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新生ウィルコム、再起かける「他社あて定額」の舞台裏
11月30日に更生計画案が認可され、新生ウィルコムが産声を上げた。12月3日に開始する新サービス「だれとでも定額」は月額1450円の基本料金に加えて月額980円を支払うと、ウィルコム以外の国内の携帯電話や一般加入電話、IP電話への1回あたり10分以内の通話が月500回まで無料となる。
自社ユーザー同士の無料通話は、これまでもウィルコムのほかソフトバンクモバイル、KDDIが手がけていた。他社の電話回線にまで定額の範囲を広げるのは業界初の試みとなる。
沖縄でテスト導入し手応え
だれとでも定額はもともと、ソフトバンクモバイルが2007年1月に「ホワイトプラン」を投入してから低迷を続けていたウィルコムが、起死回生を狙って準備を進めていたオプションサービスだった。
実は10年4月にはすでに、ウィルコム子会社のウィルコム沖縄が、県内ユーザー限定で試験的に開始している。月額980円で月1000回まで無料にしたところ、それまで純減が続いていた同社の契約者数が純増に転じたという。
特に5月は、全契約数が3万8000件というなかで、2500件もの新規契約を獲得するのに成功した。沖縄にある別の通信会社の幹部は「沖縄にはもともと、データ通信よりも音声通話の需要が高いという特性がある」という。その県民性に見事にはまったようだ。
沖縄での試験導入で手応えを感じたウィルコムは、すぐさま全国展開の準備を進めた。実際に店頭で受け付けを始められるところまで用意が整っていたという。ところが、ウィルコムの会社更生支援に名乗りを上げたソフトバンクから、全国展開に待ったがかかった。
ソフトバンクの意図は?
このときは、ソフトバンクの意図を巡り「ホワイトプランに影響を及ぼすオプションだから妨害に入ったのでは」といぶかるウィルコム関係者もいた。しかし、ソフトバンクから指示があったのは試験エリアの拡大で、それを受けて北海道、宮城、広島の3カ所を加えてテストマーケティングを続けることになった。
試験ではエリアごとに、オプション料金を980円と1980円、制限回数を300回と500回に変えたりして、ユーザーの利用動向を調べた。そのデータを踏まえて議論した結果、「制限回数は500回に落ち着いた」(ウィルコムの宮内謙社長)という。今回の全国展開の裏には、周到な準備があったのだ。
接続料と超過分の通話に期待
では、月額980円の定額料金で1回10分までの他社あて通話を月500回も無料にして、ウィルコムは損をしないのか。
ウィルコム関係者はこう語る。「沖縄のデータを見ると、これまでは無料となるウィルコム同士の通話が圧倒的に多かった。しかし、だれとでも定額に加入した人は、他社に電話をかけるようになる。かければ電話番号が相手に通知され、着信も増える。この他社からの着信による接続料収入でもうかる。さらに実際は無料の10分間を超過するユーザーも多く、そこで収入が得られる。この2つが大きい」
ウィルコムから他社への発信があると当然、ウィルコムは他社に接続料を支払う必要がある。しかし逆に着信の接続料収入もいままで以上に増えるためカバーできるという。さらに10分を超えた分の通話は、30秒21円の料金が加算されていく。10分ごとに通話を切ってかけ直せば無料だが、まめに10分ごとに切断するユーザーはあまり多くない。こうした仕掛けにより、結果として定額でも収支がプラスになると計算している。
携帯電話各社の直近の基本使用料+音声ARPU(契約当たり月間収入)は、NTTドコモが2660円、KDDIが2790円、ソフトバンクモバイルが2020円だ。一方、ウィルコムの通話料金は、ウィルコム同士だけで使えば基本料金の1450円で完結するが、だれとでも定額のオプションを付けると2430円となる。これだけでウィルコムのARPUはソフトバンクモバイルを上回る。
