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サイバーエージェント「Ameba」が会員数1000万人を突破
サイバーエージェントは7月12日、ブログサービスなどを提供する「Ameba」の会員数が7月9日に1000万人を突破したことを発表した。これを記念して「1,000万会員突破!ありがとうキャンペーン」を7月12日から7月27日まで実施する。
1,000万会員突破!ありがとうキャンペーンでは、コミュニティサービス「アメーバピグ」やペット育成サービス「ブーシュカ」、仮想アイテムプレゼントサービス「Amebaプレゼント」で、それぞれ数種類のキャンペーン限定アイテムを10アメゴールドから販売する。
「ワンピース」の声優逮捕 「入れ墨見せたくて」下半身画像をネット掲載
インターネット上のブログに自身のわいせつ画像を掲載したとして、警視庁保安課と千住署は12日、わいせつ図画陳列容疑で、東京都新宿区新宿のバー「刀」経営でタレントの今村清憲容疑者(56)=同区新宿=を逮捕した。
同課によると、今村容疑者は約10年間で400万~500万円をかけて全身に龍や蛇などの入れ墨を施していたといい、「ほぼ完成したので、みんなに見せて自慢したかった」と容疑を認めている。
今村容疑者は「いまむらのりお」の芸名で、人気アニメ「ワンピース」に声優として出演していたほか、舞台俳優として活動していたという。
逮捕容疑は、4月26日から6月17日までの間、自身のブログ上に自分の下半身の画像など、わいせつ画像計4枚を不特定多数の利用者が閲覧できる状態にし、都内の男性会社員(37)に見せたとしている。
Twitter、フォロワー数拡大を支援するサービスを検討中か?
All Things Digitalは米国時間7月9日、Twitterが新たな収益源となる製品を検討していると、同計画に詳しい消息筋の話として伝えた。同報道によると、同製品は、「Promoted Tweeter」のようなものだが、特定のユーザーアカウントをハイライトし、フォロワー数の増大に貢献するという。同製品のビジネスモデルについては、同消息筋もよく分からないとしている。All Things Digitalでは、獲得したフォロワー数に応じて課金するか、Twitterアカウントが得た露出に応じて課金されるのではと予想している。
All Things Digitalによると、Twitterの広報担当者Sean Garrett氏は、「われわれは、プロモート製品および商用製品の完全なスイートを将来的には持つことになるだろう」と電子メールで述べ、これらの2製品のコンポーネントすべてについて決定がなされているわけではなく、「一部は現在、公にテストされている。また一部はテストがすぐに開始されるだろう。そして、別の一部は、製品に対するフィードバックを得るために外部に話をしている単なるアイデアにすぎない」と続けたという。
自治体のTwitterアカウント調査、茨城県のフォロワー数が2万9000人超
自治体や企業が参加する「JOIN」(移住・交流推進機構)は12日、自治体のTwitterアカウントの開設状況に関する調査結果を公表した。
調査はJOINに加盟する42都道府県、927市町村の自治体うち、東日本にある18の自治体から有効回答を集めたもの。このうち、7月7日時点で最もフォロワー数が多かったのは、茨城県うまいもんどころ推進室が運営しているアカウント「umaimon_ibaraki」で2万9265万人。フォロー数も2万9739人で最多だった。
フォロワー数が2番目に多かったのは、北海道陸別町が運営するアカウント「rikubetsu」で3546人、3番目は青森県が運営する「AomoriPref」で3027人、4番目は長野県企画課ブランド推進係が運営する「nagano_b」で1214人だった。
自治体のTwitter公式アカウントについてJOINは、「双方向型のコミュニケーションを目指すのか、広報的情報発信ツールとして利用するのか、自治体としての考え方や姿勢が色濃く反映されていくことになりそう」とコメントしている。
Fortuneの「技術分野で最も聡明な50人」にAppleジョブズ氏
Fortune誌は7月9日、同誌が選ぶ「テクノロジー分野で最も聡明な50人」リストを発表した。Appleのスティーブ・ジョブズCEOなどが選ばれた。
このリストは、知性だけではなく、影響力も考慮して決定したという。また「今」に焦点を当てているため、引退したビル・ゲイツ氏などは含まれない。
CEO部門で最も聡明な人物に選ばれたのはスティーブ・ジョブズ氏。iTunes、Pixar、iPhone、iPadでの功績を評価し、「1つの業界を揺るがすのは幸運かもしれないが、(ジョブズ氏は)4つの業界を揺るがした」としている。次点にはAmazonのジェフ・ベゾス氏、Alibaba Groupのジャック・マー氏などが挙がっている。
デザイナー部門では、iPhoneに携わったAppleのジョナサン・アイブ氏が選出され、次点には「マリオ」シリーズなどを生み出した任天堂の宮本茂氏などが挙げられている。
また創業者部門ではFacebookのマーク・ザッカーバーグ氏が最も聡明とされ、Salesforce.comのマーク・ベニオフ氏、Googleのサーゲイ・ブリン氏とラリー・ペイジ氏、Twitterのジャック・ドーシー氏らが次点に選ばれた。ハイブリッド部門では「アバター」のジェームズ・キャメロン監督が選出されている。
「誰もいい製品だと思ってなかった」――Microsoft社員がKINを語る
Microsoftが発売から2カ月足らずでソーシャル携帯「KIN」を開発終了したが、あるMicrosoft社員はこの決定を「一般社員にとって全社的な恥」としている。この匿名の社員はKINについて「そもそも、立ち上げるべき優れた製品だとは誰も思っていなかった」と語っている。しかも社内で行われたKIN立ち上げパーティーには、KINから得た売り上げ以上の費用がかかっていたという。「社員として恥ずかしいし、株主として腹が立つ。コンセプト実証のための製品ではあったが、何かほかのものを立ち上げるべきだった」
ほかにも現社員や元社員がネットに寄せたコメントによると、KINにかかわっていたとされるアンディ・リーズ氏は「コンシューマー製品も携帯電話も分かっていなかった」という。KINをやめてWindows Phone 7に力を入れるというリーズ氏の決断は「もっと早くするべきだった」と指摘する声もある。しかしWindows Phone 7も「これまでの彼(リーズ氏)の実績からすると、99%の確率で大惨事になる」との意見もある。
またある関係者はこうコメントしている。「KINが大失敗したのに誰もクビにならないなんて信じられない。数十億ドルが無駄になった。優秀な人材が3年間を費やし、その投資を全く回収できなかった」
KINの実際の売り上げについては諸説あり、わずか500台といううわさもある。多くても1万台は超えていないようだ。
Twitterアカウントでソーシャル小説が書ける「twitnovels」
株式会社ハートレイルズと株式会社マリーチは12日、Twitterアカウントを使って小説を投稿・閲覧できるサービス「twitnovels」を開始した。利用は無料。
Twitterアカウントで「twitnovels」にサインインした上で小説を投稿すると、トップページ上に表示される。他のユーザーは、その小説の好きなページから「別の続き」が書ける仕組み。1ページあたり最大800文字を投稿できる。
自分が投稿した小説に他のユーザーが「別の続き」を書いた場合、「マイページ」から確認したり、「別の続き」が書かれたページのURLをTwitter経由で通知してもらうことも可能となっている。
ハートレイルズでは「twitnovels」を全く新しい「ソーシャル」な小説のメディアと位置付け、今後はmixiやFacebookなどのSNSに加え、携帯電話やiPhoneなどへのマルチプラットフォーム対応を図る考え。海外展開も視野に入れ、すでに英語ページも用意している。
「AppleとFacebookは脅威ではない」とGoogle CEO
Googleのエリック・シュミットCEOは、AppleやFacebookが同社のビジネスを脅かしているとの見方を否定した。
ほとんどの人は「死ぬまで戦うゼロサムゲームだと思っている」とシュミット氏は7月8日のサンバレーでも1時間のブリーフィングで記者団に語った。Googleの創設者ラリー・ペイジ氏とサーゲイ・ブリン氏も同席していた。
「インターネットユーザーがFacebookユーザーになったとき、実際は彼らのGoogleでの検索は大きく増えるということを指摘しておく」とブリン氏は語った。
シュミット氏らは、GoogleがFacebookに対抗する新サービス「Google Me」を開発しているとの報道は認めなかった。Facebookは6年前にスタートし、ユーザーを約5億人にまで拡大した。
3氏は、混乱の1年間にGoogleにのしかかってきたさまざまな事柄について語った。この1年、同社は不況から脱却し、変化する競争局面や政府当局からの高まる監視、中国での大幅な戦略転換に直面している。
シュミット氏とGoogleの2人の創設者は、メディア・IT業界幹部がリゾート地サンバレーに集まるAllen & Coカンファレンスの3日目に、記者団に向けて講演した。Appleのスティーブ・ジョブズCEOもこのイベントに招かれたが、出席しなかった。
かつては同盟していたAppleとGoogleの関係は、両社がスマートフォンやモバイル広告などの市場で競争するのに伴って次第に緊張が高まっている。シュミット氏は昨年、両社の事業が重複しているとの理由からAppleの取締役を辞任した。
Appleのジョブズ氏は最近カンファレンスで、両社の関係が変わったのはGoogleのせいであり、GoogleがAndroidを開発してiPhoneと競争することを選んだからだと話していた。
Googleのペイジ氏は8日に、ジョブズ氏の発言は「歴史を少々改ざんしている」と示唆した。
「われわれはかなり前から、インターネットに接続できて、優れたブラウザを搭載する携帯電話を作ることを考えてAndroidにより組んでいた。そのような製品が市場になかったからだ」とペイジ氏。「われわれが後から参入してきたという言い方は妥当ではないと思う」
だがシュミット氏は、GoogleとAppleは今もさまざまな事業で重要なパートナーであるとし、AndroidとiPhoneの両方が成功できるほど市場は大きいと強調した。
Googleは7月15日に第2四半期決算を発表する。同社は昨年およそ240億ドルの売上高を得た。
シュミット氏は同社の最近のビジネストレンドについて詳しく語らなかったが、経済全般について慎重な見通しを示し、欧米は「アップダウンのある比較的長い回復課程」を経ると指摘している。
Googleは、Chrome OSは年内投入に向けて順調に進んでいるとしている。同OSは初めNetbook向けに提供されるが、タブレットPCにも採用されるだろうとシュミット氏は言う。これはGoogleがAppleのiPadと競争する上で追い風になるだろう。
電子書籍の「黒船」を迎え撃て 大日本印刷など配信事業加速 国内市場の拡大を見据え、電子書籍の配信に向けた動きが相次いでいる。大日本印刷はインターネットのサイト「電子書店」を10月にも開設し、米インターネット検索大手のグーグルは来年初めに日本語書籍の配信に乗り出す。NTTドコモやソニーなども配信事業への参入を表明しており、遅れていた日本の電子書籍の普及が予想以上に早く進む可能性も出てきた。
展示会に再び活気
8日から11日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれた書籍の見本市「東京国際ブックフェア」。電子書籍関連の展示コーナーは端末やサービスの説明を聞く人の波であふれかえった。「こんな光景は見たことがない」と大日本印刷の担当者。出版不況とともに縮小していた展示会が息を吹き返したかのような活気に包まれた。
大日本印刷のサイト「電子書店」は、米アップルの多機能情報端末「iPad(アイパッド)」はもちろん、携帯電話や各メーカーの電子書籍端末にも対応させる。「特定の端末に限定せず、各社と等間隔で付き合いたい」というのがその理由だ。講談社や岩波書店など大手出版社に協力を呼びかけており、配信書籍は約10万点で立ち上げ、来年中に約30万点とする予定。配信価格は紙の書籍より安い設定にするよう出版社側と協議中で、2015年には電子書籍事業で500億円の売り上げを目指す。
一方、グーグルは今夏から米国で始める配信サービス「グーグル・エディション」を、ほぼ半年後に日本へ導入する。同社の検索ソフトと連動して電子書籍の一部を無料で閲覧できる「グーグル・ブックス」を既に展開しているが、新サービスでは出版社の同意を得た書籍を有料で全ページ配信する。対応端末は限定せず、配信技術を他社に提供することも検討している。
調査会社のインプレスR&Dによると、国内の電子書籍市場が14年度に09年度比で2.3倍の1300億円に伸びる見込み。ソニーと凸版印刷、KDDI、朝日新聞社が手を組んだ共同出資会社やNTTドコモ、ソフトバンクも配信事業への参入を表明しており、まさに「アイパッドの発売で一気に火がついた」(出版業界関係者)格好だ。
共通規格の整備へ
こうした動きが相次ぐ背景には、米国の市場を握る米アマゾン・ドット・コムとアップルの存在がある。著作者との交渉から自社の端末への配信までを自らのネットワークですべて網羅しようとする「黒船」がやってくる前に、従来の出版流通システムを保った仕組みを国内の電子書籍でも整えたいという思惑が、大手出版社などには強い。
ただ、電子書籍の端末やサービスによって読める本の分野や規格が違ったり、決済が煩雑になったりすると読者側の混乱を招く恐れもある。出版社や印刷会社は規格や流通の仕組みの整備に乗り出しているが、「いずれはサービスの淘汰(とうた)が待っているのではないか」との指摘もある。(森川潤)
民主、野党と「部分連合」探る 政策協議巡り駆け引き
自民・みんなは慎重
参院選での大敗を受け、政府・民主党は12日、態勢の立て直しを急いだ。菅直人首相は参院で与党が過半数割れした事態の打開に向け、政策ごとに野党と連携する部分連合(パーシャル連合)を探る。自民党やみんなの党は慎重で、政策協議を巡る駆け引きが始まっている。民主内では首相が続投を明言した枝野幸男幹事長らの責任論が今後強まる可能性があり、執行部は警戒している。
菅首相との会談のため首相公邸に入る民主党の枝野幹事長(12日午前)
首相は同日午前、首相公邸で仙谷由人官房長官、民主の枝野幹事長、樽床伸二国会対策委員長、玄葉光一郎政調会長らと今後の対応を協議。野党への政策協議の呼びかけなど国会運営や、2011年度予算編成など当面の課題に結束して当たるよう指示した。首相は午前から午後にかけて公邸にこもりっきりだった。
参院選では民主が44議席にとどまった。連立を組む国民新党は議席を得られず、与党系の無所属の非改選を合わせても与党で110議席と過半数に12議席足りない。与党は衆院で憲法59条に定める再議決が可能な3分の2を持っていないため、参院で多数派工作を進め、過半数を確保しなければ野党の対応次第で法案が一本も通らなくなる。
民主は国民新との連立を維持したうえで、部分連合の相手としてみんなの党や社民党、たちあがれ日本などを念頭に置く。首相は12日未明の記者会見で「やれるところから政策的に共同作業を進めていく」と表明。仙谷長官は同日午前の記者会見で「政策議論を尽くしてより良い合意形成を生んでいく」と語った。
野党側は今のところ与党との政策協議には慎重だ。自民党の茂木敏充幹事長代理は同番組で「バラマキの尻ぬぐいに使われては困るので、まずは(民主の)マニフェストの撤回から始めるべきだ」と条件を付けた。
一方、みんなの党の渡辺喜美代表は午前の記者会見で「アジェンダ(政策課題)が一致すればいい」と含みを残した。ただ消費税増税には反対の立場を貫く構えで、首相が意欲を示す税制の抜本改革に向けた超党派協議は調整が難航しそうだ。
一方、民主内では惨敗の原因が首相の「消費税発言」にあるとして、小沢一郎前幹事長のグループを中心に、首相の退陣論や執行部の刷新を求める声がくすぶっている。
首相は12日未明の記者会見で、自らの続投とともに、枝野幹事長についても「これからも職務を全うしてもらいたい」と党内の交代論を退けた。仙谷長官も「厳しい批判を謙虚に受け止め、解決していくことこそが本来の政治だ」と語った。
【東京新聞社説】
与党過半数割れ 『ねじれ』解く知恵絞れ
2010年7月12日
参院選は与党過半数割れに終わった。衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」の再現だ。停滞を避けるには、ねじれを解くために知恵を絞るしかあるまい。
昨年八月三十日の衆院選で、有権者が自民党から民主党への政権交代を選択してから約十カ月。再び「選挙の夏」がやってきた。
民主党に政権を託したのは正しかったのか、菅直人民主党新代表は首相にふさわしいのか-。
有権者がさまざまな思いを、選挙区と比例代表のそれぞれの一票に託したことだろう。
そして有権者が出した結論は、「与党の過半数割れ」だった。
◆誤算だった消費税
鳩山由紀夫前首相が「政治とカネ」と米軍普天間飛行場の返還問題をめぐる混乱の責任を取る形で突然辞任。参院選勝利を優先した「政権たらい回し」との批判を浴びながらも、後を継いだ菅内閣の支持率は発足当初60%を超えた。
しかし、高支持率は長くは続かず、厳しい選挙結果になって表れた。その最大の誤算が「消費税」にあったことは、菅首相や民主党が認めている通りだ。
消費税は歴代政権の命運を決定付けてきた政治的難題である。八百兆円を超える国と地方の長期債務残高を前に、首相が消費税論議の必要性を選挙で訴えた問題意識自体は理解できなくもない。
ただ、最終的には増税が避けられないにしても、税金の無駄遣いをなくしてからというのが有権者の率直な思いではなかったか。
消費税問題をいきなり持ち出した唐突さを、有権者は嫌った。
鳩山前内閣時代を含む民主党政権の約十カ月間も問われた。
政治主導の政策決定、「コンクリートから人へ」の予算配分、行政の無駄排除、緊密で対等な日米関係など、マニフェスト政策を実現する政権担当能力に、有権者は厳しい中間評価を下した。
◆国民本位の協力を
通常国会終盤には強引な国会運営も目立った。有権者は、そうした民主党の「暴走」に歯止めをかけようとしたのだろう。
首相は記者会見で「あらためてスタートラインに立った気持ちで責任ある政権運営を続けたい」と続投の意向を表明した。
とはいえ参院での国会運営は厳しくなり、手を打たなければ、国政の停滞は避けられない。
予算や条約は参院で否決されても、衆院で可決すればその議決が優先されるが、法案は両院で可決されなければ成立しないからだ。
二〇〇七年の前回参院選で当時与党の自民、公明両党が過半数を失い、福田、麻生両内閣は国会運営に苦しんだが、それでも衆院では三分の二以上の議席があり、再議決という手段が残されていた。
今は民主、国民新両党を合わせても衆院の議席は三分の二に満たず、状況は福田、麻生両内閣当時よりも厳しくなっていることは否定のしようがない。
ではどう打開するのか。
連立の枠組みを替えるのが一つの手段だが、民主党が連立相手として想定している公明党とみんなの党はいずれも連立を否定しており、現時点では可能性は低い。
ならば、当面は政策ごとに野党と連携する「部分連合」でしのぐしかあるまい。
来年度予算編成に向けた本格的な作業が近く始まる。厳しい財政状況下で真に国民に必要な施策をどう実現するかは、与野党の枠を超えて取り組むべき課題だ。財政健全化や年金などの社会保障、普天間問題や「政治とカネ」にどう臨むかも同様である。
政権交代が当然のように起こる時代では与党が参院では必ずしも多数党となり得ないことを、ここ数回の参院選は示す。
自民党の谷垣禎一総裁は衆院解散を求める一方、民主党との協議に応じる余地も残したが、野党側も国民のために協力を惜しむべきでないのは当然だ。与野党がともに課題解決の作業を重ねれば、政治は強くなるに違いない。
その前提として民主党が一致して難局に臨むことが肝要だ。
参院選結果を受け、小沢一郎前幹事長を支持するグループと「反小沢」派の対立が再燃する兆しがあるが、国民そっちのけの党内抗争は繰り返すべきではない。
◆再び「良識の府」に
「良識の府」と呼ばれ無所属議員の多かった参院も、自民党政権時代を通じて政党化が進み、今では政権の命運をも左右する「政局の府」と呼ばれ始めている。
その実態が国政停滞の主因となっているなら見過ごせない。
政党色を薄め、より議員個人の意思を尊重する、採決で党の方針決定に従う「党議拘束」をやめるなどして再び「良識の府」への道を歩み出してはどうか。今回の選挙結果がその契機になるのなら、意義は十分見いだせる。
サイバーエージェントは7月12日、ブログサービスなどを提供する「Ameba」の会員数が7月9日に1000万人を突破したことを発表した。これを記念して「1,000万会員突破!ありがとうキャンペーン」を7月12日から7月27日まで実施する。
1,000万会員突破!ありがとうキャンペーンでは、コミュニティサービス「アメーバピグ」やペット育成サービス「ブーシュカ」、仮想アイテムプレゼントサービス「Amebaプレゼント」で、それぞれ数種類のキャンペーン限定アイテムを10アメゴールドから販売する。
「ワンピース」の声優逮捕 「入れ墨見せたくて」下半身画像をネット掲載
インターネット上のブログに自身のわいせつ画像を掲載したとして、警視庁保安課と千住署は12日、わいせつ図画陳列容疑で、東京都新宿区新宿のバー「刀」経営でタレントの今村清憲容疑者(56)=同区新宿=を逮捕した。
同課によると、今村容疑者は約10年間で400万~500万円をかけて全身に龍や蛇などの入れ墨を施していたといい、「ほぼ完成したので、みんなに見せて自慢したかった」と容疑を認めている。
今村容疑者は「いまむらのりお」の芸名で、人気アニメ「ワンピース」に声優として出演していたほか、舞台俳優として活動していたという。
逮捕容疑は、4月26日から6月17日までの間、自身のブログ上に自分の下半身の画像など、わいせつ画像計4枚を不特定多数の利用者が閲覧できる状態にし、都内の男性会社員(37)に見せたとしている。
Twitter、フォロワー数拡大を支援するサービスを検討中か?
