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ようやく決着がついた、携帯マルチメディア放送の行く末は?
 2つの陣営が激しい参入争いを繰り広げていた携帯マルチメディア放送。だが総務省は去る2010年9月9日、NTTドコモなどが参加するマルチメディア放送(mmbi)の計画を認定すると発表。その争いに決着がつくこととなった。mmbiが選ばれた理由と、携帯マルチメディア放送の今後について確認していこう。
大幅に遅れた事業者選定、その理由は?
 携帯マルチメディア放送については以前に一度取り上げているので、今回はその後の話を中心に取り上げたい。
 ISDB-Tmm方式を推進するmmbiと、KDDIなどが主体となって設立したMediaFLO方式を推進するメディアフロージャパン企画。この2陣営が、携帯マルチメディア放送に割り当てられる1つの枠を争うこととなり、6月には両社の開設計画に関する公開説明会が開催。それらを基に、今年半ばには総務省が割り当てを決めると見られていた。
 だがその決定は大幅に遅れた。理由は、両陣営の事業計画に決定的な差がなかったためと考えられる。両陣営ともに大手の通信事業者が主導しているほか、mmbiは日本の放送局、メディアフロージャパン企画は米国で実績を持つクアルコムが参加している。実績面ではMediaFLOが先行しているものの、どちらの通信方式もすでに総務省の技術基準を満たしており、決定的な差にはつながっていない。
 両者の事業計画で大きな違いが見られるのは、エリアカバーとコストに対する考え方だ。mmbiは基地局設置数を少なくする代わりに、大型の基地局を東京スカイツリーなどに設置して強い電波を射出、コストを抑え、広いエリアをカバーするという方針だ。
 一方メディアフロージャパン企画側は、コストはかかるが基地局を密に設置してエリアをカバーし、屋内でも電波が入りやすくするという方針を示している。だが、いずれも一長一短があり、一概にどちらがいいといえるものではない。
両社の主張は平行線、混迷を増した審議
 こうしたことから、総務省は7月21日に非公開でのヒアリング、27日には2回目の公開説明会を実施した。だがいずれも、ともに互いの主張を繰り返すことに終始し、大きな進展は見られなかったようだ。
 さらに8月3日には、民主党の情報通信議連主催のワーキンググループにて、両社のヒアリングが開催された。ここで民主党議員から、そもそも免許の割当枠が1つであることに疑問が提示されるなどし、より混迷の度合いが増すこととなった。
 8月17日には、総務大臣の通信・放送に関する諮問に対して審議・答申する「電波監理審議会」が、携帯マルチメディア放送に関して、総務省から案が提示されない形で諮問を受けたと発表。通常、電波監理審議会は総務省が判断した内容を審議するのだが、今回は電波監理審議会自体が判断するという、前例のない事態となったのである。
 そして9月3日に、非公開によるヒアリングと公開説明会を再び開催。これを経て、9月8日に電波監理審議会は、mmbiの方が適合度合いが高いという判断を下し、翌9日に総務省が同社への免許を付与。これでようやく決着がつくこととなったのだ。
審査の決め手はコスト的優位性か
 では、審議における判断のポイントは、どこにあったのだろうか。電波監理審議会が両社の事業内容に関する比較資料を公開しているが、これを見ると、mmbiが評価されたポイントは2つのようだ。
 mmbiが有利と判断されているのは、主に「受託放送役務の提供に関する事項」と「開設計画の実施に関する能力及び体制に関する事項」の2点。前者については、実際にコンテンツを提供する委託事業者向けの料金となるが、その水準が、mmbiでは1MHz当たり、5年契約で年間10.4~11.6億円、メディアフロージャパン企画は27.3~29.2億円と大きな開きがあることから、参入しやすいmmbiが有利と判断されたようだ。
 後者については、mmbiが東京スカイツリーの利用で覚書を締結しているほか、他の基地局についても現地調査をして利用確認が済んでいるのに対し、メディアフロージャパン企画は管理者へのヒアリングなどでの確認にとどまり、東京など一部の地域で設置場所の利用確実性に懸念があると評価されている。また収益計画についても、単年黒字化の達成時期がmmbiが事業開始から3年目、メディアフロージャパン企画が5年目と2年の差があるほか、開設計画の最終年度における累積損失額が、mmbiは9億円、メディアフロージャパン企画が210億円と、やはり大きな差があるとしている。
 実証実験など実績面ではメディアフロージャパン企画が有利と評価されている部分もあるが、全体的に見るとmmbi側のコスト面における優位性が、採用に大きく影響したといえそうだ。 KDDIはどうする? そもそも市場は立ち上がる?