端末開発にも勢い戻る
さらに10分超過の通話料が入ればARPUは上昇し、他社からの接続料も期待できる。別のウィルコム関係者が「100円でもARPUが上がってくれればかなり大きい」というのもうなずける。
ソフトバンクにとって新生ウィルコムは、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイルに続くグループ4社目の通信事業者となる。ウィルコムの宮内社長は「顧客を増やして売り上げを伸ばし、コストを下げて利益を出す」と宣言した。ソフトバンクグループと基地局やネットワークを共用してコストを削減しつつ、3カ月以内に契約件数を純増させることを目指すという。
あるウィルコム関係者は「一時は会社がなくなってしまうかと思っていたが、ソフトバンクが救世主となってくれてとても感謝している」と語る。
経営状態が危ぶまれたときは苦労していた端末開発も、ソフトバンクが支援に回ったことで一気に勢いが付いたようだ。12月1日の記者会見場には、11年春モデルとなる日本無線とセイコーインスツルの製品が並び、参考出品のコンセプトモデルとして通信機器メーカーのエイビットの端末も展示されていた。ウィルコム関係者は「一時は端末供給メーカーが京セラに絞られる可能性もあったが、再び製造を希望するメーカーが出てきた」という。
現場の人材流出が痛手だが・・・
これまで2754店舗だった取扱店舗数も、11年3月には4000以上に拡大させる計画だ。宮内社長は「私が社長に就任するというアナウンスが出たとたん、販売代理店から多くの問い合わせがきた」と語る。ソフトバンクが支援するということで、販売代理店の期待も高まったようだ。
今回の記者会見場にはソフトバンクモバイル取締役でグループのネットワークを統括する宮川潤一氏をはじめ、多くのソフトバンク関係者の姿があった。ウィルコムはすっかりソフトバンク第4の通信会社に生まれ変わっていた。
経営破綻により、ウィルコムの原動力となっていた現場の人材がかなり流出したという痛手は残る。それでもソフトバンクという後ろ盾を得て、ようやく再生の道筋が見えてきた。
携帯新放送、6社が名乗り 塾のナガセや携帯3社
予備校授業や飲食店クーポン 総務省、11年中に決定
2012年4月に始まる携帯端末向け新放送で、NTTドコモ陣営やソフトバンクグループ、KDDIなど6社が放送サービスの提供者として参入の希望を総務省に伝えたことが2日、分かった。同省は11年中にこの中から事業者を決める方針だ。同放送は現在のワンセグ放送に比べて画質が約9倍も向上することから、既存の放送とは異なる新しい番組の提供が期待されている。
参入を希望したのはこのほか、「東進ハイスクール」など学習塾を運営するナガセや、飲食店情報サービスのぐるなびと提携した通信技術会社デジタルメディアプロ。予備校の授業中継や、グルメ番組と連動した電子クーポンの配信などを検討しているもようだ。残り1社は非公表となる見通し。
総務省は今後、事業者の参入枠や選定基準などを決め、その後、事業者を正式に選ぶ見通しだ。
同放送は、11年7月にアナログ放送が終了するために空く周波数帯を利用した新サービス。携帯電話やiPadなどの多機能情報端末に動画や大容量データを一斉に送れる。受信した情報を端末に保存して電波の届かないところでも視聴できる。
総務省は9月、放送設備を運営するインフラ事業者にNTTドコモ陣営を選定。インフラ事業者として落選したKDDIも今回、希望を伝えたが、「参入するかどうかは時間をかけて検討したい」と慎重な姿勢をみせている。ライバル2社が名乗りを上げた以上、KDDIだけが新放送を提供できなくなる事態を避けたいとの思惑から手を挙げたとみられる。
本部機能・人員、アジアに 三井物産や日立
新興国市場の開拓急ぐ