All Things Digitalは米国時間7月9日、Twitterが新たな収益源となる製品を検討していると、同計画に詳しい消息筋の話として伝えた。同報道によると、同製品は、「Promoted Tweeter」のようなものだが、特定のユーザーアカウントをハイライトし、フォロワー数の増大に貢献するという。同製品のビジネスモデルについては、同消息筋もよく分からないとしている。All Things Digitalでは、獲得したフォロワー数に応じて課金するか、Twitterアカウントが得た露出に応じて課金されるのではと予想している。
All Things Digitalによると、Twitterの広報担当者Sean Garrett氏は、「われわれは、プロモート製品および商用製品の完全なスイートを将来的には持つことになるだろう」と電子メールで述べ、これらの2製品のコンポーネントすべてについて決定がなされているわけではなく、「一部は現在、公にテストされている。また一部はテストがすぐに開始されるだろう。そして、別の一部は、製品に対するフィードバックを得るために外部に話をしている単なるアイデアにすぎない」と続けたという。
自治体のTwitterアカウント調査、茨城県のフォロワー数が2万9000人超
自治体や企業が参加する「JOIN」(移住・交流推進機構)は12日、自治体のTwitterアカウントの開設状況に関する調査結果を公表した。
調査はJOINに加盟する42都道府県、927市町村の自治体うち、東日本にある18の自治体から有効回答を集めたもの。このうち、7月7日時点で最もフォロワー数が多かったのは、茨城県うまいもんどころ推進室が運営しているアカウント「umaimon_ibaraki」で2万9265万人。フォロー数も2万9739人で最多だった。
フォロワー数が2番目に多かったのは、北海道陸別町が運営するアカウント「rikubetsu」で3546人、3番目は青森県が運営する「AomoriPref」で3027人、4番目は長野県企画課ブランド推進係が運営する「nagano_b」で1214人だった。
自治体のTwitter公式アカウントについてJOINは、「双方向型のコミュニケーションを目指すのか、広報的情報発信ツールとして利用するのか、自治体としての考え方や姿勢が色濃く反映されていくことになりそう」とコメントしている。
Fortuneの「技術分野で最も聡明な50人」にAppleジョブズ氏
Fortune誌は7月9日、同誌が選ぶ「テクノロジー分野で最も聡明な50人」リストを発表した。Appleのスティーブ・ジョブズCEOなどが選ばれた。
このリストは、知性だけではなく、影響力も考慮して決定したという。また「今」に焦点を当てているため、引退したビル・ゲイツ氏などは含まれない。
CEO部門で最も聡明な人物に選ばれたのはスティーブ・ジョブズ氏。iTunes、Pixar、iPhone、iPadでの功績を評価し、「1つの業界を揺るがすのは幸運かもしれないが、(ジョブズ氏は)4つの業界を揺るがした」としている。次点にはAmazonのジェフ・ベゾス氏、Alibaba Groupのジャック・マー氏などが挙がっている。
デザイナー部門では、iPhoneに携わったAppleのジョナサン・アイブ氏が選出され、次点には「マリオ」シリーズなどを生み出した任天堂の宮本茂氏などが挙げられている。
また創業者部門ではFacebookのマーク・ザッカーバーグ氏が最も聡明とされ、Salesforce.comのマーク・ベニオフ氏、Googleのサーゲイ・ブリン氏とラリー・ペイジ氏、Twitterのジャック・ドーシー氏らが次点に選ばれた。ハイブリッド部門では「アバター」のジェームズ・キャメロン監督が選出されている。
「誰もいい製品だと思ってなかった」――Microsoft社員がKINを語る
Microsoftが発売から2カ月足らずでソーシャル携帯「KIN」を開発終了したが、あるMicrosoft社員はこの決定を「一般社員にとって全社的な恥」としている。この匿名の社員はKINについて「そもそも、立ち上げるべき優れた製品だとは誰も思っていなかった」と語っている。しかも社内で行われたKIN立ち上げパーティーには、KINから得た売り上げ以上の費用がかかっていたという。「社員として恥ずかしいし、株主として腹が立つ。コンセプト実証のための製品ではあったが、何かほかのものを立ち上げるべきだった」
ほかにも現社員や元社員がネットに寄せたコメントによると、KINにかかわっていたとされるアンディ・リーズ氏は「コンシューマー製品も携帯電話も分かっていなかった」という。KINをやめてWindows Phone 7に力を入れるというリーズ氏の決断は「もっと早くするべきだった」と指摘する声もある。しかしWindows Phone 7も「これまでの彼(リーズ氏)の実績からすると、99%の確率で大惨事になる」との意見もある。
またある関係者はこうコメントしている。「KINが大失敗したのに誰もクビにならないなんて信じられない。数十億ドルが無駄になった。優秀な人材が3年間を費やし、その投資を全く回収できなかった」
KINの実際の売り上げについては諸説あり、わずか500台といううわさもある。多くても1万台は超えていないようだ。
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株式会社ハートレイルズと株式会社マリーチは12日、Twitterアカウントを使って小説を投稿・閲覧できるサービス「twitnovels」を開始した。利用は無料。
Twitterアカウントで「twitnovels」にサインインした上で小説を投稿すると、トップページ上に表示される。他のユーザーは、その小説の好きなページから「別の続き」が書ける仕組み。1ページあたり最大800文字を投稿できる。
自分が投稿した小説に他のユーザーが「別の続き」を書いた場合、「マイページ」から確認したり、「別の続き」が書かれたページのURLをTwitter経由で通知してもらうことも可能となっている。
ハートレイルズでは「twitnovels」を全く新しい「ソーシャル」な小説のメディアと位置付け、今後はmixiやFacebookなどのSNSに加え、携帯電話やiPhoneなどへのマルチプラットフォーム対応を図る考え。海外展開も視野に入れ、すでに英語ページも用意している。
「AppleとFacebookは脅威ではない」とGoogle CEO
Googleのエリック・シュミットCEOは、AppleやFacebookが同社のビジネスを脅かしているとの見方を否定した。
ほとんどの人は「死ぬまで戦うゼロサムゲームだと思っている」とシュミット氏は7月8日のサンバレーでも1時間のブリーフィングで記者団に語った。Googleの創設者ラリー・ペイジ氏とサーゲイ・ブリン氏も同席していた。
「インターネットユーザーがFacebookユーザーになったとき、実際は彼らのGoogleでの検索は大きく増えるということを指摘しておく」とブリン氏は語った。
シュミット氏らは、GoogleがFacebookに対抗する新サービス「Google Me」を開発しているとの報道は認めなかった。Facebookは6年前にスタートし、ユーザーを約5億人にまで拡大した。
3氏は、混乱の1年間にGoogleにのしかかってきたさまざまな事柄について語った。この1年、同社は不況から脱却し、変化する競争局面や政府当局からの高まる監視、中国での大幅な戦略転換に直面している。
シュミット氏とGoogleの2人の創設者は、メディア・IT業界幹部がリゾート地サンバレーに集まるAllen & Coカンファレンスの3日目に、記者団に向けて講演した。Appleのスティーブ・ジョブズCEOもこのイベントに招かれたが、出席しなかった。
かつては同盟していたAppleとGoogleの関係は、両社がスマートフォンやモバイル広告などの市場で競争するのに伴って次第に緊張が高まっている。シュミット氏は昨年、両社の事業が重複しているとの理由からAppleの取締役を辞任した。
Appleのジョブズ氏は最近カンファレンスで、両社の関係が変わったのはGoogleのせいであり、GoogleがAndroidを開発してiPhoneと競争することを選んだからだと話していた。
Googleのペイジ氏は8日に、ジョブズ氏の発言は「歴史を少々改ざんしている」と示唆した。
「われわれはかなり前から、インターネットに接続できて、優れたブラウザを搭載する携帯電話を作ることを考えてAndroidにより組んでいた。そのような製品が市場になかったからだ」とペイジ氏。「われわれが後から参入してきたという言い方は妥当ではないと思う」
だがシュミット氏は、GoogleとAppleは今もさまざまな事業で重要なパートナーであるとし、AndroidとiPhoneの両方が成功できるほど市場は大きいと強調した。
Googleは7月15日に第2四半期決算を発表する。同社は昨年およそ240億ドルの売上高を得た。
シュミット氏は同社の最近のビジネストレンドについて詳しく語らなかったが、経済全般について慎重な見通しを示し、欧米は「アップダウンのある比較的長い回復課程」を経ると指摘している。
Googleは、Chrome OSは年内投入に向けて順調に進んでいるとしている。同OSは初めNetbook向けに提供されるが、タブレットPCにも採用されるだろうとシュミット氏は言う。これはGoogleがAppleのiPadと競争する上で追い風になるだろう。
電子書籍の「黒船」を迎え撃て 大日本印刷など配信事業加速 国内市場の拡大を見据え、電子書籍の配信に向けた動きが相次いでいる。大日本印刷はインターネットのサイト「電子書店」を10月にも開設し、米インターネット検索大手のグーグルは来年初めに日本語書籍の配信に乗り出す。NTTドコモやソニーなども配信事業への参入を表明しており、遅れていた日本の電子書籍の普及が予想以上に早く進む可能性も出てきた。
展示会に再び活気
8日から11日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれた書籍の見本市「東京国際ブックフェア」。電子書籍関連の展示コーナーは端末やサービスの説明を聞く人の波であふれかえった。「こんな光景は見たことがない」と大日本印刷の担当者。出版不況とともに縮小していた展示会が息を吹き返したかのような活気に包まれた。
大日本印刷のサイト「電子書店」は、米アップルの多機能情報端末「iPad(アイパッド)」はもちろん、携帯電話や各メーカーの電子書籍端末にも対応させる。「特定の端末に限定せず、各社と等間隔で付き合いたい」というのがその理由だ。講談社や岩波書店など大手出版社に協力を呼びかけており、配信書籍は約10万点で立ち上げ、来年中に約30万点とする予定。配信価格は紙の書籍より安い設定にするよう出版社側と協議中で、2015年には電子書籍事業で500億円の売り上げを目指す。
一方、グーグルは今夏から米国で始める配信サービス「グーグル・エディション」を、ほぼ半年後に日本へ導入する。同社の検索ソフトと連動して電子書籍の一部を無料で閲覧できる「グーグル・ブックス」を既に展開しているが、新サービスでは出版社の同意を得た書籍を有料で全ページ配信する。対応端末は限定せず、配信技術を他社に提供することも検討している。
調査会社のインプレスR&Dによると、国内の電子書籍市場が14年度に09年度比で2.3倍の1300億円に伸びる見込み。ソニーと凸版印刷、KDDI、朝日新聞社が手を組んだ共同出資会社やNTTドコモ、ソフトバンクも配信事業への参入を表明しており、まさに「アイパッドの発売で一気に火がついた」(出版業界関係者)格好だ。
共通規格の整備へ
こうした動きが相次ぐ背景には、米国の市場を握る米アマゾン・ドット・コムとアップルの存在がある。著作者との交渉から自社の端末への配信までを自らのネットワークですべて網羅しようとする「黒船」がやってくる前に、従来の出版流通システムを保った仕組みを国内の電子書籍でも整えたいという思惑が、大手出版社などには強い。
ただ、電子書籍の端末やサービスによって読める本の分野や規格が違ったり、決済が煩雑になったりすると読者側の混乱を招く恐れもある。出版社や印刷会社は規格や流通の仕組みの整備に乗り出しているが、「いずれはサービスの淘汰(とうた)が待っているのではないか」との指摘もある。(森川潤)
民主、野党と「部分連合」探る 政策協議巡り駆け引き
自民・みんなは慎重
参院選での大敗を受け、政府・民主党は12日、態勢の立て直しを急いだ。菅直人首相は参院で与党が過半数割れした事態の打開に向け、政策ごとに野党と連携する部分連合(パーシャル連合)を探る。自民党やみんなの党は慎重で、政策協議を巡る駆け引きが始まっている。民主内では首相が続投を明言した枝野幸男幹事長らの責任論が今後強まる可能性があり、執行部は警戒している。
菅首相との会談のため首相公邸に入る民主党の枝野幹事長(12日午前)
首相は同日午前、首相公邸で仙谷由人官房長官、民主の枝野幹事長、樽床伸二国会対策委員長、玄葉光一郎政調会長らと今後の対応を協議。野党への政策協議の呼びかけなど国会運営や、2011年度予算編成など当面の課題に結束して当たるよう指示した。首相は午前から午後にかけて公邸にこもりっきりだった。
参院選では民主が44議席にとどまった。連立を組む国民新党は議席を得られず、与党系の無所属の非改選を合わせても与党で110議席と過半数に12議席足りない。与党は衆院で憲法59条に定める再議決が可能な3分の2を持っていないため、参院で多数派工作を進め、過半数を確保しなければ野党の対応次第で法案が一本も通らなくなる。
民主は国民新との連立を維持したうえで、部分連合の相手としてみんなの党や社民党、たちあがれ日本などを念頭に置く。首相は12日未明の記者会見で「やれるところから政策的に共同作業を進めていく」と表明。仙谷長官は同日午前の記者会見で「政策議論を尽くしてより良い合意形成を生んでいく」と語った。
野党側は今のところ与党との政策協議には慎重だ。自民党の茂木敏充幹事長代理は同番組で「バラマキの尻ぬぐいに使われては困るので、まずは(民主の)マニフェストの撤回から始めるべきだ」と条件を付けた。
一方、みんなの党の渡辺喜美代表は午前の記者会見で「アジェンダ(政策課題)が一致すればいい」と含みを残した。ただ消費税増税には反対の立場を貫く構えで、首相が意欲を示す税制の抜本改革に向けた超党派協議は調整が難航しそうだ。
一方、民主内では惨敗の原因が首相の「消費税発言」にあるとして、小沢一郎前幹事長のグループを中心に、首相の退陣論や執行部の刷新を求める声がくすぶっている。
首相は12日未明の記者会見で、自らの続投とともに、枝野幹事長についても「これからも職務を全うしてもらいたい」と党内の交代論を退けた。仙谷長官も「厳しい批判を謙虚に受け止め、解決していくことこそが本来の政治だ」と語った。
【東京新聞社説】
与党過半数割れ 『ねじれ』解く知恵絞れ
2010年7月12日
参院選は与党過半数割れに終わった。衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」の再現だ。停滞を避けるには、ねじれを解くために知恵を絞るしかあるまい。
昨年八月三十日の衆院選で、有権者が自民党から民主党への政権交代を選択してから約十カ月。再び「選挙の夏」がやってきた。
民主党に政権を託したのは正しかったのか、菅直人民主党新代表は首相にふさわしいのか-。
有権者がさまざまな思いを、選挙区と比例代表のそれぞれの一票に託したことだろう。
そして有権者が出した結論は、「与党の過半数割れ」だった。
◆誤算だった消費税
鳩山由紀夫前首相が「政治とカネ」と米軍普天間飛行場の返還問題をめぐる混乱の責任を取る形で突然辞任。参院選勝利を優先した「政権たらい回し」との批判を浴びながらも、後を継いだ菅内閣の支持率は発足当初60%を超えた。
しかし、高支持率は長くは続かず、厳しい選挙結果になって表れた。その最大の誤算が「消費税」にあったことは、菅首相や民主党が認めている通りだ。
消費税は歴代政権の命運を決定付けてきた政治的難題である。八百兆円を超える国と地方の長期債務残高を前に、首相が消費税論議の必要性を選挙で訴えた問題意識自体は理解できなくもない。
ただ、最終的には増税が避けられないにしても、税金の無駄遣いをなくしてからというのが有権者の率直な思いではなかったか。
消費税問題をいきなり持ち出した唐突さを、有権者は嫌った。
鳩山前内閣時代を含む民主党政権の約十カ月間も問われた。
政治主導の政策決定、「コンクリートから人へ」の予算配分、行政の無駄排除、緊密で対等な日米関係など、マニフェスト政策を実現する政権担当能力に、有権者は厳しい中間評価を下した。
◆国民本位の協力を
通常国会終盤には強引な国会運営も目立った。有権者は、そうした民主党の「暴走」に歯止めをかけようとしたのだろう。
首相は記者会見で「あらためてスタートラインに立った気持ちで責任ある政権運営を続けたい」と続投の意向を表明した。
とはいえ参院での国会運営は厳しくなり、手を打たなければ、国政の停滞は避けられない。
予算や条約は参院で否決されても、衆院で可決すればその議決が優先されるが、法案は両院で可決されなければ成立しないからだ。
二〇〇七年の前回参院選で当時与党の自民、公明両党が過半数を失い、福田、麻生両内閣は国会運営に苦しんだが、それでも衆院では三分の二以上の議席があり、再議決という手段が残されていた。
今は民主、国民新両党を合わせても衆院の議席は三分の二に満たず、状況は福田、麻生両内閣当時よりも厳しくなっていることは否定のしようがない。
ではどう打開するのか。
連立の枠組みを替えるのが一つの手段だが、民主党が連立相手として想定している公明党とみんなの党はいずれも連立を否定しており、現時点では可能性は低い。
ならば、当面は政策ごとに野党と連携する「部分連合」でしのぐしかあるまい。
来年度予算編成に向けた本格的な作業が近く始まる。厳しい財政状況下で真に国民に必要な施策をどう実現するかは、与野党の枠を超えて取り組むべき課題だ。財政健全化や年金などの社会保障、普天間問題や「政治とカネ」にどう臨むかも同様である。
政権交代が当然のように起こる時代では与党が参院では必ずしも多数党となり得ないことを、ここ数回の参院選は示す。
自民党の谷垣禎一総裁は衆院解散を求める一方、民主党との協議に応じる余地も残したが、野党側も国民のために協力を惜しむべきでないのは当然だ。与野党がともに課題解決の作業を重ねれば、政治は強くなるに違いない。
その前提として民主党が一致して難局に臨むことが肝要だ。
参院選結果を受け、小沢一郎前幹事長を支持するグループと「反小沢」派の対立が再燃する兆しがあるが、国民そっちのけの党内抗争は繰り返すべきではない。
◆再び「良識の府」に
「良識の府」と呼ばれ無所属議員の多かった参院も、自民党政権時代を通じて政党化が進み、今では政権の命運をも左右する「政局の府」と呼ばれ始めている。
その実態が国政停滞の主因となっているなら見過ごせない。
政党色を薄め、より議員個人の意思を尊重する、採決で党の方針決定に従う「党議拘束」をやめるなどして再び「良識の府」への道を歩み出してはどうか。今回の選挙結果がその契機になるのなら、意義は十分見いだせる。
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ゲーム産業を支える産官学のハッピーな関係
カナダ・バンクーバー地域のゲーム産業を視察して、日本との違いを感じたことの1つは、「知識労働者(Knowledge Worker)」という考え方の定着ぶりである。バンクーバーがゲーム産業のクラスター(集積)地域としてどのように競争力を高めているのかを、このキーワードから読み解いていこう。
ゲーム開発者は知識労働者
経営学者のP.F.ドラッカーは、「ネクスト・ソサエティ」(ダイヤモンド社)の中で、「知識労働者の特質は、自らを労働者ではなく専門家とみなすことにある」とし、知識労働者に不可欠な2つの教育を挙げている。1つは、知識労働者としての知識を身につけるための学校教育であり、もう1つは知識労働者としての知識を最新に保つための継続教育である。
日本では、ゲーム産業は「娯楽」や「おもちゃ」という枠組みに入れられることが多い。しかし、現代のゲーム産業は数多くの専門知識で成り立っている。高度な専門教育を受けた知識労働者が求められる知識産業なのである。
バンクーバーに限らず、日本とカナダのゲーム産業に対する認識の決定的な違いはここにある。カナダの政府関係者は当たり前のように「知識労働者」という単語を使う。少なくともカナダでは、ゲーム開発は単なる「娯楽」に関わる仕事ではない。
専門大学院に企業も協力
バンクーバーでは、ゲーム産業の強さを維持するためには優秀な教育機関を持ち、高度なスキルを持った人材を育てていく必要があるとの認識が、産官学にしっかりと根付いている。
その象徴が、2007年にスタートした「Centre for Digital Media」だ。これはゲーム、映画などデジタルメディア教育の専門大学院で、現地の総合大学であるブリティッシュコロンビア大学とサイモン・フレーザー大学、それにエミリー・カー美術大学、技術系の公立職業訓練校BCITの4校の学生が進学する。定員は70人で、専門分野の異なる人材が集まり実践的な教育を受けられる環境が特徴だ。
もともと、バンクーバー地域最大のゲーム開発スタジオを持つエレクトロニックアーツ(EA)が中心となり、人材育成の必要を行政に働きかけたのがきっかけだった。これを受けて、ブリティッシュコロンビア州政府が06年に約40億円の設立予算を拠出し、この大学院が作られた。現在は行政からの直接的な援助はなく、授業料と企業などからの寄付金によって運営されている。
現地のゲーム会社やCGスタジオなどに在籍している人材が、教育に深く関わっている点でも特徴がある。特にEAはゲーム開発者を養成するためのカリキュラム開発まで手がけたという。
家庭用ゲーム機市場の低迷で、最近はバンクーバー地域でも多くのゲーム開発スタジオがリストラを実施しているが、「学生が就職先に困るということはない」とエグゼクティブディレクターのゲリー・シンクレア氏は語る。米ピクサーなど大手CGスタジオが進出したことで、デジタルメディア産業では常に人材が不足しているという。起業支援のプログラムは特に用意していないが、卒業生が設立したベンチャー企業はすでに7社に上っている。
狭い都市だから強い「コミュニティー」
バンクーバーは都市の中心部がそれほど広くない。ダウンタウンの中心部は徒歩15分程度でほとんど歩いて回れるし、少し離れたところでも地下鉄で30分ほどしかかからない。街中を歩いていて、友人同士が偶然出会って挨拶するといった姿をよく見かけた。これは東京のような巨大都市ではありえないことだ。
バンクーバーで産業クラスターが発展した理由として、多くの人が挙げるのが「コミュニティーの強さ」だった。お互いがお互いのことを知っている環境では、新しいビジネスを起こすときに協力者や助言役を見つけやすく、リストラ時にはセーフティーネットとしても機能する。
滞在中に、たまたま「SIGGRAPHバンクーバー支部」という組織の月例会合があったので参加した。SIGGRAPHは米国のCG分野の学会組織だが、独立した支部が北米地域を中心に存在する。SIGGRAPHバンクーバーは月に1~2度の勉強会を行っており、毎回100~150人が参加しているという。その日は映画館を借り切り、映画「アリス・イン・ワンダーランド」のCGによるキャラクターデザイン手法についてメイキング講演が行われ、最後に映画を鑑賞して深夜に終わるという構成だった。
SIGGRAPHバンクーバーは、現地のCGスタジオやゲーム会社、ベンチャーキャピタリストなどが中心となって運営している。ビジネスや技術の情報を常に交換できるこうした環境が、クラスター地域の下支えとなっている。
産業界が要望したゲーム開発減税
ブリティッシュコロンビア州は今年2月、ゲーム開発会社向けの新たな減税措置を9月1日に導入すると発表した。同州で「ビデオゲーム開発」に携わる労働者にかかるコストの17.5%相当を減税するという新しい政策だ。
この減税は、産業界の要望で実現した。ディズニーインタラクティブカナダのハワード・ドナルドソン副社長が地元の主要ゲーム会社13社に呼びかけて「BCインタラクティブ」という経営者団体を組織し、週1回のミーティングで政策提言の素案を作り、行政に働きかけたという。
カナダ国内では、バンクーバーだけでなく他の都市や州もゲーム開発スタジオの誘致に力を入れている。この10年でゲームクラスター地域として急成長したモントリオールがあるケベック州は、最大37.5%もの給与を直接負担する仕組みを持つ。自動車産業など製造業の業績悪化でトロントが疲弊しているオンタリオ州は今年6月、景気刺激策として仏UBIの開発スタジオに今後10年間で2億6300万カナダドルを投じると発表した。このスタジオは約800人規模で、同社の看板タイトルの1つ「スプリンターセル」シリーズを開発している。
そのため、ブリティッシュコロンビア州の減税は、他の2州に比べてまだ不十分という意見がある。しかし、北米のゲーム、映画産業の中心地でありベンチャーキャピタルなどの投資も活発なカリフォルニア州に近い西海岸地域という地の利があり、「少なくとも、他の地域と競争できる状態にはなる」と、ドナルドソン氏は期待を寄せていた。
地の利を生む戦略が重要に
ブリティッシュコロンビア州も90年代までは、大学で専門教育を受けても就職先がなく、多くの優秀な学生が米国に流出していた。しかし、行政もデジタルメディア産業の育成に本腰を入れるようになったことで、米国からゲーム開発者がUターンする現象も起きているという。さらに、移民の条件を緩和するなどして、米国から優秀な人材を呼び込もうともしている。
ゲーム開発は、本質的には場所を選ばない。人がすべてだ。だからこそ、バンクーバーのように産官学や地域コミュニティーが綿密に連携し、地の利を生み出す成長戦略がより重要になるのである。
