ニコニコ動画を担当するのは、かつてNTTドコモでiモードを成功させた辣腕(らつわん)で知られる夏野剛ドワンゴ取締役(慶大教授)。「おそらくネット動画サイトが黒字化した例は世界中でも初めてだろう」と胸を張る。
動画サイトで絶大な影響力を誇る米グーグル傘下のユーチューブは、5月に1日当たりの視聴回数が20億回を突破した。「プライムタイム」と呼ばれる視聴率の最も高い夜の時間帯に、米三大テレビを視聴する人の倍近くに上る規模だ。創業からわずか5年で偉業を達成した。
iPad追い風
これまでユーチューブには、テレビ番組や映画などをコピーした著作権を侵害する違法コンテンツが氾濫(はんらん)。既存メディアから目の敵にされてきた。しかし、違法コンテンツの排除に積極的に取り組み、最近はテレビ局や映画会社などとのパートナーシップを深めている。
日本でもNHKや民放キー局と友好関係を結び、グーグルの徳生裕人シニアプロダクトマネージャーは「さらに提携パートナーを増やしたい」と勢力拡大に余念がない。
動画サイトを後押しするのが、iPadの存在だ。すでに全世界で200万台超を販売。ユーザーからは「好きな映像を探し出して楽しめるiPadを使う時間が増え、テレビを見る時間が減った」(30代男性)との声が上がる。
「電子書籍が注目されているが、まずは動画サイトのポータル(玄関)として普及する」(メディアアナリスト)との指摘は多い。
テレビ局側も「緊張すべき状況を迎えた。メディア間の競争が熱を帯びる中、テレビの優位を失わないようにしたい」(広瀬道貞日本民間放送連盟会長)と危機感をあらわにする。
動画サイトがさらに躍進するには、「テレビ局が持つマス(大衆)向けコンテンツを拡充していけるかがカギになる」(ネットレイティングスの鈴木成典シニアアナリスト)。
主導権を握るのは、「メディアの王様」を自負するテレビ局か、それとも新興勢力の動画サイトか。メディア攻防が幕を開けた。
食品、国内工場を集約 コカ・コーラ、関東で削減 森永製菓は半分に
食品大手による国内工場の集約が広がってきた。清涼飲料大手の米コカ・コーラグループは関東で工場合理化に3年で500億円前後を投じ、11カ所ある拠点の一部を閉鎖する方針。森永製菓は菓子工場を数年で3~4カ所に半減させる。少子高齢化と人口減で食品の内需が縮む中、キリンホールディングスなども国内拠点を再編する一方で海外事業強化を急いでいる。国内外で生き残りをかけた選択と集中が加速しそうだ。
コカ・コーラセントラルジャパン、東京コカ・コーラボトリング、利根コカ・コーラボトリング、三国コカ・コーラボトリングの関東4社が共同で生産体制を見直す。11工場を持つ4社はコカ・コーラグループの国内販売量の4割強を担う。
全工場に順次、殺菌や瓶詰めなど主要工程に最新設備を導入。4社合わせた生産能力は現行に比べて横ばい、または減る見通し。複数の工場を閉鎖して拠点を集約する方向で検討に入った。一連の合理化で年100億円のコストを削減する。
同グループは日本に、米本社から原液を仕入れて生産販売する会社が4社を含め12社ある。国内グループの年間売上高は約1兆2000億円。炭酸飲料「コカ・コーラ」や缶コーヒー「ジョージア」を抱え、清涼飲料市場で約3割のシェアを握る最大手。だが内需は2009年まで2年連続の減少に転じており、他のグループ会社にも集約の動きが広がりそうだ。
食品大手は競争力のある定番品に経営資源を集中しつつある。全国に6工場を抱える菓子4位の森永製菓も来夏、群馬県高崎市に新鋭工場を稼働させて定番のビスケットなどを増産する。これを機に、新工場を含めて3~4工場に集約する。
元高誘導の再開示唆 中国、切り上げ圧力回避狙い?
【上海=河崎真澄】中国国営新華社通信は19日、中国人民銀行(中央銀行)が同日、「人民元の為替制度改革を一歩進め、相場変動の弾力性を高める」との声明を発表したと報じた。声明は人民銀が相場の決定権を握る現行の「管理型変動相場制」に従って調整を行うとしている。週明けの21日以降、2年前に凍結した年10%程度の緩やかな元高誘導の再開を示唆したものとみられる。
金融危機を理由に中国は2008年夏ごろから1ドル=6・82元前後にほぼ固定する通貨政策をとり続け、割安な人民元の相場を武器に輸出攻勢を強めている。人民銀が毎日決める基準値から上下に0・3%(07年5月から同0・5%に拡大)までは変動を認める管理型の相場制度で、05年から08年まで約20%、元相場が上昇した経緯もある。
19日の声明には、凍結状態にあるこの制度を再開することで自主的な元高誘導の姿勢をアピールし、26日からカナダで開かれる20カ国・地域(G20)の首脳会議(金融サミット)で人民元切り上げの圧力をかわす狙いがあるもようだ。
国内の輸出企業支援のため1ドル=6・82元前後で推移していることに対し、米議会などは中国製品が不当に安く輸入されていると非難し、早期切り上げを求めていた。米政府も今月18日、財務省が先送りしていた「外国為替報告書」を金融サミット後に議会に提出すると表明。金融サミットまでに改革を実行しなければ「為替操作国」認定もあり得るとの警告姿勢を示した。今回の措置について中国は「自主的政策判断」としているが、対米配慮が働いたのは間違いない。これに関連し、ガイトナー米財務長官は19日、「精力的に実行することで力強くバランスのとれた世界経済の成長に大きく貢献する」と述べた。
ただ、欧米各国は「対中貿易赤字の元凶」と指摘する現在の元相場について、人民元を金融当局の管理下からドルや円などと同じように市場の需給に応じて変動する制度に変更するよう求めている。G20では、中国の通貨制度改革も重大なテーマになりそうだ。
「新幹線」計画に影響も ベトナム国会、決議案を否決
ベトナム国会は会期最終日の19日、南北高速鉄道の建設計画に関する決議を反対多数で否決した。政府は日本の新幹線方式の採用方針を決めていたが、影響が出る可能性もある。建設計画は今国会で承認され、日本の協力による事業化調査に進む見通しだった。
南北高速鉄道はグエン・タン・ズン首相肝いりのプロジェクトで、日本の産業界にとっても大きな商機となる。しかし、総額560億ドル(約5兆円)とされる巨額の事業費調達や採算性への懸念などから、国会審議で反対論や慎重意見が相次いだ。
政府計画では高速鉄道は首都ハノイと南部の商都ホーチミン(約1570キロ)を最短5時間半で接続。2014年に着工し、ハノイ-中部ビンと、南部のニャチャン-ホーチミンの2区間を20年までに部分開業、35年までの全線開業を目指していた。
スト独自報道を制限 中国当局
中国各地の工場でストライキが続発していることを受け、中国当局は19日までに国内メディアに対し、ストの独自報道を控えるように指示した。中国紙関係者が明らかにした。ストが拡大し、社会の安定が損なわれることを警戒した措置とみられる。
中国メディアは5月以降、ホンダの部品工場で起きたストなどを大きく報道していたが、同関係者によると、数日前に当局からの指示を受け、各地で起きたストについて独自の報道を控えるようになった。
トヨタ自動車が中国・天津市にある完成車工場の操業を、部品メーカーのストの影響で18日に停止したことも、主要メディアは報道していない。一部の中国紙は伝えたものの、ストという言葉を使わずに部品メーカーの「操業停止」が原因だと伝えている。(共同)
オバマ米大統領、クリントン国務長官を副大統領に起用? 2016年大統領選にらみ急浮上
【ワシントン=佐々木類】オバマ米大統領が、11月の中間選挙後、クリントン国務長官を副大統領に起用する可能性が取りざたされている。代わりに外交に意欲を示すバイデン副大統領を国務長官にすえる“超大型人事”で、クリントン氏が副大統領になれば、2016年の大統領選を狙う絶好のポストになる。
18日付の米紙ワシントン・ポストによると、バイデン、クリントン両氏の交代説は、両氏がそれぞれ互いのポストに意欲を示していることが背景にある。
クリントン氏は国務長官就任以降、米外交の顔として、「予想以上の働きをみせている」(同紙)という評価が定着。副大統領への起用に関し、オバマ大統領周辺でくすぶっていた反対論も今ではすっかり下火になっているという。
2016年の大統領選に立候補したとしても、現在62歳のクリントン氏はまだ60代後半。70歳で就任式に臨んだレーガン大統領や、2年前に72歳で大統領候補となった共和党のマケイン上院議員よりも若い。
16年の大統領選には、全米的な人気を誇る共和党のペイリン元アラスカ州知事の出馬が取りざたされている。この際、減税や財政規律を求めて影響力を強めている保守派運動「ティー・パーティー」が同氏を支持する可能性がある。ただ、「ペイリン氏に勝てるのは、実績のあるクリントン氏だけだ」(米政府関係者)ともいわれており、こうした見方もクリントン氏の副大統領起用説がささやかれる背景にありそうだ。
早まる危機循環 余剰マネー 制御難しく
「スペインの銀行や企業の多くが金融市場から締め出されている」。14日、同国第2位の大手銀行BBVAのゴンザレス会長が嘆いた。
そのBBVAがドルの調達に行き詰まったという憶測が流れたのは5月26日。4月中旬は0.3%程度だったロンドン銀行間取引金利(LIBOR)ドル3カ月物がじわじわと上がり、0.54%に迫る。市場関係者は「見えない恐怖に血の気が引いた」と振り返る。
ユーロ不安がくすぶる市場で、次の「標的」がささやかれる。愚か者(STUPID)――。スペイン、ポルトガル、イタリアのユーロ圏3カ国に、トルコと英国、ドバイ首長国を加えた頭文字。バブルを謳歌(おうか)してきた国こそがリスクを抱える。
金融資産200兆ドル
危機のサイクルは確実に早まっている。2008年のリーマン・ショックから2年足らずで起きたユーロ不安。市場にあふれるマネーが世界経済を揺さぶるからだ。
各国は危機のたびに大量の資金供給で乗り切った。マッキンゼー・グローバル・インスティチュートによると、1990年に48兆ドル(約4400兆円)だった世界の金融資産は今や200兆ドルに迫る。国内総生産(GDP)が約2.7倍に増える間、金融資産は約4倍に膨らんだ。
リーマン・ショックで市場は16兆ドルを失ったが、米国のGDPに匹敵する14兆ドルの危機対応が穴を埋めた。民間の損失は国家が背負い、標的は国債に、通貨に変わる。
危機を封じ込める資金供給の処方せん。それがいつしか毒を帯び、新たな危機の発火点となる。
5日、米国の債券運用大手ピムコが世界各地の運用担当者にメッセージを送った。「資金はより安全な国債に流れる。遅れてはならない」
マネーの行く手に先回りして稼ぐピムコ。4月、米国やカナダの国債を大量に仕込み、ギリシャなどは残らず売った。運用統括のビル・グロス氏は言う。「市場が国家を選ぶ時代が来た」
「安全」を求めて米国債や日本国債に逃げ込んだ投資マネー。だが本当に安全な逃避先なのか。
米国債に不気味なシグナルが点滅している。2年債の利回りが金融危機前の2%台から1%以下に低下するなか、30年債の利回りが4%台で動かない。「5年後には、準備通貨としてのドルに疑問符が付く」(ハーバード大学のファーガソン教授)との見方を裏付けているようにも見える。
日本国債にも死角がある。BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「90年代初めから国債のバブルが続いている」と言う。92~08年に土地の時価総額は約840兆円減ったが、代わって国債など政府債務が約640兆円増えた。不動産バブルを生んだ、気まぐれなマネーが国債消化を左右する。
行き場探す資金
余剰マネーのもう一つの行き先は新興国だ。
家を買うので離婚します――。中国では不動産投資を狙った「偽装離婚」が話題を集める。
4月導入の住宅ローン規制。不動産バブルを抑えるために2軒目の住宅を購入する際の融資条件を厳しく変えた。ところが形だけの離婚で世帯を分けて住宅を買うケースが後を絶たない。
「熱銭」の制御に四苦八苦する中国。19日夜、中国人民銀行は人民元相場の「弾力性を高める」方針を表明。余剰マネー流入とインフレの抑制に動き始めた。
危機と対策、過熱と崩壊、そして次の危機――。実体経済に比べて極端にマネーが膨らんだ世界経済。この状態が修正されないかぎり、危機の種はいつか芽をつける。
【産経主張】オランダ戦惜敗 1次突破へ敢闘精神貫け
サッカーの熱気が、地球をぐるっと回って日本列島を覆い尽くしているかのようだ。
ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会1次リーグE組第2戦で、日本は優勝候補の一角を占めるオランダと対戦し、0-1と惜敗した。しかしカメルーンに勝った初戦と同様、強豪と堂々と渡り合った試合ぶりは称賛に値する。日の丸を背負った選手たちの奮闘にはサッカーファンならずとも元気をもらったはずだ。
日本には25日(日本時間)のデンマーク戦の結果しだいで決勝トーナメント進出の可能性が十分ある。試合後、キャプテンの長谷部誠選手は「次にすべてを懸ける」と意気込みを語った。最後まで全力で戦ってほしい。
オランダ戦では日本らしいサッカーが展開された。相手に走り負けしない豊富な運動量で、最後まで集中力は途切れなかった。国際サッカー連盟(FIFA)の世界ランキングでオランダは現在4位、日本は45位だが、その差を感じさせない戦いぶりだった。
今回のW杯は、日本が大会前の国際親善試合で4連敗するなど戦力・戦術面での不安材料が多く、日本国内では事前の盛り上がりを欠いていた。開催地南アフリカの治安の悪さもあって、恒例化している日本代表サポーターの応援ツアーの出足も低調だった。
ところが、14日のカメルーン戦に日本が勝つと様相が一変し、旅行会社には観戦ツアーの追加申し込みが相次いだ。公式ユニホームのレプリカなど応援グッズの売れ行きも急上昇した。経済面でのW杯効果にも注目したい。
それにしても、金融危機以来、意気消沈していた人々に元気を与えてくれたW杯は、やはりサッカーを超えたイベントである。日本人の心を一つにするという意味では、次のデンマーク戦も東京五輪(1964年)の女子バレーボール決勝戦に匹敵するといえるかもしれない。
今回のW杯1次リーグでは優勝候補のスペインや、前回大会準優勝のフランス、さらにドイツなど強豪チームが思わぬ敗北を喫するなど波乱含みの展開だ。それがまた、観客も一体となって民族の誇りをぶつけ合う、W杯という名の祝祭の醍醐味(だいごみ)でもある。
日韓大会以来2大会ぶりの決勝トーナメント進出へ、誇りと感動を共有しながら、日本代表選手を応援したい。
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ゲームソフト「脱専用機」 携帯向け強化、クラウド活用型も
米ロサンゼルスで開かれていた世界最大規模の家庭用ゲーム見本市「E3」は17日(日本時間18日)に閉幕したが、目立ったのがゲームソフト各社による携帯電話を中心とした家庭用ゲーム機以外へのソフト供給の動きだ。スマートフォン(高機能携帯電話)などゲームを楽しめる機器の拡大に加え、日本や欧米などゲーム先進国では市場飽和で専用機の爆発的な市場拡大が見込みづらいこともソフト各社の背中を押している格好だ。
◆高い成長性期待
「スマートフォン向けゲームソフト配信はまだ勃興(ぼっこう)期で、今後も高い成長性が期待できる」
カプコン傘下で北米を中心に携帯電話向けゲーム配信事業を手がけるカプコン・インタラクティブ(本社・ロサンゼルス)の湯浅緑社長は、携帯向け事業の将来性に自信をみせる。カプコンはE3で、米アップルのスマートフォン「アイフォーン」向けゲームを展示するなど事業強化を打ち出した。
なかでも期待が高いのが、スマートフォン向け「ソーシャルゲーム」だ。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した交流機能を持つゲームで、日本や欧米で急速に市場が拡大している。カプコン・インタラクティブは今秋をめどに、同社初となるソーシャルゲームを米国で4作品発売する計画で、湯浅社長は「ゲーム専用機ではカバーできなかったライトユーザーを取り込める」と既存事業の補完を強調する。
一方、セガとコナミデジタルエンタテインメントは、アップルが4月に北米で発売した新型情報端末「アイパッド」向けゲームをE3で展示。セガの鶴見尚也常務は「アイパッドは画面が大きいのでゲーム利用に向いている。スマートフォン向けと合わせ収益拡大の原動力になる」と強調する。
◆新種「オンライブ」
新たな“ゲーム機”の登場も話題になった。米カリフォルニア州に本社を置くベンチャー企業が手がける「オンライブ」というサービスだ。ネットワーク経由でソフトなどを利用する「クラウドコンピューティング」の手法を活用する。パソコンやテレビなどでゲームをダウンロードするため、高価な専用機などがなくても高品質のゲームを楽しめる。17日にパソコン向けにサービスを開始し、テレビ向けも近く始める予定だ。日本での展開は「現時点では不明」(担当者)という。
ソフト会社の注目も高く、米エレクトロニック・アーツや、カプコンやセガなど日本の大手も協力会社として名を連ねる。セガの鶴見常務は「ソフト会社としても注意しておかなければならない存在」と、ソフト供給先拡大の重要性を強調する。専用機で楽しんでいたゲームも、機器多様化が進みそうだ。
ソニー、金脈は広告収入 ネット・テレビ、510億ドル市場に食い込む ソニーのストリンガー会長兼社長は18日、東京都内のホテルで開かれた定時株主総会で、今期はネットワークサービスや3D(3次元)関連製品に力を入れる考えを明らかにした。同会長は「グーグルと共同発表したインターネットテレビに大きな期待を寄せている」と語った。
◆不採算部門の挑戦
アンテナやケーブルテレビ(CATV)回線ではなく、インターネットに接続されたテレビやレコーダーを通じて、映画やテレビ番組、音楽を楽しめる次世代の「インターネット・テレビ」が今後数カ月にわたり、ソニーをはじめとする家電メーカーから登場するとみられている。
消費者は、インターネット・テレビによって、テレビ用の接続をせず、自分だけの専用チャンネルを、より簡単に設定できるようになる。これは、すでに多くの人々が「ユーチューブ」や「フル」といったネット上の動画サイトを利用して、コンテンツ(情報の内容)を楽しんでいる姿とよく似ている。
違うのは、ソニーなどのメーカーが、加入契約による収入や視聴した番組ごとに課金するペイ・パー・ビュー方式の視聴手数料のほか、広告収入などにも狙いをつけているところだ。ブルームバーグ・ビジネスウイーク誌(6月21日号)が報じている。
消費者は、毎日のテレビで回線料がかかるコンピューターや携帯端末を使わないですむようになるが、製品は高価なうえ、広告収入などでソニーなどのメーカーを潤すことになる。
ソニーにとってインターネット・テレビ用は可能性を秘めた新製品だ。同社は、事業再編コストなどにより、過去2年で14億ドル規模の赤字を計上。ソニーにとって、テレビ事業は不採算部門となっている。米調査会社アイサプライによれば、ソニーはテレビ市場で3位に転落。韓国のサムスン電子と米ビジオの後塵を拝している。
◆年末商戦に新兵器
ストリンガー会長は、人々が居間でテレビを見る時間が減っており、業界は視聴方法の変化に素早く対応する必要があるとの見方を示し、ソニーは先月、米グーグルと提携し、インターネットを利用して動画や音楽を楽しめるテレビ機器の試作品を公開した。これは、今年の年末商戦に登場するとみられている。
米広告大手インターパブリック・グループの調査部門マグナ・グローバルによれば、ケーブルテレビと放送局は2010年、510億ドルの広告収入を得るとみられている。この広告市場に食い込むことがテレビメーカーの究極の目標だ。
ソニーは今年に入り、液晶テレビ「ブラビア」とブルーレイプレーヤーを組み合わせて視聴する動画配信サービス「Qriocity(クリオシティ)」を開始している。
郵送DVDレンタル大手の米ネットフリックスもパソコンなどで映画を見られるサービスを提供しており、会員は無料で視聴できる。一方、ソニーのクリオシティでは映画1本につき2.95ドル(約270円)以上の視聴料がかかる。
ソニーは傘下にコロンビア・ピクチャーズやトライスターといった映画制作会社を抱えているが、他の制作会社と作品公開後すぐに最大30ドルで視聴者が映画を楽しめるよう交渉を行っている。
米調査会社パークス・アソシエーツによれば、ゲームを除いたインターネットのビデオ配信の市場規模は、2010年の1億8000万ドルから、14年には8億ドルにまで拡大する見通しだという。
フェラガモ・カルティエ… ブランド消費底入れか
海外高級ブランドの国内販売に一部で底入れの兆しが出てきた。伊サルヴァトーレ・フェラガモや仏カルティエは今年に入り、売上高が前年比1割近く増加。景気持ち直しに伴い富裕層の一部が戻っているほか、中国人客が急増している。ただ仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは前年割れが続くなど、全体ではなおデフレと消費低迷の逆風にさらされている。
2008年秋のリーマン・ショック以降、海外ブランドの日本事業はおおむね前年比2ケタ減が続いていた。今年1~4月にフェラガモの国内売上高は前年同期比8%増と07年以来のプラスに転じ、カルティエも4~5月は1割近く増加。仏クリスチャン・ディオールも今年は増収ペースだ。
いずれも固定客の消費が回復し、低価格の投入で客層も広がった。フェラガモのバッグは革製の10万~20万円程度が中心だったが、今年は布製の10万円以下をそろえた。日本での消費意欲が旺盛な中国人観光客も下支えしており、カルティエはここ3年で中国人の購入額が10倍に増えて売上高の5%を占めている。
一方、最大手LVMHの日本事業(年商は2000億円前後)の1~3月は、前年同期に比べて7%のマイナス。もともと手ごろな商品もそろえる同社は一般のOLなどの顧客も多く、こうした層の消費は冷え込んだまま。09年1~3月(08年同期比18%減)から持ち直しているとはいえ、苦戦が続く。消費は力強さを欠いているだけに、ブランド間の優勝劣敗が鮮明になりそうだ。
トヨタ21位に転落、神話崩壊 フォード5位躍進 米新車品質調査
