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マイクロソフトよ、いったい何があったんだ? 独自携帯から突如の撤退、発売から2カ月足らずで
米マイクロソフトが初めて本格的に携帯電話ハードウエアの設計を手がけたという「キン(KIN)」。この5月に米国で発売されたばかりだったが、突如として事業の中止が決まった。
キンは米携帯キャリア1位のベライゾン・ワイヤレスが販売しているが、在庫がなくなり次第販売を中止する。欧州では英ボーダフォン・グループが今秋発売する予定だったが、こちらも計画を取りやめるという。
端末値下げの直後だった
開発に2年の歳月をかけ、膨大な広告費もかけて若者層を狙ったマイクロソフトの独自携帯だったが、発売からわずか48日間、あっけない幕引きとなったと欧米のメディアが伝えている。
この携帯電話は、小型の「KIN ONE」とワイドススクリーンの「KIN TWO」の2モデルがある。いずれもタッチスクリーンとスライド式のキーボードを備えており、ソーシャル・ネットワーキング・サービスなど若者向けに特化した端末だ。
大規模なキャンペーンを展開したが売れ行きは芳しくなかったようで、ベライゾンは同じ週に端末の大幅値下げを発表していた。
マイクロソフトの動向に詳しい米Windows IT Pro誌のポール・スロット氏によると、ベライゾンはキンに高額なデータプランの加入を義務づけているため、たとえ端末価格を引き下げてもターゲット層の8~19歳には購入できない。
また従来の多機能携帯電話とスマートフォンの中間のような製品で、その位置づけが曖昧なため消費者に訴える力がなく問題を抱えていたと指摘している。
マイクロソフトの消費者部門は混乱している?
米ニューヨーク・タイムズによると、米フォレスター・リサーチのアナリスト、チャールズ・ゴルビン氏は「完全に戦略の失敗だ」と語っている。
同氏によると、マイクロソフトは新製品に執着する企業で、たとえ出足が芳しくなくても何度も改良を重ねていく。それがこれまでの同社のスタイルだという。今回のようなあまりにも素早い撤退は意外だったと同氏は驚いている。
しかしこれは、マイクロソフトの消費者製品部門が混乱していることの表れだとニューヨーク・タイムズの記事は指摘している。
マイクロソフトの消費者部門は、米アップルの携帯メディアプレーヤー「アイポッド(iPad)」に対抗すべく「ズーン(Zune)」を市場投入したが、期待通りの実績が出ていない。
またここ最近は「アイフォーン(iPhone)」や米グーグルの「アンドロイド(Android)」の台頭で苦戦を強いられている。
マイクロソフトは5月に組織再編を発表している。キンや同社のモバイル基本ソフト(OS)「ウィンドウズ・フォーン7」を担当するモバイルコミュニケーション事業が、7月1日付でスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)の直轄になっている。
恐らく突然の方針転換はバルマー氏の鶴の一声で決まったのではないかと筆者は見ている。
「マイクロソフトのモバイル戦略は支離滅裂」
マイクロソフトは今後、キンの開発チームと、ウィンドウズ・フォーン7の開発チームを統合するとしている。同社はウィンドウズ・フォーン7開発の最終段階にあり、今秋にも同OSを搭載する端末が各メーカーから登場する予定だ。
これについてWindows IT Pro誌のポール・スロット氏は次のように述べている。
「撤退は正しい決断だ。そもそもマイクロソフトが、ウィンドウズ・フォーンと並行して別のOSの携帯電話を手がけていたことが間違いだった」
「マイクロソフトのモバイル戦略は戦略と呼べるのもではなく、支離滅裂そのものだ。これでマイクロソフトは状況改善に一歩近づいた」(同氏)
水ビジネス、アジアで拡大 15年後30兆円市場に
仏など欧米勢先行 域内企業も対抗
【マニラ=遠西俊洋】経済成長や人口増で水不足が続くアジアで、上下水道整備など水関連ビジネスが拡大している。仏GDFスエズなど「水メジャー」が相次ぎ大型商談をまとめ、アジア企業は地元で蓄積したノウハウを生かし対抗し始めた。15年後の年間需要が30兆円超と現在の2倍以上に膨らむとの予想もあり、市場の成長を見越した金融商品も登場した。
スエズは5月、子会社を通じ、中国重慶市で日量約24万立方メートルの工業用水の供給を受注した。30年契約で下水処理も請け負う。中国国営の新華社によると、総事業費は約75億円。中国でのこの種の商談としてはスエズとして過去最大級という。
3月には、インドのバンガロール市で市民300万人への飲料水供給を契約。仏ヴェオリア・ウオーターは2007年、中国天津市の水道事業の契約を更新し、70万人に携帯電話で水の使いすぎまで警告する最新サービスを提供している。
スエズとヴェオリアは合計で世界シェアの約3割を握る水メジャー。両社は次の成長の舞台をアジアに求めている形だ。
日本と違い、海外では水関連事業に民間が関与する例が多い。独シーメンス、米ゼネラル・エレクトリック(GE)も中国で相次ぎ水処理関連ビジネスを受注。シンガポールで2日まで開かれた見本市には旭化成、日東電工、東レなど日本の17社・団体が参加し、水処理技術をアピールした。
アジアの域内企業も事業拡大に動き出した。フィリピン・マニラ東部の水道事業を手掛けるマニラ・ウオーターはベトナムのホーチミン市、インド西部ラジャスタン州で上下水道工事などの事業化調査に入った。
フィリピンでは住民が水を配管から盗む例が多い。1997年に発足した民営のマニラ社はサービス向上を条件に、水を盗んできた住民と正規の給水契約を結ぶ。漏水を含む配水ロスは1~3月期で13.7%と、03年の50%超から大幅に縮小。このノウハウをテコに海外に本格進出する。
シンガポールの大手複合企業セムコープ・インダストリーズは4月、中国広西チワン族自治区で水再処理施設の建設を始めた。水資源が乏しいシンガポールは官民挙げて下水再生や海水淡水化に取り組んでおり、そこで蓄積した技術を生かす。
インド化学大手タタ・ケミカルズは09年12月、井戸水に頼る低所得者層向けの浄水器「タタ・スウォッチ」を発売。容量19リットルの大型水筒タイプで、価格は999ルピー(約1900円)。年間100万台の販売を目指す。
日本の経済産業省の予想では、アジア大洋州の水ビジネスは25年に07年の2.8倍の年間約31兆1000億円まで増える。中国では年率10.7%、インドは同11.7%の急成長が見込まれる。
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【日本の議論】「子供を守る」どこ行った? 大人の都合で“政争の具”へ 漫画児童ポルノ条例をめぐる議論
東京都議会6月定例会が閉会した6月16日。子供を性的対象にした漫画やアニメといった商品の区分陳列など、販売規制を目指す都青少年健全育成条例の改正案が最大会派の民主などの反対多数で否決された。だが、石原慎太郎知事は9月議会への再提出を目指す考えを明言。「表現の自由」と「子供の健全育成」をめぐって交わされた議論は、いつの間にか“政争の具”に発展してしまった。否決を前提として建設的な議論を避けた民主への批判に加え、都議会や関係先への根回しを怠ってきた都最高幹部や担当部局による“不作為”を指摘する声もある。
“汚い花”を断つと植物全体が滅ぶ
都条例の改正案をめぐる議論は3カ月にわたって迷走を続けた。発端は今年3月議会の会期中、改正案に反対する著名漫画家のちばてつやさんや里中満智子さんらが都庁で記者会見を開いたことだった。
「表現で新しいものが起きるときは色んな種類の花が咲く。スミレなどかれんな花も、ジャングルのラフレシアのような花も、根っこですべて繋がっている。この花は汚いと根を断つと植物群全体が滅ぶ」
ちばさんは、漫画文化を生態系に例えて改正案を批判した。
この会見により反対運動が一気に拡大した。
日本ペンクラブや出版倫理協議会などの各団体の反対表明に加え、反対派によるインターネットでの呼びかけで、都だけでなく民主、自民など各会派にメールやファクスで抗議が殺到した。
議論の焦点は改正案条文の文言の定義と適用範囲だった。規制対象となる漫画などの18歳未満と想定されるキャラクター「非実在青少年」や「青少年性的視覚描写物」など用語の定義のほか、行政による恣意(しい)的な運用を招き、表現の自由を脅かすというのが主な主張だ。
民主幹部は当時、条文について「まるで警察用語。わざと分かりにくくしているのかと思った」とあきれた。その一方で、改正案を提出した都青少年・治安対策本部の幹部は「『非実在青少年』とは『非、実在、青少年』という意味だ。何が分からないのか、分からない」と余裕の笑みを浮かべていた。
しかし、実際には3月議会で改正案の可否を問う集中審議はなく、その余裕も都議会にはなかった。
なぜか-。
当時、都政で最大焦点となっていた築地市場の移転関連予算を盛り込んだ平成22年度の中央卸売市場会計予算案審議が佳境を向かえていたことが理由だ。賛否をめぐるさまざまな思惑が交錯する中で、改正案は結局、全会一致で継続審議となり、結論は6月議会に持ち越されることとなった。
しずかちゃんの裸はOK
一方、都庁内には、継続審議となったことで改正案をまとめた担当局の不手際をなじる声も上がった。都幹部の1人は「舐(な)めてかかっていたのではないか。明らかに業界や都民、議会への根回し、説明不足だ」と眉(まゆ)をひそめた。担当幹部も「正直、ここまで反発が強くなるとは思わなかった。事前の説明不足は否めない」と述べる。
強まる批判に担当者らは巻き返しにやっきとなる。「都民に条例改正の周知が不十分だった」(都担当者)として、「ドラえもんのしずかちゃんの入浴シーンやサザエさんのワカメちゃんのパンチラなどは規制に該当しない」などとする質問回答集を都のHPに掲載。
また、改正案を象徴する用語となった「非実在青少年」についても「年齢、学年の明確な描写やセリフ、ナレーションで明らかに18歳未満に設定されたキャラクター」と規定し、その「性行為がメーンとなっているもの」が規制対象になることを明記した。
しかし、5月初旬に起きたある“事件”が情勢を一変させた。石原知事が定例会見で「「(条文は)説明不足。『非実在青少年』という言葉は何だこれ一体? 幽霊の話か? 役人が作るくだらない言葉は世間に通用しない。誤解を受ける文言が悪い。どんどん変えたらいい」と述べたのだ。
都幹部は「あの発言が条例に反対する民主につけ込む隙(すき)を与えた。記者会見を補佐する知事本局や執行部は、知事答弁の打ち合わせをしていなかったのか…」とため息をつき、公明幹部も「明らかな失言だった」と肩を落とした。
落とし所を失っていた民主は、これに乗じて反対姿勢をさらに強めていった。「まさに、渡りに船とはこのこと。民主も助かったんじゃないか」と、別の野党幹部は苦笑いを浮かべた。
都議会総務委員会の参考人招致で民主は反対派の急先鋒(せんぽう)、宮台真司首都大教授(社会学)らを招致。
宮台教授は「主観だけで何でも規制できる。こんな条例を掲げること自体が東京都の恥」と批判。「非実在青少年」について「設定が問題なら『これは成人コスプレ』と断れば何でもありで、ナンセンスだ」と述べ、都の質問回答集を「法律は条例を含め条文がすべてで無意味だ」と切って捨てた。
これに対し、条例改正に賛成する自公は改正案の条文作成にかかわった前田雅英首都大教授(法学)を招致した。
前田教授は「改正案は子供が見にくい場所に置くことはできないかという提案だ」と改正案の趣旨を説明したが、「条文にあいまいな部分がないわけではないが、法律は素人が分かる言葉でできていない」と主張した。
民主都議の1人は「反対派の主張の方が説得力があった」とニンマリ。「改正案に賛成意見なんて実際はPTAにさえない」と述べるなど、自信をのぞかせる発言が目立つようになっていった。
「民主の方が無責任」?
勝負となった6月議会。民主幹部は代表質問で早速、「自ら責任を持てないものを議会に提出したのは無責任」と知事の発言を非難し、撤回を受け入れない場合は否決する方針を打ち出した。
だが、担当局幹部によると、石原知事サイドを無責任となじった当の民主幹部は、改正案を答申した「都青少年問題協議会」に名を連ねながら、一度も会に出席していなかった事実も発覚。
「最初から関心がなかったことの表れで、どちらが無責任か。一度、議会で受けた議案の撤回要求は責任放棄。民主こそ修正案を出すべきだ」と自民幹部は憤った。また、公明幹部も「民主から民主案について『会派内がまとまらないので今回は出せない』といわれた。これが、最大会派のやることか」と憮然(ぶぜん)とした表情を浮かべた。
自公は早期成立を求める保護者の署名が約4万5千筆集まったとし、対抗措置として独自の修正案を提出した。「非実在青少年」を「描写された青少年」に、また「青少年性的視覚描写物」を「青少年をみだりに性欲の対象として扱う図書類」に変更するなど用語を変えた上で、表現の自由を侵害するとの懸念に対して、付則で「条例施行3年経過後に検討の上、必要な措置を講じる」とした。
ところが、民主幹部は「改正案の文言を変えただけだ。自公が担当局に作らせたに決まっている」と批判、別の幹部は「民主の独自案はできている」と明かしたが、それが白日の下にさらされることは最後までなかった。
都議会で民主と自公がさや当てを行う一方、石原知事は「7、8歳の女の子をセックスの対象にする漫画を子供の目に触れさせないようにすることがなぜいけないのか」と強調。「反対のための反対で都民が迷惑。ばかなことをやっている。抽象論ではなく具体的な対案を出すべきだ。(出さないなら)『現状を認める』と都民の前で言えばいい」と怒号した。
落としどころは…
6月議会閉会後、都議会各会派を回った石原知事。民主の控室で「日本語の解読能力がないな、君らは」とチクリ。これに対して大沢昇幹事長は「自分だってそうじゃないか。言われたくないよ」と言い返す場面もみられた。
改正案に反対する藤本由香里・明治大准教授は「都はエロ漫画に限定しての規制というが、条文では拡大解釈ができるようになっている」と改正案の否決を喜び、賛成派の赤枝恒雄・赤枝六本木診療所院長は「未成年者が漫画の影響でレイプされている現実があることを知るべきだ」と肩を落とした。
都幹部は「条例規制か、それとも自主規制か。議論はそこで平行線をたどっただけ」と総括。結局、着地点を見いだせないまま時間切れになった格好だ。
石原知事は、9月議会への再提出を目指す意向だが、インターバルはわずか。「もっと時間がほしいのが本音。誰もが6月議会で流れは否決といった状況を感じていたはずだが、『俺に任せとけ』と言って問題を抱え込んだものの、民主対策を怠っていたにもかかわらず、知事には耳障りの良い情報しか伝えていなかった担当の最高幹部は責任をどう感じているのか」などの“恨み節”も庁内からは聞こえてくる。
一方、自民幹部も「民主はこの問題を知事選まで引き延ばすつもりだ。再提出は少なくても12月議会まで待った方が良い」とうめいた。
いつの間にか“政争の具”と化した改正案をめぐる議論に、子供を守るという当初の目的が薄れ始めている。文字通り“非実在青少年”化しているようだ。
日経社説
参院選 政策を問う
首相の「増税で成長」論には無理がある
増税をしても使い道を間違わなければ経済成長につながる。菅直人首相がこんな議論を繰り返している。増税した分を医療や介護といった分野に適切に回せば、雇用が生まれ、お金がうまく循環して経済が拡大するという理屈である。
菅首相は参院選で消費税率引き上げの超党派協議を呼びかけている。「増税で成長」の議論は、不人気な増税に対する有権者の反発を抑える思惑もあるのだろう。
一見、もっともな議論に聞こえるが、それで持続的な成長が実現するというのは単純すぎる。
政府は本当に適切な使い道を判断できるのか。より大きな政府は民間企業を締め出さないか。介護や医療といった分野に支出しても、良質な科学技術開発のような生産性を高める「将来に生きるカネ」とはなりにくい。首相や民主党がこれらの疑問に答えられなければ、この議論も説得力を持たない。
首相は消費税などの増税分の使い道として、例えば介護サービスへの支出を1兆円増やす考えだ。賃金水準が仕事の内容に見合っているとはいえない介護士の報酬を引き上げ、担い手が増えれば、介護の潜在需要を伸ばし失業も減るというわけだ。
従来の景気対策や失業対策と同様に一定の効果はあろう。介護を必要とする人にも当然、恩恵が及ぶ。しかし、もし政府が民間企業が担っているような領域にも事業を広げていくようであるならば、かえって経済の活力をそぐことにもなる。
また増税を成長につなげるとしても、社会保障分野に回すのが効率的かという疑問は残る。労働力人口が年に0.7%程度ずつ減っていく日本で1%台の成長を実現するには生産性の向上が極めて重要だ。介護や医療への財政支出は投資としての効果が薄く、経済全体の生産性を押し上げる力は相対的に弱い。
さらに消費税の増税で増える税収のうち、どの程度を社会保障の拡充に充てて、どの程度を現に生じている財政赤字の圧縮に使うかを首相はあいまいにしている。医療、年金、介護に必要な経費のかなりの分は赤字国債で賄っているのが実情だ。
むしろ社会保障が持続できるように早く制度を改革し、必要な部分に増税分を充てる方が、人々の安心を高め消費拡大にもつながる。当然、財政健全化にも役立つ。不確かな議論をするより、実際の効果を重視した政策を示してほしい。
米マイクロソフトが初めて本格的に携帯電話ハードウエアの設計を手がけたという「キン(KIN)」。この5月に米国で発売されたばかりだったが、突如として事業の中止が決まった。
キンは米携帯キャリア1位のベライゾン・ワイヤレスが販売しているが、在庫がなくなり次第販売を中止する。欧州では英ボーダフォン・グループが今秋発売する予定だったが、こちらも計画を取りやめるという。
端末値下げの直後だった
開発に2年の歳月をかけ、膨大な広告費もかけて若者層を狙ったマイクロソフトの独自携帯だったが、発売からわずか48日間、あっけない幕引きとなったと欧米のメディアが伝えている。
この携帯電話は、小型の「KIN ONE」とワイドススクリーンの「KIN TWO」の2モデルがある。いずれもタッチスクリーンとスライド式のキーボードを備えており、ソーシャル・ネットワーキング・サービスなど若者向けに特化した端末だ。
大規模なキャンペーンを展開したが売れ行きは芳しくなかったようで、ベライゾンは同じ週に端末の大幅値下げを発表していた。
マイクロソフトの動向に詳しい米Windows IT Pro誌のポール・スロット氏によると、ベライゾンはキンに高額なデータプランの加入を義務づけているため、たとえ端末価格を引き下げてもターゲット層の8~19歳には購入できない。
また従来の多機能携帯電話とスマートフォンの中間のような製品で、その位置づけが曖昧なため消費者に訴える力がなく問題を抱えていたと指摘している。
マイクロソフトの消費者部門は混乱している?
