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販売急減? 自動車に迫る「Xデー」
「クルマ販売は、喧伝されているほど良くない。見せかけにすぎないのが現実だ」。トヨタ自動車系の有力ディーラー幹部はこう打ち明ける。
一見すると国内の自動車販売は回復基調だ。日本自動車販売協会連合会によると、5月の登録車の販売は前年同月比28%増。10カ月連続で前年実績を上回った。2009年4月に始まり、一定の燃費基準を満たした新車を購入した場合に5万~25万円を受け取れる新車購入補助金、いわゆる「エコカー補助金」が販売を下支えしている。
この補助金の期限が、今年9月末に切れる。
「(秋以降)年明けにかけて、国内のクルマ販売は徐々に減速するだろう」(ホンダの近藤広一副社長)。自動車メーカーでは、こんな見方が一般的だ。しかし複数のディーラーを取材すると、補助金終了に向けた販売の減速感は早くも鮮明になりつつある。
プリウスは7月に息切れ?
なぜなのか。5月だけで2万7208台と前年同月の2.5倍も売れ、登録車販売の1割強を占めたトヨタのハイブリッド車「プリウス」は、その人気ゆえに注文から登録・納車されるまでには2カ月程度かかるケースもある。
手続き上は10月下旬まで補助金を申請できるものの、登録を9月末までに済ます必要があることを考えると、「7月から(プリウスなど)人気の高いハイブリッド車の補助金支給を前提にした受注は打ち止めになる」(トヨタ系ディーラー)。
自販連が集計する販売には登録時点の数字が反映されるので、10月頃までは見かけ上は好調が続くことになりそうだが、実質的な自動車販売が落ち込む「X デー」は、夏にも現実になろうとしているわけだ。
プリウスという、かつてのカローラを上回る“目玉商品”の販売が困難になることが現場に与える影響は、極めて大きい。
既に欧州では、新車購入補助金が打ち切りになったドイツで、自動車販売の減速が顕著になっている。4月の販売実績は前年同月比32%減で、昨年12月末に補助金が終了して以降、3割近い減少が続く。3月で補助金が終了したイタリアも同様だ。4月から販売が減少するなど、影響は深刻だ。
欧州では販売不振を受けて、多くの自動車メーカーが販売奨励金を積極投入する事態になった。
では、日本でもトヨタがプリウスの実売価格を下げるような値引き合戦が始まるのか。
あるトヨタグループの完成車メーカー幹部は「プリウスをあれだけ売っているのは、トヨタの『意地』でしかない」と話す。プリウスは、最新のハイブリッドシステムを搭載するだけでなく、ガソリンエンジンにも極めて高度な技術を使った、最先端の乗用車だ。
前出の幹部に言わせればプリウスは、「既に価格では相当無理をしている」。トヨタが値引き合戦の火蓋を切るわけにはいかないはずだという。
こうなると販売の前線を担うディーラーは苦しいだろう。そんな雰囲気の中、日本自動車工業会会長を務める日産自動車の志賀俊之COO(最高執行責任者)は、「景気対策ではなく、成長戦略として環境に優しい次世代車を育成してほしい」と述べ、形を変えた政府支援の継続を暗に求め始めた。
だが、新たな支援を政府から引き出せる可能性は乏しい。最大の壁は、欧州経済が混乱するきっかけにもなったギリシャと同様、日本の財政問題だ。財務省は「今、歳出増につながる声は完全に無視している」(内閣府幹部)。
過去の振る舞いも自動車業界の首を絞めている。2009年度の補正予算案に今の補助金を盛り込んだ時のこと。ある官僚は「(ハイブリッド車を持つ)トヨタとホンダだけではダメだと自動車業界に突き上げられて、大変だった」と振り返る。
今の補助金は新型車の大部分が対象になるほど基準が緩い。厳しい財政事情を考えれば対象車種を絞るのが筋だったが、景気対策の名の下に「バラマキ」を求めたのも自動車業界。「次のバラマキは無理」というのが、政府側の一般的な見方だ。
もっとも、たとえ国内販売のXデーが7月にも訪れたとしても、自動車メーカーの痛みは和らげられるかもしれない。輸出増が見込まれるからだ。
上のグラフは原油や鉄鉱石など輸入する原材料の価格変動などによる「交易条件」の変化と、企業の経常利益について関係を見たものだ。「リーマンショック」が起こった2008~09年は変動が大きいが、過去の日本は輸入する原材料価格の上昇などで交易条件が悪化した時期には、その背景にある世界的な好況の恩恵を大きく受けて、輸出を伸ばして利益も増えるというサイクルを繰り返してきた。
エコだけでない魅力が問われる
今、世界では鉄鉱石や石炭が値上がりし、企業間取引を示す日銀の企業物価指数は5月、1年5カ月ぶりに前年を上回った。こうした動きから見ると、「日本も2011年までは輸出の好調が持続しそう」(ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・主任研究員)。つまり、輸出の好調が内需、自動車業界で言えば国内販売の不振を補う可能性がある。
だが、それでも国内市場の一層の縮小は、ただでさえ若者を筆頭に消費者のクルマ離れが喧伝される中で、メーカーにとって痛手であることは間違いない。
では、自動車メーカー側にXデー後を見据えた備えが全くないかと言えば、そうでもなさそうだ。
例えば、日産が6月9日に発売した「ジューク」。排気量1500ccの小型車にしては車高が高く、ヘッドランプの配置も独特だ。新開発のサスペンションで走りにもこだわったという真っ赤なこのクルマは、コンパクトカーでありながらSUV(多目的スポーツ車)でもあるという位置づけ。発表会では日産の志賀 COOが「自動車に新しい分野を創造したい」とぶち上げた。
9月にはリーマンショックから丸2年を迎える。各国とも非常時からの出口戦略を模索し、危機対応の政策で恩恵を受けた各国の企業も既に、経営を危機モードから平時モードに移そうとしている。その中で、日本の自動車メーカーは果たして、「危機後」を見据えた商品作りを心がけていたのかどうか。7月にも訪れる「Xデー」は、自動車メーカーそれぞれの出口戦略を問うことになる。
Google、音楽サービス立ち上げ目指しレーベルと交渉
Googleが音楽サービス立ち上げを計画しており、レーベルと話し合っていると情報筋が伝えている。Googleのサービスは2段階で、第1段階は年内に開始の予定。検索エンジンと連係する音楽ストアで、ユーザーは楽曲をダウンロード購入できる。第2段階として、2011年に月額制のクラウド音楽サービスを開始するという。このサービスは、Android携帯電話からネット経由で直接楽曲をストリーミング再生できるものになる。
Googleが音楽ビジネスに参入すれば、既にモバイル分野でライバル関係にあるAppleとの対立は深まるとみられる。Appleもクラウドベースの音楽サービスを立ち上げるとうわさされている。
マツダ工場11人殺傷の容疑者「4月に解雇、恨みがあった」
早朝の出勤時間の自動車工場に突然、衝突音と悲鳴が響いた。22日、広島市南区のマツダ宇品工場で従業員ら11人が車で次々とはねられ、1人が死亡、10人が負傷した事件。殺人未遂などの容疑で現行犯逮捕された引寺(ひきじ)利明容疑者(42)は「4月に解雇された。会社に恨みがあった」と供述しているといい、社員らは、突然の惨事におびえきった表情を見せた。
制止振り切り、車で正門から突入
車が侵入した工場の東正門付近には広島県警の捜査員らが駆けつけ、物々しい雰囲気。マツダの広報担当者が緊張した面持ちで報道陣の対応に当たった。
担当者によると、引寺容疑者の車は東正門から「制止を聞かず侵入した」という。門の手前には駐車場があり、従業員らは通常、車から降りて徒歩で門をくぐるが、引寺容疑者の車は敷地内に入り、次々と人をはねたとみられる。
工場の出勤時間は午前8時15分。それに合わせて早めに出勤する社員が多いといい、事件当時は構内にたくさんの従業員がいたという。
宇品工場から約1キロ離れた同社系列のマツダ病院(同県府中町)には、負傷者9人が相次いで救急車などで運ばれた。診察を待つ患者らは、身元確認などのため慌ただしく出入りする警察官の姿を不安そうに見守っていた。
病院入り口で取材に応じた男性社員は「工場には、社員だけでなく取引先の関係者なども大勢出入りする。外部の人がどれだけ巻き込まれたかなど、詳細はまだ分からない」と悲痛な表情をみせた。
マツダ、派遣社員めぐりトラブル 不況・減産、3月期も最終赤字
一昨年秋の米リーマン・ショックに端を発した世界的な自動車不況の影響により、マツダの業績は競合他社以上に厳しい状況に置かれている。
トヨタ自動車、ホンダがハイブリッド車を中心に業績を着実に回復させる一方、マツダは平成22年3月期連結決算も最終損益が前期に続き64億円の赤字(前期は714億円の赤字)と落ち込んだままだ。
マツダによると、同社の国内工場に勤務する非正規従業員は「期間社員」として、4月時点で約260人が働いている。20年11月には約2200人いたが、業績悪化に伴い21年7月には90人にまで縮小。その後、業績の持ち直しなどから採用数を現在の約260人まで増やしていた。
その一方で、元派遣社員らが地位確認訴訟を起こすなど、労使関係をめぐるトラブルが相次いでいた。
昨年6月には、マツダが法律上の直接雇用義務が生じる連続3年の派遣期間を超えないよう、派遣社員を期間従業員として一時的に直接雇用し、再び派遣として受け入れる方法を繰り返したとして、広島労働局が労働者派遣法違反容疑で文書指導したことも明らかになった。
事件のあった宇品工場(広島市南区)では、世界唯一のロータリーエンジンを搭載したスポーツ車「RX-8」をはじめ、「デミオ」「MPV」などを生産。なかでも同工場の看板車種「RX-8」は売れ行きが伸びず、欧州での販売終了を決めている。
5月のスーパー売上高 過去2番目の低水準
日本チェーンストア協会が22日発表した5月の全国スーパー売上高(既存店ベース)は前年同月比5.3%減の1兆204億円となり、18カ月連続で前年実績を割り込んだ。現行の統計を取り始めた1992年以降、2000年5月の6・0%減に続き、5月としては過去2番目の低水準。景気低迷に伴う節約志向の継続に加え、中旬以降の天候不順で飲料やめん類などの販売が苦戦した。
主な販売品目別の内訳は、食料品が5・8%減となったほか、衣料品が3・0%減、住関連品も4・7%減と“全滅”。厳しい消費環境が続く現状が浮き彫りになった。
貸金業法で点検チーム 政府、完全施行受け
政府は22日、改正貸金業法が18日に完全施行されたのを受け、実施状況を点検し必要に応じて対応を検討する「改正貸金業法フォローアップチーム」(座長・大塚耕平金融担当副大臣)を設置したと発表した。
チームは金融庁や消費者庁などの副大臣、政務官で構成。警察庁や総務省など関係省庁と日銀からは事務方が参加する予定だ。
改正貸金業法の完全施行で、年収の3分の1を超える借り入れを原則禁止する「総量規制」が導入され、一部の借り手が突然借りられなくなる恐れがある。このため、チームは制度の周知徹底や利用者への影響の把握に努める。
公務員1種合格者、競争率20・5倍に
人事院は22日、2010年度の国家公務員採用I種試験の合格者を発表した。
国家公務員の天下り根絶に伴う人件費増大を防ぐため、政府が新規採用を抑制する方針を示したことから、合格者は1314人と前年度より180人減った。一方、不況による民間企業の採用抑制のあおりで応募者数が前年度を4702人上回る2万6888人に増加したことから、競争率は前年度(14・9倍)を大幅に上回る20・5倍となり、02年度以来8年ぶりに20倍を超える「狭き門」となった。
合格者全体に占める女性の割合は20・7%で前年度より0・6ポイント増加し、過去最高となった。
Google、過去のつぶやき検索が日本語にも対応
グーグルは21日、「Twitter」や「Google Buzz」などでユーザーが投稿したつぶやきを検索できる機能を強化したことを明らかにした。
過去のつぶやきを検索できる機能が今回日本語にも対応した。過去のつぶやきを見るには、「アップデート」をクリックした先の検索結果の上部に表示される時間軸のグラフを使う。例えば、「はやぶさ」というキーワードを入力し、グラフの時間軸を6月13日に設定すれば、はやぶさが大気圏に突入する瞬間を見守るユーザーのつぶやきを検索できる。
また、つぶやきに関連するニュース記事やブログの情報を表示する機能も追加。例えば、「デンマーク」と検索キーワードを入力し、検索結果左側にある「アップデート」をクリックすると、その瞬間の「デンマーク」に関するつぶやきを閲覧できるが、つぶやきの中で多く言及されているニュース記事やブログ記事などを「トップリンク」として表示する。
業界最安値の「第3のビール」88円でイオンが発売
流通大手のイオンは22日、1缶(350ミリリットル)当たり88円の低価格を実現したPB(プライベートブランド、自主企画)の“第3のビール”を23日に発売すると発表した。メーカー品を含め、スーパーが販売する第3のビールでは最安値水準となる。年間7200万缶(350ミリリットル換算)の販売を目指しており、価格競争が激しさを増しそうだ。
イオンのPB「トップバリュ」から売り出すのは「バーリアル」。スーパー「ジャスコ」な全国約3000店で販売する。生産は、韓国のビール大手に委託し、国内メーカーの第3のビールに比べ4割弱の低価格を実現した。1ケース(24缶)のまとめ買いの場合、1880円となり、1本当たりは78円になる。
大手スーパーのPBの第3のビールでは、ダイエーが韓国メーカーに製造を委託して89円の商品を販売しているほか、イトーヨーカ堂もサントリー製品を123円で発売。イオンも昨年夏にサントリーに生産委託したPBの第3のビールを販売していたが、今春に販売を終えていた。
PCでラジオを聴こう♪ ラジコ試験放送3カ月 実用化へ試行錯誤
東京、大阪の民放ラジオ13局が、地上波の放送をそのままインターネットで流す「radiko.jp」(ラジコ)の試験放送を始めて3カ月が経過した。パソコンをラジオ受信機にしようという試みは一定の評価を受けている一方、実用化(本放送)に向けてはハードルもあり、業界の試行錯誤はしばらく続きそうだ。(佐久間修志)
◇
■「切り札」に手応え
ラジコの試験放送が始まったのは3月15日。13局で作る「IPサイマルラジオ協議会」が運営し、地上波のラジオ放送がそのままパソコンのネットで聴けるのが特徴だ。ラジオ受信機の減少と、難聴取地点の増加という2つの問題を抱えるラジオ業界にとって、「切り札」として効果が期待されていた。
滑り出しは上々で、協議会によると、延べ聴取回数は5月9日までに約3000万回。平均聴取時間も約22分で、ニッポン放送の磯原裕社長は「思っていた以上の反響」と手応えを口にする。
協議会が実施したリスナー向けのアンケートでも、「これまでより音が聴きとりやすくなった」「ラジオを聴く機会が増えた」などの意見が寄せられ、回答者の約1割は、ラジコによって「ラジオを初めて聴いた」としている。
■権利処理&NHK
協議会は、ラジコの試験配信を8月までとし、9月以降の実用化を目指すが、課題もある。協議会事務局の青木貴博さんは、(1)通信安定化のための設備(2)PR効果をセールスにどうつなげるか(3)音楽などの権利関係の処理-を挙げる。
中でも権利処理は不可欠。協議会理事の田村光広・文化放送デジタル事業局長は「試験放送に限って配信に応じてくださった権利者もいるので、改めて許諾をとっていく。首をタテに振ってくれなければ、試験期間の延長という交渉になる」と話す。
現在は参加していないNHKの動向も注目される。テレビのようなザッピングが可能なラジコでは、語学講座などの人気コンテンツを擁するNHKが参加することで、他局にも多くの新規リスナーが流れると見込まれるためだ。
ただ、NHKのインターネット業務は法律で定められたものに限られ、現段階ではラジコのような業務はできない。4月の記者会見で、福地茂雄会長は「前向きに検討したい」と述べたが、「実施には総務省の許可が必要になる」(日向英実放送総局長)など、一筋縄ではいかないようだ。
■メディア価値上昇
それでも、ラジコによってラジオのメディア価値が見直されているのは確かだ。顧客を自社サイトへ誘導したい企業も、パソコンを開きながら聴けるラジコにメリットを感じているという。
こうした潮流を生かそうという動きも出てきた。文化放送は、ラジオ普及を後押しするためのサイト「教えて!きゅうぷらざ」を4月末に開設した。中身は「ラジオの種類」や「ラジオの聴き方」を紹介する“ラジオ入門”が中心だ。担当者は「ラジコのおかげで、『ラジオって何?』っていう若い人が出てきたので、逃さないようにしたい」と話している。
人権侵害救済機関は内閣府、報道規制条項設けず
政府が創設を目指す人権侵害救済機関について、千葉法相は22日の閣議後の記者会見で、機関を内閣府に置き、設置法案に報道機関による人権侵害に関する規定を設けない方針を明らかにした。
千葉法相は「権力を行使する立場の法務省より、内閣府の方が独立性が高い」と説明。報道機関については「自主的な取り組みを尊重したい」と述べた。
報道機関による人権侵害に関する規定は2002年に政府が提出した法案(廃案)に盛り込まれ、プライバシー侵害などを救済対象として、取材停止勧告などが可能になる内容だった。05年に廃案になった民主党案では、人権侵害をした報道機関に自主的な解決を求める努力義務規定があった。
農業の自由化、韓国を評価…通商白書
直嶋経済産業相は22日、「2010年版通商白書」を閣議に報告し、了承された。
自由貿易協定(FTA)などの通商交渉では、国内農業への打撃が焦点になることから、貿易自由化拡大に向け、これまで触れなかった農業の自由化対策に初めて言及した。
白書では、韓国の国内農業支援策を例示した。具体的には、穀物や野菜のブランド化や畜産施設の拡大などで、08年以降の10年間で2兆3000億円の財政支出が必要となる一方、国内産業の世界展開を後押しする狙いからFTA締結に注力する韓国政府の取り組みに対し、「現実に即した戦略」と評価している。
一方で、日本の農産品の輸出実績は他国を大きく下回り、今後、伸びる余地が大きいと指摘し、自由化が農産品の輸出振興の契機になると示唆した。
北朝鮮惨敗、アジア勢苦戦で出場枠削減も
北朝鮮がポルトガルに大量7点を奪われる惨敗を喫した。
今大会で4点以上を失ったのは、いずれもアジア連盟の代表(21日現在)。アジアの出場枠「4・5」を守るためにも、奮起が望まれる。
健闘する日本を除くアジア勢3チームは今大会で大敗の苦さを味わった。北朝鮮は得点を奪おうと攻めに出たことで守備のバランスが崩れ、26本ものシュートを浴びた。キム・ジョンフン監督は「最初の失点後、バランスを失い、パニックに陥り始めた」。終盤は緊張の糸が切れてしまったようで、致命的なミスを繰り返した。国際サッカー連盟(FIFA)の世界ランクでアジア最高20位の豪州は、ダイナミックなドイツの攻めに対応できず、0―4の完敗。韓国もアルゼンチンに4度にわたってゴールを破られた。
W杯のアジア枠は、出場国が24から32に増えた1998年フランス大会で、「2」から「3・5」に拡大した。2002年日韓大会は、出場国枠の日本と韓国を含めて「4・5」となり、この大会での日韓両国の躍進によって06年ドイツ大会も据え置かれた。
しかし、そのドイツ大会でアジア勢は全4チームがグループリーグで敗退した(16強の豪州は当時、オセアニア連盟所属)。FIFAのブラッター会長は今後の出場枠について、たびたび「南アフリカでの結果による」と発言している。アジアの実力が劣るという印象を与える戦いは避け、できれば2チーム以上のベスト16入りが望まれる。
MicrosoftのKinect、小売店が150ドルで予約開始
MicrosoftはXbox 360用モーションコントローラー「Kinect」の価格を正式に発表していないが、大手小売店は149.99ドルで同製品の予約受付を開始している。
Kinectは11月4日に発売される予定で、Best Buy、Gamestopのオンラインストア、Amazon.comで149.99ドルで予約できる。Wal-Martではそれよりも1.50ドルほど安くなっている。
Microsoftの広報担当者は6月21日に、Kinectの価格は発表しておらず、小売店に価格を教えてもいないとあらためて述べた。
Kinectは身振り手振りでゲームを操作できるシステムで、年末商戦前にXboxプラットフォームの売り上げに弾みをつける重要な手段と考えられている。新規ユーザーやカジュアルゲーマーを取り込み、任天堂のWiiやソニーのプレイステーション 3(PS3)を出し抜けると期待されている。
Xbox 360は2005年12月に発売されて以来、累計で約4000万台が売れている。PS3よりも多いが、Wiiよりずっと少ない。PS3もWiiもXbox 360の1年後に発売された。
Lazard Capital Marketsのアナリスト、コリン・セバスチャン氏は、Kinectの価格を100~150ドルと予想していたが、最高で200ドルと予測するアナリストもいた。同氏は先週のクライアント向けリサーチノートで、2010年にKinectは全世界で約300万台売れると予想している。
「KinectはXboxの成長を加速し、既にかなり良好な装着率(デバイス1台当たりのゲームソフト・周辺機器の数)をさらに増やす可能性を持つ」(同氏)
Kinectは初め、1年前のE3カンファレンスで「Project Natal」という名称で照会された。先週ロサンゼルスで開かれた今年のE3でKinectという正式名称が発表された。
「クルマ販売は、喧伝されているほど良くない。見せかけにすぎないのが現実だ」。トヨタ自動車系の有力ディーラー幹部はこう打ち明ける。
一見すると国内の自動車販売は回復基調だ。日本自動車販売協会連合会によると、5月の登録車の販売は前年同月比28%増。10カ月連続で前年実績を上回った。2009年4月に始まり、一定の燃費基準を満たした新車を購入した場合に5万~25万円を受け取れる新車購入補助金、いわゆる「エコカー補助金」が販売を下支えしている。
この補助金の期限が、今年9月末に切れる。
「(秋以降)年明けにかけて、国内のクルマ販売は徐々に減速するだろう」(ホンダの近藤広一副社長)。自動車メーカーでは、こんな見方が一般的だ。しかし複数のディーラーを取材すると、補助金終了に向けた販売の減速感は早くも鮮明になりつつある。
プリウスは7月に息切れ?