米調査会社JDパワー・アンド・アソシエーツが発表した2010年のブランド別自動車品質調査は、日米の主力メーカーの間で明暗が分かれる結果となった。米大手のフォードが初めてトップ5入りを果たしたのに対し、トヨタ自動車の量販ブランドは同調査開始以来最も低い順位に沈んだ。
この初期品質調査は、新車購入者から寄せられた購入後90日以内の不具合情報をもとに毎年実施される。前回調査で6位だったトヨタは今年21位に転落した。JDパワーでグローバル車両部門の責任者を務めるデビッド・サージェント氏は、「トヨタの不具合の大半は、大規模リコール(回収・無償修理)で問題となった部品に関するもの。品質の改善により来年以降はまた順位を上げてくるだろうが、ある程度ブランドイメージが損なわれることは避けられない」と指摘する。
一方、他の米国ブランドが軒並み順位を落とすなか、フォードの量販ブランドは独ポルシェを初めとする高級車ブランドに次ぐ5位に食い込んだ。この躍進についてサージェント氏は、「9年間にわたる改善の取り組みが実を結んだ」と分析した。
ドワンゴ、絵文字が使える携帯電話向けTwitterクライアント「twitbeam」公開
ドワンゴは携帯電話向けのTwitterクライアント「twitbeam」を提供開始した。
各キャリアの絵文字が利用できたり、画像を使用してメニュー機能をわかりやすく表示したりするなど、携帯電話で使いやすい機能を盛り込んだTwitterクライアント。初心者向けに「はじめてのツイッターガイド」というTwitterの説明ページも用意されている。
ANAが格安航空会社を新設へ…国際線は半額
全日本空輸が、国内に低コストで運営する格安航空会社(LCC)を新設し、関西国際空港を拠点に国際線と国内線の運航に乗り出す方向で検討に入ったことが19日、明らかになった。
国際線は大手航空会社の半額程度、国内線は高速バス料金並みの片道1万円以下の運賃を目指す。急速に台頭するアジアのLCCに対抗する狙いがあり、早ければ来年度中にも運航を始めたい考えだ。
新設する子会社は、ANAとは別ブランドとする案が有力で、国際線は中国などアジアを結ぶ路線が中心になると見られる。
200人前後の中小型機を利用して短距離を中心に運航頻度を増やし、航空機の回転率を上げる一方、機内サービスは簡素化し、パイロットには外国人を雇用するなどして人件費を抑え、コスト削減を図る。
施設利用料が安い簡素なLCC専用の旅客ターミナルビルの建設を検討するなど、LCCを積極的に誘致している関空に拠点を置く方針。
国土交通省は5月にまとめた成長戦略で、日本へのアジアの観光客誘致にはLCCの参入促進が不可欠として、空港の着陸料引き下げや規制緩和などを進める方針を打ち出した。さらに関空の抜本再建策を検討する考えを示しており、全日空はLCCの事業化に向けた条件が整いつつあると判断した。
◆LCC=Low Cost Carrier(ロー・コスト・キャリアー)の略。機内食を有料にするなど運航経費を削り、既存の航空会社に比べて運賃が大幅に安いのが特徴。国際航空運送協会によると、2009年の航空会社別旅客数では、首位のサウスウエスト航空(米国・1億133万人)、5位のライアンエアー(アイルランド・6528万人)などLCCが上位に入っており、世界の航空輸送市場シェア(提供座席数)の約2割を占めている。
たちすくむ政治 世論と市場の反目、深刻
「“金融”で民主主義が崩壊するかもしれない」。6月上旬、欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員長は労働組合幹部らに言い放った。ギリシャやスペインが財政危機への対応を誤れば、軍事クーデターや反乱が起こりかねないとの警告だ。
民主主義は時間がかかる。様々な国民の声を聞きながら議会審議を経て多数決で政策を実現するからだ。一方、金融市場は「迅速な回答」を求める。時には暴力的に。企業であろうと、銀行であろうと、国であろうと、弱みを見せればすぐに売り込まれる。
アテネの中心地シンタグマ広場を見下ろすギリシャ財務省ビル6階の執務室。パパコンスタンティヌ財務相はこう語った。「当然、抗議活動はある。憲法上の権利であり、それが民主主義だ」
昨年10月に財務相に就任。それから半年、財政緊縮策に反発する国民世論と早期実施を迫る市場の声の板挟みにあった。
不機嫌な世論
ギリシャを支援する側のドイツも同じ悩みを抱えた。
「これは政治家と市場との戦いだ」。5月19日、メルケル独首相は国債空売り禁止などの規制策を公表した。EUに対する根回しはなかった。市場への突然の「宣戦布告」は、世論の反発が強い財政赤字国への緊急金融支援について議会の同意を取り付けるための政治取引という見方が多い。
世論の反発でギリシャ支援が後手に回り、市場の攻撃にあったユーロ圏。市場が求める対策の議会承認を得るために、さらに厳しい対策を取り、また新たな混乱を招く。
金融危機後、どこの国でも国民は不機嫌だ。銀行の不始末になぜ血税を使うのか。なぜ我々の職は脅かされるのに銀行幹部は高額報酬をもらうのか。不満を和らげようと、指導者は金融機関に厳しい政策を打ち出す。ボーナス規制、金融取引課税、空売り規制――。
市場主義の盟主・米国も例外ではない。5月20日。米上院は金融機関の自己勘定での高リスク取引制限などを盛り込んだ規制改革法案を可決した。リード上院院内総務は「自分たちを守ってほしいという米国民の声に従った結果だ」と胸を張った。法案は実に1500ページ。オバマ政権も世論には抗しきれない。
国際金融協会(IIF)の試算では、世界的な金融規制強化の影響で2011年からの5年で日米欧の実質成長率は年率0.6%低くなる。とりわけユーロ圏への影響が大きく、押し下げ効果は年率0.9%になる。
米国が浮足だったころ。「ボルカー・ルールが欧州危機を深刻にしないか」。日銀幹部は気をもんだ。銀行の高リスク取引を制限する規制導入で米銀が資金供給を減らせば、欧州銀の資金繰りが苦しくなりかねない。
規制強化のワナ
各国の国民世論におされる形で、規制をむやみに積み上げていけば、市場を通じた円滑なお金の配分が滞る恐れもある。「規制導入にはマクロ経済の実態にあわせた行程表づくりが重要」。英大手銀HSBCのグリーン会長は警戒感を示す。
市場も民主主義も不可欠だ。東西冷戦終結後。市場経済化と民主化は車の両輪として機能した。その歯車がかみ合わなくなり、市場と民主主義が反目する。
再びギリシャ財務相に聞いてみた。どうすればこの問題を解決できるのか。「厳しい緊縮策でも、長い目でみれば利益になることを国民に理解してもらうしかない」
民主主義の手続きを踏んで、市場の求める厳しい改革を断行するという難しい道。それは財政赤字を抱える日本を筆頭に、先進国の政治指導者にとって共通の課題だ。
老いる団塊 堺屋太一さんに聞く
中高年が金使う楽しみを 習い事も社交気分で
団塊の世代が、不安にさいなまれている
勢いづく中国、韓国に対し、閉塞(へいそく)感に満ちた日本。日本が最も成長した時代に青春時代を過ごし、仕事をした団塊世代も、還暦を過ぎ、政治にも失望し、先の不安にさいなまれている。
「国としての日本は既にアジア唯一の先進国の座から滑り落ちようとし、進んだ国の一つではあるがアジアの代表ではなくなっているのに、その当時の意識が今も抜け切れていない」。『団塊の世代』の名付け親、堺屋太一氏は語る。
「平穏に生きようとするならば、『明日は今日より豊かにせねばならぬ』という追われる気持ちをなくすことだ」というのが、氏の見立てだ。
「1982年以前に生まれた人は、日本を『アメリカの次』ととらえるのに対して、83年以降生まれの人は『日本をアジアでトップ』とさえも考えない。なぜかと言えば、学校教育なんですね。82年以前の世代は野球だったが、それ以降はサッカーになった。サッカーで韓国に勝つのは容易なことではない」
「サッカーが主流になったのは、学校教育が反映している。野球は4番バッターと8番バッター、投手と外野手という『格差』がある。最近は『なぜ、うちの子が8番なのか』などと教師に苦情を寄せる父母が少なくない。一方、サッカーはゴールキーパーを除けば順番などはないから教師にとっては楽だ。格差を避けた結果、誰も苦労も冒険もしない雰囲気が醸成された」
「国の将来は老後の生活にも影響を与えるだろうが、国全体が浮き沈みするわけだから、個人としてそんなに焦る必要はない。振り返ってみて、大阪万博が開かれた昭和45年(1970年)ころ、そんなに生活が苦しかった記憶があるだろうか。一方、バブル経済真っ盛りの80年代後半、それほど良い思いをしたかといえば、そうでもない。個人によって収入などに違いはあるが、年金にプラスいくらかあれば、その時代の豊かな生活は送れるでしょう」
1400兆円という膨大な個人金融資産の活用が日本の将来を左右する
「子孫に美田を残す」発想はもはや意味がないという。
「子どもにお金を残しても仕方がない。というより、子どもはそれほど喜んでくれません。親が思うほど子どもは感謝しない。10の価値ある贈り物をしても、受け取る方は3ぐらいにしか感じない。だからお返しは3。今度はお返しをもらった方が1くらいにしか見ない。これが『ため一割』。関西では結婚のお祝いなどのお返しは1割。おため返しと言っています」
「誰しも1400兆円などと聞くと、自分には関係ないと思ってしまう。しかし、積み立て中の生命保険とか銀行預金、郵便貯金その他もろもろの金融資産を子細に点検してみると、意識しないうちにそれなりのものになっていることが多いのです。以前、知り合いに聞いてみた。すると10人が10人『やっぱり思うてたよりあったわ』という答えだった。人生の棚卸しをする中で資産評価をしてみることが大事。そして資産の中身をよく見極め、使えるものは使った方がよい」
そのためには、お金を使っても構わないと思える楽しみを見いだす必要がある。
「しかし、今の日本には高齢者向けの物品やサービスは実に乏しい。子ども向けにはいろいろ考案されてきた。本なら絵本や童話、歌なら童謡唱歌。お子様ランチや軟式テニス、野球などがあります」
「一方、高齢者向けは本も歌もファッションもない。高齢者向けの新サービスといえば、介護であったり認知症の老人施設などばかりで、7割いる健常者のための新サービスはほとんどありません。若者と同じ旅程を組まれたら疲れるのは当然。楽しいはずの旅行がしんどいものになってしまう」
楽しみを見いだすことと、中高年が誇りを持てる環境づくりが重要だ
「中高年にとっては、教育も楽しめるものでなくてはいけません。これまでの教育は子どもにばかり注目が向けられてきた。子ども教育は、一に天才的なプロフェッショナルになるかもしれない、二に熱心に通うと褒められる、三に親がお金を払う――の3点に特徴があった。中高年はどれもその逆。天才になんかなれっこないし、熱心に通うと『変わり者』と言われる。お金はむろん自分で払う」
「中高年にとっての教育はいわば社交なんです。だから、バイエルを使って基礎からピアノの鍛錬をする必要などさらさらない。名曲の3曲でも弾ければ十分。日本には師範学校以来の『型』にはめる教育しかなかった。中高年が楽しめる教育市場を創成しなければいけません」
「それに加えて、中高年が誇りを持てるような環境を整える必要がある。たとえば寄付制度です。寄付というと所得控除のことばかりが論議されるが、日本では再評価利益に対する課税がひどい。無名だったころに買った画家の絵が、30年後には有名になって何十倍、何百倍の値段になったとします。それを財団法人に寄付すると値上がり分を所得とみなして税金を払え、となる。評価益に対する課税は即刻やめるべきです。税制調査会の委員でもこれについては意外に知らない」
なぜ、そうなのか。
「官僚は自分たちほど上手に国のためにお金を使える者はいないと思っている。だから寄付より課税となるのです。生涯を通して営々と働き、会社を育てて財産を築いた人の誇りを踏みにじる。官僚は誇りにも平等を求める。これでは高齢社会は活性化しない。100倍も寄付の多い米国では、美術館も大学も研究機関も寄付をもとに人文科学の研究を大きく前進させている。実にうらやましい」
【中日説】
貸金業法改正 再出発は相談窓口から
2010年6月19日
改正貸金業法が十八日、完全施行された。多重債務問題解決の特効薬と期待されるが、借入枠の制限などで混乱の恐れもある。法の周知は当然だが、問題を抱え込まず、相談窓口を訪問してほしい。
改正法は四年前、全会一致で成立し、段階的に施行されてきた。今回は、貸し出しの上限金利を29・2%から20%に引き下げるとともに、年収の三分の一を超える貸し付けを原則禁止する「総量規制」などが導入された。多重債務者を出さないために、完全施行を歓迎したい。
心配なのは、今借りている人への影響だ。緩和措置として、金利の低いローンへの借り換えは新規でも認めたほか、個人事業者を総量規制の対象外にしたが、改正で借りられなくなる人もいる。
金融庁の調査では、貸金業の利用者は昨年十二月現在、千三百七十六万人。日本貸金業協会の調査では、利用者の約半数が年収の三分の一以上借りており、さらにその約半数が生活維持のために新たな借り入れが必要と答えた。これに従えば、約七百万人が借りられず、三百数十万人が生活に困ることになる。また、専業主婦(夫)は今後、配偶者の同意書などが必要となるが、家族に内緒にしている人も少なくないという。
ところが法律の周知は進んでいない。同協会の調査では、認知率は利用者全体の49・2%、専業主婦(夫)では37・0%だ。業界、金融庁、消費者庁はもちろん、地方自治体も協力し、周知に全力を挙げてほしい。
消費生活センターや弁護士会、司法書士会などが相談窓口を設けている。借金の整理や自己破産などの手続きを通じ、生活再建を助けてくれる。困った人は相談してほしいが、足踏みする人もいる。
滋賀県野洲市は二〇〇四年度から、各課連携で多重債務の救済に取り組む。例えば、生活保護の申請者が多額の借金をしていることが分かると、消費者相談の係につなげ、借金の解決方法をアドバイスする。多重債務者は公共料金などを滞納することもあるため、今は市民生活相談室を中心に税金、水道料、学校給食費などの担当課が情報を共有し、相談の掘り起こしをしている。
多重債務者の中には、買い物症候群など精神面の問題も指摘される。カウンセリングも必要だろうが、ぜひ再出発をし、周りも見守ってほしい。違法なヤミ金融は潜行するかもしれない。くれぐれも用心したい。
米ロサンゼルスで開かれていた世界最大規模の家庭用ゲーム見本市「E3」は17日(日本時間18日)に閉幕したが、目立ったのがゲームソフト各社による携帯電話を中心とした家庭用ゲーム機以外へのソフト供給の動きだ。スマートフォン(高機能携帯電話)などゲームを楽しめる機器の拡大に加え、日本や欧米などゲーム先進国では市場飽和で専用機の爆発的な市場拡大が見込みづらいこともソフト各社の背中を押している格好だ。
◆高い成長性期待
「スマートフォン向けゲームソフト配信はまだ勃興(ぼっこう)期で、今後も高い成長性が期待できる」
カプコン傘下で北米を中心に携帯電話向けゲーム配信事業を手がけるカプコン・インタラクティブ(本社・ロサンゼルス)の湯浅緑社長は、携帯向け事業の将来性に自信をみせる。カプコンはE3で、米アップルのスマートフォン「アイフォーン」向けゲームを展示するなど事業強化を打ち出した。
なかでも期待が高いのが、スマートフォン向け「ソーシャルゲーム」だ。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した交流機能を持つゲームで、日本や欧米で急速に市場が拡大している。カプコン・インタラクティブは今秋をめどに、同社初となるソーシャルゲームを米国で4作品発売する計画で、湯浅社長は「ゲーム専用機ではカバーできなかったライトユーザーを取り込める」と既存事業の補完を強調する。
一方、セガとコナミデジタルエンタテインメントは、アップルが4月に北米で発売した新型情報端末「アイパッド」向けゲームをE3で展示。セガの鶴見尚也常務は「アイパッドは画面が大きいのでゲーム利用に向いている。スマートフォン向けと合わせ収益拡大の原動力になる」と強調する。
◆新種「オンライブ」
新たな“ゲーム機”の登場も話題になった。米カリフォルニア州に本社を置くベンチャー企業が手がける「オンライブ」というサービスだ。ネットワーク経由でソフトなどを利用する「クラウドコンピューティング」の手法を活用する。パソコンやテレビなどでゲームをダウンロードするため、高価な専用機などがなくても高品質のゲームを楽しめる。17日にパソコン向けにサービスを開始し、テレビ向けも近く始める予定だ。日本での展開は「現時点では不明」(担当者)という。
ソフト会社の注目も高く、米エレクトロニック・アーツや、カプコンやセガなど日本の大手も協力会社として名を連ねる。セガの鶴見常務は「ソフト会社としても注意しておかなければならない存在」と、ソフト供給先拡大の重要性を強調する。専用機で楽しんでいたゲームも、機器多様化が進みそうだ。
ソニー、金脈は広告収入 ネット・テレビ、510億ドル市場に食い込む ソニーのストリンガー会長兼社長は18日、東京都内のホテルで開かれた定時株主総会で、今期はネットワークサービスや3D(3次元)関連製品に力を入れる考えを明らかにした。同会長は「グーグルと共同発表したインターネットテレビに大きな期待を寄せている」と語った。
◆不採算部門の挑戦
アンテナやケーブルテレビ(CATV)回線ではなく、インターネットに接続されたテレビやレコーダーを通じて、映画やテレビ番組、音楽を楽しめる次世代の「インターネット・テレビ」が今後数カ月にわたり、ソニーをはじめとする家電メーカーから登場するとみられている。
消費者は、インターネット・テレビによって、テレビ用の接続をせず、自分だけの専用チャンネルを、より簡単に設定できるようになる。これは、すでに多くの人々が「ユーチューブ」や「フル」といったネット上の動画サイトを利用して、コンテンツ(情報の内容)を楽しんでいる姿とよく似ている。
違うのは、ソニーなどのメーカーが、加入契約による収入や視聴した番組ごとに課金するペイ・パー・ビュー方式の視聴手数料のほか、広告収入などにも狙いをつけているところだ。ブルームバーグ・ビジネスウイーク誌(6月21日号)が報じている。
消費者は、毎日のテレビで回線料がかかるコンピューターや携帯端末を使わないですむようになるが、製品は高価なうえ、広告収入などでソニーなどのメーカーを潤すことになる。
ソニーにとってインターネット・テレビ用は可能性を秘めた新製品だ。同社は、事業再編コストなどにより、過去2年で14億ドル規模の赤字を計上。ソニーにとって、テレビ事業は不採算部門となっている。米調査会社アイサプライによれば、ソニーはテレビ市場で3位に転落。韓国のサムスン電子と米ビジオの後塵を拝している。
◆年末商戦に新兵器
ストリンガー会長は、人々が居間でテレビを見る時間が減っており、業界は視聴方法の変化に素早く対応する必要があるとの見方を示し、ソニーは先月、米グーグルと提携し、インターネットを利用して動画や音楽を楽しめるテレビ機器の試作品を公開した。これは、今年の年末商戦に登場するとみられている。
米広告大手インターパブリック・グループの調査部門マグナ・グローバルによれば、ケーブルテレビと放送局は2010年、510億ドルの広告収入を得るとみられている。この広告市場に食い込むことがテレビメーカーの究極の目標だ。
ソニーは今年に入り、液晶テレビ「ブラビア」とブルーレイプレーヤーを組み合わせて視聴する動画配信サービス「Qriocity(クリオシティ)」を開始している。
郵送DVDレンタル大手の米ネットフリックスもパソコンなどで映画を見られるサービスを提供しており、会員は無料で視聴できる。一方、ソニーのクリオシティでは映画1本につき2.95ドル(約270円)以上の視聴料がかかる。
ソニーは傘下にコロンビア・ピクチャーズやトライスターといった映画制作会社を抱えているが、他の制作会社と作品公開後すぐに最大30ドルで視聴者が映画を楽しめるよう交渉を行っている。
米調査会社パークス・アソシエーツによれば、ゲームを除いたインターネットのビデオ配信の市場規模は、2010年の1億8000万ドルから、14年には8億ドルにまで拡大する見通しだという。
フェラガモ・カルティエ… ブランド消費底入れか
海外高級ブランドの国内販売に一部で底入れの兆しが出てきた。伊サルヴァトーレ・フェラガモや仏カルティエは今年に入り、売上高が前年比1割近く増加。景気持ち直しに伴い富裕層の一部が戻っているほか、中国人客が急増している。ただ仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは前年割れが続くなど、全体ではなおデフレと消費低迷の逆風にさらされている。
2008年秋のリーマン・ショック以降、海外ブランドの日本事業はおおむね前年比2ケタ減が続いていた。今年1~4月にフェラガモの国内売上高は前年同期比8%増と07年以来のプラスに転じ、カルティエも4~5月は1割近く増加。仏クリスチャン・ディオールも今年は増収ペースだ。
いずれも固定客の消費が回復し、低価格の投入で客層も広がった。フェラガモのバッグは革製の10万~20万円程度が中心だったが、今年は布製の10万円以下をそろえた。日本での消費意欲が旺盛な中国人観光客も下支えしており、カルティエはここ3年で中国人の購入額が10倍に増えて売上高の5%を占めている。
一方、最大手LVMHの日本事業(年商は2000億円前後)の1~3月は、前年同期に比べて7%のマイナス。もともと手ごろな商品もそろえる同社は一般のOLなどの顧客も多く、こうした層の消費は冷え込んだまま。09年1~3月(08年同期比18%減)から持ち直しているとはいえ、苦戦が続く。消費は力強さを欠いているだけに、ブランド間の優勝劣敗が鮮明になりそうだ。
トヨタ21位に転落、神話崩壊 フォード5位躍進 米新車品質調査
米調査会社JDパワー・アンド・アソシエーツが発表した2010年のブランド別自動車品質調査は、日米の主力メーカーの間で明暗が分かれる結果となった。米大手のフォードが初めてトップ5入りを果たしたのに対し、トヨタ自動車の量販ブランドは同調査開始以来最も低い順位に沈んだ。
