00430000s@merumo.ne.jp に空メールすると、ブログと同じ内容のメルマガをが配信されます。twitterはhttps://twitter.com/wataru4 です。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「ワイヤレスブロードバンド」でどこでも高速インターネット 2009キーワード(COLUMN)
2009年の通信業界において、注目されるトピックの一つが「ワイヤレスブロードバンド」だ。07年末に総務省から割り当てられた2.5ギガヘルツ帯の周波数による高速無線通信の新サービスがいよいよ始まろうとしている。
■米韓ではサービス開始済み
国内で今年ワイヤレスブロードバンドの事業を開始するのは、「モバイルWiMAX」方式を採用するKDDI系のUQコミュニケーションズと、「次世代PHS」方式を採用するウィルコムだ。いずれも数十メガビット秒程度の通信速度を計画している。
モバイルWiMAXは、すでに韓国や米国でサービスが始まっている。韓国では、KTとSKテレコムがモバイルWiMAXを「WiBRO」という名称で06年に開始している。
米国では、スプリント・ネクステルが08年にメリーランド州ボルティモアで「XOHM」という名称でスタートした。しかし、スプリント・ネクステルの業績不振もあり、この春にはベンチャーのクリアワイヤとスプリント・ネクステルがモバイルWiMAX事業を統合し、サービス名称もXOHMからクリアワイヤに統合される予定だ。
■当初はあまり期待できないエリア
UQコミュニケーションズが手がけるWiMAXは「Wave2」という種類のもので、韓国や米国で導入されている「Wave1」よりも上位に位置付けられ、通信速度などの面で向上している。
今年2月28日に東京23区、横浜市、川崎市で試験サービスの開始を計画している。基地局はまず200局程度になる見込み。その後、夏にはエリアを東名阪に広げて商用サービスを開始し、12年度までに順次、全国にエリア展開する。基地局は、既存のKDDIの携帯基地局に併設していく。
「サービス開始当初のエリアに関してはあまり期待しないでほしい」(KDDI関係者)という本音も漏れてくることから、実際に快適に使えるようになるには時間がかかりそうだ。
端末は、サービス開始当初はUSBやPCカード、ExpressCard型などのデータ通信専用端末になる予定。携帯電話と同様に、キャリアであるUQコミュニケーションズが販売元になると見られているが、将来的には家電量販店で無線LAN端末のように購入して、後で事業者と契約する仕組みにもなりそうだ。
モバイルWiMAXは、半導体ベンダーのインテルが積極的に取り組んでいる(UQコミュニケーションズにも出資している)。そのため、将来的にはノートパソコンにモバイルWiMAXが標準搭載される可能性も秘めており、そうなれば家電量販店でノートパソコンを購入して、自宅に帰ってオンラインで契約すれば、すぐにモバイルWiMAXが使えるという状況もあり得るだろう。
一方、ウィルコムが手がける次世代PHSは、サービス開始当初は20メガビット秒、将来的には100メガビット秒の通信速度を予定している。次世代PHSサービスの総称として「WILLCOM CORE」という名称が使われ、技術的な規格を表すときは「XGP」を使っている。
ウィルコムの強みは何といっても全国に16万もある基地局を活用するという点。マイクロセルというきめ細かい基地局設営により、安定した通信速度を提供できるようだ。次世代PHSは、2009年中にサービスを開始する予定としか明言されていない。そのため、UQコミュニケーションズよりも商用サービスは遅れる可能性がある。
ただし、その「中継ぎ」として、NTTドコモからHSDPA網をMVNO(仮想移動体通信事業者)として借りて、高速通信サービスを提供できるように交渉しているという。
通信方式最大速度
第2世代(PDC)28.8Kbps第3世代
(W-CDMA)384Kbps第3.5世代
(HSDPA)14Mbps第3.9世代
(LTE)300Mbps公衆無線
LAN(IEEE802.11g)54MbpsPHS64kbps
(ウィルコムでは8回線を束ねることで最大512Kbpsに対応)次世代PHS20Mbps
モバイルWiMAX(Wave2)40Mbps
■MVNOが前提
総務省は、MVNOとして参入する事業者へのインフラの開放を前提として2.5ギガヘルツ帯の周波数を割り当てている。そのため、ネットワークの他社への貸し出しは積極的に行われる見込みで、ユーザーはUQコミュニケーションズやウィルコムではない事業者と契約するといったことも普通に考えられる。
UQコミュニケーションズでは、MVNO側で課金やID管理などの認証設備を持たずに、同社の認証設備を利用する場合の標準プランとして、1回線あたり月額3465円という価格を提示した。この価格にMVNOが利益を乗せてユーザーにサービスを提供していくことになる。
■WiMAXとXGPはほぼ同じ
モバイルWiMAXとXGPという2つの方式のワイヤレスブロードバンドが始まることになるが、実際のところ両者は技術的にはかなり近い存在になっている。いずれのサービスも「OFDMA」と呼ばれる通信技術を採用しており、「XGPで使われるチップや部材は、モバイルWiMAXを手がけるメーカーから調達して流用することが前提」(ウィルコム関係者)という。
2つの通信方式をソフトウエア的に使い分けられるような環境を目指しており、例えばモバイルWiMAXに対応したノートパソコンを購入しても、ソフトウエアによってXGPも使えるようになるという可能性もあるという。
つまり、ウィルコムの次世代PHSは、モバイルWiMAXが盛り上がらないことには部材調達やコスト削減も期待できない。モバイルWiMAXあっての次世代PHSなのだ。
ちなみにスーパー3Gと呼ばれるLTE(Long Term Evolution)も、WiMAXと同様にOFDMAという技術をベースにしている。LTEは第3世代の「W-CDMA」「HSDPA」の発展技術とされ、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルが導入を検討している。
LTEによるサービスができる事業者は09年中にも決定する予定だが、周波数に限りがあるため、すべてのキャリアに割り当てられるかは微妙な情勢と言われている。
■競争激化
これまで日本における定額のモバイルデータ通信は、01年にサービスを開始したウィルコム(当時DDIポケット)が業界をリードしてきたが、07年にイー・モバイルが3.6メガビット秒のサービスで参入し、ユーザーを一気に奪っている。第3世代網によるデータ通信では、NTTドコモやKDDI(au)も定額サービスを開始している。
今年さらに2つのワイヤレスブロードバンドサービスが始まることにより、さらなる競争環境が実現されそうだ。MVNOも含めて多様な事業者が登場することで、ユーザーにとっての利便性が高まることを期待したい。
米国渡航で「ESTA」がスタート 成田空港、混乱なく
米国への短期滞在の入国者が事前にインターネットで申請して承認を受ける「電子渡航認証システム(ESTA)」の運用が12日、始まった。成田空港では大きな混乱はなかった。
日本航空と全日空はそれぞれのカウンター近くに事前の承認申請を忘れた旅客のための入力用パソコンを置き対応。米国大使館(東京都港区)も特別に案内ブースを設置し、渡米の旅客に説明していた。
オークランドに行くという川崎市の会社員の女性(45)は「入力は簡単でした。テロ対策など安全のために仕方がない」と新制度に納得の様子。一方、バージニア州に向かう横浜市の会社員の男性(29)は「自分では不安なので旅行代理店でやってもらいました。新しい制度なので少し戸惑いもあります」と話した。
ESTAは2001年の米中枢同時テロを機に制定された米国法に基づく。ビザなしで90日以内の短期滞在者が対象。出発前に専用サイト上で住所や氏名、逮捕歴の有無など約20項目の質問に回答し、承認を受ける。
地デジ移行完了に黄信号 対応TV売れ行き不振
放送業界が2011年7月に計画している地上デジタル放送への移行に「黄色信号」がともっている。消費不振で想定以上に地デジ対応薄型テレビの売れ行きが失速。同年春までに全世帯で地デジを見られるようにする目標計画と現実の普及率の差が、徐々に開いてきたためだ。移行が遅れれば、放送各社には追加の費用負担が発生するなどの影響が出る可能性もあり、業界では困惑の色が強まっている。
政府やテレビ放送業界は11年7月24日をもってアナログ放送を打ち切り、地デジに全面移行する計画だ。約5000万のすべての世帯に薄型テレビなどの対応受信機が行き渡ることを前提としている。業界などで組織する「地上デジタル推進全国会議」は当初、昨年9月での世帯普及率50%達成を目指していた。
ロシア、12月はマイナス成長
ロシア国営の対外貿易銀行は11日、昨年12月の同国の国内総生産(GDP)が前年同月比1.1%減少したとの調査を明らかにした。同行によると、マイナス成長となったのは1999年3月以来、9年9カ月ぶり。高成長を続けたロシア経済の鈍化が鮮明となってきた。
同行の欧州現地法人による調査は「12月は鉱工業生産の低下が続き、サービス部門も不振だった」と指摘、2009年についても回復は期待できず「景気後退する可能性が強まっている」との見通しを示した。
【産経主張】成人の日 危機にこそ若い力発揮を
きょう12日は成人の日である。急速な景気悪化のなか、就職や進学、暮らしなどで不安を抱えている新成人も多いのではないか。
厳しい時代だからこそ、成人となった意味をかみしめ、難局に打ち勝つ気概を新たにしてほしい。
各地で催される成人式には昭和63年生まれのほか、平成元年生まれの新成人が初めて参加する。
平成に育った若者たちは、小中学校時代からゆとり教育を受けてきた世代でもある。
社会が変化しても自分で考え、活躍できる個性や意欲が期待されてきた。しかし、ゆとりや個性重視がはき違えられ、「ゆとり世代」といえば、物を知らない独りよがりの若者たちの代名詞にもなっている。
この世代へのアンケートでは意欲に欠けるなど気になる結果が多かった。米国や中国、韓国の若者と比べ、責任の重い立場につきたくない、のんびり暮らしたい-という傾向が強いといった意識調査の結果もある。
幼いころからインターネットやゲームなどに親しみ、実体験不足やコミュニケーション下手も心配される。その一方で情報機器の活用に慣れた世代だ。
自分たちの得意分野を積極的に見いだし、心棒となるものを持ってほしい。そのために知識、教養を深め、心を鍛える。未来は限りなく広がっている。
本紙大阪本社版の新年連載で、今年20歳になる「平成世代」の若者たちの話が載った。この世代ならではの発想で、夢中になって取り組む世界を持っている。
囲碁で最年少八段の若者は「答えがないからこそ、自分の世界を作っていける」と盤上の魅力を語っていた。囲碁を知ったのは父親が買ってきたゲームソフトがきっかけという。
太陽エネルギーを利用するソーラーカー製作に参加する大学生は、小さいころから環境問題の話を聞いて育った。「逆に新しい技術やアイデアを生かすチャンスにしたい」。変化する社会環境が挑戦の舞台でもある。
ものづくりの分野では団塊の世代の大量退職などで継承が懸念されている。囲碁界では韓国、中国の棋士たちの活躍が目立つというが、海外のライバルの台頭は囲碁の世界ばかりではない。
危機や激変のなかでこそ君たち若い力が期待されている。
2009年の通信業界において、注目されるトピックの一つが「ワイヤレスブロードバンド」だ。07年末に総務省から割り当てられた2.5ギガヘルツ帯の周波数による高速無線通信の新サービスがいよいよ始まろうとしている。
■米韓ではサービス開始済み
国内で今年ワイヤレスブロードバンドの事業を開始するのは、「モバイルWiMAX」方式を採用するKDDI系のUQコミュニケーションズと、「次世代PHS」方式を採用するウィルコムだ。いずれも数十メガビット秒程度の通信速度を計画している。
モバイルWiMAXは、すでに韓国や米国でサービスが始まっている。韓国では、KTとSKテレコムがモバイルWiMAXを「WiBRO」という名称で06年に開始している。
米国では、スプリント・ネクステルが08年にメリーランド州ボルティモアで「XOHM」という名称でスタートした。しかし、スプリント・ネクステルの業績不振もあり、この春にはベンチャーのクリアワイヤとスプリント・ネクステルがモバイルWiMAX事業を統合し、サービス名称もXOHMからクリアワイヤに統合される予定だ。
■当初はあまり期待できないエリア
UQコミュニケーションズが手がけるWiMAXは「Wave2」という種類のもので、韓国や米国で導入されている「Wave1」よりも上位に位置付けられ、通信速度などの面で向上している。
今年2月28日に東京23区、横浜市、川崎市で試験サービスの開始を計画している。基地局はまず200局程度になる見込み。その後、夏にはエリアを東名阪に広げて商用サービスを開始し、12年度までに順次、全国にエリア展開する。基地局は、既存のKDDIの携帯基地局に併設していく。
「サービス開始当初のエリアに関してはあまり期待しないでほしい」(KDDI関係者)という本音も漏れてくることから、実際に快適に使えるようになるには時間がかかりそうだ。
端末は、サービス開始当初はUSBやPCカード、ExpressCard型などのデータ通信専用端末になる予定。携帯電話と同様に、キャリアであるUQコミュニケーションズが販売元になると見られているが、将来的には家電量販店で無線LAN端末のように購入して、後で事業者と契約する仕組みにもなりそうだ。
モバイルWiMAXは、半導体ベンダーのインテルが積極的に取り組んでいる(UQコミュニケーションズにも出資している)。そのため、将来的にはノートパソコンにモバイルWiMAXが標準搭載される可能性も秘めており、そうなれば家電量販店でノートパソコンを購入して、自宅に帰ってオンラインで契約すれば、すぐにモバイルWiMAXが使えるという状況もあり得るだろう。