なぜなのか。5月だけで2万7208台と前年同月の2.5倍も売れ、登録車販売の1割強を占めたトヨタのハイブリッド車「プリウス」は、その人気ゆえに注文から登録・納車されるまでには2カ月程度かかるケースもある。
手続き上は10月下旬まで補助金を申請できるものの、登録を9月末までに済ます必要があることを考えると、「7月から(プリウスなど)人気の高いハイブリッド車の補助金支給を前提にした受注は打ち止めになる」(トヨタ系ディーラー)。
自販連が集計する販売には登録時点の数字が反映されるので、10月頃までは見かけ上は好調が続くことになりそうだが、実質的な自動車販売が落ち込む「X デー」は、夏にも現実になろうとしているわけだ。
プリウスという、かつてのカローラを上回る“目玉商品”の販売が困難になることが現場に与える影響は、極めて大きい。
既に欧州では、新車購入補助金が打ち切りになったドイツで、自動車販売の減速が顕著になっている。4月の販売実績は前年同月比32%減で、昨年12月末に補助金が終了して以降、3割近い減少が続く。3月で補助金が終了したイタリアも同様だ。4月から販売が減少するなど、影響は深刻だ。
欧州では販売不振を受けて、多くの自動車メーカーが販売奨励金を積極投入する事態になった。
では、日本でもトヨタがプリウスの実売価格を下げるような値引き合戦が始まるのか。
あるトヨタグループの完成車メーカー幹部は「プリウスをあれだけ売っているのは、トヨタの『意地』でしかない」と話す。プリウスは、最新のハイブリッドシステムを搭載するだけでなく、ガソリンエンジンにも極めて高度な技術を使った、最先端の乗用車だ。
前出の幹部に言わせればプリウスは、「既に価格では相当無理をしている」。トヨタが値引き合戦の火蓋を切るわけにはいかないはずだという。
こうなると販売の前線を担うディーラーは苦しいだろう。そんな雰囲気の中、日本自動車工業会会長を務める日産自動車の志賀俊之COO(最高執行責任者)は、「景気対策ではなく、成長戦略として環境に優しい次世代車を育成してほしい」と述べ、形を変えた政府支援の継続を暗に求め始めた。
だが、新たな支援を政府から引き出せる可能性は乏しい。最大の壁は、欧州経済が混乱するきっかけにもなったギリシャと同様、日本の財政問題だ。財務省は「今、歳出増につながる声は完全に無視している」(内閣府幹部)。
過去の振る舞いも自動車業界の首を絞めている。2009年度の補正予算案に今の補助金を盛り込んだ時のこと。ある官僚は「(ハイブリッド車を持つ)トヨタとホンダだけではダメだと自動車業界に突き上げられて、大変だった」と振り返る。
今の補助金は新型車の大部分が対象になるほど基準が緩い。厳しい財政事情を考えれば対象車種を絞るのが筋だったが、景気対策の名の下に「バラマキ」を求めたのも自動車業界。「次のバラマキは無理」というのが、政府側の一般的な見方だ。
もっとも、たとえ国内販売のXデーが7月にも訪れたとしても、自動車メーカーの痛みは和らげられるかもしれない。輸出増が見込まれるからだ。
上のグラフは原油や鉄鉱石など輸入する原材料の価格変動などによる「交易条件」の変化と、企業の経常利益について関係を見たものだ。「リーマンショック」が起こった2008~09年は変動が大きいが、過去の日本は輸入する原材料価格の上昇などで交易条件が悪化した時期には、その背景にある世界的な好況の恩恵を大きく受けて、輸出を伸ばして利益も増えるというサイクルを繰り返してきた。
エコだけでない魅力が問われる
今、世界では鉄鉱石や石炭が値上がりし、企業間取引を示す日銀の企業物価指数は5月、1年5カ月ぶりに前年を上回った。こうした動きから見ると、「日本も2011年までは輸出の好調が持続しそう」(ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・主任研究員)。つまり、輸出の好調が内需、自動車業界で言えば国内販売の不振を補う可能性がある。
だが、それでも国内市場の一層の縮小は、ただでさえ若者を筆頭に消費者のクルマ離れが喧伝される中で、メーカーにとって痛手であることは間違いない。
では、自動車メーカー側にXデー後を見据えた備えが全くないかと言えば、そうでもなさそうだ。
例えば、日産が6月9日に発売した「ジューク」。排気量1500ccの小型車にしては車高が高く、ヘッドランプの配置も独特だ。新開発のサスペンションで走りにもこだわったという真っ赤なこのクルマは、コンパクトカーでありながらSUV(多目的スポーツ車)でもあるという位置づけ。発表会では日産の志賀 COOが「自動車に新しい分野を創造したい」とぶち上げた。
9月にはリーマンショックから丸2年を迎える。各国とも非常時からの出口戦略を模索し、危機対応の政策で恩恵を受けた各国の企業も既に、経営を危機モードから平時モードに移そうとしている。その中で、日本の自動車メーカーは果たして、「危機後」を見据えた商品作りを心がけていたのかどうか。7月にも訪れる「Xデー」は、自動車メーカーそれぞれの出口戦略を問うことになる。
Google、音楽サービス立ち上げ目指しレーベルと交渉
Googleが音楽サービス立ち上げを計画しており、レーベルと話し合っていると情報筋が伝えている。Googleのサービスは2段階で、第1段階は年内に開始の予定。検索エンジンと連係する音楽ストアで、ユーザーは楽曲をダウンロード購入できる。第2段階として、2011年に月額制のクラウド音楽サービスを開始するという。このサービスは、Android携帯電話からネット経由で直接楽曲をストリーミング再生できるものになる。
Googleが音楽ビジネスに参入すれば、既にモバイル分野でライバル関係にあるAppleとの対立は深まるとみられる。Appleもクラウドベースの音楽サービスを立ち上げるとうわさされている。
マツダ工場11人殺傷の容疑者「4月に解雇、恨みがあった」
早朝の出勤時間の自動車工場に突然、衝突音と悲鳴が響いた。22日、広島市南区のマツダ宇品工場で従業員ら11人が車で次々とはねられ、1人が死亡、10人が負傷した事件。殺人未遂などの容疑で現行犯逮捕された引寺(ひきじ)利明容疑者(42)は「4月に解雇された。会社に恨みがあった」と供述しているといい、社員らは、突然の惨事におびえきった表情を見せた。
制止振り切り、車で正門から突入
車が侵入した工場の東正門付近には広島県警の捜査員らが駆けつけ、物々しい雰囲気。マツダの広報担当者が緊張した面持ちで報道陣の対応に当たった。
担当者によると、引寺容疑者の車は東正門から「制止を聞かず侵入した」という。門の手前には駐車場があり、従業員らは通常、車から降りて徒歩で門をくぐるが、引寺容疑者の車は敷地内に入り、次々と人をはねたとみられる。
工場の出勤時間は午前8時15分。それに合わせて早めに出勤する社員が多いといい、事件当時は構内にたくさんの従業員がいたという。
宇品工場から約1キロ離れた同社系列のマツダ病院(同県府中町)には、負傷者9人が相次いで救急車などで運ばれた。診察を待つ患者らは、身元確認などのため慌ただしく出入りする警察官の姿を不安そうに見守っていた。
病院入り口で取材に応じた男性社員は「工場には、社員だけでなく取引先の関係者なども大勢出入りする。外部の人がどれだけ巻き込まれたかなど、詳細はまだ分からない」と悲痛な表情をみせた。
マツダ、派遣社員めぐりトラブル 不況・減産、3月期も最終赤字
一昨年秋の米リーマン・ショックに端を発した世界的な自動車不況の影響により、マツダの業績は競合他社以上に厳しい状況に置かれている。
トヨタ自動車、ホンダがハイブリッド車を中心に業績を着実に回復させる一方、マツダは平成22年3月期連結決算も最終損益が前期に続き64億円の赤字(前期は714億円の赤字)と落ち込んだままだ。
マツダによると、同社の国内工場に勤務する非正規従業員は「期間社員」として、4月時点で約260人が働いている。20年11月には約2200人いたが、業績悪化に伴い21年7月には90人にまで縮小。その後、業績の持ち直しなどから採用数を現在の約260人まで増やしていた。
その一方で、元派遣社員らが地位確認訴訟を起こすなど、労使関係をめぐるトラブルが相次いでいた。
昨年6月には、マツダが法律上の直接雇用義務が生じる連続3年の派遣期間を超えないよう、派遣社員を期間従業員として一時的に直接雇用し、再び派遣として受け入れる方法を繰り返したとして、広島労働局が労働者派遣法違反容疑で文書指導したことも明らかになった。
事件のあった宇品工場(広島市南区)では、世界唯一のロータリーエンジンを搭載したスポーツ車「RX-8」をはじめ、「デミオ」「MPV」などを生産。なかでも同工場の看板車種「RX-8」は売れ行きが伸びず、欧州での販売終了を決めている。
5月のスーパー売上高 過去2番目の低水準
日本チェーンストア協会が22日発表した5月の全国スーパー売上高(既存店ベース)は前年同月比5.3%減の1兆204億円となり、18カ月連続で前年実績を割り込んだ。現行の統計を取り始めた1992年以降、2000年5月の6・0%減に続き、5月としては過去2番目の低水準。景気低迷に伴う節約志向の継続に加え、中旬以降の天候不順で飲料やめん類などの販売が苦戦した。
主な販売品目別の内訳は、食料品が5・8%減となったほか、衣料品が3・0%減、住関連品も4・7%減と“全滅”。厳しい消費環境が続く現状が浮き彫りになった。
貸金業法で点検チーム 政府、完全施行受け
政府は22日、改正貸金業法が18日に完全施行されたのを受け、実施状況を点検し必要に応じて対応を検討する「改正貸金業法フォローアップチーム」(座長・大塚耕平金融担当副大臣)を設置したと発表した。
チームは金融庁や消費者庁などの副大臣、政務官で構成。警察庁や総務省など関係省庁と日銀からは事務方が参加する予定だ。
改正貸金業法の完全施行で、年収の3分の1を超える借り入れを原則禁止する「総量規制」が導入され、一部の借り手が突然借りられなくなる恐れがある。このため、チームは制度の周知徹底や利用者への影響の把握に努める。
公務員1種合格者、競争率20・5倍に
人事院は22日、2010年度の国家公務員採用I種試験の合格者を発表した。
国家公務員の天下り根絶に伴う人件費増大を防ぐため、政府が新規採用を抑制する方針を示したことから、合格者は1314人と前年度より180人減った。一方、不況による民間企業の採用抑制のあおりで応募者数が前年度を4702人上回る2万6888人に増加したことから、競争率は前年度(14・9倍)を大幅に上回る20・5倍となり、02年度以来8年ぶりに20倍を超える「狭き門」となった。
合格者全体に占める女性の割合は20・7%で前年度より0・6ポイント増加し、過去最高となった。
Google、過去のつぶやき検索が日本語にも対応
グーグルは21日、「Twitter」や「Google Buzz」などでユーザーが投稿したつぶやきを検索できる機能を強化したことを明らかにした。
過去のつぶやきを検索できる機能が今回日本語にも対応した。過去のつぶやきを見るには、「アップデート」をクリックした先の検索結果の上部に表示される時間軸のグラフを使う。例えば、「はやぶさ」というキーワードを入力し、グラフの時間軸を6月13日に設定すれば、はやぶさが大気圏に突入する瞬間を見守るユーザーのつぶやきを検索できる。
また、つぶやきに関連するニュース記事やブログの情報を表示する機能も追加。例えば、「デンマーク」と検索キーワードを入力し、検索結果左側にある「アップデート」をクリックすると、その瞬間の「デンマーク」に関するつぶやきを閲覧できるが、つぶやきの中で多く言及されているニュース記事やブログ記事などを「トップリンク」として表示する。
業界最安値の「第3のビール」88円でイオンが発売
流通大手のイオンは22日、1缶(350ミリリットル)当たり88円の低価格を実現したPB(プライベートブランド、自主企画)の“第3のビール”を23日に発売すると発表した。メーカー品を含め、スーパーが販売する第3のビールでは最安値水準となる。年間7200万缶(350ミリリットル換算)の販売を目指しており、価格競争が激しさを増しそうだ。
イオンのPB「トップバリュ」から売り出すのは「バーリアル」。スーパー「ジャスコ」な全国約3000店で販売する。生産は、韓国のビール大手に委託し、国内メーカーの第3のビールに比べ4割弱の低価格を実現した。1ケース(24缶)のまとめ買いの場合、1880円となり、1本当たりは78円になる。
大手スーパーのPBの第3のビールでは、ダイエーが韓国メーカーに製造を委託して89円の商品を販売しているほか、イトーヨーカ堂もサントリー製品を123円で発売。イオンも昨年夏にサントリーに生産委託したPBの第3のビールを販売していたが、今春に販売を終えていた。
PCでラジオを聴こう♪ ラジコ試験放送3カ月 実用化へ試行錯誤
東京、大阪の民放ラジオ13局が、地上波の放送をそのままインターネットで流す「radiko.jp」(ラジコ)の試験放送を始めて3カ月が経過した。パソコンをラジオ受信機にしようという試みは一定の評価を受けている一方、実用化(本放送)に向けてはハードルもあり、業界の試行錯誤はしばらく続きそうだ。(佐久間修志)
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■「切り札」に手応え
ラジコの試験放送が始まったのは3月15日。13局で作る「IPサイマルラジオ協議会」が運営し、地上波のラジオ放送がそのままパソコンのネットで聴けるのが特徴だ。ラジオ受信機の減少と、難聴取地点の増加という2つの問題を抱えるラジオ業界にとって、「切り札」として効果が期待されていた。
滑り出しは上々で、協議会によると、延べ聴取回数は5月9日までに約3000万回。平均聴取時間も約22分で、ニッポン放送の磯原裕社長は「思っていた以上の反響」と手応えを口にする。
協議会が実施したリスナー向けのアンケートでも、「これまでより音が聴きとりやすくなった」「ラジオを聴く機会が増えた」などの意見が寄せられ、回答者の約1割は、ラジコによって「ラジオを初めて聴いた」としている。
■権利処理&NHK
協議会は、ラジコの試験配信を8月までとし、9月以降の実用化を目指すが、課題もある。協議会事務局の青木貴博さんは、(1)通信安定化のための設備(2)PR効果をセールスにどうつなげるか(3)音楽などの権利関係の処理-を挙げる。
中でも権利処理は不可欠。協議会理事の田村光広・文化放送デジタル事業局長は「試験放送に限って配信に応じてくださった権利者もいるので、改めて許諾をとっていく。首をタテに振ってくれなければ、試験期間の延長という交渉になる」と話す。
現在は参加していないNHKの動向も注目される。テレビのようなザッピングが可能なラジコでは、語学講座などの人気コンテンツを擁するNHKが参加することで、他局にも多くの新規リスナーが流れると見込まれるためだ。
ただ、NHKのインターネット業務は法律で定められたものに限られ、現段階ではラジコのような業務はできない。4月の記者会見で、福地茂雄会長は「前向きに検討したい」と述べたが、「実施には総務省の許可が必要になる」(日向英実放送総局長)など、一筋縄ではいかないようだ。
■メディア価値上昇
それでも、ラジコによってラジオのメディア価値が見直されているのは確かだ。顧客を自社サイトへ誘導したい企業も、パソコンを開きながら聴けるラジコにメリットを感じているという。
こうした潮流を生かそうという動きも出てきた。文化放送は、ラジオ普及を後押しするためのサイト「教えて!きゅうぷらざ」を4月末に開設した。中身は「ラジオの種類」や「ラジオの聴き方」を紹介する“ラジオ入門”が中心だ。担当者は「ラジコのおかげで、『ラジオって何?』っていう若い人が出てきたので、逃さないようにしたい」と話している。
人権侵害救済機関は内閣府、報道規制条項設けず
政府が創設を目指す人権侵害救済機関について、千葉法相は22日の閣議後の記者会見で、機関を内閣府に置き、設置法案に報道機関による人権侵害に関する規定を設けない方針を明らかにした。
千葉法相は「権力を行使する立場の法務省より、内閣府の方が独立性が高い」と説明。報道機関については「自主的な取り組みを尊重したい」と述べた。
報道機関による人権侵害に関する規定は2002年に政府が提出した法案(廃案)に盛り込まれ、プライバシー侵害などを救済対象として、取材停止勧告などが可能になる内容だった。05年に廃案になった民主党案では、人権侵害をした報道機関に自主的な解決を求める努力義務規定があった。
農業の自由化、韓国を評価…通商白書
直嶋経済産業相は22日、「2010年版通商白書」を閣議に報告し、了承された。
自由貿易協定(FTA)などの通商交渉では、国内農業への打撃が焦点になることから、貿易自由化拡大に向け、これまで触れなかった農業の自由化対策に初めて言及した。
白書では、韓国の国内農業支援策を例示した。具体的には、穀物や野菜のブランド化や畜産施設の拡大などで、08年以降の10年間で2兆3000億円の財政支出が必要となる一方、国内産業の世界展開を後押しする狙いからFTA締結に注力する韓国政府の取り組みに対し、「現実に即した戦略」と評価している。
一方で、日本の農産品の輸出実績は他国を大きく下回り、今後、伸びる余地が大きいと指摘し、自由化が農産品の輸出振興の契機になると示唆した。
北朝鮮惨敗、アジア勢苦戦で出場枠削減も
北朝鮮がポルトガルに大量7点を奪われる惨敗を喫した。
今大会で4点以上を失ったのは、いずれもアジア連盟の代表(21日現在)。アジアの出場枠「4・5」を守るためにも、奮起が望まれる。
健闘する日本を除くアジア勢3チームは今大会で大敗の苦さを味わった。北朝鮮は得点を奪おうと攻めに出たことで守備のバランスが崩れ、26本ものシュートを浴びた。キム・ジョンフン監督は「最初の失点後、バランスを失い、パニックに陥り始めた」。終盤は緊張の糸が切れてしまったようで、致命的なミスを繰り返した。国際サッカー連盟(FIFA)の世界ランクでアジア最高20位の豪州は、ダイナミックなドイツの攻めに対応できず、0―4の完敗。韓国もアルゼンチンに4度にわたってゴールを破られた。
W杯のアジア枠は、出場国が24から32に増えた1998年フランス大会で、「2」から「3・5」に拡大した。2002年日韓大会は、出場国枠の日本と韓国を含めて「4・5」となり、この大会での日韓両国の躍進によって06年ドイツ大会も据え置かれた。
しかし、そのドイツ大会でアジア勢は全4チームがグループリーグで敗退した(16強の豪州は当時、オセアニア連盟所属)。FIFAのブラッター会長は今後の出場枠について、たびたび「南アフリカでの結果による」と発言している。アジアの実力が劣るという印象を与える戦いは避け、できれば2チーム以上のベスト16入りが望まれる。
MicrosoftのKinect、小売店が150ドルで予約開始
MicrosoftはXbox 360用モーションコントローラー「Kinect」の価格を正式に発表していないが、大手小売店は149.99ドルで同製品の予約受付を開始している。
Kinectは11月4日に発売される予定で、Best Buy、Gamestopのオンラインストア、Amazon.comで149.99ドルで予約できる。Wal-Martではそれよりも1.50ドルほど安くなっている。
Microsoftの広報担当者は6月21日に、Kinectの価格は発表しておらず、小売店に価格を教えてもいないとあらためて述べた。
Kinectは身振り手振りでゲームを操作できるシステムで、年末商戦前にXboxプラットフォームの売り上げに弾みをつける重要な手段と考えられている。新規ユーザーやカジュアルゲーマーを取り込み、任天堂のWiiやソニーのプレイステーション 3(PS3)を出し抜けると期待されている。
Xbox 360は2005年12月に発売されて以来、累計で約4000万台が売れている。PS3よりも多いが、Wiiよりずっと少ない。PS3もWiiもXbox 360の1年後に発売された。
Lazard Capital Marketsのアナリスト、コリン・セバスチャン氏は、Kinectの価格を100~150ドルと予想していたが、最高で200ドルと予測するアナリストもいた。同氏は先週のクライアント向けリサーチノートで、2010年にKinectは全世界で約300万台売れると予想している。
「KinectはXboxの成長を加速し、既にかなり良好な装着率(デバイス1台当たりのゲームソフト・周辺機器の数)をさらに増やす可能性を持つ」(同氏)
Kinectは初め、1年前のE3カンファレンスで「Project Natal」という名称で照会された。先週ロサンゼルスで開かれた今年のE3でKinectという正式名称が発表された。
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京セラ、中南米の携帯電話市場に進出 メキシコで今秋にも
京セラは中南米の携帯電話機市場に進出する。今秋にも、新興国を中心に利用者が急増している「W―CDMA」規格の端末をメキシコに投入する。同社はこれまで北米で普及している「CDMA2000」規格に特化してきたが、W―CDMA規格の製品を加えることで販売地域を広げる。赤字だった北米事業の収益改善に伴い、海外市場で拡大策に転じる。
京セラは米通信機器子会社の京セラコミュニケーションズを通じ、メキシコの通信会社に端末を納入することで合意した。価格帯はやや高めだが機能を充実させ、低価格機種が多い既存メーカーとの違いを出す。
現地の商社を通じベネズエラへの納入も検討しており、順次、他の中南米諸国へ販路を拡大する考えだ。中南米の携帯電話出荷数は日本の4倍近い1億4000万台前後。現地では第2世代携帯電話の規格として普及した「GSM」の利用者もまだ多いため、W―CDMAとのデュアル端末も用意する見通し。
いずれも生産はシンガポールの電子機器の受託生産サービス(EMS)大手、フレクストロニクスに委託すると見られる。
これまで京セラは北米の通信会社や日本ではKDDI(au)が採用している第3世代携帯電話規格「CDMA2000」の生産に特化してきた。しかし、今後は新興国を中心にW―CDMAの市場が拡大すると見られるため、同規格に参入する。
京セラは北米市場での苦戦が響き、通信機器事業の赤字が続いていた。中国工場の閉鎖や開発・営業体制の再編など一連のリストラで、黒字化にメドを付けた。
京セラの携帯電話の世界出荷台数は、年1100万台強と見られる。IDCジャパン(東京・千代田)によると日系メーカーでは英ソニー・エリクソンに次いで2位。北米で多機能携帯電話「スマートフォン」を発売するなど、海外展開を加速している。
電子書籍端末、米で値下げ合戦 100ドル台が主戦場
【ニューヨーク=清水石珠実】米書店最大手バーンズ・アンド・ノーブルは21日、電子書籍端末「ヌック」の価格を259ドルから199ドルに引き下げると発表した。書籍などコンテンツの取り込みを携帯通信ではなく、無線LAN(構内情報通信網)に絞った機種も新たに149ドルで投入。同業のボーダーズが対抗機「コボ」を149ドルで販売するなど、電子書籍端末の主戦場が100ドル台に下落している状況に対応する。
これに対抗して、アマゾン・ドット・コムも同日、259ドルだった「キンドル」を189ドルに値下げすると発表。電子書籍端末で値下げ合戦が激化してきた。
「トイ・ストーリー3」首位 週末北米映画、初登場1億ドル超
週末の北米映画興行収入ランキングは、ウォルト・ディズニーの「トイ・ストーリー3」が1億900万ドル(約99億円)で初登場首位となった。ディズニー傘下のアニメ制作会社ピクサーにとって、封切り直後の週末興行成績が過去最高の作品となった。
調査会社ハリウッド・ドット・コム・ボックス・オフィスが20日に電子メールで配布した資料によると、封切り直後の週末興行成績でピクサー作品が首位となるのはこれで11作目。アニメ作品全体では「シュレック3」(1億2160万ドル)に次いで過去2番目の高水準だった。
