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iPadが呼ぶ価格破壊
米アップルが5月28日に日本でタブレット型の多機能端末「iPad(アイパッド)」を発売してから1週間余り。
発売当日にiPadを取り扱う一部の店舗で、早朝から客が長蛇の列を作るなど大きな話題を呼んだ。大ヒット商品になるとの思惑が先行し、出版業界や通信業界ではiPad向けにサービスを提供する動きが活発化している。
雑誌・新聞が月450円で読み放題
出版業界では、1997年から書籍・雑誌の市場規模が縮小傾向にある。出版不況が続く中で、関係者は電子書籍端末として利用できるiPadが、市場のカンフル剤になると期待する。
要になるのが、電子書籍配信サービスだ。電子化した単行本や漫画、雑誌、新聞をiPadで購読できるようにする。成否のカギを握るのが、読者を引きつける豊富な品揃えだ。
講談社や新潮社など主な出版社31社で組織する「日本電子書籍出版社協会」はiPad発売当日の5月28日に、電子書籍購読ソフトを今秋からiPad向けに無料で提供すると発表した。
同協会が運営するパソコンや携帯電話向けの電子書籍配信サービス「電子文庫パブリ」をiPadからも利用できるようにする。出版社各社が共同で約1万点の電子書籍を取り揃え、iPadユーザーを囲い込む構えだ。
パソコンなどを対象に漫画の電子出版を手がけるイーブック イニシアティブ ジャパンの小出斉社長も、「閲覧に最適の端末」とiPadでの配信に乗り気。既に出版社各社が発売した漫画を中心に、約3万7000点を電子化しており、世界最大規模の漫画配信サービスをうたう。
規模を武器に、iPad向け配信サービスの主導権を握ろうと、各社は対応を急いでいる。
出版社はこうした電子書籍配信サービスに自社の出版物を提供する一方で、価格競争に陥ることを恐れる。電子書籍は造本コストや書店流通コストがかからない分、紙の書籍よりも安い費用で販売できる。
電子書籍の低価格化が進むと、紙の書籍が売れなくなり、出版事業の業績が悪化しかねないと懸念する関係者は少なくない。過度に安い価格を設定しようとする電子書籍配信サービスには、出版物を提供しないなど、自衛策を取っている出版社は多い。
とはいえ、出版業界は一枚岩ではない。ソフトバンクグループのビューンは5月31日、月額450円で30の雑誌や新聞と、日本テレビ放送網の動画ニュースが見放題になるiPad向けの配信サービスを始めると発表した。6月1日に開始し、低価格路線で多くの読者を獲得する戦略だ。
ダイヤモンド社が経済誌「週刊ダイヤモンド」などを、小学館がファッション誌「CanCam」などを、毎日新聞社が「毎日新聞」や経済誌「エコノミスト」を提供している。ほとんどの雑誌で半分以上の記事を配信する。雑誌1冊を買える程度の値段で、30の雑誌や新聞が読めるとあって、サービス開始当日には配信に支障が出るほどアクセスが集中。ソフトバンクの孫正義社長はツイッターで謝罪し、復旧に向け「サーバーをいったん停止させていただきます」と対応策を明らかにした。
その料金設定に対して、出版社のみならず、電子書籍配信サービスを提供する会社の社長からも、「過当競争に陥る恐れがある」との声が上がる。
iPad中心の流れに一石を投じる動きも出てきた。KDDI、朝日新聞社、ソニー、凸版印刷の4社連合だ。
iPad発売前日の5月27日に緊急会見を開き、電子書籍の配信事業に乗り出すと発表した。7月に企画会社を共同で設立し、2010年内に事業会社へ移行して商用サービスを始める。単行本や雑誌、新聞、漫画などの電子化や配信サービス、配信に必要なシステムの開発・運用などを手がける。
ソニーが年内をメドに日本で発売する電子書籍端末「リーダー」など、各種電子機器から利用できるようにする見込みだ。大手出版社の講談社や集英社、小学館などから既に設立趣旨に賛同を得ているほか、他の出版、新聞、電機メーカー、通信会社などにも参加を呼びかける方針を明らかにした。
ソニー米国法人の野口不二夫・上級副社長は、「出版社や新聞社が安心してデジタルコンテンツを提供できる環境の整備が重要だ」と強調する。ライバルのアップルについても、参画を拒まない考えだ。
通信もゲームも低価格化
iPadを巡る価格競争は、通信業界でも繰り広げられている。
iPadには無線LAN(構内情報通信網)に対応するモデルと、第3世代(3G)通信に対応するモデル(無線LAN機能も搭載)がある。
3Gモデルの国内販売権を持つのはソフトバンクモバイルだ。同社は通常、月額4410円の定額データ通信料金を、iPadに限って2年間にわたり 2910円に割り引くことにした。ウェブ使用料として支払う315円と合わせて月額3225円で利用できる。
これに対抗したのがイー・モバイル。1年間に限り月額4980円のデータ通信料金を3980円に引き下げる割引キャンペーンを5月26日に始めた。狙いはiPadユーザーの取り込みだ。同社の小型モバイルルーターを使えば、iPadの無線LANモデルでイー・モバイルの3G回線に接続することができる。
NTTドコモもiPadの発売に合わせるかのように、6月下旬からモバイルルーターの取り扱いを開始し、6月1日から割引キャンペーンの受け付けを始めた。データ量に応じて変動する月額1000~5985円の通常料金を、2年間にわたって月額1000~4410円に割り引く。
ソフトバンクモバイルの3225円よりも1200円ほど割高だが、3Gの受信エリアがより広いことなどを強みに、「価格競争に陥らないようにする」(NTTドコモの石田俊哉ユビキタスサービス企画担当部長)考えだ。
もっとも、大和証券キャピタル・マーケッツの山口威一郎シニアアナリストは、「ソフトバンクモバイルの打ち出した料金が非常に安く、ドコモがデータ通信のARPU(1契約者当たりの平均月間収入)を引き上げるのは難しくなる」と分析する。
このほかにも「ゲームソフトの価格相場が下がる可能性がある」(IDCジャパンの木村融人アナリスト)との予想がある。米アップルのスマートフォン「iPhone」では無料から数百円で様々なゲームソフトが配信されている。iPadでも同様の状態になるのは確実だ。こうした価格帯でゲームを楽しむ人が増えれば、数千円程度だったプレイステーション3やWii向けソフトへの値下げ圧力が強まる。
iPadがもたらす「デフレ現象」に耐える体力を備えるか、消耗戦に巻き込まれないだけの魅力的なサービスを提供できなければ、久々の大ヒット商品と目されるiPadの恩恵を受けることはできないかもしれない。
問い合わせ殺到の「人民元預金」
“持ち出し制限”の落とし穴
人民元切り上げ観測で、「人民元預金」への関心が高まっている。
現在、日本において個人向けの人民元預金サービスを行っているのは2行。中國銀行(バンク・オブ・チャイナ)とHSBCである。中國銀行では日本国内の支店で人民元建て預金が可能だが、この2ヵ月で口座開設や問い合わせが急増。HSBCは5月27日、預かり資産額1000万円以上の富裕者層向けに中国内の支店への口座開設無料サポートを開始し、こちらも予想を上回る反響だという。
人民元預金の人気を支えるのは、高金利と為替差益への期待だろう。だがそのメリットも含めて、十分に理解されているとは言いがたい。
まずは金利である。中国本土の銀行における定期預金金利は約2~4%。HSBCの人民元預金でも、1年定期で2・25%(5月末時点)と、日本よりはずいぶん高い。一方で中國銀行の場合、開設されるのはあくまで日本国内の支店での口座のため、利率は0・5%以下で一般的な邦銀と大差ない。
もう一つが、人民元切り上げを見越した為替差益への期待だ。だが、切り上げは対ドルでの話であり、ドル円の動向によっては、対人民元の日本円相場は円高になる可能性もある。差益を得られるとは限らない。
加えて、人民元預金には特有のリスクが存在する。「為替差益や金利のメリットがあっても、それを中国外に持ち出すのは簡単ではない」(香港在住の資産運用コンサルタント、木津英隆氏)のだ。
中国政府の通貨管理は厳しく、原則として非居住者による人民元から外貨への両替は困難だ。HSBCの場合は「銀聯カード」を使うことで、人民元預金を日本を含む中国国外のATMから外貨で引き出し可能だが、年2万米ドル相当までに制限されている。ちなみに口座開設自体は日本国内でできるが、カードの暗証番号の受け取りは現地まで出向かねばならない。中國銀行は日本国内の口座のため、外貨への両替についての制約は少ないものの、取引は窓口のみだ。