一方、ウィルコムが手がける次世代PHSは、サービス開始当初は20メガビット秒、将来的には100メガビット秒の通信速度を予定している。次世代PHSサービスの総称として「WILLCOM CORE」という名称が使われ、技術的な規格を表すときは「XGP」を使っている。
ウィルコムの強みは何といっても全国に16万もある基地局を活用するという点。マイクロセルというきめ細かい基地局設営により、安定した通信速度を提供できるようだ。次世代PHSは、2009年中にサービスを開始する予定としか明言されていない。そのため、UQコミュニケーションズよりも商用サービスは遅れる可能性がある。
ただし、その「中継ぎ」として、NTTドコモからHSDPA網をMVNO(仮想移動体通信事業者)として借りて、高速通信サービスを提供できるように交渉しているという。
通信方式最大速度
第2世代(PDC)28.8Kbps第3世代
(W-CDMA)384Kbps第3.5世代
(HSDPA)14Mbps第3.9世代
(LTE)300Mbps公衆無線
LAN(IEEE802.11g)54MbpsPHS64kbps
(ウィルコムでは8回線を束ねることで最大512Kbpsに対応)次世代PHS20Mbps
モバイルWiMAX(Wave2)40Mbps
■MVNOが前提
総務省は、MVNOとして参入する事業者へのインフラの開放を前提として2.5ギガヘルツ帯の周波数を割り当てている。そのため、ネットワークの他社への貸し出しは積極的に行われる見込みで、ユーザーはUQコミュニケーションズやウィルコムではない事業者と契約するといったことも普通に考えられる。
UQコミュニケーションズでは、MVNO側で課金やID管理などの認証設備を持たずに、同社の認証設備を利用する場合の標準プランとして、1回線あたり月額3465円という価格を提示した。この価格にMVNOが利益を乗せてユーザーにサービスを提供していくことになる。
■WiMAXとXGPはほぼ同じ
モバイルWiMAXとXGPという2つの方式のワイヤレスブロードバンドが始まることになるが、実際のところ両者は技術的にはかなり近い存在になっている。いずれのサービスも「OFDMA」と呼ばれる通信技術を採用しており、「XGPで使われるチップや部材は、モバイルWiMAXを手がけるメーカーから調達して流用することが前提」(ウィルコム関係者)という。
2つの通信方式をソフトウエア的に使い分けられるような環境を目指しており、例えばモバイルWiMAXに対応したノートパソコンを購入しても、ソフトウエアによってXGPも使えるようになるという可能性もあるという。
つまり、ウィルコムの次世代PHSは、モバイルWiMAXが盛り上がらないことには部材調達やコスト削減も期待できない。モバイルWiMAXあっての次世代PHSなのだ。
ちなみにスーパー3Gと呼ばれるLTE(Long Term Evolution)も、WiMAXと同様にOFDMAという技術をベースにしている。LTEは第3世代の「W-CDMA」「HSDPA」の発展技術とされ、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルが導入を検討している。
LTEによるサービスができる事業者は09年中にも決定する予定だが、周波数に限りがあるため、すべてのキャリアに割り当てられるかは微妙な情勢と言われている。
■競争激化
これまで日本における定額のモバイルデータ通信は、01年にサービスを開始したウィルコム(当時DDIポケット)が業界をリードしてきたが、07年にイー・モバイルが3.6メガビット秒のサービスで参入し、ユーザーを一気に奪っている。第3世代網によるデータ通信では、NTTドコモやKDDI(au)も定額サービスを開始している。
今年さらに2つのワイヤレスブロードバンドサービスが始まることにより、さらなる競争環境が実現されそうだ。MVNOも含めて多様な事業者が登場することで、ユーザーにとっての利便性が高まることを期待したい。
米国渡航で「ESTA」がスタート 成田空港、混乱なく
米国への短期滞在の入国者が事前にインターネットで申請して承認を受ける「電子渡航認証システム(ESTA)」の運用が12日、始まった。成田空港では大きな混乱はなかった。
日本航空と全日空はそれぞれのカウンター近くに事前の承認申請を忘れた旅客のための入力用パソコンを置き対応。米国大使館(東京都港区)も特別に案内ブースを設置し、渡米の旅客に説明していた。
オークランドに行くという川崎市の会社員の女性(45)は「入力は簡単でした。テロ対策など安全のために仕方がない」と新制度に納得の様子。一方、バージニア州に向かう横浜市の会社員の男性(29)は「自分では不安なので旅行代理店でやってもらいました。新しい制度なので少し戸惑いもあります」と話した。
ESTAは2001年の米中枢同時テロを機に制定された米国法に基づく。ビザなしで90日以内の短期滞在者が対象。出発前に専用サイト上で住所や氏名、逮捕歴の有無など約20項目の質問に回答し、承認を受ける。
地デジ移行完了に黄信号 対応TV売れ行き不振
放送業界が2011年7月に計画している地上デジタル放送への移行に「黄色信号」がともっている。消費不振で想定以上に地デジ対応薄型テレビの売れ行きが失速。同年春までに全世帯で地デジを見られるようにする目標計画と現実の普及率の差が、徐々に開いてきたためだ。移行が遅れれば、放送各社には追加の費用負担が発生するなどの影響が出る可能性もあり、業界では困惑の色が強まっている。
政府やテレビ放送業界は11年7月24日をもってアナログ放送を打ち切り、地デジに全面移行する計画だ。約5000万のすべての世帯に薄型テレビなどの対応受信機が行き渡ることを前提としている。業界などで組織する「地上デジタル推進全国会議」は当初、昨年9月での世帯普及率50%達成を目指していた。
ロシア、12月はマイナス成長
ロシア国営の対外貿易銀行は11日、昨年12月の同国の国内総生産(GDP)が前年同月比1.1%減少したとの調査を明らかにした。同行によると、マイナス成長となったのは1999年3月以来、9年9カ月ぶり。高成長を続けたロシア経済の鈍化が鮮明となってきた。
同行の欧州現地法人による調査は「12月は鉱工業生産の低下が続き、サービス部門も不振だった」と指摘、2009年についても回復は期待できず「景気後退する可能性が強まっている」との見通しを示した。
【産経主張】成人の日 危機にこそ若い力発揮を
きょう12日は成人の日である。急速な景気悪化のなか、就職や進学、暮らしなどで不安を抱えている新成人も多いのではないか。
厳しい時代だからこそ、成人となった意味をかみしめ、難局に打ち勝つ気概を新たにしてほしい。
各地で催される成人式には昭和63年生まれのほか、平成元年生まれの新成人が初めて参加する。
平成に育った若者たちは、小中学校時代からゆとり教育を受けてきた世代でもある。
社会が変化しても自分で考え、活躍できる個性や意欲が期待されてきた。しかし、ゆとりや個性重視がはき違えられ、「ゆとり世代」といえば、物を知らない独りよがりの若者たちの代名詞にもなっている。
この世代へのアンケートでは意欲に欠けるなど気になる結果が多かった。米国や中国、韓国の若者と比べ、責任の重い立場につきたくない、のんびり暮らしたい-という傾向が強いといった意識調査の結果もある。
幼いころからインターネットやゲームなどに親しみ、実体験不足やコミュニケーション下手も心配される。その一方で情報機器の活用に慣れた世代だ。
自分たちの得意分野を積極的に見いだし、心棒となるものを持ってほしい。そのために知識、教養を深め、心を鍛える。未来は限りなく広がっている。
本紙大阪本社版の新年連載で、今年20歳になる「平成世代」の若者たちの話が載った。この世代ならではの発想で、夢中になって取り組む世界を持っている。
囲碁で最年少八段の若者は「答えがないからこそ、自分の世界を作っていける」と盤上の魅力を語っていた。囲碁を知ったのは父親が買ってきたゲームソフトがきっかけという。
太陽エネルギーを利用するソーラーカー製作に参加する大学生は、小さいころから環境問題の話を聞いて育った。「逆に新しい技術やアイデアを生かすチャンスにしたい」。変化する社会環境が挑戦の舞台でもある。
ものづくりの分野では団塊の世代の大量退職などで継承が懸念されている。囲碁界では韓国、中国の棋士たちの活躍が目立つというが、海外のライバルの台頭は囲碁の世界ばかりではない。
危機や激変のなかでこそ君たち若い力が期待されている。
PR
日経社説 ガラパゴス脱しグローバル市場狙え 技術力を世界に拓く・(1/12)
日本の情報通信産業が壁に突き当たっている。ハードの技術力はあるのに、世界市場で存在感が薄くなった。携帯電話が典型だ。技術は進化しているが、日本でしか利用されないものが多く、世界のニーズをつかめない。特殊な生態系を保つ南米沖の諸島になぞらえ、「ガラパゴス現象」と呼ばれている。持てる技術を世界に広める努力が、国際競争力の再強化には不可欠だ。
孤島のような日本市場
昨年末、フィンランドの携帯電話機メーカー、ノキアの対日戦略の転換が話題を呼んだ。日本市場でのシェアを10%に高める方針を撤回、発表済み製品の発売も取りやめた。今後は高額機種の販売に力点を置くというが、きわめて特殊な日本の市場にさじを投げた格好だ。
世界の携帯電話機市場でノキアは4割近いシェアを握る。ところが日本でのシェアは微々たるものだ。日本の市場は国内メーカーがほぼ独占している。逆に世界市場では、ノキアのほか韓国のサムスン電子、米モトローラなどが大きなシェアを持ち、日本メーカーのシェアは全社合わせても10%にも満たない。
同じような現象はほかにもある。カーナビゲーション機器で日本企業は世界で約7割のシェアを持つが、ほとんどは日米の自動車メーカーへの商品供給だ。消費者が自ら選択する後付けの普及品市場では、日本勢のシェアは5%にも届かない。パソコンでも、日本メーカーの世界市場でのシェアは縮小している。
ガラパゴス現象の発端は、1980年代後半から進んだ円高にあった。輸出の採算悪化に伴って国内販売に力を入れ始めた各社は、製品の高機能化をどんどん進めた。さらに自前技術への固執も重なって、高い開発コストが定着してしまった。
携帯電話ではNTTドコモやKDDIなど大手通信会社が端末の仕様を決め、定期的に買い上げたため、依存体質ができてしまった。日本独自の技術や規格、独特の販売制度にメーカーが頼る図式だ。
国内市場の成長が続いている間はそれでもよかったが、バブル経済が崩壊し、90年代後半からインターネットが普及すると、情報通信産業をめぐるビジネス環境は激変した。日本企業はVTRやファクス、複写機などアナログ商品では強かったのに、インターネット時代に入りデジタル商品が主流になると、急速に競争力を失った。
いま携帯音楽プレーヤーでは、米アップルの「iPod」が強い競争力を誇る。この分野はもともとソニーなど精密加工技術が得意な日本企業の独壇場だった。ところがアップルはインターネットを活用した視聴スタイルを提案。プレーヤーという単品商売でなく、サービスに高めることに成功した。
日本企業の垂直統合型のモノづくりは、改良や擦り合わせなどの“職人芸”に頼りがちだ。アナログ商品の開発ならそれでもよかった。ところが、デジタル商品ではソフトの開発力がものをいい、部分最適より全体のシステムが重要になる。
情報通信技術はさらに次の段階へ向かいつつある。ソフトをパッケージではなくサービスとして提供する「SaaS(サース)」や、情報システムを電気やガスのようにインターネットで提供する「クラウドコンピューティング」の台頭だ。携帯情報端末や小型パソコンが売れ始めたのも、この流れに沿った動きだ。
欧州との連携も視野に
残念ながら、次の段階への移行でも主役は米企業だ。アマゾン・ドット・コムやグーグルがクラウド技術で先行し、携帯端末でもアップルの「iフォーン」に続き、グーグルが無償基本ソフトの「アンドロイド」を提供する。米企業は低コストの開発環境づくりで覇権獲得を狙う。
そうした中で日本企業が活路を見いだすためには、ガラパゴスから脱し、グローバルに通用する新技術を自ら積極的に打ち出す必要がある。米国の技術を追いかけるだけでなく欧州やアジアとの連携も重要だ。
昨年末、ノキアがグーグルに対抗し、携帯向け基盤ソフト「NoTA(ノタ)」の無償提供を発表した。これには「iモード」にも採用された日本生まれの基本ソフト「トロン」が使われている。介護用ネットロボットの開発でも日本とスウェーデンとの間で技術協力が始まった。
通信分野では光技術を日本は得意とする。NTTはそれをもとにインターネットの安全性を高めた「次世代ネットワーク(NGN)」の整備を始めた。だがNGNの導入が国内だけにとどまると、通信基盤のガラパゴス化を再び招きかねない。通信分野に限らず、日本の技術の採用を外国にも働きかけることが急務だ。
内閣不支持7割超、給付金に反対78%…読売世論調査
読売新聞社が9~11日に実施した全国世論調査(電話方式)によると、麻生内閣の支持率は昨年12月の前回調査から0・5ポイント減の20・4%、不支持率は5・6ポイント増の72・3%となった。
麻生首相と民主党の小沢代表のどちらが首相にふさわしいかとの質問でも、小沢氏が39%と前回の36%から増やしたのに対し、麻生首相は27%で29%から減らした。
首相に向けられる有権者の視線は厳しさを増しており、麻生内閣はさらに困難な政権運営を強いられることになりそうだ。
今回、麻生内閣の支持率は2割台になんとか踏みとどまったものの、内閣の不支持率が7割を超す高水準に突入したのは、森内閣以来だ。
「麻生離れ」の大きな要因は、経済危機への対応を始めとする内閣の政策に有権者が不満を募らせているためと見られる。内閣を支持する理由では「政策に期待できる」が20%(前回24%)に減り、支持しない理由で「政策に期待できない」が36%(同32%)に増えたことにそれが読み取れる。
