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ソフトバンクが23万の純増、iPhone 4効果も――2010年6月契約数
 電気通信事業者協会(TCA)は7月7日、2010年6月末の携帯・PHS契約数を発表した。携帯電話の累計契約数は1億1371万6400。夏商戦向けの新モデルが相次いで登場したことも手伝って、各携帯キャリアとも順調に契約数を伸ばした。
 純増トップとなったのは、22万9500の純増を獲得したソフトバンクモバイル。6月24日に登場したiPhone 4や、5月に販売を開始したiPad 3Gモデル、従来モデルのiPhone 3GSの販売が好調に推移し、純増数を伸ばした。こうしたアップル効果も手伝って、同社の純増数は3カ月連続で20万超となっている。
 16万4600の純増で2位となったNTTドコモは、割引キャンペーンを展開しているデータ通信端末や、父の日効果で需要が高まったフォトフレームが好調だったことに加え、夏モデルのラインアップも出そろったことから純増数を伸ばした。番号ポータビリティについては、1万7900の転出超過となったものの、前月の-2万4900からは改善されている。iPhone 4の影響については、6月はほとんどなかったと見ているが「今後、注視していく」(ドコモ)とした。
 3位は7万1500の純増を獲得したイー・モバイル。他社からもWi-Fiルータ製品が登場し、このカテゴリーの製品に対する認知が広がったことや、iPad/スマートフォンなどのWi-Fi搭載デバイスが登場し、同社のモバイルWi-Fiルータ製品「Pocket WiFi」に注目が集まったことなどが、純増の伸びを支えたという。
 純増5万4700のKDDIは、待たれていたスマートフォンやフォトフレーム、モバイルWiMAX+3Gのデータ通信カードを投入したものの、投入時期が6月下旬に集中したことから、契約数の伸びにはつながらなかった。ただ、スマートフォンの出足については、「スマートフォンの登場をお待ちいただいていた男性ユーザーを中心に、好調に推移している」(KDDI)といい、7月の巻き返しを狙う。
 番号ポータビリティは、ソフトバンクモバイルのみ転入超過となった。新モデルのiPhone 4が登場し、「先月に続いて、番号ポータビリティでiPhoneに乗り換えるケースが多かった」(ソフトバンクモバイル)ことが転入超過につながったという。
 ウィルコムのPHSは6万600の純減となったが、5月の純減(-9万4200)からは改善が見られた。依然として厳しい状況が続く中、新モデルの投入や、月額1450円でウィルコム端末への通話が24時間無料となり、他社ケータイやPCへのEメールの送受信も無料で利用できる「新ウィルコム定額プランS」のキャンペーンで純減に歯止めをかけたいところだ。
 UQコミュニケーションズの6月の純増は2万1300件で、総契約数は21万3900件。サービス開始から1年で累計20万台を超えた。UQ WiMAXの対応製品については6月下旬から、auのWiMAX対応WINデータ通信カードが発売されており、7月の純増に期待がかかる。


2015年のタッチパネル世界市場、09年比3.6倍 民間調べ
 調査会社のシード・プランニング(東京・台東)は7日、「タッチパネル」の世界市場の規模が2015年には145億ドル(約1兆2600億円)と09年比3.6倍に急拡大するとの調査結果をまとめた。直感的な操作性が人気を集め、米アップルの高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」をはじめとする携帯端末や電子書籍端末などの販売が伸びるとみている。
 タッチパネル市場はこれまで銀行のATMや駅の券売機など業務用機器を中心に拡大してきたが、今後は一般向け機器の普及にも弾みがつくことが見込まれている。
 タッチパネルは検知方式で2種類に大別される。圧力に反応する「抵抗膜方式」のパネルはカーナビなどに利用されている。iPhoneなどが搭載するのは静電気の変化を検知する「静電容量方式」のパネル。複数の指で同時に操作する「マルチタッチ」に対応している。



半導体需要、世界で拡大 5月売上高48%増で最高更新
新興国けん引、年後半は不透明感も
 【シリコンバレー=奥平和行】世界の半導体市場の増勢が続いている。米国半導体工業会(SIA)は6日、5月の世界半導体売上高が前年同月比48%増の246億5000万ドル(約2兆1600億円)にのぼり、単月では2カ月連続で過去最高を更新したと発表。サムスン電子が7日発表した4~6月期の連結営業利益の推計も過去最高水準にある。新興国需要がけん引する構図でIT(情報技術)産業は当面、好調を維持しそうだが、一部地域の景気減速懸念など年後半にかけては不透明要因もある。

 5月の売上高はパソコンや携帯電話に加え、産業機器や自動車の販売拡大が貢献、235億8000万ドルだった4月を上回った。地域別の内訳は米州が53%増の42億7000万ドル、日本が35%増の37億2000万ドル、欧州が44%増の31億5000万ドル。アジア太平洋(日本を除く)が51%増の135億1000万ドルとなり全体の半分強を占めており、ジョージ・スカリーズSIA会長は6日、声明で「中国やインドなど新興国が情報・通信機器の販売拡大を後押ししている」と指摘した。
 2010年の世界販売台数はパソコンが前年比20%、携帯電話が10~12%増える見通し。機能の複雑化に伴って半導体の搭載が進んでいる産業機器や自動車の販売増も寄与している。SIAは6月、10年通年の世界半導体売上高の予測を従来の2421億ドルから2905億ドル(前年比28%増)に上方修正しており、スカリーズ会長は6日の声明で「現在の水準が続けば予測に到達する」と分析した。
 半導体市場は欧州での減速懸念が残るものの、リーマン・ショック後にけん引役が新興国に切り替わり、パソコンや薄型テレビ、携帯電話など幅広い電子機器向けに半導体需要の拡大が続く。記憶装置として使われるDRAMやNAND型フラッシュメモリーなどは「世界的な携帯電話市場の広がりが追い風」(東芝の半導体担当役員)だ。
 なかでも新興国のパソコン販売増加の効果が大きかったDRAMはスマートフォン、薄型テレビ、ブルーレイ・ディスクレコーダーなど「パソコン以外の市場が花開いてきた」(エルピーダメモリの坂本幸雄社長)。
 システムLSI(大規模集積回路)、各種アナログ半導体などあらゆる分野で半導体生産が復調しつつあり、大手各社は一斉に増産に着手した。
 ただ、半導体市況はマクロ経済の影響を受けやすい。スカリーズSIA会長は6日、世界経済の減速懸念について「政府債務などの問題の影響はこれまでのところ出ていないようだ」としたが、今後は先進国での政策効果がはがれるため「クリスマス商戦後は見極めづらい」(東芝半導体担当役員)との見方もある。
 業界アナリストの間では、来週決算を発表する予定の米インテルなど半導体大手の業績の行方を見守りながら「年後半にかけて状況を注視する必要がある」との声も出ている。



「社内公用語を英語にするくらいならC言語にしてやる!!」――スク・エニ和田社長
 「社内公用語を英語にするくらいならC言語にしてやる!!」――と、スクウェア・エニックス(スク・エニ)の和田洋一社長が7月7日Twitterでシャウトしている。楽天やユニクロが社内公用語の英語化を発表し、話題になったことを受けた発言のようだ。このつぶやきは100人以上に公式RTされるなど注目を集めている。
 スク・エニは2010年3月期(09年4月~10年3月)のゲーム販売本数のうち、欧州と北米で56%を占めるなど、海外売上高比率が比較的高い企業。英Eidosを買収し、今後の戦略の1つとしてグローバル化を掲げている(参考資料)が、社内公用語を英語に……とはならないよう。何気ない一言だが、スク・エニというグローバル化を実際に進めている企業のアイデンティティを経営トップがどう考えているかもうかがえる。
 フォロワーからの「いっその事0か1のみで話せばいいのに」という返信には「無理。。」と答えている。



サイバーエージェントがアプリ開発の新会社 新卒社員を役員に抜てき
 サイバーエージェントは7月7日、スマートフォン向けアプリを開発する100%子会社「アプリボット」を設立した。取締役に、今年4月にサイバーエージェントに新卒で入社した23歳の卜部宏樹さんを抜てきした。
 サイバーエージェントの携帯電話向けサービスの運営ノウハウを生かし、iPhoneやAndroid向けアプリを企画・開発する。資本金は1500万円。代表取締役社長には、サイバーエージェントの日高裕介専務が就任した。
 新会社設立は卜部さんが提案して実現した。サイバーエージェントはこれまでも子会社の役員に若手社員を起用することがあったが、23歳での就任は最も若いという。



カジノ都市OSAKA始動 橋下知事「アジア対抗、利益は福祉に」
 カジノ特区の指定を目指す大阪府が、近く有識者らでつくる「大阪エンターテイメント都市構想推進検討会」を設置し、カジノ誘致に向け本格始動させることが7日、分かった。橋下徹知事は「アジアとの都市間競争に打ち勝つためにカジノは必要。利益は福祉などに回せばいい」と述べ、強い意欲を示している。カジノ誘致には大阪府以外にも、多くの自治体が名乗りを上げており、誘致合戦の激化も予想されている。
 検討会には、府市の関係者のほか、大阪府立大や大阪市立大の研究者、市長会会長らが参加。府内にカジノを含めた統合型リゾート施設を設置する場合の課題や対応について協議する予定で、9日に初会合が開かれる。
 府内の設置候補地は、大阪南港や堺市などのベイエリア地区。知事は民間投資でカジノを設置し海外からの観光客を呼び込んだうえで、税収を教育や福祉の財源に充てる意向だという。
 カジノ合法化に向けた法案については民主、自民などの超党派の議員連盟が4月に発足。秋の臨時国会に議員立法での成立を目指している。民主党原案では当面の設置先を2カ所に絞り、有力候補地として東京都、沖縄県、北海道が挙がっているという。
 府の検討会はこうした候補地を抑え、大阪にカジノ誘致を実現することが目的。橋下知事はこれまで、早期の法制化を求めていたほか、今年1月にシンガポールを訪問した際は、実際にカジノを含む大型リゾート施設の視察も行っている。



自工会会長、円高「政府は対策を」 国内生産への影響を懸念
 日本自動車工業会の志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)は7日の定例記者会見で、為替相場の円高について「この円高状態が続けば、国内生産に響く。ネガティブな影響が出ないよう、政府はなんらかの対策を打ってほしい」と述べた。

 国内は9月末に新車の買い換え補助金制度が打ち切りとなるため、新車販売の減少が懸念されている。さらに円高基調が続けば「国内販売の反動減と輸出の減少がダブルで自動車産業をおそう。回復基調にある日本の景気に影響を与えることは避けなければならない」と強調した。

 自動車メーカーが今期の業績予想の前提としている為替レートは1ドル=90円。志賀会長は「如実に日本からの輸出の採算が悪化する」と危機感を表明した。輸出先となる米国市場についても「米景気の回復はスローながらも順調とみていたが、回復に波があるようだ」と慎重な見方を示した。



消費増税なら自動車取得税は廃止を 自工会会長が要望  
 日本自動車工業会の志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)は7日の定例会見で、消費税率引き上げ論議に関連し、「消費税との二重課税の問題がある自動車取得税は確実に廃止するべきだ」と述べ、一体的な税制改革を求めた。
 志賀会長は、消費税増税には財政再建の観点から賛成する考えを示す一方で、「(自動車の)価格アップにはつながらない状態を想定している。消費税率の引き上げだけで、自動車諸税の簡素化が置き去りにされてはならない」と、くぎを刺した。また、民主党政権が先の衆院選で公約していた自動車諸税の暫定税率廃止が実行されなかったことについては「まことに残念」と述べた。
 政府の新成長戦略に盛り込まれた法人税の実効税率引き下げについて、「日本は約40%と極めて高い。競争力強化のために、国際的水準である25~30%への引き下げをお願いしたい」と強調。参院選のマニフェスト(政権公約)で、複数の政党が引き下げを掲げていることを歓迎した。