トイ・ストーリー3は、おもちゃの世界を描いた同シリーズで初の3次元(3D)作品。カウボーイ人形のウッディの声をトム・ハンクスが演じる。おもちゃたちが、大学に入学する持ち主のアンディの元に行こうと企てるストーリーだ。ハリウッド・ドット・コムによると、ピクサー作品の封切り直後の週末興行成績でこれまでの最高は「Mr.インクレディブル」(2004年公開)の7050万ドルだった。
先週首位だった1984年公開の空手映画「ベスト・キッド」のリメーク版は2900万ドルで2位に後退した。同2位だった1980年代の人気テレビドラマシリーズ「特攻野郎Aチーム」の映画化作品は1380万ドルで3位。
ハリウッド・ドット・コムによると、上位12作品の北米週末興行収入は1億8790万ドルと、前年同期の1億4460万ドルを上回っている。年初来の興行収入合計は前年同期比約4.1%増の49億5000万ドル。年初来の映画館の来場者数は2.4%減少している。
NECモバ、テレビ会議でスマートフォン販促 画面で商品説明
携帯電話販売大手のNECモバイリングは今夏にも、同社が運営する「ドコモショップ」でテレビ会議システムを使った多機能携帯電話(スマートフォン)の販売を始める。専門の販売員をセンターに配置、画面を通じて来店した消費者の質問に答える。利用法が複雑なスマートフォンを専門販売員が丁寧に説明し、販売を拡大する。
同社や系列会社のドコモショップ全222店に順次導入する。消費者が店頭でスマートフォンの機種を選択するとセンターの専門販売員が応答。機能や操作方法のほか、購入後の設定方法などの質問に答える。
システムはNECと共同で開発。センターと店舗を高速回線で結ぶ。ハイビジョン画質で映像を送ることが可能で、販売員が端末を操作している様子なども鮮明に映す。
米アップルの「iPhone(アイフォーン)」などスマートフォンの販売は好調だが、従来の携帯電話と操作法が異なる部分が多く、販売時の説明が難しい。このため店舗での消費者の待ち時間が長くなるなどの問題が起きている。
経産など3省、電子書籍の著作権を管理 簡素化へ仕組み検討
経済産業、総務、文部科学の3省は電子書籍の普及に向け、出版物の著作者の権利を集中管理する仕組みをつくる検討に入った。電子書籍にからむ利用許可の手続きを簡素化する狙い。電子書籍を配信したい出版社は作家一人ひとりに許可を得る手間が省け、低コストでサービスを展開できるようになる。
3省共同の「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」が22日まとめる最終報告に盛り込む。
出版物の著作権を持つ作家や、作家から委託された出版社が電子化に関する著作権を集中管理団体などに一任する仕組みを検討する。団体は配信可能な作品をあらかじめ作家や出版社から集めたうえで、著作権の使用料率を決めておく。電子書籍を配信したい企業は使用料を払うことで電子化の許諾を得られる。電子化に伴う利益は団体が著作権者に分配する。
米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」などの普及で、電子書籍への需要が高まるなかで、配信促進には円滑な権利処理が欠かせないとみられている。
近く文化庁の主導で集中管理に関する検討会議を設置し、対象書籍や具体的な仕組み、運営主体などを話し合う。
企業の現預金、最大 3月末202兆円、設備投資に回らず
企業の手元資金(現金・預金)が増え続けている。日銀の資金循環統計によると、金融部門を除く民間企業の現金・預金の残高は3月末で前年比1.8%増の202兆7123億円となり、統計をさかのぼれる1980年3月末以降で最大となった。企業収益の回復で資金繰りが改善する一方、設備投資に二の足を踏む企業が多い。マネーストック統計などによると、4月以降も企業の手元資金の拡大が続いているとみられる。
企業の手元資金は2006年3月末にいったん200兆円を突破したが、リーマン・ショックで資金繰りが苦しくなった08年9月末には189兆円まで縮小していた。
その後、企業は資金繰りの悪化に備えて現金や預金を厚く持つ姿勢に転化。最近では業績がV字回復して現金収入が増えた一方で、設備投資などを抑制していることもあり、現金の形で企業に資金が積み上がっている。
世の中に出回るお金の量をまとめた日銀のマネーストック統計によると、現金と普通預金などの合計(M1)の前年比は3月の1.1%増に対し、4月が1.6%増、5月が2.0%増で徐々に高まっている。マネーストックは家計などの数字も含むが「企業の寄与が大きい」(日銀)といい、4月以降も企業の手元資金の増加基調が続いている可能性が高い。
企業の手元資金の拡大は、投資機会を見いだせない企業の姿を映している面もある。設備投資はようやく下げ止まったものの、新たな工場建設などの大規模な投資は限られている。先行きの不安感が根強いためで、企業が手持ちの現金や預金をいたずらに膨らませている構図ともいえる。
政府は新成長戦略を策定するなど、企業に成長分野への投資を促そうと躍起になっている。日銀もこうした動きを後押しする姿勢だ。企業が政府・日銀の狙い通りに本格的な投資に動き出せば、手元資金の増加にも歯止めがかかるとみられる。
ベンチャー投資額4割減 主要20社、09年度637億円
株式公開が激減 アジアにシフト
新興企業を支援するベンチャーキャピタル(VC)の投資額が落ち込んでいる。2009年度の投資実行額は主要20社で計637億円と、前年度に比べて4割の大幅減となった。企業の新規株式公開(IPO)の大幅な減少や業績低迷でVCが投資先を絞り込んでいるためだ。IPOが活発な中国や韓国などでの投資にシフトするVCも多い。資金面から新興企業を支えるVCの投資の落ち込みは、日本市場の低迷につながる恐れがある。
主要なVC20社を対象にアンケート調査を実施したところ、09年度の投資額は637億円で、前年度実績の1062億円から40%減となった。
VCの投資額は07年度の1395億円から、2年で半減したことになる。投資した企業数も566社と、2年前から6割減少した。
経済産業省の外郭団体の調査でも、09年度の投資額は1000億円を割り込んで、調査開始(1995年度)以来の最低になるのが確実な情勢だ。直近ピークは06年度の2000億円超だった。
VCは創業間もないが、高い技術力を持つ新興企業などに出資。何年もかけて新興企業の上場を支援する。VCのファンドに出資する機関投資家は、投資先の新興企業が上場すれば、ファンドの償還時に利益を得られる。
だが09年は企業業績の低迷から国内市場のIPOは19社にとどまり、直近ピークの06年(188社)のわずか1割まで激減した。収益確保の見通しが立てにくくなったためVCが企業への投資を渋り、資金調達が難しくなった新興企業がさらにIPOから遠のく悪循環が起きている。機関投資家も成績の悪化したVCファンドへの出資を手控えている。
国内市場でのIPOの激減などから、中国や韓国などアジア各国・地域で、ファンドを設立する動きが増えている。ベトナムや台湾でファンドを相次ぎ設立したSBIホールディングスは09年度中に投資拡大を進め、海外投資額は合計130億円と、2年前の2倍以上に増えた。主要20社の投資額全体に占める海外投資の割合は07年度は3割だったが、09年度には4割に上昇した。
こうした流れをふまえ、日本ベンチャーキャピタル協会は、韓国のVC協会と新興企業の情報公開などで協力する包括的な提携を締結した。
10年度に計画する国内外を合わせた投資額では、アンケートに回答した11社のうち、10社が09年度を上回った。前年度に比べて環境改善を見込んでいるVCが多いが、国内のIPOの大幅な増加には期待できず、年間で30~40社にとどまるとみられる。
共同通信、携帯向け地方紙ニュースサイト
共同通信社は21日、地方紙や専門誌などのニュースサイトを集めた携帯電話向けの情報配信サービスを始めると発表した。
利用者が一つのサイトで記事を読むと、他のサイトが配信している関連記事を自動的に探し出し、紹介する機能を設けた。
当面は共同通信や河北新報社など13サイトで始め、年内に100社の参加を目指す。購読料はサイトごとに設定されており、100円から500円程度という。
「飲み放題」で頭痛い居酒屋 アルコール規制 WHO指針
アルコールの乱用による健康被害や社会的悪影響を減らすために世界保健機関(WHO)が採択した指針が、居酒屋などの飲食業界やビールメーカーなど関連業界を震撼(しんかん)させている。指針の中に、一定の金額を払えば時間内の飲酒が無制限になる「飲み放題」の取り締まりを求める表現が含まれているためだ。飲み放題はいまや居酒屋の定番メニューで、規制されると業界への大打撃は避けられない。WHOの提唱を受け規制が強化されたたばこの事例があるだけに、業界内では警戒感が広がっている。
飲み放題規制が盛り込まれたのは、WHOが今年5月20日に開いた総会(WHA)で採択した「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」という指針だ。
この中に、国として取り組むべき内容として、「(アルコール飲料の)直接的、間接的な割引販売、原価割れ販売および飲み放題均一料金、またはそれ以外の大量販売の禁止または制限」という項目が盛り込まれたのだ。
都内のある居酒屋の幹部は「飲み放題を違法にせよと言っているのに等しい。飲み放題は競争の激しい市場で一定の力を維持するための必修科目のようなもの。これができなくなれば客足に大きく響く」と警戒する。別の居酒屋チェーン大手幹部も「飲み放題プランの多くは宴会客の利用で、時期によって変動はあるが全体の2~3割程度を占める。規制は業界の経営を直撃しかねない」と指摘する。
WHOがアルコール有害使用の規制を求めたのには事情がある。飲み過ぎによって精神神経疾患、肝硬変、がんなど多くの疾病を引き起こしているほか、泥酔による暴力、暴行、器物損壊、痴漢などの事件は収まる兆しをみせず、飲酒運転による事故など多くの社会的悪影響の引き金にもなっている現実があるためだ。
WHOの2009年の調査では、世界の若者の死亡と身体障害の理由の3位がアルコールの大量摂取だった。また04年の調査では世界で約250万人がアルコールの摂取が原因で死亡していて、全死亡者の3.8%を占めるという。
採択された指針は、そうしたアルコールの有害使用を地域、国、地球規模で減らす取り組みを促すことが目的。現状分析のほか、国家単位で取り組みが必要な対策や地球規模で取り組みが必要な対策など、多岐にわたって報告している。特に「国がとるべき政策と対策」は10領域、68項目と詳細に言及していて、飲み放題規制もこの中に盛り込まれている。
■業界「第2のたばこ」警戒
WHOの指針により、日本がただちに規制に踏み切るかというと、今のところそうした動きは見あたらない。厚生労働省健康局生活習慣病対策室は「まずは実態調査をしようかどうか検討しているところ」と比較的冷静で、具体的な規制導入に踏み切る姿勢を見せていない。
背景には、すでに日本が幅広く飲酒に関連した負の面の対策に取り組んできた事情がある。
飲酒運転や未成年の飲酒を禁じるルールは法律で整備されている。不当に安い価格での販売の歯止めには、酒税が一定の役割を果たしている。ビールの業界団体、ビール酒造組合がテレビコマーシャルの時間制限を自主規制で制定するなど業界団体の自主規制も進んでいて、未成年飲酒防止活動なども自主的に取り組んでいる。ビール酒造組合と日本洋酒酒造組合は世界の自主規制組織GAPにも参加しており、取り組みは積極的だ。
このため中には「冷静に受け止めている。現在のところ具体的な規制導入は考えていない」(居酒屋チェーン「白木屋」を運営するモンテローザ)という事業者もいる。
それでもなお不安が消えないのは、同じ嗜好品の産業として認められているたばこは、規制強化が急ピッチで進んでいるからだ。
たばこでは、他人の煙を吸いこむ受動喫煙を防止するため、WHOが公共施設での原則禁煙を打ち出して、各国が取り組みを進めている。日本では2月に厚生労働省が全国の都道府県知事に対し公共施設での原則禁煙を通知したほか、今年4月には神奈川県が全国初の罰金付きの受動喫煙防止条例を定めた。
神奈川県では多くの店が全面禁煙に踏み切ったり、設備投資をして「完全分煙」にして喫煙スペースを設けるなど対応を迫られていて、居酒屋などの業界にも「こうした対応がいつ迫られるかわからない」(都内のバー)と延焼を心配する。
あるディスカウントチェーンの幹部は「有害使用の防止の意味は理解できるし必要だと思う。でも健康食品以外すべてを排除する流れには歯止めをかけないと、嗜好品そのものが絶滅しかねない」と話している。
イルカ漁映画 問題あっても妨害は許されぬ(6月22日付・読売社説)
言論・表現の自由は、民主主義社会の基本だ。威圧的な抗議活動などで映画の上映を妨害することは許されない。
和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に描いた米国のドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」の国内上映が、一部で中止に追い込まれた問題である。
上映を予定していた東京、大阪の3館が今月初めに、相次いで断念を発表した。
映画の内容が反日的だと批判する団体が、映画館に街宣活動を行うなどと予告したためだ。映画の配給元の社長宅や事務所に対しては、実際に抗議活動が繰り返され、混乱を引き起こしていた。
映画館は、観客や近隣に迷惑がかかることを懸念したようだ。
一方で、3館と別の全国22の映画館で、来月3日からこの映画が順次、上映されることが決まった。卑劣な威嚇には屈しないという、配給元や映画館の強い姿勢を示したと言えよう。
こうした勇気を国民が支持することによって、自由で多様な言論は守られる。妨害による不測の事態が起きないよう、警察も警備に万全を期してほしい。
この映画は、米国の過激な環境保護団体のメンバーが、太地町を訪ねて製作した。今年の米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞したが、太地町の漁業関係者の許可を得ないまま、禁止区域に入っての撮影も行われた。
入り江に追い込まれたイルカが殺され、海が血で真っ赤に染まるシーンや、漁業関係者と映画のスタッフが、撮影を巡って押し問答する場面などが描かれている。
町や漁業関係者は、肖像権侵害の恐れがあり、イルカ肉から検出されたという水銀値などについての説明にも誤認があるとして、配給会社に上映中止を求めた。
これに対し配給会社は、映った漁業関係者の顔にぼかしを入れるなど、修整には応じたが、盗撮は隠しようもなく、手法に問題があったのは事実だろう。
ただし、内容がどのようなものであれ、公序良俗に反しない限り映画という表現の自由は、最大限尊重されなければならない。
内容に問題があるというなら、上映された作品を見て、それから批判すべきであろう。
2年前には、靖国神社をテーマにした中国人監督による日中合作のドキュメンタリー映画が、右翼団体による街宣活動などで、上映中止になったケースがある。
こうしたことが繰り返されるのは、極めて残念だ。
京セラは中南米の携帯電話機市場に進出する。今秋にも、新興国を中心に利用者が急増している「W―CDMA」規格の端末をメキシコに投入する。同社はこれまで北米で普及している「CDMA2000」規格に特化してきたが、W―CDMA規格の製品を加えることで販売地域を広げる。赤字だった北米事業の収益改善に伴い、海外市場で拡大策に転じる。
京セラは米通信機器子会社の京セラコミュニケーションズを通じ、メキシコの通信会社に端末を納入することで合意した。価格帯はやや高めだが機能を充実させ、低価格機種が多い既存メーカーとの違いを出す。
現地の商社を通じベネズエラへの納入も検討しており、順次、他の中南米諸国へ販路を拡大する考えだ。中南米の携帯電話出荷数は日本の4倍近い1億4000万台前後。現地では第2世代携帯電話の規格として普及した「GSM」の利用者もまだ多いため、W―CDMAとのデュアル端末も用意する見通し。
いずれも生産はシンガポールの電子機器の受託生産サービス(EMS)大手、フレクストロニクスに委託すると見られる。
これまで京セラは北米の通信会社や日本ではKDDI(au)が採用している第3世代携帯電話規格「CDMA2000」の生産に特化してきた。しかし、今後は新興国を中心にW―CDMAの市場が拡大すると見られるため、同規格に参入する。
京セラは北米市場での苦戦が響き、通信機器事業の赤字が続いていた。中国工場の閉鎖や開発・営業体制の再編など一連のリストラで、黒字化にメドを付けた。
京セラの携帯電話の世界出荷台数は、年1100万台強と見られる。IDCジャパン(東京・千代田)によると日系メーカーでは英ソニー・エリクソンに次いで2位。北米で多機能携帯電話「スマートフォン」を発売するなど、海外展開を加速している。
電子書籍端末、米で値下げ合戦 100ドル台が主戦場
【ニューヨーク=清水石珠実】米書店最大手バーンズ・アンド・ノーブルは21日、電子書籍端末「ヌック」の価格を259ドルから199ドルに引き下げると発表した。書籍などコンテンツの取り込みを携帯通信ではなく、無線LAN(構内情報通信網)に絞った機種も新たに149ドルで投入。同業のボーダーズが対抗機「コボ」を149ドルで販売するなど、電子書籍端末の主戦場が100ドル台に下落している状況に対応する。
これに対抗して、アマゾン・ドット・コムも同日、259ドルだった「キンドル」を189ドルに値下げすると発表。電子書籍端末で値下げ合戦が激化してきた。
「トイ・ストーリー3」首位 週末北米映画、初登場1億ドル超
週末の北米映画興行収入ランキングは、ウォルト・ディズニーの「トイ・ストーリー3」が1億900万ドル(約99億円)で初登場首位となった。ディズニー傘下のアニメ制作会社ピクサーにとって、封切り直後の週末興行成績が過去最高の作品となった。
調査会社ハリウッド・ドット・コム・ボックス・オフィスが20日に電子メールで配布した資料によると、封切り直後の週末興行成績でピクサー作品が首位となるのはこれで11作目。アニメ作品全体では「シュレック3」(1億2160万ドル)に次いで過去2番目の高水準だった。
トイ・ストーリー3は、おもちゃの世界を描いた同シリーズで初の3次元(3D)作品。カウボーイ人形のウッディの声をトム・ハンクスが演じる。おもちゃたちが、大学に入学する持ち主のアンディの元に行こうと企てるストーリーだ。ハリウッド・ドット・コムによると、ピクサー作品の封切り直後の週末興行成績でこれまでの最高は「Mr.インクレディブル」(2004年公開)の7050万ドルだった。
先週首位だった1984年公開の空手映画「ベスト・キッド」のリメーク版は2900万ドルで2位に後退した。同2位だった1980年代の人気テレビドラマシリーズ「特攻野郎Aチーム」の映画化作品は1380万ドルで3位。
ハリウッド・ドット・コムによると、上位12作品の北米週末興行収入は1億8790万ドルと、前年同期の1億4460万ドルを上回っている。年初来の興行収入合計は前年同期比約4.1%増の49億5000万ドル。年初来の映画館の来場者数は2.4%減少している。
NECモバ、テレビ会議でスマートフォン販促 画面で商品説明
携帯電話販売大手のNECモバイリングは今夏にも、同社が運営する「ドコモショップ」でテレビ会議システムを使った多機能携帯電話(スマートフォン)の販売を始める。専門の販売員をセンターに配置、画面を通じて来店した消費者の質問に答える。利用法が複雑なスマートフォンを専門販売員が丁寧に説明し、販売を拡大する。
同社や系列会社のドコモショップ全222店に順次導入する。消費者が店頭でスマートフォンの機種を選択するとセンターの専門販売員が応答。機能や操作方法のほか、購入後の設定方法などの質問に答える。
システムはNECと共同で開発。センターと店舗を高速回線で結ぶ。ハイビジョン画質で映像を送ることが可能で、販売員が端末を操作している様子なども鮮明に映す。
米アップルの「iPhone(アイフォーン)」などスマートフォンの販売は好調だが、従来の携帯電話と操作法が異なる部分が多く、販売時の説明が難しい。このため店舗での消費者の待ち時間が長くなるなどの問題が起きている。
経産など3省、電子書籍の著作権を管理 簡素化へ仕組み検討
経済産業、総務、文部科学の3省は電子書籍の普及に向け、出版物の著作者の権利を集中管理する仕組みをつくる検討に入った。電子書籍にからむ利用許可の手続きを簡素化する狙い。電子書籍を配信したい出版社は作家一人ひとりに許可を得る手間が省け、低コストでサービスを展開できるようになる。
3省共同の「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」が22日まとめる最終報告に盛り込む。
出版物の著作権を持つ作家や、作家から委託された出版社が電子化に関する著作権を集中管理団体などに一任する仕組みを検討する。団体は配信可能な作品をあらかじめ作家や出版社から集めたうえで、著作権の使用料率を決めておく。電子書籍を配信したい企業は使用料を払うことで電子化の許諾を得られる。電子化に伴う利益は団体が著作権者に分配する。
米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」などの普及で、電子書籍への需要が高まるなかで、配信促進には円滑な権利処理が欠かせないとみられている。
近く文化庁の主導で集中管理に関する検討会議を設置し、対象書籍や具体的な仕組み、運営主体などを話し合う。
企業の現預金、最大 3月末202兆円、設備投資に回らず
企業の手元資金(現金・預金)が増え続けている。日銀の資金循環統計によると、金融部門を除く民間企業の現金・預金の残高は3月末で前年比1.8%増の202兆7123億円となり、統計をさかのぼれる1980年3月末以降で最大となった。企業収益の回復で資金繰りが改善する一方、設備投資に二の足を踏む企業が多い。マネーストック統計などによると、4月以降も企業の手元資金の拡大が続いているとみられる。
企業の手元資金は2006年3月末にいったん200兆円を突破したが、リーマン・ショックで資金繰りが苦しくなった08年9月末には189兆円まで縮小していた。
その後、企業は資金繰りの悪化に備えて現金や預金を厚く持つ姿勢に転化。最近では業績がV字回復して現金収入が増えた一方で、設備投資などを抑制していることもあり、現金の形で企業に資金が積み上がっている。
世の中に出回るお金の量をまとめた日銀のマネーストック統計によると、現金と普通預金などの合計(M1)の前年比は3月の1.1%増に対し、4月が1.6%増、5月が2.0%増で徐々に高まっている。マネーストックは家計などの数字も含むが「企業の寄与が大きい」(日銀)といい、4月以降も企業の手元資金の増加基調が続いている可能性が高い。
企業の手元資金の拡大は、投資機会を見いだせない企業の姿を映している面もある。設備投資はようやく下げ止まったものの、新たな工場建設などの大規模な投資は限られている。先行きの不安感が根強いためで、企業が手持ちの現金や預金をいたずらに膨らませている構図ともいえる。
政府は新成長戦略を策定するなど、企業に成長分野への投資を促そうと躍起になっている。日銀もこうした動きを後押しする姿勢だ。企業が政府・日銀の狙い通りに本格的な投資に動き出せば、手元資金の増加にも歯止めがかかるとみられる。
ベンチャー投資額4割減 主要20社、09年度637億円
株式公開が激減 アジアにシフト
新興企業を支援するベンチャーキャピタル(VC)の投資額が落ち込んでいる。2009年度の投資実行額は主要20社で計637億円と、前年度に比べて4割の大幅減となった。企業の新規株式公開(IPO)の大幅な減少や業績低迷でVCが投資先を絞り込んでいるためだ。IPOが活発な中国や韓国などでの投資にシフトするVCも多い。資金面から新興企業を支えるVCの投資の落ち込みは、日本市場の低迷につながる恐れがある。
主要なVC20社を対象にアンケート調査を実施したところ、09年度の投資額は637億円で、前年度実績の1062億円から40%減となった。
VCの投資額は07年度の1395億円から、2年で半減したことになる。投資した企業数も566社と、2年前から6割減少した。