麻生内閣が08年度第2次補正予算案の目玉としている総額2兆円の定額給付金についても、「支給を取りやめて、雇用や社会保障など、ほかの目的に使うべきだ」との意見に賛成と答えた人は78%に達し、支給撤回に反対する意見は17%に過ぎなかった。
次の衆院比例選でどの政党に投票するかでは、民主39%(前回40%)、自民24%(同24%)などとなり、民主党が自民党を圧倒している。ただ、政党支持率は自民29・3%(同27・2%)、民主26・2%(同28・2%)だった。
デジタル家電、寡占が加速 2強シェア5割超、08年9品目
薄型テレビやデジタルカメラなどデジタル家電で上位メーカーによる寡占が加速している。2008年の主要11品目で上位2社の国内販売シェア合計が前年より伸びたのは7品目。9品目ではシェアが5割を超えた。世界景気が急減速、需要不振で経営環境が悪化、体力に劣る下位メーカーがシェアを落としている。こうした傾向は年明け以降、一段と強まっており、縮む市場での寡占進展で生き残り競争はさらに激化する見通し。電機業界の再編機運が高まりそうだ。
全国の家電量販店の9割程度にあたる約4500店の販売実績をまとめたGfKジャパン(東京・中野)のデータを基に集計した。デジタル家電は技術革新によりシェアが大きく変動するため、収益環境の変化に連動しやすい。
「2020年の夢は経常益1兆円」 ファストリの柳井社長
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正社長はこのほど「2020年の夢」の題で社員にメッセージを送り「グループで経常利益1兆円、売上高5兆円を達成」との抱負を語った。経営計画に基づく正式な目標値ではないが、創業60年を機に社員に一層の奮起と結束を促した格好だ。
柳井氏は現在のファストリを「大企業病にかかっている」と評し、「20年に世界で一番革新的で効率の高い企業になる」との理想を表明。それに向け今年の標語を「グローバルワン・全員経営」とし、管理職教育を強化する考えも示した。
トヨタ、米で2012年までに次世代電気自動車発売
トヨタ自動車は11日、2012年までに次世代電気自動車を北米市場で発売し、近距離の移動手段として普及を目指す計画を発表した。昨夏の経営方針説明会で10年代の早い段階に電池性能を高めた近距離走行用の電気自動車を量産する方針を明らかにしていた。米デトロイトで11日開幕した北米国際自動車ショーで発表した。
トヨタは2010年代の早い時期にハイブリッド車の新車種を10車種程度投入する方針も明らかにした。同社は1997年にガソリンエンジンと電気モーターを併用する「プリウス」を発売して以来、ハイブリッド車の累計販売台数が170万台を突破している。ハイブリッド車の新車種を追加することで、年間100万台のハイブリッド車を販売する目標の早期実現を目指す。
北米自動車ショー、日欧勢少なく異例の幕開け
世界最大級の自動車イベント、北米国際自動車ショーが11日デトロイトで開幕した。金融危機で新車販売の不振が続く中、各社は電気自動車や新型ハイブリッド車など次世代の環境対応車を目玉に据える。ただ、おひざ元のビッグスリー(米自動車大手3社)が米政府支援を受け再建中のうえ、日欧メーカーの参加中止も相次ぐ異例の展開。例年のような盛り上がりは期待薄だ。
北米自動車ショーは11―13日まで報道陣向けに公開。17―25日まで一般公開される。今回のショーでは、日産自動車や三菱自動車、スズキなどの日本勢がコスト抑制を理由に相次ぎ出展を中止。欧州勢も独ポルシェ、伊フェラーリが不参加となった。全体の出品車両数も50弱と例年に見劣りする。
エクソンCEO、炭素税を容認 米石油業界が「条件闘争」
米石油最大手エクソンモービルのレックス・ティラーソン最高経営責任者(CEO)は、このほどワシントンで講演し、温暖化ガス削減には炭素税の導入が有効との見方を示した。地球温暖化対策に前向きな姿勢を打ち出しているオバマ次期政権の発足を控え、「温暖化の元凶」とされてきたメジャー(国際石油資本)が排出削減の手法で“条件闘争”の色合いを強めている。
炭素税はモノやサービスに対し温暖化ガスの排出量に応じて課す税金。ティラーソン氏は炭素税が政府主導で排出量取引制度を創設するより効率の良いやり方で、「企業の投資判断や消費者が購入する商品を選ぶ基準を変え、排出量の削減に役立つ」と強調した。
オバマ次期政権は企業に温暖化ガスの排出量の上限を割り当て、過不足分を市場で取引するキャップ・アンド・トレード方式の採用を検討しているとされる。ティラーソン氏は当局による排出量の割り当てについて政府部門が肥大化する恐れがあり、金融機関に新たな利益機会をもたらすだけと批判した。
ドバイ、初の赤字予算 景気刺激策拡大で09年度
【ドバイ=太田順尚】アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国財務庁は10日、2009年度(09年1―12月)予算を発表した。公共事業など景気刺激策の拡大で歳出が08年度比42%増の377億ディルハム(約9320億円)。一方、歳入は同26%増の335億ディルハム(8280億円)にとどまり、初の赤字予算となった。
たばこ税収低迷、08年4―11月6.7%減
たばこ税収の低迷が続いている。財務省によると、2008年4―11月の累計税収(国の一般会計分)は5064億円と、前年同期に比べて6.7%減った。健康志向の高まりで販売量が減っているためだ。政府は昨年末の税制論議で、たばこ税引き上げを検討したが、反対論も根強く、09年度改正での増税を断念した。財務省は「たばこ税収は今後も低迷が続く」とみている。
日本たばこ協会によると、紙巻きたばこの販売数量は07年度で2585億本。販売量は減り続けており、ピークだった1996年度から約26%減少した。
日本の情報通信産業が壁に突き当たっている。ハードの技術力はあるのに、世界市場で存在感が薄くなった。携帯電話が典型だ。技術は進化しているが、日本でしか利用されないものが多く、世界のニーズをつかめない。特殊な生態系を保つ南米沖の諸島になぞらえ、「ガラパゴス現象」と呼ばれている。持てる技術を世界に広める努力が、国際競争力の再強化には不可欠だ。
孤島のような日本市場
昨年末、フィンランドの携帯電話機メーカー、ノキアの対日戦略の転換が話題を呼んだ。日本市場でのシェアを10%に高める方針を撤回、発表済み製品の発売も取りやめた。今後は高額機種の販売に力点を置くというが、きわめて特殊な日本の市場にさじを投げた格好だ。
世界の携帯電話機市場でノキアは4割近いシェアを握る。ところが日本でのシェアは微々たるものだ。日本の市場は国内メーカーがほぼ独占している。逆に世界市場では、ノキアのほか韓国のサムスン電子、米モトローラなどが大きなシェアを持ち、日本メーカーのシェアは全社合わせても10%にも満たない。
同じような現象はほかにもある。カーナビゲーション機器で日本企業は世界で約7割のシェアを持つが、ほとんどは日米の自動車メーカーへの商品供給だ。消費者が自ら選択する後付けの普及品市場では、日本勢のシェアは5%にも届かない。パソコンでも、日本メーカーの世界市場でのシェアは縮小している。
ガラパゴス現象の発端は、1980年代後半から進んだ円高にあった。輸出の採算悪化に伴って国内販売に力を入れ始めた各社は、製品の高機能化をどんどん進めた。さらに自前技術への固執も重なって、高い開発コストが定着してしまった。
携帯電話ではNTTドコモやKDDIなど大手通信会社が端末の仕様を決め、定期的に買い上げたため、依存体質ができてしまった。日本独自の技術や規格、独特の販売制度にメーカーが頼る図式だ。
国内市場の成長が続いている間はそれでもよかったが、バブル経済が崩壊し、90年代後半からインターネットが普及すると、情報通信産業をめぐるビジネス環境は激変した。日本企業はVTRやファクス、複写機などアナログ商品では強かったのに、インターネット時代に入りデジタル商品が主流になると、急速に競争力を失った。
いま携帯音楽プレーヤーでは、米アップルの「iPod」が強い競争力を誇る。この分野はもともとソニーなど精密加工技術が得意な日本企業の独壇場だった。ところがアップルはインターネットを活用した視聴スタイルを提案。プレーヤーという単品商売でなく、サービスに高めることに成功した。
日本企業の垂直統合型のモノづくりは、改良や擦り合わせなどの“職人芸”に頼りがちだ。アナログ商品の開発ならそれでもよかった。ところが、デジタル商品ではソフトの開発力がものをいい、部分最適より全体のシステムが重要になる。
情報通信技術はさらに次の段階へ向かいつつある。ソフトをパッケージではなくサービスとして提供する「SaaS(サース)」や、情報システムを電気やガスのようにインターネットで提供する「クラウドコンピューティング」の台頭だ。携帯情報端末や小型パソコンが売れ始めたのも、この流れに沿った動きだ。
欧州との連携も視野に
残念ながら、次の段階への移行でも主役は米企業だ。アマゾン・ドット・コムやグーグルがクラウド技術で先行し、携帯端末でもアップルの「iフォーン」に続き、グーグルが無償基本ソフトの「アンドロイド」を提供する。米企業は低コストの開発環境づくりで覇権獲得を狙う。
そうした中で日本企業が活路を見いだすためには、ガラパゴスから脱し、グローバルに通用する新技術を自ら積極的に打ち出す必要がある。米国の技術を追いかけるだけでなく欧州やアジアとの連携も重要だ。
昨年末、ノキアがグーグルに対抗し、携帯向け基盤ソフト「NoTA(ノタ)」の無償提供を発表した。これには「iモード」にも採用された日本生まれの基本ソフト「トロン」が使われている。介護用ネットロボットの開発でも日本とスウェーデンとの間で技術協力が始まった。
通信分野では光技術を日本は得意とする。NTTはそれをもとにインターネットの安全性を高めた「次世代ネットワーク(NGN)」の整備を始めた。だがNGNの導入が国内だけにとどまると、通信基盤のガラパゴス化を再び招きかねない。通信分野に限らず、日本の技術の採用を外国にも働きかけることが急務だ。
内閣不支持7割超、給付金に反対78%…読売世論調査
読売新聞社が9~11日に実施した全国世論調査(電話方式)によると、麻生内閣の支持率は昨年12月の前回調査から0・5ポイント減の20・4%、不支持率は5・6ポイント増の72・3%となった。
麻生首相と民主党の小沢代表のどちらが首相にふさわしいかとの質問でも、小沢氏が39%と前回の36%から増やしたのに対し、麻生首相は27%で29%から減らした。
首相に向けられる有権者の視線は厳しさを増しており、麻生内閣はさらに困難な政権運営を強いられることになりそうだ。
今回、麻生内閣の支持率は2割台になんとか踏みとどまったものの、内閣の不支持率が7割を超す高水準に突入したのは、森内閣以来だ。
「麻生離れ」の大きな要因は、経済危機への対応を始めとする内閣の政策に有権者が不満を募らせているためと見られる。内閣を支持する理由では「政策に期待できる」が20%(前回24%)に減り、支持しない理由で「政策に期待できない」が36%(同32%)に増えたことにそれが読み取れる。
麻生内閣が08年度第2次補正予算案の目玉としている総額2兆円の定額給付金についても、「支給を取りやめて、雇用や社会保障など、ほかの目的に使うべきだ」との意見に賛成と答えた人は78%に達し、支給撤回に反対する意見は17%に過ぎなかった。
次の衆院比例選でどの政党に投票するかでは、民主39%(前回40%)、自民24%(同24%)などとなり、民主党が自民党を圧倒している。ただ、政党支持率は自民29・3%(同27・2%)、民主26・2%(同28・2%)だった。
デジタル家電、寡占が加速 2強シェア5割超、08年9品目
薄型テレビやデジタルカメラなどデジタル家電で上位メーカーによる寡占が加速している。2008年の主要11品目で上位2社の国内販売シェア合計が前年より伸びたのは7品目。9品目ではシェアが5割を超えた。世界景気が急減速、需要不振で経営環境が悪化、体力に劣る下位メーカーがシェアを落としている。こうした傾向は年明け以降、一段と強まっており、縮む市場での寡占進展で生き残り競争はさらに激化する見通し。電機業界の再編機運が高まりそうだ。
全国の家電量販店の9割程度にあたる約4500店の販売実績をまとめたGfKジャパン(東京・中野)のデータを基に集計した。デジタル家電は技術革新によりシェアが大きく変動するため、収益環境の変化に連動しやすい。
「2020年の夢は経常益1兆円」 ファストリの柳井社長
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正社長はこのほど「2020年の夢」の題で社員にメッセージを送り「グループで経常利益1兆円、売上高5兆円を達成」との抱負を語った。経営計画に基づく正式な目標値ではないが、創業60年を機に社員に一層の奮起と結束を促した格好だ。
柳井氏は現在のファストリを「大企業病にかかっている」と評し、「20年に世界で一番革新的で効率の高い企業になる」との理想を表明。それに向け今年の標語を「グローバルワン・全員経営」とし、管理職教育を強化する考えも示した。
トヨタ、米で2012年までに次世代電気自動車発売
トヨタ自動車は11日、2012年までに次世代電気自動車を北米市場で発売し、近距離の移動手段として普及を目指す計画を発表した。昨夏の経営方針説明会で10年代の早い段階に電池性能を高めた近距離走行用の電気自動車を量産する方針を明らかにしていた。米デトロイトで11日開幕した北米国際自動車ショーで発表した。
トヨタは2010年代の早い時期にハイブリッド車の新車種を10車種程度投入する方針も明らかにした。同社は1997年にガソリンエンジンと電気モーターを併用する「プリウス」を発売して以来、ハイブリッド車の累計販売台数が170万台を突破している。ハイブリッド車の新車種を追加することで、年間100万台のハイブリッド車を販売する目標の早期実現を目指す。