仙谷官房長官「ケインジアンにもマネタリストにもならず」
 仙谷由人官房長官は7日昼、日本外国特派員協会が開いた講演会で「ケインジアンにもマネタリストにもならない。そういう発想で物事を見ている」と述べ、柔軟に経済情勢を分析する姿勢を示した。

 1990年に旧社会党から初出馬したことについては「89年のベルリンの壁崩壊で(資本主義と社会主義の)勝負が一気についた。そのときから『絶対主義』から『相対主義』というか、主義者にならないことが、この世界では重要と考え、現在に至っている」と説明。「政治をやる以上、孤立を恐れて連帯を求めないといけない」とし、現実に合わせて実利を求めることが必要との認識を示した。



サムスン電子4~6月、営業益87%増 過去最高水準に
半導体がけん引
 【ソウル=尾島島雄】韓国のサムスン電子は7日、2010年4~6月期の連結営業利益が前年同期比87.3%増の5兆ウォン(約3600億円)となったもようだと発表した。高値圏で推移する半導体メモリーが業績をけん引。液晶パネル、薄型テレビ、携帯電話の主力部門がバランス良く利益をあげたとみられ、日本の電機大手と比べ、抜きんでた利益水準を維持している。

 営業利益は10年1~3月期と比べても13.4%増。連結売上高は前年同期比13.8%増の37兆ウォンとしており、直前期比では6.8%増となる。

 1~3月期から国際会計基準(IFRS)を適用しており、過去にさかのぼった正確な比較はできないが、営業利益は過去最高水準となった。4月にデジタルカメラ事業を手掛けるサムスンデジタルイメージングを吸収合併したが、以前から販売をサムスン電子が担当していたため、連結業績への影響は軽微としている。



米マイクロソフトが小規模な雇用削減を計画=報道
 [7日 ロイター] 米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、関係筋の話を引用し、米マイクロソフトが早ければ週内にも小規模な雇用削減を予定していると報じた。
 正確な削減規模は不明だが、今回の削減は昨年発表された約5000人の雇用削減より規模がずっと小さいという。
 また、削減は会社全体で行われる見通しという。
 報道に対するマイクロソフトのコメントはこれまでのところ得られていない。



私設株式市場、野村系が国内開設 高速取引で東証から顧客奪回
 野村ホールディングス傘下で、証券取引所を介さずに株式の売買を行う私設取引システム(PTS)を欧州で運営するチャイエックスは7日、7月下旬に国内でもサービスを始めると発表した。国内のPTSは低迷が続いているが、同社では注文処理速度を高めることで、顧客を取り込む考えだ。
 現在、国内ではSBIジャパンネクスト証券やマネックス証券など6社がPTSを運営している。09年の売買代金は前年比4割増の約3兆円とジャスダック証券取引所とほぼ同じ規模にまで迫った。ただ今年に入り、前年比3割減にまで落ち込んでいる。
 その主な要因が東京証券取引所が今年1月に導入した株式売買の新システム「アローヘッド」の稼働だ。アローヘッドは、注文受付処理が平均2ミリ秒と、従来の約1000分の1程度にまで大幅に高速化。全銘柄の平均約定件数は導入前の200~300回から、最大400回超に増えた。PTS市場は、取引所の株式売買の補完的役割を担っていたが、アローヘッド稼働によって、短時間に大量の取引を行うヘッジファンドの取引が東証に流れた。
 チャイエックスはアローヘッドの注文処理速度の4倍に当たる0.5ミリ秒に速め、東証に流れていたヘッジファンドの奪還を目指す。証券会社から受け取る手数料も東証よりも安く設定する。取引時間は午前8時~午後4時。



京都新聞社説
二重課税違法  速やかに公平な返還を
 年金形式で受け取る生命保険金をめぐり、受け取るたびに所得税を課すのは二重課税だとして長崎市の女性が国に課税取り消しを求めた訴訟の上告審判決があった。最高裁は「違法な二重課税」とし、女性の勝訴が確定した。消費者感覚に沿った結論といえよう。
 判決は、国税当局がこれまで当たり前のように徴収してきた生命保険金の課税のあり方に見直しを迫る。早急に制度を是正し、同じような事例には誠実に返還を進めてほしい。
 年金特約付き生保は、保険加入者の死亡後、遺族が保険金を一時金と年金に分けて受け取れる仕組み。
 女性の夫は、年230万円の年金が10年間受け取れる生保に契約。女性は夫が死亡した8年前、生保会社から一時金と初年分の年金を受け取った。この年金に、相続税に加えて所得税が課せられたため、「相続財産に所得税を課さないとする所得税法に反する」と訴えた。
 原告の訴えを認めた一審に対し、二審は「年金受給権と毎年の年金は法的性質が異なり、二重課税ではない」と国税側の主張を認めていた。
 最高裁は「年金総額のうち初回の支給分は相続税の課税対象。同一のものに二重に課税するのは違法」と判断した。
 年金型生保は、1990年代の保険の自由化を機に契約が増加した。私的年金の一つで、遺族が一度に多額の保険金を受け取って管理するより、定期収入とする方が生活設計しやすいことや、公的年金に対する不安が人気の背景にあると言われる。現在、20社以上が商品を販売している。
 国税当局は年金型生保に、40年以上前から課税してきた。
 生保の販売現場では以前から「二重課税ではないか」との声や、一括か分割かで税額に差が生じる不公平が指摘されていた。既に、遺族が年金を受け取り、同じように課税された契約は少なくとも数万件に上る見込みだ。
 判決で、過去に支払った所得税を国税当局に還付請求する動きが出るだろう。国は実態把握を急ぎ、まず、公平で実効性のある返還を進めるための方法や工程を詰めなければならない。
 税法上、誤納した税金を取り戻せるのは最長5年前までだ。しかし、今回のように国に落ち度がある場合は、これを当てはめることが適切とはいえまい。救済範囲の拡大について、専門家を交えた検討が必要だ。
 当面は、市民の問い合わせに答える窓口を設け、生保業界や税理士などの協力も得て、広報に努めてほしい。
 税制は明確な課税方針と公平性が求められる。国は訴訟対象となった保険金の課税方法の見直しはもちろん、二重課税が疑われるケースを洗い出し、適正な課税行政を進める責任がある。
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ドコモ、次世代エクスペリア来春投入、フォーマ端末でも「ドコモマーケット」提供
 NTTドコモは今年度末までに新たにスマートフォン(高機能携帯電話)7機種を投入する。看板モデルである英ソニー・エリクソンの「エクスペリア」の後継機を来春に発売するほか、電子書籍型端末の発売も検討している。また、個人が開発するスマートフォン向けのソフトを、既存の携帯電話に転用できるサービスを11月にも始める。
 今秋から年末にかけて最新の有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)画面を搭載した韓国サムスン電子の「ギャラクシー」のほか、米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」のような電子書籍型端末などを投入する。
 2011年春にはスマートフォンの看板製品であるソニー・エリクソンの「エクスペリア」の後継機も発売する予定だ。
 また、企業などに限られていた「iモード」を使ったソフトへの参入規制を緩和する。個人の開発者が製作したスマートフォン用ソフトを、「iモード」を搭載した従来型の携帯電話向けにも配信できるようにする。



次世代データ通信で設備投資前倒し、NTTドコモ社長の一問一答
 NTTドコモの山田隆持社長は6日、インタビューに応じた。一問一答は次の通り。
 --総務省が6月末、SIMロックの解除を求める指針を打ち出した
 「来年4月から販売する携帯電話端末は原則、SIMロック解除機能を搭載する方向で準備を進める。夏モデル以降になる」
 --「エクスペリア」などのスマートフォン(高機能携帯電話)戦略は
 「市場は全体的に拡大していくだろう。ドコモとしてはシェア5割に近づけたい。スマートフォンは冬モデルでこれまで5機種の投入を予定していたが、7機種程度に増やしたい」
 --携帯電話でも光回線並みに高速の通信速度が可能となる次世代高速データ通信規格「LTE」について、他社に先駆け12月から商用サービスを始めるが
 「5年後に51%のエリアカバー率を目指す。従来は平成22~26年度の5カ年計画で基地局整備に約3500億円投資する考えだったが、これを前倒しし、22~24年度に3千億円程度の投資を行いたい」
 --次世代マルチメディア放送の事業免許取得をめぐり、ドコモ陣営とKDDI陣営が争っており、総務省が今月中にもどちらかに与える方針だ
 「ドコモ陣営には強みが3つある。放送局も出資しているので優良コンテンツを多く集められるほか、インフラ投資を抑えて手ごろな料金が可能なことや対応端末数が多いことだ」



ドコモ主導権狙う、SIMロックの解除 利用者確保で利害対立
 NTTドコモが平成23年4月以降に発売する携帯電話の全機種について、特定の通信会社の回線でしか使えないように制限する「SIMロック」を解除できるようにするのは、他社に先駆けた対応でSIMロック解除への動きを主導する狙いがある。各社が全面的に解除した場合、全国に回線網を持つドコモが有利とされており、ライバルを同じ土俵に上げることで利用者を奪おうとする戦略だ。
 総務省が6月、通信各社に対しSIMロック解除を行うよう指針を策定した後も、ドコモは「利用者の要望があれば」と明確な方針を示してこなかった。
 それが一転して全機種解除を打ち出すとともに、山田隆持社長が各社の共同歩調を求めたのは、各社がSIMロックを一斉に解除すれば、ドコモが他社の顧客を奪えるという自信があるためだ。その背景には、全国に基地局を設置、携帯の無線ネットワークを構築しているドコモは他社よりも「つながりやすい」といわれている事情がある。
 これに対して、周波数や基地局設置で後塵を拝するソフトバンクは解除に消極的とされる。孫正義社長は「端末の値段が4万円以上高くなる」と述べ、解除に対応する端末を2割強にとどめる方針を掲げる。
 一方、米クアルコムの規格を採用しているKDDIの端末はドコモやソフトバンクと互換性がなく、SIMロックを解除しても同じ端末を相互に利用することはできない。
 ただ、KDDIも次世代の高速データ通信規格をめぐっては、ドコモやソフトバンクと同じ「LTE」の採用を決めており、将来的にはドコモなどと同じ規格に軸足を移し、互換性を得られる可能性もある。その場合、ロック解除への対応の遅れが影響する懸念もある。
 大手各社が三者三様の思惑をみせる一方、利用者にとっての恩恵は不透明な面が多い。例えば、ドコモの場合、「iモード」や「iチャネル」など付加価値サービスは、SIMロックを解除しても他社端末で利用できないとされる。
 「利用者の利便は当面、同じ端末で海外のサービスが利用しやすくなることぐらい」(通信事業者)といわれ、総務省が掲げる「料金低廉化」や「新規参入促進」などの効果は期待できそうにない。