米ニューヨーク・タイムズによると、米フォレスター・リサーチのアナリスト、チャールズ・ゴルビン氏は「完全に戦略の失敗だ」と語っている。
同氏によると、マイクロソフトは新製品に執着する企業で、たとえ出足が芳しくなくても何度も改良を重ねていく。それがこれまでの同社のスタイルだという。今回のようなあまりにも素早い撤退は意外だったと同氏は驚いている。
しかしこれは、マイクロソフトの消費者製品部門が混乱していることの表れだとニューヨーク・タイムズの記事は指摘している。
マイクロソフトの消費者部門は、米アップルの携帯メディアプレーヤー「アイポッド(iPad)」に対抗すべく「ズーン(Zune)」を市場投入したが、期待通りの実績が出ていない。
またここ最近は「アイフォーン(iPhone)」や米グーグルの「アンドロイド(Android)」の台頭で苦戦を強いられている。
マイクロソフトは5月に組織再編を発表している。キンや同社のモバイル基本ソフト(OS)「ウィンドウズ・フォーン7」を担当するモバイルコミュニケーション事業が、7月1日付でスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)の直轄になっている。
恐らく突然の方針転換はバルマー氏の鶴の一声で決まったのではないかと筆者は見ている。
「マイクロソフトのモバイル戦略は支離滅裂」
マイクロソフトは今後、キンの開発チームと、ウィンドウズ・フォーン7の開発チームを統合するとしている。同社はウィンドウズ・フォーン7開発の最終段階にあり、今秋にも同OSを搭載する端末が各メーカーから登場する予定だ。
これについてWindows IT Pro誌のポール・スロット氏は次のように述べている。
「撤退は正しい決断だ。そもそもマイクロソフトが、ウィンドウズ・フォーンと並行して別のOSの携帯電話を手がけていたことが間違いだった」
「マイクロソフトのモバイル戦略は戦略と呼べるのもではなく、支離滅裂そのものだ。これでマイクロソフトは状況改善に一歩近づいた」(同氏)
水ビジネス、アジアで拡大 15年後30兆円市場に
仏など欧米勢先行 域内企業も対抗
【マニラ=遠西俊洋】経済成長や人口増で水不足が続くアジアで、上下水道整備など水関連ビジネスが拡大している。仏GDFスエズなど「水メジャー」が相次ぎ大型商談をまとめ、アジア企業は地元で蓄積したノウハウを生かし対抗し始めた。15年後の年間需要が30兆円超と現在の2倍以上に膨らむとの予想もあり、市場の成長を見越した金融商品も登場した。
スエズは5月、子会社を通じ、中国重慶市で日量約24万立方メートルの工業用水の供給を受注した。30年契約で下水処理も請け負う。中国国営の新華社によると、総事業費は約75億円。中国でのこの種の商談としてはスエズとして過去最大級という。
3月には、インドのバンガロール市で市民300万人への飲料水供給を契約。仏ヴェオリア・ウオーターは2007年、中国天津市の水道事業の契約を更新し、70万人に携帯電話で水の使いすぎまで警告する最新サービスを提供している。
スエズとヴェオリアは合計で世界シェアの約3割を握る水メジャー。両社は次の成長の舞台をアジアに求めている形だ。
日本と違い、海外では水関連事業に民間が関与する例が多い。独シーメンス、米ゼネラル・エレクトリック(GE)も中国で相次ぎ水処理関連ビジネスを受注。シンガポールで2日まで開かれた見本市には旭化成、日東電工、東レなど日本の17社・団体が参加し、水処理技術をアピールした。
アジアの域内企業も事業拡大に動き出した。フィリピン・マニラ東部の水道事業を手掛けるマニラ・ウオーターはベトナムのホーチミン市、インド西部ラジャスタン州で上下水道工事などの事業化調査に入った。
フィリピンでは住民が水を配管から盗む例が多い。1997年に発足した民営のマニラ社はサービス向上を条件に、水を盗んできた住民と正規の給水契約を結ぶ。漏水を含む配水ロスは1~3月期で13.7%と、03年の50%超から大幅に縮小。このノウハウをテコに海外に本格進出する。
シンガポールの大手複合企業セムコープ・インダストリーズは4月、中国広西チワン族自治区で水再処理施設の建設を始めた。水資源が乏しいシンガポールは官民挙げて下水再生や海水淡水化に取り組んでおり、そこで蓄積した技術を生かす。
インド化学大手タタ・ケミカルズは09年12月、井戸水に頼る低所得者層向けの浄水器「タタ・スウォッチ」を発売。容量19リットルの大型水筒タイプで、価格は999ルピー(約1900円)。年間100万台の販売を目指す。
日本の経済産業省の予想では、アジア大洋州の水ビジネスは25年に07年の2.8倍の年間約31兆1000億円まで増える。中国では年率10.7%、インドは同11.7%の急成長が見込まれる。
SNSゲームの配信用サーバー GMOが貸し出し
GMOインターネットは交流サイト(SNS)でのゲーム配信に適したサーバー貸し出しサービスを8月に始める。利用者が集中するゲーム公開から4日間は無料でサーバー20台分を使えるなど、ゲーム提供者の負担を減らす料金体系を採用しているのが特徴。5日から予約を受け付ける。
「GMOアプリクラウド」の名称で展開する。利用者数に応じてサーバーの処理能力を柔軟に増強できる。初期費用は無料。従量料金はサーバー1台分の利用で1日399円から。GMOは中小企業向けサーバーレンタルの国内最大手。
【日本の議論】「子供を守る」どこ行った? 大人の都合で“政争の具”へ 漫画児童ポルノ条例をめぐる議論
東京都議会6月定例会が閉会した6月16日。子供を性的対象にした漫画やアニメといった商品の区分陳列など、販売規制を目指す都青少年健全育成条例の改正案が最大会派の民主などの反対多数で否決された。だが、石原慎太郎知事は9月議会への再提出を目指す考えを明言。「表現の自由」と「子供の健全育成」をめぐって交わされた議論は、いつの間にか“政争の具”に発展してしまった。否決を前提として建設的な議論を避けた民主への批判に加え、都議会や関係先への根回しを怠ってきた都最高幹部や担当部局による“不作為”を指摘する声もある。
“汚い花”を断つと植物全体が滅ぶ
都条例の改正案をめぐる議論は3カ月にわたって迷走を続けた。発端は今年3月議会の会期中、改正案に反対する著名漫画家のちばてつやさんや里中満智子さんらが都庁で記者会見を開いたことだった。
「表現で新しいものが起きるときは色んな種類の花が咲く。スミレなどかれんな花も、ジャングルのラフレシアのような花も、根っこですべて繋がっている。この花は汚いと根を断つと植物群全体が滅ぶ」
ちばさんは、漫画文化を生態系に例えて改正案を批判した。
この会見により反対運動が一気に拡大した。
日本ペンクラブや出版倫理協議会などの各団体の反対表明に加え、反対派によるインターネットでの呼びかけで、都だけでなく民主、自民など各会派にメールやファクスで抗議が殺到した。
議論の焦点は改正案条文の文言の定義と適用範囲だった。規制対象となる漫画などの18歳未満と想定されるキャラクター「非実在青少年」や「青少年性的視覚描写物」など用語の定義のほか、行政による恣意(しい)的な運用を招き、表現の自由を脅かすというのが主な主張だ。
民主幹部は当時、条文について「まるで警察用語。わざと分かりにくくしているのかと思った」とあきれた。その一方で、改正案を提出した都青少年・治安対策本部の幹部は「『非実在青少年』とは『非、実在、青少年』という意味だ。何が分からないのか、分からない」と余裕の笑みを浮かべていた。
しかし、実際には3月議会で改正案の可否を問う集中審議はなく、その余裕も都議会にはなかった。
なぜか-。
当時、都政で最大焦点となっていた築地市場の移転関連予算を盛り込んだ平成22年度の中央卸売市場会計予算案審議が佳境を向かえていたことが理由だ。賛否をめぐるさまざまな思惑が交錯する中で、改正案は結局、全会一致で継続審議となり、結論は6月議会に持ち越されることとなった。
しずかちゃんの裸はOK
一方、都庁内には、継続審議となったことで改正案をまとめた担当局の不手際をなじる声も上がった。都幹部の1人は「舐(な)めてかかっていたのではないか。明らかに業界や都民、議会への根回し、説明不足だ」と眉(まゆ)をひそめた。担当幹部も「正直、ここまで反発が強くなるとは思わなかった。事前の説明不足は否めない」と述べる。
強まる批判に担当者らは巻き返しにやっきとなる。「都民に条例改正の周知が不十分だった」(都担当者)として、「ドラえもんのしずかちゃんの入浴シーンやサザエさんのワカメちゃんのパンチラなどは規制に該当しない」などとする質問回答集を都のHPに掲載。
また、改正案を象徴する用語となった「非実在青少年」についても「年齢、学年の明確な描写やセリフ、ナレーションで明らかに18歳未満に設定されたキャラクター」と規定し、その「性行為がメーンとなっているもの」が規制対象になることを明記した。
しかし、5月初旬に起きたある“事件”が情勢を一変させた。石原知事が定例会見で「「(条文は)説明不足。『非実在青少年』という言葉は何だこれ一体? 幽霊の話か? 役人が作るくだらない言葉は世間に通用しない。誤解を受ける文言が悪い。どんどん変えたらいい」と述べたのだ。
都幹部は「あの発言が条例に反対する民主につけ込む隙(すき)を与えた。記者会見を補佐する知事本局や執行部は、知事答弁の打ち合わせをしていなかったのか…」とため息をつき、公明幹部も「明らかな失言だった」と肩を落とした。
落とし所を失っていた民主は、これに乗じて反対姿勢をさらに強めていった。「まさに、渡りに船とはこのこと。民主も助かったんじゃないか」と、別の野党幹部は苦笑いを浮かべた。
都議会総務委員会の参考人招致で民主は反対派の急先鋒(せんぽう)、宮台真司首都大教授(社会学)らを招致。
宮台教授は「主観だけで何でも規制できる。こんな条例を掲げること自体が東京都の恥」と批判。「非実在青少年」について「設定が問題なら『これは成人コスプレ』と断れば何でもありで、ナンセンスだ」と述べ、都の質問回答集を「法律は条例を含め条文がすべてで無意味だ」と切って捨てた。
これに対し、条例改正に賛成する自公は改正案の条文作成にかかわった前田雅英首都大教授(法学)を招致した。
前田教授は「改正案は子供が見にくい場所に置くことはできないかという提案だ」と改正案の趣旨を説明したが、「条文にあいまいな部分がないわけではないが、法律は素人が分かる言葉でできていない」と主張した。
民主都議の1人は「反対派の主張の方が説得力があった」とニンマリ。「改正案に賛成意見なんて実際はPTAにさえない」と述べるなど、自信をのぞかせる発言が目立つようになっていった。
「民主の方が無責任」?
勝負となった6月議会。民主幹部は代表質問で早速、「自ら責任を持てないものを議会に提出したのは無責任」と知事の発言を非難し、撤回を受け入れない場合は否決する方針を打ち出した。
だが、担当局幹部によると、石原知事サイドを無責任となじった当の民主幹部は、改正案を答申した「都青少年問題協議会」に名を連ねながら、一度も会に出席していなかった事実も発覚。
「最初から関心がなかったことの表れで、どちらが無責任か。一度、議会で受けた議案の撤回要求は責任放棄。民主こそ修正案を出すべきだ」と自民幹部は憤った。また、公明幹部も「民主から民主案について『会派内がまとまらないので今回は出せない』といわれた。これが、最大会派のやることか」と憮然(ぶぜん)とした表情を浮かべた。
自公は早期成立を求める保護者の署名が約4万5千筆集まったとし、対抗措置として独自の修正案を提出した。「非実在青少年」を「描写された青少年」に、また「青少年性的視覚描写物」を「青少年をみだりに性欲の対象として扱う図書類」に変更するなど用語を変えた上で、表現の自由を侵害するとの懸念に対して、付則で「条例施行3年経過後に検討の上、必要な措置を講じる」とした。
ところが、民主幹部は「改正案の文言を変えただけだ。自公が担当局に作らせたに決まっている」と批判、別の幹部は「民主の独自案はできている」と明かしたが、それが白日の下にさらされることは最後までなかった。
都議会で民主と自公がさや当てを行う一方、石原知事は「7、8歳の女の子をセックスの対象にする漫画を子供の目に触れさせないようにすることがなぜいけないのか」と強調。「反対のための反対で都民が迷惑。ばかなことをやっている。抽象論ではなく具体的な対案を出すべきだ。(出さないなら)『現状を認める』と都民の前で言えばいい」と怒号した。
落としどころは…
6月議会閉会後、都議会各会派を回った石原知事。民主の控室で「日本語の解読能力がないな、君らは」とチクリ。これに対して大沢昇幹事長は「自分だってそうじゃないか。言われたくないよ」と言い返す場面もみられた。
改正案に反対する藤本由香里・明治大准教授は「都はエロ漫画に限定しての規制というが、条文では拡大解釈ができるようになっている」と改正案の否決を喜び、賛成派の赤枝恒雄・赤枝六本木診療所院長は「未成年者が漫画の影響でレイプされている現実があることを知るべきだ」と肩を落とした。
都幹部は「条例規制か、それとも自主規制か。議論はそこで平行線をたどっただけ」と総括。結局、着地点を見いだせないまま時間切れになった格好だ。
石原知事は、9月議会への再提出を目指す意向だが、インターバルはわずか。「もっと時間がほしいのが本音。誰もが6月議会で流れは否決といった状況を感じていたはずだが、『俺に任せとけ』と言って問題を抱え込んだものの、民主対策を怠っていたにもかかわらず、知事には耳障りの良い情報しか伝えていなかった担当の最高幹部は責任をどう感じているのか」などの“恨み節”も庁内からは聞こえてくる。
一方、自民幹部も「民主はこの問題を知事選まで引き延ばすつもりだ。再提出は少なくても12月議会まで待った方が良い」とうめいた。
いつの間にか“政争の具”と化した改正案をめぐる議論に、子供を守るという当初の目的が薄れ始めている。文字通り“非実在青少年”化しているようだ。
日経社説
参院選 政策を問う
首相の「増税で成長」論には無理がある
増税をしても使い道を間違わなければ経済成長につながる。菅直人首相がこんな議論を繰り返している。増税した分を医療や介護といった分野に適切に回せば、雇用が生まれ、お金がうまく循環して経済が拡大するという理屈である。
菅首相は参院選で消費税率引き上げの超党派協議を呼びかけている。「増税で成長」の議論は、不人気な増税に対する有権者の反発を抑える思惑もあるのだろう。
一見、もっともな議論に聞こえるが、それで持続的な成長が実現するというのは単純すぎる。
政府は本当に適切な使い道を判断できるのか。より大きな政府は民間企業を締め出さないか。介護や医療といった分野に支出しても、良質な科学技術開発のような生産性を高める「将来に生きるカネ」とはなりにくい。首相や民主党がこれらの疑問に答えられなければ、この議論も説得力を持たない。
首相は消費税などの増税分の使い道として、例えば介護サービスへの支出を1兆円増やす考えだ。賃金水準が仕事の内容に見合っているとはいえない介護士の報酬を引き上げ、担い手が増えれば、介護の潜在需要を伸ばし失業も減るというわけだ。
従来の景気対策や失業対策と同様に一定の効果はあろう。介護を必要とする人にも当然、恩恵が及ぶ。しかし、もし政府が民間企業が担っているような領域にも事業を広げていくようであるならば、かえって経済の活力をそぐことにもなる。
また増税を成長につなげるとしても、社会保障分野に回すのが効率的かという疑問は残る。労働力人口が年に0.7%程度ずつ減っていく日本で1%台の成長を実現するには生産性の向上が極めて重要だ。介護や医療への財政支出は投資としての効果が薄く、経済全体の生産性を押し上げる力は相対的に弱い。
さらに消費税の増税で増える税収のうち、どの程度を社会保障の拡充に充てて、どの程度を現に生じている財政赤字の圧縮に使うかを首相はあいまいにしている。医療、年金、介護に必要な経費のかなりの分は赤字国債で賄っているのが実情だ。
むしろ社会保障が持続できるように早く制度を改革し、必要な部分に増税分を充てる方が、人々の安心を高め消費拡大にもつながる。当然、財政健全化にも役立つ。不確かな議論をするより、実際の効果を重視した政策を示してほしい。
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バンクーバーにゲーム産業が集積する事情
米ゲーム大手エレクトロニックアーツ(EA)などが開発スタジオを置くカナダ・バンクーバーは、ゲーム産業の世界的なクラスター(集積)地域の1つである。産業集積が始まった時期は1980年代と古い。日本のゲーム産業を強化するためにどんな点が参考になるのか。現地の事情を報告する。
日本貿易振興機構(ジェトロ)福岡の委託調査で、5月下旬にバンクーバーで約1週間かけて20社あまりの企業や団体・政府機関を取材した。ゲームクラスターの成長プロセスを調べ、福岡市がめざすゲーム産業の振興策に役立つ情報を得ることが目的だった。
バンクーバーがあるカナダ西海岸のブリティッシュコロンビア州は人口約430万人。メディア関連企業が多い地域として知られ、約1000社で1万5000人が働いている。有名なのは映画産業で、米ハリウッドの下請け地域として発展し、バンクーバーは別名「ハリウッドノース」と呼ばれるほどだ。ハリウッドの映画産業は労働組合が強く、それが制作費高騰の一因となっている。そのため、映画に効果音を付ける音響や吹き替え、コンピューターグラフィックス(CG)などの仕事が国境を越えて、この地域に集まることになった。
一方、ゲーム産業も古くから盛んで、ゲーム開発会社が大小合わせて約75社、音響、CGなどゲーム開発の周辺企業が70社余りあり、全体で約3500人の開発者が働いている。多くは欧米の大手ゲーム企業の傘下、もしくは下請けの開発会社である。
バンクーバー初のゲーム会社
バンクーバーでゲーム産業のクラスターがどのように形成されたのかを知るうえで、欠かせない企業がある。同地域最大の開発スタジオであるEAカナダだ。欧州で高い人気を誇るサッカーゲーム「FIFA」シリーズやバスケットボールゲーム「NBA Live」シリーズなど「EA Sports」ブランドのヒットシリーズなどを主に開発している。
このスタジオの歴史は任天堂の「ファミリーコンピュータ」が登場する以前の1982年までさかのぼる。米ゲーム業界の重鎮であるドン・マトリック氏が高校生時代に設立したバンクーバー地域初のゲーム会社Distinctive Softwareがルーツだ。この会社は、米国で大ヒットしたゲーム機「Atari」やホームコンピュータ「コモドール64」向けゲームの草分けの一つとなり、91年にEAに買収され、EAカナダと名称を変えた。
ちなみに、マトリック氏はその後、EAの看板レースゲーム「ニード・フォー・スピード」シリーズなどを手がけ、05年にEA社長に就任。07年からは米マイクロソフトで「Xbox360」などを統括する事業部門のシニアバイスプレジデントに就いている。
リストラが育てた産業クラスター
今回、バンクーバー地域でゲーム産業がクラスター化した理由を聞くと、ほぼすべての人が、このEAカナダの存在を挙げた。EAカナダの成長が地域のゲーム産業を牽引し、クラスターの中心を担ってきたのだという。
ただし、EAカナダは過去に何度も規模を拡大しすぎて業績悪化を招き、そのたびにリストラを繰り返してきた。おもしろいのは「だからこそクラスターが成長した」とだれもが口をそろえることだ。
北米地域の企業が日本と違うのは、解雇が容易な雇用制度を持つところにある。契約社員が多く、レイオフ(一時解雇)なども実施しやすい。一方で、能力があれば、新卒、中途採用といった区別なしに仕事やポストを得ることができる。
そのためゲーム開発スタジオも、業績が好調なときはスタッフを急激に増やし、一方で業績が悪化すればスタジオを丸ごと閉鎖するといった荒療治をいとわなかった。これがクラスター全体の新陳代謝を早め、市場の変化に適応した企業を次々と育てていったのである。
EAカナダのリストラをきっかけに、バンクーバーではこれまで多くの独立系新興ゲーム企業が生まれてきた。それらの企業には当たり前のようにEAカナダ出身者がいる。
「カンパニーオブヒーローズ」シリーズなどパソコン向けのリアルタイムストラテジーで世界的に人気がある開発会社Relic Entertainmentもそうした企業の1つだ。97年にEAカナダ出身者を含む7人のメンバーで設立し、170人規模のスタジオにまで成長した。最近は米THQの傘下に入り、オンラインゲームで韓国、中国市場への進出を図っている。
United Front Gamesも、EAカナダなどの出身者によって07年に設立された。現在は開発者が200人を超え、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「ModNation Racers」(プレイステーション3向け、日本未発売)といったレースゲームを開発している。
EAカナダは最近も大規模なリストラを実施した。「ニード・フォー・スピード」シリーズの専門開発スタジオとするため02年に買収したEA Black Boxを08年に閉鎖したのだ。ピーク時には350人のスタッフを抱えていたが、「ニード・フォー・スピード」シリーズの開発は、EA傘下の英Criterion Gamesに移された。しかし、このリストラからまた新たな企業が生まれることになるだろう。
「iPhone」向けベンチャー企業も登場
今回の取材で、アップルのスマートフォン「iPhone」向けゲームを開発するベンチャー企業が数多く登場していることも知った。08年に設立されたGenius Factor Gamesもそうで、やはりEAカナダ出身者が中心だ。テッド・ニュージェント最高経営責任者(CEO)はEAカナダの品質管理部門で15年間勤めたキャリアを持つ。
もちろん、厳しい競争のなかで生き残るのは容易ではないだろう。ただ、EAカナダからスピンアウトする形で新しい企業が生まれ、その中からいくつかが有力開発会社へと成長していく。その繰り返しによって、バンクーバーは世界的なゲームクラスター地域の一角になったのである。
バンクーバーのゲーム産業は民間主導で発展し、行政の手厚い支援なしにクラスターを作り上げてきた。そのため「バンクーバー型」とも呼ばれ、行政主導でゲームクラスターを発展させた「モントリオール型」とよく対比される。ただ近年は、バンクーバー地域も産学官の連携が強まりつつある。行政も積極的に支援政策を打ち出し、結果も出始めている。
「東京のEAカナダ」だったセガ
日本にもかつて、バンクーバーのEAカナダのような存在があった。80~90年代にかけてのセガである。ここで実務のノウハウを蓄積してから独立したり、他社に移ったりした人材がゲーム業界の成長を引っ張り、「セガゲーム大学」の異名が残っているほどだ。94年に登場した「プレイステーション」が成功したのも、多くのセガ出身者がSCEなどに移ったことが大きいと言われている。
東京は世界的に見ても大きなゲームクラスター地域だが、官学の支援なしに民間の努力で自律的に成長してきた。規模の差はあるものの、大手企業がクラスター化を促進した点では、バンクーバーに似ている面がある。
しかし、00年代に入り国内ゲーム市場が頭打ちとなり、そうした好循環にブレーキがかかってきた。日本の雇用制度では今のような時期に転職をするのはリスクが高く、仮に起業しようとしても難しいビジネス環境がある。新陳代謝をどう起こすかがこれからの大きな課題となっている。
(京都経済 この25年 次の25年)
「作り手と使い手が全く同じ条件で遊ぶのがテレビゲームの特性。だから開発者も遊んで遊んで遊び倒した」
任天堂の家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」の開発責任者、上村雅之立命館大教授(67)は振り返る。1983年に発売したファミコンは対応ソフトがそろうにつれ売れ行きが加速、85年の「スーパーマリオブラザーズ」発売で大ブームとなった。累計販売台数は6191万台。ライバル企業も多かったが「我々はおもちゃ屋。電子屋さんのように難しいことは考えず、ひたすら楽しむことを考えた」と上村さん。
