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日本独自のネット新規格 総務省が実験、通信を効率選択
総務省はインターネットに代わる「新世代ネットワーク」について日本独自の新規格を構築する。NTTやNECなどと共同で、約300億円をかけて2011年度から実証実験を開始する。新世代ネットは通信速度が少なくとも今の10倍以上。用途に応じて通信手段が自動的に選択されるため、安全性や効率性が大幅に高まる。センサーやチップを使った情報管理が容易になるなど、あらゆるものがネットワークにつながるユビキタス社会のインフラが整う。(ユビキタスは3面「きょうのことば」参照)
総務省は5年間にわたって実証実験を進め、新世代ネットの規格づくりを急ぐ。NTTやNECのほか、日立製作所や情報通信研究機構が参加する。日本が強みを持つ光通信やセンサー技術などで国際標準化を狙う。20年度の実用化を目指す。
実証実験では高い安全性を確保できる専用線の整備、すべての情報を光信号のままで送れる「光パス」の開発などを進める。そのうえで、用途に応じて通信手段を自動で切り替える技術の実用化に取り組んでいく。
具体的には医療や金融取引、行政手続きなどで個人情報を扱う場合には専用線、高品質の3D映像を送信するときは大容量の「光パス」を使えるようにする。通常の通信には現在のIP(インターネットプロトコル)を使い、通信目的に合わせた柔軟な利用を可能にする。「高速道路や専用レーン、一般道から常に最適なルートを選び、渋滞を解消するイメージ」(総務省)だという。
新世代ネットでは通信速度の向上や用途別の効率的な通信によって、大量の情報を処理できるようになる。例えば、家電製品にチップを付けてネットワーク経由で消費電力を一括管理することが可能になる。農地にセンサーを取り付け、温度や湿度、土壌状態、野菜の生育状況を把握するシステムも構築できる。
多機能携帯電話(スマートフォン)などの普及で、既存のIP網は負荷が増えている。情報量は20年には300倍に増えるとみられ、効率的に情報をやり取りできる新たな通信網の整備が求められていた。
総務省によると、IP網で対応が可能な端末数は約100億台だが、新世代ネットでは1000億台以上と飛躍的に増える。センサーやチップを大量に利用しても、通信回線がパンクする恐れはなくなる。
独自ネット規格、「大容量」「安全」狙う
国際標準、欧米と競う
現在のネットは「IP(インターネットプロトコル)」と呼ぶ通信手順を使って情報を送る。小さなデータに区切り、あて先を付けて相手に送ることで、離れた場所にいる相手とも情報を送受信できる。ただIPは通信手順に無駄が多く、毎秒100メガ(メガは100万)ビットの通信回線でも性能を十分に発揮できない。映像のような大量のデータを送ると画質を保ちにくいなどの問題があった。
新世代ネットワークでは用途に応じて、データを小分けにせず連続して送ったり盗聴できないように仮想の専用線を設けたりして、大容量で安全性の高い通信を実現する。欧米でも政府の支援を受けた大学や通信会社などが研究開発を進めている。今後、通信技術の標準化に向けて国際団体で議論が本格化するとみられ、日本は基盤技術の確立を急いで欧米との規格化競争に競り勝ち、日本発の新規格の実現を狙う。
東芝、電子書籍配信に参入 まず米国で100万冊超
現地ベンチャーと提携
東芝は電子書籍配信サービスに参入する。第1弾として28日に米国で電子書籍サイトを開設する。端末だけでなく書籍の配信まで含めたサービスを手がけ、多様な収益源の確保につなげる。まず電子書籍の利用が比較的進んでいる米国で新規事業に進出を果たし、その後は日本や欧州でも同様のサイト立ち上げを視野に事業化を検討する。
米で電子書籍サイトの運営を手がけるIT(情報技術)ベンチャー、K―NFBリーディングテクノロジーと提携、コンテンツの提供を受ける。サイト名は「ToshibaBookPlace」。立ち上げ時点で約100万冊の無料書籍、数千冊の有料書籍の閲覧が可能だという。
利用者はK―NFBが提供する電子書籍閲覧用の無料ソフトウエア「Blio(ブリオ)」を端末にダウンロードしたうえで書籍を閲覧する仕組み。パソコンや多機能携帯端末など多様な端末から書籍を閲覧できる。
有料書籍の代金はクレジットカードで決済、一部が東芝の収益となる。分配比率などの詳細は明らかにしていない。
