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クラウドの「桃源郷」めざすグーグルのOS戦略
米グーグルの携帯端末向け基本ソフト(OS)「Android(アンドロイド)」が快進撃を続けている。米調査会社ガートナーによると、世界のスマートフォンOS市場における2010年4~6月のシェアは17.2%。米アップルの「iOS」を抜いてカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)の「ブラックベリー」に次ぐ3位に付けた。10年末にはトップを走るノキア(フィンランド)の「シンビアンOS」を端末出荷数で上回る可能性もある。
グーグルがアンドロイドを手掛ける狙いは、「事業戦略」としては明快だ。主な収益源は端末を対象としたモバイル広告である。当初はアップルのスマートフォン「iPhone」との共存共栄も模索されたが、現在はアップルの広告プラットフォーム「iAd」とグーグルの「Google Mobile Ads」が直接対決しようとしている。グーグルは収益の大半を占める検索連動型広告に次ぐ重要な新事業と位置づけており、エリック・シュミット最高経営責任者(CEO)は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで「アンドロイド向けアプリケーションと広告の売り上げは将来100億ドルに達するだろう」と強気の姿勢を示している。
一方、グーグルの「技術戦略」という観点でみると、アンドロイドにはわかりにくいところがある。検索連動型広告を主軸とするグーグルは、そもそもウェブブラウザーをビジネスの主戦場と位置づけている。これはネット経由でアプリケーションを提供するクラウドコンピューティングにより、端末やOSに依存することなく長期的な市場の基礎を築くことができるからだ。そうした企業ゴールを考えると、アンドロイドというOSビジネスは古い時代のものに見えてくる。にもかかわらず、グーグルはなぜ新規事業の柱としてアンドロイドを育てているのだろうか。
過渡期をくぐり抜ける現実路線
アンドロイドはオープンソース、クラウド型アプリケーションとの親和性など興味深い特徴を兼ね備えているが、携帯端末や通信事業者に依存する携帯OSであることに変わりはない。古いアンドロイドOSを載せた端末は「最新のアプリケーションに対応できない」「端末事業者との作り込みに時間を要する」といった課題を抱える。グーグルには多種多様な端末と市場に対応するための負担が発生し、現在のようにアップルの「iPhone」やRIMのブラックベリーと戦えるようになるまで、5年という長い年月を費やした。
それでもグーグルが携帯OSに手を染めるのは、技術的な過渡期をくぐり抜けるための現実的な経営判断といえるだろう。最近は「HTML5」という新世代の技術仕様が広がり始めてブラウザーで高度なアプリケーションを利用できる場合もある。しかし、市場にあるモバイル端末や家電はまだ組み込み系OS、組み込み系アプリケーションが主流であり、高機能なブラウザーを簡単に実装できる環境ではない。
現在のところ、アンドロイドというプラットフォームが提供するダウンロード型のアプリケーションは、iPhoneやブラックベリーと大差ない。しかし、グーグルは、ネットワークの高速化と歩調を合わせてデータセンターの高い処理能力を生かしたクラウド型アプリケーションを増やし、アンドロイドの特徴を出そうとしている。たとえば、音声操作や画像検索などのクラウド型サービスがそうで、将来は携帯ウェブサービスを多用した高度な業務用アプリケーションへの対応も考えている。ウェブとの親和性を端末レベル、アプリケーションレベルで高めることが、同社のモバイル広告を支える原動力となる。
アンドロイドで提供する多くのダウンロード型アプリケーションは、いずれグーグルのデータセンターに吸収されることになるだろう。とはいえ、当面は従来型のアンドロイドOSで市場を拡大していくのがグーグルの戦略だ。こうした背景から、アンドロイドは携帯端末だけでなく、手のひらパソコンやテレビ、ゲーム端末など広い分野に拡散を続けている。
クロームとクロームOSの関係は
グーグルは08年秋に独自のブラウザー「Chrome(クローム)」を発表した。また、09年夏にはリナックスOSをクロームに付加した「ChromeOS」も発表した。だが、クロームOSは業界関係者に多少の混乱をもって迎えられた。ブラウザーのよさは、多種多様なOSの違いを超えて様々なウェブサービスを利用できることにあるが、OSではその長所が失われてしまうからだ。しかも、グーグルがアンドロイドとクロームOSという2つの選択肢を提供する格好になる。
だが、クロームOSは、ブラウザーのクローム上でアプリケーションを動かすのに必要な最小限度の基本機能だけに特化している。無線やネットワーク機能、高度なカメラなど、ブラウザーに関係ない部分はサポートしていない。おかげで処理能力やメモリー容量が限られた安い組み込み系チップでも素早く起動し、ノートパソコンなどと変わらないブラウザー環境を実現できる。
つまり、モバイル端末メーカーは、2つの選択肢から目的に合わせて選べばいいことになる。アンドロイドを選べば、様々な周辺機器をサポートできるが、それなりのパワーとメモリーが必要となる。クロームOSを選べば、ブラウザーだけに機能を限定する代わりに、軽量な端末でも高度なサービスを利用できる。
この背景には画面サイズが5.5~10インチ程度の端末分野で製品開発が活発化していることがある。たとえば、電子書籍端末では、アップルの「iPad」のような多目的な端末から、読書だけに特化した米アマゾン・ドット・コムの「Kindle(キンドル)」まで多様なアプローチがある。もし、メーカーがグーグルの提供するブラウザーをベースとした電子書籍サービスの専用端末を作りたいとすれば、クロームOSが最適だろう。一方、iPadのように携帯コンテンツや簡単なパソコン用アプリケーションも利用できるようにしたいと考えるなら、アンドロイドが適切というわけだ。
クロームというブラウザーは、クラウド型アプリケーションというグーグルのビジネスの基礎を提供するために生まれた。独自の技術を盛り込み、ブラウザー上で様々な本格アプリケーションを素早く動かすことを狙っている。また、HTML5に実装される動画再生技術などをサポートしていく。グーグルはクロームに対応したアプリケーションを提供する「Chrome Market」も準備している。
アンドロイド、クローム、クロームOSの関係は一見すると複雑だ。しかし、前述したようにグーグルの事業基盤はブラウザーにある。クロームというブラウザーは、グーグルのクラウド型アプリケーションに最適な環境を実現するため、様々な形で供給されると考えるべきだろう。その一つの姿が、モバイル端末に特化したクロームOSである。クロームの多角展開はクロームOSで終わりではない。すでにグーグルはクロームの別の姿も準備している。それが、「Google TV」だ。
テレビを変えるGoogle TV
グーグルが今年の年末商戦に向けて準備を続けているGoogle TVは、端末のOSにアンドロイドを採用しブラウザーにクロームを実装する。アンドロイドは多彩な機能を必要とするテレビやセット・トップ・ボックス(STB)などのハードウエアをサポートし、クロームは検索サービスやインターネット放送、広告などのアプリケーションを表示する用途で利用する。
グーグルの狙いは16万件を超えたアンドロイド向けアプリケーションを活用し、テレビなどの機器をパソコン並みの多機能端末に変身させることにある。米国では、CATV上で数百チャンネルの番組を楽しめるが、Google TVはインターネット上に流通している数十万、数百万の多様な映像コンテンツをテレビに流し込むことで「テレビの概念」を根本から変えようとしている。この目的にはクロームの高度な機能が欠かせないわけだ。その一方で、高度な周辺機器のサポートができるアンドロイドが採用された。
視聴者が見ているテレビ画面に検索機能や広告機能を重ね合わせて表示するGoogle TVは、従来型のテレビを「ネット上の爆発的なアプリケーションやコンテンツ世界」へと変化させる過渡期のサービスといえる。グーグルがパソコンやスマートフォン以外の端末で、ブラウザービジネスを本格展開する初めての事例となるだろう。
グーグルは端末や通信ネットワークに依存しない高度なITサービスを実現することで会社を成長させようとしている。これがグーグル流のクラウドだが、そうした「桃源郷」はまだ実現からほど遠い。そのため桃源郷への道筋としてOSを含めた多種多様なアプローチを繰り返している。
こうしたグーグルのOS戦略は、パソコン時代のOSの常識で考えると勘違いする。OSだけでなく、グーグルが通信パケットの圧縮プロトコルやインターネットの基幹インフラであるDNS(ドメイン・ネーム・システム)の高速化、日本語入力サービスなど、多種多様な分野に手を広げているのは、まさに桃源郷への道を模索する姿ともいえるだろう。
「若者の○○離れ」メディアが使いたがる理由
若者のテレビ離れ、若者のクルマ離れ、若者の新聞離れ、若者の読書離れ、若者の理系離れ、若者の映画離れ、若者の酒離れ、若者のセックス離れ…etc。
近頃の新聞やテレビ報道や週刊誌などのマスメディアは「若者の○○離れ」というフレーズを乱発する。不況や少子化などの責任を若者に負わそうとするようなニュアンスもあり、若者は身に覚えのない罪を宣告されたような釈然としない気分を味わう。
■「○○離れ」は、大人たちの経済問題
「○○離れ」の○○は、経済に関わるものが多い。○○に、乗り物や飲食や旧メディアに関することを入れれば「消費の低迷」、結婚やセックスに関することを入れれば「人口減」、教育や学習に関することを入れれば「労働者の質の低下」が起こると言いたいのだ。
「○○離れ」とは言うが、そもそも若者は、その○○に近づいたことすらないのだから、離れようがないはずだ。と言うことはつまり、このフレーズには、若者なら○○に親しんで当然だという暗黙の前提が含まれている。
これはあまりに雑な前提だ。例えば、若者がクルマを乗り回すのが当たり前になったのはそんなに昔のことでもないし、世代に関わらず日本人のセックスの頻度が低いのは周知の事実。読書にいたっては、50代以上の世代の方が20代30代よりも本を読んでいないというデータさえある。
なぜこのような滅茶苦茶なフレーズがまかり通ってしまうのだろうか? それはおそらく、マスメディアの性質に原因がある。現在、新聞やテレビ報道や週刊誌などのマスメディアの主な消費者は、中高年に偏ってしまっている。
30代以下の若年層の主な情報ソースが、パソコンや携帯などのインターネットになってしまったからだ。当然、新聞やテレビ報道や週刊誌などのマスメディアは、お金を落としてくれる中高年層に合わせたモノの見方で切り取った情報を提供するようになる。
高度経済成長やバブルの感覚が抜け切らない中高年にとっては、現在の出口のない不況がどうもおかしいものに感じられる。人口減と途上国の発展という現状から見れば何の不思議もない現象だとは頭では理解するのかも知れないが、昨日よりも今日、今日よりも明日は豊かになっているという感覚から抜け出すのは容易ではないだろう。生活レベルが上がることを当然だと思ってた人が、下がることを受け入れるのは、心情的にも物理的にも大変に難しいことだ。
とはいえ、苦境を打破する画期的なアイディアを思いつけるわけでもない。…
せいぜいサービス残業を増やしたり、リストラやコストカットに勤しむのが関の山だ。それはそれで一生懸命なのだが、状況は改善するどころか悪くなり、焦燥感がつのるばかり。
■不況の原因を「若者」にしたがる大人たち
そんな中でいつものように犯人探しが始まる。犯人はマスメディアを消費している層が傷つかないようにいつも巧妙に選ばれる。政治が悪い、官僚が悪い、暴力コンテンツが悪い、切れる10代が悪い、そして今回は若者が悪いというわけだ。
もし、新聞やテレビ報道や週刊誌の主な消費者層が中高年ではなく、若者だったとしたらまったく逆の現象が起こっていただろう。実際、若者が多いインターネット上には、「老害」という呼称や、高年齢層に若者が搾取されているという主張や、年寄りが社会の中核にいつまでも居座るから閉塞感がまん延するんだという主張が溢れかえっている。つまり悪者は中高年だというわけだ。
自分以外の人間を、現在自分が立たされている苦境の元凶に仕立て上げてしまえば、とりあえずはほっとする。癒される。自分自身に責任があると考えるのは、中々辛いことだ。
犯人を見つけた気になって、ほっとしてるだけで丸くおさまればまだマシだが、多くの場合推理が偏りすぎてて、ただの自己満足にしかなっていないように見える。探偵ドラマの間抜けな刑事を笑ってばかりもいられない。自分だけを安全圏においた分かりやすい犯人探しにかまけている余裕がある内はいいが、そんな悠長なことを続けていられる豊かな日本はいつまでもつだろうか?