なお両行以外で、中国本土の銀行での口座開設・カード発行を代行する業者も急増中だが、数万円の開設手数料に加え、両替時にも手数料がかかる。
中国政府の政策変更リスクもつきまとう。非居住者の預金やカードの扱いについて、新たな制約が課されることもありうる。
そもそも中国政府は、人民元切り上げに踏み切っても上昇を小幅にとどめる可能性が高い。飛びつく前に、メリットがリスクとコストに見合うかどうか慎重に考えるべきだろう。
ネット情報すべて解析する技術 利用者から「使用やめろ」の大合唱
ネットにつなぐたびに、自分の閲覧したウェブサイトや購入した物品の情報が、知らないうちにネット接続業者(ISP)に解析される――。この「ディープ・パケット・インスペクション」(DPI)という技術を用いた広告の配信が、物議をかもしている。
DPIが認められると、たとえ利用者本人が知られたくないような情報でも、ネット接続すればISPが把握、蓄積することになる。総務省はDPIを検討し、提言をまとめたが、利用者側からは「やめてほしい」との声があがっている。
知られたくない情報も解析される恐れ
「Amazon」のようなショッピングサイトを訪れると、自分で検索したわけでもないのに「あなたにおすすめの商品はこれです」と表示されることがある。代表的なものが「行動ターゲティング広告」。サイトにアクセスした利用者に、サイト側で「クッキー」という技術を使って識別番号を付ける。以後、同じ利用者がアクセスするたびに、そこで検索や購入した商品の情報を蓄積していき、それを基にして本人の好みに合った「おすすめ商品」を提示するという仕組みだ。
これは特定のサイト上での行動履歴に限られる。一方DPIは、ネット上の利用者から伝送されるパケット(小さいデータの塊)をISPが解析、蓄積する。技術的には、閲覧したサイトや電子メールの中身などを解析することが可能だ。サイト単位ではなく、ネット通信中のさまざまな「振る舞い」を記録されるので、そこで得られた情報を言わば「ネット横断的」に広告へと応用できる。例えば、初めて訪れたサイトでも自分の「おすすめ」が表示されることも考えられる。
だが、必ずしも見られたくない情報をISPに握られ、広告に利用されることに嫌悪感を示す人も少なくない。2ちゃんねるを見ると、
「契約してるプロバイダがこれやったら即刻変えるわ」
「当然のように悪用され、尚かつ情報のだだ漏れが起こるな」
「通話先の人が録音するのと、途中で盗聴して録音するのの違い 電話において前者は合法、後者は違法」
など、DPIに反対する声で溢れた。
「容認した事実はありません」と総務省
総務省は、DPIを含む新しい情報通信技術に関するサービスの諸問題を検討するため、研究会を開催。2010年5月26日に「第二次提言」をまとめ、公表した。DPIについては、「今後の展開が期待される技術」としながらも、通信の秘密の保護との関連について検討。通信の秘密は憲法第21条で保護されており、電気通信事業法第4条第1項で「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない」と規定している。提言によると、DPI技術を活用した行動ターゲティング広告の実施は、利用者の同意を得ない限りは通信の秘密の侵害に該当するという。具体的には、ISPがパケットを解析するのは、通信当事者以外の第三者が積極的意志をもって通信の秘密を知りえる状態に置く「知得」に、また解析結果を広告配信に利用するのは、発信者や受信者の意思に反して自己または他人の利益のために用いる「窃用」にあたるためだ。
だが通信の秘密は、通信当事者の同意があれば侵害とはならない、とも書かれていた。こうなると、同意があればDPI技術を利用してよいと読み取れなくもない。総務省はDPIによる行動ターゲティング広告を容認したのだろうか。総務省消費者行政課に取材すると、「そのような事実はありません」と明確に否定した。
同課によると、そもそも「提言」は、DPIの課題を研究会で検討した内容を整理したものに過ぎず、この段階で「容認した」という類のものではない。それを踏まえたうえで、「同意」の内容について大変厳しい解釈を示していると主張する。例えばサイト上での周知だけ、契約約款に規定を設けるだけでは「同意あり」とはみなさないという。一方で、ISPと新規契約する際の契約書に、「行動ターゲティング広告への利用を目的として、DPI技術を使って通信情報を取得することに同意する」という欄を設けた場合は、「個別かつ明確な同意」として認められるという。仮に同意した後でも、「やはりDPIの使用はやめてほしい」となれば簡単に中止を求められる「オプトアウト」の機会を提供するよう、ISPに求めるとしている。これらは、「一部の法学者から『厳しすぎる』との声があったほど」(消費者行政課)高いハードルだという。
原口一博総務大臣は6月1日の記者会見で、「いかなる状況についても、通信の秘密が侵害されてはならない」と強調。消費者行政課でも、提言は解釈を示したもので、今後さらに慎重に検討を重ねていきたいと繰り返した。総務省へのパブリックコメントも、DPIの使用に反対する意見が多く寄せられたようで、今後も論議が続きそうだ。
茨城空港に上海線就航へ 中国の格安航空、7月末から週2、3往復
茨城県は6日、3月に開港した茨城空港(同県小美玉市)に、格安航空会社「春秋航空」(上海市)が上海線を7月末から就航させることを決めたと発表した。
春秋航空は9月末までの2カ月間の予定で週2、3往復を運航し、搭乗実績などを検証したうえで定期便の就航も検討するという。
同県の橋本昌知事が今月5日から訪中し、春秋航空の経営陣と合意に達した。橋本知事は「経済発展の著しい中国との旅客需要は一層の伸びが予想される。今後も同航空と協力して上海路線を発展させていきたい」とコメントした。
茨城空港には現在、韓国・アシアナ航空のソウル線とスカイマークの神戸線が就航している。
【産経主張】出生数減少 子供を増やす制度に直せ
少子化の改善は一時的なものだったようだ。平成21年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の平均数の推計値)は1・37で、4年ぶりに上昇が止まった。
出生数も17年に過去最低の106万人台を記録した後、18~20年は109万人前後となったが、21年は107万人に落ち込んだ。景気低迷で雇用環境が悪化し、出産をためらう人が増えたことなどが影響している。
だが、景気が回復すれば少子化が反転するわけではない。非正規雇用が増え、結婚できない若者も増えている。母親となる出産期(15~49歳)の女性数も減っていく。団塊ジュニア世代も30代後半となった。
少子化に歯止めがかけられなければ社会の活力は失われ、経済にも大きな影響が生じる。年金や医療、介護などの差し迫った課題の根底には少子化問題があることを忘れてはならない。
今月から「子ども手当」の支給が始まった。だが、半額支給の今年度だけで約2・3兆円の財源を要する。満額となれば5兆円超だ。あまりに家計支援に偏りすぎだ。政策バランスを欠いては少子化に歯止めはかからない。
民主党は予算のムダの排除などによって財源を捻出(ねんしゅつ)するとしていたが、借金に頼る形となった。将来にツケを回すということだ。これで本当に子供のことを考えた制度といえるのか。
来年度の支給額の見直しを検討しているようだが当然だ。バラマキ批判を招いたのは、民主党が費用対効果の検証もせず、参院選前の制度導入を急いだためでもある。所得制限や世帯の子供数が増えるほど加算するなど、より出生数増につながる仕組みに改めるべき点は多い。財源論だけでなく、精緻(せいち)な制度設計を行って根本から見直すべきだ。保育サービスの充実や働き方など総合的な取り組みも急がれる。
さらに問題なのは、民主党政権が少子化対策に消極的なことだ。鳩山由紀夫首相は「『少子化』という発想は上から目線だ」と語った。1月に閣議決定した政府の政策指針「子ども・子育てビジョン」では、「『少子化対策』から『子ども・子育て支援』へ」と方針転換をした。
だが、少子化対策と子育て支援策は問題が異なることを認識すべきだ。少子化問題の本質から目をそらしてはなるまい。