東芝は電子書籍配信サービスの開始に先立ち、小型パソコン「リブレットW100」を8月に発売したほか、年内をめどに欧州などで板状のタブレット端末「フォリオ100」を投入する。コンテンツ配信にも参入し、総合的なサービス体制の整備・構築を目指す。
ソフトなければ自分で作ろう! 電子書籍の“自炊”
せっかく電子書籍端末を手に入れたのに日本語ソフトが少ない。それなら手作りしてみよう-。米アップルの「iPad(アイパッド)」が話題を呼ぶ中、ユーザーの間で、本を裁断してスキャナーで内容を読み取り、自ら電子書籍化する動きが活発化している。名付けて「自炊」。ネット上で広がった俗語で、データを「自ら吸い込む」というイメージにちなんだ語呂合わせとされる。自炊人気とともにスキャナーなどの関連市場も急拡大してきた。
東京・池袋のビックカメラ池袋本店のパソコン館では今夏、スキャナーの販売コーナーに「自炊」の実演コーナーを設置した。パソコンやアイパッドなども展示し、わずか数分で作れる電子書籍の便利さを顧客にアピールしている。
「これまではオフィスで使うというビジネスマンが多かったが、今や老若男女を問わず、いろんな人が訪れます」と同店の野口大輔主任。スキャナーで書籍を取り込めば、自宅での本の置き場所にも困らず、電車内など、どこでも端末で本を読めるのが魅力という。
自炊人気の背景には、アイパッドや米アマゾンの「キンドル」などに対応した日本語ソフトが少ないという事情がある。今のところ国内で流通している電子書籍は同人誌などのマンガが多く、一般書籍や雑誌が本格普及するには、もうしばらくかかりそうだ。このため所有する書籍をデジタル化して楽しむ動きが広がっているとみられる。
自炊は、5月のアイパッド発売と歩調を合わせて広がっており、スキャナーの販売台数も急増。国内シェア首位で富士通傘下の「PFU」の7月の販売台数は前年同月比2・5倍、8月も約2倍となった。同社広報も「ここまで売れるとは予想していなかった」と驚きを隠さない。
市場調査会社BCNによると、業界全体の販売台数も6月以降、5割以上の大幅増で推移。「自炊に適した機種として、ページを連続して読み取れる高価格モデルが売れていることが特徴」(BCN)という。裁断機の販売も好調だ。
自炊を代行する業者も出てきた。例えばブックスキャン(東京都世田谷区)は1冊当たり100円から請け負う低価格サービスが売り物。1日当たり1千冊以上を請け負う業者も珍しくないという。ただ、一部には著作権手続きを取っていない業者や、「裁断後、廃棄する書籍を転売する新規業者もあるようだ」(ブックスキャン)といい、著作権法に触れる可能性も指摘されている。
11月からは前年より3-4割減 補助金終了、深刻な新車販売減
今後の登録車の新車市場は、2009年の同じ時期に比べて10~12月は3分の2程度の台数、2011年1~3月は2割程度低い台数になるとトヨタ自動車が予測している。メーカーの中には3-4割減という厳しい見方も出ている。エコカー補助金制度の終了により、2010年10月以降の新車市場は大幅な需要に見舞われそうだ。
自動車メーカー各社の幹部たちが漏らした2010年度下期(10年10月~11年3月)の新車市場見通しは、前年同期比3割減とする予測が多い。なかには4割減という予想まで飛び出している。販売現場で7月から目立ち始めたエコカー補助金制度が終了する前の駆け込み需要。その勢いが補助金制度終了間際まで増し続けたことで、下期の新車需要の多くを先食いしたと感じているためだ。
補助金活用できずに成約した購入者に10万円
政府による低燃費車の新車購入支援制度を導入した欧米の事例を参考に、制度終了後は新車市場が大きく落ち込むとの見方が主流となっている。
一方で「下期は1割程度の減少に止まる」とみる自動車メーカー幹部もいる。
独アウディの販売担当役員も日本の下期新車市場を前年の1割減と予測した。欧米の新車購入支援制度と日本のエコカー補助金制度では終了時期が違い、世界経済の状況も大きく異なる。エコカーに対する減税措置もある。このため日本メーカーが危惧するほどの販売減は起きない、という。
だがメーカー各社がエコカー補助金制度の終了前まで、消費者に対して駆け込みを煽るような宣伝を続けたことが不安要素として残っている。制度終了とともにエコカー減税に宣伝内容を切り替えたメーカーがある一方で、フォルクスワーゲンのように9月末までに補助金制度対象車を成約した場合は10万円の購入資金をプレゼントする販売施策をとった輸入元も現れた。