日本人が面白がって作ったゲームが世界で支持された。ファミコンは69%、ニンテンドーDSは76%、Wiiは85%を海外で売る。上村さんは言う。「平安朝の貴族は一日中遊んだ。その感性は日本に、京都に今も流れている」
(京都経済 この25年 次の25年)多品種少量モデルを追求 堀場製作所最高顧問 堀場雅夫氏
――京都企業にとってこの25年とは。
「25年で京セラ、任天堂など多くの企業が急成長したのは京都に蓄積した古くからの『知』によるものだった。多くの企業は『知』によって、ヘリコプターで山の8合目まで昇っていたので、あとは天気のいいときに2合上がって頂上にたどり着くことができた」
「特徴的なのは、どの企業も総合電機メーカーのようにならなかったことだ。任天堂はゲーム、島津製作所は分析機器というようにそれぞれがニッチ分野で世界一を目指した。横へ広げなかった半面、世界シェアでナンバーワンの製品を一つの企業で複数もっているという今日に至った」
「多くの国内企業がダメージを受けたバブル経済の崩壊でも、被害は最小限に抑えられた。国内よりも世界への販売拡大に注力していたからだ」
――これからの25年も成長を維持できるのか。
「例えていえば、一般食堂から板前の料理店にならなくてはいけない。板前の料理店に行くと個別のメニューを頼まなくても、当日の客の顔を見て客が食べたいものを出してくる。価値観の多様化が進む時代には、こういうオーダーメード的なビジネスモデルが必要になるだろう。このビジネスモデルは大量生産が求められる中国ではなく、多品種少量生産を得意とする京都企業に向いている。その頂点に立つのが京都だといってもいい」
――どんな産業分野が有望か。
「村田製作所や京セラのセラミックの技術は清水焼から来ている。こうした積み重ねの技術をもとに新マーケットに出るのが基本戦略だ。具体的には、新エネルギーやデザイン、レアメタルに代わる新素材開発などが考えられる。既にある技術や既製品を組み合わせればいい」
――京都にはオーナー経営や数百年の歴史を持つ長寿企業も多い。
「オーナー経営は京都企業の優位性で、今後も生かすべきだ。オーナー企業はオーナーが責任をとらなければいけないので、無責任なことはできない。実際、海外に出たらオーナー企業の方が相手から大きな信頼感を得られる。海外への事業拡大に役立つはずだ」
「京都には7代目くらいの経営者もいるが、何代も事業を継続するというのはすごいことだ。継続は力なりで、企業も死んだら何にもならない。生きているとそこに第二の創業があるかもしれない。任天堂の花札カルタはまさにその事例。同じ発想で電子的に組み替えたのが大ヒットしたゲームボーイだった」
――日本企業を取り巻く環境は厳しくなった。
「まずは日本というブランドの信頼性を取り戻すことだ。メード・イン・ジャパンへの尊敬は、政治も含めた日本への尊敬があって初めて成り立つ。日本あっての日本企業だということを忘れてはいけない。残念なのは今の政治からはそういう雰囲気を全然感じないことだ。企業や行政、政治の各領域で若返りを断行し、日本の基盤を再構築しなければいけない」
ついにWiiがゲームのインストールに対応か、任天堂が特許を出願
任天堂の据置ゲーム機「Wii」はPS3やXbox360のようにHDDに対応しておらず、ゲームをHDDにインストールしてプレイすることができないため、ゲームソフトによってはディスクを読み込む度に高速回転するドライブの音が気になることがありますが、ついにゲームをインストールできるようになる可能性が出てきました。
すでに特許が出願されており、提出された資料から任天堂がどのような方法でゲームをインストールできるようにするつもりなのかをうかがい知ることができます。
出願された特許はゲームディスクをHDDにインストールした場合、HDD内にインストールしたゲームディスクごとにパーティションが作られ、Wiiはそのパーティションを仮想DVDとして認識することで、ゲームをプレイできるようになるというもの。
複数のゲームディスクのインストールにも対応しており、ユーザーはどのゲームをプレイするのかを選ぶことができます。
セキュリティ面の問題があるため、Xbox360のように別途専用HDDが用意されることになる可能性も十分考えられるものの、市販されている安価なUSB外付けHDDをインストール用HDDとして利用できるのであれば、なかなかうれしいかもしれません。
ホンダ二輪全種値下げ、縮む市場・見えぬ復権
ホンダが、二輪全車種の値下げに踏み切るのは、数年おきの全面改良時などに高機能化や環境対応を強化し、車両価格を引き上げてきた販売方法を、デフレの長期化で見直さざるを得なくなったことを意味する。
二輪各社は2006~08年に、二輪車の排ガスに含まれる一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)などの排出規制が強化された際に、燃費を向上させる電子制御式の燃料噴射装置を搭載し、排ガス浄化装置の性能を高めた。
この時も、二輪各社は、上昇した生産コストを販売価格に上乗せした。ホンダの場合、販売価格は規制強化前より1~2割高くなった。ホンダは、この大幅な値上げが二輪車の販売低迷に拍車をかけたとみて、値下げの目標価格を2000年に設定した。
しかし、2000年当時の国内の二輪車市場は、すでに大幅に縮小していた。デフレ経済下で「二輪復権」を果たすには、値下げだけでは不十分との見方もある。
すでに自動車では、消費者の低価格志向を受け、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などの環境対応車で価格競争が進んでいる。
トヨタがHV「プリウス」の現行モデルである3代目を発売する際、ホンダのHV「インサイト」に対抗するため、装備などを充実させたのに最低価格では2代目よりも安い設定にする価格破壊が起きた。
二輪業界では、夏以降、環境性能をうたう「電動バイク」が市販され、ハイブリッドバイクの開発も進んでいる。こうした「エコバイク」をきっかけに、バイク愛好家のすそ野を広げられるかどうかが、「復権」のカギになりそうだ。
中国、ネット賭博も過熱…賭け金計1兆8千億円
【北京=大木聖馬】中国で大規模なネット賭博事件の摘発が相次いでいる。
経済発展であふれるカネの一部がネット賭博に流れ込んでいる格好だ。
3日付の中国紙・新京報などによると、南部の広西チワン族自治区の公安当局は6月末までに、インターネットの国外サイトを利用して、全国の顧客にサッカー賭博などをやらせていたグループ計79人を拘束した。
メンバーの住所は、同自治区や広東省など10省・市・自治区にまたがっていた。
2006年以降、賭け金の総額は、中国の2010年の国防予算約5320億元(約6兆9000億円)の約26%にあたる1400億元(約1兆8000億円)以上にのぼったという。
2日付の広州日報によると、広東省仏山市でもネット賭博が摘発され、賭け金は2年間で約59億元(約760億円)に及んだ。
新華社通信によると、今年1~6月にネット賭博事件740件を摘発し、計約3600人を逮捕した。
春秋
今年はロシアの文豪チェーホフの生誕150年だ。ロシアのメドベージェフ大統領もファンの一人という。「我々は働き、働いて、働きぬかなければ。ずっと後の子孫の幸せのために」。最近もチェーホフのこんな言葉を披露していた。
▼先に訪れた米スタンフォード大での講演だ。ただし落ちがつく。「前段には同意したい」。懸命に働けば、我々自らが幸せを享受できるはず。これは、ロシア経済再生を急ぐ大統領の信念とか。資源依存を脱し、外資導入でハイテク産業を軸に近代化を。大統領の肝いりでロシア版シリコンバレー計画も始動した。
▼百聞は一見にしかず。スタンフォード大の講演に先立ち、大統領は本場のシリコンバレーを視察した。ミニブログ大手のツイッター本社では「つぶやき」に挑戦。アップル社では新型の携帯電話「iPhone(アイフォーン)4」を手ににっこり。創造性の豊かさ、旺盛な企業家精神……。感銘を受けたという。
▼さて、ロシアではびこる官僚主義や汚職・腐敗を排し、大統領は近代化をなし遂げられるのか。米国ではロシアのスパイ団が摘発されたばかり。国際的な信用回復も急務だろう。ハイテク誘致では、日本にも熱い視線を送るが、こちらは北方領土問題の解決もお忘れなく。「子孫」ならぬ「我々」の幸せのために。
京都新聞社説
中国実習生過労死 過酷な実態に目向けよ
外国人研修・技能実習制度で来日し働いていた中国人実習生の死亡を、労働基準監督署が違法な長時間労働による「過労死」と判断、労災と認定する方針を固めた。
認定されれば初めてのケースだが、外国人実習生らが低賃金で長時間働く過酷な現状をみれば、「氷山の一角」にすぎないとの指摘もある。
発展途上国への技術移転や人材育成という制度の目的と、あまりにかけ離れた実態にもっと目を向けるべきだ。
茨城県の金属メッキ部品処理工場に勤務していた中国人実習生は一昨年6月に社宅で急性心不全で死亡した。その直前1カ月の残業は100時間を超え、休みは月2日ほどだったという。
財団法人・国際研修協力機構(JITCO)によると、作業中の事故や病気で死亡した実習生らは2008年度で34人に上る。このうち16人が胸・心疾患であることから、劣悪な労働環境が浮かび上がってくる。
法務省入国管理局は昨年中に最低賃金の不払いや暴力など計444件の不正行為をつかんでいる。研修生を時給330円で時間外作業を8カ月にわたってさせたり、実習生の旅券などを勝手に金庫に保管、日常的に暴力をふるうなどの事例だ。
国連自由権規約委員会は08年、外国人研修生や実習生が労働法規や社会保障制度の外に置かれている状況に懸念を表明している。
今月1日に改正入管難民法が施行され、政府は改善に乗り出した。これまで1年目の研修中は労働が禁止され、労働関係法令の適用も受けなかった。実際は時間外や休日に働くことも多く、支給される研修手当は最低賃金以下というのが現実だった。
改正後は日本語研修などを2カ月受講すれば、労働関係法令の適用の対象となる。改正は、労働関係法令の範囲を広げ、受け入れ先の不正行為に対する罰則も強化している。
しかし、研修生・実習生の支援にあたっている外国人研修生問題弁護士連絡会は「本質的な解決にならない」と批判している。これまでも労働関係法令の対象であったのに、実習生への不正行為は多発しており、入管局などの監督・指導も十分でないとして、制度そのものを問題視している。
日本に滞在する研修生・実習生は08年に約19万人に上り、大半が中国の20~30代だ。同年に受け入れた研修生は約6万8千人で、このうち京都は552人、滋賀785人。
一方で、実習生の失跡が後を絶たない。JITCOによると、08年度の1年間に1627人にもなる。
1993年に始まった制度だが、安い外国人労働の受け皿に堕していないか。理念と現実の乖離(かいり)は大きい。廃止も含め、一から見直すべきだ。
米ゲーム大手エレクトロニックアーツ(EA)などが開発スタジオを置くカナダ・バンクーバーは、ゲーム産業の世界的なクラスター(集積)地域の1つである。産業集積が始まった時期は1980年代と古い。日本のゲーム産業を強化するためにどんな点が参考になるのか。現地の事情を報告する。
日本貿易振興機構(ジェトロ)福岡の委託調査で、5月下旬にバンクーバーで約1週間かけて20社あまりの企業や団体・政府機関を取材した。ゲームクラスターの成長プロセスを調べ、福岡市がめざすゲーム産業の振興策に役立つ情報を得ることが目的だった。
バンクーバーがあるカナダ西海岸のブリティッシュコロンビア州は人口約430万人。メディア関連企業が多い地域として知られ、約1000社で1万5000人が働いている。有名なのは映画産業で、米ハリウッドの下請け地域として発展し、バンクーバーは別名「ハリウッドノース」と呼ばれるほどだ。ハリウッドの映画産業は労働組合が強く、それが制作費高騰の一因となっている。そのため、映画に効果音を付ける音響や吹き替え、コンピューターグラフィックス(CG)などの仕事が国境を越えて、この地域に集まることになった。
一方、ゲーム産業も古くから盛んで、ゲーム開発会社が大小合わせて約75社、音響、CGなどゲーム開発の周辺企業が70社余りあり、全体で約3500人の開発者が働いている。多くは欧米の大手ゲーム企業の傘下、もしくは下請けの開発会社である。
バンクーバー初のゲーム会社
バンクーバーでゲーム産業のクラスターがどのように形成されたのかを知るうえで、欠かせない企業がある。同地域最大の開発スタジオであるEAカナダだ。欧州で高い人気を誇るサッカーゲーム「FIFA」シリーズやバスケットボールゲーム「NBA Live」シリーズなど「EA Sports」ブランドのヒットシリーズなどを主に開発している。
このスタジオの歴史は任天堂の「ファミリーコンピュータ」が登場する以前の1982年までさかのぼる。米ゲーム業界の重鎮であるドン・マトリック氏が高校生時代に設立したバンクーバー地域初のゲーム会社Distinctive Softwareがルーツだ。この会社は、米国で大ヒットしたゲーム機「Atari」やホームコンピュータ「コモドール64」向けゲームの草分けの一つとなり、91年にEAに買収され、EAカナダと名称を変えた。
ちなみに、マトリック氏はその後、EAの看板レースゲーム「ニード・フォー・スピード」シリーズなどを手がけ、05年にEA社長に就任。07年からは米マイクロソフトで「Xbox360」などを統括する事業部門のシニアバイスプレジデントに就いている。
リストラが育てた産業クラスター
今回、バンクーバー地域でゲーム産業がクラスター化した理由を聞くと、ほぼすべての人が、このEAカナダの存在を挙げた。EAカナダの成長が地域のゲーム産業を牽引し、クラスターの中心を担ってきたのだという。
ただし、EAカナダは過去に何度も規模を拡大しすぎて業績悪化を招き、そのたびにリストラを繰り返してきた。おもしろいのは「だからこそクラスターが成長した」とだれもが口をそろえることだ。
北米地域の企業が日本と違うのは、解雇が容易な雇用制度を持つところにある。契約社員が多く、レイオフ(一時解雇)なども実施しやすい。一方で、能力があれば、新卒、中途採用といった区別なしに仕事やポストを得ることができる。
そのためゲーム開発スタジオも、業績が好調なときはスタッフを急激に増やし、一方で業績が悪化すればスタジオを丸ごと閉鎖するといった荒療治をいとわなかった。これがクラスター全体の新陳代謝を早め、市場の変化に適応した企業を次々と育てていったのである。
EAカナダのリストラをきっかけに、バンクーバーではこれまで多くの独立系新興ゲーム企業が生まれてきた。それらの企業には当たり前のようにEAカナダ出身者がいる。
「カンパニーオブヒーローズ」シリーズなどパソコン向けのリアルタイムストラテジーで世界的に人気がある開発会社Relic Entertainmentもそうした企業の1つだ。97年にEAカナダ出身者を含む7人のメンバーで設立し、170人規模のスタジオにまで成長した。最近は米THQの傘下に入り、オンラインゲームで韓国、中国市場への進出を図っている。
United Front Gamesも、EAカナダなどの出身者によって07年に設立された。現在は開発者が200人を超え、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「ModNation Racers」(プレイステーション3向け、日本未発売)といったレースゲームを開発している。
EAカナダは最近も大規模なリストラを実施した。「ニード・フォー・スピード」シリーズの専門開発スタジオとするため02年に買収したEA Black Boxを08年に閉鎖したのだ。ピーク時には350人のスタッフを抱えていたが、「ニード・フォー・スピード」シリーズの開発は、EA傘下の英Criterion Gamesに移された。しかし、このリストラからまた新たな企業が生まれることになるだろう。
「iPhone」向けベンチャー企業も登場
今回の取材で、アップルのスマートフォン「iPhone」向けゲームを開発するベンチャー企業が数多く登場していることも知った。08年に設立されたGenius Factor Gamesもそうで、やはりEAカナダ出身者が中心だ。テッド・ニュージェント最高経営責任者(CEO)はEAカナダの品質管理部門で15年間勤めたキャリアを持つ。
もちろん、厳しい競争のなかで生き残るのは容易ではないだろう。ただ、EAカナダからスピンアウトする形で新しい企業が生まれ、その中からいくつかが有力開発会社へと成長していく。その繰り返しによって、バンクーバーは世界的なゲームクラスター地域の一角になったのである。
バンクーバーのゲーム産業は民間主導で発展し、行政の手厚い支援なしにクラスターを作り上げてきた。そのため「バンクーバー型」とも呼ばれ、行政主導でゲームクラスターを発展させた「モントリオール型」とよく対比される。ただ近年は、バンクーバー地域も産学官の連携が強まりつつある。行政も積極的に支援政策を打ち出し、結果も出始めている。
「東京のEAカナダ」だったセガ
日本にもかつて、バンクーバーのEAカナダのような存在があった。80~90年代にかけてのセガである。ここで実務のノウハウを蓄積してから独立したり、他社に移ったりした人材がゲーム業界の成長を引っ張り、「セガゲーム大学」の異名が残っているほどだ。94年に登場した「プレイステーション」が成功したのも、多くのセガ出身者がSCEなどに移ったことが大きいと言われている。
東京は世界的に見ても大きなゲームクラスター地域だが、官学の支援なしに民間の努力で自律的に成長してきた。規模の差はあるものの、大手企業がクラスター化を促進した点では、バンクーバーに似ている面がある。
しかし、00年代に入り国内ゲーム市場が頭打ちとなり、そうした好循環にブレーキがかかってきた。日本の雇用制度では今のような時期に転職をするのはリスクが高く、仮に起業しようとしても難しいビジネス環境がある。新陳代謝をどう起こすかがこれからの大きな課題となっている。
(京都経済 この25年 次の25年)
「作り手と使い手が全く同じ条件で遊ぶのがテレビゲームの特性。だから開発者も遊んで遊んで遊び倒した」
任天堂の家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」の開発責任者、上村雅之立命館大教授(67)は振り返る。1983年に発売したファミコンは対応ソフトがそろうにつれ売れ行きが加速、85年の「スーパーマリオブラザーズ」発売で大ブームとなった。累計販売台数は6191万台。ライバル企業も多かったが「我々はおもちゃ屋。電子屋さんのように難しいことは考えず、ひたすら楽しむことを考えた」と上村さん。
日本人が面白がって作ったゲームが世界で支持された。ファミコンは69%、ニンテンドーDSは76%、Wiiは85%を海外で売る。上村さんは言う。「平安朝の貴族は一日中遊んだ。その感性は日本に、京都に今も流れている」
(京都経済 この25年 次の25年)多品種少量モデルを追求 堀場製作所最高顧問 堀場雅夫氏
――京都企業にとってこの25年とは。
「25年で京セラ、任天堂など多くの企業が急成長したのは京都に蓄積した古くからの『知』によるものだった。多くの企業は『知』によって、ヘリコプターで山の8合目まで昇っていたので、あとは天気のいいときに2合上がって頂上にたどり着くことができた」
「特徴的なのは、どの企業も総合電機メーカーのようにならなかったことだ。任天堂はゲーム、島津製作所は分析機器というようにそれぞれがニッチ分野で世界一を目指した。横へ広げなかった半面、世界シェアでナンバーワンの製品を一つの企業で複数もっているという今日に至った」
「多くの国内企業がダメージを受けたバブル経済の崩壊でも、被害は最小限に抑えられた。国内よりも世界への販売拡大に注力していたからだ」
――これからの25年も成長を維持できるのか。
「例えていえば、一般食堂から板前の料理店にならなくてはいけない。板前の料理店に行くと個別のメニューを頼まなくても、当日の客の顔を見て客が食べたいものを出してくる。価値観の多様化が進む時代には、こういうオーダーメード的なビジネスモデルが必要になるだろう。このビジネスモデルは大量生産が求められる中国ではなく、多品種少量生産を得意とする京都企業に向いている。その頂点に立つのが京都だといってもいい」
――どんな産業分野が有望か。
「村田製作所や京セラのセラミックの技術は清水焼から来ている。こうした積み重ねの技術をもとに新マーケットに出るのが基本戦略だ。具体的には、新エネルギーやデザイン、レアメタルに代わる新素材開発などが考えられる。既にある技術や既製品を組み合わせればいい」
――京都にはオーナー経営や数百年の歴史を持つ長寿企業も多い。
「オーナー経営は京都企業の優位性で、今後も生かすべきだ。オーナー企業はオーナーが責任をとらなければいけないので、無責任なことはできない。実際、海外に出たらオーナー企業の方が相手から大きな信頼感を得られる。海外への事業拡大に役立つはずだ」
「京都には7代目くらいの経営者もいるが、何代も事業を継続するというのはすごいことだ。継続は力なりで、企業も死んだら何にもならない。生きているとそこに第二の創業があるかもしれない。任天堂の花札カルタはまさにその事例。同じ発想で電子的に組み替えたのが大ヒットしたゲームボーイだった」
――日本企業を取り巻く環境は厳しくなった。
「まずは日本というブランドの信頼性を取り戻すことだ。メード・イン・ジャパンへの尊敬は、政治も含めた日本への尊敬があって初めて成り立つ。日本あっての日本企業だということを忘れてはいけない。残念なのは今の政治からはそういう雰囲気を全然感じないことだ。企業や行政、政治の各領域で若返りを断行し、日本の基盤を再構築しなければいけない」
ついにWiiがゲームのインストールに対応か、任天堂が特許を出願
任天堂の据置ゲーム機「Wii」はPS3やXbox360のようにHDDに対応しておらず、ゲームをHDDにインストールしてプレイすることができないため、ゲームソフトによってはディスクを読み込む度に高速回転するドライブの音が気になることがありますが、ついにゲームをインストールできるようになる可能性が出てきました。
すでに特許が出願されており、提出された資料から任天堂がどのような方法でゲームをインストールできるようにするつもりなのかをうかがい知ることができます。
出願された特許はゲームディスクをHDDにインストールした場合、HDD内にインストールしたゲームディスクごとにパーティションが作られ、Wiiはそのパーティションを仮想DVDとして認識することで、ゲームをプレイできるようになるというもの。
複数のゲームディスクのインストールにも対応しており、ユーザーはどのゲームをプレイするのかを選ぶことができます。
セキュリティ面の問題があるため、Xbox360のように別途専用HDDが用意されることになる可能性も十分考えられるものの、市販されている安価なUSB外付けHDDをインストール用HDDとして利用できるのであれば、なかなかうれしいかもしれません。
ホンダ二輪全種値下げ、縮む市場・見えぬ復権
ホンダが、二輪全車種の値下げに踏み切るのは、数年おきの全面改良時などに高機能化や環境対応を強化し、車両価格を引き上げてきた販売方法を、デフレの長期化で見直さざるを得なくなったことを意味する。
二輪各社は2006~08年に、二輪車の排ガスに含まれる一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)などの排出規制が強化された際に、燃費を向上させる電子制御式の燃料噴射装置を搭載し、排ガス浄化装置の性能を高めた。
この時も、二輪各社は、上昇した生産コストを販売価格に上乗せした。ホンダの場合、販売価格は規制強化前より1~2割高くなった。ホンダは、この大幅な値上げが二輪車の販売低迷に拍車をかけたとみて、値下げの目標価格を2000年に設定した。