2次元映像を3次元表示するソフト、東芝が自社PCユーザーに無償提供
東芝は2010年9月10日、DVDコンテンツなどの2次元映像を3次元立体視できるようにするソフト「VIDEO PLAYER 3D」を無償提供すると発表した。9月17日から同社のWebサイトでダウンロードできる。
VIDEO PLAYER 3Dの特徴は、自然な立体映像を生成する独自のアルゴリズムを採用したこと。映像の四隅から構図を推定して精度の高い奥行きを実現する「ベースライン3D」や、映像全体の色調深度に合わせて被写体の色を補正する「カラー3D」など4つの機能を搭載している。DVDとMPEG-2(PS)、MPEG-4形式の2次元映像を3次元で表示できる。2次元映像を3次元で立体表示する市販ソフトもあるが、「映像によっては、手前と奥の物体が逆に表示されるなど違和感があったので自社開発に踏み切った」(PCマーケティング部の杉野文則氏)。
本ソフトは、東芝の立体視対応パソコン「dynabook TX/98MBL」および「同Satellite AXW/90MW(Web直販モデル)」上で動作する。他社製パソコンや、現時点で販売している同社製のほかのパソコンでは実行できない。
Amazonの決済システムが外部サイトで直接利用可能に
米Amazon.comの子会社である米Amazon Paymentsは米国時間2010年9月9日、同社の決済システム「Checkout by Amazon」の強化について発表した。Amazon.comサイトのアカウントを所有しているユーザーは、外部の小売販売サイトで商品を購入する際に、その場で同システムを利用できるようになる。
外部サイトに張り付ける決済ボタン
小売販売サイト内から、Amazon.comに登録している決済手段やアドレス帳を利用できるため、サイトを離れずに簡単に決済手続きを行うことができる。従来は、購入ボタンをクリックした後、決済や配送手続きのためにサイトを移動しなければならなかった。また、ユーザーが勘違いし、購入の手続きが完了しないままキャンセルになってしまうこともあった。
アップルが当局に屈し、アプリ開発規制を緩和
ライバル製品が次々登場、方針を180度転換へ
「あのアップルがついに規制当局の圧力に屈した」――。9月9日、米欧のメディアが一斉にこう報じた。
この日アップルがスマートフォン「アイフォーン(iPhone)」やタブレット端末「アイパッド(iPad)」などのアプリ開発に関するライセンス規約を緩和すると発表した。
当局がアップル提訴の準備
アップルが社外の開発者にアプリの開発、販売、配布を許可しているライセンス契約は厳しい規制が設けられていることで有名。
同社は公序良俗に反するアプリやコンテンツを排除することなどが目的としているが、米グーグルや米アドビシステムズなどは、競合の技術やコンテンツを排除する行為だとして非難していた。
英フィナンシャル・タイムズは9日付の記事で、こうした企業の働きかけで米連邦取引委員会(FTC)が調査しており、アップルを提訴する準備をしていたと伝えている。
9日にアップルが発表した改定事項は、ある一定の条件をクリアすれば開発者は自由に好みの開発ツールを利用できるというもの。またアプリ内広告についても制限を緩めており、これまでと180度違う方針に驚きの声が上がっていると米メディアが伝えている。
他社の開発ツールや広告を締め出し
アップルは今年4月、アイフォーンなどのモバイル端末向けの基本ソフト(OS)「アイオーエス(iOS)」をリリースしたが、その際にアプリ開発を行うソフトウエアツールの利用に制限を設けた。
そもそもアップルは同OSを、アドビの動画コンテンツ作成・再生技術「フラッシュ(Flash)」に対応させておらず、そのことも議論を呼んでいるのだが、この時アップルは、フラッシュコンテンツをアイフォーン向けに作り替えることができるアドビのソフトの使用を禁止した。
さらにアップルは、同OS上で展開するアプリ内広告「アイアド(iAd)」についても制限を加えた。
「モバイル広告を主要事業とする独立したプロバイダー以外は、ユーザー情報の利用を許可しない」とするもので、これは大手競合の子会社を市場から締め出す行為だと非難された。
アンドロイド端末の脅威増す
前述のフィナンシャル・タイムズの記事によると、アップルは9日、グーグル傘下のモバイル広告会社アドモブに連絡をとり、規約を改定したことを伝えた。
これを受けてグーグルは同日声明を発表、「アップルがアドモブなどの競合企業の参入を認めたことを歓迎する」とコメントしている。
アドビも同日の遅い時間になって「開発者にとって素晴らしいニュースだ」というコメントを出した。
アップルは同日、アプリ販売/配布サービス「アップ・ストア(App Store)」における審査基準を示すガイドラインも公開した。これまでアプリの公開申請を行っても、採用されなかったり、公開後に突如として削除されることがあった。
アップルは個別対応しないという方針のため、その理由について明らかにされることはなく、その基準の不明瞭さに不満の声が上がっていた。
今回の方針転換は、規制当局がアップルに厳しい目を向けたことに加え、グーグルのアンドロイド端末の脅威もあったのではないかと米ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。
アップ・ストアで公開されているアプリの数は現在25万と圧倒的に多い。しかし、アンドロイドOS用アプリはこの半年で3万から8万へと急増しており、アップルは安閑としていられない状況だ。
ハードウエアメーカーからまもなく続々登場するアンドロイドOS搭載タブレット端末もアップルの脅威になっているはずだと記事は伝えている。
米グーグルの携帯端末向け基本ソフト(OS)「Android(アンドロイド)」が快進撃を続けている。米調査会社ガートナーによると、世界のスマートフォンOS市場における2010年4~6月のシェアは17.2%。米アップルの「iOS」を抜いてカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)の「ブラックベリー」に次ぐ3位に付けた。10年末にはトップを走るノキア(フィンランド)の「シンビアンOS」を端末出荷数で上回る可能性もある。
グーグルがアンドロイドを手掛ける狙いは、「事業戦略」としては明快だ。主な収益源は端末を対象としたモバイル広告である。当初はアップルのスマートフォン「iPhone」との共存共栄も模索されたが、現在はアップルの広告プラットフォーム「iAd」とグーグルの「Google Mobile Ads」が直接対決しようとしている。グーグルは収益の大半を占める検索連動型広告に次ぐ重要な新事業と位置づけており、エリック・シュミット最高経営責任者(CEO)は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで「アンドロイド向けアプリケーションと広告の売り上げは将来100億ドルに達するだろう」と強気の姿勢を示している。
一方、グーグルの「技術戦略」という観点でみると、アンドロイドにはわかりにくいところがある。検索連動型広告を主軸とするグーグルは、そもそもウェブブラウザーをビジネスの主戦場と位置づけている。これはネット経由でアプリケーションを提供するクラウドコンピューティングにより、端末やOSに依存することなく長期的な市場の基礎を築くことができるからだ。そうした企業ゴールを考えると、アンドロイドというOSビジネスは古い時代のものに見えてくる。にもかかわらず、グーグルはなぜ新規事業の柱としてアンドロイドを育てているのだろうか。
過渡期をくぐり抜ける現実路線
アンドロイドはオープンソース、クラウド型アプリケーションとの親和性など興味深い特徴を兼ね備えているが、携帯端末や通信事業者に依存する携帯OSであることに変わりはない。古いアンドロイドOSを載せた端末は「最新のアプリケーションに対応できない」「端末事業者との作り込みに時間を要する」といった課題を抱える。グーグルには多種多様な端末と市場に対応するための負担が発生し、現在のようにアップルの「iPhone」やRIMのブラックベリーと戦えるようになるまで、5年という長い年月を費やした。
それでもグーグルが携帯OSに手を染めるのは、技術的な過渡期をくぐり抜けるための現実的な経営判断といえるだろう。最近は「HTML5」という新世代の技術仕様が広がり始めてブラウザーで高度なアプリケーションを利用できる場合もある。しかし、市場にあるモバイル端末や家電はまだ組み込み系OS、組み込み系アプリケーションが主流であり、高機能なブラウザーを簡単に実装できる環境ではない。
現在のところ、アンドロイドというプラットフォームが提供するダウンロード型のアプリケーションは、iPhoneやブラックベリーと大差ない。しかし、グーグルは、ネットワークの高速化と歩調を合わせてデータセンターの高い処理能力を生かしたクラウド型アプリケーションを増やし、アンドロイドの特徴を出そうとしている。たとえば、音声操作や画像検索などのクラウド型サービスがそうで、将来は携帯ウェブサービスを多用した高度な業務用アプリケーションへの対応も考えている。ウェブとの親和性を端末レベル、アプリケーションレベルで高めることが、同社のモバイル広告を支える原動力となる。
アンドロイドで提供する多くのダウンロード型アプリケーションは、いずれグーグルのデータセンターに吸収されることになるだろう。とはいえ、当面は従来型のアンドロイドOSで市場を拡大していくのがグーグルの戦略だ。こうした背景から、アンドロイドは携帯端末だけでなく、手のひらパソコンやテレビ、ゲーム端末など広い分野に拡散を続けている。
クロームとクロームOSの関係は
グーグルは08年秋に独自のブラウザー「Chrome(クローム)」を発表した。また、09年夏にはリナックスOSをクロームに付加した「ChromeOS」も発表した。だが、クロームOSは業界関係者に多少の混乱をもって迎えられた。ブラウザーのよさは、多種多様なOSの違いを超えて様々なウェブサービスを利用できることにあるが、OSではその長所が失われてしまうからだ。しかも、グーグルがアンドロイドとクロームOSという2つの選択肢を提供する格好になる。
だが、クロームOSは、ブラウザーのクローム上でアプリケーションを動かすのに必要な最小限度の基本機能だけに特化している。無線やネットワーク機能、高度なカメラなど、ブラウザーに関係ない部分はサポートしていない。おかげで処理能力やメモリー容量が限られた安い組み込み系チップでも素早く起動し、ノートパソコンなどと変わらないブラウザー環境を実現できる。
つまり、モバイル端末メーカーは、2つの選択肢から目的に合わせて選べばいいことになる。アンドロイドを選べば、様々な周辺機器をサポートできるが、それなりのパワーとメモリーが必要となる。クロームOSを選べば、ブラウザーだけに機能を限定する代わりに、軽量な端末でも高度なサービスを利用できる。
この背景には画面サイズが5.5~10インチ程度の端末分野で製品開発が活発化していることがある。たとえば、電子書籍端末では、アップルの「iPad」のような多目的な端末から、読書だけに特化した米アマゾン・ドット・コムの「Kindle(キンドル)」まで多様なアプローチがある。もし、メーカーがグーグルの提供するブラウザーをベースとした電子書籍サービスの専用端末を作りたいとすれば、クロームOSが最適だろう。一方、iPadのように携帯コンテンツや簡単なパソコン用アプリケーションも利用できるようにしたいと考えるなら、アンドロイドが適切というわけだ。
クロームというブラウザーは、クラウド型アプリケーションというグーグルのビジネスの基礎を提供するために生まれた。独自の技術を盛り込み、ブラウザー上で様々な本格アプリケーションを素早く動かすことを狙っている。また、HTML5に実装される動画再生技術などをサポートしていく。グーグルはクロームに対応したアプリケーションを提供する「Chrome Market」も準備している。
