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部品メーカーにも愛されるアップル
米アップルの快進撃が続いている。4月発売の多機能携帯端末「iPad)」を80日で300万台売り、日本で発売の高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)4」も前機種の10倍以上の予約を集めて好調に滑り出した。強さが際立つアップルだが、その陰で浮かび上がるのは部品メーカーとの蜜月関係だ。
6月24日。iPhone4を買い求めるファンが早朝から東京の表参道や銀座に計1000人近く集まった。ソフトバンク表参道店には孫正義・ソフトバンク社長が訪れ、一番乗りの顧客を祝福するおなじみの光景も展開された。
人気は数字にも表れている。アップルは2010年1~3月期に、iPhone3GSを全世界で875万台売った。仮にこのペースでiPhone4が販売されれば、iPadとiPhone4の2製品で、四半期1000万台超えが現実となる。
空前の出荷規模と並行して、アップル向け電子部品ビジネスも激しさを増す。その中で後れを取る日本メーカー。特にディスプレーや半導体など、比較的サイズが大きな部品で顕著だ。
一例が米調査会社のアイサプライが4月に発表したiPad分解リポート。主要14部品の大半を韓国や台湾のメーカーで占めた。日本メーカーで目に付いたのはバッテリーを供給するTDK子会社の香港アンプレックステクノロジーくらいだ。
“日の丸部品”の強みは、表面実装型の小型コンデンサーや小型インダクター、水晶発振子、コネクターなどの小型分野。いったん製品に採用されると、供給能力がカギを握るため、部品メーカーが絞られる。だが日本メーカーの存在感が薄い理由は別のところにもある。
セットメーカーが部品を調達する場合の基本は、同一仕様の製品を2社以上に発注してリスクの分散やコストダウンを図る「複数購買」だ。アップルも例外ではなく、複数の企業が供給可能な汎用の電子部品では中国や台湾企業の製品を多く採用している。
だがアップルは特定企業しか供給できない部品の採用にも積極的な一面を持つ。「価格より機能や性能を重視する姿勢がある。昔からそうだが最近は拍車がかかってきた」と、複数の国内電子部品メーカーの技術者が明かす。
外形が0.5ミリメートル四方未満の超小型品、高さが1ミリメートル以下の低背品、電極の間隔が0.5ミリメートルを切る狭ピッチのコネクター……。これらは今でも世界先端の日本製部品だ。「高精度や超小型では台湾、中国、韓国より一日の長がある」と国内コネクター・メーカーの技術者も自負する。
アップルは、こうした部品を採用する際、部品メーカーに過大なコストダウンを要求しない。ある国内部品メーカーの技術者は、「以前、当社しか作れない部品をアップルが採用した際、ほぼこちらの言い値で買ってくれた。供給量が多く生産は大変だったが、他社を後回しにしてもアップル向けを優先した」と言う。
電子部品業界に詳しい三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石野雅彦シニアアナリストは、こうした違いが、国内の電子機器メーカーの競争力をそぐ結果になると心配する。「国内メーカーはアップルと対照的に部品の優劣に関係なく、一律に値引きや過剰な品質を要求する傾向がある。結果的に優れた電子部品をタイミング良く確保できず、製品の競争力が落ちる結果になる」と言う。
iPhone4は、厚さが9.3ミリメートルと、従来製品の12.3ミリメートルよりかなり薄い。前述のアナリストを含め、多くの専門家はアップルがiPhone4で、国内部品メーカーの最新の超小型部品を多数採用して、この薄さを実現していると予想する。
電子部品の調達を有利に進めるため、国内の電子機器メーカー各社はここ数年、集中購買などによるバイイングパワーの確保に努めてきた。だが、先行するアップルは、既にその先を行く。電子部品メーカーの優れた技術を取り込んで、製品の価値を高めるかつての日本の電子機器メーカーのお家芸は、形を変えてアップルの得意技になりつつあるようだ。
iPhone受信トラブル、米で販売中止求め提訴
【ニューヨーク=共同】日本や欧米で人気となっている米電子機器大手アップルの新型携帯電話「iPhone(アイフォーン)4」の受信トラブルをめぐり、アップルと通信会社に対して販売中止などを求める複数の訴訟が米国カリフォルニア州などで起こされたことが1日分かった。米メディアが伝えた。
原告側は、iPhone4の持ち方によって電波の受信状態が悪化すると指摘。「欠陥を知っていたのに販売前に顧客に明らかにしなかった」などとして詐欺の疑いもあるとし、懲罰的な損害賠償に加え、問題が解決されるまでの販売中止などを求めている。
アップルは、アンテナが埋め込まれている本体の左下部分を持たないことや別売りカバーの使用を顧客に求めているが、原告側は不自然な持ち方や30ドル(約2600円)近い負担を強いられると反発。無料でケースを提供するよう要求している。
iPhone本体側面の金属部分はアンテナを兼ねているため、触ると受信状態が不安定になる可能性がある。場合によっては通話が中断することもあり、6月24日の発売以降、日本や米国などで多くの苦情が報告されている。
「任天堂のテーマパーク」は実現するのか、岩田社長が株主総会で言及
昨年4月にディズニーのテーマパーク「東京ディズニーランド」やユニバーサルスタジオのテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」、サンリオの「サンリオピューロランド」のように、任天堂のゲームやキャラクターをモチーフとしたテーマパーク建設を求める署名が開始されたことをお伝えしましたが、任天堂の岩田聡社長が同社の株主総会において、テーマパークについて言及しました。
はたしてテーマパークが実現する日は訪れるのでしょうか。
2010年6月29日に開かれた任天堂の第70期 定時株主総会での質疑応答によると、任天堂のゲームなどに登場するキャラクターを利用したビジネスについて、「テーマパークのようなものをつくるといった超長期的な未来像はあるのか」という質問が行われたそうです。
この質問に対して同社の岩田社 長は、「テーマパークの話も何度も議論が出たり話が出たり、いろんな形でうわさになったりするのですが、現時点で何か具体的な計画があるということはございません」と答えたとのこと。
また、今までのテーマパークと同じ形となるのであれば後追いとなるため、任天堂のビデオゲーム分野の強みが生きる独創的なやり方でテーマパークを実現できる方法が発明された場合には実行に移す可能性があることを示した上で、「その意味で未来永劫絶対ないとは申しません」としています。
つまり任天堂は現時点で従来型のテーマパークを展開するつもりは無いということになりますが、はたしてどのような形であれば実現するのでしょうか。2005年に半年間限定で開催された「愛・地球博」の会場で、同社の人気タイトル「ポケットモンスター」をモチーフにした遊園地「ポケモン・ザ・パーク2005」が開設された時は400万人を超える入場者を記録していたため、もし任天堂が本気でテーマパーク事業に乗り出した時は、とんでもないことが起きるのかもしれません。
米政府、携帯アプリ提供 指名手配情報など配信
【ワシントン支局】米政府は2日、空港の混雑状況から指名手配犯のデータまで、各政府機関の最新情報を外出先でチェックできるスマートフォン用ソフトウエア(アプリ)の提供を始めた。オバマ政権が進めるネットによる「開かれた政府」づくりの一環。政府の総合情報サイト「USA.gov」から無料で取り込める。
各機関が開発した17のアプリを提供する。運輸安全局(TSA)のアプリでは、全米各地の空港の手荷物検査所の待ち時間や機内持ち込み手荷物の規制などの最新情報が検索できる。米連邦捜査局(FBI)のアプリは指名手配犯やテロリスト、行方不明の子供などのデータが閲覧でき、その場でFBIに情報提供することも可能だ。
商品のバーコードを読み取ってリコール情報がわかるアプリや、エタノールなど石油代替燃料を販売しているスタンドを探せるアプリもある。環境保護局(EPA)は、郵便番号を入力するとその場所の紫外線や大気汚染の情報を表示するアプリを提供している。
ネットカフェ条例施行 身分証なく引き返す客も
インターネットカフェの匿名性を悪用した犯罪防止を目的とする都のネットカフェ規制条例が1日、施行された。条例は、店側に利用者の身分証確認などを義務づけており、1日の都内の店には、身分証の提示を求める張り紙が掲示されたほか、身分証を提示できず引き返す利用客の姿も見られた。
ネットカフェチェーン「スペースクリエイト自遊空間」を運営する「ランシステム」(豊島区)は「1日の営業開始から、都内の店舗では利用者に改めて身分証の提示をお願いしている。今のところトラブルなどの報告はない」と話す。
その上で、「条例は利用者にネットカフェをより安全、安心に利用していただくために必要なものと考えている」としている。
一方、新宿区内のネットカフェでは、店員に身分証などの確認方法などを指導。利用客が出した保険証での本人確認の仕方が分からずに上司を呼ぶ店員もいた。
条例ではネットカフェに都公安委員会への営業の届け出なども義務づけており、違反した店には、都公安委員会が営業停止命令を出せ、命令に従わない場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金といった罰則を設けている。
中古ゲーム機値下がり 「DSi」1万円切る
家庭用ゲーム機の値下がりが進んでいる。任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDSi」が新品・中古とも値下がりし、中古は1台1万円を切った。ワールドカップが盛り上がっていることで、サッカーのゲームソフトの売れ行きも好調だ。
任天堂が6月19日に「ニンテンドーDSi」の希望小売価格を3900円引き下げ、1万5000円としたため、中古品も連動して値下がりした。都内の販売店で中古品は1台9950円と、新品の価格より約5千円安いケースもある。Wiiやプレイステーション3(PS3)といった据え置き型も中古の値下がりが目立っている。
割安感から中古品の売れ行きは好調だ。中古書籍最大手のブックオフコーポレーションは6月の中古ゲーム機・ソフトの販売金額が前年同月より1~2割増えた。
米新車販売、個人向けがブレーキ 日本メーカー苦戦
【ニューヨーク=小高航】6月の米新車販売は前年同月比14.4%増と、5カ月連続で2ケタ増を維持した。ただ、内訳をみると特に個人の自動車購入にブレーキがかかり、消費者心理は冷え込んできている。ガソリン価格の下落などを背景に大型車への再シフトも起きており、小型車に強い日本メーカーが苦戦を強いられる構図が鮮明になってきた。
米新車販売は個人向けが約8割、レンタカー会社など法人向けが約2割を占める。米調査会社J・D・パワー・アンド・アソシエイツが先週まとめた6月の販売見通しでは、法人向けは6割増なのに対し、個人向けは5%増にとどまる。個人向け販売は春先まで、各社の値引き合戦もあり2割のペースで伸びていた。
米調査会社コンファレンス・ボードによると、6月の米消費者信頼感指数はそれまでの上昇傾向から一転、急低下した。同社アナリストは「景気や労働市場の先行きへの不安が増した結果、消費者心理は急速に悪化している」と分析する。
6月の販売シェアはビッグスリー(米自動車大手3社)が前年同月より1ポイント以上増やしたのに対し、トヨタ自動車など日系大手3社は2ポイント以上減らした。日本勢は法人向けの比率がビッグスリーより格段に小さく、個人向け販売の低迷がより強く影響した。
一方、米ガソリン価格は現在、1ガロン2.7ドル前後。一時4ドルを超えた2年前の水準に比べると低価格で推移している。この結果、6月はピックアップトラックなど大型車が20%増と、「大型車シフト」も鮮明になっている。小型車主体の乗用車分野の伸びは9%にとどまった。
さらに乗用車分野では、低価格やデザイン性に優れた韓国・現代自動車の新型「ソナタ」の販売台数が5割近く増加。同クラスのトヨタ「カムリ」は8%増、ホンダ「アコード」は4%増、日産自動車「アルティマ」は3%減と明暗を分けた。
グーグルが運航情報ソフト会社を買収
米インターネット検索大手グーグルは1日、航空会社の運航情報を提供するソフトなどを開発する、米ITAソフトウエアを7億ドル(約600億円)で買収すると発表した。
ITAは航空会社や旅行代理店などに、航空会社の運航スケジュールや空席状況、運賃などの情報を扱うソフトや、簡単に予約できるシステムを提供。グーグルはITA買収で、旅行関連情報サービスを拡充する。
ITAは欧米航空会社のほかに全日本空輸とも取引。グーグルのライバルでソフトウエア最大手、米マイクロソフトが展開するネット検索サービス「ビング」にも情報を提供している。
米、高速通信網全国整備へ700億円投資 景気対策で
5000人の雇用創出
【ワシントン=大隅隆】米政府はブロードバンド(高速大容量)の通信網を全米に整備するため、66地域のプロジェクトに7億9500万ドル(約700億円)を投資する。昨春成立した8千億ドル規模の景気対策法の財源を活用する。当面5000人の雇用増も見込んでいる。
オバマ米大統領が2日発表する。通信回線などのインフラ整備と、図書館などのコンピューター設備拡充の2本柱。補助金や融資で支援する。今回の政府投資を呼び水にした民間投資も合わせて、10億ドル程度が新たに高速通信網整備に投じられる見通し。
米国は日韓などと比べ高速通信網整備が遅れており、オバマ政権は集中投資で世界最大のネット市場構築を目指している。米連邦通信委員会(FCC)は2020年までに米国内の1億世帯に現在より20倍以上速いブロードバンド回線を整備する構想を検討中だ。
スウェーデン、徴兵制を正式に廃止 メディアは賛否分かれる
100年以上にわたって徴兵制度を維持してきたスウェーデンで1日、徴兵制が正式に廃止された。地元の英語メディア、ローカルなどが伝えた。
近年は希望者だけが兵役に就く状況が続き、政府が昨年、制度の廃止を決めていた。
東西冷戦時代は旧ソ連の脅威のため、最も多い時には徴兵対象となる男性のうち85%近くが兵役に就いていたとされる。
スウェーデンのダーゲンス・ニュヘテル紙は「徴兵制は時代遅れかつ非効率だ」と廃止を評価。一方、アフトンブラデット紙は「(国民の)義務と権利の関係がより一層弱まる」と否定的に伝えている。
兵役の期間は平均で約11カ月だった。
記者の目◇パイオニアとJVCケンウッドの相似形
経営再建を急ぐ、中堅AV機器メーカーのパイオニアとJVC・ケンウッド・ホールディングス。足元の業績的には2010年3月期にプラズマテレビ撤退などリストラに踏み切ったパイオニアに分がありそうにも思える。JVCケンウッドは今期も最終赤字が続く一方、パイオニアは7期ぶりに最終黒字となる見通しだ。だが、資本面に着目すれば、両社の置かれた状況が似通っていることがわかる。
6月24、25日と、都内で両社の株主総会が連続して開催された。先に開いたのはJVCケンウッドだ。
「当社の事業規模に見合った適正な発行済み株式数と、株価形成を促したい」。口々に不満を述べる株主に対し、河原春郎会長兼社長はこう言って理解を求めた。
総会は午前10時から午後1時23分までの3時間23分に及び、昨年の2時間11分を大幅に上回った。株主の質問が集中したのは、8月1日付で10株を1株に併合する特別決議案。株式併合は理論的には企業価値に中立とされるが市場から見れば縮小イメージが強い。JVCケンウッドは端株の買い取り制度を導入するなど配慮に努めたが、「過去に株式併合した企業の株価はいったん上昇してもその後下がっている」(質問に立った株主)などと、不安感をあらわにする株主が相次いだ。
JVCケンウッドにとっては低迷する株価を引き上げ、増資につなげたいとの思惑がある。足元の株価は30円台で推移。株価が低水準なこともあって値動きも荒い。「2ケタの株価では機関投資家に相手にしてもらえない」(関係者)。株価30円で10株を1株に併合すれば株価は300円、発行済み株式数は10億9000万株から1億900万株に減る。第三者割当増資などが実施しやすくなると見る。結局、株式併合議案は賛成多数で可決されたが、既存株主からは「金融的な手法だけで企業価値がどれだけ上がるのか」(総会に出席した株主)との不満が残った。
翌25日に東京・目黒で開かれたパイオニアの株主総会。「前期まで無配が続いているが、配当はいつ再開するのか」との株主の質問に、会社側はこう答えた。「現行の中期経営計画を着実に実行しながら、できるだけ早期に復配したい」
パイオニアは5月末に13年3月期までの中期経営計画を公表したが、復配の目標について言及していない。理由は配当可能利益が縮小した一方、発行済み株式数が大幅に増えたためだ。前期末の利益剰余金は450億円のマイナスで、発行済み株式数は3億2600万株と3年前より約8割増えた。3円配当で今期の予想純利益(110億円)のほとんどが消えてしまう。前期に実施したホンダへの第三者割当増資などで、発行済み株式数が大幅に増えた。
増資するため株式併合しようとするJVCケンウッドと、度重なる増資で発行済み株式数が増えたパイオニア。両社に共通するのは、既存株主の不安感が増幅していることだ。製品価格の下落で「AV機器メーカー」という業態の苦境が始まって優に10年以上が経過する。外部環境が厳しいなか、資本市場から資金調達することでどのような成長戦略につなげるのか。パイオニア、JVCケンウッドの説明はまだ十分でない。
富山新聞社説 2010年7月2日
◎下落続く路線価 オフィス助成の見直しを
前年比5%台の下落率となった2010年分の北陸3県の平均路線価は、オフィス、住 宅の不動産需要の低迷を映し出している。長引く不況でオフィス需要が低下し、賃料の引き下げと地価の下落に拍車がかかるという状況からの脱却が地方都市の共通課題であるが、北陸では特に金沢市中心部における空きオフィスの増加が深刻であり、需要喚起へ行政のてこ入れが望まれる。
北陸3県の路線価ダウンは富山が18年連続、福井が17年連続で、石川は2年連続と なった。前年まで北陸の最高価格地点だった金沢市香林坊1丁目の百万石通りは前年比5・8%減の47万円となり、同市堀川新町の金沢駅東広場通り(前年比3・9%減の49万円)に1位を譲った。その背景にあるのは、今年1~3月の民間調査で25%を超えるオフィス空室率の高さである。この数字は調査対象の全国12都市で最悪という。
金沢市は都心軸となる道路沿いでのオフィス開設や、ファッション関係の出店に対し、 改装費を補助する制度を全国に先駆けて設けている。しかし、必ずしも使い勝手が良いとは言えず、利用も減少しており、制度を見直すときにきているのではないか。
金沢経済同友会は一案として、オフィス・商業ビルのテナント誘致のため、各地区の特 徴を生かして誘致対象を絞り、助成をもっと手厚くする「特区」制度を提言している。オフィス空室率の悪化と地価下落に歯止めがかからない現状に金沢市も危機感を持ち、提案を真剣に検討してほしい。
富山市は現在、中心部で情報・デザイン系の創業者やベンチャー企業が事務所を新設す る場合、オフィス賃借料を補助する制度を設けているが、対象者や助成額の拡充を考えてよいだろう。都心活性化の鍵である再開発事業を成功させる努力は当然である。
また、オフィスや店舗だけでなく、定住者を増やすことも重要である。金沢市の「まち なか区域」では昨年、転出者より転入者が多く、人口の社会動態で増加に転じた。こうした「まちなか回帰」の動きをさらに後押しする施策を考える必要もある。
米アップルの快進撃が続いている。4月発売の多機能携帯端末「iPad)」を80日で300万台売り、日本で発売の高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)4」も前機種の10倍以上の予約を集めて好調に滑り出した。強さが際立つアップルだが、その陰で浮かび上がるのは部品メーカーとの蜜月関係だ。
6月24日。iPhone4を買い求めるファンが早朝から東京の表参道や銀座に計1000人近く集まった。ソフトバンク表参道店には孫正義・ソフトバンク社長が訪れ、一番乗りの顧客を祝福するおなじみの光景も展開された。
人気は数字にも表れている。アップルは2010年1~3月期に、iPhone3GSを全世界で875万台売った。仮にこのペースでiPhone4が販売されれば、iPadとiPhone4の2製品で、四半期1000万台超えが現実となる。
空前の出荷規模と並行して、アップル向け電子部品ビジネスも激しさを増す。その中で後れを取る日本メーカー。特にディスプレーや半導体など、比較的サイズが大きな部品で顕著だ。
一例が米調査会社のアイサプライが4月に発表したiPad分解リポート。主要14部品の大半を韓国や台湾のメーカーで占めた。日本メーカーで目に付いたのはバッテリーを供給するTDK子会社の香港アンプレックステクノロジーくらいだ。
“日の丸部品”の強みは、表面実装型の小型コンデンサーや小型インダクター、水晶発振子、コネクターなどの小型分野。いったん製品に採用されると、供給能力がカギを握るため、部品メーカーが絞られる。だが日本メーカーの存在感が薄い理由は別のところにもある。
セットメーカーが部品を調達する場合の基本は、同一仕様の製品を2社以上に発注してリスクの分散やコストダウンを図る「複数購買」だ。アップルも例外ではなく、複数の企業が供給可能な汎用の電子部品では中国や台湾企業の製品を多く採用している。
だがアップルは特定企業しか供給できない部品の採用にも積極的な一面を持つ。「価格より機能や性能を重視する姿勢がある。昔からそうだが最近は拍車がかかってきた」と、複数の国内電子部品メーカーの技術者が明かす。
外形が0.5ミリメートル四方未満の超小型品、高さが1ミリメートル以下の低背品、電極の間隔が0.5ミリメートルを切る狭ピッチのコネクター……。これらは今でも世界先端の日本製部品だ。「高精度や超小型では台湾、中国、韓国より一日の長がある」と国内コネクター・メーカーの技術者も自負する。
アップルは、こうした部品を採用する際、部品メーカーに過大なコストダウンを要求しない。ある国内部品メーカーの技術者は、「以前、当社しか作れない部品をアップルが採用した際、ほぼこちらの言い値で買ってくれた。供給量が多く生産は大変だったが、他社を後回しにしてもアップル向けを優先した」と言う。
電子部品業界に詳しい三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石野雅彦シニアアナリストは、こうした違いが、国内の電子機器メーカーの競争力をそぐ結果になると心配する。「国内メーカーはアップルと対照的に部品の優劣に関係なく、一律に値引きや過剰な品質を要求する傾向がある。結果的に優れた電子部品をタイミング良く確保できず、製品の競争力が落ちる結果になる」と言う。
iPhone4は、厚さが9.3ミリメートルと、従来製品の12.3ミリメートルよりかなり薄い。前述のアナリストを含め、多くの専門家はアップルがiPhone4で、国内部品メーカーの最新の超小型部品を多数採用して、この薄さを実現していると予想する。
電子部品の調達を有利に進めるため、国内の電子機器メーカー各社はここ数年、集中購買などによるバイイングパワーの確保に努めてきた。だが、先行するアップルは、既にその先を行く。電子部品メーカーの優れた技術を取り込んで、製品の価値を高めるかつての日本の電子機器メーカーのお家芸は、形を変えてアップルの得意技になりつつあるようだ。
iPhone受信トラブル、米で販売中止求め提訴
