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ジワリ衰退 危機感薄く 世界での存在感低下
この20年、日本は「緩慢なる衰退」を続けている。バブル崩壊後の不良債権処理を長引かせた末、いまだにデフレから抜け出せない。政治は混迷し、改革は先送りされたままだ。金融危機に見舞われた米欧は長期停滞を避けようと日本の失敗に学ぼうとしている。世界経済の歴史的転換のなかで日本は「失われた20年」から脱却できるか。戦後最大の岐路を迎えている。
戦後世界を驚嘆させた経済大国は何を間違えたか。成功のおごりか。痛みを先送りする「根拠なき楽観」か。最大の問題は日本人の多くがこの危機に危機感を覚えなくなっているところにある。
冷戦終結でグローバル経済が大転換した時代に日本国内では不良債権処理がもつれにもつれていた。1992年8月、宮沢喜一首相が打ち出した公的資金投入は経済界、旧大蔵省、メディアに反対され、あっさりお蔵入りになる。
それを最初のつまずきとすれば、住宅金融専門会社(住専)の処理は第2のつまずきだ。大蔵省銀行局長として批判の矢面に立った西村吉正早大教授は「もっとうまく収拾していたら、その後の公的資金注入もスムーズだったかもしれないが、住専問題は1度は受けなければならない洗礼だった」と述懐する。
98年10月、柳沢伯夫金融再生担当相は就任していきなり、日本長期信用銀行の破綻に直面する。「宮沢蔵相をはじめ、大銀行の破綻は避けたいとの声は強かったのだが」と漏らす。金融危機の収拾を巡って、政府内は対立する。
柳沢氏は「やってもやっても、もっと不良債権処理を、もっと公的資金注入をといわれた」と語る。金融不安の増幅を警戒する柳沢氏に対し金融担当を兼務することになる竹中平蔵経済財政相は厳しい検査に基づく大胆な不良債権処理と公的資金注入を求めた。
その竹中氏が金融危機回避の瀬戸際で取ったのは現実主義だった。2003年5月、厳格な会計処理で資本不足があらわになった、りそなに対し、株主責任を問わずに公的資金を注入する。「大きすぎてつぶせないというルールに沿った」と竹中氏は述懐する。りそな救済を機に株価は反転し、好循環が始まる。
それにしても不良債権処理には13年もかかった。日本がもたつく間にグローバル経済は回転速度を上げていた。
税制改革は先送り
「なぜ日本は冷戦終結、グローバル化という大転換を強く意識できなかったか。それは冷戦時代に緊張感がなかったからではないか」と行天豊雄国際通貨研究所理事長(元大蔵省財務官)は分析する。
改革の遅れはそれを示す。竹中氏は「小泉改革の後の政権で改革が続かずに中断された。危機が去ったと思って、政府も民間も改革マインドが緩んだ」と指摘する。
マクロ政策の失敗も大きかった。バブルの発生から崩壊、デフレ進行下で金融政策は揺らぐ。失敗を取り返そうとして次の失敗を生んだ。「緩めすぎ、締めすぎ、緩め遅れ」と行天氏はいう。速水優日銀総裁の時代はゼロ金利解除を焦り、結局、未踏の量的緩和に足を踏み入れた。デフレ脱却に「非伝統的手段」は当然だが、金利機能が働かない金融政策が日本経済の構造改善を遅らせたのも事実だ。
税財政政策の失敗は超高齢社会に向かう日本経済に負の遺産を残した。企業がバランスシート調整を急ぎ、「合成の誤謬(ごびゅう)」が生じるなかでは財政の下支えが必要だが、繰り返される財政頼みは先進国最悪の長期債務残高として積み上げられた。
何より本格的な税制改革を実行できなかったことが経済の活力と財政の健全性を損なった。先進国最低クラスの消費税率(5%)と最高水準の法人税率(40%)は何を物語るか。「政治の怠慢の一言につきる」と与謝野馨たちあがれ日本共同代表は反省する。
政治の混迷は「失われた20年」と深くからむ。永田町の権力闘争と理念なき野合、20年で14人という「首相の生産性の高さ」は日本の国際的な信認を失墜させた。
リーマン・ショックを経てグローバル経済の歴史的転換が本格化している。米欧からアジアへのパワーシフトは鮮明だ。サマーズ米国家経済会議委員長はこの大転換を「冷戦終結が小さくみえるほど歴史的だ」と考える。日本は改革でアジアの時代に好機を見いだすか。それとも内向きに傾斜して「緩慢なる衰退」から大停滞への道をたどるか。重大な選択を迫られている。
“リアル”との連携を強化、ハンゲームが新たに提案する「リアゲー」とは?
「NAVER」「Livedoor」などのネットサービスを運営するNHN Japanは7月26日、同社のゲームポータルサイト「ハンゲーム」の新戦略を発表した。その中で同社は、新しいゲームの形となる「リアゲー」というスタイルを提案している。リアゲーとは一体どのようなもので、ゲームの形をどのように変えていこうとしているのだろうか?
現在地や天気、時間などをゲームに反映
最近、ポータルサイトの「Livedoor」を買収したことで話題となったNHN Japan。だが、同社の事業の中心は、実はゲームポータルサイト「ハンゲーム」の運営である。ハンゲームは特にPCで高い人気を誇るサービスで、日本に上陸してから今年で10周年を迎える。
そこで今回、報道関係者向けに「Hangame ex 2010」というイベントを開催、ハンゲームに関する同社の今後の戦略が説明された。その中で、社長である森川亮氏が最初に取り上げたのが「リアゲー」である。
現在、TwitterやUstreamに代表されるリアルタイム性を重視したネットサービスが人気を博してきており、同社もこのリアルタイム性を重視する方針を打ち出している。だが森川氏は、ハンゲームにおいて「PCではチャットなどでリアルタイム性を提供してきたが、携帯電話向けに関しては悩んできた」と話し、その回答として示したたのが“リアゲー”になるという。
リアゲーとは、文字通り“リアルタイムゲーム”の略で、ゲームに“今”を反映させているのが大きな特徴だ。つまり、GPSによる位置情報や現在の時刻、その場所の天気などによって、ゲームのイベントが変化したり、手に入るアイテムが変化したりするのだ。「コロプラ」「ケータイ国盗り合戦」など携帯電話の位置情報を利用したゲームはいくつか存在するが、リアゲーはこれをさらに進めた形になる。
例えば、ハンゲーム内で提供されている「不思議な生き物 ねんどん」の場合、リアゲーに対応することで、遊んでいる場所で雨が降っていると、キャラクターが成長するという仕組みが取り入れられている。またPC側とケータイ側が勇者軍、魔王軍にそれぞれ分かれて戦う、9月リリース予定のRPG「トライフルストーリー」においては、昼間は勇者軍が、夜は魔王軍が有利になるなど時間によって優劣が変化するほか、場所によってその地域限定のモンスターが現れるなどの仕組みを用意するという。
ゲームで割引クーポンを入手、リアル店舗とも連携
リアゲーによるリアルタイム性をさらに生かす要素として、もう1つ新たに提供されるのが「イマコレ」だ。イマコレとは、利用する場所や時間、 天気に応じてゲームのミッションが指示され、それをクリアするとカードが手に入るというもの。
このカードには、アイテムやモンスター、美少女などゲームと連動したものが用意されており、コレクションとして楽しむことができる。だがカードには単に集めるだけでなく、別の仕組みも用意されている。
実はカードには、裏側に提携する店舗で利用可能なクーポンが用意されている場合があり、これを利用することで商品の割引など特定のサービスを受けたりできるようになるのだ。例えば宅配ピザの「PIZZA-LA」とのタイアップにおいては、カードを集めることで割引クーポンを獲得できるキャンペーンなどが提供されるという。
携帯電話でメールマガジン会員に登録すると割引クーポンが手に入るというサービスは、現在多くの飲食店で実施されている。だがイマコレでは、それにゲームによる楽しさを結びつけることで、ゲームをリアル店舗のプロモーションや販売促進に広く活用しようとしているのだ。ゲーム内だけにとどまらないリアル社会との結び付きの強化がイマコレの大きなポイントになっているといえる。
スマートフォン対応やプラットフォームのオープン化も
ハンゲームの新しい戦略は、リアゲー以外にもいくつか挙げられている。1つはスマートフォンへの展開だ。発表会同日の27日、XperiaなどのAndroid端末に向けたハンゲームがサービスを開始。いくつかのカジュアルゲームや、「イマコレ」などのサービスが利用できるようになっている。またiPhone版についても、審査の関係でやや時間がかかるものの、近日中に提供するとしている。
そしてもう1つは、ハンゲームのプラットフォームのオープン化だ。アプリケーションプラットフォームのオープン化は、mixiやモバゲータウン、グリーなどのSNSが先行しており、その上で多数の“ソーシャルゲーム”と呼ばれるゲームが流通、100万単位の会員を集めるゲームが多く誕生するなど高い人気を博している。オンラインゲーム&コミュニティサービスの元祖ともいうべきハンゲームもこの流れにのり、プラットフォームのオープン化を進めてきたようだ。
オープンプラットフォームとしては後発となるものの、ハンゲームのメリットして、PC・携帯電話・スマートフォンを1つのIDで利用できるという点、ハンゲームだけでなくLivedoorでもサービスを提供することによる集客力の高さ、そして開発者に向けた環境が整っていることを挙げている。
リアル社会と密接に連動したゲームが、プラットフォームのオープン化によって、さまざまなデバイスに向けて多数提供されること。この流れは、従来のゲームのあり方や楽しみ方を大きく変えていくというだけでなく、実際の店舗や商品を持つ企業のプロモーション手段として活用されるなど、ゲームの娯楽にとどまらない可能性も示している、ともいえそうだ。
上場企業の4~6月、経常益5倍 新興国需要の回復で
リーマン・ショック前の9割に
上場企業の収益が急回復している。2010年4~6月期決算は全産業の経常利益が前年同期の5倍に増加。新興国需要とコスト削減を支えに自動車や電機など製造業の回復が鮮明となった。経常利益は08年のリーマン・ショック前の9割の水準で、最初の四半期を終えた時点での通期予想に対する進ちょく率は29%に達した。だが円高や先進国の景気動向など懸念材料は多く、下期業績については慎重に見る企業が目立つ。
30日までに決算を発表した3月期決算企業(金融・新興3市場を除く)559社を対象に日本経済新聞社が集計した。社数で全体の36%、株式の時価総額で62%を占める。
全産業の売上高は14%増えた。リーマン以降の世界不況に直面し、企業はコスト削減を推進。収益構造がスリム化したところに新興国需要の拡大などで売上高が増え、事業や財務活動で稼いだ利益を示す経常利益は3兆8300億円と1年前の5倍に膨らんだ。1~3月期と比べると46%増。リーマン前の08年4~6月期との比較では、売上高が86%、経常利益が93%の水準まで回復した。
経常利益の改善額3兆700億円のうち60%を電機と自動車が占めた。パナソニックは税引き前損益が1300億円強改善。薄型テレビなどのデジタル家電や白物家電など「全部門で売り上げが好調に推移した」(上野山実常務)。中国向けの売上高は75%の増加となった。ソニーは薄型テレビやパソコンなど「新興国向けが40%伸びた」(加藤優・最高財務責任者=CFO)。
自動車・部品も経常損益が7000億円近く改善し黒字になった。日産自動車は世界販売台数が3割増加。小型車「ティーダ」などの好調で中国で7割近く販売台数を増やした。コマツは中国で建設機械の売り上げが8割近く増えた。
固定費削減や原価低減など前期までのリストラの効果も大きい。東芝は前期に人件費や研究開発費などコストを4300億円削減した。売上高は08年の水準を下回ったが営業利益は4~6月期として最高になった。
非製造業では、資源高で商社の利益が2.3倍となり、海運はコンテナ船事業が好調で黒字転換した。ただ、小売りや不動産は国内の不振が響き減益になった。
新キンドルは日本語対応 電子書籍端末の競争激化へ
米インターネット小売り大手アマゾン・コムが8月下旬に出荷を始める電子書籍端末キンドルの新型が、日本語に対応していることが分かった。同社が31日までに発表した。日本ではソニーやシャープも電子書籍端末の投入を予定。競争激化が予想され、日本語対応のキンドルがどこまで受け入れられるか注目される。
アマゾンによると新型キンドルは韓国語、中国語にも対応する。無線LANと第3世代携帯電話(3G)の高速データ通信に対応したモデルは189ドル(約1万6千円)、無線LANのみに対応した最廉価版は139ドル。米アマゾンのサイトで予約を受け付けており、日本からも注文できる。
グンゼ、携帯向けタッチパネルフィルム参入
グンゼは携帯電話や携帯ゲーム機向けのタッチパネル用フィルム事業に参入する。年内にも3.5インチ型の試作品を作り、受注活動を開始。2010~11年に量産を始める。同社は10インチ型など中大型のパネルが主力だったが、スマートフォン(高機能携帯電話)向けなどの需要が急拡大しているのに対応する。早期に5億円程度の売り上げを目指す。
同社は台湾工場(台南県)で、タッチパネル用のITO(酸化インジウムすず)フィルムを生産しており、新たに携帯向けの量産体制を整える。韓国のサムスン電子やLG電子など、主に海外の端末メーカー向けの供給を想定している。
これまでグンゼはフィルムの製造からタッチパネルの組み立てまで一貫生産をしてきた。ただ、海外の端末メーカーは自社のグループ内でタッチパネルの組み立てを始めるようになってきたことから、フィルムでの供給を拡大する。
調査会社のシード・プランニング(東京・台東)によると、タッチパネルの世界市場は15年には09年比3.6倍の約1兆2600億円に急拡大する見通し。スマートフォンが需要増をけん引する。これまでパソコンや電子看板など中・大型向けに特化していたグンゼも事業戦略を見直し、成長市場の需要取り込みを図る。
子ども手当「上乗せ断念」 来年も1万3千円、追加財源確保は困難
政府は31日、平成23年度予算編成の焦点である「子ども手当」の支給額について、現在の月額1万3千円からの上乗せを断念する方向で検討に入った。「今年度限りの暫定措置」と説明していた地方自治体や企業による財源負担も継続する。国の財政が厳しく、追加財源確保が困難と判断した。「23年度以降は月額2万6千円」としていた昨年夏の政権公約(マニフェスト)の度重なる方針転換には批判が必至で、今後の調整は難航が予想される。
政府が支給額を月1万3千円にとどめる検討に入ったのは、今年度2兆2554億円もかかった支給総額が、一時的な子供の数の増加で、来年度は約2・7兆円に膨らむこともある。
子ども手当を上積みするには、月額1千円アップするごとに約2千億円の財源が必要。厚生労働省の予算全体が大幅増の見込みの中、子ども手当の予算をさらに獲得することは極めて難しいと判断している。
民主党の参院選マニフェストでは、子ども手当について「地域の実情に応じて、現物サービスにも代えられる」として待機児童の解消などに活用する考えを打ち出した。政府としてはこうした保育サービスを拡充させることで、国民の理解を求めたい考えだ。
台湾の通販サイト、日本語で買い物 楽天、国際展開へ布石
楽天は主力のインターネット通販サービスで国際取引を本格的に始める。年内に台湾のネット通販サイトに出店する企業が日本向けに商品を販売できたり、台湾の消費者が日本の商品を容易に買えたりする仕組みをつくる。楽天は欧米とアジアの合計6カ国・地域への進出を決定済み。将来は世界各国の通販サイトであらゆる商品を互いに売買できる体制を目指す。
台湾で展開する仮想商店街「楽天市場台湾」の出店企業が日本向けに商品を販売しやすくする。年末までに75店舗のサイトの日本語化や日本語での顧客サポートを支援する。果物やファッション関連商品など200点以上を日本向けに販売する。日本の消費者は「楽天市場」から「楽天市場台湾」内の日本語サイトに簡単に移動して商品を購入できる。日本で使うクレジットカードで決済できる。楽天市場台湾には約1400店が出店しており、対象を今後拡大する。
9月までには、日本の「楽天市場」に出店する7800店・1600万以上の商品を、台湾の同社のサイトから検索機能を使って購入できるようにする。
楽天は中国ネット大手の百度(バイドゥ)と組んで今秋に中国でネット通販サイトの運営も始める予定。日本、台湾、中国サイトの連携を進めて、各国間で売買できる体制を整える。ネット通販では、日本のヤフーが中国アリババグループの淘宝網(タオバオ)と組んで、中国―日本間の商品売買を始めている。
職員全員がツイッターで受発信 佐賀県武雄市、全国初
佐賀県武雄市は9月1日から全職員425人にミニブログ「ツイッター」のアカウントを持たせ、イベントや福祉などの情報を発信したり、市民から行政への要望を受け付けたりする。同市によると、職員全員がツイッターのアカウントを持って業務にあたるのは全国初という。
ツイッターは140字以内で文章を“つぶやく”ミニブログ。同市の樋渡啓祐市長が5月からツイッターを本格的に始め、難病の患者から行政サービスへの苦情を受け、迅速に対応。これをきっかけに全職員にツイッターのアカウントを登録させ、業務に有効活用させることにした。
職員はイベントの込み具合の情報をリアルタイムで書き込んだり、大雨など災害時に現場の状況を迅速に発信し避難などに役立てたりしてもらう。市民から市の行政サービスへの要望もツイッターで受けられるようにする。
市役所内でも市長が就業前にツイッターで職員への指示を出し、職員がツイッターで回答するケースなどを想定。樋渡市長は「字数が限られているので要点を簡潔に伝えてもらえる。ブログに比べて使いやすい」と利便性を説く。
自治体が市町村単位でツイッターのアカウントを持ったり、首長がツイッターを活用したりしている例は少なくないが、職員全員がアカウントを持つのは初の試みだ。
日経社説
米景気の減速に日本は警戒を怠るな
米経済の減速傾向がはっきりしてきた。個人消費が盛り上がりを欠き、望ましくない物価下落も心配されだした。日本にはとくに円高・ドル安という形で影響が及ぶだけに、警戒が怠れない。
先週末発表された4~6月期の米実質成長率は前期比年率2.4%に鈍化した。気になるのは中身である。国内総生産(GDP)の7割を占める消費がさえない。企業が雇用拡大になお慎重なため、家計が先行き不安から財布のひもを緩めない。
米政府が住宅取得減税を4月末に打ち切り、住宅市場が息切れしたことの影響もある。政策の下支えがなくなると、景気が失速する。その姿は、バブル崩壊後の日本を想起させる。設備投資の拡大は好材料だが、所得に比べて過大な借金を抱えた米家計の足取りが重いなか、持続的な成長の見取り図は描きにくい。
いきおい、需要が供給を下回る需給ギャップの解消が遅れ気味だ。失業率は9%台半ばで高止まりし、食品・エネルギーを除いた消費者物価上昇率が1%を下回っている。米連邦準備理事会(FRB)内部ではデフレのリスクが警戒されだした。
GDPの発表を受けた外国為替市場では一時、1ドル=85円台まで円高が進んだ。円高・ドル安を促す大きな要因が、米国側に2つある。
ひとつは景気減速とデフレ懸念への政策対応。米国も財政赤字は深刻で一層の財政出動には限度がある。景気テコ入れは金融緩和に頼らざるを得ない。バーナンキFRB議長も、追加緩和の用意を見せている。米金利が低下すれば、その分だけ円高・ドル安が進みやすくなる。
もうひとつは、米貿易収支の悪化だ。春先以降、米国の貿易赤字が再び増え出したのは、欧州の金融混乱でユーロ相場が大幅安となったためだ。外需拡大による景気回復を目指すオバマ政権には痛手だし、中間選挙を控えて米議会の保護主義圧力は高まろう。その辺の事情を織り込みドルは売られやすくなっている。
日本の景気に対しても、米景気の先行きと為替相場の動向は重要な意味を持っている。輸出の落ち込みで日本の鉱工業生産が6月に前月比マイナスになるなど、外需主導の回復に黄信号がともりだした。
今の水準から一層の円高になるようだと、経営者や投資家の心理を冷やす恐れがある。とりわけ米国が追加緩和に動くような際に、日本が手をこまぬいていれば円高リスクは高まる。政府・日銀は事態に目を凝らし、いざという際に機動的な行動に出る態勢を整えておくべきだ。
この20年、日本は「緩慢なる衰退」を続けている。バブル崩壊後の不良債権処理を長引かせた末、いまだにデフレから抜け出せない。政治は混迷し、改革は先送りされたままだ。金融危機に見舞われた米欧は長期停滞を避けようと日本の失敗に学ぼうとしている。世界経済の歴史的転換のなかで日本は「失われた20年」から脱却できるか。戦後最大の岐路を迎えている。
戦後世界を驚嘆させた経済大国は何を間違えたか。成功のおごりか。痛みを先送りする「根拠なき楽観」か。最大の問題は日本人の多くがこの危機に危機感を覚えなくなっているところにある。
冷戦終結でグローバル経済が大転換した時代に日本国内では不良債権処理がもつれにもつれていた。1992年8月、宮沢喜一首相が打ち出した公的資金投入は経済界、旧大蔵省、メディアに反対され、あっさりお蔵入りになる。
それを最初のつまずきとすれば、住宅金融専門会社(住専)の処理は第2のつまずきだ。大蔵省銀行局長として批判の矢面に立った西村吉正早大教授は「もっとうまく収拾していたら、その後の公的資金注入もスムーズだったかもしれないが、住専問題は1度は受けなければならない洗礼だった」と述懐する。
98年10月、柳沢伯夫金融再生担当相は就任していきなり、日本長期信用銀行の破綻に直面する。「宮沢蔵相をはじめ、大銀行の破綻は避けたいとの声は強かったのだが」と漏らす。金融危機の収拾を巡って、政府内は対立する。
柳沢氏は「やってもやっても、もっと不良債権処理を、もっと公的資金注入をといわれた」と語る。金融不安の増幅を警戒する柳沢氏に対し金融担当を兼務することになる竹中平蔵経済財政相は厳しい検査に基づく大胆な不良債権処理と公的資金注入を求めた。
その竹中氏が金融危機回避の瀬戸際で取ったのは現実主義だった。2003年5月、厳格な会計処理で資本不足があらわになった、りそなに対し、株主責任を問わずに公的資金を注入する。「大きすぎてつぶせないというルールに沿った」と竹中氏は述懐する。りそな救済を機に株価は反転し、好循環が始まる。
それにしても不良債権処理には13年もかかった。日本がもたつく間にグローバル経済は回転速度を上げていた。
税制改革は先送り
「なぜ日本は冷戦終結、グローバル化という大転換を強く意識できなかったか。それは冷戦時代に緊張感がなかったからではないか」と行天豊雄国際通貨研究所理事長(元大蔵省財務官)は分析する。
改革の遅れはそれを示す。竹中氏は「小泉改革の後の政権で改革が続かずに中断された。危機が去ったと思って、政府も民間も改革マインドが緩んだ」と指摘する。
マクロ政策の失敗も大きかった。バブルの発生から崩壊、デフレ進行下で金融政策は揺らぐ。失敗を取り返そうとして次の失敗を生んだ。「緩めすぎ、締めすぎ、緩め遅れ」と行天氏はいう。速水優日銀総裁の時代はゼロ金利解除を焦り、結局、未踏の量的緩和に足を踏み入れた。デフレ脱却に「非伝統的手段」は当然だが、金利機能が働かない金融政策が日本経済の構造改善を遅らせたのも事実だ。
税財政政策の失敗は超高齢社会に向かう日本経済に負の遺産を残した。企業がバランスシート調整を急ぎ、「合成の誤謬(ごびゅう)」が生じるなかでは財政の下支えが必要だが、繰り返される財政頼みは先進国最悪の長期債務残高として積み上げられた。
何より本格的な税制改革を実行できなかったことが経済の活力と財政の健全性を損なった。先進国最低クラスの消費税率(5%)と最高水準の法人税率(40%)は何を物語るか。「政治の怠慢の一言につきる」と与謝野馨たちあがれ日本共同代表は反省する。
政治の混迷は「失われた20年」と深くからむ。永田町の権力闘争と理念なき野合、20年で14人という「首相の生産性の高さ」は日本の国際的な信認を失墜させた。
リーマン・ショックを経てグローバル経済の歴史的転換が本格化している。米欧からアジアへのパワーシフトは鮮明だ。サマーズ米国家経済会議委員長はこの大転換を「冷戦終結が小さくみえるほど歴史的だ」と考える。日本は改革でアジアの時代に好機を見いだすか。それとも内向きに傾斜して「緩慢なる衰退」から大停滞への道をたどるか。重大な選択を迫られている。
“リアル”との連携を強化、ハンゲームが新たに提案する「リアゲー」とは?
「NAVER」「Livedoor」などのネットサービスを運営するNHN Japanは7月26日、同社のゲームポータルサイト「ハンゲーム」の新戦略を発表した。その中で同社は、新しいゲームの形となる「リアゲー」というスタイルを提案している。リアゲーとは一体どのようなもので、ゲームの形をどのように変えていこうとしているのだろうか?