アンドロイド、クローム、クロームOSの関係は一見すると複雑だ。しかし、前述したようにグーグルの事業基盤はブラウザーにある。クロームというブラウザーは、グーグルのクラウド型アプリケーションに最適な環境を実現するため、様々な形で供給されると考えるべきだろう。その一つの姿が、モバイル端末に特化したクロームOSである。クロームの多角展開はクロームOSで終わりではない。すでにグーグルはクロームの別の姿も準備している。それが、「Google TV」だ。
テレビを変えるGoogle TV
グーグルが今年の年末商戦に向けて準備を続けているGoogle TVは、端末のOSにアンドロイドを採用しブラウザーにクロームを実装する。アンドロイドは多彩な機能を必要とするテレビやセット・トップ・ボックス(STB)などのハードウエアをサポートし、クロームは検索サービスやインターネット放送、広告などのアプリケーションを表示する用途で利用する。
グーグルの狙いは16万件を超えたアンドロイド向けアプリケーションを活用し、テレビなどの機器をパソコン並みの多機能端末に変身させることにある。米国では、CATV上で数百チャンネルの番組を楽しめるが、Google TVはインターネット上に流通している数十万、数百万の多様な映像コンテンツをテレビに流し込むことで「テレビの概念」を根本から変えようとしている。この目的にはクロームの高度な機能が欠かせないわけだ。その一方で、高度な周辺機器のサポートができるアンドロイドが採用された。
視聴者が見ているテレビ画面に検索機能や広告機能を重ね合わせて表示するGoogle TVは、従来型のテレビを「ネット上の爆発的なアプリケーションやコンテンツ世界」へと変化させる過渡期のサービスといえる。グーグルがパソコンやスマートフォン以外の端末で、ブラウザービジネスを本格展開する初めての事例となるだろう。
グーグルは端末や通信ネットワークに依存しない高度なITサービスを実現することで会社を成長させようとしている。これがグーグル流のクラウドだが、そうした「桃源郷」はまだ実現からほど遠い。そのため桃源郷への道筋としてOSを含めた多種多様なアプローチを繰り返している。
こうしたグーグルのOS戦略は、パソコン時代のOSの常識で考えると勘違いする。OSだけでなく、グーグルが通信パケットの圧縮プロトコルやインターネットの基幹インフラであるDNS(ドメイン・ネーム・システム)の高速化、日本語入力サービスなど、多種多様な分野に手を広げているのは、まさに桃源郷への道を模索する姿ともいえるだろう。
「若者の○○離れ」メディアが使いたがる理由
若者のテレビ離れ、若者のクルマ離れ、若者の新聞離れ、若者の読書離れ、若者の理系離れ、若者の映画離れ、若者の酒離れ、若者のセックス離れ…etc。
近頃の新聞やテレビ報道や週刊誌などのマスメディアは「若者の○○離れ」というフレーズを乱発する。不況や少子化などの責任を若者に負わそうとするようなニュアンスもあり、若者は身に覚えのない罪を宣告されたような釈然としない気分を味わう。
■「○○離れ」は、大人たちの経済問題
「○○離れ」の○○は、経済に関わるものが多い。○○に、乗り物や飲食や旧メディアに関することを入れれば「消費の低迷」、結婚やセックスに関することを入れれば「人口減」、教育や学習に関することを入れれば「労働者の質の低下」が起こると言いたいのだ。
「○○離れ」とは言うが、そもそも若者は、その○○に近づいたことすらないのだから、離れようがないはずだ。と言うことはつまり、このフレーズには、若者なら○○に親しんで当然だという暗黙の前提が含まれている。
これはあまりに雑な前提だ。例えば、若者がクルマを乗り回すのが当たり前になったのはそんなに昔のことでもないし、世代に関わらず日本人のセックスの頻度が低いのは周知の事実。読書にいたっては、50代以上の世代の方が20代30代よりも本を読んでいないというデータさえある。
なぜこのような滅茶苦茶なフレーズがまかり通ってしまうのだろうか? それはおそらく、マスメディアの性質に原因がある。現在、新聞やテレビ報道や週刊誌などのマスメディアの主な消費者は、中高年に偏ってしまっている。
30代以下の若年層の主な情報ソースが、パソコンや携帯などのインターネットになってしまったからだ。当然、新聞やテレビ報道や週刊誌などのマスメディアは、お金を落としてくれる中高年層に合わせたモノの見方で切り取った情報を提供するようになる。
高度経済成長やバブルの感覚が抜け切らない中高年にとっては、現在の出口のない不況がどうもおかしいものに感じられる。人口減と途上国の発展という現状から見れば何の不思議もない現象だとは頭では理解するのかも知れないが、昨日よりも今日、今日よりも明日は豊かになっているという感覚から抜け出すのは容易ではないだろう。生活レベルが上がることを当然だと思ってた人が、下がることを受け入れるのは、心情的にも物理的にも大変に難しいことだ。
とはいえ、苦境を打破する画期的なアイディアを思いつけるわけでもない。…
せいぜいサービス残業を増やしたり、リストラやコストカットに勤しむのが関の山だ。それはそれで一生懸命なのだが、状況は改善するどころか悪くなり、焦燥感がつのるばかり。
■不況の原因を「若者」にしたがる大人たち
そんな中でいつものように犯人探しが始まる。犯人はマスメディアを消費している層が傷つかないようにいつも巧妙に選ばれる。政治が悪い、官僚が悪い、暴力コンテンツが悪い、切れる10代が悪い、そして今回は若者が悪いというわけだ。
もし、新聞やテレビ報道や週刊誌の主な消費者層が中高年ではなく、若者だったとしたらまったく逆の現象が起こっていただろう。実際、若者が多いインターネット上には、「老害」という呼称や、高年齢層に若者が搾取されているという主張や、年寄りが社会の中核にいつまでも居座るから閉塞感がまん延するんだという主張が溢れかえっている。つまり悪者は中高年だというわけだ。
自分以外の人間を、現在自分が立たされている苦境の元凶に仕立て上げてしまえば、とりあえずはほっとする。癒される。自分自身に責任があると考えるのは、中々辛いことだ。
犯人を見つけた気になって、ほっとしてるだけで丸くおさまればまだマシだが、多くの場合推理が偏りすぎてて、ただの自己満足にしかなっていないように見える。探偵ドラマの間抜けな刑事を笑ってばかりもいられない。自分だけを安全圏においた分かりやすい犯人探しにかまけている余裕がある内はいいが、そんな悠長なことを続けていられる豊かな日本はいつまでもつだろうか?
2次元映像を3次元表示するソフト、東芝が自社PCユーザーに無償提供
東芝は2010年9月10日、DVDコンテンツなどの2次元映像を3次元立体視できるようにするソフト「VIDEO PLAYER 3D」を無償提供すると発表した。9月17日から同社のWebサイトでダウンロードできる。
VIDEO PLAYER 3Dの特徴は、自然な立体映像を生成する独自のアルゴリズムを採用したこと。映像の四隅から構図を推定して精度の高い奥行きを実現する「ベースライン3D」や、映像全体の色調深度に合わせて被写体の色を補正する「カラー3D」など4つの機能を搭載している。DVDとMPEG-2(PS)、MPEG-4形式の2次元映像を3次元で表示できる。2次元映像を3次元で立体表示する市販ソフトもあるが、「映像によっては、手前と奥の物体が逆に表示されるなど違和感があったので自社開発に踏み切った」(PCマーケティング部の杉野文則氏)。
本ソフトは、東芝の立体視対応パソコン「dynabook TX/98MBL」および「同Satellite AXW/90MW(Web直販モデル)」上で動作する。他社製パソコンや、現時点で販売している同社製のほかのパソコンでは実行できない。
Amazonの決済システムが外部サイトで直接利用可能に
米Amazon.comの子会社である米Amazon Paymentsは米国時間2010年9月9日、同社の決済システム「Checkout by Amazon」の強化について発表した。Amazon.comサイトのアカウントを所有しているユーザーは、外部の小売販売サイトで商品を購入する際に、その場で同システムを利用できるようになる。
外部サイトに張り付ける決済ボタン
小売販売サイト内から、Amazon.comに登録している決済手段やアドレス帳を利用できるため、サイトを離れずに簡単に決済手続きを行うことができる。従来は、購入ボタンをクリックした後、決済や配送手続きのためにサイトを移動しなければならなかった。また、ユーザーが勘違いし、購入の手続きが完了しないままキャンセルになってしまうこともあった。
アップルが当局に屈し、アプリ開発規制を緩和
ライバル製品が次々登場、方針を180度転換へ
「あのアップルがついに規制当局の圧力に屈した」――。9月9日、米欧のメディアが一斉にこう報じた。
この日アップルがスマートフォン「アイフォーン(iPhone)」やタブレット端末「アイパッド(iPad)」などのアプリ開発に関するライセンス規約を緩和すると発表した。
当局がアップル提訴の準備
アップルが社外の開発者にアプリの開発、販売、配布を許可しているライセンス契約は厳しい規制が設けられていることで有名。
同社は公序良俗に反するアプリやコンテンツを排除することなどが目的としているが、米グーグルや米アドビシステムズなどは、競合の技術やコンテンツを排除する行為だとして非難していた。
英フィナンシャル・タイムズは9日付の記事で、こうした企業の働きかけで米連邦取引委員会(FTC)が調査しており、アップルを提訴する準備をしていたと伝えている。
9日にアップルが発表した改定事項は、ある一定の条件をクリアすれば開発者は自由に好みの開発ツールを利用できるというもの。またアプリ内広告についても制限を緩めており、これまでと180度違う方針に驚きの声が上がっていると米メディアが伝えている。
他社の開発ツールや広告を締め出し
アップルは今年4月、アイフォーンなどのモバイル端末向けの基本ソフト(OS)「アイオーエス(iOS)」をリリースしたが、その際にアプリ開発を行うソフトウエアツールの利用に制限を設けた。
そもそもアップルは同OSを、アドビの動画コンテンツ作成・再生技術「フラッシュ(Flash)」に対応させておらず、そのことも議論を呼んでいるのだが、この時アップルは、フラッシュコンテンツをアイフォーン向けに作り替えることができるアドビのソフトの使用を禁止した。
さらにアップルは、同OS上で展開するアプリ内広告「アイアド(iAd)」についても制限を加えた。
「モバイル広告を主要事業とする独立したプロバイダー以外は、ユーザー情報の利用を許可しない」とするもので、これは大手競合の子会社を市場から締め出す行為だと非難された。
アンドロイド端末の脅威増す
前述のフィナンシャル・タイムズの記事によると、アップルは9日、グーグル傘下のモバイル広告会社アドモブに連絡をとり、規約を改定したことを伝えた。
これを受けてグーグルは同日声明を発表、「アップルがアドモブなどの競合企業の参入を認めたことを歓迎する」とコメントしている。
アドビも同日の遅い時間になって「開発者にとって素晴らしいニュースだ」というコメントを出した。
アップルは同日、アプリ販売/配布サービス「アップ・ストア(App Store)」における審査基準を示すガイドラインも公開した。これまでアプリの公開申請を行っても、採用されなかったり、公開後に突如として削除されることがあった。
アップルは個別対応しないという方針のため、その理由について明らかにされることはなく、その基準の不明瞭さに不満の声が上がっていた。
今回の方針転換は、規制当局がアップルに厳しい目を向けたことに加え、グーグルのアンドロイド端末の脅威もあったのではないかと米ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。
アップ・ストアで公開されているアプリの数は現在25万と圧倒的に多い。しかし、アンドロイドOS用アプリはこの半年で3万から8万へと急増しており、アップルは安閑としていられない状況だ。
ハードウエアメーカーからまもなく続々登場するアンドロイドOS搭載タブレット端末もアップルの脅威になっているはずだと記事は伝えている。
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ゲーム界“下克上” 交流型が勃興、王者・任天堂ピンチ!?