しかし、2000年当時の国内の二輪車市場は、すでに大幅に縮小していた。デフレ経済下で「二輪復権」を果たすには、値下げだけでは不十分との見方もある。
すでに自動車では、消費者の低価格志向を受け、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などの環境対応車で価格競争が進んでいる。
トヨタがHV「プリウス」の現行モデルである3代目を発売する際、ホンダのHV「インサイト」に対抗するため、装備などを充実させたのに最低価格では2代目よりも安い設定にする価格破壊が起きた。
二輪業界では、夏以降、環境性能をうたう「電動バイク」が市販され、ハイブリッドバイクの開発も進んでいる。こうした「エコバイク」をきっかけに、バイク愛好家のすそ野を広げられるかどうかが、「復権」のカギになりそうだ。
中国、ネット賭博も過熱…賭け金計1兆8千億円
【北京=大木聖馬】中国で大規模なネット賭博事件の摘発が相次いでいる。
経済発展であふれるカネの一部がネット賭博に流れ込んでいる格好だ。
3日付の中国紙・新京報などによると、南部の広西チワン族自治区の公安当局は6月末までに、インターネットの国外サイトを利用して、全国の顧客にサッカー賭博などをやらせていたグループ計79人を拘束した。
メンバーの住所は、同自治区や広東省など10省・市・自治区にまたがっていた。
2006年以降、賭け金の総額は、中国の2010年の国防予算約5320億元(約6兆9000億円)の約26%にあたる1400億元(約1兆8000億円)以上にのぼったという。
2日付の広州日報によると、広東省仏山市でもネット賭博が摘発され、賭け金は2年間で約59億元(約760億円)に及んだ。
新華社通信によると、今年1~6月にネット賭博事件740件を摘発し、計約3600人を逮捕した。
春秋
今年はロシアの文豪チェーホフの生誕150年だ。ロシアのメドベージェフ大統領もファンの一人という。「我々は働き、働いて、働きぬかなければ。ずっと後の子孫の幸せのために」。最近もチェーホフのこんな言葉を披露していた。
▼先に訪れた米スタンフォード大での講演だ。ただし落ちがつく。「前段には同意したい」。懸命に働けば、我々自らが幸せを享受できるはず。これは、ロシア経済再生を急ぐ大統領の信念とか。資源依存を脱し、外資導入でハイテク産業を軸に近代化を。大統領の肝いりでロシア版シリコンバレー計画も始動した。
▼百聞は一見にしかず。スタンフォード大の講演に先立ち、大統領は本場のシリコンバレーを視察した。ミニブログ大手のツイッター本社では「つぶやき」に挑戦。アップル社では新型の携帯電話「iPhone(アイフォーン)4」を手ににっこり。創造性の豊かさ、旺盛な企業家精神……。感銘を受けたという。
▼さて、ロシアではびこる官僚主義や汚職・腐敗を排し、大統領は近代化をなし遂げられるのか。米国ではロシアのスパイ団が摘発されたばかり。国際的な信用回復も急務だろう。ハイテク誘致では、日本にも熱い視線を送るが、こちらは北方領土問題の解決もお忘れなく。「子孫」ならぬ「我々」の幸せのために。
京都新聞社説
中国実習生過労死 過酷な実態に目向けよ
外国人研修・技能実習制度で来日し働いていた中国人実習生の死亡を、労働基準監督署が違法な長時間労働による「過労死」と判断、労災と認定する方針を固めた。
認定されれば初めてのケースだが、外国人実習生らが低賃金で長時間働く過酷な現状をみれば、「氷山の一角」にすぎないとの指摘もある。
発展途上国への技術移転や人材育成という制度の目的と、あまりにかけ離れた実態にもっと目を向けるべきだ。
茨城県の金属メッキ部品処理工場に勤務していた中国人実習生は一昨年6月に社宅で急性心不全で死亡した。その直前1カ月の残業は100時間を超え、休みは月2日ほどだったという。
財団法人・国際研修協力機構(JITCO)によると、作業中の事故や病気で死亡した実習生らは2008年度で34人に上る。このうち16人が胸・心疾患であることから、劣悪な労働環境が浮かび上がってくる。
法務省入国管理局は昨年中に最低賃金の不払いや暴力など計444件の不正行為をつかんでいる。研修生を時給330円で時間外作業を8カ月にわたってさせたり、実習生の旅券などを勝手に金庫に保管、日常的に暴力をふるうなどの事例だ。
国連自由権規約委員会は08年、外国人研修生や実習生が労働法規や社会保障制度の外に置かれている状況に懸念を表明している。
今月1日に改正入管難民法が施行され、政府は改善に乗り出した。これまで1年目の研修中は労働が禁止され、労働関係法令の適用も受けなかった。実際は時間外や休日に働くことも多く、支給される研修手当は最低賃金以下というのが現実だった。
改正後は日本語研修などを2カ月受講すれば、労働関係法令の適用の対象となる。改正は、労働関係法令の範囲を広げ、受け入れ先の不正行為に対する罰則も強化している。
しかし、研修生・実習生の支援にあたっている外国人研修生問題弁護士連絡会は「本質的な解決にならない」と批判している。これまでも労働関係法令の対象であったのに、実習生への不正行為は多発しており、入管局などの監督・指導も十分でないとして、制度そのものを問題視している。
日本に滞在する研修生・実習生は08年に約19万人に上り、大半が中国の20~30代だ。同年に受け入れた研修生は約6万8千人で、このうち京都は552人、滋賀785人。
一方で、実習生の失跡が後を絶たない。JITCOによると、08年度の1年間に1627人にもなる。
1993年に始まった制度だが、安い外国人労働の受け皿に堕していないか。理念と現実の乖離(かいり)は大きい。廃止も含め、一から見直すべきだ。
ヤマダ電機やヨーカ堂、ポイント割引縮小 現金値引き志向に対応、収益改善も狙う
家電量販店やスーパーの大手で、支払額の一定割合を消費者に還元するポイントの発行を減らす動きが広がってきた。ヤマダ電機は2010年度の発行額を09年度から半減させ、1000億円前後にする。セブン&アイ・ホールディングスも絞り込んでいる。将来の買い物が割引されるポイントをためるより、その場の支払額を減らしたい消費者が増えているため。小売り側もポイント発行に比べてコストのかからない現金値引きを強化し、収益改善を狙う。
ポイントは顧客を囲い込むための代表的な販売促進策で、発行額は年間1兆円近くに達する。参入企業の増加に伴い市場自体は伸びているが、小売り大手の見直しに伴い成長は鈍化しつつある。
家電量販最大手のヤマダは今春からほぼ全店で、ポイントを付けずに現金で値引きする販促を開始。ポイント還元も残し、客に値引き方法を選んでもらう。一部の地方店は5月から来店時に付けるポイントを除いて、現金値引きのみとした。
店頭表示価格の20%前後の高率還元を売りにしてきたが、景気の不透明感から「その場で安く買える方がいいという客が増えた」(山田昇会長)。このため、09年度に2000億円台とみられる発行額を10年度は半分以下に抑制。拡大する現金値引きはポイントより割引率が低いため、11年3月期の売上高営業利益率は前期に比べ0.3ポイントの改善を見込む。
業界6位のコジマは10年度の発行額を09年度より2~3割減らす方針。通常は1%を還元するが、09年度は特定商品の還元率を5~10%にアップし、発行額は60億円前後だったもよう。10年度は高率の還元を抑え、50億円未満に減らす。
セブン&アイも発行抑制に転じている。ポイントを導入している企業は未使用残高の一定割合を「ポイント引当金」として積み立てているが、同社は10年2月期の引当金を約131億円と前の期に比べ2割減らした。グループ内で最も発行額が多い総合スーパーのイトーヨーカ堂は、現金還元セールや不用品の下取りなど、ポイントに頼らない販促策を強化中だ。
ドラッグストア最大手のマツモトキヨシホールディングスも、ここ数年はポイントサービスを絞り込む傾向という。
日本経済新聞社が6月にまとめた主要小売り500社の調査によると、ポイント導入済みは274社。10年度の発行計画を聞いたところ、「減らす」との回答が8.0%と、「増やす」の6.6%を上回った。
15年度にも日本企業に導入される国際会計基準(IFRS)では、ポイント発行分が売上高から除外される。見かけ上、減収に陥りかねない企業がイメージ悪化を避けようと、発行を抑えるケースも増えるとみられる。
ポイント見直し、国際会計基準も背景に
小売業でポイント発行の抑制が広がってきた背景には、発行額を売上高から除外する国際会計基準(IFRS)の影響もある。個人消費の伸びは期待できないうえに、政府の家電エコポイントが年末に終了するなど厳しい経営環境の中、販促費負担の重いポイント戦略は見直しを迫られている。消費刺激に一定の効果を上げてきたポイント市場は曲がり角を迎えた。
2015年度にも導入されるIFRSによって、ポイント発行額が多い企業は見かけ上、大幅な減収に陥る可能性がある。日本経済新聞社の小売業調査でも、ポイント制度を導入している企業(274社)のうち16%が、「(IFRSが導入されれば)ポイント制度の廃止・縮小を検討する」と答えている。
とりわけ高率ポイントで集客してきた家電量販店は対応が急務だ。年末にエコポイント制度が終わり、地上デジタル放送に完全移行する来夏を過ぎると、薄型テレビのような目玉商品はなくなる。全店一律のポイント発行は「費用対効果」の面からも見直しが必至だ。
ヤマダ電機は競合店の少ない地方店を中心にポイントを大幅に抑制する一方、競争の激しい都心の一部店舗では20%といった高率の還元を続ける可能性もあるという。コジマは「郊外店では折り込みチラシなどを参考に買う店を決める客が多く、ポイントは来店の動機づけとしては弱い」(経営企画室)としている。
凸版印刷・大日本印刷、電子書籍で出版社支援 データ制作や印税管理
印刷大手の凸版印刷と大日本印刷はそれぞれ、出版社向けに電子書籍の支援事業に乗り出す。凸版は書籍の電子化からネット配信までを一貫して支援。大日本印刷は煩雑になる印税支払いなどを一元管理できるサービスを9月にも始める。書籍印刷で培ったノウハウを成長が見込める電子書籍関連の受注につなげ、低迷する印刷事業に代わる収益源に育てる。
凸版印刷が提供するのは、携帯電話や米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」など端末に合わせた書籍データの制作のほか、電子雑誌向けの広告制作、販促活動の支援など。配信の委託先は出版社が選べるほか、子会社で電子書籍配信を手掛けるビットウェイ(東京・台東)も請け負う。
このほど約50人の専門組織「デジタルコンテンツソリューションセンター」を発足させた。電子書籍を手掛けるには、データのデジタル化や配信用の閲覧ソフトの準備などが必要になる。小規模な出版社では負担が重いケースもある。電子雑誌向けに動画を使った広告など、販促効果を高める手法も開発し出版社に提案する。
凸版はソニーやKDDIなどと共同で、電子書籍を様々な端末に配信する事業を年内に始める計画。新事業で配信事業を活用する出版社を開拓する。広告制作や配信代行なども含め、凸版印刷の連結ベースで2015年に500億円の増収効果をみこむ。
大日本印刷は書籍や雑誌ごとに著者や写真家、挿絵家などの権利者を一元管理できるシステムを開発し、9月にもネット経由で出版社に貸し出す。印税や原稿料の支払いルールなどを登録すると、毎月の支払い一覧作成や、著者などへの支払い通知書の発行まで自動化できる。
出版社では印税などの支払いを管理部門や担当者に任せ、手作業も多いという。電子書籍では紙の本以上に許諾の有無などの管理が複雑になる。月額料金は30万円からで、大手出版社の刊行物をすべて管理しても800万円に収まるという。2012年に売り上げ5億円をみこむ。
印刷会社はすでにコンピューターを使った出版物の組み版から印刷の版下制作までを出版社から請け負っている。電子化が進んでいることを強みに、新サービスを売り込む。事業領域の拡大で出版社を支援するモデル構築を急ぐ。
日本の出版市場は縮小が続く。出版科学研究所によると書籍と雑誌を合わせた出版物の市場は09年には1兆9千億円と、約16%減った。一方で、電子書籍市場は09年度に500億円を超え、10年度以降はさらに拡大が加速する見通しだ。
ホンダ全二輪車値下げ…3年で10年前の価格に
ホンダは3日、国内で販売する二輪車の約45車種すべての価格を2000年当時の販売価格まで引き下げる方針を明らかにした。
若者らの「二輪車離れ」に歯止めがかからないためで、全面改良や一部改良に合わせ、今後3年間で順次、値下げする。値下げ幅は、1~3割程度に達する見通しだ。
値下げ幅は、定番モデルの「スーパーカブ50」(排気量50cc)の最も安いモデルで約4万円、中型スクーターの売れ筋車種「フォルツァ」(250cc)の最廉価モデルでは約12万円となる見込みだ。
値下げに向け、人件費など製造コストが安いアジアで生産した二輪車の国内への投入モデルを増やすほか、低価格の海外製部品の使用比率を高める。さらに、新車の開発にかける時間を、現在の約2年から、1~1年半程度に短縮することで開発費を削減する。
国内シェア(占有率)の約48%を握り業界トップのホンダの値下げ戦略は、販売不振に苦しむ他の二輪メーカーにも影響を与えそうだ。
二輪車は、インドやタイなどの新興国では人気だが、国内では景気低迷や都市部の駐車場不足で、販売が低迷している。09年の国内の二輪市場は前年比27・1%減の38万777台で、ピークだった1982年の約329万台の1割強の水準まで落ち込んでいる。
エルピーダ、超小型DRAM量産 台湾3社と共同
韓国2強を追撃
エルピーダメモリは7月中にも台湾のDRAMメーカー3社と共同で、独自の小型化技術を使ったDRAM生産を始める。既存の設備を生かして投資を抑えながら、先端DRAMを量産できる新技術を3社に供与。パソコンやサーバーに適した製品として出荷する。コスト競争力を高めてサムスン電子やハイニックス半導体の韓国2強を追撃する。
開発した超小型DRAMは、設計や生産工程の工夫でチップを小型化したのが特徴。1枚のシリコンウエハーから生産できるチップ数が従来より25%増え、消費電力も低いという。
すでに生産委託で協力関係にある瑞晶電子、茂徳科技、力晶半導体に小型化技術を提供する。回路線幅を細くするための巨額投資は不要で、エルピーダを含む4社は現在主力の回路線幅65ナノ(ナノは10億分の1)メートルのDRAMの生産ラインを小規模に改造するだけですむ。
広島工場(東広島市)と台湾3社への委託分を合わせた月産30万枚(直径300ミリのシリコンウエハー)のうち、6割を占める約18万枚を超小型DRAMの生産に転換する。
一方でエルピーダは2010年度に約1150億円の設備投資をかけて、回路線幅40ナノメートルの世界最新鋭のDRAMの生産を拡大する計画。既存の設備も有効活用しながら、サムスンやハイニックスとの競争に挑む。
エルピーダは09年3月期に1789億円の最終赤字を計上し、公的資金による金融支援などを受けた。10年3月期には黒字に転じ、今回の3社に華邦電子を加えた台湾DRAMメーカー4社との「日台連合」を組み、生産能力の拡張を急ぐ。
英BPの主要株主、経営陣を一掃か…英紙報道
【ロンドン=是枝智】メキシコ湾で原油流出事故を起こした国際石油資本(メジャー)の英BPの主要株主が、流出が止まった段階で、経営陣の一掃に動き出す可能性が高まってきた。
3日付の英紙フィナンシャル・タイムズが報じた。
報道によると、最も問題視されているのが、カールヘンリック・スバンベリ会長で、トニー・ヘイワード最高経営責任者(CEO)も辞任に追い込まれる公算が大きいという。
スバンベリ会長は6月半ば、オバマ米大統領との会談後の記者会見で、被害住民の気持ちを逆なでする失言をしたほか、指導力を発揮していない点に批判が集まっている。
BPの株価は、4月20日の事故発生前の半値に落ち込んでいる。ライバルの米エクソンモービルや、英・オランダのロイヤル・ダッチ・シェル、中国石油天然ガス集団(ペトロチャイナ)など中国勢からの買収リスクが高まっており、株主の危機感が強まっているという。
豪、鉄鉱石・石炭に新税…12年から税率30%
【シンガポール=岡崎哲】オーストラリアのギラード首相は2日、資源会社に対する鉱物資源利用税の新規導入で資源業界側と合意したと発表した。
課税対象は鉄鉱石と石炭事業の利益で、当初案では40%とされた税率が30%に下げられるなど業界に譲歩する内容となった。実施は2012年7月から。豪企業が負担回避を狙って便乗値上げに踏み切れば、豪州の鉱物資源に大きく依存する日本企業に影響が及ぶ恐れがある。
新税を巡っては、6月にラッド前政権が導入に失敗し退陣に追い込まれていた。
大阪府:「貸金特区」設置提案へ 上限金利引き上げを検討
大阪府は3日、改正貸金業法の完全施行で導入された、個人の借入総額を年収の3分の1までに制限する「総量規制」と、年15~20%の上限金利規制を一部緩和する構造改革特区の設置構想を政府に提案する方向で最終調整に入った。規制の強化で中小事業者などが違法な「ヤミ金融業者」に流れるのを防ぐことが狙いだが、実施されれば全国の貸金業界に影響が出ることは必至だ。政府との交渉は難航が予想されるが、提案で同法のあり方に一石を投じる意味もあるとみられる。
構想によると、中小事業者向けの1年以内の融資は上限金利を改正前の年29.2%に戻すほか、個人に返済能力があれば総量規制を超えた無担保融資ができるよう緩和。府内に本店を置く貸金業者が府内の店舗で融資する際に適用することを想定しており、借り手は府民でなくてもいい。
改正法による金利引き下げで、貸金業者はリスクの高い中小事業者向け融資を縮小。廃業する業者も多い。府は、担保の少ない中小事業者に「金利が高くても無担保で即日融資を受けたい」との声が強い点を重視。また、返済能力のある利用者への融資まで一律に制限する総量規制は硬直的だと判断し、多重債務者の救済体制を充実したうえで規制緩和を実施したい考えだ。
近畿財務局が3~4月に実施した調査によると、近畿2府4県の貸金業63業者の利用者のうち、総量規制に抵触する人は49.4%と全国平均の42.0%より多い。また、府が個人債務者500人に実施した調査では、7人に1人が「ヤミ金融利用は仕方ない」と回答したため、府はヤミ金融に利用者が流れる可能性があることを懸念していた。
政府は、9月末をめどに特区設置の可否を判断する。しかし、6月18日に完全施行されたばかりの改正貸金業法の一部緩和は、消費者団体などからの反発も予想され、すんなり認められる可能性は低い。ただ、府の動きで改めて規制強化の是非論が浮上する可能性はある。
モバイルWi-Fiルーター:好評で売り切れ続出 NTT東のSIMロックフリーは8月上旬
6月24日に発売を開始したバッファロー製のモバイルWi-Fiルーター「DWR-PG」(ポータブルWi-Fi)が、米アップルの新型携帯端末「iPad(アイパッド)」の人気もあって、初回入荷分が多くの店で完売するなど人気を呼んでいる。NTT東日本も、同25日から同社の光ブロード回線の契約者を対象に同等のルーターを貸し出す「光ポータブル」のサービスを開始したが、予約が多く、希望者の手元に届くまでしばらく時間がかかりそうだ。
「ポータブルWi-Fi」は、携帯型の小型無線ルーターで、携帯電話の3G回線と無線LAN回線を自動で切り替えてインターネットに接続できる。「iPad」や「iPod touch」のほか、「ニンテンドーDS」や「プレイステーションポータブル」などの携帯ゲーム機、無線LAN機能を内蔵するノートパソコンなどで利用できる。3G回線を利用する場合は、携帯事業者と別途契約が必要になる。「ポータブルWi-Fi」と「光ポータブル」のSIMロックモデルはNTTドコモの回線にのみ対応している。
バッファローによると「ポータブルWi-Fi」は発表当初から反響が大きく、初回出荷分は即日完売した店が多かったという。増産しているものの安定供給できるまでに2~3カ月かかると見込んでいる。供給不足を受け、希望する加入者には「ポータブルWi-Fi」が手元に届くまでの間、無線ルーター機能を持つNEC製の携帯電話機を貸し出すドコモショップもあるなど、顧客を逃さないように懸命の努力をしている。
レンタルサービスの「光ポータブル」も問い合わせが殺到したことから、急きょ事前予約を行ったが、サービス開始当日には一部の顧客にしか届けられず、納期はSIMロックモデルで7月中旬、SIMフリーモデルは8月上旬を予定している。「光ポータブル」は通信事業会社を選択できるSIMフリーモデルも用意したことで話題を呼んだが、現在動作が確認できているのはイーモバイルのみで、出荷もSIMロックモデルよりも遅れている。
SIMフリーモデルでの接続について、ドコモでは「SIMロックモデルは接続を確認しているが、SIMフリーモデルについては接続試験をしておらず、定額、従量の料金プランを問わず接続できるかはまだわからない」と話している。NTT東によると、SIMフリーモデルはチェック項目が多いことから出荷が遅れている。SIMフリーモデルで、ドコモの定額データプランなど他社でも使えるかは調整中で、決まり次第ホームページなどで告知する予定。同社は「お客様にはお待たせして申し訳ないが、入荷次第発送して少しでも早く供給していきたい」とサービス開始後の品不足とSIMフリーへの対応に苦慮している。
(日経社説)電子書籍の普及へ乗り越えるべき壁
米アップルの多機能携帯端末「iPad」の発売を受け、電子出版への関心が高まっている。出版業界では警戒感も強いが、上手に使えば安い値段で読者に便利なサービスを提供できる。電子書籍元年といわれる今、日本でも電子化への基盤作りとルールの検討を急ぐべきだ。
電子出版事業で先行するのはアマゾン・ドット・コムやアップル、検索大手のグーグルなど米国のIT(情報技術)企業だ。米出版業界も電子化へ急カーブを切っている。
背景には高速無線インターネットや高精細な画像を表示できる携帯端末の登場がある。ネット経由でソフトやシステムを提供できる「クラウドコンピューティング」の広がりで、情報を大量に蓄積、配信できるようになったことも見逃せない。
新しい携帯端末やサービスに対し、日本の出版社や新聞社、広告会社なども情報提供を始めた。国内の出版市場は1996年をピークに縮小し、現在は2兆円を切っている。デジタル時代への出版の取り組みとして当然の試みといえよう。
しかし外資主導で日本の電子出版が広がることには疑問がある。米国の情報サービスは、同時テロを機に制定された「愛国者法」により、有事には米政府が差し押さえられる。基本的な出版物のデータベースや配信基盤は日本国内で整備すべきだ。
出版社の意識転換も欠かせない。90年代にもソニーなど家電メーカーが電子書籍端末を開発したが、出版業界がまとまらず、頓挫した。二の舞いを避けるには、書籍情報の提供や技術の標準化について出版各社の協力体制が重要である。
読者に情報を直接配信できる電子出版は再販制度や取次制度へも大きな影響を及ぼす。デジタル時代には流通よりも企画や編集など出版社特有の機能が重みを増す。その意味でも、書誌データベースの構築など出版社の取り組みが求められる。
電子化は新刊本だけでなく過去の出版物も重要だ。国立国会図書館が蔵書の電子化を進めているが、出版界の要請で同時に1人しか閲覧できないなど制約が多い。電子化の効用を最大限に生かすには、著作権を尊重しながらも、利用しやすくするため、なんらかの仕組みを考えていくことが今後の課題だろう。
海外ではコミックスなど日本文化への関心が高まっている。電子出版は国内読者の利便性を高める一方、海外にも販路を開くことができる。電子翻訳技術などを合わせて活用すれば、日本の情報をもっと海外に広めることができるに違いない。
家電量販店やスーパーの大手で、支払額の一定割合を消費者に還元するポイントの発行を減らす動きが広がってきた。ヤマダ電機は2010年度の発行額を09年度から半減させ、1000億円前後にする。セブン&アイ・ホールディングスも絞り込んでいる。将来の買い物が割引されるポイントをためるより、その場の支払額を減らしたい消費者が増えているため。小売り側もポイント発行に比べてコストのかからない現金値引きを強化し、収益改善を狙う。