【ニューヨーク=共同】日本や欧米で人気となっている米電子機器大手アップルの新型携帯電話「iPhone(アイフォーン)4」の受信トラブルをめぐり、アップルと通信会社に対して販売中止などを求める複数の訴訟が米国カリフォルニア州などで起こされたことが1日分かった。米メディアが伝えた。
原告側は、iPhone4の持ち方によって電波の受信状態が悪化すると指摘。「欠陥を知っていたのに販売前に顧客に明らかにしなかった」などとして詐欺の疑いもあるとし、懲罰的な損害賠償に加え、問題が解決されるまでの販売中止などを求めている。
アップルは、アンテナが埋め込まれている本体の左下部分を持たないことや別売りカバーの使用を顧客に求めているが、原告側は不自然な持ち方や30ドル(約2600円)近い負担を強いられると反発。無料でケースを提供するよう要求している。
iPhone本体側面の金属部分はアンテナを兼ねているため、触ると受信状態が不安定になる可能性がある。場合によっては通話が中断することもあり、6月24日の発売以降、日本や米国などで多くの苦情が報告されている。
「任天堂のテーマパーク」は実現するのか、岩田社長が株主総会で言及
昨年4月にディズニーのテーマパーク「東京ディズニーランド」やユニバーサルスタジオのテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」、サンリオの「サンリオピューロランド」のように、任天堂のゲームやキャラクターをモチーフとしたテーマパーク建設を求める署名が開始されたことをお伝えしましたが、任天堂の岩田聡社長が同社の株主総会において、テーマパークについて言及しました。
はたしてテーマパークが実現する日は訪れるのでしょうか。
2010年6月29日に開かれた任天堂の第70期 定時株主総会での質疑応答によると、任天堂のゲームなどに登場するキャラクターを利用したビジネスについて、「テーマパークのようなものをつくるといった超長期的な未来像はあるのか」という質問が行われたそうです。
この質問に対して同社の岩田社 長は、「テーマパークの話も何度も議論が出たり話が出たり、いろんな形でうわさになったりするのですが、現時点で何か具体的な計画があるということはございません」と答えたとのこと。
また、今までのテーマパークと同じ形となるのであれば後追いとなるため、任天堂のビデオゲーム分野の強みが生きる独創的なやり方でテーマパークを実現できる方法が発明された場合には実行に移す可能性があることを示した上で、「その意味で未来永劫絶対ないとは申しません」としています。
つまり任天堂は現時点で従来型のテーマパークを展開するつもりは無いということになりますが、はたしてどのような形であれば実現するのでしょうか。2005年に半年間限定で開催された「愛・地球博」の会場で、同社の人気タイトル「ポケットモンスター」をモチーフにした遊園地「ポケモン・ザ・パーク2005」が開設された時は400万人を超える入場者を記録していたため、もし任天堂が本気でテーマパーク事業に乗り出した時は、とんでもないことが起きるのかもしれません。
米政府、携帯アプリ提供 指名手配情報など配信
【ワシントン支局】米政府は2日、空港の混雑状況から指名手配犯のデータまで、各政府機関の最新情報を外出先でチェックできるスマートフォン用ソフトウエア(アプリ)の提供を始めた。オバマ政権が進めるネットによる「開かれた政府」づくりの一環。政府の総合情報サイト「USA.gov」から無料で取り込める。
各機関が開発した17のアプリを提供する。運輸安全局(TSA)のアプリでは、全米各地の空港の手荷物検査所の待ち時間や機内持ち込み手荷物の規制などの最新情報が検索できる。米連邦捜査局(FBI)のアプリは指名手配犯やテロリスト、行方不明の子供などのデータが閲覧でき、その場でFBIに情報提供することも可能だ。
商品のバーコードを読み取ってリコール情報がわかるアプリや、エタノールなど石油代替燃料を販売しているスタンドを探せるアプリもある。環境保護局(EPA)は、郵便番号を入力するとその場所の紫外線や大気汚染の情報を表示するアプリを提供している。
ネットカフェ条例施行 身分証なく引き返す客も
インターネットカフェの匿名性を悪用した犯罪防止を目的とする都のネットカフェ規制条例が1日、施行された。条例は、店側に利用者の身分証確認などを義務づけており、1日の都内の店には、身分証の提示を求める張り紙が掲示されたほか、身分証を提示できず引き返す利用客の姿も見られた。
ネットカフェチェーン「スペースクリエイト自遊空間」を運営する「ランシステム」(豊島区)は「1日の営業開始から、都内の店舗では利用者に改めて身分証の提示をお願いしている。今のところトラブルなどの報告はない」と話す。
その上で、「条例は利用者にネットカフェをより安全、安心に利用していただくために必要なものと考えている」としている。
一方、新宿区内のネットカフェでは、店員に身分証などの確認方法などを指導。利用客が出した保険証での本人確認の仕方が分からずに上司を呼ぶ店員もいた。
条例ではネットカフェに都公安委員会への営業の届け出なども義務づけており、違反した店には、都公安委員会が営業停止命令を出せ、命令に従わない場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金といった罰則を設けている。
中古ゲーム機値下がり 「DSi」1万円切る
家庭用ゲーム機の値下がりが進んでいる。任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDSi」が新品・中古とも値下がりし、中古は1台1万円を切った。ワールドカップが盛り上がっていることで、サッカーのゲームソフトの売れ行きも好調だ。
任天堂が6月19日に「ニンテンドーDSi」の希望小売価格を3900円引き下げ、1万5000円としたため、中古品も連動して値下がりした。都内の販売店で中古品は1台9950円と、新品の価格より約5千円安いケースもある。Wiiやプレイステーション3(PS3)といった据え置き型も中古の値下がりが目立っている。
割安感から中古品の売れ行きは好調だ。中古書籍最大手のブックオフコーポレーションは6月の中古ゲーム機・ソフトの販売金額が前年同月より1~2割増えた。
米新車販売、個人向けがブレーキ 日本メーカー苦戦
【ニューヨーク=小高航】6月の米新車販売は前年同月比14.4%増と、5カ月連続で2ケタ増を維持した。ただ、内訳をみると特に個人の自動車購入にブレーキがかかり、消費者心理は冷え込んできている。ガソリン価格の下落などを背景に大型車への再シフトも起きており、小型車に強い日本メーカーが苦戦を強いられる構図が鮮明になってきた。
米新車販売は個人向けが約8割、レンタカー会社など法人向けが約2割を占める。米調査会社J・D・パワー・アンド・アソシエイツが先週まとめた6月の販売見通しでは、法人向けは6割増なのに対し、個人向けは5%増にとどまる。個人向け販売は春先まで、各社の値引き合戦もあり2割のペースで伸びていた。
米調査会社コンファレンス・ボードによると、6月の米消費者信頼感指数はそれまでの上昇傾向から一転、急低下した。同社アナリストは「景気や労働市場の先行きへの不安が増した結果、消費者心理は急速に悪化している」と分析する。
6月の販売シェアはビッグスリー(米自動車大手3社)が前年同月より1ポイント以上増やしたのに対し、トヨタ自動車など日系大手3社は2ポイント以上減らした。日本勢は法人向けの比率がビッグスリーより格段に小さく、個人向け販売の低迷がより強く影響した。
一方、米ガソリン価格は現在、1ガロン2.7ドル前後。一時4ドルを超えた2年前の水準に比べると低価格で推移している。この結果、6月はピックアップトラックなど大型車が20%増と、「大型車シフト」も鮮明になっている。小型車主体の乗用車分野の伸びは9%にとどまった。
さらに乗用車分野では、低価格やデザイン性に優れた韓国・現代自動車の新型「ソナタ」の販売台数が5割近く増加。同クラスのトヨタ「カムリ」は8%増、ホンダ「アコード」は4%増、日産自動車「アルティマ」は3%減と明暗を分けた。
グーグルが運航情報ソフト会社を買収
米インターネット検索大手グーグルは1日、航空会社の運航情報を提供するソフトなどを開発する、米ITAソフトウエアを7億ドル(約600億円)で買収すると発表した。
ITAは航空会社や旅行代理店などに、航空会社の運航スケジュールや空席状況、運賃などの情報を扱うソフトや、簡単に予約できるシステムを提供。グーグルはITA買収で、旅行関連情報サービスを拡充する。
ITAは欧米航空会社のほかに全日本空輸とも取引。グーグルのライバルでソフトウエア最大手、米マイクロソフトが展開するネット検索サービス「ビング」にも情報を提供している。
米、高速通信網全国整備へ700億円投資 景気対策で
5000人の雇用創出
【ワシントン=大隅隆】米政府はブロードバンド(高速大容量)の通信網を全米に整備するため、66地域のプロジェクトに7億9500万ドル(約700億円)を投資する。昨春成立した8千億ドル規模の景気対策法の財源を活用する。当面5000人の雇用増も見込んでいる。
オバマ米大統領が2日発表する。通信回線などのインフラ整備と、図書館などのコンピューター設備拡充の2本柱。補助金や融資で支援する。今回の政府投資を呼び水にした民間投資も合わせて、10億ドル程度が新たに高速通信網整備に投じられる見通し。
米国は日韓などと比べ高速通信網整備が遅れており、オバマ政権は集中投資で世界最大のネット市場構築を目指している。米連邦通信委員会(FCC)は2020年までに米国内の1億世帯に現在より20倍以上速いブロードバンド回線を整備する構想を検討中だ。
スウェーデン、徴兵制を正式に廃止 メディアは賛否分かれる
100年以上にわたって徴兵制度を維持してきたスウェーデンで1日、徴兵制が正式に廃止された。地元の英語メディア、ローカルなどが伝えた。
近年は希望者だけが兵役に就く状況が続き、政府が昨年、制度の廃止を決めていた。
東西冷戦時代は旧ソ連の脅威のため、最も多い時には徴兵対象となる男性のうち85%近くが兵役に就いていたとされる。
スウェーデンのダーゲンス・ニュヘテル紙は「徴兵制は時代遅れかつ非効率だ」と廃止を評価。一方、アフトンブラデット紙は「(国民の)義務と権利の関係がより一層弱まる」と否定的に伝えている。
兵役の期間は平均で約11カ月だった。
記者の目◇パイオニアとJVCケンウッドの相似形
経営再建を急ぐ、中堅AV機器メーカーのパイオニアとJVC・ケンウッド・ホールディングス。足元の業績的には2010年3月期にプラズマテレビ撤退などリストラに踏み切ったパイオニアに分がありそうにも思える。JVCケンウッドは今期も最終赤字が続く一方、パイオニアは7期ぶりに最終黒字となる見通しだ。だが、資本面に着目すれば、両社の置かれた状況が似通っていることがわかる。
6月24、25日と、都内で両社の株主総会が連続して開催された。先に開いたのはJVCケンウッドだ。
「当社の事業規模に見合った適正な発行済み株式数と、株価形成を促したい」。口々に不満を述べる株主に対し、河原春郎会長兼社長はこう言って理解を求めた。
総会は午前10時から午後1時23分までの3時間23分に及び、昨年の2時間11分を大幅に上回った。株主の質問が集中したのは、8月1日付で10株を1株に併合する特別決議案。株式併合は理論的には企業価値に中立とされるが市場から見れば縮小イメージが強い。JVCケンウッドは端株の買い取り制度を導入するなど配慮に努めたが、「過去に株式併合した企業の株価はいったん上昇してもその後下がっている」(質問に立った株主)などと、不安感をあらわにする株主が相次いだ。
JVCケンウッドにとっては低迷する株価を引き上げ、増資につなげたいとの思惑がある。足元の株価は30円台で推移。株価が低水準なこともあって値動きも荒い。「2ケタの株価では機関投資家に相手にしてもらえない」(関係者)。株価30円で10株を1株に併合すれば株価は300円、発行済み株式数は10億9000万株から1億900万株に減る。第三者割当増資などが実施しやすくなると見る。結局、株式併合議案は賛成多数で可決されたが、既存株主からは「金融的な手法だけで企業価値がどれだけ上がるのか」(総会に出席した株主)との不満が残った。
翌25日に東京・目黒で開かれたパイオニアの株主総会。「前期まで無配が続いているが、配当はいつ再開するのか」との株主の質問に、会社側はこう答えた。「現行の中期経営計画を着実に実行しながら、できるだけ早期に復配したい」
パイオニアは5月末に13年3月期までの中期経営計画を公表したが、復配の目標について言及していない。理由は配当可能利益が縮小した一方、発行済み株式数が大幅に増えたためだ。前期末の利益剰余金は450億円のマイナスで、発行済み株式数は3億2600万株と3年前より約8割増えた。3円配当で今期の予想純利益(110億円)のほとんどが消えてしまう。前期に実施したホンダへの第三者割当増資などで、発行済み株式数が大幅に増えた。
増資するため株式併合しようとするJVCケンウッドと、度重なる増資で発行済み株式数が増えたパイオニア。両社に共通するのは、既存株主の不安感が増幅していることだ。製品価格の下落で「AV機器メーカー」という業態の苦境が始まって優に10年以上が経過する。外部環境が厳しいなか、資本市場から資金調達することでどのような成長戦略につなげるのか。パイオニア、JVCケンウッドの説明はまだ十分でない。
富山新聞社説 2010年7月2日
◎下落続く路線価 オフィス助成の見直しを
前年比5%台の下落率となった2010年分の北陸3県の平均路線価は、オフィス、住 宅の不動産需要の低迷を映し出している。長引く不況でオフィス需要が低下し、賃料の引き下げと地価の下落に拍車がかかるという状況からの脱却が地方都市の共通課題であるが、北陸では特に金沢市中心部における空きオフィスの増加が深刻であり、需要喚起へ行政のてこ入れが望まれる。
北陸3県の路線価ダウンは富山が18年連続、福井が17年連続で、石川は2年連続と なった。前年まで北陸の最高価格地点だった金沢市香林坊1丁目の百万石通りは前年比5・8%減の47万円となり、同市堀川新町の金沢駅東広場通り(前年比3・9%減の49万円)に1位を譲った。その背景にあるのは、今年1~3月の民間調査で25%を超えるオフィス空室率の高さである。この数字は調査対象の全国12都市で最悪という。
金沢市は都心軸となる道路沿いでのオフィス開設や、ファッション関係の出店に対し、 改装費を補助する制度を全国に先駆けて設けている。しかし、必ずしも使い勝手が良いとは言えず、利用も減少しており、制度を見直すときにきているのではないか。
金沢経済同友会は一案として、オフィス・商業ビルのテナント誘致のため、各地区の特 徴を生かして誘致対象を絞り、助成をもっと手厚くする「特区」制度を提言している。オフィス空室率の悪化と地価下落に歯止めがかからない現状に金沢市も危機感を持ち、提案を真剣に検討してほしい。
富山市は現在、中心部で情報・デザイン系の創業者やベンチャー企業が事務所を新設す る場合、オフィス賃借料を補助する制度を設けているが、対象者や助成額の拡充を考えてよいだろう。都心活性化の鍵である再開発事業を成功させる努力は当然である。
また、オフィスや店舗だけでなく、定住者を増やすことも重要である。金沢市の「まち なか区域」では昨年、転出者より転入者が多く、人口の社会動態で増加に転じた。こうした「まちなか回帰」の動きをさらに後押しする施策を考える必要もある。
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文学賞まで登場した「Twitter小説」の本格ぶり
140字以内で“つぶやく”ミニブログ「Twitter」(ツイッター)。多くの著名人・有名人がTwitter上でブログよりも頻繁に“生声”をつぶやき始めたことから、日本でのユーザー数がこの1年間で爆発的に増えた。
そんな2010年4月末、「第1回Twitter小説大賞」(ディスカヴァー・トゥエンティワン主催)が発表された。これはその名のとおり、Twitter上で募集した文学賞だ。
作品を発表する場を求める本気の作家から、手軽さに魅力を感じる一般投稿者まで、送られてきた作品は実に2357作品。コメディ、ホラー、SF、恋愛、推理などなど、テーマも多岐にわたる。
ここで、栄えある第1回大賞作品(作者:@bttftagさん)をご紹介しよう。
「町の小さな郵便局に今週も彼女は現れた。局員たちに水曜日さんと呼ばれる彼女が今日差し出した手紙にはしかし宛名がない。「これじゃ届きませんよ」苦笑しながら顔を上げた彼の目に映ったのは、うつむき加減できゅっと口元を引き結び、真っ直ぐに彼を見つめる真摯な瞳だった」
いかがだろう。小説や物語に好き嫌いがあるのは重々承知だが、簡潔な文章の中にも確かな情景が浮かんではこないだろうか。
当初の予測よりはるかに大量の、かつ良質な作品が送られてきたため、大賞作品1つと優秀作品5つに加えて、急遽“審査員特別賞”を増設したという。応募作品を書籍化した『140字の物語 Twitter小説集』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)も好評販売中だ。
このように、作品の発表の場としてTwitter小説を利用する人もいれば、宣伝媒体の1つとして捉え、活用する企業もある。
新商品の発売に伴い、テレビCMと連動したTwitter小説(長編)をウェブサイト上で連載している日本コカ・コーラ社(現在は終了)など、Twitterを使った新たなメディア構築が、今後しばらく注目を浴びそうだ。
長短問わず文学作品である以上、Twitter小説が一昔前の携帯小説のように、“新しい文章表現云々”といった論争の矢面に立たされているのも事実だ。もちろん、両者は一概に比較できるものではないし、ツールの進化に伴って表現方法が変わるのは当然のこと。
書き手にモチベーションを与え、不特定多数の読み手の目に触れる可能性を、コストをかけずに生み出したTwitterの功績を、ここは受け入れるべきではないだろうか。ただし、クオリティの低い作品を世の中に多数送り出してしまっては、本末転倒だ。先人が培ってきた「小説文学」という文化を穢すことにもなりかねない。
そこで、“敷居”の高さを調節するためにも、今回のTwitter小説大賞のような存在が価値を持つわけだ。プロの目、第三者の目でしっかりとした審査を行ない、評価する。「簡単にコピーできてしまう」といったウェブの特性を意識した著作権対応さえしっかりやれば、新たな文学形態として一時代を築く可能性もある。
東芝、電池を三菱自・プジョーに供給 電気自動車向け
競争一段と激化、低価格化に弾み
東芝は電気自動車の基幹部品であるリチウムイオン電池を三菱自動車に供給する。東芝が自動車大手に電池を供給するのは初めて。仏プジョーシトロエングループ(PSA)も三菱自経由で東芝製電池を調達する方向だ。車載電池ではパナソニックなども攻勢を強めている。東芝の参入で競争が激化すれば複数社を競合させる発注手法が広がる公算が大きい。環境対応車の価格が下がり、普及にも弾みがつきそうだ。
東芝は三菱自が開発する新型の小型電気自動車向けに電池を供給する。街乗りや商用など近距離移動を想定したタイプで、三菱自は2012年度までに200万円を切る価格で発売する計画。これまで三菱自はジーエス・ユアサコーポレーションと電池を共同生産してきたが、東芝製の採用で調達先を広げ、車両価格の半分以上を占める電池のコストを引き下げる。
三菱自は昨年発売した電気自動車「アイ・ミーブ」の製造原価低減を進め、政府の購入補助金を考慮した実質ベースの価格を現在の284万円から200万円前後にする方針だが、新型車はさらに安い価格に設定し、電気自動車での先行維持につなげる。まず年数千台規模で生産を始める。
PSAに対しては、同社と提携している三菱自を経由して電池を供給する。PSAは商用車タイプの電気自動車を共同開発することで合意しており、三菱自が東芝から電池を調達し、電力制御装置や衝突安全機構を加えて供給する方向で調整中だ。
東芝のリチウムイオン電池は低温でも動作し、一般的な自動車向け電池の6倍の6000回以上の充放電の繰り返し利用が可能なのが特長で、寿命も長いという。
東芝は11年春の稼働を目指し、約250億円を投じて新潟県柏崎市にリチウムイオン電池の量産拠点を建設中。自動車向けでは独フォルクスワーゲン(VW)からの受注交渉が詰めの段階に入っている。フォークリフトなど産業車両向けにも供給して量産効果を出し、コスト減につなげる。
電気自動車やハイブリッド車の基幹部品を巡っては、三洋電機やパナソニック、NEC、日立製作所なども攻勢をかけている。東芝は駆動用モーターでも新工場を米国に建設して米フォード・モーターに供給する。
ガソリン車で系列重視だった自動車の基幹部品の取引構造が、電気自動車では大きく変わる。自動車と電機の業種を超えた提携が進む公算も大きい。
自動車大手はコストなどを比較して調達する電池を選んだり、複数の調達先を競わせたりしやすくなり、商品戦略の自由度が高まる。自動車部品メーカーは対応を迫られそうだ。
タワーレコード、小型店を展開 2~3年で10店
音楽CD販売最大手のタワーレコードは小型店の展開に乗り出す。店舗面積は既存店の3分の1から半分程度の200~300平方メートルで、今後2~3年内に10店程度を出店する。インターネットによる配信の普及などでCD市場は低迷しており、投資コストなどを抑えた小型店で商業施設などへの出店を増やす。
まず年内に首都圏で2店を開設する。ショッピングセンター(SC)などの商業施設内への入居となる見込み。売り場が限られるため、品ぞろえを既存店の6割程度に当たる約3万枚に絞る。ランキング上位の売れ筋商品を中心にそろえるが、売り物であるジャズなどのコーナーにも力を入れる方針だ。
タワーレコードは現在、全国に82店を展開し、平均的な店舗面積は約560平方メートル。売上高の約半分は大型の路面店が稼いでいるが、CD市場は低迷が続いており、投資・運営コストの高い大型店は出しにくい状況だ。
ただ知名度の高い同社にはSCなどから出店要請があるため、初期投資を既存店の5割程度に抑えられる小型店を開発し、出店戦略の軸に据える。近年は店舗数の年間純増分が1店程度にとどまっていたが、小型店の積極出店で、店舗数を2~3年以内に90店程度へ引き上げる考えだ。
日立ディスプレイズ、台湾・奇美にパネル生産委託
日立ディスプレイズ(DP)は、鴻海精密工業傘下で液晶パネル世界3位の奇美電子(台湾)に中小型パネルの生産を委託する。奇美電子に液晶技術を供与、生産されたパネルを今年度中に中小型の多機能情報端末向けとして供給を始める。パネルメーカーが競合他社に生産委託するのは極めて異例。電子書籍など多機能端末の登場で中小型パネル需要は急増が見込まれ、他メーカーへも同じ事業モデルが広がる可能性がある。
日立DPが奇美電子に6~10型パネルを対象としたIPS液晶パネル技術を有償で提供。奇美電子は同型パネルを生産し、日立DPが買い取る。生産ラインを最大限活用した場合、生産面積は現在の8倍になるという。
日立DPは中小型液晶パネルシェアで世界6位だが、通常の液晶パネルに比べ、高輝度で視野角が広いIPS液晶で優位性を持つ。IPS液晶はパネルの感応度も高く、タッチパネルや3次元(3D)など、市場で人気を集めている高機能の製品に向く。千葉県茂原市の自社工場では、引き続きスマートフォン(多機能型携帯電話)や車載向けの小型液晶パネルを生産する。
日立DPが自前での完全生産から他社ラインの活用に転換するのは、投資を抑えつつ、拡大するパネル需要に対応するため。多くの国内の液晶パネルメーカーは2008年のリーマン・ショック以降、業績悪化から生産規模の縮小に踏み切った。市場では昨年後半からパネルの需要が回復しはじめたが、増産要請に応えられず海外の大手メーカーに受注を奪われるケースも起きている。