輸入車は販売店が新車を受注しても日本に在庫車がない場合がある。量産車であっても物流の問題で、本国に発注してから購入者のもとに納車するまで2カ月程度かかることがあり、売れるのに売る車がない状況を打開するための苦肉の策といえる。
日産自動車は、新型マーチを生産するタイ工場をフル稼働しても、納期が補助金制度終了まで間に合わない状況となった。この新型マーチとエコカー補助金制度の終了前に発売を間に合わせた新型エルグランド、さらに新車攻勢の先陣を切ったジュークも需要に対して供給が不足する状態となった。この3車種の販売の勢いを持続するため、補助金制度を活用できずに9月末までに成約した購入者には、販売店と折半で10万円を提供する販売促進策を採用した。
メーカーやインポーターが独自の購入支援金の提供や販売店経由となる販売奨励金を増やしたことなどにより、9月末までに新車登録が間に合わない受注台数も膨らんだ状態となっている。エコカーへの減税と補助金の恩恵を最大限に享受してきたプリウスなどのハイブリッド車をはじめ、各メーカーに新車の受注残はあるわけで、10月以降の新車市場で実際に大きな減少になるのは、11月以降とみられている。
トヨタは10月以降の販売奨励金を増やす
下期の新車市場の落ち込みを少なくする方策は、10月のうちに「消費者がなぜ今になってから車を買うのかと周囲から思われないようにする」ための雰囲気づくりを自動車業界が一体となって取り組むこととされる。このため各メーカーは、今後の販売施策の柱に、エコカー減税がまだあること強調していくことにした。
もちろんそれだけで消費者の買い得感を維持することは難しい。そこで焦点となるのは販売現場での値引き幅の増加や、メーカーが独自に設定する新車買い替え支援金の提供、オプションプレゼントなどとなる。
トヨタは10月以降の販売奨励金を増やすことにしたが、円高が続く状況下で全メーカーが足並みを揃えて販売奨励金の増額に踏み切ることは難しい。リーマンショック後の販売減による経営危機を政府支援で乗り越えることができたディーラーも、市場の先行きが見通せないことで値引きには抵抗がある。エコカー減税終了後に生き抜くための原資も残しておかなければならない。
だがメーカーやディーラーが一番恐れているのは、自銘柄の車に乗るユーザーが他銘柄の車に乗り換え、新車代替母体が縮小することだ。買い得感がない銘柄は、他ディーラーにとっての草刈場となる可能性が高い。母体の縮小は車が売れない時期の経営を支える整備台数の減少にも繋がっていく。
各社とも値引き合戦による消耗戦への突入だけは避けたいが、これまでエコカーの減税と補助金の効果を利用して値引きや販売奨励金の金額を抑えてきた分を、放出しなければならい時期が来ると考えている。
それまでの間、エコカー補助金制度終了に伴う反動減を低く抑える当面の方策は、補助金制度が終わってもエコカー減税が継続していることを訴え、新車に買い替えるタイミングが終わったわけではないことを消費者に浸透させるしかない。
補正予算最大4・6兆円、玄葉戦略相見通し
政府・民主党は25日、2010年度補正予算案を10月1日召集の臨時国会に提出する方針を固めた。
予算規模は3・7兆~4・6兆円を想定しており、菅首相が27日の政府・民主党首脳会議で編成を指示する。
玄葉国家戦略相(民主党政調会長)は25日、仙台市内で行われた民主党衆院議員の会合で、補正予算案の規模について、「3・7から3・8兆円になる。他党が協力し、(09年度決算の)剰余金を使えるような特例法を通してくれれば4・5から4・6兆円になる」と述べた。
財務省筋によると、補正予算の財源は、〈1〉09年度一般会計決算の剰余金のうち0・8兆円〈2〉10年度の税収が当初見通しを上回った分〈3〉10年度の金利が想定を下回ったため浮いた国債費――などを充てるため、国債発行に頼らずに「3・7~3・8兆円」が捻出(ねんしゅつ)できるという。このほかに国債の償還に充てられる剰余金が約0・8兆円あり、使途変更の法改正ができれば予算の上積みが可能になる。
日中摩擦、国会運営に影 野党攻勢、補正審議停滞も
