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雇用問題を的確に扱えないマスメディアの現場主義(COLUMN1)
派遣切り、内定取り消し――。さかんに報道されるようになった雇用問題だが、依然として原因を新自由主義や構造改革に求める紋切り型の論調が目立つ。マスメディアの大きな問題は、目の前に見ている「現場」に気をとられ、ブーム的に現象を取り上げ、何かをスケープゴートにして、忘れ去ることだ。このブームとリセットのスパイラルが、雇用問題での本質的な議論を遠ざけている。
■「派遣村」に踊った年末年始
雇用を巡る議論でマスメディアに目立つのは「小泉構造改革の弊害」「新自由主義は間違いだった」というもので、「日本的なよさを見直そう」といった回顧現象すら起きている。その代表格が、構造改革の旗振り役で、ソニーの取締役なども務めた、現・三菱UFJ リサーチ&コンサルティング理事長の中谷巌氏。自ら懺悔の書と呼ぶ『資本主義はなぜ自壊したのか』で、アメリカに「かぶれ」、新自由主義を信奉したことを悔い、安心、安全といった日本の伝統的社会の価値を見直そう、と呼びかけている。「反省しないよりまし」と転向を評価する声もあるが、リセットとも言える、その極端な変節こそが問題なのだ。
雇用問題の露出を高めたきっかけのひとつが日比谷公園で行われた「年越し派遣村」だ。年末年始は、行事やスポーツなどの「決まりごと」が中心でニュースが少ないこともあり、 メディアはこぞって取り上げた。注目が集まれば政治家も駆け付ける。厚生労働省の講堂を宿泊所に提供させるといった成果を上げ、公務員宿舎の一時開放や各自治体による臨時職員の採用などの「派遣切り対策」が打ち出されることになった。
改めてマスメディアの力が示された、と言いたいところだが運営を切り盛りしたNPOや労組の作戦勝ちの面が大きい。一過性のイベントで派遣問題が解決することはないが、テントや炊き出しといった分かりやすいビジュアルで現場を作り出し、問題を「見える化」し、マスメディアに話題を提供、人々の注目を集め、解決を促す手段として利用した。
派遣村は、マスメディアの現場主義を見事に利用した「メディアイベント」だった。逆に言えば、マスメディアは「現場」を作ってもらわなければ社会問題を集中的に報じることはなかった。マスメディア側は、「平穏無事」なはずの年末年始に急速に浮上したアジェンダにあわてて焦点を当てたに過ぎない。そもそも雇用が問題になるとは思っていなかったことは、新聞各社の1面企画を見れば分かる。
■雇用が問題と気づいていたNHK
年明けスタートの1面連載は、新聞各社がその年最も力を入れるテーマを選ぶ。朝日新聞は「世界変動 危機の中で」、毎日新聞は「アメリカよ 新ニッポン論」、読売新聞は「大波乱に立ち向かう」。危機に触れていてもかなり視点が高い。日本経済新聞が「世界この先(第一部サバイバビリティ)」で中高年保護と若者の排除について触れているが、多くの社は国内の雇用や労働問題にダイレクトには切り込んでいない。ビジネス誌の東洋経済が新年最初の特集に「若者危機」を選んだのとは大きく異なる。
金融危機の前から兆候はいくつもあった。NHKスペシャルで「ワーキングプア~働いても働いても豊かになれない~」が放送されたのは2006年のこと。博士号取得の研究者が大学などの研究職に就けず期限付きのポストを渡り歩くポスドク問題や格差社会の問題(格差の火付け役となった、山田昌弘氏の主張は制度と希望の問題だったが、いつの間にか金の話になった)、秋葉原の無差別殺傷事件から読み解くこともできたはずだ。いずれも、従来のシステムが崩れ、社会がきしんでいるシグナルだった。
NHKは雇用問題について継続的にインパクトのある番組を放送している。秋葉原事件の直後には、ワーキングプアシリーズの取材班が「追跡・秋葉原通り魔事件」を放送、ネットと連動して意見も募集して、若者の不安を浮き彫りにした。つい先日も「リストラの果てに ~日雇いに流れ込む人々~」を放送、何度もその構造問題を社会に訴えている。
雇用の問題を少し掘り下げれば、正社員と非正規の格差、新卒一括採用など「日本型雇用システム」が横たわっていることに気付くはずだが、多くのマスメディアが、日雇い派遣や製造業派遣の禁止に解決を求めようとする政治や省庁の動きを追い続けている。これも動きがない問題に目を向けない現場主義の弊害だ。
■テーマがないと忘れてしまう
実は、秋葉原無差別殺傷事件の後も同じだった。事件は昨年6月8日に起きたが、14日に岩手・宮城内陸地震が発生すると、多くのマスメディアが矛先を地震に向け、災害現場の状況を洪水のように報道し始めた。
NHKと他のメディアの違いはテーマを持っているかどうかだ。NHK取材班は雇用というテーマを持っているからこそ、何か問題が起きると雇用に結び付けて取材を進めることができるが、多くのマスメディアの記者はテーマがないため、その場限りの現場を消費するだけになる(NHKがテーマを持てるのはもちろん、受信料に支えられ多くの取材スタッフを抱えられるからであるが)。
現場主義の典型的なパターンは、派遣村に取材に行き、集まった人々に同情し、社会的な義憤を感じて記事を書く。「派遣村を社会全体の問題として捉えなければならない」などと書きながら、次の現場が発生すると目移りして派遣村を忘れ去る。
なぜ、冒頭で中谷氏の著書を紹介したのか。新自由主義が注目されれば構造改革の旗を振り、貧困や格差が問題になれば昔が良かったと憂いてみせる、このような社会の空気を読んだ風見鶏ぶり(と薄っぺらさ)が、マスメディアにそっくりだからだ。どのようなシステムや理論も完璧ではなく、良いところもあれば課題もある。「どうしてこのような問題が起きているのか」を見つめ、プラスとマイナスを加味してこそ、次の手が打てる。リセットでは何の前進もない。
日比谷公園に集まった人々は「派遣村ご一行様」と書いたバスに乗って都内各地へ散った。既に、人々の注目が失われつつあり、またもや問題は先送りされそうだ。現場に目を奪われ、ブームとリセットのスパイラルで脊髄反射的な記事を書くのではなく、テーマをもち、「なぜ」にこだわり、目の前に見えている事象の奥に潜む問題を掘り起こすのがジャーナリストの仕事ではないだろうか。
米デジタル放送移行延期の顛末 日本にも起こりうる不測の事態(COLUMN2)
2月4日、米国連邦議会下院は264対158でアナログテレビ停波の延期法案を可決した。これにより、2月17日に予定されていた米国アナログテレビ放送の終了は4カ月先送りされる。予定日のわずか2週間前の同決定を受け、米国のテレビ業界は対応に追われている。米国が10年の歳月をかけて準備してきたテレビ放送のデジタル化は最終段階でつまずきを見せた。その顛末を追ってみたい。
■テレビニュースは翌朝から大騒ぎ
「みなさん、注意深くお聞きください。今月に予定されていたアナログ放送の終了が4カ月延びました!」
5日朝のテレビニュースは、前夜の停波延期決定を受けて大騒ぎとなった。各地上波テレビ放送はこれまで繰り返してきたカウントダウンを止め、ニュースキャスターが長い時間をかけて経緯を説明した。ニュースでは再三、アナログ放送の停止が6月12日に変更されたことを繰り返した。
米国テレビ放送のデジタル化は、1997年の改正通信法から本格化した。以来10年、ハイディフィニッション(高精細)番組を目玉にデジタル化を進めようとする政府と、新規投資を渋る放送業界とが激しくぶつかり合う時期を経て、2009年2月17日のアナログ停波が決まったのは2007年のこと。それを受けて連邦通信委員会(FCC)は2008年1月からアナログ周波数跡地の無線競売を行った。
これは停波で空くUHF帯を次世代携帯サービス用に再交付するためのオークションで、総落札価格は195億9200万ドル(当時の換算で約2兆円)に達した。各放送局はアナログとデジタルを同時放送して停波日に備え、電波免許を獲得した大手携帯事業者はすでに同周波数を使ったネットワーク建設の準備を進めている。また、家電業界もデジタル対応テレビを懸命に売り込んできた。こうして放送業界も携帯電話業界も家電業界も、2月17日を待つばかりになっていたのである。
■クーポン用財源が枯渇
では、なぜ土壇場で延期を余儀なくされたのだろうか。その原因は連邦政府にあった。デジタル放送への移行にともない、連邦政府はアナログ放送だけを受信している世帯を補助するために「デジタル・アナログ・コンバーター」の購入クーポンを2008年から発行している。しかし、クーポンの希望者は停波が近づくにつれて急増し、1月3日には予定していた予算枠134億ドルを超えた。以後、クーポンの発行は90日間の有効期限が切れた数量だけ追加発行するという限定されたものになり、発行待ちの数が100万件を超える状況に陥っている。
この現状にアナログ停波計画を進めてきた連邦議会は大騒ぎとなり、1月8日前後には下院テレコミュニケーション・インターネット小委員会のエドワード・マーキー(Edward Markey)委員長が延期の可能性を打診しだした。ほぼ同時に、ワシントンで活動していたオバマ・バイデン政権移行チームも延期の提案をオバマ氏に伝えた。こうして連邦議会とオバマ大統領は停波の延期へと動き出していく。
■下院が否決、2月に持ち越しへ
本来であれば、停波延期法案はもっと早く可決されるべきだった。しかし、オバマ新大統領の就任と時期が重なったことが事態を複雑にした。新政権発足にともない、与党である民主党でも長老格を中心に人事が刷新された。
まず、テレビのデジタル化で中心的な役割を担ってきた下院エネルギー・商業委員会の委員長がジョン・ディンゲル(John Dingell)議員からヘンリー・ワックスマン(Henry Waxman)議員に替わったほか、同委員会に属するテレコミュニケーション・インターネット小委員会もマーキー委員長からリック・バウチャー(Rick Boucher)委員長へと替わった。
一方、オバマ大統領と民主党を率いるナンシー・ペロシ下院議長は山積する重要課題を抱え議会対策に追われる。特に、超大型予算となった景気対策法案を超党派で可決させたいオバマ大統領としては、野党共和党との無用な摩擦は避けたかった。こうした微妙なタイミングのなかで停波延期法案の調整は難航した。
◇ ◇ ◇
4カ月という短期間であることもあり、携帯大手や放送業界は今回の決定に困惑を示しながらも柔軟な姿勢を示している。とはいえ、連邦議会はこれで問題が片付いたわけではない。仕切り直しとなったアナログ停波日に向けて、クーポンプログラム用財源の確保を進めなければならない。
これは現在審議中の景気対策法案の一部にまとめられることになるだろう。オバマ新政権は今回、延期問題をなんとか乗り越えた。しかし、民主党内のとりまとめと共和党との調整が予想以上に難航したことで、オバマ大統領のリーダーシップがそれほど強くないことを露呈したとも言える。
一方、2011年に控えた日本でのアナログ放送停波にも、今回の延期は貴重な示唆を与えることになるだろう。十分な準備を進めてきたにもかかわらず、コンバーター購入支援プログラムが破綻したことを考えれば、日本においても予想外の問題が起こる可能性は否定できない。とはいえ、デジタル放送への移行にこれまで10年の準備期間を費やしてきたことを考えれば、わずか4カ月の先送りは「延期と言うほどでもない」との見方も十分にできるだろう。
派遣切り、内定取り消し――。さかんに報道されるようになった雇用問題だが、依然として原因を新自由主義や構造改革に求める紋切り型の論調が目立つ。マスメディアの大きな問題は、目の前に見ている「現場」に気をとられ、ブーム的に現象を取り上げ、何かをスケープゴートにして、忘れ去ることだ。このブームとリセットのスパイラルが、雇用問題での本質的な議論を遠ざけている。
■「派遣村」に踊った年末年始
雇用を巡る議論でマスメディアに目立つのは「小泉構造改革の弊害」「新自由主義は間違いだった」というもので、「日本的なよさを見直そう」といった回顧現象すら起きている。その代表格が、構造改革の旗振り役で、ソニーの取締役なども務めた、現・三菱UFJ リサーチ&コンサルティング理事長の中谷巌氏。自ら懺悔の書と呼ぶ『資本主義はなぜ自壊したのか』で、アメリカに「かぶれ」、新自由主義を信奉したことを悔い、安心、安全といった日本の伝統的社会の価値を見直そう、と呼びかけている。「反省しないよりまし」と転向を評価する声もあるが、リセットとも言える、その極端な変節こそが問題なのだ。
雇用問題の露出を高めたきっかけのひとつが日比谷公園で行われた「年越し派遣村」だ。年末年始は、行事やスポーツなどの「決まりごと」が中心でニュースが少ないこともあり、 メディアはこぞって取り上げた。注目が集まれば政治家も駆け付ける。厚生労働省の講堂を宿泊所に提供させるといった成果を上げ、公務員宿舎の一時開放や各自治体による臨時職員の採用などの「派遣切り対策」が打ち出されることになった。
改めてマスメディアの力が示された、と言いたいところだが運営を切り盛りしたNPOや労組の作戦勝ちの面が大きい。一過性のイベントで派遣問題が解決することはないが、テントや炊き出しといった分かりやすいビジュアルで現場を作り出し、問題を「見える化」し、マスメディアに話題を提供、人々の注目を集め、解決を促す手段として利用した。
派遣村は、マスメディアの現場主義を見事に利用した「メディアイベント」だった。逆に言えば、マスメディアは「現場」を作ってもらわなければ社会問題を集中的に報じることはなかった。マスメディア側は、「平穏無事」なはずの年末年始に急速に浮上したアジェンダにあわてて焦点を当てたに過ぎない。そもそも雇用が問題になるとは思っていなかったことは、新聞各社の1面企画を見れば分かる。
■雇用が問題と気づいていたNHK