(ゲーム新時代 台頭する新勢力)(下)ソフト価格崩壊 無料・交流型が急成長
 米サンフランシスコ中心部のゲームソフト専門店。随所に「SALE」の文字が踊り、日本で5000円以上する「スーパーマリオ」が半値以下の20ドル(約1800円)で売られていた。
50万種類が稼働
 世界最大の市場、米国で横行するソフトの値引き販売には日本のゲームソフト会社も危機感を募らせる。不況の影響もあるが、インターネット上に「無料ゲーム」があふれ消費者がゲームにあまり金を使わなくなった。
 その無料ゲーム市場をけん引するのが、設立から2年弱のジンガ(サンフランシスコ)だ。同社の看板ゲーム「ファームビル」は交流サイト「フェースブック」上で利用できる。農場を経営して規模の拡大を目指す内容で、友人同士で情報を交換しながらゲームを進めていく。米国を中心に1億人がこのゲームを楽しんでいる。
 5億人の会員を抱えるフェースブックでは「ソーシャルゲーム」と呼ぶこうした交流型のゲームが50万種類以上稼働中。プレー料金はほとんどが無料で、ゲームを有利に進めるためのアイテムの販売で稼ぐ仕組みだ。
低コストで開発
 ゲーム制作の手法も従来の家庭用ゲームとは一線を画す。ファームビルは約10人の制作者がほぼ1カ月で開発した。ジンガのマーク・スカッグス商品開発部門長は「とにかく早く制作し利用者の要望に合わせて修正を重ねていく」と説明する。
 一方、日本の家庭用ゲームは「ドラゴンクエスト」など大作になると約200人の制作者が5年以上かけてつくる。それでも最も売れた「ドラクエ9」で420万本。ファームビルの利用者の20分の1以下だ。1本数千円なら巨利を得られるが、日本でも高値販売が続けられるとは限らない。
 実際、ゲームのソーシャル化は日本にも広がってきた。ディー・エヌ・エー、グリーなどゲームを主力とする交流サイトが急成長。ミクシィも加えた大手3社の会員数は約5800万人と1年で3割増えた。ジンガもソフトバンクと提携し日本市場進出を検討中だ。
 ゲームソフト大手ではバンダイナムコゲームス、セガなどが家庭用ゲーム機向けの有力ソフトをミクシィなどで配信。システム開発のドリコムやネット広告のサイバーエージェント子会社など新規参入も相次ぐ。
 身軽なベンチャーなら交流型ゲームの開発費は数百万円。それで人気に火が付けばアイテム販売で毎月1億円以上の収入を見込める。だが大手の多くは高コスト体質から抜け出せず「ヒットしても採算が合わない」(大手幹部)のが実情だ。
 ゲームの作り方や課金の仕方、利用者の囲い込み方――。すべてが大きく変わりつつある。米国のように数十万種類ものゲームがひしめくようになれば、消費者に知ってもらうのにも工夫がいる。ネット時代の変化のスピードにどうついていくか。世界の市場をけん引してきた日本のゲームソフト会社が岐路に立たされている。



ルネサス、ノキアから携帯中核部品事業を買収
 半導体大手のルネサスエレクトロニクスは6日、携帯電話端末世界最大手のノキアから携帯電話に使う通信用中核部品の「ワイヤレスモデム」事業を買収すると発表した。2010年末までに2億ドル(約180億円)で買収して技術者1100人を受け入れる。「LTE」など次世代高速通信サービスに対応した製品開発を加速、海外でモバイル端末向けシステムLSI(大規模集積回路)の拡販体制を整える。
 ワイヤレスモデムは携帯電話のデータ信号を通信方式に合わせて変換する部品。これまではルネサスエレがノキアからライセンス供与を受けて、モデムをシステムLSIに搭載してきた。
 ノキアが事業再編で同部門のリストラに踏み切るのに対し、海外事業強化を目指すルネサスエレが名乗りを上げた。赤尾泰社長は「海外市場でモバイル分野向けのシステムLSI事業を強化する」と狙いを語った。
 ルネサスエレはモデム回路やソフトウエア設計図などIP(知的財産)、評価装置類を引き継ぐ。フィンランド、インド、英国など海外拠点に散らばる同部門の従業員も移る。人件費や開発を合わせて年約100億円の費用負担が発生する。
 買収後はノキアから引き継ぐ技術資産と開発陣を活用。モデム、画像処理用システムLSI、電源管理半導体を一体化したチップセットの製品開発スピードを速める。
 両社は次世代モデム技術の長期的な共同開発でも合意。「LTE」や「HSPA+」など次世代高速通信サービスに対応したシステムLSI開発にプラスとなりそうだ。
 LTE向けでは米クアルコムや欧州半導体大手STエリクソンと競合するが、「あらゆる基本機能を搭載したシステムLSIを提供できる力を得た」(赤尾社長)。15年度に携帯電話を含むモバイル分野の売上高を「09年度の約4倍の4千億円に増やす」計画だ。
 ルネサスエレの顧客は従来、NTTドコモ向けに携帯電話端末を供給する国内メーカーが多かった。このため10年に入って海外増販戦略を模索。6月には携帯電話向け基本ソフトで世界最大シェアの「シンビアン」の普及団体、シンビアン・ファンデーションに参加。幅広い海外携帯端末メーカー向けのシステムLSI開発に着手している。



国内電子書籍市場、14年度1300億円超に 民間調べ
 調査会社のインプレスR&D(東京・千代田)によると、情報端末で読める小説やマンガなど電子書籍の国内市場(販売額ベース)は、2014年度に1300億円を超える見通しだ。米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」など持ち運びやすい高性能端末がけん引役になり、09年度比で2.3倍に拡大する。
 スマートフォン(高機能携帯電話)や電子書籍専用端末も含めた「新型端末」向けの販売額は、09年度の6億円から11年度に約60億円、14年度に600億円以上に急増すると予測している。
 一方、09年度に全体の9割を占めた携帯電話向けは、12年度をピークに600億円台後半で需要が頭打ちになる。手軽に読めるマンガや若者向け小説が人気を集めてきたが、「携帯電話からスマートフォンに移行する人が増える」(インプレスR&D)こともあり、14年度に新型端末が追い付く。ソニーが年内にも電子書籍端末を国内投入するなど、国内メーカーから新型端末が相次ぐことも追い風とみている。
 09年度実績は前年度比23.7%増の574億円と推計。うち携帯電話向けは513億円。パソコン向けは55億円で2年連続の減少。



西日本スポーツ「電子新聞」を発刊
西日本新聞社は2010年7月14日に、同社が発行する「西日本スポーツ」の電子版「西スポPICK UP」を発刊する。紙面をPDFファイル形式にしたものを、地方紙や専門紙のデジタル版を取り扱うウェブサイト「新聞オンライン.COM」で販売する。
紙面には、プロ野球・福岡ソフトバンクホークスを中心に、Jリーグなど九州のプロ・アマチュアスポーツの情報が掲載される。約10ページの電子新聞として、14日から毎朝6時に配信。利用者はパソコンから「新聞オンライン.COM」にアクセスし、ウェブ上で閲覧する。購読者の対象は、九州(沖縄を除く)以外の全国在住者。購読料は、月額(30日)1575円。



「ニコ動」でライブ、演劇を生中継 主役にはホリエモン起用
 動画共有サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴは6日、都内で新事業発表会を開き、音楽ライブや演劇の生中継事業を8月から始めると発表した。実際の会場で見るための「リアルチケット」を一般のプレイガイドで販売する一方で、「ネットチケット」をニコニコ動画で販売。チケットを購入した人だけが生中継を見られるようにする。
 生中継するのは、ニコ動ユーザーによる音楽ライブ「ニコニコ大会議」とミュージカル3作品。「ニコニコ大会議」は昨年も開催し、好評だったが、今年も8月から全国各地で開く。一方、ミュージカルは外部から演出家や役者を招き3作品を制作。年末から順次上演し、生中継する計画だ。
 生中継では著作権対策も重視。チケットの“席番”のすかしを動画に挿入するなどの方法で、違法コピーが出回った場合でもユーザーを追跡、特定できるようにする。
 同社の夏野剛取締役は、今回の試みについて「単なるニコ動のプロモーションではなく、収益化して長い時間システムが回る仕組みにしたい」とその狙いを話した。2003年にミュージカル「テニスの王子様」のプロデュースを手がけた片岡義朗執行役員は、現状の舞台公演は見られる人数が限られている問題点を指摘。公演をネットでライブ中継することによって、チケットの低価格化、視聴機会の増加に加え、「『ネットは無料』という概念の是正に貢献できる」としている。
 ニコ動が制作する公演のほかにも、7月に行われるGACKTさんの欧州公演などが同様のチケット販売体制で生中継される予定だが、アマチュアの小劇団やバンドによる利用は「まだ未定」(広報部)という。
 今回制作するミュージカル3作品のひとつ、名作「クリスマスキャロル」の主役にはライブドア元社長の堀江貴文氏を起用した。奇しくも拝金主義へのアンチテーゼを描く同作だが、実際に稽古を体験した堀江氏は「IT業界で味わえなかった一体感」と手応えを感じている様子。現在はスキップも満足にできないという体型が気になるが、「体重20キロ減」を公約に掲げて本番に臨む。堀江氏の公演は12月22日~26日、東京・銀座の博品館劇場で行う。



【大相撲中継中止】スポンサー、自治体…影響広がる 受刑者の楽しみも減退
 NHKが6日、大相撲名古屋場所(11日初日)の生中継中止を決めた。相撲界に非があるとはいえ、昭和3年のラジオ、28年のテレビ中継開始後、初となる深刻な事態だ。角界だけでなく、ファン、スポンサー、自治体…、多くの人が中継に熱い思いを寄せてきた。「残念」「仕方ない」などの複雑な思いと波紋が広がる。
 ■PR効果期待組
 口蹄(こうてい)疫問題で揺れる宮崎県。昭和61年11月の九州場所から、優勝力士に宮崎牛1頭を贈ってきた。千秋楽で知事が「宮崎牛1頭を贈呈!」と読み上げる場面は、NHKで中継されることで絶大なPR効果を発揮してきた。
 県畜産課の担当者は「大相撲中継を通して、落ち込んでいる県の畜産業を奮い立たせるためにも、全国に宮崎牛の良さを伝えたかった」と残念がる。
 「口蹄疫問題では角界から多くの支援をいただいており、関係は簡単には切れない」という一方で、中継による宣伝効果を期待してきただけに、表彰自粛も選択肢に入っていることを示唆した。
 NHKの放送はCMがないが、懸賞幕や表彰式などで企業名が露出する場面はそのまま中継される。
 NHKの決定に歩調を合わせるように、日本コカ・コーラと全国農業協同組合連合会(全農)も6日、優勝力士への記念品贈呈取りやめを決めた。全農は50万円相当のちゃんこ具材など、コカ・コーラは現金40万円を、いずれも30年近くにわたって提供し続けてきた。「不祥事に厳しく対応する」こと以外にも、企業イメージの低下や、中継がないことのデメリットも考慮した末の決断とみられている。
 ■裏番組
 往年の勢いはないとはいえ、NHKの中継は10%前後の視聴率を生み出してきた。中継中止で裏番組の視聴率も影響は必至だ。
 視聴者層が重なることから、相撲開催中には視聴率が必ず落ちるといわれているのが、日本テレビの看板番組「笑点」(日曜放送)。日本テレビは「われわれは粛々と自分の番組を放映するだけ。他局の決定にコメントする立場にはない」と慎重だった。
 ■刑務所
 受刑者の自由時間に大相撲中継の視聴を許可している各地の刑務所も影響を受ける。土俵脇に席を取った暴力団がNHKの中継画面に映ることで、獄中の組関係者に存在を誇示していたという問題も発覚した。
 法務省の担当者は、「大相撲中継は多くの受刑者からのニーズがある」という。ダイジェスト版については、「各刑務所で判断することになる」(担当者)といい、数少ない楽しみが消える刑務所もありそう。
 ■日系社会
 海外で暮らす日本人にとって大相撲と紅白歌合戦は、祖国を懐かしませる最大の番組だ。
 100万人を超える日系人がいるブラジルでは、相撲中継は日系1、2世らを中心に高い人気を誇る。時差の関係で早朝となる中継を早起きして観戦。そのために受信機器を調える人も多いという。
 サンパウロにあるブラジル日本商工会議所の平田藤義事務局長は、「場所が中止されるという話もあり、ずっと心配していた。開催されるということだけでもありがたいと思っている」と話す。「すべての放送が無くなるわけではなく、ダイジェスト版が放映されるということを聞いてほっとしている」とも。
 名古屋場所ではサンパウロ出身の力士、魁聖が新十両として土俵を踏むだけに、現地では「残念」の声が多く出ているという。