菅直人首相は25日夜、ニューヨークでの国連総会など一連の外交日程を終えて帰国した。参院で過半数に満たない与党は10月1日召集予定の臨時国会で野党との連携を探る。首相は4日からのアジア欧州会議(ASEM)首脳会議への出席を見送り外交より内政優先の安全策を選んだはずだったが、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を巡る対中外交で大きく失点。野党は攻勢を強めており、菅改造内閣の国会運営は出だしから厳しい局面を迎える。
「臨時国会では野党の理解を得ながら経済対策に本格的に取り組んでいきたい」。首相は24日、ニューヨークでの記者会見でこう語った。帰国後は羽田空港から首相公邸に直行し、留守を預かった仙谷由人官房長官らの報告を受けた。出席者によると「総理は尖閣のことは心配していない様子だった」という。
しかし、今後の展開次第では臨時国会が中国漁船衝突事件一色になる可能性もある。与野党連携のきっかけとなるはずの補正審議もつまずけば、政権運営がたちどころに行き詰まる危険性もはらんでいる。
中国漁船衝突事件を巡る政府の対応には、与野党双方に「外交の敗北」との声があり、野党に格好の攻撃材料を与えた形だ。那覇地検の次席検事ら関係者の国会招致を求める動きもあり、補正予算案を巡る与野党協議の機運はそがれそうだ。
与党では民主党の松原仁、中津川博郷両氏らが中国人船長の釈放に抗議。鉢呂吉雄国会対策委員長は25日、都内で記者団に「司法当局、検察の判断だ」としたうえで「国会の場で説明する必要がある」と語った。
野党では自民党の谷垣禎一総裁が京都市内での講演で「問題を深刻化させないことが一番大事。直ちに(中国人船長らを)国外退去させた方が良かった。最初の選択が間違っていた」と政府の対応を批判。福田康夫元首相も「何も考えていなかったというしかない。もっと大局を見て判断していくべきだ」と述べた。日中友好議員連盟会長の高村正彦元外相は「何ら下交渉もしないで釈放し、強烈な抗議を表明されたのは外交上の失態だ」とこき下ろした。
菅首相が釈放への政治介入を否定したことに対して、高村氏は「本当だとは思わない。なぜ政府がうそをつくかといえば説明責任を果たしたくないからだろう」と語った。
自民党の大島理森副総裁は25日、佐賀市で開かれた同党佐賀県連大会で、10月1日召集の臨時国会で「参考人招致か証人喚問で那覇地検の次席検事を呼び、政府としてプロセスを明らかにすべきだ」と主張。共産党の志位和夫委員長は「国民に納得のいく説明を求める」と述べた。
日経社説
リチウム確保に出遅れるな
電気自動車の電池向けに需要拡大が見込まれる希少金属(レアメタル)のリチウムについて、韓国はボリビアが持つ資源の産業化や研究開発への協力を強めることに合意した。ボリビアの資源開発には日本も協力を提案しているが、先を越された形だ。成長産業の競争力を左右する資源確保で対応の遅れは許されない。
リチウムは経済産業省が希少金属と定めた31種類の金属のひとつだ。電気自動車の普及に伴い、2020年には電池向けの需要が09年の5倍以上に増え、15年にも供給不足に陥るとの予測がある。
現在の主産国は日本の輸入量の8割を占めるチリで、最大手のSQM社が生産能力の増強と販売シェアの維持を狙った値下げを打ち出し、日本のドル建て輸入価格も昨年夏の高値に比べ3割下がった。
中国の輸出規制で高騰している希土類に比べれば、価格高騰や供給不足への対応は緊急の課題ではないように見える。しかし資源戦略の重要度は足元の需給や価格高騰だけが基準ではない。その資源の需要が今後どれくらい伸び、それが日本の産業競争力にどれだけ不可欠なものか、という位置付けがカギを握る。
リチウムイオン電池の分野では三洋電機と同社の完全子会社化を進めるパナソニック、ソニーなど日本の大手が2000年に7割以上の世界販売量を持っていた。ところが、昨年は韓国のサムスン、LGグループが積極的な設備投資で世界シェアを計3割以上に伸ばしている。
韓国は外交攻勢でボリビアのモラレス大統領をソウルに招き、李明博大統領との覚書調印にこぎつけた。その資源戦略は、リチウムイオン電池を中心にした2次電池の世界シェアを5割まで引き上げる電子産業の成長戦略と表裏一体だ。
リチウムはチリ、アルゼンチンでも増産や開発計画が進む。しかし世界最大の埋蔵量を持つボリビアでの出遅れを反省しなければ、今後の資源確保の場面でも同じ失敗を繰り返しかねない。
海外の資源確保は、もはや単にカネを出せば買えるという時代ではなくなっている。政府には外交と開発協力の提案によって、民間企業の資源確保をけん引してもらいたい。