米アップルが5月28日に日本でタブレット型の多機能端末「iPad(アイパッド)」を発売してから1週間余り。
発売当日にiPadを取り扱う一部の店舗で、早朝から客が長蛇の列を作るなど大きな話題を呼んだ。大ヒット商品になるとの思惑が先行し、出版業界や通信業界ではiPad向けにサービスを提供する動きが活発化している。
雑誌・新聞が月450円で読み放題
出版業界では、1997年から書籍・雑誌の市場規模が縮小傾向にある。出版不況が続く中で、関係者は電子書籍端末として利用できるiPadが、市場のカンフル剤になると期待する。
要になるのが、電子書籍配信サービスだ。電子化した単行本や漫画、雑誌、新聞をiPadで購読できるようにする。成否のカギを握るのが、読者を引きつける豊富な品揃えだ。
講談社や新潮社など主な出版社31社で組織する「日本電子書籍出版社協会」はiPad発売当日の5月28日に、電子書籍購読ソフトを今秋からiPad向けに無料で提供すると発表した。
同協会が運営するパソコンや携帯電話向けの電子書籍配信サービス「電子文庫パブリ」をiPadからも利用できるようにする。出版社各社が共同で約1万点の電子書籍を取り揃え、iPadユーザーを囲い込む構えだ。
パソコンなどを対象に漫画の電子出版を手がけるイーブック イニシアティブ ジャパンの小出斉社長も、「閲覧に最適の端末」とiPadでの配信に乗り気。既に出版社各社が発売した漫画を中心に、約3万7000点を電子化しており、世界最大規模の漫画配信サービスをうたう。
規模を武器に、iPad向け配信サービスの主導権を握ろうと、各社は対応を急いでいる。
出版社はこうした電子書籍配信サービスに自社の出版物を提供する一方で、価格競争に陥ることを恐れる。電子書籍は造本コストや書店流通コストがかからない分、紙の書籍よりも安い費用で販売できる。
電子書籍の低価格化が進むと、紙の書籍が売れなくなり、出版事業の業績が悪化しかねないと懸念する関係者は少なくない。過度に安い価格を設定しようとする電子書籍配信サービスには、出版物を提供しないなど、自衛策を取っている出版社は多い。
とはいえ、出版業界は一枚岩ではない。ソフトバンクグループのビューンは5月31日、月額450円で30の雑誌や新聞と、日本テレビ放送網の動画ニュースが見放題になるiPad向けの配信サービスを始めると発表した。6月1日に開始し、低価格路線で多くの読者を獲得する戦略だ。
ダイヤモンド社が経済誌「週刊ダイヤモンド」などを、小学館がファッション誌「CanCam」などを、毎日新聞社が「毎日新聞」や経済誌「エコノミスト」を提供している。ほとんどの雑誌で半分以上の記事を配信する。雑誌1冊を買える程度の値段で、30の雑誌や新聞が読めるとあって、サービス開始当日には配信に支障が出るほどアクセスが集中。ソフトバンクの孫正義社長はツイッターで謝罪し、復旧に向け「サーバーをいったん停止させていただきます」と対応策を明らかにした。
その料金設定に対して、出版社のみならず、電子書籍配信サービスを提供する会社の社長からも、「過当競争に陥る恐れがある」との声が上がる。
iPad中心の流れに一石を投じる動きも出てきた。KDDI、朝日新聞社、ソニー、凸版印刷の4社連合だ。
iPad発売前日の5月27日に緊急会見を開き、電子書籍の配信事業に乗り出すと発表した。7月に企画会社を共同で設立し、2010年内に事業会社へ移行して商用サービスを始める。単行本や雑誌、新聞、漫画などの電子化や配信サービス、配信に必要なシステムの開発・運用などを手がける。
ソニーが年内をメドに日本で発売する電子書籍端末「リーダー」など、各種電子機器から利用できるようにする見込みだ。大手出版社の講談社や集英社、小学館などから既に設立趣旨に賛同を得ているほか、他の出版、新聞、電機メーカー、通信会社などにも参加を呼びかける方針を明らかにした。
ソニー米国法人の野口不二夫・上級副社長は、「出版社や新聞社が安心してデジタルコンテンツを提供できる環境の整備が重要だ」と強調する。ライバルのアップルについても、参画を拒まない考えだ。
通信もゲームも低価格化
iPadを巡る価格競争は、通信業界でも繰り広げられている。
iPadには無線LAN(構内情報通信網)に対応するモデルと、第3世代(3G)通信に対応するモデル(無線LAN機能も搭載)がある。
3Gモデルの国内販売権を持つのはソフトバンクモバイルだ。同社は通常、月額4410円の定額データ通信料金を、iPadに限って2年間にわたり 2910円に割り引くことにした。ウェブ使用料として支払う315円と合わせて月額3225円で利用できる。
これに対抗したのがイー・モバイル。1年間に限り月額4980円のデータ通信料金を3980円に引き下げる割引キャンペーンを5月26日に始めた。狙いはiPadユーザーの取り込みだ。同社の小型モバイルルーターを使えば、iPadの無線LANモデルでイー・モバイルの3G回線に接続することができる。
NTTドコモもiPadの発売に合わせるかのように、6月下旬からモバイルルーターの取り扱いを開始し、6月1日から割引キャンペーンの受け付けを始めた。データ量に応じて変動する月額1000~5985円の通常料金を、2年間にわたって月額1000~4410円に割り引く。
ソフトバンクモバイルの3225円よりも1200円ほど割高だが、3Gの受信エリアがより広いことなどを強みに、「価格競争に陥らないようにする」(NTTドコモの石田俊哉ユビキタスサービス企画担当部長)考えだ。
もっとも、大和証券キャピタル・マーケッツの山口威一郎シニアアナリストは、「ソフトバンクモバイルの打ち出した料金が非常に安く、ドコモがデータ通信のARPU(1契約者当たりの平均月間収入)を引き上げるのは難しくなる」と分析する。
このほかにも「ゲームソフトの価格相場が下がる可能性がある」(IDCジャパンの木村融人アナリスト)との予想がある。米アップルのスマートフォン「iPhone」では無料から数百円で様々なゲームソフトが配信されている。iPadでも同様の状態になるのは確実だ。こうした価格帯でゲームを楽しむ人が増えれば、数千円程度だったプレイステーション3やWii向けソフトへの値下げ圧力が強まる。
iPadがもたらす「デフレ現象」に耐える体力を備えるか、消耗戦に巻き込まれないだけの魅力的なサービスを提供できなければ、久々の大ヒット商品と目されるiPadの恩恵を受けることはできないかもしれない。
問い合わせ殺到の「人民元預金」
“持ち出し制限”の落とし穴
人民元切り上げ観測で、「人民元預金」への関心が高まっている。
現在、日本において個人向けの人民元預金サービスを行っているのは2行。中國銀行(バンク・オブ・チャイナ)とHSBCである。中國銀行では日本国内の支店で人民元建て預金が可能だが、この2ヵ月で口座開設や問い合わせが急増。HSBCは5月27日、預かり資産額1000万円以上の富裕者層向けに中国内の支店への口座開設無料サポートを開始し、こちらも予想を上回る反響だという。
人民元預金の人気を支えるのは、高金利と為替差益への期待だろう。だがそのメリットも含めて、十分に理解されているとは言いがたい。
まずは金利である。中国本土の銀行における定期預金金利は約2~4%。HSBCの人民元預金でも、1年定期で2・25%(5月末時点)と、日本よりはずいぶん高い。一方で中國銀行の場合、開設されるのはあくまで日本国内の支店での口座のため、利率は0・5%以下で一般的な邦銀と大差ない。
もう一つが、人民元切り上げを見越した為替差益への期待だ。だが、切り上げは対ドルでの話であり、ドル円の動向によっては、対人民元の日本円相場は円高になる可能性もある。差益を得られるとは限らない。
加えて、人民元預金には特有のリスクが存在する。「為替差益や金利のメリットがあっても、それを中国外に持ち出すのは簡単ではない」(香港在住の資産運用コンサルタント、木津英隆氏)のだ。
中国政府の通貨管理は厳しく、原則として非居住者による人民元から外貨への両替は困難だ。HSBCの場合は「銀聯カード」を使うことで、人民元預金を日本を含む中国国外のATMから外貨で引き出し可能だが、年2万米ドル相当までに制限されている。ちなみに口座開設自体は日本国内でできるが、カードの暗証番号の受け取りは現地まで出向かねばならない。中國銀行は日本国内の口座のため、外貨への両替についての制約は少ないものの、取引は窓口のみだ。