現在地や天気、時間などをゲームに反映
最近、ポータルサイトの「Livedoor」を買収したことで話題となったNHN Japan。だが、同社の事業の中心は、実はゲームポータルサイト「ハンゲーム」の運営である。ハンゲームは特にPCで高い人気を誇るサービスで、日本に上陸してから今年で10周年を迎える。
そこで今回、報道関係者向けに「Hangame ex 2010」というイベントを開催、ハンゲームに関する同社の今後の戦略が説明された。その中で、社長である森川亮氏が最初に取り上げたのが「リアゲー」である。
現在、TwitterやUstreamに代表されるリアルタイム性を重視したネットサービスが人気を博してきており、同社もこのリアルタイム性を重視する方針を打ち出している。だが森川氏は、ハンゲームにおいて「PCではチャットなどでリアルタイム性を提供してきたが、携帯電話向けに関しては悩んできた」と話し、その回答として示したたのが“リアゲー”になるという。
リアゲーとは、文字通り“リアルタイムゲーム”の略で、ゲームに“今”を反映させているのが大きな特徴だ。つまり、GPSによる位置情報や現在の時刻、その場所の天気などによって、ゲームのイベントが変化したり、手に入るアイテムが変化したりするのだ。「コロプラ」「ケータイ国盗り合戦」など携帯電話の位置情報を利用したゲームはいくつか存在するが、リアゲーはこれをさらに進めた形になる。
例えば、ハンゲーム内で提供されている「不思議な生き物 ねんどん」の場合、リアゲーに対応することで、遊んでいる場所で雨が降っていると、キャラクターが成長するという仕組みが取り入れられている。またPC側とケータイ側が勇者軍、魔王軍にそれぞれ分かれて戦う、9月リリース予定のRPG「トライフルストーリー」においては、昼間は勇者軍が、夜は魔王軍が有利になるなど時間によって優劣が変化するほか、場所によってその地域限定のモンスターが現れるなどの仕組みを用意するという。
ゲームで割引クーポンを入手、リアル店舗とも連携
リアゲーによるリアルタイム性をさらに生かす要素として、もう1つ新たに提供されるのが「イマコレ」だ。イマコレとは、利用する場所や時間、 天気に応じてゲームのミッションが指示され、それをクリアするとカードが手に入るというもの。
このカードには、アイテムやモンスター、美少女などゲームと連動したものが用意されており、コレクションとして楽しむことができる。だがカードには単に集めるだけでなく、別の仕組みも用意されている。
実はカードには、裏側に提携する店舗で利用可能なクーポンが用意されている場合があり、これを利用することで商品の割引など特定のサービスを受けたりできるようになるのだ。例えば宅配ピザの「PIZZA-LA」とのタイアップにおいては、カードを集めることで割引クーポンを獲得できるキャンペーンなどが提供されるという。
携帯電話でメールマガジン会員に登録すると割引クーポンが手に入るというサービスは、現在多くの飲食店で実施されている。だがイマコレでは、それにゲームによる楽しさを結びつけることで、ゲームをリアル店舗のプロモーションや販売促進に広く活用しようとしているのだ。ゲーム内だけにとどまらないリアル社会との結び付きの強化がイマコレの大きなポイントになっているといえる。
スマートフォン対応やプラットフォームのオープン化も
ハンゲームの新しい戦略は、リアゲー以外にもいくつか挙げられている。1つはスマートフォンへの展開だ。発表会同日の27日、XperiaなどのAndroid端末に向けたハンゲームがサービスを開始。いくつかのカジュアルゲームや、「イマコレ」などのサービスが利用できるようになっている。またiPhone版についても、審査の関係でやや時間がかかるものの、近日中に提供するとしている。
そしてもう1つは、ハンゲームのプラットフォームのオープン化だ。アプリケーションプラットフォームのオープン化は、mixiやモバゲータウン、グリーなどのSNSが先行しており、その上で多数の“ソーシャルゲーム”と呼ばれるゲームが流通、100万単位の会員を集めるゲームが多く誕生するなど高い人気を博している。オンラインゲーム&コミュニティサービスの元祖ともいうべきハンゲームもこの流れにのり、プラットフォームのオープン化を進めてきたようだ。
オープンプラットフォームとしては後発となるものの、ハンゲームのメリットして、PC・携帯電話・スマートフォンを1つのIDで利用できるという点、ハンゲームだけでなくLivedoorでもサービスを提供することによる集客力の高さ、そして開発者に向けた環境が整っていることを挙げている。
リアル社会と密接に連動したゲームが、プラットフォームのオープン化によって、さまざまなデバイスに向けて多数提供されること。この流れは、従来のゲームのあり方や楽しみ方を大きく変えていくというだけでなく、実際の店舗や商品を持つ企業のプロモーション手段として活用されるなど、ゲームの娯楽にとどまらない可能性も示している、ともいえそうだ。
上場企業の4~6月、経常益5倍 新興国需要の回復で
リーマン・ショック前の9割に
上場企業の収益が急回復している。2010年4~6月期決算は全産業の経常利益が前年同期の5倍に増加。新興国需要とコスト削減を支えに自動車や電機など製造業の回復が鮮明となった。経常利益は08年のリーマン・ショック前の9割の水準で、最初の四半期を終えた時点での通期予想に対する進ちょく率は29%に達した。だが円高や先進国の景気動向など懸念材料は多く、下期業績については慎重に見る企業が目立つ。
30日までに決算を発表した3月期決算企業(金融・新興3市場を除く)559社を対象に日本経済新聞社が集計した。社数で全体の36%、株式の時価総額で62%を占める。
全産業の売上高は14%増えた。リーマン以降の世界不況に直面し、企業はコスト削減を推進。収益構造がスリム化したところに新興国需要の拡大などで売上高が増え、事業や財務活動で稼いだ利益を示す経常利益は3兆8300億円と1年前の5倍に膨らんだ。1~3月期と比べると46%増。リーマン前の08年4~6月期との比較では、売上高が86%、経常利益が93%の水準まで回復した。
経常利益の改善額3兆700億円のうち60%を電機と自動車が占めた。パナソニックは税引き前損益が1300億円強改善。薄型テレビなどのデジタル家電や白物家電など「全部門で売り上げが好調に推移した」(上野山実常務)。中国向けの売上高は75%の増加となった。ソニーは薄型テレビやパソコンなど「新興国向けが40%伸びた」(加藤優・最高財務責任者=CFO)。
自動車・部品も経常損益が7000億円近く改善し黒字になった。日産自動車は世界販売台数が3割増加。小型車「ティーダ」などの好調で中国で7割近く販売台数を増やした。コマツは中国で建設機械の売り上げが8割近く増えた。
固定費削減や原価低減など前期までのリストラの効果も大きい。東芝は前期に人件費や研究開発費などコストを4300億円削減した。売上高は08年の水準を下回ったが営業利益は4~6月期として最高になった。
非製造業では、資源高で商社の利益が2.3倍となり、海運はコンテナ船事業が好調で黒字転換した。ただ、小売りや不動産は国内の不振が響き減益になった。
新キンドルは日本語対応 電子書籍端末の競争激化へ
米インターネット小売り大手アマゾン・コムが8月下旬に出荷を始める電子書籍端末キンドルの新型が、日本語に対応していることが分かった。同社が31日までに発表した。日本ではソニーやシャープも電子書籍端末の投入を予定。競争激化が予想され、日本語対応のキンドルがどこまで受け入れられるか注目される。
アマゾンによると新型キンドルは韓国語、中国語にも対応する。無線LANと第3世代携帯電話(3G)の高速データ通信に対応したモデルは189ドル(約1万6千円)、無線LANのみに対応した最廉価版は139ドル。米アマゾンのサイトで予約を受け付けており、日本からも注文できる。
グンゼ、携帯向けタッチパネルフィルム参入
グンゼは携帯電話や携帯ゲーム機向けのタッチパネル用フィルム事業に参入する。年内にも3.5インチ型の試作品を作り、受注活動を開始。2010~11年に量産を始める。同社は10インチ型など中大型のパネルが主力だったが、スマートフォン(高機能携帯電話)向けなどの需要が急拡大しているのに対応する。早期に5億円程度の売り上げを目指す。
同社は台湾工場(台南県)で、タッチパネル用のITO(酸化インジウムすず)フィルムを生産しており、新たに携帯向けの量産体制を整える。韓国のサムスン電子やLG電子など、主に海外の端末メーカー向けの供給を想定している。
これまでグンゼはフィルムの製造からタッチパネルの組み立てまで一貫生産をしてきた。ただ、海外の端末メーカーは自社のグループ内でタッチパネルの組み立てを始めるようになってきたことから、フィルムでの供給を拡大する。
調査会社のシード・プランニング(東京・台東)によると、タッチパネルの世界市場は15年には09年比3.6倍の約1兆2600億円に急拡大する見通し。スマートフォンが需要増をけん引する。これまでパソコンや電子看板など中・大型向けに特化していたグンゼも事業戦略を見直し、成長市場の需要取り込みを図る。
子ども手当「上乗せ断念」 来年も1万3千円、追加財源確保は困難
政府は31日、平成23年度予算編成の焦点である「子ども手当」の支給額について、現在の月額1万3千円からの上乗せを断念する方向で検討に入った。「今年度限りの暫定措置」と説明していた地方自治体や企業による財源負担も継続する。国の財政が厳しく、追加財源確保が困難と判断した。「23年度以降は月額2万6千円」としていた昨年夏の政権公約(マニフェスト)の度重なる方針転換には批判が必至で、今後の調整は難航が予想される。
政府が支給額を月1万3千円にとどめる検討に入ったのは、今年度2兆2554億円もかかった支給総額が、一時的な子供の数の増加で、来年度は約2・7兆円に膨らむこともある。
子ども手当を上積みするには、月額1千円アップするごとに約2千億円の財源が必要。厚生労働省の予算全体が大幅増の見込みの中、子ども手当の予算をさらに獲得することは極めて難しいと判断している。
民主党の参院選マニフェストでは、子ども手当について「地域の実情に応じて、現物サービスにも代えられる」として待機児童の解消などに活用する考えを打ち出した。政府としてはこうした保育サービスを拡充させることで、国民の理解を求めたい考えだ。
台湾の通販サイト、日本語で買い物 楽天、国際展開へ布石
楽天は主力のインターネット通販サービスで国際取引を本格的に始める。年内に台湾のネット通販サイトに出店する企業が日本向けに商品を販売できたり、台湾の消費者が日本の商品を容易に買えたりする仕組みをつくる。楽天は欧米とアジアの合計6カ国・地域への進出を決定済み。将来は世界各国の通販サイトであらゆる商品を互いに売買できる体制を目指す。
台湾で展開する仮想商店街「楽天市場台湾」の出店企業が日本向けに商品を販売しやすくする。年末までに75店舗のサイトの日本語化や日本語での顧客サポートを支援する。果物やファッション関連商品など200点以上を日本向けに販売する。日本の消費者は「楽天市場」から「楽天市場台湾」内の日本語サイトに簡単に移動して商品を購入できる。日本で使うクレジットカードで決済できる。楽天市場台湾には約1400店が出店しており、対象を今後拡大する。
9月までには、日本の「楽天市場」に出店する7800店・1600万以上の商品を、台湾の同社のサイトから検索機能を使って購入できるようにする。
楽天は中国ネット大手の百度(バイドゥ)と組んで今秋に中国でネット通販サイトの運営も始める予定。日本、台湾、中国サイトの連携を進めて、各国間で売買できる体制を整える。ネット通販では、日本のヤフーが中国アリババグループの淘宝網(タオバオ)と組んで、中国―日本間の商品売買を始めている。
職員全員がツイッターで受発信 佐賀県武雄市、全国初
佐賀県武雄市は9月1日から全職員425人にミニブログ「ツイッター」のアカウントを持たせ、イベントや福祉などの情報を発信したり、市民から行政への要望を受け付けたりする。同市によると、職員全員がツイッターのアカウントを持って業務にあたるのは全国初という。
ツイッターは140字以内で文章を“つぶやく”ミニブログ。同市の樋渡啓祐市長が5月からツイッターを本格的に始め、難病の患者から行政サービスへの苦情を受け、迅速に対応。これをきっかけに全職員にツイッターのアカウントを登録させ、業務に有効活用させることにした。
職員はイベントの込み具合の情報をリアルタイムで書き込んだり、大雨など災害時に現場の状況を迅速に発信し避難などに役立てたりしてもらう。市民から市の行政サービスへの要望もツイッターで受けられるようにする。
市役所内でも市長が就業前にツイッターで職員への指示を出し、職員がツイッターで回答するケースなどを想定。樋渡市長は「字数が限られているので要点を簡潔に伝えてもらえる。ブログに比べて使いやすい」と利便性を説く。
自治体が市町村単位でツイッターのアカウントを持ったり、首長がツイッターを活用したりしている例は少なくないが、職員全員がアカウントを持つのは初の試みだ。
日経社説
米景気の減速に日本は警戒を怠るな
米経済の減速傾向がはっきりしてきた。個人消費が盛り上がりを欠き、望ましくない物価下落も心配されだした。日本にはとくに円高・ドル安という形で影響が及ぶだけに、警戒が怠れない。
先週末発表された4~6月期の米実質成長率は前期比年率2.4%に鈍化した。気になるのは中身である。国内総生産(GDP)の7割を占める消費がさえない。企業が雇用拡大になお慎重なため、家計が先行き不安から財布のひもを緩めない。
米政府が住宅取得減税を4月末に打ち切り、住宅市場が息切れしたことの影響もある。政策の下支えがなくなると、景気が失速する。その姿は、バブル崩壊後の日本を想起させる。設備投資の拡大は好材料だが、所得に比べて過大な借金を抱えた米家計の足取りが重いなか、持続的な成長の見取り図は描きにくい。
いきおい、需要が供給を下回る需給ギャップの解消が遅れ気味だ。失業率は9%台半ばで高止まりし、食品・エネルギーを除いた消費者物価上昇率が1%を下回っている。米連邦準備理事会(FRB)内部ではデフレのリスクが警戒されだした。
GDPの発表を受けた外国為替市場では一時、1ドル=85円台まで円高が進んだ。円高・ドル安を促す大きな要因が、米国側に2つある。
ひとつは景気減速とデフレ懸念への政策対応。米国も財政赤字は深刻で一層の財政出動には限度がある。景気テコ入れは金融緩和に頼らざるを得ない。バーナンキFRB議長も、追加緩和の用意を見せている。米金利が低下すれば、その分だけ円高・ドル安が進みやすくなる。
もうひとつは、米貿易収支の悪化だ。春先以降、米国の貿易赤字が再び増え出したのは、欧州の金融混乱でユーロ相場が大幅安となったためだ。外需拡大による景気回復を目指すオバマ政権には痛手だし、中間選挙を控えて米議会の保護主義圧力は高まろう。その辺の事情を織り込みドルは売られやすくなっている。
日本の景気に対しても、米景気の先行きと為替相場の動向は重要な意味を持っている。輸出の落ち込みで日本の鉱工業生産が6月に前月比マイナスになるなど、外需主導の回復に黄信号がともりだした。
今の水準から一層の円高になるようだと、経営者や投資家の心理を冷やす恐れがある。とりわけ米国が追加緩和に動くような際に、日本が手をこまぬいていれば円高リスクは高まる。政府・日銀は事態に目を凝らし、いざという際に機動的な行動に出る態勢を整えておくべきだ。
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GPS運用 米欧で一体化
ナビなど精度向上に期待 衛星受注で日本企業に商機
【ワシントン=大石格】車や船舶のナビゲーションなどに利用される米国の全地球測位システム(GPS)と欧州連合(EU)が開発中の欧州版GPS「ガリレオ」の運用が一体化される。米国務省が30日、両システムの「相互運用の確保」についてEUと合意したと発表した。共通の電波信号を使い1つのナビで双方の電波を利用できるようにするもので、相互補完効果でサービスの利用範囲や精度向上を期待できそうだ。
米国務省はGPSとガリレオ以外のシステムとの連携も呼び掛け、世界標準を確立することも歓迎するとしており、新興国などの衛星需要に追い風が吹くと想定される。商用の小型人工衛星などへの参入を目指すNECはシステムに一部変更が必要になっても「大きな投資にならない」とみており、日本企業の商機が広がる可能性もある。
現在、米欧以外の測位システムの分野では、既に独自システムを持つロシア、独自システムの構築を目指すインド、独自のシステムを視野に入れつつガリレオとの連携も探ってきた中国などの動きがある。先行する米国と追う欧州の二大システムの運用一体化は、こうした新興国にも影響を与え、測位システムの勢力図に変化が起きそうだ。
米EUは2004年から両システムの互換性を模索。今回、米EUと関係国が「GPSとガリレオの共用受信機の相互運用と機能向上に関する初期段階の結論」と題した共同声明を作成し、運用一体化を決めた。具体的には、競合関係だったため周波数を異にしていたGPSとガリレオの衛星の電波の周波数を合わせることになりそうだ。
機能面では将来、1つの受信機で複数のシステムを利用できるようになれば、干渉などで電波状態の悪い場所でも、より多くの衛星情報を総合することで正確に位置を特定できる。米国務省によると、GPSのシステムでガリレオのシステムを利用して試した結果、GPS単独型に比べて建物や樹木、地形などが電波を遮る場所で高い機能がみられたという。
カーナビゲーションなど消費者向けでは、今後も買い替えなどは必要ないもよう。だが、船舶や航空機の運航補助など産業用ナビ分野では「航路選択機能の向上につながる」(IHIグループで船舶製造を担うアイ・エイチ・アイマリンユナイテッド)との期待が強い。
米EUは10月に開く地球ナビゲーション衛星システム国際委員会(ICG)の会議に実験結果を報告し、新製品開発などに役立てる考え。携帯電話などの位置情報サービスにも活用されそうだ。
米欧がGPS運用一体化、世界標準に前進 欧州の無料化が焦点に
米国の全地球測位システム(GPS)と欧州連合(EU)が開発中の欧州版GPS「ガリレオ」の運用一体化は、インターネットに続く21世紀の情報インフラといわれる測位システムで世界標準を作る道を開くものといえる。精度向上の限界も指摘されていた米側と、資金難から開発が遅れていたEU側の利害一致が背景だ。ただ具体像はなお明確でなく、無料のGPSに合わせて有料のガリレオを無料化するかどうかなどが今後の焦点となりそうだ。
測位システムは米国が1970年代からGPSの整備を開始し、衛星を打ち上げてきた。外国にも利用を認め、カーナビゲーション(カーナビ)などの民生利用が進んだが、米国の軍事利用が優先されるので、位置情報の精度が落ちたり利用が制限されたりする。最近では米議会の行政監査院(GAO)が2009年、GPS衛星の老朽化を指摘。精度低下に陥る懸念も示しており、打開策を探っていた。
一方、ガリレオは軍事併用の米国に対抗し、EUがGPS以上の機能を追求して開発に取り組んできたシステム。GPSと異なり民生利用のみを想定し、約30基の衛星を打ち上げる構想で、利用者は自分がどこにいるのかという位置情報を高精度に得られることが売り物だった。
だが、EUは資金難に直面。当初は「10年ころ」のシステム構築を目指したが、衛星打ち上げ計画が遅延。日本に協力を打診したが折り合わず、サービス開始を14年に延期していた。
双方の事情から米EUは「共存」に方針転換。今回はガリレオの信号がGPSの軍事信号と干渉して妨害しないよう両者の周波数を調整。双方が妨害電波を発しないことなどでも合意した。
今後は共同作業班で協力体制の詳細を検討する。実際のサービスがどう変わるかはまだ見えないが、ガリレオの利用が有料とされている点への対応が課題となる。米側は有償の情報提供に難色を示し、GPSに合わせて無料化するよう求める構えだが、EU側は明確な態度を示していないといわれる。日本の関連企業などからは「一体運用で新たなコストが発生するのは避けてもらいたい」(クラリオン)と、ガリレオの利用が無料化されない事態への懸念も出ている。
広がる車離れ、世帯あたり保有台数が初の減少
総務省が30日に発表した2009年の全国消費実態調査によると、1世帯(2人以上)あたりの自動車の保有台数(09年10月末時点)は1・414台で、5年前の前回調査より2・2%減少した。
自動車を調査対象に加えた1964年以降、初めての減少となる。
世帯主の世代別では、50歳代以下でいずれも減少しており、車離れは若年層だけでなく中高年層にも広がっている。
都道府県別では、神奈川が7・7%減、千葉が7・5%減、埼玉が7・2%減、東京が6・9%減など、特に南関東で車離れが進んでいる。
イメージアップ 米英でCM放映 中国政府出資で制作
中国の国際的なイメージアップを狙い、中国政府の出資で制作されるテレビCMが、9月に米CNN放送と英BBC放送で放映される。中国紙チャイナ・デーリーが30日、このCM制作を手掛ける会社の関係者1人の話を基に報じた。
同紙によると、国務院新聞弁公室が提案し資金を提供する同CMには、バスケットボールの姚明選手や香港の資産家、李嘉誠氏ら中国の有名人が登場する。また、広告代理店の上海ロウ・アンド・パートナーズの社長補佐、ワン・リジュン氏の話を引用して、同社が30秒のCMのほか、中国に関する15分の映画を制作すると、同紙は伝えた。
英国、インドに大訪問団 急成長市場、関係強化に腐心
インドを訪問したキャメロン英首相は29日、シン首相とニューデリーで会談し、経済など幅広い分野での連携強化で合意した。インドの産業界が世界で存在感を増しているなか、英国にとっても、インドの重要性が高まりつつあることが示された。
保守党と自由民主党による英連立政権は、シン政権に対し、インドとの関係強化が外交政策の最優先課題であるとの合図を送っていた。それを裏付けるかのように、キャメロン首相が率いる訪問団には、50を超える企業の経営幹部をはじめ、ヘイグ外相やオズボーン財務相など主要閣僚も同行している。
英国にとって、インドの重要性は増している。インドのタタ・グループは鉄鋼や自動車メーカーの買収を通じて、英国民を最も多く雇用している民間企業の一つとなった。
インドのハイテク企業は、西欧での事業拡大に向けて英国での進出先を探している。英金融街「シティー」は今後もインド企業による株式上場の継続を望んでいる。
英訪問団は、急速に拡大するインド市場における投資機会の確保を目指している。インド市場では、多国籍企業の参入と、国内の大手コングロマリット(複合企業)の存在によって競争が激化している。それでも、英国企業が狙っている分野は、保険や小売り、航空宇宙分野だ。
キャメロン首相らの今回の訪印で、英印両国はインド軍が英防衛大手BAEシステムズからホーク練習機57機を購入する7億ポンド(約943億円)規模の契約を結んだ。
英国は、インドに対し、欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)の締結を行うよう促している。
キャメロン首相はまた、原子力技術の民生利用についてもインドと協力することを明らかにした。これにより、原子炉部品の製造大手である英ロールス・ロイスといった企業に輸出の道が開かれることになる。
英政府はかつて、1974年のインドによる核実験などを受けて、軍事利用と民生利用の区別がついていないとして輸出を禁止していた。しかし、2008年にインドが米国と原子力の民生利用について協定を結んだことで状況が変わった。世界各国の原子力発電関連企業は、インドの原子力に対する熱意を利用する道を探っている。
英国はインドとの間で、ビザ(査証)の発給やイランに対する対応といった点で足並みが乱れる可能性は残されている。しかし、今回の訪印は時宜にかなったものといえるだろう。
デフレ脱却議連が目標設定 「今後10年で経済成長70%」
民主党の有志議員でつくる「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」(デフレ脱却議連)は30日、総会を開き、今後10年間で70%の経済成長を目指す「デフレ脱却・経済成長プログラム」を可決した。同連盟はこの目標を達成するため、日銀による積極的な金融緩和策を求めていく。
プログラムでは、日本の潜在成長率を実質で年率2.5%と仮定し、2.5%の物価上昇が続くことを前提に、2020年度末までに名目で約70%強の経済成長が実現できると試算している。
こうした経済成長を実現させるため、国家戦略局や内閣官房が経済政策の司令塔になる必要性を強調した。
雇用の需給の逼迫(ひっぱく)がみられる間は、デフレから脱却できていないとみなし、日銀に一定の物価上昇の実現を求める「インフレ目標」の導入も提言している。物価上昇率は年率2~3%を目標とする。
同議連の松原仁会長は「参院選での民主党の敗北は、具体的な政策を出さずに増税議論を持ち込んだことが原因」とした上で、「増税を否定するわけではないが、日銀は(経済成長に必要な)すべての手段を取っていない。経済の復興は日銀の真剣な金融政策から始まる」と話した。
姦通罪女性に「石打ち」死刑判決、イランに批判
【テヘラン=久保健一】イランで、姦通(かんつう)罪に問われた女性に「石打ち刑」による死刑判決が下り、波紋を呼んでいる。
イラン当局は今月、刑執行を見合わせると発表したが、イランの司法制度をめぐる国際的批判が広がっている。
死刑判決を受けたのは、イラン北西部タブリーズに住む女性(43)。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、婚外の「不適切な関係」があったとして「姦通罪」の嫌疑に問われた。女性は否認したが、2007年5月、「石打ち刑」による死刑が確定した。
女性の弁護士からの情報で、「アムネスティ」は先月、死刑の執行中止をイラン政府に要請。司法当局は今月11日、「人道的見地」から、刑の執行を一時延期したとイラン国営通信が報じた。執行法の変更も検討しているとの報道もある。
姦通罪は、イランの刑法にあたる「イスラム処罰法」で規定され、最高刑は死刑。死刑は通常絞首刑だが、姦通罪については特に「石打ち刑」と明記される。被告を胸まで地中に埋め、判事や証人などの投石で公開処刑するものだ。
欧米から「石打ちは中世の刑罰。現代には無用のもの」(ヘイグ英外相)といった批判が相次ぎ、30か国以上で女性の死刑撤回を求める抗議集会が開かれた。
「アムネスティ」によれば、イランでは02年以降、少なくとも6人が「石打ち刑」に処せられた。イラン以外では、サウジアラビアでも適用されている。