北米自動車ショー、日欧勢少なく異例の幕開け
世界最大級の自動車イベント、北米国際自動車ショーが11日デトロイトで開幕した。金融危機で新車販売の不振が続く中、各社は電気自動車や新型ハイブリッド車など次世代の環境対応車を目玉に据える。ただ、おひざ元のビッグスリー(米自動車大手3社)が米政府支援を受け再建中のうえ、日欧メーカーの参加中止も相次ぐ異例の展開。例年のような盛り上がりは期待薄だ。
北米自動車ショーは11―13日まで報道陣向けに公開。17―25日まで一般公開される。今回のショーでは、日産自動車や三菱自動車、スズキなどの日本勢がコスト抑制を理由に相次ぎ出展を中止。欧州勢も独ポルシェ、伊フェラーリが不参加となった。全体の出品車両数も50弱と例年に見劣りする。
エクソンCEO、炭素税を容認 米石油業界が「条件闘争」
米石油最大手エクソンモービルのレックス・ティラーソン最高経営責任者(CEO)は、このほどワシントンで講演し、温暖化ガス削減には炭素税の導入が有効との見方を示した。地球温暖化対策に前向きな姿勢を打ち出しているオバマ次期政権の発足を控え、「温暖化の元凶」とされてきたメジャー(国際石油資本)が排出削減の手法で“条件闘争”の色合いを強めている。
炭素税はモノやサービスに対し温暖化ガスの排出量に応じて課す税金。ティラーソン氏は炭素税が政府主導で排出量取引制度を創設するより効率の良いやり方で、「企業の投資判断や消費者が購入する商品を選ぶ基準を変え、排出量の削減に役立つ」と強調した。
オバマ次期政権は企業に温暖化ガスの排出量の上限を割り当て、過不足分を市場で取引するキャップ・アンド・トレード方式の採用を検討しているとされる。ティラーソン氏は当局による排出量の割り当てについて政府部門が肥大化する恐れがあり、金融機関に新たな利益機会をもたらすだけと批判した。
ドバイ、初の赤字予算 景気刺激策拡大で09年度
【ドバイ=太田順尚】アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国財務庁は10日、2009年度(09年1―12月)予算を発表した。公共事業など景気刺激策の拡大で歳出が08年度比42%増の377億ディルハム(約9320億円)。一方、歳入は同26%増の335億ディルハム(8280億円)にとどまり、初の赤字予算となった。
たばこ税収低迷、08年4―11月6.7%減
たばこ税収の低迷が続いている。財務省によると、2008年4―11月の累計税収(国の一般会計分)は5064億円と、前年同期に比べて6.7%減った。健康志向の高まりで販売量が減っているためだ。政府は昨年末の税制論議で、たばこ税引き上げを検討したが、反対論も根強く、09年度改正での増税を断念した。財務省は「たばこ税収は今後も低迷が続く」とみている。
日本たばこ協会によると、紙巻きたばこの販売数量は07年度で2585億本。販売量は減り続けており、ピークだった1996年度から約26%減少した。
ジョブズ講演なきアップルが着々と進めるユーザー囲い込み戦略(COLUMN1)
毎年年始に開催される展示会「Macworld Conference Expo」。その2日目朝に開かれる基調講演は、世界のアップルファンが注目したものだった。しかし今年、恒例のスティーブ・ジョブズCEOの姿はなかった。基調講演は無難に終わり、ユーザーの囲い込み戦略を着実に進めるアップルの姿が印象に残った。
■ジョブズCEOはもういない
Macworld Conference Expoは通常ならばジョブズCEOが登壇し、新製品や新サービスを絶妙なプレゼンテーションで紹介して会場を沸かせる。一昨年は「iPhone」、昨年は「Macbook Air」だった。Macbook Airはその薄さを強調するために封筒から取り出して見せた。
昨年の展示会「Worldwide Developers Conference(WWDC)」での「iPhone 3G」発表では、70カ国にもなる販売国を「イッツ・ア・スモールワールド」の曲をBGMにして紹介した。それだけで会場は沸き上がっていた。
そんなジョブズCEOは、もう基調講演に現れない。今年はバイスプレジデントのフィリップ・シラー氏が担当することになった。
昨年のWWDCでジョブズ氏がかなりやせ細っていたことから「重病説」がささやかれていた。地元紙では一面でジョブズCEOの3枚の写真を並べ、やせ細った状態を比較していたほどだ。根強い重病説を払拭しようとジョブズCEOは異例とも言える「書簡」を発表。「ホルモンバランスの崩れによるもので快方に向かっている」とした。
■シラー氏によるアップル最後の基調講演
もうひとつ、今年の話題は今回でアップルの参加が最後であるという点だった。Macworld Conference Expoは、実はアップルではなくIDCが主催しているイベントだ(6月のWWDCはアップル主催)。
来年はアップルは参加しないがイベント自体は開催されるようだ(2010年は1月4日に開幕)。
というわけで「アップル最後の基調講演をシラー氏がどのようにプレゼンするか」に注目が集まっていたわけだ。
実際、100分弱のプレゼンテーションを見終わった後の率直な感想といえば、「無難にそつなくこなした」だった。まぁ、スティーブ・ジョブズの代わりを求めるのが酷なことかもしれないが……。
■「iPhone nano」情報もむなしく
個人的に残念だったのが、iPhone関連の発表がほとんどなかったという点だ。
事前には中国方面から「iPhone nano」用シリコンケースのデザイン画像が流出。かつてiPhone 3Gも事前に情報をリークして的中させていた会社だけに、「もしかして…」という気にさせてくれた。
ほかにも「値下げするのではないか」「本体カラーが追加になるのでは」「新たな販売キャリアが明らかになるのでは」といった様々な推測が飛び交っていた。
また、デスクトップPC関連でも、「MacMini」の新製品が発表されるのではないかという情報があった。しかし、発表されたのは17インチの「MacBook Pro」1機種のみ。すでにMacbookは昨年末にモデルチェンジをしているだけに、あまり目新しさは感じない。「あぁ、発表できていなかった17インチがようやくお披露目されたのね」という印象だ。
iTunes関連の発表も、残念ながら日本ではあまり関係がない。1曲が99セントから値下げされたが日本では期待できそうにないからだ。日本の場合、パソコン向け配信よりも着うたフルのほうが人気で、しかも高めの値付けでもユーザーが購入してくれている。あえて、日本でパソコン向けを値下げして、着うたフルとの価格差を広げるのは、現実的ではないからだ。
■「Keynote」の秀逸さにMSも焦り
さて、今回の基調講演を見て感じたのはアップルが様々なツールでユーザーの囲い込みを強化していることだ。
カリスマ不在で、見た目の派手さはなくなり、新製品も少なかったので、世間に与えるインパクトは小さい。しかし、進化したアプリケーションとサービスの出来、コンセプトはかなり高く評価できる。
オフィスソフトの「iWork」は特にプレゼンテーションソフト「Keynote」が秀逸だ。日本では一般のビジネスユーザーには馴染みが薄いが、メーカーの新製品発表会などでは頻繁に使われている。日本でパソコンを製造するメーカーが、携帯電話の新製品説明会のプレゼンのとき、Keynoteを使うためにMacを持ち込んでいるぐらいだ。
実際、パワーポイントで圧倒的なシェアを誇るマイクロソフトでもKeynoteのすごさに焦りを感じているのだという。「Keynoteのエフェクトは、実はあのアプリケーション単体では実現できず、OSに仕掛けを施しておかないといけない。アップルはKeynoteのためにOSを開発しているに違いない」(マイクロソフト関係者)。
アプリケーションとOSが強固に連携しているのがアップルの強み。同じ土俵で戦っているはずのマイクロソフトですら驚きを隠せないくらいなのだ。
■パソコンから携帯まですべて連携
パソコンを売り、アプリケーションを作り、作ったデータは同社が提供するネットストレージにアップ。さらにiPhoneというケータイで持ち歩く。すべてがひとつに連携していく。アップルは音楽や写真画像、ビデオなどをすべてMacで管理するという世界を着実に構築しつつあるようだ。
あとは、この世界観がいかにアップルファン以外の一般ユーザーに理解され広まるか、興味深いところだ。
■余談・・・iPhoneをようやく機種変更
ところで、期待してサンフランシスコに行ったものの、iPhone nanoの発表がなかったため、意気消沈。基調講演直後、気持ちを盛り上げるために会場近くのAT&Tショップへ出向いた。2007年6月にハワイで購入し、昨年8月にさらにハワイで機種変更に失敗したiPhoneを再度、3G版に買い換えようと思ったからだ。iPhone nanoが発表されれば、それにするつもりだったが、発表されないものを待っても仕方ない。
担当は暇そうにしていたクリストファーさん。「3Gに買い換えたいんだけど」と伝えると、店の奥から在庫を取り出してきて、テキパキと手続きをしてくれた。昨年夏にハワイで機種変更しようとしたときは、在庫がなくて「7~21日待ってくれ」と言われて断念したが、発売から半年が経過して在庫も潤沢にあるようだ。
SNS(社会保障番号)や住所などは一切聞かれず、電話番号を教えクレジットカードで代金を支払うだけで、手元のiPhoneが3G版になった(支払ったのは本体299ドルと、機種変更手続き代として18ドル)。
海外でパケット代を気にせずにメールチェックができるというのはとても快適だと実感した。
いよいよ聖域にメス?囁かれるトヨタ系ディーラー大再編説の真相(COLUMN2)
いよいよトヨタ自動車は“聖域”に手を付けるのではないか――。
そんな声が今年になって業界内で囁かれるようになった。
聖域とは、他でもない、国内の販売網のことである。つまり、年々縮小傾向にある国内市場の低迷に伴うディーラー網の再編、販売チャネルの統合だ。
周知のとおり、トヨタ系ディーラーは、地元の名士や有力者などが経営する地場系ディーラーが9割を占める。その強力な販売力は「販売のトヨタ」と言わしめるほどで、トヨタ成長の原動力となった。
縮み行く国内市場規模に合わせて、ライバル各社が次々と販売チャネルを統合しているなか、トヨタも「現在の販売チャネルを維持するのは、もはや限界にきている」(業界関係者)という声がにわかに高まっているのだ。
じつのところ、こうした指摘は以前からあった。ここにきて、再び表面化してきた理由は何か。
一つは、経営環境の激変に伴うトヨタの業績悪化。トヨタは昨年12月22日、2008年度の予想連結営業利益が前年度の過去最高だった2兆2703億円から一転、1500億円の営業赤字になると発表した。
加えて、一層の国内市場の悪化もある。昨年12月下旬に、日本自動車工業界(軽自動車を含む)は、2009年の国内新車販売台数が31年ぶりに500万台を割り込むという予測数字を発表。その予想を裏付けるかのように、1月5日、自動車業界団体がまとめた2008年の国内新車販売台数(軽自動車を含む)も、前年比5.1%減の508万2235台と、4年連続の前年割れとなった。
折しも、年末年始にかけて報道された、創業家の豊田章男副社長が社長に昇格が内定したという“新聞辞令”も噂の火元になった。「豊田家という“錦の御旗”があるのなら、ディーラー経営者らも納得してくれるのではないか」という声が業界内から聞こえてくる。
果たして、ディーラーの再編は行なわれるのだろうか。
「ありえない」。渡辺捷昭社長以下、トヨタの首脳、幹部らは軒並み否定する。
国内販売を担当している豊田章男副社長も「例えば、地域で複数店舗のショールームを共有するような効率化ならありうるが、4系列を2系列にするような大胆な統合はしない」と否定する。別のトヨタ関係者も「現在の国内市場のシェア(約5割)を確保するには、やはり4系列は必要。そもそも1系列でシェア3割を超えている自動車メーカーは世界中一つもない」と語る。
ある証券アナリストも「チャネル数を減らしても店舗数を減らさないと意味がない。日産やホンダよりも地場系の多いトヨタでは、チャネル数を減らしても店舗数はそれほど減らない。しかも、現在の日産やホンダの状況をみてもそれほど販売が効率化されたとも思わない。あえて地場系ディーラーの反感を招くようなことはしないのでは」と推測する。
それにしても、トヨタ幹部らがこれほど頑なに“ディーラー再編説”を否定する理由は何か。
そもそもトヨタの場合、歴史をひも解けば、単なるメーカーと販売店以上の関係があるからだ。
あるトヨタ幹部は「外国車全盛の時代に、海のものとも山のものともわからないトヨタ車に鞍替えしてくれた地場系ディーラーに対し、トヨタは多大な恩義を感じている。いわば、運命共同体であり、共存共栄こそがトヨタと販売店のあるべき関係だ」と力説する。事実、「一に顧客、二にディーラー、三にメーカー」という元トヨタ自動車販売社長の神谷正太郎の言葉は、現在のトヨタ社内でも金科玉条のごとく、周知徹底されているという。
もっとも、これまでトヨタがディーラー網の再編に手をつけてこなかったわけでもない。2005年の「レクサス」ブランドの国内導入に伴い、2004年に「ビスタ店」と「ネッツ店」を統合、新しいネッツ店への再編に着手している。ただ、「これだけでも多大な根回しと艱難辛苦のうえに成し遂げた再編だった」(関係者)という。それから10年も経っていない状況で、諸々のしがらみを考えると、このタイミングで“聖域”にメスをいれるのは、相当に困難なのは確かだろう。
実際、「ディーラーの再編をやる前にやるべきことはいくらでもある」と多くのトヨタ関係者は口を揃える。トヨタは2006年末以降、国内テコ入れのための市場活性化チームを立ち上げ、2007年には11車種もの新車を投入するなど、対策を打ち続けた。それなりの効果はあった。2006年10月以降には軽自動車を除く単月シェアが5割を超え、シェア向上には貢献した。だが、肝心の国内販売台数は、消費者のクルマ離れで、2008年は150万台を割り込む148万台となり、トヨタも4年連続の前年割れである。