ただ自前ラインはすぐには拡張できない。日立DPは09年度の営業損益が60億円の赤字に転落。1日に人件費抑制策として製造子会社を立ち上げるなど事業構造改革を進めている最中で、新規の投資余力が限られる。このため、委託という形で固定費を抑制し、受注に早期に応える戦略に踏み切った。
中小型液晶パネル市場は今後も拡大が予想される。調査会社、米ディスプレイサーチは10.2型以下のミニノートパソコン市場は、2010年に約4652万台で、13年には約8277万台まで拡大すると予想。米アップルの多機能情報端末iPad(アイパッド)は、10年に約971万台、13年には約4261万台に上ると予測する。
さらに東芝がタッチパネル機能を備え電子書籍としても使える10型のタブレット型パソコンを発売。国内外の他社もアイパッドの対抗機種を準備しているもようで、他の国内パネルメーカーも生産委託へ踏み出す可能性がある。
プロミス、従業員の36%退社へ 966人が早期退職に応募
消費者金融大手のプロミスは1日、希望退職への応募が子会社の三洋信販を含め計966人となり、募集人員の900人を上回ったと発表した。両社を合わせた今年3月末の従業員2680人の約36%に相当する。
内訳はプロミスが720人で、三洋信販は246人で、10月末までに退社するという。割り増し退職金の支払いのため、2011年3月期に約68億円の特別損失を計上する見込み。
プロミスは6月の改正貸金業法の完全施行による規制強化に向け、事業規模を縮小するため、希望退職を募集した。
建機、中国で増産加速 コマツ・コベルコ・住友など
コマツをはじめ日本の建設機械メーカーが相次ぎ中国で油圧ショベルを増産する。コベルコ建機など一部企業は増産計画を積み増す。中国は沿岸部だけでなく、四川省など内陸部でもインフラ整備に伴う工事が活発で、油圧ショベルの需要は右肩上がりだ。急速な市場の拡大を背景に中国勢も成長しているが、燃費・耐久性能で勝る日本や韓国の有力企業が主導権争いを繰り広げている。
中国で外資首位のコマツは2010年度に前年度比30%増の1万9500台の中国生産を計画する。中国政府の景気刺激策もあり、「作ったそばから建機が売れる」(大手メーカー幹部)ほどの活況が続いている。コマツでも3~5月には、大阪工場(大阪府枚方市)から油圧ショベルを輸出し、中国の春節明けの需要急増分を補った。
成都と杭州に生産拠点を持つコベルコ建機は、09年に8千台だった年間生産能力を10年は当初75%増の1万4千台に引き上げる計画だったが、需要拡大を受け1万8千台と2.3倍に積み増す。能力増強の投資は数十億円規模とみられる。
住友建機は09年6月に唐山工場を稼働、昨年度は年間700台を生産した。今年度は20トン、24トン級の油圧ショベルを年間1200台生産する方針だったが、最大2千台に上方修正。年内には12トン、35トン級のショベルも投入する。10億~20億円を投じて設備増強も続け、11年度には年産能力を3千台にする。
6トン未満のミニ建機を主力に据えているIHI建機も、800台(前年比60%増)だった生産目標を1千台(前年の2倍)に上積みした。
コベルコ建機の推定によると、中国メーカーを除く油圧ショベルの中国での総需要(ミニショベル含む)は1~5月で6万2千台規模と、前年同期の2倍を超える。09年実績の約7万台を上回るのは確実という。
深海油田、リスク顕在化
規制強まり開発足踏み
英BPの原油流出事故が世界の石油産業に波紋を広げている。深海油田開発に関する各国政府の規制強化の動きや、BPが負担する損害賠償の巨額さでリスクが顕在化。開発足踏みによる生産量減退の不安も広がり始めた。米国などで業界の再編観測が浮上する一方、新興国の国営石油会社の存在感が上昇するなど、エネルギービジネスの構図も変わりかねない。
4月20日に石油掘削装置(リグ)の爆発事故が起きたメキシコ湾。同湾の沖合海底油田は米国の原油生産量の3割を占めるが、操業を止めるリグが相次ぐ。5月下旬、オバマ米大統領は1500メートルより深い海での新規開発認可の6カ月間停止とメキシコ湾での33基のリグの操業停止を発表。米国の油田関連サービス会社ベーカー・ヒューズによると、ルイジアナ州沖の稼働リグ数は事故前の半分以下に落ち込んだ。
英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは今夏にも掘削開始予定だったアラスカ沖の油田開発に待ったがかかった。ブラジル国営石油会社のペトロブラスもメキシコ湾での新規掘削が宙に浮いた状態。イタリアのENIもメキシコ湾で進行中だった油田開発を停止した。
産油量が減少へ
米エネルギー省は6月、沖合掘削の停止を理由に今年のメキシコ湾での産油量見通しを5月時点予想から7%下方修正。来年の見通しも12%引き下げた。輸入原油依存度の引き下げを目指すオバマ政権だが、BP事故への対応の遅れも批判され、開発促進には慎重にならざるをえない。
波紋は米国内にとどまらない。ノルウェー政府は米メキシコ湾での事故原因が究明されるまで、深海油田の開発を禁じる措置を取った。ブラジル石油監督庁(ANP)のリマ長官も先月、最高5000万レアル(約25億円)に設定されている、原油流出時の罰金を見直す可能性を示唆した。
安全性論議は他分野にも波及。米国では高圧の水で岩盤層を破壊する「シェールガス」開発、豪州では温暖化ガス排出抑制を狙った二酸化炭素(CO2)の地中封じ込めについて、安全性を巡る議論が起きている。
買収観測が浮上
安全対策規制などの強化による開発コスト増と巨額賠償リスクが業界再編につながるとの見方も広がる。事故発生以来、BPの株価はほぼ半額に下落。中国国有石油大手やロイヤル・ダッチ・シェルによる買収観測がささやかれる。複数の欧米金融機関はBPのアジアやアフリカ事業の買収案を作成、中国石油天然気集団(CNPC)などに提案している。
中小事業者にはさらに打撃が大きい。「リスク顕在化は、メジャー各社には大きな障害にはならないが、中小規模の企業にとっては(万一の場合に)破綻懸念などで影響が大きい」(米ストラテジック・エナジー&エコノミック・リサーチのマイケル・リンチ氏)
事故が起きた油田権益の25%を持つ米アナダルコの株価もほぼ半減。先月、ムーディーズ・インベスターズ・サービスが同社格付けを「投機的水準」に下げ、アナダルコが「非オペレーターとして投資しているだけ」と反論する事態になった。
米国でも規制強化の是非には意見が分かれる。ルイジアナ州の連邦地裁は6月22日、沖合油田掘削の凍結措置を無効とする判断を下し、米政府は上級審で争う姿勢だ。どこまで影響が広がるのか、他国も注視している。
日経社説
消費税の低所得者対策で軽口は禁物だ
選挙演説とはいえ、首相の発言としては軽率ではないだろうか。
菅直人首相は6月30日夕、山形市で消費税率の引き上げ問題に関して「所得の低い人には負担はかけない」と強調した。「年収300万、400万円以下の人には税金分だけ全額還付する方式」を例示し、超党派で議論すると述べた。
同日午前の青森市では「年収200万とか300万円」。午後の秋田市では「300万円とか350万円以下」が税還付の対象になると語り、発言は二転三転した。
歴代政権が国政選挙で避けてきた消費税増税の議論を菅首相が自ら提起したこと自体は評価できる。消費税率の引き上げに伴い、相対的に重い負担がのしかかる低所得者への配慮が必要になるのも分かる。だが、数字を挙げて議論をする以上は、冷静さと繊細さが欠かせない。
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2008年に年間所得が400万円未満の世帯は46.5%。厚生年金の平均的な受給額は夫婦2人世帯の満額で年間300万円弱だ。年金生活者を含む半数の世帯で消費税負担がゼロ。菅首相の言をそのまま解釈すれば、そんな姿になる。
消費税率が上がっても全額が還付されるなら、該当者には朗報だ。しかし5割近い世帯がその対象となるというなら、税率を引き上げても増収額は制約され、負担も偏る。
カナダでは低所得者の基礎的な支出にかかる付加価値税のみなし負担分を給付で戻す制度がある。政府税制調査会の資料では、夫婦と子2人の年間所得約270万円以下の世帯では満額の6万4000円。それ以上の所得なら給付額は徐々に減り、約400万円でゼロになる。
首相の念頭にあるのはこの制度かもしれない。だがカナダの例も、首相のいう「税金分の全額還付」ではない。揚げ足取りをするつもりはないが、首相の言は重い。場当たりの発言を続ければ、有権者を惑わしていると見られても仕方がない。
菅首相は一連の演説で、消費税負担の還付制度と同時に、食料品や生活必需品などの税率は低く設定する軽減税率の導入を選択肢に挙げた。還付制度には納税者番号など所得を正確につかむ仕組みが要るし、軽減税率には仕入れの状況をつかむインボイス(送り状)が不可欠だ。
骨太な税制改革を問うなら、もっと丁寧な議論が欠かせない。野党も対案を積極的に発信すべきだ。
140字以内で“つぶやく”ミニブログ「Twitter」(ツイッター)。多くの著名人・有名人がTwitter上でブログよりも頻繁に“生声”をつぶやき始めたことから、日本でのユーザー数がこの1年間で爆発的に増えた。
そんな2010年4月末、「第1回Twitter小説大賞」(ディスカヴァー・トゥエンティワン主催)が発表された。これはその名のとおり、Twitter上で募集した文学賞だ。
作品を発表する場を求める本気の作家から、手軽さに魅力を感じる一般投稿者まで、送られてきた作品は実に2357作品。コメディ、ホラー、SF、恋愛、推理などなど、テーマも多岐にわたる。
ここで、栄えある第1回大賞作品(作者:@bttftagさん)をご紹介しよう。
「町の小さな郵便局に今週も彼女は現れた。局員たちに水曜日さんと呼ばれる彼女が今日差し出した手紙にはしかし宛名がない。「これじゃ届きませんよ」苦笑しながら顔を上げた彼の目に映ったのは、うつむき加減できゅっと口元を引き結び、真っ直ぐに彼を見つめる真摯な瞳だった」
いかがだろう。小説や物語に好き嫌いがあるのは重々承知だが、簡潔な文章の中にも確かな情景が浮かんではこないだろうか。
当初の予測よりはるかに大量の、かつ良質な作品が送られてきたため、大賞作品1つと優秀作品5つに加えて、急遽“審査員特別賞”を増設したという。応募作品を書籍化した『140字の物語 Twitter小説集』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)も好評販売中だ。
このように、作品の発表の場としてTwitter小説を利用する人もいれば、宣伝媒体の1つとして捉え、活用する企業もある。
新商品の発売に伴い、テレビCMと連動したTwitter小説(長編)をウェブサイト上で連載している日本コカ・コーラ社(現在は終了)など、Twitterを使った新たなメディア構築が、今後しばらく注目を浴びそうだ。
長短問わず文学作品である以上、Twitter小説が一昔前の携帯小説のように、“新しい文章表現云々”といった論争の矢面に立たされているのも事実だ。もちろん、両者は一概に比較できるものではないし、ツールの進化に伴って表現方法が変わるのは当然のこと。
書き手にモチベーションを与え、不特定多数の読み手の目に触れる可能性を、コストをかけずに生み出したTwitterの功績を、ここは受け入れるべきではないだろうか。ただし、クオリティの低い作品を世の中に多数送り出してしまっては、本末転倒だ。先人が培ってきた「小説文学」という文化を穢すことにもなりかねない。
そこで、“敷居”の高さを調節するためにも、今回のTwitter小説大賞のような存在が価値を持つわけだ。プロの目、第三者の目でしっかりとした審査を行ない、評価する。「簡単にコピーできてしまう」といったウェブの特性を意識した著作権対応さえしっかりやれば、新たな文学形態として一時代を築く可能性もある。
東芝、電池を三菱自・プジョーに供給 電気自動車向け
競争一段と激化、低価格化に弾み
東芝は電気自動車の基幹部品であるリチウムイオン電池を三菱自動車に供給する。東芝が自動車大手に電池を供給するのは初めて。仏プジョーシトロエングループ(PSA)も三菱自経由で東芝製電池を調達する方向だ。車載電池ではパナソニックなども攻勢を強めている。東芝の参入で競争が激化すれば複数社を競合させる発注手法が広がる公算が大きい。環境対応車の価格が下がり、普及にも弾みがつきそうだ。
東芝は三菱自が開発する新型の小型電気自動車向けに電池を供給する。街乗りや商用など近距離移動を想定したタイプで、三菱自は2012年度までに200万円を切る価格で発売する計画。これまで三菱自はジーエス・ユアサコーポレーションと電池を共同生産してきたが、東芝製の採用で調達先を広げ、車両価格の半分以上を占める電池のコストを引き下げる。
三菱自は昨年発売した電気自動車「アイ・ミーブ」の製造原価低減を進め、政府の購入補助金を考慮した実質ベースの価格を現在の284万円から200万円前後にする方針だが、新型車はさらに安い価格に設定し、電気自動車での先行維持につなげる。まず年数千台規模で生産を始める。
PSAに対しては、同社と提携している三菱自を経由して電池を供給する。PSAは商用車タイプの電気自動車を共同開発することで合意しており、三菱自が東芝から電池を調達し、電力制御装置や衝突安全機構を加えて供給する方向で調整中だ。
東芝のリチウムイオン電池は低温でも動作し、一般的な自動車向け電池の6倍の6000回以上の充放電の繰り返し利用が可能なのが特長で、寿命も長いという。
東芝は11年春の稼働を目指し、約250億円を投じて新潟県柏崎市にリチウムイオン電池の量産拠点を建設中。自動車向けでは独フォルクスワーゲン(VW)からの受注交渉が詰めの段階に入っている。フォークリフトなど産業車両向けにも供給して量産効果を出し、コスト減につなげる。
電気自動車やハイブリッド車の基幹部品を巡っては、三洋電機やパナソニック、NEC、日立製作所なども攻勢をかけている。東芝は駆動用モーターでも新工場を米国に建設して米フォード・モーターに供給する。
ガソリン車で系列重視だった自動車の基幹部品の取引構造が、電気自動車では大きく変わる。自動車と電機の業種を超えた提携が進む公算も大きい。
自動車大手はコストなどを比較して調達する電池を選んだり、複数の調達先を競わせたりしやすくなり、商品戦略の自由度が高まる。自動車部品メーカーは対応を迫られそうだ。
タワーレコード、小型店を展開 2~3年で10店
音楽CD販売最大手のタワーレコードは小型店の展開に乗り出す。店舗面積は既存店の3分の1から半分程度の200~300平方メートルで、今後2~3年内に10店程度を出店する。インターネットによる配信の普及などでCD市場は低迷しており、投資コストなどを抑えた小型店で商業施設などへの出店を増やす。
まず年内に首都圏で2店を開設する。ショッピングセンター(SC)などの商業施設内への入居となる見込み。売り場が限られるため、品ぞろえを既存店の6割程度に当たる約3万枚に絞る。ランキング上位の売れ筋商品を中心にそろえるが、売り物であるジャズなどのコーナーにも力を入れる方針だ。
タワーレコードは現在、全国に82店を展開し、平均的な店舗面積は約560平方メートル。売上高の約半分は大型の路面店が稼いでいるが、CD市場は低迷が続いており、投資・運営コストの高い大型店は出しにくい状況だ。
ただ知名度の高い同社にはSCなどから出店要請があるため、初期投資を既存店の5割程度に抑えられる小型店を開発し、出店戦略の軸に据える。近年は店舗数の年間純増分が1店程度にとどまっていたが、小型店の積極出店で、店舗数を2~3年以内に90店程度へ引き上げる考えだ。
日立ディスプレイズ、台湾・奇美にパネル生産委託
日立ディスプレイズ(DP)は、鴻海精密工業傘下で液晶パネル世界3位の奇美電子(台湾)に中小型パネルの生産を委託する。奇美電子に液晶技術を供与、生産されたパネルを今年度中に中小型の多機能情報端末向けとして供給を始める。パネルメーカーが競合他社に生産委託するのは極めて異例。電子書籍など多機能端末の登場で中小型パネル需要は急増が見込まれ、他メーカーへも同じ事業モデルが広がる可能性がある。
日立DPが奇美電子に6~10型パネルを対象としたIPS液晶パネル技術を有償で提供。奇美電子は同型パネルを生産し、日立DPが買い取る。生産ラインを最大限活用した場合、生産面積は現在の8倍になるという。
日立DPは中小型液晶パネルシェアで世界6位だが、通常の液晶パネルに比べ、高輝度で視野角が広いIPS液晶で優位性を持つ。IPS液晶はパネルの感応度も高く、タッチパネルや3次元(3D)など、市場で人気を集めている高機能の製品に向く。千葉県茂原市の自社工場では、引き続きスマートフォン(多機能型携帯電話)や車載向けの小型液晶パネルを生産する。
日立DPが自前での完全生産から他社ラインの活用に転換するのは、投資を抑えつつ、拡大するパネル需要に対応するため。多くの国内の液晶パネルメーカーは2008年のリーマン・ショック以降、業績悪化から生産規模の縮小に踏み切った。市場では昨年後半からパネルの需要が回復しはじめたが、増産要請に応えられず海外の大手メーカーに受注を奪われるケースも起きている。
ただ自前ラインはすぐには拡張できない。日立DPは09年度の営業損益が60億円の赤字に転落。1日に人件費抑制策として製造子会社を立ち上げるなど事業構造改革を進めている最中で、新規の投資余力が限られる。このため、委託という形で固定費を抑制し、受注に早期に応える戦略に踏み切った。
中小型液晶パネル市場は今後も拡大が予想される。調査会社、米ディスプレイサーチは10.2型以下のミニノートパソコン市場は、2010年に約4652万台で、13年には約8277万台まで拡大すると予想。米アップルの多機能情報端末iPad(アイパッド)は、10年に約971万台、13年には約4261万台に上ると予測する。
さらに東芝がタッチパネル機能を備え電子書籍としても使える10型のタブレット型パソコンを発売。国内外の他社もアイパッドの対抗機種を準備しているもようで、他の国内パネルメーカーも生産委託へ踏み出す可能性がある。
プロミス、従業員の36%退社へ 966人が早期退職に応募
消費者金融大手のプロミスは1日、希望退職への応募が子会社の三洋信販を含め計966人となり、募集人員の900人を上回ったと発表した。両社を合わせた今年3月末の従業員2680人の約36%に相当する。
内訳はプロミスが720人で、三洋信販は246人で、10月末までに退社するという。割り増し退職金の支払いのため、2011年3月期に約68億円の特別損失を計上する見込み。
プロミスは6月の改正貸金業法の完全施行による規制強化に向け、事業規模を縮小するため、希望退職を募集した。
建機、中国で増産加速 コマツ・コベルコ・住友など
コマツをはじめ日本の建設機械メーカーが相次ぎ中国で油圧ショベルを増産する。コベルコ建機など一部企業は増産計画を積み増す。中国は沿岸部だけでなく、四川省など内陸部でもインフラ整備に伴う工事が活発で、油圧ショベルの需要は右肩上がりだ。急速な市場の拡大を背景に中国勢も成長しているが、燃費・耐久性能で勝る日本や韓国の有力企業が主導権争いを繰り広げている。
中国で外資首位のコマツは2010年度に前年度比30%増の1万9500台の中国生産を計画する。中国政府の景気刺激策もあり、「作ったそばから建機が売れる」(大手メーカー幹部)ほどの活況が続いている。コマツでも3~5月には、大阪工場(大阪府枚方市)から油圧ショベルを輸出し、中国の春節明けの需要急増分を補った。
成都と杭州に生産拠点を持つコベルコ建機は、09年に8千台だった年間生産能力を10年は当初75%増の1万4千台に引き上げる計画だったが、需要拡大を受け1万8千台と2.3倍に積み増す。能力増強の投資は数十億円規模とみられる。
住友建機は09年6月に唐山工場を稼働、昨年度は年間700台を生産した。今年度は20トン、24トン級の油圧ショベルを年間1200台生産する方針だったが、最大2千台に上方修正。年内には12トン、35トン級のショベルも投入する。10億~20億円を投じて設備増強も続け、11年度には年産能力を3千台にする。
6トン未満のミニ建機を主力に据えているIHI建機も、800台(前年比60%増)だった生産目標を1千台(前年の2倍)に上積みした。
コベルコ建機の推定によると、中国メーカーを除く油圧ショベルの中国での総需要(ミニショベル含む)は1~5月で6万2千台規模と、前年同期の2倍を超える。09年実績の約7万台を上回るのは確実という。
深海油田、リスク顕在化
規制強まり開発足踏み
英BPの原油流出事故が世界の石油産業に波紋を広げている。深海油田開発に関する各国政府の規制強化の動きや、BPが負担する損害賠償の巨額さでリスクが顕在化。開発足踏みによる生産量減退の不安も広がり始めた。米国などで業界の再編観測が浮上する一方、新興国の国営石油会社の存在感が上昇するなど、エネルギービジネスの構図も変わりかねない。
4月20日に石油掘削装置(リグ)の爆発事故が起きたメキシコ湾。同湾の沖合海底油田は米国の原油生産量の3割を占めるが、操業を止めるリグが相次ぐ。5月下旬、オバマ米大統領は1500メートルより深い海での新規開発認可の6カ月間停止とメキシコ湾での33基のリグの操業停止を発表。米国の油田関連サービス会社ベーカー・ヒューズによると、ルイジアナ州沖の稼働リグ数は事故前の半分以下に落ち込んだ。
英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは今夏にも掘削開始予定だったアラスカ沖の油田開発に待ったがかかった。ブラジル国営石油会社のペトロブラスもメキシコ湾での新規掘削が宙に浮いた状態。イタリアのENIもメキシコ湾で進行中だった油田開発を停止した。
産油量が減少へ
米エネルギー省は6月、沖合掘削の停止を理由に今年のメキシコ湾での産油量見通しを5月時点予想から7%下方修正。来年の見通しも12%引き下げた。輸入原油依存度の引き下げを目指すオバマ政権だが、BP事故への対応の遅れも批判され、開発促進には慎重にならざるをえない。
波紋は米国内にとどまらない。ノルウェー政府は米メキシコ湾での事故原因が究明されるまで、深海油田の開発を禁じる措置を取った。ブラジル石油監督庁(ANP)のリマ長官も先月、最高5000万レアル(約25億円)に設定されている、原油流出時の罰金を見直す可能性を示唆した。
安全性論議は他分野にも波及。米国では高圧の水で岩盤層を破壊する「シェールガス」開発、豪州では温暖化ガス排出抑制を狙った二酸化炭素(CO2)の地中封じ込めについて、安全性を巡る議論が起きている。
買収観測が浮上
安全対策規制などの強化による開発コスト増と巨額賠償リスクが業界再編につながるとの見方も広がる。事故発生以来、BPの株価はほぼ半額に下落。中国国有石油大手やロイヤル・ダッチ・シェルによる買収観測がささやかれる。複数の欧米金融機関はBPのアジアやアフリカ事業の買収案を作成、中国石油天然気集団(CNPC)などに提案している。
中小事業者にはさらに打撃が大きい。「リスク顕在化は、メジャー各社には大きな障害にはならないが、中小規模の企業にとっては(万一の場合に)破綻懸念などで影響が大きい」(米ストラテジック・エナジー&エコノミック・リサーチのマイケル・リンチ氏)
事故が起きた油田権益の25%を持つ米アナダルコの株価もほぼ半減。先月、ムーディーズ・インベスターズ・サービスが同社格付けを「投機的水準」に下げ、アナダルコが「非オペレーターとして投資しているだけ」と反論する事態になった。
米国でも規制強化の是非には意見が分かれる。ルイジアナ州の連邦地裁は6月22日、沖合油田掘削の凍結措置を無効とする判断を下し、米政府は上級審で争う姿勢だ。どこまで影響が広がるのか、他国も注視している。
日経社説
消費税の低所得者対策で軽口は禁物だ
選挙演説とはいえ、首相の発言としては軽率ではないだろうか。