与党大敗、過半数割れ…民主40議席台に
第22回参院選は11日、投票が行われ、即日開票された。
昨年9月に民主党が政権を獲得して以降、初の全国規模の国政選は、民主、国民新の連立与党が非改選議席を含め参院の過半数(122議席)を割り込み、大敗した。
民主党は菅首相の設定した勝敗ラインの改選議席(54議席)を下回り、40議席台にとどまった。改選定数1の1人区で自民党に大きく負け越し、選挙区全体でも水をあけられた。
自民党は堅調で、改選議席(38議席)を超えて50議席台となり、改選第1党になった。
みんなの党は順調に議席を積み重ね、躍進した。首相は引き続き政権を担う意向を表明したが、民主党では首相と執行部の責任を問う声があがっている。同党は他党に連携を呼び掛けるなど、参院での多数派確保のための動きを始めた。ただ、野党には現状での連携に慎重論が強く、困難な国会運営を強いられそうだ。
消費増税論議、失速の懸念高まる 与党過半数割れで
参院選で与党が過半数を割り込んだことで、菅直人首相が前のめりで打ち出した消費税増税の議論が失速する可能性が高まった。自民党などが対決姿勢を強めることが確実なためだ。増税で獲得した財源を成長分野に集中投資し、「強い経済、強い財政、強い社会保障」を実現するとした菅首相の「第三の道」路線も停滞を余儀なくされそうだ。
消費税について、首相は参院選で与野党協議を呼びかけてきた。だが、首相が参考にするとした税率10%を掲げた自民党は「与野党協議は民主党のばらまき政策の撤回が前提だ」(谷垣禎一総裁)と主張。独り勝ちとなったみんなの党も消費税の増税には反対するなど各党の隔たりは大きく、与野党協議の実現は困難な情勢だ。
また、首相が消費税増税を争点化させたことで厳しい選挙結果になったことを受け、民主党内の増税慎重派が勢いを増せば、論議自体が仕切り直しとなる可能性も十分にある。
首相は消費税増税と合せて、所得税の最高税率引き上げや法人税率の引き下げにも前向きな姿勢だったが、一連の税制論議に影響が及ぶことは確実。その場合、ただでさえ主要国で最大の借金を抱える日本の財政に対する市場の評価はさらに厳しくなりそうだ。
政府は7月下旬までに概算要求の基本方針を策定する予定だが、このまま政権運営が不安定化すれば、予算編成作業にも影響が及びそうで、菅首相が“生煮え”で持ち出した消費税問題の代償は大きい。
NEC、人事業務を中国移管 コスト減へ10万人分
まず給与計算や出張費精算
NECはグループ全体の7割にあたる10万人分の人事関連業務を中国にある子会社に移管する。人件費やオフィス費用などが安い中国に移すことで、該当する業務のコスト半減を狙う。間接業務の中国への移管はソニーやヤマト運輸など国内企業に広がりつつあるが、規模ではNECが最大とみられる。生産や開発などの現地化に加え、間接業務でも中国を戦略的に活用する動きが活発になってきた。
NECはまず給与計算や出張費の精算などの業務を移管。将来は財形貯蓄など福利厚生制度の利用登録、育児支援制度の申請内容のチェックなども担当させ、人事関連の業務量の4割程度を移す。社印が必要な証明書の発行などは日本に残す。
かつて30兆円市場を誇ったパチンコ業界、淘汰の時代へ
産業界の規模を表すものに「1兆円産業」という言葉があるが、パチンコ業界もピークだった1995年には市場規模が、30兆円と報じられた。しかしそんなパチンコ業界も、最近ではきびしい状況に直面している。
6月25日には、現代のパチンコ台の原形とされる「正村ゲージ」を開発したパチンコ店運営会社「正村商会」が、名古屋地裁に破産の申し立てを行うことが明らかになった。同社は、大手パチンコチェーンの出店攻勢によって経営が悪化したとみられている。今やパチンコ業界でも再編が行われる時代となり、大手のみが生き残る状況になりつつある。
帝国データバンクは2008年1月のレポートで、すでに趣味の多様化によるライトユーザーの減少のほか、貸し付けを年収の3分の1以下と制限する総量規制を盛り込んだ改正貸金業法により、借金をしてまでパチンコ店に通うヘビーユーザーは減少すると指摘していた。
改正貸金業法は今年6月18日に完全施行され、この指摘が現実化する。ある大手パチンコホール運営会社は今年1月、改正貸金業法が与える影響を試算し、6月の完全施行後、売上高が10%前後減少するという結果が出たという。
近年のパチンコ業界の一つの大きな転換点となったのは2007年。この年に「パチスロ5号機問題」と呼ばれる規制が行われた。大当たりの連チャンが人気だった4号機パチスロ機が撤去されたことで、射幸性の高いパチスロを好むユーザーの足がホールから遠のいた。
これによりパチンコホールは、機種入替のために多額の費用負担を強いられたが、金融機関・リース会社の融資意欲も一気に冷え込んだ。見込んでいた新規融資を受けられないといった事態に陥る業者が増え、パチンコ業界の倒産件数が2007年には96件、2008年には92件と高水準で続いた。
ホール側はファンを呼び戻すため、設置する遊技機をパチスロからパチンコに変更し、また「1円ぱちんこ」など、少ない資金で長く遊べることをうたう低貸玉営業に力を入れる店舗も多く見られるようになった。
各遊技機メーカーは生き残りをかけて、「北斗の拳」「新世紀エヴァンゲリオン」といった漫画やアニメ、特撮、ハリウッド映画といったキャラクターものから、韓国ドラマ冬のソナタ、歌手の倖田來未などの芸能人を起用したタイアップを多数展開している。芸能界ではタレントの神田うの、伊藤美咲などがパチンコチェーンやメーカーの社長と結婚するなど、華やかな側面も話題となっている。
その一方で毎年のように、パチンコホールの駐車場の車内に放置された子どもが、熱中症で死亡するといった事故が後を絶たない。パチンコ・パチスロの攻略法や、打ち子、モニターといった名目の詐欺も多発している。パチンコ依存症の問題もある。全日本遊技事業協同組合連合会は、こういった問題に対し、非営利の相談機関のリカバリーサポート・ネットワークの設立を支援するなど対処を行っているが問題は根深い。パチンコが健全な庶民の娯楽となる日は来るのだろうか。
フィギュア付けた男性誌、即日完売 休刊が相次ぐ中、付録付き雑誌だけが大人気
雑誌業界は1997年をピークに総販売額が減り続け、2010年に入ってからもその傾向は続いており、約60誌が部数の減少や広告収入の落ち込みなどで休刊を発表し、店頭から姿を消した。
そんな中、好調なのが付録付き雑誌だ。20代の若い女性をターゲットにした宝島社のファッション雑誌「sweet」は、ヤングアダルト・ミセス対象のレディース向け雑誌では、これまで何度も売り上げ1位を記録している。「sweet」は毎号ブランドとコラボしたバッグや小物が付録となっていることで知られている。
また、昨年11月には、宝島社はコスメティックブランド「イヴ・サンローラン・ボーテ」の付録付きのブランドムックを発売したが、この初版は同社の過去最高となる100万部だった。これに追随した各社は、こぞって「付録」で競い合っている状況だ。
ネット上では、このような付録付き女性誌の情報交換を行う「フロクナビ」も登場し、多くの読者から口コミが寄せられている。
最近では男性向け雑誌でも付録付きが増えつつある。美少女情報を紹介した雑誌「電撃G'smagazine」8月号では、美少女キャラクター「ねんどろいどぷち かなで」のフィギュアを付録に付けたところ、数日で売り切れとなった。またこの付録を大量に手に入れるため、同誌を数十冊も購入した男性がネット上で注目を集めた。
あたかも付録との主従関係が逆転してしまったような雑誌。インターネットや携帯端末の普及により、その存在意義が薄れつつある中、今後の動向に注目したい。
エクソンがBP買収検討か…英紙報道
【ロンドン=是枝智】11日付の英紙サンデー・タイムズは、米石油大手エクソンモービルが、メキシコ湾で原油流出事故を起こした英BPの買収を検討していると報じた。
買収総額は最大1000億ポンド(約13・3兆円)にのぼる可能性がある。実現すれば、時価総額が4000億ドル(約35・2兆円)を超える巨大石油会社が誕生するだけに今後の推移が注目される。
同紙は、オバマ米政権が10日、エクソンモービルや、シェブロンとみられる米石油大手に、BPの買収を阻まないと伝えたことなどを石油業界筋の話として紹介した。ただ、「実際に買収に動くかどうかは確実ではない」としている。
BPの株価は、事故前と比べて4割以上も値下がりしており、ライバル会社からの買収リスクが高まっていると指摘されている。BPは買収に対抗するため、中東の政府系ファンドなどに協力を求めたとされる。
参院選民主敗北 バラマキと迷走に厳しい審判(7月12日付・読売社説)
昨年夏の衆院選で政権交代を果たし、その後の政権運営の評価を問う民主党に対し、有権者は厳しい審判を下した。
11日投開票の参院選で民主党は、菅首相が目標に掲げた改選54議席を大きく下回り、敗北した。千葉法相も落選した。連立与党の議席も、非改選を含め過半数に届かなかった。
この結果、衆参両院で多数派が異なる「ねじれ国会」になる。民主党は、参院の過半数を確保するため、野党との連立を模索せざるを得ない状況だ。
菅首相は記者会見で「責任ある政権運営を続けたい」と、続投の意向を表明したが、求心力の低下は否めない。首相を含めた党執行部の責任問題が浮上する可能性もあり、混乱は避けられまい。
民主党の最大の敗因は、菅首相の消費税問題への対応だ。
自民党の消費税率10%への引き上げ公約に乗る形で税率引き上げに言及したが、税率アップの狙いや使途などについて十分説明を尽くさず、低所得者対策に関する発言も揺らいだ。
首相の方針に対して、民主党内から公然と批判が出るなど、党内不一致も露呈した。
無論、鳩山前首相、小沢一郎・前幹事長の「政治とカネ」の問題をはじめ、米軍普天間飛行場移設問題の迷走、子ども手当などバラマキ政策の行き詰まりなど、前政権の失政も響いた。
◆自民が改選第1党に◆
自民党は、今回の改選議席では民主党を上回った。公募による新人候補の擁立など選挙戦術も功を奏したとみられる。
もっとも、自民党が本格的に復調したと考えるのは早計だ。
民主党の敵失に乗じた面が大きく、比例選では民主党に及ばなかった。有権者は、民主党の“独走”を阻む役割を自民党に期待したのではないか。
みんなの党は、公務員の大幅削減や天下り根絶などを唱えて、2大政党にあきたらない人々の票を吸い上げ、躍進した。
しかし、今後は、その議席数にふさわしい責任を果たさねばならない。ポピュリズム(大衆迎合主義)的な政策や言動は、改めざるを得ないだろう。
キャスチングボートを握ることを目指していた渡辺代表は、今回の獲得議席を基に、政局を混乱させることがあってはなるまい。
◆消費税協議を進めよ◆
今回の選挙戦の特徴は、民主、自民の2大政党が、消費税率引き上げという増税論議を避けずに戦ったことである。
選挙中の本紙世論調査では、税率アップについて3人に2人が「必要」と答えていた。消費増税への理解は着実に進んでいるとみていいようだ。
菅首相は、選挙戦で消費税を含む税制の抜本改革に関する超党派の協議を呼びかけた。自民党も同種の「円卓会議」を主張した。
だが、子ども手当などのバラマキ政策を放置し、協議を開始するのは無理がある。これらの政策を見直したうえ、消費税率引き上げに向けて協議を進めることが政治の責任と言える。
民主、自民両党は互いに歩み寄って協議に入るべきだ。
普天間問題では、工法決定などの約束期限が8月末に迫っている。日米合意を誠実に履行し、日米関係を修復の軌道に乗せて、11月のオバマ米大統領の来日につなげる努力が欠かせない。
今回の参院選敗北を受けて、民主党内では、小沢前幹事長支持グループなどが、9月の党代表選に向けて、執行部への揺さぶりを強める可能性がある。
しかし、首相が、消費税や普天間の問題で示した方針を変更するようなことがあれば、国民の信頼を一層、失うだけだ。
鳩山前政権から大きく舵(かじ)を切った内政、外交の現実路線は、しっかり堅持すべきであろう。
民主党は、衆院では絶対安定多数を維持しているが、国民新党を加えても、参院で否決された法案を衆院で再可決するための3分の2以上の議席には達しない。
この点では、自民党の安倍、福田、麻生の歴代政権よりも、厳しい国会運営が迫られる。
◆連立は政策本位で◆
菅首相は記者会見で、野党との連立を視野に入れ、政策面の協議を行う考えを表明した。
その際、安全保障政策で隔たりのある社民党との連立が政治を混乱させたことを忘れてはなるまい。連立政権は、基本政策の一致を大前提とすることが肝要だ。
各野党は、次期衆院選をにらみ、連立政権には参加しないとしている。このため、閣外協力や、法案ごとに協力し合う「部分連合」も追求せざるを得ないだろう。
菅政権の前途には、臨時国会や党代表選など、多くのハードルが待ち構えている。
カナダ・バンクーバー地域のゲーム産業を視察して、日本との違いを感じたことの1つは、「知識労働者(Knowledge Worker)」という考え方の定着ぶりである。バンクーバーがゲーム産業のクラスター(集積)地域としてどのように競争力を高めているのかを、このキーワードから読み解いていこう。
ゲーム開発者は知識労働者
経営学者のP.F.ドラッカーは、「ネクスト・ソサエティ」(ダイヤモンド社)の中で、「知識労働者の特質は、自らを労働者ではなく専門家とみなすことにある」とし、知識労働者に不可欠な2つの教育を挙げている。1つは、知識労働者としての知識を身につけるための学校教育であり、もう1つは知識労働者としての知識を最新に保つための継続教育である。
日本では、ゲーム産業は「娯楽」や「おもちゃ」という枠組みに入れられることが多い。しかし、現代のゲーム産業は数多くの専門知識で成り立っている。高度な専門教育を受けた知識労働者が求められる知識産業なのである。
バンクーバーに限らず、日本とカナダのゲーム産業に対する認識の決定的な違いはここにある。カナダの政府関係者は当たり前のように「知識労働者」という単語を使う。少なくともカナダでは、ゲーム開発は単なる「娯楽」に関わる仕事ではない。
専門大学院に企業も協力
バンクーバーでは、ゲーム産業の強さを維持するためには優秀な教育機関を持ち、高度なスキルを持った人材を育てていく必要があるとの認識が、産官学にしっかりと根付いている。
その象徴が、2007年にスタートした「Centre for Digital Media」だ。これはゲーム、映画などデジタルメディア教育の専門大学院で、現地の総合大学であるブリティッシュコロンビア大学とサイモン・フレーザー大学、それにエミリー・カー美術大学、技術系の公立職業訓練校BCITの4校の学生が進学する。定員は70人で、専門分野の異なる人材が集まり実践的な教育を受けられる環境が特徴だ。
もともと、バンクーバー地域最大のゲーム開発スタジオを持つエレクトロニックアーツ(EA)が中心となり、人材育成の必要を行政に働きかけたのがきっかけだった。これを受けて、ブリティッシュコロンビア州政府が06年に約40億円の設立予算を拠出し、この大学院が作られた。現在は行政からの直接的な援助はなく、授業料と企業などからの寄付金によって運営されている。
現地のゲーム会社やCGスタジオなどに在籍している人材が、教育に深く関わっている点でも特徴がある。特にEAはゲーム開発者を養成するためのカリキュラム開発まで手がけたという。
家庭用ゲーム機市場の低迷で、最近はバンクーバー地域でも多くのゲーム開発スタジオがリストラを実施しているが、「学生が就職先に困るということはない」とエグゼクティブディレクターのゲリー・シンクレア氏は語る。米ピクサーなど大手CGスタジオが進出したことで、デジタルメディア産業では常に人材が不足しているという。起業支援のプログラムは特に用意していないが、卒業生が設立したベンチャー企業はすでに7社に上っている。
狭い都市だから強い「コミュニティー」
バンクーバーは都市の中心部がそれほど広くない。ダウンタウンの中心部は徒歩15分程度でほとんど歩いて回れるし、少し離れたところでも地下鉄で30分ほどしかかからない。街中を歩いていて、友人同士が偶然出会って挨拶するといった姿をよく見かけた。これは東京のような巨大都市ではありえないことだ。
バンクーバーで産業クラスターが発展した理由として、多くの人が挙げるのが「コミュニティーの強さ」だった。お互いがお互いのことを知っている環境では、新しいビジネスを起こすときに協力者や助言役を見つけやすく、リストラ時にはセーフティーネットとしても機能する。
滞在中に、たまたま「SIGGRAPHバンクーバー支部」という組織の月例会合があったので参加した。SIGGRAPHは米国のCG分野の学会組織だが、独立した支部が北米地域を中心に存在する。SIGGRAPHバンクーバーは月に1~2度の勉強会を行っており、毎回100~150人が参加しているという。その日は映画館を借り切り、映画「アリス・イン・ワンダーランド」のCGによるキャラクターデザイン手法についてメイキング講演が行われ、最後に映画を鑑賞して深夜に終わるという構成だった。
SIGGRAPHバンクーバーは、現地のCGスタジオやゲーム会社、ベンチャーキャピタリストなどが中心となって運営している。ビジネスや技術の情報を常に交換できるこうした環境が、クラスター地域の下支えとなっている。
産業界が要望したゲーム開発減税
ブリティッシュコロンビア州は今年2月、ゲーム開発会社向けの新たな減税措置を9月1日に導入すると発表した。同州で「ビデオゲーム開発」に携わる労働者にかかるコストの17.5%相当を減税するという新しい政策だ。
この減税は、産業界の要望で実現した。ディズニーインタラクティブカナダのハワード・ドナルドソン副社長が地元の主要ゲーム会社13社に呼びかけて「BCインタラクティブ」という経営者団体を組織し、週1回のミーティングで政策提言の素案を作り、行政に働きかけたという。
カナダ国内では、バンクーバーだけでなく他の都市や州もゲーム開発スタジオの誘致に力を入れている。この10年でゲームクラスター地域として急成長したモントリオールがあるケベック州は、最大37.5%もの給与を直接負担する仕組みを持つ。自動車産業など製造業の業績悪化でトロントが疲弊しているオンタリオ州は今年6月、景気刺激策として仏UBIの開発スタジオに今後10年間で2億6300万カナダドルを投じると発表した。このスタジオは約800人規模で、同社の看板タイトルの1つ「スプリンターセル」シリーズを開発している。
そのため、ブリティッシュコロンビア州の減税は、他の2州に比べてまだ不十分という意見がある。しかし、北米のゲーム、映画産業の中心地でありベンチャーキャピタルなどの投資も活発なカリフォルニア州に近い西海岸地域という地の利があり、「少なくとも、他の地域と競争できる状態にはなる」と、ドナルドソン氏は期待を寄せていた。
地の利を生む戦略が重要に
ブリティッシュコロンビア州も90年代までは、大学で専門教育を受けても就職先がなく、多くの優秀な学生が米国に流出していた。しかし、行政もデジタルメディア産業の育成に本腰を入れるようになったことで、米国からゲーム開発者がUターンする現象も起きているという。さらに、移民の条件を緩和するなどして、米国から優秀な人材を呼び込もうともしている。
ゲーム開発は、本質的には場所を選ばない。人がすべてだ。だからこそ、バンクーバーのように産官学や地域コミュニティーが綿密に連携し、地の利を生み出す成長戦略がより重要になるのである。
与党大敗、過半数割れ…民主40議席台に
第22回参院選は11日、投票が行われ、即日開票された。
昨年9月に民主党が政権を獲得して以降、初の全国規模の国政選は、民主、国民新の連立与党が非改選議席を含め参院の過半数(122議席)を割り込み、大敗した。
民主党は菅首相の設定した勝敗ラインの改選議席(54議席)を下回り、40議席台にとどまった。改選定数1の1人区で自民党に大きく負け越し、選挙区全体でも水をあけられた。
自民党は堅調で、改選議席(38議席)を超えて50議席台となり、改選第1党になった。
みんなの党は順調に議席を積み重ね、躍進した。首相は引き続き政権を担う意向を表明したが、民主党では首相と執行部の責任を問う声があがっている。同党は他党に連携を呼び掛けるなど、参院での多数派確保のための動きを始めた。ただ、野党には現状での連携に慎重論が強く、困難な国会運営を強いられそうだ。
消費増税論議、失速の懸念高まる 与党過半数割れで
参院選で与党が過半数を割り込んだことで、菅直人首相が前のめりで打ち出した消費税増税の議論が失速する可能性が高まった。自民党などが対決姿勢を強めることが確実なためだ。増税で獲得した財源を成長分野に集中投資し、「強い経済、強い財政、強い社会保障」を実現するとした菅首相の「第三の道」路線も停滞を余儀なくされそうだ。
消費税について、首相は参院選で与野党協議を呼びかけてきた。だが、首相が参考にするとした税率10%を掲げた自民党は「与野党協議は民主党のばらまき政策の撤回が前提だ」(谷垣禎一総裁)と主張。独り勝ちとなったみんなの党も消費税の増税には反対するなど各党の隔たりは大きく、与野党協議の実現は困難な情勢だ。
また、首相が消費税増税を争点化させたことで厳しい選挙結果になったことを受け、民主党内の増税慎重派が勢いを増せば、論議自体が仕切り直しとなる可能性も十分にある。
首相は消費税増税と合せて、所得税の最高税率引き上げや法人税率の引き下げにも前向きな姿勢だったが、一連の税制論議に影響が及ぶことは確実。その場合、ただでさえ主要国で最大の借金を抱える日本の財政に対する市場の評価はさらに厳しくなりそうだ。
政府は7月下旬までに概算要求の基本方針を策定する予定だが、このまま政権運営が不安定化すれば、予算編成作業にも影響が及びそうで、菅首相が“生煮え”で持ち出した消費税問題の代償は大きい。
NEC、人事業務を中国移管 コスト減へ10万人分
まず給与計算や出張費精算
NECはグループ全体の7割にあたる10万人分の人事関連業務を中国にある子会社に移管する。人件費やオフィス費用などが安い中国に移すことで、該当する業務のコスト半減を狙う。間接業務の中国への移管はソニーやヤマト運輸など国内企業に広がりつつあるが、規模ではNECが最大とみられる。生産や開発などの現地化に加え、間接業務でも中国を戦略的に活用する動きが活発になってきた。
NECはまず給与計算や出張費の精算などの業務を移管。将来は財形貯蓄など福利厚生制度の利用登録、育児支援制度の申請内容のチェックなども担当させ、人事関連の業務量の4割程度を移す。社印が必要な証明書の発行などは日本に残す。
かつて30兆円市場を誇ったパチンコ業界、淘汰の時代へ
産業界の規模を表すものに「1兆円産業」という言葉があるが、パチンコ業界もピークだった1995年には市場規模が、30兆円と報じられた。しかしそんなパチンコ業界も、最近ではきびしい状況に直面している。
6月25日には、現代のパチンコ台の原形とされる「正村ゲージ」を開発したパチンコ店運営会社「正村商会」が、名古屋地裁に破産の申し立てを行うことが明らかになった。同社は、大手パチンコチェーンの出店攻勢によって経営が悪化したとみられている。今やパチンコ業界でも再編が行われる時代となり、大手のみが生き残る状況になりつつある。
帝国データバンクは2008年1月のレポートで、すでに趣味の多様化によるライトユーザーの減少のほか、貸し付けを年収の3分の1以下と制限する総量規制を盛り込んだ改正貸金業法により、借金をしてまでパチンコ店に通うヘビーユーザーは減少すると指摘していた。
改正貸金業法は今年6月18日に完全施行され、この指摘が現実化する。ある大手パチンコホール運営会社は今年1月、改正貸金業法が与える影響を試算し、6月の完全施行後、売上高が10%前後減少するという結果が出たという。
近年のパチンコ業界の一つの大きな転換点となったのは2007年。この年に「パチスロ5号機問題」と呼ばれる規制が行われた。大当たりの連チャンが人気だった4号機パチスロ機が撤去されたことで、射幸性の高いパチスロを好むユーザーの足がホールから遠のいた。
これによりパチンコホールは、機種入替のために多額の費用負担を強いられたが、金融機関・リース会社の融資意欲も一気に冷え込んだ。見込んでいた新規融資を受けられないといった事態に陥る業者が増え、パチンコ業界の倒産件数が2007年には96件、2008年には92件と高水準で続いた。
ホール側はファンを呼び戻すため、設置する遊技機をパチスロからパチンコに変更し、また「1円ぱちんこ」など、少ない資金で長く遊べることをうたう低貸玉営業に力を入れる店舗も多く見られるようになった。
各遊技機メーカーは生き残りをかけて、「北斗の拳」「新世紀エヴァンゲリオン」といった漫画やアニメ、特撮、ハリウッド映画といったキャラクターものから、韓国ドラマ冬のソナタ、歌手の倖田來未などの芸能人を起用したタイアップを多数展開している。芸能界ではタレントの神田うの、伊藤美咲などがパチンコチェーンやメーカーの社長と結婚するなど、華やかな側面も話題となっている。
その一方で毎年のように、パチンコホールの駐車場の車内に放置された子どもが、熱中症で死亡するといった事故が後を絶たない。パチンコ・パチスロの攻略法や、打ち子、モニターといった名目の詐欺も多発している。パチンコ依存症の問題もある。全日本遊技事業協同組合連合会は、こういった問題に対し、非営利の相談機関のリカバリーサポート・ネットワークの設立を支援するなど対処を行っているが問題は根深い。パチンコが健全な庶民の娯楽となる日は来るのだろうか。
フィギュア付けた男性誌、即日完売 休刊が相次ぐ中、付録付き雑誌だけが大人気
雑誌業界は1997年をピークに総販売額が減り続け、2010年に入ってからもその傾向は続いており、約60誌が部数の減少や広告収入の落ち込みなどで休刊を発表し、店頭から姿を消した。
そんな中、好調なのが付録付き雑誌だ。20代の若い女性をターゲットにした宝島社のファッション雑誌「sweet」は、ヤングアダルト・ミセス対象のレディース向け雑誌では、これまで何度も売り上げ1位を記録している。「sweet」は毎号ブランドとコラボしたバッグや小物が付録となっていることで知られている。