産業界で本社人員や本部機能をアジアにシフトする動きが加速してきた。三井物産が現地駐在員を2割増やすほか、日立製作所は環境都市開発事業の責任者を中国常駐にした。アジアは上場企業の営業利益の約4分の1を稼ぐ主力市場に成長。中国や東南アジアに人員や本部機能を重点配置し、巨大な新興国市場の開拓を急ぐ。
外務省の海外在留邦人数統計(2009年)によると、企業の駐在員を含む長期滞在者のうち、アジアは約28万3千人と7年間で6割増。06年に北米を抜き最大地域となった。
貿易でも東アジアが日本の最大の輸出先となっている。日本貿易振興機構(ジェトロ)によれば09年の東アジア向け輸出は約2692億ドル(約22兆6千億円)。00年に比べ北米、西欧が減る一方で東アジアだけが4割超増加。世界全体の半分弱を占める。
三井物産はアジア地域に本社の総合職社員を大幅に移管する。今後2年で100人強を異動させ、現地駐在員を約640人と2割増やす。異動するのは石油製品やインフラ、情報産業などの担当社員。国別では戦略地域の中国に40人弱、シンガポールに20人弱を移す。現地社員を増やすと同時に事業開拓の即戦力として本社人員を派遣する。
日立製作所は環境配慮型都市開発事業の部門トップ、野本正明氏を中国・北京駐在にした。社長直轄部門の「スマートシティ事業統括本部」担当本部長を兼務したまま、日立中国の副総経理に就任。北京から次世代送電網(スマートグリッド)など世界の都市開発・インフラ戦略を仕切る。
クラリオンは中国を「バーチャル・グローバル・ヘッドクオーター」とし、世界本社機能を担わせる。今春から中国の開発拠点に日本で開発トップだった役員や商品企画部長など計30人を現地駐在させた。カーナビゲーションシステムを現地で一貫して開発・生産できる体制を整える。
三菱化学はポリエステル繊維原料のテレフタル酸の事業本社機能をシンガポールに移管。石化製品の国際市場があるシンガポール、中国など各拠点に指令を出す。
国内上場企業の営業利益の地域別比率(2010年3月期)で見ると、国内が56.6%と減少傾向をたどる一方、アジア大洋州は23.6%と10年前の4倍に増えた。
内需が伸び悩む一方、中国などアジア市場は引き続き高い経済成長を続けている。企業にとっては成長市場の取り込みのため人材を含む経営資源のシフトが不可欠になっている。
リチウムイオン電池、サムスンSDIが世界出荷首位 7~9月
調査会社のテクノ・システム・リサーチ(東京・千代田)は2日、携帯電話などに使われるリチウムイオン電池の2010年7~9月のメーカー別の世界出荷実績を発表した。シェアは韓国のサムスンSDIと三洋電機が20%で並んだが、出荷(電池最小単位のセル)の実数ではサムスンSDIが2億1000万個と三洋電機を400万個上回り、2四半期連続で首位を維持した。
7~9月の全体の出荷量は10億4210万個と、4~6月に比べて9%増えた。ノートパソコン向けを見ると、世界で低価格攻勢をかける韓国勢のシェアは50%と、昨年7~9月に比べて5ポイント上昇した。一方、三洋電機など日本勢は同2ポイント下げて42%となった。リチウムイオン電池の市場はノートパソコンと携帯電話がそれぞれ3割強を占めている。
クラウド普及、産官学で協議会 経団連など
日本経団連と経済産業、総務両省は、ネットワーク経由でデータやソフトを利用する「クラウドコンピューティング」技術を普及させるため、産学官協議会を設置する。クラウドを利用する際のノウハウや技術の共通化や、農業や教育分野での活用策について議論し、来年度以降の政策に反映させる。クラウドで先行する欧米企業に対抗するため、「オールジャパン」体制を構築する狙いもある。
協議会は「ジャパン・クラウド・コンソーシアム」で、22日に第1回総会を開く。事務局は経団連に設置し、会長には宮原秀夫・大阪大名誉教授が就任する。
NTTやKDDI、ソフトバンクなどの通信会社のほか、NEC、日立製作所、富士通の機器メーカー、セールス・フォース・ドットコムやマイクロソフトなどの外資系企業も参加する。協議会では今後も企業を募り、最終的には100社以上の参加を目指す。