これまで国内市場の低迷は、需要が旺盛な海外での販売で支えていたが、主力の米国市場は昨年10月以降急落している。新しい策が必要となるのはいうまでもなく、当面は“いばらの道”が続くことは間違いない。
毎年年始に開催される展示会「Macworld Conference Expo」。その2日目朝に開かれる基調講演は、世界のアップルファンが注目したものだった。しかし今年、恒例のスティーブ・ジョブズCEOの姿はなかった。基調講演は無難に終わり、ユーザーの囲い込み戦略を着実に進めるアップルの姿が印象に残った。
■ジョブズCEOはもういない
Macworld Conference Expoは通常ならばジョブズCEOが登壇し、新製品や新サービスを絶妙なプレゼンテーションで紹介して会場を沸かせる。一昨年は「iPhone」、昨年は「Macbook Air」だった。Macbook Airはその薄さを強調するために封筒から取り出して見せた。
昨年の展示会「Worldwide Developers Conference(WWDC)」での「iPhone 3G」発表では、70カ国にもなる販売国を「イッツ・ア・スモールワールド」の曲をBGMにして紹介した。それだけで会場は沸き上がっていた。
そんなジョブズCEOは、もう基調講演に現れない。今年はバイスプレジデントのフィリップ・シラー氏が担当することになった。
昨年のWWDCでジョブズ氏がかなりやせ細っていたことから「重病説」がささやかれていた。地元紙では一面でジョブズCEOの3枚の写真を並べ、やせ細った状態を比較していたほどだ。根強い重病説を払拭しようとジョブズCEOは異例とも言える「書簡」を発表。「ホルモンバランスの崩れによるもので快方に向かっている」とした。
■シラー氏によるアップル最後の基調講演
もうひとつ、今年の話題は今回でアップルの参加が最後であるという点だった。Macworld Conference Expoは、実はアップルではなくIDCが主催しているイベントだ(6月のWWDCはアップル主催)。
来年はアップルは参加しないがイベント自体は開催されるようだ(2010年は1月4日に開幕)。
というわけで「アップル最後の基調講演をシラー氏がどのようにプレゼンするか」に注目が集まっていたわけだ。
実際、100分弱のプレゼンテーションを見終わった後の率直な感想といえば、「無難にそつなくこなした」だった。まぁ、スティーブ・ジョブズの代わりを求めるのが酷なことかもしれないが……。
■「iPhone nano」情報もむなしく
個人的に残念だったのが、iPhone関連の発表がほとんどなかったという点だ。
事前には中国方面から「iPhone nano」用シリコンケースのデザイン画像が流出。かつてiPhone 3Gも事前に情報をリークして的中させていた会社だけに、「もしかして…」という気にさせてくれた。
ほかにも「値下げするのではないか」「本体カラーが追加になるのでは」「新たな販売キャリアが明らかになるのでは」といった様々な推測が飛び交っていた。
また、デスクトップPC関連でも、「MacMini」の新製品が発表されるのではないかという情報があった。しかし、発表されたのは17インチの「MacBook Pro」1機種のみ。すでにMacbookは昨年末にモデルチェンジをしているだけに、あまり目新しさは感じない。「あぁ、発表できていなかった17インチがようやくお披露目されたのね」という印象だ。
iTunes関連の発表も、残念ながら日本ではあまり関係がない。1曲が99セントから値下げされたが日本では期待できそうにないからだ。日本の場合、パソコン向け配信よりも着うたフルのほうが人気で、しかも高めの値付けでもユーザーが購入してくれている。あえて、日本でパソコン向けを値下げして、着うたフルとの価格差を広げるのは、現実的ではないからだ。
■「Keynote」の秀逸さにMSも焦り
さて、今回の基調講演を見て感じたのはアップルが様々なツールでユーザーの囲い込みを強化していることだ。
カリスマ不在で、見た目の派手さはなくなり、新製品も少なかったので、世間に与えるインパクトは小さい。しかし、進化したアプリケーションとサービスの出来、コンセプトはかなり高く評価できる。
オフィスソフトの「iWork」は特にプレゼンテーションソフト「Keynote」が秀逸だ。日本では一般のビジネスユーザーには馴染みが薄いが、メーカーの新製品発表会などでは頻繁に使われている。日本でパソコンを製造するメーカーが、携帯電話の新製品説明会のプレゼンのとき、Keynoteを使うためにMacを持ち込んでいるぐらいだ。
実際、パワーポイントで圧倒的なシェアを誇るマイクロソフトでもKeynoteのすごさに焦りを感じているのだという。「Keynoteのエフェクトは、実はあのアプリケーション単体では実現できず、OSに仕掛けを施しておかないといけない。アップルはKeynoteのためにOSを開発しているに違いない」(マイクロソフト関係者)。
アプリケーションとOSが強固に連携しているのがアップルの強み。同じ土俵で戦っているはずのマイクロソフトですら驚きを隠せないくらいなのだ。
■パソコンから携帯まですべて連携
パソコンを売り、アプリケーションを作り、作ったデータは同社が提供するネットストレージにアップ。さらにiPhoneというケータイで持ち歩く。すべてがひとつに連携していく。アップルは音楽や写真画像、ビデオなどをすべてMacで管理するという世界を着実に構築しつつあるようだ。
あとは、この世界観がいかにアップルファン以外の一般ユーザーに理解され広まるか、興味深いところだ。
■余談・・・iPhoneをようやく機種変更
ところで、期待してサンフランシスコに行ったものの、iPhone nanoの発表がなかったため、意気消沈。基調講演直後、気持ちを盛り上げるために会場近くのAT&Tショップへ出向いた。2007年6月にハワイで購入し、昨年8月にさらにハワイで機種変更に失敗したiPhoneを再度、3G版に買い換えようと思ったからだ。iPhone nanoが発表されれば、それにするつもりだったが、発表されないものを待っても仕方ない。
担当は暇そうにしていたクリストファーさん。「3Gに買い換えたいんだけど」と伝えると、店の奥から在庫を取り出してきて、テキパキと手続きをしてくれた。昨年夏にハワイで機種変更しようとしたときは、在庫がなくて「7~21日待ってくれ」と言われて断念したが、発売から半年が経過して在庫も潤沢にあるようだ。
SNS(社会保障番号)や住所などは一切聞かれず、電話番号を教えクレジットカードで代金を支払うだけで、手元のiPhoneが3G版になった(支払ったのは本体299ドルと、機種変更手続き代として18ドル)。
海外でパケット代を気にせずにメールチェックができるというのはとても快適だと実感した。
いよいよ聖域にメス?囁かれるトヨタ系ディーラー大再編説の真相(COLUMN2)
いよいよトヨタ自動車は“聖域”に手を付けるのではないか――。
そんな声が今年になって業界内で囁かれるようになった。
聖域とは、他でもない、国内の販売網のことである。つまり、年々縮小傾向にある国内市場の低迷に伴うディーラー網の再編、販売チャネルの統合だ。
周知のとおり、トヨタ系ディーラーは、地元の名士や有力者などが経営する地場系ディーラーが9割を占める。その強力な販売力は「販売のトヨタ」と言わしめるほどで、トヨタ成長の原動力となった。
縮み行く国内市場規模に合わせて、ライバル各社が次々と販売チャネルを統合しているなか、トヨタも「現在の販売チャネルを維持するのは、もはや限界にきている」(業界関係者)という声がにわかに高まっているのだ。
じつのところ、こうした指摘は以前からあった。ここにきて、再び表面化してきた理由は何か。
一つは、経営環境の激変に伴うトヨタの業績悪化。トヨタは昨年12月22日、2008年度の予想連結営業利益が前年度の過去最高だった2兆2703億円から一転、1500億円の営業赤字になると発表した。
加えて、一層の国内市場の悪化もある。昨年12月下旬に、日本自動車工業界(軽自動車を含む)は、2009年の国内新車販売台数が31年ぶりに500万台を割り込むという予測数字を発表。その予想を裏付けるかのように、1月5日、自動車業界団体がまとめた2008年の国内新車販売台数(軽自動車を含む)も、前年比5.1%減の508万2235台と、4年連続の前年割れとなった。
折しも、年末年始にかけて報道された、創業家の豊田章男副社長が社長に昇格が内定したという“新聞辞令”も噂の火元になった。「豊田家という“錦の御旗”があるのなら、ディーラー経営者らも納得してくれるのではないか」という声が業界内から聞こえてくる。
果たして、ディーラーの再編は行なわれるのだろうか。
「ありえない」。渡辺捷昭社長以下、トヨタの首脳、幹部らは軒並み否定する。
国内販売を担当している豊田章男副社長も「例えば、地域で複数店舗のショールームを共有するような効率化ならありうるが、4系列を2系列にするような大胆な統合はしない」と否定する。別のトヨタ関係者も「現在の国内市場のシェア(約5割)を確保するには、やはり4系列は必要。そもそも1系列でシェア3割を超えている自動車メーカーは世界中一つもない」と語る。
ある証券アナリストも「チャネル数を減らしても店舗数を減らさないと意味がない。日産やホンダよりも地場系の多いトヨタでは、チャネル数を減らしても店舗数はそれほど減らない。しかも、現在の日産やホンダの状況をみてもそれほど販売が効率化されたとも思わない。あえて地場系ディーラーの反感を招くようなことはしないのでは」と推測する。
それにしても、トヨタ幹部らがこれほど頑なに“ディーラー再編説”を否定する理由は何か。
そもそもトヨタの場合、歴史をひも解けば、単なるメーカーと販売店以上の関係があるからだ。
あるトヨタ幹部は「外国車全盛の時代に、海のものとも山のものともわからないトヨタ車に鞍替えしてくれた地場系ディーラーに対し、トヨタは多大な恩義を感じている。いわば、運命共同体であり、共存共栄こそがトヨタと販売店のあるべき関係だ」と力説する。事実、「一に顧客、二にディーラー、三にメーカー」という元トヨタ自動車販売社長の神谷正太郎の言葉は、現在のトヨタ社内でも金科玉条のごとく、周知徹底されているという。
もっとも、これまでトヨタがディーラー網の再編に手をつけてこなかったわけでもない。2005年の「レクサス」ブランドの国内導入に伴い、2004年に「ビスタ店」と「ネッツ店」を統合、新しいネッツ店への再編に着手している。ただ、「これだけでも多大な根回しと艱難辛苦のうえに成し遂げた再編だった」(関係者)という。それから10年も経っていない状況で、諸々のしがらみを考えると、このタイミングで“聖域”にメスをいれるのは、相当に困難なのは確かだろう。
実際、「ディーラーの再編をやる前にやるべきことはいくらでもある」と多くのトヨタ関係者は口を揃える。トヨタは2006年末以降、国内テコ入れのための市場活性化チームを立ち上げ、2007年には11車種もの新車を投入するなど、対策を打ち続けた。それなりの効果はあった。2006年10月以降には軽自動車を除く単月シェアが5割を超え、シェア向上には貢献した。だが、肝心の国内販売台数は、消費者のクルマ離れで、2008年は150万台を割り込む148万台となり、トヨタも4年連続の前年割れである。
これまで国内市場の低迷は、需要が旺盛な海外での販売で支えていたが、主力の米国市場は昨年10月以降急落している。新しい策が必要となるのはいうまでもなく、当面は“いばらの道”が続くことは間違いない。
Android、モバイルWiMAX……携帯電話市場で2009年に起きる変化とその成否を探る(COLUMN)
激動の2008年を経て、いよいよ2009年がスタートした。今年も携帯電話市場には大きなイベントが目白押しであり、大きな変化が起きることが予想される。そこで今回は、今年携帯電話・モバイル業界に起きると予測される出来事をいくつかをピックアップし、その成否について検討していこう。
ブランディング戦略がauの成否を左右する?
昨年末のCOLUMN(「携帯・PHSキャリアの「通信簿」で振り返る2008年」)でも触れたが、昨年の「1台目キャリア」争いは、NTTドコモが息を吹き返す一方、auが大きく落ち込む結果となった。NTTドコモは昨年発表した秋冬モデルで端末・サービス開発力の強さを見せつけ、引き離しにかかろうとしているが、その足を引っ張っているのがブランディング戦略の変更だ。
これまでは高機能の9xxiシリーズ、普及機の7xxiシリーズというように、ユーザーに分かりやすい型番を採用していた。だが秋冬モデルからはこれを4つのシリーズ分類に変更し、“N-01A”といったように、シリーズを型番に含まない機械的な分類となってしまった。これによってユーザーが機能で端末を選びにくくなり、混乱を生む結果となっている。
実はauも今年、ブランディング戦略を変更するのでは?と思わせる動きを見せている。発売前の携帯電話端末が必ず認定を受けるJATE(電気通信端末機器審査協会)で認定を受けた機器の一覧を見ると、春モデルと思われるau携帯電話の型番が、従来とは異なる名称となっているのだ。ここに掲載されている型番がそのまま採用されるとは限らないが、何らかの変更があることを匂わせているのは確かである。
もっともauの場合、WIN端末に限れば元々型番に機能は含まれておらず、変更したとしてもNTTドコモほど大きな影響を与える可能性は低い。だが、NTTドコモのように型番だけでなくシリーズ分類を設けるなど、ブランディング戦略を大きく変更してくる可能性もないとはいえないだろう。店頭での機種選びでは、選びやすさ、分かりやすさも重要なだけに、ブランディングの変更が今年のauを左右する大きな要素の1つとなってくる可能性もある。
AndroidはiPhone並みのフィーバーをもたらすか?