総務省はインターネットに代わる「新世代ネットワーク」について日本独自の新規格を構築する。NTTやNECなどと共同で、約300億円をかけて2011年度から実証実験を開始する。新世代ネットは通信速度が少なくとも今の10倍以上。用途に応じて通信手段が自動的に選択されるため、安全性や効率性が大幅に高まる。センサーやチップを使った情報管理が容易になるなど、あらゆるものがネットワークにつながるユビキタス社会のインフラが整う。(ユビキタスは3面「きょうのことば」参照)
総務省は5年間にわたって実証実験を進め、新世代ネットの規格づくりを急ぐ。NTTやNECのほか、日立製作所や情報通信研究機構が参加する。日本が強みを持つ光通信やセンサー技術などで国際標準化を狙う。20年度の実用化を目指す。
実証実験では高い安全性を確保できる専用線の整備、すべての情報を光信号のままで送れる「光パス」の開発などを進める。そのうえで、用途に応じて通信手段を自動で切り替える技術の実用化に取り組んでいく。
具体的には医療や金融取引、行政手続きなどで個人情報を扱う場合には専用線、高品質の3D映像を送信するときは大容量の「光パス」を使えるようにする。通常の通信には現在のIP(インターネットプロトコル)を使い、通信目的に合わせた柔軟な利用を可能にする。「高速道路や専用レーン、一般道から常に最適なルートを選び、渋滞を解消するイメージ」(総務省)だという。
新世代ネットでは通信速度の向上や用途別の効率的な通信によって、大量の情報を処理できるようになる。例えば、家電製品にチップを付けてネットワーク経由で消費電力を一括管理することが可能になる。農地にセンサーを取り付け、温度や湿度、土壌状態、野菜の生育状況を把握するシステムも構築できる。
多機能携帯電話(スマートフォン)などの普及で、既存のIP網は負荷が増えている。情報量は20年には300倍に増えるとみられ、効率的に情報をやり取りできる新たな通信網の整備が求められていた。
総務省によると、IP網で対応が可能な端末数は約100億台だが、新世代ネットでは1000億台以上と飛躍的に増える。センサーやチップを大量に利用しても、通信回線がパンクする恐れはなくなる。
独自ネット規格、「大容量」「安全」狙う
国際標準、欧米と競う
現在のネットは「IP(インターネットプロトコル)」と呼ぶ通信手順を使って情報を送る。小さなデータに区切り、あて先を付けて相手に送ることで、離れた場所にいる相手とも情報を送受信できる。ただIPは通信手順に無駄が多く、毎秒100メガ(メガは100万)ビットの通信回線でも性能を十分に発揮できない。映像のような大量のデータを送ると画質を保ちにくいなどの問題があった。
新世代ネットワークでは用途に応じて、データを小分けにせず連続して送ったり盗聴できないように仮想の専用線を設けたりして、大容量で安全性の高い通信を実現する。欧米でも政府の支援を受けた大学や通信会社などが研究開発を進めている。今後、通信技術の標準化に向けて国際団体で議論が本格化するとみられ、日本は基盤技術の確立を急いで欧米との規格化競争に競り勝ち、日本発の新規格の実現を狙う。
東芝、電子書籍配信に参入 まず米国で100万冊超
現地ベンチャーと提携
東芝は電子書籍配信サービスに参入する。第1弾として28日に米国で電子書籍サイトを開設する。端末だけでなく書籍の配信まで含めたサービスを手がけ、多様な収益源の確保につなげる。まず電子書籍の利用が比較的進んでいる米国で新規事業に進出を果たし、その後は日本や欧州でも同様のサイト立ち上げを視野に事業化を検討する。
米で電子書籍サイトの運営を手がけるIT(情報技術)ベンチャー、K―NFBリーディングテクノロジーと提携、コンテンツの提供を受ける。サイト名は「ToshibaBookPlace」。立ち上げ時点で約100万冊の無料書籍、数千冊の有料書籍の閲覧が可能だという。
利用者はK―NFBが提供する電子書籍閲覧用の無料ソフトウエア「Blio(ブリオ)」を端末にダウンロードしたうえで書籍を閲覧する仕組み。パソコンや多機能携帯端末など多様な端末から書籍を閲覧できる。
有料書籍の代金はクレジットカードで決済、一部が東芝の収益となる。分配比率などの詳細は明らかにしていない。