携帯電話で仲間や見ず知らずの人と交流して遊べる「ソーシャルゲーム」が、勢力を急拡大している。無料を武器に、これまでゲームとは無縁だった層を取り込み、モバゲー、グリー、ミクシィの“御三家”の会員数は各2000万人前後を誇る。王者・任天堂などゲーム機メーカーにとっては、専用端末が要らない新興勢力の台頭は死活問題だ。ゲーム界で“下克上”が幕を開けた。
「任天堂やソニーは、人間でいうと還暦を過ぎている。日本で過去30年間に生まれた企業が世界のリーダーに上り詰めたケースはまだないが、その歴史を変えていく」
横浜市内で8月31日に開かれたゲーム開発者向けイベント「CEDEC(セデック)」。ソーシャルゲーム配信サイト「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の南場智子社長は基調講演で、過激な挑戦状をたたき付けた。
セデックは、家庭用ゲーム機向けソフトの開発者が多く集まるイベントだが、広い講演会場はほぼ満席となり、関心の高さをうかがわせた。
ソーシャルゲームは、携帯電話を使い、会員同士がオンラインで対戦したり、共同作業をしたりして遊ぶ。基本的に利用は無料。サイト運営会社は、広告のほか、ゲーム内で使用するアイテムなどの販売で稼ぐビジネスモデルだ。
釣りや宝探しといった操作が簡単なゲームが多く、マニア向けのイメージが強い既存の専用端末向けゲームを敬遠していた若い女性や中高年も、ついついはまってしまい、市場が急拡大している。
■市場規模1000億円
モバゲーのほか、グリーが運営する「GREE」、ミクシィの「mixi」が業界トップスリー。
市場調査会社の矢野経済研究所によると、国内市場は2009年度に08年度比8・5倍増の338億円に急増。11年度には1171億円に達し、大台を突破すると予想している。
「米国でも人気となっており、世界的にもまだまだ伸びることは間違いない」と、野村総合研究所の山崎秀夫シニア研究員は将来性に太鼓判を押す。
これまでゲーム機メーカーと一心同体だったソフト会社も、ソーシャルゲームになびき始めている。
カプコンは8月10日から人気シリーズ「モンスターハンター」の新作をモバゲーで配信。17日間で利用会員が50万人を突破した。「ソーシャルゲームからは学ぶことが多い。配信を始めた後も利用者の反応を見て内容を変えていける。これまでの業界の常識を一変させる可能性がある」。カプコンの辻本春弘社長は、その可能性に大きな魅力を感じている。
バンダイナムコゲームスも7月にDeNAと提携し、モバゲーに専用コーナーを開設。「パックマン」や「ゼビウス」などの人気ゲームを毎月1タイトル配信。近く看板キャラ「ガンダム」を起用したゲームも配信する。
■3Dで真っ向勝負
「携帯ゲーム機がソーシャルゲームに飲み込まれることはない」。対する任天堂の岩田聡社長は、強気の姿勢を崩さない。だが、その足元はぐらついている。
10年4~6月期の決算は、252億円の最終赤字に転落した。急速な円高進行で705億円の為替差損を計上したことに加え、携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」の販売台数が09年のほぼ半分に激減したことが響いた。07年11月に7万3200円の高値を付けた株価も8月12日には一時、4分の1の2万1960円まで下落した。
巻き返しの切り札と位置づけるのが、10年度中の発売を目指すDSの後継機「ニンテンドー3DS」だ。専用眼鏡をかけずに、裸眼で3次元(3D)ゲームが楽しめる。専用端末でなければ実現は不可能だ。
「任天堂は運が良かったから結果が出たのではなく、そういうことが持続的に可能な組織。それを分かってもらえれば、先行きの懸念も払拭(ふっしょく)される」。岩田社長は6月の株主総会で、株価低迷に不満を示す株主にこう力説した。
DSの「脳トレ」や体を動かして遊ぶゲーム機「Wii(ウィー)」で、ゲームユーザーのすそ野を広げてきた任天堂としては、そのお株をやすやすと奪われるわけにはいかない。
ソーシャルゲームは任天堂を王座から引きずりおろすのか。「消費者の限られた時間を奪い合う」(野村総研の山崎氏)真っ向勝負が繰り広げられそうだ。
人気取りで滞った税財政改革 与謝野元財務相に聞く
ニッポンこの20年
円高・株安の波にのまれ、先行きに不安が出てきた日本経済。弱さの裏には、長期デフレに対応できず、構造改革を先送りしてきた1990年代以降の政策迷走がある。「失われた20年」の間に政府や日銀で政策責任者を務めた人たちはどう振り返り、いまの経済をどうみるのか。3氏に聞いた。
――橋本内閣の官房副長官として、財政構造改革の旗振り役を担った。
「梶山官房長官から『財政再建をやろう』と言われ、作戦を考えた。首相と蔵相の経験者を列挙し、全派閥を網羅した財政構造改革会議を開いた。公共事業費を7%削減し、財政構造改革法という法律にした。増税なしで財政再建をやる試みだった」
減税の効果薄く
――だが1997年暮れに経済が変調し、法律も凍結された。
「97年4月に消費税率を5%に引き上げて特別減税をやめ、医療費も含めて9兆円の負担増といわれた。財政構造改革法も景気を悪くしたといわれるが、景気悪化は山一証券や北海道拓殖銀行の破綻から。90年に始まったバブルの始末が終わっていなかった」
――橋本龍太郎首相と次の小渕恵三首相は減税や景気対策に追われた。
「不景気になっても財政再建しなきゃ。橋本さんは一時的な人気取りに走ったね。2兆円の特別減税なんて効きやしない。小渕さんの10兆円減税が今の財政悪化に一番効いている」
――当時は景気を支える必要があったのでは。
1997年4月消費税率5%に引き上げ。特別減税2兆円廃止1997年11月財政健全化の目標を掲げた財政構造改革法が成立1999年3月6兆円超の恒久的減税を含む減税関連法が成立
「減税しても消費や設備投資には回らず、公共事業の乗数効果も落ちていた。日本の個人金融資産は1200兆円から1500兆円へと異常に増えた。貯蓄した方が安心ということと、有効なお金の使い道がないことの両方だ。投資して付加価値を生もうという分野がどんどんなくなった」
――税制では、94年の国民福祉税構想の頓挫から半年後、消費税率を2%引き上げる法律が通った。
「首相の村山富市さんが大きな人で、社会党には峰崎直樹さん、新党さきがけにも菅直人さんとか、物事の分かる人がいた。大蔵省も根回ししたため、党内に慎重論はあまりなかった。減税と対だったし」
党派超え対処を
――その後、消費税には手を付けていない。
「自民党が衆参両院で多数だった時期も着手できなかった。選挙がおっかない連中がたくさんいた。無理して小選挙区制を入れたことも問題。あらゆる政党が人気取りに走った」
「2008年10月に麻生太郎首相は『3%の税率引き上げが必要だ』と言った。菅さんも言いかけたが、民主党もできていない。今後3年間は衆院選も参院選もない。こんな時は党派を超え、みんなで赤信号を渡らないといけない」
――どう説得するのか。
「福祉制度は国民が助け合いでつくっている。財政も国がお金を配るのではなく、一方の国民の所得を他方に移す装置。今の世代からいただかないと、後の世代に送るだけ。なのに政治家が負担を問わない」
「国家が破綻すれば、解雇や減給、増税として国民生活に響く。財政はパンク寸前で、3年持てばいい。誇大広告のようなマニフェスト(政権公約)を引っ込め、無駄の削減が終わらないと増税しないなんて考え方はやめてほしい」
――20年の総括から学ぶべきことは。
「日本が金融や情報、製造業で、どんどん競争力を失った時代。中国の人民元は80年に今の11倍の価値があったが、実にうまく立ち回って切り下げた。日本はもたもたして、円がえらい不利な立場になった」
「今もすべての会社の社長は成長しようという意欲を持っている。規制緩和や自由貿易協定で成長の意欲を妨げるものを取り除かないといけない。明治維新の時のように、追いつこうという動機が出てこないとだめ。日本人はよく勉強して創造性を高め、もう一度、一番を目指すべきだ」
米景気対策 速やかな実施で二番底を防げ(9月12日付・読売社説)
11月の中間選挙を前にオバマ米大統領が追加景気対策を打ち出した。
総額では3500億ドル(約29兆円)に上るが、財政悪化に配慮し、規模が小粒になった印象もある。
景気をテコ入れして、雇用を拡大する狙いは妥当だが、どの程度の効果があるのか不透明だ。不十分であれば、対策の一層の上積みが求められよう。
追加策は、道路や鉄道などのインフラ整備に、6年間で500億ドル(約4・2兆円)を投じるほか、企業の設備投資や研究開発を促す法人税減税が柱だ。年末に期限が切れる中間所得層向けの所得税減税も継続する。
雇用対策などが争点の中間選挙が迫る中、大統領の支持率は急落し、与党・民主党が苦戦している。劣勢を挽回(ばんかい)したい危機感が、大統領に追加策を決断させた。
今後の焦点は、政府と野党・共和党の調整だ。共和党は追加策に反対しており、関連法案を巡る議会の審議は難航しそうだ。
政治的な駆け引きで、追加策がさらに圧縮されたり、実施が大幅に遅れたりすれば、景気浮揚効果が減殺されかねない。追加策を速やかに実施できるよう、大統領は指導力を発揮してほしい。
米国経済は試練に直面している。大統領が昨年初めに決めた8000億ドル(約68兆円)の景気対策などで金融危機を克服し、米国経済はプラス成長に転じたが、最近は急減速しているからだ。
今年4~6月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は、年率換算で前期比1・6%増にとどまった。成長のエンジン役である個人消費の低迷が主因だ。
失業率は9%台後半に高止まりし、雇用悪化が消費を冷やす悪循環に陥っている。景気の二番底も懸念される。
米国経済の立て直しは、日本など世界経済の動向にとっても大きな課題である。
難局を乗り切るには、追加金融緩和策に踏み切った連邦準備制度理事会(FRB)と政府の連携強化がますます重要になろう。
米国経済の先行き不透明感から、為替市場ではドル売り圧力が根強い。1ドル=83円台に上昇した円相場が、一段と急騰する展開も警戒しなければならない。
米当局は輸出増で景気を下支えする狙いから、輸出産業の競争力にプラスに働くドル安傾向を容認する姿勢もうかがえる。
日本政府と日銀は、過度な円高の阻止へ、為替介入を含めた機動的な対応を取る必要がある。
神戸新聞社説
米同時テロ9年/過激思想生む土壌に目を
約3千人が死亡した米中枢同時テロから9年たった。テロの脅威は今も消えず、テロリストは世界各地に広がりつつある。悲しいが、それが現実だ。
この1年、アフガニスタンやイラクでは駐留米兵らを狙った爆弾テロがやまず、過去最悪のペースで犠牲者が増える。米国内でもテロ未遂事件が相次いでいる。
昨年12月にデトロイト上空で起きた旅客機爆破未遂事件、今年5月にニューヨーク・タイムズスクエアであった車爆弾未遂事件などである。いずれも発見が早く間一髪で防げたのが、せめてもの救いだ。
旅客機事件の実行犯はナイジェリア人で、国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者のルーツがあるイエメンでテロの指令を受けていた。ニューヨークの事件の犯人はパキスタン系米国人で、母国のモスク(礼拝所)でイスラム過激派から洗脳を受けたとされる。
いずれも、恵まれた家庭環境で育ったエリート青年である。それが、いつの間にか、米国など「富の象徴」を狙うテロリストになっていた。
最近はこうしたエリート層のテロリストが目立つ。その一方、社会の片隅に置かれた貧しい農民や失業者らが洗脳され、過激派に変わっていくケースが多い。
そのような土壌は今や、イエメン、ナイジェリア、ソマリアなど中東やアフリカ諸国にまで及び、アルカイダが影響力を強めているといわれる。
不安定な国情に乗じてテロ組織が入り込み、足場を固めていく構図である。それを防ぐには、国際社会のバックアップが欠かせない。経済や社会基盤、雇用など、あらゆるアプローチでの支援が大切だ。
アフガンやイラクにしろ、過激思想に染まる貧困層に目を向け、対処することで、テロの芽を摘み取る可能性は大きい。
オバマ大統領もアルカイダ解体には「軍事力だけでなく、国際協調や米国的価値観の影響力など総力結集が必要」と述べており、その言葉を思い返してほしい。
日本はアフガンに5年間で約4350億円規模の支援を行う方針だ。テロ対策に加え、タリバンとの和解・再統合のための基金が含まれている。道のりは険しいが、地道な努力を続けてもらいたい。
ましてや、「9・11」の日にイスラム教の聖典コーランを焼却するといった話などは言語道断だ。新たな宗教対立を生む、そんな無分別な行為を許してはならない。
携帯電話で仲間や見ず知らずの人と交流して遊べる「ソーシャルゲーム」が、勢力を急拡大している。無料を武器に、これまでゲームとは無縁だった層を取り込み、モバゲー、グリー、ミクシィの“御三家”の会員数は各2000万人前後を誇る。王者・任天堂などゲーム機メーカーにとっては、専用端末が要らない新興勢力の台頭は死活問題だ。ゲーム界で“下克上”が幕を開けた。
「任天堂やソニーは、人間でいうと還暦を過ぎている。日本で過去30年間に生まれた企業が世界のリーダーに上り詰めたケースはまだないが、その歴史を変えていく」
横浜市内で8月31日に開かれたゲーム開発者向けイベント「CEDEC(セデック)」。ソーシャルゲーム配信サイト「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の南場智子社長は基調講演で、過激な挑戦状をたたき付けた。
セデックは、家庭用ゲーム機向けソフトの開発者が多く集まるイベントだが、広い講演会場はほぼ満席となり、関心の高さをうかがわせた。
ソーシャルゲームは、携帯電話を使い、会員同士がオンラインで対戦したり、共同作業をしたりして遊ぶ。基本的に利用は無料。サイト運営会社は、広告のほか、ゲーム内で使用するアイテムなどの販売で稼ぐビジネスモデルだ。
釣りや宝探しといった操作が簡単なゲームが多く、マニア向けのイメージが強い既存の専用端末向けゲームを敬遠していた若い女性や中高年も、ついついはまってしまい、市場が急拡大している。
■市場規模1000億円
モバゲーのほか、グリーが運営する「GREE」、ミクシィの「mixi」が業界トップスリー。
市場調査会社の矢野経済研究所によると、国内市場は2009年度に08年度比8・5倍増の338億円に急増。11年度には1171億円に達し、大台を突破すると予想している。
「米国でも人気となっており、世界的にもまだまだ伸びることは間違いない」と、野村総合研究所の山崎秀夫シニア研究員は将来性に太鼓判を押す。
これまでゲーム機メーカーと一心同体だったソフト会社も、ソーシャルゲームになびき始めている。