経済産業省の外郭団体の調査でも、09年度の投資額は1000億円を割り込んで、調査開始(1995年度)以来の最低になるのが確実な情勢だ。直近ピークは06年度の2000億円超だった。
VCは創業間もないが、高い技術力を持つ新興企業などに出資。何年もかけて新興企業の上場を支援する。VCのファンドに出資する機関投資家は、投資先の新興企業が上場すれば、ファンドの償還時に利益を得られる。
だが09年は企業業績の低迷から国内市場のIPOは19社にとどまり、直近ピークの06年(188社)のわずか1割まで激減した。収益確保の見通しが立てにくくなったためVCが企業への投資を渋り、資金調達が難しくなった新興企業がさらにIPOから遠のく悪循環が起きている。機関投資家も成績の悪化したVCファンドへの出資を手控えている。
国内市場でのIPOの激減などから、中国や韓国などアジア各国・地域で、ファンドを設立する動きが増えている。ベトナムや台湾でファンドを相次ぎ設立したSBIホールディングスは09年度中に投資拡大を進め、海外投資額は合計130億円と、2年前の2倍以上に増えた。主要20社の投資額全体に占める海外投資の割合は07年度は3割だったが、09年度には4割に上昇した。
こうした流れをふまえ、日本ベンチャーキャピタル協会は、韓国のVC協会と新興企業の情報公開などで協力する包括的な提携を締結した。
10年度に計画する国内外を合わせた投資額では、アンケートに回答した11社のうち、10社が09年度を上回った。前年度に比べて環境改善を見込んでいるVCが多いが、国内のIPOの大幅な増加には期待できず、年間で30~40社にとどまるとみられる。
共同通信、携帯向け地方紙ニュースサイト
共同通信社は21日、地方紙や専門誌などのニュースサイトを集めた携帯電話向けの情報配信サービスを始めると発表した。
利用者が一つのサイトで記事を読むと、他のサイトが配信している関連記事を自動的に探し出し、紹介する機能を設けた。
当面は共同通信や河北新報社など13サイトで始め、年内に100社の参加を目指す。購読料はサイトごとに設定されており、100円から500円程度という。
「飲み放題」で頭痛い居酒屋 アルコール規制 WHO指針
アルコールの乱用による健康被害や社会的悪影響を減らすために世界保健機関(WHO)が採択した指針が、居酒屋などの飲食業界やビールメーカーなど関連業界を震撼(しんかん)させている。指針の中に、一定の金額を払えば時間内の飲酒が無制限になる「飲み放題」の取り締まりを求める表現が含まれているためだ。飲み放題はいまや居酒屋の定番メニューで、規制されると業界への大打撃は避けられない。WHOの提唱を受け規制が強化されたたばこの事例があるだけに、業界内では警戒感が広がっている。
飲み放題規制が盛り込まれたのは、WHOが今年5月20日に開いた総会(WHA)で採択した「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」という指針だ。
この中に、国として取り組むべき内容として、「(アルコール飲料の)直接的、間接的な割引販売、原価割れ販売および飲み放題均一料金、またはそれ以外の大量販売の禁止または制限」という項目が盛り込まれたのだ。
都内のある居酒屋の幹部は「飲み放題を違法にせよと言っているのに等しい。飲み放題は競争の激しい市場で一定の力を維持するための必修科目のようなもの。これができなくなれば客足に大きく響く」と警戒する。別の居酒屋チェーン大手幹部も「飲み放題プランの多くは宴会客の利用で、時期によって変動はあるが全体の2~3割程度を占める。規制は業界の経営を直撃しかねない」と指摘する。
WHOがアルコール有害使用の規制を求めたのには事情がある。飲み過ぎによって精神神経疾患、肝硬変、がんなど多くの疾病を引き起こしているほか、泥酔による暴力、暴行、器物損壊、痴漢などの事件は収まる兆しをみせず、飲酒運転による事故など多くの社会的悪影響の引き金にもなっている現実があるためだ。
WHOの2009年の調査では、世界の若者の死亡と身体障害の理由の3位がアルコールの大量摂取だった。また04年の調査では世界で約250万人がアルコールの摂取が原因で死亡していて、全死亡者の3.8%を占めるという。
採択された指針は、そうしたアルコールの有害使用を地域、国、地球規模で減らす取り組みを促すことが目的。現状分析のほか、国家単位で取り組みが必要な対策や地球規模で取り組みが必要な対策など、多岐にわたって報告している。特に「国がとるべき政策と対策」は10領域、68項目と詳細に言及していて、飲み放題規制もこの中に盛り込まれている。
■業界「第2のたばこ」警戒
WHOの指針により、日本がただちに規制に踏み切るかというと、今のところそうした動きは見あたらない。厚生労働省健康局生活習慣病対策室は「まずは実態調査をしようかどうか検討しているところ」と比較的冷静で、具体的な規制導入に踏み切る姿勢を見せていない。
背景には、すでに日本が幅広く飲酒に関連した負の面の対策に取り組んできた事情がある。
飲酒運転や未成年の飲酒を禁じるルールは法律で整備されている。不当に安い価格での販売の歯止めには、酒税が一定の役割を果たしている。ビールの業界団体、ビール酒造組合がテレビコマーシャルの時間制限を自主規制で制定するなど業界団体の自主規制も進んでいて、未成年飲酒防止活動なども自主的に取り組んでいる。ビール酒造組合と日本洋酒酒造組合は世界の自主規制組織GAPにも参加しており、取り組みは積極的だ。
このため中には「冷静に受け止めている。現在のところ具体的な規制導入は考えていない」(居酒屋チェーン「白木屋」を運営するモンテローザ)という事業者もいる。
それでもなお不安が消えないのは、同じ嗜好品の産業として認められているたばこは、規制強化が急ピッチで進んでいるからだ。
たばこでは、他人の煙を吸いこむ受動喫煙を防止するため、WHOが公共施設での原則禁煙を打ち出して、各国が取り組みを進めている。日本では2月に厚生労働省が全国の都道府県知事に対し公共施設での原則禁煙を通知したほか、今年4月には神奈川県が全国初の罰金付きの受動喫煙防止条例を定めた。
神奈川県では多くの店が全面禁煙に踏み切ったり、設備投資をして「完全分煙」にして喫煙スペースを設けるなど対応を迫られていて、居酒屋などの業界にも「こうした対応がいつ迫られるかわからない」(都内のバー)と延焼を心配する。
あるディスカウントチェーンの幹部は「有害使用の防止の意味は理解できるし必要だと思う。でも健康食品以外すべてを排除する流れには歯止めをかけないと、嗜好品そのものが絶滅しかねない」と話している。
イルカ漁映画 問題あっても妨害は許されぬ(6月22日付・読売社説)
言論・表現の自由は、民主主義社会の基本だ。威圧的な抗議活動などで映画の上映を妨害することは許されない。
和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に描いた米国のドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」の国内上映が、一部で中止に追い込まれた問題である。
上映を予定していた東京、大阪の3館が今月初めに、相次いで断念を発表した。
映画の内容が反日的だと批判する団体が、映画館に街宣活動を行うなどと予告したためだ。映画の配給元の社長宅や事務所に対しては、実際に抗議活動が繰り返され、混乱を引き起こしていた。
映画館は、観客や近隣に迷惑がかかることを懸念したようだ。
一方で、3館と別の全国22の映画館で、来月3日からこの映画が順次、上映されることが決まった。卑劣な威嚇には屈しないという、配給元や映画館の強い姿勢を示したと言えよう。
こうした勇気を国民が支持することによって、自由で多様な言論は守られる。妨害による不測の事態が起きないよう、警察も警備に万全を期してほしい。
この映画は、米国の過激な環境保護団体のメンバーが、太地町を訪ねて製作した。今年の米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞したが、太地町の漁業関係者の許可を得ないまま、禁止区域に入っての撮影も行われた。
入り江に追い込まれたイルカが殺され、海が血で真っ赤に染まるシーンや、漁業関係者と映画のスタッフが、撮影を巡って押し問答する場面などが描かれている。
町や漁業関係者は、肖像権侵害の恐れがあり、イルカ肉から検出されたという水銀値などについての説明にも誤認があるとして、配給会社に上映中止を求めた。
これに対し配給会社は、映った漁業関係者の顔にぼかしを入れるなど、修整には応じたが、盗撮は隠しようもなく、手法に問題があったのは事実だろう。
ただし、内容がどのようなものであれ、公序良俗に反しない限り映画という表現の自由は、最大限尊重されなければならない。
内容に問題があるというなら、上映された作品を見て、それから批判すべきであろう。
2年前には、靖国神社をテーマにした中国人監督による日中合作のドキュメンタリー映画が、右翼団体による街宣活動などで、上映中止になったケースがある。
こうしたことが繰り返されるのは、極めて残念だ。
新聞発行部数の減少率、2007年以降で米国が 30%、英国が21%、日本が15%も減少
先進国を中心に、新聞の発行部数が減り始めている。
OECD(経済協力開発機構)レポートよると、OECD加盟国では2007年-2009年の3年間でこぞって新聞の発行部数を減らしてきている。米国では30%、英国では21%、そして日本では15%と、2007年以降、新聞発行部数が大幅に減ってしまったのだ。
ただしOECDに加盟していない中国やインドでは新聞の発行部数が増えており、世界的に見れば発行部数は減っていない。だが英国や米国のような新聞先進国では、読者離れによる新聞崩壊が迫ってきているのである。
特に深刻なのは米国である。発行部数の急減と、広告主離れ、景気後退などが重なって、新聞紙広告売上高が急減し、これからも大きな回復が期待できないからだ。同じOECDレポートのグラフによると、米国の新聞は売上高のうち87%も広告売上に依存していた。その広告売上が急落し続けているのだから、大変なのだ。ちなみに、英国の新聞は広告売上依存率が50%、日本の新聞は35%となっている。
米国を中心に先進国では、新聞産業が斜陽化してきているのだが、日本は安泰とみられることもあるようだ。OECDレポートを紹介しているアイルランドの新聞記事では、日本は世界で最も熱心な新聞読者を抱えた国で、1000人のうち有料新聞を購読している人が526人もいると伝えている。これは世界でトップで、その後を458人のノルウェー、400人のフィンランド、362人のスウェーデンが続いている。米国はわずか160人で、オーストラリアは116人、イタリアは90人である。
こうした熱心な読者に支えられて、世界の発行部数ランキングでトップ10の新聞のうち5紙が、日本の新聞が占めているそうな。そして、発行部数が世界トップの新聞も、約1000万部の日本の読売新聞となる。数字だけで判断すると、日本は新聞天国に見えているのかも。
漫画の性表現、都条例案を否決 青少年保護、意欲空回り
漫画やアニメの成人向け指定基準の強化などを盛り込んだ東京都青少年健全育成条例の改正案が都議会で否決された。石原慎太郎知事は都政の目玉に治安・青少年対策を掲げ、その部門に警察出身のプロを受け入れてきた。しかし、青少年対策強化の意欲が空回りした面があるようだ。
■ ■
東京都のほか、ほぼ全国の道府県が制定している青少年条例は、刑法のわいせつ図画に該当しなくても、性的感情を著しく刺激し青少年に有害とされる図書類(都の名称は不健全図書)の販売を成人コーナーに制限している。業界の自主規制に加え、都は独自に有害図書を指定している。
青少年条例は、青少年が深夜に興行施設などに立ち入るのを問題視する保護者からの声を受け、国の法律とは別に自治体によって整備が始まった。時代に即し、有害図書規制など様々な規制が条例に追加されてきた。
今回の都の青少年条例の改正案はメディア社会への対応が意識され、児童ポルノ対策が目玉となった。国の法律である児童買春・児童ポルノ禁止法は被写体が18歳未満のポルノの製造、販売を禁じているが、ネット時代における買い手の規制として単純所持の罰則化の必要性が検討されながら、成立に至っていない。
条例の改正案に罰則はないが、都民に所持しない責務を課した。また、取り締まり対象外とされるジュニアアイドル誌ではモデルの年齢が13歳未満の場合、独自に製造などを指導対象とした。
改正案は漫画やアニメなどで描かれた子ども(「非実在青少年」と定義)を性的な交渉対象として肯定的に扱った場合、有害図書類に指定。児童ポルノ禁止法の対象に漫画やアニメを加えるべきだという議論が根強くあるが、都の改正案は国の法律に先行した形だ。
児童ポルノ禁止法は、子どもを性的搾取から守ることが目的。漫画やアニメの規制論では実在の被害者はいないが、子どもを性の商品対象とする世相を改めようとしている。条例に導入されると「あいまいな規定が表現行為への萎縮効果をもたらす」と、出版、漫画業界が強く反発。民主党など都議会多数派を慎重論に傾かせた。
また、改正案には携帯電話やインターネットのフィルタリング(閲覧制限)規制強化の条項も盛り込まれた。民間の自主ルールを尊重する「青少年インターネット環境整備法」が昨春施行したばかりだけに、憲法学者や関係業界は「自主ルールの対策が不十分とする根拠が不明。法の趣旨にも反する」と猛反発した。
都条例案は、知事が条例で定めた不適切な行為をした青少年の保護者を呼び出し監督し、調査する権限が盛り込まれているのも異色だ。親のモラル低下や児童ポルノ問題の深刻さが家庭に伝わっていないとのいら立ちと危機感を反映する。
■ ■
青少年保護の歴史は、表現の自由など社会の多様な価値とのバランスをどうとるのかという議論の積み重ねでもある。石原都知事は改正案の再提出に意欲を示す。ただ、関係業界にも家庭にも理解や共通認識がなければ、目的は正しくても成果は得られようがない。
Xbox 360従来モデル値下げ 新型発売で
マイクロソフトは6月24日の「Xbox 360 250GB」(2万9800円)発売に合わせ、Xbox 360の従来モデルを値下げする。
「Xbox 360 エリート」は2万9800円から5000円値下げし、2万4800円に、「Xbox 360 アーケード」1万9800円からオープン価格に改訂する。
24日発売の「Xbox 360 250GB」は、従来よりスリムなブラックの筐体でWi-Fiを内蔵。HDDは250Gバイトに拡張している。
紀伊国屋書店、電子書籍に参入
書店最大手の紀伊国屋書店は21日、電子書籍事業に参入すると発表した。9月に米アップルの多機能端末「iPad(アイパッド)」とスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」向けに文芸書などの配信を開始。年内にも同じコンテンツを「SDカード」など記録媒体にも保存して店頭でも販売する。2~3年以内に200億円の売上高を目指す。
講談社や小学館など大手出版社から電子書籍用のコンテンツの供給を受ける見込み。紀伊国屋書店以外のサイトで購入した電子書籍についても、一元管理できるソフトを無料で配布し、利用者の利便性を高めるという。凸版印刷などと技術面で協力。iPad、iPhone以外の端末への対応も進める。
Twitterに記録的な投稿数、W杯やNBAファイナルが影響
米Twitterは18日、サッカーワールドカップ(W杯)と米プロバスケットボール(NBA)の影響によって、1秒あたりのツイート数の記録が次々と塗り替えられていることを明らかにした。
これまでに行われたW杯の試合で、ゴール直後30秒間における1秒あたりのツイート数が最も多かったのは14日の日本対カメルーン戦。日本が得点を決めた直後には1秒あたり2940件のツイートが投稿され、過去最高記録を更新した。
次いで多かったのは、14日のブラジル対北朝鮮戦においてブラジルが先取点を決めた直後で2928件、11日のメキシコ対南アフリカ戦においてメキシコが同点に追いついた直後で2704件。
しかし、17日に行われた、NBA王者を決めるファイナル第7戦では、レイカーズがセルティックスを下した直後に1秒あたり3085件のツイートが投稿され、これまでの記録を塗り替えた。
なお、Twitterによれば1秒あたりの平均ツイート数は750件、1日のツイート数は合計で約6500万に上るという。
NHKアナ発言影響?オランダ戦視聴率43%
テレビ朝日系で19日夜に放送されたサッカー・ワールドカップ南アフリカ大会の「日本対オランダ戦」の平均視聴率(関東地区)が、43・0%だったことが21日、ビデオリサーチの調べで分かった。
瞬間最高視聴率は、試合終了時の19日午後10時19分で、55・4%だった。
ホットココア、Twitter上の“願望”を吸い上げる「したいなう」
株式会社ホットココアは21日、Twitterにおけるユーザーの“願望”を吸い上げるというサイト「したいなう」を正式公開した。利用は無料。
Yahoo! JAPANが提供するテキスト解析Web APIを利用し、願望に関連するTwitter上のフレーズを抽出。トップページに、願望ごとのフレーズをまとめたリンクを掲載する。例えば、「当選したい」「結婚したい」「願望したい」「iPadしたい」といったものだ。
また、各フレーズのリンクからは、Twitterにログインしなくても匿名で「したいなう」のページ内でのみ発言できる機能も備える。
ホットココアは、「非モテSNS」管理人の永上裕之氏が4月1日に設立した会社。
百貨店に“薄日”? 5月の売上高、22カ月ぶりに2%台のマイナスに
日本百貨店協会が21日発表した5月の全国百貨店売上高は、既存店ベースで前年同月比%2.1減と27カ月連続で前年実績を割り込んだ。ただ減少率は2008年7月(2.5%減)以来22カ月ぶりにマイナス2%台まで復調するなど、苦戦を続けてきた百貨店販売にも、“薄日”が差し込み始めてきたようだ。
商品別の動向では、衣料品が2.6%減とマイナス幅を圧縮したほか、美術.宝飾.貴金属も0.7%減にとどまるなど高額品の売れ行きも回復基調にある。この日、会見した同協会の飯岡瀬一専務理事は「消費に改善の兆しが見られる」と潮目の変化を口にした。
ただ、昨年の5月は、新型インフルエンザの感染発生影響で、低水準だったなど5月の販売に特殊要因があったのも事実だ。節約志向が依然として根強いなか、夏場に向けて本格的な回復の兆しが示されるのかが、消費回復の動向を占う試金石となりそうだ。
コンビニ5月売上高、3・2%減の12カ月連続減
日本フランチャイズチェーン協会が21日発表した5月の主要コンビニエンスストア10社の既存店売上高は、前年同月比3.2%減の6113億円と12カ月連続のマイナスとなった。下旬の天候不順に加えて、消費者の低価格志向の高まりで既存店の来店客数は1.0%減と11カ月連続で減少した。また、商品の購入点数の落ち込みなどで、客単価は2.3%減の558.2円と18カ月連続で前年を下回ったことなどが響いた。
新店を含む全店売上高も1.1%減の6621億円と11カ月連続の前年割れ。しかし、全店の来店客数は1.1%減と2カ月ぶりにプラスに転じた。客単価は2.2%減の564.2円と落ち込んだ。
コンビニの長期低迷は、所得の減少や雇用不安を背景に、主力の弁当類などの売り上げ不振が続いており、浮上のきっかけは見えていない。
携帯向け新放送、11年度にも 高画質の独自番組、有料で
携帯電話端末向けの新しい全国放送サービスが2011年度にも始まる。映像を視聴するだけではなく、同時にニュースなどの文字情報を画面に映し出せる。さらに電子書籍やゲームなどをデータ放送で受信し、後で楽しむという使い方も見込まれている。
新放送は、テレビの地上アナログ放送が来夏に終了した後に「空き地」となる電波のうち、207.5~222メガヘルツを使って放送する。限られた帯域を効率的に使うため、国は既存の放送事業者以外の1社に電波をまとめて割り当てる方針。NTTドコモとKDDIがそれぞれ放送事業参入に意欲をみせており、今夏にも決まる見通しだ。
不特定多数の人を相手にする放送サービスで現在、携帯端末向けであるのは「ワンセグ」のみ。テレビ局が地上デジタル波の一部を使い、「地デジ」と同じ番組を流している。新放送サービスでは、事業者がスポーツや映画などを独自に調達して放送する。映像の画質はワンセグより良く、10以上の番組を同時放送できるという。番組は月額数百円の有料番組が中心になりそうだ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の森行真司氏は「映画会社やテレビ局などが事業者にコンテンツを供給しやすい仕組みを作れるかが事業成功のカギになる」と指摘する。
財政再建策、最大23兆円財源不足 10年後予測
22日に閣議決定する2020年度までの財政再建策を達成するには、財源の不足額が5年後で5兆円、10年後では最大23兆円に達することが21日、わかった。菅直人首相が検討を表明した10%程度への消費税増税だけでは財政再建は厳しく、より踏み込んだ増税などの歳入増や歳出削減が必要になる計算だ。
閣議決定するのは、20年度までの財政健全化の道筋を示す「財政運営戦略」と、11年度から3年間の歳出の大枠を定める「中期財政フレーム」。このなかで、今後3年間は借金の利払いを除く歳出を10年度並み(71兆円)に抑える。財政の健全度を示す指標で、国債発行を除いた歳入と国債の返済分を除いた歳出を比べた基礎的財政収支(プライマリーバランス)について、今年度の国と地方をあわせた30兆円超の赤字額を5年後に半減し、10年後に黒字化する。
記者の目◇ソニーの株主総会で気がかりなこと
電機大手のトップを切ってソニーの株主総会が18日、東京都港区のグランドプリンスホテル新高輪で開かれた。2010年3月期から有価証券報告書で役員報酬の個別開示が義務付けられたことで注目が集まったハワード・ストリンガー会長兼社長らの報酬額の公表も、会社側の周到な準備が奏功して大きな混乱は見られなかった。ただ、個人投資家の人気が高く例年注目度の高いソニーの株主総会にしては、やや盛り上がりに欠けていたように感じたが気のせいだろうか。
「では第3会場からの質問受付に移ります。質問を希望する株主の方はいらっしゃいませんか?」。ソニーの株主総会は出席者が多いため、3つの会場に分かれている。会社側から事業報告などの説明があった後、質疑応答の時間となり、第1会場から順に質問を受け付けていく。第1会場で3人、第2会場では2人が質問。第3会場に移るが、だれも質問者が現れない。
やや間があって、担当者が引き取る。「それではもう一度、第1会場に戻ります。質問はございませんか?」。6人目になって、ようやく役員報酬の個別開示について質問が出る。「議案を採決するにあたり、株主に基本情報が与えられていない。報酬が1億円以上の氏名と金額を開示してほしい」。事前に準備していたとみられ、ストリンガー会長、報酬委員会議長の橘・フクシマ・咲江氏が報酬の決定方針などをよどみなく答える。最後にもう1人質問に立ち、質疑応答が終わった。
質問者は7人で、例年より少なかったようだ。08年まで7年連続で役員報酬の個別開示の株主提案を出し続けてきた株主オンブズマン代表の森岡孝二関西大学教授をはじめ、ソニーOBや環境関連の投資ファンドなど、「おなじみ」の顔が中心。総会の所要時間は昨年とほぼ同じ138分だったが、ストリンガー会長の発言の際に通訳を介するため、どうしても全体的に間延びしてしまう。
それ以上に引っかかるのは、出席者が7827人と昨年(8329人)より減ったことだ。08年、09年と過去最高を更新していたのが途切れた。この日は総会集中日でもなく、会場となった東京では朝方の天気が目立って悪かったわけでもない。株主向けに総会のネット中継を初めて実施したことが影響した可能性もあるが、平日の午前中に総会をネット中継で見る株主も限定的だろう。3月末時点の株主総数が昨年より減ったことも影響しているかもしれないが、株主のソニーの総会への関心が薄れているとしたら気がかりだ。