東芝は電子書籍配信サービスの開始に先立ち、小型パソコン「リブレットW100」を8月に発売したほか、年内をめどに欧州などで板状のタブレット端末「フォリオ100」を投入する。コンテンツ配信にも参入し、総合的なサービス体制の整備・構築を目指す。
ソフトなければ自分で作ろう! 電子書籍の“自炊”
せっかく電子書籍端末を手に入れたのに日本語ソフトが少ない。それなら手作りしてみよう-。米アップルの「iPad(アイパッド)」が話題を呼ぶ中、ユーザーの間で、本を裁断してスキャナーで内容を読み取り、自ら電子書籍化する動きが活発化している。名付けて「自炊」。ネット上で広がった俗語で、データを「自ら吸い込む」というイメージにちなんだ語呂合わせとされる。自炊人気とともにスキャナーなどの関連市場も急拡大してきた。
東京・池袋のビックカメラ池袋本店のパソコン館では今夏、スキャナーの販売コーナーに「自炊」の実演コーナーを設置した。パソコンやアイパッドなども展示し、わずか数分で作れる電子書籍の便利さを顧客にアピールしている。
「これまではオフィスで使うというビジネスマンが多かったが、今や老若男女を問わず、いろんな人が訪れます」と同店の野口大輔主任。スキャナーで書籍を取り込めば、自宅での本の置き場所にも困らず、電車内など、どこでも端末で本を読めるのが魅力という。
自炊人気の背景には、アイパッドや米アマゾンの「キンドル」などに対応した日本語ソフトが少ないという事情がある。今のところ国内で流通している電子書籍は同人誌などのマンガが多く、一般書籍や雑誌が本格普及するには、もうしばらくかかりそうだ。このため所有する書籍をデジタル化して楽しむ動きが広がっているとみられる。
自炊は、5月のアイパッド発売と歩調を合わせて広がっており、スキャナーの販売台数も急増。国内シェア首位で富士通傘下の「PFU」の7月の販売台数は前年同月比2・5倍、8月も約2倍となった。同社広報も「ここまで売れるとは予想していなかった」と驚きを隠さない。
市場調査会社BCNによると、業界全体の販売台数も6月以降、5割以上の大幅増で推移。「自炊に適した機種として、ページを連続して読み取れる高価格モデルが売れていることが特徴」(BCN)という。裁断機の販売も好調だ。
自炊を代行する業者も出てきた。例えばブックスキャン(東京都世田谷区)は1冊当たり100円から請け負う低価格サービスが売り物。1日当たり1千冊以上を請け負う業者も珍しくないという。ただ、一部には著作権手続きを取っていない業者や、「裁断後、廃棄する書籍を転売する新規業者もあるようだ」(ブックスキャン)といい、著作権法に触れる可能性も指摘されている。
11月からは前年より3-4割減 補助金終了、深刻な新車販売減
今後の登録車の新車市場は、2009年の同じ時期に比べて10~12月は3分の2程度の台数、2011年1~3月は2割程度低い台数になるとトヨタ自動車が予測している。メーカーの中には3-4割減という厳しい見方も出ている。エコカー補助金制度の終了により、2010年10月以降の新車市場は大幅な需要に見舞われそうだ。
自動車メーカー各社の幹部たちが漏らした2010年度下期(10年10月~11年3月)の新車市場見通しは、前年同期比3割減とする予測が多い。なかには4割減という予想まで飛び出している。販売現場で7月から目立ち始めたエコカー補助金制度が終了する前の駆け込み需要。その勢いが補助金制度終了間際まで増し続けたことで、下期の新車需要の多くを先食いしたと感じているためだ。
補助金活用できずに成約した購入者に10万円
政府による低燃費車の新車購入支援制度を導入した欧米の事例を参考に、制度終了後は新車市場が大きく落ち込むとの見方が主流となっている。
一方で「下期は1割程度の減少に止まる」とみる自動車メーカー幹部もいる。
独アウディの販売担当役員も日本の下期新車市場を前年の1割減と予測した。欧米の新車購入支援制度と日本のエコカー補助金制度では終了時期が違い、世界経済の状況も大きく異なる。エコカーに対する減税措置もある。このため日本メーカーが危惧するほどの販売減は起きない、という。
だがメーカー各社がエコカー補助金制度の終了前まで、消費者に対して駆け込みを煽るような宣伝を続けたことが不安要素として残っている。制度終了とともにエコカー減税に宣伝内容を切り替えたメーカーがある一方で、フォルクスワーゲンのように9月末までに補助金制度対象車を成約した場合は10万円の購入資金をプレゼントする販売施策をとった輸入元も現れた。