年明けスタートの1面連載は、新聞各社がその年最も力を入れるテーマを選ぶ。朝日新聞は「世界変動 危機の中で」、毎日新聞は「アメリカよ 新ニッポン論」、読売新聞は「大波乱に立ち向かう」。危機に触れていてもかなり視点が高い。日本経済新聞が「世界この先(第一部サバイバビリティ)」で中高年保護と若者の排除について触れているが、多くの社は国内の雇用や労働問題にダイレクトには切り込んでいない。ビジネス誌の東洋経済が新年最初の特集に「若者危機」を選んだのとは大きく異なる。
金融危機の前から兆候はいくつもあった。NHKスペシャルで「ワーキングプア~働いても働いても豊かになれない~」が放送されたのは2006年のこと。博士号取得の研究者が大学などの研究職に就けず期限付きのポストを渡り歩くポスドク問題や格差社会の問題(格差の火付け役となった、山田昌弘氏の主張は制度と希望の問題だったが、いつの間にか金の話になった)、秋葉原の無差別殺傷事件から読み解くこともできたはずだ。いずれも、従来のシステムが崩れ、社会がきしんでいるシグナルだった。
NHKは雇用問題について継続的にインパクトのある番組を放送している。秋葉原事件の直後には、ワーキングプアシリーズの取材班が「追跡・秋葉原通り魔事件」を放送、ネットと連動して意見も募集して、若者の不安を浮き彫りにした。つい先日も「リストラの果てに ~日雇いに流れ込む人々~」を放送、何度もその構造問題を社会に訴えている。
雇用の問題を少し掘り下げれば、正社員と非正規の格差、新卒一括採用など「日本型雇用システム」が横たわっていることに気付くはずだが、多くのマスメディアが、日雇い派遣や製造業派遣の禁止に解決を求めようとする政治や省庁の動きを追い続けている。これも動きがない問題に目を向けない現場主義の弊害だ。
■テーマがないと忘れてしまう
実は、秋葉原無差別殺傷事件の後も同じだった。事件は昨年6月8日に起きたが、14日に岩手・宮城内陸地震が発生すると、多くのマスメディアが矛先を地震に向け、災害現場の状況を洪水のように報道し始めた。
NHKと他のメディアの違いはテーマを持っているかどうかだ。NHK取材班は雇用というテーマを持っているからこそ、何か問題が起きると雇用に結び付けて取材を進めることができるが、多くのマスメディアの記者はテーマがないため、その場限りの現場を消費するだけになる(NHKがテーマを持てるのはもちろん、受信料に支えられ多くの取材スタッフを抱えられるからであるが)。
現場主義の典型的なパターンは、派遣村に取材に行き、集まった人々に同情し、社会的な義憤を感じて記事を書く。「派遣村を社会全体の問題として捉えなければならない」などと書きながら、次の現場が発生すると目移りして派遣村を忘れ去る。
なぜ、冒頭で中谷氏の著書を紹介したのか。新自由主義が注目されれば構造改革の旗を振り、貧困や格差が問題になれば昔が良かったと憂いてみせる、このような社会の空気を読んだ風見鶏ぶり(と薄っぺらさ)が、マスメディアにそっくりだからだ。どのようなシステムや理論も完璧ではなく、良いところもあれば課題もある。「どうしてこのような問題が起きているのか」を見つめ、プラスとマイナスを加味してこそ、次の手が打てる。リセットでは何の前進もない。
日比谷公園に集まった人々は「派遣村ご一行様」と書いたバスに乗って都内各地へ散った。既に、人々の注目が失われつつあり、またもや問題は先送りされそうだ。現場に目を奪われ、ブームとリセットのスパイラルで脊髄反射的な記事を書くのではなく、テーマをもち、「なぜ」にこだわり、目の前に見えている事象の奥に潜む問題を掘り起こすのがジャーナリストの仕事ではないだろうか。
米デジタル放送移行延期の顛末 日本にも起こりうる不測の事態(COLUMN2)
2月4日、米国連邦議会下院は264対158でアナログテレビ停波の延期法案を可決した。これにより、2月17日に予定されていた米国アナログテレビ放送の終了は4カ月先送りされる。予定日のわずか2週間前の同決定を受け、米国のテレビ業界は対応に追われている。米国が10年の歳月をかけて準備してきたテレビ放送のデジタル化は最終段階でつまずきを見せた。その顛末を追ってみたい。
■テレビニュースは翌朝から大騒ぎ
「みなさん、注意深くお聞きください。今月に予定されていたアナログ放送の終了が4カ月延びました!」
5日朝のテレビニュースは、前夜の停波延期決定を受けて大騒ぎとなった。各地上波テレビ放送はこれまで繰り返してきたカウントダウンを止め、ニュースキャスターが長い時間をかけて経緯を説明した。ニュースでは再三、アナログ放送の停止が6月12日に変更されたことを繰り返した。
米国テレビ放送のデジタル化は、1997年の改正通信法から本格化した。以来10年、ハイディフィニッション(高精細)番組を目玉にデジタル化を進めようとする政府と、新規投資を渋る放送業界とが激しくぶつかり合う時期を経て、2009年2月17日のアナログ停波が決まったのは2007年のこと。それを受けて連邦通信委員会(FCC)は2008年1月からアナログ周波数跡地の無線競売を行った。
これは停波で空くUHF帯を次世代携帯サービス用に再交付するためのオークションで、総落札価格は195億9200万ドル(当時の換算で約2兆円)に達した。各放送局はアナログとデジタルを同時放送して停波日に備え、電波免許を獲得した大手携帯事業者はすでに同周波数を使ったネットワーク建設の準備を進めている。また、家電業界もデジタル対応テレビを懸命に売り込んできた。こうして放送業界も携帯電話業界も家電業界も、2月17日を待つばかりになっていたのである。
■クーポン用財源が枯渇
では、なぜ土壇場で延期を余儀なくされたのだろうか。その原因は連邦政府にあった。デジタル放送への移行にともない、連邦政府はアナログ放送だけを受信している世帯を補助するために「デジタル・アナログ・コンバーター」の購入クーポンを2008年から発行している。しかし、クーポンの希望者は停波が近づくにつれて急増し、1月3日には予定していた予算枠134億ドルを超えた。以後、クーポンの発行は90日間の有効期限が切れた数量だけ追加発行するという限定されたものになり、発行待ちの数が100万件を超える状況に陥っている。
この現状にアナログ停波計画を進めてきた連邦議会は大騒ぎとなり、1月8日前後には下院テレコミュニケーション・インターネット小委員会のエドワード・マーキー(Edward Markey)委員長が延期の可能性を打診しだした。ほぼ同時に、ワシントンで活動していたオバマ・バイデン政権移行チームも延期の提案をオバマ氏に伝えた。こうして連邦議会とオバマ大統領は停波の延期へと動き出していく。
■下院が否決、2月に持ち越しへ
本来であれば、停波延期法案はもっと早く可決されるべきだった。しかし、オバマ新大統領の就任と時期が重なったことが事態を複雑にした。新政権発足にともない、与党である民主党でも長老格を中心に人事が刷新された。
まず、テレビのデジタル化で中心的な役割を担ってきた下院エネルギー・商業委員会の委員長がジョン・ディンゲル(John Dingell)議員からヘンリー・ワックスマン(Henry Waxman)議員に替わったほか、同委員会に属するテレコミュニケーション・インターネット小委員会もマーキー委員長からリック・バウチャー(Rick Boucher)委員長へと替わった。
一方、オバマ大統領と民主党を率いるナンシー・ペロシ下院議長は山積する重要課題を抱え議会対策に追われる。特に、超大型予算となった景気対策法案を超党派で可決させたいオバマ大統領としては、野党共和党との無用な摩擦は避けたかった。こうした微妙なタイミングのなかで停波延期法案の調整は難航した。
◇ ◇ ◇
4カ月という短期間であることもあり、携帯大手や放送業界は今回の決定に困惑を示しながらも柔軟な姿勢を示している。とはいえ、連邦議会はこれで問題が片付いたわけではない。仕切り直しとなったアナログ停波日に向けて、クーポンプログラム用財源の確保を進めなければならない。
これは現在審議中の景気対策法案の一部にまとめられることになるだろう。オバマ新政権は今回、延期問題をなんとか乗り越えた。しかし、民主党内のとりまとめと共和党との調整が予想以上に難航したことで、オバマ大統領のリーダーシップがそれほど強くないことを露呈したとも言える。
一方、2011年に控えた日本でのアナログ放送停波にも、今回の延期は貴重な示唆を与えることになるだろう。十分な準備を進めてきたにもかかわらず、コンバーター購入支援プログラムが破綻したことを考えれば、日本においても予想外の問題が起こる可能性は否定できない。とはいえ、デジタル放送への移行にこれまで10年の準備期間を費やしてきたことを考えれば、わずか4カ月の先送りは「延期と言うほどでもない」との見方も十分にできるだろう。
PR
マスメディアの広告モデルが生き延びる道(COLUMN)
2008年から本格化した景気悪化を受け、マスメディア広告の売り上げが大打撃を受けている。例えば、テレビのスポット広告の収入が大きく落ち込み、08年11月に発表された在京民放キー局5社の08年9月中間連結決算では、スポット収入が前年同期比9.6~11.7%の大幅減となっている。結果、テレビ朝日単体とテレビ東京は09年3月期通期で最終赤字に転落し、他局も大幅な減益見通しになるなど年初業績予想の下方修正を行っている。
■見慣れないスポットCMが席巻
業界最大手であるフジテレビジョンの半期のスポット収入は前年同期比で657億円から583億円へと74億円も減少している。しかし、ここで思い出してほしいのが、地上波の日常のスポットCMが流れなくなったかというと、決してなくなっていないということである。つまり、より単価の安いスポットCMに代替されているということであり、値下げをしてなんとかスポットを埋めているのである。
実際、最近テレビを見ていて、コマーシャルに違和感を感じることはないだろうか? 例えば午後7時から午後11時の多くの視聴者が見る時間帯は、これまで車、金融、化粧品、トイレタリーなどのナショナルブランドが贅を凝らして作ったコマーシャルが中心だった。
ところが経済危機以来、こういったコマーシャルを流していた企業が大きく経費を削減したため、枠を埋めきることができなくなった。そのため、スポットの単価を下げて売り、結果としてこれまでプライムタイムには流れなかったような、例えばパチンコ関連や中古ピアノの買い取り、健康食品などの広告が目立つようになっている。
まだまだテレビ広告をしたいという需要はあるが、これまでの値段ではナショナルブランドにスポットCMが売れなくなり、かつナショナルブランドだけでは枠を埋めきれなくなっているのである。
■さらに厳しい新聞業界
さらに、新聞はもっと厳しい。テレビの広告費が大幅減になったのは景気悪化が始まった08年以降だが、新聞は景気がよかった時代であっても90年代から、よい年でも横ばいがギリギリ、悪い年だと年率2桁の下落が続いており、90年には1兆4000億円近くあった広告費が07年には9462億円にまで落ち込んでいる。そして、2008年の数字はさらに悪いだろう。すでに2007年の時点で6000億円を超える市場規模となったインターネットの広告市場に抜かれる日も近いはずだ。
この結果、朝日新聞社は08年9月中間期の連結決算が赤字となり、読売新聞グループ本社、毎日新聞社、産経新聞社、日本経済新聞社などの各紙も、もちろん苦しい状況が続いている。
そしてラジオも雑誌も、すべて広告費が落ち込んでいる。テレビ、新聞、ラジオ、雑誌の4つを合わせて「4マス」と呼ぶが、4マス広告の広告費総額は毎年これまでも年率2~3%で減少していたのである。そこに、今回の不況が下落に拍車をかけたのだ。
■テレビだけでは完結できないCM
では、なぜ4マスの広告費が減っているのか。特に、新聞の広告費が減っているのか。これはもう言わずもがなであり、私たちが4マスに使う時間が減っているためである。私たちを待ち伏せできるところで広告を打たない限り、私たちがその商品・サービスを認知することはできない。
例えば、75年には平日に30代の男性の80%が1日15分以上、新聞を読んでいたが、05年には30代の男性で1日15分以上読む人は、29%しかいない。ちなみに、75年に30代だった人たちは05年には60代になっており、この人たちはまだ73%と高い割合で新聞を読んでいる。これを「コーホート効果」と呼ぶが、いずれにしても新聞を読む人は若年層では今やなんと少数派なのである。
では、新聞を読まなくなった若者たちはどこに行ったのか。これも言わずもがなだが、インターネットである。
今や、誰でも見るマスメディアは新聞ではなく、インターネットなのである。だからこそ、最近のテレビコマーシャルのほとんどは最初のさわり以外は「続きはインターネットで○○を検索」のような広告ばかりである。少なくとも若年層に向けては、テレビだけで広告を完結することはできない。
■クロスメディアは必然の流れだが・・・
では、これからマスメディア広告はどこに向かえばいいのか。これはデータを見る限り、そして「ユーザーが通るところで待ち伏せをしろ」という法則を貫く限り、「マスメディア+インターネット」というクロスメディア型の広告に向かうしかないのである。
しかし、マスメディアがマスメディアであるゆえんは、規制産業であるため参入者の数が限られていることであり、特に地上波などは圧倒的に「アイボール(視聴率)」を集めて規模の利益を追求できたことにある。
それがネットになった瞬間に、ありとあらゆるページに私たちのアイボールが分散することになり、広告効果が分散することになる。実際、広告費を私たちのメディア接触時間で割ると、テレビもネットも、どちらも1分当たり20~30銭とたいした違いはない。むしろ、どうやってターゲットをそのページに呼び込むかという方が難しいのである。