日経社説
レクサスでも陰る品質神話
 トヨタ自動車が再びリコール(回収・無償修理)を実施する。国内外を合わせ、27万台が対象だ。
 同社では昨秋以降、ハイブリッド車などで不具合が続き、世界で800万台近いリコールを余儀なくされた。だが、今回のリコール対象は8車種のうち7車種が「トヨタ」でなく「レクサス」のブランドだ。
 日本の最高品質を象徴するレクサスのリコール問題の影響は大きい。トヨタは1990~2000年代半ば、部品の不良率が100万個作って30個以下と世界最高の水準にあった。そうした勢いを駆ってレクサスでは不良率ゼロを目指し、品質に磨きをかけてきたはずだった。
 異常はエンジンの吸排気弁のばねにあった。製造中に異物が混入し、強度が弱いものだと運転中に折れ、エンジンが止まってしまう。
 生産したのは部品メーカーだが、トヨタは3年間も不具合を見逃し、使っていた。部品調達の仕組みに問題はなかったか、しっかりと検証し公表する必要がある。
 それにしても、今回のリコールはこれまでのものとは異質だ。トヨタが今年に入って実施したリコールは主に2種類だった。1つは原因が海外で調達した部品にあるケース、もう1つは技術の高度化によるケースである。
 前者はトヨタが世界に事業を拡大する過程で、品質確保がおろそかになっていたために引き起こされた。後者は自動車の世界でIT(情報技術)を駆使した電子制御やソフトウエア技術の比重が増したために起きたリコールだった。
 だが、今回のレクサスのリコールは車のエレクトロニクス化や部品の海外調達とは関係がない。問題を起こしたのはトヨタが長い年月をかけ育ててきた部品メーカーであり、原因は合金や機械加工技術にあった。
 問題は意外に根深い可能性がある。トヨタは今回、これまでのリコールの反省に立ち、国土交通省に届け出るまでの手続きを迅速に進めたという。だが、これだけでは不十分であり、国内の部品調達システムを早急に点検し直す必要がある。日本のものづくりが揺らぎかねないというくらいの強い危機感で、原因究明と問題解決に取り組んでほしい。
ドコモSIMロック解除へ 11年4月から全機種で
ライバル各社の対応焦点
 NTTドコモの山田隆持社長は6日、日本経済新聞の取材に応じ、2011年4月以降に出荷するすべての携帯端末について、特定の通信会社でしか使えないように制限している「SIMロック」を解除できるようにすると明らかにした。総務省は同制限を解除する指針を示しており、最大手のドコモがいち早く解除に乗り出すことで通信各社も対応を迫られそうだ。
 ドコモは11年4月以降に出荷する端末にソフトでロックを解除できる機能を搭載する。利用者の要望に応じて販売店の窓口で解除を受け付ける方針。
 SIMロックの解除により、利用者は契約情報などが入った「SIMカード」を入れ替えれば機種を変えずに通信会社を自由に選べるようになる。例えば同社のスマートフォン(高機能携帯電話)「エクスペリア」などの端末をソフトバンクの通信回線を使って利用できる可能性がある。
 ただ、ドコモだけがSIMロックを解除しても、契約者の流出につながるだけになるため、今後はソフトバンクなど他社の動向が焦点となる。ソフトバンクは一部端末で解除を検討する方針を示すにとどまっている。
 通信回線の品質で強みを持つドコモは率先して解除に乗り出すことで、他社の解除も促し、米アップルの端末などの人気機種をドコモの回線利用への呼び水としたい考えだ。



ドコモ、端末融通の加速狙う 主戦場はスマートフォン
SIMロック解除
 NTTドコモがSIMロックの解除を急ぐのは、いち早く解除に対応することで業界全体の端末融通を加速し、契約者を呼び込むためだ。
 総務省は6月に指針(ガイドライン)を示し、通信各社にSIMロック解除を呼びかけた。解除により端末開発の自由化や海外での利用拡大につなげる狙い。ただ、SIMロック解除により、携帯端末を相互に利用できるようになるのは当面はドコモとソフトバンクだけとなる。
 国内携帯各社の中で、KDDI(au)のみは違う通信方式を採用しており、各社がロックを解除してもKDDIの端末を他の通信会社の回線でつかうことはできない。このため、KDDIはSIMロックの解除について世界の通信方式が統一される次世代携帯電話サービス「LTE」に移行してからとなる。3社の完全な相互融通が可能になるのは、KDDIがLTEに対応する12年からだ。
 また、携帯各社は契約者囲い込みのため「iモード」など通信会社特有の機能を拡大しており、SIMカードを入れ替えるだけではメールなどのサービスを利用できないなどの課題もある。
 当面、SIMロック解除による端末の相互利用はスマートフォンなど汎用性の高い端末に限られるとみられる。焦点となるのは、契約者を急速に伸ばしているソフトバンクの「iPhone(アイフォーン)」だが、同社がアイフォーンについては「解除に応じない」としている。



ドコモがSIMロック解除表明でもソフトバンクは「スタンスに変化ない」
 NTTドコモがSIMロックを解除する方針を示した7月6日、同じ通信方式を採用するソフトバンクモバイルがCNET Japanの電話取材に応じた。
 同社広報室は、大前提としてノーコメントであると回答した上で、従来からのスタンスを変えない方針を明らかにした。ソフトバンクモバイルは従来から「法制度として(SIMロック解除を)強制化されるのは、おかしいのではないか」(同社広報室)という姿勢だ。
 「基本的には、SIMロックによって、端末とサービスをお買い求めやすく提供できていると思っている。そのことについてよく検討する必要があるという考え。SIMロックというよりも、携帯端末の普及という点で考えた場合、このスタンスに変化はない」と、同社広報室ではコメントしている。



SCE、320ギガバイトのHDDを搭載したPS3
 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は29日、据え置き型ゲーム機「プレイステーション(PS)3」で容量320ギガ(ギガは10億)バイトのハードディスク駆動装置(HDD)を搭載した「CECH―2500B」を発売する。現行機種よりも容量を増やし、デジタルチューナーなどをセットにした周辺機器「トルネ」を接続して地上デジタル放送をより多く録画できるようにした。価格は3万4980円。
 HDDの容量が160ギガバイトの「CECH―2500A」も同時に発売する。価格は2万9980円で、本体の色は黒と白の2種類。



MSのモーションコントローラー「Kinect」、年末商戦向けに国内発売へ
 マイクロソフトは7月6日、Xbox 360向けモーションコントローラー「Kinect」を日本で年末商戦向けに発売する方針を明らかにした。
 Kinectは身振り手振りでゲームを操作できる新コントローラー。米国では11月4日に発売する予定。価格は未定。対応ソフトとして、セガ「ソニック フリーライダーズ」やハドソン「DECA SPORTS FREEDOM」などの発売が予定されている。
 7月6日に同社が開いた経営方針説明会の会場でKinectを披露した。国内のXboxビジネスを担当する泉水敬ホーム&エンターテイメント事業本部長が、ボート漕ぎや障害物競争などを楽しめる「Kinect Adventure」を、左右への体の移動やジャンプなどで実際に操作してみせた。
泉水氏も実際にプレイ。体の動きはテレビ上部に設置したセンサーで読み取る。遅延などはないように見えた
 同社の樋口泰行社長は「PCやビジネスユースでもいろいろな展開が考えられる」と話していた。



マイクロソフト樋口社長「クラウドに経営資源大きく移す」
 マイクロソフト日本法人(東京・渋谷)の樋口泰行社長は6日、2011年6月期の経営方針について記者会見し「(ネットワーク経由でソフトウエアや情報システムを提供する)クラウド・コンピューティング分野に経営資源を大きく移す」と述べ、クラウド事業や企業との連携を強化することで成長を目指す方針を示した。
 7月1日付で法人向け事業部門全体で約100人のクラウド専任部隊を設置した。クラウド関連での連携会社を現在の約350社から11年度内に1000社に増やす方針。
 また、2011年2月1日付で社名を「日本マイクロソフト」にすると発表した。東京都内の拠点大半を港区の新本社に集約することに伴い社名を変更する。



情報通信「利用は低迷」、10年度版白書 電子行政に遅れ
 原口一博総務相は6日、2010年度版の情報通信白書を閣議に提出した。日本はブロードバンド回線や第3世代携帯電話など情報通信のインフラ部門でトップクラスだが、個人や企業、行政での実際の利用は低迷しているとの分析を盛り込んだ。特に電子行政の取り組みが遅れており、利用者の視点に立ったサービスの実現が必要と指摘した。
 調査は先進25カ国を対象に実施し、インフラの整備状況や利用状況などを比較した。情報通信技術(ICT)の総合順位は韓国に次いで2位だった。光ファイバーの敷設や第3世代携帯電話への移行割合などインフラ部門でトップだったが、利活用では16位に沈んだ。 白書では、ブロードバンドサービスを全世帯が利用するようになると新たな消費が生まれるなど、12.3兆円の経済効果が見込まれ、名目国内総生産(GDP)を1.5%押し上げると試算した。総務省はインターネット環境の低価格化や個人情報の保護などの取り組みを拡充し、実際の利用を進める必要があると分析している。



イー・モバイル、今秋予定の「42Mbps」サービスのデモを披露
 イー・モバイルは6日、今秋開始予定のDC-HSDPA(デュアルセルHSDPA)サービスのデモを披露する説明会を開始した。同社代表取締役社長のエリック・ガン氏、取締役副社長の阿部 基成氏、日本エリクソンバイスプレジデントのモーガン・カービー氏が登壇し、説明を行った。
 DC-HSDPAは、同時に隣り合う2つの周波数帯域を受信に用いることで、通信速度を2倍にする技術。現在、イー・モバイルでは、下り最大21MbpsのHSPA+方式によるサービスを提供しているが、理論上は帯域が2倍となることで、通信速度も倍になる。大容量の通信を行っても、従来より短時間で処理できるようになるため、ユーザー全体での通信処理も向上が見込め、スピードが上がったように感じられるという。
 3.9Gの実現に向け、昨年6月、通信各社に対して新たな周波数帯が割り当てられている。イー・モバイルに対してはDC-HSDPAとLTEのサービス提供に向け、1.7GHz帯において10MHz幅が割り当てられている。既存の5MHz幅と新帯域のうち5MHz幅、計10MHz幅でDC-HSDPAサービスが提供される計画だ。