2011年新設予定の大学・学部 目立つ医療系、多い“日本初”
少子化による大学全入時代到来が間近に迫ってきた。そのような厳しい状況にもかかわらず、来年も数多くの大学や学部が新設される予定だ。
新設される私立大と主な学部をまとめた。
人材不足が懸念される医療系の学部を新設する大学が多いことが分かる。看護やリハビリテーションの学科が目立つ。新設大学6校中4校が医療系。その中で、福岡に新設予定の純真学園大は、2007年から学生募集を停止した東和大を擁していた学校法人が、同じキャンパスに新しく開学する。
来年は“日本初”となる新設学部が多いのも特徴だ。
日本映画大は日本初の映画の大学。映画学科は既に日本大などに設けられているが、「映画学部」は初めて。専門学校が母体で映画教育には実績がある。
さらに、工学院大と近畿大に新たに設置されるのが「建築学部」だ。工学部や理工学部、さらには芸術系の学部にも、建築“学科”はある。金沢工業大に「環境・建築学部」が置かれているが、建築学部はなかった。
京都華頂大の「現代家政学部」、宇都宮共和大の「子ども生活学部」も初めて登場する。児童教育系の学部・学科は最近、設置が増えている。不況の影響もあって、資格を取得していると就職を有利に運べることから人気が高い。武蔵野大や中村学園大の教育学部にも、児童教育の学科を新設する予定だ。
このほかに関西外国語大の「英語キャリア学部」、広島国際大の「医療経営学部」も新しい。また、京都女子大は女子大初の法学部を設ける。
近畿地区の人気総合大は来年も学部新設が活発だが、関東には予定がない。
これまで両方の地区で盛んだったが、18歳人口の減少が底を打ってから、東西の大学で大学改革の方向性が異なってきているといえそうだ。
橋下知事また私立小中の助成削減方針…私学反発
財政悪化に苦しむ大阪府の橋下徹知事が、「財政構造改革」の目玉として、来年度からの私学助成の見直しを打ち出し、私学関係者が危機感を募らせる。
焦点は私立小中学校への助成金で、橋下知事は「義務教育は公立の受け皿がある。私立に行くなら保護者が対価を支払うべきだ」と大きく切り込む構えだ。知事就任直後の2008年度に25%カットしたことにより、私立小中への助成は全国最低水準になっており、私学側は「これ以上削減されれば、経営が立ち行かない」と戦々恐々。授業料値上げが相次ぐ可能性も高く、保護者からも反対の声が上がる。
◆「仕方ない」◆
「そもそも私立小中への助成は必要か」「(授業料が上がり)大阪は私立小中に通わせにくいと言われても、仕方がない」。府庁で今月中旬に開かれた会議では、橋下知事から削減を示唆する発言が相次いだ。
景気低迷による財政悪化で、府は来年度以降の3年間で475億円をひねり出す財政構造改革案を策定中。8月上旬の発表に向け、今年度予算で総額約680億円に上る私学助成も、議論の俎上(そじょう)に上がった。
◆予算を高校へ◆
私学助成は、橋下知事の就任直後の08年度にも削られ、10年度までの3年間で計169億円がカットされた。今回の削減幅は未定だが、府幹部は「私立小中への助成は全廃という意見もある。知事も相当切り込むつもりだ」と明かす。
私立小中への助成削減分は、今年度から年収350万円未満の世帯を対象に実施している私立高授業料無償化制度に予算を回し、対象を年収680万円未満にまで広げる方針という。
府内では09年度、公立小に通う児童数は約48万8000人で、私立小は約8000人。中学では、公立の生徒数約22万2000人に対し、私立は約2万4000人。「小中で私立に通う子供は1割以下しかいない。高校は、公立入試に落ちて、私立に通うことを余儀なくされる生徒もいる。高校の対策が最優先」というのが橋下知事の理屈だ。
◆「撤回を」◆
府によると、私立中の生徒1人当たりの平均的な教育費は年約80万円。うち4分の1を助成で、残りを授業料収入で賄っており、私学にとって助成削減は大きな打撃となる。
08年度からの削減で、府の私立小中に対する経常費助成額は、児童・生徒1人当たりで小学校が18・3万円、中学校は21・4万円と、近畿の他府県より3~10万円低い。大阪私立中学校高等学校連合会は「なぜ大阪だけ極端に減額されるのか」と、削減撤回を求めていく方針だ。
08年度の削減時には、府内の私立中の半数を超える34校が授業料と入学金を合わせ平均5万8500円の値上げを実施した。大阪私立中学校高等学校保護者会連合会の田尻忠邦顧問は「いじめや不登校を理由に私立に転校する子供もいる。ある程度は保護者負担に配慮してほしい」と主張する。
国家公務員試験に社会人枠…2012年度導入へ
人事院は2012年度から実施する国家公務員の新たな採用試験に、社会人経験者や大学院修了者などを対象とする採用枠を新設する方針を固めた。
優秀な大学新卒者が外資系企業や大学院などに流れている現状を食い止める狙いがある。8月の人事院勧告に合わせた報告に盛り込む予定で、来春にも人事院規則の関連規定を改正する方向だ。
新たな試験制度の導入自体は、08年に成立した国家公務員制度改革基本法で決まっている。従来のキャリア制に基づく試験を廃止し、政策の企画立案能力を重視する「総合職」、的確な事務処理の能力を見る「一般職」、特定分野の専門的知識を重視する「専門職」に区分するという内容だ。
「経験者採用試験」は、この制度改正に合わせて新たに設けるもので、民間企業などで経験を積んだ人が対象となる。合格者は係長級以上に採用する。大学院や法科大学院、公共政策大学院の修了者が対象の「院卒者」試験は総合職の採用枠の中に新たに導入する。
人事院は06年から各省と共同で「経験者採用システム」を実施。志望者は年々増加していることから、経験者採用試験として、本格的に導入することにした。
【東京新聞社説】
ねじれ国会開幕 まずは信頼の構築から
2010年7月31日
民主党の参院選惨敗を受けた「ねじれ国会」が幕を開けた。与野党が角を突き合わせるだけでは何も生まれない。国民生活に必要な政策の実現へ、与野党は信頼関係を築くことから始めてほしい。
参院本会議場の与党席は半分に満たない。民主、自民両党が攻守を入れ替え、約十一カ月ぶりの「ねじれ国会」の再現だ。
しかも、与党は衆院で三分の二に満たず、首相指名、予算、条約以外は与党単独で成立させられない「真性ねじれ」でもある。
新しい状況をどう打開し、国政の停滞を避けるのか。与野党が知恵を出し合わねばならない。
菅直人首相は記者会見で、ねじれ国会を「マイナスとばかりとらえるのではなく、与野党が合意する政策は、かなり困難を伴う政策でも実行が可能になると前向きに受け止めたい」と述べた。
念頭にあるのは、一九九八年参院選後のねじれ国会で、民主党など野党側が提出した金融再生法案を、小渕恵三首相がそのまま受け入れ、金融危機を回避した例だ。
首相は、民主党代表として倒閣に走らなかった当時の判断の正しさを強調し、今回も野党側に協力するよう求めたのだが、より重要なのは、与党側が野党提案を「丸のみ」した決断ではないか。
野党に譲歩を迫るのではなく、首相が、野党側の提案を受け入れる度量を見せる方が先決だ。
初当選組を迎えた参院では、議長に、民主党の西岡武夫議院運営委員長が選出された。
前議長の江田五月氏は、菅首相問責決議案などを採決せずに前国会を閉会し、野党側が与党寄りだと批判して交代を求めていた。
民主党がこれまでの国会運営の不手際を陳謝し、議長交代を受け入れたことは、与野党間の信頼構築に向けた前進と受け止めたい。
ただ自民党は、西岡氏が議運委員長として三年間続けた強硬な国会運営は承服できないとして、議長選挙では白票を投じた。
自民党の言い分も分からないではないが、報復合戦が続けば、国民はいずれ愛想を尽かす。
西岡氏は選出後「新たな局面を迎えた(参)院の円滑な運営に努めたい」とあいさつした。その言葉を違(たが)えず、議事運営を通じて野党側の信頼を得るしかあるまい。
参院選で改選第一党になった自民党は参院で議運委員長ポストを取り戻した。国会運営の要だ。自らが担う責任も、より重くなったと肝に銘じるべきである。
ナビなど精度向上に期待 衛星受注で日本企業に商機
【ワシントン=大石格】車や船舶のナビゲーションなどに利用される米国の全地球測位システム(GPS)と欧州連合(EU)が開発中の欧州版GPS「ガリレオ」の運用が一体化される。米国務省が30日、両システムの「相互運用の確保」についてEUと合意したと発表した。共通の電波信号を使い1つのナビで双方の電波を利用できるようにするもので、相互補完効果でサービスの利用範囲や精度向上を期待できそうだ。
米国務省はGPSとガリレオ以外のシステムとの連携も呼び掛け、世界標準を確立することも歓迎するとしており、新興国などの衛星需要に追い風が吹くと想定される。商用の小型人工衛星などへの参入を目指すNECはシステムに一部変更が必要になっても「大きな投資にならない」とみており、日本企業の商機が広がる可能性もある。
現在、米欧以外の測位システムの分野では、既に独自システムを持つロシア、独自システムの構築を目指すインド、独自のシステムを視野に入れつつガリレオとの連携も探ってきた中国などの動きがある。先行する米国と追う欧州の二大システムの運用一体化は、こうした新興国にも影響を与え、測位システムの勢力図に変化が起きそうだ。
米EUは2004年から両システムの互換性を模索。今回、米EUと関係国が「GPSとガリレオの共用受信機の相互運用と機能向上に関する初期段階の結論」と題した共同声明を作成し、運用一体化を決めた。具体的には、競合関係だったため周波数を異にしていたGPSとガリレオの衛星の電波の周波数を合わせることになりそうだ。
機能面では将来、1つの受信機で複数のシステムを利用できるようになれば、干渉などで電波状態の悪い場所でも、より多くの衛星情報を総合することで正確に位置を特定できる。米国務省によると、GPSのシステムでガリレオのシステムを利用して試した結果、GPS単独型に比べて建物や樹木、地形などが電波を遮る場所で高い機能がみられたという。
カーナビゲーションなど消費者向けでは、今後も買い替えなどは必要ないもよう。だが、船舶や航空機の運航補助など産業用ナビ分野では「航路選択機能の向上につながる」(IHIグループで船舶製造を担うアイ・エイチ・アイマリンユナイテッド)との期待が強い。
米EUは10月に開く地球ナビゲーション衛星システム国際委員会(ICG)の会議に実験結果を報告し、新製品開発などに役立てる考え。携帯電話などの位置情報サービスにも活用されそうだ。
米欧がGPS運用一体化、世界標準に前進 欧州の無料化が焦点に
米国の全地球測位システム(GPS)と欧州連合(EU)が開発中の欧州版GPS「ガリレオ」の運用一体化は、インターネットに続く21世紀の情報インフラといわれる測位システムで世界標準を作る道を開くものといえる。精度向上の限界も指摘されていた米側と、資金難から開発が遅れていたEU側の利害一致が背景だ。ただ具体像はなお明確でなく、無料のGPSに合わせて有料のガリレオを無料化するかどうかなどが今後の焦点となりそうだ。
測位システムは米国が1970年代からGPSの整備を開始し、衛星を打ち上げてきた。外国にも利用を認め、カーナビゲーション(カーナビ)などの民生利用が進んだが、米国の軍事利用が優先されるので、位置情報の精度が落ちたり利用が制限されたりする。最近では米議会の行政監査院(GAO)が2009年、GPS衛星の老朽化を指摘。精度低下に陥る懸念も示しており、打開策を探っていた。
一方、ガリレオは軍事併用の米国に対抗し、EUがGPS以上の機能を追求して開発に取り組んできたシステム。GPSと異なり民生利用のみを想定し、約30基の衛星を打ち上げる構想で、利用者は自分がどこにいるのかという位置情報を高精度に得られることが売り物だった。
だが、EUは資金難に直面。当初は「10年ころ」のシステム構築を目指したが、衛星打ち上げ計画が遅延。日本に協力を打診したが折り合わず、サービス開始を14年に延期していた。
双方の事情から米EUは「共存」に方針転換。今回はガリレオの信号がGPSの軍事信号と干渉して妨害しないよう両者の周波数を調整。双方が妨害電波を発しないことなどでも合意した。
今後は共同作業班で協力体制の詳細を検討する。実際のサービスがどう変わるかはまだ見えないが、ガリレオの利用が有料とされている点への対応が課題となる。米側は有償の情報提供に難色を示し、GPSに合わせて無料化するよう求める構えだが、EU側は明確な態度を示していないといわれる。日本の関連企業などからは「一体運用で新たなコストが発生するのは避けてもらいたい」(クラリオン)と、ガリレオの利用が無料化されない事態への懸念も出ている。
広がる車離れ、世帯あたり保有台数が初の減少
総務省が30日に発表した2009年の全国消費実態調査によると、1世帯(2人以上)あたりの自動車の保有台数(09年10月末時点)は1・414台で、5年前の前回調査より2・2%減少した。
自動車を調査対象に加えた1964年以降、初めての減少となる。
世帯主の世代別では、50歳代以下でいずれも減少しており、車離れは若年層だけでなく中高年層にも広がっている。
都道府県別では、神奈川が7・7%減、千葉が7・5%減、埼玉が7・2%減、東京が6・9%減など、特に南関東で車離れが進んでいる。
イメージアップ 米英でCM放映 中国政府出資で制作
中国の国際的なイメージアップを狙い、中国政府の出資で制作されるテレビCMが、9月に米CNN放送と英BBC放送で放映される。中国紙チャイナ・デーリーが30日、このCM制作を手掛ける会社の関係者1人の話を基に報じた。
同紙によると、国務院新聞弁公室が提案し資金を提供する同CMには、バスケットボールの姚明選手や香港の資産家、李嘉誠氏ら中国の有名人が登場する。また、広告代理店の上海ロウ・アンド・パートナーズの社長補佐、ワン・リジュン氏の話を引用して、同社が30秒のCMのほか、中国に関する15分の映画を制作すると、同紙は伝えた。
英国、インドに大訪問団 急成長市場、関係強化に腐心
インドを訪問したキャメロン英首相は29日、シン首相とニューデリーで会談し、経済など幅広い分野での連携強化で合意した。インドの産業界が世界で存在感を増しているなか、英国にとっても、インドの重要性が高まりつつあることが示された。
保守党と自由民主党による英連立政権は、シン政権に対し、インドとの関係強化が外交政策の最優先課題であるとの合図を送っていた。それを裏付けるかのように、キャメロン首相が率いる訪問団には、50を超える企業の経営幹部をはじめ、ヘイグ外相やオズボーン財務相など主要閣僚も同行している。
英国にとって、インドの重要性は増している。インドのタタ・グループは鉄鋼や自動車メーカーの買収を通じて、英国民を最も多く雇用している民間企業の一つとなった。
インドのハイテク企業は、西欧での事業拡大に向けて英国での進出先を探している。英金融街「シティー」は今後もインド企業による株式上場の継続を望んでいる。
英訪問団は、急速に拡大するインド市場における投資機会の確保を目指している。インド市場では、多国籍企業の参入と、国内の大手コングロマリット(複合企業)の存在によって競争が激化している。それでも、英国企業が狙っている分野は、保険や小売り、航空宇宙分野だ。
キャメロン首相らの今回の訪印で、英印両国はインド軍が英防衛大手BAEシステムズからホーク練習機57機を購入する7億ポンド(約943億円)規模の契約を結んだ。
英国は、インドに対し、欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)の締結を行うよう促している。
キャメロン首相はまた、原子力技術の民生利用についてもインドと協力することを明らかにした。これにより、原子炉部品の製造大手である英ロールス・ロイスといった企業に輸出の道が開かれることになる。
英政府はかつて、1974年のインドによる核実験などを受けて、軍事利用と民生利用の区別がついていないとして輸出を禁止していた。しかし、2008年にインドが米国と原子力の民生利用について協定を結んだことで状況が変わった。世界各国の原子力発電関連企業は、インドの原子力に対する熱意を利用する道を探っている。
英国はインドとの間で、ビザ(査証)の発給やイランに対する対応といった点で足並みが乱れる可能性は残されている。しかし、今回の訪印は時宜にかなったものといえるだろう。
デフレ脱却議連が目標設定 「今後10年で経済成長70%」
民主党の有志議員でつくる「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」(デフレ脱却議連)は30日、総会を開き、今後10年間で70%の経済成長を目指す「デフレ脱却・経済成長プログラム」を可決した。同連盟はこの目標を達成するため、日銀による積極的な金融緩和策を求めていく。
プログラムでは、日本の潜在成長率を実質で年率2.5%と仮定し、2.5%の物価上昇が続くことを前提に、2020年度末までに名目で約70%強の経済成長が実現できると試算している。
こうした経済成長を実現させるため、国家戦略局や内閣官房が経済政策の司令塔になる必要性を強調した。
雇用の需給の逼迫(ひっぱく)がみられる間は、デフレから脱却できていないとみなし、日銀に一定の物価上昇の実現を求める「インフレ目標」の導入も提言している。物価上昇率は年率2~3%を目標とする。
同議連の松原仁会長は「参院選での民主党の敗北は、具体的な政策を出さずに増税議論を持ち込んだことが原因」とした上で、「増税を否定するわけではないが、日銀は(経済成長に必要な)すべての手段を取っていない。経済の復興は日銀の真剣な金融政策から始まる」と話した。
姦通罪女性に「石打ち」死刑判決、イランに批判
【テヘラン=久保健一】イランで、姦通(かんつう)罪に問われた女性に「石打ち刑」による死刑判決が下り、波紋を呼んでいる。
イラン当局は今月、刑執行を見合わせると発表したが、イランの司法制度をめぐる国際的批判が広がっている。
死刑判決を受けたのは、イラン北西部タブリーズに住む女性(43)。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、婚外の「不適切な関係」があったとして「姦通罪」の嫌疑に問われた。女性は否認したが、2007年5月、「石打ち刑」による死刑が確定した。
女性の弁護士からの情報で、「アムネスティ」は先月、死刑の執行中止をイラン政府に要請。司法当局は今月11日、「人道的見地」から、刑の執行を一時延期したとイラン国営通信が報じた。執行法の変更も検討しているとの報道もある。
姦通罪は、イランの刑法にあたる「イスラム処罰法」で規定され、最高刑は死刑。死刑は通常絞首刑だが、姦通罪については特に「石打ち刑」と明記される。被告を胸まで地中に埋め、判事や証人などの投石で公開処刑するものだ。
欧米から「石打ちは中世の刑罰。現代には無用のもの」(ヘイグ英外相)といった批判が相次ぎ、30か国以上で女性の死刑撤回を求める抗議集会が開かれた。
「アムネスティ」によれば、イランでは02年以降、少なくとも6人が「石打ち刑」に処せられた。イラン以外では、サウジアラビアでも適用されている。
2011年新設予定の大学・学部 目立つ医療系、多い“日本初”
少子化による大学全入時代到来が間近に迫ってきた。そのような厳しい状況にもかかわらず、来年も数多くの大学や学部が新設される予定だ。
新設される私立大と主な学部をまとめた。
人材不足が懸念される医療系の学部を新設する大学が多いことが分かる。看護やリハビリテーションの学科が目立つ。新設大学6校中4校が医療系。その中で、福岡に新設予定の純真学園大は、2007年から学生募集を停止した東和大を擁していた学校法人が、同じキャンパスに新しく開学する。
来年は“日本初”となる新設学部が多いのも特徴だ。
日本映画大は日本初の映画の大学。映画学科は既に日本大などに設けられているが、「映画学部」は初めて。専門学校が母体で映画教育には実績がある。
さらに、工学院大と近畿大に新たに設置されるのが「建築学部」だ。工学部や理工学部、さらには芸術系の学部にも、建築“学科”はある。金沢工業大に「環境・建築学部」が置かれているが、建築学部はなかった。
京都華頂大の「現代家政学部」、宇都宮共和大の「子ども生活学部」も初めて登場する。児童教育系の学部・学科は最近、設置が増えている。不況の影響もあって、資格を取得していると就職を有利に運べることから人気が高い。武蔵野大や中村学園大の教育学部にも、児童教育の学科を新設する予定だ。
このほかに関西外国語大の「英語キャリア学部」、広島国際大の「医療経営学部」も新しい。また、京都女子大は女子大初の法学部を設ける。
近畿地区の人気総合大は来年も学部新設が活発だが、関東には予定がない。
これまで両方の地区で盛んだったが、18歳人口の減少が底を打ってから、東西の大学で大学改革の方向性が異なってきているといえそうだ。
橋下知事また私立小中の助成削減方針…私学反発
財政悪化に苦しむ大阪府の橋下徹知事が、「財政構造改革」の目玉として、来年度からの私学助成の見直しを打ち出し、私学関係者が危機感を募らせる。
焦点は私立小中学校への助成金で、橋下知事は「義務教育は公立の受け皿がある。私立に行くなら保護者が対価を支払うべきだ」と大きく切り込む構えだ。知事就任直後の2008年度に25%カットしたことにより、私立小中への助成は全国最低水準になっており、私学側は「これ以上削減されれば、経営が立ち行かない」と戦々恐々。授業料値上げが相次ぐ可能性も高く、保護者からも反対の声が上がる。
◆「仕方ない」◆
「そもそも私立小中への助成は必要か」「(授業料が上がり)大阪は私立小中に通わせにくいと言われても、仕方がない」。府庁で今月中旬に開かれた会議では、橋下知事から削減を示唆する発言が相次いだ。
景気低迷による財政悪化で、府は来年度以降の3年間で475億円をひねり出す財政構造改革案を策定中。8月上旬の発表に向け、今年度予算で総額約680億円に上る私学助成も、議論の俎上(そじょう)に上がった。
◆予算を高校へ◆
私学助成は、橋下知事の就任直後の08年度にも削られ、10年度までの3年間で計169億円がカットされた。今回の削減幅は未定だが、府幹部は「私立小中への助成は全廃という意見もある。知事も相当切り込むつもりだ」と明かす。
私立小中への助成削減分は、今年度から年収350万円未満の世帯を対象に実施している私立高授業料無償化制度に予算を回し、対象を年収680万円未満にまで広げる方針という。
府内では09年度、公立小に通う児童数は約48万8000人で、私立小は約8000人。中学では、公立の生徒数約22万2000人に対し、私立は約2万4000人。「小中で私立に通う子供は1割以下しかいない。高校は、公立入試に落ちて、私立に通うことを余儀なくされる生徒もいる。高校の対策が最優先」というのが橋下知事の理屈だ。
◆「撤回を」◆
府によると、私立中の生徒1人当たりの平均的な教育費は年約80万円。うち4分の1を助成で、残りを授業料収入で賄っており、私学にとって助成削減は大きな打撃となる。
08年度からの削減で、府の私立小中に対する経常費助成額は、児童・生徒1人当たりで小学校が18・3万円、中学校は21・4万円と、近畿の他府県より3~10万円低い。大阪私立中学校高等学校連合会は「なぜ大阪だけ極端に減額されるのか」と、削減撤回を求めていく方針だ。
08年度の削減時には、府内の私立中の半数を超える34校が授業料と入学金を合わせ平均5万8500円の値上げを実施した。大阪私立中学校高等学校保護者会連合会の田尻忠邦顧問は「いじめや不登校を理由に私立に転校する子供もいる。ある程度は保護者負担に配慮してほしい」と主張する。
国家公務員試験に社会人枠…2012年度導入へ
人事院は2012年度から実施する国家公務員の新たな採用試験に、社会人経験者や大学院修了者などを対象とする採用枠を新設する方針を固めた。
優秀な大学新卒者が外資系企業や大学院などに流れている現状を食い止める狙いがある。8月の人事院勧告に合わせた報告に盛り込む予定で、来春にも人事院規則の関連規定を改正する方向だ。
新たな試験制度の導入自体は、08年に成立した国家公務員制度改革基本法で決まっている。従来のキャリア制に基づく試験を廃止し、政策の企画立案能力を重視する「総合職」、的確な事務処理の能力を見る「一般職」、特定分野の専門的知識を重視する「専門職」に区分するという内容だ。
「経験者採用試験」は、この制度改正に合わせて新たに設けるもので、民間企業などで経験を積んだ人が対象となる。合格者は係長級以上に採用する。大学院や法科大学院、公共政策大学院の修了者が対象の「院卒者」試験は総合職の採用枠の中に新たに導入する。
人事院は06年から各省と共同で「経験者採用システム」を実施。志望者は年々増加していることから、経験者採用試験として、本格的に導入することにした。
【東京新聞社説】
ねじれ国会開幕 まずは信頼の構築から
2010年7月31日
民主党の参院選惨敗を受けた「ねじれ国会」が幕を開けた。与野党が角を突き合わせるだけでは何も生まれない。国民生活に必要な政策の実現へ、与野党は信頼関係を築くことから始めてほしい。
参院本会議場の与党席は半分に満たない。民主、自民両党が攻守を入れ替え、約十一カ月ぶりの「ねじれ国会」の再現だ。
しかも、与党は衆院で三分の二に満たず、首相指名、予算、条約以外は与党単独で成立させられない「真性ねじれ」でもある。
新しい状況をどう打開し、国政の停滞を避けるのか。与野党が知恵を出し合わねばならない。
菅直人首相は記者会見で、ねじれ国会を「マイナスとばかりとらえるのではなく、与野党が合意する政策は、かなり困難を伴う政策でも実行が可能になると前向きに受け止めたい」と述べた。
念頭にあるのは、一九九八年参院選後のねじれ国会で、民主党など野党側が提出した金融再生法案を、小渕恵三首相がそのまま受け入れ、金融危機を回避した例だ。
首相は、民主党代表として倒閣に走らなかった当時の判断の正しさを強調し、今回も野党側に協力するよう求めたのだが、より重要なのは、与党側が野党提案を「丸のみ」した決断ではないか。
野党に譲歩を迫るのではなく、首相が、野党側の提案を受け入れる度量を見せる方が先決だ。
初当選組を迎えた参院では、議長に、民主党の西岡武夫議院運営委員長が選出された。
前議長の江田五月氏は、菅首相問責決議案などを採決せずに前国会を閉会し、野党側が与党寄りだと批判して交代を求めていた。
民主党がこれまでの国会運営の不手際を陳謝し、議長交代を受け入れたことは、与野党間の信頼構築に向けた前進と受け止めたい。
ただ自民党は、西岡氏が議運委員長として三年間続けた強硬な国会運営は承服できないとして、議長選挙では白票を投じた。