ポイントは顧客を囲い込むための代表的な販売促進策で、発行額は年間1兆円近くに達する。参入企業の増加に伴い市場自体は伸びているが、小売り大手の見直しに伴い成長は鈍化しつつある。
家電量販最大手のヤマダは今春からほぼ全店で、ポイントを付けずに現金で値引きする販促を開始。ポイント還元も残し、客に値引き方法を選んでもらう。一部の地方店は5月から来店時に付けるポイントを除いて、現金値引きのみとした。
店頭表示価格の20%前後の高率還元を売りにしてきたが、景気の不透明感から「その場で安く買える方がいいという客が増えた」(山田昇会長)。このため、09年度に2000億円台とみられる発行額を10年度は半分以下に抑制。拡大する現金値引きはポイントより割引率が低いため、11年3月期の売上高営業利益率は前期に比べ0.3ポイントの改善を見込む。
業界6位のコジマは10年度の発行額を09年度より2~3割減らす方針。通常は1%を還元するが、09年度は特定商品の還元率を5~10%にアップし、発行額は60億円前後だったもよう。10年度は高率の還元を抑え、50億円未満に減らす。
セブン&アイも発行抑制に転じている。ポイントを導入している企業は未使用残高の一定割合を「ポイント引当金」として積み立てているが、同社は10年2月期の引当金を約131億円と前の期に比べ2割減らした。グループ内で最も発行額が多い総合スーパーのイトーヨーカ堂は、現金還元セールや不用品の下取りなど、ポイントに頼らない販促策を強化中だ。
ドラッグストア最大手のマツモトキヨシホールディングスも、ここ数年はポイントサービスを絞り込む傾向という。
日本経済新聞社が6月にまとめた主要小売り500社の調査によると、ポイント導入済みは274社。10年度の発行計画を聞いたところ、「減らす」との回答が8.0%と、「増やす」の6.6%を上回った。
15年度にも日本企業に導入される国際会計基準(IFRS)では、ポイント発行分が売上高から除外される。見かけ上、減収に陥りかねない企業がイメージ悪化を避けようと、発行を抑えるケースも増えるとみられる。
ポイント見直し、国際会計基準も背景に
小売業でポイント発行の抑制が広がってきた背景には、発行額を売上高から除外する国際会計基準(IFRS)の影響もある。個人消費の伸びは期待できないうえに、政府の家電エコポイントが年末に終了するなど厳しい経営環境の中、販促費負担の重いポイント戦略は見直しを迫られている。消費刺激に一定の効果を上げてきたポイント市場は曲がり角を迎えた。
2015年度にも導入されるIFRSによって、ポイント発行額が多い企業は見かけ上、大幅な減収に陥る可能性がある。日本経済新聞社の小売業調査でも、ポイント制度を導入している企業(274社)のうち16%が、「(IFRSが導入されれば)ポイント制度の廃止・縮小を検討する」と答えている。
とりわけ高率ポイントで集客してきた家電量販店は対応が急務だ。年末にエコポイント制度が終わり、地上デジタル放送に完全移行する来夏を過ぎると、薄型テレビのような目玉商品はなくなる。全店一律のポイント発行は「費用対効果」の面からも見直しが必至だ。
ヤマダ電機は競合店の少ない地方店を中心にポイントを大幅に抑制する一方、競争の激しい都心の一部店舗では20%といった高率の還元を続ける可能性もあるという。コジマは「郊外店では折り込みチラシなどを参考に買う店を決める客が多く、ポイントは来店の動機づけとしては弱い」(経営企画室)としている。
凸版印刷・大日本印刷、電子書籍で出版社支援 データ制作や印税管理
印刷大手の凸版印刷と大日本印刷はそれぞれ、出版社向けに電子書籍の支援事業に乗り出す。凸版は書籍の電子化からネット配信までを一貫して支援。大日本印刷は煩雑になる印税支払いなどを一元管理できるサービスを9月にも始める。書籍印刷で培ったノウハウを成長が見込める電子書籍関連の受注につなげ、低迷する印刷事業に代わる収益源に育てる。
凸版印刷が提供するのは、携帯電話や米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」など端末に合わせた書籍データの制作のほか、電子雑誌向けの広告制作、販促活動の支援など。配信の委託先は出版社が選べるほか、子会社で電子書籍配信を手掛けるビットウェイ(東京・台東)も請け負う。
このほど約50人の専門組織「デジタルコンテンツソリューションセンター」を発足させた。電子書籍を手掛けるには、データのデジタル化や配信用の閲覧ソフトの準備などが必要になる。小規模な出版社では負担が重いケースもある。電子雑誌向けに動画を使った広告など、販促効果を高める手法も開発し出版社に提案する。
凸版はソニーやKDDIなどと共同で、電子書籍を様々な端末に配信する事業を年内に始める計画。新事業で配信事業を活用する出版社を開拓する。広告制作や配信代行なども含め、凸版印刷の連結ベースで2015年に500億円の増収効果をみこむ。
大日本印刷は書籍や雑誌ごとに著者や写真家、挿絵家などの権利者を一元管理できるシステムを開発し、9月にもネット経由で出版社に貸し出す。印税や原稿料の支払いルールなどを登録すると、毎月の支払い一覧作成や、著者などへの支払い通知書の発行まで自動化できる。
出版社では印税などの支払いを管理部門や担当者に任せ、手作業も多いという。電子書籍では紙の本以上に許諾の有無などの管理が複雑になる。月額料金は30万円からで、大手出版社の刊行物をすべて管理しても800万円に収まるという。2012年に売り上げ5億円をみこむ。
印刷会社はすでにコンピューターを使った出版物の組み版から印刷の版下制作までを出版社から請け負っている。電子化が進んでいることを強みに、新サービスを売り込む。事業領域の拡大で出版社を支援するモデル構築を急ぐ。
日本の出版市場は縮小が続く。出版科学研究所によると書籍と雑誌を合わせた出版物の市場は09年には1兆9千億円と、約16%減った。一方で、電子書籍市場は09年度に500億円を超え、10年度以降はさらに拡大が加速する見通しだ。
ホンダ全二輪車値下げ…3年で10年前の価格に
ホンダは3日、国内で販売する二輪車の約45車種すべての価格を2000年当時の販売価格まで引き下げる方針を明らかにした。
若者らの「二輪車離れ」に歯止めがかからないためで、全面改良や一部改良に合わせ、今後3年間で順次、値下げする。値下げ幅は、1~3割程度に達する見通しだ。
値下げ幅は、定番モデルの「スーパーカブ50」(排気量50cc)の最も安いモデルで約4万円、中型スクーターの売れ筋車種「フォルツァ」(250cc)の最廉価モデルでは約12万円となる見込みだ。
値下げに向け、人件費など製造コストが安いアジアで生産した二輪車の国内への投入モデルを増やすほか、低価格の海外製部品の使用比率を高める。さらに、新車の開発にかける時間を、現在の約2年から、1~1年半程度に短縮することで開発費を削減する。
国内シェア(占有率)の約48%を握り業界トップのホンダの値下げ戦略は、販売不振に苦しむ他の二輪メーカーにも影響を与えそうだ。
二輪車は、インドやタイなどの新興国では人気だが、国内では景気低迷や都市部の駐車場不足で、販売が低迷している。09年の国内の二輪市場は前年比27・1%減の38万777台で、ピークだった1982年の約329万台の1割強の水準まで落ち込んでいる。
エルピーダ、超小型DRAM量産 台湾3社と共同
韓国2強を追撃
エルピーダメモリは7月中にも台湾のDRAMメーカー3社と共同で、独自の小型化技術を使ったDRAM生産を始める。既存の設備を生かして投資を抑えながら、先端DRAMを量産できる新技術を3社に供与。パソコンやサーバーに適した製品として出荷する。コスト競争力を高めてサムスン電子やハイニックス半導体の韓国2強を追撃する。
開発した超小型DRAMは、設計や生産工程の工夫でチップを小型化したのが特徴。1枚のシリコンウエハーから生産できるチップ数が従来より25%増え、消費電力も低いという。
すでに生産委託で協力関係にある瑞晶電子、茂徳科技、力晶半導体に小型化技術を提供する。回路線幅を細くするための巨額投資は不要で、エルピーダを含む4社は現在主力の回路線幅65ナノ(ナノは10億分の1)メートルのDRAMの生産ラインを小規模に改造するだけですむ。
広島工場(東広島市)と台湾3社への委託分を合わせた月産30万枚(直径300ミリのシリコンウエハー)のうち、6割を占める約18万枚を超小型DRAMの生産に転換する。
一方でエルピーダは2010年度に約1150億円の設備投資をかけて、回路線幅40ナノメートルの世界最新鋭のDRAMの生産を拡大する計画。既存の設備も有効活用しながら、サムスンやハイニックスとの競争に挑む。
エルピーダは09年3月期に1789億円の最終赤字を計上し、公的資金による金融支援などを受けた。10年3月期には黒字に転じ、今回の3社に華邦電子を加えた台湾DRAMメーカー4社との「日台連合」を組み、生産能力の拡張を急ぐ。
英BPの主要株主、経営陣を一掃か…英紙報道
【ロンドン=是枝智】メキシコ湾で原油流出事故を起こした国際石油資本(メジャー)の英BPの主要株主が、流出が止まった段階で、経営陣の一掃に動き出す可能性が高まってきた。
3日付の英紙フィナンシャル・タイムズが報じた。
報道によると、最も問題視されているのが、カールヘンリック・スバンベリ会長で、トニー・ヘイワード最高経営責任者(CEO)も辞任に追い込まれる公算が大きいという。
スバンベリ会長は6月半ば、オバマ米大統領との会談後の記者会見で、被害住民の気持ちを逆なでする失言をしたほか、指導力を発揮していない点に批判が集まっている。
BPの株価は、4月20日の事故発生前の半値に落ち込んでいる。ライバルの米エクソンモービルや、英・オランダのロイヤル・ダッチ・シェル、中国石油天然ガス集団(ペトロチャイナ)など中国勢からの買収リスクが高まっており、株主の危機感が強まっているという。
豪、鉄鉱石・石炭に新税…12年から税率30%
【シンガポール=岡崎哲】オーストラリアのギラード首相は2日、資源会社に対する鉱物資源利用税の新規導入で資源業界側と合意したと発表した。
課税対象は鉄鉱石と石炭事業の利益で、当初案では40%とされた税率が30%に下げられるなど業界に譲歩する内容となった。実施は2012年7月から。豪企業が負担回避を狙って便乗値上げに踏み切れば、豪州の鉱物資源に大きく依存する日本企業に影響が及ぶ恐れがある。
新税を巡っては、6月にラッド前政権が導入に失敗し退陣に追い込まれていた。
大阪府:「貸金特区」設置提案へ 上限金利引き上げを検討
大阪府は3日、改正貸金業法の完全施行で導入された、個人の借入総額を年収の3分の1までに制限する「総量規制」と、年15~20%の上限金利規制を一部緩和する構造改革特区の設置構想を政府に提案する方向で最終調整に入った。規制の強化で中小事業者などが違法な「ヤミ金融業者」に流れるのを防ぐことが狙いだが、実施されれば全国の貸金業界に影響が出ることは必至だ。政府との交渉は難航が予想されるが、提案で同法のあり方に一石を投じる意味もあるとみられる。
構想によると、中小事業者向けの1年以内の融資は上限金利を改正前の年29.2%に戻すほか、個人に返済能力があれば総量規制を超えた無担保融資ができるよう緩和。府内に本店を置く貸金業者が府内の店舗で融資する際に適用することを想定しており、借り手は府民でなくてもいい。
改正法による金利引き下げで、貸金業者はリスクの高い中小事業者向け融資を縮小。廃業する業者も多い。府は、担保の少ない中小事業者に「金利が高くても無担保で即日融資を受けたい」との声が強い点を重視。また、返済能力のある利用者への融資まで一律に制限する総量規制は硬直的だと判断し、多重債務者の救済体制を充実したうえで規制緩和を実施したい考えだ。
近畿財務局が3~4月に実施した調査によると、近畿2府4県の貸金業63業者の利用者のうち、総量規制に抵触する人は49.4%と全国平均の42.0%より多い。また、府が個人債務者500人に実施した調査では、7人に1人が「ヤミ金融利用は仕方ない」と回答したため、府はヤミ金融に利用者が流れる可能性があることを懸念していた。
政府は、9月末をめどに特区設置の可否を判断する。しかし、6月18日に完全施行されたばかりの改正貸金業法の一部緩和は、消費者団体などからの反発も予想され、すんなり認められる可能性は低い。ただ、府の動きで改めて規制強化の是非論が浮上する可能性はある。
モバイルWi-Fiルーター:好評で売り切れ続出 NTT東のSIMロックフリーは8月上旬
6月24日に発売を開始したバッファロー製のモバイルWi-Fiルーター「DWR-PG」(ポータブルWi-Fi)が、米アップルの新型携帯端末「iPad(アイパッド)」の人気もあって、初回入荷分が多くの店で完売するなど人気を呼んでいる。NTT東日本も、同25日から同社の光ブロード回線の契約者を対象に同等のルーターを貸し出す「光ポータブル」のサービスを開始したが、予約が多く、希望者の手元に届くまでしばらく時間がかかりそうだ。
「ポータブルWi-Fi」は、携帯型の小型無線ルーターで、携帯電話の3G回線と無線LAN回線を自動で切り替えてインターネットに接続できる。「iPad」や「iPod touch」のほか、「ニンテンドーDS」や「プレイステーションポータブル」などの携帯ゲーム機、無線LAN機能を内蔵するノートパソコンなどで利用できる。3G回線を利用する場合は、携帯事業者と別途契約が必要になる。「ポータブルWi-Fi」と「光ポータブル」のSIMロックモデルはNTTドコモの回線にのみ対応している。
バッファローによると「ポータブルWi-Fi」は発表当初から反響が大きく、初回出荷分は即日完売した店が多かったという。増産しているものの安定供給できるまでに2~3カ月かかると見込んでいる。供給不足を受け、希望する加入者には「ポータブルWi-Fi」が手元に届くまでの間、無線ルーター機能を持つNEC製の携帯電話機を貸し出すドコモショップもあるなど、顧客を逃さないように懸命の努力をしている。
レンタルサービスの「光ポータブル」も問い合わせが殺到したことから、急きょ事前予約を行ったが、サービス開始当日には一部の顧客にしか届けられず、納期はSIMロックモデルで7月中旬、SIMフリーモデルは8月上旬を予定している。「光ポータブル」は通信事業会社を選択できるSIMフリーモデルも用意したことで話題を呼んだが、現在動作が確認できているのはイーモバイルのみで、出荷もSIMロックモデルよりも遅れている。
SIMフリーモデルでの接続について、ドコモでは「SIMロックモデルは接続を確認しているが、SIMフリーモデルについては接続試験をしておらず、定額、従量の料金プランを問わず接続できるかはまだわからない」と話している。NTT東によると、SIMフリーモデルはチェック項目が多いことから出荷が遅れている。SIMフリーモデルで、ドコモの定額データプランなど他社でも使えるかは調整中で、決まり次第ホームページなどで告知する予定。同社は「お客様にはお待たせして申し訳ないが、入荷次第発送して少しでも早く供給していきたい」とサービス開始後の品不足とSIMフリーへの対応に苦慮している。
(日経社説)電子書籍の普及へ乗り越えるべき壁
米アップルの多機能携帯端末「iPad」の発売を受け、電子出版への関心が高まっている。出版業界では警戒感も強いが、上手に使えば安い値段で読者に便利なサービスを提供できる。電子書籍元年といわれる今、日本でも電子化への基盤作りとルールの検討を急ぐべきだ。
電子出版事業で先行するのはアマゾン・ドット・コムやアップル、検索大手のグーグルなど米国のIT(情報技術)企業だ。米出版業界も電子化へ急カーブを切っている。
背景には高速無線インターネットや高精細な画像を表示できる携帯端末の登場がある。ネット経由でソフトやシステムを提供できる「クラウドコンピューティング」の広がりで、情報を大量に蓄積、配信できるようになったことも見逃せない。
新しい携帯端末やサービスに対し、日本の出版社や新聞社、広告会社なども情報提供を始めた。国内の出版市場は1996年をピークに縮小し、現在は2兆円を切っている。デジタル時代への出版の取り組みとして当然の試みといえよう。
しかし外資主導で日本の電子出版が広がることには疑問がある。米国の情報サービスは、同時テロを機に制定された「愛国者法」により、有事には米政府が差し押さえられる。基本的な出版物のデータベースや配信基盤は日本国内で整備すべきだ。
出版社の意識転換も欠かせない。90年代にもソニーなど家電メーカーが電子書籍端末を開発したが、出版業界がまとまらず、頓挫した。二の舞いを避けるには、書籍情報の提供や技術の標準化について出版各社の協力体制が重要である。
読者に情報を直接配信できる電子出版は再販制度や取次制度へも大きな影響を及ぼす。デジタル時代には流通よりも企画や編集など出版社特有の機能が重みを増す。その意味でも、書誌データベースの構築など出版社の取り組みが求められる。
電子化は新刊本だけでなく過去の出版物も重要だ。国立国会図書館が蔵書の電子化を進めているが、出版界の要請で同時に1人しか閲覧できないなど制約が多い。電子化の効用を最大限に生かすには、著作権を尊重しながらも、利用しやすくするため、なんらかの仕組みを考えていくことが今後の課題だろう。
海外ではコミックスなど日本文化への関心が高まっている。電子出版は国内読者の利便性を高める一方、海外にも販路を開くことができる。電子翻訳技術などを合わせて活用すれば、日本の情報をもっと海外に広めることができるに違いない。
ソニー、手本はアップル ハードとソフト融合 PSNを活用
人々が欲しいと考えもしなかった商品を発明して、業界標準を確立する。それがかつてのソニーだった。携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」や家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)」などが代表例だ。こうした才覚によって、ソニーは市場シェアを拡大し、高い製品価格を設定できていた。
これが米アップルの最近の歴史とかなり似ているとすれば、ソニーのストリンガー最高経営責任者(CEO)にとっての大きな試練は、ソニーがアップル中心の世界で際立つには、どうすればよいのかということになる。ブルームバーグ・ビジネスウイーク誌(7月5日号)が報じている。
◆「四銃士」に指令
ストリンガーCEOはアップルの戦略を手本にしている。ソニーが持つ音楽や映画、ゲームの膨大なコンテンツ(情報の内容)をテレビなどのソニー製品にデジタル形式で直接流し、一体化させていきたい考えだ。
鍵を握るのはゲーム機「プレイステーション3(PS3)」と無線ブルーレイディスク(BD)プレーヤーだろう。ソニーはこうした製品が、アップルのスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」のように、消費者がパソコンを使わずにコンテンツを入手するメディアの中心となるように力を入れている。
ストリンガーCEOの前任者である出井伸之氏もコンテンツとハードウエアの融合を試みたものの、社内での反発を受けて断念した経緯がある。リセッション(景気後退)に見舞われたことで、ストリンガーCEOには現状を打開する機会が与えられた。同CEOは大幅な人員削減やテレビの生産委託のほか、経営幹部の若返りを断行して、「四銃士」と呼ばれるチームを選出した。注目すべき「銃士」は平井一夫氏だ。PSの普及に寄与した実績を持つ平井氏は現在、ネットワークプロダクツ&サービスグループを統括している。
以前は、テレビやゲーム、映画それぞれの部門で、独自にウェブサイトにコンテンツを流していた。しかし、平井氏は各部門を統合して、どのソニー製品からも1つのアカウントで音楽や映画などにアクセスすることを可能にした。アップルのオンライン配信サービス「iTunes(アイチューンズ)」と似た方式だ。
◆3Dテレビに競争力
ソニーは無料ウェブサービス「プレイステーション・ネットワーク(PSN)」を全社的なモデルに活用したいと考えている。4年前に導入したこのサービスには5000万人が登録し、ウェブ上でビデオやゲーム、音楽ソフトの購入・レンタルができる。ストリンガーCEOは2013年3月末までに、こうしたネットワークにつながる機器3億5000万台を販売し、映画やゲームを含むネットサービスから34億ドル(約2996億円)の売り上げ確保を目指している。
ソニー・エレクトロニクスの米国マーケティング責任者、マイク・ファスロ氏によると、ソニーが競争上有利なのは3次元(3D)関連かもしれない。ここでも、3D撮影したサッカーワールドカップ(W杯)の映像などのコンテンツを取りそろえ、3Dテレビなどの販売を促す構想となる。
ソニーは09年3月期と10年3月期が赤字となった。しかし、5月には今期の連結最終損益が500億円の黒字との予想を示した。これはコスト削減で財務基盤が安定化してきたサインだ。
ストリンガーCEOは今後、これまで長いこと語ってきた事業の相乗効果が実現できることを証明せねばならない。
インド政府、「ブラックベリー」「スカイプ」規制検討 現地報道 通信暗号、解読できず
2日付のインドの経済紙ミントは、同国政府が携帯情報端末「ブラックベリー」やインターネット経由で無料通話ができる「スカイプ」などの使用を規制する方向で検討に入ったと報じた。ブラックベリーなどが採用している通信の暗号技術を治安当局が解読できず、テロ組織による利用への懸念が高まっているためだという。
同紙によると、通信・情報技術省は近く「ブラックベリー」と「スカイプ」を手掛ける各社のほか、電子メールのサービスを持つ米グーグルの3社に対し、暗号技術を15日以内に解読可能な方式に切り替えるよう要請。各社が従わない場合は通信の強制的な遮断も辞さない構えだ。
最新の情報通信サービスを巡っては、中国政府がグーグルの検索事業で検閲を導入している。印政府の動きは狙いが異なるものの、個人情報の保護を損なう恐れがあり、利用者の強い反発を招きそうだ。
高機能携帯で日本をガイド 観光庁、中・韓・英語で旅行情報 端末も貸し出し
観光庁は外国人向けに、中国語や英語の観光情報を「iPhone(アイフォーン)」などスマートフォン(高機能携帯電話)を使って、発信する。10月にまず、沖縄の名所、飲食店情報の提供を始める。空港などで、端末の貸し出しも受け付ける。「訪日外国人3000万人計画」を進める一環で、京都など他の観光都市にも広げていく。
スマートフォンは身元証明書の提示などの手続きのうえ、有料で貸与する。空港や駅の旅行会社のカウンターで受け付ける仕組みで、料金はこれから詰める。
情報は、携帯電話会社が地元の商店や観光協会から提供を受けて、編集・構成する。観光名所やレストラン、ショッピングのほか、ATM・両替所や交通機関など様々な情報を掲載する。外国人が地元住民に日本語で意思を伝えやすいように、自動翻訳機能もつける。
日本語のほか、英語、中国語、韓国語の3カ国語で始め、フランス語やドイツ語、スペイン語の追加も検討する。
観光庁は10月以降、京都でも同様のサービスを始める。2020年初めまでに訪日外国人数を2500万人とし、将来は3000万人を目指す目標の達成に向けて、外国人が旅行しやすい環境づくりを進める。
京都の大谷大、人文情報学科の全学生に無料でiPad
大谷大(京都市北区)は2日、文学部人文情報学科の全学生に、来年度から米アップル社の新型情報端末「iPad(アイパッド)」を無料で配ると発表した。講義資料のデジタル化やリポート提出、出欠記録などに活用する。
インターネット環境を充実させて情報分野に人材を送り出すことと、最先端の取り組みをアピールして受験者を増やすことが狙い。来春の入学生も含めた同学科の在学生計約480人に配る。購入費は約2400万円。
W杯日本戦のテレビ放映、同じCMばかりだったのはなぜ?