11月30日に更生計画案が認可され、新生ウィルコムが産声を上げた。12月3日に開始する新サービス「だれとでも定額」は月額1450円の基本料金に加えて月額980円を支払うと、ウィルコム以外の国内の携帯電話や一般加入電話、IP電話への1回あたり10分以内の通話が月500回まで無料となる。
自社ユーザー同士の無料通話は、これまでもウィルコムのほかソフトバンクモバイル、KDDIが手がけていた。他社の電話回線にまで定額の範囲を広げるのは業界初の試みとなる。
沖縄でテスト導入し手応え
だれとでも定額はもともと、ソフトバンクモバイルが2007年1月に「ホワイトプラン」を投入してから低迷を続けていたウィルコムが、起死回生を狙って準備を進めていたオプションサービスだった。
実は10年4月にはすでに、ウィルコム子会社のウィルコム沖縄が、県内ユーザー限定で試験的に開始している。月額980円で月1000回まで無料にしたところ、それまで純減が続いていた同社の契約者数が純増に転じたという。
特に5月は、全契約数が3万8000件というなかで、2500件もの新規契約を獲得するのに成功した。沖縄にある別の通信会社の幹部は「沖縄にはもともと、データ通信よりも音声通話の需要が高いという特性がある」という。その県民性に見事にはまったようだ。
沖縄での試験導入で手応えを感じたウィルコムは、すぐさま全国展開の準備を進めた。実際に店頭で受け付けを始められるところまで用意が整っていたという。ところが、ウィルコムの会社更生支援に名乗りを上げたソフトバンクから、全国展開に待ったがかかった。
ソフトバンクの意図は?
このときは、ソフトバンクの意図を巡り「ホワイトプランに影響を及ぼすオプションだから妨害に入ったのでは」といぶかるウィルコム関係者もいた。しかし、ソフトバンクから指示があったのは試験エリアの拡大で、それを受けて北海道、宮城、広島の3カ所を加えてテストマーケティングを続けることになった。
試験ではエリアごとに、オプション料金を980円と1980円、制限回数を300回と500回に変えたりして、ユーザーの利用動向を調べた。そのデータを踏まえて議論した結果、「制限回数は500回に落ち着いた」(ウィルコムの宮内謙社長)という。今回の全国展開の裏には、周到な準備があったのだ。
接続料と超過分の通話に期待
では、月額980円の定額料金で1回10分までの他社あて通話を月500回も無料にして、ウィルコムは損をしないのか。
ウィルコム関係者はこう語る。「沖縄のデータを見ると、これまでは無料となるウィルコム同士の通話が圧倒的に多かった。しかし、だれとでも定額に加入した人は、他社に電話をかけるようになる。かければ電話番号が相手に通知され、着信も増える。この他社からの着信による接続料収入でもうかる。さらに実際は無料の10分間を超過するユーザーも多く、そこで収入が得られる。この2つが大きい」
ウィルコムから他社への発信があると当然、ウィルコムは他社に接続料を支払う必要がある。しかし逆に着信の接続料収入もいままで以上に増えるためカバーできるという。さらに10分を超えた分の通話は、30秒21円の料金が加算されていく。10分ごとに通話を切ってかけ直せば無料だが、まめに10分ごとに切断するユーザーはあまり多くない。こうした仕掛けにより、結果として定額でも収支がプラスになると計算している。
携帯電話各社の直近の基本使用料+音声ARPU(契約当たり月間収入)は、NTTドコモが2660円、KDDIが2790円、ソフトバンクモバイルが2020円だ。一方、ウィルコムの通話料金は、ウィルコム同士だけで使えば基本料金の1450円で完結するが、だれとでも定額のオプションを付けると2430円となる。これだけでウィルコムのARPUはソフトバンクモバイルを上回る。
端末開発にも勢い戻る
さらに10分超過の通話料が入ればARPUは上昇し、他社からの接続料も期待できる。別のウィルコム関係者が「100円でもARPUが上がってくれればかなり大きい」というのもうなずける。