昨年米国で発売され、今年日本に上陸するであろうと予測されているのが、Googleが主体となって開発したモバイル・プラットフォーム「Android(アンドロイド)」を搭載したスマートフォンだ。AndroidはLinuxをベースとしたオープンソースのプラットフォームであり、さらに誰でもライセンスフリーで利用できるなど、極めてオープン性が高いのが特徴である。
Androidの開発を推進するオープン・ハンドセット・アライアンス(OHA)には、当初からNTTドコモやKDDIといった国内キャリア、そして米国で端末投入の実績があり、日本でもスマートフォンを提供しているHTCなどが参加している。また、昨年12月にはソフトバンクモバイル、さらに東芝やソニー・エリクソンといった日本での端末販売実績が高い企業も加入している。こうしたことから、国内でAndroid端末が投入される素地は十分整っている。従って、注目は「いつ日本に発売されるか」という1点に絞られている。
当然のことながら、現時点でAndroid端末がいつ、どのメーカーから発売されるかは不明だ(可能性が高いとはいえ、今年出るという保証もない)。しかし、仮に発売されたとしても「Googleケータイ」としてiPhone並みのフィーバーを巻き起こすかというと、その可能性は低いだろう。Androidは「オープンである」という点においては非常に革新的であるが、iPhoneのように一般ユーザーに分かりやすい画期的なインターフェースが導入されているわけではない。そのため、Googleファン、そして「端末をカスタマイズしたい」というヘビーユーザー以外にはその魅力が伝わりにくいと考えられるからだ。
しかも現在、キャリア各社がiPhoneやWindows Mobile端末などスマートフォンに力を入れ始めたことで、(ノキアの撤退はあったものの)選択肢はこれまで考えられなかったくらい増加している。それゆえかつてのW-ZERO3シリーズのような現象も起きにくくなっており、投入された端末の魅力が非常に高い、あるいはキャリアやメーカー、Googleなどが積極的にプロモーションを行うなどの要因がなければ、ブームを生み出すのは難しいだろう。
モバイルWiMAXと次世代PHSは順調に立ち上がるか?
さらに今年の大きなトピックといえば、UQコミュニケーションズのモバイルWiMAXや、ウィルコムの次世代PHS「WILLCOM CORE」など、2.5GHz帯を用いたモバイルブロードバンド通信が日本でサービス開始されるということだ。両社とも、昨年12月には2.5GHz帯の特定無線局の包括免許を取得しており、サービスインまでの準備は着実に整ってきているようだ。
とはいえ、2.5GHz帯の取得競争でし烈を極めた昨年頭までの状況と比べると、現在の環境は大きく変化している。ネットブックとのセット販売でイー・モバイルが大躍進し、モバイルデータ通信の分野で強い存在感を発揮するようになった。加えて最近では一部量販店で、 NTTドコモのデータ通信端末とのセット販売による割引が見られるようになるなど、モバイルデータ通信は予想以上の速さで普及が進んでいる。さらにこの分野にはauや日本通信も参入しており、こと都市部におけるモバイルデータ通信の競争は、当初予測していた以上の激化ぶりを見せているのだ。
速度面でも3Gとの差別化が難しくなりつつある。既にサービスを開始している米国の例から考えると、モバイルWiMAXや次世代PHSの実効速度は当初、下り2M~4Mbps程度からになると予想される。だがイー・モバイルやNTTドコモは下り最大7.2Mbps、実測値でも1M~2Mbps程度の速度は実現しており、劇的に差がつくとは言い難い状況だ。またサービス開始初年度はインフラ整備が途上ということもあり、現行のPHSのように「通信の安定」といったメリットが打ち出しにくい、というのも厳しいところだろう。
当初期待されていたモバイルデータ通信の市場が、3G携帯電話のインフラによって本格的に立ち上がってしまったことにより、それを欲するユーザーの目が一気に肥えてしまった。そんな状況下で順調にサービスを立ち上げるには、「PC向けデータ通信」「PDAのようなモバイルデータ端末」といった視点だけでは不十分といえ、いかに新しい市場を創出できるかが必要になってくるといえよう。ウィルコムが研究を進める定点カメラのネットワーク化などはそうした一例といえるが、他にも2.5GHz帯に義務化されているMVNOへの展開など、あらゆる角度から市場創出にチャレンジしていくことが、重要となってくるように思う。
国債、日米欧で400兆円規模に 財政収支悪化で急増
【ワシントン=米山雄介、パリ=野見山祐史】国が資金調達のために売り出す国債の発行額が世界で急増している。不況で税収が減る一方、金融安定化や景気対策で歳出が増え、財政収支が悪化しているためだ。日米欧の2009年度の国債発行総額は400兆円規模に達する公算が大きい。金融不安を背景に投資家は信用度の高い国債の購入を増やす傾向にあるが、安定消化が難しくなれば長期金利が上昇し、景気回復を妨げるおそれがある。
08年度と比べた増発額は100兆円を超える見通しで、これは日本の国家予算(09年度予算案の一般会計で約89兆円)を大きく上回る。
景気対策「早期実施」に暗雲 ねじれ国会で法案成立読めず
2009年度予算案に盛り込んだ景気対策について、早期実施が難しくなるのではないかという懸念が政府内で強まっている。政府は昨年決定した景気対策に絡む法案を月内にも国会提出する方針だが、ねじれ国会の混迷で成立時期が見通せないためだ。国会審議が滞れば4月に予定する失業給付の拡充や、1兆円の緊急予備費の創設などが後ずれしかねない。不透明な国会情勢を受け、一部の省庁は法案提出の見送りも検討し始めている。
2兆円規模の定額給付金などを盛り込んだ08年度第2次補正予算案は週明けにも衆院を通過する見通しで、政府は年度内実施はほぼ確実とみている。ただ来年度予算案に絡む対策の一部は早期実施が危ぶまれており、麻生太郎首相が表明した景気対策の「切れ目ない実行」は綱渡りの様相だ。
企業の設備・雇用、3年半ぶり供給超過 日銀試算
日銀の試算によると、設備と雇用について企業からみた「需給判断指数」が2008年12月に、3年半ぶりに供給超過となった。金融・経済危機による輸出企業の海外売上高の急減などを背景に、過剰感が強まっている。供給が需要を上回る状況が続くと企業が製品の販売価格の引き下げに動き、物価の持続的な下落に結びつく可能性もある。
企業からみた設備・雇用の需給判断指数は、日銀が企業短期経済観測調査(短観)の生産・営業用設備判断指数と雇用人員判断指数を使ってはじき出した。プラス幅が大きいほど、企業が保有する設備や雇用について、過剰感を強めていることを示す。
オバマ氏、経済対策で「GDP3.7%押し上げ」
【ワシントン=米山雄介】オバマ次期米大統領は10日、週末恒例のラジオとインターネットを通じた演説で、先に骨格を示した景気対策の経済効果を公表した。政権発足から約2年後の2010年10―12月時点で、景気対策を実施しない場合に比べて実質国内総生産(GDP)を3.7%押し上げると試算。367万5000人の雇用増になると予測した。
経済効果はオバマ氏が米大統領経済諮問委員会(CEA)の次期委員長に指名したローマー・カリフォルニア大学バークレー校教授らが試算。現在、議会と調整中の2年間で7750億ドル(約70兆円)という総額をやや上回る規模の対策を前提とした。
風力や太陽光など石油に代わる再生可能エネルギーへの投資で約46万人、道路や橋などインフラ整備で約38万人の雇用を創出できると予想。全体の9割は民間部門での雇用増になると推計した。
誕生10年の09年、ユーロ流通量が100兆円規模に
1999年の単一通貨ユーロの誕生から丸10年が経過し、ユーロの現金流通量が100兆円規模に達した。欧州中央銀行(ECB)によると1月1日時点での紙幣流通量は7662億ユーロ(97兆円)と2007年末に比べて約13%増えた。ユーロ圏は08年にキプロスとマルタ、今年1月にスロバキアが参加して16カ国に拡大。旧東欧など周辺国への浸透も進んで利用者が増えたようだ。
99年にドイツ、フランス、イタリアなど11カ国の決済通貨として誕生し、02年から現金流通が始まった。加盟国の増加とともに紙幣発行量が膨らみ、流通量は当初の3000億ユーロ台からほぼ2倍になった。
国の保有特許、1円利用も可能に 民間の活用促す
政府は国が保有する特許について民間企業の活用を促すため、特許を利用して実用化する際の実施権料(ロイヤルティー)を大幅に値下げする。これまで実用化した製品の売上高に応じて決まっていた実施権料を、特許の内容などによっては1円でも利用できるよう認めるなど安い価格にする。国が保有する環境分野などの特許活用を促し、民間の競争力強化につなげる狙い。
通常国会に提出する産業技術力強化法の改正案に実施権料の見直しを盛り込む。
激動の2008年を経て、いよいよ2009年がスタートした。今年も携帯電話市場には大きなイベントが目白押しであり、大きな変化が起きることが予想される。そこで今回は、今年携帯電話・モバイル業界に起きると予測される出来事をいくつかをピックアップし、その成否について検討していこう。
ブランディング戦略がauの成否を左右する?
昨年末のCOLUMN(「携帯・PHSキャリアの「通信簿」で振り返る2008年」)でも触れたが、昨年の「1台目キャリア」争いは、NTTドコモが息を吹き返す一方、auが大きく落ち込む結果となった。NTTドコモは昨年発表した秋冬モデルで端末・サービス開発力の強さを見せつけ、引き離しにかかろうとしているが、その足を引っ張っているのがブランディング戦略の変更だ。
これまでは高機能の9xxiシリーズ、普及機の7xxiシリーズというように、ユーザーに分かりやすい型番を採用していた。だが秋冬モデルからはこれを4つのシリーズ分類に変更し、“N-01A”といったように、シリーズを型番に含まない機械的な分類となってしまった。これによってユーザーが機能で端末を選びにくくなり、混乱を生む結果となっている。
実はauも今年、ブランディング戦略を変更するのでは?と思わせる動きを見せている。発売前の携帯電話端末が必ず認定を受けるJATE(電気通信端末機器審査協会)で認定を受けた機器の一覧を見ると、春モデルと思われるau携帯電話の型番が、従来とは異なる名称となっているのだ。ここに掲載されている型番がそのまま採用されるとは限らないが、何らかの変更があることを匂わせているのは確かである。
もっともauの場合、WIN端末に限れば元々型番に機能は含まれておらず、変更したとしてもNTTドコモほど大きな影響を与える可能性は低い。だが、NTTドコモのように型番だけでなくシリーズ分類を設けるなど、ブランディング戦略を大きく変更してくる可能性もないとはいえないだろう。店頭での機種選びでは、選びやすさ、分かりやすさも重要なだけに、ブランディングの変更が今年のauを左右する大きな要素の1つとなってくる可能性もある。
AndroidはiPhone並みのフィーバーをもたらすか?
昨年米国で発売され、今年日本に上陸するであろうと予測されているのが、Googleが主体となって開発したモバイル・プラットフォーム「Android(アンドロイド)」を搭載したスマートフォンだ。AndroidはLinuxをベースとしたオープンソースのプラットフォームであり、さらに誰でもライセンスフリーで利用できるなど、極めてオープン性が高いのが特徴である。
Androidの開発を推進するオープン・ハンドセット・アライアンス(OHA)には、当初からNTTドコモやKDDIといった国内キャリア、そして米国で端末投入の実績があり、日本でもスマートフォンを提供しているHTCなどが参加している。また、昨年12月にはソフトバンクモバイル、さらに東芝やソニー・エリクソンといった日本での端末販売実績が高い企業も加入している。こうしたことから、国内でAndroid端末が投入される素地は十分整っている。従って、注目は「いつ日本に発売されるか」という1点に絞られている。
当然のことながら、現時点でAndroid端末がいつ、どのメーカーから発売されるかは不明だ(可能性が高いとはいえ、今年出るという保証もない)。しかし、仮に発売されたとしても「Googleケータイ」としてiPhone並みのフィーバーを巻き起こすかというと、その可能性は低いだろう。Androidは「オープンである」という点においては非常に革新的であるが、iPhoneのように一般ユーザーに分かりやすい画期的なインターフェースが導入されているわけではない。そのため、Googleファン、そして「端末をカスタマイズしたい」というヘビーユーザー以外にはその魅力が伝わりにくいと考えられるからだ。
しかも現在、キャリア各社がiPhoneやWindows Mobile端末などスマートフォンに力を入れ始めたことで、(ノキアの撤退はあったものの)選択肢はこれまで考えられなかったくらい増加している。それゆえかつてのW-ZERO3シリーズのような現象も起きにくくなっており、投入された端末の魅力が非常に高い、あるいはキャリアやメーカー、Googleなどが積極的にプロモーションを行うなどの要因がなければ、ブームを生み出すのは難しいだろう。
モバイルWiMAXと次世代PHSは順調に立ち上がるか?