なお両行以外で、中国本土の銀行での口座開設・カード発行を代行する業者も急増中だが、数万円の開設手数料に加え、両替時にも手数料がかかる。
中国政府の政策変更リスクもつきまとう。非居住者の預金やカードの扱いについて、新たな制約が課されることもありうる。
そもそも中国政府は、人民元切り上げに踏み切っても上昇を小幅にとどめる可能性が高い。飛びつく前に、メリットがリスクとコストに見合うかどうか慎重に考えるべきだろう。
ネット情報すべて解析する技術 利用者から「使用やめろ」の大合唱
ネットにつなぐたびに、自分の閲覧したウェブサイトや購入した物品の情報が、知らないうちにネット接続業者(ISP)に解析される――。この「ディープ・パケット・インスペクション」(DPI)という技術を用いた広告の配信が、物議をかもしている。
DPIが認められると、たとえ利用者本人が知られたくないような情報でも、ネット接続すればISPが把握、蓄積することになる。総務省はDPIを検討し、提言をまとめたが、利用者側からは「やめてほしい」との声があがっている。
知られたくない情報も解析される恐れ
「Amazon」のようなショッピングサイトを訪れると、自分で検索したわけでもないのに「あなたにおすすめの商品はこれです」と表示されることがある。代表的なものが「行動ターゲティング広告」。サイトにアクセスした利用者に、サイト側で「クッキー」という技術を使って識別番号を付ける。以後、同じ利用者がアクセスするたびに、そこで検索や購入した商品の情報を蓄積していき、それを基にして本人の好みに合った「おすすめ商品」を提示するという仕組みだ。
これは特定のサイト上での行動履歴に限られる。一方DPIは、ネット上の利用者から伝送されるパケット(小さいデータの塊)をISPが解析、蓄積する。技術的には、閲覧したサイトや電子メールの中身などを解析することが可能だ。サイト単位ではなく、ネット通信中のさまざまな「振る舞い」を記録されるので、そこで得られた情報を言わば「ネット横断的」に広告へと応用できる。例えば、初めて訪れたサイトでも自分の「おすすめ」が表示されることも考えられる。
だが、必ずしも見られたくない情報をISPに握られ、広告に利用されることに嫌悪感を示す人も少なくない。2ちゃんねるを見ると、
「契約してるプロバイダがこれやったら即刻変えるわ」
「当然のように悪用され、尚かつ情報のだだ漏れが起こるな」
「通話先の人が録音するのと、途中で盗聴して録音するのの違い 電話において前者は合法、後者は違法」
など、DPIに反対する声で溢れた。
「容認した事実はありません」と総務省
総務省は、DPIを含む新しい情報通信技術に関するサービスの諸問題を検討するため、研究会を開催。2010年5月26日に「第二次提言」をまとめ、公表した。DPIについては、「今後の展開が期待される技術」としながらも、通信の秘密の保護との関連について検討。通信の秘密は憲法第21条で保護されており、電気通信事業法第4条第1項で「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない」と規定している。提言によると、DPI技術を活用した行動ターゲティング広告の実施は、利用者の同意を得ない限りは通信の秘密の侵害に該当するという。具体的には、ISPがパケットを解析するのは、通信当事者以外の第三者が積極的意志をもって通信の秘密を知りえる状態に置く「知得」に、また解析結果を広告配信に利用するのは、発信者や受信者の意思に反して自己または他人の利益のために用いる「窃用」にあたるためだ。
だが通信の秘密は、通信当事者の同意があれば侵害とはならない、とも書かれていた。こうなると、同意があればDPI技術を利用してよいと読み取れなくもない。総務省はDPIによる行動ターゲティング広告を容認したのだろうか。総務省消費者行政課に取材すると、「そのような事実はありません」と明確に否定した。
同課によると、そもそも「提言」は、DPIの課題を研究会で検討した内容を整理したものに過ぎず、この段階で「容認した」という類のものではない。それを踏まえたうえで、「同意」の内容について大変厳しい解釈を示していると主張する。例えばサイト上での周知だけ、契約約款に規定を設けるだけでは「同意あり」とはみなさないという。一方で、ISPと新規契約する際の契約書に、「行動ターゲティング広告への利用を目的として、DPI技術を使って通信情報を取得することに同意する」という欄を設けた場合は、「個別かつ明確な同意」として認められるという。仮に同意した後でも、「やはりDPIの使用はやめてほしい」となれば簡単に中止を求められる「オプトアウト」の機会を提供するよう、ISPに求めるとしている。これらは、「一部の法学者から『厳しすぎる』との声があったほど」(消費者行政課)高いハードルだという。
原口一博総務大臣は6月1日の記者会見で、「いかなる状況についても、通信の秘密が侵害されてはならない」と強調。消費者行政課でも、提言は解釈を示したもので、今後さらに慎重に検討を重ねていきたいと繰り返した。総務省へのパブリックコメントも、DPIの使用に反対する意見が多く寄せられたようで、今後も論議が続きそうだ。
茨城空港に上海線就航へ 中国の格安航空、7月末から週2、3往復
茨城県は6日、3月に開港した茨城空港(同県小美玉市)に、格安航空会社「春秋航空」(上海市)が上海線を7月末から就航させることを決めたと発表した。
春秋航空は9月末までの2カ月間の予定で週2、3往復を運航し、搭乗実績などを検証したうえで定期便の就航も検討するという。
同県の橋本昌知事が今月5日から訪中し、春秋航空の経営陣と合意に達した。橋本知事は「経済発展の著しい中国との旅客需要は一層の伸びが予想される。今後も同航空と協力して上海路線を発展させていきたい」とコメントした。
茨城空港には現在、韓国・アシアナ航空のソウル線とスカイマークの神戸線が就航している。
【産経主張】出生数減少 子供を増やす制度に直せ
少子化の改善は一時的なものだったようだ。平成21年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の平均数の推計値)は1・37で、4年ぶりに上昇が止まった。
出生数も17年に過去最低の106万人台を記録した後、18~20年は109万人前後となったが、21年は107万人に落ち込んだ。景気低迷で雇用環境が悪化し、出産をためらう人が増えたことなどが影響している。
だが、景気が回復すれば少子化が反転するわけではない。非正規雇用が増え、結婚できない若者も増えている。母親となる出産期(15~49歳)の女性数も減っていく。団塊ジュニア世代も30代後半となった。
少子化に歯止めがかけられなければ社会の活力は失われ、経済にも大きな影響が生じる。年金や医療、介護などの差し迫った課題の根底には少子化問題があることを忘れてはならない。
今月から「子ども手当」の支給が始まった。だが、半額支給の今年度だけで約2・3兆円の財源を要する。満額となれば5兆円超だ。あまりに家計支援に偏りすぎだ。政策バランスを欠いては少子化に歯止めはかからない。
民主党は予算のムダの排除などによって財源を捻出(ねんしゅつ)するとしていたが、借金に頼る形となった。将来にツケを回すということだ。これで本当に子供のことを考えた制度といえるのか。
来年度の支給額の見直しを検討しているようだが当然だ。バラマキ批判を招いたのは、民主党が費用対効果の検証もせず、参院選前の制度導入を急いだためでもある。所得制限や世帯の子供数が増えるほど加算するなど、より出生数増につながる仕組みに改めるべき点は多い。財源論だけでなく、精緻(せいち)な制度設計を行って根本から見直すべきだ。保育サービスの充実や働き方など総合的な取り組みも急がれる。
さらに問題なのは、民主党政権が少子化対策に消極的なことだ。鳩山由紀夫首相は「『少子化』という発想は上から目線だ」と語った。1月に閣議決定した政府の政策指針「子ども・子育てビジョン」では、「『少子化対策』から『子ども・子育て支援』へ」と方針転換をした。
だが、少子化対策と子育て支援策は問題が異なることを認識すべきだ。少子化問題の本質から目をそらしてはなるまい。
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台湾メディア、「日本=ソニー、韓国=サムスン、中国は何があった?」