ソフトバンクにとって新生ウィルコムは、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイルに続くグループ4社目の通信事業者となる。ウィルコムの宮内社長は「顧客を増やして売り上げを伸ばし、コストを下げて利益を出す」と宣言した。ソフトバンクグループと基地局やネットワークを共用してコストを削減しつつ、3カ月以内に契約件数を純増させることを目指すという。
あるウィルコム関係者は「一時は会社がなくなってしまうかと思っていたが、ソフトバンクが救世主となってくれてとても感謝している」と語る。
経営状態が危ぶまれたときは苦労していた端末開発も、ソフトバンクが支援に回ったことで一気に勢いが付いたようだ。12月1日の記者会見場には、11年春モデルとなる日本無線とセイコーインスツルの製品が並び、参考出品のコンセプトモデルとして通信機器メーカーのエイビットの端末も展示されていた。ウィルコム関係者は「一時は端末供給メーカーが京セラに絞られる可能性もあったが、再び製造を希望するメーカーが出てきた」という。
現場の人材流出が痛手だが・・・
これまで2754店舗だった取扱店舗数も、11年3月には4000以上に拡大させる計画だ。宮内社長は「私が社長に就任するというアナウンスが出たとたん、販売代理店から多くの問い合わせがきた」と語る。ソフトバンクが支援するということで、販売代理店の期待も高まったようだ。
今回の記者会見場にはソフトバンクモバイル取締役でグループのネットワークを統括する宮川潤一氏をはじめ、多くのソフトバンク関係者の姿があった。ウィルコムはすっかりソフトバンク第4の通信会社に生まれ変わっていた。
経営破綻により、ウィルコムの原動力となっていた現場の人材がかなり流出したという痛手は残る。それでもソフトバンクという後ろ盾を得て、ようやく再生の道筋が見えてきた。
携帯新放送、6社が名乗り 塾のナガセや携帯3社
予備校授業や飲食店クーポン 総務省、11年中に決定
2012年4月に始まる携帯端末向け新放送で、NTTドコモ陣営やソフトバンクグループ、KDDIなど6社が放送サービスの提供者として参入の希望を総務省に伝えたことが2日、分かった。同省は11年中にこの中から事業者を決める方針だ。同放送は現在のワンセグ放送に比べて画質が約9倍も向上することから、既存の放送とは異なる新しい番組の提供が期待されている。
参入を希望したのはこのほか、「東進ハイスクール」など学習塾を運営するナガセや、飲食店情報サービスのぐるなびと提携した通信技術会社デジタルメディアプロ。予備校の授業中継や、グルメ番組と連動した電子クーポンの配信などを検討しているもようだ。残り1社は非公表となる見通し。
総務省は今後、事業者の参入枠や選定基準などを決め、その後、事業者を正式に選ぶ見通しだ。
同放送は、11年7月にアナログ放送が終了するために空く周波数帯を利用した新サービス。携帯電話やiPadなどの多機能情報端末に動画や大容量データを一斉に送れる。受信した情報を端末に保存して電波の届かないところでも視聴できる。
総務省は9月、放送設備を運営するインフラ事業者にNTTドコモ陣営を選定。インフラ事業者として落選したKDDIも今回、希望を伝えたが、「参入するかどうかは時間をかけて検討したい」と慎重な姿勢をみせている。ライバル2社が名乗りを上げた以上、KDDIだけが新放送を提供できなくなる事態を避けたいとの思惑から手を挙げたとみられる。
本部機能・人員、アジアに 三井物産や日立
新興国市場の開拓急ぐ
産業界で本社人員や本部機能をアジアにシフトする動きが加速してきた。三井物産が現地駐在員を2割増やすほか、日立製作所は環境都市開発事業の責任者を中国常駐にした。アジアは上場企業の営業利益の約4分の1を稼ぐ主力市場に成長。中国や東南アジアに人員や本部機能を重点配置し、巨大な新興国市場の開拓を急ぐ。