菅直人首相は6月30日夕、山形市で消費税率の引き上げ問題に関して「所得の低い人には負担はかけない」と強調した。「年収300万、400万円以下の人には税金分だけ全額還付する方式」を例示し、超党派で議論すると述べた。
同日午前の青森市では「年収200万とか300万円」。午後の秋田市では「300万円とか350万円以下」が税還付の対象になると語り、発言は二転三転した。
歴代政権が国政選挙で避けてきた消費税増税の議論を菅首相が自ら提起したこと自体は評価できる。消費税率の引き上げに伴い、相対的に重い負担がのしかかる低所得者への配慮が必要になるのも分かる。だが、数字を挙げて議論をする以上は、冷静さと繊細さが欠かせない。
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2008年に年間所得が400万円未満の世帯は46.5%。厚生年金の平均的な受給額は夫婦2人世帯の満額で年間300万円弱だ。年金生活者を含む半数の世帯で消費税負担がゼロ。菅首相の言をそのまま解釈すれば、そんな姿になる。
消費税率が上がっても全額が還付されるなら、該当者には朗報だ。しかし5割近い世帯がその対象となるというなら、税率を引き上げても増収額は制約され、負担も偏る。
カナダでは低所得者の基礎的な支出にかかる付加価値税のみなし負担分を給付で戻す制度がある。政府税制調査会の資料では、夫婦と子2人の年間所得約270万円以下の世帯では満額の6万4000円。それ以上の所得なら給付額は徐々に減り、約400万円でゼロになる。
首相の念頭にあるのはこの制度かもしれない。だがカナダの例も、首相のいう「税金分の全額還付」ではない。揚げ足取りをするつもりはないが、首相の言は重い。場当たりの発言を続ければ、有権者を惑わしていると見られても仕方がない。
菅首相は一連の演説で、消費税負担の還付制度と同時に、食料品や生活必需品などの税率は低く設定する軽減税率の導入を選択肢に挙げた。還付制度には納税者番号など所得を正確につかむ仕組みが要るし、軽減税率には仕入れの状況をつかむインボイス(送り状)が不可欠だ。
骨太な税制改革を問うなら、もっと丁寧な議論が欠かせない。野党も対案を積極的に発信すべきだ。
始まった位置認識と画像認識の融合 モバイルAR
KDDIは7月1日、一般の携帯電話でAR(Augmented Reality、拡張現実)技術を利用できるアプリケーションの提供を始める。頓智・(とんちどっと、東京・新宿)と提携して開発した「セカイカメラZOOM」と呼ぶアプリで、ディスプレーに映した実空間に「エアタグ」と呼ぶ写真やテキストを重ね合わせて表示する。米クアルコムのアプリ実行環境「BREW4.0」を搭載する携帯電話にダウンロードして使うことができる。
このアプリはKDDIとKDDI研究所が共同で開発してきた携帯電話向けのARプラットフォーム「実空間透視ケータイ」を活用している。ただ対応機種の一部は電子コンパスを搭載していないため、端末の向きを認識できない。そこで携帯電話の左右キーを使いユーザーの周辺にあるエアタグを探す仕組みで代用することにした。
これまでモバイルARアプリを利用できる端末は、高機能な一部のスマートフォンに限られていた。KDDIはその枠を取り払いARアプリを一般の携帯電話へと広げようとしている。モバイルARを「実空間を使ってウェブにアクセスするブラウザー」(KDDI研究所のWebデータコンピューティンググループの小林亜令主任研究員)ととらえ、新たなコンテンツの流通プラットフォームにすることをめざしている。
気圧センサーやジャイロセンサーが登場
KDDIが2010年夏モデルの携帯電話として開発した「SOLAR PHONE SH007」には、「気圧センサー」が搭載された。もともとアウトドアで使うことを想定したものだが、「ビルの1フロアを上下したかどうか」という精度で垂直方向の移動を検知できる。このセンサー機能をモバイルARアプリに応用すれば、「今、ビルの何階にいる」ということまでわかり、全地球測位システム(GPS)にはできない新たなサービスの開発に結びつく可能性もある。
アップルは6月に発売したスマートフォン「iPhone4」に、端末の向きの変化を計測する「ジャイロセンサー」を搭載した。これと加速度センサーと組み合わせれば、端末の前後左右上下の6軸の動きを詳細に検出できる。「従来はこっちの方向にものがあるはずといった程度だった精度を、矢印で指し示すくらいに高められる」と、高機能なセンサーの普及に期待する声は多い。
複数のセンサー情報を掛け合わせれば、モバイルARの機能はさらに進化する。KDDI研究所が進めているのは「GPSを使わない位置追跡の研究」(小林主任研究員)だ。無線LAN基地局の情報や電子コンパスで把握した地磁気、加速度センサーで計測した方向を掛け合わせて、ユーザーが歩行しているか止まっているか、携帯電話をどのように持っているかを推定する。進行方向や歩幅、歩数を検出する技術の精度を高めれば、基準点からの相対的位置を追い続けることも不可能ではない。
画像認識方式のモバイルARでも、実空間を使ってシーン解析をするPTAM(Parallel Tracking and Mapping)といった技術が登場している。また、特定の場所から見える風景を稜線(りょうせん)や町並みなどから解析し、現在地を特定する「景観認識」の研究も進んでいる。
ただ、景観データを使って任意の位置を特定するには膨大なデータを処理する必要があり、そのままでは非現実的だ。そこで位置情報と画像認識を融合して、ARの精度を高めようとする取り組みもある。
例えば、渋谷駅前(東京・渋谷)のスクランブル交差点でモバイルARアプリを起動し、まずGPSや電子コンパスでおおよその場所と向きを把握して、景観データを絞り込む。次にカメラで読み取った実映像と絞り込んだ景観データを照合して端末の位置情報を補正する。これにより、周辺のビルに合わせて広告を表示するといった機能も実現できるようになる。あらかじめ渋谷のある地点から景観の中にある目印(特異点)を検出し、特定の場所に重ねてコンピューターグラフィックス(CG)を表示するデモだが、技術が進化するとこうしたサービスを場所を問わずに提供できるようになる。
ユーザーの行動を拡張してこそAR
技術やサービスが進化すれば、モバイルARで提供されるデジタル情報は飛躍的に増えていくだろう。米ジオベクターは、そうした情報にシステムで優先度を付けてユーザーに働き掛ける「Importance」と呼ぶ技術の特許を申請している。
例えば、ユーザーがゴーグルをかけて行動しているときに「爆弾」を発見すると、他の情報より優先して警告する。特に重要と思われるものを見つけると、ほかよりも解像度を高めて表示するといったユーザーインターフェースも施すという。「ARであり余るほどの情報が提供されるようになると、3~5秒程度で何が重要かを判断してユーザーに示す技術が重要になる」(パトリック・ブレイ国際事業シニア・ディレクター)。
現在のモバイルARは、エンターテインメントの要素が強く、今の携帯電話でできる範囲のサービスを提供しているにすぎない。人間の知覚や行動の限界を拡張するには、今後も様々なブレークスルーが必要だ。例えば携帯電話のディスプレーをかざす必要がないユーザーインターフェースなど、端末の形状一つとっても条件が整うまでには時間がかかりそうだ。
以前からARを研究している技術者は「ARでやるべきことは、コンピューター技術を使った実世界への物理的な刺激。現状ではまだできていないのが残念」と指摘する。特に肌身離さず持ち歩くモバイル機器だからこそ、人間の次の行動を支援する役割が求められる。
<FF14>ウィンドウズ版は9月30日に正式サービス開始 PS3版は来年3月
全世界で9700万本以上を出荷している人気ゲーム「ファイナルファンタジー」の最新作「ファイナルファンタジー(FF)14」のウィンドウズ版の正式サービス開始が9月30日になることが1日、明らかになった。プレイステーション(PS)3版は11年3月上旬の発売となる。
FF14は、PS3とウィンドウズ用のMMO(多人数接続型オンライン)RPGで、「エオルゼア」と呼ばれる大地を冒険する。日・米・独・仏の4カ国語に対応。FF11を手掛けた田中弘道プロデューサーと河本信昭ディレクターが開発、音楽は植松伸夫さんが担当する。ゲーム内アイテムの「オニオンへルム」やメーキングDVDなどが付いたコレクターズエディションを9月22日に発売し、通常版を同30日に発売(ともにオープン価格)。30日間で1344円の定額課金制となる。
携帯ソーシャルゲーム「恋してキャバ嬢」、300万会員突破
ソーシャルアプリ開発のKLabGamesは7月1日、「mixi」「モバゲータウン」「GREE」向けに提供している携帯電話向けソーシャルゲーム「恋してキャバ嬢」の会員数が合計で300万を突破したと発表した。
ナンバーワンの売れっ子キャバクラ嬢を目指す育成ゲーム。店を訪れる“イケメン”を接客して給料を稼ぐと、ドレスなどのアバターアイテムをゲットできる。ほかのプレイヤーが操作するキャバ嬢をヘルプして稼ぐなどソーシャル要素も。イケメン客との恋愛も疑似体験できる。
昨年12月からmixiで、今年4月からはモバゲータウンで提供を始め、今年5月に150万会員を突破。6月29日からGREEでも利用できるようになった。mixiから利用している会員のうち、F1層(20歳から34歳までの女性)が73%を占めている。
20代の女性チームが企画・運営しており、ゲームのテーマやアバターのデザインが女性に受けたことや、口コミ効果などで、会員数が増えたとしている。ユーザーの急増やアクセス数増加にも柔軟に対応できるサーバのスケーラビリティ・安定性も確保しているという。
Microsoft、独自携帯「KIN」の開発終了 発売から2カ月足らずで
米Microsoftは独自ブランドの新世代スマートフォン「KIN」の開発中止を決定した。この端末は、急成長中のモバイル市場においてAppleやGoogleに後れを取るまいと、Microsoftが独自に設計したもので、発売からはまだ2カ月も経っていない。
Microsoftは6月30日、今秋欧州でKINを発売する計画を取り止めたと発表した。さらに同社は、KIN担当の社内チームを、Microsoftが目下開発中のWindows Phone 7ソフトウェアの開発グループに統合することも明らかにした。
「米国では、Verizonと共同で現行のKINの販売を続ける」とMicrosoftはメールで配信した声明で説明している。
KINは、ソフトウェア大手のMicrosoftが初めて独自に設計した携帯端末。発売された2つのモデルはどちらも、インターネットのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)機能とMicrosoftのデジタル音楽プレーヤー「Zune」を搭載し、若年層の熱心な携帯ユーザーをターゲットに据えていた。
Microsoftは今年5月にVerizon Wirelessと共同でKINの販売を開始した。Verizon Wirelessは米国最大の携帯電話キャリアで、米Verizon Communicationsと英Vodafone Groupの合弁事業だ。
気象協会、ツイッター使う自治体向け防災情報提供サービス
日本気象協会(東京・豊島)は1日、インターネットのミニブログ「ツイッター」を使って防災情報を収集・提供する自治体向けサービス「Tweet―Report」を始めた。利用者が「土砂降り」「豪雨」などの検索キーワードを設定すると、関連するつぶやきを幅広く収集。当該地域の住民に向けても、情報をリアルタイムで発信できる。
主に地方自治体や防災関連機関などの利用を見込む。サービスはソフトの期間貸し(ASP)で提供し、利用料は月額3万円(税別)。導入費は無料。避難所情報やハザードマップ(被害予想図)などの情報を織り込むなど、利用者に応じて仕様を拡張する企画コンサルティングも手掛ける。
au、iidaの新商品発表に合わせて展示会開催
KDDIは、7月13日にiidaブランドの新商品と、iida Art Editionのコンセプト作品を発表する。同日、表参道ヒルズにおいて、一般ユーザーを対象とした展示会「iida EXHIBITION 2010 SUMMER」が開催される。
7月13日、iidaブランドの新商品とArt Editionのコンセプト作品が発表される。KDDIでは、7月13日17時から一般ユーザーが新商品やコンセプト作品を確認できる展示会を開催する。
当日はiidaの新商品に触れるほか、今回のプロジェクトに携わった「100%」のプロダクトデザイナー坪井浩尚氏、映像作家・音楽家の高木正勝氏、彫刻家の名和晃平氏、フラワーアーティストの東信氏らが登場、新商品やコンセプト作品の世界観をインスタレーション(空間芸術)が体験できる。
「iida EXHIBITION 2010 SUMMER」の開催は7月13日、17時~20時50分(最終入場20時30分)。場所は表参道ヒルズB3Fのスペース オー。
衣類輸入、中国が圧倒的存在感
日本が輸入する衣類の国別輸入量シェアで、中国が圧倒的な存在感を示している。財務省の貿易統計などを基に日本繊維輸入組合(東京・中央)がまとめたところ、2009年に輸入された104万トンのうち89.8%が中国からだった。
大量生産できる能力を備えた工場が多いうえ、糸など素材は現地でまかなえる。日本企業の技術指導もあり、品質は高水準。近隣国で追加発注にも素早く対応可能と、競争力は高い。
ただ最近は人件費の上昇が目立つ。安定供給できる体制を整えるため、ファーストリテイリングのように中国への集中発注を見直す動きが広がってきた。09年の中国のシェアはピークだった07年より1.9ポイント下がった。
こうした中、シェアを伸ばしているのがベトナム(09年に3.6%)とバングラデシュ(同0.7%)。ベトナムは優秀な労働力を抱え、製造コストが低い。バングラデシュは欧米のファストファッションの生産を手がけ、製品が日本に流入している。
衣類の国内供給量に占める輸入品の比率は一貫して高まり、09年は95.4%に達している。
日経平均、7カ月ぶり低水準 円高懸念で連日の安値更新
トヨタ、ソニーなど下げる
1日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に5日続落した。大引けは前日比191円04銭(2.04%)安の9191円60銭と連日で年初来安値を更新し、2009年11月27日(9081円)以来、約7カ月ぶりの安値水準となった。前日の米株安を嫌気したほか、中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が2カ月連続で悪化し、世界景気の回復ペースの鈍化懸念が台頭。輸出関連株を中心に売りが広がった。外国為替市場で円相場が対ドルで1ドル=88円ちょうど近辺に接近する場面があるなど円高進行への懸念も重荷になった。日経平均の下げ幅は一時234円に達した。
後場は新たな取引材料に乏しく、為替相場をにらみながら安値圏で神経質な展開となった。円相場が対主要通貨で伸び悩んだ局面では日経平均は下げ幅を縮めたが、再び円が強含むと株式相場の売り圧力も強まった。市場では「為替の行方を占う上でも引き続き欧州を含む海外市場の動向を見極めたい」(明和証券の矢野正義シニア・マーケットアナリスト)との声が聞かれた。1日は米国で6月のサプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数など重要な経済指標が発表されるため、様子見ムードも強かった。
日銀が前場寄り付き前に発表した企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス1と2年ぶりにプラスに転じた。国内企業の景況感改善が示されことを評価する声がある一方、「外部環境に左右されやすい日本株にとっては海外の景気や株価動向が気掛かり」として、これを材料にした買いは限定的だった。
百貨店売上高、大手4社いずれも減少 6月、衣料など不振
大手百貨店4社が1日発表した6月の営業状況(速報値)は、既存店売上高が前年同月比2.3~12.0%減少した。中元の受注や衣料品販売が振るわなかった。株価の低迷も顧客心理に影響したとみられ、5月に前年実績を上回っていた大丸松坂屋百貨店と高島屋も6月は再びマイナスとなった。
各社の売上高は、三越伊勢丹ホールディングス傘下の伊勢丹が2.3%減、三越が12.0%減。大丸松坂屋百貨店は2.5%、高島屋は5.5%それぞれ減った。三越は銀座店(東京・中央)の営業面積が改装のために狭くなったことが響いた。
菅内閣メルマガ、見通し立たず 発行するかどうかも不明
最近の歴代内閣が原則週1回発行してきたメールマガジンが、菅内閣になって宙に浮いている。鳩山前内閣の最終号発行から1日で4週間が経過し、過去最長の空白期間が生じているが、いまだ「発行の是非の検討も進んでいない」(内閣広報室)と手つかずだ。
内閣のメルマガは平成13年6月に当時の小泉純一郎首相が始めた。その後も各内閣が引き継ぎ、発行が遅れた麻生、鳩山両内閣でも前内閣の最終号の発行から4週間目には配信を始めた。小泉政権ではピーク時で227万人の読者がいたが、鳩山内閣では28万人にまで減っていた。
失言を恐れてか、国会論戦も記者対応も避けがちな菅直人首相。質問を受けずに国民に直接訴えることができるメルマガは有力な手段のはずだが…。
記者の目◇インプレス、電子書籍で期待される中堅ならではの「冒険」
6月29日に開催のピークを迎えた3月期決算企業の株主総会。議決権行使結果の開示や社外取締役の独立性、役員報酬などが注目されたが、株主にとって気になるのはやはり事業の将来性だ。今年の総会でも成長戦略を巡るテーマの中でも関心が高かったのが「電子書籍」だ。
26日に開かれたインプレスホールディングスの株主総会でも「電子書籍」が重要なキーワードだった。同社は米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」の発売日に株価が上昇するなど、市場でも電子書籍関連とみなす動きがある。出版業界では中堅に位置づけられるインプレスは、電子書籍関連事業でどのように成長する可能性があるのか。
iPad向けのアプリケーションの説明を受ける株主=26日、東京・千代田のインプレス株主総会会場
「昨年度に構造改革はいったん終えた。今後は少なからず成長していくフェーズに入りつつある」。関本彰大社長は総会で、不採算事業の整理に徹した前期とは異なり今期は成長期に推移しつつあることを強調した。4つの成長指針の最後に挙げたのが電子書籍販売や携帯端末向けなどの新規事業モデルの開発だった。ただ、収益性については「まだまだ読みにくい」(関本社長)のが実情。「既に電子書籍市場が立ち上がっている米国でもビジネス上の売り上げにどこまで還元されてくるのかは読みにくい」と慎重な言い回しに終始した。
モバイルや電子書籍関連の新規事業開発を担う子会社のインプレスタッチの2010年3月期は1億2000万円の営業赤字だった。関本社長は株主総会で「新しいビジネスモデルを開発する先行投資会社で、損失が先に出ている」と説明。他の出版社を見渡しても電子書籍関連のサービスは現時点ではまだ話題や投資が先行している状況だ。
まだ混とんとした状態の電子書籍ビジネスにおいて、インプレスの位置づけをどう見ればよいのだろうか。あえて言うなら業界中堅ならではの「冒険」ができるということだろう。
アップルやアマゾンの攻勢に対して国内では出版業界や電機・通信業界などが中心となって独自の配信プラットフォームをつくろうとする動きもある。どの仕様がデファクトスタンダード(事実上の業界標準)化していくのか、それとも多くの仕様が乱立するのかすらわからない。守るものが多い大手と違い、インプレスのような中堅や専門性の強い出版社はプラットフォームに依存せず、幅広い読者層に向けたアプローチが可能かもしれない。
株主総会後、会場の隣に設けられた懇談会場では株主の関心は電子書籍に向かっていた。iPadや携帯電話端末向けサービスのコーナーでは、傘下の「山と渓谷社」が配信しているアプリケーションなどが話題となった。山岳の写真集を無料でiPadやiPhone(アイフォーン)で閲覧できる。会場では、株主が入れ替わり立ち替わりで説明員の話を聞きながら、手にとって熱心に操作していた。「現状では小説などの文章中心のコンテンツよりも、写真などの目に訴えるコンテンツの方が受け入れられるのではないか」と関本社長は見る。
傘下に電子媒体を持つインプレスでは、コンテンツの電子媒体向け加工や配信システムの開発にも柔軟に取り組める。積極的なトライアルをノウハウの蓄積や先行者利益につなげやすい立ち位置にいる。市場の拡大期が訪れた時にしっかりと収益を取り込めるだけの蓄積をすることができるのか。勝負の時はそれほど先ではないだろう。
KDDIは7月1日、一般の携帯電話でAR(Augmented Reality、拡張現実)技術を利用できるアプリケーションの提供を始める。頓智・(とんちどっと、東京・新宿)と提携して開発した「セカイカメラZOOM」と呼ぶアプリで、ディスプレーに映した実空間に「エアタグ」と呼ぶ写真やテキストを重ね合わせて表示する。米クアルコムのアプリ実行環境「BREW4.0」を搭載する携帯電話にダウンロードして使うことができる。
このアプリはKDDIとKDDI研究所が共同で開発してきた携帯電話向けのARプラットフォーム「実空間透視ケータイ」を活用している。ただ対応機種の一部は電子コンパスを搭載していないため、端末の向きを認識できない。そこで携帯電話の左右キーを使いユーザーの周辺にあるエアタグを探す仕組みで代用することにした。
これまでモバイルARアプリを利用できる端末は、高機能な一部のスマートフォンに限られていた。KDDIはその枠を取り払いARアプリを一般の携帯電話へと広げようとしている。モバイルARを「実空間を使ってウェブにアクセスするブラウザー」(KDDI研究所のWebデータコンピューティンググループの小林亜令主任研究員)ととらえ、新たなコンテンツの流通プラットフォームにすることをめざしている。
気圧センサーやジャイロセンサーが登場
KDDIが2010年夏モデルの携帯電話として開発した「SOLAR PHONE SH007」には、「気圧センサー」が搭載された。もともとアウトドアで使うことを想定したものだが、「ビルの1フロアを上下したかどうか」という精度で垂直方向の移動を検知できる。このセンサー機能をモバイルARアプリに応用すれば、「今、ビルの何階にいる」ということまでわかり、全地球測位システム(GPS)にはできない新たなサービスの開発に結びつく可能性もある。
アップルは6月に発売したスマートフォン「iPhone4」に、端末の向きの変化を計測する「ジャイロセンサー」を搭載した。これと加速度センサーと組み合わせれば、端末の前後左右上下の6軸の動きを詳細に検出できる。「従来はこっちの方向にものがあるはずといった程度だった精度を、矢印で指し示すくらいに高められる」と、高機能なセンサーの普及に期待する声は多い。
複数のセンサー情報を掛け合わせれば、モバイルARの機能はさらに進化する。KDDI研究所が進めているのは「GPSを使わない位置追跡の研究」(小林主任研究員)だ。無線LAN基地局の情報や電子コンパスで把握した地磁気、加速度センサーで計測した方向を掛け合わせて、ユーザーが歩行しているか止まっているか、携帯電話をどのように持っているかを推定する。進行方向や歩幅、歩数を検出する技術の精度を高めれば、基準点からの相対的位置を追い続けることも不可能ではない。
画像認識方式のモバイルARでも、実空間を使ってシーン解析をするPTAM(Parallel Tracking and Mapping)といった技術が登場している。また、特定の場所から見える風景を稜線(りょうせん)や町並みなどから解析し、現在地を特定する「景観認識」の研究も進んでいる。