だからこそ、まずはマス広告で知らせて詳しくはネットで、という形が今は主流なのである。しかし、残念ながら広告主にとって、クロスメディアだからといってこれまでの倍の広告費を払うことはできない。そのため多くのケースでは、マス広告の費用を一部削って、これをネットに回すことになる。そして、幸か不幸か、ネットではページの閲覧数から実際の購買活動に至るまで、細かいレスポンスをデータとして取ることができる、費用対効果がしっかりしているということで広告費を獲得しやすいのである。
■残された手段は業界再編だけ
そこから考えるに、単なるクロスメディアだけでは足りないとしたら、マス広告もさまざまな手段で、費用対効果を明確にしていかなければならない。これまで漠然と割に合っていたと思っていた費用が、特に広告が効きやすい若年層がマスメディア離れしていることで、明らかに割高になったと広告主が判断している。そのためにも、マス広告はワンセグのデータ放送やQRコードによるネット誘導など、さまざまな手段で効果を証明しなければならない。
ところが、この方法にはたいへんな痛みを伴う。なぜなら、多くの広告は実は割高だからである。もともと、広告がよく効くころのプライシングのなごりがあり、その価格が付けられた広告を、メディアも代理店も売っているためである。費用対効果をはっきりさせなければ売れないのに、はっきりさせるとますますお客が逃げるかもしれない、ということがマスメディアのジレンマである。
このジレンマは、業界再編によってしかなかなか解決しないだろう。再編とはすなわち、苦しくなったマスメディア同士が統合をしてホールディングをつくったり、あるいはブランドを統合したりする流れである。これは百貨店業界で実際に起きたことであり、関係性はとてもよく似ている。いずれにしても、プレーヤーの数が減る再編が起きるだろう。
さらに、業界からのスピンアウトや垂直統合も進むだろう。これまで、明らかにマスメディアが主、インターネットが従というのが新聞社、テレビ局、出版社の事業構成である。これは、各社の人材の配分を見ても、売上高を見ても、明らかである。これは、クレイトン・クリステンセンがハードディスク業界で実証した「イノベーションのジレンマ」そのものであり、マスメディア本体の中の一部門では、なかなか新しい形態の広告モデルを立ち上げることはできない。
だからこそ、各社から素早くスピンアウトをして、例えばNTTドコモがNTTから分社したことで大躍進を遂げたように、既存のメディアからさっさと組織的な切り離しを行い、新しいインセンティブ体系を作る必要がある。
また、これまでソフトバンク、楽天、ライブドアなどのインターネット大手が何度もチャレンジをしてなしえなかったネット企業によるテレビ局との提携・買収も、今後はテレビ局側から、お願いするような事態になるかもしれない。しかし、その時には、インターネット側はすでに動画配信を自在に行っており、もう地上波の配信には見向きもしない可能性があるだろう。
■マスメディア広告の生きる道
とはいえ、こういった新しい流れは、端末や通信速度などの技術の変化、そして課金システムやビジネスモデルなど事業の変化が底流として存在するところに、例えば今回の急激な不景気のような外部ショックが引き金となって進むものである。少なくとも、今現在においてやはり、マス広告は費用対効果は別としても、たいへん強い存在であることは確かだ。
最後に、最近採算割れが続く出版業界で雑誌を発行している複数の人たちから聞いた、反省の弁をもって今回のコラムを締めくくりたい。
「今回の広告不況で、私たち雑誌編集者が一番反省していることは、いかに最近の誌面が広告を取るための誌面になっていて、読者が欲しがっているものの誌面から離れていったかと言うことです。いつの間にか読者が離れていることにも気付かず、なんとか好景気だったので広告でつじつまを合わせていたところ、一気に広告出稿が止まって採算割れになり、しかも読者離れも加速してしまった。そのような広告不況の中でも、一部の雑誌は好調を保っており、それらの雑誌は明確なターゲットに向けて、ネットでは代替できないような強いコンテンツ、強いメッセージ性がある誌面を作っています。私たちも今一度、ていねいなコンテンツ作りに注力していきたいと思います」
広告不況で全体のパイが小さくなったとしても、優良なコンテンツを提供しているマスメディアには、まだまだ広告が集まっているのである。したがって、優良なコンテンツ作りに再度チャレンジしつつ、しかもさまざまに試行錯誤をしながらネットとの融合を図り、読者と双方向通信を行いながら、読者にも知ることで価値が出るような広告情報をしっかりと提供する。それがこれからのマスメディア広告の方向性であると考える。
4分社化見直しに否定的 郵政民営化で与党政調会長
自民党の保利耕輔政調会長は8日のNHK番組で、麻生太郎首相が郵政民営化で4分社化された経営形態の見直しに言及したことに関し「ちょっと口が滑ったのかなという感じだ。党としては民営化を後退させることはできないという立場だ」と述べ、見直しに否定的な考えを表明した。
公明党の山口那津男政調会長も「多大なエネルギーを使って決めたことであり、軽々に改革の柱を曲げるべきではない」と指摘した。
一方、民主党の直嶋正行政調会長は「政権の正統性が否定された。麻生氏は首相にふさわしいのかが問われる」と批判。共産党の小池晃政策委員長は「与党が郵政選挙で衆院の3分の2を獲得した。民営化に反対なら(2008年度第2次補正予算関連法案などで)衆院再議決はすべきでない」と強調した。
与謝野経財相、追加経済対策を示唆 景気悪化で予算成立後
与謝野馨経済財政担当相は8日午前、テレビ朝日の報道番組で2009年度予算案に関連し、景気がさらに悪化すれば成立後に追加の経済対策を検討する必要があるとの考えを示唆した。
16日発表の08年10-12月期国内生産(GDP)速報値について「かなり悪い数字が出てくると予測される。きちんとした議論をやらなければならない」と指摘。現在の財政措置である「12兆円で足りるのか。(追加対策を考えるのは)利口なことだ」と述べた。
2008年から本格化した景気悪化を受け、マスメディア広告の売り上げが大打撃を受けている。例えば、テレビのスポット広告の収入が大きく落ち込み、08年11月に発表された在京民放キー局5社の08年9月中間連結決算では、スポット収入が前年同期比9.6~11.7%の大幅減となっている。結果、テレビ朝日単体とテレビ東京は09年3月期通期で最終赤字に転落し、他局も大幅な減益見通しになるなど年初業績予想の下方修正を行っている。
■見慣れないスポットCMが席巻
業界最大手であるフジテレビジョンの半期のスポット収入は前年同期比で657億円から583億円へと74億円も減少している。しかし、ここで思い出してほしいのが、地上波の日常のスポットCMが流れなくなったかというと、決してなくなっていないということである。つまり、より単価の安いスポットCMに代替されているということであり、値下げをしてなんとかスポットを埋めているのである。
実際、最近テレビを見ていて、コマーシャルに違和感を感じることはないだろうか? 例えば午後7時から午後11時の多くの視聴者が見る時間帯は、これまで車、金融、化粧品、トイレタリーなどのナショナルブランドが贅を凝らして作ったコマーシャルが中心だった。
ところが経済危機以来、こういったコマーシャルを流していた企業が大きく経費を削減したため、枠を埋めきることができなくなった。そのため、スポットの単価を下げて売り、結果としてこれまでプライムタイムには流れなかったような、例えばパチンコ関連や中古ピアノの買い取り、健康食品などの広告が目立つようになっている。
まだまだテレビ広告をしたいという需要はあるが、これまでの値段ではナショナルブランドにスポットCMが売れなくなり、かつナショナルブランドだけでは枠を埋めきれなくなっているのである。
■さらに厳しい新聞業界
さらに、新聞はもっと厳しい。テレビの広告費が大幅減になったのは景気悪化が始まった08年以降だが、新聞は景気がよかった時代であっても90年代から、よい年でも横ばいがギリギリ、悪い年だと年率2桁の下落が続いており、90年には1兆4000億円近くあった広告費が07年には9462億円にまで落ち込んでいる。そして、2008年の数字はさらに悪いだろう。すでに2007年の時点で6000億円を超える市場規模となったインターネットの広告市場に抜かれる日も近いはずだ。
この結果、朝日新聞社は08年9月中間期の連結決算が赤字となり、読売新聞グループ本社、毎日新聞社、産経新聞社、日本経済新聞社などの各紙も、もちろん苦しい状況が続いている。
そしてラジオも雑誌も、すべて広告費が落ち込んでいる。テレビ、新聞、ラジオ、雑誌の4つを合わせて「4マス」と呼ぶが、4マス広告の広告費総額は毎年これまでも年率2~3%で減少していたのである。そこに、今回の不況が下落に拍車をかけたのだ。
■テレビだけでは完結できないCM
では、なぜ4マスの広告費が減っているのか。特に、新聞の広告費が減っているのか。これはもう言わずもがなであり、私たちが4マスに使う時間が減っているためである。私たちを待ち伏せできるところで広告を打たない限り、私たちがその商品・サービスを認知することはできない。
例えば、75年には平日に30代の男性の80%が1日15分以上、新聞を読んでいたが、05年には30代の男性で1日15分以上読む人は、29%しかいない。ちなみに、75年に30代だった人たちは05年には60代になっており、この人たちはまだ73%と高い割合で新聞を読んでいる。これを「コーホート効果」と呼ぶが、いずれにしても新聞を読む人は若年層では今やなんと少数派なのである。
では、新聞を読まなくなった若者たちはどこに行ったのか。これも言わずもがなだが、インターネットである。
今や、誰でも見るマスメディアは新聞ではなく、インターネットなのである。だからこそ、最近のテレビコマーシャルのほとんどは最初のさわり以外は「続きはインターネットで○○を検索」のような広告ばかりである。少なくとも若年層に向けては、テレビだけで広告を完結することはできない。
■クロスメディアは必然の流れだが・・・
では、これからマスメディア広告はどこに向かえばいいのか。これはデータを見る限り、そして「ユーザーが通るところで待ち伏せをしろ」という法則を貫く限り、「マスメディア+インターネット」というクロスメディア型の広告に向かうしかないのである。
しかし、マスメディアがマスメディアであるゆえんは、規制産業であるため参入者の数が限られていることであり、特に地上波などは圧倒的に「アイボール(視聴率)」を集めて規模の利益を追求できたことにある。
それがネットになった瞬間に、ありとあらゆるページに私たちのアイボールが分散することになり、広告効果が分散することになる。実際、広告費を私たちのメディア接触時間で割ると、テレビもネットも、どちらも1分当たり20~30銭とたいした違いはない。むしろ、どうやってターゲットをそのページに呼び込むかという方が難しいのである。
だからこそ、まずはマス広告で知らせて詳しくはネットで、という形が今は主流なのである。しかし、残念ながら広告主にとって、クロスメディアだからといってこれまでの倍の広告費を払うことはできない。そのため多くのケースでは、マス広告の費用を一部削って、これをネットに回すことになる。そして、幸か不幸か、ネットではページの閲覧数から実際の購買活動に至るまで、細かいレスポンスをデータとして取ることができる、費用対効果がしっかりしているということで広告費を獲得しやすいのである。
■残された手段は業界再編だけ
そこから考えるに、単なるクロスメディアだけでは足りないとしたら、マス広告もさまざまな手段で、費用対効果を明確にしていかなければならない。これまで漠然と割に合っていたと思っていた費用が、特に広告が効きやすい若年層がマスメディア離れしていることで、明らかに割高になったと広告主が判断している。そのためにも、マス広告はワンセグのデータ放送やQRコードによるネット誘導など、さまざまな手段で効果を証明しなければならない。
ところが、この方法にはたいへんな痛みを伴う。なぜなら、多くの広告は実は割高だからである。もともと、広告がよく効くころのプライシングのなごりがあり、その価格が付けられた広告を、メディアも代理店も売っているためである。費用対効果をはっきりさせなければ売れないのに、はっきりさせるとますますお客が逃げるかもしれない、ということがマスメディアのジレンマである。
このジレンマは、業界再編によってしかなかなか解決しないだろう。再編とはすなわち、苦しくなったマスメディア同士が統合をしてホールディングをつくったり、あるいはブランドを統合したりする流れである。これは百貨店業界で実際に起きたことであり、関係性はとてもよく似ている。いずれにしても、プレーヤーの数が減る再編が起きるだろう。
さらに、業界からのスピンアウトや垂直統合も進むだろう。これまで、明らかにマスメディアが主、インターネットが従というのが新聞社、テレビ局、出版社の事業構成である。これは、各社の人材の配分を見ても、売上高を見ても、明らかである。これは、クレイトン・クリステンセンがハードディスク業界で実証した「イノベーションのジレンマ」そのものであり、マスメディア本体の中の一部門では、なかなか新しい形態の広告モデルを立ち上げることはできない。
だからこそ、各社から素早くスピンアウトをして、例えばNTTドコモがNTTから分社したことで大躍進を遂げたように、既存のメディアからさっさと組織的な切り離しを行い、新しいインセンティブ体系を作る必要がある。
また、これまでソフトバンク、楽天、ライブドアなどのインターネット大手が何度もチャレンジをしてなしえなかったネット企業によるテレビ局との提携・買収も、今後はテレビ局側から、お願いするような事態になるかもしれない。しかし、その時には、インターネット側はすでに動画配信を自在に行っており、もう地上波の配信には見向きもしない可能性があるだろう。
■マスメディア広告の生きる道