ソニーの株主総会には様々な逸話がある。古くは1984年の13時間半に及んだ「マラソン総会」。怒号を浴びせる総会屋を相手に、大賀典雄社長(当時)が一歩も引かなかったといわれる。出井伸之社長(当時)の時代には総会後に株主懇談会を開き、個人株主と経営陣らが新製品などの話題で和やかに交流した。
「ソニーの輝きが失われているのではないか。ソニーの株価は今の実態を反映している」。18日の総会では株主から毎度おなじみの発言が出たが、この発言自体も色あせてきているようにさえ見える。高齢者や主婦が出席者の多数を占め、セレモニー的な色彩が強い総会とはいえ、もっと生かす余地はまだあると思うのだが――。
【産経主張】シベリア特措法 忘れまいソ連の不法行為
第二次大戦後に旧ソ連のシベリアなどに抑留された日本人に1人当たり25万~150万円の特別給付金を支給する特別措置法が成立した。
シベリア抑留は、昭和20(1945)年8月に日ソ中立条約を破って旧満州などに侵入した旧ソ連軍によって引き起こされた歴史的な犯罪行為である。関東軍将兵ら約60万人がシベリアなどの収容所に連行され、最高11年半に及ぶ強制労働をさせられた結果、約6万人が死亡したといわれる。
これは、ソ連も加わったポツダム宣言の日本軍人らの本国帰還を求めた規定(第9条)にも違反している。本来、ソ連(現ロシア)の責めに帰すべき問題である。
しかし、昭和31年の日ソ共同宣言で、日本はソ連への賠償請求権を放棄した。その後、抑留体験者の一部が国に強制労働の未払い賃金などの補償を求める訴訟を起こしたが、最高裁は平成9年、「戦争被害は国民が等しく受忍しなければならない」として、原告側の要求を退け、補償の要否を立法府に委ねた。
その結論が戦後65年たって、ようやく出されたといえる。ただ、給付金の支給対象は生存している元抑留者に限られる。帰国した46万人を超える元抑留者のうち、生存者は7万~8万人で、平均年齢は87歳前後と推定される。
特措法は、抑留の実態調査や遺骨収集、追悼などを行うための基本方針策定も政府に義務づけた。異国の地で亡くなった人や、帰国後、特措法を待てずに死亡した元抑留者のためにも、国はこれらの義務をきちんと果たすべきだ。
ソ連崩壊後、明るみに出た機密文書などによれば、シベリア抑留はソ連の独裁者、スターリン首相の指令によって行われたものだ。北海道の北半分の占領を狙ったスターリンの要求を米国のトルーマン大統領が拒否し、その代償として抑留を強行したのである。
今回の特措法をめぐり、シベリア抑留は「日本の侵略戦争」などが引き起こしたとする論調が一部マスコミにあるが、歴史を直視しない一方的な見方である。
ソ連の不法な対日参戦で、多くの日本の民間人も犠牲になった。しかも、ソ連は日本固有の領土である北方四島を占領し、ソ連を引き継いだロシアは今も不法占拠を続けている。日本国民はこうしたソ連の不法な行為を子や孫たちに語り継いでいかねばならない。
先進国を中心に、新聞の発行部数が減り始めている。
OECD(経済協力開発機構)レポートよると、OECD加盟国では2007年-2009年の3年間でこぞって新聞の発行部数を減らしてきている。米国では30%、英国では21%、そして日本では15%と、2007年以降、新聞発行部数が大幅に減ってしまったのだ。
ただしOECDに加盟していない中国やインドでは新聞の発行部数が増えており、世界的に見れば発行部数は減っていない。だが英国や米国のような新聞先進国では、読者離れによる新聞崩壊が迫ってきているのである。
特に深刻なのは米国である。発行部数の急減と、広告主離れ、景気後退などが重なって、新聞紙広告売上高が急減し、これからも大きな回復が期待できないからだ。同じOECDレポートのグラフによると、米国の新聞は売上高のうち87%も広告売上に依存していた。その広告売上が急落し続けているのだから、大変なのだ。ちなみに、英国の新聞は広告売上依存率が50%、日本の新聞は35%となっている。
米国を中心に先進国では、新聞産業が斜陽化してきているのだが、日本は安泰とみられることもあるようだ。OECDレポートを紹介しているアイルランドの新聞記事では、日本は世界で最も熱心な新聞読者を抱えた国で、1000人のうち有料新聞を購読している人が526人もいると伝えている。これは世界でトップで、その後を458人のノルウェー、400人のフィンランド、362人のスウェーデンが続いている。米国はわずか160人で、オーストラリアは116人、イタリアは90人である。
こうした熱心な読者に支えられて、世界の発行部数ランキングでトップ10の新聞のうち5紙が、日本の新聞が占めているそうな。そして、発行部数が世界トップの新聞も、約1000万部の日本の読売新聞となる。数字だけで判断すると、日本は新聞天国に見えているのかも。
漫画の性表現、都条例案を否決 青少年保護、意欲空回り
漫画やアニメの成人向け指定基準の強化などを盛り込んだ東京都青少年健全育成条例の改正案が都議会で否決された。石原慎太郎知事は都政の目玉に治安・青少年対策を掲げ、その部門に警察出身のプロを受け入れてきた。しかし、青少年対策強化の意欲が空回りした面があるようだ。
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東京都のほか、ほぼ全国の道府県が制定している青少年条例は、刑法のわいせつ図画に該当しなくても、性的感情を著しく刺激し青少年に有害とされる図書類(都の名称は不健全図書)の販売を成人コーナーに制限している。業界の自主規制に加え、都は独自に有害図書を指定している。
青少年条例は、青少年が深夜に興行施設などに立ち入るのを問題視する保護者からの声を受け、国の法律とは別に自治体によって整備が始まった。時代に即し、有害図書規制など様々な規制が条例に追加されてきた。
今回の都の青少年条例の改正案はメディア社会への対応が意識され、児童ポルノ対策が目玉となった。国の法律である児童買春・児童ポルノ禁止法は被写体が18歳未満のポルノの製造、販売を禁じているが、ネット時代における買い手の規制として単純所持の罰則化の必要性が検討されながら、成立に至っていない。
条例の改正案に罰則はないが、都民に所持しない責務を課した。また、取り締まり対象外とされるジュニアアイドル誌ではモデルの年齢が13歳未満の場合、独自に製造などを指導対象とした。
改正案は漫画やアニメなどで描かれた子ども(「非実在青少年」と定義)を性的な交渉対象として肯定的に扱った場合、有害図書類に指定。児童ポルノ禁止法の対象に漫画やアニメを加えるべきだという議論が根強くあるが、都の改正案は国の法律に先行した形だ。
児童ポルノ禁止法は、子どもを性的搾取から守ることが目的。漫画やアニメの規制論では実在の被害者はいないが、子どもを性の商品対象とする世相を改めようとしている。条例に導入されると「あいまいな規定が表現行為への萎縮効果をもたらす」と、出版、漫画業界が強く反発。民主党など都議会多数派を慎重論に傾かせた。
また、改正案には携帯電話やインターネットのフィルタリング(閲覧制限)規制強化の条項も盛り込まれた。民間の自主ルールを尊重する「青少年インターネット環境整備法」が昨春施行したばかりだけに、憲法学者や関係業界は「自主ルールの対策が不十分とする根拠が不明。法の趣旨にも反する」と猛反発した。
都条例案は、知事が条例で定めた不適切な行為をした青少年の保護者を呼び出し監督し、調査する権限が盛り込まれているのも異色だ。親のモラル低下や児童ポルノ問題の深刻さが家庭に伝わっていないとのいら立ちと危機感を反映する。
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青少年保護の歴史は、表現の自由など社会の多様な価値とのバランスをどうとるのかという議論の積み重ねでもある。石原都知事は改正案の再提出に意欲を示す。ただ、関係業界にも家庭にも理解や共通認識がなければ、目的は正しくても成果は得られようがない。
Xbox 360従来モデル値下げ 新型発売で
マイクロソフトは6月24日の「Xbox 360 250GB」(2万9800円)発売に合わせ、Xbox 360の従来モデルを値下げする。
「Xbox 360 エリート」は2万9800円から5000円値下げし、2万4800円に、「Xbox 360 アーケード」1万9800円からオープン価格に改訂する。
24日発売の「Xbox 360 250GB」は、従来よりスリムなブラックの筐体でWi-Fiを内蔵。HDDは250Gバイトに拡張している。
紀伊国屋書店、電子書籍に参入
書店最大手の紀伊国屋書店は21日、電子書籍事業に参入すると発表した。9月に米アップルの多機能端末「iPad(アイパッド)」とスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」向けに文芸書などの配信を開始。年内にも同じコンテンツを「SDカード」など記録媒体にも保存して店頭でも販売する。2~3年以内に200億円の売上高を目指す。
講談社や小学館など大手出版社から電子書籍用のコンテンツの供給を受ける見込み。紀伊国屋書店以外のサイトで購入した電子書籍についても、一元管理できるソフトを無料で配布し、利用者の利便性を高めるという。凸版印刷などと技術面で協力。iPad、iPhone以外の端末への対応も進める。
Twitterに記録的な投稿数、W杯やNBAファイナルが影響
米Twitterは18日、サッカーワールドカップ(W杯)と米プロバスケットボール(NBA)の影響によって、1秒あたりのツイート数の記録が次々と塗り替えられていることを明らかにした。
これまでに行われたW杯の試合で、ゴール直後30秒間における1秒あたりのツイート数が最も多かったのは14日の日本対カメルーン戦。日本が得点を決めた直後には1秒あたり2940件のツイートが投稿され、過去最高記録を更新した。
次いで多かったのは、14日のブラジル対北朝鮮戦においてブラジルが先取点を決めた直後で2928件、11日のメキシコ対南アフリカ戦においてメキシコが同点に追いついた直後で2704件。
しかし、17日に行われた、NBA王者を決めるファイナル第7戦では、レイカーズがセルティックスを下した直後に1秒あたり3085件のツイートが投稿され、これまでの記録を塗り替えた。
なお、Twitterによれば1秒あたりの平均ツイート数は750件、1日のツイート数は合計で約6500万に上るという。
NHKアナ発言影響?オランダ戦視聴率43%
テレビ朝日系で19日夜に放送されたサッカー・ワールドカップ南アフリカ大会の「日本対オランダ戦」の平均視聴率(関東地区)が、43・0%だったことが21日、ビデオリサーチの調べで分かった。
瞬間最高視聴率は、試合終了時の19日午後10時19分で、55・4%だった。
ホットココア、Twitter上の“願望”を吸い上げる「したいなう」
株式会社ホットココアは21日、Twitterにおけるユーザーの“願望”を吸い上げるというサイト「したいなう」を正式公開した。利用は無料。
Yahoo! JAPANが提供するテキスト解析Web APIを利用し、願望に関連するTwitter上のフレーズを抽出。トップページに、願望ごとのフレーズをまとめたリンクを掲載する。例えば、「当選したい」「結婚したい」「願望したい」「iPadしたい」といったものだ。
また、各フレーズのリンクからは、Twitterにログインしなくても匿名で「したいなう」のページ内でのみ発言できる機能も備える。
ホットココアは、「非モテSNS」管理人の永上裕之氏が4月1日に設立した会社。
百貨店に“薄日”? 5月の売上高、22カ月ぶりに2%台のマイナスに
日本百貨店協会が21日発表した5月の全国百貨店売上高は、既存店ベースで前年同月比%2.1減と27カ月連続で前年実績を割り込んだ。ただ減少率は2008年7月(2.5%減)以来22カ月ぶりにマイナス2%台まで復調するなど、苦戦を続けてきた百貨店販売にも、“薄日”が差し込み始めてきたようだ。
商品別の動向では、衣料品が2.6%減とマイナス幅を圧縮したほか、美術.宝飾.貴金属も0.7%減にとどまるなど高額品の売れ行きも回復基調にある。この日、会見した同協会の飯岡瀬一専務理事は「消費に改善の兆しが見られる」と潮目の変化を口にした。
ただ、昨年の5月は、新型インフルエンザの感染発生影響で、低水準だったなど5月の販売に特殊要因があったのも事実だ。節約志向が依然として根強いなか、夏場に向けて本格的な回復の兆しが示されるのかが、消費回復の動向を占う試金石となりそうだ。
コンビニ5月売上高、3・2%減の12カ月連続減
日本フランチャイズチェーン協会が21日発表した5月の主要コンビニエンスストア10社の既存店売上高は、前年同月比3.2%減の6113億円と12カ月連続のマイナスとなった。下旬の天候不順に加えて、消費者の低価格志向の高まりで既存店の来店客数は1.0%減と11カ月連続で減少した。また、商品の購入点数の落ち込みなどで、客単価は2.3%減の558.2円と18カ月連続で前年を下回ったことなどが響いた。
新店を含む全店売上高も1.1%減の6621億円と11カ月連続の前年割れ。しかし、全店の来店客数は1.1%減と2カ月ぶりにプラスに転じた。客単価は2.2%減の564.2円と落ち込んだ。
コンビニの長期低迷は、所得の減少や雇用不安を背景に、主力の弁当類などの売り上げ不振が続いており、浮上のきっかけは見えていない。
携帯向け新放送、11年度にも 高画質の独自番組、有料で
携帯電話端末向けの新しい全国放送サービスが2011年度にも始まる。映像を視聴するだけではなく、同時にニュースなどの文字情報を画面に映し出せる。さらに電子書籍やゲームなどをデータ放送で受信し、後で楽しむという使い方も見込まれている。
新放送は、テレビの地上アナログ放送が来夏に終了した後に「空き地」となる電波のうち、207.5~222メガヘルツを使って放送する。限られた帯域を効率的に使うため、国は既存の放送事業者以外の1社に電波をまとめて割り当てる方針。NTTドコモとKDDIがそれぞれ放送事業参入に意欲をみせており、今夏にも決まる見通しだ。
不特定多数の人を相手にする放送サービスで現在、携帯端末向けであるのは「ワンセグ」のみ。テレビ局が地上デジタル波の一部を使い、「地デジ」と同じ番組を流している。新放送サービスでは、事業者がスポーツや映画などを独自に調達して放送する。映像の画質はワンセグより良く、10以上の番組を同時放送できるという。番組は月額数百円の有料番組が中心になりそうだ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の森行真司氏は「映画会社やテレビ局などが事業者にコンテンツを供給しやすい仕組みを作れるかが事業成功のカギになる」と指摘する。
財政再建策、最大23兆円財源不足 10年後予測
22日に閣議決定する2020年度までの財政再建策を達成するには、財源の不足額が5年後で5兆円、10年後では最大23兆円に達することが21日、わかった。菅直人首相が検討を表明した10%程度への消費税増税だけでは財政再建は厳しく、より踏み込んだ増税などの歳入増や歳出削減が必要になる計算だ。
閣議決定するのは、20年度までの財政健全化の道筋を示す「財政運営戦略」と、11年度から3年間の歳出の大枠を定める「中期財政フレーム」。このなかで、今後3年間は借金の利払いを除く歳出を10年度並み(71兆円)に抑える。財政の健全度を示す指標で、国債発行を除いた歳入と国債の返済分を除いた歳出を比べた基礎的財政収支(プライマリーバランス)について、今年度の国と地方をあわせた30兆円超の赤字額を5年後に半減し、10年後に黒字化する。
記者の目◇ソニーの株主総会で気がかりなこと
電機大手のトップを切ってソニーの株主総会が18日、東京都港区のグランドプリンスホテル新高輪で開かれた。2010年3月期から有価証券報告書で役員報酬の個別開示が義務付けられたことで注目が集まったハワード・ストリンガー会長兼社長らの報酬額の公表も、会社側の周到な準備が奏功して大きな混乱は見られなかった。ただ、個人投資家の人気が高く例年注目度の高いソニーの株主総会にしては、やや盛り上がりに欠けていたように感じたが気のせいだろうか。
「では第3会場からの質問受付に移ります。質問を希望する株主の方はいらっしゃいませんか?」。ソニーの株主総会は出席者が多いため、3つの会場に分かれている。会社側から事業報告などの説明があった後、質疑応答の時間となり、第1会場から順に質問を受け付けていく。第1会場で3人、第2会場では2人が質問。第3会場に移るが、だれも質問者が現れない。
やや間があって、担当者が引き取る。「それではもう一度、第1会場に戻ります。質問はございませんか?」。6人目になって、ようやく役員報酬の個別開示について質問が出る。「議案を採決するにあたり、株主に基本情報が与えられていない。報酬が1億円以上の氏名と金額を開示してほしい」。事前に準備していたとみられ、ストリンガー会長、報酬委員会議長の橘・フクシマ・咲江氏が報酬の決定方針などをよどみなく答える。最後にもう1人質問に立ち、質疑応答が終わった。
質問者は7人で、例年より少なかったようだ。08年まで7年連続で役員報酬の個別開示の株主提案を出し続けてきた株主オンブズマン代表の森岡孝二関西大学教授をはじめ、ソニーOBや環境関連の投資ファンドなど、「おなじみ」の顔が中心。総会の所要時間は昨年とほぼ同じ138分だったが、ストリンガー会長の発言の際に通訳を介するため、どうしても全体的に間延びしてしまう。
それ以上に引っかかるのは、出席者が7827人と昨年(8329人)より減ったことだ。08年、09年と過去最高を更新していたのが途切れた。この日は総会集中日でもなく、会場となった東京では朝方の天気が目立って悪かったわけでもない。株主向けに総会のネット中継を初めて実施したことが影響した可能性もあるが、平日の午前中に総会をネット中継で見る株主も限定的だろう。3月末時点の株主総数が昨年より減ったことも影響しているかもしれないが、株主のソニーの総会への関心が薄れているとしたら気がかりだ。
ソニーの株主総会には様々な逸話がある。古くは1984年の13時間半に及んだ「マラソン総会」。怒号を浴びせる総会屋を相手に、大賀典雄社長(当時)が一歩も引かなかったといわれる。出井伸之社長(当時)の時代には総会後に株主懇談会を開き、個人株主と経営陣らが新製品などの話題で和やかに交流した。
「ソニーの輝きが失われているのではないか。ソニーの株価は今の実態を反映している」。18日の総会では株主から毎度おなじみの発言が出たが、この発言自体も色あせてきているようにさえ見える。高齢者や主婦が出席者の多数を占め、セレモニー的な色彩が強い総会とはいえ、もっと生かす余地はまだあると思うのだが――。
【産経主張】シベリア特措法 忘れまいソ連の不法行為
第二次大戦後に旧ソ連のシベリアなどに抑留された日本人に1人当たり25万~150万円の特別給付金を支給する特別措置法が成立した。
シベリア抑留は、昭和20(1945)年8月に日ソ中立条約を破って旧満州などに侵入した旧ソ連軍によって引き起こされた歴史的な犯罪行為である。関東軍将兵ら約60万人がシベリアなどの収容所に連行され、最高11年半に及ぶ強制労働をさせられた結果、約6万人が死亡したといわれる。
これは、ソ連も加わったポツダム宣言の日本軍人らの本国帰還を求めた規定(第9条)にも違反している。本来、ソ連(現ロシア)の責めに帰すべき問題である。
しかし、昭和31年の日ソ共同宣言で、日本はソ連への賠償請求権を放棄した。その後、抑留体験者の一部が国に強制労働の未払い賃金などの補償を求める訴訟を起こしたが、最高裁は平成9年、「戦争被害は国民が等しく受忍しなければならない」として、原告側の要求を退け、補償の要否を立法府に委ねた。
その結論が戦後65年たって、ようやく出されたといえる。ただ、給付金の支給対象は生存している元抑留者に限られる。帰国した46万人を超える元抑留者のうち、生存者は7万~8万人で、平均年齢は87歳前後と推定される。
特措法は、抑留の実態調査や遺骨収集、追悼などを行うための基本方針策定も政府に義務づけた。異国の地で亡くなった人や、帰国後、特措法を待てずに死亡した元抑留者のためにも、国はこれらの義務をきちんと果たすべきだ。
ソ連崩壊後、明るみに出た機密文書などによれば、シベリア抑留はソ連の独裁者、スターリン首相の指令によって行われたものだ。北海道の北半分の占領を狙ったスターリンの要求を米国のトルーマン大統領が拒否し、その代償として抑留を強行したのである。
今回の特措法をめぐり、シベリア抑留は「日本の侵略戦争」などが引き起こしたとする論調が一部マスコミにあるが、歴史を直視しない一方的な見方である。
ソ連の不法な対日参戦で、多くの日本の民間人も犠牲になった。しかも、ソ連は日本固有の領土である北方四島を占領し、ソ連を引き継いだロシアは今も不法占拠を続けている。日本国民はこうしたソ連の不法な行為を子や孫たちに語り継いでいかねばならない。
ITで70兆円新市場 政府、創出へ30施策の工程表
政府のIT(情報技術)戦略本部が22日に決める工程表の全容が明らかになった。2020年度までに実施する30の施策について短期、中期、長期の3段階に分け目標を定めた。具体策として(1)13年度中に事故や渋滞を防ぐ高度道路交通システム(ITS)のサービスを開始する(2)20年度までに住民票や印鑑証明などを24時間入手可能にする――などを盛り込んだ。少子高齢化や環境問題などに対応したIT社会の実現で70兆円の新規市場創出を目指す。
IT戦略本部は菅直人首相を本部長に全閣僚が参加する。工程表は近く正式決定し、各府省庁が来年度予算の概算要求など具体策に取り組む。縦割りの弊害をなくすため「ITS」「医療」「電子行政」など重点分野ごとに作業部会を設ける。
工程表は短期(10~11年度)、中期(12~13年度)、長期(14年度以降)の3段階に分け、担当府省を明記した。
ITSは渋滞の場所や長さ、合流車の接近といった情報を時間差なく把握し、渋滞を回避させたり玉突き事故などを防いだりする仕組み。13年度に試験運用をはじめ、14年度からの本格普及を目指す。渋滞の減少を温暖化対策にもつなげる狙いで、海外へのシステム輸出もにらんだ推進計画を10年度中にまとめる。
個人の診療履歴をデータベース化し、全国どこでも同じ治療が受けられるようにする「どこでもMY病院」も13年度のサービス開始を目指す。厚生労働省や総務省が連携し、診療履歴や明細書の電子データの通信規格を統一してネットワーク上で情報共有する枠組みを整備する。
インターネット上で様々なソフトウエアを利用する「クラウドコンピューティング」の普及に向け、顧客情報などを管理する「データセンター」の国内誘致を推進。建設コストを低く抑え、手続きを簡素化する特区を10年度中に創設する。
住民票や印鑑証明の発行や申請手続きができる端末を12年度から郵便局やコンビニに配備。一年中、24時間いつでも利用できる体制を構築する。政府内で検討が進む社会保障や税制に関する「共通番号制度」の議論を踏まえ、国民や企業にID番号を割り当ててITサービスの効率化を目指す「国民ID制度」を13年度までに導入する。
人民元切り上げは段階的に…中国人民銀行
【北京=幸内康】中国人民銀行(中央銀行)は20日、前日に公表した人民元制度改革の方針を解説する談話を発表した。
「1回限りの大幅な調整は行わない。基本的に安定した水準に保つことが改革の重要な部分だ」と述べ、変動幅を抑えながら徐々に切り上げていく方針を示した。
また、「単純にドルによって人民元相場を決めるべきではない」と、ユーロや円などほかの通貨の動きを反映させる方針も示した。さらに「相場の弾力性をさらに高め、2方向(上下)の変動を実現する」と述べ、場合によっては、人民元相場が下落する可能性を示唆した。
中国、揺らぐ「世界の工場」
農村の労働力枯渇、賃金が急速に上昇 「ルイスの転換点」迎える?
【北京=高橋哲史】世界の工場といわれる中国の生産現場が揺らいでいる。人民元相場の弾力性を高める改革で元高が予想されるうえ、賃金の上昇や物価高で製造基地としての優位性が失われつつある。中国は労働人口の減少が迫っており、成長戦略を問い直す時期に来ている。
労働者どこへ?
