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ソニー、シャープ工場経営参加断念…空洞化懸念
 ソニーが、シャープの持つ世界最大級の液晶テレビ用パネル合弁生産会社(大阪府堺市)への運営参加を見送る方針を固めたことが27日、明らかになった。
 合弁会社への追加出資をとりやめ、より低価格の台湾製品の調達比率を現在の約3割から5割程度に高める。円高が続くうえ、世界のテレビの売れ行きが減速しているためだ。かつて日本企業の独壇場だったパネル生産の海外への流出が加速することになり、シャープの経営戦略にも影響が出そうだ。
 ソニーとシャープは2009年7月に、両社にパネルを供給する合弁会社を設立することで合意し、同年10月から生産開始した。株式の約7%を持つソニーは、さらに11年4月末までに持ち株比率を最大34%まで高め、経営に本格関与する計画だった。
 しかし、ソニーの今年度のテレビ事業が赤字の見通しとなったことなどから、パネル調達計画も見直さざるを得なくなった。
 国内の薄型パネル生産は、製造業の数少ない成長分野として期待されていたが、国内液晶最大手のシャープすら、台湾勢との競争に苦しむ状況が鮮明になった。かつて半導体は日本企業が世界をリードしていたが、韓国などのメーカーに追い抜かれた。液晶パネルでも地盤沈下が進めば、国内雇用が失われ、日本の製造業の空洞化につながりかねない。
 堺工場は、甲子園球場33個分に相当する127万平方メートルの敷地に年1300万台分(42型換算)を生産する能力を持つ。



カプコンを脱藩した「鬼武者」稲船
 叩きあげ創業者の使い捨て経営に、見切りをつけた。ゲームづくりの雄が挑むリベンジとは。
 作家、村上龍がメルマガの編集長や電子書籍出版に挑戦するのはいい。でも、テレビ東京の経済人ドッコイショ番組「カンブリア宮殿」のキャスターはいただけない。悲しいかな、所詮は知ったかぶりだから、企業経営の本質を見抜けないのだ。
 8月2日放映の「駄菓子屋から世界企業へ 辻本憲三」編がそうだった。間口3間から始まる立志伝。綿菓子製造器、改造パチンコ台、インベーダーゲームと三段跳びでカプコンを創業し、ファミコンゲームから「ストリートファイター」や「バイオハザード」などのヒットで、スクウェア・エニックスと並ぶ家庭用ゲームソフト大手(東証・大証1部上場)にのし上がった。
 テレ東は6月にも「ワールドビジネスサテライト」で辻本を持ち上げている。「作れば売れる時代の終焉」と。8月の番組では、会長室で分厚い資料の数字と格闘する69歳の辻本の姿が映る。「現場よりも数字」とのナレーション。村上が「成功した経営者は現場主義が多いのですが、なぜ現場より数字なんですか」と尋ねると、あてにならないクリエーターの言い分より「数字のほうが安心」と会長は嬉々として答えた。
■三本指に入るヒットメーカー
 したり顔でうなずく村上。作家とはなんて鈍感な動物なのだろう。同社900人のゲーム開発部隊を統括し、20件以上のプロジェクトを指揮していた常務執行役員(開発統括本部長兼コンテンツ統括)稲船敬二(45)と創業者が抜き差しならなくなっていたのが感じとれないのだ。
 稲船は「ロックマン」「鬼武者」「モンスターハンター」「デッドライジング」などのヒット作を世に送り、日本のゲーム業界では「スーパーマリオ」の宮本茂、「メタルギア・ソリッド」の小島秀夫と並ぶスター三人衆の一人。番組では「どんな判断や、金をドブに捨てる気か!」と叫ぶシーンがちらっと映るが、嫌々だったという。手柄をすべて独り占めにする創業者に鼻白んでいたのだ。
 9月20日、米ニューヨーク・タイムズ紙に稲船の長文インタビューが載った。過去最高の194社が参加した9月の「東京ゲームショウ2010」を酷評している。「みんな、ひどいゲームをつくってる。日本は少なくとも5年は遅れた。コンソールで遊ぶ最後の世代のためにゲームをつくってるようなもんだ」と一刀両断。稲船はすでに独立するハラだった。
 9月27日、稲船は会長と会う。その時点までは、継続中のプロジェクトは独立後も外注の形で請け負う気でいた。ところが、飼い犬に手を噛まれたと思ったか、会長は数日後に小田民雄CFO(最高財務責任者)兼取締役と一井克彦常務執行役員(コンシューマエンターテインメント事業統括本部長)を呼び、「稲船とは一切契約をしない」と告げた。
 仰天したのは役員陣だ。稲船がいないと進行中のプロジェクトの8割に支障が出る。開発が軒並み保留か中止になったら、数十億円の損失を出しかねない(カプコン広報・IR室は本誌に「影響なし」と回答した)。ゲーム開発は1作品に3年かかるものなどザラで、影響は今後数年に及ぶかもしれない。二人は懸命にとりなしたが、会長の怒りは収まらない。息子の春弘社長も説得に加わったが、稲船と同年齢の引け目からか、途中で腰砕けになった。
 稲船の不満は「日本のゲームはかつて世界を制覇した。なのに、頑張ったクリエーターは報われない。一生懸命働くだけ損なんです。カプコンのようなパブリッシャーが、どんなに実力のあるデベロッパーでも下請け扱いして、裏切るようにロイヤリティーを値切る。夢がないから、ジリ貧になった」というものだ。
 結局、稲船は「カプコンではもうやることがない」と辞表を提出、10月下旬のコーポレート会議で受理された。28日のプレスリリースでは執行役員1人の昇格だけ発表し、稲船は29日に自身のブログで退社を告げた(正式退社は11月下旬)。