自民党の言い分も分からないではないが、報復合戦が続けば、国民はいずれ愛想を尽かす。
西岡氏は選出後「新たな局面を迎えた(参)院の円滑な運営に努めたい」とあいさつした。その言葉を違(たが)えず、議事運営を通じて野党側の信頼を得るしかあるまい。
参院選で改選第一党になった自民党は参院で議運委員長ポストを取り戻した。国会運営の要だ。自らが担う責任も、より重くなったと肝に銘じるべきである。
任天堂、「誤算」の背景
任天堂の2010年4~6月期の連結最終損益が252億円の赤字(前年同期は423億円の黒字)となった。04年に携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」を発売して以来、快走を続けてきた同社のまさかの失速。最終赤字計上はいくつかの誤算が重なった結果といえる。
29日の決算発表はホームページなどでの資料開示のみ。自ら記者会見を開いて業績について説明することが多い岩田聡社長も、今回は姿を見せなかった。いまの胸の内は推測するしかないが、ここまでの収益の落ち込みは想定外だったに違いない。
最大の誤算は円高。「どんな経営をしても、これ(だけの急激な円高)でも大丈夫なようにするのは無理だと思う」。岩田社長は6月に日本経済新聞の取材に応じた際、欧州の経済不安に伴う大幅なユーロ安についてこうこぼしていた。同社の連結海外売上高比率は8割を超す。円高で売上高が100億円以上目減りするなど収益低下の一因となった。
さらに痛手だったのは外貨建てで保有する資産の為替差損だ。6月末時点で保有する現預金はドル建てが約26億ドル、ユーロ建てが約30億ユーロ。8億ドルと4億ユーロの売掛金もあった。一方、買掛金は2億ドル弱で、3月末に比べて対ユーロで円相場が17円の円高となったことなどを受け705億円もの為替差損が発生した。
豊富な現預金を持つのは任天堂の伝統的ともいえるスタイル。浮き沈みの激しいゲーム産業にあって、取引先からの信頼確保など事業基盤の安定に一定の役割を果たしてきた。ただ短期にこれだけの円高が進むと今回のように為替差損が膨らんでしまう。以前は金利の高い外貨建てで預金を持つ利点も大きかったが、今後は見直しも必要になりそうだ。
本業の不振も想定内とはいえそうにない。「特別な眼鏡なしに完全な3D(3次元)表示をお見せします」。6月中旬、岩田社長は米ロサンゼルスで開かれた世界最大のゲーム見本市「E3」でこう宣言し、任天堂として約6年ぶりとなる新しい携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」を公開した。
具体像が明らかになったことで3DSへの期待が膨らんでいるが、皮肉にもそのことが既存のDSシリーズへの関心を薄れさせている可能性がある。4~6月期のDSの販売台数は315万台と前年同期でほぼ半減。対応ソフトも23%減の2242本と振るわなかった。
ゲーム機の端境期を迎えた現在は、過去数年と比較して任天堂にとって最も苦しい局面。4~6月期は売上高が1886億円、営業利益は233億円にとどまった。現段階で期初の業績予想は変えていないが、9月中間期の見通しを達成するには7~9月期に売上高で4~6月期の2倍の約3600億円、営業利益で4倍の約960億円を達成しなければならないことになる。
3DS向けにはスクウェア・エニックスやカプコンなども人気ソフトの供給を決めており、ユーザーの期待は高い。現在の苦境を乗り越えて再び浮上できるのか。任天堂の底力が問われる。
高精細パネルにアップル特需 iPad、iPhone4向け利益率高く 技術前面、国内勢巻き返しへ
高精細な中小型液晶パネルの需要が伸びている。けん引役は米アップルの新端末。多機能携帯端末「iPad」、高機能携帯電話「iPhone4」に使うパネルは従来品より高性能で単価が高い。生産規模で韓国や台湾のメーカーに押される日本メーカーには技術力を生かし、利益率を高める好機になりそうだ。
韓国のLGディスプレーは京畿道坡州市の工場で、斜めからでも画面が見やすい高精細なIPS液晶パネルを増産する。同社がiPad向けに出荷しており、アップルへの供給が間に合わないうえ、端末メーカーの注文が殺到しているためだ。
米アイサプライによると、iPadに使う9.7インチのIPS液晶パネルの価格は1枚65ドル。一方、低価格パソコンのネットブックに使う標準的な10インチパネルは30ドル台前半のため、ほぼ倍になる。高い技術が必要なため生産効率は落ちるが、メーカーの利益率は高い。
アップルが6月に発売したiPhone4にはLGディスプレーのほか東芝モバイルディスプレイがパネルを供給している。同製品に使う3.5インチパネルの価格は1枚28.5ドル(アイサプライ調べ)と、大量生産される2.2インチの携帯電話用パネルの3倍以上だ。旧世代のiPhone3Gに比べても5割高い。
アップルに触発され、端末各社はiPadのようなタッチパネル付きで板状のスレートパソコンや高機能携帯電話の新機種を来年から本格投入する。その中で高精細な中小型パネルの需要拡大は確実視される。「新製品はハード面でアップルと同等以上を求められる。特に一目で差が出るディスプレーの美しさは大事になる」(米ディスプレイサーチの早瀬宏ディレクター)ためだ。
汎用品と同様、高精細パネルも単価下落は続きそうだ。「高機能携帯電話向けパネルも年率3~5%の値下がりは避けられない」(国内パネル大手)。アップルはブランド力と大量調達に加え、複数のパネルメーカーを競争させることで値下げを求める可能性がある。
それでも積極投資や大型ライン転用で増産を進める韓台勢の攻勢を受ける日本メーカーにとって、高精細パネルの市場拡大は巻き返しの好機だ。アップルの新製品向けに最も早い時期にパネルを供給したのは日本メーカーとされる。各社は3次元などの新技術で市場をリードする構えだ。
日立ディスプレイズは7月、台湾の奇美電子に中型パネルの生産を委託する一方、IPS液晶の技術を供与することを決めた。「自社の生産設備が不足するなかで供給を増やす」(日立ディスプレイズ)。今年度中にも供給を始める。アップル特需で火が付いた高精細パネルの競争は技術だけでなく、価格や数量の面でも激しさを増す。
コールセンター業務、クラウド使い1000人在宅勤務
アデコとNTT東が遠隔支援
人材サービス世界大手のアデコ(スイス)とNTT東日本は、インターネットを使った在宅人材サービスを年内に日本で始める。在宅の主婦や高齢者をネットで結び、自宅でコールセンター業務などができるようにする。人材サービス大手のパソナグループも参入する。働き方の多様化につながり、少子化に伴う労働力不足を補う効果も期待される。
ネット経由でソフトウエアや情報システムを提供するクラウドコンピューティングの技術を活用する。自宅に高性能コンピューターがなくてもオフィスと同じ作業ができ、セキュリティーの確保も容易になる。
アデコはクラウドを使い、分散した在宅勤務者の労働状況を遠隔で管理する。問い合わせ内容が難しい場合は、対応をアデコ本部の熟練オペレーターに切り替える。
年内に事業を始め、3年以内に約1千人の在宅勤務者との契約を目指す。企業のコールセンターのほか、データ入力の仕事が多い官公庁やネット通販会社の需要を見込んでいる。
企業や官公庁は現在、これらの業務で、仕事量のピークに合わせた人員を抱えている。在宅人材サービスを使えば、仕事量が増えたときに対応人数を増やし、閑散期の人件費を抑制できる。
クラウド型の業務システムはNTT東日本と開発する。システムは在宅勤務者のパソコンに組み込む専用ソフト、本人認証用装置、企業の本部と映像でやりとりできるテレビ電話システムなどで構成し、光ファイバー通信回線を介して利用する。
NTT東はアデコの顧客に対し、クラウド技術の導入を支援する。利用者が増えれば、ブロードバンド(高速大容量)通信サービスの需要を喚起できる。
パソナは子会社のパソナテックを通じて今夏にもコールセンター向けにクラウド型の在宅人材サービスを開始する。同社が運営するコールセンターの業務の一部をネット経由で在宅の契約社員に割り振り、繁忙時の人手不足を補う。初年度200人前後と契約する。
IT(情報技術)ベンチャーのブロードアース(東京・渋谷、中岡聡社長)が開発したクラウド技術を使う。
高速インターネットやスマートフォン(高機能携帯電話)の普及により、パソコンや携帯電話を使ってオフィス外で働く人の割合が増えている。しかし高性能コンピューターがない自宅では、セキュリティー上の問題があり、業務内容に限りがあった。
クラウドを使った在宅人材サービスはこうした制約が少なく、自宅で短時間なら働ける主婦や高齢者の労働力を企業が活用できる。
DeNA、驚異の急成長、上期売上高500億円に 「グローバルナンバーワン」目指す
「非常に順調です」――ディー・エヌ・エー(DeNA)が7月30日に発表した2010年4~6月期連結決算は、売上高が前年同期比2.7倍の241億円、営業利益が同3.8倍の119億円と急成長をとげた。ソーシャルゲームの急拡大によるもので、売上高・営業利益ともに過去最高を更新した。
2010年度上期(4~9月)の業績予想は、売上高が500億円、営業利益が240億円。前期1年間の売り上げ(481億円)を半期で上回る計算だが、「これも単なる通過点」と、南場智子社長は冷静だ。
ソーシャルゲームのグローバルナンバーワン企業を目指し、マルチプラットフォーム展開や世界展開を進めていく。10月にはPCサイト「Yahoo!モバゲー」をスタートするほか、年内に「モバゲータウン」をスマートフォン対応させる計画だ。
ゲーム順調、アバター回復 PVは「本当にクレイジーなレベル」
ソーシャルメディア事業の伸び
主力の「モバゲータウン」では、内製のソーシャルゲームと他社製のオープンゲームがどちらも順調で、成長のエンジンとなっている。アイテム課金やゲーム内広告、mixiアプリへ提供している内製ゲームの売り上げなどを合わせた、4~6月期のソーシャルゲーム売上高は、前四半期比1.5倍の159億だった。
「怪盗ロワイヤル」など内製ゲームは毎月売上高の最高記録を更新しているという。オープンゲームは7月27日現在でタイトル数が350、パートナー企業が154社に拡大。オープンゲームでの仮想通貨「モバコイン」の1日当たりの消費高は、1月からの半年間で11倍に伸びた。今後「信長の野望」「モンスターハンター」など有名ゲームも投入予定だ。
低迷していたアバター販売は「V字とまで言えるかどうか(分からない)」が回復基調に。1~3月期の売上高は18億円だったが、4~6月期は20億円となった。オープンゲームでのアバター利用もスタートしており、回復は「ユーザーのアクティビティレベルが向上した」ためと見ている。
ソーシャルゲーム人気でページビュー(PV)も増加し、6月の1日当たり平均23.8億に。国内の携帯電話サイト全体のPVのうち、モバゲーが約2割を占めていると南場社長は説明し、「本当にクレイジーなレベルにいっている」と話した。
今後は、モバゲーのマルチプラットフォーム展開を進める。PCサイト「Yahoo!モバゲー」を10月にスタートするほか、年内にスマートフォンに対応する予定だ。
海外展開にも注力する。ソーシャルゲームと、ゲームを提供するプラットフォーム両方を持っている点を「ユニークな強み」として生かしていく方針だ。「ソーシャルゲームのグローバルナンバーワン企業になる。現実的に非常に近いポジションにいると思う」と話した。
電波利用料、携帯電話の負担割合を軽減 総務省が基本方針案
総務省は30日、2011年度に改定する電波利用料の基本方針案を提示した。携帯電話端末など無線局ごとにかかる電波利用料の負担割合を軽減。携帯電話事業者が払う利用料が下がれば、基地局整備などが進む可能性がある。電波を入札で割り当てるオークション(競売)制度を巡っては「十分検討に値する」とし、導入に向けた方向性を打ち出した。
電波利用料は電波の有効利用に向けた研究開発や監視などに使う目的で、携帯電話事業者や放送事業者などから徴収しており、3年ごとに改定する。今回の見直しでは使い道に関し、周波数の再編に伴って発生する費用の一部を支援したり、電波の共同利用実現に向けた環境整備に充てたりする方針を盛った。
内藤正光総務副大臣は電波競売について「これまで行政は門前払いしてきたが、方向性を出せた」と指摘。専門の研究会などで本格的に議論する考えを示した。
三洋電機元会長、井植敏氏インタビュー
パナソニックによる完全子会社化が決まり、「SANYO」ブランドが原則消滅することになった三洋電機。創業者、井植歳男氏の長男の敏氏はトップとして20年間君臨し、同社を2兆円企業に押し上げた。その後の経営不振から一線を引いたが、5月に経営評論家の片山修氏と共著「三洋電機よ、永遠なれ!」(PHP研究所)を出版、過去の総括を始めている。昨年末に三洋がパナソニック傘下となってから初のインタビューに応じた。
--三洋のパナソニックグループ入りをどう思う
「本のタイトル(三洋電機よ、永遠なれ!)の通りだ。他に何もない。パナソニックはライバルと思って必死で競争してきた。私よりも、現場で戦ってきた人たちにとっては何とも言えない気持ちだろう。しかし、それが最善の道ならそうせざるをえない。社員が路頭に迷うことは避けなければならない」
--父親が創業した会社が他社の傘下に入ることには
「そんなことを思うぐらいならば、上場しなければいい。この企業規模で(創業家が)経営権を握るのは無理だ。創業した会社が後につながり、三洋の心をしっかりと持ち続けてほしいことぐらい。ウォームハート(温かい心)の会社であってほしい」
--上場企業における創業家はどうあるべきか
「オーナー経営をできる人はやればよい。だが、求心力にならないのなら辞めなければおかしい。社員が幸せになるためにどうしたらいいかということだ」
--半導体部門など三洋の“事業切り売り”が進む
「今の時代ではせざるをえない。国内の電機メーカーは過剰で、世界のマーケットを狙える状態にない。日本市場で消耗戦のようなことをしている。再編は日本の中だけではダメだ。アジア連合などを構想しないと生き残れないのでは」
〈トップ在任中、中国の家電メーカー、ハイアールと業務提携した。アジア企業の台頭に、国内電機業界の再編は避けられないと感じたという〉
--ハイアールとの提携のきっかけは
「2000年ごろドバイなど中東へ行ったとき、日本メーカーの商品はほとんどなく、ハイアールなんていう聞いたことのない商品があふれていた。ハイアールに視察に行くと、生産規模がわれわれと比較にならないほど巨大で、工作機械も最新だった。国際競争に勝つには(事業の)整理が必要と思った」
--どんなビジョンをもっていた
「太陽電池などエネルギーに注力しようとしていた。白物家電は負けると思ったね。海外市場を切り開かないと、三洋は伸びないが、その力はない。このため大日(大阪府守口市)にあった冷蔵庫工場を閉めて縮小整理を始めた。三洋の販売店でハイアールの商品を売ってもらい、何年かかけてシフトしていこうと思った。(社内の反発などで)おかしくなってしまうから、社員にはすべてを話さなかったけど。でも、それぐらいのスピードが必要と考えていた」
スマートフォン、ウイルスにご注意! 基本ソフト公開で感染拡大
米アップル社の「iPhone(アイフォーン)」をはじめとする高機能携帯電話「スマートフォン」の人気が高まる中、コンピューターウイルス感染が懸念されている。従来の携帯電話に比べ、スマートフォンは基本ソフトの技術情報が公開されており、ユーザーが自由にアプリケーションをダウンロードして機能を拡張できる。このため、安易にダウンロードすれば感染の恐れがある。普及が進む海外では被害も報告されており、専門家は警戒を呼びかけている。
これまでに700個
「スマートフォンについては、これから非常に危険な状態になってくるでしょう」。平成14年から携帯電話のセキュリティーに取り組んでいるマカフィー(東京都渋谷区)のモバイルエンジニアリングプログラムマネジャー、石川克也さんはこう語る。
同社によると、これまで見つかった携帯電話を狙ったウイルスは約700個。初期のころは画面に不適切な画像を表示するなどいたずら的なものが多かったが、近年ではユーザーを悪質なウェブサイトに誘導して個人情報を盗もうとするウイルスも確認されている。日本に比べ、スマートフォンが普及している海外ではウイルス感染は頻繁だという。
なぜ従来の携帯電話に比べ、スマートフォンのほうが危険性が高いのか。従来の携帯電話と異なり、スマートフォンは基本ソフトの技術情報がある程度公開されている。
このため、アプリケーションソフトを作りやすい環境となっており、悪意を持った人間が有害なソフトを作成し、ユーザーがダウンロードする危険性が高まっているという。
さらにスマートフォンの場合、携帯電話用のサイトではなく、多くの人に開かれたインターネット上のサイトに接続することが多い。携帯電話通信社ごとの閉じられたネットワークと異なり、開かれたインターネットには有害なサイトがあふれている。石川さんは「開かれたインターネットに直接接続できるのはユーザーにとって利便性は高いが、裏にはセキュリティーリスクが隠されている」と指摘する。
疑うことが大切
平成12年ごろから携帯電話対象のウイルス対策に取り組むエフセキュア(港区)のテクノロジ&サービス部長、八木沼与志勝(よしかつ)さんも「スマートフォンは持ち歩くコンピューターなのでリスクは高い」と話す。
両社ともスマートフォンの普及が進む海外では、すでにスマートフォン対象のウイルス対策ソフトを販売。日本でも発売を検討している状況という。
八木沼さんは「アプリケーションをダウンロードをする前に、そのサイトは安全なのかなどを確認してほしい。一番大切なのは疑ってかかることです」と話す。個人の危機管理意識を高めることが何よりも重要といえそうだ。
記者の目◇東芝、戻ってきた勝ちパターン
「電子デバイスが売り上げ、利益ともに想定以上に回復した」。東芝が29日発表した2010年4~6月期決算。村岡富美雄副社長の発言は、電子デバイス部門の好調に支えられた決算内容を象徴するものだった。
東芝にとって4~6月期は本来なら電力など社会インフラが不需要期なこともあり、利益が出にくい期間。しかし、今年は本業のもうけを示す営業利益が295億円と2000年度途中から四半期決算の開示を始めて以来、4~6月期としては過去最高となった。
けん引したのはフラッシュメモリーや中小型液晶パネルなど電子デバイス部門。原子力を核とする社会インフラと半導体を2本柱とする東芝の勝ちパターンの姿がおぼろげながら見えてきた。
主力のフラッシュメモリーが好調だ。米アップル向けの供給が高水準で推移したもよう。メモリーカードやデジタル家電向け以外の用途も拡大しており、需給がタイトな状況が続いている。事実上、韓国サムスン電子との2グループ体制であるため市況も安定。微細化進ちょくでコスト競争力も増し半導体事業の営業利益は従来計画よりも約70億円上振れし250億円となった。
今4~6月期の特長は、従来まで不採算だったデバイスの改善も業績を下支えしたことだ。代表的なのが中小型液晶パネル。スマートフォン(高機能携帯電話機)やカーナビ向けなどが伸び、生産が需要に追いつかない状況が続いている。コスト削減活動も寄与して7四半期ぶりに営業黒字に転換。半導体のシステムLSIの赤字幅も縮小し目立って足をひっぱる事業が減った。
今後のポイントの1つはこのデバイス活況がどこまで続くのか。村岡副社長は「半導体はこれからもっとよくなり、中小型液晶も黒字が続く」と話し、電子デバイスの一段の業績拡大に自信を見せた。仮に4~6月期の調子が年間を通して続けば電子デバイス部門だけで軽く1000億円(計画は900億円)の利益が出る計算。7~9月期決算時には通期業績(営業利益計画2500億円)の上方修正も視野に入ってくる。
ただし、上方修正にはもうひとつ条件がある。社会インフラ事業が確実に利益を出すことだ。やや気になるのは4~6月期に社会インフラが11億円の営業赤字に転落した点。原子力は好調だったものの、前年度の受注低迷の影響を受け売り上げが減少し、営業損益は前年同期に比べ76億円悪化した。「7~9月以降は増収に転じる」(村岡副社長)としているが、今後の回復はどの程度なのか。欧米など景気の先行き不透明感が強まる中、稼ぎ時の1~3月期までにできるだけ利益を上げておきたいものだ。
11年3月期は始まったばかりとはいえ、4~6月期決算で2本柱とする成長シナリオの復活は見えてきた。この流れを確実なものにできるかどうか。ポイントは半導体と原子力の競争力強化だけではない。
改善傾向にあるとはいえ、もはや飛躍的な利益拡大が期待できない中小型液晶パネルやシステムLSIなど課題事業の抜本策をどう打ち出すのか。追い詰められてからではなく、課題事業が改善傾向にある今こそ、選択と集中を進め2本柱への経営資源シフトを加速する時期なのかもしれない。
エコカー支援 補助金打ち切りは時期尚早だ(7月31日付・読売社説)
せっかく効果を上げている景気刺激策を、なぜやめるのか。
政府は30日、省エネ性能に優れたエコカーを購入する際に支給する補助金を、期限である9月末で打ち切ることを決めた。
直嶋経済産業相は「臨時、異例の措置としてやってきた。自動的に9月末で終了することになる」と述べた。
しかし、最近は、景気回復の足取りがもたついている。消費の下支え策をなくすには、タイミングが悪いのではないか。経済界にも存続を求める声が強い。
経済危機対応のため今年度予算に盛り込まれた1兆円の予備費を使えば、財源の手当ては可能だ。政府は、補助金の支給を当面続けるよう、再考すべきである。
エコカー補助金は、麻生政権が今年3月末までの時限措置として導入した後、鳩山政権も予算を追加して6か月延長した。
乗用車で最大25万円をもらえる内容が好評で、省エネ家電のエコポイントとともに、消費拡大に高い効果を上げてきた。
支援の財源として2009年度の補正予算で約6000億円が計上された。これで450万台分の購入支援が可能となり、すでに300万台分の利用が決まった。
補助金は1000億円ほど残っており、期限切れまで、まだ2か月あるが、影響はすでに出始めているようだ。
新車登録が9月末に間に合わないと補助金の対象にならないが、人気車は契約から納車まで2か月以上かかることも珍しくない。
販売店の説明で、今すぐ買っても補助金がもらえない恐れがあると知り、購入をあきらめる客もいるという。
今後、補助金制度の終了で、本格的に自動車の販売が落ち込むことが懸念される。
昨年1月に新車購入支援制度を導入したドイツでは、9月に予算を使い果たして制度が廃止された。その後、新車の販売台数は、支援の実施中より2割以上も落ち込んだまま低迷が続いている。
終了後の販売減少を見込んで、トヨタ自動車は国内生産を、10月から2割ほど減らす。主要産業の自動車が減産に動けば、回復のペースが落ちてきた工業生産が、さらに冷え込みかねない。
財政は厳しいが、打ち切りは景気への副作用が大きい。対象車種を絞って支援規模を縮小するなど、財政と景気の両面に配慮しながら補助金を継続させる知恵を出してほしい。
任天堂の2010年4~6月期の連結最終損益が252億円の赤字(前年同期は423億円の黒字)となった。04年に携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」を発売して以来、快走を続けてきた同社のまさかの失速。最終赤字計上はいくつかの誤算が重なった結果といえる。
29日の決算発表はホームページなどでの資料開示のみ。自ら記者会見を開いて業績について説明することが多い岩田聡社長も、今回は姿を見せなかった。いまの胸の内は推測するしかないが、ここまでの収益の落ち込みは想定外だったに違いない。
最大の誤算は円高。「どんな経営をしても、これ(だけの急激な円高)でも大丈夫なようにするのは無理だと思う」。岩田社長は6月に日本経済新聞の取材に応じた際、欧州の経済不安に伴う大幅なユーロ安についてこうこぼしていた。同社の連結海外売上高比率は8割を超す。円高で売上高が100億円以上目減りするなど収益低下の一因となった。
さらに痛手だったのは外貨建てで保有する資産の為替差損だ。6月末時点で保有する現預金はドル建てが約26億ドル、ユーロ建てが約30億ユーロ。8億ドルと4億ユーロの売掛金もあった。一方、買掛金は2億ドル弱で、3月末に比べて対ユーロで円相場が17円の円高となったことなどを受け705億円もの為替差損が発生した。
豊富な現預金を持つのは任天堂の伝統的ともいえるスタイル。浮き沈みの激しいゲーム産業にあって、取引先からの信頼確保など事業基盤の安定に一定の役割を果たしてきた。ただ短期にこれだけの円高が進むと今回のように為替差損が膨らんでしまう。以前は金利の高い外貨建てで預金を持つ利点も大きかったが、今後は見直しも必要になりそうだ。
本業の不振も想定内とはいえそうにない。「特別な眼鏡なしに完全な3D(3次元)表示をお見せします」。6月中旬、岩田社長は米ロサンゼルスで開かれた世界最大のゲーム見本市「E3」でこう宣言し、任天堂として約6年ぶりとなる新しい携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」を公開した。
具体像が明らかになったことで3DSへの期待が膨らんでいるが、皮肉にもそのことが既存のDSシリーズへの関心を薄れさせている可能性がある。4~6月期のDSの販売台数は315万台と前年同期でほぼ半減。対応ソフトも23%減の2242本と振るわなかった。
ゲーム機の端境期を迎えた現在は、過去数年と比較して任天堂にとって最も苦しい局面。4~6月期は売上高が1886億円、営業利益は233億円にとどまった。現段階で期初の業績予想は変えていないが、9月中間期の見通しを達成するには7~9月期に売上高で4~6月期の2倍の約3600億円、営業利益で4倍の約960億円を達成しなければならないことになる。
3DS向けにはスクウェア・エニックスやカプコンなども人気ソフトの供給を決めており、ユーザーの期待は高い。現在の苦境を乗り越えて再び浮上できるのか。任天堂の底力が問われる。
高精細パネルにアップル特需 iPad、iPhone4向け利益率高く 技術前面、国内勢巻き返しへ
高精細な中小型液晶パネルの需要が伸びている。けん引役は米アップルの新端末。多機能携帯端末「iPad」、高機能携帯電話「iPhone4」に使うパネルは従来品より高性能で単価が高い。生産規模で韓国や台湾のメーカーに押される日本メーカーには技術力を生かし、利益率を高める好機になりそうだ。
韓国のLGディスプレーは京畿道坡州市の工場で、斜めからでも画面が見やすい高精細なIPS液晶パネルを増産する。同社がiPad向けに出荷しており、アップルへの供給が間に合わないうえ、端末メーカーの注文が殺到しているためだ。