重慶と成都の中間に位置する人口300万人の遂寧市は「農民工」と呼ばれる出稼ぎ労働者の出身地として知られる。北京五輪のメーン会場となった「鳥の巣」の建設工事にも、多くの同市出身者がたずさわった。
その遂寧市に異変が起きている。
市内に広がる工業団地。農民が出稼ぎに行かなくても地元で仕事を見つけられるように市が整備を進めてきた。だが進出企業が従業員の募集をかけても人が集まらないのだ。「労働者はどこに消えたのだろう」。市の担当者は首をかしげる。
農民工のふるさとで、にわかに起こった人手不足。それは中国の農村部に労働力があり余っているという常識が、すでに過去のものになりつつあることを象徴する。
1980年に一人っ子政策を導入し、中国では子どもの数が急激に減っている。0~14歳の人口は82年に3億4000万人に達していたが、2009年には約2億5000万人まで落ち込んだ。子どもの減少は新たな働き手が今後、あまり増えないことを意味する。
中国の経済成長は農村出身で人件費の安い労働者が都市部に移動し、工場労働者になることで実現した。豊富な労働力をあてにした外資が沿海都市部に工場をつくり、生産した製品を輸出して成長につなげた。都市人口比率の上昇を見れば、農業から工業への労働力の移動が一目でわかる。
経済学では農村の余剰労働力が枯渇し、工場労働者の供給が止まる時点を「ルイスの転換点」と呼ぶ。日本でも60年代に農村の余剰労働力が枯渇し、賃金が上昇を始めた。最近の中国も労働争議が頻発し、賃金上昇に拍車がかかっている。中国人民銀行(中央銀行の金融政策委員を務める李稲葵・清華大教授は「中国の農村の余剰労働力はほぼ底をついたので、賃金の上昇は長期的な趨勢(すうせい)だ」と述べ、ルイスの転換点を迎えたとの認識を示す。
もっとも、農村部には4億人を超す労働力があり、農業の効率化を進めれば労働力は余剰となる。中国共産党は08年秋の中央委員会第3回全体会議(三中全会)で、農地の集約化を目指す施策とともに、中小都市で安定した職に就いている農民工に都市戸籍を与える方針を打ち出した。農村の労働力を都市に定着させ都市部の労働不足に備えようとの措置だった。だが金融危機の影響で失業者の増加を恐れた党・政府は改革を事実上、凍結してしまった。
元高なら打撃も
一方、都市部の余剰労働力が工場に向かわない現象も起きている。毎年600万人以上の大卒者が新たに職を求めるが、およそ2割は就職できない。工場関連の求職は多いのだが、高学歴者は高賃金のサービス業を好むため職が見つからない。中国ではサービス業がまだ十分に育っておらず、大卒者の需要には応え切れない。企業と求職者の間でミスマッチが広がり、人が集まらない一部の職種で賃金の上昇が止まらなくなっている。
清華大の李教授は「賃金の上昇はよいことだ」と強調する。今後は元相場の上昇も加わり、安価な製品を大量に輸出してきた労働集約型の産業は立ちゆかなくなる。より付加価値の高い産業構造に転換しなければ、労働者に高い賃金を支払えない。ルイスの転換点は産業構造を高度化するきっかけとなる。
損保 縮む国内 高コスト体質が重荷
国内損保市場は、少子高齢化に伴う市場規模の縮小に加えて、高コスト体質という大きな課題を抱えている。今年4月の大手の統合・再編も、規模拡大によるシステム費用などの抜本的な合理化が避けられなかった事情がある。
損保業界のコストを示す指標の一つが、コンバインド・レシオだ。保険料収入に対する保険金の支払いや事務費などの支出割合が100%を超えると、収入よりも支出が多い状態といえる。損害保険協会の調べでは、業界全体のコンバインド・レシオは、2007年度に96%だったのが、08年度には101.7%まで悪化した。
個別損保をみても、2010年3月期決算で、東京海上ホールディングス(HD)、MS&ADインシュアランスグループHD、NKSJHDは、いずれも100%を超えた。
若者の保険離れなどによる保険料収入の低迷の一方で、損害発生率の上昇に合わせた値上げが思うように実施できないことが理由だ。
大手幹部は「損保各社は、過去の利益の蓄えで生き残っている状態で、コンバインド・レシオを100%以下にして利益の出る体質にしなければ業界の将来はない」と言い切る。しかし、保険金の不払い問題を経て、思い切った保険料率の引き上げは今後も難しい。
収益源である自動車保険や火災保険などの販売は、保険商品の簡素化や事故対応時のサービス改善などに取り組むものの、「販売増につながる妙案がない」(大手幹部)状況が続く。こうした中で、各社はシステムインフラや事務経費のコスト削減で生み出した経営資源を、海外事業に回すという将来の成長に向けた先行投資をしている。
ワンセグをエリア限定放送 KDDIがシステム
KDDIは携帯電話向け地上デジタル放送「ワンセグ」を半径1~2キロメートルの小さなエリアに限定して手軽に放送するシステムを開発した。パソコンやインターネットを活用し、費用を最安300万円程度にとどめた。サッカーなどイベント会場やターミナル駅で関連情報番組を放送するビジネス向けのほか、自治体が地域住民に災害情報を知らせるなどの利用を見込む。
映像をワンセグに変換し、小型アンテナを使って弱い電波で放送する。テレビ局は数億円の専用設備を利用して広範囲にワンセグを放送しているが、KDDIは300万~700万円でシステムを構築する。カメラで撮影した映像を生中継したり、発信機を座席に取り付けて、半径50センチの範囲で微弱電波を流すこともできる。
エリア限定ワンセグはイベント会場や商業施設、電車・バスの車内など人が集まる場所を対象とした新サービスとして期待され、総務省も制度化を検討している。現在は半径1~2キロで放送する場合には実験免許が必要で、KDDIは免許の申請手続きを含めたシステム構築や放送サービスの販売に乗り出す。
法科大学院 文科省も統廃合にかじ
文部科学省は、新司法試験の合格実績などに応じて法科大学院への交付金や助成金の配分を変える制度を導入する検討を始めている。配分額を決める基準を近く作り、2011年度にも実施する。統廃合に向けて本格的にかじを切る。
中央教育審議会の特別委員会が3月、改善がみられない大学院への公的支援の見直しを提言したことを受けた。配分の基準は合格率や入試の競争倍率などを想定、今秋の試験結果なども踏まえて導入時期を決める。
財務省は今年、事業の無駄を洗い出す「予算執行調査」の対象に法科大学院を選び、入試状況や修了生の就職先などの聞き取りを開始。調査を受けた法科大学院の幹部は「包囲網の狭まりをひしひしと感じる」と話す。
一方で「乱立」を認めた文科省の責任を問う声が少なくない。受験対策を禁じながら合格率を評価の物差しとする姿勢にも批判がある。同省幹部は「批判は甘んじて受けるが、改善しなければ全体の志願者が激減し制度が行き詰まる」と話す。
エルピーダ、台湾2社と共同研究 半導体製造
エルピーダメモリは台湾の聯華電子(UMC)、力成科技(パワーテック・テクノロジー)の半導体大手2社と半導体の最先端製造技術で提携する。複数の半導体を積み重ねる「シリコン貫通電極(TSV)」と呼ぶ加工技術を共同で研究開発する。
半導体は従来の微細化技術が限界に近づいており、チップを垂直に積み上げる技術が今後の研究開発の焦点になる見通し。3社はDRAMやCPU(中央演算処理装置)など、種類の異なる半導体を重ね合わせた高性能半導体での事業展開を目指し、将来の生産委託や共同生産も視野に入れる。
台湾の関係者によると、週内にも3社が共同記者会見を開く見通し。エルピーダの坂本幸雄社長、UMCの孫世偉最高経営責任者(CEO)、パワーテックの蔡篤恭董事長の3社の経営トップが出席する。
エルピーダは09年8月に8枚のDRAMを積層する技術開発に成功。UMCの高精度の製造技術、パワーテックのパッケージ化技術を組み合わせ、TSVの実用化を急ぐ。
ドコモ山下氏が語る2010年後半のスマートフォン戦略
4月に発売して以降、売れ行きが好調なNTTドコモの「Xperia」。6月15日からシンガポールで開催された「CommunicAsia2010」では、NTTドコモからアジアに向けて、同社のスマートフォン戦略が語られた。
今後、NTTドコモではスマートフォン市場でどのように攻めていくつもりなのか。同社スマートフォン事業推進室 アプリケーション企画 山下哲也担当部長に話を聞いた。
NTTドコモ スマートフォン事業推進室 アプリケーション企画 担当部長の山下哲也氏
――4月に発売が開始されたXperiaの売れ行きが好調なようですが、人気の理由をどのように分析されているのでしょうか。
予想以上に、多くの人に店頭でXperiaを手にとってもらえているようです。昨年、発売したHT-03Aに比べると、これまでAndroidやスマートフォンに感心がなかった人にも認知されてきています。
やはり、興味をひいているのが、直感的に操作できる大画面のようです。いろいろな機能が詰め込まれていながら、タッチ操作によって簡単に使える。これまでのケータイにも様々なサービスを搭載してきましたが、どうしても『使う』という面でハードルが残っていました。その点、機能の使いやすさという面では、スマートフォンはハードルを越えたのではないでしょうか。
――Xperiaに対して、ユーザーから不満点などは上がっているのでしょうか。
一番には、やはりiモードメールをスマートフォンでも使いたいという声を聞いています。現状、Xperia1台だけの契約ではiモードメールは使えませんが、徐々に1台持ちが広まったことで、Xperiaでiモードメールを使いたいユーザーが多くなってきたようです。
――先日の夏商戦モデル発表会では、「SPモード」の概要が明らかにされました。
SPモードは、iモードに成り代わるサービス基盤というよりも、スマートフォン向けに、基本的なメールやコンテンツ課金サービスを簡単に提供するために環境整備を進めてきたものです。SPモードを契約すれば、様々なサービスが簡単に使える。スマートフォンユーザーに必要な基盤としての位置づけになっています。
――ドコモのスマートフォンユーザーからすると、プッシュ配信によるiモードメールの対応が長らく待たれていたと思います。スマートフォン対応がかなり遅れた印象があるのですが、背景には何があったのでしょうか。
iモードメールだけであれば、プロトコルの対応をすれば導入は可能でした。しかし、iモードというサービスは、メールとウェブ、アプリなどの機能が相互リンクしているので、メールだけを取り出して提供するのはハードルが高かったのです。コンテンツプロバイダー側も、iモードメールサービスとの連携をベースにしているため、こちらも整合性を取る必要が出てきます。iモードメールをオープンな環境に移行しようとすると、これまでのサービスとの調整が必要なため時間がかかっていました。
――夏商戦で各社からスマートフォンが登場し、一部には見た目も機能も似通ったモデルが複数のキャリアから発表されてきています。今後、どのような点でキャリアとしては差別化していくのでしょうか。
これまでは、端末そのものがキャリアとしての差異化の柱でした。しかし、これからはスマートフォンが各キャリア共通の端末として登場し、さらにSIMロックフリーの時代になってくればくるほど、キャリアとしての差異化は難しいと思っています。
そんな中、ユーザーが実際に使うときにどういう経験を届けられるかが重要になってくるとか思います。どこででも使える、あるいはサービスが簡単に購入できるかなど、端末に紐づく目に見えない部分での競争が、キャリア間で激しくなっていくと見ています。
――夏商戦モデル発表会で、秋頃にサムスン電子「Galaxy S」の投入が明らかになりました。Galaxy Sにはどのような点を期待していますか。
秋の発売時には、世の中で最もハイエンドで、最もリッチなグラフィックの快適な端末として提供できると思っています。ドコモの中でも、フラッグシップ的な位置づけになるのではないでしょうか。
――海外では、ソニー・エリクソンがXperia X10 miniなど小型のスマートフォンを投入しています。ドコモでも採用する予定はあったりするのでしょうか。
ソニー・エリクソンがXperiaシリーズを強化しているのは充分に理解しています。また、ドコモでXperiaが好調に売れているという事実もあります。ソニー・エリクソンが計画している商品バリエーションを見つつ、ドコモとしては他のメーカーの商品群をミックスして、全体のラインナップを考えていくつもりです。ただ、Xperia X10 miniについて言えば、全くの白紙の状態です。
――iPadのようにタブレット型端末の市場も形成されようとしています。ドコモとしてもタブレット型PCなどに取り組む予定はあるのでしょうか。
2月にバルセロナで開催されたMWCでも、いくつものタグレット型端末のプロトタイプが展示されていました。それらにはAndroidがOSとして提供されています。魅力を感じるのは商品の多様性で、家電もクルマも単一の商品がマジョリティになることは難しいです。iPadはフラッグシップになりつつありますが、タブレット型端末の世界でも多様性を確保していきたい。Android OSによって様々なデバイスが出てくるのであれば、積極的にサポートをしていきたいですね。
――夏商戦はiPhone4がかなり強そうですが、対抗する手段などはありますでしょうか。
iPhoneのユーザーやその周辺の人たちが、マルチタスクがいかに便利なものだということを理解してくれると思います。やはりシングルタスクはイライラとしてしまい、マルチタスクがないと不便に感じます。Androidであれば、マルチタスクでさまざまなアプリを渡り歩いて使いこなせます。iPhone 4によって、マルチタスクの認知が広まると思います。iPhone 4は競合ではありますが、売れるのは喜ばしいことでもあります。スマートフォン市場が大きくなることで、Android端末にも追い風になるのではないでしょうか。
――年末に向けて、スマートフォンラインナップは拡充されていきそうですか?
もう、この流れは止まりません。秋冬から、市場の勢いに弾みがつけば、さらに世界中から端末を調達して積極的に展開していきます。日本市場がどう反応するかを見つつ、攻めていくつもりです。
――ありがとうございました。
日経社説
海外に逃げる自動車の生産
国内の自動車メーカーが海外生産の拡大にアクセルを踏んでいる。トヨタ自動車が2008年のリーマン・ショックで凍結していたブラジル、中国での工場建設を再開するほか、スズキやホンダもインド、中国での生産能力を大幅に増やす。
投資先は経済成長の勢いを反映し、ほとんどが新興国だ。そうした国々では欧米や現地のメーカーとの競争が激しくなっている。市場の近くに拠点を広げ、生産コストや為替変動の影響を小さくしていくのは合理的な判断といえる。
ただ、日本国内への影響は小さくない。例えばトヨタ自動車は海外生産の拡大と並行し、年間で390万台程度ある国内の生産能力を約1割減らしていく。
日産は今年、タイ、インド、メキシコで小型車「マーチ」の生産を始める。日本での生産はやめ、国内で売るマーチもタイから輸入する。神奈川県にある工場は電気自動車の生産拠点に位置づけていくが、当初から海外移転で生じた穴を埋めるだけの台数は期待しにくいという。
自動車大手は過去にも円高に振れると海外生産を増やし、円安だと国内に戻すなど揺れてきた。だが、今回はそれだけではないようだ。
高い法人税率、労働者派遣法見直しの動き、二酸化炭素の25%削減。日本自動車工業会は、自動車メーカーが海外移転を進める背景にはこうした問題もあると指摘している。
政府は新成長戦略に法人税率の引き下げを明記し、これまでの路線を修正する動きも出てきた。しかし経営者の間では「リスクを抱えたまま国内で生産能力を増やすのは難しい」との見方がなお根強い。
生産の海外流出がこのまま続くと影響は大きい。日本企業が1年間に生産する自動車は約2000万台と世界全体の約3分の1を占める。そのうち半分を日本で造っており、かりに国内生産が1割減ればマツダとスズキの売上高を合わせた規模に匹敵する影響が出る。
菅直人首相は先週末、日本経団連など経済3団体のトップと会談した。こうした政府と産業界の対話は今後も続けるべきだ。工場の流出に歯止めがかかるよう、互いの信頼関係を基に解決策を探る努力が要る。
政府のIT(情報技術)戦略本部が22日に決める工程表の全容が明らかになった。2020年度までに実施する30の施策について短期、中期、長期の3段階に分け目標を定めた。具体策として(1)13年度中に事故や渋滞を防ぐ高度道路交通システム(ITS)のサービスを開始する(2)20年度までに住民票や印鑑証明などを24時間入手可能にする――などを盛り込んだ。少子高齢化や環境問題などに対応したIT社会の実現で70兆円の新規市場創出を目指す。
IT戦略本部は菅直人首相を本部長に全閣僚が参加する。工程表は近く正式決定し、各府省庁が来年度予算の概算要求など具体策に取り組む。縦割りの弊害をなくすため「ITS」「医療」「電子行政」など重点分野ごとに作業部会を設ける。
工程表は短期(10~11年度)、中期(12~13年度)、長期(14年度以降)の3段階に分け、担当府省を明記した。
ITSは渋滞の場所や長さ、合流車の接近といった情報を時間差なく把握し、渋滞を回避させたり玉突き事故などを防いだりする仕組み。13年度に試験運用をはじめ、14年度からの本格普及を目指す。渋滞の減少を温暖化対策にもつなげる狙いで、海外へのシステム輸出もにらんだ推進計画を10年度中にまとめる。
個人の診療履歴をデータベース化し、全国どこでも同じ治療が受けられるようにする「どこでもMY病院」も13年度のサービス開始を目指す。厚生労働省や総務省が連携し、診療履歴や明細書の電子データの通信規格を統一してネットワーク上で情報共有する枠組みを整備する。
インターネット上で様々なソフトウエアを利用する「クラウドコンピューティング」の普及に向け、顧客情報などを管理する「データセンター」の国内誘致を推進。建設コストを低く抑え、手続きを簡素化する特区を10年度中に創設する。
住民票や印鑑証明の発行や申請手続きができる端末を12年度から郵便局やコンビニに配備。一年中、24時間いつでも利用できる体制を構築する。政府内で検討が進む社会保障や税制に関する「共通番号制度」の議論を踏まえ、国民や企業にID番号を割り当ててITサービスの効率化を目指す「国民ID制度」を13年度までに導入する。
人民元切り上げは段階的に…中国人民銀行
【北京=幸内康】中国人民銀行(中央銀行)は20日、前日に公表した人民元制度改革の方針を解説する談話を発表した。
「1回限りの大幅な調整は行わない。基本的に安定した水準に保つことが改革の重要な部分だ」と述べ、変動幅を抑えながら徐々に切り上げていく方針を示した。
また、「単純にドルによって人民元相場を決めるべきではない」と、ユーロや円などほかの通貨の動きを反映させる方針も示した。さらに「相場の弾力性をさらに高め、2方向(上下)の変動を実現する」と述べ、場合によっては、人民元相場が下落する可能性を示唆した。
中国、揺らぐ「世界の工場」
農村の労働力枯渇、賃金が急速に上昇 「ルイスの転換点」迎える?
【北京=高橋哲史】世界の工場といわれる中国の生産現場が揺らいでいる。人民元相場の弾力性を高める改革で元高が予想されるうえ、賃金の上昇や物価高で製造基地としての優位性が失われつつある。中国は労働人口の減少が迫っており、成長戦略を問い直す時期に来ている。
労働者どこへ?