さらに今年の大きなトピックといえば、UQコミュニケーションズのモバイルWiMAXや、ウィルコムの次世代PHS「WILLCOM CORE」など、2.5GHz帯を用いたモバイルブロードバンド通信が日本でサービス開始されるということだ。両社とも、昨年12月には2.5GHz帯の特定無線局の包括免許を取得しており、サービスインまでの準備は着実に整ってきているようだ。
とはいえ、2.5GHz帯の取得競争でし烈を極めた昨年頭までの状況と比べると、現在の環境は大きく変化している。ネットブックとのセット販売でイー・モバイルが大躍進し、モバイルデータ通信の分野で強い存在感を発揮するようになった。加えて最近では一部量販店で、 NTTドコモのデータ通信端末とのセット販売による割引が見られるようになるなど、モバイルデータ通信は予想以上の速さで普及が進んでいる。さらにこの分野にはauや日本通信も参入しており、こと都市部におけるモバイルデータ通信の競争は、当初予測していた以上の激化ぶりを見せているのだ。
速度面でも3Gとの差別化が難しくなりつつある。既にサービスを開始している米国の例から考えると、モバイルWiMAXや次世代PHSの実効速度は当初、下り2M~4Mbps程度からになると予想される。だがイー・モバイルやNTTドコモは下り最大7.2Mbps、実測値でも1M~2Mbps程度の速度は実現しており、劇的に差がつくとは言い難い状況だ。またサービス開始初年度はインフラ整備が途上ということもあり、現行のPHSのように「通信の安定」といったメリットが打ち出しにくい、というのも厳しいところだろう。
当初期待されていたモバイルデータ通信の市場が、3G携帯電話のインフラによって本格的に立ち上がってしまったことにより、それを欲するユーザーの目が一気に肥えてしまった。そんな状況下で順調にサービスを立ち上げるには、「PC向けデータ通信」「PDAのようなモバイルデータ端末」といった視点だけでは不十分といえ、いかに新しい市場を創出できるかが必要になってくるといえよう。ウィルコムが研究を進める定点カメラのネットワーク化などはそうした一例といえるが、他にも2.5GHz帯に義務化されているMVNOへの展開など、あらゆる角度から市場創出にチャレンジしていくことが、重要となってくるように思う。
国債、日米欧で400兆円規模に 財政収支悪化で急増
【ワシントン=米山雄介、パリ=野見山祐史】国が資金調達のために売り出す国債の発行額が世界で急増している。不況で税収が減る一方、金融安定化や景気対策で歳出が増え、財政収支が悪化しているためだ。日米欧の2009年度の国債発行総額は400兆円規模に達する公算が大きい。金融不安を背景に投資家は信用度の高い国債の購入を増やす傾向にあるが、安定消化が難しくなれば長期金利が上昇し、景気回復を妨げるおそれがある。
08年度と比べた増発額は100兆円を超える見通しで、これは日本の国家予算(09年度予算案の一般会計で約89兆円)を大きく上回る。
景気対策「早期実施」に暗雲 ねじれ国会で法案成立読めず
2009年度予算案に盛り込んだ景気対策について、早期実施が難しくなるのではないかという懸念が政府内で強まっている。政府は昨年決定した景気対策に絡む法案を月内にも国会提出する方針だが、ねじれ国会の混迷で成立時期が見通せないためだ。国会審議が滞れば4月に予定する失業給付の拡充や、1兆円の緊急予備費の創設などが後ずれしかねない。不透明な国会情勢を受け、一部の省庁は法案提出の見送りも検討し始めている。
2兆円規模の定額給付金などを盛り込んだ08年度第2次補正予算案は週明けにも衆院を通過する見通しで、政府は年度内実施はほぼ確実とみている。ただ来年度予算案に絡む対策の一部は早期実施が危ぶまれており、麻生太郎首相が表明した景気対策の「切れ目ない実行」は綱渡りの様相だ。
企業の設備・雇用、3年半ぶり供給超過 日銀試算
日銀の試算によると、設備と雇用について企業からみた「需給判断指数」が2008年12月に、3年半ぶりに供給超過となった。金融・経済危機による輸出企業の海外売上高の急減などを背景に、過剰感が強まっている。供給が需要を上回る状況が続くと企業が製品の販売価格の引き下げに動き、物価の持続的な下落に結びつく可能性もある。
企業からみた設備・雇用の需給判断指数は、日銀が企業短期経済観測調査(短観)の生産・営業用設備判断指数と雇用人員判断指数を使ってはじき出した。プラス幅が大きいほど、企業が保有する設備や雇用について、過剰感を強めていることを示す。
オバマ氏、経済対策で「GDP3.7%押し上げ」
【ワシントン=米山雄介】オバマ次期米大統領は10日、週末恒例のラジオとインターネットを通じた演説で、先に骨格を示した景気対策の経済効果を公表した。政権発足から約2年後の2010年10―12月時点で、景気対策を実施しない場合に比べて実質国内総生産(GDP)を3.7%押し上げると試算。367万5000人の雇用増になると予測した。
経済効果はオバマ氏が米大統領経済諮問委員会(CEA)の次期委員長に指名したローマー・カリフォルニア大学バークレー校教授らが試算。現在、議会と調整中の2年間で7750億ドル(約70兆円)という総額をやや上回る規模の対策を前提とした。
風力や太陽光など石油に代わる再生可能エネルギーへの投資で約46万人、道路や橋などインフラ整備で約38万人の雇用を創出できると予想。全体の9割は民間部門での雇用増になると推計した。
誕生10年の09年、ユーロ流通量が100兆円規模に
1999年の単一通貨ユーロの誕生から丸10年が経過し、ユーロの現金流通量が100兆円規模に達した。欧州中央銀行(ECB)によると1月1日時点での紙幣流通量は7662億ユーロ(97兆円)と2007年末に比べて約13%増えた。ユーロ圏は08年にキプロスとマルタ、今年1月にスロバキアが参加して16カ国に拡大。旧東欧など周辺国への浸透も進んで利用者が増えたようだ。
99年にドイツ、フランス、イタリアなど11カ国の決済通貨として誕生し、02年から現金流通が始まった。加盟国の増加とともに紙幣発行量が膨らみ、流通量は当初の3000億ユーロ台からほぼ2倍になった。
国の保有特許、1円利用も可能に 民間の活用促す
政府は国が保有する特許について民間企業の活用を促すため、特許を利用して実用化する際の実施権料(ロイヤルティー)を大幅に値下げする。これまで実用化した製品の売上高に応じて決まっていた実施権料を、特許の内容などによっては1円でも利用できるよう認めるなど安い価格にする。国が保有する環境分野などの特許活用を促し、民間の競争力強化につなげる狙い。
通常国会に提出する産業技術力強化法の改正案に実施権料の見直しを盛り込む。
少子化は危機か好機か・日本のゲーム産業の課題(COLUMN)
日本のゲーム産業は果たして生き残っていけるのだろうか――。少子化や日本独自の商慣習など、日本のゲーム産業が抱えている課題を今回から3回に渡って考えていく。1回目はゲーム産業に大きな影響を与える要因「人口」について考える。
■団塊ジュニアが育てた日本のゲーム産業
昨年は、未曾有の金融危機が世界経済を揺るがした。しかし、金融危機が引き起こした不況による短期的な景気変動と、長期的に起きている変化は切り離して考えなくてはならない。
経済に最も影響を与える要因は人口だ。人口のトレンドは経済・社会・政治など複雑な要因によって決まり、あらゆる将来予測にかかわる基礎的な指標となる。世界のゲーム産業も、この人口構成の変化により大きく影響を受けている。
そもそも、世界屈指のゲーム産業が日本で成立した背景には、この人口のボリュームと経済成長の要素が重なり合ったことが大きな要因として存在している。
1983年に任天堂が「ファミリーコンピュータ」を発売したころは、現在60歳前後の「団塊世代」が人口のボリュームゾーンとして経済成長を支えていた。そして、その子供で、現在の30歳代にあたる「団塊ジュニア世代」が、小学校高学年を迎える時期にあたっている。
家庭で自由に使うことができる可処分所得は上昇を続け、70年から80年では実に3倍に増えている。普通に働けば可処分所得が増えていくという幸福な時代だ。
経済成長のなか、がむしゃらに働くだけでなく、レジャーにもっとお金を使うべきという主張が登場してきた時期であり、同じ83年には「東京ディズニーランド」もオープンしている。
ファミコンはハード単体で1万4800円という、とんでもなく高額なオモチャだったが、各家庭にはそれを子供に買い与える余裕が生まれていた。
この団塊世代と団塊ジュニア世代の親子セットは、その後の日本のゲーム産業の成長に貢献し続ける。ゲームセンターでの「バーチャファイター」(セガ)を中心とした格闘ゲームの大ヒットや、94年に発売されたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション」の成功は、団塊ジュニアが青年世代となり、より複雑で高度なゲームを求めるようになったタイミングと合致したのが理由だ。
家庭の可処分所得はバブル崩壊後の90年代に入ると頭打ちになるが、98年にピークを迎えるまでは、ゆるやかに上昇を続けている。日本の家庭用ゲーム機向けソフトウエア販売金額のピークは97年であり、ほぼ時期が重なる。団塊ジュニアがゲームにお金を払い続けるだけの資金余力をまだ十分持っていたことが要因として考えられる。
■PS3はなぜ苦戦したか
しかし、2000年代に入って状況は変わる。可処分所得は減少に転じ、07年の水準は90年と同等にまで低下している。また、団塊ジュニア世代は30歳代に入り、ゲームを遊ぶ時間を十分に持てなくなった。
日本での「プレイステーション3(PS3)」の苦戦は、この人口動態が大きく関わっていると考えられる。現在、プレステの成功を支えてきた団塊ジュニア世代は仕事を持ち、家庭を持ち、子供を持つという状況で、自由にゲームを遊べる所得と時間的余裕を持ちにくくなっている。そして、現在の日本の人口動態からは、日本市場の今後も確実に予測できる。
日本では少子化が急激に進行しており、団塊ジュニア世代に続くボリュームゾーンは生まれていない。現在も18歳以下人口は減少し、ピーク時の3分の2近くになっている。今後も、数の少ない今の0-4歳人口が歳を重ねて若年層に育っていくだけであり、今のままで考えれば、日本市場の潜在成長性はないと言い切ることができる。
しかし、これは失望すべきことではない。人口の減少は産業構造の変換の契機にすぎない。そうした変化が起きない産業などないからだ。逆に、そこに着目して企業戦略を組み替えることで、チャンスを作らなければならないタイミングにいる。
■2050年まで人口増が確実なアメリカ
一方で、北米と欧州の市場についても、日本市場と対比する形で考えておきたい。
北米では、映画やテレビアニメとタイアップした、必ずしも出来がよいとはいえないゲームのなかからでも100万本以上のヒット作が毎年登場する。
例えば、昨年発売の映画とタイアップした「カンフーパンダ」(アクティビジョン)は、「Xbox360」「PS3」「Wii」「ニンテンドーDS」「プレイステーション・ポータブル(PSP)」「プレイステーション2(PS2)」とすべてのプラットホームでリリースされ、完成度は高くないにもかかわらず、北米だけで300万本以上販売した。いわば「ドラえもん」のゲームが毎年200万本売れるようなもので、日本では起こりえない状況が現在も続いている。
その理由はやはり人口にある。アメリカは多くの先進国と違い、若年層人口の減少が起きていない。現在の人口予測では、ヒスパニック系や中国系などマイノリティー層の人口増加が主因となって、2050年まで人口は増加すると予測されている。顧客層や所得層の変化は当然起こりうるだろうが、今後ともゲームを遊んでくれるユーザー基盤の減少は起きない。
ある北米企業と取引のある業界関係者の話では、北米のゲーム販売会社に企画提案すると、必ず全機種へのマルチプラットホーム展開を求められるという。必ずしも完成度が高くなくとも売れるので、機種展開は多ければ多いほどいいということのようだ。
日本企業は、大型タイトルでも同じ内容のものをDSやPSPに迅速にマルチ展開するという販売方法をあまり採らないが、そこにはベースとなる市場の違いがある。
欧州は、EU圏全体をまとめた使いやすいデータがないが、まもなく近年の急成長は止まると予測される。今までは、市場になりにくかったスペインなどを取り込むことで大きく成長した面があるが、フランスを除けば少子化が進行しており、特にドイツが激しい。その層が若年層の中心となる時期に入りつつあるからだ。
■人口問題にいち早く取り組んだ任天堂
先に述べたように、人口がゲーム産業に与える影響は大きいが、それにいち早く着目して戦略を転換すれば、成功のチャンスはある。それを実現した日本企業は言うまでもなく、任天堂である。任天堂はDSやWiiを展開するうえで、「ゲーム人口の拡大」という主張を何度も繰り返している。
同社が強い子供市場以外に、幅広い年齢層に売れるゲームを作るという取り組みは、考えてみればコロンブスの卵的な「市場を別の視点から見直す」考え方だった。
岩田聡社長がカンファレンスなどで講演する時に必ずといっていいほど示すのが、DSとWii所有者の年齢層別のデータだ。幅広い年齢層に受け入れられている証明として見せるが、同時にいかに企業として人口の変化に注意を払って戦略を組み立てているのかをよく示している。
■ゲーム産業のマーケティングはまだ稚拙
このところ、さまざまなゲーム会社の経営幹部や開発責任者に会うたびに、「開発するゲームの顧客を定義することができていますか」という質問を投げかけてきた。業界内では、ゲームを多く遊んでくれる「コアゲーマー」という言い方や「ライトユーザー」という区分がよく使われる。
ヒットを狙うために、「できるだけライトユーザー層を取り込みたい」といったような主張を各社がするわけだが、「ライトユーザーとは誰なのか」と突っ込んで聞くと、漠然とした答えしか返ってこないことも多い。これは、何も言っていないのと等しい。
日本のゲーム産業は、まだマーケティング手法という面では、稚拙な段階にある。マーケティングの本質は、開発と営業とがしっかりと連動するような形で商品企画から開発、販売までのプロセスを行うことであり、商品を単にプロモーションするだけがマーケティングなのではない。国内企業のマーケティングは一般的にこのレベルにとどまっている。
任天堂は「クラブニンテンドー」というマイレージサービスを通じて、ユーザー調査を行っている。ゲームを買ってパッケージに書かれている番号をウェブサイトで入力するとポイントが貯まる仕組みで、貯めたポイントはオリジナルグッズの購入などに使える。