カプコンは8月10日から人気シリーズ「モンスターハンター」の新作をモバゲーで配信。17日間で利用会員が50万人を突破した。「ソーシャルゲームからは学ぶことが多い。配信を始めた後も利用者の反応を見て内容を変えていける。これまでの業界の常識を一変させる可能性がある」。カプコンの辻本春弘社長は、その可能性に大きな魅力を感じている。
バンダイナムコゲームスも7月にDeNAと提携し、モバゲーに専用コーナーを開設。「パックマン」や「ゼビウス」などの人気ゲームを毎月1タイトル配信。近く看板キャラ「ガンダム」を起用したゲームも配信する。
■3Dで真っ向勝負
「携帯ゲーム機がソーシャルゲームに飲み込まれることはない」。対する任天堂の岩田聡社長は、強気の姿勢を崩さない。だが、その足元はぐらついている。
10年4~6月期の決算は、252億円の最終赤字に転落した。急速な円高進行で705億円の為替差損を計上したことに加え、携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」の販売台数が09年のほぼ半分に激減したことが響いた。07年11月に7万3200円の高値を付けた株価も8月12日には一時、4分の1の2万1960円まで下落した。
巻き返しの切り札と位置づけるのが、10年度中の発売を目指すDSの後継機「ニンテンドー3DS」だ。専用眼鏡をかけずに、裸眼で3次元(3D)ゲームが楽しめる。専用端末でなければ実現は不可能だ。
「任天堂は運が良かったから結果が出たのではなく、そういうことが持続的に可能な組織。それを分かってもらえれば、先行きの懸念も払拭(ふっしょく)される」。岩田社長は6月の株主総会で、株価低迷に不満を示す株主にこう力説した。
DSの「脳トレ」や体を動かして遊ぶゲーム機「Wii(ウィー)」で、ゲームユーザーのすそ野を広げてきた任天堂としては、そのお株をやすやすと奪われるわけにはいかない。
ソーシャルゲームは任天堂を王座から引きずりおろすのか。「消費者の限られた時間を奪い合う」(野村総研の山崎氏)真っ向勝負が繰り広げられそうだ。
人気取りで滞った税財政改革 与謝野元財務相に聞く
ニッポンこの20年
円高・株安の波にのまれ、先行きに不安が出てきた日本経済。弱さの裏には、長期デフレに対応できず、構造改革を先送りしてきた1990年代以降の政策迷走がある。「失われた20年」の間に政府や日銀で政策責任者を務めた人たちはどう振り返り、いまの経済をどうみるのか。3氏に聞いた。
――橋本内閣の官房副長官として、財政構造改革の旗振り役を担った。
「梶山官房長官から『財政再建をやろう』と言われ、作戦を考えた。首相と蔵相の経験者を列挙し、全派閥を網羅した財政構造改革会議を開いた。公共事業費を7%削減し、財政構造改革法という法律にした。増税なしで財政再建をやる試みだった」
減税の効果薄く
――だが1997年暮れに経済が変調し、法律も凍結された。
「97年4月に消費税率を5%に引き上げて特別減税をやめ、医療費も含めて9兆円の負担増といわれた。財政構造改革法も景気を悪くしたといわれるが、景気悪化は山一証券や北海道拓殖銀行の破綻から。90年に始まったバブルの始末が終わっていなかった」
――橋本龍太郎首相と次の小渕恵三首相は減税や景気対策に追われた。
「不景気になっても財政再建しなきゃ。橋本さんは一時的な人気取りに走ったね。2兆円の特別減税なんて効きやしない。小渕さんの10兆円減税が今の財政悪化に一番効いている」
――当時は景気を支える必要があったのでは。
1997年4月消費税率5%に引き上げ。特別減税2兆円廃止1997年11月財政健全化の目標を掲げた財政構造改革法が成立1999年3月6兆円超の恒久的減税を含む減税関連法が成立
「減税しても消費や設備投資には回らず、公共事業の乗数効果も落ちていた。日本の個人金融資産は1200兆円から1500兆円へと異常に増えた。貯蓄した方が安心ということと、有効なお金の使い道がないことの両方だ。投資して付加価値を生もうという分野がどんどんなくなった」
――税制では、94年の国民福祉税構想の頓挫から半年後、消費税率を2%引き上げる法律が通った。
「首相の村山富市さんが大きな人で、社会党には峰崎直樹さん、新党さきがけにも菅直人さんとか、物事の分かる人がいた。大蔵省も根回ししたため、党内に慎重論はあまりなかった。減税と対だったし」
党派超え対処を
――その後、消費税には手を付けていない。
「自民党が衆参両院で多数だった時期も着手できなかった。選挙がおっかない連中がたくさんいた。無理して小選挙区制を入れたことも問題。あらゆる政党が人気取りに走った」
「2008年10月に麻生太郎首相は『3%の税率引き上げが必要だ』と言った。菅さんも言いかけたが、民主党もできていない。今後3年間は衆院選も参院選もない。こんな時は党派を超え、みんなで赤信号を渡らないといけない」
――どう説得するのか。
「福祉制度は国民が助け合いでつくっている。財政も国がお金を配るのではなく、一方の国民の所得を他方に移す装置。今の世代からいただかないと、後の世代に送るだけ。なのに政治家が負担を問わない」
「国家が破綻すれば、解雇や減給、増税として国民生活に響く。財政はパンク寸前で、3年持てばいい。誇大広告のようなマニフェスト(政権公約)を引っ込め、無駄の削減が終わらないと増税しないなんて考え方はやめてほしい」
――20年の総括から学ぶべきことは。
「日本が金融や情報、製造業で、どんどん競争力を失った時代。中国の人民元は80年に今の11倍の価値があったが、実にうまく立ち回って切り下げた。日本はもたもたして、円がえらい不利な立場になった」
「今もすべての会社の社長は成長しようという意欲を持っている。規制緩和や自由貿易協定で成長の意欲を妨げるものを取り除かないといけない。明治維新の時のように、追いつこうという動機が出てこないとだめ。日本人はよく勉強して創造性を高め、もう一度、一番を目指すべきだ」
米景気対策 速やかな実施で二番底を防げ(9月12日付・読売社説)
11月の中間選挙を前にオバマ米大統領が追加景気対策を打ち出した。
総額では3500億ドル(約29兆円)に上るが、財政悪化に配慮し、規模が小粒になった印象もある。
景気をテコ入れして、雇用を拡大する狙いは妥当だが、どの程度の効果があるのか不透明だ。不十分であれば、対策の一層の上積みが求められよう。
追加策は、道路や鉄道などのインフラ整備に、6年間で500億ドル(約4・2兆円)を投じるほか、企業の設備投資や研究開発を促す法人税減税が柱だ。年末に期限が切れる中間所得層向けの所得税減税も継続する。
雇用対策などが争点の中間選挙が迫る中、大統領の支持率は急落し、与党・民主党が苦戦している。劣勢を挽回(ばんかい)したい危機感が、大統領に追加策を決断させた。
今後の焦点は、政府と野党・共和党の調整だ。共和党は追加策に反対しており、関連法案を巡る議会の審議は難航しそうだ。
政治的な駆け引きで、追加策がさらに圧縮されたり、実施が大幅に遅れたりすれば、景気浮揚効果が減殺されかねない。追加策を速やかに実施できるよう、大統領は指導力を発揮してほしい。
米国経済は試練に直面している。大統領が昨年初めに決めた8000億ドル(約68兆円)の景気対策などで金融危機を克服し、米国経済はプラス成長に転じたが、最近は急減速しているからだ。
今年4~6月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は、年率換算で前期比1・6%増にとどまった。成長のエンジン役である個人消費の低迷が主因だ。
失業率は9%台後半に高止まりし、雇用悪化が消費を冷やす悪循環に陥っている。景気の二番底も懸念される。
米国経済の立て直しは、日本など世界経済の動向にとっても大きな課題である。
難局を乗り切るには、追加金融緩和策に踏み切った連邦準備制度理事会(FRB)と政府の連携強化がますます重要になろう。
米国経済の先行き不透明感から、為替市場ではドル売り圧力が根強い。1ドル=83円台に上昇した円相場が、一段と急騰する展開も警戒しなければならない。
米当局は輸出増で景気を下支えする狙いから、輸出産業の競争力にプラスに働くドル安傾向を容認する姿勢もうかがえる。
日本政府と日銀は、過度な円高の阻止へ、為替介入を含めた機動的な対応を取る必要がある。
神戸新聞社説
米同時テロ9年/過激思想生む土壌に目を
約3千人が死亡した米中枢同時テロから9年たった。テロの脅威は今も消えず、テロリストは世界各地に広がりつつある。悲しいが、それが現実だ。
この1年、アフガニスタンやイラクでは駐留米兵らを狙った爆弾テロがやまず、過去最悪のペースで犠牲者が増える。米国内でもテロ未遂事件が相次いでいる。
昨年12月にデトロイト上空で起きた旅客機爆破未遂事件、今年5月にニューヨーク・タイムズスクエアであった車爆弾未遂事件などである。いずれも発見が早く間一髪で防げたのが、せめてもの救いだ。
旅客機事件の実行犯はナイジェリア人で、国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者のルーツがあるイエメンでテロの指令を受けていた。ニューヨークの事件の犯人はパキスタン系米国人で、母国のモスク(礼拝所)でイスラム過激派から洗脳を受けたとされる。
いずれも、恵まれた家庭環境で育ったエリート青年である。それが、いつの間にか、米国など「富の象徴」を狙うテロリストになっていた。
最近はこうしたエリート層のテロリストが目立つ。その一方、社会の片隅に置かれた貧しい農民や失業者らが洗脳され、過激派に変わっていくケースが多い。
そのような土壌は今や、イエメン、ナイジェリア、ソマリアなど中東やアフリカ諸国にまで及び、アルカイダが影響力を強めているといわれる。
不安定な国情に乗じてテロ組織が入り込み、足場を固めていく構図である。それを防ぐには、国際社会のバックアップが欠かせない。経済や社会基盤、雇用など、あらゆるアプローチでの支援が大切だ。
アフガンやイラクにしろ、過激思想に染まる貧困層に目を向け、対処することで、テロの芽を摘み取る可能性は大きい。
オバマ大統領もアルカイダ解体には「軍事力だけでなく、国際協調や米国的価値観の影響力など総力結集が必要」と述べており、その言葉を思い返してほしい。
日本はアフガンに5年間で約4350億円規模の支援を行う方針だ。テロ対策に加え、タリバンとの和解・再統合のための基金が含まれている。道のりは険しいが、地道な努力を続けてもらいたい。
ましてや、「9・11」の日にイスラム教の聖典コーランを焼却するといった話などは言語道断だ。新たな宗教対立を生む、そんな無分別な行為を許してはならない。
Govt growth panel must draw on private expertise
The vast wisdom accumulated by private-sector experts should be fully utilized to help restore the growth potential of the Japanese economy.
On Thursday, a key government panel on new growth strategies held its inaugural meeting. During the meeting, Prime Minister Naoto Kan instructed Cabinet members to study ways to realize his administration's new growth strategy.
One issue on the table is a cut in the effective rate of corporate taxation--the ratio of the corporate sector's national and local tax payments to its taxable income. This nation's effective corporate tax rate is much higher than those in many other countries.
The prime minister also told his Cabinet to consider tax reductions aimed at helping create more corporate jobs.
Chaired by the prime minister, the growth strategy council includes Cabinet ministers involved with the economy and top academics and experts, as well as the Bank of Japan governor and the chiefs of the nation's three main business organizations. The blue-ribbon panel will spearhead government efforts to devise and implement specific policies in line with the growth strategy adopted in June.
Go beyond growth strategy
The council--a mix of talented figures from various sectors--should not be limited just to addressing topics related to the growth strategy.
The defunct Council on Economic and Fiscal Policy may be illuminating in this respect. This panel took the lead in crafting and implementing government polices under the then ruling coalition of the Liberal Democratic Party and New Komeito.
The growth strategy council needs to serve as a forum for discussions on a wide range of issues, including the urgent matter of how to rectify the recent upsurge in the value of the yen. Other topics include such fiscal and financial policies as medium- and long-term reform of the fiscal and social security systems.