サムスン、薄型TV世界販売5000万台 目標を上方修正
W杯効果で需要底上げ ソニーの計画比2倍に
 【ソウル=尾島島雄】韓国のサムスン電子は2010年の薄型テレビの世界販売の目標を年初計画の3900万台から少なくとも4500万台(前年比47%増)、最大で5000万台(同63%増)に上方修正する方針を明らかにした。サッカー・ワールドカップ(W杯)による需要の底上げが大きいため拡大戦略を鮮明にする。ソニーの10年度計画の1.8~2倍に相当し、世界市場の占有率で独走する勢いだ。
 サムスンは09年に前年比27%増の3068万台の薄型テレビを販売。LED搭載型の液晶テレビを主力品と位置付けて本格投入し、薄型テレビ市場のシェア首位を確実にした。
 10年も大幅な販売拡大を見込み、当初は液晶テレビ3500万台、プラズマテレビ400万台を計画していた。上半期を終えた時点で新興国市場の拡大にW杯効果が重なり、想定以上に販売が好調なため、計画の大幅な上積みに踏み切る。
 競争激化による価格下落に備え、高級タイプが多いLED搭載型の販売を強化。一方で2月末に他社に先駆け市場投入した3次元(3D)テレビは200万台だった当初目標を260万台に引き上げる。現在は基幹部品である3D用パネルの不足で「注文の8割にしか応じられない」(サムスン幹部)が、内製パネルの増産を急ぎ、8月から出荷ペースを引き上げる。
 韓国のLG電子は10年に前年比49%増となる2900万台、ソニーは10年度に前年度比67%増となる2500万台を目指すとしている。米ディスプレイサーチは10年の薄型テレビの世界市場を前年比28%増の2億409万台になると予測している。



大阪府「貸金特区構想」、自見金融相が「適当ではない」
 自見庄三郎金融相は6日の閣議後会見で、大阪府が検討している、改正貸金業法による上限金利の引き下げなど、一連の規制強化を一部地域で緩和する「構想改革特区」の設置構想について、「適当ではない」と否定的な見方を示した。
 自見金融相は「特定地域での上限金利を上回るような貸し付けが行われ、刑罰の対象から除外することになれば、改正貸金業法で上限金利を引き下げた趣旨を損なう。地域によって刑罰が異なることになり、法の公正性に反する」との見解を示した。
 6月に完全施行された改正貸金業法では、個人の借入総額を年収の3分の1までとする「総量規制」や、上限金利を年15%に引き下げる規制強化が実施された。だが主婦やフリーランスなどの個人や、中小零細事業者が借りられなく例が増え、ヤミ金に走るなどの弊害が指摘されていた。
 大阪府の「貸金特区構想」は、中小事業者向けの1年以内の融資は、上限金利を改正前の29・2%に戻すほか、返済能力のある個人には総量規制を超えた無担保融資ができるよう緩和する。府内に本店を置く貸金業者が融資する際の適用を想定、顧客は大阪府民以外でも受け入れる。6日に政府に要望書を出す。



「iPhone 4は携帯キャリアの重荷に」とコンサルティング会社
 米AppleのiPhone 4はアンテナの問題は別として、批評家や消費者に概ね好評を博しているが、このAppleの最新スマートフォンは携帯電話キャリアにとって、iPhoneのこれまでのモデルと同様の問題を引き起こすだろう――。デンマークの無線通信コンサルティング会社Strand Consultは7月5日付の報告書で、そう指摘している。
 Strand ConsultはiPhoneが携帯キャリアに及ぼす影響について、2009年8月にも報告書を発表しているが、今回はその内容を引き継ぐ形で、次のように警告している。「iPhone 4は過去と同様の問題を改めて引き起こすことになるだろう。そして、おそらく業界では再び、新しいiPhone 4の高額な販売奨励金のせいで携帯キャリアが業績の下方修正を余儀なくされる事態が発生するだろう」
 そしてStrand Consultは、携帯キャリアが金銭的な観点からiPhone 4を考察する上で着目すべき6つのポイントを指摘している。
 まず1つは、iPhone 4の価格はこれまでのモデルと大差ないため、購入を促す追加の要因に欠けているという点だ。2つ目は、iPhone 4の新しいデザインはこれまでのモデルとそれほど大きく異なるものではないため、その点でも、あまり大きな購入の動機にはならないという点。そして3つ目は、iPhone 4の登場によって多くの新規加入者が携帯キャリアの窓口に押し寄せるようなことにはならないと予想される点だ。
 「新しいiPhoneを購入するのは、ほとんどが既存のiPhoneユーザーということになるだろう」と報告書は指摘している。
 続いて4つ目のポイントは、iPhoneをアップグレードしようという既存の顧客が、iPhoneを初めて購入しようという新規の顧客と比べてはるかに多いという事実が、携帯キャリアにどのような影響を及ぼすかという点だ。「おそらくiPhone 4はマイナスの意味で携帯キャリアの解約を促すことになり、その結果、携帯キャリアが負担する販売奨励金や取扱手数料のコストだけがうなぎ上りで増えることになるだろう」と報告書には記されている。
 Strand Consultは前回の報告書においても、iPhoneが携帯キャリアに及ぼすマイナスの影響に言及し、その影響は一部の携帯キャリアだけでなく全体に及ぶものだと指摘している。
 「われわれが世界の携帯電話事業者を対象に実施した調査によると、iPhoneの販売を手掛けたことで市場シェアや売上高、収益を伸ばせたという会社は1社もない。それどころか、iPhoneのせいで業績の下方修正を余儀なくされている事業者もあるくらいだ」とStrand Consultの2009年の報告書には記されている。
 「ただし、iPhone 4の恩恵を受けることが予想される企業はAppleだけではない」とStrand Consultは指摘している。iPhone 4は従来の携帯キャリアを苦境に陥れる一方で――顧客は最新モデルにアップグレードして、古いモデルを友人や家族に売るなり譲るなりするだろうから――仮想移動体通信事業者(MVNO)には恩恵をもたらすことが予想される。MVNOとは、大手の通信事業者からネットワーク設備を借り受けて、独自ブランドでSIMカードを販売している業者のことだ。
 「古いiPhoneを新たに手に入れたユーザーは、音声とデータのサービスをいちばん安価なところから購入することになるだろう。つまり、多くの国では、iPhoneユーザー向けに余分なサービス抜きでSIMオンリーのサービスを販売しているMVNOから、ということになる」と報告書には記されている。
 Strand Consultが最後に指摘しているポイントは、Appleは強力なスマートフォン製品を投入し、広く一般からは、この業界の大将のように思われているが、実際のところ、同社に対する注目の高さは同社の市場シェアには不相応なものだという。
 「現在、世界のiPhoneユーザーの総数はポーランドの人口と同じくらいだ。世界の携帯電話ユーザー数が11億人増加した間に、Appleは5100万台しか携帯端末を販売していない。同じ期間に、そのほかのメーカーが販売した携帯電話は34億台以上にのぼる」と報告書は指摘している。
 「iPhone 4は結局のところ、多くの携帯キャリアにとって“お金のかかる新しい友人”となるのが落ちだ」とさらに報告書は続いている。これは、米国で現在iPhoneを独占販売しているAT&Tにとっては喜ばしいニュースではない。ただし、Verizon Wirelessは今のところ、自由の身だ。Verizon Wirelessは、AT&TのiPhone独占販売契約が期限切れとなる2011年1月にiPhoneの提供を開始するとみられている。
 「携帯キャリアにとっては、iPhoneの顧客ベースが大きければ大きいほど、そして古ければ古いほど、iPhone 4によって生じるコストも大きくなるはずだ。今後、Appleの元からの大手のパートナー各社の多くは解約率の増加に見舞われ、向こう数カ月間は、販売奨励金や取扱手数料にかかるコストが業績にマイナスの影響を及ぼすことになるだろう」とStrand Consultは報告書で指摘している。



【東京新聞社説】
オバマ政権 見えぬ新たな米モデル
2010年7月6日
 オバマ米大統領から雄弁さが消えて久しい。中間選挙を控え支持率も低迷したままだ。新自由主義路線からの転換を図りながら、新たな政権モデルは未(いま)だ明確ではない。今こそ将来像を語るべきだ。
 独立記念日の四日に合わせ、メキシコ湾に面するルイジアナ州ポートサルファーからハリケーン襲来に怯(おび)える米国民の心情を伝えたコラムが目を引いた。
 今なお続く原油流出被害がカトリーナ級の暴風雨でさらに広がり、漁業に依存するこの地域に取り返しのつかない惨事をもたらすのではないか。そんな地元民の不安と怒りを、現地式典に出演したバンド「アース・ウインド&ファイアー」(土と風と火)の名に託して記した人気コラムニストの記事だった。米市民の多くが抱く目下最大の懸念を代弁していた。
 昨年、米国史上初の黒人大統領の誕生を後押ししたのは二つの大きな危機だった。百年に一度といわれた金融危機と、ブッシュ前政権からの負の遺産といわれたイラクとアフガニスタン、それぞれの戦争の行き詰まりだ。
 約八千億ドル規模の緊急経済対策は一定の効果をあげ、当面の景気安定化へ道を開いた。二つの戦争についても、米軍撤退の出口戦略を示すに至った。政権側からすればもっと評価されていい成果かもしれない。しかし、国民の支持率は五割を割ったままだ。
 危機の先に来るべき新たな国家像が見えないためだ。支持率低迷は、この春、事実上の国民皆保険に通じる医療改革法の成立以来続いている。自助精神を信条とする建国以来の伝統が崩れ、西欧型福祉国家に近づいているのではないか。国民の間に将来への不安があったとしても不思議ではない。10%近い水準に高止まりする失業率も、欧州の数字と符合する。
 イスラム対話でも綻(ほころ)びが目立つ。対イラン核交渉で見せたトルコの調停への否定的対応は国際協調路線との食い違いを露呈し、アフガン政策では指導部批判したマクリスタル司令官の解任というドタバタ劇さえ演じた。
 市民組織「茶会」による政府批判を活発化させている共和党陣営は足並みがバラバラだが、敵失に支えられたままの政権は危うい。
 発足時のオバマ政権には、誤りは早期に謝罪し、修正する姿勢があった。しかし、再び取り戻せない性質の誤りもある。近づくハリケーン季節への国民の恐怖はそれを端的に物語っている。
次世代携帯放送、月額300円前後で ドコモ検討
 2012年4月にもサービス開始を目指している携帯端末向け次世代放送の月額料金について、NTTドコモが300円前後を検討していることが明らかになった。設備投資を当初予定の6割程度に抑え、料金を低めに設定する。サービス開始後5年で約1000万件の契約を目指す。
 携帯端末向け次世代放送はドコモと民放各社などが出資するマルチメディア放送(東京・千代田)と、KDDIと米クアルコムが出資するメディアフロージャパン企画(同)が参入を表明。総務省は近く1社を事業者に認定する方針を示している。
 ドコモは配信に必要な基地局整備について、電波の強さを現行の携帯電話向けデジタル放送(ワンセグ)の約3倍に高め、全国の世帯数の3分の1にあたる首都圏約1600万世帯を「東京スカイツリー」に設置する設備でカバーする方針。大規模基地局に集約することで16年度までの合計設備投資額を当初予定の700億円から440億円に圧縮し、利用料金を抑える。
 月額料金のほかに、特別なコンテンツなどについては追加料金で対応する方針だ。
 携帯端末向け次世代放送は11年7月に終了するアナログ放送の電波帯を使ってサービス開始を予定している。地上波をそのまま流す「ワンセグ」と異なり、放送波でコンテンツを携帯端末に自由に配信できる。