 免許を取得したmmbiは、10月5日から開催される「CEATEC JAPAN 2010」に出展してリアルタイム型放送や蓄積型放送の実演をすると発表している。また、一部メディアでNTTドコモ以外の通信キャリアへの出資要請について報道されている。事業展開に向けた動きを進めつつあるようだ。
 一方で気になるのは、mmbiと激しい免許取得合戦を繰り広げたメディアフロー企画に参加していたKDDIの動向である。9月10日に開催されたKDDIの社長交代に関する会見において、同社代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は、「3度説明会が開かれ、違いを理解した上で判断されたこともあり、残念だが仕方がない」と評価した一方で、「我々は携帯マルチメディア放送で、放送だけをやろうとは思っていない。今の仕組みのままで何の説明も受けず一緒にやるというのは考えていない」と話しているなど、現段階ではmmbiと距離を置いていることをうかがわせており、KDDIが参入するかはまだ不透明な部分がある。
 さらに言うなら、携帯マルチメディア放送自体が成功するかどうかを懸念する声もある。というのも、同種のサービスとして、モバイルによる衛星放送「モバHO!」を展開していたモバイル放送が、加入者の不調で昨年終了したという前例があるからだ。メーカー単独のサポートにとどまったモバイル放送と異なり、mmbiは携帯電話事業者のバックアップがあるという点が強みとなるものの、すでにワンセグによる無料放送が浸透している中、有料の放送サービスがユーザーに受け入れられるかどうかは未知数だ。
 いずれにせよ、今回の決定により、難航していた携帯マルチメディア放送がようやく動き出すこととなる。“地デジ後”の貴重な周波数帯を有効利用するという意味でも、今後どのようなサービス展開をしていくのか、成否を見守っていく必要があるだろう。



iPad人気に陰り 「値段高い」「今の端末で十分」
発売以来ブームを巻き起こした、米アップルの多機能携帯端末「iPad」。ノートパソコン部門で売り上げ上位を独占していたが、ここにきて首位から陥落、勢いが落ちてきたようだ。
各種調査では、「価格が高い」「今持っている機器で十分」とiPad購入を敬遠する意見も出ている。パソコン(PC)の操作が複雑で使いこなせない人にこそiPad、との主張もあったが、主な利用者はPCを使いこなしている層だったことも分かってきた。
最も人気のモデルも4位に後退
iPhoneがiPadを「食う」
家電・デジタル製品のランキングサイト「BCNランキング」で、2010年9月13日~19日のノートPCの順位に変動が見られた。前週まで首位だったiPad Wi-Fi16ギガモデルが4位に転落した。ほかのモデルも、Wi-Fi64ギガは11位、Wi-Fi+3G64ギガが17位と軒並みトップ10圏外だ。
8月の月間ランキングでは、iPadが1~3位を独占。5月の発売以降「敵なし」だったが、人気にブレーキがかかってきたように思える。
カカクコムが、同サイトの登録ユーザー1万850人に対して8月に実施したiPad購入状況調査では、所有率は15.1%に達したという。年代別に見ると、最も高いのは30代の17.1%で、20代、40代と続く。主力の購買層は「PC世代」のようだ。一方で60代は10%、20代は8.6%と、所有率の割合は落ちる。
発売前後、タッチパネルで操作が楽なiPadは、PC操作になじまない高齢者や子どもにこそ便利に感じられると言われていた。実際に、生徒にiPadを配布した学校や、高齢者を対象とした「iPad講習」が話題に上がった。だが調査結果を見る限り、iPadの「使いやすさ」が、高齢者層や若年層にアピールして市場を開拓するまでには至っていないようだ。調査では50代、60代以上の所有者から、重さを不満に感じる意見も出た。
アイフォーン4買ったら使わなくなった
調査で「iPadを持っていない」と回答した人のうち、「購入の予定はない」が半数を上回る一方、購入の意思を示した割合は2割以下にとどまった。さらに、モバイル調査を手がけるネットエイジアがビジネスパーソンを対象に実施したアンケート調査でも、「iPad買わない」が7割近くを占めた。これを見ると、今後iPadの購買が飛躍的に伸びるとは考えにくそうだ。
いずれの調査でも、理由として上がったのが「価格が高い」と「今持っている端末で十分」の2点。特に後者の理由としては、「アイフォーン(iPhone)」のようなスマートフォンを持っていると、わざわざiPadを買う必要性を感じない人もいる。iPad発売後の2010年6月には、「アイフォーン4」が発売された。ネットでは、