ただ、景観データを使って任意の位置を特定するには膨大なデータを処理する必要があり、そのままでは非現実的だ。そこで位置情報と画像認識を融合して、ARの精度を高めようとする取り組みもある。
例えば、渋谷駅前(東京・渋谷)のスクランブル交差点でモバイルARアプリを起動し、まずGPSや電子コンパスでおおよその場所と向きを把握して、景観データを絞り込む。次にカメラで読み取った実映像と絞り込んだ景観データを照合して端末の位置情報を補正する。これにより、周辺のビルに合わせて広告を表示するといった機能も実現できるようになる。あらかじめ渋谷のある地点から景観の中にある目印(特異点)を検出し、特定の場所に重ねてコンピューターグラフィックス(CG)を表示するデモだが、技術が進化するとこうしたサービスを場所を問わずに提供できるようになる。
ユーザーの行動を拡張してこそAR
技術やサービスが進化すれば、モバイルARで提供されるデジタル情報は飛躍的に増えていくだろう。米ジオベクターは、そうした情報にシステムで優先度を付けてユーザーに働き掛ける「Importance」と呼ぶ技術の特許を申請している。
例えば、ユーザーがゴーグルをかけて行動しているときに「爆弾」を発見すると、他の情報より優先して警告する。特に重要と思われるものを見つけると、ほかよりも解像度を高めて表示するといったユーザーインターフェースも施すという。「ARであり余るほどの情報が提供されるようになると、3~5秒程度で何が重要かを判断してユーザーに示す技術が重要になる」(パトリック・ブレイ国際事業シニア・ディレクター)。
現在のモバイルARは、エンターテインメントの要素が強く、今の携帯電話でできる範囲のサービスを提供しているにすぎない。人間の知覚や行動の限界を拡張するには、今後も様々なブレークスルーが必要だ。例えば携帯電話のディスプレーをかざす必要がないユーザーインターフェースなど、端末の形状一つとっても条件が整うまでには時間がかかりそうだ。
以前からARを研究している技術者は「ARでやるべきことは、コンピューター技術を使った実世界への物理的な刺激。現状ではまだできていないのが残念」と指摘する。特に肌身離さず持ち歩くモバイル機器だからこそ、人間の次の行動を支援する役割が求められる。
<FF14>ウィンドウズ版は9月30日に正式サービス開始 PS3版は来年3月
全世界で9700万本以上を出荷している人気ゲーム「ファイナルファンタジー」の最新作「ファイナルファンタジー(FF)14」のウィンドウズ版の正式サービス開始が9月30日になることが1日、明らかになった。プレイステーション(PS)3版は11年3月上旬の発売となる。
FF14は、PS3とウィンドウズ用のMMO(多人数接続型オンライン)RPGで、「エオルゼア」と呼ばれる大地を冒険する。日・米・独・仏の4カ国語に対応。FF11を手掛けた田中弘道プロデューサーと河本信昭ディレクターが開発、音楽は植松伸夫さんが担当する。ゲーム内アイテムの「オニオンへルム」やメーキングDVDなどが付いたコレクターズエディションを9月22日に発売し、通常版を同30日に発売(ともにオープン価格)。30日間で1344円の定額課金制となる。
携帯ソーシャルゲーム「恋してキャバ嬢」、300万会員突破
ソーシャルアプリ開発のKLabGamesは7月1日、「mixi」「モバゲータウン」「GREE」向けに提供している携帯電話向けソーシャルゲーム「恋してキャバ嬢」の会員数が合計で300万を突破したと発表した。
ナンバーワンの売れっ子キャバクラ嬢を目指す育成ゲーム。店を訪れる“イケメン”を接客して給料を稼ぐと、ドレスなどのアバターアイテムをゲットできる。ほかのプレイヤーが操作するキャバ嬢をヘルプして稼ぐなどソーシャル要素も。イケメン客との恋愛も疑似体験できる。
昨年12月からmixiで、今年4月からはモバゲータウンで提供を始め、今年5月に150万会員を突破。6月29日からGREEでも利用できるようになった。mixiから利用している会員のうち、F1層(20歳から34歳までの女性)が73%を占めている。
20代の女性チームが企画・運営しており、ゲームのテーマやアバターのデザインが女性に受けたことや、口コミ効果などで、会員数が増えたとしている。ユーザーの急増やアクセス数増加にも柔軟に対応できるサーバのスケーラビリティ・安定性も確保しているという。
Microsoft、独自携帯「KIN」の開発終了 発売から2カ月足らずで
米Microsoftは独自ブランドの新世代スマートフォン「KIN」の開発中止を決定した。この端末は、急成長中のモバイル市場においてAppleやGoogleに後れを取るまいと、Microsoftが独自に設計したもので、発売からはまだ2カ月も経っていない。
Microsoftは6月30日、今秋欧州でKINを発売する計画を取り止めたと発表した。さらに同社は、KIN担当の社内チームを、Microsoftが目下開発中のWindows Phone 7ソフトウェアの開発グループに統合することも明らかにした。
「米国では、Verizonと共同で現行のKINの販売を続ける」とMicrosoftはメールで配信した声明で説明している。
KINは、ソフトウェア大手のMicrosoftが初めて独自に設計した携帯端末。発売された2つのモデルはどちらも、インターネットのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)機能とMicrosoftのデジタル音楽プレーヤー「Zune」を搭載し、若年層の熱心な携帯ユーザーをターゲットに据えていた。
Microsoftは今年5月にVerizon Wirelessと共同でKINの販売を開始した。Verizon Wirelessは米国最大の携帯電話キャリアで、米Verizon Communicationsと英Vodafone Groupの合弁事業だ。
気象協会、ツイッター使う自治体向け防災情報提供サービス
日本気象協会(東京・豊島)は1日、インターネットのミニブログ「ツイッター」を使って防災情報を収集・提供する自治体向けサービス「Tweet―Report」を始めた。利用者が「土砂降り」「豪雨」などの検索キーワードを設定すると、関連するつぶやきを幅広く収集。当該地域の住民に向けても、情報をリアルタイムで発信できる。
主に地方自治体や防災関連機関などの利用を見込む。サービスはソフトの期間貸し(ASP)で提供し、利用料は月額3万円(税別)。導入費は無料。避難所情報やハザードマップ(被害予想図)などの情報を織り込むなど、利用者に応じて仕様を拡張する企画コンサルティングも手掛ける。
au、iidaの新商品発表に合わせて展示会開催
KDDIは、7月13日にiidaブランドの新商品と、iida Art Editionのコンセプト作品を発表する。同日、表参道ヒルズにおいて、一般ユーザーを対象とした展示会「iida EXHIBITION 2010 SUMMER」が開催される。
7月13日、iidaブランドの新商品とArt Editionのコンセプト作品が発表される。KDDIでは、7月13日17時から一般ユーザーが新商品やコンセプト作品を確認できる展示会を開催する。
当日はiidaの新商品に触れるほか、今回のプロジェクトに携わった「100%」のプロダクトデザイナー坪井浩尚氏、映像作家・音楽家の高木正勝氏、彫刻家の名和晃平氏、フラワーアーティストの東信氏らが登場、新商品やコンセプト作品の世界観をインスタレーション(空間芸術)が体験できる。
「iida EXHIBITION 2010 SUMMER」の開催は7月13日、17時~20時50分(最終入場20時30分)。場所は表参道ヒルズB3Fのスペース オー。
衣類輸入、中国が圧倒的存在感
日本が輸入する衣類の国別輸入量シェアで、中国が圧倒的な存在感を示している。財務省の貿易統計などを基に日本繊維輸入組合(東京・中央)がまとめたところ、2009年に輸入された104万トンのうち89.8%が中国からだった。
大量生産できる能力を備えた工場が多いうえ、糸など素材は現地でまかなえる。日本企業の技術指導もあり、品質は高水準。近隣国で追加発注にも素早く対応可能と、競争力は高い。
ただ最近は人件費の上昇が目立つ。安定供給できる体制を整えるため、ファーストリテイリングのように中国への集中発注を見直す動きが広がってきた。09年の中国のシェアはピークだった07年より1.9ポイント下がった。
こうした中、シェアを伸ばしているのがベトナム(09年に3.6%)とバングラデシュ(同0.7%)。ベトナムは優秀な労働力を抱え、製造コストが低い。バングラデシュは欧米のファストファッションの生産を手がけ、製品が日本に流入している。
衣類の国内供給量に占める輸入品の比率は一貫して高まり、09年は95.4%に達している。
日経平均、7カ月ぶり低水準 円高懸念で連日の安値更新
トヨタ、ソニーなど下げる
1日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に5日続落した。大引けは前日比191円04銭(2.04%)安の9191円60銭と連日で年初来安値を更新し、2009年11月27日(9081円)以来、約7カ月ぶりの安値水準となった。前日の米株安を嫌気したほか、中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が2カ月連続で悪化し、世界景気の回復ペースの鈍化懸念が台頭。輸出関連株を中心に売りが広がった。外国為替市場で円相場が対ドルで1ドル=88円ちょうど近辺に接近する場面があるなど円高進行への懸念も重荷になった。日経平均の下げ幅は一時234円に達した。
後場は新たな取引材料に乏しく、為替相場をにらみながら安値圏で神経質な展開となった。円相場が対主要通貨で伸び悩んだ局面では日経平均は下げ幅を縮めたが、再び円が強含むと株式相場の売り圧力も強まった。市場では「為替の行方を占う上でも引き続き欧州を含む海外市場の動向を見極めたい」(明和証券の矢野正義シニア・マーケットアナリスト)との声が聞かれた。1日は米国で6月のサプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数など重要な経済指標が発表されるため、様子見ムードも強かった。
日銀が前場寄り付き前に発表した企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス1と2年ぶりにプラスに転じた。国内企業の景況感改善が示されことを評価する声がある一方、「外部環境に左右されやすい日本株にとっては海外の景気や株価動向が気掛かり」として、これを材料にした買いは限定的だった。
百貨店売上高、大手4社いずれも減少 6月、衣料など不振
大手百貨店4社が1日発表した6月の営業状況(速報値)は、既存店売上高が前年同月比2.3~12.0%減少した。中元の受注や衣料品販売が振るわなかった。株価の低迷も顧客心理に影響したとみられ、5月に前年実績を上回っていた大丸松坂屋百貨店と高島屋も6月は再びマイナスとなった。
各社の売上高は、三越伊勢丹ホールディングス傘下の伊勢丹が2.3%減、三越が12.0%減。大丸松坂屋百貨店は2.5%、高島屋は5.5%それぞれ減った。三越は銀座店(東京・中央)の営業面積が改装のために狭くなったことが響いた。
菅内閣メルマガ、見通し立たず 発行するかどうかも不明
最近の歴代内閣が原則週1回発行してきたメールマガジンが、菅内閣になって宙に浮いている。鳩山前内閣の最終号発行から1日で4週間が経過し、過去最長の空白期間が生じているが、いまだ「発行の是非の検討も進んでいない」(内閣広報室)と手つかずだ。
内閣のメルマガは平成13年6月に当時の小泉純一郎首相が始めた。その後も各内閣が引き継ぎ、発行が遅れた麻生、鳩山両内閣でも前内閣の最終号の発行から4週間目には配信を始めた。小泉政権ではピーク時で227万人の読者がいたが、鳩山内閣では28万人にまで減っていた。
失言を恐れてか、国会論戦も記者対応も避けがちな菅直人首相。質問を受けずに国民に直接訴えることができるメルマガは有力な手段のはずだが…。
記者の目◇インプレス、電子書籍で期待される中堅ならではの「冒険」
6月29日に開催のピークを迎えた3月期決算企業の株主総会。議決権行使結果の開示や社外取締役の独立性、役員報酬などが注目されたが、株主にとって気になるのはやはり事業の将来性だ。今年の総会でも成長戦略を巡るテーマの中でも関心が高かったのが「電子書籍」だ。
26日に開かれたインプレスホールディングスの株主総会でも「電子書籍」が重要なキーワードだった。同社は米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」の発売日に株価が上昇するなど、市場でも電子書籍関連とみなす動きがある。出版業界では中堅に位置づけられるインプレスは、電子書籍関連事業でどのように成長する可能性があるのか。
iPad向けのアプリケーションの説明を受ける株主=26日、東京・千代田のインプレス株主総会会場
「昨年度に構造改革はいったん終えた。今後は少なからず成長していくフェーズに入りつつある」。関本彰大社長は総会で、不採算事業の整理に徹した前期とは異なり今期は成長期に推移しつつあることを強調した。4つの成長指針の最後に挙げたのが電子書籍販売や携帯端末向けなどの新規事業モデルの開発だった。ただ、収益性については「まだまだ読みにくい」(関本社長)のが実情。「既に電子書籍市場が立ち上がっている米国でもビジネス上の売り上げにどこまで還元されてくるのかは読みにくい」と慎重な言い回しに終始した。
モバイルや電子書籍関連の新規事業開発を担う子会社のインプレスタッチの2010年3月期は1億2000万円の営業赤字だった。関本社長は株主総会で「新しいビジネスモデルを開発する先行投資会社で、損失が先に出ている」と説明。他の出版社を見渡しても電子書籍関連のサービスは現時点ではまだ話題や投資が先行している状況だ。
まだ混とんとした状態の電子書籍ビジネスにおいて、インプレスの位置づけをどう見ればよいのだろうか。あえて言うなら業界中堅ならではの「冒険」ができるということだろう。
アップルやアマゾンの攻勢に対して国内では出版業界や電機・通信業界などが中心となって独自の配信プラットフォームをつくろうとする動きもある。どの仕様がデファクトスタンダード(事実上の業界標準)化していくのか、それとも多くの仕様が乱立するのかすらわからない。守るものが多い大手と違い、インプレスのような中堅や専門性の強い出版社はプラットフォームに依存せず、幅広い読者層に向けたアプローチが可能かもしれない。
株主総会後、会場の隣に設けられた懇談会場では株主の関心は電子書籍に向かっていた。iPadや携帯電話端末向けサービスのコーナーでは、傘下の「山と渓谷社」が配信しているアプリケーションなどが話題となった。山岳の写真集を無料でiPadやiPhone(アイフォーン)で閲覧できる。会場では、株主が入れ替わり立ち替わりで説明員の話を聞きながら、手にとって熱心に操作していた。「現状では小説などの文章中心のコンテンツよりも、写真などの目に訴えるコンテンツの方が受け入れられるのではないか」と関本社長は見る。
傘下に電子媒体を持つインプレスでは、コンテンツの電子媒体向け加工や配信システムの開発にも柔軟に取り組める。積極的なトライアルをノウハウの蓄積や先行者利益につなげやすい立ち位置にいる。市場の拡大期が訪れた時にしっかりと収益を取り込めるだけの蓄積をすることができるのか。勝負の時はそれほど先ではないだろう。
モバイルAR 位置情報活用のカギはデータベースにあり
スマートフォンを使ったモバイルAR(Augmented Reality、拡張現実)技術は、全地球測位システム(GPS)などから得られる位置情報を基にした位置情報型と、内蔵カメラからの画像を認識して使う画像認識型に大別できる。
位置情報型のARアプリケーションは、ユーザーの現在位置やカメラの向きにマッチした情報を画面上に重ね合わせて提供する。今のところ、周辺施設の情報や経路、建物の説明といったサービスが中心だ。
ゴルフコースの情報を表示
NTTドコモは2010年6月、「ゴルフ版直感ナビ」と呼ぶモバイルARアプリを公開した。このアプリをダウンロードした携帯電話のカメラでゴルフコースを映すと、グリーンやバンカーの方角や距離などを実映像に重ね合わせた形で表示する。携帯電話のGPS機能でどのゴルフ場の何番ホールのコース上にいるかを把握し、適したコース情報を提供する。
ゴルフ場のデータベースはパー七十二プラザ(東京・墨田)から提供を受けた。同社は「Shot Navi(ショットナビ)」と呼ぶGPSを使ったゴルフナビゲーションシステムを運用しており、日本国内の98%のゴルフ場のコースデータを持っている。データベースには多い場合でグリーンや池、バンカーなど十数カ所の緯度経度情報が入っている。これらが、ティーグラウンドからグリーン方向を向いたときに携帯電話に映し出される。
NTTドコモはこれまで独自システムで「直感検索」「直感ナビ」といったモバイルARサービスを研究してきた。ゼンリンデータコムの法人向け地図ASPサービス「いつもNAVI」(旧「e-map」)と連携し、位置情報を活用して地図や飲食店の情報といった実用的なコンテンツを提供する仕組みだ。
しかし、街中で携帯電話のカメラをかざすというARアプリの使い方は、人ごみや電車内では人目が気になり、場合によってはあらぬ疑いをかけられる可能性もある。そこで、カメラを抵抗なくかざせる場所としてゴルフ場に目を付けた。NTTドコモ研究開発センターサービス&ソリューション開発部の小笠原史サービス戦略担当課長は「これまでNTTドコモがモバイルARで培ったノウハウの一つの出口」と意気込みを見せる。
使い勝手をよくするために、「ユーザーインターフェースにも工夫を凝らした」(研究開発センターサービス&ソリューション開発部サービス戦略担当の長谷川慎氏)という。アプリはゴルフ場の起伏に対応していないため、そのままでは画面上にグリーンやバンカーなどの情報が重なってしまい読み取りずらい。このため表示方向を工夫して視認性を高める仕組みを作りこんだ。
リアルタイム情報を提供
三井不動産販売が5月24日に開始した駐車場案内サービス「『今から』停められる駐車場検索サービス」は、オランダのLAYAR B.V.(旧SPRXMobile)が開発した「Layar」というモバイルARプラットフォームを利用している。GPSの現在位置情報とユーザーが端末に設定した検索範囲(50メートル~1キロメートルまで5段階)を基に、周辺の空き駐車場の情報を提供する。
端末からの情報はいったんLayarのサーバーが中継し、駐車場検索アプリを開発したアットウェア(横浜市)のサーバーに送る。アットウェアのサーバーは三井不動産販売のデータベースに接続して、該当する範囲にある駐車場の緯度経度情報と空き状況を問い合わせる。Layarのサーバーを経由して検索結果を受け取った端末は、端末内の電子コンパスで端末の方向を、加速度センサーで端末の向きを察知し、端末の向きと同じ方向にある駐車場を実映像に重ねる形でアイコンとして表示する。
このサービスは、位置や方向などのセンサーとして働く端末とネットワーク上にあるデータベースがリアルタイムで連携しているのが特徴だ。三井不動産販売は全国約3800カ所の駐車場の満車・空き情報のデータベースをリアルタイムで管理している。現在地を基に場所を教えるだけでなく、データベース内の最新情報を取り出すことで、利便性を高めている。
緯度経度以外の情報との連携が必須に
位置情報型モバイルARは、データベース化された位置情報にどのような情報を連携して表現するかがサービスのカギだ。ARアプリ「セカイカメラ」を開発した頓智・(とんちどっと、東京・新宿)の井口尊仁最高経営責任者(CEO)は、「現在、緯度経度だけで示されている位置情報には、高さや広さ、奥行きといった物理概念や現在、過去といったタイムラインの視点が欠けている」という。
ある場所で人がかつてとった行動や、人がその場所にAR情報として残していったものなどが、ソーシャルなデータとして蓄積されれば、従来にないサービスを提供できるという。そのためには緯度経度にとどまらないデータベースの蓄積が必要になってくる。
KDDI研究所Webデータコンピューティンググループの小林亜令主任研究員は「センサーデータマイニング」と呼ぶ考えを示す。ユーザーと一緒に移動するモバイル機器のセンサーが集めた位置情報などの大量の情報を加工、変換、マッチングさせて有益な情報を抽出する。こうした技術が向上していけば「ユーザーが今何をどこでしているというプレゼンス情報を取得して、様々なサービスを提供できる」(小林研究員)という。
まだ少ない電子コンパス搭載機
より詳細な情報を提供するためには、位置情報の精度も重要になる。携帯電話に搭載されているGPSには最小でも5メートル程度の誤差があり、地下街などGPS衛星が見えない場所での測位も難しい。ビルの何階にいるかといった上下方向の位置も測定できない。
このため無線LANや携帯電話の基地局のデータがGPSを補完する位置情報として期待されている。位置情報を中心としたシステムを開発するクウジット(東京・港)は6月、無線LANを利用して屋内でも位置を推定できる「PlaceEngine屋内測位ソリューション」をグーグルの携帯向けOS「Android(アンドロイド)」を搭載したスマートフォンに対して提供を始めた。ただ、米アップルは今年3月以降、PlaceEngineのような無線LANの電波を扱う「iPhone」用アプリの公開を停止している。
携帯電話の基地局情報をスマートフォンから活用することも現時点では難しい。「基地局の情報は『iモード』などクローズドな環境に限り提供しているが、オープンなスマートフォン向けには公開していない」(NTTドコモ)という。基地局の所在情報を公開するうえで必要なセキュリティーポリシーの変更やシステム改修にかかるコスト負担の問題が片付いていないためだ。
モバイルARで情報を提供するには、端末がどの方角を向いていて、それがどう変化したかというセンサー情報も欠かせない。方角は電子コンパス、そこからの変化は加速度センサーが測定するが、現状では電子コンパスを搭載した携帯電話はまだ少ない。iPhoneが電子コンパスを搭載したのは09年発売の「iPhone3GS」から。NTTドコモやKDDIも、Android内蔵のスマートフォンなどで採用し始めているが、従来型の携帯電話は数えるほどだ。
搭載が広がらない理由は、「コストの問題というよりも、電子コンパスを載せる明確な用途が見えないため」(関係者)。電子コンパスはほかの部品から磁気の干渉を受けやすい。限られたスペースに数多くの部品を詰め込む携帯電話に電子コンパスを搭載しようとすれば、ハードウエアの設計に大きな制約が発生する。そうした制約をかけてでも製品を設計する用途が明確になっていないのだ。
一部のARアプリは電子コンパスを搭載していない端末でも最低限のサービスを提供できるように、ユーザーの操作で機能不足を補うインターフェースを取り入れるなどの工夫をしている。とはいえ、本来は端末の機能向上を取り入れて、アプリケーションが進化していくというのが望ましい姿である。
スマートフォン、携帯シェアの2割超す 週単位初
家電量販店の携帯電話の販売台数に占めるスマートフォン(高機能携帯電話)の割合が週単位で2割を超えた。調査会社のBCN(東京・千代田)によると、6月21~27日に構成比は22.4%だった。パソコン並みの機能に加えて、ソフトバンクモバイルの「iPhone(アイフォーン)4」など新製品が相次いで登場、市場が拡大していることを改めて裏付けた。
BCNによると、アイフォーン4の6月24日発売を目前にした同月14~20日の構成比は、買い控えから8.9%にどどまっていた。月ベースで見ると6月は1日~28日の構成比が14.7%で、4、5月も10%台の後半で推移。1年前の4~6月と比べると、ほぼ2倍の水準となっている。