重慶と成都の中間に位置する人口300万人の遂寧市は「農民工」と呼ばれる出稼ぎ労働者の出身地として知られる。北京五輪のメーン会場となった「鳥の巣」の建設工事にも、多くの同市出身者がたずさわった。
その遂寧市に異変が起きている。
市内に広がる工業団地。農民が出稼ぎに行かなくても地元で仕事を見つけられるように市が整備を進めてきた。だが進出企業が従業員の募集をかけても人が集まらないのだ。「労働者はどこに消えたのだろう」。市の担当者は首をかしげる。
農民工のふるさとで、にわかに起こった人手不足。それは中国の農村部に労働力があり余っているという常識が、すでに過去のものになりつつあることを象徴する。
1980年に一人っ子政策を導入し、中国では子どもの数が急激に減っている。0~14歳の人口は82年に3億4000万人に達していたが、2009年には約2億5000万人まで落ち込んだ。子どもの減少は新たな働き手が今後、あまり増えないことを意味する。
中国の経済成長は農村出身で人件費の安い労働者が都市部に移動し、工場労働者になることで実現した。豊富な労働力をあてにした外資が沿海都市部に工場をつくり、生産した製品を輸出して成長につなげた。都市人口比率の上昇を見れば、農業から工業への労働力の移動が一目でわかる。
経済学では農村の余剰労働力が枯渇し、工場労働者の供給が止まる時点を「ルイスの転換点」と呼ぶ。日本でも60年代に農村の余剰労働力が枯渇し、賃金が上昇を始めた。最近の中国も労働争議が頻発し、賃金上昇に拍車がかかっている。中国人民銀行(中央銀行の金融政策委員を務める李稲葵・清華大教授は「中国の農村の余剰労働力はほぼ底をついたので、賃金の上昇は長期的な趨勢(すうせい)だ」と述べ、ルイスの転換点を迎えたとの認識を示す。
もっとも、農村部には4億人を超す労働力があり、農業の効率化を進めれば労働力は余剰となる。中国共産党は08年秋の中央委員会第3回全体会議(三中全会)で、農地の集約化を目指す施策とともに、中小都市で安定した職に就いている農民工に都市戸籍を与える方針を打ち出した。農村の労働力を都市に定着させ都市部の労働不足に備えようとの措置だった。だが金融危機の影響で失業者の増加を恐れた党・政府は改革を事実上、凍結してしまった。
元高なら打撃も
一方、都市部の余剰労働力が工場に向かわない現象も起きている。毎年600万人以上の大卒者が新たに職を求めるが、およそ2割は就職できない。工場関連の求職は多いのだが、高学歴者は高賃金のサービス業を好むため職が見つからない。中国ではサービス業がまだ十分に育っておらず、大卒者の需要には応え切れない。企業と求職者の間でミスマッチが広がり、人が集まらない一部の職種で賃金の上昇が止まらなくなっている。
清華大の李教授は「賃金の上昇はよいことだ」と強調する。今後は元相場の上昇も加わり、安価な製品を大量に輸出してきた労働集約型の産業は立ちゆかなくなる。より付加価値の高い産業構造に転換しなければ、労働者に高い賃金を支払えない。ルイスの転換点は産業構造を高度化するきっかけとなる。
損保 縮む国内 高コスト体質が重荷
国内損保市場は、少子高齢化に伴う市場規模の縮小に加えて、高コスト体質という大きな課題を抱えている。今年4月の大手の統合・再編も、規模拡大によるシステム費用などの抜本的な合理化が避けられなかった事情がある。
損保業界のコストを示す指標の一つが、コンバインド・レシオだ。保険料収入に対する保険金の支払いや事務費などの支出割合が100%を超えると、収入よりも支出が多い状態といえる。損害保険協会の調べでは、業界全体のコンバインド・レシオは、2007年度に96%だったのが、08年度には101.7%まで悪化した。
個別損保をみても、2010年3月期決算で、東京海上ホールディングス(HD)、MS&ADインシュアランスグループHD、NKSJHDは、いずれも100%を超えた。
若者の保険離れなどによる保険料収入の低迷の一方で、損害発生率の上昇に合わせた値上げが思うように実施できないことが理由だ。
大手幹部は「損保各社は、過去の利益の蓄えで生き残っている状態で、コンバインド・レシオを100%以下にして利益の出る体質にしなければ業界の将来はない」と言い切る。しかし、保険金の不払い問題を経て、思い切った保険料率の引き上げは今後も難しい。
収益源である自動車保険や火災保険などの販売は、保険商品の簡素化や事故対応時のサービス改善などに取り組むものの、「販売増につながる妙案がない」(大手幹部)状況が続く。こうした中で、各社はシステムインフラや事務経費のコスト削減で生み出した経営資源を、海外事業に回すという将来の成長に向けた先行投資をしている。
ワンセグをエリア限定放送 KDDIがシステム
KDDIは携帯電話向け地上デジタル放送「ワンセグ」を半径1~2キロメートルの小さなエリアに限定して手軽に放送するシステムを開発した。パソコンやインターネットを活用し、費用を最安300万円程度にとどめた。サッカーなどイベント会場やターミナル駅で関連情報番組を放送するビジネス向けのほか、自治体が地域住民に災害情報を知らせるなどの利用を見込む。
映像をワンセグに変換し、小型アンテナを使って弱い電波で放送する。テレビ局は数億円の専用設備を利用して広範囲にワンセグを放送しているが、KDDIは300万~700万円でシステムを構築する。カメラで撮影した映像を生中継したり、発信機を座席に取り付けて、半径50センチの範囲で微弱電波を流すこともできる。
エリア限定ワンセグはイベント会場や商業施設、電車・バスの車内など人が集まる場所を対象とした新サービスとして期待され、総務省も制度化を検討している。現在は半径1~2キロで放送する場合には実験免許が必要で、KDDIは免許の申請手続きを含めたシステム構築や放送サービスの販売に乗り出す。
法科大学院 文科省も統廃合にかじ
文部科学省は、新司法試験の合格実績などに応じて法科大学院への交付金や助成金の配分を変える制度を導入する検討を始めている。配分額を決める基準を近く作り、2011年度にも実施する。統廃合に向けて本格的にかじを切る。
中央教育審議会の特別委員会が3月、改善がみられない大学院への公的支援の見直しを提言したことを受けた。配分の基準は合格率や入試の競争倍率などを想定、今秋の試験結果なども踏まえて導入時期を決める。
財務省は今年、事業の無駄を洗い出す「予算執行調査」の対象に法科大学院を選び、入試状況や修了生の就職先などの聞き取りを開始。調査を受けた法科大学院の幹部は「包囲網の狭まりをひしひしと感じる」と話す。
一方で「乱立」を認めた文科省の責任を問う声が少なくない。受験対策を禁じながら合格率を評価の物差しとする姿勢にも批判がある。同省幹部は「批判は甘んじて受けるが、改善しなければ全体の志願者が激減し制度が行き詰まる」と話す。
エルピーダ、台湾2社と共同研究 半導体製造
エルピーダメモリは台湾の聯華電子(UMC)、力成科技(パワーテック・テクノロジー)の半導体大手2社と半導体の最先端製造技術で提携する。複数の半導体を積み重ねる「シリコン貫通電極(TSV)」と呼ぶ加工技術を共同で研究開発する。
半導体は従来の微細化技術が限界に近づいており、チップを垂直に積み上げる技術が今後の研究開発の焦点になる見通し。3社はDRAMやCPU(中央演算処理装置)など、種類の異なる半導体を重ね合わせた高性能半導体での事業展開を目指し、将来の生産委託や共同生産も視野に入れる。
台湾の関係者によると、週内にも3社が共同記者会見を開く見通し。エルピーダの坂本幸雄社長、UMCの孫世偉最高経営責任者(CEO)、パワーテックの蔡篤恭董事長の3社の経営トップが出席する。
エルピーダは09年8月に8枚のDRAMを積層する技術開発に成功。UMCの高精度の製造技術、パワーテックのパッケージ化技術を組み合わせ、TSVの実用化を急ぐ。
ドコモ山下氏が語る2010年後半のスマートフォン戦略
4月に発売して以降、売れ行きが好調なNTTドコモの「Xperia」。6月15日からシンガポールで開催された「CommunicAsia2010」では、NTTドコモからアジアに向けて、同社のスマートフォン戦略が語られた。
今後、NTTドコモではスマートフォン市場でどのように攻めていくつもりなのか。同社スマートフォン事業推進室 アプリケーション企画 山下哲也担当部長に話を聞いた。
NTTドコモ スマートフォン事業推進室 アプリケーション企画 担当部長の山下哲也氏
――4月に発売が開始されたXperiaの売れ行きが好調なようですが、人気の理由をどのように分析されているのでしょうか。
予想以上に、多くの人に店頭でXperiaを手にとってもらえているようです。昨年、発売したHT-03Aに比べると、これまでAndroidやスマートフォンに感心がなかった人にも認知されてきています。
やはり、興味をひいているのが、直感的に操作できる大画面のようです。いろいろな機能が詰め込まれていながら、タッチ操作によって簡単に使える。これまでのケータイにも様々なサービスを搭載してきましたが、どうしても『使う』という面でハードルが残っていました。その点、機能の使いやすさという面では、スマートフォンはハードルを越えたのではないでしょうか。
――Xperiaに対して、ユーザーから不満点などは上がっているのでしょうか。
一番には、やはりiモードメールをスマートフォンでも使いたいという声を聞いています。現状、Xperia1台だけの契約ではiモードメールは使えませんが、徐々に1台持ちが広まったことで、Xperiaでiモードメールを使いたいユーザーが多くなってきたようです。
――先日の夏商戦モデル発表会では、「SPモード」の概要が明らかにされました。
SPモードは、iモードに成り代わるサービス基盤というよりも、スマートフォン向けに、基本的なメールやコンテンツ課金サービスを簡単に提供するために環境整備を進めてきたものです。SPモードを契約すれば、様々なサービスが簡単に使える。スマートフォンユーザーに必要な基盤としての位置づけになっています。
――ドコモのスマートフォンユーザーからすると、プッシュ配信によるiモードメールの対応が長らく待たれていたと思います。スマートフォン対応がかなり遅れた印象があるのですが、背景には何があったのでしょうか。
iモードメールだけであれば、プロトコルの対応をすれば導入は可能でした。しかし、iモードというサービスは、メールとウェブ、アプリなどの機能が相互リンクしているので、メールだけを取り出して提供するのはハードルが高かったのです。コンテンツプロバイダー側も、iモードメールサービスとの連携をベースにしているため、こちらも整合性を取る必要が出てきます。iモードメールをオープンな環境に移行しようとすると、これまでのサービスとの調整が必要なため時間がかかっていました。
――夏商戦で各社からスマートフォンが登場し、一部には見た目も機能も似通ったモデルが複数のキャリアから発表されてきています。今後、どのような点でキャリアとしては差別化していくのでしょうか。
これまでは、端末そのものがキャリアとしての差異化の柱でした。しかし、これからはスマートフォンが各キャリア共通の端末として登場し、さらにSIMロックフリーの時代になってくればくるほど、キャリアとしての差異化は難しいと思っています。
そんな中、ユーザーが実際に使うときにどういう経験を届けられるかが重要になってくるとか思います。どこででも使える、あるいはサービスが簡単に購入できるかなど、端末に紐づく目に見えない部分での競争が、キャリア間で激しくなっていくと見ています。
――夏商戦モデル発表会で、秋頃にサムスン電子「Galaxy S」の投入が明らかになりました。Galaxy Sにはどのような点を期待していますか。
秋の発売時には、世の中で最もハイエンドで、最もリッチなグラフィックの快適な端末として提供できると思っています。ドコモの中でも、フラッグシップ的な位置づけになるのではないでしょうか。
――海外では、ソニー・エリクソンがXperia X10 miniなど小型のスマートフォンを投入しています。ドコモでも採用する予定はあったりするのでしょうか。
ソニー・エリクソンがXperiaシリーズを強化しているのは充分に理解しています。また、ドコモでXperiaが好調に売れているという事実もあります。ソニー・エリクソンが計画している商品バリエーションを見つつ、ドコモとしては他のメーカーの商品群をミックスして、全体のラインナップを考えていくつもりです。ただ、Xperia X10 miniについて言えば、全くの白紙の状態です。
――iPadのようにタブレット型端末の市場も形成されようとしています。ドコモとしてもタブレット型PCなどに取り組む予定はあるのでしょうか。
2月にバルセロナで開催されたMWCでも、いくつものタグレット型端末のプロトタイプが展示されていました。それらにはAndroidがOSとして提供されています。魅力を感じるのは商品の多様性で、家電もクルマも単一の商品がマジョリティになることは難しいです。iPadはフラッグシップになりつつありますが、タブレット型端末の世界でも多様性を確保していきたい。Android OSによって様々なデバイスが出てくるのであれば、積極的にサポートをしていきたいですね。
――夏商戦はiPhone4がかなり強そうですが、対抗する手段などはありますでしょうか。
iPhoneのユーザーやその周辺の人たちが、マルチタスクがいかに便利なものだということを理解してくれると思います。やはりシングルタスクはイライラとしてしまい、マルチタスクがないと不便に感じます。Androidであれば、マルチタスクでさまざまなアプリを渡り歩いて使いこなせます。iPhone 4によって、マルチタスクの認知が広まると思います。iPhone 4は競合ではありますが、売れるのは喜ばしいことでもあります。スマートフォン市場が大きくなることで、Android端末にも追い風になるのではないでしょうか。
――年末に向けて、スマートフォンラインナップは拡充されていきそうですか?
もう、この流れは止まりません。秋冬から、市場の勢いに弾みがつけば、さらに世界中から端末を調達して積極的に展開していきます。日本市場がどう反応するかを見つつ、攻めていくつもりです。
――ありがとうございました。
日経社説
海外に逃げる自動車の生産
国内の自動車メーカーが海外生産の拡大にアクセルを踏んでいる。トヨタ自動車が2008年のリーマン・ショックで凍結していたブラジル、中国での工場建設を再開するほか、スズキやホンダもインド、中国での生産能力を大幅に増やす。
投資先は経済成長の勢いを反映し、ほとんどが新興国だ。そうした国々では欧米や現地のメーカーとの競争が激しくなっている。市場の近くに拠点を広げ、生産コストや為替変動の影響を小さくしていくのは合理的な判断といえる。
ただ、日本国内への影響は小さくない。例えばトヨタ自動車は海外生産の拡大と並行し、年間で390万台程度ある国内の生産能力を約1割減らしていく。
日産は今年、タイ、インド、メキシコで小型車「マーチ」の生産を始める。日本での生産はやめ、国内で売るマーチもタイから輸入する。神奈川県にある工場は電気自動車の生産拠点に位置づけていくが、当初から海外移転で生じた穴を埋めるだけの台数は期待しにくいという。
自動車大手は過去にも円高に振れると海外生産を増やし、円安だと国内に戻すなど揺れてきた。だが、今回はそれだけではないようだ。
高い法人税率、労働者派遣法見直しの動き、二酸化炭素の25%削減。日本自動車工業会は、自動車メーカーが海外移転を進める背景にはこうした問題もあると指摘している。
政府は新成長戦略に法人税率の引き下げを明記し、これまでの路線を修正する動きも出てきた。しかし経営者の間では「リスクを抱えたまま国内で生産能力を増やすのは難しい」との見方がなお根強い。
生産の海外流出がこのまま続くと影響は大きい。日本企業が1年間に生産する自動車は約2000万台と世界全体の約3分の1を占める。そのうち半分を日本で造っており、かりに国内生産が1割減ればマツダとスズキの売上高を合わせた規模に匹敵する影響が出る。
菅直人首相は先週末、日本経団連など経済3団体のトップと会談した。こうした政府と産業界の対話は今後も続けるべきだ。工場の流出に歯止めがかかるよう、互いの信頼関係を基に解決策を探る努力が要る。
任天堂の新型機はゲーム業界を「死活問題」から救うか(Column)
任天堂は15日、米ロサンゼルスで開催されたゲーム見本市「E3」の記者会見で、新型携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」をお披露目した。発売日や価格は発表されなかったが、過去のパターンから考えれば日本発売は今冬で、年末商戦の目玉になるのは間違いないだろう。専用眼鏡なしで3次元(3D)表示を実現するとは、ゲーム機作りに長けた任天堂らしいが、3DSにはほかにも注目すべき点がある。
3DSの裸眼立体視機能はひと目でわかるインパクトがあり、E3でも話題をさらった。2画面を備えるのは現行機の「ニンテンドーDSi」と同じだが、上部の画面を3.02インチから3.5インチへと広げ、解像度を高めたうえで3D機能を付けた。外向きカメラを2個搭載し、3D写真を撮影することもできる。
「マリオの生みの親」のこだわり
記者会見で、任天堂米国法人のレジー・フィサメイ社長が強調したのは、コストのかかる3D眼鏡を購入する必要がなく、どこにでも持ち運ぶことができるという点だった。
立体視表示の度合いを調整する「3Dボリューム」というスイッチにも任天堂らしい工夫を感じる。これは、マリオの生みの親として知られる宮本茂専務・情報開発本部長がこだわったようだ。任天堂サイトでE3に合わせて公開された「社長が訊く」というインタビューでは、「自分で好きなセッティングができるのが理想的」という宮本氏が、メニュー画面で選択するような調整機能ではなく、直感的な「アナログスライド」を指定したと述べている。
立体映像の見え方には個人差があるが、3Dボリュームを使えば、ゲームをしながらいつでも最適な位置に調整可能だ。子供同士や家族で遊ぶことも多いゲーム機ではユーザーインターフェースの簡便さが重要であり、こうした機能は現在販売されている3Dテレビにもない。
大きく進化した無線通信機能
裸眼立体視ほど目立たないが、実は新たに追加される無線通信機能も大きな意味を持つ。
3DSはユーザーが能動的に操作しなくても、スリープ状態で自動的に3DS同士でデータを交換したり、インターネットからデータを受信したりする機能を搭載する。これまでも、特定ソフトをセットした端末同士で自動的にデータをやりとりする「すれちがい通信」と呼ぶ機能はあったが、端末本体で通信を制御することで使い勝手を大幅に向上させた。
家庭用ゲーム機はここ数年、ユーザー同士が交流するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)機能を強化してきた。最近は大手SNSと連携する「オープン化」にも乗り出し、任天堂も09年のE3では米SNS「Facebook」との連携を打ち出していた。
しかし、Facebookはこの1年間でソーシャルゲームと呼ばれる交流機能を備えたゲームを増やし、ゲーム機メーカーにとってはライバルに変わろうとしている。任天堂は元々、他社ほどオープン化に積極的ではなかったが、今回の3DSの通信機能強化で任天堂独自の閉じたネットワークを追求していく戦略をますますはっきりさせたといえる。
3DSの2つのカメラで撮影した3D写真は、当然ながら3DS上でしか立体で見ることができない。しかし、3DS同士では簡単にデータを交換できるので、ユーザー数が増えればコミュニティーは自然と大きくなる。任天堂はこの互換性のなさを逆手にとった交流サービスを次々と打ち出してくるはずだ。
深刻な「マジコン」問題
3DSの無線通信機能は同時に、任天堂が抱える深刻な問題に対する解決案になりうる可能性がある。それは「マジコン」問題として知られる違法コピーの横行だ。
コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が6月4日に発表した「違法複製ゲームソフトのダウンロードに関する使用実態調査」によると、DSシリーズとソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション・ポータブル(PSP)」シリーズ用ソフトの違法ダウンロードによる被害は世界で年間約6360億円にも上るという。この調査は、ファイル共有ソフトを通じた違法コピーの流通は含んでおらず、実際はその数倍に及ぶと推計される。
この違法コピーは、任天堂ももちろんだが、世界でDSシリーズ向けにゲームを販売するソフト開発会社に被害を及ぼしている。任天堂もマジコンと呼ばれるツールを販売した会社を提訴するなど手は打っているが、抜本的な解決にはならず、焼け石に水の状態だった。
しかし、3DSはスリープ状態でも、無線LANアクセスポイントなどを通じて、任天堂のサーバーと自動的にやりとりできる。これは、個々の端末を特定して区分できることを意味する。正規品でない違法コピーをインストールしている場合はなんらかの制限をかけることも不可能ではないだろう。
OSのアップデートといったソフトウエアの更新も、より簡単になる。デジタル機器のセキュリティー対策とハッキングは「いたちごっこ」となりがちだ。子供から年配の人まで幅広いユーザーを抱える任天堂はこれまで、頻繁なOSのアップデートには慎重だったが、自動更新の仕組みができれば、対策も機動的に打てる。任天堂は、ユーザーに不便をかけずこの問題を解決するため、周到に計画しているように思える。
欧米は来春発売の可能性も
今回のE3で任天堂は価格や発売日を明らかにしなかったが、過去2回ほどの新機種発売は、9月に日本で大きな記者発表会を開いて全体像を説明し、11月に国内発売というパターンだった。3DSも順当ならそうなるだろう。
一方、欧米では、今年のクリスマス商戦に投入するかどうかはまだ不透明だ。欧米では、急ぐ必要がない理由がある。DSiを発売したのは昨年4月で、まだクリスマス商戦を一度しか迎えていないからだ。
DSiの欧米での販売台数は今年3月末時点で1300万台で、これから「収穫期」に入る。また、画面が大きな「ニンテンドーDSiLL」(欧米での名称はDSiXL)も今年3月に発売したばかりだ。今年のクリスマス商戦は3DSの投入時期としては早すぎ、日本で話題を盛り上げた後、来春に発売しても少しもおかしくないだろう。
3D映像の魅力をどうアピールするか
業界関係者やメディア関係者が中心のE3で、3DSは上々のデビューを果たした。しかし、一般の人に裸眼立体視のおもしろさを理解してもらい、任天堂の掲げる「ゲーム人口の拡大」につなげるには、少しでも多くの人に体験してもらう必要がある。
任天堂は今回のE3で多くのスタッフを使って3DSをアピールしたが、日本でも体験イベントなどのプロモーション展開は欠かせない。3D製品は、テレビCMや写真では実際の立体感を伝えられない難しさがある。任天堂がこのハードルにどう挑むかも見どころの1つだ。
iPhone 4の品薄状態は長く続く見通し、秋にはCDMA2000対応モデル登場の可能性も
6月24日に発売される「iPhone 4」が長期にわたって品薄状態となる見通しであることが明らかになった。
また、アメリカの大手携帯電話会社Verizon(ベライゾン)やKDDIが採用している第3世代携帯電話の通信方式「CDMA2000」に対応したモデルのiPhone 4が登場する可能性があることが明かされており、こちらも品薄状態にさらに拍車をかけそうな要因となっている。
Appleの新型携帯電話「iPhone 4」が当面供給不足に陥るであろうという見通しを、アメリカの投資銀行Rodman & RenshawのアナリストであるAshok Kumar氏が明かしたそうだ。
これは「iPhone 4」に搭載される960×640ドットの3.5インチマルチタッチIPS液晶ディスプレイの供給が追いつかないことによるもので、1ヶ月あたりの生産台数は当初計画されていた400万台の半分にあたる200万台に落ち込むことから、需要に対して十分な供給が行われない状態が続くであろうとKumar氏は述べている。
なお、「iPhone 4」は予約受付を開始した当日に全世界で過去最高となる60万台の事前予約を記録していましたが、この数は前モデルにあたるiPhone 3GSの10倍以上にあたるとされており、高い人気ぶりをうかがい知ることができる。
ディスプレイの供給不足は8月ないし秋ごろまでに解決するのではないかとされていますが、以下のリンクによると、ODMやOEMを手がける台湾メーカーのPegatron TechnologyがCDMA2000に対応した「iPhone 4」を2010年第4四半期に中国・上海にある工場から出荷する見通しであることが市場関係者によって明らかにされているため、ディスプレイの供給状況次第では品薄状態が長引くことも考えられそうだ。
ちなみに日本のKDDIが採用しているCDMA2000は、第2世代携帯電話サービスで利用していた周波数と互換性を持たせるために、800MHz帯を利用した通信は上りと下りの周波数が逆転している(2GHz帯では海外と同じ周波数割り当て)ことから、仮にCDMA2000対応のiPhone 4が登場しても、すぐさまKDDIで利用できるようになるというわけではない。
記者の目◇富士通・東芝、高揚感なき携帯統合
富士通と東芝は17日、携帯電話事業の統合で基本合意したと発表した。国内市場が縮小する中、安定的に収益を稼ぐ基盤を確立し国内シェアトップを目指す。携帯業界では昨年9月のNEC、日立製作所、カシオ計算機の事業統合発表以来のビッグニュースだが、市場の反応はどちらかといえば冷めた印象だ。海外戦略やスマートフォン(高機能携帯端末)分野などでの成長余地を市場は冷静に見極めようとしている。
「今回の携帯統合がもたらす東芝と富士通の業績への影響は限定的。成長戦略も不透明でインパクトに欠ける」(大和証券キャピタル・マーケッツの佐藤雅晴アナリスト)。富士通・東芝の携帯電話事業の株式市場関係者の反応を要約するとこんなところに落ちつく。
実際、両社の携帯電話事業の統合を日本経済新聞が報じた11日、東芝の株価は前の日比2%高と日経平均株価(2%高)並みの上昇、富士通は1%高にとどまった。積極的な買い手掛かりにはならなかった。17日の午後1時に携帯統合で基本合意と正式発表した直後も、両社の株価に目立った反応はなかった。