とはいえ、こういった新しい流れは、端末や通信速度などの技術の変化、そして課金システムやビジネスモデルなど事業の変化が底流として存在するところに、例えば今回の急激な不景気のような外部ショックが引き金となって進むものである。少なくとも、今現在においてやはり、マス広告は費用対効果は別としても、たいへん強い存在であることは確かだ。
最後に、最近採算割れが続く出版業界で雑誌を発行している複数の人たちから聞いた、反省の弁をもって今回のコラムを締めくくりたい。
「今回の広告不況で、私たち雑誌編集者が一番反省していることは、いかに最近の誌面が広告を取るための誌面になっていて、読者が欲しがっているものの誌面から離れていったかと言うことです。いつの間にか読者が離れていることにも気付かず、なんとか好景気だったので広告でつじつまを合わせていたところ、一気に広告出稿が止まって採算割れになり、しかも読者離れも加速してしまった。そのような広告不況の中でも、一部の雑誌は好調を保っており、それらの雑誌は明確なターゲットに向けて、ネットでは代替できないような強いコンテンツ、強いメッセージ性がある誌面を作っています。私たちも今一度、ていねいなコンテンツ作りに注力していきたいと思います」
広告不況で全体のパイが小さくなったとしても、優良なコンテンツを提供しているマスメディアには、まだまだ広告が集まっているのである。したがって、優良なコンテンツ作りに再度チャレンジしつつ、しかもさまざまに試行錯誤をしながらネットとの融合を図り、読者と双方向通信を行いながら、読者にも知ることで価値が出るような広告情報をしっかりと提供する。それがこれからのマスメディア広告の方向性であると考える。
4分社化見直しに否定的 郵政民営化で与党政調会長
自民党の保利耕輔政調会長は8日のNHK番組で、麻生太郎首相が郵政民営化で4分社化された経営形態の見直しに言及したことに関し「ちょっと口が滑ったのかなという感じだ。党としては民営化を後退させることはできないという立場だ」と述べ、見直しに否定的な考えを表明した。
公明党の山口那津男政調会長も「多大なエネルギーを使って決めたことであり、軽々に改革の柱を曲げるべきではない」と指摘した。
一方、民主党の直嶋正行政調会長は「政権の正統性が否定された。麻生氏は首相にふさわしいのかが問われる」と批判。共産党の小池晃政策委員長は「与党が郵政選挙で衆院の3分の2を獲得した。民営化に反対なら(2008年度第2次補正予算関連法案などで)衆院再議決はすべきでない」と強調した。
与謝野経財相、追加経済対策を示唆 景気悪化で予算成立後
与謝野馨経済財政担当相は8日午前、テレビ朝日の報道番組で2009年度予算案に関連し、景気がさらに悪化すれば成立後に追加の経済対策を検討する必要があるとの考えを示唆した。
16日発表の08年10-12月期国内生産(GDP)速報値について「かなり悪い数字が出てくると予測される。きちんとした議論をやらなければならない」と指摘。現在の財政措置である「12兆円で足りるのか。(追加対策を考えるのは)利口なことだ」と述べた。
Firms must strengthen their pillars of profit
One after another, leading Japanese companies have revised downward their earnings projections for the year ending March.
We wonder how many corporate executives could have predicted only six months ago that their firms would report a drastic business deterioration. Business performances are worsening both rapidly and substantially, regardless of the type of industry.
It is not unusual to see corporations report huge losses in what has been a wholesale change, after registering record profits just a year ago.
This has been particularly noticeable since last autumn. Many companies have seen their sales and profits plunge--a drop as precipitous as falling off a cliff. And since the turn of the year, many have realized that their operations will only result in further losses.
===
Firms face long recession
With no sign of business deterioration reaching the bottom soon, companies must brace themselves for a prolonged recession and hunker down to improve their profitability.
Toyota Motor Corp. on Friday revised its projection for the 2008 business year to March for the third time, following reports in November and December. While it posted an operating profit of \2.2 trillion in the last business year, the automaker projected an operating loss of \450 billion for this business year.
The sale of Toyota luxury cars--a top earner for the carmaker--has become sluggish in the major markets of Japan, the United States and Europe, all of which have been dealt a blow by the simultaneous global recession. Losses from fluctuations of the currency market due to the yen's steep appreciation have added to the carmaker's plight.
There is no denying, also, that Toyota's strategy of expanding its operations to become the top automaker in the world--in terms of both production and sales--has gone too far, compounding its business woes.
Companies in the electrical machinery industry also are struggling. Hitachi Ltd. is expected to report a net loss of \700 billion for the business year ending in March, the biggest ever for a Japanese manufacturer. Panasonic Corp. and Sony Corp. also have been tormented by poor sales of flat-screen TVs and semiconductors.
===
Loss-makers must go
The tendency of virtually all companies in this industry to rush to manufacture the latest popular product has weakened their strength to weather a recession. It is imperative that such firms now jettison loss-making departments and identify their pillars of profit-generation--the business strategy known as "selection and concentration."
In the nonmanufacturing sector, airlines are suffering noticeably poor sales. The recession and the yen's appreciation have drastically reduced the volume of both international passengers and cargo. Japan Airlines Corp. anticipates a group net loss of \34 billion for this current business year.
The Construction and Transport Ministry plans to compile a package of measures by the end of March to support the ailing industry. It should expedite its study of what kind of government support could be offered.
The implications of the recession are becoming ever more serious as exemplified by the bankruptcy of condominium developer Japan General Estate Co.
Mitsubishi UFJ Financial Group and other major financial groups also are likely to see drastically reduced profits.
Despite the gloomy business climate, however, Nintendo Co. is posting record operating profits thanks to a series of hit video-game products.
Many Japanese companies carried out major restructuring after the recession that followed the bursting of the bubble economy in the early 1990s. Therefore, they should not have exhausted their fundamental corporate strength--yet. Taxing their ingenuity to cultivate new business fields, which they can then foster to boost their business strength, holds the key to firms' long-term survival.
One after another, leading Japanese companies have revised downward their earnings projections for the year ending March.
We wonder how many corporate executives could have predicted only six months ago that their firms would report a drastic business deterioration. Business performances are worsening both rapidly and substantially, regardless of the type of industry.
It is not unusual to see corporations report huge losses in what has been a wholesale change, after registering record profits just a year ago.
This has been particularly noticeable since last autumn. Many companies have seen their sales and profits plunge--a drop as precipitous as falling off a cliff. And since the turn of the year, many have realized that their operations will only result in further losses.