また、昨年11月には、宝島社はコスメティックブランド「イヴ・サンローラン・ボーテ」の付録付きのブランドムックを発売したが、この初版は同社の過去最高となる100万部だった。これに追随した各社は、こぞって「付録」で競い合っている状況だ。
ネット上では、このような付録付き女性誌の情報交換を行う「フロクナビ」も登場し、多くの読者から口コミが寄せられている。
最近では男性向け雑誌でも付録付きが増えつつある。美少女情報を紹介した雑誌「電撃G'smagazine」8月号では、美少女キャラクター「ねんどろいどぷち かなで」のフィギュアを付録に付けたところ、数日で売り切れとなった。またこの付録を大量に手に入れるため、同誌を数十冊も購入した男性がネット上で注目を集めた。
あたかも付録との主従関係が逆転してしまったような雑誌。インターネットや携帯端末の普及により、その存在意義が薄れつつある中、今後の動向に注目したい。
エクソンがBP買収検討か…英紙報道
【ロンドン=是枝智】11日付の英紙サンデー・タイムズは、米石油大手エクソンモービルが、メキシコ湾で原油流出事故を起こした英BPの買収を検討していると報じた。
買収総額は最大1000億ポンド(約13・3兆円)にのぼる可能性がある。実現すれば、時価総額が4000億ドル(約35・2兆円)を超える巨大石油会社が誕生するだけに今後の推移が注目される。
同紙は、オバマ米政権が10日、エクソンモービルや、シェブロンとみられる米石油大手に、BPの買収を阻まないと伝えたことなどを石油業界筋の話として紹介した。ただ、「実際に買収に動くかどうかは確実ではない」としている。
BPの株価は、事故前と比べて4割以上も値下がりしており、ライバル会社からの買収リスクが高まっていると指摘されている。BPは買収に対抗するため、中東の政府系ファンドなどに協力を求めたとされる。
参院選民主敗北 バラマキと迷走に厳しい審判(7月12日付・読売社説)
昨年夏の衆院選で政権交代を果たし、その後の政権運営の評価を問う民主党に対し、有権者は厳しい審判を下した。
11日投開票の参院選で民主党は、菅首相が目標に掲げた改選54議席を大きく下回り、敗北した。千葉法相も落選した。連立与党の議席も、非改選を含め過半数に届かなかった。
この結果、衆参両院で多数派が異なる「ねじれ国会」になる。民主党は、参院の過半数を確保するため、野党との連立を模索せざるを得ない状況だ。
菅首相は記者会見で「責任ある政権運営を続けたい」と、続投の意向を表明したが、求心力の低下は否めない。首相を含めた党執行部の責任問題が浮上する可能性もあり、混乱は避けられまい。
民主党の最大の敗因は、菅首相の消費税問題への対応だ。
自民党の消費税率10%への引き上げ公約に乗る形で税率引き上げに言及したが、税率アップの狙いや使途などについて十分説明を尽くさず、低所得者対策に関する発言も揺らいだ。
首相の方針に対して、民主党内から公然と批判が出るなど、党内不一致も露呈した。
無論、鳩山前首相、小沢一郎・前幹事長の「政治とカネ」の問題をはじめ、米軍普天間飛行場移設問題の迷走、子ども手当などバラマキ政策の行き詰まりなど、前政権の失政も響いた。
◆自民が改選第1党に◆
自民党は、今回の改選議席では民主党を上回った。公募による新人候補の擁立など選挙戦術も功を奏したとみられる。
もっとも、自民党が本格的に復調したと考えるのは早計だ。
民主党の敵失に乗じた面が大きく、比例選では民主党に及ばなかった。有権者は、民主党の“独走”を阻む役割を自民党に期待したのではないか。
みんなの党は、公務員の大幅削減や天下り根絶などを唱えて、2大政党にあきたらない人々の票を吸い上げ、躍進した。
しかし、今後は、その議席数にふさわしい責任を果たさねばならない。ポピュリズム(大衆迎合主義)的な政策や言動は、改めざるを得ないだろう。
キャスチングボートを握ることを目指していた渡辺代表は、今回の獲得議席を基に、政局を混乱させることがあってはなるまい。
◆消費税協議を進めよ◆
今回の選挙戦の特徴は、民主、自民の2大政党が、消費税率引き上げという増税論議を避けずに戦ったことである。
選挙中の本紙世論調査では、税率アップについて3人に2人が「必要」と答えていた。消費増税への理解は着実に進んでいるとみていいようだ。
菅首相は、選挙戦で消費税を含む税制の抜本改革に関する超党派の協議を呼びかけた。自民党も同種の「円卓会議」を主張した。
だが、子ども手当などのバラマキ政策を放置し、協議を開始するのは無理がある。これらの政策を見直したうえ、消費税率引き上げに向けて協議を進めることが政治の責任と言える。
民主、自民両党は互いに歩み寄って協議に入るべきだ。
普天間問題では、工法決定などの約束期限が8月末に迫っている。日米合意を誠実に履行し、日米関係を修復の軌道に乗せて、11月のオバマ米大統領の来日につなげる努力が欠かせない。
今回の参院選敗北を受けて、民主党内では、小沢前幹事長支持グループなどが、9月の党代表選に向けて、執行部への揺さぶりを強める可能性がある。
しかし、首相が、消費税や普天間の問題で示した方針を変更するようなことがあれば、国民の信頼を一層、失うだけだ。
鳩山前政権から大きく舵(かじ)を切った内政、外交の現実路線は、しっかり堅持すべきであろう。
民主党は、衆院では絶対安定多数を維持しているが、国民新党を加えても、参院で否決された法案を衆院で再可決するための3分の2以上の議席には達しない。
この点では、自民党の安倍、福田、麻生の歴代政権よりも、厳しい国会運営が迫られる。
◆連立は政策本位で◆
菅首相は記者会見で、野党との連立を視野に入れ、政策面の協議を行う考えを表明した。
その際、安全保障政策で隔たりのある社民党との連立が政治を混乱させたことを忘れてはなるまい。連立政権は、基本政策の一致を大前提とすることが肝要だ。
各野党は、次期衆院選をにらみ、連立政権には参加しないとしている。このため、閣外協力や、法案ごとに協力し合う「部分連合」も追求せざるを得ないだろう。
菅政権の前途には、臨時国会や党代表選など、多くのハードルが待ち構えている。
小野寺正 KDDI社長兼会長 ロングインタビュー
「もう一度、“戦う会社”に戻したい」
NTTはともかく、ソフトバンクの孫正義社長の快進撃で、その影に隠れていた感のあるKDDIの小野寺正社長兼会長。そんななかで、通信業界におけるチャレンジャーの元祖である小野寺社長が、大企業病、通信事業者の矜持、J:COM騒動、後継者問題などを存分に語ってくれた。
―最近のKDDIには、かつての“勢い”が感じられない。通信業界では、そのような指摘がある。小野寺さんは、“絶頂期”と比較して、現在の状況をどう見ているか?
これまで、KDDIには絶頂期はなかったと思う。
確かに、移動体通信(携帯電話)が急速に普及した1990年代後半や、2002~03年に第3世代携帯電話(3G)の立ち上げでNTTドコモに先行したこと、そして06年に「番号ポータビリティ制度」が導入された直後などは他社からの転入も多く、調子がよかった。
とりわけ、日本で最初に第3世代携帯電話を市場に投入して独走状態だった頃は、auの販売台数が一気に伸びた。当時最先端だった3Gのネットワーク(インフラ)を構築して、そこに魅力的な端末と各種のサービスを組み合わせて提供できたことで、会社も大きく成長することができた。
ところが、現在の状況について言えば、インフラでは競合他社も3Gネットワークを構築しているので、それほどの差がなくなってきている。そして、端末や各種のサービスについても、競合他社と似てきている。それが、お客様にとっての“目新しさ”を失うことにつながっていると思う。
―なぜ、そのような状況になってしまったのか?
KDDIという会社が“保守的”になってしまったからだ。全体がそうなってしまった。
本来であれば、会社が成長している時に、さまざまな改革に着手することが必要だと思う。だが、調子のよい時は、さらに伸ばしていくための活動を優先してしまうので、結果的に、改革が“後回し”になってしまう。
そういう時は、誰もが「調子がよいのに、何で変える必要があるの?」と考えがちだ。だが、お客様から見て目新しさがなくなっているという現在の状況を考えれば、成長している時に、もっと強引にでも「変えなければならなかったことを変えられなかった」というのが、勢いを失った本当の理由だろう。過去の“成功体験”が足を引っ張っている。そこに尽きる。
―では、どのようにして、現在の失速ムードを打破するのか?すでに営業利益で、業界3位が定位置だったソフトバンクに追い抜かれた。彼らは、米アップルのiPhoneという強力な“商材”を手にして快進撃を続けているが、その一方でKDDIはスマートフォン(多機能携帯電話)の投入で、明らかに出遅れた。
それは事実だ。そうなってしまったのは、これまでKDDIが手掛けてきたサービスに、こだわり過ぎたことが大きい。
たとえば、端末にはKDDIの「LISMO」(携帯電話とPCを組み合わせて音楽の配信などができるサービス)を搭載することを考えたり、現在の「SIMカード」(契約者を識別するためのモジュール)を使う方法を考えたりしていた。さらに、販売施策では、全国各地のauショップにおいて、すべて同じ端末のラインアップを揃えるという販売方法に固執していたこともある。
やはり、社員のメンタルの問題が大きい。現状を打破するには、過去に築いてきた技術や成功体験にしばられずに、変えるべき点は変えていく必要がある。試行錯誤の段階なので、まだ詳しくは話せないが、ようやく過去のスタイルと決別しようと動き始めた。
一例だけ挙げると、製品やサービスによって、適宜、端末を置く店舗や販売する方法などを変えていく。すべてを一気に変えることはしないが、毎回毎回最も適したやり方に変えていく。
携帯マルチディア放送は放送と付いても通信の話
─2011年7月にテレビ放送が地上デジタル放送へ移行することにより、アナログ放送の周波数の一部に空きが出る。その“跡地”をめぐり、NTTドコモなどの「マルチメディア放送」陣営と、KDDIなどの「メディアフロージャパン企画」陣営が“一つの認定枠を争う”という状態にある。下馬評では、「ドコモ優勢」とされるが、どう見ているか?
正直いって、理由がわからない。
KDDIは、05年12月の段階で、(将来的に放送の周波数を活用するための)メディアフロージャパン企画という子会社を立ち上げ、事業化に向けた取り組みを続けてきた。すでに、実験基地局の設備や端末、そして内蔵するチップセットを開発している。“実験機”も世間に公開してきた。
一方で、08年12月から動き出したドコモは、3G(第3世代携帯電話)やLTE(3・9世代携帯電話)などの新技術導入時とは異なり、今回は技術の詳細を公開していない。そのようなクローズドな状況で事業計画の認定に向けた手続きが進むことに対して、私は危機感を感じている。
─ドコモは、今年3月に「ISDB‐Tmm方式」のデモンストレーションを公開したが、確かにKDDIの「メディアフロー方式」のように公開実証実験をしていない。また、その技術を開発した米クアルコム社が米国で展開しているように、実際のサービスが開始されているわけでもない。
ドコモが採用するISDB‐Tmm方式は、名称が地上デジタル放送(ISDB‐T)と似ていることから、同じような方式だと誤解を与えるが、技術的に2つは別物である。ドコモとしては、地デジが南米などの海外で受け入れられたこともあり、その流れに乗りたいのだろう。
だが、地デジは、日本の技術が認められたから受け入れられたのであって、これまでになんの実績もない日本国内向けのISDB‐Tmm方式が受け入れられるかどうかは、まったく別の話だ。
その点で、メディアフロー方式は、5年間で約1000億円、年間200億円という無理のない投資計画になっているし、事業の実現性を示してもいる。大体、すでに実績があるものと、計画段階のものを比較して、「技術的に差がない」としている総務省の判断には疑問を持っている。
―もしかしたら、第3世代携帯電話で、ドコモとソフトバンクが同じ「W-CDMA方式」で、KDDI(au)だけが「CDMA2000方式」という違う技術を採用していることも、どこか影響しているのではないか?
傍目には、彼らのほうが“多数派”で有利な存在に見えるのかもしれない。だが、携帯マルチメディア放送というものは、携帯電話の世界と異なり、通信インフラの種類を問わずにサービスを搭載できる点が優れている。ここは誤解も多いので、強調しておきたい。
たとえば、すでに商用化されている米国では、auの携帯電話と同じ技術方式を採用している業界1位のベライゾン・ワイヤレスと、ドコモやソフトバンクと同じ技術を採用している業界2位のAT&Tワイヤレスが、メディアフロー方式を採用している。すなわち、日本の状況に置き換えれば、どこの通信事業者の端末でも使えるということと同じである。
そもそも、携帯マルチメディア放送は、「放送の電波を通信の一部として使いたい」という構想から出発していた。“放送”というカテゴリーに含まれているが、実質的には“通信”の話である。
そして、将来的には、これまでのインターネットのように「自ら情報を取りに行く」(プル型)のではなく、「自動で情報が届けられる」(プッシュ型)というスタイルが“大きな流れ”になる。だから、契約している人だけに特定の情報を送り届けられるメディアフローの仕組みは、必ず必要になる。
─しかしながら、総務省は、この7月中にも、メディアフロー方式か、ISDB‐Tmm方式のどちらかの事業者に免許を与えるとされている。
やはり、オープンな場で、技術の比較審査を進めてほしい。
繰り返すが、メディアフロー方式は、米国を中心に世界で実用化されており、端末も商用化されている技術である。さらに、日本の携帯電話でも利用できるように、携帯端末向けマルチメディア放送(メディアフロー)と、ワンセグ(地デジ)をデュアルで搭載できるチップセットも準備しているので、すぐに商品化にも移れる。
メディアフローは、国内限定の技術ではなく、国際標準の技術だ。KDDIは、メディアフロージャパン企画が免許を受けて事業会社化する際には、競合事業者に対しても技術をオープンにしたいと考えている。さらに、通信インフラを問わないプラットフォームなので、どこのキャリアの携帯端末にも搭載できる。ドコモやソフトバンクの資本参加も歓迎する。
米国を皮切りに、すでに20カ国でメディアフローの導入が検討されている。そんななかで、日本の携帯マルチメディア放送だけが世界から“孤立した状態”になるのではないかと懸念している。
インフラを持ち設備で競争する
―では、「NTTの2010年問題」が風化しつつあるなかでも、KDDIは自らインフラ構築に取り組み続けている。その理由を聞く前に、日本の電気通信市場の競争環境は、どのような段階を経て変化してきたのか、簡単に説明してほしい。
まず、1985年の「通信の自由化」(NTTの民営化)がある。この第1段階で、それまで国内に存在しなかった“競争”が起きたことで、諸外国に比べて高かった日本の「市外電話」と「国際電話」の料金が劇的に下がった。
次に、88年に「移動体通信」の世界で競争が導入されて、異業種の新規参入事業者が増えた。この第2段階は、移動体通信がアナログ方式からデジタル方式に変わる時期であり、安価なPHS(簡易型携帯電話)も参入したことから急速に “市場”が形成された。
そして、第3の段階が、2000年以降に加速したインターネットの普及だ。当初、インターネットは、諸外国はPCなどの据え置型の「固定インターネット」が先行したが、日本では持ち運び型の「携帯電話のeメール」が発達した。外国では、自分の電話番号をアドレスに使うSMS(ショート・メッセージ・サービス)が主流だが、日本ではSMSとは別のアドレスを取得する文化ができた。
では、インターネットが当たり前になった時代の競争はどうなるのかと言えば、携帯電話だけでは十分でなくなってくる。現時点では、日本の高機能端末はかなりのことができる。だが、将来的に端末で動画を楽しむような世界が当たり前になってくると、高速大容量のデータ通信のやり取りが増大するので、現在の携帯電話の仕組みから考えれば周波数の帯域が逼迫するようになる。
―その際に、携帯電話に極端な負担をかけない手段として、改めて、固定インターネット、すなわち固定ブロ-バンドが必要になってくるということか?
そう。すでに、KDDIでも始めている「Wi-Fi」(無線LAN)や「フェムトセル」(屋内用小型中継機)などを活用して、逼迫したトラフィックを逃してあげなくてはならない。そこで、快適な通信を楽しむためには、移動体通信と固定通信を結び、家庭まで送り届ける「アクセスライン」の重要性が増してくる。
これまでの移動体通信の歴史を振り返ると、①お客様が増えたので周波数を割り当てる、②確実に電波が届くように「セル」(受信できる範囲)をより小さくする、③デジタル技術を導入する、という流れにあった。基本的には、いまでもこの3つでできている。
このうち、通信事業者は、電波がつながりやすくするために②の受信できる範囲を狭くすることを重視してきたが、モバイル端末を常時接続して動画を楽しむような時代になったら、どうやって分散させるか。Wi-Fiやフェムトセルをどこにつなぐのか、になる。
言うなれば、アクセスラインのインフラがなければ、今後の移動体通信事業は成り立たなくなるということだ。いずれは、高速大容量のデータ通信を可能にするLTEの時代が来るとはいえ、全部のインフラを張り替えるまでには、それなりの時間とお金がかかる。
―以前から、KDDIは、電力系の通信会社の光回線を買収するなど、自前でのアクセスライン構築を模索してきた。しかしながら、今では「インフラを所有している人から借りる」という選択肢もある。なぜ、自前での取得が大切なのか?
電話の時代からインターネットの時代になり、通信料金は「距離でいくら」という従量制の概念がなくなり、「月額いくら」の定額制が常識になった。そこで、自前のインフラを持っていないと、誰かから有料で借りることになる。確かに、借りるという方法もある。
だが、日本で通信事業者として生きていくには、いつまでもインフラを他社に丸ごと依存していてはいけない。現在、NTTグループが持っているようなインフラと同じものをKDDIがイチから持つことはできないが、ある程度は自前のインフラ(アクセスライン)を持ちながら事業を行わないことには、KDDIの存在理由が失われてしまう。
KDDIは、1985年の「通信の自由化」で競争が導入されて発足した“競争事業者”であるという原点に立ち返り、自らインフラを所有して設備競争する通信事業であるとの“原理・原則”は、これらからも重視し続ける。その点は、絶対に忘れてはならない。
―また、KDDIは、アクセスラインとしてのケーブルテレビに対する関心も、ずいぶん以前から持っていた。静かに業界2位のJCNを傘下に収めてから、今春には業界1位のジュピターテレコム(J:COM)への資本参加を果たした。その過程で、住友商事との間で主導権争いが起きたことから、「KDDIは何をやっているのだ?」と非難もされた。
正直、数年後に、結果を見てもらうしかない。現時点では、私はとやかく言うつもりはない。
米国の競争環境を見ていれば、いずれ日本でも光回線とケーブルの競争になることが見えていた。だから、第三者に気付かれる前に、KDDIとしてJ:COMに資本参加しておく必要があった。
J:COMは、アクセスラインとしての魅力ばかりでなく、KDDIが弱いコンテンツの調達能力に独自の強みを持っている。将来的には、移動体通信の世界でコンテンツの重要性が増していくことを考えれば、プラットフォームでどのようなコンテンツを提供できるのかが鍵を握ることになる。
後継になる社長はドン底で引き継ぐ
―話を転じて、小野寺さんがKDDIの経営者である間に、「これだけはやっておかなければならない」と考えていることはあるか?
それは考えていない。この先、いつまで経営に携わるのか決めていないので、やらなければならないことも決めていない。むしろ、それを決めてしまうと、その間は経営から離れることができなくなるので、かえって制約になる。
社長である限りは、社長としての職責を全うするつもりでいるが、本当に限界が来た場合にはすぐに後継者に社長を引き継ぐべきだと考えている。
―冒頭で、「絶頂期はなかった」と言われたが、自らの社長在任中に絶頂期を迎えてみたいという思いはないか?
いやいや。後継者のことを考えれば、“ドン底”の状態で社長を引き継がれたほうがやりやすいのではないかと考えている。
なぜなら、絶頂期で引き継がれると、前任者が成功したやり方を変えることに抵抗されて、自由な経営ができなくなるからだ。
それが、ドン底であれば、「前の社長のやり方はダメだった。これからは、別のやり方でやるぞ」と言うことができる。2001年に社長になった私もそうだったが、後継者はドン底で引き継がれたほうが思い切った経営ができる。
私は、KDDIを、もう一度、本来の姿である「戦う会社」(チャレンジャー)に戻したいと考えている。
【東京新聞社説】
難しい選択だからこそ 参院選きょう投開票
2010年7月11日
政権交代を選択した昨年夏の民意は正しかったか否か。きょう投開票の参院選は、その答えを有権者自らが出す。そして政権にもの申す絶好の機会だ。
東京都千代田区永田町。国会議事堂裏手に新築された十二階建ての重厚な議員会館が、議事堂を圧するように威容を見せている。
三棟のうち一棟が参院の分。三年前の二〇〇七年当選組、つまり今回は非改選の議員事務所の入居が一足早く始まっている。
事務所一部屋百平方メートル、旧議員会館の二・五倍の広さになった。
民間業者に集中管理を委託されたハイテク・オフィスは一見、豪華ホテル並みの快適空間だ。
◆託される大切な6年間
きょう投票の選挙で勝ち上がる百二十一人は任期の六年間、ここに腰を落ち着けることになる。
事務所の広い窓からは同じ仕様の衆院議員会館が見える。そこに入る衆院議員の残る任期は三年ちょっと。政局の展開次第で解散はいつあってもおかしくない。
そういう衆院と違って解散のない参院の議員たちは、じっくり政治に取り組むことが可能だ。
政権交代が違和感なく受け入れられる時代にあって、参院は存在感を一段と増してきている。
〇四年と〇七年の参院選を経て参院の多数派となった民主党は、自民党長期政権を追い詰め、ついに倒した。
「良識の府」のはずの参院はいつしか「政局の府」となり、時の政権の命運を左右する光景がここ数年で私たちの脳裏にしっかり刻まれた。
そのことが良くも悪くも選挙を面白くさせたのは疑いのないところだ。でも、本格的な政権交代を体験した以上、有権者はもう観客席で楽しんではいられない。
内外ともに見通しが利きにくい時代。今後六年を託す一票の行使に、責任を負わねばならないことを、まずは確認しておきたい。
◆ねじれ再現観測の中で
短命政権が続いた政治の混乱に終止符を打てるかどうか、その点にも内外の関心が注がれた。
ところが歴史的な政権交代の熱気から一年もたたず、首相は鳩山由紀夫氏から菅直人氏に代わっている。その菅首相は就任一カ月を超えたばかりのところで、思わぬ内閣支持率急落に顔色なしだ。
メディア各社の世論調査は軒並み「ねじれ国会」再現の可能性を伝えている。政権与党が参院過半数を失い、衆参の多数派が異なってしまうのが、ねじれ状況だ。
菅首相は遊説先でこう言った。「ねじれになればまた物事が動かなくなる」。脅しか本音か。野党当時の民主が政権攻撃にねじれをフル活用したのを思い出す。
政界や報道現場の関心は選挙後の政権枠組みに向かう。参院の多数派確保へ、第三極の政党や、場合によっては自民へも、政権側からの連携工作が活発化するに違いないからだ。
みんなの党をはじめ公明党など野党はすべて選挙後の連携を拒絶している。政権側には早くも手詰まり感が漂いつつある。
一方、野党の自民党。次の衆院総選挙での政権奪還へ確かな支持を取り戻し、足場を再構築できるかが今回参院選のポイントだ。
仮に与党が大敗して首相交代があっても、衆院の多数を握る民主中心の政権は当面変わらない。
もし獲得議席が芳しくないなら責任をめぐる人事紛争は避けられまい。そこは民主と表裏の関係にあるが、いずれにせよ自民は苦しい対応を迫られる。
新党が続々名乗りを上げたのも今回選挙の特徴だ。それぞれ選挙後の政界再編成へ生き残りをかける。
視界不良に有権者も戸惑うところだろうが、ここは冷静に見据えたい。
旧政権下のねじれ時代にも不毛な混乱の一方で、新たな国会のあり方を模索する動きがあった。国民そっちのけの権力抗争に走るかそれとも大局をわきまえるか。しっかりと見極めて選びたい。
経済・財政、社会保障、教育、外交・安保、そして税制と、論点になった政策テーマは幅広い。
とりわけ税や年金、雇用の問題は、人生これからの青年たちに深くかかわってくるものだ。
民主党政権が掲げるマニフェストの変容や、政党間の口汚い応酬に、政治なんてそんなもの、といった、冷ややかな声を聞いた。
政権交代の前も後も結局、政治は何も変わらないでは、青年たちの政治離れ、投票忌避をとやかく言えるはずもない。
◆あきらめずに投票所へ
けれども世代間の負担の在り方にかかわる政策選択が中高年優先でなされてはバランスを欠く。
増税論議も含めてみんなが難しい選択を迫られている。だからこそ今後の日本を支える青年たちにもっと声を上げてもらいたい。
その投票で政権にもの申す。政治をあきらめず、ぜひ投票所へ。
「もう一度、“戦う会社”に戻したい」
NTTはともかく、ソフトバンクの孫正義社長の快進撃で、その影に隠れていた感のあるKDDIの小野寺正社長兼会長。そんななかで、通信業界におけるチャレンジャーの元祖である小野寺社長が、大企業病、通信事業者の矜持、J:COM騒動、後継者問題などを存分に語ってくれた。
―最近のKDDIには、かつての“勢い”が感じられない。通信業界では、そのような指摘がある。小野寺さんは、“絶頂期”と比較して、現在の状況をどう見ているか?