2010年ワールドカップ南アフリカ大会では史上初のベスト8進出こそ果たせなかったものの、下馬評を覆し見事決勝トーナメントに駒を進め、日本中を大いに歓喜させてくれた岡田ジャパン。テレビ朝日系で生中継されたオランダ戦の平均視聴率は43.0%(関東地区)、日本テレビ系のデンマーク戦は朝方にも関わらず午前5時からの平均が40.9%(関東地区)。TBS系のパラグアイ戦は57.3%(関東地区、延長前半13分まで)でTBS史上最高の視聴率をたたき出すなど各局を沸かせる結果となった。
視聴率40%超えともなればCMの宣伝効果は抜群だったはずだが、グループリーグのオランダ戦・デンマーク戦、決勝トーナメントのパラグアイ戦では、三井住友海上の「巨大なゴールキーパー」のCMや自民党など同じ企業のCMばかりが流れていた。しかし放送された局は異なるのに、スポンサーがほとんど同じなのはなぜなのだろうか。
「ワールドカップの場合は、通常の局ごとでの売り方ではなく、民放連全体でCMのパッケージ売りをしています。パッケージなのでスポンサー料は巨額です」と話すのは某テレビ局関係者。パッケージ売りだから、資本力がある大手企業でないと買い取ることができなかったようだ。
また別の関係者はスポンサー料についてこう話す。「番組によりますし一概には言えませんが、ゴールデンタイムだと半年契約でスポットCMが300万円くらいが目安ではないでしょうか。今は不況ですし、スポンサーが付きにくい時代です。特に深夜番組はスポンサーが付きにくいです。おおよそですが半年契約で100万円~200万円くらいとゴールデンとはまるで違います。しかし、同じ深夜でもワールドカップはもちろん別格で、15秒CM1本の“価値”はアバウトですが400万円~600万円くらいになるのではないでしょうか」
ワールドカップ効果はやはり絶大のようだ。日本は惜しくも敗れてしまったが、決勝戦までまだまだ魅力的なカードが目白押しで高視聴率が期待できるだろう。民放各局は4年に一度の祭典を思う存分堪能しているに違いない。
民間のノウハウどう活用 改革手腕、成長力を左右
人材派遣大手のパソナは昨年から検討してきた農業生産法人を立ち上げる計画を断念した。規制の壁に阻まれた。
野菜などの販売、畑で働きたい人の研修、ほかの農業生産法人への人材派遣……。パソナが描いていたのは「農業の総合会社」(山本絹子専務)。1年間社内で議論し、役員や社名も考えていた。
課題なお山積
壁になったのは「農業生産法人は売り上げの過半が農業分野でなければならない」という農地法の規制だ。人材ビジネスと農業を一緒に展開すれば、「サービス分野の売り上げの方が圧倒的に大きくなる。だからといって、農業分野の売り上げを半分以上にしようとすれば、早期の収益拡大は見込みにくくなる」(山本氏)という。一方、農水省は「農業をきちんとやらない事業者が参入すれば、農地が転用されるなどのリスクがある」と主張する。
政府が先月の閣議で決めた規制改革の対処方針。農業分野では前進した内容もあった。農業生産法人もテーマとして取り上げたが、結果は「2011年度に検討を開始、できるかぎり早期に結論」。規制を緩めるのか、今のまま変えないのか。視界は晴れない。
民間企業のノウハウや創意工夫を、農業や医療を含めて幅広い分野に生かせないか。規制改革は再び動き出したとはいえ、課題はなお多い。
例えば、病院への株式会社の参入解禁は今回、協議の俎上(そじょう)にも乗らなかった。一般医薬品のネット販売規制の緩和は意見がまとまらず、対処方針から項目そのものを削除した。外国人労働者の受け入れをどうするかなど、雇用関連では手つかずのテーマが目立つ。
「とにかく関係がありそうな閣僚や省庁にはすべて行け」。日本経団連の経済政策担当者に昨年末、こんな号令がかかった。担当者らは政治家や官僚を訪ね歩き、規制を見直してほしいと訴えて回った。
自民党政権では規制関連の要望窓口を規制改革会議に一本化していた。同会議の事務局の官僚と話し合えば、実現性を推し量ることもできた。政権交代で要望をどこに持ちこめばいいのか、経団連内では戸惑いも広がり、ローラー作戦を展開することになったという。
財政出動は不要
菅直人首相は参院選のマニフェスト(政権公約)で、規制改革の促進を掲げた。蓮舫行政刷新相は規制改革の「公開仕分け」にも意欲をみせる。この先作業を進めるうえで、ビジネスを実際に担う産業界や、消費者の意見を聞き、判断材料にする過程は欠かせない。一方で、水面下での要望受け付けには弊害もつきまとう。多くの人のナマの声をいかに集めるか。政治の工夫のしどころだ。
「規制改革は成長戦略のカギ。財政を使わずに景気を刺激できる分野は無数にある」(八代尚宏国際基督教大学教授)。残すべき規制と変えるべきものを見極める眼力。できるものは早く実行に移す手腕。これらの有無が日本の成長力を左右する。
石油開発、国家が主導 新エネルギーに追い風も
英BPの原油流出事故を受けて原油先物価格の先高観が強まっている。米市場では6月以降、2018年引き渡しの先物は1バレル90ドル超の水準が続く。同70ドル台の期近物との価格差は一時、事故発生前の2倍に開いた。深海油田開発のコスト上昇や生産量減退の不安が価格を押し上げている。
OPEC存在感
国際エネルギー機関(IEA)は最新の石油市場報告で「BP事故は原油供給の構図を変えかねない」と指摘した。原油供給は1990年代にメキシコ湾や南米、アフリカ西岸などで本格化した深海開発の進展で増えてきた。開発リスクを理由に石油会社が深海などへの投資を手控えれば、リスクを気にせず国家予算をつぎ込める「NOC(国営石油会社)への依存が強まる」(IEAのファティハ・ビロール主任エコノミスト)。
確認埋蔵量の7割を押さえる石油輸出国機構(OPEC)。サウジアラビアなど中東産油国の原油生産コストは1バレルあたり20ドル以下。深海油田は25ドルから40ドルが必要とされ、規制強化がこれを押し上げる可能性がある。深海油田の開発や生産の減速は「陸上や浅い海域などリスクの小さい油田を潤沢に持つOPECの立場を強める」(イタリア炭化水素公社のスカロニ最高経営責任者=CEO)ことになる。
一方で、新興国の国策石油会社は高リスクの投資にもひるまない。「生産量を5年後に5割増となる日量390万バレルに引き上げる」。ブラジル国営石油会社ペトロブラスのガブリエリCEOはBPが事故処理に追われる最中の6月21日、2200億ドルを投じる強気の中期経営計画を発表した。
開発の手緩めず
ペトロブラスは深度1000メートル超の深海開発を多数手掛け、ブラジルの資源開発を支える。「我々なら事故は回避できる」。ガブリエリCEOは深海開発の手を緩めるつもりはない。
急速な石油需要の増大に直面する中国は国内生産量の引き上げと海外での権益確保が最重要課題だ。国有の中国石油天然気集団(CNPC)の上場子会社は今後10年間に600億ドルを投じ、海外での原油・天然ガス生産量を09年の2倍相当(2億トン)まで引き上げる。
石油開発は国家主導の色彩を強め、限られたプレーヤーによるビジネスへと姿を変えつつある。ただ、OPECや国営石油会社も安穏とはしていられない。BP事故は「安く、大量に入手できる石油の時代の終わりを改めて認識させた。代替燃料の開発機運を高め、原油需要の減少を予想以上に速める結果になりかねない」(ジャドワ・インベストメントのポール・ギャンブル調査部長)。
「今こそ化石燃料への依存から脱し、クリーンエネルギーをとらえる時だ」。オバマ米大統領は6月15日、国民向け演説で太陽光など再生可能エネルギー導入を急ぐ考えを強調した。米国は「石油の時代」を支える最大消費国。演説を受け米ファーストソーラーや独Qセルズなど欧米の太陽電池や電気自動車関連株が一斉に値上がりした。
サウジのヌアイミ石油鉱物資源相は6月、20年までは現在の生産能力上限である「日量1250万バレル以上は必要ないかもしれない」と語った。1500万バレルへの引き上げの用意があると繰り返してきた大産油国の軌道修正は、エネルギー消費構造の変化を浮かび上がらせる。石油ビジネスは大きな転換点にさしかかっている。
【東京新聞社説】
中国人ビザ拡大 互いを知るチャンスに
2010年7月3日
日本に観光でやってくる中国人を受け入れる条件が、大幅に緩和された。中国からの客が飛躍的に増えると期待されている。何かと、ぎくしゃくする両国の国民が互いをわかりあう機会にしたい。
中国人への観光ビザは、二〇〇〇年に団体旅行向けの発給が始まった。昨年七月から個人向け観光ビザもできたが、対象は年収二十五万元(約三百二十五万円)以上のお金持ちに限られていた。
七月一日からは対象が大手クレジット会社が年収六万元(約七十八万円)以上に発行する「ゴールドカード」の所持者や、勤め先で役職に就いている人の家族に拡大された。
外務省によると、これでビザを受けられる対象は現在の十倍の約千六百万世帯に増えるという。
ビザ条件が大幅に緩和されたのは、経済成長の続く中国から来る観光客の購買力に期待したためだ。昨年は金融危機の影響で外国人訪日客数が落ち込む中でも、中国からの客は約百万人と過去最高を記録した。観光庁はビザ緩和で中国人の訪日客を一六年には六百万人に増やす目標を掲げている。
往来の広がりで、互いを知り誤解が解けることも期待される。日本を訪れた中国の若者は、よく「日本人が、やさしくてびっくりした」という感想を口にする。
中国では、いまだにテレビのチャンネルをひねれば、軍服姿の日本人が怒鳴っている姿を、よく目にする。祖父母から聞いた話や社会にも広がる「愛国教育」の影響で「日本は怖い」と思い込んでいる若者は少なくない。
百聞は一見に如(し)かず。日本を体験すれば日本人が、どれほど平和的で穏やかに暮らしているか、わかってもらえるに違いない。
日本人にも中国人を知る機会だ。十年ほど前まで、中国の客と店に行くと冷ややかに扱われることがあった。豊かになった中国人への対応はよくなるに違いないが、摩擦は避けられない。
例えば、中国では店に注文を付けるのは当たり前だ。料理の温め直し、持ち帰り。マニュアルにはない対応が迫られる。
摩擦が起きても、互いに悪意はなく習慣の違いにすぎないとわかれば不快に思うことはない。
体験を通し双方が当たり前の人間同士であると実感できるなら、政権やメディアの宣伝で、どれほど反感があおられても効き目はない。それは隣り合う大国が、とげとげしい対立に陥るのを防ぐ最大の防波堤になるだろう。
人々が欲しいと考えもしなかった商品を発明して、業界標準を確立する。それがかつてのソニーだった。携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」や家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)」などが代表例だ。こうした才覚によって、ソニーは市場シェアを拡大し、高い製品価格を設定できていた。
これが米アップルの最近の歴史とかなり似ているとすれば、ソニーのストリンガー最高経営責任者(CEO)にとっての大きな試練は、ソニーがアップル中心の世界で際立つには、どうすればよいのかということになる。ブルームバーグ・ビジネスウイーク誌(7月5日号)が報じている。
◆「四銃士」に指令
ストリンガーCEOはアップルの戦略を手本にしている。ソニーが持つ音楽や映画、ゲームの膨大なコンテンツ(情報の内容)をテレビなどのソニー製品にデジタル形式で直接流し、一体化させていきたい考えだ。
鍵を握るのはゲーム機「プレイステーション3(PS3)」と無線ブルーレイディスク(BD)プレーヤーだろう。ソニーはこうした製品が、アップルのスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」のように、消費者がパソコンを使わずにコンテンツを入手するメディアの中心となるように力を入れている。
ストリンガーCEOの前任者である出井伸之氏もコンテンツとハードウエアの融合を試みたものの、社内での反発を受けて断念した経緯がある。リセッション(景気後退)に見舞われたことで、ストリンガーCEOには現状を打開する機会が与えられた。同CEOは大幅な人員削減やテレビの生産委託のほか、経営幹部の若返りを断行して、「四銃士」と呼ばれるチームを選出した。注目すべき「銃士」は平井一夫氏だ。PSの普及に寄与した実績を持つ平井氏は現在、ネットワークプロダクツ&サービスグループを統括している。
以前は、テレビやゲーム、映画それぞれの部門で、独自にウェブサイトにコンテンツを流していた。しかし、平井氏は各部門を統合して、どのソニー製品からも1つのアカウントで音楽や映画などにアクセスすることを可能にした。アップルのオンライン配信サービス「iTunes(アイチューンズ)」と似た方式だ。
◆3Dテレビに競争力
ソニーは無料ウェブサービス「プレイステーション・ネットワーク(PSN)」を全社的なモデルに活用したいと考えている。4年前に導入したこのサービスには5000万人が登録し、ウェブ上でビデオやゲーム、音楽ソフトの購入・レンタルができる。ストリンガーCEOは2013年3月末までに、こうしたネットワークにつながる機器3億5000万台を販売し、映画やゲームを含むネットサービスから34億ドル(約2996億円)の売り上げ確保を目指している。
ソニー・エレクトロニクスの米国マーケティング責任者、マイク・ファスロ氏によると、ソニーが競争上有利なのは3次元(3D)関連かもしれない。ここでも、3D撮影したサッカーワールドカップ(W杯)の映像などのコンテンツを取りそろえ、3Dテレビなどの販売を促す構想となる。
ソニーは09年3月期と10年3月期が赤字となった。しかし、5月には今期の連結最終損益が500億円の黒字との予想を示した。これはコスト削減で財務基盤が安定化してきたサインだ。
ストリンガーCEOは今後、これまで長いこと語ってきた事業の相乗効果が実現できることを証明せねばならない。
インド政府、「ブラックベリー」「スカイプ」規制検討 現地報道 通信暗号、解読できず
2日付のインドの経済紙ミントは、同国政府が携帯情報端末「ブラックベリー」やインターネット経由で無料通話ができる「スカイプ」などの使用を規制する方向で検討に入ったと報じた。ブラックベリーなどが採用している通信の暗号技術を治安当局が解読できず、テロ組織による利用への懸念が高まっているためだという。
同紙によると、通信・情報技術省は近く「ブラックベリー」と「スカイプ」を手掛ける各社のほか、電子メールのサービスを持つ米グーグルの3社に対し、暗号技術を15日以内に解読可能な方式に切り替えるよう要請。各社が従わない場合は通信の強制的な遮断も辞さない構えだ。
最新の情報通信サービスを巡っては、中国政府がグーグルの検索事業で検閲を導入している。印政府の動きは狙いが異なるものの、個人情報の保護を損なう恐れがあり、利用者の強い反発を招きそうだ。
高機能携帯で日本をガイド 観光庁、中・韓・英語で旅行情報 端末も貸し出し
観光庁は外国人向けに、中国語や英語の観光情報を「iPhone(アイフォーン)」などスマートフォン(高機能携帯電話)を使って、発信する。10月にまず、沖縄の名所、飲食店情報の提供を始める。空港などで、端末の貸し出しも受け付ける。「訪日外国人3000万人計画」を進める一環で、京都など他の観光都市にも広げていく。
スマートフォンは身元証明書の提示などの手続きのうえ、有料で貸与する。空港や駅の旅行会社のカウンターで受け付ける仕組みで、料金はこれから詰める。
情報は、携帯電話会社が地元の商店や観光協会から提供を受けて、編集・構成する。観光名所やレストラン、ショッピングのほか、ATM・両替所や交通機関など様々な情報を掲載する。外国人が地元住民に日本語で意思を伝えやすいように、自動翻訳機能もつける。
日本語のほか、英語、中国語、韓国語の3カ国語で始め、フランス語やドイツ語、スペイン語の追加も検討する。
観光庁は10月以降、京都でも同様のサービスを始める。2020年初めまでに訪日外国人数を2500万人とし、将来は3000万人を目指す目標の達成に向けて、外国人が旅行しやすい環境づくりを進める。
京都の大谷大、人文情報学科の全学生に無料でiPad
大谷大(京都市北区)は2日、文学部人文情報学科の全学生に、来年度から米アップル社の新型情報端末「iPad(アイパッド)」を無料で配ると発表した。講義資料のデジタル化やリポート提出、出欠記録などに活用する。
インターネット環境を充実させて情報分野に人材を送り出すことと、最先端の取り組みをアピールして受験者を増やすことが狙い。来春の入学生も含めた同学科の在学生計約480人に配る。購入費は約2400万円。
W杯日本戦のテレビ放映、同じCMばかりだったのはなぜ?