背景にあるのが統合新会社に対する先行き不安。「国内市場はじり貧。海外でも新会社がどう成長できるかイメージできない」(いちよし投資顧問の秋野充成運用部長)との声がある。両社の事業統合により国内シェアは単純合算で19%(09年度MM総研調べ)とシャープに次ぐ2位に上昇する。だが、国内市場そのものは2010年に3700万台とピークの07年に比べ約3割減まで落ち込む見通し(メリルリンチ日本証券調べ)。両社の携帯電話事業のメーンターゲットは国内。統合で生産と販売の効率化は期待できるものの、成長シナリオは描きにくい。
海外でも新興国向けなどの普及モデルでは韓国・サムスン電子やLG電子が優位性を保つ一方、高機能のスマートフォン分野では米アップルのiPhone(アイフォーン)が勢いを増している。世界シェアトップのフィランドのノキアでさえ、16日にスマートフォンでの苦戦などを背景に10年4~6月期に携帯電話端末・サービス部門の売上高が従来予想の下限か、やや下回る水準になるとの見通しを発表、米預託証券(ADR)は10%安と急落した。
合算しても世界シェア1%以下で、海外の携帯端末市場におけるブランド力が限られる富士通・東芝連合がどこまで食い込む余地があるのか。海外展開の拡大はリスクですらある。
では、東芝・富士通の本体にとって携帯電話事業を統合するメリットは何なのか。東芝にとっては、赤字続きの携帯事業は懸案事項だった。富士通が新会社株式の過半を握れば、東芝にとって携帯事業が連結子会社でなくなる公算が大きい。過去にも複数の国内携帯電話会社と統合交渉を進めてきたが条件が折り合わず破談を繰り返してきただけに、ようやく課題案件が片付くといったところだろう。
一方、富士通の携帯電話事業は「らくらくホン」のヒットに支えられ安定的に利益を出している。統合する東芝の携帯事業が赤字状態というリスクはあるものの、効率化のメリットのほか、主力のNTTドコモ以外の需要を取り込める可能性がある。
いずれにせよ、東芝はフラッシュメモリーと原発、富士通は情報システム・サービスを中核事業に位置づけ、世界市場での勝ち残りに向け正念場を迎えている。両社にとってコモディティ商品の携帯端末はもはや非中核的な事業で、できるだけ経営資源をかけたくないのが本音だろう。その意味で今回の携帯統合は両社にとって成長戦略ではなく、携帯事業のリスク低減といった側面が大きい。
伸びない国内市場、そして世界で勝てる展望が開けない国内の携帯電話事業の苦悩が透けてみえるかのような今回の携帯再編。市場が投げかける冷めた目線の背景にはこんな事情がある。
記者の目◇カシオが計算する「一等地」の生かし方
カシオ計算機の腕時計事業が再び存在感を高めている。連結売上高に占める比率は2005年3月期に12%まで下がったが、11年3月期は23%まで回復する。売上規模ではデジタルカメラ、携帯電話機事業に次ぐ第3の事業だったが、携帯事業が今期から持ち分法適用となるため「第2の事業」という位置づけになる。時計事業にかかる期待は大きく、樫尾和雄社長も新たな時計ビジネスに向けて動き出そうとしている。
カシオの今期連結業績は売上高が前期比12%減の3750億円、営業損益は150億円の黒字(前期は293億円の赤字)に転換する見通し。前期にそれぞれ340億円、50億円の赤字を計上した携帯事業と中小型液晶事業が他社との資本提携により持ち分法適用対象となるため、営業損益は大幅に改善する。110億円の赤字だったデジカメ事業も数億円の黒字に転換する見通しだが、損益改善のスピードは遅い。
厳しい状況のなかで抜群の安定感を示すのが腕時計事業だ。11年3月期の売上高は10%増の860億円、営業利益は5%増の163億円を見込む。連結営業利益(消去前)の約6割を時計の利益が占め、利益面では圧倒的な存在感を示す。「Gショック」ブランドの世界的な浸透に加え、利益率が高い電波ソーラー時計の比率が06年3月期の40%から64%まで高まり、ここ4年は営業利益率が20%前後と好採算を維持している。大きく伸びはしないが安定してキャッシュを稼ぐ「金のなる木」だ。
経営の下支え役としては申し分がなさそうだが、樫尾社長は安定収益源という時計事業の位置付けに不満を示す。「腕時計は2000億円の売上高を上げられるポテンシャルを持っている」というのが樫尾社長の持論。「人間の体の部位では、即座に見ることができる手首が『一等地』にあたる」との信念があるからだ。「一等地」に装着される腕時計の売り上げ規模はまだまだ伸びる余地があるという。なのに、ここ数年の売上高は800億円前後を行ったり来たり。安定しているが売り上げ規模の拡大に結びつかない状況にじくじたる思いを募らせている。
時間のすべてを正確に表示するというデジタル機器メーカーならではの発想で、初代デジタル時計「カシオトロン」を発売したのが74年。耐衝撃性が売りでファッション性もまとった「Gショック」を発売したのが83年。歴史あるカシオの時計事業は多くのヒット商品を生み出してきた。安定しているとはいえ、時計事業の売上高は「Gショック」ブームにわいた98年3月期の1642億円のおよそ半分の水準にとどまる。
もうひとつの柱であるデジカメが激しい販売競争と価格下落に苦しむ一方、腕時計は基本的に単価下落がない希有(けう)な商品。売上高が伸びればそれなりの利益が計算できるだけに、時計事業の再成長にかける期待は大きい。
樫尾社長は「手首の位置を時刻の表示だけに使うのはもったいない。電池の問題さえクリアすればすぐにでも出せる新製品がある」と、「腕時計+α」の新製品の存在を示唆する。「一等地」を有効活用して売上高2000億円へ――。時計という成熟市場に風穴を開けられるか。新市場を創出するという樫尾社長の真骨頂が見られるかもしれない。
記者の目◇凸版印刷、黒船をきっかけに変われるか
2010年は「電子書籍元年」とも言われる。電子書籍が普及すれば、従来の書籍印刷の需要は減るとの連想が働きやすく、印刷業界にとっては逆風ともみられがちだ。米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」の日本発売を「黒船来襲」と例える向きもあるが、印刷会社自身はどのように受け止めているのだろうか。
「中長期的には2000億円ぐらいは覚悟しなければならないのではないか」――。凸版印刷で次期社長に就く金子真吾副社長は決算説明会で、紙媒体関連事業の売上高が減少する可能性を示唆した。印刷事業を含む情報・ネットワーク系の10年3月期連結売上高は9055億円。予想が当たれば、このうち2割強が減少することになる。
5月以降、印刷や出版、書店などの企業に取材に行って電子書籍が話題にならないことはない。金子副社長のように、既存の事業に対する各社の危機感がうかがえる言葉が多く聞かれる。出版不況による市場縮小と相まって、連日報道される「iPad」の勢いは各社を弱気にさせているようだ。
しかし、同時に電子書籍の登場を変革の機ととらえる企業も少なくない。凸版も減ると考えているのは、あくまで「紙媒体に関する印刷事業の売上高」に過ぎない。当然のことだが、長期的には成長戦略を模索している。
例えば、ソニーなどと記者会見を行った電子書籍関連ビジネス。4社が出資するベンチャー会社が国内での電子書籍配信のプラットフォームを整備する予定。凸版は出版社との取引やデータの電子化などのノウハウがあるほか、エコポイントの運営事務局事業などプラットフォームの運営でも実績がある。業績への寄与度はまだ小さいと見られるが、電子書籍普及は凸版にとって単なるダメージというわけではないようだ。
さらに金子副社長は「広告需要はパーソナルメディアに移りつつある。当社も電子メディアに眠る需要を掘り起こしたい」と意欲を示す。凸版が運営する電子チラシサイト「Shufoo!(シュフー)」は全国のスーパーや家電量販店など約2万店のチラシ広告を掲載している。広い取引先から別の需要を開拓する狙いもある。
近年、凸版など印刷大手では、電子部材などのエレクトロニクス部門の動向に注目が集まりがちという。確かに同部門は収益の変動率が大きく、今期も収益回復のカギとなる。ただ、本業である印刷事業は依然として収益に占める比率が大きく、凸版にとってどう現状を乗り越えるかは死活問題。将来振り返ったときに、電子書籍という黒船は凸版の変革を促したきっかけとして位置付けられるのか――。新たな時代の成長シナリオが問われる。
任天堂は15日、米ロサンゼルスで開催されたゲーム見本市「E3」の記者会見で、新型携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」をお披露目した。発売日や価格は発表されなかったが、過去のパターンから考えれば日本発売は今冬で、年末商戦の目玉になるのは間違いないだろう。専用眼鏡なしで3次元(3D)表示を実現するとは、ゲーム機作りに長けた任天堂らしいが、3DSにはほかにも注目すべき点がある。
3DSの裸眼立体視機能はひと目でわかるインパクトがあり、E3でも話題をさらった。2画面を備えるのは現行機の「ニンテンドーDSi」と同じだが、上部の画面を3.02インチから3.5インチへと広げ、解像度を高めたうえで3D機能を付けた。外向きカメラを2個搭載し、3D写真を撮影することもできる。
「マリオの生みの親」のこだわり
記者会見で、任天堂米国法人のレジー・フィサメイ社長が強調したのは、コストのかかる3D眼鏡を購入する必要がなく、どこにでも持ち運ぶことができるという点だった。
立体視表示の度合いを調整する「3Dボリューム」というスイッチにも任天堂らしい工夫を感じる。これは、マリオの生みの親として知られる宮本茂専務・情報開発本部長がこだわったようだ。任天堂サイトでE3に合わせて公開された「社長が訊く」というインタビューでは、「自分で好きなセッティングができるのが理想的」という宮本氏が、メニュー画面で選択するような調整機能ではなく、直感的な「アナログスライド」を指定したと述べている。
立体映像の見え方には個人差があるが、3Dボリュームを使えば、ゲームをしながらいつでも最適な位置に調整可能だ。子供同士や家族で遊ぶことも多いゲーム機ではユーザーインターフェースの簡便さが重要であり、こうした機能は現在販売されている3Dテレビにもない。
大きく進化した無線通信機能
裸眼立体視ほど目立たないが、実は新たに追加される無線通信機能も大きな意味を持つ。
3DSはユーザーが能動的に操作しなくても、スリープ状態で自動的に3DS同士でデータを交換したり、インターネットからデータを受信したりする機能を搭載する。これまでも、特定ソフトをセットした端末同士で自動的にデータをやりとりする「すれちがい通信」と呼ぶ機能はあったが、端末本体で通信を制御することで使い勝手を大幅に向上させた。
家庭用ゲーム機はここ数年、ユーザー同士が交流するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)機能を強化してきた。最近は大手SNSと連携する「オープン化」にも乗り出し、任天堂も09年のE3では米SNS「Facebook」との連携を打ち出していた。
しかし、Facebookはこの1年間でソーシャルゲームと呼ばれる交流機能を備えたゲームを増やし、ゲーム機メーカーにとってはライバルに変わろうとしている。任天堂は元々、他社ほどオープン化に積極的ではなかったが、今回の3DSの通信機能強化で任天堂独自の閉じたネットワークを追求していく戦略をますますはっきりさせたといえる。
3DSの2つのカメラで撮影した3D写真は、当然ながら3DS上でしか立体で見ることができない。しかし、3DS同士では簡単にデータを交換できるので、ユーザー数が増えればコミュニティーは自然と大きくなる。任天堂はこの互換性のなさを逆手にとった交流サービスを次々と打ち出してくるはずだ。
深刻な「マジコン」問題
3DSの無線通信機能は同時に、任天堂が抱える深刻な問題に対する解決案になりうる可能性がある。それは「マジコン」問題として知られる違法コピーの横行だ。
コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が6月4日に発表した「違法複製ゲームソフトのダウンロードに関する使用実態調査」によると、DSシリーズとソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション・ポータブル(PSP)」シリーズ用ソフトの違法ダウンロードによる被害は世界で年間約6360億円にも上るという。この調査は、ファイル共有ソフトを通じた違法コピーの流通は含んでおらず、実際はその数倍に及ぶと推計される。
この違法コピーは、任天堂ももちろんだが、世界でDSシリーズ向けにゲームを販売するソフト開発会社に被害を及ぼしている。任天堂もマジコンと呼ばれるツールを販売した会社を提訴するなど手は打っているが、抜本的な解決にはならず、焼け石に水の状態だった。
しかし、3DSはスリープ状態でも、無線LANアクセスポイントなどを通じて、任天堂のサーバーと自動的にやりとりできる。これは、個々の端末を特定して区分できることを意味する。正規品でない違法コピーをインストールしている場合はなんらかの制限をかけることも不可能ではないだろう。
OSのアップデートといったソフトウエアの更新も、より簡単になる。デジタル機器のセキュリティー対策とハッキングは「いたちごっこ」となりがちだ。子供から年配の人まで幅広いユーザーを抱える任天堂はこれまで、頻繁なOSのアップデートには慎重だったが、自動更新の仕組みができれば、対策も機動的に打てる。任天堂は、ユーザーに不便をかけずこの問題を解決するため、周到に計画しているように思える。
欧米は来春発売の可能性も
今回のE3で任天堂は価格や発売日を明らかにしなかったが、過去2回ほどの新機種発売は、9月に日本で大きな記者発表会を開いて全体像を説明し、11月に国内発売というパターンだった。3DSも順当ならそうなるだろう。
一方、欧米では、今年のクリスマス商戦に投入するかどうかはまだ不透明だ。欧米では、急ぐ必要がない理由がある。DSiを発売したのは昨年4月で、まだクリスマス商戦を一度しか迎えていないからだ。
DSiの欧米での販売台数は今年3月末時点で1300万台で、これから「収穫期」に入る。また、画面が大きな「ニンテンドーDSiLL」(欧米での名称はDSiXL)も今年3月に発売したばかりだ。今年のクリスマス商戦は3DSの投入時期としては早すぎ、日本で話題を盛り上げた後、来春に発売しても少しもおかしくないだろう。
3D映像の魅力をどうアピールするか
業界関係者やメディア関係者が中心のE3で、3DSは上々のデビューを果たした。しかし、一般の人に裸眼立体視のおもしろさを理解してもらい、任天堂の掲げる「ゲーム人口の拡大」につなげるには、少しでも多くの人に体験してもらう必要がある。
任天堂は今回のE3で多くのスタッフを使って3DSをアピールしたが、日本でも体験イベントなどのプロモーション展開は欠かせない。3D製品は、テレビCMや写真では実際の立体感を伝えられない難しさがある。任天堂がこのハードルにどう挑むかも見どころの1つだ。
iPhone 4の品薄状態は長く続く見通し、秋にはCDMA2000対応モデル登場の可能性も
6月24日に発売される「iPhone 4」が長期にわたって品薄状態となる見通しであることが明らかになった。
また、アメリカの大手携帯電話会社Verizon(ベライゾン)やKDDIが採用している第3世代携帯電話の通信方式「CDMA2000」に対応したモデルのiPhone 4が登場する可能性があることが明かされており、こちらも品薄状態にさらに拍車をかけそうな要因となっている。
Appleの新型携帯電話「iPhone 4」が当面供給不足に陥るであろうという見通しを、アメリカの投資銀行Rodman & RenshawのアナリストであるAshok Kumar氏が明かしたそうだ。
これは「iPhone 4」に搭載される960×640ドットの3.5インチマルチタッチIPS液晶ディスプレイの供給が追いつかないことによるもので、1ヶ月あたりの生産台数は当初計画されていた400万台の半分にあたる200万台に落ち込むことから、需要に対して十分な供給が行われない状態が続くであろうとKumar氏は述べている。
なお、「iPhone 4」は予約受付を開始した当日に全世界で過去最高となる60万台の事前予約を記録していましたが、この数は前モデルにあたるiPhone 3GSの10倍以上にあたるとされており、高い人気ぶりをうかがい知ることができる。
ディスプレイの供給不足は8月ないし秋ごろまでに解決するのではないかとされていますが、以下のリンクによると、ODMやOEMを手がける台湾メーカーのPegatron TechnologyがCDMA2000に対応した「iPhone 4」を2010年第4四半期に中国・上海にある工場から出荷する見通しであることが市場関係者によって明らかにされているため、ディスプレイの供給状況次第では品薄状態が長引くことも考えられそうだ。
ちなみに日本のKDDIが採用しているCDMA2000は、第2世代携帯電話サービスで利用していた周波数と互換性を持たせるために、800MHz帯を利用した通信は上りと下りの周波数が逆転している(2GHz帯では海外と同じ周波数割り当て)ことから、仮にCDMA2000対応のiPhone 4が登場しても、すぐさまKDDIで利用できるようになるというわけではない。
記者の目◇富士通・東芝、高揚感なき携帯統合
富士通と東芝は17日、携帯電話事業の統合で基本合意したと発表した。国内市場が縮小する中、安定的に収益を稼ぐ基盤を確立し国内シェアトップを目指す。携帯業界では昨年9月のNEC、日立製作所、カシオ計算機の事業統合発表以来のビッグニュースだが、市場の反応はどちらかといえば冷めた印象だ。海外戦略やスマートフォン(高機能携帯端末)分野などでの成長余地を市場は冷静に見極めようとしている。
「今回の携帯統合がもたらす東芝と富士通の業績への影響は限定的。成長戦略も不透明でインパクトに欠ける」(大和証券キャピタル・マーケッツの佐藤雅晴アナリスト)。富士通・東芝の携帯電話事業の株式市場関係者の反応を要約するとこんなところに落ちつく。
実際、両社の携帯電話事業の統合を日本経済新聞が報じた11日、東芝の株価は前の日比2%高と日経平均株価(2%高)並みの上昇、富士通は1%高にとどまった。積極的な買い手掛かりにはならなかった。17日の午後1時に携帯統合で基本合意と正式発表した直後も、両社の株価に目立った反応はなかった。
背景にあるのが統合新会社に対する先行き不安。「国内市場はじり貧。海外でも新会社がどう成長できるかイメージできない」(いちよし投資顧問の秋野充成運用部長)との声がある。両社の事業統合により国内シェアは単純合算で19%(09年度MM総研調べ)とシャープに次ぐ2位に上昇する。だが、国内市場そのものは2010年に3700万台とピークの07年に比べ約3割減まで落ち込む見通し(メリルリンチ日本証券調べ)。両社の携帯電話事業のメーンターゲットは国内。統合で生産と販売の効率化は期待できるものの、成長シナリオは描きにくい。
海外でも新興国向けなどの普及モデルでは韓国・サムスン電子やLG電子が優位性を保つ一方、高機能のスマートフォン分野では米アップルのiPhone(アイフォーン)が勢いを増している。世界シェアトップのフィランドのノキアでさえ、16日にスマートフォンでの苦戦などを背景に10年4~6月期に携帯電話端末・サービス部門の売上高が従来予想の下限か、やや下回る水準になるとの見通しを発表、米預託証券(ADR)は10%安と急落した。
合算しても世界シェア1%以下で、海外の携帯端末市場におけるブランド力が限られる富士通・東芝連合がどこまで食い込む余地があるのか。海外展開の拡大はリスクですらある。
では、東芝・富士通の本体にとって携帯電話事業を統合するメリットは何なのか。東芝にとっては、赤字続きの携帯事業は懸案事項だった。富士通が新会社株式の過半を握れば、東芝にとって携帯事業が連結子会社でなくなる公算が大きい。過去にも複数の国内携帯電話会社と統合交渉を進めてきたが条件が折り合わず破談を繰り返してきただけに、ようやく課題案件が片付くといったところだろう。
一方、富士通の携帯電話事業は「らくらくホン」のヒットに支えられ安定的に利益を出している。統合する東芝の携帯事業が赤字状態というリスクはあるものの、効率化のメリットのほか、主力のNTTドコモ以外の需要を取り込める可能性がある。
いずれにせよ、東芝はフラッシュメモリーと原発、富士通は情報システム・サービスを中核事業に位置づけ、世界市場での勝ち残りに向け正念場を迎えている。両社にとってコモディティ商品の携帯端末はもはや非中核的な事業で、できるだけ経営資源をかけたくないのが本音だろう。その意味で今回の携帯統合は両社にとって成長戦略ではなく、携帯事業のリスク低減といった側面が大きい。
伸びない国内市場、そして世界で勝てる展望が開けない国内の携帯電話事業の苦悩が透けてみえるかのような今回の携帯再編。市場が投げかける冷めた目線の背景にはこんな事情がある。
記者の目◇カシオが計算する「一等地」の生かし方
カシオ計算機の腕時計事業が再び存在感を高めている。連結売上高に占める比率は2005年3月期に12%まで下がったが、11年3月期は23%まで回復する。売上規模ではデジタルカメラ、携帯電話機事業に次ぐ第3の事業だったが、携帯事業が今期から持ち分法適用となるため「第2の事業」という位置づけになる。時計事業にかかる期待は大きく、樫尾和雄社長も新たな時計ビジネスに向けて動き出そうとしている。
カシオの今期連結業績は売上高が前期比12%減の3750億円、営業損益は150億円の黒字(前期は293億円の赤字)に転換する見通し。前期にそれぞれ340億円、50億円の赤字を計上した携帯事業と中小型液晶事業が他社との資本提携により持ち分法適用対象となるため、営業損益は大幅に改善する。110億円の赤字だったデジカメ事業も数億円の黒字に転換する見通しだが、損益改善のスピードは遅い。
厳しい状況のなかで抜群の安定感を示すのが腕時計事業だ。11年3月期の売上高は10%増の860億円、営業利益は5%増の163億円を見込む。連結営業利益(消去前)の約6割を時計の利益が占め、利益面では圧倒的な存在感を示す。「Gショック」ブランドの世界的な浸透に加え、利益率が高い電波ソーラー時計の比率が06年3月期の40%から64%まで高まり、ここ4年は営業利益率が20%前後と好採算を維持している。大きく伸びはしないが安定してキャッシュを稼ぐ「金のなる木」だ。
経営の下支え役としては申し分がなさそうだが、樫尾社長は安定収益源という時計事業の位置付けに不満を示す。「腕時計は2000億円の売上高を上げられるポテンシャルを持っている」というのが樫尾社長の持論。「人間の体の部位では、即座に見ることができる手首が『一等地』にあたる」との信念があるからだ。「一等地」に装着される腕時計の売り上げ規模はまだまだ伸びる余地があるという。なのに、ここ数年の売上高は800億円前後を行ったり来たり。安定しているが売り上げ規模の拡大に結びつかない状況にじくじたる思いを募らせている。
時間のすべてを正確に表示するというデジタル機器メーカーならではの発想で、初代デジタル時計「カシオトロン」を発売したのが74年。耐衝撃性が売りでファッション性もまとった「Gショック」を発売したのが83年。歴史あるカシオの時計事業は多くのヒット商品を生み出してきた。安定しているとはいえ、時計事業の売上高は「Gショック」ブームにわいた98年3月期の1642億円のおよそ半分の水準にとどまる。
もうひとつの柱であるデジカメが激しい販売競争と価格下落に苦しむ一方、腕時計は基本的に単価下落がない希有(けう)な商品。売上高が伸びればそれなりの利益が計算できるだけに、時計事業の再成長にかける期待は大きい。
樫尾社長は「手首の位置を時刻の表示だけに使うのはもったいない。電池の問題さえクリアすればすぐにでも出せる新製品がある」と、「腕時計+α」の新製品の存在を示唆する。「一等地」を有効活用して売上高2000億円へ――。時計という成熟市場に風穴を開けられるか。新市場を創出するという樫尾社長の真骨頂が見られるかもしれない。
記者の目◇凸版印刷、黒船をきっかけに変われるか
2010年は「電子書籍元年」とも言われる。電子書籍が普及すれば、従来の書籍印刷の需要は減るとの連想が働きやすく、印刷業界にとっては逆風ともみられがちだ。米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」の日本発売を「黒船来襲」と例える向きもあるが、印刷会社自身はどのように受け止めているのだろうか。
「中長期的には2000億円ぐらいは覚悟しなければならないのではないか」――。凸版印刷で次期社長に就く金子真吾副社長は決算説明会で、紙媒体関連事業の売上高が減少する可能性を示唆した。印刷事業を含む情報・ネットワーク系の10年3月期連結売上高は9055億円。予想が当たれば、このうち2割強が減少することになる。
5月以降、印刷や出版、書店などの企業に取材に行って電子書籍が話題にならないことはない。金子副社長のように、既存の事業に対する各社の危機感がうかがえる言葉が多く聞かれる。出版不況による市場縮小と相まって、連日報道される「iPad」の勢いは各社を弱気にさせているようだ。
しかし、同時に電子書籍の登場を変革の機ととらえる企業も少なくない。凸版も減ると考えているのは、あくまで「紙媒体に関する印刷事業の売上高」に過ぎない。当然のことだが、長期的には成長戦略を模索している。
例えば、ソニーなどと記者会見を行った電子書籍関連ビジネス。4社が出資するベンチャー会社が国内での電子書籍配信のプラットフォームを整備する予定。凸版は出版社との取引やデータの電子化などのノウハウがあるほか、エコポイントの運営事務局事業などプラットフォームの運営でも実績がある。業績への寄与度はまだ小さいと見られるが、電子書籍普及は凸版にとって単なるダメージというわけではないようだ。
さらに金子副社長は「広告需要はパーソナルメディアに移りつつある。当社も電子メディアに眠る需要を掘り起こしたい」と意欲を示す。凸版が運営する電子チラシサイト「Shufoo!(シュフー)」は全国のスーパーや家電量販店など約2万店のチラシ広告を掲載している。広い取引先から別の需要を開拓する狙いもある。
近年、凸版など印刷大手では、電子部材などのエレクトロニクス部門の動向に注目が集まりがちという。確かに同部門は収益の変動率が大きく、今期も収益回復のカギとなる。ただ、本業である印刷事業は依然として収益に占める比率が大きく、凸版にとってどう現状を乗り越えるかは死活問題。将来振り返ったときに、電子書籍という黒船は凸版の変革を促したきっかけとして位置付けられるのか――。新たな時代の成長シナリオが問われる。