The government's new growth strategy seeks a swift resolution to the ongoing deflationary crisis while also ensuring that the nation's average annual growth rate in the next decade reaches a hefty 3 percent in nominal terms and 2 percent in real terms.
The Kan administration also has said it will strive to generate new demand worth more than 120 trillion yen and create about 5 million jobs through government support for environmental protection, health care and other growth fields, combined with efforts to encourage investment in other Asian markets.
High hurdles must be cleared to achieve these targets. The growth strategy council will work to smooth differences among the various policies formulated by different ministries, while also issuing instructions to each office concerning specific measures to be implemented.
We hope the new panel will work to end the bureaucratic turf battle among government offices seeking greater authority, and remedy the lack of coordination among them in implementing government policies. These hurdles only serve to undercut workable policies. Also, the respective roles of the growth strategy panel and the National Policy Unit must be clearly defined.
The important thing is to marshal conflicting positions among the ministries, and facilitate a consensus on each divisive issue.
Lend ear to business world
Divided opinions can be seen, for example, on the issue of lowering the corporate tax rate. The Economy, Trade and Industry Ministry and the Finance Ministry are sharply divided over this matter--the former wants to reduce the rate, but the latter fears doing so could lessen tax revenue. Kan will be tested as to whether his administration can lead the way to reducing the tax rate as soon as possible.
Indications are the growth strategy panel will make its presence strongly felt as a vehicle for reflecting the opinions of the business community in government policy.
The government of former Prime Minister Yukio Hatoyama alienated itself from financial circles, hammering out various policies that could dampen the economy. The economy is still suffering from the aftereffects of the unsatisfactory relationship between the Hatoyama administration and the business community.
The Kan administration must listen to financial circles' and experts' opinions about the debatable policies adopted by his predecessor, including a ban on temporary workers being dispatched to manufacturing companies and a self-imposed goal for a large cut in greenhouse gas emissions. If necessary, the government must reconsider such policies.
The market is experiencing a rapid rise in the yen's value and a sharp fall in stock prices. There has been no government forum that included both the prime minister and the central bank governor, because of the Hatoyama administration's decision to abolish the Council on Economic and Fiscal Policy.
We hope the launch of the growth strategy council will smooth policy coordination between the government and the central bank.
The vast wisdom accumulated by private-sector experts should be fully utilized to help restore the growth potential of the Japanese economy.
On Thursday, a key government panel on new growth strategies held its inaugural meeting. During the meeting, Prime Minister Naoto Kan instructed Cabinet members to study ways to realize his administration's new growth strategy.
One issue on the table is a cut in the effective rate of corporate taxation--the ratio of the corporate sector's national and local tax payments to its taxable income. This nation's effective corporate tax rate is much higher than those in many other countries.
The prime minister also told his Cabinet to consider tax reductions aimed at helping create more corporate jobs.
Chaired by the prime minister, the growth strategy council includes Cabinet ministers involved with the economy and top academics and experts, as well as the Bank of Japan governor and the chiefs of the nation's three main business organizations. The blue-ribbon panel will spearhead government efforts to devise and implement specific policies in line with the growth strategy adopted in June.
Go beyond growth strategy
The council--a mix of talented figures from various sectors--should not be limited just to addressing topics related to the growth strategy.
The defunct Council on Economic and Fiscal Policy may be illuminating in this respect. This panel took the lead in crafting and implementing government polices under the then ruling coalition of the Liberal Democratic Party and New Komeito.
The growth strategy council needs to serve as a forum for discussions on a wide range of issues, including the urgent matter of how to rectify the recent upsurge in the value of the yen. Other topics include such fiscal and financial policies as medium- and long-term reform of the fiscal and social security systems.
The government's new growth strategy seeks a swift resolution to the ongoing deflationary crisis while also ensuring that the nation's average annual growth rate in the next decade reaches a hefty 3 percent in nominal terms and 2 percent in real terms.
The Kan administration also has said it will strive to generate new demand worth more than 120 trillion yen and create about 5 million jobs through government support for environmental protection, health care and other growth fields, combined with efforts to encourage investment in other Asian markets.
High hurdles must be cleared to achieve these targets. The growth strategy council will work to smooth differences among the various policies formulated by different ministries, while also issuing instructions to each office concerning specific measures to be implemented.
We hope the new panel will work to end the bureaucratic turf battle among government offices seeking greater authority, and remedy the lack of coordination among them in implementing government policies. These hurdles only serve to undercut workable policies. Also, the respective roles of the growth strategy panel and the National Policy Unit must be clearly defined.
The important thing is to marshal conflicting positions among the ministries, and facilitate a consensus on each divisive issue.
Lend ear to business world
Divided opinions can be seen, for example, on the issue of lowering the corporate tax rate. The Economy, Trade and Industry Ministry and the Finance Ministry are sharply divided over this matter--the former wants to reduce the rate, but the latter fears doing so could lessen tax revenue. Kan will be tested as to whether his administration can lead the way to reducing the tax rate as soon as possible.
Indications are the growth strategy panel will make its presence strongly felt as a vehicle for reflecting the opinions of the business community in government policy.
The government of former Prime Minister Yukio Hatoyama alienated itself from financial circles, hammering out various policies that could dampen the economy. The economy is still suffering from the aftereffects of the unsatisfactory relationship between the Hatoyama administration and the business community.