===
Firms face long recession
With no sign of business deterioration reaching the bottom soon, companies must brace themselves for a prolonged recession and hunker down to improve their profitability.
Toyota Motor Corp. on Friday revised its projection for the 2008 business year to March for the third time, following reports in November and December. While it posted an operating profit of \2.2 trillion in the last business year, the automaker projected an operating loss of \450 billion for this business year.
The sale of Toyota luxury cars--a top earner for the carmaker--has become sluggish in the major markets of Japan, the United States and Europe, all of which have been dealt a blow by the simultaneous global recession. Losses from fluctuations of the currency market due to the yen's steep appreciation have added to the carmaker's plight.
There is no denying, also, that Toyota's strategy of expanding its operations to become the top automaker in the world--in terms of both production and sales--has gone too far, compounding its business woes.
Companies in the electrical machinery industry also are struggling. Hitachi Ltd. is expected to report a net loss of \700 billion for the business year ending in March, the biggest ever for a Japanese manufacturer. Panasonic Corp. and Sony Corp. also have been tormented by poor sales of flat-screen TVs and semiconductors.
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Loss-makers must go
The tendency of virtually all companies in this industry to rush to manufacture the latest popular product has weakened their strength to weather a recession. It is imperative that such firms now jettison loss-making departments and identify their pillars of profit-generation--the business strategy known as "selection and concentration."
In the nonmanufacturing sector, airlines are suffering noticeably poor sales. The recession and the yen's appreciation have drastically reduced the volume of both international passengers and cargo. Japan Airlines Corp. anticipates a group net loss of \34 billion for this current business year.
The Construction and Transport Ministry plans to compile a package of measures by the end of March to support the ailing industry. It should expedite its study of what kind of government support could be offered.
The implications of the recession are becoming ever more serious as exemplified by the bankruptcy of condominium developer Japan General Estate Co.
Mitsubishi UFJ Financial Group and other major financial groups also are likely to see drastically reduced profits.
Despite the gloomy business climate, however, Nintendo Co. is posting record operating profits thanks to a series of hit video-game products.
Many Japanese companies carried out major restructuring after the recession that followed the bursting of the bubble economy in the early 1990s. Therefore, they should not have exhausted their fundamental corporate strength--yet. Taxing their ingenuity to cultivate new business fields, which they can then foster to boost their business strength, holds the key to firms' long-term survival.
「ニコニコ動画」「ユーチューブ」 2009年に念願の黒字化達成?(COLUMN)
「ニコニコ動画」は国内会員数が現在1100万人、閲覧数が1日平均5300万という大人気投稿動画サイトだが、赤字が増え続けている。全世界でひと月に3億3000万人以上が利用している「ユーチューブ」も収益面では苦戦が伝えられている。投稿動画サイトはいつ黒字になるのか。
09年は収益向上への転換の年と位置付ける
「ニコニコ動画」を傘下に持つドワンゴは2009年2月5日に第1四半期連結決算(08年10~12月) 決算を発表した。「ニコニコ動画」が事業の大半を占めるポータル事業の売上高は、前年同期比77.9%増の6億3600万円だったが、営業損失は前年の約倍の4億7500万円になった。様々な収益手段を講じたものの、
「登録会員数の増加に伴う設備投資、回線費用の増加及び本格的な収益化に向けての先行投資等により、未だ収益の貢献には至っておりません」
と説明している。
「ニコニコ動画」の赤字はユーザーにも知られており、08年秋にはネット上で「黒字化させる策はないのか」という議論が活発になった。「ニコニコ動画」開発者ブログは08年11月14日付けで、
「黒字化するための本命の収入源はユーザーのみなさんからの直接課金と広告収入ではないかと予想しています。そういう意味では、まだ、ニコニコ動画は本気でお金を稼ごうとはしていません」
とし、ビジネスで勝ち抜いていくためには、現在の収入では全然たりない、などと回答していた。
経営の苦しさは世界最大の投稿動画サイト「ユーチューブ」も同様のようで、06年10月に米グーグルに買収されるまで赤字続き。買収された後も経営は好転せず、ロイター通信電子版が08年10月17日に伝えたところによれば、
「親会社の米グーグルに収入面で貢献できるようになるまで、少なくともあと2年はかかると見られている」
とし、投資家は、同社がいつの段階で事業規模に見合った収入や利益を上げるのか、と心配する声を挙げ始めている、などと書いている。
動画投稿サイトには著作権を害する違法動画投稿が相次ぎ、コメント欄も読むに耐えないものがある。そのため広告主に嫌われ、広告が集まらない、ともいわれていた。また、「ニコニコ動画」にはユーザーに課金する「プレミアム会員」制度があるが、無料会員であっても充分に楽しめるため、課金に応じるユーザーは少ないのではないか、という見方も出ていた。
そうした中で、「ニコニコ動画」も「ユーチューブ」も09年は収益向上の転換の年と捉えているようだ。ドワンゴ広報IR室は取材に対し、これまでの赤字はユーザーの期待に応えられるサイト作りに注力してきた結果と説明する。こうした基盤作りが進んだため、
「08年10月からは広告枠を3.5倍に拡大し、大手のクライアントさんも付いてくれました。ポイントシステムや、有料会員などの新しいサービスも伸びていますので、今年6月には単月黒字化を目指しています」
と意外に強気だ。
「広告を出しにくい」というイメージは払拭されつつある
グーグル日本法人の辻野晃一郎社長は「東洋経済」(09年2月5日付け電子版)とのインタビューで、これまで「ユーチューブ」は著作権問題など解決しなければならない問題が山積し、収益化に向ける力が不足していたものの、
「今年は日本でもユーチューブを利用したマネタイズ(収益化)が非常に重要なテーマとなります」
とし、収益アップに攻勢をかける考えを示している。
ITジャーナリストの井上トシユキさんは、投稿動画サイトが黒字化する可能性は高い、と指摘する。「ニコニコ動画」の場合だと、ジャスラックと提携したり、違法動画排除の姿勢を示したことが企業にも認められ、「投稿動画サイトに広告を出しにくい」というイメージは払拭されつつある、という。
「初期投資が実を結ぶまで3年から5年はかかります。ニコニコ動画もユーチューブも、これまで『赤ちゃん』だったのが『小学生』に成長している段階。これから収益を上げるための様々な仕掛けがでてくるはずです」
と見ている。
13日からG7、資金供給拡充で協調へ 保護主義には警鐘
日米欧主要7カ国(G7)は13日から2日間の日程で、財務相・中央銀行総裁会議をローマで開く。世界的な金融・経済危機のなかで、米オバマ政権発足後、主要国が対策を議論する最初の国際会議となる。今回の会議では金融システムと実体経済が連鎖して悪化する「負の相乗作用」(白川方明日銀総裁)に歯止めをかけるため、機敏な財政出動や資金供給の拡充策が重要との見解で一致する見通し。保護主義的な政策には、世界貿易を萎縮させるとして警鐘を鳴らす方向だ。
日本からは中川昭一財務相や白川総裁らが出席する。会議では中央銀行による大量の資金供給や、金融機関の資本増強、金融システムの監督強化など、昨年11月の緊急首脳会合(金融サミット)で合意した危機対策の効果を検証する。金融機関の抱える不良資産を本体から切り離すなど、追加的な施策の必要性も議論する。
米金融機関、政府の経営関与警戒 公的資金、早期返済も
【ニューヨーク=財満大介】米金融界で、政府の経営関与を警戒する声が強まっている。公的資金を受けた金融機関の報酬制限が強化され、優秀な人材を集めにくくなるなど、経営の自由度がそがれているためだ。複数の金融機関が公的資金の早期返済を唱え出した。高額報酬への国民の批判は根強く、関係者は融資増加の義務付けなど「管理強化」につながる可能性を危ぶんでいる。
オバマ政権が4日発表した金融機関の支出抑制策は、経営幹部の報酬上限を年50万ドル(約4500万円)とするとともに、高額な退職金の支払いを禁止。社用ジェット機の購入や報奨旅行など「ぜいたく支出」の見直しも義務付けた。
「電子私書箱」で公共料金など通知、4600億円削減効果 政府試算