台湾メディア・連合晩報は、中国には国際的に有名なブランドが存在せず、中国が「強国になる」という夢をかなえるのは簡単なことではないと指摘する文章を掲載した。中国新聞網が伝えた。
連合晩報は、ワシントン・ポストの記事を引用したうえで、「世界の人びとは、日本といえばソニーを、メキシコといえばビールブランドのコロナを、ドイツといえばBMWを、韓国といえばサムスンを連想するだろう。一方、中国は?と問われれば、人びとは答えに詰まってしまうだろう」と指摘。そして、世界に誇るブランドがないことこそ、中国が現在直面している問題であるとした。
2009年、中国はドイツに代わって世界最大の輸出国となり、2010年度には日本を抜いて世界第二位の経済体になることが確実視されている。記事では、中国にとって世界的に知られるブランドがないことは、中国はいまだに廉価な労働力に依存する「世界の工場」でしかないと指摘。
続けて、米国ブランドで世界的に有名なアップル社とナイキ社を例に挙げ、「iPhoneのほとんどが中国で製造されているが、750ドルの販売価格のうち、中国側の利益は1台あたりわずか25ドル、ナイキにいたっては中国側の利益は1足あたりわずか4ドルしかない」とし、技術のイノベーションがないことこそが、中国が「世界の工場」の地位から脱却できない原因であると分析した。
菅内閣15閣僚固まる、11閣僚再任へ
菅新首相は5日夜、民主党役員・閣僚人事について、官房長官に仙谷由人国家戦略相、党幹事長に枝野幸男行政刷新相、国会対策委員長に樽床伸二衆院環境委員長をそれぞれ充てることを明らかにした。
党代表選で菅氏に敗れた樽床氏の起用は党内融和を図る狙いがある。選挙対策委員長には安住淳衆院安全保障委員長、幹事長代理には細野豪志副幹事長を起用する。夏の参院選が迫っていることから、新たな入閣は、消費者・少子化相に内定した蓮舫参院議員らにとどめ、11人の閣僚を再任する方向だ。
玄葉光一郎衆院財務金融委員長、海江田万里選挙対策委員長代理も閣僚か党の要職で起用する方向だ。
菅氏は5日夜、首相官邸で記者団に対し、仙谷、枝野、樽床3氏の起用を明らかにしたうえで「人事は、官邸の一体性、内閣の一体性、党として全員が参加できる(態勢をつくる)という考え方で進めたい。参院選をしっかり戦える形をとりたい」と語った。
小沢幹事長に距離を置く枝野氏の起用については「何々外しとは考えていない。選挙の顔としてふさわしい」と強調した。小沢氏に関しては「政治とカネや普天間問題で民主党から支持が離れており、それを巻き返すことも大きな課題だ。受け継ぐものは受け継ぎ、新たにやらなければいけないものは新たにやる」と述べた。自らを本部長とする参院選対策本部を発足させる考えも示した。
また、枝野氏は5日夜、首相官邸で記者団に、自らの役割について「民主党の政策を有権者に分かりやすく伝えることに持ち味を出したい」と語った。
菅氏はこれに先立ち、党本部で枝野、仙谷両氏と会い、人事の最終調整を進めた。7日の両院議員総会で党役員を正式に決め、新内閣は8日に発足する。
閣僚人事では、赤松農相が口蹄疫(こうていえき)被害拡大の責任を取りたいとして再任を否定しており、後任には、山田正彦農水副大臣や筒井信隆衆院農水委員長が浮上している。
財政・成長重視を継続 経済閣僚固まる、再建へ国民負担求める
主要な経済閣僚が5日ほぼ固まり、経済産業相、金融担当相など経済政策を担う閣僚の多くは再任の見通しとなった。新しい財務相も財務副大臣の野田佳彦氏を起用する方向で「財政健全化や成長戦略など重要政策の継続性が保たれる」(政府関係者)とみられる。政府は5日閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、財政健全化目標を6月中に打ち出すと表明、国民負担を求める厳しい姿勢で臨む考えを示した。
G20財務相・中央銀行総裁会議で、峰崎直樹財務副大臣は菅直人新首相が目指す経済政策について「強い経済、強い財政、強い社会保障を一体で実現する」と紹介した。
さらに、閉幕後の記者会見で峰崎副大臣は「新内閣は財政と成長の両立という課題にしっかり取り組んでいく」と表明。財政再建目標を含む財政運営戦略を今月下旬のG20首脳会議(金融サミット)前に策定する方針を示すと同時に、「大変厳しい目標になる」として達成には「国民の負担は避けて通れない」と述べた。
政府は今後3年間の予算の骨格となる「中期財政フレーム」や、財政再建目標を盛り込んだ「財政運営戦略」をまとめる予定。新しい財務相に野田氏が起用される見通しとなったことで、財政運営をになう財務省の幹部は「深刻な財政状況を理解している首相と財務相が誕生すれば、停滞していた財政再建が進む」と語る。
日銀の白川方明総裁はG20会議後の会見で、新政権に「日本経済が抱える様々な課題の克服に向けて適切な政策を進めることを期待している」と指摘。「物価安定の下での国民経済の健全な発展に努めるという姿勢は変わらない」と語り、政府と協力しながら経済の安定に努める考えを強調した。
政府は経済政策のもう一つの要である新成長戦略も月内に策定する予定。戦略策定の中心となってきた直嶋正行経産相も再任の見通しで、「大きな政策変更はない」(政府関係者)との見方が多い。政府は郵政民営化路線を見直す郵政改革法案も今国会での成立を目指すとみられ、亀井静香郵政・金融担当相と原口一博総務相はそろって再任される見通しだ。
【G20】法人税引き下げ競争に歯止めを 峰崎副大臣
峰崎直樹財務副大臣は5日、20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議で法人税率の引き下げ競争が国際的に激しくなっているとして、G20や国際機関で一定の税率の幅を取り決め、歯止めをかける必要性があると問題提起したことを明らかにした。閉幕後の記者会見で述べた。
峰崎氏は「引き下げ競争は一定の幅に収束する方が望ましいのではないか」と発言したと説明。菅直人新首相も同様の問題意識を持っているとして「6月下旬に開かれるカナダ・トロントの首脳会合で同じ話が出るかもしれない」と述べた。
また、G20への財務相欠席が相次いでいることについては「(今回は)大きな政局の中でやむを得なかった。国際的に重要な会合で、出席してほしいと語った。
NTT、電子看板の映像を携帯で切り替え 光回線契約増狙う
NTTは店舗などで使うデジタルサイネージ(電子看板)で9日に新サービスを始める。携帯電話を使い配信映像を切り替えたり、店舗側に映像を蓄積して時間ごとに一括で切り替えたりできるようにする。NTT東日本、西日本、コミュニケーションズなどグループ各社を通じて営業し、光回線の契約者増につなげる。初年度に2000件の契約を目指す。
新機能を付加するのはインターネットにつないだ液晶テレビを使い、スーパーや銀行の店頭で販売促進情報を表示する「ひかりサイネージ」。配信する映像を利用者側で自由に切り替えられるようにすることで、営業時間内はキャンペーン情報、閉店後は社員向けの掲示板として使うといった使い分けも可能になる。
ネットワーク経由でサービスを提供する方式を取り入れ、導入に300万円以上かかる自前の配信用サーバーを不要とした。
初期費用は約30万円、月額利用料は1万円前後に抑えた。NTTは2月に電子看板事業に参入。機器と回線を一括して提供している。
ギリシャやポルトガル、緊縮財政で企業活動に影
消費減退と株価下落、悪循環の懸念
欧州の財政不安は、発端となったギリシャなどの財政再建策が企業活動に影を落とす一方、ハンガリーの財政懸念浮上で中・東欧への飛び火も懸念され始めた。各国の緊縮財政が消費も圧迫して欧州景気を下押しする悪循環になりかねないとの見方も出ている。ハンガリーなど中・東欧はユーロ加盟国ではないが、ドイツなどと経済的結び付きも強く、市場は警戒を強めている。
ギリシャやポルトガルでは緊縮財政を受けて国民が支出を絞り、内需型産業を中心に企業業績が悪化する構図が生まれている。輸出産業に乏しい各国の株式相場も落ち込む。企業業績の悪化による失業率上昇や消費減退がさらに景気の足を引っ張るという悪循環に陥れば、財政問題が一段と長期化する恐れもある。
ギリシャでは5月以降発表の1~3月期決算で最終損益の悪化が続出。同国の時価総額上位には銀行や通信、娯楽産業など内需型産業が多く、国内景気の影響を受けやすい。4月の新車販売台数(乗用車)は前年同月比で13%落ち込んでおり、個人が支出を絞る動きも徐々に表面化し始めた。