外務省の海外在留邦人数統計(2009年)によると、企業の駐在員を含む長期滞在者のうち、アジアは約28万3千人と7年間で6割増。06年に北米を抜き最大地域となった。
貿易でも東アジアが日本の最大の輸出先となっている。日本貿易振興機構(ジェトロ)によれば09年の東アジア向け輸出は約2692億ドル(約22兆6千億円)。00年に比べ北米、西欧が減る一方で東アジアだけが4割超増加。世界全体の半分弱を占める。
三井物産はアジア地域に本社の総合職社員を大幅に移管する。今後2年で100人強を異動させ、現地駐在員を約640人と2割増やす。異動するのは石油製品やインフラ、情報産業などの担当社員。国別では戦略地域の中国に40人弱、シンガポールに20人弱を移す。現地社員を増やすと同時に事業開拓の即戦力として本社人員を派遣する。
日立製作所は環境配慮型都市開発事業の部門トップ、野本正明氏を中国・北京駐在にした。社長直轄部門の「スマートシティ事業統括本部」担当本部長を兼務したまま、日立中国の副総経理に就任。北京から次世代送電網(スマートグリッド)など世界の都市開発・インフラ戦略を仕切る。
クラリオンは中国を「バーチャル・グローバル・ヘッドクオーター」とし、世界本社機能を担わせる。今春から中国の開発拠点に日本で開発トップだった役員や商品企画部長など計30人を現地駐在させた。カーナビゲーションシステムを現地で一貫して開発・生産できる体制を整える。
三菱化学はポリエステル繊維原料のテレフタル酸の事業本社機能をシンガポールに移管。石化製品の国際市場があるシンガポール、中国など各拠点に指令を出す。
国内上場企業の営業利益の地域別比率(2010年3月期)で見ると、国内が56.6%と減少傾向をたどる一方、アジア大洋州は23.6%と10年前の4倍に増えた。
内需が伸び悩む一方、中国などアジア市場は引き続き高い経済成長を続けている。企業にとっては成長市場の取り込みのため人材を含む経営資源のシフトが不可欠になっている。
リチウムイオン電池、サムスンSDIが世界出荷首位 7~9月
調査会社のテクノ・システム・リサーチ(東京・千代田)は2日、携帯電話などに使われるリチウムイオン電池の2010年7~9月のメーカー別の世界出荷実績を発表した。シェアは韓国のサムスンSDIと三洋電機が20%で並んだが、出荷(電池最小単位のセル)の実数ではサムスンSDIが2億1000万個と三洋電機を400万個上回り、2四半期連続で首位を維持した。
7~9月の全体の出荷量は10億4210万個と、4~6月に比べて9%増えた。ノートパソコン向けを見ると、世界で低価格攻勢をかける韓国勢のシェアは50%と、昨年7~9月に比べて5ポイント上昇した。一方、三洋電機など日本勢は同2ポイント下げて42%となった。リチウムイオン電池の市場はノートパソコンと携帯電話がそれぞれ3割強を占めている。
クラウド普及、産官学で協議会 経団連など
日本経団連と経済産業、総務両省は、ネットワーク経由でデータやソフトを利用する「クラウドコンピューティング」技術を普及させるため、産学官協議会を設置する。クラウドを利用する際のノウハウや技術の共通化や、農業や教育分野での活用策について議論し、来年度以降の政策に反映させる。クラウドで先行する欧米企業に対抗するため、「オールジャパン」体制を構築する狙いもある。
協議会は「ジャパン・クラウド・コンソーシアム」で、22日に第1回総会を開く。事務局は経団連に設置し、会長には宮原秀夫・大阪大名誉教授が就任する。
NTTやKDDI、ソフトバンクなどの通信会社のほか、NEC、日立製作所、富士通の機器メーカー、セールス・フォース・ドットコムやマイクロソフトなどの外資系企業も参加する。協議会では今後も企業を募り、最終的には100社以上の参加を目指す。
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