「専用機」崩れる支配 携帯など垣根超え商機
 ゲームビジネスが大きな転機を迎えた。ゲームも楽しめる高機能携帯電話(スマートフォン/)の普及で、家庭用ゲーム機が市場を牛耳る構図は崩壊。ソフトでは交流型と呼ぶ新ジャンルがパッケージ販売で稼ぐ老舗ソフト会社を脅かす。あらゆる娯楽がインターネットとの融合を余儀なくされるなかで、ゲームはどう進化していくのか。
 6月中旬に米国で開かれた世界最大のゲーム見本市「E3」。新型ゲーム機「3DS」を披露する任天堂の岩田聡社長の発言に関係者は驚いた。「こんなに多くのソフト会社が3DS用のゲームを準備しています」
2強体制に陰り
 これまで新型機の発表会で同時に説明するのは自社のソフトが中心だった。今回はソフト会社との協力関係をいきなりアピールした。あるソフト会社幹部は「最近、任天堂が優しいんですよ」と明かす。
 ファミコンで家庭用のゲーム市場を切り開いた任天堂。その後、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)との2強体制となり、世界の市場をけん引してきた。数千万台のゲーム機を販売し、ソフト会社から「強権的」などと批判されながら市場を支配したリーダーが今、窮地に立たされている。
 任天堂の2010年3月期の連結純利益は前の期比18%減の2286億円と6期ぶりの減益。ソニーのゲーム事業も10年3月期に570億円の営業赤字を計上した。不況の影響もあるが、米アップルのスマートフォン「iPhone」など新勢力の出現が響いている。
ソフト5万種類
 iPhoneが発売から2年弱で配信したゲームソフトは5万種類。同期間に日本で専用機用に発売された約2000種類を大きく上回る。6月24日発売の新型は画面性能が格段に向上し、さらに臨場感の高いゲームを楽しめる。広告を収益源とするゲーム配信の新たな仕組みも導入した。
 任天堂とSCEはゲーム機の機能向上やゲーム以外のコンテンツの充実で新勢力に対抗する構えだ。任天堂の3DSは裸眼で3D映像を楽しめるのが特長で、米ウォルト・ディズニーなどと組み3D映画も視聴可能にする。SCEは身ぶりでキャラクターを動かせる新型コントローラーを投入。3Dテレビと組み合わせてゲームの現実感を前面に出す。映画などゲーム機で視聴できるコンテンツも拡充する。
 もっとも、敵は携帯電話だけではない。韓国のゲームソフト大手、ネクソンは今回のE3に初出展しパソコン用アクションゲームなどを披露した。米国法人のダニエル・キム最高経営責任者は「高精細な画像やストーリー性は家庭用ゲームに負けない」と話す。
 アップルの多機能端末「iPad」でも、ゲームは有力コンテンツのひとつだ。あらゆる情報端末が競争相手となる垣根のない時代。端末の大衆化が進むと同時に、ゲームを楽しむ人のすそ野も広がった。専用機の枠にとらわれない魅力的なモデルを打ち立てれば、商機は無限に拡大する。



楽曲演奏の映像配信、日本の3団体と包括許諾契約 米ユーストリーム
 動画配信サービスのユーストリーム(カリフォルニア州)は映像配信における楽曲使用について、日本の音楽著作権管理の主要3団体と包括許諾契約を結んだ。ユーストリームが3団体に使用料を支払い、利用者は3団体が権利を持つ楽曲を演奏した映像を自由に配信できるようになる。
 ユーストリームと同社に出資するソフトバンクが共同で設立した「USTREAM Asia」が、日本音楽著作権協会(JASRAC)、ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC、東京・渋谷)、イーライセンス(東京・港)の3団体と契約した。国内の主要な楽曲を演奏できるようになった。USTREAM Asiaは映像配信された楽曲の割合に応じて広告収益などから一定割合の使用料を各団体に支払う。
 利用者は楽曲を自分で歌ったり演奏したりした映像を配信できる。音楽CDをカラオケ代わりにバックで流して歌う映像の配信は認められない。



「デジタルラジオ、iPadでも受信」総務省が報告書
 総務省は5日、今後のラジオのあり方を検討する研究会を開き、ラジオのデジタル放送化に向けた方策を盛り込んだ報告書を公表した。具体的には、携帯電話や多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」、カーナビなどの端末でデジタルラジオ放送を受信できるようにする。
 2011年7月の地上テレビ放送の完全デジタル化後に空く周波数を利用したデジタルラジオ放送では、高音質の音楽や、音楽と映像との同時配信などが可能になる。
 報告書によると、放送対象地域は首都、近畿、中部の三大都市圏をブロックとし、その他は県単位とする。災害時に使われる音声優先放送事業への参入は、全番組に占める自主製作番組の比率が50%以上のラジオ局に限定した。
 内藤正光総務副大臣は研究会から報告書を受け取り、「デジタル化でラジオは国民生活にとって不可欠なメディアになり、日本の情報社会を豊かにする」と述べた。



NTTとパナソニック、テレビ会議で提携 通信方式を統一
シェア3割超狙う
 NTTとパナソニックはテレビ会議技術で提携、通信方式を統一する。両社のシステムを使う顧客同士のテレビ会議が可能になる。フルハイビジョン(HD)映像のテレビ会議システムで、今秋にNTTが統一方式のシステムを発売。両社は成長が見込まれるテレビ会議市場を協力して開拓、5年後に国内で3割超のシェア獲得を目指す。
 このほどNTTとパナソニックはシステムの相互接続で合意。両社はテレビ会議の利用範囲を広げて利便性を高め、業界大手の米ポリコムやソニーに対抗する。検討が進む標準規格づくりを有利に進める狙いもある。
 NTTが今秋発売するのは新開発のソフトを核にしたシステム。NTTの次世代ネットワーク「フレッツ光ネクスト」を使い、HD映像をやり取りする。価格はパソコンとソフトなど一組で約50万円。大型モニターにも接続できる。
 パナソニックは昨年秋からHD映像のテレビ会議システムを販売。相互接続により、インターネットより信頼性が高いNTTの次世代ネットワーク技術を自社システムに取り込む。
 次世代ネットワークで両システムはHD映像や音声データの遅延を0.165秒前後に抑えるため、会議に不可欠な自然な会話が可能になるという。NTTは2015年に国内外で年300億円超の売り上げを目標にしている。パナソニックは昨年度130システムにとどまった出荷を今年度中に数倍にする。
 テレビ会議システムは出張交通費の削減や環境負荷の低減を目的に導入企業が増えている。業界推計では09年の国内市場規模は207億円と4年前の倍。15年には周辺市場も含め1000億円に拡大するという。
 現在は専用機器を使う数百万円から1000万円超の大型システム、または数十万円だが画質の粗いインターネット系のシステムが主流。大型システムが主力のポリコム、ソニー、米タンバークの3社が市場の7割超を占める。



地デジ放送、ボリビアが日本方式採用
 総務省は5日、ボリビアが地上デジタル放送で日本方式の技術規格を採用したと発表した。海外ではパラグアイやフィリピンに続いて10カ国目になる。ハイビジョン放送と携帯端末向け放送(ワンセグ)を同時に提供できるなどの技術面が評価された。
 この結果、南米では欧州方式を取り入れるコロンビアとウルグアイ以外の主要8カ国で日本方式の採用が決まった。総務省は今後、タイやアフリカ諸国などと採用交渉を進める。



発電・鉄道… 日本勢、インフラ事業で再編加速
 発電や鉄道機器など社会インフラ分野を中心に、グローバル展開を見据えた事業再編が加速している。日立製作所と三菱電機、三菱重工業は5日、水力発電機器事業を2011年10月に統合すると正式発表した。規模の小さなメーカーが縮む国内市場でシェアを奪い合う消耗戦から脱するためには、事業統合などが不可欠。成長が続く新興市場で、世界の競合企業と戦うための提携戦略が問われている。
 日立など3社は水力発電機器の開発・設計、販売部門を全面統合する。11年10月に新会社を設立し、日立が50%、三菱2社が50%を出資する。統合時の売上高は約250億円。3社は得意の揚水発電技術を武器に中国、インド、中南米などで大規模案件の受注を狙う。
 ●世界で戦えない危機感 日立と三菱重工は6月下旬に鉄道システムの開発・製造などで提携したばかり。技術力で日本の頂点に立つ2社を事業提携に走らせたのは、このままでは世界で戦えないという危機感だ。
 水力発電機器や鉄道システムは、ともに日本勢の世界シェアを合計しても10%以下。水力では仏アルストム、鉄道ではカナダのボンバルディアなど「海外3強」の合計シェアが5割を超える点で共通する。
 「似たような事業を手掛ける重工さんとは、協力を深めたい」。日立の中西宏明社長は4月の就任時から連携に意欲的だった。
 ●敵がい心が接着剤 両社は「どちらもおうような社風で話しやすい」(日立幹部)と認め合う間柄。社会インフラ分野ではライバルの東芝が06年に米原子力大手ウエスチングハウスを54億ドルで買収。日立、三菱重工もそれぞれ応札したが競り負け、原発のグローバル展開で東芝に先行を許す結果となった。東芝への敵がい心が両社の接着剤となった面もある。
 国内でインフラ整備が一段落した水道ビジネスでも連携が始まっている。今年3月、三菱商事と日揮が荏原の水道事業子会社に出資。3社共同でアジアや中東の上下水道整備案件の受注活動を始めた。荏原の水処理技術、三菱商事の資金調達力、日揮のエンジニアリングのノウハウを結集し、競争力を高める狙いだ。
 重電分野の07年度の利益率は日本企業の平均が5.8%と、海外企業(12.6%)の半分にも満たない。市場規模の割に企業数が多いことが一因だ。
 ●「国内予選で消耗」 経済産業省が6月にまとめた産業構造ビジョンでも、日本企業が「国内予選で消耗」してしまうのに対し、「(サムスン電子などの)韓国企業は国内予選なしで最初からグローバル市場に向けて大胆で迅速な投資戦略を実行できる」と分析。電機など業界再編の必要性を説く。
 富士通と東芝は6月、携帯電話機事業を統合することで合意した。国内の10年度の端末出荷台数は3100万台と07年度の約6割まで落ち込む見通し。原発と半導体に経営資源を集中する東芝にとって、赤字続きの事業を温存できなくなった側面が大きい。
 石油化学業界では国内コンビナートの再編が活発になっている。三井化学と出光興産は4月に千葉コンビナート(千葉県市原市)で基礎原料であるエチレン事業を統合。三菱化学と旭化成も来春、水島コンビナート(岡山県倉敷市)でエチレン事業を統合し、数年後に1基に集約する。
 石化製品は内需の低迷に加え、生産の3割を占める輸出が将来大幅に減少する見通し。中東資本が安価な原料を使った大規模コンビナートを相次いで稼働させており、日本からの輸出競争力が低下するためだ。国内エチレン設備の2~3割が余剰になるとみられており、設備再編が急務になっている。