米アイサプライによると、iPadに使う9.7インチのIPS液晶パネルの価格は1枚65ドル。一方、低価格パソコンのネットブックに使う標準的な10インチパネルは30ドル台前半のため、ほぼ倍になる。高い技術が必要なため生産効率は落ちるが、メーカーの利益率は高い。
アップルが6月に発売したiPhone4にはLGディスプレーのほか東芝モバイルディスプレイがパネルを供給している。同製品に使う3.5インチパネルの価格は1枚28.5ドル(アイサプライ調べ)と、大量生産される2.2インチの携帯電話用パネルの3倍以上だ。旧世代のiPhone3Gに比べても5割高い。
アップルに触発され、端末各社はiPadのようなタッチパネル付きで板状のスレートパソコンや高機能携帯電話の新機種を来年から本格投入する。その中で高精細な中小型パネルの需要拡大は確実視される。「新製品はハード面でアップルと同等以上を求められる。特に一目で差が出るディスプレーの美しさは大事になる」(米ディスプレイサーチの早瀬宏ディレクター)ためだ。
汎用品と同様、高精細パネルも単価下落は続きそうだ。「高機能携帯電話向けパネルも年率3~5%の値下がりは避けられない」(国内パネル大手)。アップルはブランド力と大量調達に加え、複数のパネルメーカーを競争させることで値下げを求める可能性がある。
それでも積極投資や大型ライン転用で増産を進める韓台勢の攻勢を受ける日本メーカーにとって、高精細パネルの市場拡大は巻き返しの好機だ。アップルの新製品向けに最も早い時期にパネルを供給したのは日本メーカーとされる。各社は3次元などの新技術で市場をリードする構えだ。
日立ディスプレイズは7月、台湾の奇美電子に中型パネルの生産を委託する一方、IPS液晶の技術を供与することを決めた。「自社の生産設備が不足するなかで供給を増やす」(日立ディスプレイズ)。今年度中にも供給を始める。アップル特需で火が付いた高精細パネルの競争は技術だけでなく、価格や数量の面でも激しさを増す。
コールセンター業務、クラウド使い1000人在宅勤務
アデコとNTT東が遠隔支援
人材サービス世界大手のアデコ(スイス)とNTT東日本は、インターネットを使った在宅人材サービスを年内に日本で始める。在宅の主婦や高齢者をネットで結び、自宅でコールセンター業務などができるようにする。人材サービス大手のパソナグループも参入する。働き方の多様化につながり、少子化に伴う労働力不足を補う効果も期待される。
ネット経由でソフトウエアや情報システムを提供するクラウドコンピューティングの技術を活用する。自宅に高性能コンピューターがなくてもオフィスと同じ作業ができ、セキュリティーの確保も容易になる。
アデコはクラウドを使い、分散した在宅勤務者の労働状況を遠隔で管理する。問い合わせ内容が難しい場合は、対応をアデコ本部の熟練オペレーターに切り替える。
年内に事業を始め、3年以内に約1千人の在宅勤務者との契約を目指す。企業のコールセンターのほか、データ入力の仕事が多い官公庁やネット通販会社の需要を見込んでいる。
企業や官公庁は現在、これらの業務で、仕事量のピークに合わせた人員を抱えている。在宅人材サービスを使えば、仕事量が増えたときに対応人数を増やし、閑散期の人件費を抑制できる。
クラウド型の業務システムはNTT東日本と開発する。システムは在宅勤務者のパソコンに組み込む専用ソフト、本人認証用装置、企業の本部と映像でやりとりできるテレビ電話システムなどで構成し、光ファイバー通信回線を介して利用する。
NTT東はアデコの顧客に対し、クラウド技術の導入を支援する。利用者が増えれば、ブロードバンド(高速大容量)通信サービスの需要を喚起できる。
パソナは子会社のパソナテックを通じて今夏にもコールセンター向けにクラウド型の在宅人材サービスを開始する。同社が運営するコールセンターの業務の一部をネット経由で在宅の契約社員に割り振り、繁忙時の人手不足を補う。初年度200人前後と契約する。
IT(情報技術)ベンチャーのブロードアース(東京・渋谷、中岡聡社長)が開発したクラウド技術を使う。
高速インターネットやスマートフォン(高機能携帯電話)の普及により、パソコンや携帯電話を使ってオフィス外で働く人の割合が増えている。しかし高性能コンピューターがない自宅では、セキュリティー上の問題があり、業務内容に限りがあった。
クラウドを使った在宅人材サービスはこうした制約が少なく、自宅で短時間なら働ける主婦や高齢者の労働力を企業が活用できる。
DeNA、驚異の急成長、上期売上高500億円に 「グローバルナンバーワン」目指す
「非常に順調です」――ディー・エヌ・エー(DeNA)が7月30日に発表した2010年4~6月期連結決算は、売上高が前年同期比2.7倍の241億円、営業利益が同3.8倍の119億円と急成長をとげた。ソーシャルゲームの急拡大によるもので、売上高・営業利益ともに過去最高を更新した。
2010年度上期(4~9月)の業績予想は、売上高が500億円、営業利益が240億円。前期1年間の売り上げ(481億円)を半期で上回る計算だが、「これも単なる通過点」と、南場智子社長は冷静だ。
ソーシャルゲームのグローバルナンバーワン企業を目指し、マルチプラットフォーム展開や世界展開を進めていく。10月にはPCサイト「Yahoo!モバゲー」をスタートするほか、年内に「モバゲータウン」をスマートフォン対応させる計画だ。
ゲーム順調、アバター回復 PVは「本当にクレイジーなレベル」
ソーシャルメディア事業の伸び
主力の「モバゲータウン」では、内製のソーシャルゲームと他社製のオープンゲームがどちらも順調で、成長のエンジンとなっている。アイテム課金やゲーム内広告、mixiアプリへ提供している内製ゲームの売り上げなどを合わせた、4~6月期のソーシャルゲーム売上高は、前四半期比1.5倍の159億だった。
「怪盗ロワイヤル」など内製ゲームは毎月売上高の最高記録を更新しているという。オープンゲームは7月27日現在でタイトル数が350、パートナー企業が154社に拡大。オープンゲームでの仮想通貨「モバコイン」の1日当たりの消費高は、1月からの半年間で11倍に伸びた。今後「信長の野望」「モンスターハンター」など有名ゲームも投入予定だ。
低迷していたアバター販売は「V字とまで言えるかどうか(分からない)」が回復基調に。1~3月期の売上高は18億円だったが、4~6月期は20億円となった。オープンゲームでのアバター利用もスタートしており、回復は「ユーザーのアクティビティレベルが向上した」ためと見ている。
ソーシャルゲーム人気でページビュー(PV)も増加し、6月の1日当たり平均23.8億に。国内の携帯電話サイト全体のPVのうち、モバゲーが約2割を占めていると南場社長は説明し、「本当にクレイジーなレベルにいっている」と話した。
今後は、モバゲーのマルチプラットフォーム展開を進める。PCサイト「Yahoo!モバゲー」を10月にスタートするほか、年内にスマートフォンに対応する予定だ。
海外展開にも注力する。ソーシャルゲームと、ゲームを提供するプラットフォーム両方を持っている点を「ユニークな強み」として生かしていく方針だ。「ソーシャルゲームのグローバルナンバーワン企業になる。現実的に非常に近いポジションにいると思う」と話した。
電波利用料、携帯電話の負担割合を軽減 総務省が基本方針案
総務省は30日、2011年度に改定する電波利用料の基本方針案を提示した。携帯電話端末など無線局ごとにかかる電波利用料の負担割合を軽減。携帯電話事業者が払う利用料が下がれば、基地局整備などが進む可能性がある。電波を入札で割り当てるオークション(競売)制度を巡っては「十分検討に値する」とし、導入に向けた方向性を打ち出した。
電波利用料は電波の有効利用に向けた研究開発や監視などに使う目的で、携帯電話事業者や放送事業者などから徴収しており、3年ごとに改定する。今回の見直しでは使い道に関し、周波数の再編に伴って発生する費用の一部を支援したり、電波の共同利用実現に向けた環境整備に充てたりする方針を盛った。
内藤正光総務副大臣は電波競売について「これまで行政は門前払いしてきたが、方向性を出せた」と指摘。専門の研究会などで本格的に議論する考えを示した。
三洋電機元会長、井植敏氏インタビュー
パナソニックによる完全子会社化が決まり、「SANYO」ブランドが原則消滅することになった三洋電機。創業者、井植歳男氏の長男の敏氏はトップとして20年間君臨し、同社を2兆円企業に押し上げた。その後の経営不振から一線を引いたが、5月に経営評論家の片山修氏と共著「三洋電機よ、永遠なれ!」(PHP研究所)を出版、過去の総括を始めている。昨年末に三洋がパナソニック傘下となってから初のインタビューに応じた。
--三洋のパナソニックグループ入りをどう思う
「本のタイトル(三洋電機よ、永遠なれ!)の通りだ。他に何もない。パナソニックはライバルと思って必死で競争してきた。私よりも、現場で戦ってきた人たちにとっては何とも言えない気持ちだろう。しかし、それが最善の道ならそうせざるをえない。社員が路頭に迷うことは避けなければならない」
--父親が創業した会社が他社の傘下に入ることには
「そんなことを思うぐらいならば、上場しなければいい。この企業規模で(創業家が)経営権を握るのは無理だ。創業した会社が後につながり、三洋の心をしっかりと持ち続けてほしいことぐらい。ウォームハート(温かい心)の会社であってほしい」
--上場企業における創業家はどうあるべきか
「オーナー経営をできる人はやればよい。だが、求心力にならないのなら辞めなければおかしい。社員が幸せになるためにどうしたらいいかということだ」
--半導体部門など三洋の“事業切り売り”が進む
「今の時代ではせざるをえない。国内の電機メーカーは過剰で、世界のマーケットを狙える状態にない。日本市場で消耗戦のようなことをしている。再編は日本の中だけではダメだ。アジア連合などを構想しないと生き残れないのでは」
〈トップ在任中、中国の家電メーカー、ハイアールと業務提携した。アジア企業の台頭に、国内電機業界の再編は避けられないと感じたという〉
--ハイアールとの提携のきっかけは
「2000年ごろドバイなど中東へ行ったとき、日本メーカーの商品はほとんどなく、ハイアールなんていう聞いたことのない商品があふれていた。ハイアールに視察に行くと、生産規模がわれわれと比較にならないほど巨大で、工作機械も最新だった。国際競争に勝つには(事業の)整理が必要と思った」
--どんなビジョンをもっていた
「太陽電池などエネルギーに注力しようとしていた。白物家電は負けると思ったね。海外市場を切り開かないと、三洋は伸びないが、その力はない。このため大日(大阪府守口市)にあった冷蔵庫工場を閉めて縮小整理を始めた。三洋の販売店でハイアールの商品を売ってもらい、何年かかけてシフトしていこうと思った。(社内の反発などで)おかしくなってしまうから、社員にはすべてを話さなかったけど。でも、それぐらいのスピードが必要と考えていた」
スマートフォン、ウイルスにご注意! 基本ソフト公開で感染拡大
米アップル社の「iPhone(アイフォーン)」をはじめとする高機能携帯電話「スマートフォン」の人気が高まる中、コンピューターウイルス感染が懸念されている。従来の携帯電話に比べ、スマートフォンは基本ソフトの技術情報が公開されており、ユーザーが自由にアプリケーションをダウンロードして機能を拡張できる。このため、安易にダウンロードすれば感染の恐れがある。普及が進む海外では被害も報告されており、専門家は警戒を呼びかけている。
これまでに700個
「スマートフォンについては、これから非常に危険な状態になってくるでしょう」。平成14年から携帯電話のセキュリティーに取り組んでいるマカフィー(東京都渋谷区)のモバイルエンジニアリングプログラムマネジャー、石川克也さんはこう語る。
同社によると、これまで見つかった携帯電話を狙ったウイルスは約700個。初期のころは画面に不適切な画像を表示するなどいたずら的なものが多かったが、近年ではユーザーを悪質なウェブサイトに誘導して個人情報を盗もうとするウイルスも確認されている。日本に比べ、スマートフォンが普及している海外ではウイルス感染は頻繁だという。
なぜ従来の携帯電話に比べ、スマートフォンのほうが危険性が高いのか。従来の携帯電話と異なり、スマートフォンは基本ソフトの技術情報がある程度公開されている。
このため、アプリケーションソフトを作りやすい環境となっており、悪意を持った人間が有害なソフトを作成し、ユーザーがダウンロードする危険性が高まっているという。
さらにスマートフォンの場合、携帯電話用のサイトではなく、多くの人に開かれたインターネット上のサイトに接続することが多い。携帯電話通信社ごとの閉じられたネットワークと異なり、開かれたインターネットには有害なサイトがあふれている。石川さんは「開かれたインターネットに直接接続できるのはユーザーにとって利便性は高いが、裏にはセキュリティーリスクが隠されている」と指摘する。
疑うことが大切
平成12年ごろから携帯電話対象のウイルス対策に取り組むエフセキュア(港区)のテクノロジ&サービス部長、八木沼与志勝(よしかつ)さんも「スマートフォンは持ち歩くコンピューターなのでリスクは高い」と話す。
両社ともスマートフォンの普及が進む海外では、すでにスマートフォン対象のウイルス対策ソフトを販売。日本でも発売を検討している状況という。
八木沼さんは「アプリケーションをダウンロードをする前に、そのサイトは安全なのかなどを確認してほしい。一番大切なのは疑ってかかることです」と話す。個人の危機管理意識を高めることが何よりも重要といえそうだ。
記者の目◇東芝、戻ってきた勝ちパターン
「電子デバイスが売り上げ、利益ともに想定以上に回復した」。東芝が29日発表した2010年4~6月期決算。村岡富美雄副社長の発言は、電子デバイス部門の好調に支えられた決算内容を象徴するものだった。
東芝にとって4~6月期は本来なら電力など社会インフラが不需要期なこともあり、利益が出にくい期間。しかし、今年は本業のもうけを示す営業利益が295億円と2000年度途中から四半期決算の開示を始めて以来、4~6月期としては過去最高となった。
けん引したのはフラッシュメモリーや中小型液晶パネルなど電子デバイス部門。原子力を核とする社会インフラと半導体を2本柱とする東芝の勝ちパターンの姿がおぼろげながら見えてきた。
主力のフラッシュメモリーが好調だ。米アップル向けの供給が高水準で推移したもよう。メモリーカードやデジタル家電向け以外の用途も拡大しており、需給がタイトな状況が続いている。事実上、韓国サムスン電子との2グループ体制であるため市況も安定。微細化進ちょくでコスト競争力も増し半導体事業の営業利益は従来計画よりも約70億円上振れし250億円となった。
今4~6月期の特長は、従来まで不採算だったデバイスの改善も業績を下支えしたことだ。代表的なのが中小型液晶パネル。スマートフォン(高機能携帯電話機)やカーナビ向けなどが伸び、生産が需要に追いつかない状況が続いている。コスト削減活動も寄与して7四半期ぶりに営業黒字に転換。半導体のシステムLSIの赤字幅も縮小し目立って足をひっぱる事業が減った。
今後のポイントの1つはこのデバイス活況がどこまで続くのか。村岡副社長は「半導体はこれからもっとよくなり、中小型液晶も黒字が続く」と話し、電子デバイスの一段の業績拡大に自信を見せた。仮に4~6月期の調子が年間を通して続けば電子デバイス部門だけで軽く1000億円(計画は900億円)の利益が出る計算。7~9月期決算時には通期業績(営業利益計画2500億円)の上方修正も視野に入ってくる。
ただし、上方修正にはもうひとつ条件がある。社会インフラ事業が確実に利益を出すことだ。やや気になるのは4~6月期に社会インフラが11億円の営業赤字に転落した点。原子力は好調だったものの、前年度の受注低迷の影響を受け売り上げが減少し、営業損益は前年同期に比べ76億円悪化した。「7~9月以降は増収に転じる」(村岡副社長)としているが、今後の回復はどの程度なのか。欧米など景気の先行き不透明感が強まる中、稼ぎ時の1~3月期までにできるだけ利益を上げておきたいものだ。
11年3月期は始まったばかりとはいえ、4~6月期決算で2本柱とする成長シナリオの復活は見えてきた。この流れを確実なものにできるかどうか。ポイントは半導体と原子力の競争力強化だけではない。
改善傾向にあるとはいえ、もはや飛躍的な利益拡大が期待できない中小型液晶パネルやシステムLSIなど課題事業の抜本策をどう打ち出すのか。追い詰められてからではなく、課題事業が改善傾向にある今こそ、選択と集中を進め2本柱への経営資源シフトを加速する時期なのかもしれない。
エコカー支援 補助金打ち切りは時期尚早だ(7月31日付・読売社説)
せっかく効果を上げている景気刺激策を、なぜやめるのか。
政府は30日、省エネ性能に優れたエコカーを購入する際に支給する補助金を、期限である9月末で打ち切ることを決めた。
直嶋経済産業相は「臨時、異例の措置としてやってきた。自動的に9月末で終了することになる」と述べた。
しかし、最近は、景気回復の足取りがもたついている。消費の下支え策をなくすには、タイミングが悪いのではないか。経済界にも存続を求める声が強い。
経済危機対応のため今年度予算に盛り込まれた1兆円の予備費を使えば、財源の手当ては可能だ。政府は、補助金の支給を当面続けるよう、再考すべきである。
エコカー補助金は、麻生政権が今年3月末までの時限措置として導入した後、鳩山政権も予算を追加して6か月延長した。
乗用車で最大25万円をもらえる内容が好評で、省エネ家電のエコポイントとともに、消費拡大に高い効果を上げてきた。
支援の財源として2009年度の補正予算で約6000億円が計上された。これで450万台分の購入支援が可能となり、すでに300万台分の利用が決まった。
補助金は1000億円ほど残っており、期限切れまで、まだ2か月あるが、影響はすでに出始めているようだ。
新車登録が9月末に間に合わないと補助金の対象にならないが、人気車は契約から納車まで2か月以上かかることも珍しくない。
販売店の説明で、今すぐ買っても補助金がもらえない恐れがあると知り、購入をあきらめる客もいるという。
今後、補助金制度の終了で、本格的に自動車の販売が落ち込むことが懸念される。
昨年1月に新車購入支援制度を導入したドイツでは、9月に予算を使い果たして制度が廃止された。その後、新車の販売台数は、支援の実施中より2割以上も落ち込んだまま低迷が続いている。
終了後の販売減少を見込んで、トヨタ自動車は国内生産を、10月から2割ほど減らす。主要産業の自動車が減産に動けば、回復のペースが落ちてきた工業生産が、さらに冷え込みかねない。
財政は厳しいが、打ち切りは景気への副作用が大きい。対象車種を絞って支援規模を縮小するなど、財政と景気の両面に配慮しながら補助金を継続させる知恵を出してほしい。
ドコモが使える日本通信「SIMカード」はこうして実現した
山田隆持NTTドコモ社長の「全面対応宣言」以降、注目の的となっている携帯電話の「SIMロック解除」。NTTドコモは来春以降に発売する全機種を他の通信会社の回線でも使えるようにする方針だが、それを先取りして仮想移動体通信事業者(MVNO)大手の日本通信がSIMロック解除端末向けのSIMカードを7月30日に発売する。
日本通信が7月23日に発表した「talkingSIM」は、データ通信と音声通話サービスを利用できるスマートフォン向けSIMカードだ。同社はこれまでもデータ通信のみのSIMカードを販売していたが、今回はそれに音声サービスを組み合わせてきた。
日本通信はtalkingSIMの通信回線として音声、データ通信ともにNTTドコモのネットワークを使う。つまり、契約上は日本通信のサービスだが、実際はNTTドコモの強力な通信インフラをそのまま使えることになる。
基本料金は月額3960円。これでデータ通信が使い放題(通信速度は上下300kbps程度の制限あり)となり、音声通話も1050円分まで無料で使える(超過分は30秒21円)。他社の同様のサービスが6000~7000円程度であることを考えると、かなり割安と言える。「スマートフォンユーザーは2台持ちの人が多い。2台目用のコスト負担が少ないサービスとして、talkingSIMを提供したい」と日本通信の福田尚久最高執行責任者(COO)は語る。
「iPhone」も利用可能
このSIMカードを使うには、ユーザーは当然ながらSIMロック解除端末を自分で用意しなくてはならない。しかし、talkingSIMの仕様はNTTドコモのSIMカードと同一で、実質的には同じように使える。そのため、NTTドコモが販売している「Xperia(ソニー・エリクソン製)や「T-01A」(東芝製)などのスマートフォンでも利用可能だ。それらの中古品を安く手に入れれば、talkingSIMで使うことができる。
しかし、最も需要が大きいのはアップルの「iPhone」シリーズだろう。香港などで売られているSIMロック解除版の「iPhone3GS」は、問題なく利用できることを日本通信自身が確認し、同社ホームページで動作確認端末の一覧として掲載している。ユーザーが香港などで購入してtalkingSIMを装着すれば、日本で電話もデータ通信も使えるようになるわけだ。
現在は品薄状態が続いている最新機種の「iPhone4」は、通常のSIMカードより小さなmicroSIMカードを採用している。日本通信は「現状ではmicroSIMカードを使ったSIMロック解除端末が世の中に多く出回っていないため用意しなかった。しかし、今後流通するようであれば、積極的に対応してきたい」(福田COO)という。
ちなみに、SIMロック解除版のiPhone4はすでにフランス、英国などでも普通に購入できるようだ。香港でも7月30日にiPhone4が発売される。日本でもSIMロックがかかっていないiPhone4の流通が徐々に始まることだろう。
番号ポータビリティーに対応
今回のtalkingSIMで特に目を引くのは、番号ポータビリティー制度(MNP)に対応している点だ。現在は別の携帯電話会社を利用している人が電話番号をそのまま持ち運んでtalkingSIMに乗り換えられる。「MNP対応は各通信事業者との準備もあって苦労した部分。この調整に時間がかかってしまった」(福田COO)。
また、talkingSIMは電話番号同士でメッセージを送るSMS(ショート・メッセージング・サービス)にも対応する。相手はNTTドコモユーザーに限られるが、それでも使用機会はかなり多いだろう。ほかにも、キャッチホン、留守番電話、転送サービス、国際電話サービスをカバーする。国際ローミングも「NTTドコモと同等の国・地域で使える」(福田COO)という(ただし、音声通話のみ。データ通信はローミング非対応)。
ドコモとの契約締結で実現
日本通信はもともとNTTドコモのネットワークと相互接続をしており、2009年4月には音声通話に関して卸役務契約を結ぶことでも合意した。今回のサービスはこれらの契約関係のうえで実現している。日本通信は音声サービスの主軸をIP電話と捉えているが、現状でユーザーのニーズを満たすには、一般的な音声通話サービスを提供するのが不可欠と考え、今回のサービス提供に至ったという。
ユーザーの立場からすれば、300kbpsという通信速度制限はあるにせよ、月額4000円弱でスマートフォンを所有できる魅力は大きい。しかも、いままで使っていた電話番号をそのまま引き継げるメリットもある。来年以降、SIMロック解除端末が増えてくれば、ユーザーの関心はさらに高まることだろう。
300kbpsの通信制限について福田COOは、「当社には通信速度に制限がなく通信時間で課金するサービスもある。今後はそうしたサービスとの様々な組み合わせも検討していきたい」と語る。talkingSIMはあくまで第一弾商品であり、今後もユーザーのニーズに合わせて製品群を拡充することを検討しているようだ。
「ライバル」から「パートナー」へ
日本通信とNTTドコモは、傍目には必ずしも友好関係にあるようにはみえない。つい最近も日本通信が「NTTドコモは法人向け取引で不当廉売している」との意見書を総務省に提出するなど、NTTドコモの「独占」を激しく追及している。しかし、福田COOは「talkingSIMの実現にあたり、NTTドコモにはいろいろと対応してもらった。むしろ我々の存在に理解があり、いい関係といえる」と明かす。
実はNTTドコモにとって、MVNOはありがたい存在になりつつある。なにより、新規契約者数を稼いでくれるため、ソフトバンクモバイルやKDDIとの競争にプラスに働く。昨年以降、NTTドコモが契約者数でソフトバンクモバイルからトップを奪還する月があるが、それもNTTドコモから回線の提供を受けているウィルコムや日本通信が契約で貢献したからこそとも言われている。
大手携帯電話会社のなかにも、かつては「MVNOはライバル」と語る幹部が見受けられたが、最近は「重要なパートナー」との認識が広がりつつある。NTTドコモの山田社長は「LTE(サービス名称は「クロッシィ」)でも、MVNOには回線を提供していく」と語っており、MVNOとのいい関係は今後も継続されていきそうだ。
航空業界に大手と格安航空会社(ローコストキャリア)があるように、日本の携帯電話業界にも様々な選択肢が出てきた。スマートフォンの広がりとともに、SIMロック解除の機運がさらに高まれば、業界内に新たな競争が起こっていきそうだ。
YouTube、投稿ビデオの長さを15分に延長――著作権技術の向上で可能に
米Google傘下のYouTubeは7月29日(現地時間)、一般ユーザーによる投稿動画の長さ制限の上限を10分から15分に延長したと発表した。動画再生時間の延長は、ユーザーからの最も多いリクエストだったという。
YouTubeは立ち上げ時には動画の長さに制限を設けていなかったが、10分以上の動画には著作権を持つ映画やテレビ番組などの違法な投稿が多かったことから、2006年に1本の動画の長さを10分間に制限した。
今回10分から15分に延長したのは、同社が著作権保有者に提供している「Content ID」をはじめとするコンテンツ管理ツールの性能が向上し、採用するパートナー企業も増えたためにコンテンツの保護が可能になったからとしている。Content IDは、投稿された動画を著作権保有動画のデータベースと照合し、著作権を侵害しているかどうかを自動判定するツール。違法と判定した場合は著作権を保有するパートナー企業に通知する。通知を受けた企業は、対象となった動画を削除するか、その動画に広告を掲載することで収益を上げることもできる。現在、米国の主要な映画会社と音楽レーベル、世界の1000以上の著作権保有企業がContent IDを利用しているという。