これまで、KDDIには絶頂期はなかったと思う。
確かに、移動体通信(携帯電話)が急速に普及した1990年代後半や、2002~03年に第3世代携帯電話(3G)の立ち上げでNTTドコモに先行したこと、そして06年に「番号ポータビリティ制度」が導入された直後などは他社からの転入も多く、調子がよかった。
とりわけ、日本で最初に第3世代携帯電話を市場に投入して独走状態だった頃は、auの販売台数が一気に伸びた。当時最先端だった3Gのネットワーク(インフラ)を構築して、そこに魅力的な端末と各種のサービスを組み合わせて提供できたことで、会社も大きく成長することができた。
ところが、現在の状況について言えば、インフラでは競合他社も3Gネットワークを構築しているので、それほどの差がなくなってきている。そして、端末や各種のサービスについても、競合他社と似てきている。それが、お客様にとっての“目新しさ”を失うことにつながっていると思う。
―なぜ、そのような状況になってしまったのか?
KDDIという会社が“保守的”になってしまったからだ。全体がそうなってしまった。
本来であれば、会社が成長している時に、さまざまな改革に着手することが必要だと思う。だが、調子のよい時は、さらに伸ばしていくための活動を優先してしまうので、結果的に、改革が“後回し”になってしまう。
そういう時は、誰もが「調子がよいのに、何で変える必要があるの?」と考えがちだ。だが、お客様から見て目新しさがなくなっているという現在の状況を考えれば、成長している時に、もっと強引にでも「変えなければならなかったことを変えられなかった」というのが、勢いを失った本当の理由だろう。過去の“成功体験”が足を引っ張っている。そこに尽きる。
―では、どのようにして、現在の失速ムードを打破するのか?すでに営業利益で、業界3位が定位置だったソフトバンクに追い抜かれた。彼らは、米アップルのiPhoneという強力な“商材”を手にして快進撃を続けているが、その一方でKDDIはスマートフォン(多機能携帯電話)の投入で、明らかに出遅れた。
それは事実だ。そうなってしまったのは、これまでKDDIが手掛けてきたサービスに、こだわり過ぎたことが大きい。
たとえば、端末にはKDDIの「LISMO」(携帯電話とPCを組み合わせて音楽の配信などができるサービス)を搭載することを考えたり、現在の「SIMカード」(契約者を識別するためのモジュール)を使う方法を考えたりしていた。さらに、販売施策では、全国各地のauショップにおいて、すべて同じ端末のラインアップを揃えるという販売方法に固執していたこともある。
やはり、社員のメンタルの問題が大きい。現状を打破するには、過去に築いてきた技術や成功体験にしばられずに、変えるべき点は変えていく必要がある。試行錯誤の段階なので、まだ詳しくは話せないが、ようやく過去のスタイルと決別しようと動き始めた。
一例だけ挙げると、製品やサービスによって、適宜、端末を置く店舗や販売する方法などを変えていく。すべてを一気に変えることはしないが、毎回毎回最も適したやり方に変えていく。
携帯マルチディア放送は放送と付いても通信の話
─2011年7月にテレビ放送が地上デジタル放送へ移行することにより、アナログ放送の周波数の一部に空きが出る。その“跡地”をめぐり、NTTドコモなどの「マルチメディア放送」陣営と、KDDIなどの「メディアフロージャパン企画」陣営が“一つの認定枠を争う”という状態にある。下馬評では、「ドコモ優勢」とされるが、どう見ているか?
正直いって、理由がわからない。
KDDIは、05年12月の段階で、(将来的に放送の周波数を活用するための)メディアフロージャパン企画という子会社を立ち上げ、事業化に向けた取り組みを続けてきた。すでに、実験基地局の設備や端末、そして内蔵するチップセットを開発している。“実験機”も世間に公開してきた。
一方で、08年12月から動き出したドコモは、3G(第3世代携帯電話)やLTE(3・9世代携帯電話)などの新技術導入時とは異なり、今回は技術の詳細を公開していない。そのようなクローズドな状況で事業計画の認定に向けた手続きが進むことに対して、私は危機感を感じている。
─ドコモは、今年3月に「ISDB‐Tmm方式」のデモンストレーションを公開したが、確かにKDDIの「メディアフロー方式」のように公開実証実験をしていない。また、その技術を開発した米クアルコム社が米国で展開しているように、実際のサービスが開始されているわけでもない。
ドコモが採用するISDB‐Tmm方式は、名称が地上デジタル放送(ISDB‐T)と似ていることから、同じような方式だと誤解を与えるが、技術的に2つは別物である。ドコモとしては、地デジが南米などの海外で受け入れられたこともあり、その流れに乗りたいのだろう。
だが、地デジは、日本の技術が認められたから受け入れられたのであって、これまでになんの実績もない日本国内向けのISDB‐Tmm方式が受け入れられるかどうかは、まったく別の話だ。
その点で、メディアフロー方式は、5年間で約1000億円、年間200億円という無理のない投資計画になっているし、事業の実現性を示してもいる。大体、すでに実績があるものと、計画段階のものを比較して、「技術的に差がない」としている総務省の判断には疑問を持っている。
―もしかしたら、第3世代携帯電話で、ドコモとソフトバンクが同じ「W-CDMA方式」で、KDDI(au)だけが「CDMA2000方式」という違う技術を採用していることも、どこか影響しているのではないか?
傍目には、彼らのほうが“多数派”で有利な存在に見えるのかもしれない。だが、携帯マルチメディア放送というものは、携帯電話の世界と異なり、通信インフラの種類を問わずにサービスを搭載できる点が優れている。ここは誤解も多いので、強調しておきたい。
たとえば、すでに商用化されている米国では、auの携帯電話と同じ技術方式を採用している業界1位のベライゾン・ワイヤレスと、ドコモやソフトバンクと同じ技術を採用している業界2位のAT&Tワイヤレスが、メディアフロー方式を採用している。すなわち、日本の状況に置き換えれば、どこの通信事業者の端末でも使えるということと同じである。
そもそも、携帯マルチメディア放送は、「放送の電波を通信の一部として使いたい」という構想から出発していた。“放送”というカテゴリーに含まれているが、実質的には“通信”の話である。
そして、将来的には、これまでのインターネットのように「自ら情報を取りに行く」(プル型)のではなく、「自動で情報が届けられる」(プッシュ型)というスタイルが“大きな流れ”になる。だから、契約している人だけに特定の情報を送り届けられるメディアフローの仕組みは、必ず必要になる。
─しかしながら、総務省は、この7月中にも、メディアフロー方式か、ISDB‐Tmm方式のどちらかの事業者に免許を与えるとされている。
やはり、オープンな場で、技術の比較審査を進めてほしい。
繰り返すが、メディアフロー方式は、米国を中心に世界で実用化されており、端末も商用化されている技術である。さらに、日本の携帯電話でも利用できるように、携帯端末向けマルチメディア放送(メディアフロー)と、ワンセグ(地デジ)をデュアルで搭載できるチップセットも準備しているので、すぐに商品化にも移れる。
メディアフローは、国内限定の技術ではなく、国際標準の技術だ。KDDIは、メディアフロージャパン企画が免許を受けて事業会社化する際には、競合事業者に対しても技術をオープンにしたいと考えている。さらに、通信インフラを問わないプラットフォームなので、どこのキャリアの携帯端末にも搭載できる。ドコモやソフトバンクの資本参加も歓迎する。
米国を皮切りに、すでに20カ国でメディアフローの導入が検討されている。そんななかで、日本の携帯マルチメディア放送だけが世界から“孤立した状態”になるのではないかと懸念している。
インフラを持ち設備で競争する
―では、「NTTの2010年問題」が風化しつつあるなかでも、KDDIは自らインフラ構築に取り組み続けている。その理由を聞く前に、日本の電気通信市場の競争環境は、どのような段階を経て変化してきたのか、簡単に説明してほしい。
まず、1985年の「通信の自由化」(NTTの民営化)がある。この第1段階で、それまで国内に存在しなかった“競争”が起きたことで、諸外国に比べて高かった日本の「市外電話」と「国際電話」の料金が劇的に下がった。
次に、88年に「移動体通信」の世界で競争が導入されて、異業種の新規参入事業者が増えた。この第2段階は、移動体通信がアナログ方式からデジタル方式に変わる時期であり、安価なPHS(簡易型携帯電話)も参入したことから急速に “市場”が形成された。
そして、第3の段階が、2000年以降に加速したインターネットの普及だ。当初、インターネットは、諸外国はPCなどの据え置型の「固定インターネット」が先行したが、日本では持ち運び型の「携帯電話のeメール」が発達した。外国では、自分の電話番号をアドレスに使うSMS(ショート・メッセージ・サービス)が主流だが、日本ではSMSとは別のアドレスを取得する文化ができた。
では、インターネットが当たり前になった時代の競争はどうなるのかと言えば、携帯電話だけでは十分でなくなってくる。現時点では、日本の高機能端末はかなりのことができる。だが、将来的に端末で動画を楽しむような世界が当たり前になってくると、高速大容量のデータ通信のやり取りが増大するので、現在の携帯電話の仕組みから考えれば周波数の帯域が逼迫するようになる。
―その際に、携帯電話に極端な負担をかけない手段として、改めて、固定インターネット、すなわち固定ブロ-バンドが必要になってくるということか?
そう。すでに、KDDIでも始めている「Wi-Fi」(無線LAN)や「フェムトセル」(屋内用小型中継機)などを活用して、逼迫したトラフィックを逃してあげなくてはならない。そこで、快適な通信を楽しむためには、移動体通信と固定通信を結び、家庭まで送り届ける「アクセスライン」の重要性が増してくる。
これまでの移動体通信の歴史を振り返ると、①お客様が増えたので周波数を割り当てる、②確実に電波が届くように「セル」(受信できる範囲)をより小さくする、③デジタル技術を導入する、という流れにあった。基本的には、いまでもこの3つでできている。
このうち、通信事業者は、電波がつながりやすくするために②の受信できる範囲を狭くすることを重視してきたが、モバイル端末を常時接続して動画を楽しむような時代になったら、どうやって分散させるか。Wi-Fiやフェムトセルをどこにつなぐのか、になる。
言うなれば、アクセスラインのインフラがなければ、今後の移動体通信事業は成り立たなくなるということだ。いずれは、高速大容量のデータ通信を可能にするLTEの時代が来るとはいえ、全部のインフラを張り替えるまでには、それなりの時間とお金がかかる。
―以前から、KDDIは、電力系の通信会社の光回線を買収するなど、自前でのアクセスライン構築を模索してきた。しかしながら、今では「インフラを所有している人から借りる」という選択肢もある。なぜ、自前での取得が大切なのか?
電話の時代からインターネットの時代になり、通信料金は「距離でいくら」という従量制の概念がなくなり、「月額いくら」の定額制が常識になった。そこで、自前のインフラを持っていないと、誰かから有料で借りることになる。確かに、借りるという方法もある。
だが、日本で通信事業者として生きていくには、いつまでもインフラを他社に丸ごと依存していてはいけない。現在、NTTグループが持っているようなインフラと同じものをKDDIがイチから持つことはできないが、ある程度は自前のインフラ(アクセスライン)を持ちながら事業を行わないことには、KDDIの存在理由が失われてしまう。
KDDIは、1985年の「通信の自由化」で競争が導入されて発足した“競争事業者”であるという原点に立ち返り、自らインフラを所有して設備競争する通信事業であるとの“原理・原則”は、これらからも重視し続ける。その点は、絶対に忘れてはならない。
―また、KDDIは、アクセスラインとしてのケーブルテレビに対する関心も、ずいぶん以前から持っていた。静かに業界2位のJCNを傘下に収めてから、今春には業界1位のジュピターテレコム(J:COM)への資本参加を果たした。その過程で、住友商事との間で主導権争いが起きたことから、「KDDIは何をやっているのだ?」と非難もされた。
正直、数年後に、結果を見てもらうしかない。現時点では、私はとやかく言うつもりはない。
米国の競争環境を見ていれば、いずれ日本でも光回線とケーブルの競争になることが見えていた。だから、第三者に気付かれる前に、KDDIとしてJ:COMに資本参加しておく必要があった。
J:COMは、アクセスラインとしての魅力ばかりでなく、KDDIが弱いコンテンツの調達能力に独自の強みを持っている。将来的には、移動体通信の世界でコンテンツの重要性が増していくことを考えれば、プラットフォームでどのようなコンテンツを提供できるのかが鍵を握ることになる。
後継になる社長はドン底で引き継ぐ
―話を転じて、小野寺さんがKDDIの経営者である間に、「これだけはやっておかなければならない」と考えていることはあるか?
それは考えていない。この先、いつまで経営に携わるのか決めていないので、やらなければならないことも決めていない。むしろ、それを決めてしまうと、その間は経営から離れることができなくなるので、かえって制約になる。
社長である限りは、社長としての職責を全うするつもりでいるが、本当に限界が来た場合にはすぐに後継者に社長を引き継ぐべきだと考えている。
―冒頭で、「絶頂期はなかった」と言われたが、自らの社長在任中に絶頂期を迎えてみたいという思いはないか?
いやいや。後継者のことを考えれば、“ドン底”の状態で社長を引き継がれたほうがやりやすいのではないかと考えている。
なぜなら、絶頂期で引き継がれると、前任者が成功したやり方を変えることに抵抗されて、自由な経営ができなくなるからだ。
それが、ドン底であれば、「前の社長のやり方はダメだった。これからは、別のやり方でやるぞ」と言うことができる。2001年に社長になった私もそうだったが、後継者はドン底で引き継がれたほうが思い切った経営ができる。
私は、KDDIを、もう一度、本来の姿である「戦う会社」(チャレンジャー)に戻したいと考えている。
【東京新聞社説】
難しい選択だからこそ 参院選きょう投開票
2010年7月11日
政権交代を選択した昨年夏の民意は正しかったか否か。きょう投開票の参院選は、その答えを有権者自らが出す。そして政権にもの申す絶好の機会だ。
東京都千代田区永田町。国会議事堂裏手に新築された十二階建ての重厚な議員会館が、議事堂を圧するように威容を見せている。
三棟のうち一棟が参院の分。三年前の二〇〇七年当選組、つまり今回は非改選の議員事務所の入居が一足早く始まっている。
事務所一部屋百平方メートル、旧議員会館の二・五倍の広さになった。
民間業者に集中管理を委託されたハイテク・オフィスは一見、豪華ホテル並みの快適空間だ。
◆託される大切な6年間
きょう投票の選挙で勝ち上がる百二十一人は任期の六年間、ここに腰を落ち着けることになる。
事務所の広い窓からは同じ仕様の衆院議員会館が見える。そこに入る衆院議員の残る任期は三年ちょっと。政局の展開次第で解散はいつあってもおかしくない。
そういう衆院と違って解散のない参院の議員たちは、じっくり政治に取り組むことが可能だ。
政権交代が違和感なく受け入れられる時代にあって、参院は存在感を一段と増してきている。
〇四年と〇七年の参院選を経て参院の多数派となった民主党は、自民党長期政権を追い詰め、ついに倒した。
「良識の府」のはずの参院はいつしか「政局の府」となり、時の政権の命運を左右する光景がここ数年で私たちの脳裏にしっかり刻まれた。
そのことが良くも悪くも選挙を面白くさせたのは疑いのないところだ。でも、本格的な政権交代を体験した以上、有権者はもう観客席で楽しんではいられない。
内外ともに見通しが利きにくい時代。今後六年を託す一票の行使に、責任を負わねばならないことを、まずは確認しておきたい。
◆ねじれ再現観測の中で
短命政権が続いた政治の混乱に終止符を打てるかどうか、その点にも内外の関心が注がれた。
ところが歴史的な政権交代の熱気から一年もたたず、首相は鳩山由紀夫氏から菅直人氏に代わっている。その菅首相は就任一カ月を超えたばかりのところで、思わぬ内閣支持率急落に顔色なしだ。
メディア各社の世論調査は軒並み「ねじれ国会」再現の可能性を伝えている。政権与党が参院過半数を失い、衆参の多数派が異なってしまうのが、ねじれ状況だ。
菅首相は遊説先でこう言った。「ねじれになればまた物事が動かなくなる」。脅しか本音か。野党当時の民主が政権攻撃にねじれをフル活用したのを思い出す。
政界や報道現場の関心は選挙後の政権枠組みに向かう。参院の多数派確保へ、第三極の政党や、場合によっては自民へも、政権側からの連携工作が活発化するに違いないからだ。
みんなの党をはじめ公明党など野党はすべて選挙後の連携を拒絶している。政権側には早くも手詰まり感が漂いつつある。
一方、野党の自民党。次の衆院総選挙での政権奪還へ確かな支持を取り戻し、足場を再構築できるかが今回参院選のポイントだ。
仮に与党が大敗して首相交代があっても、衆院の多数を握る民主中心の政権は当面変わらない。
もし獲得議席が芳しくないなら責任をめぐる人事紛争は避けられまい。そこは民主と表裏の関係にあるが、いずれにせよ自民は苦しい対応を迫られる。
新党が続々名乗りを上げたのも今回選挙の特徴だ。それぞれ選挙後の政界再編成へ生き残りをかける。
視界不良に有権者も戸惑うところだろうが、ここは冷静に見据えたい。
旧政権下のねじれ時代にも不毛な混乱の一方で、新たな国会のあり方を模索する動きがあった。国民そっちのけの権力抗争に走るかそれとも大局をわきまえるか。しっかりと見極めて選びたい。
経済・財政、社会保障、教育、外交・安保、そして税制と、論点になった政策テーマは幅広い。
とりわけ税や年金、雇用の問題は、人生これからの青年たちに深くかかわってくるものだ。
民主党政権が掲げるマニフェストの変容や、政党間の口汚い応酬に、政治なんてそんなもの、といった、冷ややかな声を聞いた。
政権交代の前も後も結局、政治は何も変わらないでは、青年たちの政治離れ、投票忌避をとやかく言えるはずもない。
◆あきらめずに投票所へ
けれども世代間の負担の在り方にかかわる政策選択が中高年優先でなされてはバランスを欠く。
増税論議も含めてみんなが難しい選択を迫られている。だからこそ今後の日本を支える青年たちにもっと声を上げてもらいたい。
その投票で政権にもの申す。政治をあきらめず、ぜひ投票所へ。
無料ゲームのプラットフォーム構築も視野に バンダイナムコインタビュー
前期はゲームをはじめ、映像、音楽といった玩具以外の事業の落ち込みが目立ったバンダイナムコグループ。この状況から脱却し、コンテンツ分野の事業を復活させるために、バンダイナムコゲームスの鵜之澤伸副社長は背水の陣で勝負に臨む。勝負の鍵の1つとなるのがバンダイが得意としてきた無料放送でのキャラクター・マーチャンダイジング・ビジネスのノウハウだ。その戦略を鵜之澤氏に聞いた。
鵜之澤氏:ゲーム業界はアーケードから始まり、一方で家庭用ゲーム機の世界は任天堂から生まれてきましたよね。
この家庭用ハードのマーケットには、これまでセガやソニー、松下なども参入しましたけど、それは結局、任天堂のフィールドに同じビジネスモデルで参入していっただけ。そこで攻防が繰り広げられて、どこかのハードメーカーが勝ったり負けたりを繰り返す構図です。
一方、ソフト側も似たような感じで、ファーストパーティーとサードパーティーがあるけれど、やっているビジネスはほとんど一緒。パッケージを売って、開発費を回収するというモデルです。
――そうですね。
鵜之澤氏:ところが今回の変化は、そこにポーンとIT業界がやって来たわけですよ。アップルやグーグルだけじゃなくて、我々の身近なモバイルの世界ではグリーやDeNAが来た。
特にグリーやDeNAはモバイルでビジネスをやっていますけど、“モバイルゲーム屋”じゃないですよね。彼らにしてみるとゲームはコミュニケーションの道具でしょ。
Facebookもそうですよね。ゲームというコミュニケーションツールを取り入れたら、ページビューもすごい勢いで伸びているわけですから。
そもそもゲームって本質的に皆で遊ぶものなので、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のコミュニケーションにおいて、ゲームほど都合がいいものはないわけです。このことにIT業界は気がついて、Web上にあるほかのコンテンツと同類の扱いを始めたんです。
この流れは、従来のゲーム業界における勢力争いとはかなり異なる展開ですよね。まさに、クリス・アンダーソン著の『FREE』の流れが始まっている感じ。「無料ゲーム」という言葉が集客のフックになっているわけですからね。
タダでゲームを始めてアイテムが欲しくなったら100円、200円くらい。まあ、高くても500円という世界。これは我々がやってきた1つのタイトルのパッケージで5000円、あるいは6000円、7000円という値付けで売り切るスタイルとは、異なる市場です。
――グリーやモバゲータウンのユーザーの消費行動は、従来のパッケージ購入とは大きく違いますね。
鵜之澤氏:無料ゲームで集客した大量のユーザーの中から、5~10%くらいがアイテムを買ってくれるというモデルですよね。
その仕組みも、やり方もよく分かるけど、今のところはバンダイナムコをはじめとした従来のゲーム会社の多くが、そうしたゲームビジネスのあり方にあまり慣れていないという状況です。
やっぱり、大型のタイトルを作って、それをパッケージで売っていくというスタイルが主流だとまだ考えていますよね。そのスタイルに慣れすぎていて、我々の中の“常識”から抜けきれないというのが昨年までの状況じゃないでしょうか。
――とはいえ、パッケージビジネスのラインはまだ市場があるわけですから、そのビジネスラインはそれでいいんじゃないですか。むしろ変化するマーケットに対して、新しいビジネスラインを立ち上げて対応する必要があるということですよね。
鵜之澤氏:そうですね。コアファンもソーシャルゲームを楽しむとは思いますけど、本当に満足するには従来スタイルの大型タイトルが必要なのは明らかですね。
まあ、市場自体は徐々に右肩下がりになるかもしれないけれども、そこはやっていく必要があります。ただ、同じパッケージビジネスでも、任天堂ハードがつかんだカジュアル層については、ゲームに対するロイヤルティーが決して高くはないということを肝に銘じて、タイトル開発を進めなくてはならないと思っています。
同時に、我々がターゲットとしてきたユーザーが、無料のソーシャルゲームに取られている可能性があることも念頭に置いて、新しいビジネスラインを立ち上げなくてはならないのも事実です。
実際、うちのグループで見ると、携帯電話向けゲームで月額100円で楽しめる『SIMPLE100』シリーズをやっていますが、この会員数の減少を見ると、無料のソーシャルに取られているのは歴然です。
本来であれば月額100円というのは、かなりのお手軽価格で、価格競争力があるものだったのが、無料ゲームが出てきたことで、如実に会員数が減っている。月額300円の『ナムコ・ゲームス』も似た動きを見せています。
――つまり、“入り口”でどれだけ支払いに関する心理的なハードルを下げるかが、ポイントなんでしょうね。
鵜之澤氏:そのことを改めてグループ全体のビジネスで考えると、実はこれってバンダイが得意としてきた手法なんですよ。
バンダイが、テレビの特撮やアニメでやってきたキャラクター・マーチャンダイジング手法は、タダで地上波テレビの番組を見せて、そこに登場するキャラクターを好きになってくれた何%かの人に、玩具とかお菓子、あるいはDVDやゲームを買ってもらうというビジネスモデルです。