この初期品質調査は、新車購入者から寄せられた購入後90日以内の不具合情報をもとに毎年実施される。前回調査で6位だったトヨタは今年21位に転落した。JDパワーでグローバル車両部門の責任者を務めるデビッド・サージェント氏は、「トヨタの不具合の大半は、大規模リコール(回収・無償修理)で問題となった部品に関するもの。品質の改善により来年以降はまた順位を上げてくるだろうが、ある程度ブランドイメージが損なわれることは避けられない」と指摘する。
一方、他の米国ブランドが軒並み順位を落とすなか、フォードの量販ブランドは独ポルシェを初めとする高級車ブランドに次ぐ5位に食い込んだ。この躍進についてサージェント氏は、「9年間にわたる改善の取り組みが実を結んだ」と分析した。
ドワンゴ、絵文字が使える携帯電話向けTwitterクライアント「twitbeam」公開
ドワンゴは携帯電話向けのTwitterクライアント「twitbeam」を提供開始した。
各キャリアの絵文字が利用できたり、画像を使用してメニュー機能をわかりやすく表示したりするなど、携帯電話で使いやすい機能を盛り込んだTwitterクライアント。初心者向けに「はじめてのツイッターガイド」というTwitterの説明ページも用意されている。
ANAが格安航空会社を新設へ…国際線は半額
全日本空輸が、国内に低コストで運営する格安航空会社(LCC)を新設し、関西国際空港を拠点に国際線と国内線の運航に乗り出す方向で検討に入ったことが19日、明らかになった。
国際線は大手航空会社の半額程度、国内線は高速バス料金並みの片道1万円以下の運賃を目指す。急速に台頭するアジアのLCCに対抗する狙いがあり、早ければ来年度中にも運航を始めたい考えだ。
新設する子会社は、ANAとは別ブランドとする案が有力で、国際線は中国などアジアを結ぶ路線が中心になると見られる。
200人前後の中小型機を利用して短距離を中心に運航頻度を増やし、航空機の回転率を上げる一方、機内サービスは簡素化し、パイロットには外国人を雇用するなどして人件費を抑え、コスト削減を図る。
施設利用料が安い簡素なLCC専用の旅客ターミナルビルの建設を検討するなど、LCCを積極的に誘致している関空に拠点を置く方針。
国土交通省は5月にまとめた成長戦略で、日本へのアジアの観光客誘致にはLCCの参入促進が不可欠として、空港の着陸料引き下げや規制緩和などを進める方針を打ち出した。さらに関空の抜本再建策を検討する考えを示しており、全日空はLCCの事業化に向けた条件が整いつつあると判断した。
◆LCC=Low Cost Carrier(ロー・コスト・キャリアー)の略。機内食を有料にするなど運航経費を削り、既存の航空会社に比べて運賃が大幅に安いのが特徴。国際航空運送協会によると、2009年の航空会社別旅客数では、首位のサウスウエスト航空(米国・1億133万人)、5位のライアンエアー(アイルランド・6528万人)などLCCが上位に入っており、世界の航空輸送市場シェア(提供座席数)の約2割を占めている。
たちすくむ政治 世論と市場の反目、深刻
「“金融”で民主主義が崩壊するかもしれない」。6月上旬、欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員長は労働組合幹部らに言い放った。ギリシャやスペインが財政危機への対応を誤れば、軍事クーデターや反乱が起こりかねないとの警告だ。
民主主義は時間がかかる。様々な国民の声を聞きながら議会審議を経て多数決で政策を実現するからだ。一方、金融市場は「迅速な回答」を求める。時には暴力的に。企業であろうと、銀行であろうと、国であろうと、弱みを見せればすぐに売り込まれる。
アテネの中心地シンタグマ広場を見下ろすギリシャ財務省ビル6階の執務室。パパコンスタンティヌ財務相はこう語った。「当然、抗議活動はある。憲法上の権利であり、それが民主主義だ」
昨年10月に財務相に就任。それから半年、財政緊縮策に反発する国民世論と早期実施を迫る市場の声の板挟みにあった。
不機嫌な世論
ギリシャを支援する側のドイツも同じ悩みを抱えた。
「これは政治家と市場との戦いだ」。5月19日、メルケル独首相は国債空売り禁止などの規制策を公表した。EUに対する根回しはなかった。市場への突然の「宣戦布告」は、世論の反発が強い財政赤字国への緊急金融支援について議会の同意を取り付けるための政治取引という見方が多い。
世論の反発でギリシャ支援が後手に回り、市場の攻撃にあったユーロ圏。市場が求める対策の議会承認を得るために、さらに厳しい対策を取り、また新たな混乱を招く。
金融危機後、どこの国でも国民は不機嫌だ。銀行の不始末になぜ血税を使うのか。なぜ我々の職は脅かされるのに銀行幹部は高額報酬をもらうのか。不満を和らげようと、指導者は金融機関に厳しい政策を打ち出す。ボーナス規制、金融取引課税、空売り規制――。
市場主義の盟主・米国も例外ではない。5月20日。米上院は金融機関の自己勘定での高リスク取引制限などを盛り込んだ規制改革法案を可決した。リード上院院内総務は「自分たちを守ってほしいという米国民の声に従った結果だ」と胸を張った。法案は実に1500ページ。オバマ政権も世論には抗しきれない。
国際金融協会(IIF)の試算では、世界的な金融規制強化の影響で2011年からの5年で日米欧の実質成長率は年率0.6%低くなる。とりわけユーロ圏への影響が大きく、押し下げ効果は年率0.9%になる。
米国が浮足だったころ。「ボルカー・ルールが欧州危機を深刻にしないか」。日銀幹部は気をもんだ。銀行の高リスク取引を制限する規制導入で米銀が資金供給を減らせば、欧州銀の資金繰りが苦しくなりかねない。
規制強化のワナ
各国の国民世論におされる形で、規制をむやみに積み上げていけば、市場を通じた円滑なお金の配分が滞る恐れもある。「規制導入にはマクロ経済の実態にあわせた行程表づくりが重要」。英大手銀HSBCのグリーン会長は警戒感を示す。
市場も民主主義も不可欠だ。東西冷戦終結後。市場経済化と民主化は車の両輪として機能した。その歯車がかみ合わなくなり、市場と民主主義が反目する。
再びギリシャ財務相に聞いてみた。どうすればこの問題を解決できるのか。「厳しい緊縮策でも、長い目でみれば利益になることを国民に理解してもらうしかない」
民主主義の手続きを踏んで、市場の求める厳しい改革を断行するという難しい道。それは財政赤字を抱える日本を筆頭に、先進国の政治指導者にとって共通の課題だ。
老いる団塊 堺屋太一さんに聞く
中高年が金使う楽しみを 習い事も社交気分で
団塊の世代が、不安にさいなまれている
勢いづく中国、韓国に対し、閉塞(へいそく)感に満ちた日本。日本が最も成長した時代に青春時代を過ごし、仕事をした団塊世代も、還暦を過ぎ、政治にも失望し、先の不安にさいなまれている。
「国としての日本は既にアジア唯一の先進国の座から滑り落ちようとし、進んだ国の一つではあるがアジアの代表ではなくなっているのに、その当時の意識が今も抜け切れていない」。『団塊の世代』の名付け親、堺屋太一氏は語る。
「平穏に生きようとするならば、『明日は今日より豊かにせねばならぬ』という追われる気持ちをなくすことだ」というのが、氏の見立てだ。
「1982年以前に生まれた人は、日本を『アメリカの次』ととらえるのに対して、83年以降生まれの人は『日本をアジアでトップ』とさえも考えない。なぜかと言えば、学校教育なんですね。82年以前の世代は野球だったが、それ以降はサッカーになった。サッカーで韓国に勝つのは容易なことではない」
「サッカーが主流になったのは、学校教育が反映している。野球は4番バッターと8番バッター、投手と外野手という『格差』がある。最近は『なぜ、うちの子が8番なのか』などと教師に苦情を寄せる父母が少なくない。一方、サッカーはゴールキーパーを除けば順番などはないから教師にとっては楽だ。格差を避けた結果、誰も苦労も冒険もしない雰囲気が醸成された」
「国の将来は老後の生活にも影響を与えるだろうが、国全体が浮き沈みするわけだから、個人としてそんなに焦る必要はない。振り返ってみて、大阪万博が開かれた昭和45年(1970年)ころ、そんなに生活が苦しかった記憶があるだろうか。一方、バブル経済真っ盛りの80年代後半、それほど良い思いをしたかといえば、そうでもない。個人によって収入などに違いはあるが、年金にプラスいくらかあれば、その時代の豊かな生活は送れるでしょう」
1400兆円という膨大な個人金融資産の活用が日本の将来を左右する
「子孫に美田を残す」発想はもはや意味がないという。
「子どもにお金を残しても仕方がない。というより、子どもはそれほど喜んでくれません。親が思うほど子どもは感謝しない。10の価値ある贈り物をしても、受け取る方は3ぐらいにしか感じない。だからお返しは3。今度はお返しをもらった方が1くらいにしか見ない。これが『ため一割』。関西では結婚のお祝いなどのお返しは1割。おため返しと言っています」
「誰しも1400兆円などと聞くと、自分には関係ないと思ってしまう。しかし、積み立て中の生命保険とか銀行預金、郵便貯金その他もろもろの金融資産を子細に点検してみると、意識しないうちにそれなりのものになっていることが多いのです。以前、知り合いに聞いてみた。すると10人が10人『やっぱり思うてたよりあったわ』という答えだった。人生の棚卸しをする中で資産評価をしてみることが大事。そして資産の中身をよく見極め、使えるものは使った方がよい」
そのためには、お金を使っても構わないと思える楽しみを見いだす必要がある。
「しかし、今の日本には高齢者向けの物品やサービスは実に乏しい。子ども向けにはいろいろ考案されてきた。本なら絵本や童話、歌なら童謡唱歌。お子様ランチや軟式テニス、野球などがあります」
「一方、高齢者向けは本も歌もファッションもない。高齢者向けの新サービスといえば、介護であったり認知症の老人施設などばかりで、7割いる健常者のための新サービスはほとんどありません。若者と同じ旅程を組まれたら疲れるのは当然。楽しいはずの旅行がしんどいものになってしまう」
楽しみを見いだすことと、中高年が誇りを持てる環境づくりが重要だ
「中高年にとっては、教育も楽しめるものでなくてはいけません。これまでの教育は子どもにばかり注目が向けられてきた。子ども教育は、一に天才的なプロフェッショナルになるかもしれない、二に熱心に通うと褒められる、三に親がお金を払う――の3点に特徴があった。中高年はどれもその逆。天才になんかなれっこないし、熱心に通うと『変わり者』と言われる。お金はむろん自分で払う」
「中高年にとっての教育はいわば社交なんです。だから、バイエルを使って基礎からピアノの鍛錬をする必要などさらさらない。名曲の3曲でも弾ければ十分。日本には師範学校以来の『型』にはめる教育しかなかった。中高年が楽しめる教育市場を創成しなければいけません」
「それに加えて、中高年が誇りを持てるような環境を整える必要がある。たとえば寄付制度です。寄付というと所得控除のことばかりが論議されるが、日本では再評価利益に対する課税がひどい。無名だったころに買った画家の絵が、30年後には有名になって何十倍、何百倍の値段になったとします。それを財団法人に寄付すると値上がり分を所得とみなして税金を払え、となる。評価益に対する課税は即刻やめるべきです。税制調査会の委員でもこれについては意外に知らない」
なぜ、そうなのか。
「官僚は自分たちほど上手に国のためにお金を使える者はいないと思っている。だから寄付より課税となるのです。生涯を通して営々と働き、会社を育てて財産を築いた人の誇りを踏みにじる。官僚は誇りにも平等を求める。これでは高齢社会は活性化しない。100倍も寄付の多い米国では、美術館も大学も研究機関も寄付をもとに人文科学の研究を大きく前進させている。実にうらやましい」
【中日説】
貸金業法改正 再出発は相談窓口から
2010年6月19日
改正貸金業法が十八日、完全施行された。多重債務問題解決の特効薬と期待されるが、借入枠の制限などで混乱の恐れもある。法の周知は当然だが、問題を抱え込まず、相談窓口を訪問してほしい。
改正法は四年前、全会一致で成立し、段階的に施行されてきた。今回は、貸し出しの上限金利を29・2%から20%に引き下げるとともに、年収の三分の一を超える貸し付けを原則禁止する「総量規制」などが導入された。多重債務者を出さないために、完全施行を歓迎したい。
心配なのは、今借りている人への影響だ。緩和措置として、金利の低いローンへの借り換えは新規でも認めたほか、個人事業者を総量規制の対象外にしたが、改正で借りられなくなる人もいる。
金融庁の調査では、貸金業の利用者は昨年十二月現在、千三百七十六万人。日本貸金業協会の調査では、利用者の約半数が年収の三分の一以上借りており、さらにその約半数が生活維持のために新たな借り入れが必要と答えた。これに従えば、約七百万人が借りられず、三百数十万人が生活に困ることになる。また、専業主婦(夫)は今後、配偶者の同意書などが必要となるが、家族に内緒にしている人も少なくないという。
ところが法律の周知は進んでいない。同協会の調査では、認知率は利用者全体の49・2%、専業主婦(夫)では37・0%だ。業界、金融庁、消費者庁はもちろん、地方自治体も協力し、周知に全力を挙げてほしい。
消費生活センターや弁護士会、司法書士会などが相談窓口を設けている。借金の整理や自己破産などの手続きを通じ、生活再建を助けてくれる。困った人は相談してほしいが、足踏みする人もいる。
滋賀県野洲市は二〇〇四年度から、各課連携で多重債務の救済に取り組む。例えば、生活保護の申請者が多額の借金をしていることが分かると、消費者相談の係につなげ、借金の解決方法をアドバイスする。多重債務者は公共料金などを滞納することもあるため、今は市民生活相談室を中心に税金、水道料、学校給食費などの担当課が情報を共有し、相談の掘り起こしをしている。
多重債務者の中には、買い物症候群など精神面の問題も指摘される。カウンセリングも必要だろうが、ぜひ再出発をし、周りも見守ってほしい。違法なヤミ金融は潜行するかもしれない。くれぐれも用心したい。
携帯大手4社の通信料収入、データ音声を逆転へ
携帯電話大手の収益構造が転機を迎えている。2011年3月期は大手4社合計の通信料収入でデータ通信が音声を初めて上回る見通しだ。スマートフォン(高機能携帯電話)で先行するソフトバンクが連続営業最高益となる一方、出遅れ気味のKDDIは苦戦が続くなどデータ通信が成長力を左右する傾向が強まっている。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクにイー・アクセス傘下のイー・モバイルを加えた大手4社合計で、今期の移動体通信料収入は6兆7千億円弱と前期に比べ小幅減の見通し。データ通信が3兆3千億~3兆4千億円と1割伸びる一方、音声は3兆3千億円と1割落ち込みそう。
09年3月期に4割だったデータ通信の比率は前期に46%程度まで上昇。今期通期では両者がほぼ均衡する見込み。下期にはデータ通信の比率は52%前後まで高まる公算が大きい。
通信料収入のデータと音声の逆転は世界初とみられる。米AT&Tなど欧米大手ではデータ通信の比率は2~3割どまり。日本は従来型の端末でも情報サービスの利用頻度が高く、スマートフォンの普及が重なって成長が加速している。
iPhone(アイフォーン)や多機能携帯端末iPad(アイパッド)を擁するソフトバンクは今期、データ通信の比率が52~53%程度まで上昇する可能性が高い。「ユーザー数が増えればそのまま増収、増益につながる」(孫正義社長)。ソフトバンクは今期の営業利益を前期比7%増の5000億円と見込む。新型iPhoneの売れ行き次第で上ぶれ余地が出てきそうだ。
NTTドコモは「iモード」などデータ通信で約1100億円の増収を見込むが、音声の落ち込みが約2000億円と大きく、補いきれない。KDDIはデータ通信の増収幅が400億円前後にとどまり、全体に占める割合も46%程度となる見込み。音声と合わせた減収幅が1100億円強に膨らみ、携帯電話事業は減収減益が続く。
「コミックバンチ」休刊へ
人気漫画「北斗の拳」の過去を描いた「蒼天の拳」などを連載している週刊漫画誌「コミックバンチ」(新潮社発行)が8月27日発売号で休刊することが18日、分かった。
編集業務を担当している「コアミックス」(東京都武蔵野市)によると、同誌は平成13年に創刊。創刊号は70万部以上を発行して話題を集めたが、日本雑誌協会の統計では、現在14万部前後と低迷していた。
コアミックスでは秋に新しい漫画誌の創刊を検討しているという。
タッチパネル汚れ防ぐ保護剤 ダイキンが増産
ダイキン工業はタッチパネルなどの汚れを防ぐフッ素コーティング剤を増産する。2012年以降、日米の生産設備を増強するほか、中国での生産も検討、スマートフォンなどの需要増へ対応を急ぐ。15年度に生産能力を現在の2倍程度まで引き上げ、売上高は10年度計画比3.3倍の約50億円を目指す。
フッ素コーティング剤「オプツール」はタッチパネル向けなどとして指紋の付着防止や、ふき取りを容易にするために使われる。今後、音楽プレーヤーやパソコン向けなどにも需要が広がるとみている。
増強を予定しているのは淀川製作所(大阪府摂津市)と米国のディケーター工場(アラバマ州)。大金フッ素化学中国公司(江蘇州)での生産も予定している。
ジーンズメイト、最大100人の希望退職募集 正社員の3割
カジュアル衣料専門店のジーンズメイトは18日、最大100人の希望退職者を募集すると発表した。正社員の約3割に上り、同社の希望退職では過去最大になる。売上高の減少に歯止めがかからないため、固定費の削減を急ぐ。
今回の対象者は11月20日時点で満30歳以上の正社員など。募集期間は8月2日~10月20日で、退職者には特別退職一時金を支給するとともに、希望者には再就職の支援も実施する。
同社は衣料品需要の低迷により、業績が低迷している。2011年2月期は、売上高が前期比約7%減に踏み切る。11年2月期は閉店数も期初予想比で倍増させ、10前後とする。
パイロット、新興国でボールペン生産増
筆記具国内最大手のパイロットコーポレーションは新興国での現地生産を拡大し、同市場を本格開拓する。年内にも、主力商品である油性ボールペンのインドネシアでの年間生産量を1億本に倍増。2011年以降、ブラジルやインドでも生産を始める。海外売上高比率は6割を超えるが、主力の欧米市場が成熟するなか、現地生産で各市場に適した商品を増やし新興国需要を取り込む。
インドネシアでは現地の既存工場に、群馬県伊勢崎市にある工場の製造設備の一部を10年中に移設し、生産能力を高める。従来はペン先などの部品を日本から送り、現地では組み立てるだけだったが、今後は部品から生産。マレーシアなど東南アジア諸国への輸出拠点にする。
油性ボールペンは売り上げの3割強を占める。だが従来、新興国向けは日本からの輸出が多く、現地の販売価格が200円程度になることもあった。現地生産に切り替え、50円前後と新興国でも大衆向けの価格帯に抑え、先行する世界大手の仏ビックや独ファーバーカステル、中国メーカーなどに対抗する。
大阪のタクシー、9割が禁煙に…7月1日から
大阪タクシー協会(大阪市)は18日、協会に加盟する171社の計1万4495台について7月1日から全面禁煙にすると発表した。
協会未加盟の初乗り500円タクシーや個人タクシーなどの多くも同調する見通しで、大阪府内を走るタクシー約2万2500台のうち約9割が禁煙になる。近畿運輸局は今後、残る独立系の事業者などにも、禁煙の実施を促していく。
全国乗用自動車連合会(東京)によると、すでに39都府県で全面禁煙の取り組みが進んでいる。大阪府では、客離れを懸念する声もあったが、同協会内で足並みをそろえることを条件に賛同を得たという。
トヨタの中国主力工場生産停止、部品工場ストで
トヨタ自動車は18日、中国天津市のトヨタ系部品メーカー工場で発生したストライキの影響で一部の部品が調達できなくなり、中国の主力工場の天津工場で生産を停止したことを明らかにした。
ストは継続しており、週明けの21日以降も、生産が停止する可能性がある。
ストが発生したのは、トヨタグループの豊田合成の現地工場で、自動車の運転席周りなどのプラスチックパネルを生産している。従業員が賃上げを求めて17日にストを起こし、豊田合成は労使交渉を続けている。
ロシア、外資誘致を促進
ITや原子力など5分野、脱・資源依存へ税優遇や基金創設
【サンクトペテルブルク=石川陽平】ロシアのメドベージェフ大統領は18日、税制優遇策の導入や官民合同の基金創設などにより投資環境を整備する方針を打ち出した。政権が掲げる「国家の近代化」実現へ、IT(情報技術)やエネルギー効率化など5分野を重点に外国企業の誘致や国内企業の育成を強化。「今後10年間で(研究開発や技術革新を軸とする)イノベーション経済に移行する」と述べ、資源依存型経済からの脱却を目指す姿勢を強調した。
国内第2の都市サンクトペテルブルクで開幕した国際経済フォーラムで演説した大統領は税制優遇策について、2011年から長期直接投資のキャピタルゲイン課税を廃止すると言明。さらに革新的技術を持つ企業への新たな免税措置を導入するほか、「法人税の負担軽減策も検討する」と述べた。
今後の重点分野として大統領は、IT(情報技術)やエネルギー効率化、宇宙、原子力、医薬品の5事業を指定。この5分野を中心にモスクワ郊外に研究開発施設を集積する「ロシア版シリコンバレー」計画を進めていることに触れ、「革新技術導入のため特に意義を持つ」と強調した。
政府と民間の資金を組み合わせイノベーション経済への移行を促進する事業や民間企業に投資する仕組みづくりも検討する。「近代化では民間の力を生かす必要がある」として、軍需産業や港湾などインフラ関連の戦略的企業を208社から41社に、その他の国営企業も230社から159社に減らす計画も示した。
欧州、財政再建へ公務員大幅削減
ポルトガル7.3万人 仏は人件費10%、労組の反発根強く
【パリ=古谷茂久】財政赤字が膨らんでいる欧州諸国が公務員や公的部門の大幅人員削減に着手する。解雇は避けるが、退職者の補充を抑制して公務員の定員を減らすほか、公営企業の民営化を通じて公的部門を縮小する。公務員の人件費削減は各国の財政再建策の柱のひとつとなっているが、組合の反対も根強く実行には困難が伴っている。