製紙大手、洋紙輸出を拡大 10年度2~4倍に
 大手製紙各社が洋紙の輸出を大幅に拡大する。北越紀州製紙と日本製紙は2010年度の輸出量を09年度の2~4倍に増やす。国内の需要不振と価格低迷が長引くと判断し、アジアなどの成長市場に目を向ける。鉄鋼や化学に比べて内需比率が高い紙業界でも、輸出を重視する動きが広がってきた。
 北越紀州製紙は印刷などに使う洋紙の10年度の輸出量を3~4倍に増やし、09年度に5%前後だった輸出比率を15~20%に引き上げる。09年8月に5千トン前後だった月間輸出量は4月以降、2万トン前後に増えている。香港や台湾、シンガポール、オーストラリア向けが中心。「スポット(当用買い)取引でなく固定客への安定的な販売を重視する」(同社)
 洋紙最大手の日本製紙は輸出比率を12~13%に高める。09年度の比率は5%前後で、月間輸出量は3万トン強だった。
 王子製紙は現在10%未満の海外売上高比率を12年以降、20%まで上げる。中国の江蘇省南通市に建設中の新工場を拠点に、現地生産も拡大する。
 アジアでは生活水準の向上に伴い、家電や自動車の広告、出版物の需要が旺盛だ。洋紙の主力品、上質コート紙の香港市場の取引価格は年初から25%上昇し、1年5カ月ぶりの高値だ。「製造コストの引き下げで輸出も利益が出るようになった」(北越紀州製紙)
 一方、企業の広告費削減などで日本の需要は縮小している。主力品の国内価格は1年半で8%下がり、4年ぶりの安値となった。
 鉄鋼では大手各社の輸出比率が4~5割と高く、化学大手も輸出を増やしてきた。これに対し、製紙各社は輸出比率が1割未満と低かった。



中国、日本国債の購入拡大
1~4月の買越額5410億円 欧州危機で資金分散か
 中国が日本国債への投資を拡大し始めた。今年に入ってから期間1年以内の短期債を中心に買越額が急増。1~4月だけで累計額が5410億円に達した。投資拡大は欧州の財政危機に対する市場の不安が高まった時期と重なっており、中国当局が膨らむ外貨準備の運用先を日本国債にも広げた可能性がある。外国人保有率が低い日本の国債の中で、中国マネーの存在感が高まりそうだ。
 これまで中国は日本への証券投資に積極的ではなく、2009年の証券売買でみると800億円の売り越し。ただ今年に入ってから急ピッチで投資が動き出した。財務省によると、05年以降の証券売買で買い越しとなったのは05年(2538億円)と06年(2091億円)、08年(378億円)の3年。今年は1~4月だけで過去最高だった05年の2.1倍の買越額を記録した計算だ。
 売買は償還期間が1年以内の短期債が中心だ。4カ月間の短期債の買越額は5177億円。5年や10年の中長期債は234億円の買い越しとなった。4月単月でみると買越額は1978億円で、海外勢では英国に次ぐ2位。5月以降も同じ傾向が続き、中長期債にも買いが入っているもよう。



著作権の制限 知的財産は厳格に守るべきだ(7月6日付・読売社説)
 知的財産権は厳格に守る、という著作権法の大前提が崩れていくのではないか。そんな懸念を抱かせる提言だ。
 文化審議会の小委員会は、著作者の権利を制約する「権利制限の一般規定」(日本版フェアユース規定)の導入を求める「中間まとめ」を発表した。
 著作権法は、許諾を得ずに著作物を利用できる事例として、個人が私的目的で行う複製や、報道・研究目的での引用などを具体的に列挙している。
 これに対し米国では、「公正な利用」ならば、著作物を自由に利用することができる。いわゆるフェアユースの制度だ。著作物の要約などを公正な利用として許容することが、社会のより大きな利益になるとの考えが根底にある。
 公正か否かは、裁判所が著作物の使用目的や市場への影響などから総合的に判断する。100年以上に及ぶ判例の蓄積もある。
 例えばグーグル社は、フェアユースを根拠に、無断で書籍のデジタル複製を進めた。全米作家組合などが裁判に訴え、一時は日本の著作者への影響も懸念された。権利者には不利な制度である。
 ネット技術の発展により、著作物の利用形態は急速に変化している。必要に応じて個別規定を改正するよりも、米国型の一般規定を設けた方が、著作物の利用が円滑に進むとの意見もある。
 今回の「中間まとめ」は、米国型フェアユース規定の導入は退けた。一方で、人物写真の背景に美術作品が写り込む場合や、音楽再生技術の開発の際に必要な複製などに限って認める「権利制限の一般規定」を設けることとした。
 例えば、著作物の「付随的」利用を認めるといった、抽象的表現の規定を想定しているようだ。可能な分野から一般規定を導入するということなのだろう。
 しかし、様々に解釈されかねない規定は、知的財産権の侵害につながる恐れがある。
 やはり、著作物の利用は学校教育や報道など公共性の高い分野に原則として限られるべきだ。ビジネスのための利用なら、まず権利者の了解を得るのが筋だろう。
 著作権法の内容が現実に合わなければ、必要に応じ個別規定を改めればよい。近年は、法改正も迅速に行われるようになった。
 欧州の独仏なども「権利制限の一般規定」は導入していない。
 知的財産は人間の創造活動の賜物(たまもの)でもある。その侵害を助長するような法改正は、将来に大きな禍根を残しかねない。
ニコンは、「iPhone」を作れるか
 ニコンは6月29日の株主総会を経て木村真琴氏を社長に据えた新しい経営体制が名実共に発足した。まずは2010年3月期に連結最終赤字に沈んだ業績の立て直しが急務となるが、現状の問題点を把握したうえで社員や投資家が期待を持てる将来ビジョンを打ち立てることも重要だ。新体制は名門ニコンの将来像をどう描いているのだろうか。
 ニコンは総会に先立って中期経営計画を公表している。発表会見を聞いて感じたのは、米アップルをはじめとする新興メーカーへのライバル意識と、自社ブランドへの危機感だ。
 「iPad(アイパッド)やiPhone(アイフォーン)は『アップル』というブランドなしでは、これほど社会にインパクトを与えられなかった」「映像事業の競争は一層激化する。iPhoneであれ、iPadであれ、今後、デジタル商品の境界線はどんどんなくなってくる」
 木村社長はプレゼンの中で2回も米アップルの商品を取り上げ、強く意識していることをうかがわせた。その上で自社のブランドについてはこう分析した。
 「ニコンには先進性があって、たのしく、ワクワクするようなブランドであってほしいとの声がある」
 老舗カメラメーカー、ニコンのブランドイメージといえば「信頼性」「高品質」。アップルにあって、ニコンにないものとは――。木村社長は、信頼性の高さはそのままに消費者にワクワク感を与えることが新たな成長ステージにつながると考えているようだ。
 木村社長の成功体験は、前任の映像部門トップ時代にある。技術主導の製品開発が幅をきかせるニコンで、マーケティングの重要性を説いて回り、社内に根付かせたのは木村氏だった。
 カメラ専門店だけでなく、米ベストバイなど家電量販店ルートの販路を開拓。顧客の声を吸い上げて、新製品の開発に生かすサイクルを構築した。特に成功したのは米国市場。後任の映像部門長に就任した岡本恭幸氏と共に、人気俳優を使った「ニコンらしからぬ」宣伝活動でブランド認知度を高め、10年3月期はコンパクトデジタルカメラのシェアで初めて首位(約20%)に立った。
 シェア拡大とともに、在庫管理の徹底も進めた結果、映像部門の10年3月期の営業利益は前の期比30%増の521億円。木村氏が就任する前(02年3月期)の3.2倍だ。半導体露光装置が不振の精機部門に代わり、ニコンの業績を支える唯一の稼ぎ頭になっている。
 しかし木村社長も認めるように、デジカメ業界の競争環境は厳しさを増している。動画機能の拡充や、インターネットやテレビとの接続など、カメラの楽しみ方が広がるなか、ソニーやパナソニック、サムスン電子などデジタル技術で一日の長がある家電メーカーの存在感が高まっている。
 ニコンは近く既存のコンパクトカメラやデジタル一眼レフカメラとは異なるコンセプトの「新世代カメラ」を投入するとしている。しかし今回の中期計画発表では新世代カメラの中身や、ライバルたちに対抗する具体策の説明は、残念ながら最後まで聞けなかった。
 前社長の苅谷道郎・現会長は5年間の在任中、伝統的な技術力の高さに加え、収益性重視の文化を浸透させて、2008年3月期に過去最高益(1352億円)を達成した。木村新体制による中期計画では、3年後の13年3月期に営業利益は最高益に迫る1200億円を目指す。赤字の精機部門立て直しという大きな課題も背負っておりハードルは高いが、「ワクワクするような楽しさ」を新製品で具現化できた時、ニコンの新たな成長ステージが見えてくるはずだ。



iPhoneアプリ/ソーシャルゲームに本腰 セガ、専門部署で「ライト層」開拓
 ゲームソフト大手のセガが、携帯電話向けのゲーム配信事業を強化している。携帯電話向けにソフト配信事業を行う専門部署を立ち上げたほか、米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」などソフトの供給先を広げている。携帯向けは新たなゲーム市場として今後の成長が期待でき、特にこれまでゲームをあまりやらなかった「ライトユーザー」層の新規開拓を目指す。
 セガは、携帯電話を中心とした既存の家庭用ゲーム機以外へのソフト配信を手掛ける専門部署「モバイルニューメディア事業部」を7月1日付で設立した。国内外などで異なる部署が行っていた事業を集約することで意思決定などを迅速化し、携帯電話向け配信事業を拡大させる考えだ。
 セガでは、日本の携帯電話やアイフォーンのほか、アップルが今年5月に発売した多機能端末「iPad(アイパッド)」向けにソフト配信を開始。セガの鶴見尚也常務は「特にアイフォーン向けは伸びが期待でき、今後もソフト配信に力を入れたい」と強調する。
 さらに、成長の起爆剤として期待しているのが携帯電話向けの「ソーシャルゲーム」だ。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した交流機能を持つゲームで、日本や欧米で急速に市場が拡大している。セガは先月29日にSNS大手・グリーが展開する「モバイル版GREE」向けにソーシャルゲーム2作品の配信を開始。これまでSNS大手・ミクシィ向けに1作品を供給していただけだったが、グリー参入を機に携帯電話向けソーシャルゲームの配信を本格化させる。
 鶴見常務は「ここ数年、ソーシャルゲームは急速に伸びており、セガとしても国内外で本腰を入れて取り組んでいく。新たな市場に的確に対応するため、組織面でも整備を進める」と語り、日本で携帯電話向け専門組織を立ち上げたのに続き、北米市場でもM&A(企業の合併・買収)を視野に入れた組織拡充を図る考えだ。
 既存の家庭用ゲーム機向けのゲームソフト市場が飽和しつつあるのに対し、携帯電話向けは今後も急成長が見込まれる。セガのほか、カプコンやコナミデジタルエンタテインメントなど大手ソフト各社が取り組みを強化しており、成長市場をめぐる競争の激化が必至だ。



ソフトバンク、Twitterフォロワー間で荷物受け渡し可能なサービス開始
 ソフトバンク・フレームワークスは7月5日、メールアドレスだけで全国一律990円で荷物が送れる「メルアド宅配便」に、新たにTwitter ID対応サービスと受取人支払い機能を追加した。これによりTwitterで相互フォローしているユーザー間であれば、住所を知らなくても荷物を受け渡しできるようになった。
 メルアド便は相互の氏名、住所、電話番号といった個人情報を保護したまま荷物が送れるサービスで、メル友やソーシャルネットワーキングサービス、ブログ、オークションユーザー間の商品のやり取りを想定している。
 Twitterでは、ダイレクトメッセージ機能で受取人に荷物受け取りの諾否確認を送信することで、メルアド便と同様のサービスを実現した。
 サービス料金決済手段には「受取人クレジットカード口座課金」を追加し、申し込み時にサービス料金の支払いを差出人または受取人に指定できるようにした。従来のメルアド便ではサービスの支払いが差出人のみに限定されていた。