ということは、『FREE』モデルと同種のビジネスなわけですよ。つまり、既にやってきているんですよ。このビジネスモデルをね。
そもそもアニメや特撮番組を作るのはタダじゃないですからね。数億円かけて番組作って、放送枠の電波料を支払って、それを無料でテレビ放映している。
この無料視聴モデルでやってきた国内外での経験――端的に言えばバンダイ系が持つ“DNA”は、SNSなどのネット上での無料をフックとしたビジネスに今後生きてくるんじゃないかと思っているんですよね。
――無料の規模で比較すればSNS系企業の比ではない投資額ですよね。
鵜之澤氏:ええ。その一方で、ナムコが得意とする、1回やったら面白いと思わせて、再び100円、200円と使いたくなる、というゲームや、操作マニュアルを読まなくても、感覚的にぱっとできるようなゲームを作れる能力のDNAも武器になります。
バンダイ系の無料ベースのマーチャンダイジングビジネスのDNAと、ナムコのゲーム作りのDNAを組み合わせることで、SNS上での無料ゲームや、その次にくるビジネスで勝ち抜く方策が見えてくると思っています。
――なるほど。
鵜之澤氏:そこでのポイントはリピーターになってもらうコンテンツが作れるかどうかということです。
なぜなら、タダだから1回はやってくれるかもしれないけど、その後何度もやってもらうのは、思った以上にハードルが高いものですからね。
実際、アニメなどのテレビ番組も一緒です。タダだけど視聴率戦争をやっているわけですよ。つまらなければ二度と見てももらえないわけですから。
――フリーテレビのマーチャンダイジングビジネスの置き換えというのは分かりやすいですね。テレビでやってきた先行投資の事業モデルをSNSのソーシャルゲームでもやっていくと言えば、社員にもわかりやすいし、バンダイナムコグループ各社の経営層も協力しやすい環境ができるんじゃないですか。
鵜之澤氏:そうなんです。SNSとかソーシャルゲームっていうから、何となく慣れない雰囲気があるけど、ビジネスモデル的には従来やってきたことの置き換えであって、「普通に我々はやってきたじゃないか」ってことをきちんと伝えないといけませんよね。だから、『FREE』の波に、そんなあわてることはないんだよってこともね。
――“大作ゲーム”を制作するのに適した状況下ですと、社員に対して「君は明日からSNS向けにカジュアルなソーシャルゲーム作れ」と言ったら、彼らのモチベーションが下がる恐れはないですか。
鵜之澤氏:いや、それは世代によっても違いますね。実際、カジュアル系のゲームは今でも作っているし、そういうゲームをやりたいって手を挙げる開発者もいますからね。
若手で、ちょっと“山っ気”があるような連中は、Facebook向けのゲームをやりたいなんて手を挙げてきますよ。それに、ソーシャルを含むカジュアルゲームは、ネットワークにつながることで、新しい遊びや機能を提供できるので、その部分に興味を持つ開発者もいますよね。
だから、ハイエンドの開発じゃなきゃ皆が「いやだ」ってわけじゃない。そうじゃなきゃ、そもそも、ここ数年のDSやPSP向けタイトルは作れませんよ。
それに、この先ゲーム業界で数十年仕事していこうと思ったら、今のこの変化の流れに対応していくことは必要でしょ。ゲームは伝統工芸じゃないんで、国が保護してくれるわけでもないし。
この新しい市場で勝負して、新たな遊び方を生み出していかないと、活躍できる場がどんどん少なくなるわけですから、小規模タイトルを少人数で作る体制にも今後は慣れていく必要があります。
――今、SNS向けソーシャルゲームやiPhone、iPad向けゲームの開発に、リソースはどれくらい割いているんですか。
鵜之澤氏:今はかなりやっていますよ。米国の企業のように専用の開発会社を買収して、取り組むようなことはしていませんけどね。
今は不況の影響もあって、全体的に外注の仕事量が減っているから、デベロッパーを使おうと思えば、多分すぐにやってもらえると思いますけど、もしApp Storeに上げるだけだったら、デベロッパーが直接やろうと思えばできちゃうでしょ。
ここで改めて、バンダイナムコゲームスというパブリッシャーの役割って何なのかを考えているんですよ。我々には何ができるんだろうってね。
――自社で開発できること以外にもバンダイナムコグループが持つキャラクターや各種のノウハウがありますね。
鵜之澤氏:キャラクターとIP(知的財産)と資本力――。それに、さまざまな流通形態なども含む各種ネットワークのインフラなどですかね。
これらをパブリッシャーとして持っているので、この特長を生かして、ソーシャルゲームやiPhone、iPad向けゲームの開発にも力を入れていくべきでしょう。
現状は、こうした特長を生かすような組織だった動きができていないと見ています。断片的に色々な部署で取り組んではいるんですけど、体系的にやっているわけじゃないんで、ここを何とかしなくちゃと考えているんですよ。
――日本におけるソーシャルゲームは立ち上がったばかりなので、今後の市場の成長期待を込めて各社の株価も高い状況にあります。その点からすると、単にゲームタイトルを既存のSNS向けに提供するだけではなく、新たなSNSプラットフォームを作って参入することも市場からは期待されています。
鵜之澤氏:確かに時価総額で見るとグリーやDeNAは、既存のゲーム会社を凌駕する規模で、任天堂の次をセガサミーとこの2社が争っている状況ですね(注:2010年6月取材時点の株価)。
バンダイナムコやスクウェア・エニックスといったゲーム会社を、グリーやDeNAが、時価総額で超えているのを見ると、“いつできた会社だった?”と驚くのと同時に、「なぜ我々はこのトレンドに乗れなかったのか」って反省します。我々も歴史あるゲーム会社で、モバイルだってやってきたのにね。
――新興2社は、ゲームというコンテンツと課金モデルをうまく組み合わせてビジネスを考えたんでしょうね。
鵜之澤氏:ゲームの見た目では「ずいぶんシンプルだなぁ」って思いますよね。
でも、作り手側はユーザーニーズに対応して、あえて軽いインターフェースにするのと同時に、ハマってリピーターになる要素を盛り込んで開発したと思います。実際、ユーザーたちは、その面白さの本質を見抜いて、ファンになっているわけですからね。
ただ、あのビジネスモデルは過去にもあったものですよね。NHNの「ハンゲーム」といった韓国系のPCゲームでも、アイテム課金のビジネスをずいぶん前からやってきています。
でも、作り手側はユーザーニーズに対応して、あえて軽いインターフェースにするのと同時に、ハマってリピーターになる要素を盛り込んで開発したと思います。実際、ユーザーたちは、その面白さの本質を見抜いて、ファンになっているわけですからね。
ただ、あのビジネスモデルは過去にもあったものですよね。NHNの「ハンゲーム」といった韓国系のPCゲームでも、アイテム課金のビジネスをずいぶん前からやってきています。
でも、従来からある国内ゲーム会社は、既存のパッケージビジネスという稼げる事業があったから、あまりそこにフォーカスすることをしなかった。だから、出遅れてしまったんだと思います。
――ケータイSNSでは、『たまごっち』のような育てゲームが大人気です。
鵜之澤氏:バンダイは本家本元の育てゲームの『たまごっち』シリーズがあるわけですけど、SNS向けのソーシャルゲームに展開するという考えには及ばなかった――。
いずれにせよ、我々には使えるコンテンツもあったし、ビジネスモデルも理解できていたのに、それをソーシャルという市場に持っていくことができなかったわけです。だから、今やるべきことは分かっています。
原発ある自治体にクラウド拠点 IIJやユニシス
インターネット経由で情報処理サービスを提供する「クラウドコンピューティング」の拠点を、原子力発電所を持つ自治体に設置する試みが動き出す。電源立地交付金を活用して電気料金を最大半額に抑えるのが特徴。1号案件として、インターネットイニシアティブ(IIJ)と中国電力、日本ユニシスと関西電力がそれぞれ島根県、福井県にデータセンターを建設する。
IIJと中国電力は2011年2月の稼働を目指し、松江市でサーバー5000台規模のコンテナ型データセンターを建設する。今夏にも着工予定で、建設費は約16億円。日本ユニシスと関西電力も福井県内で数千台規模の建設を予定している。美浜町など県西南部が有力で、建設費は50億円以上を見込んでいる。
データセンターは大量の電気を消費するため、発電所の近くに建設する利点がある。さらに原発を保有するか隣接する自治体に設置した場合、事業者は新設・増設した翌年度から8年間、国から給付される電源立地交付金を活用できる。
これによって「運営コストの4分の1~3分の1を占める」(IIJ)データセンターの電気料金を最大半額まで抑えられるほか、自治体によっては固定資産税の減免などの優遇措置も受けられる。自治体側は税収増や企業誘致の呼び水としての効果が期待できる。
政府は情報提供などを通じて自治体とIT関連会社、電力会社との仲介を進める。北海道や茨城県などがデータセンター誘致に動いているという。今年中に経済産業、総務、国土交通など関係省庁間による連絡会を設け、データセンター設置のための規制改革や特区の指定なども検討する。
経産省は国内データセンターのサーバー台数を現在の120万台から20年に400万台に引き上げる目標を掲げている。ただ、データセンターは建築基準法の対象となり、新設や増設、撤去の申請許可に通常2~3カ月かかる。コスト面に加えて消防設備の設置基準などの制約も多く、クラウドサービスのデータセンターは海外に置かれるケースが多かった。
企業の資金調達、アジア勢が25兆円 欧米抜く
2010年上期は17%増 中国がけん引
【ニューヨーク=川上穣】今年上半期のアジア企業による資本市場からの資金調達額が、米国や欧州勢を半期ベースで初めて上回った。中国やインド企業が設備投資など成長に必要な資金を確保しようと株式や社債の発行を増やしたためで、調達額は計2834億ドル(約25兆円)と前年同期比17%増。一方、米欧企業の調達は落ち込んだ。成長力の差を背景に、国際資本市場でも資金調達を巡る企業の勢力図が急速に変化している。
米調査会社ディール・ロジックによると、1~6月に世界の企業が株式や社債の発行で調達した資金は前年同期比30%減の9070億ドルだった。リーマン・ショックのあった2008年下半期(5950億ドル)以来の低水準に落ち込んだ。
地域別では米国が37%減の2710億ドル、欧州は53%減の2425億ドル。欧州はリーマン・ショック後の09年上半期には、危機の震源地だった米国を上回ったが、ギリシャなどの財政不安を背景に足元では落ち込みが大きい。対照的にアジア(日本を含む)は旺盛な資金需要を背景に2ケタ増。アジアと米・欧の逆転は比較可能な2000年以降初めて。
アジアで目立つのが中国企業による調達で、アジアの約4割を占めた。中国石油天然気集団(CNPC)など大手石油会社が数十億ドル規模の社債を相次いで発行。インドや韓国企業なども活発。インドの大手鉱山会社NMDCが21億ドルの増資をするなど、設備投資やM&A(合併・買収)に必要な資金調達を拡大している。
日本企業の調達額は約700億ドルとアジア全体の4分の1で、前年同期に比べ微増。超低金利で調達コストは低いが、上場企業の09年度末の手元資金は65兆円と過去最高水準にあるうえ、アジア企業に比べ投資意欲が相対的に低い。アジアの伸びのほとんどを日本以外のアジア企業が占めた格好だ。
ロシア版シリコンバレー計画、欧米大手が相次ぎ名乗り
【モスクワ=石川陽平】モスクワ近郊に研究開発機関を集積する「ロシア版シリコンバレー」計画へ、欧米企業が相次ぎ進出の名乗りを上げている。米シスコシステムズが総額10億ドル(約880億円)の投資を表明したほかインテル、ノキアなども検討に着手。先端分野への外資進出が加速すれば、国内産業の技術開発力強化による「経済のイノベーション(革新)」を掲げ、再選を狙うメドベージェフ大統領への追い風となりそうだ。
真っ先に進出を表明した外国企業はネットワーク機器世界最大手の米シスコシステムズ。6月下旬に訪米したメドベージェフ氏立ち会いのもと、建設・運営に当たる「スコルコボ開発基金」と覚書を交わし、開発拠点を設ける計画を明らかにした。投資先にはベンチャー企業なども含むという。
米スマートフォン、グーグルOSがシェア伸ばす 3~5月期
【シリコンバレー=奥平和行】米調査会社のコムスコアは米国における2010年3~5月期のスマートフォン(高機能携帯電話)利用動向をまとめた。搭載基本ソフト(OS)別の稼働台数をみると、上位5社中4社がシェアを低下させる中、4位の米グーグルのOS「アンドロイド」を搭載した製品が唯一4ポイント増の13%となり、3位の米マイクロソフト(1.9ポイント減の13.2%)とほぼ肩を並べた。
首位は「ブラックベリー」を展開するカナダのリサーチ・イン・モーションでシェアは0.4ポイント減の41.7%。2位は米アップルで1ポイント減の24.4%だった。
グーグルは08年からアンドロイドを無償で通信機器メーカーに提供、5月時点で21社が世界48カ国で60機種以上を発売している。米国でも今春に米モトローラや台湾HTCなどが新機種を売り出しており、品ぞろえ拡大がシェア上昇につながったようだ。アップルは6月に「iPhone(アイフォーン)」の新機種を発売しており、6~8月期はどこまでシェアを拡大するかに注目が集まりそうだ。
中国企業、プラダ買収交渉か 現地紙報道
中国紙「経済観察報(電子版)」は10日、上海に拠点を置く中国企業、上海富客斯実業(英語名・フォックスタウン)がイタリアの高級服飾ブランド「プラダ」の買収交渉をしていると報じた。既にプラダ株約13%を保有し、プラダ側と追加取得に向け協議を始めたという。
フォックスタウンはブランド商品を格安で販売するアウトレットモールを中国で店舗展開している。同社の陸強総裁によると、2008年の金融危機でプラダの資金繰りが悪化したのを契機に、プラダの債権を保有する銀行から株式を取得した。
株の追加取得に当たり、現経営陣を今後5年間変えないとする一方、中国を中心とするアジア市場向けに低価格商品を投入する計画を提案しているという。総額4億5000万ユーロ(約500億円)で取得を目指している。プラダ側は株式の売却価格を引き上げ、交渉は難航しているという。
中国の景気拡大に伴い、富裕層らによるブランド品などぜいたく品市場が急拡大している。人民元も緩やかに上昇する中で、今後、中国の企業が欧米の著名な服飾ブランド企業を取得する機運も高まりそうだ。
前期はゲームをはじめ、映像、音楽といった玩具以外の事業の落ち込みが目立ったバンダイナムコグループ。この状況から脱却し、コンテンツ分野の事業を復活させるために、バンダイナムコゲームスの鵜之澤伸副社長は背水の陣で勝負に臨む。勝負の鍵の1つとなるのがバンダイが得意としてきた無料放送でのキャラクター・マーチャンダイジング・ビジネスのノウハウだ。その戦略を鵜之澤氏に聞いた。
鵜之澤氏:ゲーム業界はアーケードから始まり、一方で家庭用ゲーム機の世界は任天堂から生まれてきましたよね。
この家庭用ハードのマーケットには、これまでセガやソニー、松下なども参入しましたけど、それは結局、任天堂のフィールドに同じビジネスモデルで参入していっただけ。そこで攻防が繰り広げられて、どこかのハードメーカーが勝ったり負けたりを繰り返す構図です。
一方、ソフト側も似たような感じで、ファーストパーティーとサードパーティーがあるけれど、やっているビジネスはほとんど一緒。パッケージを売って、開発費を回収するというモデルです。
――そうですね。
鵜之澤氏:ところが今回の変化は、そこにポーンとIT業界がやって来たわけですよ。アップルやグーグルだけじゃなくて、我々の身近なモバイルの世界ではグリーやDeNAが来た。
特にグリーやDeNAはモバイルでビジネスをやっていますけど、“モバイルゲーム屋”じゃないですよね。彼らにしてみるとゲームはコミュニケーションの道具でしょ。
Facebookもそうですよね。ゲームというコミュニケーションツールを取り入れたら、ページビューもすごい勢いで伸びているわけですから。
そもそもゲームって本質的に皆で遊ぶものなので、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のコミュニケーションにおいて、ゲームほど都合がいいものはないわけです。このことにIT業界は気がついて、Web上にあるほかのコンテンツと同類の扱いを始めたんです。
この流れは、従来のゲーム業界における勢力争いとはかなり異なる展開ですよね。まさに、クリス・アンダーソン著の『FREE』の流れが始まっている感じ。「無料ゲーム」という言葉が集客のフックになっているわけですからね。
タダでゲームを始めてアイテムが欲しくなったら100円、200円くらい。まあ、高くても500円という世界。これは我々がやってきた1つのタイトルのパッケージで5000円、あるいは6000円、7000円という値付けで売り切るスタイルとは、異なる市場です。
――グリーやモバゲータウンのユーザーの消費行動は、従来のパッケージ購入とは大きく違いますね。
鵜之澤氏:無料ゲームで集客した大量のユーザーの中から、5~10%くらいがアイテムを買ってくれるというモデルですよね。
その仕組みも、やり方もよく分かるけど、今のところはバンダイナムコをはじめとした従来のゲーム会社の多くが、そうしたゲームビジネスのあり方にあまり慣れていないという状況です。
やっぱり、大型のタイトルを作って、それをパッケージで売っていくというスタイルが主流だとまだ考えていますよね。そのスタイルに慣れすぎていて、我々の中の“常識”から抜けきれないというのが昨年までの状況じゃないでしょうか。
――とはいえ、パッケージビジネスのラインはまだ市場があるわけですから、そのビジネスラインはそれでいいんじゃないですか。むしろ変化するマーケットに対して、新しいビジネスラインを立ち上げて対応する必要があるということですよね。
鵜之澤氏:そうですね。コアファンもソーシャルゲームを楽しむとは思いますけど、本当に満足するには従来スタイルの大型タイトルが必要なのは明らかですね。
まあ、市場自体は徐々に右肩下がりになるかもしれないけれども、そこはやっていく必要があります。ただ、同じパッケージビジネスでも、任天堂ハードがつかんだカジュアル層については、ゲームに対するロイヤルティーが決して高くはないということを肝に銘じて、タイトル開発を進めなくてはならないと思っています。
同時に、我々がターゲットとしてきたユーザーが、無料のソーシャルゲームに取られている可能性があることも念頭に置いて、新しいビジネスラインを立ち上げなくてはならないのも事実です。
実際、うちのグループで見ると、携帯電話向けゲームで月額100円で楽しめる『SIMPLE100』シリーズをやっていますが、この会員数の減少を見ると、無料のソーシャルに取られているのは歴然です。
本来であれば月額100円というのは、かなりのお手軽価格で、価格競争力があるものだったのが、無料ゲームが出てきたことで、如実に会員数が減っている。月額300円の『ナムコ・ゲームス』も似た動きを見せています。
――つまり、“入り口”でどれだけ支払いに関する心理的なハードルを下げるかが、ポイントなんでしょうね。
鵜之澤氏:そのことを改めてグループ全体のビジネスで考えると、実はこれってバンダイが得意としてきた手法なんですよ。
バンダイが、テレビの特撮やアニメでやってきたキャラクター・マーチャンダイジング手法は、タダで地上波テレビの番組を見せて、そこに登場するキャラクターを好きになってくれた何%かの人に、玩具とかお菓子、あるいはDVDやゲームを買ってもらうというビジネスモデルです。
ということは、『FREE』モデルと同種のビジネスなわけですよ。つまり、既にやってきているんですよ。このビジネスモデルをね。
そもそもアニメや特撮番組を作るのはタダじゃないですからね。数億円かけて番組作って、放送枠の電波料を支払って、それを無料でテレビ放映している。
この無料視聴モデルでやってきた国内外での経験――端的に言えばバンダイ系が持つ“DNA”は、SNSなどのネット上での無料をフックとしたビジネスに今後生きてくるんじゃないかと思っているんですよね。
――無料の規模で比較すればSNS系企業の比ではない投資額ですよね。
鵜之澤氏:ええ。その一方で、ナムコが得意とする、1回やったら面白いと思わせて、再び100円、200円と使いたくなる、というゲームや、操作マニュアルを読まなくても、感覚的にぱっとできるようなゲームを作れる能力のDNAも武器になります。
バンダイ系の無料ベースのマーチャンダイジングビジネスのDNAと、ナムコのゲーム作りのDNAを組み合わせることで、SNS上での無料ゲームや、その次にくるビジネスで勝ち抜く方策が見えてくると思っています。
――なるほど。
鵜之澤氏:そこでのポイントはリピーターになってもらうコンテンツが作れるかどうかということです。
なぜなら、タダだから1回はやってくれるかもしれないけど、その後何度もやってもらうのは、思った以上にハードルが高いものですからね。
実際、アニメなどのテレビ番組も一緒です。タダだけど視聴率戦争をやっているわけですよ。つまらなければ二度と見てももらえないわけですから。
――フリーテレビのマーチャンダイジングビジネスの置き換えというのは分かりやすいですね。テレビでやってきた先行投資の事業モデルをSNSのソーシャルゲームでもやっていくと言えば、社員にもわかりやすいし、バンダイナムコグループ各社の経営層も協力しやすい環境ができるんじゃないですか。
鵜之澤氏:そうなんです。SNSとかソーシャルゲームっていうから、何となく慣れない雰囲気があるけど、ビジネスモデル的には従来やってきたことの置き換えであって、「普通に我々はやってきたじゃないか」ってことをきちんと伝えないといけませんよね。だから、『FREE』の波に、そんなあわてることはないんだよってこともね。
――“大作ゲーム”を制作するのに適した状況下ですと、社員に対して「君は明日からSNS向けにカジュアルなソーシャルゲーム作れ」と言ったら、彼らのモチベーションが下がる恐れはないですか。
鵜之澤氏:いや、それは世代によっても違いますね。実際、カジュアル系のゲームは今でも作っているし、そういうゲームをやりたいって手を挙げる開発者もいますからね。
若手で、ちょっと“山っ気”があるような連中は、Facebook向けのゲームをやりたいなんて手を挙げてきますよ。それに、ソーシャルを含むカジュアルゲームは、ネットワークにつながることで、新しい遊びや機能を提供できるので、その部分に興味を持つ開発者もいますよね。
だから、ハイエンドの開発じゃなきゃ皆が「いやだ」ってわけじゃない。そうじゃなきゃ、そもそも、ここ数年のDSやPSP向けタイトルは作れませんよ。
それに、この先ゲーム業界で数十年仕事していこうと思ったら、今のこの変化の流れに対応していくことは必要でしょ。ゲームは伝統工芸じゃないんで、国が保護してくれるわけでもないし。
この新しい市場で勝負して、新たな遊び方を生み出していかないと、活躍できる場がどんどん少なくなるわけですから、小規模タイトルを少人数で作る体制にも今後は慣れていく必要があります。
――今、SNS向けソーシャルゲームやiPhone、iPad向けゲームの開発に、リソースはどれくらい割いているんですか。
鵜之澤氏:今はかなりやっていますよ。米国の企業のように専用の開発会社を買収して、取り組むようなことはしていませんけどね。
今は不況の影響もあって、全体的に外注の仕事量が減っているから、デベロッパーを使おうと思えば、多分すぐにやってもらえると思いますけど、もしApp Storeに上げるだけだったら、デベロッパーが直接やろうと思えばできちゃうでしょ。
ここで改めて、バンダイナムコゲームスというパブリッシャーの役割って何なのかを考えているんですよ。我々には何ができるんだろうってね。