「4買ってからpad使わなくなってしもた」
「iPhone4買うまではけっこう使ってたけど、最近は使わなくなったから売っ払ってMacBookPro買った」
と、iPadを持て余す書き込みが見られる。両方を使いこなそうとして、外出時用にポータブルWi-Fiを購入したり、自宅を無線LAN環境にしたりと出費がかさむケースもある。高額を理由にiPadを買わない人にとっては、購入後さらにお金がかかると分かればますます、「アイフォーンだけで十分」と考えるに違いない。
期待の電子書籍も、コンテンツがいまだに貧弱なままのiPad。新たな購買層に訴える材料が出ないままだと、バージョンアップを重ねるアイフォーンに「客」を取られて、結局「PC世代のおもちゃ」で終わってしまう皮肉な結果に陥る恐れもありそうだ。



米半導体、業績に減速懸念
インテルやAMD、7~9月下方修正 パソコン向け需要鈍化
 【シリコンバレー=岡田信行】米半導体大手の業績に減速感が出てきた。欧米市場でパソコンの販売がやや鈍化したことを背景に、インテルやアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が7~9月期の業績見通しを相次いで下方修正。世界の半導体需要は2009年初めを底に急回復してきたが、パソコンへの依存度が高い米国勢は回復ペースが鈍りそうだ。
 AMDは23日、7~9月期の売上高の見通しを修正した。従来予想では4~6月期の売上高16億5300万ドル(約1400億円)に比べ増収としてきた。西欧や米国など先進国市場でノート型パソコンの販売が伸び悩み、パソコン用半導体の需要が落ち込んだため「4~6月期に比べて1~4%下落する」とした。
 インテルも8月、7~9月期の売上高見通しを下方修正し、前年同期比15~19%増の108億~112億ドルとした。従来予想は19~28%増の112億~120億ドルだった。法人向けのパソコン販売は好調で、平均売価も上がっているが、個人向け需要が不透明感を増し、業績に影を落とした。
 AMDとインテルはパソコンの頭脳に当たるMPU(超小型演算処理装置)の大手。2社で世界のパソコン用MPUのほぼすべてを供給しており、パソコン需要の鈍化が業績を直撃した形だ。
 パソコンに載る画像処理半導体(GPU)の世界最大手エヌビディアも同様だ。8月に発表した5~7月期決算は、売上高が前年同期比4%増の8億1120万ドル。最終損益は1億4096万ドルの赤字と赤字転落した。「環境が急変し、欧州と中国でパソコン需要が鈍化した」(ジェンスン・フアン最高経営責任者=CEO)ためという。
 米調査会社ガートナーがまとめた10年通年の世界のパソコン出荷台数見通しは前年比19.2%増の3億6780万台。5月時点では22%増を見込んでいたが、米国や欧州の景気先行き懸念もあり、下方修正されている。
 主にパソコンに搭載される半導体メモリーのDRAMを手掛けるサムスン電子、南亜科技など韓国、台湾のメーカーには現時点では業績修正などの動きはない。ただ、DRAM価格は下落に転じており、李健熙(イ・ゴンヒ)サムスン電子会長は「(半導体市況を)来年は心配している」と語る。
 一方で、半導体需要全体は当面堅調に推移するとの見方も多い。米国半導体工業会(SIA)の調査では、7月の世界半導体売上高は前年同月比37%増の252億4000万ドルで過去最高だった。半導体は高機能携帯電話(スマートフォン)向けなどに用途が拡大しており、環境変化に対応できるか否かでメーカーの二極化も進みそうだ。



レアアースは泥か宝か 中国外交の武器の正体
 尖閣諸島をめぐる摩擦が強まり、中国がさまざまな形で日本に圧力をかけている。中国がレアアース(希土類)を禁輸したとの情報をめぐり、日本政府は調査に追われた。
 地球上のどこにでもあるはずの「土」が、なぜ外交の武器になるのか。中国の戦略的外交のカラクリを解読するには、この鉱物の正体を知る必要がある。
 ひとくくりに希土類と呼ばれるが、本当は17種類の異なる鉱物がある。それぞれ用途も価値も違い、採れる量にも大きな差がある。
 ハイブリッド車や家電のモーターに使うネオジム、ジスプロシウムの名前は耳にすることが多い。この2つは省エネ製品に欠かせないが、使い方はごく微量を鉄に添加するだけ。高性能を引き出す“隠し味”だから大量には要らない。
 対照的に、隠れた需要が大きい希土類がある。セリウムは車やビルの紫外線防止ガラス、排ガス触媒、ガラスや半導体の研磨剤、照明の蛍光体などに使う。