政府は7日、年金、医療などの行政情報や電気・ガス料金などの公共サービス情報を一元化し、国民1人ひとりが自らの情報を閲覧できる「電子私書箱」(仮称)の導入で、通知文書の郵送などにかかる年約7000億円の経費を3分の1程度に削減できるとの試算をまとめた。電子私書箱による具体的な費用削減効果を示すのは初めて。9日に開く政府のIT戦略本部の検討会で公表する。
国民の7割が利用し、通知文書の利用者への郵送をやめた場合を想定。文書の印刷や郵送作業にかかる人件費、郵送料など合計で年4600億円を削減できると試算した。内訳は年金保険や医療保険など社会保障分野が600億円。上下水道や電気・ガスなど公共サービス分野で4000億円。
売れない時間帯は営業短縮、三越がコスト抑制策
大手百貨店の三越が日本橋本店(東京・日本橋)など一部店舗の営業時間を4月から最大1時間短縮する方向で検討していることが7日、明らかになった。
売り上げの少ない時間帯の営業時間を短縮し、人件費や光熱費などのコストを抑えることで、店舗の採算を好転させる狙いがある。
日本橋本店は、通常午後8時の閉店時間を最大1時間早める方向で検討を進めている。その他の店舗についても、朝方や夜間の来店客が少ない店舗の営業時間を短縮する方向だ。
大手百貨店では、景気低迷の影響で衣料品や宝飾品を中心に売り上げが前年比1割前後減っており、新規出店の中止や閉店などコスト削減の動きが広まっている。
政府「地熱発電」普及促進、3倍拡大目標 新エネ法の対象認定も
政府は、火山国・日本が豊富に持つ“純国産”のクリーンエネルギーでありながら、ハードルが多く開発が進まない「地熱発電」の普及促進に乗り出す。今春にも発電量を2030(平成42)年までに現在の3倍程度に拡大する目標を打ち出す。また電力会社に地熱発電の電気の買い取りを義務付ける「新エネルギー利用特別措置(RPS)法」の対象に認定することで、開発を後押しする。開発が制限される国立公園内の熱源を公園外からパイプを通して利用する開発手法を認めることも検討していく。
地熱発電は地下から熱水をくみ上げ、蒸気にしてタービンを回すシステム。発電時に二酸化炭素(CO2)を発生しないうえ、半永久的に利用できるクリーンエネルギーだ。
国内では昭和41年に岩手県で第1号が稼働。鉱山開発ノウハウを持つ三菱マテリアルなどの非鉄金属会社や九州、東北などの電力会社が参入し、主要施設で全国18カ所にある。ただ、発電能力は計約53万キロワットと、小規模な原子力発電1基分しかない。
「温泉枯渇」を懸念する熱源近くの地元温泉街による反対のほか、国立公園内に熱源があることや開発コストが高いことなどが普及の障害となっている。
政府、初めて「上場不動産投信」再編呼びかけへ
国土交通省と金融庁は、金融危機で異常な安値が続く「Jリート(上場不動産投資信託)」について、投資家の信頼を回復するため、運用を行う投資法人同士の合併・再編を促す方針を固めた。国交省が発足させた有識者会議が10日にまとめる中間報告に再編促進を明記する。
Jリートは平成13年に初登場し、現在は41のリートが上場している。当初は優良物件の組み入れで運用利回りが好調に推移し、人気を集めた。しかし、昨夏の米国発の金融危機以降、国内の不動産市況が急激に悪化し昨年10月には破(は)綻(たん)に追い込まれるリートが出た。
このため、両省庁では合併によって財務体質や信用力を高めることで、これ以上破綻するリートが増えることを防ぎ、投資家を保護したい考えだ。
ネット暴力 「表現の自由」には責任が伴う(2月8日付・読売社説)
全く身に覚えのないことを言いふらされ、非難されたら、どれほど嫌な気分だろう。
インターネット上で他人を中傷する行為は、「表現の自由」をはき違えた卑劣な犯罪だ。
警視庁は、男性タレントのブログに事実無根の内容を書き込んだとして、17~45歳の18人を名誉棄損容疑で近く書類送検する。殺害予告を書いた別の1人については、脅迫容疑で書類送検した。
18人は、東京都足立区で20年前に起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件にこの男性タレントが関与したとするでたらめな話を多数書き込み、名誉を傷つけた疑いが持たれている。
「炎上」と呼ばれるブログなどへの集団攻撃が一斉摘発されるのは、今回が初めてになる。
悪質な行為を取り締まるのは当然だ。ブログなどを閉鎖に追い込むため、あおる者もいる。警察は今後も厳正に対処すべきだ。
憲法で保障された「表現の自由」は、健全な社会を守るためにある。匿名に身を隠したネット上での言葉の暴力とは、無関係だ。
ネットへの書き込みをめぐっては、自分のホームページに不確かな情報を掲載し、飲食店経営会社を中傷したとして、名誉棄損罪に問われた男性被告が、東京高裁で先月末、逆転有罪となった。
ネットの個人利用者に限って名誉棄損の基準を緩めた1審の無罪判決に対し、高裁は「被害者保護の点で相当ではない」と批判した。妥当な判断である。
ネットでの中傷被害は増えており、昨年も中高校生が自殺している。警察庁によると、警察への相談は、2007年に過去最高の約8900件に上っている。
韓国では、事実に反する内容を書かれた有名女優が昨年秋に自殺した。これを受け、与党がサイバー名誉棄損罪などを新設する刑法改正案を国会に提出している。
日本では青少年保護を目的とした有害サイト規制法が昨年6月に成立し、4月から施行される。
罰則はないが、施行後3年以内に必要なら見直すことになっている。今回のような事件が相次ぐ場合には、罰則を伴う内容への改正や新たな法整備を検討する必要も出てくるだろう。
誰でも情報を発信できる時代だが、それには責任も伴う。
ネット利用者は、使い方次第で自らの手足を縛りかねないことを認識しておかねばならない。子どものころから、家庭や学校で安易な利用の危険性を教えていくことも大切だ。
「ニコニコ動画」は国内会員数が現在1100万人、閲覧数が1日平均5300万という大人気投稿動画サイトだが、赤字が増え続けている。全世界でひと月に3億3000万人以上が利用している「ユーチューブ」も収益面では苦戦が伝えられている。投稿動画サイトはいつ黒字になるのか。
09年は収益向上への転換の年と位置付ける
「ニコニコ動画」を傘下に持つドワンゴは2009年2月5日に第1四半期連結決算(08年10~12月) 決算を発表した。「ニコニコ動画」が事業の大半を占めるポータル事業の売上高は、前年同期比77.9%増の6億3600万円だったが、営業損失は前年の約倍の4億7500万円になった。様々な収益手段を講じたものの、
「登録会員数の増加に伴う設備投資、回線費用の増加及び本格的な収益化に向けての先行投資等により、未だ収益の貢献には至っておりません」
と説明している。
「ニコニコ動画」の赤字はユーザーにも知られており、08年秋にはネット上で「黒字化させる策はないのか」という議論が活発になった。「ニコニコ動画」開発者ブログは08年11月14日付けで、
「黒字化するための本命の収入源はユーザーのみなさんからの直接課金と広告収入ではないかと予想しています。そういう意味では、まだ、ニコニコ動画は本気でお金を稼ごうとはしていません」
とし、ビジネスで勝ち抜いていくためには、現在の収入では全然たりない、などと回答していた。
経営の苦しさは世界最大の投稿動画サイト「ユーチューブ」も同様のようで、06年10月に米グーグルに買収されるまで赤字続き。買収された後も経営は好転せず、ロイター通信電子版が08年10月17日に伝えたところによれば、
「親会社の米グーグルに収入面で貢献できるようになるまで、少なくともあと2年はかかると見られている」
とし、投資家は、同社がいつの段階で事業規模に見合った収入や利益を上げるのか、と心配する声を挙げ始めている、などと書いている。
動画投稿サイトには著作権を害する違法動画投稿が相次ぎ、コメント欄も読むに耐えないものがある。そのため広告主に嫌われ、広告が集まらない、ともいわれていた。また、「ニコニコ動画」にはユーザーに課金する「プレミアム会員」制度があるが、無料会員であっても充分に楽しめるため、課金に応じるユーザーは少ないのではないか、という見方も出ていた。
そうした中で、「ニコニコ動画」も「ユーチューブ」も09年は収益向上の転換の年と捉えているようだ。ドワンゴ広報IR室は取材に対し、これまでの赤字はユーザーの期待に応えられるサイト作りに注力してきた結果と説明する。こうした基盤作りが進んだため、
「08年10月からは広告枠を3.5倍に拡大し、大手のクライアントさんも付いてくれました。ポイントシステムや、有料会員などの新しいサービスも伸びていますので、今年6月には単月黒字化を目指しています」
と意外に強気だ。
「広告を出しにくい」というイメージは払拭されつつある
グーグル日本法人の辻野晃一郎社長は「東洋経済」(09年2月5日付け電子版)とのインタビューで、これまで「ユーチューブ」は著作権問題など解決しなければならない問題が山積し、収益化に向ける力が不足していたものの、
「今年は日本でもユーチューブを利用したマネタイズ(収益化)が非常に重要なテーマとなります」
とし、収益アップに攻勢をかける考えを示している。
ITジャーナリストの井上トシユキさんは、投稿動画サイトが黒字化する可能性は高い、と指摘する。「ニコニコ動画」の場合だと、ジャスラックと提携したり、違法動画排除の姿勢を示したことが企業にも認められ、「投稿動画サイトに広告を出しにくい」というイメージは払拭されつつある、という。
「初期投資が実を結ぶまで3年から5年はかかります。ニコニコ動画もユーチューブも、これまで『赤ちゃん』だったのが『小学生』に成長している段階。これから収益を上げるための様々な仕掛けがでてくるはずです」
と見ている。
13日からG7、資金供給拡充で協調へ 保護主義には警鐘
日米欧主要7カ国(G7)は13日から2日間の日程で、財務相・中央銀行総裁会議をローマで開く。世界的な金融・経済危機のなかで、米オバマ政権発足後、主要国が対策を議論する最初の国際会議となる。今回の会議では金融システムと実体経済が連鎖して悪化する「負の相乗作用」(白川方明日銀総裁)に歯止めをかけるため、機敏な財政出動や資金供給の拡充策が重要との見解で一致する見通し。保護主義的な政策には、世界貿易を萎縮させるとして警鐘を鳴らす方向だ。
日本からは中川昭一財務相や白川総裁らが出席する。会議では中央銀行による大量の資金供給や、金融機関の資本増強、金融システムの監督強化など、昨年11月の緊急首脳会合(金融サミット)で合意した危機対策の効果を検証する。金融機関の抱える不良資産を本体から切り離すなど、追加的な施策の必要性も議論する。
米金融機関、政府の経営関与警戒 公的資金、早期返済も
【ニューヨーク=財満大介】米金融界で、政府の経営関与を警戒する声が強まっている。公的資金を受けた金融機関の報酬制限が強化され、優秀な人材を集めにくくなるなど、経営の自由度がそがれているためだ。複数の金融機関が公的資金の早期返済を唱え出した。高額報酬への国民の批判は根強く、関係者は融資増加の義務付けなど「管理強化」につながる可能性を危ぶんでいる。
オバマ政権が4日発表した金融機関の支出抑制策は、経営幹部の報酬上限を年50万ドル(約4500万円)とするとともに、高額な退職金の支払いを禁止。社用ジェット機の購入や報奨旅行など「ぜいたく支出」の見直しも義務付けた。
「電子私書箱」で公共料金など通知、4600億円削減効果 政府試算
政府は7日、年金、医療などの行政情報や電気・ガス料金などの公共サービス情報を一元化し、国民1人ひとりが自らの情報を閲覧できる「電子私書箱」(仮称)の導入で、通知文書の郵送などにかかる年約7000億円の経費を3分の1程度に削減できるとの試算をまとめた。電子私書箱による具体的な費用削減効果を示すのは初めて。9日に開く政府のIT戦略本部の検討会で公表する。
国民の7割が利用し、通知文書の利用者への郵送をやめた場合を想定。文書の印刷や郵送作業にかかる人件費、郵送料など合計で年4600億円を削減できると試算した。内訳は年金保険や医療保険など社会保障分野が600億円。上下水道や電気・ガスなど公共サービス分野で4000億円。
売れない時間帯は営業短縮、三越がコスト抑制策
大手百貨店の三越が日本橋本店(東京・日本橋)など一部店舗の営業時間を4月から最大1時間短縮する方向で検討していることが7日、明らかになった。
売り上げの少ない時間帯の営業時間を短縮し、人件費や光熱費などのコストを抑えることで、店舗の採算を好転させる狙いがある。
日本橋本店は、通常午後8時の閉店時間を最大1時間早める方向で検討を進めている。その他の店舗についても、朝方や夜間の来店客が少ない店舗の営業時間を短縮する方向だ。
大手百貨店では、景気低迷の影響で衣料品や宝飾品を中心に売り上げが前年比1割前後減っており、新規出店の中止や閉店などコスト削減の動きが広まっている。