仏政府は公務員2人の退職に対し当面は1人しか採用しないことを決めた。計算では毎年約3万4千人の削減になる。公務員の人件費を2011~13年の間に10%減らす。10年の財政赤字は国内総生産(GDP)比で約8%に達する見込みで、財政不安が広がるスペインやポルトガルの水準に近い。仏政府はこの比率を13年までに欧州連合(EU)が求める3%に圧縮する目標を掲げている。公務員の人件費削減は歳出削減の2~3割を占めるとみられ、財政再建の柱となっている。
IVS 2010 Spring:
「ソーシャルゲームという言葉は消える」 Zynga、EA幹部が語る「ソーシャル」
新興ベンチャーキャピタルのインフィニティ・ベンチャーズLLP(小林雅・田中章雄・小野裕史共同代表パートナー)は6月10~11日、IT・ネット・モバイル系のテーマについて国内外のベンチャー経営者らが講演・討論する招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2010 Spring」を札幌市で開催した。毎回さまざまなテーマが取り上げられるが、今回は、ソーシャルゲームやソーシャルメディアなど、まさにソーシャル一色に染め上げられていた。参加者も、SAP(ソーシャル・アプリケーション・プロバイダー)を中心に急増、400人超と過去最多になった。
初日のオープニングセッションでは、「ソーシャルゲームの王者たち~Facebookでトップを狙う経営手法」をテーマに米Electronic Arts(EA)のソーシャルゲーム事業部門「Playfish」のゼネラルマネージャーを務めるクリスティアン・セゲルストラレ氏と、米Zyngaの開発担当シニアバイスプレジデントのロバート・ゴールドバーグ氏の2人が講演した。両者はソーシャルゲームに関する持論を述べつつ、将来の日本市場参入についても言及していた。
Zyngaのゴールドバーグ氏が長期的な成長戦略として掲げたのは「パートナーシップを組んでいくこと。最初のパートナーはYahoo!だったが、今後もやっていきたい」と強調した。同社は2007年の設立。FacebookをはじめとするSNS上で動作するゲームアプリの開発で先行しており、現在月間1億3000万人のユーザーを獲得している。さらに、拡大するために今年5月下旬、米Yahoo!と提携した。この枠組みを活用して、「ほかの企業との提携も進めていく」と発言した。
「(ソーシャルゲームの)成長率はただのオンラインゲームより成長率は高い」。ゴールドバーグ氏はこう言い切った。同氏がZyngaに入社した2008年12月のデイリーユーザーは400万人だったが、09年4月には600万人、10年5月には5600万にまで増えたという。
規模を生かして、オフラインの提携による事業も進めている。「10日ほど前にローンチしたばかりだが、全米の1万4000店のセブン-イレブンとプライベートブランド商品で、ソーシャルゲームとコラボレーションしている。期待はしていたが、飲料や食品などの売れ行きは、これまでセブン-イレブンが映画やDVDとコラボレーションした時よりも効果が大きいようだ。ゲームカードの売り上げも上がった」。
「最後に指摘しておきたいのは、われわれには、何かしら社会に貢献したいという思いがある、ということ。起業家支援に加え、Zinga.orgという非営利の活動にも注力している。最初に行ったチャリティー活動はハイチの地震の際の募金。バーチャルグッズをつくり、150万ドルを集めることができた。募金額としてはもっとも早いスパンで集めた例だ」。ゲームを作るだけでなく、「ゲームを通じて世界を、人々をつないでいくのが目的だ」と企業姿勢を強調していた。
EAのセゲルストラレ氏は「いずれ、ソーシャルゲームという言葉は語られなくなる」との衝撃的な見方を披露した。その真意は「2~3年ですべてのゲームがソーシャルになる」ということだ。同氏は長年、SNSにかかわり、2007年にPlayfishを共同創業。その後、昨年11月にゲーム大手のEAに買収された自らのキャリアがそう言わせるのだろうか。
「ソーシャルゲームは、進化のスピードが既存のゲームより速い。ユーザーとのインタラクションを通じて、イノベーションが進む」と説明する。「ゲームの価値はライフタイムバリューで決まる。ゲーム開発会社とユーザーとの長期的な関係性が重要になる」と指摘した。
両社ともまだ、日本市場には参入していない。そうした中、今回の講演で、ゴールドバーグ氏は「日本での事業展開を準備している」と語った。一方、セゲルストラレ氏は「日本ではソーシャルゲームが大きな成功を収めている。参入には連携するパートナー企業が重要だ」と話していた。ミクシィやディー・エヌ・エー、グリーが相次いでプラットフォームとしてオープン化を進めており、近々、両社のゲームがお目見えすることになりそうだ。SAP同士の競争もますます激しくなりそうだ。
買収防衛策の存廃、株価も左右
3月期決算企業の株主総会が来週以降、ピークを迎える。買収提案が相次ぎ、2007年の総会で多くの企業が導入した買収防衛策(ライツプラン)が更新時期を迎え、今年の総会では継続に関する議案が目立つ。一方で、更新を機に防衛策を取り下げる企業も出てきている。経営者の保身につながりかねないと投資家の批判が根強く、株価に悪影響を与えているとの調査もある買収防衛策は、大きな転機を迎えている。
M&A助言のレコフによると、5月末時点で防衛策を導入している企業は551社。今年の株主総会で新たに導入するのは4社と200社を超えた07年に比べると大幅に減る。ただし、買収防衛策は期限付きが多く、ハウス食品やシャープなど更新を迎える企業の総会では今年も議案として決議される。
逆に今年に入って防衛策を継続しないことを決めた企業はロート製薬や東洋シヤッターなど21社。金融商品取引法で買収者に対する情報提供などのルールが整備されたことで「導入当初に比べて必要性が小さくなった」(ロート製薬)と判断したところが多い。
企業の判断は分かれてきているが、市場は07年当時から一貫して防衛策には否定的だ。防衛策によって企業価値を向上させる買収者まで排除される可能性があり、経営者の保身につながるとの懸念が背景にあるからだ。法整備が進んだことなどもあり「国内の機関投資家も賛同へのハードルを上げるなど、導入当時より見る目は厳しくなっている」(野村証券の西山賢吾シニアストラテジスト)という。
既に2月期決算企業の総会では防衛策を巡るせめぎ合いが起きている。松屋に対して筆頭株主の投資ファンドが買収防衛策の導入禁止を株主提案。総会当日にはファンドの代表が、法整備が進み必要性が薄れていることや「防衛策が入っていることで、株価が上がらない」と主張した。結局、株主提案は否決され、防衛策は継続が決まったが、既存株主が防衛策による株価への悪影響を懸念していることは明らかになった。
防衛策を導入している企業としていない企業に分けて、3年間の株価騰落率を比較してみた(グラフ参照)。導入時期などに差があり厳密ではないが、08年の金融危機で株価が全体的に下落している中でも、導入している企業の方が導入していない企業に比べて下げが大きい。投資家が導入企業を敬遠している様子がうかがえる。
さらに詳しく買収防衛策が株価押し下げ要因になっているという実証研究もある。青山学院大学経済学部の白須洋子教授らが05~07年度のデータを基に、株価収益率への影響を分析。株式市場がライツプランを導入している企業に対してマイナス評価をしているという調査結果(金融庁金融研究研修センターの3月のFSAリサーチ・レビュー=金融庁の公式見解ではない)が出た。特に「持ち合い株比率が高い企業はマイナスの影響が大きく、市場は2重3重の過剰防衛と判断し、厳しい評価をしている」(白須教授)という。
今年から総会での議決権行使結果の開示が義務付けられるほか、有価証券報告書では株式保有状況の開示が拡充される。企業間の持ち合い関係があぶり出されれば、総会での“基礎票”も明らかになる。たとえ総会で防衛策が可決されても、議決権行使結果での防衛策への賛成比率が低く、持ち合いに支えられたということがわかれば、市場からの視線はさらに厳しさを増すことだろう。
【産経主張】成長戦略 何より実行力が問われる
政府が2020年度までに実現を目指す経済政策を盛り込んだ新成長戦略を閣議決定した。成長が見込まれるアジア市場の開拓を支援するなど、日本企業の国際競争力を強化する狙いがある。
日本経済を再び安定的な成長軌道に乗せるには、企業活動の活性化が何よりも重要だ。だが、この成長戦略では企業に対する十分な支援策は盛り込まれておらず、需要の創造にどこまで結びつくかは不透明だ。
また、戦略を実行する具体的な財源や手順も示されておらず、イメージ先行の印象は否めない。
政府は必要に応じて内容を見直したり、優先順位をつけて政策支援を追加するなど、「絵に描いた餅(もち)」に終わらないよう着実な実行につなげていかねばならない。
政府は成長戦略の基本方針を昨年末に決定しており、今回はその具体策として20年度に達成すべき数値目標を設定した。来年度中にデフレから脱却し、名目で年平均3%、実質で同2%の成長を目指すという。潜在成長率が1%程度の現在の日本にとって夢のシナリオで終わらせないでほしい。
日本経済を苦しめるデフレをどう克服するかという具体策にも触れていない。日銀も、来年度中には消費者物価が前年比水準でプラスに転じると予想しているが、デフレ脱却を確かなものにするため、日銀との協力を含めて明確な政策を打ち出す必要がある。
また、環境・健康・アジア・観光の主要4分野で123兆円の市場と500万人の雇用創出を見込んでいるが、規制緩和の具体策は一部にとどまっている。企業の創意工夫で市場を開拓するためにも政府による規制緩和に向けた不断の取り組みが欠かせない。
法人税の実効税率を引き下げる方針を打ち出したことは評価できる。国際競争力を強化するために現在40%の実効税率を主要国並みの30%以下に引き下げる必要があるが、具体的な時期や減税幅は示していない。租税特別措置の見直しによる課税ベースの拡大とセットで段階的な引き下げを早急に検討しなければならない。
菅直人首相は18日、日本経団連の米倉弘昌会長ら経済3団体のトップと首相官邸で初会談し、成長戦略を説明した。経済界と距離を置いて分配戦略を講じてきた政府だが、今後は、経済界との対話を続けて成長戦略の実効性を高める必要がある。
携帯電話大手の収益構造が転機を迎えている。2011年3月期は大手4社合計の通信料収入でデータ通信が音声を初めて上回る見通しだ。スマートフォン(高機能携帯電話)で先行するソフトバンクが連続営業最高益となる一方、出遅れ気味のKDDIは苦戦が続くなどデータ通信が成長力を左右する傾向が強まっている。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクにイー・アクセス傘下のイー・モバイルを加えた大手4社合計で、今期の移動体通信料収入は6兆7千億円弱と前期に比べ小幅減の見通し。データ通信が3兆3千億~3兆4千億円と1割伸びる一方、音声は3兆3千億円と1割落ち込みそう。
09年3月期に4割だったデータ通信の比率は前期に46%程度まで上昇。今期通期では両者がほぼ均衡する見込み。下期にはデータ通信の比率は52%前後まで高まる公算が大きい。
通信料収入のデータと音声の逆転は世界初とみられる。米AT&Tなど欧米大手ではデータ通信の比率は2~3割どまり。日本は従来型の端末でも情報サービスの利用頻度が高く、スマートフォンの普及が重なって成長が加速している。
iPhone(アイフォーン)や多機能携帯端末iPad(アイパッド)を擁するソフトバンクは今期、データ通信の比率が52~53%程度まで上昇する可能性が高い。「ユーザー数が増えればそのまま増収、増益につながる」(孫正義社長)。ソフトバンクは今期の営業利益を前期比7%増の5000億円と見込む。新型iPhoneの売れ行き次第で上ぶれ余地が出てきそうだ。
NTTドコモは「iモード」などデータ通信で約1100億円の増収を見込むが、音声の落ち込みが約2000億円と大きく、補いきれない。KDDIはデータ通信の増収幅が400億円前後にとどまり、全体に占める割合も46%程度となる見込み。音声と合わせた減収幅が1100億円強に膨らみ、携帯電話事業は減収減益が続く。
「コミックバンチ」休刊へ
人気漫画「北斗の拳」の過去を描いた「蒼天の拳」などを連載している週刊漫画誌「コミックバンチ」(新潮社発行)が8月27日発売号で休刊することが18日、分かった。
編集業務を担当している「コアミックス」(東京都武蔵野市)によると、同誌は平成13年に創刊。創刊号は70万部以上を発行して話題を集めたが、日本雑誌協会の統計では、現在14万部前後と低迷していた。
コアミックスでは秋に新しい漫画誌の創刊を検討しているという。
タッチパネル汚れ防ぐ保護剤 ダイキンが増産
ダイキン工業はタッチパネルなどの汚れを防ぐフッ素コーティング剤を増産する。2012年以降、日米の生産設備を増強するほか、中国での生産も検討、スマートフォンなどの需要増へ対応を急ぐ。15年度に生産能力を現在の2倍程度まで引き上げ、売上高は10年度計画比3.3倍の約50億円を目指す。
フッ素コーティング剤「オプツール」はタッチパネル向けなどとして指紋の付着防止や、ふき取りを容易にするために使われる。今後、音楽プレーヤーやパソコン向けなどにも需要が広がるとみている。
増強を予定しているのは淀川製作所(大阪府摂津市)と米国のディケーター工場(アラバマ州)。大金フッ素化学中国公司(江蘇州)での生産も予定している。
ジーンズメイト、最大100人の希望退職募集 正社員の3割
カジュアル衣料専門店のジーンズメイトは18日、最大100人の希望退職者を募集すると発表した。正社員の約3割に上り、同社の希望退職では過去最大になる。売上高の減少に歯止めがかからないため、固定費の削減を急ぐ。
今回の対象者は11月20日時点で満30歳以上の正社員など。募集期間は8月2日~10月20日で、退職者には特別退職一時金を支給するとともに、希望者には再就職の支援も実施する。
同社は衣料品需要の低迷により、業績が低迷している。2011年2月期は、売上高が前期比約7%減に踏み切る。11年2月期は閉店数も期初予想比で倍増させ、10前後とする。
パイロット、新興国でボールペン生産増
筆記具国内最大手のパイロットコーポレーションは新興国での現地生産を拡大し、同市場を本格開拓する。年内にも、主力商品である油性ボールペンのインドネシアでの年間生産量を1億本に倍増。2011年以降、ブラジルやインドでも生産を始める。海外売上高比率は6割を超えるが、主力の欧米市場が成熟するなか、現地生産で各市場に適した商品を増やし新興国需要を取り込む。
インドネシアでは現地の既存工場に、群馬県伊勢崎市にある工場の製造設備の一部を10年中に移設し、生産能力を高める。従来はペン先などの部品を日本から送り、現地では組み立てるだけだったが、今後は部品から生産。マレーシアなど東南アジア諸国への輸出拠点にする。
油性ボールペンは売り上げの3割強を占める。だが従来、新興国向けは日本からの輸出が多く、現地の販売価格が200円程度になることもあった。現地生産に切り替え、50円前後と新興国でも大衆向けの価格帯に抑え、先行する世界大手の仏ビックや独ファーバーカステル、中国メーカーなどに対抗する。
大阪のタクシー、9割が禁煙に…7月1日から
大阪タクシー協会(大阪市)は18日、協会に加盟する171社の計1万4495台について7月1日から全面禁煙にすると発表した。
協会未加盟の初乗り500円タクシーや個人タクシーなどの多くも同調する見通しで、大阪府内を走るタクシー約2万2500台のうち約9割が禁煙になる。近畿運輸局は今後、残る独立系の事業者などにも、禁煙の実施を促していく。
全国乗用自動車連合会(東京)によると、すでに39都府県で全面禁煙の取り組みが進んでいる。大阪府では、客離れを懸念する声もあったが、同協会内で足並みをそろえることを条件に賛同を得たという。
トヨタの中国主力工場生産停止、部品工場ストで
トヨタ自動車は18日、中国天津市のトヨタ系部品メーカー工場で発生したストライキの影響で一部の部品が調達できなくなり、中国の主力工場の天津工場で生産を停止したことを明らかにした。
ストは継続しており、週明けの21日以降も、生産が停止する可能性がある。
ストが発生したのは、トヨタグループの豊田合成の現地工場で、自動車の運転席周りなどのプラスチックパネルを生産している。従業員が賃上げを求めて17日にストを起こし、豊田合成は労使交渉を続けている。
ロシア、外資誘致を促進
ITや原子力など5分野、脱・資源依存へ税優遇や基金創設
【サンクトペテルブルク=石川陽平】ロシアのメドベージェフ大統領は18日、税制優遇策の導入や官民合同の基金創設などにより投資環境を整備する方針を打ち出した。政権が掲げる「国家の近代化」実現へ、IT(情報技術)やエネルギー効率化など5分野を重点に外国企業の誘致や国内企業の育成を強化。「今後10年間で(研究開発や技術革新を軸とする)イノベーション経済に移行する」と述べ、資源依存型経済からの脱却を目指す姿勢を強調した。
国内第2の都市サンクトペテルブルクで開幕した国際経済フォーラムで演説した大統領は税制優遇策について、2011年から長期直接投資のキャピタルゲイン課税を廃止すると言明。さらに革新的技術を持つ企業への新たな免税措置を導入するほか、「法人税の負担軽減策も検討する」と述べた。
今後の重点分野として大統領は、IT(情報技術)やエネルギー効率化、宇宙、原子力、医薬品の5事業を指定。この5分野を中心にモスクワ郊外に研究開発施設を集積する「ロシア版シリコンバレー」計画を進めていることに触れ、「革新技術導入のため特に意義を持つ」と強調した。
政府と民間の資金を組み合わせイノベーション経済への移行を促進する事業や民間企業に投資する仕組みづくりも検討する。「近代化では民間の力を生かす必要がある」として、軍需産業や港湾などインフラ関連の戦略的企業を208社から41社に、その他の国営企業も230社から159社に減らす計画も示した。
欧州、財政再建へ公務員大幅削減
ポルトガル7.3万人 仏は人件費10%、労組の反発根強く
【パリ=古谷茂久】財政赤字が膨らんでいる欧州諸国が公務員や公的部門の大幅人員削減に着手する。解雇は避けるが、退職者の補充を抑制して公務員の定員を減らすほか、公営企業の民営化を通じて公的部門を縮小する。公務員の人件費削減は各国の財政再建策の柱のひとつとなっているが、組合の反対も根強く実行には困難が伴っている。
仏政府は公務員2人の退職に対し当面は1人しか採用しないことを決めた。計算では毎年約3万4千人の削減になる。公務員の人件費を2011~13年の間に10%減らす。10年の財政赤字は国内総生産(GDP)比で約8%に達する見込みで、財政不安が広がるスペインやポルトガルの水準に近い。仏政府はこの比率を13年までに欧州連合(EU)が求める3%に圧縮する目標を掲げている。公務員の人件費削減は歳出削減の2~3割を占めるとみられ、財政再建の柱となっている。
IVS 2010 Spring:
「ソーシャルゲームという言葉は消える」 Zynga、EA幹部が語る「ソーシャル」
新興ベンチャーキャピタルのインフィニティ・ベンチャーズLLP(小林雅・田中章雄・小野裕史共同代表パートナー)は6月10~11日、IT・ネット・モバイル系のテーマについて国内外のベンチャー経営者らが講演・討論する招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2010 Spring」を札幌市で開催した。毎回さまざまなテーマが取り上げられるが、今回は、ソーシャルゲームやソーシャルメディアなど、まさにソーシャル一色に染め上げられていた。参加者も、SAP(ソーシャル・アプリケーション・プロバイダー)を中心に急増、400人超と過去最多になった。
初日のオープニングセッションでは、「ソーシャルゲームの王者たち~Facebookでトップを狙う経営手法」をテーマに米Electronic Arts(EA)のソーシャルゲーム事業部門「Playfish」のゼネラルマネージャーを務めるクリスティアン・セゲルストラレ氏と、米Zyngaの開発担当シニアバイスプレジデントのロバート・ゴールドバーグ氏の2人が講演した。両者はソーシャルゲームに関する持論を述べつつ、将来の日本市場参入についても言及していた。
Zyngaのゴールドバーグ氏が長期的な成長戦略として掲げたのは「パートナーシップを組んでいくこと。最初のパートナーはYahoo!だったが、今後もやっていきたい」と強調した。同社は2007年の設立。FacebookをはじめとするSNS上で動作するゲームアプリの開発で先行しており、現在月間1億3000万人のユーザーを獲得している。さらに、拡大するために今年5月下旬、米Yahoo!と提携した。この枠組みを活用して、「ほかの企業との提携も進めていく」と発言した。
「(ソーシャルゲームの)成長率はただのオンラインゲームより成長率は高い」。ゴールドバーグ氏はこう言い切った。同氏がZyngaに入社した2008年12月のデイリーユーザーは400万人だったが、09年4月には600万人、10年5月には5600万にまで増えたという。
規模を生かして、オフラインの提携による事業も進めている。「10日ほど前にローンチしたばかりだが、全米の1万4000店のセブン-イレブンとプライベートブランド商品で、ソーシャルゲームとコラボレーションしている。期待はしていたが、飲料や食品などの売れ行きは、これまでセブン-イレブンが映画やDVDとコラボレーションした時よりも効果が大きいようだ。ゲームカードの売り上げも上がった」。
「最後に指摘しておきたいのは、われわれには、何かしら社会に貢献したいという思いがある、ということ。起業家支援に加え、Zinga.orgという非営利の活動にも注力している。最初に行ったチャリティー活動はハイチの地震の際の募金。バーチャルグッズをつくり、150万ドルを集めることができた。募金額としてはもっとも早いスパンで集めた例だ」。ゲームを作るだけでなく、「ゲームを通じて世界を、人々をつないでいくのが目的だ」と企業姿勢を強調していた。