ドコモ、「ケータイデータお預かりサービス」が1000万契約達成
 NTTドコモは、「ケータイデータお預かりサービス」の契約者数が7月4日で1000万契約を突破したと発表した。
 「ケータイデータお預かりサービス」は、携帯電話に保存されている電話帳や画像、ブックなどをサーバー上にバックアップできるサービス。利用料は月額105円。2006年5月に「電話帳お預かりサービス」としてスタートし、2009年1月に500万契約を突破、2009年11月に現在のサービス名称に変更された。1000万契約は、サービス開始から4年1カ月で達成したことになる。
 なおドコモでは、4月より、画像や動画、メロディのバックアップにも対応する「お預かりプラス」も提供している。こちらの利用料も月額105円。



KDDIデザイニングスタジオ、夏休みに「IS01」を無料貸出
 原宿にあるKDDIデザイニングスタジオ(Kスタ)は、スマートブック「IS01」を貸し出し、「セカイカメラ」などを利用しながら原宿の街を散策できるキャンペーンを実施する。期間は7月20日~8月31日。
 キャンペーンでは、Kスタのスタッフが推薦する原宿の穴場スポット(カフェ、お土産、美容、ショッピングなど)の情報が閲覧できる「IS01」が貸し出される。「セカイカメラ」などのアプリも利用可能で、エアタグとともに撮影できる機能「Air Shot」の写真はプリントアウトできる。
 貸出時間は10時~20時(最終貸出時間は18時)、1グループ最大2時間利用できる。2時間1枠で12台のIS01が用意される。貸し出される端末は1グループにつき1台となる。貸出手続きには、本人確認書類が必要で、未成年の場合は受付時に親権者の承認も必要。



緊急特集
参院選後の経済政策を占う=日経編集委員・三宅伸吾(10/7/5)
 参院選の投開票日まで1週間となった。浮動票の行方次第だが、政権の枠組みは大きく変わらない情勢のようだ。今後の経済関連政策などはどうなるのだろうか。
 経済界で関心が高い法人税の引き下げ問題。6月18日に閣議決定された新成長戦略は「日本に立地する企業の競争力強化と外資系企業の立地促進のため、法人実効税率を主要国並みに引き下げる」と明記した。ただ、下げ幅や実施時期は不明だ。
分配か成長か
 新成長戦略が固まる2週間ほど前の6月3日、経済産業省はその大きな柱となる産業構造ビジョンを公表、そのなかで法人税率の5%程度下げを提案した。「分配論ばかりで成長戦略がない」と批判され、今年に入って急こしらえしたものだ。実はこの日、直嶋正行経産相はこんな国民向けメッセージを同省ホームページの奥の方でひっそり公表している。
 「単なる再配分論ではなく、全体のパイを増やし、それを所得の拡大につなげていく、という好循環を創りださなければならない」
 「『企業を補助するのか、労働者を支援するのか』という内向きの配分論ではない」
 民主党は昨年夏の衆院選では「公平」を連呼し、国際競争力にはほとんど言及しなかった。趣がずいぶん変わった経産相の国民向けメッセージ。この草案は麻生政権時代の首相秘書官が気合を入れ、したためたようだ。経産相もほとんど手を入れなかった。
 しかし、6月11日の所信表明で菅直人首相は法人税引き下げには触れずじまい。経済界では「新成長戦略に法人税緩和の方向は掲げられても、下げ幅が明示されることはない」との見方が大半で、予想通りの展開となった。
 参院選の大きな争点は国民全体に影響を直接与える消費税率の引き上げ。投票日を間近に控え、菅首相は低所得者への負担軽減策を披露、法人税問題は一層、陰に隠れた。
最小不幸社会と資本主義の行方
 ただ、経済人の政府与党に対する最大の関心は実はもっと大きなところにある。それは「日本の資本主義をどうしたいのか」ということだ。
 資本主義の要である起業意欲はこの数年で萎え、様々な足かせや国内新興市場の低迷で、海外への本社機能の移転を真剣に検討したり海外証券市場での株式公開を目指したりする動きが出始めている。大きな流れになってしまってからでは取り返しのつかないことになる。
 参院選に向けた民主党のマニフェストはこう記す。
 改革の目標は、「最小不幸社会」の実現です。幸福は個々人の価値観によって異なり、これは権力が関与すべきではありません。(中略)権力は人々の不幸の原因を取り除くことにこそ使うべきだと考えています――。
 首相は6月8日の就任会見の第一声でも同趣旨のことを述べた。学生時代に読んだオルダス・ハックスリーの小説「すばらしい新世界」(1932年)を反面教師とした表現だ。この小説はおぞましい国家管理のユートピアを描き出していた。
 弱者に手を差し伸べるというメッセージに誰も表立って抗うことは難しい。
 ただ、のけぞった経済人は少なくない。「経済をまず大きくしてみんなで幸せになり、それでも貧困などで苦しむ不幸な人がいればしっかり支援すると言ってほしかった」。経済成長で雇用を生み、所得を引き上げ、税収を確保しなければ、政府が貧困対策などに持続的に手を差し伸べることは難しい。
 政治家の目標の1つは権力の頂点。登り方は、左とか右のルートとかいろいろな道筋があるが、権力を握った以上、「不幸を最小にするためにも、幸福の最大化を目指してほしい」(ある上場企業経営者)。ただ、政治家は過去に発した言葉に縛られる。
衆院選に向け、「従業員指名監査役」
 参院選が終われば菅首相の次の戦いが直ちにスタートする。2013年夏までには必ず実施される衆院選である。政権を離さないためには昨夏の衆院選と同様、連合の強力な支援が欠かせない。
 今年4月発足した法制審議会の「会社法制部会」。これまでの商法部会、会社法部会にこれまで労働界の委員はいなかったが、今回、初めて逢見直人・連合副事務局長が就任した。
 連合の悲願は「従業員指名監査役」制度の実現だ。会社法制部会で、逢見氏は「例えば一定以上の数の従業員がいる上場企業など、社会的に大きな影響力を持っている会社については、従業員が指名権を持つ監査役制度を導入すべきだ」と訴えた。
 被選任資格は退職者であろうと「組合が頼りにしている弁護士」でもよく、大事なことは「従業員の手によって選ぶ監査役がガバナンスに関与する」ことだと強調した。経済界だけでなく会社法の学者の多くも眉をひそめる構想だが、民主党政権が続けば実現の可能性は高いようだ。
 というのも、ガバナンス関連でのもう1つの大きな争点になっているのが独立・社外取締役の拡充問題。これは会社法の改正でなくても上場ルールの見直しでも実現できるが、経済界は規制方法にかかわらず、猛反発している。
 海外の機関投資家からみると、生え抜き役員が大半を占める日本の取締役会は「大学の受験生が、自ら採点している」ようにみえるという。
 このため、議決権行使の助言業界などでも独立・社外の拡充を求める意見がかねて根強い。連合の長年の要望を受け入れ、従業員指名監査役制度の創設を後押しする民主党の関係議員にも、独立・社外取締役比率を3分の1以上などに規制すべきだとの論者が多い。
交渉の常套手段
 交渉に勝つ常套手段は相手が最も嫌がることを持ち出すこと。改正作業に入った会社法のガバナンス論でいえば経済界への「脅し」は独立・社外取締役の拡充。これと、従業員指名監査役どちらかをどうしても選べとつめられれば、後者をのむ経営者が大半だろう。
 6月23日、経産省が会社法制部会で示した政策提言に興味深い部分がある。従業員指名監査役の上場企業への「一律の義務付けには慎重な検討が必要と考える」との表現だ。直嶋経産相が了承し、公表されたこの表現は導入反対論ではない。その逆で、実は選択性での導入推進論だ。
 提案の裏にはこんな仕掛けが潜んでいる。従業員指名監査役は選択性とし、これを選任した場合には独立・社外の数や比率を緩和する案である。ある政府関係者は「まだ、交換レートは決まっていないが、次期衆院選をにらめば従業員指名監査役制度は何らかの形で導入されるだろう」とみる。
 前3月期の有価証券報告書から、役員報酬1億円以上の個別開示規制が始まった。「我が党の政策評価もしてほしい」。ある与党関係者が経団連にこう要請、企業による政治献金の支援を依頼した。経団連がこれを断った直後に新規制案が公表され、形ばかりの意見公募を経て施行となった。
 経団連が断固反対する経済法制が実現するという、政権交代の証しだった。会社法改正作業では「開かれた取締役会」構想に反発すればするほど、別の難題をのまざるをえなくなるのかもしれない。しかし、もっとも懸念すべきは資本主義の行方だ。



デジタル教科書 性急な「導入」には反対だ(7月5日付・読売社説)
 学校で使う教科書や教材を小型のパソコン(PC)や電子端末に納めて「デジタル教科書」にする――そんな構想を政府が進めている。
 2015年を目標に全国の小中学生全員に配備する計画だ。実現すれば、5年後には教室の風景が一変するだろう。
 しかし、最初に「導入ありき」の今の議論には、性急で乱暴な印象が拭(ぬぐ)えない。端末機器の選定をにらんで、PCメーカーや通信事業者などの思惑ものぞく。
 教科書のデジタル化は、昨夏の衆院選に際し、民主党政策集に登場した。原口総務相が暮れに発表した「原口ビジョン」で15年の導入を明言、議論に火がついた。
 総務省は、モデル小学校10校でタブレットPCなどを使った実証実験を、近く始める予定だ。
 学校へのPC、ネットワーク(校内LAN)整備や電子黒板の普及などでICT(情報通信技術)化を進めてきた文部科学省にしてみれば、デジタル教科書で総務省に一歩先んじられた格好だ。
 4月に有識者会議を設置して、来年度予算の概算要求に反映させようと議論を急いでいる。
 両省が競合する中で、肝心の教育面の論議が置き去りにされるようでは本末転倒である。
 デジタル教科書が子供たちの教育にどんな功罪をもたらすか。日常的な使用が心身に悪影響を及ぼさないか。そうした点に、徹底した検証と議論が必要だろう。
 導入推進派は効用を説く。語学でネイティブの発音が聞ける、ドリル学習などが効率的にできる、情報活用力が高まり、学力向上にもつながる。
 そうした利便性が確認されるなら、それを生かす方法を考えるのもいいだろう。
 逆に米国で最近、情報機器の常時使用による「注意力散漫」「ディスプレー中毒」などが問題になっていることを指摘し、子供の体や情緒、姿勢、視力などに悪影響がないかを調査すべきだと主張する慎重派の研究者もいる。
 紙の教科書こそ子供の学びにふさわしいという声も根強い。
 今の教科書は、教科用図書として発行されることを前提に、学習指導要領に則(のっと)って編集され、文科省の検定を受けている。
 機能やコンテンツに拡張性があるデジタル教科書が取って代われば、検定制度の抜本的見直しも迫られるだろう。
 全員に配備というのは海外でも例のない取り組みだ。それだけに慎重な議論が肝要だ。
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