YouTubeはメディア大手Viacomから、ユーザーによるコンテンツの無断アップロードを容認しているとして起訴されていたが、この6月に勝訴している。
YouTubeは制限時間延長を記念して、「15 minutes of fame」(アンディ・ウォーホルの「誰でも15分で有名になれるだろう」という言葉にちなんでいる)というキャンペーンをスタートした。8月4日までに「yt15minutes」というタグを付けて15分間の動画をすると、YouTubeが優秀作品を特設コーナーに掲載する。
この秋にはテレビでインターネットのコンテンツを視聴できるプラットフォーム「Google TV」対応テレビが発売される予定だ。今回の制限時間延長は、7月12日に発表された4K2Kビデオのサポート同様に、Google TV普及に向けたコンテンツの充実を狙ったものとみられる。
「ぴあ関西版」10月休刊へ
エンターテインメント情報誌「ぴあ関西版」(隔週刊)が10月7日発売号を最後に休刊することが30日、分かった。
同誌は、発行元のぴあによると、1986年創刊。94年には約25万部を発行していたが、最近は4万部程度に低下していた。年内にチケット情報などを掲載する新メディアをつくるという。
au、800MHz再編で回線交換のデータ通信を終了
KDDI、沖縄セルラーは、auにおける回線交換方式のデータ通信サービスを終了すると発表した。800MHz帯の周波数再編に伴うもので、同周波数帯の再編完了までに終了する。
auにおける回線交換方式のデータ通信サービスは、1999年のCDMA方式導入当初から提供が開始された。CDMA 1X、CDMA 1X WIN EVDO、CDMA 1X WIN EVDO Rev.Aの各方式におけるパケットデータ通信サービスの提供に伴って、2005年秋モデルから順次、回線交換方式のデータ通信サービスには非対応となっていた。
今回のサービス終了は800MHz帯の周波数再編に伴うもので、再編が完了すると回線交換方式のデータ通信サービスは利用できなくなる。KDDIでは、具体的な日時は今後発表する予定、再編完了までにサービスを終了すると案内している。
なお、KDDIによると、回線交換方式のデータ通信サービスに対応した端末の加入者数は2010年6月末時点で1400件。このうち多くは法人契約のユーザーになるという。
「モバツイ」の想創社、取締役にペパボ家入氏や金剛地武志氏ら
携帯電話向けTwitterクライアントサービス「モバツイ」を運営する株式会社想創社は、9月1日に社名を「株式会社マインドスコープ」に変更するとともに、取締役に株式会社paperboy&co.の創業者である家入一真氏ら3人を迎え入れることを明らかにした。
代表取締役社長兼CTOには引き続き藤川真一氏が務め、今後は携帯電話向けのモバツイ拡充と、バナー広告売り上げの拡大に向けて開発陣頭指揮を執るという。マインドスコープという社名は、「ネット上の人々を覗くための入り口」という意味。
取締役には、藤川氏のかつての上司でもあるという家入氏に加えて、「シーマン」の開発者としても知られるゲームクリエイターの斎藤由多加氏、タレントの金剛地武志氏の3人が就任する。
家入氏は宣伝戦略およびコーポレートデザイン、インターフェイスを含むトータルデザイン、斎藤はスマートフォン向けインターフェイスやコンテンツなど、金剛地氏はモバツイのエンターテインメント性向上の象徴および広報担当役員として活躍してもらう考え。
想創社は、モバツイを開発した藤川氏が2010年1月に創業。2010年7月には、「モバツイランド」という名称でコンテンツ配信を実験的に開始した。モバツイの登録会員は86万人以上、バナー広告の導入実績は30社以上という。
今回の組織変更の背景について藤川氏は、「モバツイをもっともっとおもしろくしたい」という希望があったと説明。新任取締役が持つノウハウやアイデア、開発物を取り入れることで、「劇的におもしろくて使いやすいサービスを実現したい」としている。
想創社では、モバツイのユーザーからの意見を聞き、将来のモバツイの仕様を決めるという「モバツイ2.0キャンペーン」を開催する。8月には特設サイトを開設し、藤川氏自らも意見を交換していくという。
9月にはTwitterアカウントを含む連絡先を検索できる「モバツイ電話帳(仮)」を開始する。藤川氏によれば「ネット上の104番号案内を目指した」サービスで、開始時点でモバツイに登録されているTwitterユーザー情報が「モバツイ電話帳」移行される。検索時に表示される情報は、本人が設定できる。
ゲーム介した友人づくり 日本から世界へ 守安功・DeNA取締役
米アップルの「iPhone(アイフォーン)」などスマートフォン向けのアプリ開発に参入する動きが相次いでいる。開発講座が人気を集め、家電向けの組み込みソフトを開発していた企業がアプリ開発へと転身を図る。
アイデアひとつで誰もが平等に世界に飛び出せる「ソーシャル」の時代。初心者でもダウンロードランキング1位に輝くことができる。
加速するアプリ開発競争を受けて、今、ネットの世界では優良ソフト技術の囲い込み競争が激しさを増している。
瞬時に情報を共有できるソーシャルメディアの世界。ゲームなどのコンテンツが人と人とのつながりを支える磁力のような存在になり始めている。新たなネット空間の普及に合わせてゲームなどのコンテンツはどう変わるのか。携帯電話向けSNS(交流サイト)「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の守安功取締役に聞いた。
――ソーシャルメディアの普及はゲームなどのコンテンツにどんな影響を及ぼすのか。
「人がたくさん集まっているからこそ会話が生まれ、新しいサービスが生まれる。ソーシャルが加わることでインターネットのサービスも変わる。そうした空間を作り上げるために、人と人が交流するソーシャルゲームという新しいジャンルが生まれた」
――既存の家庭用ゲーム市場への影響は。
「ゲーム産業も変革期を迎えている。これまでは家庭用ゲーム機向けのパッケージ型ゲームとゲーム好きを対象にしたパソコン向けのゲームがあった。その二つの中間に登場したのが、簡単に遊べるカジュアルなソーシャルゲームだ」
「利用料が無料でアイテムを購入して自分好みのキャラクターを作っていくことを友人と競い合うといった手法が、ゲームを今までしなかった層に受け入れられた。当社でも会員数が2000万人規模になっている」
――無料ゲームをベースにどう収益モデルを築いているのか。
「例えば月100万人利用するゲームの場合、その内の10%がアイテムを平均で月1000円購入すれば1億円の売り上げになる」
――ゲームを利用する層に変化があるのか。
「モバゲーの利用者は10代、20代が多く40代以上は少ない。若年層が多いのは国内ではソーシャルゲームは携帯電話での利用が多いためだろう」
「だが、(サービス開始から3年以上たった)米フェースブックでは、ソーシャルゲームの利用者が40代が主流になっている。日本でも今後、パソコンなど様々なデバイスに広がることで、ソーシャルゲームを利用する年齢層も高まっていくだろう」
――開発の手法に変化はあるのか。
「従来は5000円、6000円程度のパッケージを売り切るモデル。だが、ソーシャルゲームの利用料は無料。ユーザーを飽きさせないために、絶えずゲームのクオリティーやリピート率を高めなければならない」
「そのため、開発のスピードを高めることが必要だ。今までのように数年かけているのではなく、数カ月で制作しなければならない。例えば、当社の宝物探しゲーム『怪盗ロワイヤル』は2人で制作した」
――ゲーム業界に必要な人材も変わるのか。
「今までのゲーム業界は企画、グラフィックなど分業していたが、我々はそれだけでなくマーケティング、販売も含め総合的な視野をもった人材が必要だと考えている」
――フェースブックなど様々なSNSと競合することになるのか
「フェースブックや国内のミクシィは実名で友人と交流することが主体。我々はアバター(ネット上の分身)を活用したバーチャルな交流が中心だ。つまりゲーム内で知り合った友人。こういったソーシャル性は海外ではなく、日本の特有のものだ。海外でも新しいソーシャルの形として海外でも勝負していける要素だと考える」
ツタヤのネット宅配、会員100万人突破 2年で倍増
映像音楽ソフトのレンタル事業「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブは30日、ネット宅配レンタルサービス「ツタヤディスカス」の会員が100万人を突破したと発表した。昨年10月に携帯電話からの会員登録を可能にしたことで大幅に伸びた。
ツタヤディスカスは、ネットを通じて指定したソフトを送料無料で自宅に取り寄せ、郵便ポストから返却できるサービスで、2002年にスタート。ほぼ全国で翌日配送される利便性などから、08年に会員数50万人を達成した。
現在、携帯電話からの入会申し込みが全体の約3割を占めるという。携帯電話での料金の支払いもできるなど、さらに便利になったことから、約2年で会員数を倍増させた。
エコカー補助金、9月末終了を決定 直嶋経産相「対策必要ない」
直嶋正行経済産業相は30日午前の閣議後の記者会見で、環境対応車への買い替え・購入に対するエコカー補助金制度について、当初の予定どおり9月末で終了することを正式決定したと明らかにした。
直嶋経産相は、景気動向を注視する必要があるとして、延長の可能性に含みをもたせてきた。打ち切りについて、「9月からさらに引き続いて何らかの対策が必要という状況ではない」と説明した。
これに合わせ、経産省は同日、エコカー補助金の申請期限を10月29日とすると発表した。
エコカー補助金をめぐっては、小沢鋭仁環境相が「経済状況から延長は必要」と発言していたほか、日本自動車工業会の志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)も、延長に期待を示していた。
記者の目◇ソニーが決算短信に込めたメッセージ
ソニーが29日発表した2010年4~6月期の連結決算は、営業損益が670億円の黒字(前年同期は257億円の赤字)だった。期初の会社予想(200億~300億円の営業赤字)や直近の市場予想の平均(ゼロ~100億円の営業黒字)から考えれば、想定以上の好決算。リーマン・ショック前の、今より円安だった08年4~6月期(営業利益734億円)に近い水準に回復し、評価の声が聞かれる。そして、今回の決算におけるもう一つのサプライズが11年3月期通期の見通しを上方修正したことだ。
「先行きにはアップサイドもあればリスク要因も考えなければいけないが、この勢いを伸ばしていこうというのが我々の考え方だ」。通期の見通しを上方修正した理由について、この日が記者会見デビューとなった加藤優・最高財務責任者(CFO)は強調した。
新しい通期の営業利益見通しは前期比5.7倍の1800億円。好調だった4~6月期を反映させたうえで、7月以降の対ユーロの想定レートを円高に変更したことによる目減り分を差し引いた。上方修正額はわずか200億円。従来予想からの上乗せは修正ルールで定められた3割に達せず、世界景気の動向が不透明な中であえて予想を変える必要はない。そもそもソニーは大半の営業利益を10~12月期に稼ぐ。まだ4~6月期が終わっただけで、先行きを見通すのは簡単でない。それでも上方修正したのは、成長を再び取り戻そうというソニーのメッセージだ。
4~6月期の営業損益が計画より約900億円上ぶれしたうち、最も貢献したのはエレクトロニクス分野だ。液晶テレビやイメージセンサーのほか、ゲーム機、パソコンが好調だった。長く不振が続いていた液晶テレビ、ゲーム、携帯電話の3事業はいずれも営業黒字に転換。ゲームは3四半期連続で、携帯電話は2四半期連続で営業黒字となり、ようやく安定してきた。
最大の課題だった液晶テレビ事業も大幅に改善した。05年3月期から6年連続で営業赤字を計上していたが、4~6月期は30億円の営業黒字(前年同期は80億円の営業赤字)に浮上。第1四半期の営業黒字は8年ぶりだ。販売台数が6割増の510万台とLG電子に並ぶ水準となり、懸念されていた年間の販売計画(前期比6割増の2500万台)の達成も不可能ではなくなってきた。昨年は世界シェアが9.6%と大きく落としたが、約2割のシェアを持つサムスン電子にもう一度挑戦する余地が出てきた。
前期は3300億円のコスト削減や5000億円弱の材料費削減など構造改革に取り組んできたが、商品の競争激化や価格下落、円高でその効果が吹き飛んでしまった。対して今回の四半期決算では、加藤CFOからは多くの前向きな言葉が発せられた。「今期はテレビなどで良い商品がそろってきた」「エレクトロニクス分野の4~6月期の売上高は新興国で40%伸びている」「これからは成長に向けて投資をしたい」――。
もっとも、懸念材料は数多い。液晶テレビは高付加価値商品向けの液晶パネルやLED(発光ダイオード)の調達が十分でなく、一部で機会損失が出ている。テレビ事業の営業黒字は販売促進費の抑制や期ずれの影響もあり、手放しでは喜べない。ゲームは市場で減損リスクを懸念する声がなお根強い。携帯電話は平均単価を上げるのに成功したが、販売台数シェアは4%にまで低下した。「構造改革はまだ続けるべきだ」(外資系証券)との声も聞かれる。米アップルなどは次々と競争力のある商品やサービスを投入しており、競争条件がどんどん変わっている。
ソニーの株価は3月に年初来高値(3645円)を付けたが、その後約3割下落。PBR(株価純資産倍率)は1倍割れの指定席に戻ってしまった。市場では「過去に何度も業績を下方修正したことで、ソニー神話のプレミアムがはげ落ちた」「最近はインデックス投資の投資家が中心で、じっくり個別材料や投資尺度をみて売買する投資家が少なくなった」との声も聞かれる。
決算短信で示した業績予想の上方修正に込めたメッセージを具現化し、投資家のソニーに対する関心を呼び戻すことができるのか。4~6月期の好調を一過性に終わらせず、持続できるだけの経営力が問われている。
山田隆持NTTドコモ社長の「全面対応宣言」以降、注目の的となっている携帯電話の「SIMロック解除」。NTTドコモは来春以降に発売する全機種を他の通信会社の回線でも使えるようにする方針だが、それを先取りして仮想移動体通信事業者(MVNO)大手の日本通信がSIMロック解除端末向けのSIMカードを7月30日に発売する。
日本通信が7月23日に発表した「talkingSIM」は、データ通信と音声通話サービスを利用できるスマートフォン向けSIMカードだ。同社はこれまでもデータ通信のみのSIMカードを販売していたが、今回はそれに音声サービスを組み合わせてきた。
日本通信はtalkingSIMの通信回線として音声、データ通信ともにNTTドコモのネットワークを使う。つまり、契約上は日本通信のサービスだが、実際はNTTドコモの強力な通信インフラをそのまま使えることになる。
基本料金は月額3960円。これでデータ通信が使い放題(通信速度は上下300kbps程度の制限あり)となり、音声通話も1050円分まで無料で使える(超過分は30秒21円)。他社の同様のサービスが6000~7000円程度であることを考えると、かなり割安と言える。「スマートフォンユーザーは2台持ちの人が多い。2台目用のコスト負担が少ないサービスとして、talkingSIMを提供したい」と日本通信の福田尚久最高執行責任者(COO)は語る。
「iPhone」も利用可能
このSIMカードを使うには、ユーザーは当然ながらSIMロック解除端末を自分で用意しなくてはならない。しかし、talkingSIMの仕様はNTTドコモのSIMカードと同一で、実質的には同じように使える。そのため、NTTドコモが販売している「Xperia(ソニー・エリクソン製)や「T-01A」(東芝製)などのスマートフォンでも利用可能だ。それらの中古品を安く手に入れれば、talkingSIMで使うことができる。
しかし、最も需要が大きいのはアップルの「iPhone」シリーズだろう。香港などで売られているSIMロック解除版の「iPhone3GS」は、問題なく利用できることを日本通信自身が確認し、同社ホームページで動作確認端末の一覧として掲載している。ユーザーが香港などで購入してtalkingSIMを装着すれば、日本で電話もデータ通信も使えるようになるわけだ。
現在は品薄状態が続いている最新機種の「iPhone4」は、通常のSIMカードより小さなmicroSIMカードを採用している。日本通信は「現状ではmicroSIMカードを使ったSIMロック解除端末が世の中に多く出回っていないため用意しなかった。しかし、今後流通するようであれば、積極的に対応してきたい」(福田COO)という。
ちなみに、SIMロック解除版のiPhone4はすでにフランス、英国などでも普通に購入できるようだ。香港でも7月30日にiPhone4が発売される。日本でもSIMロックがかかっていないiPhone4の流通が徐々に始まることだろう。
番号ポータビリティーに対応
今回のtalkingSIMで特に目を引くのは、番号ポータビリティー制度(MNP)に対応している点だ。現在は別の携帯電話会社を利用している人が電話番号をそのまま持ち運んでtalkingSIMに乗り換えられる。「MNP対応は各通信事業者との準備もあって苦労した部分。この調整に時間がかかってしまった」(福田COO)。
また、talkingSIMは電話番号同士でメッセージを送るSMS(ショート・メッセージング・サービス)にも対応する。相手はNTTドコモユーザーに限られるが、それでも使用機会はかなり多いだろう。ほかにも、キャッチホン、留守番電話、転送サービス、国際電話サービスをカバーする。国際ローミングも「NTTドコモと同等の国・地域で使える」(福田COO)という(ただし、音声通話のみ。データ通信はローミング非対応)。
ドコモとの契約締結で実現
日本通信はもともとNTTドコモのネットワークと相互接続をしており、2009年4月には音声通話に関して卸役務契約を結ぶことでも合意した。今回のサービスはこれらの契約関係のうえで実現している。日本通信は音声サービスの主軸をIP電話と捉えているが、現状でユーザーのニーズを満たすには、一般的な音声通話サービスを提供するのが不可欠と考え、今回のサービス提供に至ったという。
ユーザーの立場からすれば、300kbpsという通信速度制限はあるにせよ、月額4000円弱でスマートフォンを所有できる魅力は大きい。しかも、いままで使っていた電話番号をそのまま引き継げるメリットもある。来年以降、SIMロック解除端末が増えてくれば、ユーザーの関心はさらに高まることだろう。
300kbpsの通信制限について福田COOは、「当社には通信速度に制限がなく通信時間で課金するサービスもある。今後はそうしたサービスとの様々な組み合わせも検討していきたい」と語る。talkingSIMはあくまで第一弾商品であり、今後もユーザーのニーズに合わせて製品群を拡充することを検討しているようだ。
「ライバル」から「パートナー」へ
日本通信とNTTドコモは、傍目には必ずしも友好関係にあるようにはみえない。つい最近も日本通信が「NTTドコモは法人向け取引で不当廉売している」との意見書を総務省に提出するなど、NTTドコモの「独占」を激しく追及している。しかし、福田COOは「talkingSIMの実現にあたり、NTTドコモにはいろいろと対応してもらった。むしろ我々の存在に理解があり、いい関係といえる」と明かす。
実はNTTドコモにとって、MVNOはありがたい存在になりつつある。なにより、新規契約者数を稼いでくれるため、ソフトバンクモバイルやKDDIとの競争にプラスに働く。昨年以降、NTTドコモが契約者数でソフトバンクモバイルからトップを奪還する月があるが、それもNTTドコモから回線の提供を受けているウィルコムや日本通信が契約で貢献したからこそとも言われている。
大手携帯電話会社のなかにも、かつては「MVNOはライバル」と語る幹部が見受けられたが、最近は「重要なパートナー」との認識が広がりつつある。NTTドコモの山田社長は「LTE(サービス名称は「クロッシィ」)でも、MVNOには回線を提供していく」と語っており、MVNOとのいい関係は今後も継続されていきそうだ。
航空業界に大手と格安航空会社(ローコストキャリア)があるように、日本の携帯電話業界にも様々な選択肢が出てきた。スマートフォンの広がりとともに、SIMロック解除の機運がさらに高まれば、業界内に新たな競争が起こっていきそうだ。
YouTube、投稿ビデオの長さを15分に延長――著作権技術の向上で可能に
米Google傘下のYouTubeは7月29日(現地時間)、一般ユーザーによる投稿動画の長さ制限の上限を10分から15分に延長したと発表した。動画再生時間の延長は、ユーザーからの最も多いリクエストだったという。
YouTubeは立ち上げ時には動画の長さに制限を設けていなかったが、10分以上の動画には著作権を持つ映画やテレビ番組などの違法な投稿が多かったことから、2006年に1本の動画の長さを10分間に制限した。
今回10分から15分に延長したのは、同社が著作権保有者に提供している「Content ID」をはじめとするコンテンツ管理ツールの性能が向上し、採用するパートナー企業も増えたためにコンテンツの保護が可能になったからとしている。Content IDは、投稿された動画を著作権保有動画のデータベースと照合し、著作権を侵害しているかどうかを自動判定するツール。違法と判定した場合は著作権を保有するパートナー企業に通知する。通知を受けた企業は、対象となった動画を削除するか、その動画に広告を掲載することで収益を上げることもできる。現在、米国の主要な映画会社と音楽レーベル、世界の1000以上の著作権保有企業がContent IDを利用しているという。
YouTubeはメディア大手Viacomから、ユーザーによるコンテンツの無断アップロードを容認しているとして起訴されていたが、この6月に勝訴している。
YouTubeは制限時間延長を記念して、「15 minutes of fame」(アンディ・ウォーホルの「誰でも15分で有名になれるだろう」という言葉にちなんでいる)というキャンペーンをスタートした。8月4日までに「yt15minutes」というタグを付けて15分間の動画をすると、YouTubeが優秀作品を特設コーナーに掲載する。
この秋にはテレビでインターネットのコンテンツを視聴できるプラットフォーム「Google TV」対応テレビが発売される予定だ。今回の制限時間延長は、7月12日に発表された4K2Kビデオのサポート同様に、Google TV普及に向けたコンテンツの充実を狙ったものとみられる。
「ぴあ関西版」10月休刊へ
エンターテインメント情報誌「ぴあ関西版」(隔週刊)が10月7日発売号を最後に休刊することが30日、分かった。
同誌は、発行元のぴあによると、1986年創刊。94年には約25万部を発行していたが、最近は4万部程度に低下していた。年内にチケット情報などを掲載する新メディアをつくるという。
au、800MHz再編で回線交換のデータ通信を終了
KDDI、沖縄セルラーは、auにおける回線交換方式のデータ通信サービスを終了すると発表した。800MHz帯の周波数再編に伴うもので、同周波数帯の再編完了までに終了する。
auにおける回線交換方式のデータ通信サービスは、1999年のCDMA方式導入当初から提供が開始された。CDMA 1X、CDMA 1X WIN EVDO、CDMA 1X WIN EVDO Rev.Aの各方式におけるパケットデータ通信サービスの提供に伴って、2005年秋モデルから順次、回線交換方式のデータ通信サービスには非対応となっていた。
今回のサービス終了は800MHz帯の周波数再編に伴うもので、再編が完了すると回線交換方式のデータ通信サービスは利用できなくなる。KDDIでは、具体的な日時は今後発表する予定、再編完了までにサービスを終了すると案内している。
なお、KDDIによると、回線交換方式のデータ通信サービスに対応した端末の加入者数は2010年6月末時点で1400件。このうち多くは法人契約のユーザーになるという。
「モバツイ」の想創社、取締役にペパボ家入氏や金剛地武志氏ら
携帯電話向けTwitterクライアントサービス「モバツイ」を運営する株式会社想創社は、9月1日に社名を「株式会社マインドスコープ」に変更するとともに、取締役に株式会社paperboy&co.の創業者である家入一真氏ら3人を迎え入れることを明らかにした。
代表取締役社長兼CTOには引き続き藤川真一氏が務め、今後は携帯電話向けのモバツイ拡充と、バナー広告売り上げの拡大に向けて開発陣頭指揮を執るという。マインドスコープという社名は、「ネット上の人々を覗くための入り口」という意味。
取締役には、藤川氏のかつての上司でもあるという家入氏に加えて、「シーマン」の開発者としても知られるゲームクリエイターの斎藤由多加氏、タレントの金剛地武志氏の3人が就任する。
家入氏は宣伝戦略およびコーポレートデザイン、インターフェイスを含むトータルデザイン、斎藤はスマートフォン向けインターフェイスやコンテンツなど、金剛地氏はモバツイのエンターテインメント性向上の象徴および広報担当役員として活躍してもらう考え。
想創社は、モバツイを開発した藤川氏が2010年1月に創業。2010年7月には、「モバツイランド」という名称でコンテンツ配信を実験的に開始した。モバツイの登録会員は86万人以上、バナー広告の導入実績は30社以上という。
今回の組織変更の背景について藤川氏は、「モバツイをもっともっとおもしろくしたい」という希望があったと説明。新任取締役が持つノウハウやアイデア、開発物を取り入れることで、「劇的におもしろくて使いやすいサービスを実現したい」としている。
想創社では、モバツイのユーザーからの意見を聞き、将来のモバツイの仕様を決めるという「モバツイ2.0キャンペーン」を開催する。8月には特設サイトを開設し、藤川氏自らも意見を交換していくという。
9月にはTwitterアカウントを含む連絡先を検索できる「モバツイ電話帳(仮)」を開始する。藤川氏によれば「ネット上の104番号案内を目指した」サービスで、開始時点でモバツイに登録されているTwitterユーザー情報が「モバツイ電話帳」移行される。検索時に表示される情報は、本人が設定できる。
ゲーム介した友人づくり 日本から世界へ 守安功・DeNA取締役
米アップルの「iPhone(アイフォーン)」などスマートフォン向けのアプリ開発に参入する動きが相次いでいる。開発講座が人気を集め、家電向けの組み込みソフトを開発していた企業がアプリ開発へと転身を図る。