同国通信最大手OTEの同四半期の純利益は前年同期比76%減と大幅に減った。国内を中心に通話を控える人が増え、同社は「緊縮財政を受け、(顧客の)通信への出費は減りそうだ」と警戒。経費削減のためニューヨーク証券取引所の上場を年後半にも取りやめる。
出版不況が叫ばれるなか、アニソン雑誌続々発刊
アニソン、特に声優アーティストにフォーカスした雑誌が増えている。これまでは、充実したインタビューページで人気の『アニカンR-MUSIC』(MG2)や、「本邦初のアニメソング専門誌」のうたい文句で登場した『アニソンマガジン』(洋泉社)等がアニソン系雑誌メディアとしては先んじていたが、09年のアニメ『けいおん!』人気や水樹奈々のセールス的成功、そして若手人気声優の台頭により、さまざまな出版社がアニソン、声優アーティスト・メディアに参入し始めたのだ。
音楽専門情報誌『WHAT's IN?』でお馴染みのソニーマガジンズは、『けいおん!!』を表紙にした『リスアニ!』を刊行。『アニソンマガジン』のスタッフも多く関わり、ボリューム感のあるインタビューページと、読み応えのある評論、考察ページで話題を集めている。また、新人発掘プロジェクトとしてアリス☆クララというアマチュアの中学生ユニットをフィーチャー。そのオリジナル楽曲のCDを付録にするなど、雑誌メディアから発展的にアーティストを育成するような展開も試みている。
また、ヴィジュアル系アーティストを多く取り扱う音楽誌として、確固たる地位を確立している『FOOL'S MATE』は、アニメソング版として『アニソンMATE』を発刊。既存の声優誌では見られない新しい切り口のグラビアページや、読み込みたくなるような魅力的な考察ページがアニソン・ユーザーにウケている。
アイドル・グラビアを中心としたテレビ情報誌『B.L.T.』を発行している東京ニュース通信社は、今年1月より声優のグラビアにフォーカスした『VOICE GIRLS』を刊行している。『B.L.T.』で培ったグラビアページの凝った構成と、既存の声優誌との差別化を図った読み応えのあるインタビューで、一気に業界内での知名度を上げた。
■各メディアの特性を活かした新たな切り口がヒットのカギ
これらの新雑誌の発刊ラッシュは、出版不況が叫ばれ、雑誌の休刊や廃刊が相次ぐ昨今では、珍しく活況であると言えるだろう。音楽市場のなかで堅調なセールスを続けながら、徐々にシェアを広げつつあるアニソン、声優アーティスト関連作品の好調に雑誌メディアが応えた形だが、ヒットを生むアニメ作品、声優アーティストが限られる業界ゆえに、誌面作りの差別化が難しいジャンルでもある。各社、ユーザーの嗜好性やトレンドにアンテナを張りながら、独自のカラーを打ち出していかなければ生き残りは難しいだろう。
雑誌以外のメディアでは、NHKのアニメソング、声優アーティストに対する取り組みが、ユーザーからの評価が高い。NHK-FMで5月5日に放送された『今日は一日“帰ってきたアニソン三昧”』がTwitterのハッシュタグ「#anisonzanmai」の利用率が世界一になったことからも、アニメソング・ユーザーのネット・リテラシーの高さが窺える。
それらを踏まえたうえで、さらにアニメソング、声優アーティスト系にフォーカスしたメディアが求められている現状は、ネット上の情報では満足できない、コアな情報を尊ぶマニアックなユーザー心理を反映しているのかもしれない。果たして新刊した雑誌のうち、何誌が生き残ることができるのか。競争はしれつさを増している。
菅・新首相 景気と財政再建の両立を図れ(6月6日付・読売社説)
景気を安定軌道に乗せ財政も立て直す――。
日本経済のかじ取りで菅直人新首相に課せられた使命である。
鳩山内閣が陥った政権公約(マニフェスト)至上主義を脱し、柔軟な発想で、成長と財政再建の両立を図るべきだ。
新首相は、民主党代表選に向けた会見で、「無限に借金が増えるような方向性は正していく」と、財政健全化に意欲を示した。ならば、2011年度予算でさっそく具体化する必要があろう。
副総理・財務相在任当時から、菅新首相はすでに布石を打っていた。11年度予算における国債の新規発行額を、10年度の44兆円以下に抑えたい、と述べたことだ。
国債発行に一定の歯止めをかけなければ、10年度末で862兆円に達する国と地方の長期債務の膨張が続き、国債の信用が失われかねないのが現実だ。
財務相として一連の国際会議に出席し、我が国の財政事情の深刻さを再認識させられたことも背景にある。「国債発行44兆円以下」発言を一応は評価したい。
だが、これでも当初予算の国債発行額としては史上最高だ。44兆円を上限に、これをどう減額していくかが肝要である。
最初に取り組むべきは、歳出の抑制だ。10年度予算は、マニフェストに盛り込まれた政策が歳出を膨らませた。子ども手当、農家に対する戸別所得補償、高校授業料の実質無償化などである。
こうしたバラマキを続けることは不可能だ。マニフェストへのこだわりを捨て、真の無駄減らしに取り組む必要がある。
歳入確保の面では、消費税率の引き上げが避けられない。毎年、1兆円規模で増え続ける社会保障費を賄う財源としても、消費税は極めて重要だ。
増税による景気への影響も懸念されるが、新首相は、増収分を医療・介護の充実などに回せば雇用が創出され、景気は良くなるとの見方を示している。
そう言う以上、夏の参院選で消費税率引き上げの是非を国民に問うてはどうか。理解を得たと判断すれば、景気動向に目配りしながら、具体案作りに入るべきだ。
参院選の公約取りまとめ作業と並行して進む、「中期財政フレーム」と「財政運営戦略」という二つの指針作りも重要である。
前者は11年度から3年間の予算の大枠を決め、後者は中長期的な財政運営の道筋を描くものだ。二つの指針の中身次第で、新首相のやる気が判断されよう。
提唱者が見る「G2」 米中摩擦、多国間で解消
ピーターソン国際経済研究所所長 フレッド・バーグステン氏
間もなく国内総生産(GDP)で日本を抜き、世界2位の経済大国となる中国。国際社会での発言力が高まるにつれ、国益重視の姿勢への批判も広がっている。米中関係は対決へとかじを切るのか。2年前、米中が連携して世界の政治・経済を主導するよう提唱したピーターソン国際経済研究所のフレッド・バーグステン所長は、最近の米中摩擦の解消には国際通貨基金(IMFなど多国間の枠組みでの論議が必要だと訴える。
――米中連携論は反響を呼びました。
「米中で世界を主導するG2という考え方を提唱した理由は極めて単純だ。今日の世界では米中の合意なしに物事は決まらない。多角的通商交渉ドーハ・ラウンドも、気候変動も、通貨システムもそうだ」
「まず米中が合意するなり、溝を小さくすれば、国際合意は得やすくなる。G2論は合意づくりへの非公式な土台を提供するためのものであり、G8やG20やIMFに取って代わるというのではない」
――ハーバード大のファーガソン教授は現在の米中関係をチャイメリカと呼びます。G2論と同じものですか。
「チャイメリカは米中の絡み合いを経済面で説明している。米国は消費者かつ借り手。中国は生産者かつ貸し手だ。彼は『長続きしない関係だ』と言っていた。G2はより規範的な概念だ。米中の経済は絡み合っていようといまいと世界経済の主要な部分を占めており、効率化のために協力すべきだ、ということだ」
――最近はむしろ米中の摩擦が目立っています。
「それでフォーリン・アフェアーズに新たな論文を発表した。金融危機の結果、米国への信頼は低下し、中国の地位は高まった。もともとそうなる傾向にあったが、危機により変化が加速した。米中の力関係が大きく変わり、中国は非協調的になった」
「金融危機を力強く乗り切ったのに人民元相場は固定したまま。国産品の愛用を打ち出す一方で、著作権保護に関する国際協定には従わない。『中国は持ちつ持たれつが分からない』というのが米政府の今の気分だ」
――中国は今後、独善的な方向に進みますか。
「中国の市場開放度はGDP比でみると、米国の2倍、日本の3倍だ。中国は極めて開放的な市場だし、世界経済と一体化している点は指摘しておきたい。金融危機で中国は輸出が減少し、経済成長率は年率10%から6%に下がった。6%成長だって大したものだが、中国には打撃だった」