今年の6月下旬にはKDDI(au)が同社初のスマートフォンを投入し、主要通信事業者(キャリア)の製品が出そろった。家電量販店も一斉にスマートフォンの専用売り場を設けている。
住商、1700億円でブラジル鉄鉱石権益
年900万トン、鉄鋼大手に安定供給
住友商事は19億3000万ドル(約1700億円)を投じ、ブラジル鉄鋼大手のウジミナスから同国南東部の鉄鉱石鉱山の権益30%を取得する。住商は日本の鉄鉱石輸入の1割弱にあたる年間約900万トンの権益を確保し、ウジミナスの筆頭株主である新日本製鉄など国内鉄鋼大手に長期契約で安定供給することを目指す。日本が全量輸入に頼る鉄鉱石は資源メジャーによる寡占が進んでおり、鉄鋼メーカーや商社は海外での権益取得を急いでいる。
住商はウジミナスと基本合意した。1日に発表する。住商が権益を取得するのは、ブラジル南東部のミナスジェライス州セーハアズール地域の鉱山。ウジミナスが7割、住商が3割を出資する新会社を立ち上げ、現在の年産700万トンを2014年をメドに3千万トンに拡張する。採掘可能量は約24億トンで今後、30~40年間にわたり、生産が可能という。
住商は同鉱山で生産する鉄鉱石を日本を中心としたアジア地域に輸出する考え。日本向けは14~15年の鉱山拡張後に、本格的な輸出を始める。住商は国内製鉄大手と長期契約を結び、安定的な供給を目指す。
住商は現在、南アフリカに鉄鉱石権益を持っており、今回は2カ所目。現在の権益量は年間100万トン強で、今回の投資で約10倍の1千万トンとなる見通しだ。
従来、日本の鉄鋼大手や商社は資源大手と共同で鉄鉱石の権益を確保してきた。これらの案件では価格決定権が資源大手側にあり、価格引き上げに対抗できない。
このため08年には新日鉄、韓国ポスコなど日韓の鉄鋼大手と伊藤忠商事などの連合が、ブラジル鉄鋼大手CSNが持つ鉱山子会社の株式40%を3120億円で取得した。資源大手に価格決定権を握られない案件としては、今回の住商のプロジェクトがこれに次ぐ規模になる。
日本の鉄鋼メーカーは今年度から英豪資源大手のBHPビリトンなどとの鉄鉱石の価格改定を、従来の年1回から四半期ごとに切り替えることで合意した。スポット価格に連動する新方式の導入を受け、7~9月期は4~6月期に比べ約23%値上がりした。09年度に比べると2.4倍に高騰したことになる。
鉄鉱石や石炭など鉄鋼原料の急激な値上がりは鋼材価格の高騰につながる。鋼材値上げが続けば、大口ユーザーである自動車や造船大手の収益を圧迫する。こうした事態を緩和するため、鉄鋼メーカーはブラジル、豪州、チリなどで権益を取得し、安定した価格で鉄鉱石を確保できる体制を目指している。
資源寡占の一角崩す 商社や鉄鋼、海外権益を拡大
鉄鉱石は海上貿易シェアの約7割をブラジルのヴァーレなど資源大手3社が抑える寡占市場。鉄鋼市場での新日本製鉄の世界シェアは2%強にすぎない。資源大手は鉄鋼メーカーに対して圧倒的な価格交渉力を握る。住友商事による鉄鉱石鉱山会社への出資は、鉄鋼メーカーにとって原料調達や価格の安定につながり、資源寡占の影響を緩和する可能性がある。
中国需要の急増などを背景に、鉄鉱石の価格は7~9月、09年度比2.4倍になった。もう一つの主原料である原料用石炭(原料炭)も合わせると「10年度は鉄鋼業界の原料コストが09年度より2兆円増える」(林田英治日本鉄鋼連盟会長)。鉄鋼大手の鉄鉱石の自給率は十数%程度にとどまり、原料の需給や価格に収益が影響されやすい。
このため鉄鋼大手も権益の確保などによる安定調達を目指す。JFEスチールは3~4年後までに、最大2000億円を投じ、鉄鉱石と原料炭の自給率を今の2倍の3割に高める。すでに豪州で原料炭の権益20%を約500億円で獲得した。神戸製鋼所も5年後にも鉄鉱石の自給率を2倍強にする。
権益の拡大を目指すのは日本メーカーだけではない。09年春には国営の中国アルミが英豪リオ・ティントへ195億ドル(約1兆7000億円)を出資すると表明した。リオ株主の反発などで断念したが、粗鋼生産が毎年、新日鉄(年産能力4000万トン)1~2社分増えており、原料の安定確保のために国を挙げて巨額を投じる姿勢だ。
新日鉄やJFEなど日韓7社が連合を組み、08年に約3120億円でブラジル鉱山会社ナミザの40%の株式を取得した。中国勢も取得へ動いたが、競り勝った。激化する資源獲得競争の中で、今後は複数社で組んでリスクを分散したり、政府の支援を仰いだりする必要も出てきそうだ。
国内ゲーム市場規模、3年ぶりの上半期プラス
ゲーム雑誌出版のエンターブレインは30日、2010年上半期(1~6月)の国内家庭用ゲーム機市場規模は、前年同期比4.3%増の2283億円6000万円だった。上半期ベースでプラスになったのは07年以来3年ぶり。昨年12月に任天堂が発売した「NewスーパーマリオブラザーズWii」など人気ソフトの販売好調が、ゲーム市場全体を牽引した。
ハードに限定した市場規模は、5.1%減の875億円だった。昨年後半にソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション3」など各社の主力ハードが相次いで値下げしたことで、販売台数が上向く一方で販売金額が減少したためとみられる。
一方、ソフトは11.1%増の1408億6000万円だった。スーパーマリオのほか、スクウェア・エニックスが今年1月に発売した「ドラゴンクエスト6 幻の大地」などヒット作が相次いだことが押し上げた。
6カ国語を21カ国語に自動通訳 スマートフォンで開発、情報通信研究機構
独立行政法人・情報通信研究機構(NICT)は、日本語や英語など6言語の音声入力に対して21言語に翻訳する「超多言語通訳機能」を、スマートフォン(高機能携帯電話)で使用できる新技術を開発した。 通訳技術の研究開発を進めるNICTは、これまで日・英・中の3言語の双方向旅行会話音声翻訳技術を開発している。今回は対訳文例の蓄積データの充実などで、翻訳対象を21言語に増やすことに成功した。
日・英・中にベトナム語とインドネシア語、マレー語を加えた6言語でスマートフォンのマイクに話しかけると、アラビア語やスペイン語など21言語に翻訳することができる。
スマートフォンの通信機能を活用するため世界中で使うことができるのが特徴で、音声入力できる6言語は翻訳された言葉も音声で流せ、残りの15言語への翻訳は文章で表現する。NICTは超多言語通訳機能の課題分析などを進めた上で本格的な実用化を目指す。
中村哲・プロジェクトリーダーは「地球上の人口の約8割をカバーする21言語に翻訳機能を広げた。将来的には、すべて音声出力できるようにしたい」と話している。
財政再建と成長の両立、市場は「ノー」 株から円・国債に資金逃避
金融市場で再び動揺が広がっているのは、前週末に開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)が、先進国の財政再建を打ち出したのがきっかけだ。各国の緊縮財政で世界経済が失速するとの不安感から、マネーが“安全資産”に逃げ込んでおり、市場は「ノー」を突き付けた。菅直人首相が掲げる財政再建と経済成長を両立させる「第三の道」にも市場は不信認を突き付けている。
「景気がよくないのに、緊縮財政を打ち出すなんて…。株式市場からマネーが逃げていくのは当然だ」。市場関係者は怒りの声を上げる。
G20サミットは27日に日本を除く先進国が2013年までに財政赤字を半減させる目標で合意。例外の日本も20年度までに基礎的財政収支を黒字化させる目標を説明し、“国際公約”となった。
各国が財政再建へとかじを切ったのは、欧州財政危機を契機に、市場が財政破綻(はたん)という「ソブリン(公的債務)リスク」への警戒感を強めたためだ。
ところが、市場に促されたはずの財政再建路線が、市場を動揺させるという皮肉な結果になった。市場は「財政再建を急ぐのはまだ早い」と警告。経済失速の影響を受ける株式から国債や円へと避難している。
国債が買われ、長期金利が急低下したのは、「財政健全化を評価したのではなく、景気悪化で金利がさらに低下するとの思惑にすぎない」(アナリスト)。
円高も、「財政危機による信用不安が続く欧州や、雇用を中心に景気回復ペースが鈍化してきた米国よりはマシ」(エコノミスト)という消去法で選ばれただけだ。
その日本も、5月の失業率が3カ月連続で悪化し消費は低迷したままで、デフレ脱却の道筋はみえない。5月の鉱工業生産が自動車の輸出の鈍化で3カ月ぶりに低下するなど、頼みの企業部門にも不安材料が出てきた。さらに円高が輸出企業の業績を圧迫し、景気が腰折れする可能性も否定できない。
クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは「(緊縮財政では)景気対策の手足を縛られ、景気が悪化した際に有効な対策を打ち出せない可能性がある」との懸念を示す。
しかも菅首相は「増税しても使い方を間違えなければ、成長は可能」との持論に基づき、消費税率引き上げ論議をあおっている。
市場には消費税増税による財政健全化を評価する声は多い。だが、第三の道に対しては、「増税分を介護や健康などの分野に投入するというのは成長戦略ではなく、単なる社会保障政策」(エコノミスト)と両立に懐疑的だ。
参院選で有権者の審判を受けるだけでなく、市場の信認を獲得することが急務だ。
【産経主張】8強ならず 世界に示した日本の誇り
勝たせてやりたい。いや、勝ち抜きたい。そう思って120分余、テレビ観戦した人が大半だったのではないか。
サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の決勝トーナメント1回戦で日本はパラグアイと対戦し、延長戦でも0-0と勝負がつかず、PK戦の末に惜しくも敗れた。W杯初となる8強入りは果たせなかった。
しかし、日本代表選手たちのチームワーク最優先の熱い戦いぶりに拍手をおくりたい。
テレビ中継の平均視聴率は57・3%(関東地区)だった。国技の大相撲が賭博問題で存亡の危機に瀕(ひん)しているときだけに、日本サッカー陣の奮闘が光る。
日本は持ち前の運動量と組織的な守備力を武器に、身の丈に合った日本流のサッカーを貫いた。パラグアイ戦では再三ゴール前で猛攻を浴びるピンチに見舞われたが、そのつど必死の守備でしのいだ。文字通り、体を張った守りを見せた中沢佑二選手のコメントが印象深い。
「世界とここまで対等に戦えたことはなかった。胸を張って帰りたい」
オリンピックの金メダル獲得数をみると、2008年北京五輪では1位中国、2位米国などと、経済・軍事大国が上位を占める傾向が強い。しかし、サッカーでは様相が大きく異なる。
例えばW杯の米国は、決勝トーナメント1回戦でガーナに敗れた。中国となると、早々と地域予選で敗退している。今回の8強にはアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイの南米勢4カ国が入ったが、主要8カ国で進出したのはドイツだけだ。
「サッカー国力」で日本はまだ新興国を脱出したところかもしれないが、発展の余地は十分だ。14年ブラジル大会では、さらに日本流サッカーを進化させ、世界をあっといわせてほしい。
W杯が始まって約3週間、私たちは不思議な高揚感に包まれていた。顔に日の丸を描いて応援する若者、「君が代」を声を張り上げて歌うサポーターなど、素直に日本の国を誇る気持ちが伝わってくるからだろう。
すでに韓国と共同で02年W杯を開催した経験がある日本は、22年大会の単独招致を目指している。今年12月の開催地決定に向け、日本人の心を一つにするサッカー熱の高まりに期待したい。
スマートフォンを使ったモバイルAR(Augmented Reality、拡張現実)技術は、全地球測位システム(GPS)などから得られる位置情報を基にした位置情報型と、内蔵カメラからの画像を認識して使う画像認識型に大別できる。
位置情報型のARアプリケーションは、ユーザーの現在位置やカメラの向きにマッチした情報を画面上に重ね合わせて提供する。今のところ、周辺施設の情報や経路、建物の説明といったサービスが中心だ。
ゴルフコースの情報を表示
NTTドコモは2010年6月、「ゴルフ版直感ナビ」と呼ぶモバイルARアプリを公開した。このアプリをダウンロードした携帯電話のカメラでゴルフコースを映すと、グリーンやバンカーの方角や距離などを実映像に重ね合わせた形で表示する。携帯電話のGPS機能でどのゴルフ場の何番ホールのコース上にいるかを把握し、適したコース情報を提供する。
ゴルフ場のデータベースはパー七十二プラザ(東京・墨田)から提供を受けた。同社は「Shot Navi(ショットナビ)」と呼ぶGPSを使ったゴルフナビゲーションシステムを運用しており、日本国内の98%のゴルフ場のコースデータを持っている。データベースには多い場合でグリーンや池、バンカーなど十数カ所の緯度経度情報が入っている。これらが、ティーグラウンドからグリーン方向を向いたときに携帯電話に映し出される。
NTTドコモはこれまで独自システムで「直感検索」「直感ナビ」といったモバイルARサービスを研究してきた。ゼンリンデータコムの法人向け地図ASPサービス「いつもNAVI」(旧「e-map」)と連携し、位置情報を活用して地図や飲食店の情報といった実用的なコンテンツを提供する仕組みだ。
しかし、街中で携帯電話のカメラをかざすというARアプリの使い方は、人ごみや電車内では人目が気になり、場合によってはあらぬ疑いをかけられる可能性もある。そこで、カメラを抵抗なくかざせる場所としてゴルフ場に目を付けた。NTTドコモ研究開発センターサービス&ソリューション開発部の小笠原史サービス戦略担当課長は「これまでNTTドコモがモバイルARで培ったノウハウの一つの出口」と意気込みを見せる。
使い勝手をよくするために、「ユーザーインターフェースにも工夫を凝らした」(研究開発センターサービス&ソリューション開発部サービス戦略担当の長谷川慎氏)という。アプリはゴルフ場の起伏に対応していないため、そのままでは画面上にグリーンやバンカーなどの情報が重なってしまい読み取りずらい。このため表示方向を工夫して視認性を高める仕組みを作りこんだ。
リアルタイム情報を提供
三井不動産販売が5月24日に開始した駐車場案内サービス「『今から』停められる駐車場検索サービス」は、オランダのLAYAR B.V.(旧SPRXMobile)が開発した「Layar」というモバイルARプラットフォームを利用している。GPSの現在位置情報とユーザーが端末に設定した検索範囲(50メートル~1キロメートルまで5段階)を基に、周辺の空き駐車場の情報を提供する。
端末からの情報はいったんLayarのサーバーが中継し、駐車場検索アプリを開発したアットウェア(横浜市)のサーバーに送る。アットウェアのサーバーは三井不動産販売のデータベースに接続して、該当する範囲にある駐車場の緯度経度情報と空き状況を問い合わせる。Layarのサーバーを経由して検索結果を受け取った端末は、端末内の電子コンパスで端末の方向を、加速度センサーで端末の向きを察知し、端末の向きと同じ方向にある駐車場を実映像に重ねる形でアイコンとして表示する。
このサービスは、位置や方向などのセンサーとして働く端末とネットワーク上にあるデータベースがリアルタイムで連携しているのが特徴だ。三井不動産販売は全国約3800カ所の駐車場の満車・空き情報のデータベースをリアルタイムで管理している。現在地を基に場所を教えるだけでなく、データベース内の最新情報を取り出すことで、利便性を高めている。
緯度経度以外の情報との連携が必須に
位置情報型モバイルARは、データベース化された位置情報にどのような情報を連携して表現するかがサービスのカギだ。ARアプリ「セカイカメラ」を開発した頓智・(とんちどっと、東京・新宿)の井口尊仁最高経営責任者(CEO)は、「現在、緯度経度だけで示されている位置情報には、高さや広さ、奥行きといった物理概念や現在、過去といったタイムラインの視点が欠けている」という。
ある場所で人がかつてとった行動や、人がその場所にAR情報として残していったものなどが、ソーシャルなデータとして蓄積されれば、従来にないサービスを提供できるという。そのためには緯度経度にとどまらないデータベースの蓄積が必要になってくる。
KDDI研究所Webデータコンピューティンググループの小林亜令主任研究員は「センサーデータマイニング」と呼ぶ考えを示す。ユーザーと一緒に移動するモバイル機器のセンサーが集めた位置情報などの大量の情報を加工、変換、マッチングさせて有益な情報を抽出する。こうした技術が向上していけば「ユーザーが今何をどこでしているというプレゼンス情報を取得して、様々なサービスを提供できる」(小林研究員)という。
まだ少ない電子コンパス搭載機
より詳細な情報を提供するためには、位置情報の精度も重要になる。携帯電話に搭載されているGPSには最小でも5メートル程度の誤差があり、地下街などGPS衛星が見えない場所での測位も難しい。ビルの何階にいるかといった上下方向の位置も測定できない。
このため無線LANや携帯電話の基地局のデータがGPSを補完する位置情報として期待されている。位置情報を中心としたシステムを開発するクウジット(東京・港)は6月、無線LANを利用して屋内でも位置を推定できる「PlaceEngine屋内測位ソリューション」をグーグルの携帯向けOS「Android(アンドロイド)」を搭載したスマートフォンに対して提供を始めた。ただ、米アップルは今年3月以降、PlaceEngineのような無線LANの電波を扱う「iPhone」用アプリの公開を停止している。
携帯電話の基地局情報をスマートフォンから活用することも現時点では難しい。「基地局の情報は『iモード』などクローズドな環境に限り提供しているが、オープンなスマートフォン向けには公開していない」(NTTドコモ)という。基地局の所在情報を公開するうえで必要なセキュリティーポリシーの変更やシステム改修にかかるコスト負担の問題が片付いていないためだ。
モバイルARで情報を提供するには、端末がどの方角を向いていて、それがどう変化したかというセンサー情報も欠かせない。方角は電子コンパス、そこからの変化は加速度センサーが測定するが、現状では電子コンパスを搭載した携帯電話はまだ少ない。iPhoneが電子コンパスを搭載したのは09年発売の「iPhone3GS」から。NTTドコモやKDDIも、Android内蔵のスマートフォンなどで採用し始めているが、従来型の携帯電話は数えるほどだ。
搭載が広がらない理由は、「コストの問題というよりも、電子コンパスを載せる明確な用途が見えないため」(関係者)。電子コンパスはほかの部品から磁気の干渉を受けやすい。限られたスペースに数多くの部品を詰め込む携帯電話に電子コンパスを搭載しようとすれば、ハードウエアの設計に大きな制約が発生する。そうした制約をかけてでも製品を設計する用途が明確になっていないのだ。
一部のARアプリは電子コンパスを搭載していない端末でも最低限のサービスを提供できるように、ユーザーの操作で機能不足を補うインターフェースを取り入れるなどの工夫をしている。とはいえ、本来は端末の機能向上を取り入れて、アプリケーションが進化していくというのが望ましい姿である。
スマートフォン、携帯シェアの2割超す 週単位初
家電量販店の携帯電話の販売台数に占めるスマートフォン(高機能携帯電話)の割合が週単位で2割を超えた。調査会社のBCN(東京・千代田)によると、6月21~27日に構成比は22.4%だった。パソコン並みの機能に加えて、ソフトバンクモバイルの「iPhone(アイフォーン)4」など新製品が相次いで登場、市場が拡大していることを改めて裏付けた。
BCNによると、アイフォーン4の6月24日発売を目前にした同月14~20日の構成比は、買い控えから8.9%にどどまっていた。月ベースで見ると6月は1日~28日の構成比が14.7%で、4、5月も10%台の後半で推移。1年前の4~6月と比べると、ほぼ2倍の水準となっている。
今年の6月下旬にはKDDI(au)が同社初のスマートフォンを投入し、主要通信事業者(キャリア)の製品が出そろった。家電量販店も一斉にスマートフォンの専用売り場を設けている。
住商、1700億円でブラジル鉄鉱石権益
年900万トン、鉄鋼大手に安定供給
住友商事は19億3000万ドル(約1700億円)を投じ、ブラジル鉄鋼大手のウジミナスから同国南東部の鉄鉱石鉱山の権益30%を取得する。住商は日本の鉄鉱石輸入の1割弱にあたる年間約900万トンの権益を確保し、ウジミナスの筆頭株主である新日本製鉄など国内鉄鋼大手に長期契約で安定供給することを目指す。日本が全量輸入に頼る鉄鉱石は資源メジャーによる寡占が進んでおり、鉄鋼メーカーや商社は海外での権益取得を急いでいる。
住商はウジミナスと基本合意した。1日に発表する。住商が権益を取得するのは、ブラジル南東部のミナスジェライス州セーハアズール地域の鉱山。ウジミナスが7割、住商が3割を出資する新会社を立ち上げ、現在の年産700万トンを2014年をメドに3千万トンに拡張する。採掘可能量は約24億トンで今後、30~40年間にわたり、生産が可能という。
住商は同鉱山で生産する鉄鉱石を日本を中心としたアジア地域に輸出する考え。日本向けは14~15年の鉱山拡張後に、本格的な輸出を始める。住商は国内製鉄大手と長期契約を結び、安定的な供給を目指す。
住商は現在、南アフリカに鉄鉱石権益を持っており、今回は2カ所目。現在の権益量は年間100万トン強で、今回の投資で約10倍の1千万トンとなる見通しだ。
従来、日本の鉄鋼大手や商社は資源大手と共同で鉄鉱石の権益を確保してきた。これらの案件では価格決定権が資源大手側にあり、価格引き上げに対抗できない。
このため08年には新日鉄、韓国ポスコなど日韓の鉄鋼大手と伊藤忠商事などの連合が、ブラジル鉄鋼大手CSNが持つ鉱山子会社の株式40%を3120億円で取得した。資源大手に価格決定権を握られない案件としては、今回の住商のプロジェクトがこれに次ぐ規模になる。
日本の鉄鋼メーカーは今年度から英豪資源大手のBHPビリトンなどとの鉄鉱石の価格改定を、従来の年1回から四半期ごとに切り替えることで合意した。スポット価格に連動する新方式の導入を受け、7~9月期は4~6月期に比べ約23%値上がりした。09年度に比べると2.4倍に高騰したことになる。
鉄鉱石や石炭など鉄鋼原料の急激な値上がりは鋼材価格の高騰につながる。鋼材値上げが続けば、大口ユーザーである自動車や造船大手の収益を圧迫する。こうした事態を緩和するため、鉄鋼メーカーはブラジル、豪州、チリなどで権益を取得し、安定した価格で鉄鉱石を確保できる体制を目指している。
資源寡占の一角崩す 商社や鉄鋼、海外権益を拡大
鉄鉱石は海上貿易シェアの約7割をブラジルのヴァーレなど資源大手3社が抑える寡占市場。鉄鋼市場での新日本製鉄の世界シェアは2%強にすぎない。資源大手は鉄鋼メーカーに対して圧倒的な価格交渉力を握る。住友商事による鉄鉱石鉱山会社への出資は、鉄鋼メーカーにとって原料調達や価格の安定につながり、資源寡占の影響を緩和する可能性がある。
中国需要の急増などを背景に、鉄鉱石の価格は7~9月、09年度比2.4倍になった。もう一つの主原料である原料用石炭(原料炭)も合わせると「10年度は鉄鋼業界の原料コストが09年度より2兆円増える」(林田英治日本鉄鋼連盟会長)。鉄鋼大手の鉄鉱石の自給率は十数%程度にとどまり、原料の需給や価格に収益が影響されやすい。
このため鉄鋼大手も権益の確保などによる安定調達を目指す。JFEスチールは3~4年後までに、最大2000億円を投じ、鉄鉱石と原料炭の自給率を今の2倍の3割に高める。すでに豪州で原料炭の権益20%を約500億円で獲得した。神戸製鋼所も5年後にも鉄鉱石の自給率を2倍強にする。