アイデアひとつで誰もが平等に世界に飛び出せる「ソーシャル」の時代。初心者でもダウンロードランキング1位に輝くことができる。
加速するアプリ開発競争を受けて、今、ネットの世界では優良ソフト技術の囲い込み競争が激しさを増している。
瞬時に情報を共有できるソーシャルメディアの世界。ゲームなどのコンテンツが人と人とのつながりを支える磁力のような存在になり始めている。新たなネット空間の普及に合わせてゲームなどのコンテンツはどう変わるのか。携帯電話向けSNS(交流サイト)「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の守安功取締役に聞いた。
――ソーシャルメディアの普及はゲームなどのコンテンツにどんな影響を及ぼすのか。
「人がたくさん集まっているからこそ会話が生まれ、新しいサービスが生まれる。ソーシャルが加わることでインターネットのサービスも変わる。そうした空間を作り上げるために、人と人が交流するソーシャルゲームという新しいジャンルが生まれた」
――既存の家庭用ゲーム市場への影響は。
「ゲーム産業も変革期を迎えている。これまでは家庭用ゲーム機向けのパッケージ型ゲームとゲーム好きを対象にしたパソコン向けのゲームがあった。その二つの中間に登場したのが、簡単に遊べるカジュアルなソーシャルゲームだ」
「利用料が無料でアイテムを購入して自分好みのキャラクターを作っていくことを友人と競い合うといった手法が、ゲームを今までしなかった層に受け入れられた。当社でも会員数が2000万人規模になっている」
――無料ゲームをベースにどう収益モデルを築いているのか。
「例えば月100万人利用するゲームの場合、その内の10%がアイテムを平均で月1000円購入すれば1億円の売り上げになる」
――ゲームを利用する層に変化があるのか。
「モバゲーの利用者は10代、20代が多く40代以上は少ない。若年層が多いのは国内ではソーシャルゲームは携帯電話での利用が多いためだろう」
「だが、(サービス開始から3年以上たった)米フェースブックでは、ソーシャルゲームの利用者が40代が主流になっている。日本でも今後、パソコンなど様々なデバイスに広がることで、ソーシャルゲームを利用する年齢層も高まっていくだろう」
――開発の手法に変化はあるのか。
「従来は5000円、6000円程度のパッケージを売り切るモデル。だが、ソーシャルゲームの利用料は無料。ユーザーを飽きさせないために、絶えずゲームのクオリティーやリピート率を高めなければならない」
「そのため、開発のスピードを高めることが必要だ。今までのように数年かけているのではなく、数カ月で制作しなければならない。例えば、当社の宝物探しゲーム『怪盗ロワイヤル』は2人で制作した」
――ゲーム業界に必要な人材も変わるのか。
「今までのゲーム業界は企画、グラフィックなど分業していたが、我々はそれだけでなくマーケティング、販売も含め総合的な視野をもった人材が必要だと考えている」
――フェースブックなど様々なSNSと競合することになるのか
「フェースブックや国内のミクシィは実名で友人と交流することが主体。我々はアバター(ネット上の分身)を活用したバーチャルな交流が中心だ。つまりゲーム内で知り合った友人。こういったソーシャル性は海外ではなく、日本の特有のものだ。海外でも新しいソーシャルの形として海外でも勝負していける要素だと考える」
ツタヤのネット宅配、会員100万人突破 2年で倍増
映像音楽ソフトのレンタル事業「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブは30日、ネット宅配レンタルサービス「ツタヤディスカス」の会員が100万人を突破したと発表した。昨年10月に携帯電話からの会員登録を可能にしたことで大幅に伸びた。
ツタヤディスカスは、ネットを通じて指定したソフトを送料無料で自宅に取り寄せ、郵便ポストから返却できるサービスで、2002年にスタート。ほぼ全国で翌日配送される利便性などから、08年に会員数50万人を達成した。
現在、携帯電話からの入会申し込みが全体の約3割を占めるという。携帯電話での料金の支払いもできるなど、さらに便利になったことから、約2年で会員数を倍増させた。
エコカー補助金、9月末終了を決定 直嶋経産相「対策必要ない」
直嶋正行経済産業相は30日午前の閣議後の記者会見で、環境対応車への買い替え・購入に対するエコカー補助金制度について、当初の予定どおり9月末で終了することを正式決定したと明らかにした。
直嶋経産相は、景気動向を注視する必要があるとして、延長の可能性に含みをもたせてきた。打ち切りについて、「9月からさらに引き続いて何らかの対策が必要という状況ではない」と説明した。
これに合わせ、経産省は同日、エコカー補助金の申請期限を10月29日とすると発表した。
エコカー補助金をめぐっては、小沢鋭仁環境相が「経済状況から延長は必要」と発言していたほか、日本自動車工業会の志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)も、延長に期待を示していた。
記者の目◇ソニーが決算短信に込めたメッセージ
ソニーが29日発表した2010年4~6月期の連結決算は、営業損益が670億円の黒字(前年同期は257億円の赤字)だった。期初の会社予想(200億~300億円の営業赤字)や直近の市場予想の平均(ゼロ~100億円の営業黒字)から考えれば、想定以上の好決算。リーマン・ショック前の、今より円安だった08年4~6月期(営業利益734億円)に近い水準に回復し、評価の声が聞かれる。そして、今回の決算におけるもう一つのサプライズが11年3月期通期の見通しを上方修正したことだ。
「先行きにはアップサイドもあればリスク要因も考えなければいけないが、この勢いを伸ばしていこうというのが我々の考え方だ」。通期の見通しを上方修正した理由について、この日が記者会見デビューとなった加藤優・最高財務責任者(CFO)は強調した。
新しい通期の営業利益見通しは前期比5.7倍の1800億円。好調だった4~6月期を反映させたうえで、7月以降の対ユーロの想定レートを円高に変更したことによる目減り分を差し引いた。上方修正額はわずか200億円。従来予想からの上乗せは修正ルールで定められた3割に達せず、世界景気の動向が不透明な中であえて予想を変える必要はない。そもそもソニーは大半の営業利益を10~12月期に稼ぐ。まだ4~6月期が終わっただけで、先行きを見通すのは簡単でない。それでも上方修正したのは、成長を再び取り戻そうというソニーのメッセージだ。
4~6月期の営業損益が計画より約900億円上ぶれしたうち、最も貢献したのはエレクトロニクス分野だ。液晶テレビやイメージセンサーのほか、ゲーム機、パソコンが好調だった。長く不振が続いていた液晶テレビ、ゲーム、携帯電話の3事業はいずれも営業黒字に転換。ゲームは3四半期連続で、携帯電話は2四半期連続で営業黒字となり、ようやく安定してきた。
最大の課題だった液晶テレビ事業も大幅に改善した。05年3月期から6年連続で営業赤字を計上していたが、4~6月期は30億円の営業黒字(前年同期は80億円の営業赤字)に浮上。第1四半期の営業黒字は8年ぶりだ。販売台数が6割増の510万台とLG電子に並ぶ水準となり、懸念されていた年間の販売計画(前期比6割増の2500万台)の達成も不可能ではなくなってきた。昨年は世界シェアが9.6%と大きく落としたが、約2割のシェアを持つサムスン電子にもう一度挑戦する余地が出てきた。
前期は3300億円のコスト削減や5000億円弱の材料費削減など構造改革に取り組んできたが、商品の競争激化や価格下落、円高でその効果が吹き飛んでしまった。対して今回の四半期決算では、加藤CFOからは多くの前向きな言葉が発せられた。「今期はテレビなどで良い商品がそろってきた」「エレクトロニクス分野の4~6月期の売上高は新興国で40%伸びている」「これからは成長に向けて投資をしたい」――。
もっとも、懸念材料は数多い。液晶テレビは高付加価値商品向けの液晶パネルやLED(発光ダイオード)の調達が十分でなく、一部で機会損失が出ている。テレビ事業の営業黒字は販売促進費の抑制や期ずれの影響もあり、手放しでは喜べない。ゲームは市場で減損リスクを懸念する声がなお根強い。携帯電話は平均単価を上げるのに成功したが、販売台数シェアは4%にまで低下した。「構造改革はまだ続けるべきだ」(外資系証券)との声も聞かれる。米アップルなどは次々と競争力のある商品やサービスを投入しており、競争条件がどんどん変わっている。
ソニーの株価は3月に年初来高値(3645円)を付けたが、その後約3割下落。PBR(株価純資産倍率)は1倍割れの指定席に戻ってしまった。市場では「過去に何度も業績を下方修正したことで、ソニー神話のプレミアムがはげ落ちた」「最近はインデックス投資の投資家が中心で、じっくり個別材料や投資尺度をみて売買する投資家が少なくなった」との声も聞かれる。
決算短信で示した業績予想の上方修正に込めたメッセージを具現化し、投資家のソニーに対する関心を呼び戻すことができるのか。4~6月期の好調を一過性に終わらせず、持続できるだけの経営力が問われている。
電波割り当て競売浮上 次世代通信など対象
総務省は電波の割り当てを巡り、オークション(競売)方式を解禁する検討に入る。30日に同省で開く電波利用料に関する調査会で方向性を示す。次世代の高速通信など新サービス導入時を念頭に置いており、公開入札で最高額を提示した事業者に免許を与える。国の裁量で電波を割り当てる現状を改め、透明性を高めるのが狙いだ。
現状は有限資源である電波について国が管理し、利用を希望する事業者を総務省が審査。これを通った事業者に同省が無償で割り当てている。同省はこれまで競売方式だと落札額が高騰し、利用者に負担が及びかねないとして消極的だったが、調査会では「選択肢から排除しない」などとして事実上、方針を転換する姿勢を示す見通しだ。
背景にあるのが政権交代。民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で同方式導入の方針を掲げた。原口一博総務相もかねて「限りある電波を有効利用し、国民にしっかりと還元していく責任は重い」と述べてきた。競売方式にすれば国が収入を得られることもあり、財政面からも後押しする声がある。
競売の対象とする電波など詳細については今後議論する。将来、新しい無線通信サービスなどを導入する際に競売を採用する案などが出ている。
現行の携帯電話の周波数を広げる場合では、割り当て方式で獲得した既存業者と競売方式で参入する業者との間の不公平が表面化しかねないと判断。当面は競売方式の対象にしない方針だ。
同方式の本格実施には電波法改正も必要。衆参ねじれ国会の下では実現は困難との見方もある。自民党政権時代は競売方式は実現しなかった。
競売方式に対しては「経営資本が潤沢でない企業の新規参入の障壁となる」(ソフトバンクモバイル)などの声もある。海外ではIT(情報技術)バブルなどと軌を一にして落札額が急騰、負担に耐えられずに事業を断念した例もあった。
経済協力開発機構(OECD)加盟国では3分の2以上がオークションを導入済み。米国では1994年の開始から2009年3月までに携帯電話などで70回以上を実施、合計落札額は8兆4千億円に達した。
孫正義社長の後継者求む! ソフトバンクアカデミアが開講
7月28日午後6時、東京・汐留のソフトバンク本社で、孫正義社長の後継者発掘・育成を目的にした「ソフトバンクアカデミア」の第1回講義が開かれた。
現在52歳の孫社長は60代のうちに後継者に社長の座を譲ることを明言している。今回の講座は来るべき10数年後に備え、その候補を選抜、育成するためのものだ。この日集まったのは、グループ会社を含め社内から志願した約1000名。20~30代の若手社員が半数を占めた。
「皆さんにこれから20~30年間伝授していくことを1ページで表すとこの25字になる」。自ら教壇に立った孫社長は「我こそは」と野心と熱意でぎらつく聴衆に向け、まずこの日のテーマを掲げた。
道天地将法
頂情略七闘
一流攻守群
智信仁勇厳
風林火山海
これは、孫社長がかねてより「孫の二乗の法則」と呼んでいる経営哲学。古代中国の思想家、孫子の兵法に自身の独自の解釈を付け加えたものだ。
「この25字を片時も忘れたことはない。新しい事業をやるとき、試練にぶつかったとき、新しいビジョンを立てるとき、つねにこの25字にマッチしているかを自問自答しながらやってきた」。いわば、孫社長の経営思想のエッセンスが凝縮された25字だ。約2時間半にわたる講義では、この1字1字について、自身の解釈をかみくだいて解説してみせた。
ここでは、そのなかから一部をかいつまんで紹介しよう。
この日、孫社長が再三にわたって強調したのが、撤退する勇気の重要性だ。孫社長は「七」の項で、事業進出は七割方成功するという公算が立ったタイミングですべしという持論を展開した。3割以上のリスクを冒さない、また進出後も3割以上組織を痛めないうちに撤退するという考えだ。
「五分五分の勝率で勝負を仕掛けるのはバカがやることだ。武田勝頼になる。『このまま行くと負けるぞ』という状況で、突っ込んで負けてしまう。退却ができないヤツとは、クルマで言えば、ブレーキのできないクルマ。私が勝頼の状況なら、恥も外聞もなく逃げる。勝頼は3割失った時点で、『これで退いたらもったいない。取り戻さないと』と、意地になってしまったのだろう。これはバカの典型だ。意地で会社をやると、会社をつぶすことになる。株式投資でもそう。失敗するのは撤退の時機を見きわめられなかったときだ」
孫社長は「退却は10倍の勇気がいる」とも強調した。
「僕は過去おびただしい数の退却をしてきた。(退くとなったら)僕は早いよ。メディアにめちゃくちゃに書かれます。恥ずかしい思いをする。これに耐える勇気を身に付けないと、リーダーにはなれない。うまく行っているときはいい。皆が割れ先にと、飛び出していくから。だが、退却の決断はトップしかできない」
「流」の項では、避けなくてはならない失敗のパターンについて触れた。それは流れに逆らった経営のあり方だ。斜陽産業に自ら進出することは決してしてはいけないと孫社長は言う。次の流れを読んで、仕掛けて待つ。これが経営の本流だという。
「かつて富士通がパソコンのOS(基本ソフト)にマイクロソフトを選ばず、(80年前半までのパソコン黎明期に主流だった)CP/Mを選んだことがあった。そのとき僕は役員にバカだと言いました。そうしたら、『孫さん、あなた技術のことはわからないだろうけど、CP/Mはここがこう優れていてね……』と枝葉末節のことを説明する。しかし、そんなものはすぐに追いつかれる。事業家は、時代の流れの王道を進まければ失格だ。通信方式でも同じ。CDMA2000を選んだ事業者(au)がいる。悲しいばかりの失敗。(高速通信で)一時的に先行する、成功する……ただそれだけのために、最後までメインになれないところを選んだ。沈みゆくもの、枝葉になるものを選んではいけない」
ハイテンションの孫社長は2時間半の講義中、立ちっぱなし。毎週水曜日に開催していくこのアカデミアでは、今後入校生各自にプレゼンテーションを行わせ、互いの採点をさせる予定だ。
最初の課題は「社長在任の10年で、どうやって時価総額を5倍にするか」に決まった。どの事業領域で、どんな方法で、資金調達をどう工面して……これらを具体的に論じさせる。下位10%を半年ごとに入れ替える形で選考を進め、10数年後までに後継者を選ぶ壮大な計画だ。年商3兆円近い企業の社長候補を半ば公開の形で選考していくという、ソフトバンクの新たな試み。最終的にどんな人物が選ばれることになるのか。今から楽しみだ。
東芝の日野工場閉鎖、市が影響を調査 商業も含め対策検討
富士通との携帯電話事業の統合に伴い、東芝が日野工場(東京都日野市)を来年3月末に閉鎖すると発表したことで、日野市は対応策の検討を始めた。今後、取引のある地元の中小企業への影響を調査する。関係会社を含めると従業員1100人の転勤が必要になるとあって、商業も含めた対策を検討する。工場跡地の利用方法など東芝との交渉も必要になる。
東芝日野工場は1964年に設立。携帯電話機の開発や設計、品質保証、アフターサービスなどを手がけている。従業員の一部は富士通と東芝が共同出資する新会社(川崎市)をはじめ富士通グループへ出向、転籍する。残りは東芝の他の事業所に異動となる。
日野市にとって大規模な工場の閉鎖は、86年に自動車部品メーカー、千代田自動車工業(現ソーシン)が埼玉県入間市に移転して以来。日野市によると、移転する人は千代田自動車工業の場合、数百人程度だったが、今回はけた違いに多い。日野市在住者は東芝本体だけで140人おり、日野市外からの通勤者も含め、地元商業に与える影響は大きい。
工場周辺で日野工場と取引している中小企業は数社あり、日野市は今後こうした企業の売り上げへの影響などを調べる。
ただ、日野工場からの法人税収は2009年度に300万円で、市財政へ影響は軽微にとどまる見通しだ。
今後は約9万7580平方メートルという広大な敷地の活用が焦点となるが、東芝は「売却するか再利用するか、まだ何も決めていない」(広報室)としている。
楽天、生保に本格参入 アイリオ生命への出資引き上げ
楽天はアイリオ生命保険と資本・業務提携を結び、生保事業に参入する。30日に発表する。楽天がアイリオの筆頭株主のエキスパートグループホールディングス(東京・中央)から保有株式の一部を取得。出資比率を33.89%に引き上げ、役員も派遣する。楽天の生保事業参入で、ネットを通じた生保販売が広がる可能性がある。
アイリオは生保に近い共済事業から2008年に生保会社に移行して発足。医療保険や生活習慣病保険などを取り扱っている。資本提携を受けて、両社はインターネットで簡単に契約手続きができるネット専用の生命保険を開発し、ホームページを通じて販売する。
また、楽天が傘下の金融事業などの顧客にアイリオの保険商品を紹介。契約を希望する顧客をアイリオの販売代理店約7700店に紹介するなどの相乗効果も見込む。
株式の譲渡価格は20億円前後とみられる。楽天は子会社が運営するファンドを通じてアイリオにすでに20億円を出資。発行済み株式の16.95%を保有している。出資比率の引き上げに伴い、楽天はアイリオに2人の役員を派遣し、経営に関与する。エキスパートグループは50%超の出資比率を維持する。
「iPad、iPhoneの最強アプリ」と孫社長 ソフトバンクとZynga合弁、年内にサービス開始
「Zyngaのゲームは、iPhoneとiPadの最強アプリになるのでは」――ソフトバンクの孫正義社長は7月29日の決算会見で、ソーシャルゲーム大手・米Zynga Game Networkと合弁新会社を設立することに触れ、期待を述べた。
新会社は「ジンガジャパン」という名称。日本のソーシャルゲームプラットフォーム向けに、PC/携帯電話向けゲームを年内に投入する計画だ。プラットフォームが対応次第、iPhone/iPadゲームも提供したい考えだ。
Zyngaは2007年の創業以来、急成長を続け、世界最大級のソーシャルアプリプロバイダー(SAP)となっている。Facebook(世界5億ユーザー)向けアプリで人気上位を独占。月間アクティブユーザー数は2億3000万人に上り、一番人気の農場ゲーム「FarmVille」は6200万ユーザーが利用しているという。
ソフトバンクはZyngaに1億5000万ドル(約137億円)を出資。ジンガジャパンは、両社の折半出資となる。新会社のCEOには、Zyngaのロバート・ゴールドバーグ氏が就任する予定だ。
年内に、国内の複数のソーシャルアプリプラットフォームにソーシャルゲームを投入するとしており、mixiやGREE、モバゲータウン(Yahoo!モバゲー)などに、PC/携帯電話向けゲームを提供していくとみられる。「iPhone/iPadにも対応していきたい」としており、プラットフォームの対応にあわせてiPhone/iPadゲームを投入していきたい考えだ。
ソフトバンクは米国のソーシャルゲーム大手RockYouにも出資。RockYouと合弁で昨年2月、日本法人ロックユーアジアを設立し、日本や韓国、中国向けにソーシャルゲームを提供している。
統合や買収遅れる日本勢、収益力強化急ぐ
電機業界で再編が止まらない。パナソニックや日立製作所は戦略子会社の完全子会社化に動き、経営資源を中核事業に集め始めた。携帯電話機や半導体でもライバル同士が事業統合に踏み切る。日本の電機産業が国際競争力を失い始めて十数年。過剰なプレーヤーの解消など、失地回復に向けた基盤固めは待ったなしだ。
再編の一つの潮流がグループ企業の完全子会社化だ。ちょうど1年前、日立製作所は「脱・総合電機」を掲げ、日立プラントテクノロジーなど上場5社の完全子会社化を決定。2557億円を投じて日立本体に取り込み、中核事業の社会インフラや情報通信分野などを強化した。
富士通と東芝は29日、携帯電話事業を10月に統合することで最終合意した。新会社は国内出荷シェアでシャープに次ぐ2位に浮上、海外市場開拓も狙う。世界3位の半導体メーカーとして4月に発足したルネサスエレクトロニクスは同日、従業員4000人の削減を発表した。収益力強化に向け構造改革を急ぐ。いずれもグローバルな競争を視野に入れた取り組みだ。
海外では、選択と集中による経営体質の強化で先行してきた欧米、アジアの企業が立ちはだかる。
欧州を代表する電機メーカー、独シーメンスは発電システムや医療機器などを主力にするが「過去10年間、非中核事業の売却と中核事業の買収を年間50件ペースで繰り返し収益力を強化」(ATカーニーの竹村文伯氏)してきた。09年度の最終損益は、シーメンスが約2800億円の黒字。これに対し、日立は1069億円、東芝も197億円のそれぞれ赤字だった。
ただ、ここ数年のリストラ効果で国内各社の資金余力は高まっており、M&A(合併・買収)をテコに巻き返しを狙う環境は整いつつある。半導体から重電まで幅広い事業領域で、グローバル競争に耐えうる経営基盤をつくる――そんな再編を模索する経営者が確実に増えている。
経営トーク◇ソニー決算会見速報、加藤優CFO「業績改善のトレンド変わらず」
ソニーが29日発表した2010年4~6月期の連結決算(米国会計基準)は最終損益が257億円の黒字(前年同期は370億円の赤字)だった。加藤優・最高財務責任者(CFO)は記者会見で、「液晶テレビが国内外で販売が好調だったうえ、事業構造改革の成果も利益を押し上げた。業績改善トレンドは変わっていない」と強調。同時に11年3月期の連結純利益が600億円になる見通しだと発表した。従来見通しを100億円上回る。主なやり取りは以下の通り。
――欧州経済の見通しは。
「ギリシャ危機の発生後、経済が停滞するのではないかという見方が多い。ソニーの売上高のうち25%程度を欧州が占めるが、4~6月期は商品によっては想定を上回る販売となった。足元では(欧州は)不安材料ではない。ただ、先行きは予断を許さない状況ではある。強い商品を出すことが重要で、そうすればマーケットのなかで勝ち残れると思う」
――通期の設備投資額は2300億円と100億円上乗せしました。
「主にデジカメの心臓部分のイメージセンサーの需要が増えており、半導体分野で追加投資をする。外販もしており、引き合いが強い」
――パナソニックが三洋電機とパナソニック電工を完全子会社化します。ライバルの動きをどう見ますか。
「他社の動きについての言及ははばかられる。業界は変化が激しい。ソニーは映画、音楽、エレクトロニクス、金融など多様な事業を持つ。お互いが連携を取りながら事業を進める。(企業や事業を)売り買いするのは選択としてあるが、内部で連携を取りながら事業を展開する」
――通期見通しを上方修正した理由は。
「4~6月期は(想定より)上振れした。通期では連結営業利益が従来予想を200億円上回り1800億円になる見通し。先行きは慎重に見ているが、強い商品力でがんばるしかない。為替の影響を除くと(液晶テレビなど)コンスーマー・プロフェッショナル&デバイス分野が上振れするかという感じだ。プレイステーションも堅調で、ネットワークプロダクツ&サービス分野も堅調だ」
――第1四半期の結果と通期の上方修正幅を考慮すると、第2四半期以降は当初見込みより業績が悪くなるという想定になります。
「為替の影響が大きい。ドルの想定レートは変えていないが、ユーロは従来の1ユーロ=125円から110円と円高に修正した。1ユーロ1円動くと、損益に約70億円の影響が出る。大まかにいって、年間通して為替の影響は約900億円程度と見ている。第2四半期から第4四半期は(為替で)800億円強影響を受けると見ている。4~6月期は想定より(営業利益で)900億円の業績上振れがあるのにもかかわらず、年間で200億円にとどまるのは、大半は為替の影響だ。為替の影響を除くと、(環境は)だいたいは想定通り」
――テレビ好調の理由は。
「良い商品を出している。昨年は少し他社に後れを取った。今年はデザインも変え、発光ダイオード(LED)バックライトを使った商品や3D(3次元)テレビも投入した。材料費や固定費の削減など継続したコスト対策の効果が出ている。4~6月期はテレビの供給の方が逼迫(ひっぱく)していた。パネルの供給がタイトになった面もある。販売面では日本は増加、北米は見通しより下回った。それ以外の地域は予定通りだった」
――テレビは年間で2500万台を計画していますが上方修正の可能性は。エレキ分野の業績も回復の兆しがありますが、エレキの拡大策は。
「2500万台は昨年(の販売台数)1500万台と比較すると6割を超えるアグレッシブな目標だ。2500万台を掲げたのは、失ったシェアをもとのレベルまで盛り返すためだ。まずはこの目標をきっちり達成する。そのためテレビのラインアップをそろえた。年末商戦をすぎると、来年には新モデルが出てくる。そこで手応えを確かめたい。目標を上げる見通しは今のところはない」
「成長投資に関しては、リーマン・ショックもあり過去数年は収益に結びつかない時期があった。まずは赤字部門を黒字に転換することだ。テレビ、ゲーム関連を黒字化する。昨年後半から良い商品も投入してきており、(業績拡大への)モメンタムを作ってきた。前期は資金・財務面で緊張感のある時期だった。キャッシュフローも改善しており、少し余裕が生まれ、攻めに入れるようになった。これからは成長に向けて投資をしたい。経営方針説明会で説明したように、3D関連を幅広に展開したい。テレビやカメラ、ゲーム、劇場用ディスプレーなどを持っており、3Dの収益源だ。ネット社会に応じたハードやソフト、サービスを拡充し投資も進めたい」
――電子書籍端末の需要拡大をどうみますか。