輸入車は販売店が新車を受注しても日本に在庫車がない場合がある。量産車であっても物流の問題で、本国に発注してから購入者のもとに納車するまで2カ月程度かかることがあり、売れるのに売る車がない状況を打開するための苦肉の策といえる。
日産自動車は、新型マーチを生産するタイ工場をフル稼働しても、納期が補助金制度終了まで間に合わない状況となった。この新型マーチとエコカー補助金制度の終了前に発売を間に合わせた新型エルグランド、さらに新車攻勢の先陣を切ったジュークも需要に対して供給が不足する状態となった。この3車種の販売の勢いを持続するため、補助金制度を活用できずに9月末までに成約した購入者には、販売店と折半で10万円を提供する販売促進策を採用した。
メーカーやインポーターが独自の購入支援金の提供や販売店経由となる販売奨励金を増やしたことなどにより、9月末までに新車登録が間に合わない受注台数も膨らんだ状態となっている。エコカーへの減税と補助金の恩恵を最大限に享受してきたプリウスなどのハイブリッド車をはじめ、各メーカーに新車の受注残はあるわけで、10月以降の新車市場で実際に大きな減少になるのは、11月以降とみられている。
トヨタは10月以降の販売奨励金を増やす
下期の新車市場の落ち込みを少なくする方策は、10月のうちに「消費者がなぜ今になってから車を買うのかと周囲から思われないようにする」ための雰囲気づくりを自動車業界が一体となって取り組むこととされる。このため各メーカーは、今後の販売施策の柱に、エコカー減税がまだあること強調していくことにした。
もちろんそれだけで消費者の買い得感を維持することは難しい。そこで焦点となるのは販売現場での値引き幅の増加や、メーカーが独自に設定する新車買い替え支援金の提供、オプションプレゼントなどとなる。
トヨタは10月以降の販売奨励金を増やすことにしたが、円高が続く状況下で全メーカーが足並みを揃えて販売奨励金の増額に踏み切ることは難しい。リーマンショック後の販売減による経営危機を政府支援で乗り越えることができたディーラーも、市場の先行きが見通せないことで値引きには抵抗がある。エコカー減税終了後に生き抜くための原資も残しておかなければならない。
だがメーカーやディーラーが一番恐れているのは、自銘柄の車に乗るユーザーが他銘柄の車に乗り換え、新車代替母体が縮小することだ。買い得感がない銘柄は、他ディーラーにとっての草刈場となる可能性が高い。母体の縮小は車が売れない時期の経営を支える整備台数の減少にも繋がっていく。
各社とも値引き合戦による消耗戦への突入だけは避けたいが、これまでエコカーの減税と補助金の効果を利用して値引きや販売奨励金の金額を抑えてきた分を、放出しなければならい時期が来ると考えている。
それまでの間、エコカー補助金制度終了に伴う反動減を低く抑える当面の方策は、補助金制度が終わってもエコカー減税が継続していることを訴え、新車に買い替えるタイミングが終わったわけではないことを消費者に浸透させるしかない。
補正予算最大4・6兆円、玄葉戦略相見通し
政府・民主党は25日、2010年度補正予算案を10月1日召集の臨時国会に提出する方針を固めた。
予算規模は3・7兆~4・6兆円を想定しており、菅首相が27日の政府・民主党首脳会議で編成を指示する。
玄葉国家戦略相(民主党政調会長)は25日、仙台市内で行われた民主党衆院議員の会合で、補正予算案の規模について、「3・7から3・8兆円になる。他党が協力し、(09年度決算の)剰余金を使えるような特例法を通してくれれば4・5から4・6兆円になる」と述べた。
財務省筋によると、補正予算の財源は、〈1〉09年度一般会計決算の剰余金のうち0・8兆円〈2〉10年度の税収が当初見通しを上回った分〈3〉10年度の金利が想定を下回ったため浮いた国債費――などを充てるため、国債発行に頼らずに「3・7~3・8兆円」が捻出(ねんしゅつ)できるという。このほかに国債の償還に充てられる剰余金が約0・8兆円あり、使途変更の法改正ができれば予算の上積みが可能になる。
日中摩擦、国会運営に影 野党攻勢、補正審議停滞も
菅直人首相は25日夜、ニューヨークでの国連総会など一連の外交日程を終えて帰国した。参院で過半数に満たない与党は10月1日召集予定の臨時国会で野党との連携を探る。首相は4日からのアジア欧州会議(ASEM)首脳会議への出席を見送り外交より内政優先の安全策を選んだはずだったが、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を巡る対中外交で大きく失点。野党は攻勢を強めており、菅改造内閣の国会運営は出だしから厳しい局面を迎える。