EAのセゲルストラレ氏は「いずれ、ソーシャルゲームという言葉は語られなくなる」との衝撃的な見方を披露した。その真意は「2~3年ですべてのゲームがソーシャルになる」ということだ。同氏は長年、SNSにかかわり、2007年にPlayfishを共同創業。その後、昨年11月にゲーム大手のEAに買収された自らのキャリアがそう言わせるのだろうか。
「ソーシャルゲームは、進化のスピードが既存のゲームより速い。ユーザーとのインタラクションを通じて、イノベーションが進む」と説明する。「ゲームの価値はライフタイムバリューで決まる。ゲーム開発会社とユーザーとの長期的な関係性が重要になる」と指摘した。
両社ともまだ、日本市場には参入していない。そうした中、今回の講演で、ゴールドバーグ氏は「日本での事業展開を準備している」と語った。一方、セゲルストラレ氏は「日本ではソーシャルゲームが大きな成功を収めている。参入には連携するパートナー企業が重要だ」と話していた。ミクシィやディー・エヌ・エー、グリーが相次いでプラットフォームとしてオープン化を進めており、近々、両社のゲームがお目見えすることになりそうだ。SAP同士の競争もますます激しくなりそうだ。
買収防衛策の存廃、株価も左右
3月期決算企業の株主総会が来週以降、ピークを迎える。買収提案が相次ぎ、2007年の総会で多くの企業が導入した買収防衛策(ライツプラン)が更新時期を迎え、今年の総会では継続に関する議案が目立つ。一方で、更新を機に防衛策を取り下げる企業も出てきている。経営者の保身につながりかねないと投資家の批判が根強く、株価に悪影響を与えているとの調査もある買収防衛策は、大きな転機を迎えている。
M&A助言のレコフによると、5月末時点で防衛策を導入している企業は551社。今年の株主総会で新たに導入するのは4社と200社を超えた07年に比べると大幅に減る。ただし、買収防衛策は期限付きが多く、ハウス食品やシャープなど更新を迎える企業の総会では今年も議案として決議される。
逆に今年に入って防衛策を継続しないことを決めた企業はロート製薬や東洋シヤッターなど21社。金融商品取引法で買収者に対する情報提供などのルールが整備されたことで「導入当初に比べて必要性が小さくなった」(ロート製薬)と判断したところが多い。
企業の判断は分かれてきているが、市場は07年当時から一貫して防衛策には否定的だ。防衛策によって企業価値を向上させる買収者まで排除される可能性があり、経営者の保身につながるとの懸念が背景にあるからだ。法整備が進んだことなどもあり「国内の機関投資家も賛同へのハードルを上げるなど、導入当時より見る目は厳しくなっている」(野村証券の西山賢吾シニアストラテジスト)という。
既に2月期決算企業の総会では防衛策を巡るせめぎ合いが起きている。松屋に対して筆頭株主の投資ファンドが買収防衛策の導入禁止を株主提案。総会当日にはファンドの代表が、法整備が進み必要性が薄れていることや「防衛策が入っていることで、株価が上がらない」と主張した。結局、株主提案は否決され、防衛策は継続が決まったが、既存株主が防衛策による株価への悪影響を懸念していることは明らかになった。
防衛策を導入している企業としていない企業に分けて、3年間の株価騰落率を比較してみた(グラフ参照)。導入時期などに差があり厳密ではないが、08年の金融危機で株価が全体的に下落している中でも、導入している企業の方が導入していない企業に比べて下げが大きい。投資家が導入企業を敬遠している様子がうかがえる。
さらに詳しく買収防衛策が株価押し下げ要因になっているという実証研究もある。青山学院大学経済学部の白須洋子教授らが05~07年度のデータを基に、株価収益率への影響を分析。株式市場がライツプランを導入している企業に対してマイナス評価をしているという調査結果(金融庁金融研究研修センターの3月のFSAリサーチ・レビュー=金融庁の公式見解ではない)が出た。特に「持ち合い株比率が高い企業はマイナスの影響が大きく、市場は2重3重の過剰防衛と判断し、厳しい評価をしている」(白須教授)という。
今年から総会での議決権行使結果の開示が義務付けられるほか、有価証券報告書では株式保有状況の開示が拡充される。企業間の持ち合い関係があぶり出されれば、総会での“基礎票”も明らかになる。たとえ総会で防衛策が可決されても、議決権行使結果での防衛策への賛成比率が低く、持ち合いに支えられたということがわかれば、市場からの視線はさらに厳しさを増すことだろう。
【産経主張】成長戦略 何より実行力が問われる
政府が2020年度までに実現を目指す経済政策を盛り込んだ新成長戦略を閣議決定した。成長が見込まれるアジア市場の開拓を支援するなど、日本企業の国際競争力を強化する狙いがある。
日本経済を再び安定的な成長軌道に乗せるには、企業活動の活性化が何よりも重要だ。だが、この成長戦略では企業に対する十分な支援策は盛り込まれておらず、需要の創造にどこまで結びつくかは不透明だ。
また、戦略を実行する具体的な財源や手順も示されておらず、イメージ先行の印象は否めない。
政府は必要に応じて内容を見直したり、優先順位をつけて政策支援を追加するなど、「絵に描いた餅(もち)」に終わらないよう着実な実行につなげていかねばならない。
政府は成長戦略の基本方針を昨年末に決定しており、今回はその具体策として20年度に達成すべき数値目標を設定した。来年度中にデフレから脱却し、名目で年平均3%、実質で同2%の成長を目指すという。潜在成長率が1%程度の現在の日本にとって夢のシナリオで終わらせないでほしい。
日本経済を苦しめるデフレをどう克服するかという具体策にも触れていない。日銀も、来年度中には消費者物価が前年比水準でプラスに転じると予想しているが、デフレ脱却を確かなものにするため、日銀との協力を含めて明確な政策を打ち出す必要がある。
また、環境・健康・アジア・観光の主要4分野で123兆円の市場と500万人の雇用創出を見込んでいるが、規制緩和の具体策は一部にとどまっている。企業の創意工夫で市場を開拓するためにも政府による規制緩和に向けた不断の取り組みが欠かせない。
法人税の実効税率を引き下げる方針を打ち出したことは評価できる。国際競争力を強化するために現在40%の実効税率を主要国並みの30%以下に引き下げる必要があるが、具体的な時期や減税幅は示していない。租税特別措置の見直しによる課税ベースの拡大とセットで段階的な引き下げを早急に検討しなければならない。
菅直人首相は18日、日本経団連の米倉弘昌会長ら経済3団体のトップと首相官邸で初会談し、成長戦略を説明した。経済界と距離を置いて分配戦略を講じてきた政府だが、今後は、経済界との対話を続けて成長戦略の実効性を高める必要がある。
守る大手出版、間隙突く中堅中小 「iPad革命」の裏側
国内出版業界の本音
「電子書籍事業は、品ぞろえが重要」。アマゾン日本法人アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長は今年6月2日の記者会見で、Kindle Storeの日本での展開についてこう話した。アマゾンジャパンの関係者は「電子書籍事業に参入した07年以降、日本の出版各社とは継続的に話をしているが、時期を明確にできる段階には至っていない」と漏らす。
ある出版社の社長は、こう話す。「31社の日本電子書籍出版社協会は、言ってみればアマゾンやアップルに対して抜け駆けするなよというようなもの。日本の出版業界は、取次会社のうしろに書店がある。電子書籍市場の立ち上がりで、取次会社も書店も不安を覚えており、そこへの配慮もしながら、慎重に事を進めたいということでは」
特に国内の出版業界が慎重になっているのが、価格だという。再販制がある日本では出版物の価格を出版社側が決め、維持している。前出の社長は、こう言う。「出版社側が価格をコントロールできるのであれば、アマゾンやアップルへのコンテンツの提供は、やぶさかではない。しかし、アマゾンやアップルの都合で価格を決められるのは許容できない」
Kindle Storeでは、定価27ドル程度(アマゾンの通販価格は20ドル程度)の単行本であれば、基本的には9.99ドルで販売することがルールとなっている。出版社は10ドル以上の値付けも選択できるが、その場合はアマゾンに支払う手数料が大幅に跳ね上がり、自らの利益を圧迫する羽目になる。
一方、iBookstoreの価格はベストセラーを含む人気書籍の多くが、12.99ドルから14.99ドル。Kindle Storeよりも高いが、アマゾンの通販よりは安いという戦略的な設定だ。いずれにせよ、書店や取次会社から見れば「価格破壊」であることに違いはない。
さらにアマゾンとアップルの流通チャネルでは、作家が出版社を「中抜き」して、直接作品を販売することができる。実際に米国では、人気作家のスティーヴン・キングなどが電子書籍向けの作品を書き下ろして販売している。一般に出版社が著者に支払う印税率は10%。アマゾンやアップルの販売チャンネルを利用すれば、それが70%程度に増えることになり、直販に触手を伸ばす作家が増える可能性がある。
同じことを日本でもされてしまえば、そのインパクトは計り知れない。であれば自分たちのペースで電子書籍市場を築けるよう、独自の販路を準備しておきたいというのが国内出版業界の本音だろう。だから、日本の電子書籍をめぐる大手出版の動きは、電子書籍のプラットフォームまでを包含しているのだ。
官民一体で独自規格
海の向こうで悠然とたたずむKindle Store、iBookstoreという「黒船」に対し、開国を拒んでいるかのように見える大手出版。「鎖国化」「ガラパゴス化」の動きは、さらに加速している。
6月8日、総務省、経済産業省、文部科学省は、電子書籍の普及策を検討する懇談会の第2回会合を開催した。懇談会には作家や書店、携帯電話事業者のほか、電書協やシャープも参加した。電書協の電子文庫パブリは、シャープが開発した電子書籍用のファイル形式「XMDF」を採用している。一方、アマゾンやアップルは参加していない。
ここで、「電子出版日本語フォーマット統一規格会議(仮称)」を立ち上げ、日本語環境に適した電子書籍の独自フォーマットを開発することが決まった。米国など英語圏ではデファクトスタンダードになりつつあり、アップルのiBookstoreも採用している「ePub」形式については、「日本語への対応状況を見極めつつ対応を検討する」としている。
Kindle Storeが採用する独自形式「AZW」に関しては、ほとんど話題にも上っていない。
官民が一体となって電子書籍の普及を進めようとしているのは事実だ。だが、見方を変えれば、官民が一体となって日本固有の仕様に基づく市場を作ろうといういつもの構図。その一方で、大手の動きと距離を置きながら虎視眈々と電子出版の環境を整える出版社もある。中堅出版のディスカヴァー・トゥエンティワン(21)もその一社だ。
「アマゾンについては、英語版の電子書籍を出すつもり。日本語版はいつになるかわからないので様子を見ている。iPadとiPhoneに関しては、iBookstoreの日本版が始まらなくてもアプリで対応できるので、それはやる。グーグルのAndroidを搭載したスマートフォンも同じ」
勝間和代氏を見出したことで知られるディスカヴァー21の干場弓子社長は、こう早口でまくし立てる。取次会社や書店との縦の関係、出版各社との横の関係をうかがう大手出版のトップは、電子出版の戦略やスケジュールをなかなか明確にはしない。だが干場社長は違う。
「いちいちあちこちに合わせて作っているとお金がかかるので、一発でぴゅっといろいろなプラットフォームに流せるようなシステムをいま開発してもらっているところ。秋くらいには準備が整うので、当社から出す新刊本は基本的にぜんぶ電子書籍でも購入できるようにする。既刊本も需要がありそうなものはすべて、用意するつもりでいる」
ディスカヴァー21は、国内では珍しく、取次会社を通さずに全国4000の書店へ直接、書籍を卸している。そのため出版業界の横のつながりを持たず、当初は業界団体の日本書籍出版協会にも加盟していなかったアウトローだ。つまり「抜け駆け」しやすい立場にいる。だが、電子出版への積極的な姿勢は、それだけが理由ではない。
「プラットフォームは版元の仕事じゃない」
ディスカヴァー21は創業20年と歴史は浅く、社員数も約40人の小規模な出版社だ。にもかかわらず、出版不況下でヒットを飛ばし続け、出版業界での存在感を年々増している。
“勝間本”の火付け役『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』は20万部突破、婚活ブームを築いた『「婚活」時代』(山田昌弘・白河桃子著)は13万部突破、最近も『超訳 ニーチェの言葉』が3カ月で39万部を突破と、ヒットを挙げれば枚挙に暇がない。初版で終わる書籍が多いなか、ディスカヴァー21は年間80点の新刊本のおよそ75%で増刷を決めているという。つまり、コンテンツの企画力に自信がある。
好調を維持するディスカヴァー21は昨年12月、独自の電子書籍販売サイト「ディスカヴァー デジタルブックストア」を立ち上げ、一部の新刊本から電子書籍の販売を開始した。配信先はパソコンとiPhoneで、双方ともに独自の閲覧用アプリを開発、自社専用のプラットフォームを構築した。しかし干場社長は「読者の利便性を考えたら、基本的にプラットフォームは版元がやる仕事じゃないと思っている」と語る。
「日本で電子書籍配信プラットフォームのデファクトがある程度決まってきたら、当社もそれに合わせようと思っている。でもいまは、決まるのを待っていられない。日本語のePub形式だってどうなるかわからない。だから、プラットフォームやフォーマットはとりあえず置いておいて、見え方とか読み方とかの研究を今のうちにしておこうぐらいのつもりで独自のサイトを始めた」
本格システムを新たに立ち上げ
今年4月には、『電子書籍の衝撃』(佐々木俊尚著)の電子書籍版を書店での発売前に自社サイトで先行発売して話題を呼んだ。1万部限定で「110円」というキャンペーン価格を打ち出したところ、サーバーがダウンするほどアクセスが集中し、ほぼ1万部を売り切った。その後は、電子版を1000円、紙版を1155円で販売している。
こうした経験を踏まえ、ディスカヴァー21は今秋、本格的な電子出版のシステムを新たに立ち上げる。「どんなフォーマットでも、どんなプラットフォームへも簡単に対応できるよう、できるだけオープンな設計にした」というシステムは、アップルやグーグルが電子書籍配信に採用するePub形式をベースとしたものだ。
直営店である自社サイトは維持し、自社サイトから購入した読者は、パソコンでもiPadでもiPhoneでもAndroidでも、独自のアプリを通じて自由に閲覧できるようにする。だが直営店は販路の1つ。iBookstoreの日本版が始まれば、「即座に対応する」と言い切る干場社長は、目指す理想像をこう説明する。
「アパレルメーカーと同じように考えている。直営店でも売るし、デパートにも出店する。顧客はどこで買ってもいい。iBookというアップル製の電子書籍リーダーで読みたい人はiBookstoreで買えばいい。その代わり、iPadやiPhoneでしか読めない。一方、直営店ではiPadやiPhoneでも読めるアプリを提供するし、パソコンでも各種携帯電話でも読める。顧客はどれでも自由に選べる」
ディスカヴァー21のような動きは、ほかの中堅・中小出版社にも広がりそうだ。
折りしも官民の懇談会が開かれた6月8日、「これからの電子出版や電子書籍・雑誌に取り組むための団体」と冠がついた「電子書籍を考える出版社の会」が設立された。
参加企業として名を連ねるのは、インプレスジャパン、技術評論社、翔泳社、ソフトバンク クリエイティブ、日刊工業新聞社、毎日コミュニケーションズなど、専門書や実用書を中心とする出版社。大手中心の電書協はもちろん、官民の懇談会にも参加していない中堅・中小ばかりである。
「来る者は拒まず」で協力しあう
「電書協とはまだ話をしたことはないが、敵対する組織というわけでもない。ただ、電書協は電子文庫パブリを運営しているように、文庫・文芸書の出版社が集まっている。我々は専門書・実用書が中心で、大手出版とは事情が異なる部分も多い。最適なフォーマットは何なのか、アマゾンやアップルのプラットフォームはいつ始まるのか、情報がないなか、みんな暗中模索になっている。そうした出版社が集まって、情報交換をしましょうというところから始まった」
代表幹事を務める毎日コミュニケーションズの滝口直樹取締役出版事業本部長は、設立の狙いをこう語る。あくまでも情報交換や意見交換をする任意団体であることを強調し、出版社はもちろん、出版に携わる制作会社や、電子書籍の開発を目指すIT関連企業など、「来る者は拒まず」の基本姿勢で参加社を募るという。さらに、プラットフォームを共同で開発したり、お互いを縛ったりするような組織ではないことも強調する。
「iPad向けのアプリも、ePub形式の配信も、iBookstoreも、できることがあれば、どんどんやってください。そして、苦労したことや問題点を教えてください、みんなで協力しあって電子書籍市場を盛り上げましょう、というスタンスでいる」
政府やメーカーなどと組んで「オールジャパン」でデファクト争いに突入しようとしているかに見える大手出版。一方で、身軽な立場を利用して、フォーマットやプラットフォーム競争に左右されない戦略を敷く中堅中小。電子書籍市場は立ち上がったばかりで、その行方は混沌(こんとん)としている。戦略の優劣を判断できる段階ではない。だが、少なくとも読者は、電子書籍のフォーマットが乱立したり、ほしい電子書籍がなかったり、あるいはプラットフォームが分散するような「面倒」な状況を望んではいない。
NTTドコモ株主総会、スマートフォンなどの質問目立つ
NTTドコモは18日、定時株主総会を開いた。総会では、スマートフォン(高機能携帯電話)に関する質問や、海外展開の強化を求める意見が目立った。スマートフォン利用者のすそ野を広げるために、同社の山田隆持社長は「(商品)ラインアップの拡充や、使いやすい料金にしていく。アプリケーションを取り込みやすいようにもしている」と答えた。
低迷する株価の理由を問う質問に対しては、「(携帯電話が)成熟市場になってきたのではないか、競争が厳しいのではないかとの危惧がある」との認識を示した。そのうえで「成長戦略をいかに示すかが大切。データ通信料収入の拡大をなんとしても目指したい」と述べた。
総会は約2時間で終了。2491人(昨年は2189人)が出席し、議案はすべて可決された。役員報酬に関する質問は出なかった。
ソニー株主総会、ストリンガー会長「3Dでテレビ復活」
ソニーは18日、都内で定時株主総会を開いた。ハワード・ストリンガー会長は、「3次元(3D)テレビがソニーのテレビ復活のきっかけとなり、今後は競争力のある製品を出していける」と株主らに訴えた。3D関連ではテレビやコンテンツに加え、業務用のカメラや映写機なども展開しており、同会長は「3Dは主要施策で、ソニーは幅広い分野で技術に優位性がある。3Dではあらゆる資産をもっている」と強調した。
総会では、株主から家電やゲームなど主力事業で営業赤字が続いていることを指摘する声が出た。これに対し、大根田伸行副社長兼最高財務責任者(CFO)は「11年3月期は(10年3月期の業績改善に寄与した)金融事業ではなく、家電、ゲームが全体の収益改善のコントリビューター(けん引役)となる」と説明した。
米グーグルと映像・情報端末の開発で提携したことについては、ストリンガー会長が「ソニーがハードとコンテンツの両方を持っているため提携先として選ばれ、世界に先駆けてインターネットテレビを展開できることになった」と語った。
議案は取締役の選任と、ストック・オプション付与のための新株予約権の発行の2案だった。株主から「株主に基本情報が与えられていない」との指摘が出たため、ソニーは10年3月期の個別の役員報酬額を開示し、ストリンガー会長に総額4億1000万円を支払うことを明らかにした。
株主総会は午前10時に始まり、12時18分に終了した。7827人(前年は8329人)が出席し、議案はすべて原案通り可決した。
改正貸金業法の施行知って 副大臣らティッシュ配りPR
個人向けローンの規制を大幅に厳しくした改正貸金業法が18日、完全施行された。金融庁は同日朝、改正法の周知を目的に大塚耕平金融担当副大臣ら30人ほどがJR新橋駅前で「貸金業法が大きく変わります」と書かれた広報用のティッシュを配布した。
18日午前、街頭でティッシュを配る大塚副大臣 (東京都港区)
改正貸金業法では、利用者の借入総額を年収の3分の1までに制限する一方、上限金利も29.2%から20%に引き下げた。借金を繰り返して返済に行き詰まる多重債務問題の解消を目指すが、個人の資金繰りなどへの影響も予想される。
ティッシュ配りに参加した大塚副大臣は「完全施行でどのような状況になるか見極めて、対応すべきことがあれば迅速に対応する」と述べた。通勤途中の会社員(40)からは「若いころはよくローンを利用したが、今後はあまり世話にならない人生を送りたい」との声が聞かれた。
三浦惺NTT社長「高速通信普及へ新組織」
ブロードバンド化、無線もライバルに
「世界ICT(情報通信技術)サミット2010」(日本経済新聞社・総務省主催)に参加したICT業界の首脳たちにインターネットやモバイル産業の将来像を聞いた。初回の三浦惺NTT社長は「ブロードバンド(高速大容量)サービス普及のために社長直轄組織を立ち上げる」ことを明らかにした。
――政府はブロードバンド推進政策を掲げるが現状はどうか。
「ブロードバンドの利用・活用にはパブリック(公的利用)とプライベート(個人利用)の両方がある。遅れているのは前者だ。電子政府や教育、医療の分野で規制緩和や仕様の統一を進め、ブロードバンド利用の壁を取り払うべきだ」
――光ファイバー通信回線の伸びは鈍っている。NTTとしてできることは。
「NTTグループをあげて光回線の普及を推進するため、社長直轄のブロードバンド推進本部を6月24日に設置することにした。NTT東西地域会社、NTTドコモ、NTTデータ、NTTコミュニケーションズの各グループ5社の副社長クラスをメンバーに加える」
「私がリーダーシップをとり、新たなサービスの開発や普及策を立案し実行する。電子政府の実現や、地方公共団体の利用促進にも積極的に協力していきたい」