2010年ワールドカップ南アフリカ大会では史上初のベスト8進出こそ果たせなかったものの、下馬評を覆し見事決勝トーナメントに駒を進め、日本中を大いに歓喜させてくれた岡田ジャパン。テレビ朝日系で生中継されたオランダ戦の平均視聴率は43.0%(関東地区)、日本テレビ系のデンマーク戦は朝方にも関わらず午前5時からの平均が40.9%(関東地区)。TBS系のパラグアイ戦は57.3%(関東地区、延長前半13分まで)でTBS史上最高の視聴率をたたき出すなど各局を沸かせる結果となった。
視聴率40%超えともなればCMの宣伝効果は抜群だったはずだが、グループリーグのオランダ戦・デンマーク戦、決勝トーナメントのパラグアイ戦では、三井住友海上の「巨大なゴールキーパー」のCMや自民党など同じ企業のCMばかりが流れていた。しかし放送された局は異なるのに、スポンサーがほとんど同じなのはなぜなのだろうか。
「ワールドカップの場合は、通常の局ごとでの売り方ではなく、民放連全体でCMのパッケージ売りをしています。パッケージなのでスポンサー料は巨額です」と話すのは某テレビ局関係者。パッケージ売りだから、資本力がある大手企業でないと買い取ることができなかったようだ。
また別の関係者はスポンサー料についてこう話す。「番組によりますし一概には言えませんが、ゴールデンタイムだと半年契約でスポットCMが300万円くらいが目安ではないでしょうか。今は不況ですし、スポンサーが付きにくい時代です。特に深夜番組はスポンサーが付きにくいです。おおよそですが半年契約で100万円~200万円くらいとゴールデンとはまるで違います。しかし、同じ深夜でもワールドカップはもちろん別格で、15秒CM1本の“価値”はアバウトですが400万円~600万円くらいになるのではないでしょうか」
ワールドカップ効果はやはり絶大のようだ。日本は惜しくも敗れてしまったが、決勝戦までまだまだ魅力的なカードが目白押しで高視聴率が期待できるだろう。民放各局は4年に一度の祭典を思う存分堪能しているに違いない。
民間のノウハウどう活用 改革手腕、成長力を左右
人材派遣大手のパソナは昨年から検討してきた農業生産法人を立ち上げる計画を断念した。規制の壁に阻まれた。
野菜などの販売、畑で働きたい人の研修、ほかの農業生産法人への人材派遣……。パソナが描いていたのは「農業の総合会社」(山本絹子専務)。1年間社内で議論し、役員や社名も考えていた。
課題なお山積
壁になったのは「農業生産法人は売り上げの過半が農業分野でなければならない」という農地法の規制だ。人材ビジネスと農業を一緒に展開すれば、「サービス分野の売り上げの方が圧倒的に大きくなる。だからといって、農業分野の売り上げを半分以上にしようとすれば、早期の収益拡大は見込みにくくなる」(山本氏)という。一方、農水省は「農業をきちんとやらない事業者が参入すれば、農地が転用されるなどのリスクがある」と主張する。
政府が先月の閣議で決めた規制改革の対処方針。農業分野では前進した内容もあった。農業生産法人もテーマとして取り上げたが、結果は「2011年度に検討を開始、できるかぎり早期に結論」。規制を緩めるのか、今のまま変えないのか。視界は晴れない。
民間企業のノウハウや創意工夫を、農業や医療を含めて幅広い分野に生かせないか。規制改革は再び動き出したとはいえ、課題はなお多い。
例えば、病院への株式会社の参入解禁は今回、協議の俎上(そじょう)にも乗らなかった。一般医薬品のネット販売規制の緩和は意見がまとまらず、対処方針から項目そのものを削除した。外国人労働者の受け入れをどうするかなど、雇用関連では手つかずのテーマが目立つ。
「とにかく関係がありそうな閣僚や省庁にはすべて行け」。日本経団連の経済政策担当者に昨年末、こんな号令がかかった。担当者らは政治家や官僚を訪ね歩き、規制を見直してほしいと訴えて回った。
自民党政権では規制関連の要望窓口を規制改革会議に一本化していた。同会議の事務局の官僚と話し合えば、実現性を推し量ることもできた。政権交代で要望をどこに持ちこめばいいのか、経団連内では戸惑いも広がり、ローラー作戦を展開することになったという。
財政出動は不要
菅直人首相は参院選のマニフェスト(政権公約)で、規制改革の促進を掲げた。蓮舫行政刷新相は規制改革の「公開仕分け」にも意欲をみせる。この先作業を進めるうえで、ビジネスを実際に担う産業界や、消費者の意見を聞き、判断材料にする過程は欠かせない。一方で、水面下での要望受け付けには弊害もつきまとう。多くの人のナマの声をいかに集めるか。政治の工夫のしどころだ。
「規制改革は成長戦略のカギ。財政を使わずに景気を刺激できる分野は無数にある」(八代尚宏国際基督教大学教授)。残すべき規制と変えるべきものを見極める眼力。できるものは早く実行に移す手腕。これらの有無が日本の成長力を左右する。
石油開発、国家が主導 新エネルギーに追い風も
英BPの原油流出事故を受けて原油先物価格の先高観が強まっている。米市場では6月以降、2018年引き渡しの先物は1バレル90ドル超の水準が続く。同70ドル台の期近物との価格差は一時、事故発生前の2倍に開いた。深海油田開発のコスト上昇や生産量減退の不安が価格を押し上げている。
OPEC存在感
国際エネルギー機関(IEA)は最新の石油市場報告で「BP事故は原油供給の構図を変えかねない」と指摘した。原油供給は1990年代にメキシコ湾や南米、アフリカ西岸などで本格化した深海開発の進展で増えてきた。開発リスクを理由に石油会社が深海などへの投資を手控えれば、リスクを気にせず国家予算をつぎ込める「NOC(国営石油会社)への依存が強まる」(IEAのファティハ・ビロール主任エコノミスト)。
確認埋蔵量の7割を押さえる石油輸出国機構(OPEC)。サウジアラビアなど中東産油国の原油生産コストは1バレルあたり20ドル以下。深海油田は25ドルから40ドルが必要とされ、規制強化がこれを押し上げる可能性がある。深海油田の開発や生産の減速は「陸上や浅い海域などリスクの小さい油田を潤沢に持つOPECの立場を強める」(イタリア炭化水素公社のスカロニ最高経営責任者=CEO)ことになる。
一方で、新興国の国策石油会社は高リスクの投資にもひるまない。「生産量を5年後に5割増となる日量390万バレルに引き上げる」。ブラジル国営石油会社ペトロブラスのガブリエリCEOはBPが事故処理に追われる最中の6月21日、2200億ドルを投じる強気の中期経営計画を発表した。
開発の手緩めず
ペトロブラスは深度1000メートル超の深海開発を多数手掛け、ブラジルの資源開発を支える。「我々なら事故は回避できる」。ガブリエリCEOは深海開発の手を緩めるつもりはない。
急速な石油需要の増大に直面する中国は国内生産量の引き上げと海外での権益確保が最重要課題だ。国有の中国石油天然気集団(CNPC)の上場子会社は今後10年間に600億ドルを投じ、海外での原油・天然ガス生産量を09年の2倍相当(2億トン)まで引き上げる。
石油開発は国家主導の色彩を強め、限られたプレーヤーによるビジネスへと姿を変えつつある。ただ、OPECや国営石油会社も安穏とはしていられない。BP事故は「安く、大量に入手できる石油の時代の終わりを改めて認識させた。代替燃料の開発機運を高め、原油需要の減少を予想以上に速める結果になりかねない」(ジャドワ・インベストメントのポール・ギャンブル調査部長)。
「今こそ化石燃料への依存から脱し、クリーンエネルギーをとらえる時だ」。オバマ米大統領は6月15日、国民向け演説で太陽光など再生可能エネルギー導入を急ぐ考えを強調した。米国は「石油の時代」を支える最大消費国。演説を受け米ファーストソーラーや独Qセルズなど欧米の太陽電池や電気自動車関連株が一斉に値上がりした。
サウジのヌアイミ石油鉱物資源相は6月、20年までは現在の生産能力上限である「日量1250万バレル以上は必要ないかもしれない」と語った。1500万バレルへの引き上げの用意があると繰り返してきた大産油国の軌道修正は、エネルギー消費構造の変化を浮かび上がらせる。石油ビジネスは大きな転換点にさしかかっている。
【東京新聞社説】
中国人ビザ拡大 互いを知るチャンスに
2010年7月3日
日本に観光でやってくる中国人を受け入れる条件が、大幅に緩和された。中国からの客が飛躍的に増えると期待されている。何かと、ぎくしゃくする両国の国民が互いをわかりあう機会にしたい。
中国人への観光ビザは、二〇〇〇年に団体旅行向けの発給が始まった。昨年七月から個人向け観光ビザもできたが、対象は年収二十五万元(約三百二十五万円)以上のお金持ちに限られていた。
七月一日からは対象が大手クレジット会社が年収六万元(約七十八万円)以上に発行する「ゴールドカード」の所持者や、勤め先で役職に就いている人の家族に拡大された。
外務省によると、これでビザを受けられる対象は現在の十倍の約千六百万世帯に増えるという。
ビザ条件が大幅に緩和されたのは、経済成長の続く中国から来る観光客の購買力に期待したためだ。昨年は金融危機の影響で外国人訪日客数が落ち込む中でも、中国からの客は約百万人と過去最高を記録した。観光庁はビザ緩和で中国人の訪日客を一六年には六百万人に増やす目標を掲げている。
往来の広がりで、互いを知り誤解が解けることも期待される。日本を訪れた中国の若者は、よく「日本人が、やさしくてびっくりした」という感想を口にする。
中国では、いまだにテレビのチャンネルをひねれば、軍服姿の日本人が怒鳴っている姿を、よく目にする。祖父母から聞いた話や社会にも広がる「愛国教育」の影響で「日本は怖い」と思い込んでいる若者は少なくない。
百聞は一見に如(し)かず。日本を体験すれば日本人が、どれほど平和的で穏やかに暮らしているか、わかってもらえるに違いない。
日本人にも中国人を知る機会だ。十年ほど前まで、中国の客と店に行くと冷ややかに扱われることがあった。豊かになった中国人への対応はよくなるに違いないが、摩擦は避けられない。
例えば、中国では店に注文を付けるのは当たり前だ。料理の温め直し、持ち帰り。マニュアルにはない対応が迫られる。
摩擦が起きても、互いに悪意はなく習慣の違いにすぎないとわかれば不快に思うことはない。
体験を通し双方が当たり前の人間同士であると実感できるなら、政権やメディアの宣伝で、どれほど反感があおられても効き目はない。それは隣り合う大国が、とげとげしい対立に陥るのを防ぐ最大の防波堤になるだろう。
情報通信普及へ省庁の規制調整 効果12兆円見込む
政府は情報通信技術(ICT)の活用を促すため、各省庁にまたがる規制の見直しに乗り出す。省庁間の規制の違いなどで医療や教育など新しい分野での利用が阻まれるケースがあるからだ。総務省はブロードバンド(高速大容量)を使ったICTサービスの利用を全世帯に広げることで、12兆3千億円の経済効果を生み出せるとみている。
総務省が関係する省庁との調整に近く着手し、2011年の通常国会にも各省庁が所管する規制の見直しを盛り込んだ「ICT利活用促進一括法案」(仮称)を提出する方針だ。
たとえば過疎地への遠隔医療は、厚生労働省が所管する医師法が対面診療を原則としていることがネックとなっている。情報端末を使う「電子教科書」も、文部科学省が所管する法規制が壁になっており、「教科書」として認められない。海外で導入が広がる「データセンター」を誘致するため、現在の建築基準法の改正を求める声も上がっている。
総務省はこうした規制が見直されて医療や教育分野などでICTの利用が進めば、利用者への還元効果が大きいとみる。診察の事前予約や医療の最適化が進むと、生産性の向上や医療費の削減などを通じて利用者に年間1兆5千億円程度の利益が生じると試算する。医療機関など提供者側も約1兆9千億円のコスト削減効果が見込めるという。教育・就労分野では約6千億円、行政サービスなど生活分野では約450億円の利益がもたらされるとはじく。
日本は世帯に占めるブロードバンド網の整備率は9割を超えている。しかし、実際にサービスを契約している割合は6割強にとどまっており、利用拡大が課題。政府の新成長戦略でもICTを新たな技術革新を生む基盤と位置づけ、利用のすそ野拡大を急ぐ。
総務省は全世帯がブロードバンドサービスを利用するようになると、電子商取引や教育サービス、音楽・映像の購入など個人消費を増やす効果があると分析。利用者への調査をもとに個人消費の増加率を求め、8兆7千億円程度の新規需要を創出できると推計している。部品や素材メーカーなど関連業界への影響を織り込んだ波及効果(3兆6千億円)を合わせると消費押し上げによる経済効果は12兆3千億円になり、名目国内総生産(GDP)を1.5%押し上げるという。
日立・三菱重・三菱電、水力発電機事業を統合
来年新会社、海外を共同開拓
日立製作所と三菱重工業、三菱電機は水力発電機器事業を統合する。2011年に新会社を設立、3社の事業を集約する。技術や営業ノウハウなど3社の経営資源を組み合わせて大型案件の入札で提案力を高め、海外市場を共同開拓する。水力発電は国内で大型案件が出尽くす一方、海外では二酸化炭素(CO2)を排出しない発電として、新興国を中心に新設計画が相次ぐ。3社連合は高い技術力により、受注で先行する海外勢を追撃する。(関連記事企業1面に)
日立は水車や発電機など、水力発電システムの主要機器を一貫して生産する。一方、三菱グループ2社は三菱重工が水車を、三菱電機が発電機を担当する分業体制を敷く。3社とも高出力、高効率で、出力調整もできる大型設備を得意とする。
統合新会社の売上高は海外事業も含め300億円程度となり、国内最大手の東芝と並ぶ規模となる。3社は余剰電力を使ってダムに水をくみ上げ、必要なときだけ発電するシステムを得意としており、世界に売り込む。水力発電は案件ごとに規模や技術方式が異なるため、設計やエンジニアリング分野を含めて統合。海外の大型案件について最適なシステムを構築、受注を目指す。
国内の水力発電機器市場は年間300億円規模。大型設備は東芝と日立、三菱グループ2社が市場を分け合ってきた。だが、国内は利用可能な水資源の約7割が開発済み。大手が得意とする大型設備は新規案件がほとんどなく、各社とも補修などで事業継続しているのが現状。日立、三菱2社とも水力発電事業の売上高を公開していないが、それぞれ年100億円前後とみられる。
一方、海外では地球温暖化防止に役立つ発電手段として水力発電が再評価されている。次世代送電網(スマートグリッド)に組み込んで総発電量の変動を少なくする機能が注目されている。利用可能な水資源の2割強しか開発されておらず、水資源が豊富なアジアや北米、中南米で安定した成長が見込める。水力エネルギー需要の伸びは年2~3%と、総エネルギー需要の伸び(1.5%)を上回る。
現在、年5000億円規模の世界市場は独フォイト・ハイドロ、仏アルストム、オーストリアのアンドリッツの欧州3強が過半を押さえる。東芝も海外市場開拓を急ぐが、日本勢は総じて出遅れている。日立、三菱とも単独で海外市場を開拓してきたが、連合を組み競争力を高める。
日立と三菱重工は00年に製鉄機械部門を統合した。社会インフラ部門は国内市場に多くのメーカーがひしめき、消耗戦を繰り広げる品目が多い。海外では新興国を中心に旺盛な需要が見込めるため、提携や事業統合などで市場を開拓する動きが、他の製品や企業にも広がる可能性が高い。
LG・サムスン、インド家電市場高価格帯に照準
【ニューデリー=長沢倫一郎】インドで韓国家電メーカーのLG電子とサムスン電子が高価格帯製品の生産・販売に乗り出した。LG電子は薄型テレビの増産体制を築き、サムスン電子は映像を立体的に見せる3D(3次元)対応テレビの現地生産を開始。中間層の所得増をにらみ高価格帯製品を拡充し、同分野が得意な日本企業の追い上げをかわす。
LG電子の印現地法人の慎文範社長によると、LG電子は今後3年間で計3億ドル(約270億円)を投資する。首都ニューデリー近郊のウッタルプラデシュ州グレーターノイダと西部マハラシュトラ州プネの2カ所にある工場を増強する。
LGはテレビで1台7000ルピー(1万4000円)前後のブラウン管型を主力としてきたが、7万ルピーを超える薄型テレビも販売。冷蔵庫でも高価格帯の4万ルピー超の新製品を投入し、「5年後には高機能・高価格帯で3割超のシェアを獲得する」(慎社長)という。
同社はテレビ、冷蔵庫、エアコンの3部門でシェア首位(2009年度上半期)を走る。2010年の売り上げ目標を前年比30%増の1700億ルピーに設定。その後も年率2割のペースで売り上げを伸ばす計画だ。同社が予定する3億ドルの投資は、パナソニックがエアコン工場の新設で計画している対印投資約150億円の2倍に近い。
サムスン電子は4月に液晶やプラズマなど異なる技術で10モデルの3D対応テレビを一斉に発売。ウッタルプラデシュ州ノイダの工場で現地生産を開始した。インドで最初に3D対応テレビを投入した宣伝効果をテコに、10年の薄型テレビの販売台数は昨年の約2倍の120万台を目指す。
同社はエアコンの現地生産体制も急ピッチで拡張。昨年11月に南部タミルナド州スリペルムブドゥールの工場で年産能力60万台のラインを増設したのに続き、今年2月にはノイダ工場でも同60万台のラインを稼働させた。最新型のエアコンにはインドで頻発する電圧の急激な変動を吸収して故障を防ぐ機能を付けた。
インドの家電メーカーの業界団体CEAMAによると09年度(09年4月~10年3月)の印家電市場の規模は約4000億ルピー。中間所得層の拡大を追い風に、今年度は30%の成長が見込めるという。年収7万1000ルピー~28万5000ルピーの中間所得層は08年度の時点で約1億4000万世帯にのぼり、年収は09年度中に8%程度増えたもよう。
韓国の2社はこれまでインドでボリュームゾーン(普及価格帯)を集中的に開拓し、エアコン、冷蔵庫、テレビでそれぞれ2~3割のシェアを獲得している。今後は日本企業が得意としてきた高機能・高価格帯の攻略で地位固めを狙うが、巻き返しを目指すパナソニックなど日本勢は逆にボリュームゾーンに照準を合わせる。成長する新興国市場インドでの日韓の競争が激しくなりそうだ。
不採算の半導体事業、米メーカーに売却へ 三洋、リストラ加速で再出発
三洋電機が不採算の半導体事業を、米国の半導体メーカー、オン・セミコンダクター社に売却する方針を固めたことが2日、わかった。売却額は数百億円規模で調整しており、7月中の合意を目指す。業績不振の“元凶”だった半導体事業を切り離すことで、経営資源を得意の電池事業に集約し、パナソニック傘下での再出発を本格化させる。
売却するのは、三洋の完全子会社の三洋半導体(群馬県大泉町)で、全株式を譲渡する予定。三洋側は社員の雇用継続を求めている。米通信機器大手・モトローラの半導体部門が独立して発足したオン社は、福島県に製造拠点があり、日本での事業を拡大する狙いがある。
三洋半導体は、アナログとデジタルの領域が融合した技術に強みがあり、主にAV(音響・映像)機器向けの製品を生産・販売している。パナソニックはデジタル家電向けなどの最先端の半導体製品を手掛けており、三洋とのシナジー(相乗効果)は得られないと判断、事業撤退の対象としていた。
三洋の半導体事業は、平成22年3月期の売上高が995億円で、営業損益は71億円の赤字。三洋の佐野精一郎社長は半導体やモーターを念頭に、競争力の乏しい事業について、9月末までに今後の方向性を決める意向を示していた。
もともと三洋は、19年にも投資ファンドなどと半導体事業の売却を協議したが、価格面などの条件で折り合えず頓挫した経緯がある。それだけに、オン社への売却交渉が最終調整に入ったことで、懸案事項の解消が期待される。
三洋が昨年末にパナソニックの子会社になって以降、事業売却を決めるのは物流部門に続き2例目。競争力強化に向け、リストラを加速させる。
伊藤忠、リチウムを低コストで採取 米で事業参加
地中の熱水から世界産出量の2割生産、EV電池向け
伊藤忠商事はレアメタル(希少金属)の代表品種であるリチウムを大量生産する事業に参加する。米カリフォルニア州の地中の熱水に含まれるリチウムを独自の技術で低コストで大量に取り出し、主に電気自動車(EV)に不可欠な車載電池向けに供給する。3~4年後に現在のリチウム世界生産の2割弱にあたる年1万6000トンを生産する。
この技術は米エネルギー省傘下の国立研究所が研究してきたもので、伊藤忠は同研究所から分離し、事業化に取り組んでいるシンボル・マイニング社に約20%を出資した。出資額は数十億円とみられ、インドを除くアジアに販売する独占権を取得した。
カリフォルニア州南部のソルトン湖近くの地熱発電所でリチウムを作る。発電に使う地下の熱水に含まれるリチウムを特殊なイオン交換技術で回収。脱水・濃縮して出荷する。リチウムはEV普及で需要拡大が見込まれるが、供給は南米の塩湖に偏っており、安定調達が課題になっている。
シンボル社は熱水の量や採取するリチウムの品質を既に確認しており、高品位を求められる車載電池向けを生産できるという。今後は量産に向けた試験工場を設置する計画だ。
レアメタルの供給確保への取り組みを進めている経済産業省も今回の計画を後押しする方針。伊藤忠は今回の投資で、経産省所管の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の融資を受ける予定だ。
スクランブル
携帯ゲームとテレビ、共栄関係の持続性は
携帯ゲーム運営会社とテレビ局が急速に距離を縮めている。携帯ゲーム会社は交流サイト集客のためテレビコマーシャルを展開。会員獲得に成果を出している。テレビ局から見ると、にわかに重要スポンサーに浮上している格好だ。ただ、相互依存ともみえるその関係は、危うさをはらんでいる可能性もある。
携帯ゲーム企業の広告費はこの広告不況下、急増している。交流サイト「GREE」を運営するグリーの場合、2010年6月期の広告宣伝費は前の期の3倍弱の60億円。「モバゲータウン」のディー・エヌ・エーは1~3月に約15億円をつぎ込んだ。大半はテレビ向けとみられる。
携帯ゲームは釣りや海賊などのゲームをテレビで周知し、毎月数十万人のペースで会員数を伸ばしている。ゲームは基本的には無料だが、よりゲームを楽しむための「アイテム」の販売による課金収入が収益につながる仕組みだ。
会員数の拡大で、ディーエヌエの10年3月期の連結純利益は43%増の113億円と、最高益を更新した。グリーの10年6月期も単独税引き利益が過去最高になりそうだ。
「我々がCMを奪われると言われた媒体がテレビに(広告を)出してもらえるのは良いこと」。日本テレビ放送網の細川知正社長はネット企業全般を頭においてか、こう話す。
日テレは2月から5月まで、スポット広告が前年同月に比べ2ケタ伸びた。フジ・メディア・ホールディングスも5月が11%増。6月も2%の伸びとなりそう。
番組提供のタイム広告の回復が遅れ、加えて番組製作費の削減余地も少なくなるなかで、ひとり気を吐くスポット広告。なかでも携帯ゲーム広告の底上げ効果は無視できないとみられ、「交流サイトの広告がなければスポット広告は前年割れしかねない」と、あるキー局幹部は漏らす。
ただ、この共栄関係の持続性はどうだろうか。気にかかるのは同じキー局幹部が、「瞬間的に会員数を伸ばせても継続的に続くビジネスかは疑問」と、携帯ゲームの現在の隆盛をやや冷めた目で眺めていることだ。
携帯ゲームは不況下の手軽なレジャーとして需要が拡大してきた面があり、景気の波次第では、勢いが鈍るとの見方がある。
加えて、消費者の声も懸念材料。
日本広告審査機構(JARO)や国民生活センターには、無料オンラインゲームに関する相談が相次いでいる。
国民生活センターには「無料と宣伝していたのに、高額な利用料を請求された」などといった相談が毎月50件程度寄せられている。センターは昨年12月、報道向けにその旨発表したが、以降も相談件数は大きくは変わっていない。
「1つ5000円のアイテムを娘が大量に購入していた」。「請求書が9万円を超えた」。センターにはこうした相談もあるという。
グリーもモバゲーも会員はそれぞれ2000万人ほど。両社ともに、利用者1人当たりがどの程度の料金を払っているかや、一定額以上の利用者、あるいは無料利用者の比率などの開示がないので実態はよくわからないが、「会員すべてがまんべんなくというよりは、一部の会員が大量にお金を支払っている」(外資系証券のアナリスト)とみる向きもある。
懸念されるのは、テレビ広告効果の後押しもあって会員が増えることで、未成年などの高額利用料の問題も一段と増加し、社会の関心も高まっていくような状況だ。そうなれば携帯ゲームビジネスの展開に、向かい風となることも考えられる。