政府「地熱発電」普及促進、3倍拡大目標 新エネ法の対象認定も
政府は、火山国・日本が豊富に持つ“純国産”のクリーンエネルギーでありながら、ハードルが多く開発が進まない「地熱発電」の普及促進に乗り出す。今春にも発電量を2030(平成42)年までに現在の3倍程度に拡大する目標を打ち出す。また電力会社に地熱発電の電気の買い取りを義務付ける「新エネルギー利用特別措置(RPS)法」の対象に認定することで、開発を後押しする。開発が制限される国立公園内の熱源を公園外からパイプを通して利用する開発手法を認めることも検討していく。
地熱発電は地下から熱水をくみ上げ、蒸気にしてタービンを回すシステム。発電時に二酸化炭素(CO2)を発生しないうえ、半永久的に利用できるクリーンエネルギーだ。
国内では昭和41年に岩手県で第1号が稼働。鉱山開発ノウハウを持つ三菱マテリアルなどの非鉄金属会社や九州、東北などの電力会社が参入し、主要施設で全国18カ所にある。ただ、発電能力は計約53万キロワットと、小規模な原子力発電1基分しかない。
「温泉枯渇」を懸念する熱源近くの地元温泉街による反対のほか、国立公園内に熱源があることや開発コストが高いことなどが普及の障害となっている。
政府、初めて「上場不動産投信」再編呼びかけへ
国土交通省と金融庁は、金融危機で異常な安値が続く「Jリート(上場不動産投資信託)」について、投資家の信頼を回復するため、運用を行う投資法人同士の合併・再編を促す方針を固めた。国交省が発足させた有識者会議が10日にまとめる中間報告に再編促進を明記する。
Jリートは平成13年に初登場し、現在は41のリートが上場している。当初は優良物件の組み入れで運用利回りが好調に推移し、人気を集めた。しかし、昨夏の米国発の金融危機以降、国内の不動産市況が急激に悪化し昨年10月には破(は)綻(たん)に追い込まれるリートが出た。
このため、両省庁では合併によって財務体質や信用力を高めることで、これ以上破綻するリートが増えることを防ぎ、投資家を保護したい考えだ。
ネット暴力 「表現の自由」には責任が伴う(2月8日付・読売社説)
全く身に覚えのないことを言いふらされ、非難されたら、どれほど嫌な気分だろう。
インターネット上で他人を中傷する行為は、「表現の自由」をはき違えた卑劣な犯罪だ。
警視庁は、男性タレントのブログに事実無根の内容を書き込んだとして、17~45歳の18人を名誉棄損容疑で近く書類送検する。殺害予告を書いた別の1人については、脅迫容疑で書類送検した。
18人は、東京都足立区で20年前に起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件にこの男性タレントが関与したとするでたらめな話を多数書き込み、名誉を傷つけた疑いが持たれている。
「炎上」と呼ばれるブログなどへの集団攻撃が一斉摘発されるのは、今回が初めてになる。
悪質な行為を取り締まるのは当然だ。ブログなどを閉鎖に追い込むため、あおる者もいる。警察は今後も厳正に対処すべきだ。
憲法で保障された「表現の自由」は、健全な社会を守るためにある。匿名に身を隠したネット上での言葉の暴力とは、無関係だ。
ネットへの書き込みをめぐっては、自分のホームページに不確かな情報を掲載し、飲食店経営会社を中傷したとして、名誉棄損罪に問われた男性被告が、東京高裁で先月末、逆転有罪となった。
ネットの個人利用者に限って名誉棄損の基準を緩めた1審の無罪判決に対し、高裁は「被害者保護の点で相当ではない」と批判した。妥当な判断である。
ネットでの中傷被害は増えており、昨年も中高校生が自殺している。警察庁によると、警察への相談は、2007年に過去最高の約8900件に上っている。
韓国では、事実に反する内容を書かれた有名女優が昨年秋に自殺した。これを受け、与党がサイバー名誉棄損罪などを新設する刑法改正案を国会に提出している。
日本では青少年保護を目的とした有害サイト規制法が昨年6月に成立し、4月から施行される。
罰則はないが、施行後3年以内に必要なら見直すことになっている。今回のような事件が相次ぐ場合には、罰則を伴う内容への改正や新たな法整備を検討する必要も出てくるだろう。
誰でも情報を発信できる時代だが、それには責任も伴う。
ネット利用者は、使い方次第で自らの手足を縛りかねないことを認識しておかねばならない。子どものころから、家庭や学校で安易な利用の危険性を教えていくことも大切だ。
ソフトバンクモバイルとイー・モバイルの「理にかなう協業」とは(COLUMN)
2月4日に発表されたソフトバンクモバイルとイー・モバイルのMVNO(仮想移動体通信事業者)方式による協業。「MVOによるMVNO」というねじれた組み合わせは、彼らにどんなメリットをもたらすのか。複数の関係者の発言から推測してみた。
ソフトバンクモバイルとイー・モバイルの両社から発表されたプレスリリースによると、ソフトバンクモバイルは3月上旬にイー・モバイルの通信ネットワークを使うデータ通信端末を発売するという。
昨今、HSDPAによる定額データ通信が人気で、イー・モバイルの契約者増の起爆剤となっている。しかし、一方のソフトバンクモバイルは、ネットワークが「パソコンのトラフィックには耐えられない」(宮川潤一CTO)ため、自社では行わずにイー・モバイルからネットワークを借りることにした。
■自社での定額制導入をあきらめた事情とは
しかし気になるのは、なぜソフトバンクモバイルが、ライバルでありしかも下位にあるキャリアからネットワークを借りるという決断に至ったのか。自社での定額制導入をあきらめた理由はどこにあったのか。5日に開催された決算会見を通じ、その裏事情が見えてきた。
事前に資料などが用意された孫正義社長のプレゼンテーションのなかには、今回のMVNOに関する説明は一切なかった。しかし質疑応答でMVNO導入の経緯が明らかになった。
「我々が目指す事業の方向は情報革命であり、21世紀の新しいライフスタイルを提供することだ。基本的にいろいろな会社と競争しているが、(競争相手と)志が同じで、理にかなうときは、ウィン・ウィンの関係ならば協調していく方向があってもいい」(孫社長)。
孫社長によると、イー・モバイルはゼロからインフラを作ったために、ネットワークのキャパシティーには余裕がある。しかし、ユーザーの数が少なく損益分岐点に達していないため、余っているキャパシティーを埋めたい。
一方で、ソフトバンクモバイルはボーダフォンを買収し、既存のネットワークを手に入れたが、ユーザーの数が増えて、さらに顧客を獲得したいからネットワークが逼迫し、定額制をやりたくてもやれない。しかし、定額制のニーズは高いため、提携に踏み切ったというのだ。
■新たな周波数の割り当てを待つと1年半
会見後、囲み取材に応じた宮川氏の発言からも、ソフトバンクモバイルのネットワーク事情が伺える。
「いまのネットワークでパソコン向けの定額制は難しい。新たな周波数の割り当てを待っていたら、1年半ほどかかってしまう。その間、定額制をやらないというのも、あり得ない話。なので、提携することにした」
他キャリアの関係者からは「ソフトバンクモバイルはNTTドコモと提携したかったが、交渉するのも断られたのではないか」という話が複数聞こえてくる。だが、宮川氏は「イー・モバイルとは、モバイルWiMAXの協業の頃から『免許が取れなくても、一緒に何かやりたいね』という話はしていた」と話す。複数あった選択肢のなかから、結果としてイー・モバイルになったようなのだ。
■ソフトバンクはなぜ他社回線を売るのか?
もうひとつ気になるのが、契約者数にこだわるソフトバンクモバイルが、なぜ他社の通信回線を売るのか、ということだ。通常、MVNOで販売された回線は、元売りの契約者数としてカウントされる。つまり、今回のようなケースでは、ソフトバンクモバイルがいくら売っても、イー・モバイルの契約者数になってしまうというわけだ。
最近、低価格ミニノートパソコンとの組み合わせで快調に契約者数を伸ばしているイー・モバイルに対し、ソフトバンクモバイルの勢いはかつてほどではなく落ち着き始めている。この提携によって、イー・モバイルがソフトバンクモバイルから契約純増数1位を奪いとることもあり得るのではないだろうか(実際、昨年12月の純増数はソフトバンクモバイルが13万5200件に対し、イー・モバイルは10万8600件)。
■「地方や海外ではうちの回線を」
ここで注目したいのが、宮川氏の発言だ。彼は販売される端末について、次のようにコメントしている。
「端末はイー・モバイルから納入される。イー・モバイルとソフトバンクモバイルの両方のネットワークが使えるようになっている。トラフィックが逼迫している都心部ではイー・モバイル、ネットワークが空いている地方や海外ではうちの回線を使ってもらってもよい」
つまり、端末はイー・モバイルが使う1.7GHz帯と、ソフトバンクモバイルの2GHz帯の2つの周波数帯に対応したものとなるようなのだ。MVNOだからといってイー・モバイルしか使えないわけではなく、ソフトバンクモバイルのネットワークにも対応するよう配慮がなされているというわけである。
■2枚のSIMカードで「ウィン・ウィン」?
だが、1枚のSIMカードで2つのキャリアを使い分けるというのはちょっと無理がある。ここからは推測になるが、もしかするとイー・モバイルに接続する際はイー・モバイルの電話番号、ソフトバンクモバイルにはソフトバンクモバイルの電話番号を使うのではないか。となると、SIMカードは2枚必要になる。
つまり、ユーザーがデータ端末を購入すると、2枚のSIMカードが付いてきて、イー・モバイルとソフトバンクモバイルの2回線の扱いとなるのではないか。そうすれば、両社とも1ユーザーとしてカウントされる。NTTドコモの「2in1」ならぬ「2キャリアin1」だ。
おそらく端末は、2枚のSIMカードを同時に差すようになっているか(海外では音声端末でデュアルSIMカード対応モデルがある)、ユーザーがいちいち2枚のSIMカードを抜き差しするのだろう。
宮川氏が「料金はイー・モバイルと一緒」と言っていたことから、2キャリアとの契約でもイー・モバイルと変わらないキャンペーン的な値付けがされそうだ。
孫社長は「ウィン・ウィンなら協調する」といっていたが、この予想が正しければ、まさにネットワークの投資をすることなく、自社の契約者数を増やすことができる。ソフトバンクモバイルがMVNOで売ってもメリットが出てくるというわけだ。
命名権市場急ブレーキ、08年取引額1割増どまり 大型契約減る
野球場やサッカー場などの施設に企業名や製品名をつける命名権(ネーミングライツ)の市場拡大にブレーキがかかっている。2008年の取引金額は前年比1割増にとどまった。景気後退で大型の契約が減ったことが響いた。06年以降は前年比4割増のペースで拡大してきただけに、収入をあてにしてきた自治体には痛手となりそうだ。
命名権の仲介やコンサルタントを手掛けるベイキューブシー(千葉市)によると、08年に国内で取引された命名権の金額は42億円で前年比10.5%増と、07年の40.7%増から大幅に鈍化した。
多摩テック、9月末で閉鎖 ホンダ子会社が運営 入場者減で
ホンダ子会社でサーキットなどを運営する「モビリティランド」(三重県鈴鹿市)は7日、モータースポーツをテーマにした遊園地「多摩テック」(東京都日野市)を9月末で閉鎖すると発表した。入場者の減少が続き、約2年前から営業を続けるかどうか検討していた。
世界的な景気後退で、ホンダの業績が悪化していることも閉鎖の一因とみられる。多摩テックの入場者はピークだった2002年度には100万人を超えていたが、07年度は62万人に落ち込んでいた。
多摩テックは自動車やオートバイの普及や操る楽しさを広めようと1961年に開業。ただ、こうした活動の主軸は同じモビリティランドが運営する「鈴鹿サーキット」(鈴鹿市)、「ツインリンクもてぎ」(栃木県茂木町)に移り、モビリティランドは「多摩テックは開業当初の目的を達成した」と説明している。
正社員約50人は鈴鹿サーキットかツインリンクもてぎに配置転換。非正規従業員約100人のうち、1年以上働いている約80人は本人が希望すれば、鈴鹿か、もてぎで雇用する。
大手スーパー、農家と直接取引拡大 野菜や果物「顔」見え安心
大手スーパーが卸売市場を通さずに仕入れる青果物の取り扱いを拡大する。イトーヨーカ堂は栽培方法などを指定して直接取引する契約農家の数を1年以内に3000から4000に広げ、売上高も2割以上拡大。イオンも同様の青果の売上高を2年以内に約3割増やす。食の安全志向の高まりを受けて、生産者や栽培方法が見えやすい青果を求める消費者が増えている。各社は鮮度や安全面の付加価値が高い産地直送品を増やし、顧客の囲い込みを進める。
ヨーカ堂は「顔が見える」ブランドで契約農家から直接仕入れた青果を販売。青果物の管理方法や土壌を調査して農家を選定、農薬を少なくした農法で栽培する。