 稲船のカプコン社歴は23年。生え抜きの才能が失われたのは、これが初めてではない。「ストリートファイター」を開発した岡本吉起も、ハリウッドで映画化された「バイオハザード」の三上真司も、みな辻本に切られた。会長の持論は、クリエーターは放っておくと金食い虫になる、旬が過ぎたら使い捨て――。「開発部門で人を切ったら次々にヒットが生まれた」と胸を張っている。
 ゲームセンター回りの営業から叩きあげた創業者の恣意的人事やワンマン経営と、ゲーム開発の最先端でしのぎを削るクリエーターの相克というだけでは済まない。日本のシェアは凋落して今や15%程度、8割以上を海外勢に占められている。日本では50万本も売れればヒットだが、世界を狙うなら開発に40億円、宣伝に20億円はかかる。だが、年間最終利益65億円(11年3月期見込み)のカプコンではそのリスクに耐えられない。クリエーターやデベロッパーを締め上げるしかないのだ。
 将来、100億円単位の資本投下が必要になれば、ゲームソフトだけでの回収はムリ。映画やテレビやキャラクターグッズなどの複合ビジネスが必要だが、辻本にはビジネスモデルの飛躍ができない。
■辻本一族がクロス取引
 番組に映った会長室がいい例で、在庫と計画をにらめっこするシャイロック。ジュラルミンケースで運ぶ膨大な書類の山は、辻本がパソコンもインターネットも使えず、自分ではゲームができないことを示している。村上サン、気づきませんか。あれではオンラインゲームも3Dも分かりっこないことが。
 11月5日、大量保有報告書で辻本一族のクロス取引が明らかになった。業績低迷を見越した大幅売り越しと見られても仕方がない。
 クリエーターへの反感、「ジャッジメントは経営がする」と言い張るのも一種のコンプレックスか。カリフォルニア州ナパで私財94億円を投じてワイナリーのオーナーになったのも、成り上がりの道楽としか思えないが、「やっぱり一番といいますかね、いいものをつくらないとダメ」とテレ東は字幕を入れていた。
 勢い、過去にヒットした作品のシリーズ化に走り、タコツボ的な日本のゲームオタク向けに、そこそこ売れるだけのラインナップになる。あとは目いっぱい絞り取るだけ。かくてゲームは「ガラパゴス化」する。
 脱藩した稲船に「カプコンの組織と営業なしで大丈夫?」と聞いた。「僕は自分をゲームのコンセプターだと思っています。コンセプトだけきちっと守らせて、あとは自由裁量。ハンドリングには自信がある。大部隊を抱えなくても、海外のデベロッパーとの協業で開発できます。僕ひとりじゃない。仲間がいます」
 米紙が取り上げたように、むしろ彼は世界で注目されている。当面はパブリッシャーとの契約金で開発を始めるが、いずれはハリウッド並みにファンドを組んで資金調達、古巣にはできない複合プロジェクトを世界でヒットさせて「稲船ここにあり」を知らしめる気だ。すでに彼の盟友を通してハリウッドの大手映画ファンドとの出資交渉が大詰めを迎えている。コンセプトの原義は「懐妊」。稲船のコンセプトに、ゲーム斜陽国日本の明日がかかっている。(敬称略)



【産経主張】仙谷官房長官 「問責」可決の意味は重い
 総額5兆円規模の経済対策を盛り込んだ補正予算の成立に合わせ、自民党は仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議案を参院に提出し、野党の賛成多数で可決された。
 問責決議案の可決は、閣僚として不適格との判断を一院が示すもので、その意味は重い。
 とくに仙谷氏は問責の理由とされた尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件への対応で、中心的な役割を果たしてきた。自民党は「船長釈放は仙谷氏主導と考えざるを得ないのに、那覇地検の判断だと強弁している」「ビデオを長期間非公開とし、貴重な外交カードを失った」などと批判した。
 特に問題なのは、仙谷氏が自衛隊を「暴力装置」と発言したことだ。撤回や謝罪で済む問題ではない。これだけでも安全保障会議を構成する官房長官の職にふさわしくない。
 これらを考え合わせても、菅直人首相は「更迭はまったく考えていない」と言い続けるのか。
 衝突事件への対応は、菅政権が外交・安全保障政策で失態を繰り返した核心部分といえる。内閣の要となる仙谷氏の問責可決は、政権の統治能力や危機管理能力の欠如を突いており、首相の責任をも問うものである。
 北朝鮮による韓国砲撃をめぐる対応でも、首相や内閣の危機管理の欠如が露呈した。来年の通常国会で政権の立て直しを図りたいなら、野党が多数を持つ参院で信任を失った仙谷氏を続投させるのは困難だろう。今も継続している尖閣問題や朝鮮半島の危機に備えるため、どのような布陣を敷くかを考えるべきだ。
 内閣不信任案は法的拘束力があるが、問責決議案には拘束力がない。ただ、政治的な効果は大きい。平成10年には当時の額賀福志郎防衛庁長官が問責可決から約1カ月後に辞任に追い込まれた。福田康夫、麻生太郎両氏も首相問責決議案を可決されたが、結果的には2、3カ月後にそれぞれ退陣を余儀なくされた。
 自民党は問責決議案の可決に向けて野党をまとめたが、国会の自浄能力にかかわる最大の懸案である小沢一郎元民主党代表の国会招致は実現しなかった。
 国民の信を問うときが来たという判断はしなかったようだが、参院多数派のパワーをもっと生かしてほしかった。
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