――自社で開発できること以外にもバンダイナムコグループが持つキャラクターや各種のノウハウがありますね。
鵜之澤氏:キャラクターとIP(知的財産)と資本力――。それに、さまざまな流通形態なども含む各種ネットワークのインフラなどですかね。
これらをパブリッシャーとして持っているので、この特長を生かして、ソーシャルゲームやiPhone、iPad向けゲームの開発にも力を入れていくべきでしょう。
現状は、こうした特長を生かすような組織だった動きができていないと見ています。断片的に色々な部署で取り組んではいるんですけど、体系的にやっているわけじゃないんで、ここを何とかしなくちゃと考えているんですよ。
――日本におけるソーシャルゲームは立ち上がったばかりなので、今後の市場の成長期待を込めて各社の株価も高い状況にあります。その点からすると、単にゲームタイトルを既存のSNS向けに提供するだけではなく、新たなSNSプラットフォームを作って参入することも市場からは期待されています。
鵜之澤氏:確かに時価総額で見るとグリーやDeNAは、既存のゲーム会社を凌駕する規模で、任天堂の次をセガサミーとこの2社が争っている状況ですね(注:2010年6月取材時点の株価)。
バンダイナムコやスクウェア・エニックスといったゲーム会社を、グリーやDeNAが、時価総額で超えているのを見ると、“いつできた会社だった?”と驚くのと同時に、「なぜ我々はこのトレンドに乗れなかったのか」って反省します。我々も歴史あるゲーム会社で、モバイルだってやってきたのにね。
――新興2社は、ゲームというコンテンツと課金モデルをうまく組み合わせてビジネスを考えたんでしょうね。
鵜之澤氏:ゲームの見た目では「ずいぶんシンプルだなぁ」って思いますよね。
でも、作り手側はユーザーニーズに対応して、あえて軽いインターフェースにするのと同時に、ハマってリピーターになる要素を盛り込んで開発したと思います。実際、ユーザーたちは、その面白さの本質を見抜いて、ファンになっているわけですからね。
ただ、あのビジネスモデルは過去にもあったものですよね。NHNの「ハンゲーム」といった韓国系のPCゲームでも、アイテム課金のビジネスをずいぶん前からやってきています。
でも、作り手側はユーザーニーズに対応して、あえて軽いインターフェースにするのと同時に、ハマってリピーターになる要素を盛り込んで開発したと思います。実際、ユーザーたちは、その面白さの本質を見抜いて、ファンになっているわけですからね。
ただ、あのビジネスモデルは過去にもあったものですよね。NHNの「ハンゲーム」といった韓国系のPCゲームでも、アイテム課金のビジネスをずいぶん前からやってきています。
でも、従来からある国内ゲーム会社は、既存のパッケージビジネスという稼げる事業があったから、あまりそこにフォーカスすることをしなかった。だから、出遅れてしまったんだと思います。
――ケータイSNSでは、『たまごっち』のような育てゲームが大人気です。
鵜之澤氏:バンダイは本家本元の育てゲームの『たまごっち』シリーズがあるわけですけど、SNS向けのソーシャルゲームに展開するという考えには及ばなかった――。
いずれにせよ、我々には使えるコンテンツもあったし、ビジネスモデルも理解できていたのに、それをソーシャルという市場に持っていくことができなかったわけです。だから、今やるべきことは分かっています。
原発ある自治体にクラウド拠点 IIJやユニシス
インターネット経由で情報処理サービスを提供する「クラウドコンピューティング」の拠点を、原子力発電所を持つ自治体に設置する試みが動き出す。電源立地交付金を活用して電気料金を最大半額に抑えるのが特徴。1号案件として、インターネットイニシアティブ(IIJ)と中国電力、日本ユニシスと関西電力がそれぞれ島根県、福井県にデータセンターを建設する。
IIJと中国電力は2011年2月の稼働を目指し、松江市でサーバー5000台規模のコンテナ型データセンターを建設する。今夏にも着工予定で、建設費は約16億円。日本ユニシスと関西電力も福井県内で数千台規模の建設を予定している。美浜町など県西南部が有力で、建設費は50億円以上を見込んでいる。
データセンターは大量の電気を消費するため、発電所の近くに建設する利点がある。さらに原発を保有するか隣接する自治体に設置した場合、事業者は新設・増設した翌年度から8年間、国から給付される電源立地交付金を活用できる。
これによって「運営コストの4分の1~3分の1を占める」(IIJ)データセンターの電気料金を最大半額まで抑えられるほか、自治体によっては固定資産税の減免などの優遇措置も受けられる。自治体側は税収増や企業誘致の呼び水としての効果が期待できる。
政府は情報提供などを通じて自治体とIT関連会社、電力会社との仲介を進める。北海道や茨城県などがデータセンター誘致に動いているという。今年中に経済産業、総務、国土交通など関係省庁間による連絡会を設け、データセンター設置のための規制改革や特区の指定なども検討する。
経産省は国内データセンターのサーバー台数を現在の120万台から20年に400万台に引き上げる目標を掲げている。ただ、データセンターは建築基準法の対象となり、新設や増設、撤去の申請許可に通常2~3カ月かかる。コスト面に加えて消防設備の設置基準などの制約も多く、クラウドサービスのデータセンターは海外に置かれるケースが多かった。
企業の資金調達、アジア勢が25兆円 欧米抜く
2010年上期は17%増 中国がけん引
【ニューヨーク=川上穣】今年上半期のアジア企業による資本市場からの資金調達額が、米国や欧州勢を半期ベースで初めて上回った。中国やインド企業が設備投資など成長に必要な資金を確保しようと株式や社債の発行を増やしたためで、調達額は計2834億ドル(約25兆円)と前年同期比17%増。一方、米欧企業の調達は落ち込んだ。成長力の差を背景に、国際資本市場でも資金調達を巡る企業の勢力図が急速に変化している。
米調査会社ディール・ロジックによると、1~6月に世界の企業が株式や社債の発行で調達した資金は前年同期比30%減の9070億ドルだった。リーマン・ショックのあった2008年下半期(5950億ドル)以来の低水準に落ち込んだ。
地域別では米国が37%減の2710億ドル、欧州は53%減の2425億ドル。欧州はリーマン・ショック後の09年上半期には、危機の震源地だった米国を上回ったが、ギリシャなどの財政不安を背景に足元では落ち込みが大きい。対照的にアジア(日本を含む)は旺盛な資金需要を背景に2ケタ増。アジアと米・欧の逆転は比較可能な2000年以降初めて。
アジアで目立つのが中国企業による調達で、アジアの約4割を占めた。中国石油天然気集団(CNPC)など大手石油会社が数十億ドル規模の社債を相次いで発行。インドや韓国企業なども活発。インドの大手鉱山会社NMDCが21億ドルの増資をするなど、設備投資やM&A(合併・買収)に必要な資金調達を拡大している。
日本企業の調達額は約700億ドルとアジア全体の4分の1で、前年同期に比べ微増。超低金利で調達コストは低いが、上場企業の09年度末の手元資金は65兆円と過去最高水準にあるうえ、アジア企業に比べ投資意欲が相対的に低い。アジアの伸びのほとんどを日本以外のアジア企業が占めた格好だ。
ロシア版シリコンバレー計画、欧米大手が相次ぎ名乗り
【モスクワ=石川陽平】モスクワ近郊に研究開発機関を集積する「ロシア版シリコンバレー」計画へ、欧米企業が相次ぎ進出の名乗りを上げている。米シスコシステムズが総額10億ドル(約880億円)の投資を表明したほかインテル、ノキアなども検討に着手。先端分野への外資進出が加速すれば、国内産業の技術開発力強化による「経済のイノベーション(革新)」を掲げ、再選を狙うメドベージェフ大統領への追い風となりそうだ。
真っ先に進出を表明した外国企業はネットワーク機器世界最大手の米シスコシステムズ。6月下旬に訪米したメドベージェフ氏立ち会いのもと、建設・運営に当たる「スコルコボ開発基金」と覚書を交わし、開発拠点を設ける計画を明らかにした。投資先にはベンチャー企業なども含むという。
米スマートフォン、グーグルOSがシェア伸ばす 3~5月期
【シリコンバレー=奥平和行】米調査会社のコムスコアは米国における2010年3~5月期のスマートフォン(高機能携帯電話)利用動向をまとめた。搭載基本ソフト(OS)別の稼働台数をみると、上位5社中4社がシェアを低下させる中、4位の米グーグルのOS「アンドロイド」を搭載した製品が唯一4ポイント増の13%となり、3位の米マイクロソフト(1.9ポイント減の13.2%)とほぼ肩を並べた。
首位は「ブラックベリー」を展開するカナダのリサーチ・イン・モーションでシェアは0.4ポイント減の41.7%。2位は米アップルで1ポイント減の24.4%だった。
グーグルは08年からアンドロイドを無償で通信機器メーカーに提供、5月時点で21社が世界48カ国で60機種以上を発売している。米国でも今春に米モトローラや台湾HTCなどが新機種を売り出しており、品ぞろえ拡大がシェア上昇につながったようだ。アップルは6月に「iPhone(アイフォーン)」の新機種を発売しており、6~8月期はどこまでシェアを拡大するかに注目が集まりそうだ。
中国企業、プラダ買収交渉か 現地紙報道
中国紙「経済観察報(電子版)」は10日、上海に拠点を置く中国企業、上海富客斯実業(英語名・フォックスタウン)がイタリアの高級服飾ブランド「プラダ」の買収交渉をしていると報じた。既にプラダ株約13%を保有し、プラダ側と追加取得に向け協議を始めたという。
フォックスタウンはブランド商品を格安で販売するアウトレットモールを中国で店舗展開している。同社の陸強総裁によると、2008年の金融危機でプラダの資金繰りが悪化したのを契機に、プラダの債権を保有する銀行から株式を取得した。
株の追加取得に当たり、現経営陣を今後5年間変えないとする一方、中国を中心とするアジア市場向けに低価格商品を投入する計画を提案しているという。総額4億5000万ユーロ(約500億円)で取得を目指している。プラダ側は株式の売却価格を引き上げ、交渉は難航しているという。
中国の景気拡大に伴い、富裕層らによるブランド品などぜいたく品市場が急拡大している。人民元も緩やかに上昇する中で、今後、中国の企業が欧米の著名な服飾ブランド企業を取得する機運も高まりそうだ。
iPhone 4とルネサス、そしてSIMロック解除をつなぐ“糸”
相次ぐニュースが示す「乱世」の予感
去る6月24日、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の最新機種である「iPhone 4」が、全世界で発売された。米アップルの発表によれば、発売開始後3日足らずで全世界合計170万台を出荷したという。端末販売の伸び悩む国内メーカーにしてみれば、垂涎ものの記録だろう。
ところが現在、iPhone 4に関する話題の中心は、こうした華々しいセールスではない。iPhone 4の無線通信機能が低く、端末の持ち方によって通信状態が変わり、場合によっては通信が途切れるという症状が、米国を中心にあちこちで報告され始めているのだ。
この問題、当初は精密機器にありがちな初期不良であり、行列をなしてまで手に入れたいアップルファンならばそんな懸念を気にすることなく買い求めるだろう、と筆者も考えていた。しかし症状の報告を知れば知るほど、これはそう簡単に改善できない構造欠陥である可能性が読み取れた。
そしてそれを裏付けるように、米国では早くもアップルに対する集団訴訟が起こされた。さらにアップル側の対応の拙さも批判の対象としてやり玉にあげられ、とうとう日本でもアップルジャパンがiPhone 4の返品に応じることになった。どうやらこれまでの初期不良とは、状況が全く異なるようだ。
一方、日本の半導体大手のルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)が、ノキアの通信用中核部品のワイヤレスモデム事業部門を買収することが発表された。買収金額は2億ドルで、買収内容には知的財産や評価試験装置、また同部門の技術者1100人の受け入れも含まれている。
今回の対象となるワイヤレスモデムは、ケータイ端末のデータ信号を通信方式に合わせて変換する部品で、ケータイ端末の通信機能を司る「心臓」そのものである。従来はルネサスがノキアからライセンス供与を受け、モデムをシステムLSI(大規模集積回路)に搭載してきた。この買収を受けて、米クアルコムやスウェーデンのSTエリクソンなどが参戦する3GやLTEなどの「ガチンコ勝負」に、ルネサスが日本勢として正式に名乗りを上げることになる。
この2つのニュースは、極めて対照的であるのと同時に、今後のケータイ産業のあり方を占ううえでも極めて重要な動きである。そしてその問題意識は、先日のNTTドコモの「全機種SIMロック解除宣言」ともつながっているように、筆者には思えるのである。
通信の苦手なケータイ?
まずiPhone 4の不調について、おさらいしておこう。いくつかの症状が報告されているようだが、共通しているのは「端末の持ち方」によって通信状況が変わるということである。そしてこれに伴って、体感される通信状況も変化し、場合によっては通信が途切れることがあるようだ。
これに対しアップルは公式発表として、
・iPhoneに限らず多くのケータイが持ち方によって受信状況が変わることがある・iPhoneの電波の強さ(電界強度)を表示するバーの計算式が間違っていた・このため電波の弱い地域でも電波が強く受信できるような表示になっていた
として、この計算式を修正するソフトウエアアップデートを「近日中に提供する」と表明した。すなわちアップルの言い分としては、「あくまで表示の問題である」ということだ。
一方で、この問題が発覚した直後、アップルのスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)は、ユーザーに端末の持ち方を変えるように指導するとともに、「『バンパー』と呼ばれるゴムとプラスチックでできた保護カバーを装着すれば状況が改善する」とコメントした。人間の身体は電気を通すので、その人間と端末を絶縁体(ゴムのように電気を通さない物質)によって電気的に切り離せばいいということだ。
このジョブズCEOのコメント通りなのだとしたら、実は事態はかなり深刻であることになる。電気のやり取りで通信を行う無線機にとって、このように電気の流れを隔絶したり制御したりすることは、その性能の根幹に関わる問題だ。これが端末自身によって解決できず、絶縁体の装着を余儀なくされるということは、ケータイにとって最重要機能である無線機としての性能について、iPhone 4はそのままでは修復困難な構造欠陥を設計段階で有しているということになる。
もちろんこれは正確な検証を行ったわけではなく、いくばくかの物理学的知識に照らした筆者の推測に過ぎない。ただ、ここで記したほどには状況が深刻でないにせよ、通信の苦手なケータイ端末は、いわば炭酸の抜けたビールのようなもので、端的に言えば存在理由が薄れる。
ましてスマートフォンは、ネットワークの先にあるクラウドコンピューティング環境にこそ、その価値の源泉がある。つまり通信機能は生命線そのものであり、それが失われると手も足も出ないばかりか、ただの大きな音楽再生端末に過ぎないということになる。
「らしからぬ事態」を招いた理由
アップルは水をも漏らさぬサービスのデザインとその貫徹をいかに重視しているそのアップルをしてこうした「らしからぬ事態」を招いたことは、常に完璧な美意識を求めるアップルにしてみれば、失敗と評してもいいのではないだろうか。
この理由には2つある、と筆者は考えている。1つは、急ピッチすぎた製品出荷タイミングの前倒しである。以前は筆者自身も矢継ぎ早の新製品投入と評したが、振り返ってみればやや動きが早すぎたようにも思える。実際、「iPad(アイパッド)」の投入と完全に被ってしまい、iPadの存在感が早くも霞んでいるようにさえ感じる。もしかすると、iPhone 4の詳細情報が事前に流出したことが影響しているのかもしれない・・・と邪推させるほどの拙速感である。
もう1つの理由はより根深いのだが、そもそもアップルは無線通信機器の開発が得意でないということ。考えてみればそもそもアップルはパソコンメーカーであって、ケータイのようなタフな使用環境下での無線通信については、彼らに独自の技術やノウハウが蓄積されているというわけではない。
そんな彼らにとって苦手なものである以上、無線通信機能については、設計段階での見落としや品質管理などチェック機能の低下が起こりうる。一方でハードウエア販売が彼らの売り上げの8割を占める限り、いかに端末を安く作るかがその利幅を決める。そのため、要素技術を有する中国や韓国の部品・組み立てメーカーを買い叩き、無線機としては「安かろう、悪かろう」な端末となる。仮にこうした方法で製品開発が行われているのだとすれば、むしろその品質が維持されるほうが不思議でさえある。
実は、アップル製品の無線通信機能の欠陥は、今回に始まった話ではない。iPhoneがつながらない理由として、よく通信事業者側のインフラ品質が指摘されるが、実は同じ通信環境でiPhone以外の一般的なケータイと比較してみると、iPhoneの通信品質がことさらに低いことが分かる。すなわち通信事業者のせいというだけでなく、iPhoneそのものに問題がある可能性が拭えないということだ。
加えてアップルは、今回の被害を自ら拡大してしまった。発売当日から3日間で170万台を出荷したと発表されたが、ということは170万台(以上)が初期ロットに該当するということである。
今回はその170万台すべてがトラブルの対象となってしまい、米国で消費者からの集団訴訟を招いてしまった。スマートフォンのような精密機器であれば、市場がそれを許す限り、小規模出荷を頻繁に繰り返して、細かい修正に対応するというのがセオリーだが、消費者の期待に応えるべく一度に大量のリリースをしたことが、今回は裏目に出た格好である。
挑戦権を再度獲得したルネサス
このように書くと、熱心なアップルファンからは「執拗なバッシングだ」と怒られるかもしれない。だからというわけではないが、こうした事態は、アップル以外のメーカーにとっても他人事ではない。もちろんアップルのケースはワールドワイドに展開する規模感に比例してハレーションも大きいのだが、製造業であれば誰しもが似たようなリスクを抱えている。
特にケータイのように、あらゆる技術要素を高度に投合し、それをビジネスモデルを絡めて、安価で短期に大量の端末を市場投入するというスタイルは、このリスクを大きくさせる潜在的な要素を多く含んでいる。実際、日本のメーカーも歴史を紐解けば無傷には程遠く、それなりに深刻な機能欠陥やセキュリティ上の課題が散発してきた。
アップルにせよそうでないにせよ、最終的には人間の所作である以上、このリスクを完全に回避することはできない。しかしリスクを低減することは可能だ。例えば通信機能に係る機能設計や部品調達を、自らの手元の近くで行うことは、その有力な手段となろう。極めて原理的・原始的なアプローチだが、自らに近いところで製品開発が行われていれば、距離が近い分だけ対応の柔軟性が増すのは当然のこと。
その意味で、今回ルネサスがノキアのワイヤレスモデム部門を買収したというニュースは、このところ元気のない日本のケータイ産業が復活を果たすうえで、非常にポジティブかつ重要な動きである。
特に、このタイミングでこのディールが成立したということの意味は極めて大きい、と筆者は考えている。本連載でもこれまで触れてきているように、先進国ではLTE、新興国ではW-CDMAに、技術の収束が見えてきた。技術が定まればそれをチップに集約して生産性を向上させるのはビジネスの王道である。つまりセミコンレベルでの部品開発が、大規模かつ長期間に本格化する時期をいよいよ迎えているのである。
もちろん、どこまで知的財産が獲得できているのか、といったディールの詳細が分からない以上、安易な楽観視は禁物である。なにしろ昨秋、ノキアはアップルを、またアップルもノキアを、いずれもケータイ関連の特許侵害で、それぞれ訴訟を起こしている。今回ルネサスが買収した部門はその矢面のはずであり、これに限らず知財を巡る攻防はあちこちで火を噴いているはずだ。買収しただけでコトがスムーズに運ぶとは限らない。
それでも、ノキアというグローバルプレーヤーが担ってきた部品開発の役割を、この環境下で日本の手元に置けるということは、極めて重要である。セミコンの領域で世界への挑戦権を再度獲得したことで日本発の新たなケータイ端末を提案できるとなれば、コンテンツ産業も含めて、アップサイドの大きな可能性を描けることになる。その意味で、率直に応援すべき動きと言えるだろう。
資源を大食いする「厄介な存在」
一方で今回のiPhone 4の騒動は、通信インフラ、端末、サービス、アプリケーション、コンテンツのすべてが揃ったところではじめてエコシステム(生態系)が形成されるという、ケータイビジネスの基本構造を改めて認識させた。そのどれかが欠けてもダメだし、それらの要素をつなぐ機能が低下しただけで存在理由を失う。
かのように脆弱な構造とも言えるケータイ産業が、日本ではなぜここまで大きく育ったのか。これも複合要因ではあるが、通信事業者が中央に立ってエコシステムのデザインとメンテナンスを続けてきたというのは、やはり大きい要因だろう。
例えば、日本のケータイ市場は、全国で1億契約を超える規模を擁している。普通に考えれば、面的にも量的にも相当なトラフィックが発生していることになるが、ここまで回線容量の逼迫などで大きな課題はなかった。その一因は、端末やサービスの設計とインフラの状況が、通信キャリアによってある程度は裁定され、また最適化されていたからだと筆者は考えている。すなわち、従来の端末の上で成立する小規模のコンテンツが、結果としてインフラや端末の性能に「優しい」ものだった、ということだ。
しかし、資源をやたらと大食いしつつ、通信事業者からはコントロールしきれない、そんなスマートフォンという「厄介な存在」の台頭を無秩序に許したら、一体何が起きるか。それは既にソフトバンクモバイル(以下、SBM)に対するiPhone利用者からのクレームを見れば一目瞭然である。そしてこうした事態は何も日本固有の話ではなく、およそスマートフォンの導入に積極的な市場であれば、大なり小なりどこでも起きている問題なのである。
もちろん、スマートフォンがアプリケーション開発に新たな地平を切り開いたこと、そしてクラウドコンピューティングの概念を定着させて情報処理の概念を前に推し進めていることは評価すべき事実である。そしてスマートフォンを駆逐することはもはや現実的ではないし、一度その楽しさを知ってしまえば、なかなか後戻りはできない。
ただ、通信事業者の視点に立てば、インフラの大規模な更改が迫る中、その設計や投資計画にスマートフォンが与える影響の大きさと、その割にスマートフォンがまだまだマイノリティであるということに、矛盾が生じている。そして今後は一般的なケータイ端末、スマートフォン、あるいはセンサー、M2M(マシン・トゥ・マシン)システム、白物家電などのような組込系の端末も登場するだろう。
世の中のすべてがスマートフォンになっていくと考えるのは一部のマニアだけで、実際はより多様で複雑な用途が広がっていく。こう考えた時、インフラ更改とスマートフォンをどう位置づけ、関係づけるかは、極めて悩ましい問題と言える。
NTTドコモが投げかける問いかけ
そんな混沌とする中、国内ではNTTドコモが先陣をきってSIMロック解除に大きく舵を切った。同社の発表によれば、2011年4月以降に出荷するすべての端末で、SIMロック解除の機能を搭載するという。総務省でSIMロック解除の検討が始まった今春から、頑なに反対するSBMに対して、NTTドコモは意外なほど容認姿勢を示していたが、ここまで全面的に対応するというのは、業界でも大きな衝撃をもって受け止められている。