任天堂はこれにより、ユーザーから購買情報を直接収集でき、こうした調査を含めた複数の指標を組み合わせて市場動向を分析していると思われる。これは、SCEやマイクロソフトといった他の競合企業にもできていないことだ。任天堂の現在の優位の礎になっている。
■もっと顧客に近づき声を聞け
人口減少に対してまず行うべきことは、どの規模の企業であれ、自分たちのゲームの顧客が誰であるのかを明確に定義し、それらの情報を複数の指標から確認する手段を構築することだ。そして、それを起点に開発と販売とを深くリンクさせる企業内スキームを確立する必要がある。
実は、人口は本質的な問題なのではなく、今までと同じことを続けて市場の変化に期待するだけでは、生き残れないというだけのことだ。今後数年の大きな変化のなかで生き残れるのは、現代的なマーケティングを軸とした体制への移行に取り組める企業であろうことは、これもまた比較的容易に予測ができる。
もっと顧客に近づき、顧客の声を反映した製品を作らなければならない。当たり前のことだが、それをどう推し進めるかが鍵となる。
【東京新聞社説】
少子化対策 経済危機だからこそ
2009年1月10日
雇用情勢は悪化の一途だ。若者たちの雇用確保など早急な対策が必要だが、将来の日本社会を支える子供たちのことを忘れては困る。少子化も「待ったなし」。政府も企業も対策を進めてほしい。
政府は「仕事と育児」を両立させるための少子化対策として、昨年二月に「新待機児童ゼロ作戦」を策定した。昨年十月に打ち出した新総合経済対策では、保育所整備などに充てるため「安心こども基金」を各都道府県に設置することが盛り込まれた。
保育制度改革も議論が進んでいる。先月に厚生労働省がまとめた制度改革の素案では、保育所を利用できる対象を、専業主婦世帯にも広げる。ニーズに合わせるなど保育所運営により柔軟性を持たせる。これまで開所を認めるかどうかの裁量を都道府県が持っていた認可保育園の仕組みも変え、一定基準を満たしていれば機械的に指定事業者として認めるなど、保育事業への参入をしやすくする。
課題は財源だ。昨年十一月にまとめられた社会保障国民会議の最終報告では、少子化対策に二〇一五年度に最大二・一兆円が必要と試算した。小渕優子少子化担当相は「消費税アップの1%分を少子化対策に」と訴えるが、国民の理解が必要だ。増税へは景気低迷の“逆風”が吹くが、少子化対策が私たち社会全体の問題であることを粘り強く訴える必要がある。
保育サービスの充実とともに対策の「車の両輪」は、「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)」の推進だ。厚労省の審議会では、従業員が育児しながら働き続けられるよう育児・介護休業法改正に向けた案がまとめられた。育児中の従業員に短時間勤務の拡充や残業免除を認める内容だ。ただ、議論の過程で、経営側は「百年に一度の金融危機」を理由に、制度拡充に消極的だった。
だが、経営環境の悪化を口実に、少子化対策を棚上げすべきではない。従業員が育児や介護をしながら働ける労働環境を整えることは、優秀な人材を確保でき、結果的に企業体力を向上させることを理解するべきだ。
長時間労働は依然、改善されていない。長時間労働抑制を狙い労働基準法が改正され、残業代の割増率が引き上げられるが、リストラで職場の人材が減れば、残った従業員の負担は増えかねない。経営側は危機だからこそ、対策に取り組んでほしい。労働組合も雇用問題と同時に、引き続き目配りしてほしい。
日本のゲーム産業は果たして生き残っていけるのだろうか――。少子化や日本独自の商慣習など、日本のゲーム産業が抱えている課題を今回から3回に渡って考えていく。1回目はゲーム産業に大きな影響を与える要因「人口」について考える。
■団塊ジュニアが育てた日本のゲーム産業
昨年は、未曾有の金融危機が世界経済を揺るがした。しかし、金融危機が引き起こした不況による短期的な景気変動と、長期的に起きている変化は切り離して考えなくてはならない。
経済に最も影響を与える要因は人口だ。人口のトレンドは経済・社会・政治など複雑な要因によって決まり、あらゆる将来予測にかかわる基礎的な指標となる。世界のゲーム産業も、この人口構成の変化により大きく影響を受けている。
そもそも、世界屈指のゲーム産業が日本で成立した背景には、この人口のボリュームと経済成長の要素が重なり合ったことが大きな要因として存在している。
1983年に任天堂が「ファミリーコンピュータ」を発売したころは、現在60歳前後の「団塊世代」が人口のボリュームゾーンとして経済成長を支えていた。そして、その子供で、現在の30歳代にあたる「団塊ジュニア世代」が、小学校高学年を迎える時期にあたっている。
家庭で自由に使うことができる可処分所得は上昇を続け、70年から80年では実に3倍に増えている。普通に働けば可処分所得が増えていくという幸福な時代だ。
経済成長のなか、がむしゃらに働くだけでなく、レジャーにもっとお金を使うべきという主張が登場してきた時期であり、同じ83年には「東京ディズニーランド」もオープンしている。
ファミコンはハード単体で1万4800円という、とんでもなく高額なオモチャだったが、各家庭にはそれを子供に買い与える余裕が生まれていた。
この団塊世代と団塊ジュニア世代の親子セットは、その後の日本のゲーム産業の成長に貢献し続ける。ゲームセンターでの「バーチャファイター」(セガ)を中心とした格闘ゲームの大ヒットや、94年に発売されたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション」の成功は、団塊ジュニアが青年世代となり、より複雑で高度なゲームを求めるようになったタイミングと合致したのが理由だ。
家庭の可処分所得はバブル崩壊後の90年代に入ると頭打ちになるが、98年にピークを迎えるまでは、ゆるやかに上昇を続けている。日本の家庭用ゲーム機向けソフトウエア販売金額のピークは97年であり、ほぼ時期が重なる。団塊ジュニアがゲームにお金を払い続けるだけの資金余力をまだ十分持っていたことが要因として考えられる。
■PS3はなぜ苦戦したか
しかし、2000年代に入って状況は変わる。可処分所得は減少に転じ、07年の水準は90年と同等にまで低下している。また、団塊ジュニア世代は30歳代に入り、ゲームを遊ぶ時間を十分に持てなくなった。
日本での「プレイステーション3(PS3)」の苦戦は、この人口動態が大きく関わっていると考えられる。現在、プレステの成功を支えてきた団塊ジュニア世代は仕事を持ち、家庭を持ち、子供を持つという状況で、自由にゲームを遊べる所得と時間的余裕を持ちにくくなっている。そして、現在の日本の人口動態からは、日本市場の今後も確実に予測できる。
日本では少子化が急激に進行しており、団塊ジュニア世代に続くボリュームゾーンは生まれていない。現在も18歳以下人口は減少し、ピーク時の3分の2近くになっている。今後も、数の少ない今の0-4歳人口が歳を重ねて若年層に育っていくだけであり、今のままで考えれば、日本市場の潜在成長性はないと言い切ることができる。
しかし、これは失望すべきことではない。人口の減少は産業構造の変換の契機にすぎない。そうした変化が起きない産業などないからだ。逆に、そこに着目して企業戦略を組み替えることで、チャンスを作らなければならないタイミングにいる。
■2050年まで人口増が確実なアメリカ
一方で、北米と欧州の市場についても、日本市場と対比する形で考えておきたい。
北米では、映画やテレビアニメとタイアップした、必ずしも出来がよいとはいえないゲームのなかからでも100万本以上のヒット作が毎年登場する。
例えば、昨年発売の映画とタイアップした「カンフーパンダ」(アクティビジョン)は、「Xbox360」「PS3」「Wii」「ニンテンドーDS」「プレイステーション・ポータブル(PSP)」「プレイステーション2(PS2)」とすべてのプラットホームでリリースされ、完成度は高くないにもかかわらず、北米だけで300万本以上販売した。いわば「ドラえもん」のゲームが毎年200万本売れるようなもので、日本では起こりえない状況が現在も続いている。
その理由はやはり人口にある。アメリカは多くの先進国と違い、若年層人口の減少が起きていない。現在の人口予測では、ヒスパニック系や中国系などマイノリティー層の人口増加が主因となって、2050年まで人口は増加すると予測されている。顧客層や所得層の変化は当然起こりうるだろうが、今後ともゲームを遊んでくれるユーザー基盤の減少は起きない。
ある北米企業と取引のある業界関係者の話では、北米のゲーム販売会社に企画提案すると、必ず全機種へのマルチプラットホーム展開を求められるという。必ずしも完成度が高くなくとも売れるので、機種展開は多ければ多いほどいいということのようだ。
日本企業は、大型タイトルでも同じ内容のものをDSやPSPに迅速にマルチ展開するという販売方法をあまり採らないが、そこにはベースとなる市場の違いがある。
欧州は、EU圏全体をまとめた使いやすいデータがないが、まもなく近年の急成長は止まると予測される。今までは、市場になりにくかったスペインなどを取り込むことで大きく成長した面があるが、フランスを除けば少子化が進行しており、特にドイツが激しい。その層が若年層の中心となる時期に入りつつあるからだ。
■人口問題にいち早く取り組んだ任天堂
先に述べたように、人口がゲーム産業に与える影響は大きいが、それにいち早く着目して戦略を転換すれば、成功のチャンスはある。それを実現した日本企業は言うまでもなく、任天堂である。任天堂はDSやWiiを展開するうえで、「ゲーム人口の拡大」という主張を何度も繰り返している。
同社が強い子供市場以外に、幅広い年齢層に売れるゲームを作るという取り組みは、考えてみればコロンブスの卵的な「市場を別の視点から見直す」考え方だった。
岩田聡社長がカンファレンスなどで講演する時に必ずといっていいほど示すのが、DSとWii所有者の年齢層別のデータだ。幅広い年齢層に受け入れられている証明として見せるが、同時にいかに企業として人口の変化に注意を払って戦略を組み立てているのかをよく示している。
■ゲーム産業のマーケティングはまだ稚拙
このところ、さまざまなゲーム会社の経営幹部や開発責任者に会うたびに、「開発するゲームの顧客を定義することができていますか」という質問を投げかけてきた。業界内では、ゲームを多く遊んでくれる「コアゲーマー」という言い方や「ライトユーザー」という区分がよく使われる。
ヒットを狙うために、「できるだけライトユーザー層を取り込みたい」といったような主張を各社がするわけだが、「ライトユーザーとは誰なのか」と突っ込んで聞くと、漠然とした答えしか返ってこないことも多い。これは、何も言っていないのと等しい。
日本のゲーム産業は、まだマーケティング手法という面では、稚拙な段階にある。マーケティングの本質は、開発と営業とがしっかりと連動するような形で商品企画から開発、販売までのプロセスを行うことであり、商品を単にプロモーションするだけがマーケティングなのではない。国内企業のマーケティングは一般的にこのレベルにとどまっている。
任天堂は「クラブニンテンドー」というマイレージサービスを通じて、ユーザー調査を行っている。ゲームを買ってパッケージに書かれている番号をウェブサイトで入力するとポイントが貯まる仕組みで、貯めたポイントはオリジナルグッズの購入などに使える。
任天堂はこれにより、ユーザーから購買情報を直接収集でき、こうした調査を含めた複数の指標を組み合わせて市場動向を分析していると思われる。これは、SCEやマイクロソフトといった他の競合企業にもできていないことだ。任天堂の現在の優位の礎になっている。
■もっと顧客に近づき声を聞け
人口減少に対してまず行うべきことは、どの規模の企業であれ、自分たちのゲームの顧客が誰であるのかを明確に定義し、それらの情報を複数の指標から確認する手段を構築することだ。そして、それを起点に開発と販売とを深くリンクさせる企業内スキームを確立する必要がある。
実は、人口は本質的な問題なのではなく、今までと同じことを続けて市場の変化に期待するだけでは、生き残れないというだけのことだ。今後数年の大きな変化のなかで生き残れるのは、現代的なマーケティングを軸とした体制への移行に取り組める企業であろうことは、これもまた比較的容易に予測ができる。
もっと顧客に近づき、顧客の声を反映した製品を作らなければならない。当たり前のことだが、それをどう推し進めるかが鍵となる。
【東京新聞社説】
少子化対策 経済危機だからこそ
2009年1月10日
雇用情勢は悪化の一途だ。若者たちの雇用確保など早急な対策が必要だが、将来の日本社会を支える子供たちのことを忘れては困る。少子化も「待ったなし」。政府も企業も対策を進めてほしい。
政府は「仕事と育児」を両立させるための少子化対策として、昨年二月に「新待機児童ゼロ作戦」を策定した。昨年十月に打ち出した新総合経済対策では、保育所整備などに充てるため「安心こども基金」を各都道府県に設置することが盛り込まれた。
保育制度改革も議論が進んでいる。先月に厚生労働省がまとめた制度改革の素案では、保育所を利用できる対象を、専業主婦世帯にも広げる。ニーズに合わせるなど保育所運営により柔軟性を持たせる。これまで開所を認めるかどうかの裁量を都道府県が持っていた認可保育園の仕組みも変え、一定基準を満たしていれば機械的に指定事業者として認めるなど、保育事業への参入をしやすくする。
課題は財源だ。昨年十一月にまとめられた社会保障国民会議の最終報告では、少子化対策に二〇一五年度に最大二・一兆円が必要と試算した。小渕優子少子化担当相は「消費税アップの1%分を少子化対策に」と訴えるが、国民の理解が必要だ。増税へは景気低迷の“逆風”が吹くが、少子化対策が私たち社会全体の問題であることを粘り強く訴える必要がある。
保育サービスの充実とともに対策の「車の両輪」は、「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)」の推進だ。厚労省の審議会では、従業員が育児しながら働き続けられるよう育児・介護休業法改正に向けた案がまとめられた。育児中の従業員に短時間勤務の拡充や残業免除を認める内容だ。ただ、議論の過程で、経営側は「百年に一度の金融危機」を理由に、制度拡充に消極的だった。
だが、経営環境の悪化を口実に、少子化対策を棚上げすべきではない。従業員が育児や介護をしながら働ける労働環境を整えることは、優秀な人材を確保でき、結果的に企業体力を向上させることを理解するべきだ。
長時間労働は依然、改善されていない。長時間労働抑制を狙い労働基準法が改正され、残業代の割増率が引き上げられるが、リストラで職場の人材が減れば、残った従業員の負担は増えかねない。経営側は危機だからこそ、対策に取り組んでほしい。労働組合も雇用問題と同時に、引き続き目配りしてほしい。