「世界経済を損なう政策を選ぶと中国自身が不利益を被る。最も被害を受けるのは発展途上国だが、中国は途上国の代表を名乗っており、これらの国をむげにはできない」
――中国は経済問題を政治的に扱いすぎていませんか。
「大統領補佐官だった当時のキッシンジャー氏に『あらゆる経済摩擦には政治的原因があり、成果を出すには政治取引が必要だ』と提起したことがある」
――中国共産党の一党独裁は続くのですか。
「共産党支配が崩壊すると中国経済を文字通り崩壊させ、国際経済にも悪影響を及ぼす。専制体制から自由体制への緩やかな変化が望ましい。移動や職業選択の自由など、中国人の自由さは以前に比べて格段に高まった。言論の自由だって、最近の中国人はグーグル問題を盛んに論議している。ただ、台湾、チベット、共産党の問題は駄目だ。だから『軟着陸した』とはまだ言えないが、専制支配ではなくなりつつある」
――中国はアジア市場における独占的な地位を得ようとしています。
「その通りだ。アジア自由貿易圏やアジア通貨基金には至らないだろうが、方向としてはアジア経済ブロックが形成され始めている。私はアジア太平洋経済協力会議(APEC)の生みの親の一人だが、アジア太平洋の経済統合は歓迎する。だが、アジアの発展に寄与してきた欧米、とりわけ米国を排除するのであれば認められない。アジアから締め出されれば米国経済への影響は計り知れない。カギを握るのは日本の動向だ」
――米中摩擦はどうすれば改善しますか。
「中国市場の一段の開放だが、簡単ではない。最後は人民元相場の問題になるからだ。1971年のニクソン・ショックに先立ち、米政府が貿易に課徴金をかけ、円切り上げにつなげたことを日本人なら覚えているはずだ。85年のプラザ合意も事例として似ている。米下院で25%の課徴金の法案が可決されていた。仕組みとして欧州にも適用されるが、標的は日本だった。中国を標的とした第3の事例が起きるかもしれない」
――摩擦を激化させるだけではないですか。
「だからIMFと世界貿易機関(WTO)で活発に論議すべきだ。市場開放には多国間の手続きが必要だ。第1、第2の事例と異なるのは、中国との貿易赤字を抱えるのは欧州や日本も同じという点。米国は中国に対峙(たいじ)するグループづくりに真剣に取り組むべきだ。欧米、日本、韓国だけでなく、他のアジアの国を参加させることができれば最適だ」
――中国の経済成長はいつまで続くとみていますか。
「控えめに見ても、向こう10年間は年率8~10%成長が続く。中国には農村部に豊富な労働力がまだまだいる。30年前に70%だった農村人口は現在は50%だが、長期的には20%ぐらいになるだろう。日本が3%ほどで韓国が8%だから、もっと減るかもしれない。1次産業から2次、3次産業に移行すると1人当たりの生産性は15倍になる」
「国有企業の民営化もまだ半分程度だ。民営化すれば従業員の生産性は2倍になる。エネルギーの自給率低下、環境汚染、貸し倒れ増加などの問題は出てくるだろうが、成長の二大要素はマイナスを補ってあまりあるとみている」
――農村人口が減ると食糧を賄えますか。一人っ子政策による急速な高齢化も予想されます。
「中国政府も10年前までは食糧自給を掲げていたが、今や誰も言わなくなった。付加価値の高い野菜や果物を生産し、小麦は輸入する方針に転換した。100年前の米国とほぼ同じ変化が起きている。農村人口の都市部への移動は30年ほどかかり、その間は高齢化も目立たない。向こう20年ぐらいは影響ないだろう」
「もちろん共産党支配が吹っ飛べばどんな変化が起きるか分からず、この予想はすべて成り立たなくなるが」
台湾メディア・連合晩報は、中国には国際的に有名なブランドが存在せず、中国が「強国になる」という夢をかなえるのは簡単なことではないと指摘する文章を掲載した。中国新聞網が伝えた。
連合晩報は、ワシントン・ポストの記事を引用したうえで、「世界の人びとは、日本といえばソニーを、メキシコといえばビールブランドのコロナを、ドイツといえばBMWを、韓国といえばサムスンを連想するだろう。一方、中国は?と問われれば、人びとは答えに詰まってしまうだろう」と指摘。そして、世界に誇るブランドがないことこそ、中国が現在直面している問題であるとした。
2009年、中国はドイツに代わって世界最大の輸出国となり、2010年度には日本を抜いて世界第二位の経済体になることが確実視されている。記事では、中国にとって世界的に知られるブランドがないことは、中国はいまだに廉価な労働力に依存する「世界の工場」でしかないと指摘。
続けて、米国ブランドで世界的に有名なアップル社とナイキ社を例に挙げ、「iPhoneのほとんどが中国で製造されているが、750ドルの販売価格のうち、中国側の利益は1台あたりわずか25ドル、ナイキにいたっては中国側の利益は1足あたりわずか4ドルしかない」とし、技術のイノベーションがないことこそが、中国が「世界の工場」の地位から脱却できない原因であると分析した。
菅内閣15閣僚固まる、11閣僚再任へ
菅新首相は5日夜、民主党役員・閣僚人事について、官房長官に仙谷由人国家戦略相、党幹事長に枝野幸男行政刷新相、国会対策委員長に樽床伸二衆院環境委員長をそれぞれ充てることを明らかにした。
党代表選で菅氏に敗れた樽床氏の起用は党内融和を図る狙いがある。選挙対策委員長には安住淳衆院安全保障委員長、幹事長代理には細野豪志副幹事長を起用する。夏の参院選が迫っていることから、新たな入閣は、消費者・少子化相に内定した蓮舫参院議員らにとどめ、11人の閣僚を再任する方向だ。
玄葉光一郎衆院財務金融委員長、海江田万里選挙対策委員長代理も閣僚か党の要職で起用する方向だ。
菅氏は5日夜、首相官邸で記者団に対し、仙谷、枝野、樽床3氏の起用を明らかにしたうえで「人事は、官邸の一体性、内閣の一体性、党として全員が参加できる(態勢をつくる)という考え方で進めたい。参院選をしっかり戦える形をとりたい」と語った。
小沢幹事長に距離を置く枝野氏の起用については「何々外しとは考えていない。選挙の顔としてふさわしい」と強調した。小沢氏に関しては「政治とカネや普天間問題で民主党から支持が離れており、それを巻き返すことも大きな課題だ。受け継ぐものは受け継ぎ、新たにやらなければいけないものは新たにやる」と述べた。自らを本部長とする参院選対策本部を発足させる考えも示した。
また、枝野氏は5日夜、首相官邸で記者団に、自らの役割について「民主党の政策を有権者に分かりやすく伝えることに持ち味を出したい」と語った。
菅氏はこれに先立ち、党本部で枝野、仙谷両氏と会い、人事の最終調整を進めた。7日の両院議員総会で党役員を正式に決め、新内閣は8日に発足する。
閣僚人事では、赤松農相が口蹄疫(こうていえき)被害拡大の責任を取りたいとして再任を否定しており、後任には、山田正彦農水副大臣や筒井信隆衆院農水委員長が浮上している。
財政・成長重視を継続 経済閣僚固まる、再建へ国民負担求める
主要な経済閣僚が5日ほぼ固まり、経済産業相、金融担当相など経済政策を担う閣僚の多くは再任の見通しとなった。新しい財務相も財務副大臣の野田佳彦氏を起用する方向で「財政健全化や成長戦略など重要政策の継続性が保たれる」(政府関係者)とみられる。政府は5日閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、財政健全化目標を6月中に打ち出すと表明、国民負担を求める厳しい姿勢で臨む考えを示した。
G20財務相・中央銀行総裁会議で、峰崎直樹財務副大臣は菅直人新首相が目指す経済政策について「強い経済、強い財政、強い社会保障を一体で実現する」と紹介した。
さらに、閉幕後の記者会見で峰崎副大臣は「新内閣は財政と成長の両立という課題にしっかり取り組んでいく」と表明。財政再建目標を含む財政運営戦略を今月下旬のG20首脳会議(金融サミット)前に策定する方針を示すと同時に、「大変厳しい目標になる」として達成には「国民の負担は避けて通れない」と述べた。
政府は今後3年間の予算の骨格となる「中期財政フレーム」や、財政再建目標を盛り込んだ「財政運営戦略」をまとめる予定。新しい財務相に野田氏が起用される見通しとなったことで、財政運営をになう財務省の幹部は「深刻な財政状況を理解している首相と財務相が誕生すれば、停滞していた財政再建が進む」と語る。