企業決算総崩れ 「選択と集中」で乗り切れ(2月7日付・読売社説)
主要企業が、2009年3月期決算の業績予想を、相次いで下方修正している。
半年前にこんな悪化を予想していた経営者が、どれほどいただろう。
業績悪化は業種を問わず、急速に、しかも大幅に進んでいる。1年前には過去最高益をあげていた企業が、一転して巨額の赤字に転落する例も珍しくない。
特に昨秋から、多くの企業の売上高や利益が、がけを転がり落ちるように急減している。今年に入ってからは、仕事をしても赤字が増えるだけという状況だ。
悪化の底はまだ見えない。各企業は不況の長期化も覚悟して、腰を据えた収益改善策に取り組む必要があるだろう。
トヨタ自動車は、昨年11月、12月に続き、三たび業績を下方修正した。前期に2兆2000億円あった営業利益が、今期は4500億円の赤字になる。
世界同時不況の直撃を受け、日米欧の主要市場で、稼ぎ頭の高級車が売れなくなった。円高による為替差損も追い打ちをかける。
生産・販売世界一を目指した拡大路線が行き過ぎ、傷口を広げた面が否めない。
電機業界では、日立製作所の税引き後利益の赤字額が、日本の製造業で過去最大の7000億円に膨らむ見通しだ。パナソニックやソニーも、薄型テレビや半導体の販売不振に苦しんでいる。
一斉に売れ筋に飛びつく横並びの体質が、不況への抵抗力を弱めている。不採算部門は切り離し、収益の柱を明確にする「選択と集中」が今こそ必要だ。
非製造業では、航空会社の業績悪化が目立つ。不況と円高で国際線の旅客や貨物が急減した。日本航空の税引き後利益は、340億円の赤字になる見通しだ。
国土交通省は、3月末までに航空業界への支援策をまとめる方針だ。国としてどんな支援が可能なのか、検討を急ぐべきだろう。
マンション販売大手の日本綜合地所が破綻(はたん)するなど、不況の影響はより深刻化してきている。三菱UFJフィナンシャル・グループなどの金融グループも利益を大きく減らしそうだ。
だが、ヒット商品を連発する任天堂は、この逆風下でも過去最高の営業利益をあげるという。
日本企業の多くはバブル崩壊後の不況を経て、大規模なリストラを実施した。基礎体力はまだあるはずだ。知恵を絞って得意分野を開拓し、それを伸ばすのが生き残る道である。
2月4日に発表されたソフトバンクモバイルとイー・モバイルのMVNO(仮想移動体通信事業者)方式による協業。「MVOによるMVNO」というねじれた組み合わせは、彼らにどんなメリットをもたらすのか。複数の関係者の発言から推測してみた。
ソフトバンクモバイルとイー・モバイルの両社から発表されたプレスリリースによると、ソフトバンクモバイルは3月上旬にイー・モバイルの通信ネットワークを使うデータ通信端末を発売するという。
昨今、HSDPAによる定額データ通信が人気で、イー・モバイルの契約者増の起爆剤となっている。しかし、一方のソフトバンクモバイルは、ネットワークが「パソコンのトラフィックには耐えられない」(宮川潤一CTO)ため、自社では行わずにイー・モバイルからネットワークを借りることにした。
■自社での定額制導入をあきらめた事情とは
しかし気になるのは、なぜソフトバンクモバイルが、ライバルでありしかも下位にあるキャリアからネットワークを借りるという決断に至ったのか。自社での定額制導入をあきらめた理由はどこにあったのか。5日に開催された決算会見を通じ、その裏事情が見えてきた。
事前に資料などが用意された孫正義社長のプレゼンテーションのなかには、今回のMVNOに関する説明は一切なかった。しかし質疑応答でMVNO導入の経緯が明らかになった。
「我々が目指す事業の方向は情報革命であり、21世紀の新しいライフスタイルを提供することだ。基本的にいろいろな会社と競争しているが、(競争相手と)志が同じで、理にかなうときは、ウィン・ウィンの関係ならば協調していく方向があってもいい」(孫社長)。
孫社長によると、イー・モバイルはゼロからインフラを作ったために、ネットワークのキャパシティーには余裕がある。しかし、ユーザーの数が少なく損益分岐点に達していないため、余っているキャパシティーを埋めたい。
一方で、ソフトバンクモバイルはボーダフォンを買収し、既存のネットワークを手に入れたが、ユーザーの数が増えて、さらに顧客を獲得したいからネットワークが逼迫し、定額制をやりたくてもやれない。しかし、定額制のニーズは高いため、提携に踏み切ったというのだ。
■新たな周波数の割り当てを待つと1年半
会見後、囲み取材に応じた宮川氏の発言からも、ソフトバンクモバイルのネットワーク事情が伺える。
「いまのネットワークでパソコン向けの定額制は難しい。新たな周波数の割り当てを待っていたら、1年半ほどかかってしまう。その間、定額制をやらないというのも、あり得ない話。なので、提携することにした」
他キャリアの関係者からは「ソフトバンクモバイルはNTTドコモと提携したかったが、交渉するのも断られたのではないか」という話が複数聞こえてくる。だが、宮川氏は「イー・モバイルとは、モバイルWiMAXの協業の頃から『免許が取れなくても、一緒に何かやりたいね』という話はしていた」と話す。複数あった選択肢のなかから、結果としてイー・モバイルになったようなのだ。
■ソフトバンクはなぜ他社回線を売るのか?
もうひとつ気になるのが、契約者数にこだわるソフトバンクモバイルが、なぜ他社の通信回線を売るのか、ということだ。通常、MVNOで販売された回線は、元売りの契約者数としてカウントされる。つまり、今回のようなケースでは、ソフトバンクモバイルがいくら売っても、イー・モバイルの契約者数になってしまうというわけだ。
最近、低価格ミニノートパソコンとの組み合わせで快調に契約者数を伸ばしているイー・モバイルに対し、ソフトバンクモバイルの勢いはかつてほどではなく落ち着き始めている。この提携によって、イー・モバイルがソフトバンクモバイルから契約純増数1位を奪いとることもあり得るのではないだろうか(実際、昨年12月の純増数はソフトバンクモバイルが13万5200件に対し、イー・モバイルは10万8600件)。
■「地方や海外ではうちの回線を」
ここで注目したいのが、宮川氏の発言だ。彼は販売される端末について、次のようにコメントしている。
「端末はイー・モバイルから納入される。イー・モバイルとソフトバンクモバイルの両方のネットワークが使えるようになっている。トラフィックが逼迫している都心部ではイー・モバイル、ネットワークが空いている地方や海外ではうちの回線を使ってもらってもよい」
つまり、端末はイー・モバイルが使う1.7GHz帯と、ソフトバンクモバイルの2GHz帯の2つの周波数帯に対応したものとなるようなのだ。MVNOだからといってイー・モバイルしか使えないわけではなく、ソフトバンクモバイルのネットワークにも対応するよう配慮がなされているというわけである。
■2枚のSIMカードで「ウィン・ウィン」?
だが、1枚のSIMカードで2つのキャリアを使い分けるというのはちょっと無理がある。ここからは推測になるが、もしかするとイー・モバイルに接続する際はイー・モバイルの電話番号、ソフトバンクモバイルにはソフトバンクモバイルの電話番号を使うのではないか。となると、SIMカードは2枚必要になる。
つまり、ユーザーがデータ端末を購入すると、2枚のSIMカードが付いてきて、イー・モバイルとソフトバンクモバイルの2回線の扱いとなるのではないか。そうすれば、両社とも1ユーザーとしてカウントされる。NTTドコモの「2in1」ならぬ「2キャリアin1」だ。
おそらく端末は、2枚のSIMカードを同時に差すようになっているか(海外では音声端末でデュアルSIMカード対応モデルがある)、ユーザーがいちいち2枚のSIMカードを抜き差しするのだろう。
宮川氏が「料金はイー・モバイルと一緒」と言っていたことから、2キャリアとの契約でもイー・モバイルと変わらないキャンペーン的な値付けがされそうだ。
孫社長は「ウィン・ウィンなら協調する」といっていたが、この予想が正しければ、まさにネットワークの投資をすることなく、自社の契約者数を増やすことができる。ソフトバンクモバイルがMVNOで売ってもメリットが出てくるというわけだ。
命名権市場急ブレーキ、08年取引額1割増どまり 大型契約減る
野球場やサッカー場などの施設に企業名や製品名をつける命名権(ネーミングライツ)の市場拡大にブレーキがかかっている。2008年の取引金額は前年比1割増にとどまった。景気後退で大型の契約が減ったことが響いた。06年以降は前年比4割増のペースで拡大してきただけに、収入をあてにしてきた自治体には痛手となりそうだ。
命名権の仲介やコンサルタントを手掛けるベイキューブシー(千葉市)によると、08年に国内で取引された命名権の金額は42億円で前年比10.5%増と、07年の40.7%増から大幅に鈍化した。
多摩テック、9月末で閉鎖 ホンダ子会社が運営 入場者減で
ホンダ子会社でサーキットなどを運営する「モビリティランド」(三重県鈴鹿市)は7日、モータースポーツをテーマにした遊園地「多摩テック」(東京都日野市)を9月末で閉鎖すると発表した。入場者の減少が続き、約2年前から営業を続けるかどうか検討していた。
世界的な景気後退で、ホンダの業績が悪化していることも閉鎖の一因とみられる。多摩テックの入場者はピークだった2002年度には100万人を超えていたが、07年度は62万人に落ち込んでいた。
多摩テックは自動車やオートバイの普及や操る楽しさを広めようと1961年に開業。ただ、こうした活動の主軸は同じモビリティランドが運営する「鈴鹿サーキット」(鈴鹿市)、「ツインリンクもてぎ」(栃木県茂木町)に移り、モビリティランドは「多摩テックは開業当初の目的を達成した」と説明している。
正社員約50人は鈴鹿サーキットかツインリンクもてぎに配置転換。非正規従業員約100人のうち、1年以上働いている約80人は本人が希望すれば、鈴鹿か、もてぎで雇用する。
大手スーパー、農家と直接取引拡大 野菜や果物「顔」見え安心
大手スーパーが卸売市場を通さずに仕入れる青果物の取り扱いを拡大する。イトーヨーカ堂は栽培方法などを指定して直接取引する契約農家の数を1年以内に3000から4000に広げ、売上高も2割以上拡大。イオンも同様の青果の売上高を2年以内に約3割増やす。食の安全志向の高まりを受けて、生産者や栽培方法が見えやすい青果を求める消費者が増えている。各社は鮮度や安全面の付加価値が高い産地直送品を増やし、顧客の囲い込みを進める。
ヨーカ堂は「顔が見える」ブランドで契約農家から直接仕入れた青果を販売。青果物の管理方法や土壌を調査して農家を選定、農薬を少なくした農法で栽培する。
企業決算総崩れ 「選択と集中」で乗り切れ(2月7日付・読売社説)
主要企業が、2009年3月期決算の業績予想を、相次いで下方修正している。
半年前にこんな悪化を予想していた経営者が、どれほどいただろう。
業績悪化は業種を問わず、急速に、しかも大幅に進んでいる。1年前には過去最高益をあげていた企業が、一転して巨額の赤字に転落する例も珍しくない。
特に昨秋から、多くの企業の売上高や利益が、がけを転がり落ちるように急減している。今年に入ってからは、仕事をしても赤字が増えるだけという状況だ。
悪化の底はまだ見えない。各企業は不況の長期化も覚悟して、腰を据えた収益改善策に取り組む必要があるだろう。
トヨタ自動車は、昨年11月、12月に続き、三たび業績を下方修正した。前期に2兆2000億円あった営業利益が、今期は4500億円の赤字になる。
世界同時不況の直撃を受け、日米欧の主要市場で、稼ぎ頭の高級車が売れなくなった。円高による為替差損も追い打ちをかける。
生産・販売世界一を目指した拡大路線が行き過ぎ、傷口を広げた面が否めない。
電機業界では、日立製作所の税引き後利益の赤字額が、日本の製造業で過去最大の7000億円に膨らむ見通しだ。パナソニックやソニーも、薄型テレビや半導体の販売不振に苦しんでいる。
一斉に売れ筋に飛びつく横並びの体質が、不況への抵抗力を弱めている。不採算部門は切り離し、収益の柱を明確にする「選択と集中」が今こそ必要だ。
非製造業では、航空会社の業績悪化が目立つ。不況と円高で国際線の旅客や貨物が急減した。日本航空の税引き後利益は、340億円の赤字になる見通しだ。
国土交通省は、3月末までに航空業界への支援策をまとめる方針だ。国としてどんな支援が可能なのか、検討を急ぐべきだろう。
マンション販売大手の日本綜合地所が破綻(はたん)するなど、不況の影響はより深刻化してきている。三菱UFJフィナンシャル・グループなどの金融グループも利益を大きく減らしそうだ。
だが、ヒット商品を連発する任天堂は、この逆風下でも過去最高の営業利益をあげるという。
日本企業の多くはバブル崩壊後の不況を経て、大規模なリストラを実施した。基礎体力はまだあるはずだ。知恵を絞って得意分野を開拓し、それを伸ばすのが生き残る道である。