◇ ◇ ◇
――ブロードバンド推進本部にはドコモも含まれるのか。
「当然だ。固定だけではブロードバンドのすべては担えない。どういう形でブロードバンドを普及させるのか、固定通信のユーザーだけでなく携帯の利用者の要望も吸い上げなければならない」
「NTTは映像サービスや、ベンチャー企業と協力しながらサービス開発に取り組んできた。光回線を使ったテレビ(IPTV)はようやく100万件を超えた。公的利用についても、政府任せにするつもりはない」
――司令塔をつくる狙いは。
「従来はドコモや東西会社が同じような製品をそれぞれ出すケースもあったが、今後は知恵を結集して固定通信と移動通信の融合の時代に備えなければならない」
「ブロードバンド化は、電話回線から光回線という1つの選択肢だけでなく、電話線から無線へという方向もある。固定回線はいらないという若い世代も増えてきている。利用者ニーズの変化を読み取りながら柔軟な政策を打ち出すべきだ」
――公的利用の促進にどう貢献していくのか。
「教育はブロードバンドの恩恵を最も受ける分野だが、その3分の1はブロードバンドが提供されていない。光回線のような超高速なブロードバンドでなくてもまかなえる部分がある。まずそこから手を付けなければならない」
「ブロードバンドの普及を広くとらえると、単なる回線の普及だけではない。使う側のITリテラシーの向上も重要なテーマだ。教育の現場や、IT特区に専門家を派遣して、リテラシー向上の相談に乗る取り組みも進める」
――光回線シェアは7割を超えるが、競争状況をどうみているか。
「NTTは赤字を覚悟で光回線の敷設につとめてきた。海外投資家からは『クレイジー』と言われてきたが、人後に落ちない努力と情熱を傾けてきた。従来、CATV会社や電力系通信事業者と競争してきたが、KDDIがCATV最大手のジュピターテレコムに資本参加したことで手ごわい勢力が誕生する」
「固定回線だけでなく、無線も有力なライバルだ。従来の無線LANや高速無線通信『WiMAX』に加え、年末からは最大スピードが光回線並みになる次世代携帯電話サービス『LTE』も始まる。利用者によりよいサービスを提供するための設備・サービスを含めた競争の土壌は整っている」
――政府ではNTTの光回線インフラを分離すべきだとの議論もある。
「NTTの組織を見直すことがブロードバンドの普及にプラスになるとは思わない。組織を分けることはいろいろな意味でイノベーションを阻害することになると考えている」
緊急特集
消費税10%、市場の見方(10/6/18)
菅直人首相が消費税率について「自民党が提案している10%を一つの参考にさせていただく」と発言し、株式市場でもにわかに将来の消費税増税への関心が高まってきた。「消費税10%」は自民党が提案しているもので、参院選の結果にかかわらず議論は続く可能性がありそう。市場関係者の見方をまとめた。質問は
(1)消費税増税の可能性・時期
(2)景気・株式相場への影響
(3)個別銘柄や業種への影響
「消費活性化で経済にプラス」
神山直樹・ドイツ証券チーフエクイティストラテジスト
(1)消費税の増税の実現性はかなり高くなっている。民主党も自民党も増税に前向きになっているうえ、世論調査でも増税に対する支持が高くなっている。ここまで条件がそろったことは過去ほとんど例がなく、実現性は相当高まっている。ただ正式に決まるにはかなり時間がかかる。まず税制調査会等で詳細を固めるのは非常に時間がかかる。さらに景気への悪影響を避けるため、国内総生産(GDP)など数値目標を立てて、景気が回復したときに増税するというような決め方もできるため、タイミングはかなり先ということしかわからない。
(2)増税は日本の経済成長にとってプラスだ。今は将来増税になるかもしれないという不安心理が強く、日本人は貯金を増やし、消費を手控えたりしている。増税が社会保障の持続性の高まりにつながると国民が考えれば、かえって個人消費の活性化につながる可能性がある。一方、短期的な景気については悪影響を与える可能性もあるが、そのときの景気の状況次第だ。株式相場にとっても同様にポジティブだ。社会保障に対する信頼感が増せば、消費面で好影響を与える。
(3)短期的には住宅や耐久消費財など高額品に対する駆け込み需要が強まり、その後冷え込むという形で需要の波が大きくなる。今後の設計次第で業種や個別銘柄への影響は変わる。例えば、福祉目的税のような特定目的税になった場合、福祉や医療関連銘柄にプラス。また衣料品や生活必需品が減免税率となった場合、低廉品にプラスで、高級品にマイナスになるだろう。(聞き手は土居倫之)
「企業間格差につながる可能性」
瀬川剛・みずほ証券エクイティストラテジスト
(1)以前は消費税の増税に反対する人が多かったが、今年春の各種の世論調査によると6割程度の回答者が増税を容認する姿勢を示した。国の長期債務は国内総生産(GDP)の1.6倍に膨らんでおり、今後5年間で倍になるという試算もあり、(増税は)やむを得ないと考えたのではないか。菅直人首相は最短で2012年秋にも消費税を引き上げると言っているが、ずれ込むのではないか。参議院選の結果次第では総選挙にもつれ込む可能性もあり、最低でも半年程度は遅れそうだ。
(2)1989年の消費税3%の導入や97年に5%に引き上げた際、その前年に高額商品の駆け込み需要が多くなった。一方で、反動による消費の落ち込みも大きかった。極端に減少した際のケアをどうするのかが重要だと思う。今回は5%から10%と大幅な引き上げになり、かつてとは比べられない駆け込み需要が出そうだ。未経験の反動減にも備えなければいけない。(消費税の引き上げ分)商品の価格が上昇するため、費用対効果を考えて、消費者はより質や中身を厳選するようになる。そうなれば、(業績や株価で)企業間の格差を広げることになるだろう。
(3)高額品の駆け込み需要の増加を考えると、住宅や住設、自動車、家電などの銘柄が注目だ。
国内出版業界の本音
「電子書籍事業は、品ぞろえが重要」。アマゾン日本法人アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長は今年6月2日の記者会見で、Kindle Storeの日本での展開についてこう話した。アマゾンジャパンの関係者は「電子書籍事業に参入した07年以降、日本の出版各社とは継続的に話をしているが、時期を明確にできる段階には至っていない」と漏らす。
ある出版社の社長は、こう話す。「31社の日本電子書籍出版社協会は、言ってみればアマゾンやアップルに対して抜け駆けするなよというようなもの。日本の出版業界は、取次会社のうしろに書店がある。電子書籍市場の立ち上がりで、取次会社も書店も不安を覚えており、そこへの配慮もしながら、慎重に事を進めたいということでは」
特に国内の出版業界が慎重になっているのが、価格だという。再販制がある日本では出版物の価格を出版社側が決め、維持している。前出の社長は、こう言う。「出版社側が価格をコントロールできるのであれば、アマゾンやアップルへのコンテンツの提供は、やぶさかではない。しかし、アマゾンやアップルの都合で価格を決められるのは許容できない」
Kindle Storeでは、定価27ドル程度(アマゾンの通販価格は20ドル程度)の単行本であれば、基本的には9.99ドルで販売することがルールとなっている。出版社は10ドル以上の値付けも選択できるが、その場合はアマゾンに支払う手数料が大幅に跳ね上がり、自らの利益を圧迫する羽目になる。
一方、iBookstoreの価格はベストセラーを含む人気書籍の多くが、12.99ドルから14.99ドル。Kindle Storeよりも高いが、アマゾンの通販よりは安いという戦略的な設定だ。いずれにせよ、書店や取次会社から見れば「価格破壊」であることに違いはない。
さらにアマゾンとアップルの流通チャネルでは、作家が出版社を「中抜き」して、直接作品を販売することができる。実際に米国では、人気作家のスティーヴン・キングなどが電子書籍向けの作品を書き下ろして販売している。一般に出版社が著者に支払う印税率は10%。アマゾンやアップルの販売チャンネルを利用すれば、それが70%程度に増えることになり、直販に触手を伸ばす作家が増える可能性がある。
同じことを日本でもされてしまえば、そのインパクトは計り知れない。であれば自分たちのペースで電子書籍市場を築けるよう、独自の販路を準備しておきたいというのが国内出版業界の本音だろう。だから、日本の電子書籍をめぐる大手出版の動きは、電子書籍のプラットフォームまでを包含しているのだ。
官民一体で独自規格
海の向こうで悠然とたたずむKindle Store、iBookstoreという「黒船」に対し、開国を拒んでいるかのように見える大手出版。「鎖国化」「ガラパゴス化」の動きは、さらに加速している。
6月8日、総務省、経済産業省、文部科学省は、電子書籍の普及策を検討する懇談会の第2回会合を開催した。懇談会には作家や書店、携帯電話事業者のほか、電書協やシャープも参加した。電書協の電子文庫パブリは、シャープが開発した電子書籍用のファイル形式「XMDF」を採用している。一方、アマゾンやアップルは参加していない。
ここで、「電子出版日本語フォーマット統一規格会議(仮称)」を立ち上げ、日本語環境に適した電子書籍の独自フォーマットを開発することが決まった。米国など英語圏ではデファクトスタンダードになりつつあり、アップルのiBookstoreも採用している「ePub」形式については、「日本語への対応状況を見極めつつ対応を検討する」としている。
Kindle Storeが採用する独自形式「AZW」に関しては、ほとんど話題にも上っていない。
官民が一体となって電子書籍の普及を進めようとしているのは事実だ。だが、見方を変えれば、官民が一体となって日本固有の仕様に基づく市場を作ろうといういつもの構図。その一方で、大手の動きと距離を置きながら虎視眈々と電子出版の環境を整える出版社もある。中堅出版のディスカヴァー・トゥエンティワン(21)もその一社だ。
「アマゾンについては、英語版の電子書籍を出すつもり。日本語版はいつになるかわからないので様子を見ている。iPadとiPhoneに関しては、iBookstoreの日本版が始まらなくてもアプリで対応できるので、それはやる。グーグルのAndroidを搭載したスマートフォンも同じ」
勝間和代氏を見出したことで知られるディスカヴァー21の干場弓子社長は、こう早口でまくし立てる。取次会社や書店との縦の関係、出版各社との横の関係をうかがう大手出版のトップは、電子出版の戦略やスケジュールをなかなか明確にはしない。だが干場社長は違う。
「いちいちあちこちに合わせて作っているとお金がかかるので、一発でぴゅっといろいろなプラットフォームに流せるようなシステムをいま開発してもらっているところ。秋くらいには準備が整うので、当社から出す新刊本は基本的にぜんぶ電子書籍でも購入できるようにする。既刊本も需要がありそうなものはすべて、用意するつもりでいる」
ディスカヴァー21は、国内では珍しく、取次会社を通さずに全国4000の書店へ直接、書籍を卸している。そのため出版業界の横のつながりを持たず、当初は業界団体の日本書籍出版協会にも加盟していなかったアウトローだ。つまり「抜け駆け」しやすい立場にいる。だが、電子出版への積極的な姿勢は、それだけが理由ではない。
「プラットフォームは版元の仕事じゃない」
ディスカヴァー21は創業20年と歴史は浅く、社員数も約40人の小規模な出版社だ。にもかかわらず、出版不況下でヒットを飛ばし続け、出版業界での存在感を年々増している。
“勝間本”の火付け役『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』は20万部突破、婚活ブームを築いた『「婚活」時代』(山田昌弘・白河桃子著)は13万部突破、最近も『超訳 ニーチェの言葉』が3カ月で39万部を突破と、ヒットを挙げれば枚挙に暇がない。初版で終わる書籍が多いなか、ディスカヴァー21は年間80点の新刊本のおよそ75%で増刷を決めているという。つまり、コンテンツの企画力に自信がある。
好調を維持するディスカヴァー21は昨年12月、独自の電子書籍販売サイト「ディスカヴァー デジタルブックストア」を立ち上げ、一部の新刊本から電子書籍の販売を開始した。配信先はパソコンとiPhoneで、双方ともに独自の閲覧用アプリを開発、自社専用のプラットフォームを構築した。しかし干場社長は「読者の利便性を考えたら、基本的にプラットフォームは版元がやる仕事じゃないと思っている」と語る。
「日本で電子書籍配信プラットフォームのデファクトがある程度決まってきたら、当社もそれに合わせようと思っている。でもいまは、決まるのを待っていられない。日本語のePub形式だってどうなるかわからない。だから、プラットフォームやフォーマットはとりあえず置いておいて、見え方とか読み方とかの研究を今のうちにしておこうぐらいのつもりで独自のサイトを始めた」
本格システムを新たに立ち上げ
今年4月には、『電子書籍の衝撃』(佐々木俊尚著)の電子書籍版を書店での発売前に自社サイトで先行発売して話題を呼んだ。1万部限定で「110円」というキャンペーン価格を打ち出したところ、サーバーがダウンするほどアクセスが集中し、ほぼ1万部を売り切った。その後は、電子版を1000円、紙版を1155円で販売している。
こうした経験を踏まえ、ディスカヴァー21は今秋、本格的な電子出版のシステムを新たに立ち上げる。「どんなフォーマットでも、どんなプラットフォームへも簡単に対応できるよう、できるだけオープンな設計にした」というシステムは、アップルやグーグルが電子書籍配信に採用するePub形式をベースとしたものだ。
直営店である自社サイトは維持し、自社サイトから購入した読者は、パソコンでもiPadでもiPhoneでもAndroidでも、独自のアプリを通じて自由に閲覧できるようにする。だが直営店は販路の1つ。iBookstoreの日本版が始まれば、「即座に対応する」と言い切る干場社長は、目指す理想像をこう説明する。
「アパレルメーカーと同じように考えている。直営店でも売るし、デパートにも出店する。顧客はどこで買ってもいい。iBookというアップル製の電子書籍リーダーで読みたい人はiBookstoreで買えばいい。その代わり、iPadやiPhoneでしか読めない。一方、直営店ではiPadやiPhoneでも読めるアプリを提供するし、パソコンでも各種携帯電話でも読める。顧客はどれでも自由に選べる」
ディスカヴァー21のような動きは、ほかの中堅・中小出版社にも広がりそうだ。
折りしも官民の懇談会が開かれた6月8日、「これからの電子出版や電子書籍・雑誌に取り組むための団体」と冠がついた「電子書籍を考える出版社の会」が設立された。
参加企業として名を連ねるのは、インプレスジャパン、技術評論社、翔泳社、ソフトバンク クリエイティブ、日刊工業新聞社、毎日コミュニケーションズなど、専門書や実用書を中心とする出版社。大手中心の電書協はもちろん、官民の懇談会にも参加していない中堅・中小ばかりである。
「来る者は拒まず」で協力しあう
「電書協とはまだ話をしたことはないが、敵対する組織というわけでもない。ただ、電書協は電子文庫パブリを運営しているように、文庫・文芸書の出版社が集まっている。我々は専門書・実用書が中心で、大手出版とは事情が異なる部分も多い。最適なフォーマットは何なのか、アマゾンやアップルのプラットフォームはいつ始まるのか、情報がないなか、みんな暗中模索になっている。そうした出版社が集まって、情報交換をしましょうというところから始まった」
代表幹事を務める毎日コミュニケーションズの滝口直樹取締役出版事業本部長は、設立の狙いをこう語る。あくまでも情報交換や意見交換をする任意団体であることを強調し、出版社はもちろん、出版に携わる制作会社や、電子書籍の開発を目指すIT関連企業など、「来る者は拒まず」の基本姿勢で参加社を募るという。さらに、プラットフォームを共同で開発したり、お互いを縛ったりするような組織ではないことも強調する。
「iPad向けのアプリも、ePub形式の配信も、iBookstoreも、できることがあれば、どんどんやってください。そして、苦労したことや問題点を教えてください、みんなで協力しあって電子書籍市場を盛り上げましょう、というスタンスでいる」
政府やメーカーなどと組んで「オールジャパン」でデファクト争いに突入しようとしているかに見える大手出版。一方で、身軽な立場を利用して、フォーマットやプラットフォーム競争に左右されない戦略を敷く中堅中小。電子書籍市場は立ち上がったばかりで、その行方は混沌(こんとん)としている。戦略の優劣を判断できる段階ではない。だが、少なくとも読者は、電子書籍のフォーマットが乱立したり、ほしい電子書籍がなかったり、あるいはプラットフォームが分散するような「面倒」な状況を望んではいない。
NTTドコモ株主総会、スマートフォンなどの質問目立つ
NTTドコモは18日、定時株主総会を開いた。総会では、スマートフォン(高機能携帯電話)に関する質問や、海外展開の強化を求める意見が目立った。スマートフォン利用者のすそ野を広げるために、同社の山田隆持社長は「(商品)ラインアップの拡充や、使いやすい料金にしていく。アプリケーションを取り込みやすいようにもしている」と答えた。
低迷する株価の理由を問う質問に対しては、「(携帯電話が)成熟市場になってきたのではないか、競争が厳しいのではないかとの危惧がある」との認識を示した。そのうえで「成長戦略をいかに示すかが大切。データ通信料収入の拡大をなんとしても目指したい」と述べた。
総会は約2時間で終了。2491人(昨年は2189人)が出席し、議案はすべて可決された。役員報酬に関する質問は出なかった。
ソニー株主総会、ストリンガー会長「3Dでテレビ復活」
ソニーは18日、都内で定時株主総会を開いた。ハワード・ストリンガー会長は、「3次元(3D)テレビがソニーのテレビ復活のきっかけとなり、今後は競争力のある製品を出していける」と株主らに訴えた。3D関連ではテレビやコンテンツに加え、業務用のカメラや映写機なども展開しており、同会長は「3Dは主要施策で、ソニーは幅広い分野で技術に優位性がある。3Dではあらゆる資産をもっている」と強調した。
総会では、株主から家電やゲームなど主力事業で営業赤字が続いていることを指摘する声が出た。これに対し、大根田伸行副社長兼最高財務責任者(CFO)は「11年3月期は(10年3月期の業績改善に寄与した)金融事業ではなく、家電、ゲームが全体の収益改善のコントリビューター(けん引役)となる」と説明した。
米グーグルと映像・情報端末の開発で提携したことについては、ストリンガー会長が「ソニーがハードとコンテンツの両方を持っているため提携先として選ばれ、世界に先駆けてインターネットテレビを展開できることになった」と語った。
議案は取締役の選任と、ストック・オプション付与のための新株予約権の発行の2案だった。株主から「株主に基本情報が与えられていない」との指摘が出たため、ソニーは10年3月期の個別の役員報酬額を開示し、ストリンガー会長に総額4億1000万円を支払うことを明らかにした。
株主総会は午前10時に始まり、12時18分に終了した。7827人(前年は8329人)が出席し、議案はすべて原案通り可決した。
改正貸金業法の施行知って 副大臣らティッシュ配りPR
個人向けローンの規制を大幅に厳しくした改正貸金業法が18日、完全施行された。金融庁は同日朝、改正法の周知を目的に大塚耕平金融担当副大臣ら30人ほどがJR新橋駅前で「貸金業法が大きく変わります」と書かれた広報用のティッシュを配布した。
18日午前、街頭でティッシュを配る大塚副大臣 (東京都港区)
改正貸金業法では、利用者の借入総額を年収の3分の1までに制限する一方、上限金利も29.2%から20%に引き下げた。借金を繰り返して返済に行き詰まる多重債務問題の解消を目指すが、個人の資金繰りなどへの影響も予想される。
ティッシュ配りに参加した大塚副大臣は「完全施行でどのような状況になるか見極めて、対応すべきことがあれば迅速に対応する」と述べた。通勤途中の会社員(40)からは「若いころはよくローンを利用したが、今後はあまり世話にならない人生を送りたい」との声が聞かれた。
三浦惺NTT社長「高速通信普及へ新組織」
ブロードバンド化、無線もライバルに
「世界ICT(情報通信技術)サミット2010」(日本経済新聞社・総務省主催)に参加したICT業界の首脳たちにインターネットやモバイル産業の将来像を聞いた。初回の三浦惺NTT社長は「ブロードバンド(高速大容量)サービス普及のために社長直轄組織を立ち上げる」ことを明らかにした。
――政府はブロードバンド推進政策を掲げるが現状はどうか。
「ブロードバンドの利用・活用にはパブリック(公的利用)とプライベート(個人利用)の両方がある。遅れているのは前者だ。電子政府や教育、医療の分野で規制緩和や仕様の統一を進め、ブロードバンド利用の壁を取り払うべきだ」
――光ファイバー通信回線の伸びは鈍っている。NTTとしてできることは。
「NTTグループをあげて光回線の普及を推進するため、社長直轄のブロードバンド推進本部を6月24日に設置することにした。NTT東西地域会社、NTTドコモ、NTTデータ、NTTコミュニケーションズの各グループ5社の副社長クラスをメンバーに加える」
「私がリーダーシップをとり、新たなサービスの開発や普及策を立案し実行する。電子政府の実現や、地方公共団体の利用促進にも積極的に協力していきたい」
◇ ◇ ◇
――ブロードバンド推進本部にはドコモも含まれるのか。
「当然だ。固定だけではブロードバンドのすべては担えない。どういう形でブロードバンドを普及させるのか、固定通信のユーザーだけでなく携帯の利用者の要望も吸い上げなければならない」
「NTTは映像サービスや、ベンチャー企業と協力しながらサービス開発に取り組んできた。光回線を使ったテレビ(IPTV)はようやく100万件を超えた。公的利用についても、政府任せにするつもりはない」
――司令塔をつくる狙いは。
「従来はドコモや東西会社が同じような製品をそれぞれ出すケースもあったが、今後は知恵を結集して固定通信と移動通信の融合の時代に備えなければならない」