The Kan administration must listen to financial circles' and experts' opinions about the debatable policies adopted by his predecessor, including a ban on temporary workers being dispatched to manufacturing companies and a self-imposed goal for a large cut in greenhouse gas emissions. If necessary, the government must reconsider such policies.
The market is experiencing a rapid rise in the yen's value and a sharp fall in stock prices. There has been no government forum that included both the prime minister and the central bank governor, because of the Hatoyama administration's decision to abolish the Council on Economic and Fiscal Policy.
We hope the launch of the growth strategy council will smooth policy coordination between the government and the central bank.
アップルがついにSNSへ進出!新生アップルTVとあわせて描く家庭のリビングルーム支配の構図
アップルがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)へ進出した。
サンフランシスコのアップル・イベントで明らかにされた、同社のSNS「Ping(ピング)」は、今回の発表の中でも意表をついたものだった。ピングは、アップルCEOの言葉を借りれば、「フェイスブックとツイッターにiTunesを掛け合わせたようなもの」。
iTunesはアップルの音楽を中心としたマルチメディアコンテンツのオーガナイザー兼プレーヤー兼ストアの入り口で、ピングは音楽を核としたSNSとなる。これを通じて、まだ知らない曲のディスカバリー(発見)に役立てようとアップルは売り込んでいるのだ。
ピングは、他人が買った楽曲やコメントを見ることができるサイトで、フェイスブックのようにクローズにもでき、ツイッターのようにオープンにもできる。仲間内で、どんな曲をダウンロードしたといったようなアップデートがわかるようにできる一方で、誰にフォローされたり、誰をフォローしたりも自由という設定もできる。
直接には相手を知らないが、音楽の趣味に一家言ある人の購買歴などをフォローするのは面白いだろう。ミュージシャンもここにコンサートやアルバムの新情報を掲載して、プロモーションに役立てることもできるし、ファンはミュージシャンのお気に入りの音楽や、日々のつぶやきを知ることもできるという、うれしいサイトだ。
だが、アップルにとって、音楽のSNSは遅すぎた進出とも言える。iTunesストアの出現は音楽業界を不意打ちしたが、2003年の開始から7年がたった現在、すでにデジタル音楽売り上げの80%を担う大店舗に拡大した。アップルの発表によると、iTunesのユーザー数は1億6000万人。すでに音楽好きが大勢たむろしているのだ。もっと以前にSNSは可能だったはずだ。だが、その潜在力のおかげだろう。ピングの発表後たった48時間で、登録者が何と100万人を超えたという。
ピングの本質はiTunesストアの
売り上げに貢献するサイト
さて、このピングでアップルは何を狙っているのか。
ユーザーの間では、すでにピングの不具合がいくつか指摘されている。ひとつは、スパムの洪水にさらされていること。コメントの書き込みになりすまして、ユーザーを別のサイトへ誘おうとするスパマーが一気に押し寄せているのだ。アップルがスパムのスクリーニングすら設置していないことに、多くの関係者が首を傾げている。
また、お勧めの曲として出てくるのは、実のある推薦ものではなく、「売らんかな」的なプロモーションであるという点も、不人気を呼びそうな欠点だ。当初可能とされていたフェイスブックからのアクセスも、フェイスブックとの話し合いがつかず、スタート直前に取りやめとなった。
さらに、いつものアップルらしく、ユーザーの写真に検閲をかけているという点も、筋金入りの音楽ファンにとっては疑問点だろう。ヌード写真などはカットされるらしい。また、アップルはピングのプロモーション用に、数人のミュージシャンのアカウント開設をお膳立てしているのだが、その中でレディー・ガガのページから、同性愛関連のコメントが削除されていることも明らかになっている。
ピングはしたがって、完全に自由なSNSというよりは、アップルのコントロールのもとにお行儀よくふるまい、iTunesストアの売り上げに貢献するサイトという方が合っているだろう。
新生アップルTVも発表
目指すはデジタル・リビングルーム
だが、もうひとつポイントがある。
アップルは、昨年末Lala.com(ララ)という音楽サイトを買収した。ララは、オンラインの音楽ストアで、CDをダウンロードするのは89セント、ストリーミングで聞くのは1曲あたり10セントという激安価格で、一部のユーザーの人気を得ていた。
だが、アップルは今年5月になってララのサービスを閉鎖。今回のピングにはララの技術の一部が踏襲されていると見られるが、興味深いのは、先週のイベントでアップルが発表したもうひとつのアイテム、新生アップルTVである。
アップルTVは何度かのスペック変更を重ねてきたが、今回は価格を229ドルから99ドルまで激しく下げて、映画やテレビ番組などをテレビ画面にストリーミングすることに重きを置いた、簡易な製品として再出発している。
新生アップルTVはアップルのデジタル・リビングルームへの本格的な出直しの一歩と考えられるが、これにララの音楽ストリーミング技術、ピングのSNS機能が加われば、アップルの描く次の絵が見えてくる。つまりは、リビングルームに居ながらにして、映画もテレビ番組も音楽もストリーミングし、そのまわりにSNSがあるという構図だ。
音楽での強みにSNSの賑わいを加え、それをそのままリビングルームに持ち込んで、どこにも先駆けてデジタル・リビングルームの先頭に立とうとしているというシナリオが見えるのだ。
折しも、グーグルは今年中にストリーミング音楽のサービスを始める予定だ。こちらはまさにグーグル流で、購入した楽曲はクラウド上のロッカーに貯め、それをアンドロイド携帯で聞くというもの。音楽業界は、アップルに牛耳られてきたウサを晴らすかのように、グーグルの進出を歓迎しているという。
アップルがこのグーグルの動きにあらゆる手で防衛を試みているとしてもおかしくない。アップルにとってSNSはただのSNSではない。ライバル各社は、そう肝に銘じるべきだろう。
海外就労「関心なし」77%…内閣府調査
海外で働くことに関心がある日本人は2割にとどまり、20歳代の若者でも4割に過ぎないことが、内閣府の世論調査で分かった。
政府が新成長戦略で「世界で活躍する人材育成」を目標の一つに掲げたことを受け、経済産業省が内閣府に調査を依頼したもので、7月15~25日、全国の20歳以上の3000人を対象に行い、1913人(63・8%)から回答を得た。
それによると、海外での就労について「関心がある」と「どちらかといえば関心がある」としたのは計22・0%。20歳代だけで見ると40・0%だった。逆に「関心がない」「どちらかといえば関心がない」は計77・4%で、年齢別に見ると、20歳代で58・8%、30歳代で66・0%、40歳代で79・4%と、年齢を重ねるごとに関心が薄れていく様子が浮き彫りになった。
世界経済「一時的に減速」…IMFが見通し
【ワシントン=岡田章裕】国際通貨基金(IMF)は10日、世界経済の見通しと政策課題について報告書を公表し、「景気回復の下ぶれリスクは強まっている」との見通しを示した。
多くの先進国は政府債務が増大しており、脆弱(ぜいじゃく)な金融部門を通じて実体経済に悪影響を及ぼす恐れがあると指摘している。
同報告書は今月4、5日に韓国で開かれた、主要20か国・地域(G20)首脳会合に向けた実務者協議の討議資料として提出された。
景気見通しについては、「2010年後半から11年前半にかけて一時的に減速するだろう」との見方を示した。政策課題としては、持続可能な経済成長に向けて、11年から財政再建に取り組む必要性を強調している。
ヤマダ電機が中古住宅参入、オール電化に改装
家電量販最大手のヤマダ電機は11日、中古住宅事業に来年から本格参入する方針を明らかにした。
仕入れた中古住宅を、給湯やコンロ、暖房などをすべて電気でまかなうオール電化にリフォームして、割安な価格で提供する。
家電量販大手が中古住宅市場に本格参入するのは初めてで、市場活性化にもつながりそうだ。
オール電化住宅は、光熱費の引き下げ効果が見込めるうえ、火を使わないという安心感から、高齢者や子どもがいる世帯を中心に人気がある。東京電力のサービス区域内では毎年10%以上も増加している。
ヤマダは、仕入れた中古住宅に、IHクッキングヒーターを設置し、最新の給湯システムや防犯キーシステムなども導入する。オール電化にするための費用は100万円弱かかるとされるが、ヤマダはほとんど上乗せせずに販売する。
小泉改革 大胆さ、むしろ足りず 竹中平蔵・慶大教授
――20年に及ぶ長期停滞をどうみるか。
「単なる20年ではない。3つの時期に分けられると思う。バブル崩壊後の問題処理にもたついた『失われた12年』。小泉政権の下で改革に取り組んだ『下げ止まった5年』。そして改革が後戻りしつつある直近の『最も失われた3年』だ」
焦点は不良債権
――「小泉改革」とは何だったのか。
「日本経済が追いつめられた状況で危機感を持ち、当たり前の課題に取り組んだ。何よりも差し迫った問題は、銀行が抱え込んだ不良債権の抜本処理だった。規制緩和も目指したが、抵抗が根強く、率直に言って大きな成果が上がったとはいえない」
「最大の功績は日本経済の衰退に歯止めがかかったことだ。2003~07年の実質成長率は年平均2%強で、7割が内需だ。雇用も100万人増えた。基礎的財政収支の赤字も28兆円から6兆円に、22兆円も改善した。22兆円は消費税に換算して9%に相当する」
――直近の政策に対する評価は厳しい。
2002年10月政府が不良債権処理の加速を目的にした「金融再生プログラム」を発表2005年10月郵政民営化法が成立2006年7月社会保障費の自然増を毎年度2200億円ずつ圧縮する目標を盛り込んだ「骨太の方針2006」を閣議決定
「危機を脱すると、コンプリーセンシー(慢心)が広がってきた。リーマン・ショックが襲い、司令塔なきバラマキが実施された。自民党の麻生政権も民主党の鳩山政権も、経済運営はそっくり。その結果が現在の深刻な財政危機だ」
格差拡大は誤り
――小泉改革は格差を拡大したとの批判も強い。
「所得配分のばらつきを示すジニ係数が小泉政権時代に拡大したといった批判は事実認識が誤っている。ジニ係数が拡大していたのは、むしろ経済が停滞していた小泉政権以前だ。社会保障を切り捨てたという声もあるが、小泉政権は本来であれば5兆円増えるところを4兆円に抑えただけ。批判者が指摘するほど、大胆な改革は実現できなかったと言いたい」
――年金など社会保障の負担増は難問だ。
「本来、年金は働けなくなった高齢者を支える仕組みだ。生きている人に生命保険が出ないのと同様に、元気で働いている人、なかでも高額所得者には年金の支払いを見送るなど、制度の基本に立ち返った改革を実行すべきだろう。受給年齢の段階的な引き上げも必要になる」
――経済が成長しないと改革も難しいのでは。
「名目成長率は経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均で4.5%程度だが、日本は1%程度と著しく低い。これは日本経済がデフレ均衡に陥っているからだ。06~07年に日本経済は回復軌道に乗り、デフレから脱却しかけたのに、日銀が金融引き締めに転じて好機を逸した」
――どんな経済運営が必要になるか。
「政府は需給ギャップを埋めるため、1回限りの財政支出を実行すべきだ。例えば羽田空港の整備、学校や病院の耐震化など、必要性がはっきりしているインフラ(社会資本)の整備が考えられる。日銀も通貨供給量(M2+CD)について5~6%の伸びを確保することが大切だ」
――民主党政権には出口がないのか。
「現在の路線を転換すればいい。フランスのミッテラン政権が参考になる。社会党政権だったため、当初は国有化を唱えていたが、のちに路線を大胆に切り替えた。この転換が政権の浮揚に役立った。民主党政権も先例を生かし、機動的に動いてほしい」
(聞き手は編集委員 滝田洋一)
たけなか・へいぞう 2001年、慶大教授から民間人として小泉内閣に入閣し、改革を支えるブレーン、政策の推進役として活躍。02年に金融担当相に就任し、「1丁目1番地の課題」として不良債権問題に対応した。
厳格な資産査定は金融界の猛反発を買ったが、不良債権を半減させる目標を達成。「金融不安を克服し、日本経済を成長軌道に戻した」ことを小泉改革の最大の成果と自己評価する。その後の麻生政権や現在の民主党政権の政策に対して「改革後退」を厳しく批判する。
【産経主張】代表選14日投票 国家の危機考えた選択を 信なくば政治は成り立たず
14日に投開票される民主党代表選で所属国会議員411人には、国家の危機を乗り越えるために、菅直人首相と小沢一郎前幹事長のどちらがふさわしいかを熟考し、票を投じてもらいたい。その選択に日本の将来がかかっている。
参院選で大敗し、国民の信を失った首相と、「刑事被告人」になりうる前幹事長のいずれかを選ぶしかないのは、日本の「不幸」といえる。政権発足以来、迷走を続け、現在も党を二分する権力闘争を繰り広げている民主党に、国民はあきれ果てている。
◆同盟の抑止力に違い
ただ、対立軸は少しずつ見えてきた。ばらまき政策の修正に柔軟で財政再建を志向する菅氏と、ばらまきを継続し消費税増税に否定的な小沢氏との違いはその一例だ。より現実的な方策で、国益や国民の利益を守る指導者を見極めることが求められる。
今、日本が想定していなかった危機が現実のものになっている。中国が力を背景に日本を威嚇し、勢力圏を拡大する構えをみせていることだ。尖閣諸島沖合の日本領海を侵犯した中国漁船の船長を海上保安庁が逮捕した事件で、中国は漁業監視船を派遣した。農業省所属の監視船は4000トン前後の退役艦を改造しているものもあり、インドネシアでは今夏、威嚇発砲をしたと伝えられる。
監視船はその後、尖閣海域を離れたようだが、もしも日本領海に居座った場合、巡視船は退去を求める対応しか取れない。自衛隊にしても、領土や領海を不法に侵害する行為を排除する領域警備規定を付与されていない。日本は自国の守りすら不十分なのだ。
11日には沖縄沖で、海保の測量船が中国の海洋調査船から活動中止を求められた。
結果として、日本の平和と安全は日米同盟に基づく抑止力に、その成否がかかっている。
こうした外交、安全保障政策が代表選でほとんど論じられていないのは残念だが、菅氏は「米海兵隊は抑止力として必要」と述べた。小沢氏は事件の発生前に「(尖閣諸島は)歴史上、中国の領土になったことは一度もない」と語ったが、海兵隊の実戦部隊は不要との見解を示している。
日米同盟の空洞化が中国の挑発を呼び込んでいるだけに、両氏とも米軍普天間飛行場移設問題の解決策を具体的に語るべきだ。
10日に開かれた民主党有志議員主催の討論会は、両候補の政策論議を投票の判断材料とする趣旨だったが、あらかじめ「政治とカネ」は議題から外したという。自浄能力の欠如が、国民の目にどう映っているかの自覚に欠けると言わざるを得ない。
小沢氏は首相に就任した場合、東京第5検察審査会から2度目の「起訴相当」議決が出されても、起訴に同意する考えを示している。だが、それがどのような状況を引き起こすかを、改めて想起してほしい。法廷での決着がつくまで、違法行為の疑いをかけられた指導者をいただく日本は、海外にどう映るのか。そんな指導者が痛みを伴う政策を訴えても、国民は聞く耳をもたないだろう。
来年の統一地方選や今後の国政選挙を、小沢氏の下で戦うことになる状況も考えておくべきだ。
◆不安は独裁的な傾向
さらに見逃せないのは、小沢氏の強いリーダーシップが独裁的な傾向を併せ持つことだ。小沢氏は昨年暮れ、天皇陛下と習近平中国国家副主席の特例会見を強引に実現させた。「陛下にお伺いすれば喜んでやってくださると思う」と、天皇のご意思を勝手に忖度(そんたく)し、1カ月前までに申請が必要なルールを無視したことを正当化する不見識な発言もあった。