権益の拡大を目指すのは日本メーカーだけではない。09年春には国営の中国アルミが英豪リオ・ティントへ195億ドル(約1兆7000億円)を出資すると表明した。リオ株主の反発などで断念したが、粗鋼生産が毎年、新日鉄(年産能力4000万トン)1~2社分増えており、原料の安定確保のために国を挙げて巨額を投じる姿勢だ。
新日鉄やJFEなど日韓7社が連合を組み、08年に約3120億円でブラジル鉱山会社ナミザの40%の株式を取得した。中国勢も取得へ動いたが、競り勝った。激化する資源獲得競争の中で、今後は複数社で組んでリスクを分散したり、政府の支援を仰いだりする必要も出てきそうだ。
国内ゲーム市場規模、3年ぶりの上半期プラス
ゲーム雑誌出版のエンターブレインは30日、2010年上半期(1~6月)の国内家庭用ゲーム機市場規模は、前年同期比4.3%増の2283億円6000万円だった。上半期ベースでプラスになったのは07年以来3年ぶり。昨年12月に任天堂が発売した「NewスーパーマリオブラザーズWii」など人気ソフトの販売好調が、ゲーム市場全体を牽引した。
ハードに限定した市場規模は、5.1%減の875億円だった。昨年後半にソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション3」など各社の主力ハードが相次いで値下げしたことで、販売台数が上向く一方で販売金額が減少したためとみられる。
一方、ソフトは11.1%増の1408億6000万円だった。スーパーマリオのほか、スクウェア・エニックスが今年1月に発売した「ドラゴンクエスト6 幻の大地」などヒット作が相次いだことが押し上げた。
6カ国語を21カ国語に自動通訳 スマートフォンで開発、情報通信研究機構
独立行政法人・情報通信研究機構(NICT)は、日本語や英語など6言語の音声入力に対して21言語に翻訳する「超多言語通訳機能」を、スマートフォン(高機能携帯電話)で使用できる新技術を開発した。 通訳技術の研究開発を進めるNICTは、これまで日・英・中の3言語の双方向旅行会話音声翻訳技術を開発している。今回は対訳文例の蓄積データの充実などで、翻訳対象を21言語に増やすことに成功した。
日・英・中にベトナム語とインドネシア語、マレー語を加えた6言語でスマートフォンのマイクに話しかけると、アラビア語やスペイン語など21言語に翻訳することができる。
スマートフォンの通信機能を活用するため世界中で使うことができるのが特徴で、音声入力できる6言語は翻訳された言葉も音声で流せ、残りの15言語への翻訳は文章で表現する。NICTは超多言語通訳機能の課題分析などを進めた上で本格的な実用化を目指す。
中村哲・プロジェクトリーダーは「地球上の人口の約8割をカバーする21言語に翻訳機能を広げた。将来的には、すべて音声出力できるようにしたい」と話している。
財政再建と成長の両立、市場は「ノー」 株から円・国債に資金逃避
金融市場で再び動揺が広がっているのは、前週末に開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)が、先進国の財政再建を打ち出したのがきっかけだ。各国の緊縮財政で世界経済が失速するとの不安感から、マネーが“安全資産”に逃げ込んでおり、市場は「ノー」を突き付けた。菅直人首相が掲げる財政再建と経済成長を両立させる「第三の道」にも市場は不信認を突き付けている。
「景気がよくないのに、緊縮財政を打ち出すなんて…。株式市場からマネーが逃げていくのは当然だ」。市場関係者は怒りの声を上げる。
G20サミットは27日に日本を除く先進国が2013年までに財政赤字を半減させる目標で合意。例外の日本も20年度までに基礎的財政収支を黒字化させる目標を説明し、“国際公約”となった。
各国が財政再建へとかじを切ったのは、欧州財政危機を契機に、市場が財政破綻(はたん)という「ソブリン(公的債務)リスク」への警戒感を強めたためだ。
ところが、市場に促されたはずの財政再建路線が、市場を動揺させるという皮肉な結果になった。市場は「財政再建を急ぐのはまだ早い」と警告。経済失速の影響を受ける株式から国債や円へと避難している。
国債が買われ、長期金利が急低下したのは、「財政健全化を評価したのではなく、景気悪化で金利がさらに低下するとの思惑にすぎない」(アナリスト)。
円高も、「財政危機による信用不安が続く欧州や、雇用を中心に景気回復ペースが鈍化してきた米国よりはマシ」(エコノミスト)という消去法で選ばれただけだ。
その日本も、5月の失業率が3カ月連続で悪化し消費は低迷したままで、デフレ脱却の道筋はみえない。5月の鉱工業生産が自動車の輸出の鈍化で3カ月ぶりに低下するなど、頼みの企業部門にも不安材料が出てきた。さらに円高が輸出企業の業績を圧迫し、景気が腰折れする可能性も否定できない。
クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは「(緊縮財政では)景気対策の手足を縛られ、景気が悪化した際に有効な対策を打ち出せない可能性がある」との懸念を示す。
しかも菅首相は「増税しても使い方を間違えなければ、成長は可能」との持論に基づき、消費税率引き上げ論議をあおっている。
市場には消費税増税による財政健全化を評価する声は多い。だが、第三の道に対しては、「増税分を介護や健康などの分野に投入するというのは成長戦略ではなく、単なる社会保障政策」(エコノミスト)と両立に懐疑的だ。
参院選で有権者の審判を受けるだけでなく、市場の信認を獲得することが急務だ。
【産経主張】8強ならず 世界に示した日本の誇り
勝たせてやりたい。いや、勝ち抜きたい。そう思って120分余、テレビ観戦した人が大半だったのではないか。
サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の決勝トーナメント1回戦で日本はパラグアイと対戦し、延長戦でも0-0と勝負がつかず、PK戦の末に惜しくも敗れた。W杯初となる8強入りは果たせなかった。
しかし、日本代表選手たちのチームワーク最優先の熱い戦いぶりに拍手をおくりたい。
テレビ中継の平均視聴率は57・3%(関東地区)だった。国技の大相撲が賭博問題で存亡の危機に瀕(ひん)しているときだけに、日本サッカー陣の奮闘が光る。
日本は持ち前の運動量と組織的な守備力を武器に、身の丈に合った日本流のサッカーを貫いた。パラグアイ戦では再三ゴール前で猛攻を浴びるピンチに見舞われたが、そのつど必死の守備でしのいだ。文字通り、体を張った守りを見せた中沢佑二選手のコメントが印象深い。
「世界とここまで対等に戦えたことはなかった。胸を張って帰りたい」
オリンピックの金メダル獲得数をみると、2008年北京五輪では1位中国、2位米国などと、経済・軍事大国が上位を占める傾向が強い。しかし、サッカーでは様相が大きく異なる。
例えばW杯の米国は、決勝トーナメント1回戦でガーナに敗れた。中国となると、早々と地域予選で敗退している。今回の8強にはアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイの南米勢4カ国が入ったが、主要8カ国で進出したのはドイツだけだ。
「サッカー国力」で日本はまだ新興国を脱出したところかもしれないが、発展の余地は十分だ。14年ブラジル大会では、さらに日本流サッカーを進化させ、世界をあっといわせてほしい。
W杯が始まって約3週間、私たちは不思議な高揚感に包まれていた。顔に日の丸を描いて応援する若者、「君が代」を声を張り上げて歌うサポーターなど、素直に日本の国を誇る気持ちが伝わってくるからだろう。
すでに韓国と共同で02年W杯を開催した経験がある日本は、22年大会の単独招致を目指している。今年12月の開催地決定に向け、日本人の心を一つにするサッカー熱の高まりに期待したい。
au、携帯電話向けに「セカイカメラZOOM」配信
KDDIと沖縄セルラーは、auの携帯電話で利用できるAR(拡張現実感)アプリ「セカイカメラZOOM」を7月1日より提供する。利用料は無料。
「セカイカメラZOOM」は、auの携帯電話で利用できるARアプリ。KDDIとKDDI研究所が開発した「実空間透視ケータイ」と、頓知・(とんちどっと)の「セカイカメラ」を連携させ、携帯電話の位置情報取得機能や加速度センサーを利用し、携帯をかざした方向に存在する“エアタグ”を画面上に表示する。現実の空間に対して、バーチャルなデータを付加することから、AR(Augmented Reality、拡張現実感)アプリの一種とされている。
撮影した写真、あるいは任意のコメントをAR空間に投稿したり、他のユーザーが投稿した内容を閲覧できる。
Twitterクライアント機能を搭載していることも特徴。AR機能とTwitterクライアント機能はワンボタンで切り替えられるため、双方のサービスを気軽に使い分けられるという。
経験不問! 「ドラクエ」シナリオスタッフ募集中
「夢と感動を届ける仕事」――スクウェア・エニックスが、「ドラゴンクエスト」シリーズのシナリオ作成スタッフを募集している。シナリオ制作の経験は不要。高卒以上なら応募できる。
シナリオや世界観、街の人びとのせりふなど、さまざまなテキストを作成する仕事で、「ドラクエシリーズが好きで、わたしたちと一緒にゲームを作りたいという気持ちを持っている」人を募っている。人数は「若干名」で、勤務地は東京・新宿。
応募の際、「ドラゴンクエストについて思うこと」をテーマにした作文と、「伝説の剣」「お鍋のふた」「思い出し笑い」「超能力」「男装の麗人」「初恋」の6つのキーワードのうち4つの要素が入った「復讐」をテーマにしたショートストーリーを提出する必要がある。
応募は郵送で受け付け、締め切りは7月12日(消印有効)。詳細はWebサイトで。
ドラクエシリーズの最新作「IX」は昨年末までに415万本を出荷し、シリーズ過去最高記録を更新。シリーズの生みの親・堀井雄二さんが登場しは、次回作「X」をWii向けに開発する方針を明らかにしている。
「pixiv」が初の大幅リニューアル Twitter風の「スタックフィード」機能も
イラストSNS「pixiv」が2007年9月の開設以来初めて大幅にリニューアルする。7月中に、ユーザーインタフェース(UI)の改良やサイトの高速化を図るほか、短いコメントを投稿できるTwitter風の「スタックフィード」機能を追加。「pixivのいまが分かるようになる」と、運営元ピクシブの片桐孝憲社長は説明する。
リニューアル概要は、6月29日にpixivユーザーを招いて開催した同社のイベント「pixiv NIGHT」で発表した。参加した約70人のユーザーからは次々にpixivに関する質問が挙がり、開発者と直接対話しながら盛り上がった。
スタックフィードは、短いコメントを投稿できるTwitter風の機能。ページの中帯には、コメントに加え、「マイピク」や「お気に入りユーザー」が投稿・ブックマークした作品のサムネイルなども時系列で縦に並び、更新情報が手軽にチェックできる仕組みだ。
「Twitterとはカニバらない(住み分けられる)と思っている」と片桐社長。今後スタックフィードとTwitterを連携させることも検討している。
pixivを支えるシステムを増強した。これまでは同社オフィスにある手作りの棚に「格安自作サーバ、格安基幹ルーター、格安基幹スイッチ」などがむき出しで並んでいる状態だったが、「ついデータセンターを借りることができた」。片桐社長が「これでpixivは高速化するはず。やっとちゃんとしたIT企業になれる」と語ると、参加者から拍手が起こった。
UIも改良する。ページ上部には常に自分用メニューを表示。ほかのユーザーの作品やイベントのページからワンクリックで、自分の作品管理ページやスタックフィードにアクセスできる。マイページの背景を変えられる機能も追加する。
pixiv上でニュースサイトの記事を配信する「pixivニュース」もスタートする。時事通信社やITmedia、電撃オンラインなどが記事を提供する。
pixiv主催のイベントにも力を入れていく。今秋にはイラストの描き方を学べるワークショップを開催。pixivがきっかけで「絵を描く人を増やしていきたい。世界中に“お絵かき楽しす”が伝わればいい」と話す。
今後は作品を描く様子をライブ配信できる機能や台湾語版サイトも開発する予定だ。
CDMA2000版「iPhone 4」の具体的な登場時期を関係者が明らかに
2008年に発売された「iPhone 3G」から今年6月24日に発売された「iPhone 4」まで、「W-CDMA」と呼ばれる第3世代携帯電話(3G)通信方式をサポートしているAppleのiPhoneシリーズですが、アメリカの大手携帯電話会社Verizon(ベライゾン)やKDDIが採用している通信方式「CDMA2000」に対応したモデルのiPhone 4が新たに登場する可能性があるというウワサが流れる中、関係者が具体的な登場時期について言及しています。
Bloomberg社の報道によると、現在アメリカではAT&Tが独占的にiPhoneを販売していますが、アメリカ最大手の携帯電話会社Verizon Wirelessが来年1月にCDMA2000版iPhoneの販売に乗り出す予定であることを、事情を熟知している2人の情報源が明かしたそうです。
Bloomberg社の取材に対して投資 銀行「UBS AG」のアナリストのJohn Hodulik氏はインタビューに対して、現在9280万人のユーザーを擁しているVerizon社がiPhoneの販売に乗り出した場合、四半期あたり300万台が売れるのではないかと見積もっています。
また、VerizonのCEO(最高経営責任者)であるLowell McAdam氏は、来年1月にアメリカで行われる家電製品の見本市「CES 2011」で最新技術を採用したいくつかの新製品を発表するつもりであるとのこと。
なお、現在iPhoneを販売しているAT&Tですが、昨年後半から利用者によって増大した通信量に通信設備が対応しきれずに苦しんでいるものの、およそ約3分の1のiPhoneユーザーが他社から流入してきたユーザーとなっており、契約者獲得に大きく貢献しています。
【W杯】パラグアイ戦の視聴率は57・3% TBS開局以来最高記録「ありがとう」抜く
サッカーW杯南アフリカ大会で、日本の決勝トーナメント1回戦が行われた29日の対パラグアイ戦を生中継したTBS系の番組平均視聴率(速報値)が、関東地区で57・3%(午後10時40分~深夜1時10分)だったことが30日、ビデオリサーチの調べで分かった。関西地区は54・1%(同)だった。集計上の理由で延長前半13分までの数値。番組視聴占拠率は77・8%(関東地区)だった。
瞬間最高視聴率は、関東地区で午後11時46分(前半ロスタイム時間帯)の64・9%。関西地区は午後11時41分の62・3%だった。
TBSでは昭和47年12月21日放送のドラマ「ありがとう」の56・3%を抜いて同局の全放送番組で過去最高の視聴率となった。山田修チーフディレクターは「ただ驚いている。一丸となって必死に戦い抜いた岡田ジャパンの雄姿が視聴者に感動を巻き起こした結果だ」とコメントしている。
今回のW杯南アフリカ大会としては、それまで最高だった6月14日の日本対カメルーン戦の45・5%(NHK総合)を抜いた。
歴代のサッカー中継では、2002年6月4日に行われたW杯日韓大会の日本対ベルギー戦の58・8%(NHK総合)に次いで第6位。前回ドイツ大会の最高視聴率だった2006年6月18日の日本対クロアチア戦の52・7%(テレビ朝日系)を上回った。
サッカー中継での最高平均視聴率は、2002年6月9日に行われたW杯日韓大会の日本対ロシア戦の66・1%(フジテレビ系)。
「岡ちゃん、ありがとう」 パラグアイ戦、Twitterには「#okachan_believe」
「岡ちゃん、ありがとう」。サッカーのワールドカップ(W杯)決勝トーナメントで、日本代表は勝利に一歩及ばなかった。しかし、最後のPK戦まで死力を尽くして戦い抜いた青いサムライたちに、ファンらは惜しみない拍手を送った。とりわけ多くの称賛を集めたのが岡田武史監督。大会前には「迷将」扱いされ、バッシングまで起こった岡田監督だが、いまや「名将」。現地南アフリカのスタンドには、似顔絵が描かれた大旗がなびいた。
「岡田監督、謝ります」「今までごめんなさい!」
インターネット掲示板には29日、岡田監督への謝罪と、称賛の声があふれかえった。流行のミニブログ「ツイッター」でも「#okachan_sorry」(岡ちゃん、ごめん)という共通テーマが登場。キックオフ後は、「#okachan_believe」(岡ちゃん、信じてる)というテーマで、試合が展開するごとに「ふんばれ!」「いいぞ!」など声援が飛び交った。
W杯開幕直前、岡田ジャパンは親善試合などで敗戦を続け、サポーターらは不満を募らせた。2月にサンケイスポーツが実施した調査では約9割が「監督交代」を希望し、試合後のスタンドに「岡チャン不合格」と書かれた怒りの横断幕が掲げられたことも。
しかし、ふたを開けてみれば、1次リーグを勝ち抜き、決勝トーナメントでも善戦。ファンからは「よく頑張った」「ありがとう、岡ちゃん」と感謝の言葉が絶えなかった。
産経新聞が29日、東京・銀座など繁華街でサッカーファンに話を聞いたところ、「1次リーグ敗退」を予想していたという多くの人たちが「威厳を感じる」「ツキも監督の手腕」「好感が持てる」などと岡田監督の指揮ぶりを称賛。厳しい予想をした自分を“懺悔(ざんげ)”した。
新聞などでも開幕前は、専門記者や評論家が岡田監督を厳しく評価。「迷走」「迷将」「付け焼き刃」などの活字が躍ったが、最後には、そうした論調が逆に批判を浴びるようになった。
評論家のセルジオ越後さんも批判を浴びた一人。2月に監督交代を提言し、開幕前には1次リーグ突破の可能性を「0%」と予想した。セルジオさんは「あれだけ未熟で、点を取れず、勝てない状況だった」と辛口に振り返った上で、「監督は結果がすべて」と活躍を評価してみせる。
「開幕直前にそれまで準備していた戦術をすっ飛ばし、守りのチームにするというバクチを打った。ギリギリの作戦が何とか成功した」
「迷将」から「名将」へ。評価は大きく変わったが、それも日本中でW杯への期待が開幕前から高かったことの裏返しだ。
法政大学の稲増龍夫教授(社会心理学)は、「国と国がぶつかるときには、ある種のナショナリズムが生まれ、国民は結果に大きな期待を抱く。そのとき、チームがうまくいけば称賛するし、ちょっとの失敗で評価が百八十度変わることもある」と指摘する。
パラグアイ戦の前に会見した岡田監督は、自身に対する評価が一変したことを尋ねられると、こう答えた。「これだけ変わるということは、また変わる。一喜一憂していられない。バッシングを受けても進むべき道を進む。褒められても進むべき道を進む」
進むべき道を進んだ岡田監督と日本代表の選手たちへの拍手。試合終了後も鳴りやまなかった。
世界が注目したから!? パラグアイでネット、携帯がダウン
【アスンシオン=松尾理也】サッカーW杯日本-パラグアイ戦が行われた29日、試合終了直後からパラグアイの広い地域でインターネットや携帯電話がつながりにくくなった。
原因は明らかになっていないが、有力紙ナシオンは「パラグアイの勝利を祝う海外在住のパラグアイ人が一斉に自国のウェブサイトにアクセスしようとしただけでなく、パラグアイに関心を持った世界中の国々からアクセスが殺到したためではないか」と、鼻高々に原因を推測している。
原案通り来年4月から実施総務省、携帯「SIMロック」解除の指針発表
総務省は30日、携帯電話を特定の通信事業者でしか使えないようにする「SIM(シム)ロック」解除のガイドライン(指針)を発表した。今年5月に公表した原案通り確定し、2011年4月以降、SIMロックを解除できる携帯電話の提供を、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクモバイルなど携帯通信各社に求める形になる。ただ、SIMロック解除の具体策について総務省は「携帯各社の自主的な取り組みに任せる」(総合通信基盤局事業政策課)とし、法制化によるSIMロック解除の強制は当面、見送った。
携帯各社間では、SIMロック解除への取り組みに“温度差”が出るとみられる。現行の携帯電話端末は携帯各社間で通信規格方式や電波周波数帯が異なるため、SIMロックを解除した場合、携帯の利用者はNTTドコモのiモードなどこれまで利用可能だった通信サービスが受けられない可能性もある。
このため、SIMロック解除による「消費者への利便性の提供」(総務省)という政策効果には未知数な部分も残されている。
今回のSIMロック解除指針の対象となったのは、SIMカードを使う情報通信機器類。国内で販売されている携帯電話やスマートフォン(高機能携帯電話)のほか、アップル製「iPad(アイパッド)」などの多機能情報端末、またパソコンにつなげてインターネット通信を利用できるデータ通信端末などが含まれている。
総務省は今回のSIMロック解除の指針原案を5月26日に発表。同日から6月23日まで、外部からのパブリックコメントを募った結果、計47件(法人・団体13件、個人34件)が寄せられた。特に個人からは「賛成意見が多かった」としている。
CCC、音楽・映像ソフト販売大手HMV買収を断念
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は30日、音楽・映像ソフト販売大手のHMVジャパン(東京・港)の買収を断念した、と発表した。全株式を保有する大和証券エスエムビーシープリンシパル・インベストメンツ(DPI)と金銭面で折り合わなかったほか、HMVの不採算店が予想以上に多かったことなどを問題視したとみられる。
HMVは約350億円とみられる売上高の約半分をインターネット通販で稼いでいるとされる。ネット通販事業強化を狙うCCCは3月、HMVの全事業取得に向け、DPIと交渉に入った。
ただ、HMVは東京・渋谷の旗艦店を8月に閉鎖するなど全国約50ある店舗事業は、音楽配信サービスの台頭などにより、苦戦が続く。CCCは運営するCD・DVDレンタル・販売店「TSUTAYA」と仕入れなどを統合しても、さらなるHMV店舗の閉鎖は避けられないと判断したもようで、買収断念につながった。
東京株、7ヶ月ぶり安値 円高や不透明感を嫌気
30日の東京株式市場は、世界経済の先行き不透明感が再び強まったことから日経平均株価が4日続落し、年初来安値を更新。昨年11月30日以来、7カ月ぶりに9300円台の安値水準で引けた。
日経平均の終値は前日比188円03銭安の9382円64銭、東証1部全銘柄の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)は10・77ポイント安の841・42。前週末の20カ国・地域(G20)首脳会議で日本を除く先進国が財政赤字削減に合意したものの、市場では「回復途上にある景気腰折れにつながり、『二番底』懸念も再燃しかねない」(大手証券)との見方が強い。
東京市場では外国為替相場が1ドル=88円台、1ユーロ=108円台と円高に触れ、投資家心理を冷やした。自動車、電機など輸出銘柄のほか、不動産、サービスなど内需関連も低迷し、全面安となった。
宝島社がファション雑貨店風の書籍売り場「書店内書店」を展開
出版社の宝島社(東京都千代田区)が、「書店内書店」という新しい売り場作りに取り組んでいる。書店の一角に自社書籍のみを集め、雑誌の付録として付けているブランドもののかばんやポーチなどを姿見とともに並べて「ファション雑貨売り場」のような雰囲気を演出するのが売りだ。従来の「本好き」以外の来店者を増やすことを狙っており、今夏以降、全国各地の大型書店で本格的に実施するという。
書店内書店は4月12~5月5日、紀伊國屋書店福岡本店(福岡市)で試験的に実施。「宝島書店」という看板を掲げた広さ約66平方メートルの売り場に、人気ファッションブランドを特集したムック本や雑誌、文庫、新書、DVDなど同社の売れ筋商品約150種類を集めた。