「ブロードバンド化は、電話回線から光回線という1つの選択肢だけでなく、電話線から無線へという方向もある。固定回線はいらないという若い世代も増えてきている。利用者ニーズの変化を読み取りながら柔軟な政策を打ち出すべきだ」
――公的利用の促進にどう貢献していくのか。
「教育はブロードバンドの恩恵を最も受ける分野だが、その3分の1はブロードバンドが提供されていない。光回線のような超高速なブロードバンドでなくてもまかなえる部分がある。まずそこから手を付けなければならない」
「ブロードバンドの普及を広くとらえると、単なる回線の普及だけではない。使う側のITリテラシーの向上も重要なテーマだ。教育の現場や、IT特区に専門家を派遣して、リテラシー向上の相談に乗る取り組みも進める」
――光回線シェアは7割を超えるが、競争状況をどうみているか。
「NTTは赤字を覚悟で光回線の敷設につとめてきた。海外投資家からは『クレイジー』と言われてきたが、人後に落ちない努力と情熱を傾けてきた。従来、CATV会社や電力系通信事業者と競争してきたが、KDDIがCATV最大手のジュピターテレコムに資本参加したことで手ごわい勢力が誕生する」
「固定回線だけでなく、無線も有力なライバルだ。従来の無線LANや高速無線通信『WiMAX』に加え、年末からは最大スピードが光回線並みになる次世代携帯電話サービス『LTE』も始まる。利用者によりよいサービスを提供するための設備・サービスを含めた競争の土壌は整っている」
――政府ではNTTの光回線インフラを分離すべきだとの議論もある。
「NTTの組織を見直すことがブロードバンドの普及にプラスになるとは思わない。組織を分けることはいろいろな意味でイノベーションを阻害することになると考えている」
緊急特集
消費税10%、市場の見方(10/6/18)
菅直人首相が消費税率について「自民党が提案している10%を一つの参考にさせていただく」と発言し、株式市場でもにわかに将来の消費税増税への関心が高まってきた。「消費税10%」は自民党が提案しているもので、参院選の結果にかかわらず議論は続く可能性がありそう。市場関係者の見方をまとめた。質問は
(1)消費税増税の可能性・時期
(2)景気・株式相場への影響
(3)個別銘柄や業種への影響
「消費活性化で経済にプラス」
神山直樹・ドイツ証券チーフエクイティストラテジスト
(1)消費税の増税の実現性はかなり高くなっている。民主党も自民党も増税に前向きになっているうえ、世論調査でも増税に対する支持が高くなっている。ここまで条件がそろったことは過去ほとんど例がなく、実現性は相当高まっている。ただ正式に決まるにはかなり時間がかかる。まず税制調査会等で詳細を固めるのは非常に時間がかかる。さらに景気への悪影響を避けるため、国内総生産(GDP)など数値目標を立てて、景気が回復したときに増税するというような決め方もできるため、タイミングはかなり先ということしかわからない。
(2)増税は日本の経済成長にとってプラスだ。今は将来増税になるかもしれないという不安心理が強く、日本人は貯金を増やし、消費を手控えたりしている。増税が社会保障の持続性の高まりにつながると国民が考えれば、かえって個人消費の活性化につながる可能性がある。一方、短期的な景気については悪影響を与える可能性もあるが、そのときの景気の状況次第だ。株式相場にとっても同様にポジティブだ。社会保障に対する信頼感が増せば、消費面で好影響を与える。
(3)短期的には住宅や耐久消費財など高額品に対する駆け込み需要が強まり、その後冷え込むという形で需要の波が大きくなる。今後の設計次第で業種や個別銘柄への影響は変わる。例えば、福祉目的税のような特定目的税になった場合、福祉や医療関連銘柄にプラス。また衣料品や生活必需品が減免税率となった場合、低廉品にプラスで、高級品にマイナスになるだろう。(聞き手は土居倫之)
「企業間格差につながる可能性」
瀬川剛・みずほ証券エクイティストラテジスト
(1)以前は消費税の増税に反対する人が多かったが、今年春の各種の世論調査によると6割程度の回答者が増税を容認する姿勢を示した。国の長期債務は国内総生産(GDP)の1.6倍に膨らんでおり、今後5年間で倍になるという試算もあり、(増税は)やむを得ないと考えたのではないか。菅直人首相は最短で2012年秋にも消費税を引き上げると言っているが、ずれ込むのではないか。参議院選の結果次第では総選挙にもつれ込む可能性もあり、最低でも半年程度は遅れそうだ。
(2)1989年の消費税3%の導入や97年に5%に引き上げた際、その前年に高額商品の駆け込み需要が多くなった。一方で、反動による消費の落ち込みも大きかった。極端に減少した際のケアをどうするのかが重要だと思う。今回は5%から10%と大幅な引き上げになり、かつてとは比べられない駆け込み需要が出そうだ。未経験の反動減にも備えなければいけない。(消費税の引き上げ分)商品の価格が上昇するため、費用対効果を考えて、消費者はより質や中身を厳選するようになる。そうなれば、(業績や株価で)企業間の格差を広げることになるだろう。
(3)高額品の駆け込み需要の増加を考えると、住宅や住設、自動車、家電などの銘柄が注目だ。
モバイルに軸足移すスカイプ 市場争奪戦に名乗り
シンガポールでアジア最大級の通信関連イベント「CommunicASIA」が6月15~18日の日程で開催されている。日本からはNTTドコモが参加し、メーカーでは韓国サムスン電子や中国の華為技術(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE)が様々な端末を展示している。だが、会場で最も存在感を示していたのは、インターネット電話サービスの「Skype(スカイプ)」だった。
基調講演ではスカイプ・テクノロジーズのジョシ・シルバーマン最高経営責任者(CEO)がスカイプの現状や今後の戦略を語った。
2003年にサービスを開始したスカイプは現在、世界で5億6000万ユーザーを抱える。通信業界への影響度は年々高まり、国際電話の世界シェアは約12%、そのうち34%はビデオ通話によるものという。
スカイプは、ユーザー同士の音声通話やビデオ通話を無料で提供することでユーザーを増やしてきた。収益源はパソコンから一般の固定電話や携帯電話向けに発信する格安の有料通話で、09年の売上高は7億1600万ドルに上る。
モバイル重視をアピール
とはいえパソコン向けサービスだけでは、いずれ頭打ちになるのは目に見えている。米アップルやグーグルが携帯電話業界に進出してきたように、「スカイプもこの市場にターゲットを絞り始めた」とシルバーマンCEOは強調した。
実際、CommunicASIAの会場でも「Skype is Mobile」というキャッチコピーを掲げてモバイル重視をアピールし、記者向け説明会などでも携帯市場での事業展開について詳しく説明した。
スカイプは昨年からアップルのスマートフォン「iPhone」や音楽プレーヤー「iPod touch」向けにスカイプアプリを提供し、すでにiPhone、iPod touchユーザーの約15%がダウンロードしたという。ただ、これまでのiPhoneはシングルタスク処理で同時には1つのアプリしか動作しないため、スカイプアプリを常に起動させておかない限り確実に着信できず、快適とはほど遠かった。
しかし、6月24日に発売される新機種「iPhone4」に合わせてOSのバージョンが「iOS4」へと上がることで、「iPhone3GS」や第3世代のiPod touchでもマルチタスクが可能になる。他のアプリを使っている間もスカイプアプリを起動させておけば、いつでも着信可能で電話と同じように使えるようになる。
スカイプはiPhoneだけでなく「シンビアンOS」への対応も進めており、英ソニー・エリクソンが海外で販売している端末に採用している。さらに今年度中にはグーグルの「Android(アンドロイド)」やカナダRIMの「BlackBerry」といったプラットフォームに進出する計画もあるという。
通信事業者と組む動きも
無料・格安通話が売り物のスカイプは、通信事業者から見れば目障りな存在だ。実際、日本でも、パソコン向けの定額データ通信ではスカイプで通話できないように設定している通信事業者もある。
だが一方では、スカイプを積極的に取り込もうとする事業者も出てきた。いち早くスカイプと組んだ英国の「3」という携帯電話事業者の場合、スカイプを契約者増に結びつけ、スカイプ利用者の62%は新規契約という成果を得た。
しかも、スカイプ利用者は一般的なユーザーに比べて20%近くARPU(1人あたり月額利用料)が高いという。無料通話のスカイプ目当てで加入したが、実際はスカイプ以外の有料通話も一般ユーザーより17%も多く使っている。スカイプユーザーは携帯電話サービスを積極的に使う優良顧客でもあるのだ。
「3」の成功を見て、今年2月には米ベライゾン・ワイヤレスもスカイプと提携した。「3」やベライゾンに続く携帯電話事業者が日本からも出てくるか、今後に注目したい。
ビデオ通話ではアップルと競合
スカイプが急成長を期待するもう一つの市場がビデオ通話だ。5年後の15年には市場規模が現在の約30倍に拡大するとスカイプでは予想している。
携帯電話ではノキア(フィンランド)の「N900」がスカイプのビデオ通話に対応。テレビではパナソニックと提携して、薄型テレビ「VIERA」の一部機種でビデオ通話を楽しめるようにした。パソコン、モバイル、テレビと、デバイスの種類を問わずにビデオ通話は広がり出している。
ノキアの「N900」はスカイプのビデオ通話に対応している
ビデオ通話といえば、アップルがiOS4向けに「FaceTime」というサービスを発表したばかりだ。モバイル市場への本格展開を狙うスカイプにとってアップルは脅威となりはしないのだろうか。
スカイプのバイスプレジデントであるRuss Shaw氏は「FaceTimeは素晴らしい。しかし、iOS4はこれから出回るところであり、使える場所も無線LANエリアに限られ、ユーザー数は当分少ないはず。その点、スカイプはユーザーも多く、無線LANだけでなく3G(第3世代携帯電話)でも使える。優位性は充分にある」と語る。
従来の携帯電話は通信事業者がサービスやコンテンツを主導してきたが、iPhoneをはじめとするスマートフォンでは代わってアプリが力を持つようになった。スカイプが音声通話やビデオ通話といった通信サービスにまでアプリの勢力を広げようとすることで、携帯電話市場の勢力争いは一段と混沌としそうだ。
再編「スマートフォン」照準
富士通・東芝が携帯事業統合発表
通信会社から「自立」探る
富士通と東芝は17日、携帯電話機事業の統合で基本合意したと正式に発表した。10月1日をめどに新会社を設立して東芝の携帯電話事業を移管、富士通が7~8割出資するとみられる。統合でスマートフォン)などの開発を強化する。1日にはNECなどの統合新社も発足した。相次ぐ再編でメーカーは通信会社主導の開発から「自立」を模索、世界市場を目指す。
新会社には東芝の携帯電話部門の約360人が移る。両社の製品ブランドは当面残す。両社が事業統合で開発を強化するのはスマートフォンだ。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」人気などで拡大する市場に布石を打つ。
東芝は国内のほか欧州でスマートフォンを展開。富士通も開発を進めている。さらに東芝の液晶と富士通のIT(情報技術)、小型化技術を持ち寄り、新型のスマートフォンの開発にも取り組む。部品の調達や生産体制の共通化で製造コスト削減にもつなげ、世界市場で販売する計画だ。
また、富士通の携帯電話供給先はNTTドコモだけ。東芝はau(KDDI)が主力だが、統合によりソフトバンクモバイルも含め各社に供給する道が開ける。
国内では1機種100億円ともいわれる携帯電話の開発費の一部を通信会社が援助し、全量を買い取る。このため携帯電話は通信会社の製品となっている。通信会社の事情に合わせてメーカーは多様な機能を追加。商品構成や開発スケジュールにまで通信会社の意向が働いてきた。
だが、アイフォーンなどの登場で携帯端末自体に魅力があれば、通信会社の意向にかかわりなく市場に受け入れられることが明らかになった。
「販売奨励金」を通信各社が抑制した結果、見かけ上の端末価格が上昇。2009年度の携帯電話出荷はピーク時の4割減となる約3100万台まで縮小。メーカーの事業環境は悪化した。通信会社丸抱えの開発構造は転換を迫られている。
日本市場は世界の約3%の市場にとどまっており、UBS証券の乾牧夫アナリストは「再編は遅すぎたくらいだ」と指摘する。
総務省は携帯電話端末を一つの通信会社でしか使えないようにする「SIMロック」を11年以降解除する方針。消費者の選択肢が増し、端末開発で独自性を発揮できるチャンスはある。
ただ、両社の総出荷数は年約700万台。2億台以上を世界で販売するフィンランドのノキアや韓国のサムスン電子とコスト競争力で肩を並べるのは容易ではない。
富士通 成長分野に力 東芝 「選択」を加速
「成長のタネ」を求めた富士通、「選択」を進めた東芝――。両社が携帯電話機事業の統合に動いた理由をまとめると、こうなる。
東芝は西田厚聡会長の社長時代から「選択と集中」を掲げ、社会インフラと半導体を2本柱とする方針を鮮明にしてきた。米ウエスチングハウス買収による原子力事業の強化、NAND型フラッシュメモリーの積極投資はその代表例だ。
一方で音楽など非中核事業は売却。収益構造は改善されつつあったが、2008年秋以降の世界同時不況で09年3月期は最終赤字。これで選択と集中をさらに加速する必要に迫られた。その1つが携帯電話事業だ。
09年5月に国内生産から撤退、海外企業への生産委託を決めたが、これだけでは再建は困難。国内メーカー各社に内々に打診を続け、手を挙げたのが富士通だ。
「今後は成長と利益の両面を追う、ポジティブな構造改革を進める」。富士通の山本正已社長はこう話す。ネットワーク経由でソフトを提供する「クラウドコンピューティング」を今後の成長事業とする富士通にとって、携帯電話機は重要なキーデバイス。万人が持つ情報端末で、あらゆる情報・データの「出入り口」となるためだ。
同社は09年に、ハードディスク駆動装置(HDD)事業を東芝に譲渡、先端半導体の生産を台湾企業に委託するなど不採算事業の改革を進めてきた。懸案事業の整理に一定のめどがついたことから、攻めの経営に転換するタネを求めており、東芝の選択のタイミングと一致した。
携帯電話によって消費者との接点を広げることが、企業や消費者を結ぶクラウドサービスで攻勢をかけるうえで不可欠と富士通は見ている。
任天堂「Wii」は依然ライバル製品に対抗できる=岩田社長
[ロサンゼルス 16日 ロイター] 任天堂は、据置型ゲーム機「Wii(ウィー)」について、ライバル企業の米マイクロソフトやソニーに依然として対抗できると確信しており、刷新の必要はないとの見解を示した。
岩田聡社長が、当地で開催中の世界最大規模のゲーム見本市「E3」で語った。
同社長は、販売の伸びは減速しているものの、Wiiにはまだ寿命があり、「メトロイド」や「ドンキーコング」、「ウィーパーティー」などの人気ソフトの最新版がWiiの販売を支えるとの見方を示した。
ただ同社は、15日に発表した3D(3次元)対応の新型携帯ゲーム機「ニンテンドーDS3」の場合と同様に、第三者のゲーム開発者を早期に引き入れる重要性についても強く認識している。
岩田社長は、通訳を通じて、Wiiコンソールをすぐに刷新する必要はないとの考えを示した。その上で、当然、今後ある時点で必要になるだろうと加えた。
いつ必要になるかに関しては現時点では分からないとした。
同社長はまた、自社株買い戻しを検討していることを明らかにしたが、特に必要性が生じた場合に限り実施する方針を示した。
長引く収縮、けん引役不在
あなたのキャッシング枠を60万円から40万円に引き下げます――。金沢市に住む30代の男性会社員は最近、大手クレジットカード会社から一通のはがきを受け取った。すでにキャッシング残高は55万円ある。超過分をすぐに返済する必要はないが、新たな融資はしないという“通告”だった。
借り入れ把握
改正貸金業法の段階的な施行のなかで、個人の借り入れ状況を総合的に把握する信用情報機関制度が先行導入された。カード会社は情報機関を通じて、この男性が複数の貸金業者からかなりの金額のお金を借りているのを把握し、キャッシング枠を狭めることにした。18日の改正法の全面実施で個人の借入可能額が「年収の3分の1」までに抑制されるのを先取りして手を打った。
カード会社にとって、年率十数%の金利収入があがるキャッシング事業は収益の柱だった。キャッシング枠を甘く設定して、顧客に積極利用を促してきたが、法改正で本業のショッピング事業への回帰を迫られている。
収縮がより顕著なのは、消費者金融専業の武富士など。武富士の貸付残高は最盛期の2001年度には1兆7000億円にのぼったが、直近では6000億円に縮小。5月の新規顧客の借り入れの申し込みに応えた割合(成約率)はわずか9%だった。同社は月間の貸出実行額を2億円に絞る方針で事実上、新規貸し出しを停止した状態に近い。
銀行に期待も
改正法による規制強化で貸し出しを増やしにくくなる以前に「過払い金」の返還問題が重荷になっていたことから、貸し出し原資の調達が厳しくなっている。顧客から回収した資金を返済に回し“自己防衛”を優先している。武富士の清川昭社長は「顧客の借り入れニーズはあるが、今年は貸し出しがほとんどできない」と話す。
クレジットカード・信販会社の09年度のキャッシング取扱高は4兆円弱と前年度比21%減った。武富士、アコム、プロミス、アイフルの大手4社の09年度の貸付残高は前年度比20%減の3兆円弱、直近のピークの02年度比では半減した。収縮はまだ続くとみられている。
消費者金融の金利帯別残高を見ると、年率20%前後に集中しているのがわかる。貸し過ぎと批判された貸金業者の姿勢を是正し、高すぎる金利のローンを減らすのは法改正の狙いでもある。
ただ、適切な金利で必要な資金を借りられる個人の無担保ローン市場がなぜ育たなかったのか。金融庁の検討部会は4月「銀行・信用金庫などが消費者向け貸し付けに必ずしも十分に取り組んでいない」と、けん引役の不在を指摘した。
銀行部門の個人向け無担保ローンの残高は4兆円と融資総額の1%に満たない。住宅ローンを除けば、銀行は個人向け融資に取り組んでこなかったのが実情だ。04年に三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループは消費者金融大手と資本提携。ノウハウ吸収を狙ったが、貸金業者の業績悪化でむしろ経営支援に追われている。
三菱東京UFJ銀行の柳井隆博・執行役員リテール企画部長は「個人向けローン市場は安定的に需要がある分野で、しぼむことはない」と語る。そのニーズにどれだけ応えられるか。銀行の役割も試される。
鬼門の消費税 歴代内閣 苦戦の歴史
消費税が政治テーマとして初めてクローズアップされたのは「一般消費税」の導入問題だ。石油ショックによる景気低迷で赤字国債を発行、財政危機が深刻化したため、自民党は1978年12月、一般消費税を「80年度中に実現できるよう準備を進める」と税制改正大綱に明記した。世論の反発で大平正芳首相は軌道修正を試みたが、直後の衆院選で過半数割れの大敗を喫した。
86年の衆参同日選では300議席の地滑り的大勝を収めた中曽根康弘内閣が税率5%の間接税導入を盛り込んだ売上税法案を提出。ただ、中曽根首相が選挙戦で「大型間接税をやる考えはない」と掲げていたため「公約違反」との批判があがり、結局、売上税法案は廃案となった。
この後の竹下登首相が消費税法案を提出し、野党側の反対を押し切り、88年12月に消費税法は成立。89年4月に税率3%で消費税が導入された。ただ竹下首相の退陣後、後任の宇野宗佑首相は自身のスキャンダルや、消費税導入のあおりを受けた。89年の参院選で自民党は惨敗し参院で単独過半数を割り込んだ。
非自民連立政権として誕生した細川護熙首相は94年2月に突如、消費税を税率7%の国民福祉税に衣替えする構想を表明。ただ政権内から反対の大合唱が起こり、直後に撤回。細川首相の退陣後、村山富市首相率いる社会党が自民党と組んで、消費税率5%への引き上げで合意し、94年に関連法を成立させた。ただ、社会党は社民党として臨んだ96年10月の衆院選で議席が半減。税率引き上げを実施した橋本龍太郎首相も98年の参院選で大敗し、退陣した。
日経社説
首相の消費税発言を機に論争を深めよ
7月の参院選に向けた各党のマニフェスト(政権公約)がほぼ出そろった。日本の閉そく感をいかに打破するかが課題となるなか、成長戦略と財政再建の兼ね合いなどが争点となる。将来への責任から逃げない活発な政策論争に期待したい。
菅直人首相(民主党代表)は17日、公約発表の記者会見で消費税の見直しに触れ「2010年度内に、あるべき税率や(低所得者ほど負担感が重い)逆進性対策を含む改革案を取りまとめたい」と語った。
将来の責任から逃げず
超党派での協議を重視する一方、合意に至らなければ民主党の責任で結論を得る考えも表明した。増税前に次期衆院選で有権者に信を問う意向も示し、税率に関しては自民党が提案している当面10%への引き上げを参考にする考えを明らかにした。
消費税を含めた税制の抜本改革は自民党政権が先送りを続けてきた難しい課題である。参院選の前に増税への基本的な考え方を表明した首相の決断を歓迎したい。
ただ首相が目安とした税率10%の根拠は不明確である。これをきっかけに税制や、年金、医療など社会保障制度の将来像をめぐる与野党の議論が加速することを期待する。
民主党は今回のマニフェストで、首相が掲げる「強い経済、強い財政、強い社会保障」を柱に据えた。財源の制約を考えて、子ども手当の満額現金支給方針を見直すなど、実現可能性や政策の実効性に重点を置いているのは評価できよう。
しかし様々な公約から、実施の時期や規模に関する数値目標が消えたのは残念であり、迫力を欠く印象はぬぐえない。
法人税実効税率の軽減や規制改革、規制や税制の特例措置を適用する総合特区の活用にも言及した。医療や介護、農業、環境など成長分野を伸ばし、今後10年間の平均で名目3%成長を目指す。日銀との協力によるデフレ克服にも意欲を示した。