「電子書籍はiPad(アイパッド)が発売されて、マーケットが広がっている。競争をどう勝ち抜くか。いろいろな見方があるが、多機能な携帯タブレットが伸びるのではないか。読みやすい端末やコンテンツの豊富さなどニーズは多様。読みやすさに関しては、(ソニーは)使いやすさなど特徴のある商品を出せるのではないか。ニュースを素早く見るのと、読み物をじっくり読むのとでは状況が違う。ニーズに合わせて商品やサービスを出していく」
――今期も資産売却を続けるとのことでした。方向性や業績への影響は。
「工場の数は1年前は57程度あったが、現在は42まで減らす意向を示している。今後も売却する方向だが、これまでと同じペースというわけにはいかない。どことは具体的には言えない」
――年末にエコポイントが終わります。来年には地デジが始まります。この影響をどう見ますか。
「液晶テレビの販売は、北米が2割弱、欧州が3割半ば、日本その他が約5割を占める。日本の市場は4~6月は想定より若干上にいっている。エコポイントがなくなると影響は出てくるだろうが、補って余るだけの良い商品を出す」
――リチウムイオン電池で、自動車事業への参入計画は。
「検討中だ。車載バッテリーは遅れているという指摘もあるが、新しい産業領域の立ち上がりの時期にある。それなりに特徴のある技術や商品をそろえたい。来年など短期ではなく、5年、10年でソニーらしいマーケットの入り方を検討している」
――エレキ分野は新興国でどのくらい伸びていますか。
「エレクトロニクス分野では新興国で前年同期比40%伸びている」
――ソフトとハードの融合を打ち出しています。その戦略が業績に反映されていますか。
「今後の戦略として、ハードやコンテンツをつなげて魅力的な商品やサービスを出すことだ。まだ道半ば。たとえば、コンテンツを1回買えば、家のテレビだけでなく携帯端末でも楽しめるなどの仕組みを作るというのが目標だ。個別の商品はあるが、全体としてはできあがっていない。ネットワークサービス関連はここ数年、売り上げが上がってきている。前期はこうしたネットワーク関連の売上高は400億円弱までになっている。毎年成長を続けている。今期は倍になると見ている。ただ、収益に大きく貢献しているとはいえず、来期以降に成果が出てくると見ている」
(日経社説)「100メートル走の経営」に挑むパナソニック
パナソニックが、三洋電機とパナソニック電工を完全子会社にする。「SANYO」ブランドは原則なくなり、「Panasonic」に一本化される。3社合計で売上高が9兆円近くにのぼるだけに、経営展開は日本の産業を占う試金石になる。
完全子会社化の狙いは2つだ。ひとつは意思決定のスピードを上げ、設備投資などで韓国や中国のメーカーに負けない体制をつくること。「世界の同業他社は100メートル競走の速さで変革している。我々は中距離走のスピードだったのではないか」(大坪文雄パナソニック社長)との危機感が背景にある。
もうひとつは消費者の要望にまるごと応えられる製品やサービスのラインアップ作りだ。同社はそれを「家まるごと」戦略と呼ぶ。
例えば、各社のテレビ、音響機器や照明を単品で売れば、厳しい価格競争に陥る。だが設計や施工、保守点検をまとめて売り込めば、消費者にとっても便利だし、グループ全体の相乗効果も高まる。
「家やオフィスビルの内部を一括して引き受ける、一種のソリューション(問題解決型)事業」を進めるには、意思決定をひとつにする必要があったわけだ。「2018年に電機業界で売り上げ世界一になる」との目標を達成できるかどうかは、内外で相乗効果を発揮できるかどうかにかかってくる。
日本は市場規模の割に家電や自動車などの社数が多く、メーカーは国内勢同士の競争で体力を消耗しているといわれてきた。この点で、パナソニック以外の電機メーカーも、生き残りを懸け事業の選択と集中に取り組みだしたことが注目される。
日立製作所は三菱重工業と水力発電機で提携、東芝は原子力発電と半導体に投資を集中し、ソニーは映画や音楽などのコンテンツ事業に独自性を打ち出そうとしている。
そうした経営の変革を通じ、世界の標準になるような製品やサービスを次々と生み出していくことが重要だ。最近の電機の成長分野はスマートフォンや電子書籍、インターネット経由でソフト機能を提供するクラウドコンピューティングなどだが、日本にはそうした領域で世界の主役企業がない。
原子力発電、リチウムイオン電池、太陽光パネルなど、日本にも先端分野はある。問題は世界でどう稼ぐかの経営モデルだ。大きな見取り図を描き、大胆な意思決定で新技術を生かし、新興市場を切り開く。どのメーカーもそんな気概を持ち、企業変革に取り組んでほしい。
総務省は電波の割り当てを巡り、オークション(競売)方式を解禁する検討に入る。30日に同省で開く電波利用料に関する調査会で方向性を示す。次世代の高速通信など新サービス導入時を念頭に置いており、公開入札で最高額を提示した事業者に免許を与える。国の裁量で電波を割り当てる現状を改め、透明性を高めるのが狙いだ。
現状は有限資源である電波について国が管理し、利用を希望する事業者を総務省が審査。これを通った事業者に同省が無償で割り当てている。同省はこれまで競売方式だと落札額が高騰し、利用者に負担が及びかねないとして消極的だったが、調査会では「選択肢から排除しない」などとして事実上、方針を転換する姿勢を示す見通しだ。
背景にあるのが政権交代。民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で同方式導入の方針を掲げた。原口一博総務相もかねて「限りある電波を有効利用し、国民にしっかりと還元していく責任は重い」と述べてきた。競売方式にすれば国が収入を得られることもあり、財政面からも後押しする声がある。
競売の対象とする電波など詳細については今後議論する。将来、新しい無線通信サービスなどを導入する際に競売を採用する案などが出ている。
現行の携帯電話の周波数を広げる場合では、割り当て方式で獲得した既存業者と競売方式で参入する業者との間の不公平が表面化しかねないと判断。当面は競売方式の対象にしない方針だ。
同方式の本格実施には電波法改正も必要。衆参ねじれ国会の下では実現は困難との見方もある。自民党政権時代は競売方式は実現しなかった。
競売方式に対しては「経営資本が潤沢でない企業の新規参入の障壁となる」(ソフトバンクモバイル)などの声もある。海外ではIT(情報技術)バブルなどと軌を一にして落札額が急騰、負担に耐えられずに事業を断念した例もあった。
経済協力開発機構(OECD)加盟国では3分の2以上がオークションを導入済み。米国では1994年の開始から2009年3月までに携帯電話などで70回以上を実施、合計落札額は8兆4千億円に達した。
孫正義社長の後継者求む! ソフトバンクアカデミアが開講
7月28日午後6時、東京・汐留のソフトバンク本社で、孫正義社長の後継者発掘・育成を目的にした「ソフトバンクアカデミア」の第1回講義が開かれた。
現在52歳の孫社長は60代のうちに後継者に社長の座を譲ることを明言している。今回の講座は来るべき10数年後に備え、その候補を選抜、育成するためのものだ。この日集まったのは、グループ会社を含め社内から志願した約1000名。20~30代の若手社員が半数を占めた。
「皆さんにこれから20~30年間伝授していくことを1ページで表すとこの25字になる」。自ら教壇に立った孫社長は「我こそは」と野心と熱意でぎらつく聴衆に向け、まずこの日のテーマを掲げた。
道天地将法
頂情略七闘
一流攻守群
智信仁勇厳
風林火山海
これは、孫社長がかねてより「孫の二乗の法則」と呼んでいる経営哲学。古代中国の思想家、孫子の兵法に自身の独自の解釈を付け加えたものだ。
「この25字を片時も忘れたことはない。新しい事業をやるとき、試練にぶつかったとき、新しいビジョンを立てるとき、つねにこの25字にマッチしているかを自問自答しながらやってきた」。いわば、孫社長の経営思想のエッセンスが凝縮された25字だ。約2時間半にわたる講義では、この1字1字について、自身の解釈をかみくだいて解説してみせた。
ここでは、そのなかから一部をかいつまんで紹介しよう。
この日、孫社長が再三にわたって強調したのが、撤退する勇気の重要性だ。孫社長は「七」の項で、事業進出は七割方成功するという公算が立ったタイミングですべしという持論を展開した。3割以上のリスクを冒さない、また進出後も3割以上組織を痛めないうちに撤退するという考えだ。
「五分五分の勝率で勝負を仕掛けるのはバカがやることだ。武田勝頼になる。『このまま行くと負けるぞ』という状況で、突っ込んで負けてしまう。退却ができないヤツとは、クルマで言えば、ブレーキのできないクルマ。私が勝頼の状況なら、恥も外聞もなく逃げる。勝頼は3割失った時点で、『これで退いたらもったいない。取り戻さないと』と、意地になってしまったのだろう。これはバカの典型だ。意地で会社をやると、会社をつぶすことになる。株式投資でもそう。失敗するのは撤退の時機を見きわめられなかったときだ」
孫社長は「退却は10倍の勇気がいる」とも強調した。
「僕は過去おびただしい数の退却をしてきた。(退くとなったら)僕は早いよ。メディアにめちゃくちゃに書かれます。恥ずかしい思いをする。これに耐える勇気を身に付けないと、リーダーにはなれない。うまく行っているときはいい。皆が割れ先にと、飛び出していくから。だが、退却の決断はトップしかできない」
「流」の項では、避けなくてはならない失敗のパターンについて触れた。それは流れに逆らった経営のあり方だ。斜陽産業に自ら進出することは決してしてはいけないと孫社長は言う。次の流れを読んで、仕掛けて待つ。これが経営の本流だという。
「かつて富士通がパソコンのOS(基本ソフト)にマイクロソフトを選ばず、(80年前半までのパソコン黎明期に主流だった)CP/Mを選んだことがあった。そのとき僕は役員にバカだと言いました。そうしたら、『孫さん、あなた技術のことはわからないだろうけど、CP/Mはここがこう優れていてね……』と枝葉末節のことを説明する。しかし、そんなものはすぐに追いつかれる。事業家は、時代の流れの王道を進まければ失格だ。通信方式でも同じ。CDMA2000を選んだ事業者(au)がいる。悲しいばかりの失敗。(高速通信で)一時的に先行する、成功する……ただそれだけのために、最後までメインになれないところを選んだ。沈みゆくもの、枝葉になるものを選んではいけない」
ハイテンションの孫社長は2時間半の講義中、立ちっぱなし。毎週水曜日に開催していくこのアカデミアでは、今後入校生各自にプレゼンテーションを行わせ、互いの採点をさせる予定だ。
最初の課題は「社長在任の10年で、どうやって時価総額を5倍にするか」に決まった。どの事業領域で、どんな方法で、資金調達をどう工面して……これらを具体的に論じさせる。下位10%を半年ごとに入れ替える形で選考を進め、10数年後までに後継者を選ぶ壮大な計画だ。年商3兆円近い企業の社長候補を半ば公開の形で選考していくという、ソフトバンクの新たな試み。最終的にどんな人物が選ばれることになるのか。今から楽しみだ。
東芝の日野工場閉鎖、市が影響を調査 商業も含め対策検討
富士通との携帯電話事業の統合に伴い、東芝が日野工場(東京都日野市)を来年3月末に閉鎖すると発表したことで、日野市は対応策の検討を始めた。今後、取引のある地元の中小企業への影響を調査する。関係会社を含めると従業員1100人の転勤が必要になるとあって、商業も含めた対策を検討する。工場跡地の利用方法など東芝との交渉も必要になる。
東芝日野工場は1964年に設立。携帯電話機の開発や設計、品質保証、アフターサービスなどを手がけている。従業員の一部は富士通と東芝が共同出資する新会社(川崎市)をはじめ富士通グループへ出向、転籍する。残りは東芝の他の事業所に異動となる。
日野市にとって大規模な工場の閉鎖は、86年に自動車部品メーカー、千代田自動車工業(現ソーシン)が埼玉県入間市に移転して以来。日野市によると、移転する人は千代田自動車工業の場合、数百人程度だったが、今回はけた違いに多い。日野市在住者は東芝本体だけで140人おり、日野市外からの通勤者も含め、地元商業に与える影響は大きい。
工場周辺で日野工場と取引している中小企業は数社あり、日野市は今後こうした企業の売り上げへの影響などを調べる。
ただ、日野工場からの法人税収は2009年度に300万円で、市財政へ影響は軽微にとどまる見通しだ。
今後は約9万7580平方メートルという広大な敷地の活用が焦点となるが、東芝は「売却するか再利用するか、まだ何も決めていない」(広報室)としている。
楽天、生保に本格参入 アイリオ生命への出資引き上げ
楽天はアイリオ生命保険と資本・業務提携を結び、生保事業に参入する。30日に発表する。楽天がアイリオの筆頭株主のエキスパートグループホールディングス(東京・中央)から保有株式の一部を取得。出資比率を33.89%に引き上げ、役員も派遣する。楽天の生保事業参入で、ネットを通じた生保販売が広がる可能性がある。
アイリオは生保に近い共済事業から2008年に生保会社に移行して発足。医療保険や生活習慣病保険などを取り扱っている。資本提携を受けて、両社はインターネットで簡単に契約手続きができるネット専用の生命保険を開発し、ホームページを通じて販売する。
また、楽天が傘下の金融事業などの顧客にアイリオの保険商品を紹介。契約を希望する顧客をアイリオの販売代理店約7700店に紹介するなどの相乗効果も見込む。
株式の譲渡価格は20億円前後とみられる。楽天は子会社が運営するファンドを通じてアイリオにすでに20億円を出資。発行済み株式の16.95%を保有している。出資比率の引き上げに伴い、楽天はアイリオに2人の役員を派遣し、経営に関与する。エキスパートグループは50%超の出資比率を維持する。
「iPad、iPhoneの最強アプリ」と孫社長 ソフトバンクとZynga合弁、年内にサービス開始
「Zyngaのゲームは、iPhoneとiPadの最強アプリになるのでは」――ソフトバンクの孫正義社長は7月29日の決算会見で、ソーシャルゲーム大手・米Zynga Game Networkと合弁新会社を設立することに触れ、期待を述べた。
新会社は「ジンガジャパン」という名称。日本のソーシャルゲームプラットフォーム向けに、PC/携帯電話向けゲームを年内に投入する計画だ。プラットフォームが対応次第、iPhone/iPadゲームも提供したい考えだ。
Zyngaは2007年の創業以来、急成長を続け、世界最大級のソーシャルアプリプロバイダー(SAP)となっている。Facebook(世界5億ユーザー)向けアプリで人気上位を独占。月間アクティブユーザー数は2億3000万人に上り、一番人気の農場ゲーム「FarmVille」は6200万ユーザーが利用しているという。
ソフトバンクはZyngaに1億5000万ドル(約137億円)を出資。ジンガジャパンは、両社の折半出資となる。新会社のCEOには、Zyngaのロバート・ゴールドバーグ氏が就任する予定だ。
年内に、国内の複数のソーシャルアプリプラットフォームにソーシャルゲームを投入するとしており、mixiやGREE、モバゲータウン(Yahoo!モバゲー)などに、PC/携帯電話向けゲームを提供していくとみられる。「iPhone/iPadにも対応していきたい」としており、プラットフォームの対応にあわせてiPhone/iPadゲームを投入していきたい考えだ。
ソフトバンクは米国のソーシャルゲーム大手RockYouにも出資。RockYouと合弁で昨年2月、日本法人ロックユーアジアを設立し、日本や韓国、中国向けにソーシャルゲームを提供している。
統合や買収遅れる日本勢、収益力強化急ぐ
電機業界で再編が止まらない。パナソニックや日立製作所は戦略子会社の完全子会社化に動き、経営資源を中核事業に集め始めた。携帯電話機や半導体でもライバル同士が事業統合に踏み切る。日本の電機産業が国際競争力を失い始めて十数年。過剰なプレーヤーの解消など、失地回復に向けた基盤固めは待ったなしだ。
再編の一つの潮流がグループ企業の完全子会社化だ。ちょうど1年前、日立製作所は「脱・総合電機」を掲げ、日立プラントテクノロジーなど上場5社の完全子会社化を決定。2557億円を投じて日立本体に取り込み、中核事業の社会インフラや情報通信分野などを強化した。
富士通と東芝は29日、携帯電話事業を10月に統合することで最終合意した。新会社は国内出荷シェアでシャープに次ぐ2位に浮上、海外市場開拓も狙う。世界3位の半導体メーカーとして4月に発足したルネサスエレクトロニクスは同日、従業員4000人の削減を発表した。収益力強化に向け構造改革を急ぐ。いずれもグローバルな競争を視野に入れた取り組みだ。
海外では、選択と集中による経営体質の強化で先行してきた欧米、アジアの企業が立ちはだかる。
欧州を代表する電機メーカー、独シーメンスは発電システムや医療機器などを主力にするが「過去10年間、非中核事業の売却と中核事業の買収を年間50件ペースで繰り返し収益力を強化」(ATカーニーの竹村文伯氏)してきた。09年度の最終損益は、シーメンスが約2800億円の黒字。これに対し、日立は1069億円、東芝も197億円のそれぞれ赤字だった。
ただ、ここ数年のリストラ効果で国内各社の資金余力は高まっており、M&A(合併・買収)をテコに巻き返しを狙う環境は整いつつある。半導体から重電まで幅広い事業領域で、グローバル競争に耐えうる経営基盤をつくる――そんな再編を模索する経営者が確実に増えている。
経営トーク◇ソニー決算会見速報、加藤優CFO「業績改善のトレンド変わらず」
ソニーが29日発表した2010年4~6月期の連結決算(米国会計基準)は最終損益が257億円の黒字(前年同期は370億円の赤字)だった。加藤優・最高財務責任者(CFO)は記者会見で、「液晶テレビが国内外で販売が好調だったうえ、事業構造改革の成果も利益を押し上げた。業績改善トレンドは変わっていない」と強調。同時に11年3月期の連結純利益が600億円になる見通しだと発表した。従来見通しを100億円上回る。主なやり取りは以下の通り。
――欧州経済の見通しは。
「ギリシャ危機の発生後、経済が停滞するのではないかという見方が多い。ソニーの売上高のうち25%程度を欧州が占めるが、4~6月期は商品によっては想定を上回る販売となった。足元では(欧州は)不安材料ではない。ただ、先行きは予断を許さない状況ではある。強い商品を出すことが重要で、そうすればマーケットのなかで勝ち残れると思う」
――通期の設備投資額は2300億円と100億円上乗せしました。
「主にデジカメの心臓部分のイメージセンサーの需要が増えており、半導体分野で追加投資をする。外販もしており、引き合いが強い」
――パナソニックが三洋電機とパナソニック電工を完全子会社化します。ライバルの動きをどう見ますか。
「他社の動きについての言及ははばかられる。業界は変化が激しい。ソニーは映画、音楽、エレクトロニクス、金融など多様な事業を持つ。お互いが連携を取りながら事業を進める。(企業や事業を)売り買いするのは選択としてあるが、内部で連携を取りながら事業を展開する」
――通期見通しを上方修正した理由は。
「4~6月期は(想定より)上振れした。通期では連結営業利益が従来予想を200億円上回り1800億円になる見通し。先行きは慎重に見ているが、強い商品力でがんばるしかない。為替の影響を除くと(液晶テレビなど)コンスーマー・プロフェッショナル&デバイス分野が上振れするかという感じだ。プレイステーションも堅調で、ネットワークプロダクツ&サービス分野も堅調だ」
――第1四半期の結果と通期の上方修正幅を考慮すると、第2四半期以降は当初見込みより業績が悪くなるという想定になります。
「為替の影響が大きい。ドルの想定レートは変えていないが、ユーロは従来の1ユーロ=125円から110円と円高に修正した。1ユーロ1円動くと、損益に約70億円の影響が出る。大まかにいって、年間通して為替の影響は約900億円程度と見ている。第2四半期から第4四半期は(為替で)800億円強影響を受けると見ている。4~6月期は想定より(営業利益で)900億円の業績上振れがあるのにもかかわらず、年間で200億円にとどまるのは、大半は為替の影響だ。為替の影響を除くと、(環境は)だいたいは想定通り」
――テレビ好調の理由は。
「良い商品を出している。昨年は少し他社に後れを取った。今年はデザインも変え、発光ダイオード(LED)バックライトを使った商品や3D(3次元)テレビも投入した。材料費や固定費の削減など継続したコスト対策の効果が出ている。4~6月期はテレビの供給の方が逼迫(ひっぱく)していた。パネルの供給がタイトになった面もある。販売面では日本は増加、北米は見通しより下回った。それ以外の地域は予定通りだった」
――テレビは年間で2500万台を計画していますが上方修正の可能性は。エレキ分野の業績も回復の兆しがありますが、エレキの拡大策は。
「2500万台は昨年(の販売台数)1500万台と比較すると6割を超えるアグレッシブな目標だ。2500万台を掲げたのは、失ったシェアをもとのレベルまで盛り返すためだ。まずはこの目標をきっちり達成する。そのためテレビのラインアップをそろえた。年末商戦をすぎると、来年には新モデルが出てくる。そこで手応えを確かめたい。目標を上げる見通しは今のところはない」
「成長投資に関しては、リーマン・ショックもあり過去数年は収益に結びつかない時期があった。まずは赤字部門を黒字に転換することだ。テレビ、ゲーム関連を黒字化する。昨年後半から良い商品も投入してきており、(業績拡大への)モメンタムを作ってきた。前期は資金・財務面で緊張感のある時期だった。キャッシュフローも改善しており、少し余裕が生まれ、攻めに入れるようになった。これからは成長に向けて投資をしたい。経営方針説明会で説明したように、3D関連を幅広に展開したい。テレビやカメラ、ゲーム、劇場用ディスプレーなどを持っており、3Dの収益源だ。ネット社会に応じたハードやソフト、サービスを拡充し投資も進めたい」
――電子書籍端末の需要拡大をどうみますか。
「電子書籍はiPad(アイパッド)が発売されて、マーケットが広がっている。競争をどう勝ち抜くか。いろいろな見方があるが、多機能な携帯タブレットが伸びるのではないか。読みやすい端末やコンテンツの豊富さなどニーズは多様。読みやすさに関しては、(ソニーは)使いやすさなど特徴のある商品を出せるのではないか。ニュースを素早く見るのと、読み物をじっくり読むのとでは状況が違う。ニーズに合わせて商品やサービスを出していく」
――今期も資産売却を続けるとのことでした。方向性や業績への影響は。
「工場の数は1年前は57程度あったが、現在は42まで減らす意向を示している。今後も売却する方向だが、これまでと同じペースというわけにはいかない。どことは具体的には言えない」
――年末にエコポイントが終わります。来年には地デジが始まります。この影響をどう見ますか。
「液晶テレビの販売は、北米が2割弱、欧州が3割半ば、日本その他が約5割を占める。日本の市場は4~6月は想定より若干上にいっている。エコポイントがなくなると影響は出てくるだろうが、補って余るだけの良い商品を出す」
――リチウムイオン電池で、自動車事業への参入計画は。
「検討中だ。車載バッテリーは遅れているという指摘もあるが、新しい産業領域の立ち上がりの時期にある。それなりに特徴のある技術や商品をそろえたい。来年など短期ではなく、5年、10年でソニーらしいマーケットの入り方を検討している」
――エレキ分野は新興国でどのくらい伸びていますか。
「エレクトロニクス分野では新興国で前年同期比40%伸びている」
――ソフトとハードの融合を打ち出しています。その戦略が業績に反映されていますか。
「今後の戦略として、ハードやコンテンツをつなげて魅力的な商品やサービスを出すことだ。まだ道半ば。たとえば、コンテンツを1回買えば、家のテレビだけでなく携帯端末でも楽しめるなどの仕組みを作るというのが目標だ。個別の商品はあるが、全体としてはできあがっていない。ネットワークサービス関連はここ数年、売り上げが上がってきている。前期はこうしたネットワーク関連の売上高は400億円弱までになっている。毎年成長を続けている。今期は倍になると見ている。ただ、収益に大きく貢献しているとはいえず、来期以降に成果が出てくると見ている」
(日経社説)「100メートル走の経営」に挑むパナソニック
パナソニックが、三洋電機とパナソニック電工を完全子会社にする。「SANYO」ブランドは原則なくなり、「Panasonic」に一本化される。3社合計で売上高が9兆円近くにのぼるだけに、経営展開は日本の産業を占う試金石になる。
完全子会社化の狙いは2つだ。ひとつは意思決定のスピードを上げ、設備投資などで韓国や中国のメーカーに負けない体制をつくること。「世界の同業他社は100メートル競走の速さで変革している。我々は中距離走のスピードだったのではないか」(大坪文雄パナソニック社長)との危機感が背景にある。
もうひとつは消費者の要望にまるごと応えられる製品やサービスのラインアップ作りだ。同社はそれを「家まるごと」戦略と呼ぶ。
例えば、各社のテレビ、音響機器や照明を単品で売れば、厳しい価格競争に陥る。だが設計や施工、保守点検をまとめて売り込めば、消費者にとっても便利だし、グループ全体の相乗効果も高まる。
「家やオフィスビルの内部を一括して引き受ける、一種のソリューション(問題解決型)事業」を進めるには、意思決定をひとつにする必要があったわけだ。「2018年に電機業界で売り上げ世界一になる」との目標を達成できるかどうかは、内外で相乗効果を発揮できるかどうかにかかってくる。
日本は市場規模の割に家電や自動車などの社数が多く、メーカーは国内勢同士の競争で体力を消耗しているといわれてきた。この点で、パナソニック以外の電機メーカーも、生き残りを懸け事業の選択と集中に取り組みだしたことが注目される。
日立製作所は三菱重工業と水力発電機で提携、東芝は原子力発電と半導体に投資を集中し、ソニーは映画や音楽などのコンテンツ事業に独自性を打ち出そうとしている。
そうした経営の変革を通じ、世界の標準になるような製品やサービスを次々と生み出していくことが重要だ。最近の電機の成長分野はスマートフォンや電子書籍、インターネット経由でソフト機能を提供するクラウドコンピューティングなどだが、日本にはそうした領域で世界の主役企業がない。
原子力発電、リチウムイオン電池、太陽光パネルなど、日本にも先端分野はある。問題は世界でどう稼ぐかの経営モデルだ。大きな見取り図を描き、大胆な意思決定で新技術を生かし、新興市場を切り開く。どのメーカーもそんな気概を持ち、企業変革に取り組んでほしい。