商品の見せ方にも工夫を凝らす。同社は「コンテンツ(情報の中身)の一部」としてファッションブランドのムック本や雑誌にトートバッグやポーチ、小物入れといった付録を付けているが、それらの中身を取り出してハンガーラックを使って陳列。姿見も置き、客が衣服とのコーディネートを確認できるようにした。書店側も専属の担当者を置き、客の案内を行った。
売り場を企画した桜田圭子広報課長は、「書店に新しい客を呼び込むことを狙った。ファッションをきっかけに来店してもらうことで、ついでに一般の書籍や雑誌も買ってもらえるのではと考えた」と話す。
狙いは当たり、期間中の同店における宝島社書籍の売り上げは冊数ベースで通常期の平均と比べ約1・9倍にアップ。若い女性や家族連れなど客層も広がり、「固定客の開拓につながった」(桜田課長)と自信を見せる。
書店内書店が「集客装置」の役割を果たしたことから書店側からも感謝されたという。桜田課長は「iPad(アイパッド、多機能情報端末)などの登場で書店の経営は厳しさを増している。しかし、店頭に足を運んでもらえれば消費者は本や雑誌の魅力に気付くはず」と語る。
同社ではファッションブランドのムック本の新刊が出る今年8月をめどに東京や札幌、福岡など全国5都市の大型書店に「宝島社書店」を開設する方針。期間限定の売り場となるが、書店の活性化にもつながるため「いずれ常設していきたい」(桜田課長)としている。
【東京新聞社説】
中台“FTA” 開かれた自由貿易圏に
2010年6月30日
中国と台湾は二十九日、それぞれの窓口機関を通じ自由貿易協定(FTA)に当たる経済協定を結んだ。北東アジアに生まれる初の自由貿易圏を中台で閉ざさず、日本や韓国も参加し広げたい。
調印された「経済協力枠組み協定(ECFA)」は、まず中国側が五百三十九、台湾側が二百六十七の品目について来年一月から二年間でゼロ関税を実現することを決めた。金融やサービス分野も、お互いに開放を進める。
二年前に台湾で対中関係改善を訴えて国民党政権が誕生し、中台経済は結び付きを強めた。既に台湾の総輸出額の約40%は中国向けで人口約二千三百万人の台湾から百万人余りが中国に常駐する。ECFAによって中台経済の一体化は一層、加速しそうだ。
ECFAと呼ばれているのは、中国がFTAは主権国家間の取り決めで、台湾に協定締結の資格がないとしているためだ。中国は同種の協定を、中国に返還された香港、マカオとも結んでいる。
しかし、与党・国民党の馬英九総統はECFAを皮切りに各国ともFTA外交を活発化し、台湾を「アジア太平洋地域の貿易拠点にしよう」と呼び掛けている。
これに対し、野党・民進党は、蔡英文主席が協定によって中国が「台湾をのみ込もうとしている」と批判する。二十六日には、台北で調印をめぐる住民投票などを求め十万人規模のデモを行った。
ECFAは、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心に自由貿易圏の形成が進む東南アジアに比べ、立ち遅れた北東アジアで初の自由貿易地域を形成する。
世界が注目する中国市場で台湾企業が有利になることによってライバルの日本や韓国と中国のFTA締結の動きをも促すだろう。
中国は他国が台湾とFTAを結ぶことを主権国家として扱うことになると反対する。しかし、「民間の経済、貿易の往来に異議はない」(外務省)と含みを残す。
日本にとって台湾は経済、貿易の有力な相手で対日感情もよい。政府は新成長戦略で「アジア太平洋自由貿易圏の構築」を目指す。中国と並んで台湾とも自由貿易の枠組みを追求すべきだ。
中国もECFAを調印した以上、民間主導の取り決めには、真っ向から反対はしにくいだろう。
中台の自由貿易圏に日本や韓国が加わることは、台湾の対中不信を和らげ、北東アジアの安定と平和にも貢献するに違いない。
KDDIと沖縄セルラーは、auの携帯電話で利用できるAR(拡張現実感)アプリ「セカイカメラZOOM」を7月1日より提供する。利用料は無料。
「セカイカメラZOOM」は、auの携帯電話で利用できるARアプリ。KDDIとKDDI研究所が開発した「実空間透視ケータイ」と、頓知・(とんちどっと)の「セカイカメラ」を連携させ、携帯電話の位置情報取得機能や加速度センサーを利用し、携帯をかざした方向に存在する“エアタグ”を画面上に表示する。現実の空間に対して、バーチャルなデータを付加することから、AR(Augmented Reality、拡張現実感)アプリの一種とされている。
撮影した写真、あるいは任意のコメントをAR空間に投稿したり、他のユーザーが投稿した内容を閲覧できる。
Twitterクライアント機能を搭載していることも特徴。AR機能とTwitterクライアント機能はワンボタンで切り替えられるため、双方のサービスを気軽に使い分けられるという。
経験不問! 「ドラクエ」シナリオスタッフ募集中
「夢と感動を届ける仕事」――スクウェア・エニックスが、「ドラゴンクエスト」シリーズのシナリオ作成スタッフを募集している。シナリオ制作の経験は不要。高卒以上なら応募できる。
シナリオや世界観、街の人びとのせりふなど、さまざまなテキストを作成する仕事で、「ドラクエシリーズが好きで、わたしたちと一緒にゲームを作りたいという気持ちを持っている」人を募っている。人数は「若干名」で、勤務地は東京・新宿。
応募の際、「ドラゴンクエストについて思うこと」をテーマにした作文と、「伝説の剣」「お鍋のふた」「思い出し笑い」「超能力」「男装の麗人」「初恋」の6つのキーワードのうち4つの要素が入った「復讐」をテーマにしたショートストーリーを提出する必要がある。
応募は郵送で受け付け、締め切りは7月12日(消印有効)。詳細はWebサイトで。
ドラクエシリーズの最新作「IX」は昨年末までに415万本を出荷し、シリーズ過去最高記録を更新。シリーズの生みの親・堀井雄二さんが登場しは、次回作「X」をWii向けに開発する方針を明らかにしている。
「pixiv」が初の大幅リニューアル Twitter風の「スタックフィード」機能も
イラストSNS「pixiv」が2007年9月の開設以来初めて大幅にリニューアルする。7月中に、ユーザーインタフェース(UI)の改良やサイトの高速化を図るほか、短いコメントを投稿できるTwitter風の「スタックフィード」機能を追加。「pixivのいまが分かるようになる」と、運営元ピクシブの片桐孝憲社長は説明する。
リニューアル概要は、6月29日にpixivユーザーを招いて開催した同社のイベント「pixiv NIGHT」で発表した。参加した約70人のユーザーからは次々にpixivに関する質問が挙がり、開発者と直接対話しながら盛り上がった。
スタックフィードは、短いコメントを投稿できるTwitter風の機能。ページの中帯には、コメントに加え、「マイピク」や「お気に入りユーザー」が投稿・ブックマークした作品のサムネイルなども時系列で縦に並び、更新情報が手軽にチェックできる仕組みだ。
「Twitterとはカニバらない(住み分けられる)と思っている」と片桐社長。今後スタックフィードとTwitterを連携させることも検討している。
pixivを支えるシステムを増強した。これまでは同社オフィスにある手作りの棚に「格安自作サーバ、格安基幹ルーター、格安基幹スイッチ」などがむき出しで並んでいる状態だったが、「ついデータセンターを借りることができた」。片桐社長が「これでpixivは高速化するはず。やっとちゃんとしたIT企業になれる」と語ると、参加者から拍手が起こった。
UIも改良する。ページ上部には常に自分用メニューを表示。ほかのユーザーの作品やイベントのページからワンクリックで、自分の作品管理ページやスタックフィードにアクセスできる。マイページの背景を変えられる機能も追加する。
pixiv上でニュースサイトの記事を配信する「pixivニュース」もスタートする。時事通信社やITmedia、電撃オンラインなどが記事を提供する。
pixiv主催のイベントにも力を入れていく。今秋にはイラストの描き方を学べるワークショップを開催。pixivがきっかけで「絵を描く人を増やしていきたい。世界中に“お絵かき楽しす”が伝わればいい」と話す。
今後は作品を描く様子をライブ配信できる機能や台湾語版サイトも開発する予定だ。
CDMA2000版「iPhone 4」の具体的な登場時期を関係者が明らかに
2008年に発売された「iPhone 3G」から今年6月24日に発売された「iPhone 4」まで、「W-CDMA」と呼ばれる第3世代携帯電話(3G)通信方式をサポートしているAppleのiPhoneシリーズですが、アメリカの大手携帯電話会社Verizon(ベライゾン)やKDDIが採用している通信方式「CDMA2000」に対応したモデルのiPhone 4が新たに登場する可能性があるというウワサが流れる中、関係者が具体的な登場時期について言及しています。
Bloomberg社の報道によると、現在アメリカではAT&Tが独占的にiPhoneを販売していますが、アメリカ最大手の携帯電話会社Verizon Wirelessが来年1月にCDMA2000版iPhoneの販売に乗り出す予定であることを、事情を熟知している2人の情報源が明かしたそうです。
Bloomberg社の取材に対して投資 銀行「UBS AG」のアナリストのJohn Hodulik氏はインタビューに対して、現在9280万人のユーザーを擁しているVerizon社がiPhoneの販売に乗り出した場合、四半期あたり300万台が売れるのではないかと見積もっています。
また、VerizonのCEO(最高経営責任者)であるLowell McAdam氏は、来年1月にアメリカで行われる家電製品の見本市「CES 2011」で最新技術を採用したいくつかの新製品を発表するつもりであるとのこと。
なお、現在iPhoneを販売しているAT&Tですが、昨年後半から利用者によって増大した通信量に通信設備が対応しきれずに苦しんでいるものの、およそ約3分の1のiPhoneユーザーが他社から流入してきたユーザーとなっており、契約者獲得に大きく貢献しています。
【W杯】パラグアイ戦の視聴率は57・3% TBS開局以来最高記録「ありがとう」抜く
サッカーW杯南アフリカ大会で、日本の決勝トーナメント1回戦が行われた29日の対パラグアイ戦を生中継したTBS系の番組平均視聴率(速報値)が、関東地区で57・3%(午後10時40分~深夜1時10分)だったことが30日、ビデオリサーチの調べで分かった。関西地区は54・1%(同)だった。集計上の理由で延長前半13分までの数値。番組視聴占拠率は77・8%(関東地区)だった。
瞬間最高視聴率は、関東地区で午後11時46分(前半ロスタイム時間帯)の64・9%。関西地区は午後11時41分の62・3%だった。
TBSでは昭和47年12月21日放送のドラマ「ありがとう」の56・3%を抜いて同局の全放送番組で過去最高の視聴率となった。山田修チーフディレクターは「ただ驚いている。一丸となって必死に戦い抜いた岡田ジャパンの雄姿が視聴者に感動を巻き起こした結果だ」とコメントしている。
今回のW杯南アフリカ大会としては、それまで最高だった6月14日の日本対カメルーン戦の45・5%(NHK総合)を抜いた。
歴代のサッカー中継では、2002年6月4日に行われたW杯日韓大会の日本対ベルギー戦の58・8%(NHK総合)に次いで第6位。前回ドイツ大会の最高視聴率だった2006年6月18日の日本対クロアチア戦の52・7%(テレビ朝日系)を上回った。
サッカー中継での最高平均視聴率は、2002年6月9日に行われたW杯日韓大会の日本対ロシア戦の66・1%(フジテレビ系)。
「岡ちゃん、ありがとう」 パラグアイ戦、Twitterには「#okachan_believe」
「岡ちゃん、ありがとう」。サッカーのワールドカップ(W杯)決勝トーナメントで、日本代表は勝利に一歩及ばなかった。しかし、最後のPK戦まで死力を尽くして戦い抜いた青いサムライたちに、ファンらは惜しみない拍手を送った。とりわけ多くの称賛を集めたのが岡田武史監督。大会前には「迷将」扱いされ、バッシングまで起こった岡田監督だが、いまや「名将」。現地南アフリカのスタンドには、似顔絵が描かれた大旗がなびいた。
「岡田監督、謝ります」「今までごめんなさい!」
インターネット掲示板には29日、岡田監督への謝罪と、称賛の声があふれかえった。流行のミニブログ「ツイッター」でも「#okachan_sorry」(岡ちゃん、ごめん)という共通テーマが登場。キックオフ後は、「#okachan_believe」(岡ちゃん、信じてる)というテーマで、試合が展開するごとに「ふんばれ!」「いいぞ!」など声援が飛び交った。
W杯開幕直前、岡田ジャパンは親善試合などで敗戦を続け、サポーターらは不満を募らせた。2月にサンケイスポーツが実施した調査では約9割が「監督交代」を希望し、試合後のスタンドに「岡チャン不合格」と書かれた怒りの横断幕が掲げられたことも。
しかし、ふたを開けてみれば、1次リーグを勝ち抜き、決勝トーナメントでも善戦。ファンからは「よく頑張った」「ありがとう、岡ちゃん」と感謝の言葉が絶えなかった。
産経新聞が29日、東京・銀座など繁華街でサッカーファンに話を聞いたところ、「1次リーグ敗退」を予想していたという多くの人たちが「威厳を感じる」「ツキも監督の手腕」「好感が持てる」などと岡田監督の指揮ぶりを称賛。厳しい予想をした自分を“懺悔(ざんげ)”した。
新聞などでも開幕前は、専門記者や評論家が岡田監督を厳しく評価。「迷走」「迷将」「付け焼き刃」などの活字が躍ったが、最後には、そうした論調が逆に批判を浴びるようになった。
評論家のセルジオ越後さんも批判を浴びた一人。2月に監督交代を提言し、開幕前には1次リーグ突破の可能性を「0%」と予想した。セルジオさんは「あれだけ未熟で、点を取れず、勝てない状況だった」と辛口に振り返った上で、「監督は結果がすべて」と活躍を評価してみせる。
「開幕直前にそれまで準備していた戦術をすっ飛ばし、守りのチームにするというバクチを打った。ギリギリの作戦が何とか成功した」
「迷将」から「名将」へ。評価は大きく変わったが、それも日本中でW杯への期待が開幕前から高かったことの裏返しだ。
法政大学の稲増龍夫教授(社会心理学)は、「国と国がぶつかるときには、ある種のナショナリズムが生まれ、国民は結果に大きな期待を抱く。そのとき、チームがうまくいけば称賛するし、ちょっとの失敗で評価が百八十度変わることもある」と指摘する。
パラグアイ戦の前に会見した岡田監督は、自身に対する評価が一変したことを尋ねられると、こう答えた。「これだけ変わるということは、また変わる。一喜一憂していられない。バッシングを受けても進むべき道を進む。褒められても進むべき道を進む」
進むべき道を進んだ岡田監督と日本代表の選手たちへの拍手。試合終了後も鳴りやまなかった。
世界が注目したから!? パラグアイでネット、携帯がダウン
【アスンシオン=松尾理也】サッカーW杯日本-パラグアイ戦が行われた29日、試合終了直後からパラグアイの広い地域でインターネットや携帯電話がつながりにくくなった。
原因は明らかになっていないが、有力紙ナシオンは「パラグアイの勝利を祝う海外在住のパラグアイ人が一斉に自国のウェブサイトにアクセスしようとしただけでなく、パラグアイに関心を持った世界中の国々からアクセスが殺到したためではないか」と、鼻高々に原因を推測している。
原案通り来年4月から実施総務省、携帯「SIMロック」解除の指針発表
総務省は30日、携帯電話を特定の通信事業者でしか使えないようにする「SIM(シム)ロック」解除のガイドライン(指針)を発表した。今年5月に公表した原案通り確定し、2011年4月以降、SIMロックを解除できる携帯電話の提供を、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクモバイルなど携帯通信各社に求める形になる。ただ、SIMロック解除の具体策について総務省は「携帯各社の自主的な取り組みに任せる」(総合通信基盤局事業政策課)とし、法制化によるSIMロック解除の強制は当面、見送った。
携帯各社間では、SIMロック解除への取り組みに“温度差”が出るとみられる。現行の携帯電話端末は携帯各社間で通信規格方式や電波周波数帯が異なるため、SIMロックを解除した場合、携帯の利用者はNTTドコモのiモードなどこれまで利用可能だった通信サービスが受けられない可能性もある。
このため、SIMロック解除による「消費者への利便性の提供」(総務省)という政策効果には未知数な部分も残されている。
今回のSIMロック解除指針の対象となったのは、SIMカードを使う情報通信機器類。国内で販売されている携帯電話やスマートフォン(高機能携帯電話)のほか、アップル製「iPad(アイパッド)」などの多機能情報端末、またパソコンにつなげてインターネット通信を利用できるデータ通信端末などが含まれている。
総務省は今回のSIMロック解除の指針原案を5月26日に発表。同日から6月23日まで、外部からのパブリックコメントを募った結果、計47件(法人・団体13件、個人34件)が寄せられた。特に個人からは「賛成意見が多かった」としている。
CCC、音楽・映像ソフト販売大手HMV買収を断念
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は30日、音楽・映像ソフト販売大手のHMVジャパン(東京・港)の買収を断念した、と発表した。全株式を保有する大和証券エスエムビーシープリンシパル・インベストメンツ(DPI)と金銭面で折り合わなかったほか、HMVの不採算店が予想以上に多かったことなどを問題視したとみられる。
HMVは約350億円とみられる売上高の約半分をインターネット通販で稼いでいるとされる。ネット通販事業強化を狙うCCCは3月、HMVの全事業取得に向け、DPIと交渉に入った。
ただ、HMVは東京・渋谷の旗艦店を8月に閉鎖するなど全国約50ある店舗事業は、音楽配信サービスの台頭などにより、苦戦が続く。CCCは運営するCD・DVDレンタル・販売店「TSUTAYA」と仕入れなどを統合しても、さらなるHMV店舗の閉鎖は避けられないと判断したもようで、買収断念につながった。
東京株、7ヶ月ぶり安値 円高や不透明感を嫌気
30日の東京株式市場は、世界経済の先行き不透明感が再び強まったことから日経平均株価が4日続落し、年初来安値を更新。昨年11月30日以来、7カ月ぶりに9300円台の安値水準で引けた。
日経平均の終値は前日比188円03銭安の9382円64銭、東証1部全銘柄の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)は10・77ポイント安の841・42。前週末の20カ国・地域(G20)首脳会議で日本を除く先進国が財政赤字削減に合意したものの、市場では「回復途上にある景気腰折れにつながり、『二番底』懸念も再燃しかねない」(大手証券)との見方が強い。
東京市場では外国為替相場が1ドル=88円台、1ユーロ=108円台と円高に触れ、投資家心理を冷やした。自動車、電機など輸出銘柄のほか、不動産、サービスなど内需関連も低迷し、全面安となった。
宝島社がファション雑貨店風の書籍売り場「書店内書店」を展開
出版社の宝島社(東京都千代田区)が、「書店内書店」という新しい売り場作りに取り組んでいる。書店の一角に自社書籍のみを集め、雑誌の付録として付けているブランドもののかばんやポーチなどを姿見とともに並べて「ファション雑貨売り場」のような雰囲気を演出するのが売りだ。従来の「本好き」以外の来店者を増やすことを狙っており、今夏以降、全国各地の大型書店で本格的に実施するという。
書店内書店は4月12~5月5日、紀伊國屋書店福岡本店(福岡市)で試験的に実施。「宝島書店」という看板を掲げた広さ約66平方メートルの売り場に、人気ファッションブランドを特集したムック本や雑誌、文庫、新書、DVDなど同社の売れ筋商品約150種類を集めた。
商品の見せ方にも工夫を凝らす。同社は「コンテンツ(情報の中身)の一部」としてファッションブランドのムック本や雑誌にトートバッグやポーチ、小物入れといった付録を付けているが、それらの中身を取り出してハンガーラックを使って陳列。姿見も置き、客が衣服とのコーディネートを確認できるようにした。書店側も専属の担当者を置き、客の案内を行った。
売り場を企画した桜田圭子広報課長は、「書店に新しい客を呼び込むことを狙った。ファッションをきっかけに来店してもらうことで、ついでに一般の書籍や雑誌も買ってもらえるのではと考えた」と話す。
狙いは当たり、期間中の同店における宝島社書籍の売り上げは冊数ベースで通常期の平均と比べ約1・9倍にアップ。若い女性や家族連れなど客層も広がり、「固定客の開拓につながった」(桜田課長)と自信を見せる。
書店内書店が「集客装置」の役割を果たしたことから書店側からも感謝されたという。桜田課長は「iPad(アイパッド、多機能情報端末)などの登場で書店の経営は厳しさを増している。しかし、店頭に足を運んでもらえれば消費者は本や雑誌の魅力に気付くはず」と語る。
同社ではファッションブランドのムック本の新刊が出る今年8月をめどに東京や札幌、福岡など全国5都市の大型書店に「宝島社書店」を開設する方針。期間限定の売り場となるが、書店の活性化にもつながるため「いずれ常設していきたい」(桜田課長)としている。
【東京新聞社説】
中台“FTA” 開かれた自由貿易圏に
2010年6月30日
中国と台湾は二十九日、それぞれの窓口機関を通じ自由貿易協定(FTA)に当たる経済協定を結んだ。北東アジアに生まれる初の自由貿易圏を中台で閉ざさず、日本や韓国も参加し広げたい。
調印された「経済協力枠組み協定(ECFA)」は、まず中国側が五百三十九、台湾側が二百六十七の品目について来年一月から二年間でゼロ関税を実現することを決めた。金融やサービス分野も、お互いに開放を進める。
二年前に台湾で対中関係改善を訴えて国民党政権が誕生し、中台経済は結び付きを強めた。既に台湾の総輸出額の約40%は中国向けで人口約二千三百万人の台湾から百万人余りが中国に常駐する。ECFAによって中台経済の一体化は一層、加速しそうだ。
ECFAと呼ばれているのは、中国がFTAは主権国家間の取り決めで、台湾に協定締結の資格がないとしているためだ。中国は同種の協定を、中国に返還された香港、マカオとも結んでいる。
しかし、与党・国民党の馬英九総統はECFAを皮切りに各国ともFTA外交を活発化し、台湾を「アジア太平洋地域の貿易拠点にしよう」と呼び掛けている。
これに対し、野党・民進党は、蔡英文主席が協定によって中国が「台湾をのみ込もうとしている」と批判する。二十六日には、台北で調印をめぐる住民投票などを求め十万人規模のデモを行った。
ECFAは、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心に自由貿易圏の形成が進む東南アジアに比べ、立ち遅れた北東アジアで初の自由貿易地域を形成する。
世界が注目する中国市場で台湾企業が有利になることによってライバルの日本や韓国と中国のFTA締結の動きをも促すだろう。
中国は他国が台湾とFTAを結ぶことを主権国家として扱うことになると反対する。しかし、「民間の経済、貿易の往来に異議はない」(外務省)と含みを残す。
日本にとって台湾は経済、貿易の有力な相手で対日感情もよい。政府は新成長戦略で「アジア太平洋自由貿易圏の構築」を目指す。中国と並んで台湾とも自由貿易の枠組みを追求すべきだ。
中国もECFAを調印した以上、民間主導の取り決めには、真っ向から反対はしにくいだろう。
中台の自由貿易圏に日本や韓国が加わることは、台湾の対中不信を和らげ、北東アジアの安定と平和にも貢献するに違いない。