これまで民主党の弱点とされてきた経済活性化策を重視した点は評価できる。財政や社会保障の安定には何より着実な経済成長が大前提となる。ただ、法人税実効税率引き下げの幅や実施時期、規制緩和の対象などには具体的に言及していない。
「新規政策の財源は既存予算の削減または収入増でまかなう」という原則を打ち出した点は前進だ。国債費を除く歳出と国債発行分以外の歳入とのバランスを示す基礎的財政収支に関しては「20年度までに黒字化を達成する」とし、長期債務の膨張に歯止めをかける考えを示した。
税制改革についてマニフェストは「早期に結論を得ることを目指して、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始する」と書くのにとどめた。首相は消費税増税案を今年度中に出すと一歩、踏み込んだが、増収分を何にどう使うのかなどはまだ明らかではない。
社会保障予算の膨張に対して消費税による財源の確保が避けられない情勢だが、民主党の社会保障改革の方向は見えてこない。最低保障年金の導入など同党が提唱してきた年金制度の改革は鳩山前政権の下で具体化の作業が進まなかった。
「強い社会保障」は給付の積み上げではなく、持続可能な制度とすることに重点をおくべきだ。少子高齢化が進むため社会保障関係費は年1兆円ずつ増える。ここを抑制しない限り、年金の持続性も財政の健全化もおぼつかない。
税制は超党派で協議を
一方、自民党も17日に参院選のマニフェストを公表し、消費税率引き上げの方向を示したうえで「超党派による円卓会議等を設置し、国民的な合意形成を図る」と明記した。また法人税の実効税率を今の約40%から20%台に下げる方針を示した。
消費税率の引き上げやその前提となる社会保障改革、法人税の軽減は、いずれにせよ実施せざるえない政策だ。また政権が再び代わっても簡単には変えられないものであり、超党派での協議は欠かせない。
各党の公約を見ると、国会関連などの経費節減も一つの争点となっている。民主党は「参院定数の40削減、衆院の比例代表の定数の80削減」を掲げた。自民党は国会議員の定数について「3年後に1割、6年後に3割削減」と打ち出した。新党改革、みんなの党も大幅な定数削減をうたっている。
公明党は社会保障の充実や雇用の保障などによる「新しい福祉」を提唱。このほか共産党、社民党、国民新党、たちあがれ日本なども独自色のある政策を打ち出している。
参院選は7月11日の投票日に向けた長丁場となる。総花的な公約ではなく優先順位や財源の手当てを明確にした実のある論争に期待したい。
シンガポールでアジア最大級の通信関連イベント「CommunicASIA」が6月15~18日の日程で開催されている。日本からはNTTドコモが参加し、メーカーでは韓国サムスン電子や中国の華為技術(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE)が様々な端末を展示している。だが、会場で最も存在感を示していたのは、インターネット電話サービスの「Skype(スカイプ)」だった。
基調講演ではスカイプ・テクノロジーズのジョシ・シルバーマン最高経営責任者(CEO)がスカイプの現状や今後の戦略を語った。
2003年にサービスを開始したスカイプは現在、世界で5億6000万ユーザーを抱える。通信業界への影響度は年々高まり、国際電話の世界シェアは約12%、そのうち34%はビデオ通話によるものという。
スカイプは、ユーザー同士の音声通話やビデオ通話を無料で提供することでユーザーを増やしてきた。収益源はパソコンから一般の固定電話や携帯電話向けに発信する格安の有料通話で、09年の売上高は7億1600万ドルに上る。
モバイル重視をアピール
とはいえパソコン向けサービスだけでは、いずれ頭打ちになるのは目に見えている。米アップルやグーグルが携帯電話業界に進出してきたように、「スカイプもこの市場にターゲットを絞り始めた」とシルバーマンCEOは強調した。
実際、CommunicASIAの会場でも「Skype is Mobile」というキャッチコピーを掲げてモバイル重視をアピールし、記者向け説明会などでも携帯市場での事業展開について詳しく説明した。
スカイプは昨年からアップルのスマートフォン「iPhone」や音楽プレーヤー「iPod touch」向けにスカイプアプリを提供し、すでにiPhone、iPod touchユーザーの約15%がダウンロードしたという。ただ、これまでのiPhoneはシングルタスク処理で同時には1つのアプリしか動作しないため、スカイプアプリを常に起動させておかない限り確実に着信できず、快適とはほど遠かった。
しかし、6月24日に発売される新機種「iPhone4」に合わせてOSのバージョンが「iOS4」へと上がることで、「iPhone3GS」や第3世代のiPod touchでもマルチタスクが可能になる。他のアプリを使っている間もスカイプアプリを起動させておけば、いつでも着信可能で電話と同じように使えるようになる。
スカイプはiPhoneだけでなく「シンビアンOS」への対応も進めており、英ソニー・エリクソンが海外で販売している端末に採用している。さらに今年度中にはグーグルの「Android(アンドロイド)」やカナダRIMの「BlackBerry」といったプラットフォームに進出する計画もあるという。
通信事業者と組む動きも
無料・格安通話が売り物のスカイプは、通信事業者から見れば目障りな存在だ。実際、日本でも、パソコン向けの定額データ通信ではスカイプで通話できないように設定している通信事業者もある。
だが一方では、スカイプを積極的に取り込もうとする事業者も出てきた。いち早くスカイプと組んだ英国の「3」という携帯電話事業者の場合、スカイプを契約者増に結びつけ、スカイプ利用者の62%は新規契約という成果を得た。
しかも、スカイプ利用者は一般的なユーザーに比べて20%近くARPU(1人あたり月額利用料)が高いという。無料通話のスカイプ目当てで加入したが、実際はスカイプ以外の有料通話も一般ユーザーより17%も多く使っている。スカイプユーザーは携帯電話サービスを積極的に使う優良顧客でもあるのだ。
「3」の成功を見て、今年2月には米ベライゾン・ワイヤレスもスカイプと提携した。「3」やベライゾンに続く携帯電話事業者が日本からも出てくるか、今後に注目したい。
ビデオ通話ではアップルと競合
スカイプが急成長を期待するもう一つの市場がビデオ通話だ。5年後の15年には市場規模が現在の約30倍に拡大するとスカイプでは予想している。
携帯電話ではノキア(フィンランド)の「N900」がスカイプのビデオ通話に対応。テレビではパナソニックと提携して、薄型テレビ「VIERA」の一部機種でビデオ通話を楽しめるようにした。パソコン、モバイル、テレビと、デバイスの種類を問わずにビデオ通話は広がり出している。
ノキアの「N900」はスカイプのビデオ通話に対応している
ビデオ通話といえば、アップルがiOS4向けに「FaceTime」というサービスを発表したばかりだ。モバイル市場への本格展開を狙うスカイプにとってアップルは脅威となりはしないのだろうか。
スカイプのバイスプレジデントであるRuss Shaw氏は「FaceTimeは素晴らしい。しかし、iOS4はこれから出回るところであり、使える場所も無線LANエリアに限られ、ユーザー数は当分少ないはず。その点、スカイプはユーザーも多く、無線LANだけでなく3G(第3世代携帯電話)でも使える。優位性は充分にある」と語る。
従来の携帯電話は通信事業者がサービスやコンテンツを主導してきたが、iPhoneをはじめとするスマートフォンでは代わってアプリが力を持つようになった。スカイプが音声通話やビデオ通話といった通信サービスにまでアプリの勢力を広げようとすることで、携帯電話市場の勢力争いは一段と混沌としそうだ。
再編「スマートフォン」照準
富士通・東芝が携帯事業統合発表
通信会社から「自立」探る
富士通と東芝は17日、携帯電話機事業の統合で基本合意したと正式に発表した。10月1日をめどに新会社を設立して東芝の携帯電話事業を移管、富士通が7~8割出資するとみられる。統合でスマートフォン)などの開発を強化する。1日にはNECなどの統合新社も発足した。相次ぐ再編でメーカーは通信会社主導の開発から「自立」を模索、世界市場を目指す。
新会社には東芝の携帯電話部門の約360人が移る。両社の製品ブランドは当面残す。両社が事業統合で開発を強化するのはスマートフォンだ。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」人気などで拡大する市場に布石を打つ。
東芝は国内のほか欧州でスマートフォンを展開。富士通も開発を進めている。さらに東芝の液晶と富士通のIT(情報技術)、小型化技術を持ち寄り、新型のスマートフォンの開発にも取り組む。部品の調達や生産体制の共通化で製造コスト削減にもつなげ、世界市場で販売する計画だ。
また、富士通の携帯電話供給先はNTTドコモだけ。東芝はau(KDDI)が主力だが、統合によりソフトバンクモバイルも含め各社に供給する道が開ける。
国内では1機種100億円ともいわれる携帯電話の開発費の一部を通信会社が援助し、全量を買い取る。このため携帯電話は通信会社の製品となっている。通信会社の事情に合わせてメーカーは多様な機能を追加。商品構成や開発スケジュールにまで通信会社の意向が働いてきた。
だが、アイフォーンなどの登場で携帯端末自体に魅力があれば、通信会社の意向にかかわりなく市場に受け入れられることが明らかになった。
「販売奨励金」を通信各社が抑制した結果、見かけ上の端末価格が上昇。2009年度の携帯電話出荷はピーク時の4割減となる約3100万台まで縮小。メーカーの事業環境は悪化した。通信会社丸抱えの開発構造は転換を迫られている。
日本市場は世界の約3%の市場にとどまっており、UBS証券の乾牧夫アナリストは「再編は遅すぎたくらいだ」と指摘する。
総務省は携帯電話端末を一つの通信会社でしか使えないようにする「SIMロック」を11年以降解除する方針。消費者の選択肢が増し、端末開発で独自性を発揮できるチャンスはある。
ただ、両社の総出荷数は年約700万台。2億台以上を世界で販売するフィンランドのノキアや韓国のサムスン電子とコスト競争力で肩を並べるのは容易ではない。
富士通 成長分野に力 東芝 「選択」を加速
「成長のタネ」を求めた富士通、「選択」を進めた東芝――。両社が携帯電話機事業の統合に動いた理由をまとめると、こうなる。
東芝は西田厚聡会長の社長時代から「選択と集中」を掲げ、社会インフラと半導体を2本柱とする方針を鮮明にしてきた。米ウエスチングハウス買収による原子力事業の強化、NAND型フラッシュメモリーの積極投資はその代表例だ。
一方で音楽など非中核事業は売却。収益構造は改善されつつあったが、2008年秋以降の世界同時不況で09年3月期は最終赤字。これで選択と集中をさらに加速する必要に迫られた。その1つが携帯電話事業だ。
09年5月に国内生産から撤退、海外企業への生産委託を決めたが、これだけでは再建は困難。国内メーカー各社に内々に打診を続け、手を挙げたのが富士通だ。
「今後は成長と利益の両面を追う、ポジティブな構造改革を進める」。富士通の山本正已社長はこう話す。ネットワーク経由でソフトを提供する「クラウドコンピューティング」を今後の成長事業とする富士通にとって、携帯電話機は重要なキーデバイス。万人が持つ情報端末で、あらゆる情報・データの「出入り口」となるためだ。
同社は09年に、ハードディスク駆動装置(HDD)事業を東芝に譲渡、先端半導体の生産を台湾企業に委託するなど不採算事業の改革を進めてきた。懸案事業の整理に一定のめどがついたことから、攻めの経営に転換するタネを求めており、東芝の選択のタイミングと一致した。
携帯電話によって消費者との接点を広げることが、企業や消費者を結ぶクラウドサービスで攻勢をかけるうえで不可欠と富士通は見ている。
任天堂「Wii」は依然ライバル製品に対抗できる=岩田社長
[ロサンゼルス 16日 ロイター] 任天堂は、据置型ゲーム機「Wii(ウィー)」について、ライバル企業の米マイクロソフトやソニーに依然として対抗できると確信しており、刷新の必要はないとの見解を示した。
岩田聡社長が、当地で開催中の世界最大規模のゲーム見本市「E3」で語った。
同社長は、販売の伸びは減速しているものの、Wiiにはまだ寿命があり、「メトロイド」や「ドンキーコング」、「ウィーパーティー」などの人気ソフトの最新版がWiiの販売を支えるとの見方を示した。
ただ同社は、15日に発表した3D(3次元)対応の新型携帯ゲーム機「ニンテンドーDS3」の場合と同様に、第三者のゲーム開発者を早期に引き入れる重要性についても強く認識している。
岩田社長は、通訳を通じて、Wiiコンソールをすぐに刷新する必要はないとの考えを示した。その上で、当然、今後ある時点で必要になるだろうと加えた。
いつ必要になるかに関しては現時点では分からないとした。
同社長はまた、自社株買い戻しを検討していることを明らかにしたが、特に必要性が生じた場合に限り実施する方針を示した。
長引く収縮、けん引役不在
あなたのキャッシング枠を60万円から40万円に引き下げます――。金沢市に住む30代の男性会社員は最近、大手クレジットカード会社から一通のはがきを受け取った。すでにキャッシング残高は55万円ある。超過分をすぐに返済する必要はないが、新たな融資はしないという“通告”だった。
借り入れ把握
改正貸金業法の段階的な施行のなかで、個人の借り入れ状況を総合的に把握する信用情報機関制度が先行導入された。カード会社は情報機関を通じて、この男性が複数の貸金業者からかなりの金額のお金を借りているのを把握し、キャッシング枠を狭めることにした。18日の改正法の全面実施で個人の借入可能額が「年収の3分の1」までに抑制されるのを先取りして手を打った。
カード会社にとって、年率十数%の金利収入があがるキャッシング事業は収益の柱だった。キャッシング枠を甘く設定して、顧客に積極利用を促してきたが、法改正で本業のショッピング事業への回帰を迫られている。
収縮がより顕著なのは、消費者金融専業の武富士など。武富士の貸付残高は最盛期の2001年度には1兆7000億円にのぼったが、直近では6000億円に縮小。5月の新規顧客の借り入れの申し込みに応えた割合(成約率)はわずか9%だった。同社は月間の貸出実行額を2億円に絞る方針で事実上、新規貸し出しを停止した状態に近い。
銀行に期待も
改正法による規制強化で貸し出しを増やしにくくなる以前に「過払い金」の返還問題が重荷になっていたことから、貸し出し原資の調達が厳しくなっている。顧客から回収した資金を返済に回し“自己防衛”を優先している。武富士の清川昭社長は「顧客の借り入れニーズはあるが、今年は貸し出しがほとんどできない」と話す。
クレジットカード・信販会社の09年度のキャッシング取扱高は4兆円弱と前年度比21%減った。武富士、アコム、プロミス、アイフルの大手4社の09年度の貸付残高は前年度比20%減の3兆円弱、直近のピークの02年度比では半減した。収縮はまだ続くとみられている。
消費者金融の金利帯別残高を見ると、年率20%前後に集中しているのがわかる。貸し過ぎと批判された貸金業者の姿勢を是正し、高すぎる金利のローンを減らすのは法改正の狙いでもある。
ただ、適切な金利で必要な資金を借りられる個人の無担保ローン市場がなぜ育たなかったのか。金融庁の検討部会は4月「銀行・信用金庫などが消費者向け貸し付けに必ずしも十分に取り組んでいない」と、けん引役の不在を指摘した。
銀行部門の個人向け無担保ローンの残高は4兆円と融資総額の1%に満たない。住宅ローンを除けば、銀行は個人向け融資に取り組んでこなかったのが実情だ。04年に三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループは消費者金融大手と資本提携。ノウハウ吸収を狙ったが、貸金業者の業績悪化でむしろ経営支援に追われている。
三菱東京UFJ銀行の柳井隆博・執行役員リテール企画部長は「個人向けローン市場は安定的に需要がある分野で、しぼむことはない」と語る。そのニーズにどれだけ応えられるか。銀行の役割も試される。
鬼門の消費税 歴代内閣 苦戦の歴史
消費税が政治テーマとして初めてクローズアップされたのは「一般消費税」の導入問題だ。石油ショックによる景気低迷で赤字国債を発行、財政危機が深刻化したため、自民党は1978年12月、一般消費税を「80年度中に実現できるよう準備を進める」と税制改正大綱に明記した。世論の反発で大平正芳首相は軌道修正を試みたが、直後の衆院選で過半数割れの大敗を喫した。
86年の衆参同日選では300議席の地滑り的大勝を収めた中曽根康弘内閣が税率5%の間接税導入を盛り込んだ売上税法案を提出。ただ、中曽根首相が選挙戦で「大型間接税をやる考えはない」と掲げていたため「公約違反」との批判があがり、結局、売上税法案は廃案となった。
この後の竹下登首相が消費税法案を提出し、野党側の反対を押し切り、88年12月に消費税法は成立。89年4月に税率3%で消費税が導入された。ただ竹下首相の退陣後、後任の宇野宗佑首相は自身のスキャンダルや、消費税導入のあおりを受けた。89年の参院選で自民党は惨敗し参院で単独過半数を割り込んだ。
非自民連立政権として誕生した細川護熙首相は94年2月に突如、消費税を税率7%の国民福祉税に衣替えする構想を表明。ただ政権内から反対の大合唱が起こり、直後に撤回。細川首相の退陣後、村山富市首相率いる社会党が自民党と組んで、消費税率5%への引き上げで合意し、94年に関連法を成立させた。ただ、社会党は社民党として臨んだ96年10月の衆院選で議席が半減。税率引き上げを実施した橋本龍太郎首相も98年の参院選で大敗し、退陣した。
日経社説
首相の消費税発言を機に論争を深めよ
7月の参院選に向けた各党のマニフェスト(政権公約)がほぼ出そろった。日本の閉そく感をいかに打破するかが課題となるなか、成長戦略と財政再建の兼ね合いなどが争点となる。将来への責任から逃げない活発な政策論争に期待したい。
菅直人首相(民主党代表)は17日、公約発表の記者会見で消費税の見直しに触れ「2010年度内に、あるべき税率や(低所得者ほど負担感が重い)逆進性対策を含む改革案を取りまとめたい」と語った。
将来の責任から逃げず
超党派での協議を重視する一方、合意に至らなければ民主党の責任で結論を得る考えも表明した。増税前に次期衆院選で有権者に信を問う意向も示し、税率に関しては自民党が提案している当面10%への引き上げを参考にする考えを明らかにした。
消費税を含めた税制の抜本改革は自民党政権が先送りを続けてきた難しい課題である。参院選の前に増税への基本的な考え方を表明した首相の決断を歓迎したい。
ただ首相が目安とした税率10%の根拠は不明確である。これをきっかけに税制や、年金、医療など社会保障制度の将来像をめぐる与野党の議論が加速することを期待する。
民主党は今回のマニフェストで、首相が掲げる「強い経済、強い財政、強い社会保障」を柱に据えた。財源の制約を考えて、子ども手当の満額現金支給方針を見直すなど、実現可能性や政策の実効性に重点を置いているのは評価できよう。
しかし様々な公約から、実施の時期や規模に関する数値目標が消えたのは残念であり、迫力を欠く印象はぬぐえない。
法人税実効税率の軽減や規制改革、規制や税制の特例措置を適用する総合特区の活用にも言及した。医療や介護、農業、環境など成長分野を伸ばし、今後10年間の平均で名目3%成長を目指す。日銀との協力によるデフレ克服にも意欲を示した。
これまで民主党の弱点とされてきた経済活性化策を重視した点は評価できる。財政や社会保障の安定には何より着実な経済成長が大前提となる。ただ、法人税実効税率引き下げの幅や実施時期、規制緩和の対象などには具体的に言及していない。
「新規政策の財源は既存予算の削減または収入増でまかなう」という原則を打ち出した点は前進だ。国債費を除く歳出と国債発行分以外の歳入とのバランスを示す基礎的財政収支に関しては「20年度までに黒字化を達成する」とし、長期債務の膨張に歯止めをかける考えを示した。
税制改革についてマニフェストは「早期に結論を得ることを目指して、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始する」と書くのにとどめた。首相は消費税増税案を今年度中に出すと一歩、踏み込んだが、増収分を何にどう使うのかなどはまだ明らかではない。
社会保障予算の膨張に対して消費税による財源の確保が避けられない情勢だが、民主党の社会保障改革の方向は見えてこない。最低保障年金の導入など同党が提唱してきた年金制度の改革は鳩山前政権の下で具体化の作業が進まなかった。
「強い社会保障」は給付の積み上げではなく、持続可能な制度とすることに重点をおくべきだ。少子高齢化が進むため社会保障関係費は年1兆円ずつ増える。ここを抑制しない限り、年金の持続性も財政の健全化もおぼつかない。
税制は超党派で協議を
一方、自民党も17日に参院選のマニフェストを公表し、消費税率引き上げの方向を示したうえで「超党派による円卓会議等を設置し、国民的な合意形成を図る」と明記した。また法人税の実効税率を今の約40%から20%台に下げる方針を示した。
消費税率の引き上げやその前提となる社会保障改革、法人税の軽減は、いずれにせよ実施せざるえない政策だ。また政権が再び代わっても簡単には変えられないものであり、超党派での協議は欠かせない。
各党の公約を見ると、国会関連などの経費節減も一つの争点となっている。民主党は「参院定数の40削減、衆院の比例代表の定数の80削減」を掲げた。自民党は国会議員の定数について「3年後に1割、6年後に3割削減」と打ち出した。新党改革、みんなの党も大幅な定数削減をうたっている。
公明党は社会保障の充実や雇用の保障などによる「新しい福祉」を提唱。このほか共産党、社民党、国民新党、たちあがれ日本なども独自色のある政策を打ち出している。
参院選は7月11日の投票日に向けた長丁場となる。総花的な公約ではなく優先順位や財源の手当てを明確にした実のある論争に期待したい。