一方、菅氏は「全員参加の議論」など融和的な政権運営を掲げるが、指導力が問われている。
参院選で打ち出した消費税増税がトーンダウンしたように、発言のブレが最高指導者としての資質を疑わせている。代表選序盤で「カネにまみれた政治文化を変える」と小沢氏を真っ向から批判しながら、やがて「小沢氏と手を握って皆さんの期待に応える」と重用する考えを示した。幹事長辞職でけじめがついたとも語っており、小沢氏にこれ以上説明を求める意欲は薄いようだ。
首相の資格と資質が問われる異例の選挙だが、いずれが勝利してもできるだけ早期に、国民の信を問うべきである。
アップルがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)へ進出した。
サンフランシスコのアップル・イベントで明らかにされた、同社のSNS「Ping(ピング)」は、今回の発表の中でも意表をついたものだった。ピングは、アップルCEOの言葉を借りれば、「フェイスブックとツイッターにiTunesを掛け合わせたようなもの」。
iTunesはアップルの音楽を中心としたマルチメディアコンテンツのオーガナイザー兼プレーヤー兼ストアの入り口で、ピングは音楽を核としたSNSとなる。これを通じて、まだ知らない曲のディスカバリー(発見)に役立てようとアップルは売り込んでいるのだ。
ピングは、他人が買った楽曲やコメントを見ることができるサイトで、フェイスブックのようにクローズにもでき、ツイッターのようにオープンにもできる。仲間内で、どんな曲をダウンロードしたといったようなアップデートがわかるようにできる一方で、誰にフォローされたり、誰をフォローしたりも自由という設定もできる。
直接には相手を知らないが、音楽の趣味に一家言ある人の購買歴などをフォローするのは面白いだろう。ミュージシャンもここにコンサートやアルバムの新情報を掲載して、プロモーションに役立てることもできるし、ファンはミュージシャンのお気に入りの音楽や、日々のつぶやきを知ることもできるという、うれしいサイトだ。
だが、アップルにとって、音楽のSNSは遅すぎた進出とも言える。iTunesストアの出現は音楽業界を不意打ちしたが、2003年の開始から7年がたった現在、すでにデジタル音楽売り上げの80%を担う大店舗に拡大した。アップルの発表によると、iTunesのユーザー数は1億6000万人。すでに音楽好きが大勢たむろしているのだ。もっと以前にSNSは可能だったはずだ。だが、その潜在力のおかげだろう。ピングの発表後たった48時間で、登録者が何と100万人を超えたという。
ピングの本質はiTunesストアの
売り上げに貢献するサイト
さて、このピングでアップルは何を狙っているのか。
ユーザーの間では、すでにピングの不具合がいくつか指摘されている。ひとつは、スパムの洪水にさらされていること。コメントの書き込みになりすまして、ユーザーを別のサイトへ誘おうとするスパマーが一気に押し寄せているのだ。アップルがスパムのスクリーニングすら設置していないことに、多くの関係者が首を傾げている。
また、お勧めの曲として出てくるのは、実のある推薦ものではなく、「売らんかな」的なプロモーションであるという点も、不人気を呼びそうな欠点だ。当初可能とされていたフェイスブックからのアクセスも、フェイスブックとの話し合いがつかず、スタート直前に取りやめとなった。
さらに、いつものアップルらしく、ユーザーの写真に検閲をかけているという点も、筋金入りの音楽ファンにとっては疑問点だろう。ヌード写真などはカットされるらしい。また、アップルはピングのプロモーション用に、数人のミュージシャンのアカウント開設をお膳立てしているのだが、その中でレディー・ガガのページから、同性愛関連のコメントが削除されていることも明らかになっている。
ピングはしたがって、完全に自由なSNSというよりは、アップルのコントロールのもとにお行儀よくふるまい、iTunesストアの売り上げに貢献するサイトという方が合っているだろう。
新生アップルTVも発表
目指すはデジタル・リビングルーム
だが、もうひとつポイントがある。
アップルは、昨年末Lala.com(ララ)という音楽サイトを買収した。ララは、オンラインの音楽ストアで、CDをダウンロードするのは89セント、ストリーミングで聞くのは1曲あたり10セントという激安価格で、一部のユーザーの人気を得ていた。
だが、アップルは今年5月になってララのサービスを閉鎖。今回のピングにはララの技術の一部が踏襲されていると見られるが、興味深いのは、先週のイベントでアップルが発表したもうひとつのアイテム、新生アップルTVである。
アップルTVは何度かのスペック変更を重ねてきたが、今回は価格を229ドルから99ドルまで激しく下げて、映画やテレビ番組などをテレビ画面にストリーミングすることに重きを置いた、簡易な製品として再出発している。
新生アップルTVはアップルのデジタル・リビングルームへの本格的な出直しの一歩と考えられるが、これにララの音楽ストリーミング技術、ピングのSNS機能が加われば、アップルの描く次の絵が見えてくる。つまりは、リビングルームに居ながらにして、映画もテレビ番組も音楽もストリーミングし、そのまわりにSNSがあるという構図だ。
音楽での強みにSNSの賑わいを加え、それをそのままリビングルームに持ち込んで、どこにも先駆けてデジタル・リビングルームの先頭に立とうとしているというシナリオが見えるのだ。
折しも、グーグルは今年中にストリーミング音楽のサービスを始める予定だ。こちらはまさにグーグル流で、購入した楽曲はクラウド上のロッカーに貯め、それをアンドロイド携帯で聞くというもの。音楽業界は、アップルに牛耳られてきたウサを晴らすかのように、グーグルの進出を歓迎しているという。
アップルがこのグーグルの動きにあらゆる手で防衛を試みているとしてもおかしくない。アップルにとってSNSはただのSNSではない。ライバル各社は、そう肝に銘じるべきだろう。
海外就労「関心なし」77%…内閣府調査
海外で働くことに関心がある日本人は2割にとどまり、20歳代の若者でも4割に過ぎないことが、内閣府の世論調査で分かった。
政府が新成長戦略で「世界で活躍する人材育成」を目標の一つに掲げたことを受け、経済産業省が内閣府に調査を依頼したもので、7月15~25日、全国の20歳以上の3000人を対象に行い、1913人(63・8%)から回答を得た。
それによると、海外での就労について「関心がある」と「どちらかといえば関心がある」としたのは計22・0%。20歳代だけで見ると40・0%だった。逆に「関心がない」「どちらかといえば関心がない」は計77・4%で、年齢別に見ると、20歳代で58・8%、30歳代で66・0%、40歳代で79・4%と、年齢を重ねるごとに関心が薄れていく様子が浮き彫りになった。
世界経済「一時的に減速」…IMFが見通し
【ワシントン=岡田章裕】国際通貨基金(IMF)は10日、世界経済の見通しと政策課題について報告書を公表し、「景気回復の下ぶれリスクは強まっている」との見通しを示した。
多くの先進国は政府債務が増大しており、脆弱(ぜいじゃく)な金融部門を通じて実体経済に悪影響を及ぼす恐れがあると指摘している。
同報告書は今月4、5日に韓国で開かれた、主要20か国・地域(G20)首脳会合に向けた実務者協議の討議資料として提出された。
景気見通しについては、「2010年後半から11年前半にかけて一時的に減速するだろう」との見方を示した。政策課題としては、持続可能な経済成長に向けて、11年から財政再建に取り組む必要性を強調している。
ヤマダ電機が中古住宅参入、オール電化に改装
家電量販最大手のヤマダ電機は11日、中古住宅事業に来年から本格参入する方針を明らかにした。
仕入れた中古住宅を、給湯やコンロ、暖房などをすべて電気でまかなうオール電化にリフォームして、割安な価格で提供する。
家電量販大手が中古住宅市場に本格参入するのは初めてで、市場活性化にもつながりそうだ。
オール電化住宅は、光熱費の引き下げ効果が見込めるうえ、火を使わないという安心感から、高齢者や子どもがいる世帯を中心に人気がある。東京電力のサービス区域内では毎年10%以上も増加している。
ヤマダは、仕入れた中古住宅に、IHクッキングヒーターを設置し、最新の給湯システムや防犯キーシステムなども導入する。オール電化にするための費用は100万円弱かかるとされるが、ヤマダはほとんど上乗せせずに販売する。
小泉改革 大胆さ、むしろ足りず 竹中平蔵・慶大教授
――20年に及ぶ長期停滞をどうみるか。
「単なる20年ではない。3つの時期に分けられると思う。バブル崩壊後の問題処理にもたついた『失われた12年』。小泉政権の下で改革に取り組んだ『下げ止まった5年』。そして改革が後戻りしつつある直近の『最も失われた3年』だ」
焦点は不良債権
――「小泉改革」とは何だったのか。
「日本経済が追いつめられた状況で危機感を持ち、当たり前の課題に取り組んだ。何よりも差し迫った問題は、銀行が抱え込んだ不良債権の抜本処理だった。規制緩和も目指したが、抵抗が根強く、率直に言って大きな成果が上がったとはいえない」
「最大の功績は日本経済の衰退に歯止めがかかったことだ。2003~07年の実質成長率は年平均2%強で、7割が内需だ。雇用も100万人増えた。基礎的財政収支の赤字も28兆円から6兆円に、22兆円も改善した。22兆円は消費税に換算して9%に相当する」
――直近の政策に対する評価は厳しい。
2002年10月政府が不良債権処理の加速を目的にした「金融再生プログラム」を発表2005年10月郵政民営化法が成立2006年7月社会保障費の自然増を毎年度2200億円ずつ圧縮する目標を盛り込んだ「骨太の方針2006」を閣議決定
「危機を脱すると、コンプリーセンシー(慢心)が広がってきた。リーマン・ショックが襲い、司令塔なきバラマキが実施された。自民党の麻生政権も民主党の鳩山政権も、経済運営はそっくり。その結果が現在の深刻な財政危機だ」
格差拡大は誤り
――小泉改革は格差を拡大したとの批判も強い。
「所得配分のばらつきを示すジニ係数が小泉政権時代に拡大したといった批判は事実認識が誤っている。ジニ係数が拡大していたのは、むしろ経済が停滞していた小泉政権以前だ。社会保障を切り捨てたという声もあるが、小泉政権は本来であれば5兆円増えるところを4兆円に抑えただけ。批判者が指摘するほど、大胆な改革は実現できなかったと言いたい」
――年金など社会保障の負担増は難問だ。
「本来、年金は働けなくなった高齢者を支える仕組みだ。生きている人に生命保険が出ないのと同様に、元気で働いている人、なかでも高額所得者には年金の支払いを見送るなど、制度の基本に立ち返った改革を実行すべきだろう。受給年齢の段階的な引き上げも必要になる」
――経済が成長しないと改革も難しいのでは。
「名目成長率は経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均で4.5%程度だが、日本は1%程度と著しく低い。これは日本経済がデフレ均衡に陥っているからだ。06~07年に日本経済は回復軌道に乗り、デフレから脱却しかけたのに、日銀が金融引き締めに転じて好機を逸した」
――どんな経済運営が必要になるか。
「政府は需給ギャップを埋めるため、1回限りの財政支出を実行すべきだ。例えば羽田空港の整備、学校や病院の耐震化など、必要性がはっきりしているインフラ(社会資本)の整備が考えられる。日銀も通貨供給量(M2+CD)について5~6%の伸びを確保することが大切だ」
――民主党政権には出口がないのか。
「現在の路線を転換すればいい。フランスのミッテラン政権が参考になる。社会党政権だったため、当初は国有化を唱えていたが、のちに路線を大胆に切り替えた。この転換が政権の浮揚に役立った。民主党政権も先例を生かし、機動的に動いてほしい」
(聞き手は編集委員 滝田洋一)
たけなか・へいぞう 2001年、慶大教授から民間人として小泉内閣に入閣し、改革を支えるブレーン、政策の推進役として活躍。02年に金融担当相に就任し、「1丁目1番地の課題」として不良債権問題に対応した。
厳格な資産査定は金融界の猛反発を買ったが、不良債権を半減させる目標を達成。「金融不安を克服し、日本経済を成長軌道に戻した」ことを小泉改革の最大の成果と自己評価する。その後の麻生政権や現在の民主党政権の政策に対して「改革後退」を厳しく批判する。
【産経主張】代表選14日投票 国家の危機考えた選択を 信なくば政治は成り立たず
14日に投開票される民主党代表選で所属国会議員411人には、国家の危機を乗り越えるために、菅直人首相と小沢一郎前幹事長のどちらがふさわしいかを熟考し、票を投じてもらいたい。その選択に日本の将来がかかっている。
参院選で大敗し、国民の信を失った首相と、「刑事被告人」になりうる前幹事長のいずれかを選ぶしかないのは、日本の「不幸」といえる。政権発足以来、迷走を続け、現在も党を二分する権力闘争を繰り広げている民主党に、国民はあきれ果てている。
◆同盟の抑止力に違い
ただ、対立軸は少しずつ見えてきた。ばらまき政策の修正に柔軟で財政再建を志向する菅氏と、ばらまきを継続し消費税増税に否定的な小沢氏との違いはその一例だ。より現実的な方策で、国益や国民の利益を守る指導者を見極めることが求められる。
今、日本が想定していなかった危機が現実のものになっている。中国が力を背景に日本を威嚇し、勢力圏を拡大する構えをみせていることだ。尖閣諸島沖合の日本領海を侵犯した中国漁船の船長を海上保安庁が逮捕した事件で、中国は漁業監視船を派遣した。農業省所属の監視船は4000トン前後の退役艦を改造しているものもあり、インドネシアでは今夏、威嚇発砲をしたと伝えられる。
監視船はその後、尖閣海域を離れたようだが、もしも日本領海に居座った場合、巡視船は退去を求める対応しか取れない。自衛隊にしても、領土や領海を不法に侵害する行為を排除する領域警備規定を付与されていない。日本は自国の守りすら不十分なのだ。
11日には沖縄沖で、海保の測量船が中国の海洋調査船から活動中止を求められた。
結果として、日本の平和と安全は日米同盟に基づく抑止力に、その成否がかかっている。
こうした外交、安全保障政策が代表選でほとんど論じられていないのは残念だが、菅氏は「米海兵隊は抑止力として必要」と述べた。小沢氏は事件の発生前に「(尖閣諸島は)歴史上、中国の領土になったことは一度もない」と語ったが、海兵隊の実戦部隊は不要との見解を示している。
日米同盟の空洞化が中国の挑発を呼び込んでいるだけに、両氏とも米軍普天間飛行場移設問題の解決策を具体的に語るべきだ。
10日に開かれた民主党有志議員主催の討論会は、両候補の政策論議を投票の判断材料とする趣旨だったが、あらかじめ「政治とカネ」は議題から外したという。自浄能力の欠如が、国民の目にどう映っているかの自覚に欠けると言わざるを得ない。
小沢氏は首相に就任した場合、東京第5検察審査会から2度目の「起訴相当」議決が出されても、起訴に同意する考えを示している。だが、それがどのような状況を引き起こすかを、改めて想起してほしい。法廷での決着がつくまで、違法行為の疑いをかけられた指導者をいただく日本は、海外にどう映るのか。そんな指導者が痛みを伴う政策を訴えても、国民は聞く耳をもたないだろう。
来年の統一地方選や今後の国政選挙を、小沢氏の下で戦うことになる状況も考えておくべきだ。
◆不安は独裁的な傾向
さらに見逃せないのは、小沢氏の強いリーダーシップが独裁的な傾向を併せ持つことだ。小沢氏は昨年暮れ、天皇陛下と習近平中国国家副主席の特例会見を強引に実現させた。「陛下にお伺いすれば喜んでやってくださると思う」と、天皇のご意思を勝手に忖度(そんたく)し、1カ月前までに申請が必要なルールを無視したことを正当化する不見識な発言もあった。
一方、菅氏は「全員参加の議論」など融和的な政権運営を掲げるが、指導力が問われている。
参院選で打ち出した消費税増税がトーンダウンしたように、発言のブレが最高指導者としての資質を疑わせている。代表選序盤で「カネにまみれた政治文化を変える」と小沢氏を真っ向から批判しながら、やがて「小沢氏と手を握って皆さんの期待に応える」と重用する考えを示した。幹事長辞職でけじめがついたとも語っており、小沢氏にこれ以上説明を求める意欲は薄いようだ。
首相の資格と資質が問われる異例の選挙だが、いずれが勝利してもできるだけ早期に、国民の信を問うべきである。
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