 ランタンは触媒、光学レンズ、石油精製、電子部品に用途が広がる。いずれも製品の主材料として量が必要な使い方だ。
 どの元素を、どんな用途に使うか。その情報自体がノウハウであり、ほとんどが企業秘密。このため、中国の輸出制限で誰が困っているかは見えにくい。現実には、匿名企業の声なき悲鳴が満ちあふれている。
 中国はこうした日本の産業界の痛点を、巧みに突いたといえるだろう。だが、供給の9割を中国に依存する希土類のいびつな市場構造が、いつまでも続くわけではない。
 独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、低コストで採掘できる鉱脈をベトナムで発見した。詳しい場所は秘密という。現在は豊田通商と双日の共同によるベトナム側との採掘権の交渉が大詰めを迎えている。
 以前は世界最大だった米国西部のマウンテン・パス鉱山でも、米政府の支援で操業再開の準備が進んでいる。オーストラリア西部のマウント・ウェルド鉱山も採掘の開始が近い。
 世界各地で生産が本格化する2012年には、希土類の供給は潤沢になる。中国の市場支配が続くのは、あと1年と考えてよい。圧力手段としての有効期限を知っているからこそ、中国は、その効力を今、使おうとしているのではないか。
 あえて中国の急速な動きを「焦り」と解釈すれば、外交戦略の裏側にある本音が見えてくる。圧力をかけて手に入れたい“果実”が、思わぬところにある。
 今年1月、中国は外国の省エネ車メーカーに対する市場への参入規則を改訂した。合弁企業での現地生産を認める審査基準として、駆動装置の中核技術の開示や、中国側による設計変更の権利などを定めた。
 狙いはトヨタ自動車のハイブリッド技術だろう。同社が最新型「プリウス」の吉林省長春での生産を予定しているからだ。トヨタが中国当局に計画を申請したのが2月。審査結果を待つ間に希土類の輸出制限が始まり、同社に部品供給する無数の企業群を、じわじわと締め上げていった。
 あぶり出されて泥沼にはまるか。巨大市場を断念するか。日本の貴重な資産である企業の技術を守るのは、政府の外交力しかない。



日経社説
途上国援助で世界に仲間をつくれ
 リーマン・ショックに始まる世界的な金融危機の余波で、先進国による途上国の支援が滞っている。厳しい財政制約の中で、日本をはじめとする先進国は新たな支援策のあり方を問われている。
 ニューヨークで開いた「国連ミレニアム開発目標」の首脳会議で、オバマ米大統領は、支援対象を民主化や汚職撲滅、投資環境の改善に取り組む国に絞る方針を示した。中国やブラジルなどの新興経済大国が、資金力を背景に、一部の途上国への影響力を強めている危機感がある。
 特に中国は、エネルギーや鉱物資源が豊富なアフリカ諸国に活発に支援外交を繰り広げ、緊密な関係を築きつつある。これに対し、先進国の政府開発援助(ODA)の金額は、国連が求める国民総所得の0.7%を大きく下回り、2009年度は平均0.48%にとどまった。民主主義や市場原理などの価値観を共有する先進国が、途上国への発言力を低下させている現実を直視すべきだ。
 2000年に定めた国連ミレニアム開発目標は、15年間で貧困と飢餓を半減し、初等教育を完全に普及させるなど、目標を項目別に明確に掲げている。このまま先進国が支援を減らし続ければ、5年後に迫る期限までの目標達成はおぼつかない。
 途上国の人々の生活基盤が安定しない限り、テロの脅威など世界の平和と安定を阻む要因は、なくならない。途上国を政治体制の民主化や経済的な自立、行政の透明性の向上に導くのは、そうした国々を踏み台に経済発展した先進国の責務である。
 日本の2010年度のODA予算は6187億円で、世界1位だった1997年度のピークから半減し、現在は5位に転落している。途上国の間で、日本の存在感が薄れていくのが心配だ。
 菅直人首相は国連の首脳会合で、途上国向けに保健と教育分野で総額85億ドル(約7200億円)を拠出する支援策を発表した。地域コミュニティーでの人材養成を重視し、病院や学校、行政機関などが一体となって、途上国の社会の活力を高める構想だ。日本が得意とする「人づくり」を生かす考え方は評価できる。
 国際社会で日本の仲間をつくる上で、ODAは極めて重要な手段だ。尖閣諸島をめぐる日中摩擦のように国際世論を味方につけるべき局面では、日ごろの交流がものをいう。
 ODAの意義を安全保障の観点で見直し、ODA予算の増額を目指すべきである。そのためにも菅政権は必要度の低い予算の削減や、税の増収に道筋を示さなければならない。
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