以前の連載でも触れたが、通信事業者中心による垂直統合というエコシステムの実現に、SIMロックが果たしてきた役割は極めて大きい。この仕組みを、従来は垂直統合の守護者としてそびえ立っていたNTTドコモが自ら率先して放棄するということは、LTEをはじめとした今後の通信インフラのデザインや、ひいてはその根拠の1つとなる周波数行政などに、極めて大きな問いを投げかけたことになる。
詳細は明らかにされていないが、伝え聞くところによれば、どうやら本件はNTTドコモがiPhoneやiPadを取りに行くべくSBMにプレッシャーをかけているという程度の単純な話ではないらしい。また背景はさておき、全面的にSIMロック解除を打ち出すということは、相当の準備と覚悟を持って臨んでいると考えるべきだろう。
iPhone 4の根本的な問題と、その裏返しとして技術の中核を押さえたルネサスによる買収劇、そして今回のNTTドコモのSIMロック解除。この3つの動きを並べてみると、もはやアップルでさえも勝ち組とは言い切れない「乱世」に、世界中のケータイ業界が入っていることが、改めてお分かりいただけるのではないだろうか。
【産経主張】参院選あす投票 日本の迷走正す選択を 見極めたい国民の安全と繁栄
日本が危機的な状況を乗り越えることができるかどうかの岐路に立っている。あす11日に投票日を迎える参院選が持つ極めて重要な意味合いをこう指摘したい。
鳩山由紀夫、菅直人の首相2代にわたる民主党主導政権による迷走と失政を是正するか、それとも継続を認めるかが問われているからである。
有権者に直視してもらいたいのは、日本の生存と繁栄が危うさの中にあることだ。北朝鮮の攻撃による韓国の哨戒艦撃沈事件は、日本周辺の安全保障環境がいかに悪化しているかを示している。
それなのに、鳩山前首相により米軍普天間飛行場移設問題は「解決不能」ともいえる状況に追い込まれてしまった。日米同盟が機能しないことは日本の安全が維持されないことを意味する。
◆議論から逃げた首相
子ども手当や農家への戸別所得補償に代表されるばらまき政策は一部修正されたものの、基本的な考え方は変わっていない。
菅首相が提唱した消費税増税も「腰だめ」のような発言が続いたことで信頼を大きく損なってしまっている。これ以上の政治の混乱や暴走は国を危うくしかねない。選挙結果が持つ意味を深くかみしめ、大切な一票を投じる眼力を持ちたい。
迷走を一段と深刻化させているのは、首相の消費税増税をめぐる発言の軽さである。選挙戦直前に消費税増税に向けた議論の必要性を提起し、自民党が掲げる「当面10%」を「参考にする」と具体的な税率にも言及した。
だが、与党や国民の間に増税論への反発が広がると「与野党協議を提案するところまでが公約だ」とトーンダウンし、低所得者対策の還付制度をめぐり200万円から400万円まで異なる所得水準を挙げた。
発言の揺れを批判されると「1ミリたりともぶれていない」などと反論したが、終盤戦では反発を恐れて演説で消費税に触れない場面もあった。こうした姿勢が消費税増税をかえって遠ざける結果になるとすれば、きわめて残念だ。
不可思議なのは民主党内で消費税上げに対する意見が割れ、いずれが党の見解なのかわからないことだ。小沢一郎前幹事長が首相の増税方針に強い異論を唱えていることである。
小沢氏は鳩山前首相とともに政治とカネの問題で国民の信を失わせた張本人だ。しかし、菅首相は両氏とも辞任によって「一定のけじめがついた」と不問にした。中途半端な姿勢ではなかったか。
首相が掲げる「第三の道」は、増税したとしても医療・介護などの成長分野に支出し、税収増で財政を再建できるというものだが、机上の計算を日本経済で実験するやり方は無責任だ。
◆「ねじれ」を恐れるな
焦点の普天間問題も、首相は8月末に日米合意に基づき移設先の位置や工法を決定しなければならないが、その後、いかに沖縄側と協議していくのか。事態の解決に向けて動こうとしていない。
選挙戦のさなか、ロシア軍が日本固有の領土である北方四島の択捉島で軍事演習を行ったほか、中国海軍のミサイル駆逐艦とフリゲート艦が沖縄本島西南西の公海上を東シナ海から太平洋に向け航行した。これらは日本の対処能力を見透かしたような行動と受け取れよう。だが、各党とも積極的に取り上げようとしないのは問題である。国家主権や安全保障への確固たる姿勢を示してもらいたい。
首相は選挙中に「サミットに出る首相が毎年代わっていいのか」と訴え、政権が安定しなければ国際的信用を失い、国民生活も守れないと説明した。参院で与党が過半数割れすれば衆参両院の「ねじれ」が生じ、政権運営が困難になることを訴えたいのだろう。
だが、「ねじれ」は政権の迷走と失政に歯止めをかけることでもある。国民が不利益を被ると決めつけるのは説得力に乏しい。
自民党など野党は、参院で与党を過半数割れに追い込むことで「民主党政治にブレーキをかける」と訴えている。選挙後、現状の政治の是正にどのような姿勢で取り組もうとしているのかも明確にしてほしい。
各党公約には、民主党が外国人参政権に言及していない問題などもある。投票前にきちんと読み返し、書かれていることの評価と、書かれていないことへの洞察が必要だ。日本の危機を克服することができる政党と政治家の真贋(しんがん)を見極めることが求められている。
相次ぐニュースが示す「乱世」の予感
去る6月24日、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の最新機種である「iPhone 4」が、全世界で発売された。米アップルの発表によれば、発売開始後3日足らずで全世界合計170万台を出荷したという。端末販売の伸び悩む国内メーカーにしてみれば、垂涎ものの記録だろう。
ところが現在、iPhone 4に関する話題の中心は、こうした華々しいセールスではない。iPhone 4の無線通信機能が低く、端末の持ち方によって通信状態が変わり、場合によっては通信が途切れるという症状が、米国を中心にあちこちで報告され始めているのだ。
この問題、当初は精密機器にありがちな初期不良であり、行列をなしてまで手に入れたいアップルファンならばそんな懸念を気にすることなく買い求めるだろう、と筆者も考えていた。しかし症状の報告を知れば知るほど、これはそう簡単に改善できない構造欠陥である可能性が読み取れた。
そしてそれを裏付けるように、米国では早くもアップルに対する集団訴訟が起こされた。さらにアップル側の対応の拙さも批判の対象としてやり玉にあげられ、とうとう日本でもアップルジャパンがiPhone 4の返品に応じることになった。どうやらこれまでの初期不良とは、状況が全く異なるようだ。
一方、日本の半導体大手のルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)が、ノキアの通信用中核部品のワイヤレスモデム事業部門を買収することが発表された。買収金額は2億ドルで、買収内容には知的財産や評価試験装置、また同部門の技術者1100人の受け入れも含まれている。
今回の対象となるワイヤレスモデムは、ケータイ端末のデータ信号を通信方式に合わせて変換する部品で、ケータイ端末の通信機能を司る「心臓」そのものである。従来はルネサスがノキアからライセンス供与を受け、モデムをシステムLSI(大規模集積回路)に搭載してきた。この買収を受けて、米クアルコムやスウェーデンのSTエリクソンなどが参戦する3GやLTEなどの「ガチンコ勝負」に、ルネサスが日本勢として正式に名乗りを上げることになる。
この2つのニュースは、極めて対照的であるのと同時に、今後のケータイ産業のあり方を占ううえでも極めて重要な動きである。そしてその問題意識は、先日のNTTドコモの「全機種SIMロック解除宣言」ともつながっているように、筆者には思えるのである。
通信の苦手なケータイ?
まずiPhone 4の不調について、おさらいしておこう。いくつかの症状が報告されているようだが、共通しているのは「端末の持ち方」によって通信状況が変わるということである。そしてこれに伴って、体感される通信状況も変化し、場合によっては通信が途切れることがあるようだ。
これに対しアップルは公式発表として、
・iPhoneに限らず多くのケータイが持ち方によって受信状況が変わることがある・iPhoneの電波の強さ(電界強度)を表示するバーの計算式が間違っていた・このため電波の弱い地域でも電波が強く受信できるような表示になっていた
として、この計算式を修正するソフトウエアアップデートを「近日中に提供する」と表明した。すなわちアップルの言い分としては、「あくまで表示の問題である」ということだ。
一方で、この問題が発覚した直後、アップルのスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)は、ユーザーに端末の持ち方を変えるように指導するとともに、「『バンパー』と呼ばれるゴムとプラスチックでできた保護カバーを装着すれば状況が改善する」とコメントした。人間の身体は電気を通すので、その人間と端末を絶縁体(ゴムのように電気を通さない物質)によって電気的に切り離せばいいということだ。
このジョブズCEOのコメント通りなのだとしたら、実は事態はかなり深刻であることになる。電気のやり取りで通信を行う無線機にとって、このように電気の流れを隔絶したり制御したりすることは、その性能の根幹に関わる問題だ。これが端末自身によって解決できず、絶縁体の装着を余儀なくされるということは、ケータイにとって最重要機能である無線機としての性能について、iPhone 4はそのままでは修復困難な構造欠陥を設計段階で有しているということになる。
もちろんこれは正確な検証を行ったわけではなく、いくばくかの物理学的知識に照らした筆者の推測に過ぎない。ただ、ここで記したほどには状況が深刻でないにせよ、通信の苦手なケータイ端末は、いわば炭酸の抜けたビールのようなもので、端的に言えば存在理由が薄れる。
ましてスマートフォンは、ネットワークの先にあるクラウドコンピューティング環境にこそ、その価値の源泉がある。つまり通信機能は生命線そのものであり、それが失われると手も足も出ないばかりか、ただの大きな音楽再生端末に過ぎないということになる。
「らしからぬ事態」を招いた理由
アップルは水をも漏らさぬサービスのデザインとその貫徹をいかに重視しているそのアップルをしてこうした「らしからぬ事態」を招いたことは、常に完璧な美意識を求めるアップルにしてみれば、失敗と評してもいいのではないだろうか。
この理由には2つある、と筆者は考えている。1つは、急ピッチすぎた製品出荷タイミングの前倒しである。以前は筆者自身も矢継ぎ早の新製品投入と評したが、振り返ってみればやや動きが早すぎたようにも思える。実際、「iPad(アイパッド)」の投入と完全に被ってしまい、iPadの存在感が早くも霞んでいるようにさえ感じる。もしかすると、iPhone 4の詳細情報が事前に流出したことが影響しているのかもしれない・・・と邪推させるほどの拙速感である。
もう1つの理由はより根深いのだが、そもそもアップルは無線通信機器の開発が得意でないということ。考えてみればそもそもアップルはパソコンメーカーであって、ケータイのようなタフな使用環境下での無線通信については、彼らに独自の技術やノウハウが蓄積されているというわけではない。
そんな彼らにとって苦手なものである以上、無線通信機能については、設計段階での見落としや品質管理などチェック機能の低下が起こりうる。一方でハードウエア販売が彼らの売り上げの8割を占める限り、いかに端末を安く作るかがその利幅を決める。そのため、要素技術を有する中国や韓国の部品・組み立てメーカーを買い叩き、無線機としては「安かろう、悪かろう」な端末となる。仮にこうした方法で製品開発が行われているのだとすれば、むしろその品質が維持されるほうが不思議でさえある。
実は、アップル製品の無線通信機能の欠陥は、今回に始まった話ではない。iPhoneがつながらない理由として、よく通信事業者側のインフラ品質が指摘されるが、実は同じ通信環境でiPhone以外の一般的なケータイと比較してみると、iPhoneの通信品質がことさらに低いことが分かる。すなわち通信事業者のせいというだけでなく、iPhoneそのものに問題がある可能性が拭えないということだ。
加えてアップルは、今回の被害を自ら拡大してしまった。発売当日から3日間で170万台を出荷したと発表されたが、ということは170万台(以上)が初期ロットに該当するということである。
今回はその170万台すべてがトラブルの対象となってしまい、米国で消費者からの集団訴訟を招いてしまった。スマートフォンのような精密機器であれば、市場がそれを許す限り、小規模出荷を頻繁に繰り返して、細かい修正に対応するというのがセオリーだが、消費者の期待に応えるべく一度に大量のリリースをしたことが、今回は裏目に出た格好である。
挑戦権を再度獲得したルネサス
このように書くと、熱心なアップルファンからは「執拗なバッシングだ」と怒られるかもしれない。だからというわけではないが、こうした事態は、アップル以外のメーカーにとっても他人事ではない。もちろんアップルのケースはワールドワイドに展開する規模感に比例してハレーションも大きいのだが、製造業であれば誰しもが似たようなリスクを抱えている。
特にケータイのように、あらゆる技術要素を高度に投合し、それをビジネスモデルを絡めて、安価で短期に大量の端末を市場投入するというスタイルは、このリスクを大きくさせる潜在的な要素を多く含んでいる。実際、日本のメーカーも歴史を紐解けば無傷には程遠く、それなりに深刻な機能欠陥やセキュリティ上の課題が散発してきた。
アップルにせよそうでないにせよ、最終的には人間の所作である以上、このリスクを完全に回避することはできない。しかしリスクを低減することは可能だ。例えば通信機能に係る機能設計や部品調達を、自らの手元の近くで行うことは、その有力な手段となろう。極めて原理的・原始的なアプローチだが、自らに近いところで製品開発が行われていれば、距離が近い分だけ対応の柔軟性が増すのは当然のこと。
その意味で、今回ルネサスがノキアのワイヤレスモデム部門を買収したというニュースは、このところ元気のない日本のケータイ産業が復活を果たすうえで、非常にポジティブかつ重要な動きである。
特に、このタイミングでこのディールが成立したということの意味は極めて大きい、と筆者は考えている。本連載でもこれまで触れてきているように、先進国ではLTE、新興国ではW-CDMAに、技術の収束が見えてきた。技術が定まればそれをチップに集約して生産性を向上させるのはビジネスの王道である。つまりセミコンレベルでの部品開発が、大規模かつ長期間に本格化する時期をいよいよ迎えているのである。
もちろん、どこまで知的財産が獲得できているのか、といったディールの詳細が分からない以上、安易な楽観視は禁物である。なにしろ昨秋、ノキアはアップルを、またアップルもノキアを、いずれもケータイ関連の特許侵害で、それぞれ訴訟を起こしている。今回ルネサスが買収した部門はその矢面のはずであり、これに限らず知財を巡る攻防はあちこちで火を噴いているはずだ。買収しただけでコトがスムーズに運ぶとは限らない。
それでも、ノキアというグローバルプレーヤーが担ってきた部品開発の役割を、この環境下で日本の手元に置けるということは、極めて重要である。セミコンの領域で世界への挑戦権を再度獲得したことで日本発の新たなケータイ端末を提案できるとなれば、コンテンツ産業も含めて、アップサイドの大きな可能性を描けることになる。その意味で、率直に応援すべき動きと言えるだろう。
資源を大食いする「厄介な存在」
一方で今回のiPhone 4の騒動は、通信インフラ、端末、サービス、アプリケーション、コンテンツのすべてが揃ったところではじめてエコシステム(生態系)が形成されるという、ケータイビジネスの基本構造を改めて認識させた。そのどれかが欠けてもダメだし、それらの要素をつなぐ機能が低下しただけで存在理由を失う。
かのように脆弱な構造とも言えるケータイ産業が、日本ではなぜここまで大きく育ったのか。これも複合要因ではあるが、通信事業者が中央に立ってエコシステムのデザインとメンテナンスを続けてきたというのは、やはり大きい要因だろう。
例えば、日本のケータイ市場は、全国で1億契約を超える規模を擁している。普通に考えれば、面的にも量的にも相当なトラフィックが発生していることになるが、ここまで回線容量の逼迫などで大きな課題はなかった。その一因は、端末やサービスの設計とインフラの状況が、通信キャリアによってある程度は裁定され、また最適化されていたからだと筆者は考えている。すなわち、従来の端末の上で成立する小規模のコンテンツが、結果としてインフラや端末の性能に「優しい」ものだった、ということだ。
しかし、資源をやたらと大食いしつつ、通信事業者からはコントロールしきれない、そんなスマートフォンという「厄介な存在」の台頭を無秩序に許したら、一体何が起きるか。それは既にソフトバンクモバイル(以下、SBM)に対するiPhone利用者からのクレームを見れば一目瞭然である。そしてこうした事態は何も日本固有の話ではなく、およそスマートフォンの導入に積極的な市場であれば、大なり小なりどこでも起きている問題なのである。
もちろん、スマートフォンがアプリケーション開発に新たな地平を切り開いたこと、そしてクラウドコンピューティングの概念を定着させて情報処理の概念を前に推し進めていることは評価すべき事実である。そしてスマートフォンを駆逐することはもはや現実的ではないし、一度その楽しさを知ってしまえば、なかなか後戻りはできない。
ただ、通信事業者の視点に立てば、インフラの大規模な更改が迫る中、その設計や投資計画にスマートフォンが与える影響の大きさと、その割にスマートフォンがまだまだマイノリティであるということに、矛盾が生じている。そして今後は一般的なケータイ端末、スマートフォン、あるいはセンサー、M2M(マシン・トゥ・マシン)システム、白物家電などのような組込系の端末も登場するだろう。
世の中のすべてがスマートフォンになっていくと考えるのは一部のマニアだけで、実際はより多様で複雑な用途が広がっていく。こう考えた時、インフラ更改とスマートフォンをどう位置づけ、関係づけるかは、極めて悩ましい問題と言える。
NTTドコモが投げかける問いかけ
そんな混沌とする中、国内ではNTTドコモが先陣をきってSIMロック解除に大きく舵を切った。同社の発表によれば、2011年4月以降に出荷するすべての端末で、SIMロック解除の機能を搭載するという。総務省でSIMロック解除の検討が始まった今春から、頑なに反対するSBMに対して、NTTドコモは意外なほど容認姿勢を示していたが、ここまで全面的に対応するというのは、業界でも大きな衝撃をもって受け止められている。
以前の連載でも触れたが、通信事業者中心による垂直統合というエコシステムの実現に、SIMロックが果たしてきた役割は極めて大きい。この仕組みを、従来は垂直統合の守護者としてそびえ立っていたNTTドコモが自ら率先して放棄するということは、LTEをはじめとした今後の通信インフラのデザインや、ひいてはその根拠の1つとなる周波数行政などに、極めて大きな問いを投げかけたことになる。
詳細は明らかにされていないが、伝え聞くところによれば、どうやら本件はNTTドコモがiPhoneやiPadを取りに行くべくSBMにプレッシャーをかけているという程度の単純な話ではないらしい。また背景はさておき、全面的にSIMロック解除を打ち出すということは、相当の準備と覚悟を持って臨んでいると考えるべきだろう。
iPhone 4の根本的な問題と、その裏返しとして技術の中核を押さえたルネサスによる買収劇、そして今回のNTTドコモのSIMロック解除。この3つの動きを並べてみると、もはやアップルでさえも勝ち組とは言い切れない「乱世」に、世界中のケータイ業界が入っていることが、改めてお分かりいただけるのではないだろうか。
【産経主張】参院選あす投票 日本の迷走正す選択を 見極めたい国民の安全と繁栄
日本が危機的な状況を乗り越えることができるかどうかの岐路に立っている。あす11日に投票日を迎える参院選が持つ極めて重要な意味合いをこう指摘したい。
鳩山由紀夫、菅直人の首相2代にわたる民主党主導政権による迷走と失政を是正するか、それとも継続を認めるかが問われているからである。
有権者に直視してもらいたいのは、日本の生存と繁栄が危うさの中にあることだ。北朝鮮の攻撃による韓国の哨戒艦撃沈事件は、日本周辺の安全保障環境がいかに悪化しているかを示している。
それなのに、鳩山前首相により米軍普天間飛行場移設問題は「解決不能」ともいえる状況に追い込まれてしまった。日米同盟が機能しないことは日本の安全が維持されないことを意味する。
◆議論から逃げた首相
子ども手当や農家への戸別所得補償に代表されるばらまき政策は一部修正されたものの、基本的な考え方は変わっていない。
菅首相が提唱した消費税増税も「腰だめ」のような発言が続いたことで信頼を大きく損なってしまっている。これ以上の政治の混乱や暴走は国を危うくしかねない。選挙結果が持つ意味を深くかみしめ、大切な一票を投じる眼力を持ちたい。
迷走を一段と深刻化させているのは、首相の消費税増税をめぐる発言の軽さである。選挙戦直前に消費税増税に向けた議論の必要性を提起し、自民党が掲げる「当面10%」を「参考にする」と具体的な税率にも言及した。
だが、与党や国民の間に増税論への反発が広がると「与野党協議を提案するところまでが公約だ」とトーンダウンし、低所得者対策の還付制度をめぐり200万円から400万円まで異なる所得水準を挙げた。
発言の揺れを批判されると「1ミリたりともぶれていない」などと反論したが、終盤戦では反発を恐れて演説で消費税に触れない場面もあった。こうした姿勢が消費税増税をかえって遠ざける結果になるとすれば、きわめて残念だ。
不可思議なのは民主党内で消費税上げに対する意見が割れ、いずれが党の見解なのかわからないことだ。小沢一郎前幹事長が首相の増税方針に強い異論を唱えていることである。
小沢氏は鳩山前首相とともに政治とカネの問題で国民の信を失わせた張本人だ。しかし、菅首相は両氏とも辞任によって「一定のけじめがついた」と不問にした。中途半端な姿勢ではなかったか。
首相が掲げる「第三の道」は、増税したとしても医療・介護などの成長分野に支出し、税収増で財政を再建できるというものだが、机上の計算を日本経済で実験するやり方は無責任だ。
◆「ねじれ」を恐れるな
焦点の普天間問題も、首相は8月末に日米合意に基づき移設先の位置や工法を決定しなければならないが、その後、いかに沖縄側と協議していくのか。事態の解決に向けて動こうとしていない。
選挙戦のさなか、ロシア軍が日本固有の領土である北方四島の択捉島で軍事演習を行ったほか、中国海軍のミサイル駆逐艦とフリゲート艦が沖縄本島西南西の公海上を東シナ海から太平洋に向け航行した。これらは日本の対処能力を見透かしたような行動と受け取れよう。だが、各党とも積極的に取り上げようとしないのは問題である。国家主権や安全保障への確固たる姿勢を示してもらいたい。
首相は選挙中に「サミットに出る首相が毎年代わっていいのか」と訴え、政権が安定しなければ国際的信用を失い、国民生活も守れないと説明した。参院で与党が過半数割れすれば衆参両院の「ねじれ」が生じ、政権運営が困難になることを訴えたいのだろう。
だが、「ねじれ」は政権の迷走と失政に歯止めをかけることでもある。国民が不利益を被ると決めつけるのは説得力に乏しい。
自民党など野党は、参院で与党を過半数割れに追い込むことで「民主党政治にブレーキをかける」と訴えている。選挙後、現状の政治の是正にどのような姿勢で取り組もうとしているのかも明確にしてほしい。
各党公約には、民主党が外国人参政権に言及していない問題などもある。投票前にきちんと読み返し、書かれていることの評価と、書かれていないことへの洞察が必要だ。日本の危機を克服することができる政党と政治家の真贋(しんがん)を見極めることが求められている。