ビジネスの規模が拡大するにつれ、携帯ゲーム運営会社は生活センターに相談が持ち込まれるような一部のケースに注意深く対処するのはもちろん、それと平行し、常識的な水準の幅広い課金という事業モデルで高収益を実現するという課題の重要性が増してきているようにみえる。
スクランブル
上海市場、大型IPOであく抜け感?=上海
「まるで2008年相場の再来。投資チャンスは必ずやってくる」。上海総合指数が年初から半年で27%下落し、悲観的な股民(個人投資家)が多い中、一部では上昇局面をうかがう声が聞こえ始めた。中国農業銀行が15日に上海市場に上場し、悪材料が一巡。さらに社会不安を警戒する中国政府が株式相場や景気刺激策に動くはず……。果たして股民らの期待通りになるだろうか。
上海株式市場は年初から3000ポイント前半で推移していたが、中国政府が4月に2軒目のマンション購入時の頭金の引き上げなど不動産取引規制の発表後に下げ足を速めた。地合いが悪い中、7月に上場する中国農業銀による資金調達が2兆円前後と世界最大の新規株式公開(IPO)になるとの見方が広がり、相場の重荷になった。
一方、08年。金融引き締めに加え、年初に中国生保大手の中国平安保険が発表した1500億元(約1兆9500億円)と超大型増資計画で需給悪化懸念が拡大。上海総合指数は半年で約5割下落した。08年と10年の株式相場の置かれた環境は似通っている。
中国経済を取り巻く環境も同じだ。
08年は米リーマンショックで外需減が追い打ちとなり、上海総合指数は秋に一時1700ポイント台まで下落した。10年も欧州連合(EU)の金融危機再燃や米国経済の鈍化など外需の先行きに暗雲が立ちこめている。中国人民銀行(中央銀行)が6月に実施した人民元の弾力化で人民元は2日終値で1ドル=6.77元台と05年7月の元切り上げ後の最高値水準まで上昇。今後も上昇が続けば輸出企業の採算を直撃しそうだ。
中国政府は経済の変調に対し、08年は年末にインフラ投資を中心とした4兆元(52兆円)の大型景気刺激策を発表。株式相場は年明けにかけて急回復し、3000ポイント台まで戻した。市場では「状況が同じだけに、秋には大型の景気対策が発表されてもおかしくない」(外資系運用会社幹部)との期待がでている。
実際、中国政府は危機感を強めている。6月末、温家宝首相は経済学者や企業関係者を集めた座談会を開催。経済の現状についてヒアリングするとともに政策提案を求めた。提案内容は明らかになっていないが、温首相は会合で「国内外の経済状況は複雑になっている」との認識を示した。不動産を中心に引き締め一辺倒だった春先に比べると、温首相の発言は変わってきた。
ただ、違う点もある。中国平安の増資計画は結局、市場からの猛反発を受けて頓挫した。一方、中国農業銀のIPOは予定通りに進んでいる。市場では「投資家の失望感は大きく、7~8月に上海総合指数は2000ポイント前後まで下落する」(外資系証券)と悲観的な見方も根強い。果たしてIPOが終わった後の上海市場がどうなるのか、注目が集まりそうだ。
【産経主張】大量生活保護申請 食い物にされている日本
誰がみても怪しいと感じるはずだ。
2年前に帰国した中国残留孤児の老姉妹を介護するため、と親族と称する中国人48人が、5月から6月にかけて集団で日本にやってきた。在留許可を受けると、すぐさま大阪市に生活保護を申請したのだ。
この時点で、あるいは入国の段階で、来日の狙いを疑うべきだが、お役所はそうは考えなかったらしい。法律にのっとり、申請に不備はないからと32人に生活保護の受給を認めた。6月分として既に26人に計184万円が支払われ、7月分はさらに6人を加えて計241万円にもなる。生活保護費は日本国民の税金である。あまりにも審査が甘すぎる。
入管難民法は「生活上、国または地方公共団体の負担となる恐れのある者は上陸を拒否する」と規定しており、入国審査の際には生活を支える身元引受人が必要だ。今回の中国人たちも第三者の身元引受人が用意されていたが、1年以上の在留資格を得た直後に、この身元引受人が扶養を放棄したという。ここからして不自然だ。
外国人の場合、在留資格があり要保護状態であれば生活保護法を準用するとの国の通達がある。これも問題だが、申請を受けた大阪市は形式的に要件が整っていれば受理せざるをえないという。お役所仕事というしかない。
最近、路上生活者らに生活保護を受けさせてピンハネする貧困ビジネスが相次いで摘発されている。今回のケースも、組織犯罪的な生活保護費の不正受給が疑われ、大阪府警も注目している。
大阪市は生活保護の受給率が全国でも群を抜いて高く、受給者は4月現在で14万1672人、市民の20人に1人に達する。外国人の受給者も1万人を超えた。しかも毎月3千件前後の新たな申請があり、審査に十分な人手と時間がかけられないのが実情なのだ。そこに貧困ビジネスがつけこみ、さらに申請が増加する悪循環だ。
生活保護は困窮者に最低限の生活を保障する最後のセーフティーネットというが、このままでは制度そのものが破綻(はたん)しかねない。
大阪入国管理局は今回の中国人グループの入国経緯について再調査を決めた。在留許可の取り消しも含め厳しく対処してほしい。
政府は情報通信技術(ICT)の活用を促すため、各省庁にまたがる規制の見直しに乗り出す。省庁間の規制の違いなどで医療や教育など新しい分野での利用が阻まれるケースがあるからだ。総務省はブロードバンド(高速大容量)を使ったICTサービスの利用を全世帯に広げることで、12兆3千億円の経済効果を生み出せるとみている。
総務省が関係する省庁との調整に近く着手し、2011年の通常国会にも各省庁が所管する規制の見直しを盛り込んだ「ICT利活用促進一括法案」(仮称)を提出する方針だ。
たとえば過疎地への遠隔医療は、厚生労働省が所管する医師法が対面診療を原則としていることがネックとなっている。情報端末を使う「電子教科書」も、文部科学省が所管する法規制が壁になっており、「教科書」として認められない。海外で導入が広がる「データセンター」を誘致するため、現在の建築基準法の改正を求める声も上がっている。
総務省はこうした規制が見直されて医療や教育分野などでICTの利用が進めば、利用者への還元効果が大きいとみる。診察の事前予約や医療の最適化が進むと、生産性の向上や医療費の削減などを通じて利用者に年間1兆5千億円程度の利益が生じると試算する。医療機関など提供者側も約1兆9千億円のコスト削減効果が見込めるという。教育・就労分野では約6千億円、行政サービスなど生活分野では約450億円の利益がもたらされるとはじく。
日本は世帯に占めるブロードバンド網の整備率は9割を超えている。しかし、実際にサービスを契約している割合は6割強にとどまっており、利用拡大が課題。政府の新成長戦略でもICTを新たな技術革新を生む基盤と位置づけ、利用のすそ野拡大を急ぐ。
総務省は全世帯がブロードバンドサービスを利用するようになると、電子商取引や教育サービス、音楽・映像の購入など個人消費を増やす効果があると分析。利用者への調査をもとに個人消費の増加率を求め、8兆7千億円程度の新規需要を創出できると推計している。部品や素材メーカーなど関連業界への影響を織り込んだ波及効果(3兆6千億円)を合わせると消費押し上げによる経済効果は12兆3千億円になり、名目国内総生産(GDP)を1.5%押し上げるという。
日立・三菱重・三菱電、水力発電機事業を統合
来年新会社、海外を共同開拓
日立製作所と三菱重工業、三菱電機は水力発電機器事業を統合する。2011年に新会社を設立、3社の事業を集約する。技術や営業ノウハウなど3社の経営資源を組み合わせて大型案件の入札で提案力を高め、海外市場を共同開拓する。水力発電は国内で大型案件が出尽くす一方、海外では二酸化炭素(CO2)を排出しない発電として、新興国を中心に新設計画が相次ぐ。3社連合は高い技術力により、受注で先行する海外勢を追撃する。(関連記事企業1面に)
日立は水車や発電機など、水力発電システムの主要機器を一貫して生産する。一方、三菱グループ2社は三菱重工が水車を、三菱電機が発電機を担当する分業体制を敷く。3社とも高出力、高効率で、出力調整もできる大型設備を得意とする。
統合新会社の売上高は海外事業も含め300億円程度となり、国内最大手の東芝と並ぶ規模となる。3社は余剰電力を使ってダムに水をくみ上げ、必要なときだけ発電するシステムを得意としており、世界に売り込む。水力発電は案件ごとに規模や技術方式が異なるため、設計やエンジニアリング分野を含めて統合。海外の大型案件について最適なシステムを構築、受注を目指す。
国内の水力発電機器市場は年間300億円規模。大型設備は東芝と日立、三菱グループ2社が市場を分け合ってきた。だが、国内は利用可能な水資源の約7割が開発済み。大手が得意とする大型設備は新規案件がほとんどなく、各社とも補修などで事業継続しているのが現状。日立、三菱2社とも水力発電事業の売上高を公開していないが、それぞれ年100億円前後とみられる。
一方、海外では地球温暖化防止に役立つ発電手段として水力発電が再評価されている。次世代送電網(スマートグリッド)に組み込んで総発電量の変動を少なくする機能が注目されている。利用可能な水資源の2割強しか開発されておらず、水資源が豊富なアジアや北米、中南米で安定した成長が見込める。水力エネルギー需要の伸びは年2~3%と、総エネルギー需要の伸び(1.5%)を上回る。
現在、年5000億円規模の世界市場は独フォイト・ハイドロ、仏アルストム、オーストリアのアンドリッツの欧州3強が過半を押さえる。東芝も海外市場開拓を急ぐが、日本勢は総じて出遅れている。日立、三菱とも単独で海外市場を開拓してきたが、連合を組み競争力を高める。
日立と三菱重工は00年に製鉄機械部門を統合した。社会インフラ部門は国内市場に多くのメーカーがひしめき、消耗戦を繰り広げる品目が多い。海外では新興国を中心に旺盛な需要が見込めるため、提携や事業統合などで市場を開拓する動きが、他の製品や企業にも広がる可能性が高い。
LG・サムスン、インド家電市場高価格帯に照準
【ニューデリー=長沢倫一郎】インドで韓国家電メーカーのLG電子とサムスン電子が高価格帯製品の生産・販売に乗り出した。LG電子は薄型テレビの増産体制を築き、サムスン電子は映像を立体的に見せる3D(3次元)対応テレビの現地生産を開始。中間層の所得増をにらみ高価格帯製品を拡充し、同分野が得意な日本企業の追い上げをかわす。
LG電子の印現地法人の慎文範社長によると、LG電子は今後3年間で計3億ドル(約270億円)を投資する。首都ニューデリー近郊のウッタルプラデシュ州グレーターノイダと西部マハラシュトラ州プネの2カ所にある工場を増強する。
LGはテレビで1台7000ルピー(1万4000円)前後のブラウン管型を主力としてきたが、7万ルピーを超える薄型テレビも販売。冷蔵庫でも高価格帯の4万ルピー超の新製品を投入し、「5年後には高機能・高価格帯で3割超のシェアを獲得する」(慎社長)という。
同社はテレビ、冷蔵庫、エアコンの3部門でシェア首位(2009年度上半期)を走る。2010年の売り上げ目標を前年比30%増の1700億ルピーに設定。その後も年率2割のペースで売り上げを伸ばす計画だ。同社が予定する3億ドルの投資は、パナソニックがエアコン工場の新設で計画している対印投資約150億円の2倍に近い。
サムスン電子は4月に液晶やプラズマなど異なる技術で10モデルの3D対応テレビを一斉に発売。ウッタルプラデシュ州ノイダの工場で現地生産を開始した。インドで最初に3D対応テレビを投入した宣伝効果をテコに、10年の薄型テレビの販売台数は昨年の約2倍の120万台を目指す。
同社はエアコンの現地生産体制も急ピッチで拡張。昨年11月に南部タミルナド州スリペルムブドゥールの工場で年産能力60万台のラインを増設したのに続き、今年2月にはノイダ工場でも同60万台のラインを稼働させた。最新型のエアコンにはインドで頻発する電圧の急激な変動を吸収して故障を防ぐ機能を付けた。
インドの家電メーカーの業界団体CEAMAによると09年度(09年4月~10年3月)の印家電市場の規模は約4000億ルピー。中間所得層の拡大を追い風に、今年度は30%の成長が見込めるという。年収7万1000ルピー~28万5000ルピーの中間所得層は08年度の時点で約1億4000万世帯にのぼり、年収は09年度中に8%程度増えたもよう。
韓国の2社はこれまでインドでボリュームゾーン(普及価格帯)を集中的に開拓し、エアコン、冷蔵庫、テレビでそれぞれ2~3割のシェアを獲得している。今後は日本企業が得意としてきた高機能・高価格帯の攻略で地位固めを狙うが、巻き返しを目指すパナソニックなど日本勢は逆にボリュームゾーンに照準を合わせる。成長する新興国市場インドでの日韓の競争が激しくなりそうだ。
不採算の半導体事業、米メーカーに売却へ 三洋、リストラ加速で再出発
三洋電機が不採算の半導体事業を、米国の半導体メーカー、オン・セミコンダクター社に売却する方針を固めたことが2日、わかった。売却額は数百億円規模で調整しており、7月中の合意を目指す。業績不振の“元凶”だった半導体事業を切り離すことで、経営資源を得意の電池事業に集約し、パナソニック傘下での再出発を本格化させる。
売却するのは、三洋の完全子会社の三洋半導体(群馬県大泉町)で、全株式を譲渡する予定。三洋側は社員の雇用継続を求めている。米通信機器大手・モトローラの半導体部門が独立して発足したオン社は、福島県に製造拠点があり、日本での事業を拡大する狙いがある。
三洋半導体は、アナログとデジタルの領域が融合した技術に強みがあり、主にAV(音響・映像)機器向けの製品を生産・販売している。パナソニックはデジタル家電向けなどの最先端の半導体製品を手掛けており、三洋とのシナジー(相乗効果)は得られないと判断、事業撤退の対象としていた。
三洋の半導体事業は、平成22年3月期の売上高が995億円で、営業損益は71億円の赤字。三洋の佐野精一郎社長は半導体やモーターを念頭に、競争力の乏しい事業について、9月末までに今後の方向性を決める意向を示していた。
もともと三洋は、19年にも投資ファンドなどと半導体事業の売却を協議したが、価格面などの条件で折り合えず頓挫した経緯がある。それだけに、オン社への売却交渉が最終調整に入ったことで、懸案事項の解消が期待される。
三洋が昨年末にパナソニックの子会社になって以降、事業売却を決めるのは物流部門に続き2例目。競争力強化に向け、リストラを加速させる。
伊藤忠、リチウムを低コストで採取 米で事業参加
地中の熱水から世界産出量の2割生産、EV電池向け
伊藤忠商事はレアメタル(希少金属)の代表品種であるリチウムを大量生産する事業に参加する。米カリフォルニア州の地中の熱水に含まれるリチウムを独自の技術で低コストで大量に取り出し、主に電気自動車(EV)に不可欠な車載電池向けに供給する。3~4年後に現在のリチウム世界生産の2割弱にあたる年1万6000トンを生産する。
この技術は米エネルギー省傘下の国立研究所が研究してきたもので、伊藤忠は同研究所から分離し、事業化に取り組んでいるシンボル・マイニング社に約20%を出資した。出資額は数十億円とみられ、インドを除くアジアに販売する独占権を取得した。
カリフォルニア州南部のソルトン湖近くの地熱発電所でリチウムを作る。発電に使う地下の熱水に含まれるリチウムを特殊なイオン交換技術で回収。脱水・濃縮して出荷する。リチウムはEV普及で需要拡大が見込まれるが、供給は南米の塩湖に偏っており、安定調達が課題になっている。
シンボル社は熱水の量や採取するリチウムの品質を既に確認しており、高品位を求められる車載電池向けを生産できるという。今後は量産に向けた試験工場を設置する計画だ。
レアメタルの供給確保への取り組みを進めている経済産業省も今回の計画を後押しする方針。伊藤忠は今回の投資で、経産省所管の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の融資を受ける予定だ。
スクランブル
携帯ゲームとテレビ、共栄関係の持続性は
携帯ゲーム運営会社とテレビ局が急速に距離を縮めている。携帯ゲーム会社は交流サイト集客のためテレビコマーシャルを展開。会員獲得に成果を出している。テレビ局から見ると、にわかに重要スポンサーに浮上している格好だ。ただ、相互依存ともみえるその関係は、危うさをはらんでいる可能性もある。
携帯ゲーム企業の広告費はこの広告不況下、急増している。交流サイト「GREE」を運営するグリーの場合、2010年6月期の広告宣伝費は前の期の3倍弱の60億円。「モバゲータウン」のディー・エヌ・エーは1~3月に約15億円をつぎ込んだ。大半はテレビ向けとみられる。
携帯ゲームは釣りや海賊などのゲームをテレビで周知し、毎月数十万人のペースで会員数を伸ばしている。ゲームは基本的には無料だが、よりゲームを楽しむための「アイテム」の販売による課金収入が収益につながる仕組みだ。
会員数の拡大で、ディーエヌエの10年3月期の連結純利益は43%増の113億円と、最高益を更新した。グリーの10年6月期も単独税引き利益が過去最高になりそうだ。
「我々がCMを奪われると言われた媒体がテレビに(広告を)出してもらえるのは良いこと」。日本テレビ放送網の細川知正社長はネット企業全般を頭においてか、こう話す。
日テレは2月から5月まで、スポット広告が前年同月に比べ2ケタ伸びた。フジ・メディア・ホールディングスも5月が11%増。6月も2%の伸びとなりそう。
番組提供のタイム広告の回復が遅れ、加えて番組製作費の削減余地も少なくなるなかで、ひとり気を吐くスポット広告。なかでも携帯ゲーム広告の底上げ効果は無視できないとみられ、「交流サイトの広告がなければスポット広告は前年割れしかねない」と、あるキー局幹部は漏らす。
ただ、この共栄関係の持続性はどうだろうか。気にかかるのは同じキー局幹部が、「瞬間的に会員数を伸ばせても継続的に続くビジネスかは疑問」と、携帯ゲームの現在の隆盛をやや冷めた目で眺めていることだ。
携帯ゲームは不況下の手軽なレジャーとして需要が拡大してきた面があり、景気の波次第では、勢いが鈍るとの見方がある。
加えて、消費者の声も懸念材料。
日本広告審査機構(JARO)や国民生活センターには、無料オンラインゲームに関する相談が相次いでいる。
国民生活センターには「無料と宣伝していたのに、高額な利用料を請求された」などといった相談が毎月50件程度寄せられている。センターは昨年12月、報道向けにその旨発表したが、以降も相談件数は大きくは変わっていない。
「1つ5000円のアイテムを娘が大量に購入していた」。「請求書が9万円を超えた」。センターにはこうした相談もあるという。
グリーもモバゲーも会員はそれぞれ2000万人ほど。両社ともに、利用者1人当たりがどの程度の料金を払っているかや、一定額以上の利用者、あるいは無料利用者の比率などの開示がないので実態はよくわからないが、「会員すべてがまんべんなくというよりは、一部の会員が大量にお金を支払っている」(外資系証券のアナリスト)とみる向きもある。
懸念されるのは、テレビ広告効果の後押しもあって会員が増えることで、未成年などの高額利用料の問題も一段と増加し、社会の関心も高まっていくような状況だ。そうなれば携帯ゲームビジネスの展開に、向かい風となることも考えられる。
ビジネスの規模が拡大するにつれ、携帯ゲーム運営会社は生活センターに相談が持ち込まれるような一部のケースに注意深く対処するのはもちろん、それと平行し、常識的な水準の幅広い課金という事業モデルで高収益を実現するという課題の重要性が増してきているようにみえる。
スクランブル
上海市場、大型IPOであく抜け感?=上海
「まるで2008年相場の再来。投資チャンスは必ずやってくる」。上海総合指数が年初から半年で27%下落し、悲観的な股民(個人投資家)が多い中、一部では上昇局面をうかがう声が聞こえ始めた。中国農業銀行が15日に上海市場に上場し、悪材料が一巡。さらに社会不安を警戒する中国政府が株式相場や景気刺激策に動くはず……。果たして股民らの期待通りになるだろうか。
上海株式市場は年初から3000ポイント前半で推移していたが、中国政府が4月に2軒目のマンション購入時の頭金の引き上げなど不動産取引規制の発表後に下げ足を速めた。地合いが悪い中、7月に上場する中国農業銀による資金調達が2兆円前後と世界最大の新規株式公開(IPO)になるとの見方が広がり、相場の重荷になった。
一方、08年。金融引き締めに加え、年初に中国生保大手の中国平安保険が発表した1500億元(約1兆9500億円)と超大型増資計画で需給悪化懸念が拡大。上海総合指数は半年で約5割下落した。08年と10年の株式相場の置かれた環境は似通っている。
中国経済を取り巻く環境も同じだ。
08年は米リーマンショックで外需減が追い打ちとなり、上海総合指数は秋に一時1700ポイント台まで下落した。10年も欧州連合(EU)の金融危機再燃や米国経済の鈍化など外需の先行きに暗雲が立ちこめている。中国人民銀行(中央銀行)が6月に実施した人民元の弾力化で人民元は2日終値で1ドル=6.77元台と05年7月の元切り上げ後の最高値水準まで上昇。今後も上昇が続けば輸出企業の採算を直撃しそうだ。
中国政府は経済の変調に対し、08年は年末にインフラ投資を中心とした4兆元(52兆円)の大型景気刺激策を発表。株式相場は年明けにかけて急回復し、3000ポイント台まで戻した。市場では「状況が同じだけに、秋には大型の景気対策が発表されてもおかしくない」(外資系運用会社幹部)との期待がでている。
実際、中国政府は危機感を強めている。6月末、温家宝首相は経済学者や企業関係者を集めた座談会を開催。経済の現状についてヒアリングするとともに政策提案を求めた。提案内容は明らかになっていないが、温首相は会合で「国内外の経済状況は複雑になっている」との認識を示した。不動産を中心に引き締め一辺倒だった春先に比べると、温首相の発言は変わってきた。
ただ、違う点もある。中国平安の増資計画は結局、市場からの猛反発を受けて頓挫した。一方、中国農業銀のIPOは予定通りに進んでいる。市場では「投資家の失望感は大きく、7~8月に上海総合指数は2000ポイント前後まで下落する」(外資系証券)と悲観的な見方も根強い。果たしてIPOが終わった後の上海市場がどうなるのか、注目が集まりそうだ。
【産経主張】大量生活保護申請 食い物にされている日本
誰がみても怪しいと感じるはずだ。
2年前に帰国した中国残留孤児の老姉妹を介護するため、と親族と称する中国人48人が、5月から6月にかけて集団で日本にやってきた。在留許可を受けると、すぐさま大阪市に生活保護を申請したのだ。
この時点で、あるいは入国の段階で、来日の狙いを疑うべきだが、お役所はそうは考えなかったらしい。法律にのっとり、申請に不備はないからと32人に生活保護の受給を認めた。6月分として既に26人に計184万円が支払われ、7月分はさらに6人を加えて計241万円にもなる。生活保護費は日本国民の税金である。あまりにも審査が甘すぎる。
入管難民法は「生活上、国または地方公共団体の負担となる恐れのある者は上陸を拒否する」と規定しており、入国審査の際には生活を支える身元引受人が必要だ。今回の中国人たちも第三者の身元引受人が用意されていたが、1年以上の在留資格を得た直後に、この身元引受人が扶養を放棄したという。ここからして不自然だ。
外国人の場合、在留資格があり要保護状態であれば生活保護法を準用するとの国の通達がある。これも問題だが、申請を受けた大阪市は形式的に要件が整っていれば受理せざるをえないという。お役所仕事というしかない。
最近、路上生活者らに生活保護を受けさせてピンハネする貧困ビジネスが相次いで摘発されている。今回のケースも、組織犯罪的な生活保護費の不正受給が疑われ、大阪府警も注目している。
大阪市は生活保護の受給率が全国でも群を抜いて高く、受給者は4月現在で14万1672人、市民の20人に1人に達する。外国人の受給者も1万人を超えた。しかも毎月3千件前後の新たな申請があり、審査に十分な人手と時間がかけられないのが実情なのだ。そこに貧困ビジネスがつけこみ、さらに申請が増加する悪循環だ。
生活保護は困窮者に最低限の生活を保障する最後のセーフティーネットというが、このままでは制度そのものが破綻(はたん)しかねない。
大阪入国管理局は今回の中国人グループの入国経緯について再調査を決めた。在留許可の取り消しも含め厳しく対処してほしい。