「臨時国会では野党の理解を得ながら経済対策に本格的に取り組んでいきたい」。首相は24日、ニューヨークでの記者会見でこう語った。帰国後は羽田空港から首相公邸に直行し、留守を預かった仙谷由人官房長官らの報告を受けた。出席者によると「総理は尖閣のことは心配していない様子だった」という。
しかし、今後の展開次第では臨時国会が中国漁船衝突事件一色になる可能性もある。与野党連携のきっかけとなるはずの補正審議もつまずけば、政権運営がたちどころに行き詰まる危険性もはらんでいる。
中国漁船衝突事件を巡る政府の対応には、与野党双方に「外交の敗北」との声があり、野党に格好の攻撃材料を与えた形だ。那覇地検の次席検事ら関係者の国会招致を求める動きもあり、補正予算案を巡る与野党協議の機運はそがれそうだ。
与党では民主党の松原仁、中津川博郷両氏らが中国人船長の釈放に抗議。鉢呂吉雄国会対策委員長は25日、都内で記者団に「司法当局、検察の判断だ」としたうえで「国会の場で説明する必要がある」と語った。
野党では自民党の谷垣禎一総裁が京都市内での講演で「問題を深刻化させないことが一番大事。直ちに(中国人船長らを)国外退去させた方が良かった。最初の選択が間違っていた」と政府の対応を批判。福田康夫元首相も「何も考えていなかったというしかない。もっと大局を見て判断していくべきだ」と述べた。日中友好議員連盟会長の高村正彦元外相は「何ら下交渉もしないで釈放し、強烈な抗議を表明されたのは外交上の失態だ」とこき下ろした。
菅首相が釈放への政治介入を否定したことに対して、高村氏は「本当だとは思わない。なぜ政府がうそをつくかといえば説明責任を果たしたくないからだろう」と語った。
自民党の大島理森副総裁は25日、佐賀市で開かれた同党佐賀県連大会で、10月1日召集の臨時国会で「参考人招致か証人喚問で那覇地検の次席検事を呼び、政府としてプロセスを明らかにすべきだ」と主張。共産党の志位和夫委員長は「国民に納得のいく説明を求める」と述べた。
日経社説
リチウム確保に出遅れるな
電気自動車の電池向けに需要拡大が見込まれる希少金属(レアメタル)のリチウムについて、韓国はボリビアが持つ資源の産業化や研究開発への協力を強めることに合意した。ボリビアの資源開発には日本も協力を提案しているが、先を越された形だ。成長産業の競争力を左右する資源確保で対応の遅れは許されない。
リチウムは経済産業省が希少金属と定めた31種類の金属のひとつだ。電気自動車の普及に伴い、2020年には電池向けの需要が09年の5倍以上に増え、15年にも供給不足に陥るとの予測がある。
現在の主産国は日本の輸入量の8割を占めるチリで、最大手のSQM社が生産能力の増強と販売シェアの維持を狙った値下げを打ち出し、日本のドル建て輸入価格も昨年夏の高値に比べ3割下がった。
中国の輸出規制で高騰している希土類に比べれば、価格高騰や供給不足への対応は緊急の課題ではないように見える。しかし資源戦略の重要度は足元の需給や価格高騰だけが基準ではない。その資源の需要が今後どれくらい伸び、それが日本の産業競争力にどれだけ不可欠なものか、という位置付けがカギを握る。
リチウムイオン電池の分野では三洋電機と同社の完全子会社化を進めるパナソニック、ソニーなど日本の大手が2000年に7割以上の世界販売量を持っていた。ところが、昨年は韓国のサムスン、LGグループが積極的な設備投資で世界シェアを計3割以上に伸ばしている。
韓国は外交攻勢でボリビアのモラレス大統領をソウルに招き、李明博大統領との覚書調印にこぎつけた。その資源戦略は、リチウムイオン電池を中心にした2次電池の世界シェアを5割まで引き上げる電子産業の成長戦略と表裏一体だ。
リチウムはチリ、アルゼンチンでも増産や開発計画が進む。しかし世界最大の埋蔵量を持つボリビアでの出遅れを反省しなければ、今後の資源確保の場面でも同じ失敗を繰り返しかねない。
海外の資源確保は、もはや単にカネを出せば買えるという時代ではなくなっている。政府には外交と開発協力の提案によって、民間企業の資源確保をけん引してもらいたい。
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