日銀の白川方明総裁はG20会議後の会見で、新政権に「日本経済が抱える様々な課題の克服に向けて適切な政策を進めることを期待している」と指摘。「物価安定の下での国民経済の健全な発展に努めるという姿勢は変わらない」と語り、政府と協力しながら経済の安定に努める考えを強調した。
政府は経済政策のもう一つの要である新成長戦略も月内に策定する予定。戦略策定の中心となってきた直嶋正行経産相も再任の見通しで、「大きな政策変更はない」(政府関係者)との見方が多い。政府は郵政民営化路線を見直す郵政改革法案も今国会での成立を目指すとみられ、亀井静香郵政・金融担当相と原口一博総務相はそろって再任される見通しだ。
【G20】法人税引き下げ競争に歯止めを 峰崎副大臣
峰崎直樹財務副大臣は5日、20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議で法人税率の引き下げ競争が国際的に激しくなっているとして、G20や国際機関で一定の税率の幅を取り決め、歯止めをかける必要性があると問題提起したことを明らかにした。閉幕後の記者会見で述べた。
峰崎氏は「引き下げ競争は一定の幅に収束する方が望ましいのではないか」と発言したと説明。菅直人新首相も同様の問題意識を持っているとして「6月下旬に開かれるカナダ・トロントの首脳会合で同じ話が出るかもしれない」と述べた。
また、G20への財務相欠席が相次いでいることについては「(今回は)大きな政局の中でやむを得なかった。国際的に重要な会合で、出席してほしいと語った。
NTT、電子看板の映像を携帯で切り替え 光回線契約増狙う
NTTは店舗などで使うデジタルサイネージ(電子看板)で9日に新サービスを始める。携帯電話を使い配信映像を切り替えたり、店舗側に映像を蓄積して時間ごとに一括で切り替えたりできるようにする。NTT東日本、西日本、コミュニケーションズなどグループ各社を通じて営業し、光回線の契約者増につなげる。初年度に2000件の契約を目指す。
新機能を付加するのはインターネットにつないだ液晶テレビを使い、スーパーや銀行の店頭で販売促進情報を表示する「ひかりサイネージ」。配信する映像を利用者側で自由に切り替えられるようにすることで、営業時間内はキャンペーン情報、閉店後は社員向けの掲示板として使うといった使い分けも可能になる。
ネットワーク経由でサービスを提供する方式を取り入れ、導入に300万円以上かかる自前の配信用サーバーを不要とした。
初期費用は約30万円、月額利用料は1万円前後に抑えた。NTTは2月に電子看板事業に参入。機器と回線を一括して提供している。
ギリシャやポルトガル、緊縮財政で企業活動に影
消費減退と株価下落、悪循環の懸念
欧州の財政不安は、発端となったギリシャなどの財政再建策が企業活動に影を落とす一方、ハンガリーの財政懸念浮上で中・東欧への飛び火も懸念され始めた。各国の緊縮財政が消費も圧迫して欧州景気を下押しする悪循環になりかねないとの見方も出ている。ハンガリーなど中・東欧はユーロ加盟国ではないが、ドイツなどと経済的結び付きも強く、市場は警戒を強めている。
ギリシャやポルトガルでは緊縮財政を受けて国民が支出を絞り、内需型産業を中心に企業業績が悪化する構図が生まれている。輸出産業に乏しい各国の株式相場も落ち込む。企業業績の悪化による失業率上昇や消費減退がさらに景気の足を引っ張るという悪循環に陥れば、財政問題が一段と長期化する恐れもある。
ギリシャでは5月以降発表の1~3月期決算で最終損益の悪化が続出。同国の時価総額上位には銀行や通信、娯楽産業など内需型産業が多く、国内景気の影響を受けやすい。4月の新車販売台数(乗用車)は前年同月比で13%落ち込んでおり、個人が支出を絞る動きも徐々に表面化し始めた。
同国通信最大手OTEの同四半期の純利益は前年同期比76%減と大幅に減った。国内を中心に通話を控える人が増え、同社は「緊縮財政を受け、(顧客の)通信への出費は減りそうだ」と警戒。経費削減のためニューヨーク証券取引所の上場を年後半にも取りやめる。
出版不況が叫ばれるなか、アニソン雑誌続々発刊
アニソン、特に声優アーティストにフォーカスした雑誌が増えている。これまでは、充実したインタビューページで人気の『アニカンR-MUSIC』(MG2)や、「本邦初のアニメソング専門誌」のうたい文句で登場した『アニソンマガジン』(洋泉社)等がアニソン系雑誌メディアとしては先んじていたが、09年のアニメ『けいおん!』人気や水樹奈々のセールス的成功、そして若手人気声優の台頭により、さまざまな出版社がアニソン、声優アーティスト・メディアに参入し始めたのだ。
音楽専門情報誌『WHAT's IN?』でお馴染みのソニーマガジンズは、『けいおん!!』を表紙にした『リスアニ!』を刊行。『アニソンマガジン』のスタッフも多く関わり、ボリューム感のあるインタビューページと、読み応えのある評論、考察ページで話題を集めている。また、新人発掘プロジェクトとしてアリス☆クララというアマチュアの中学生ユニットをフィーチャー。そのオリジナル楽曲のCDを付録にするなど、雑誌メディアから発展的にアーティストを育成するような展開も試みている。
また、ヴィジュアル系アーティストを多く取り扱う音楽誌として、確固たる地位を確立している『FOOL'S MATE』は、アニメソング版として『アニソンMATE』を発刊。既存の声優誌では見られない新しい切り口のグラビアページや、読み込みたくなるような魅力的な考察ページがアニソン・ユーザーにウケている。
アイドル・グラビアを中心としたテレビ情報誌『B.L.T.』を発行している東京ニュース通信社は、今年1月より声優のグラビアにフォーカスした『VOICE GIRLS』を刊行している。『B.L.T.』で培ったグラビアページの凝った構成と、既存の声優誌との差別化を図った読み応えのあるインタビューで、一気に業界内での知名度を上げた。
■各メディアの特性を活かした新たな切り口がヒットのカギ
これらの新雑誌の発刊ラッシュは、出版不況が叫ばれ、雑誌の休刊や廃刊が相次ぐ昨今では、珍しく活況であると言えるだろう。音楽市場のなかで堅調なセールスを続けながら、徐々にシェアを広げつつあるアニソン、声優アーティスト関連作品の好調に雑誌メディアが応えた形だが、ヒットを生むアニメ作品、声優アーティストが限られる業界ゆえに、誌面作りの差別化が難しいジャンルでもある。各社、ユーザーの嗜好性やトレンドにアンテナを張りながら、独自のカラーを打ち出していかなければ生き残りは難しいだろう。
雑誌以外のメディアでは、NHKのアニメソング、声優アーティストに対する取り組みが、ユーザーからの評価が高い。NHK-FMで5月5日に放送された『今日は一日“帰ってきたアニソン三昧”』がTwitterのハッシュタグ「#anisonzanmai」の利用率が世界一になったことからも、アニメソング・ユーザーのネット・リテラシーの高さが窺える。
それらを踏まえたうえで、さらにアニメソング、声優アーティスト系にフォーカスしたメディアが求められている現状は、ネット上の情報では満足できない、コアな情報を尊ぶマニアックなユーザー心理を反映しているのかもしれない。果たして新刊した雑誌のうち、何誌が生き残ることができるのか。競争はしれつさを増している。
菅・新首相 景気と財政再建の両立を図れ(6月6日付・読売社説)
景気を安定軌道に乗せ財政も立て直す――。
日本経済のかじ取りで菅直人新首相に課せられた使命である。
鳩山内閣が陥った政権公約(マニフェスト)至上主義を脱し、柔軟な発想で、成長と財政再建の両立を図るべきだ。
新首相は、民主党代表選に向けた会見で、「無限に借金が増えるような方向性は正していく」と、財政健全化に意欲を示した。ならば、2011年度予算でさっそく具体化する必要があろう。
副総理・財務相在任当時から、菅新首相はすでに布石を打っていた。11年度予算における国債の新規発行額を、10年度の44兆円以下に抑えたい、と述べたことだ。
国債発行に一定の歯止めをかけなければ、10年度末で862兆円に達する国と地方の長期債務の膨張が続き、国債の信用が失われかねないのが現実だ。
財務相として一連の国際会議に出席し、我が国の財政事情の深刻さを再認識させられたことも背景にある。「国債発行44兆円以下」発言を一応は評価したい。
だが、これでも当初予算の国債発行額としては史上最高だ。44兆円を上限に、これをどう減額していくかが肝要である。
最初に取り組むべきは、歳出の抑制だ。10年度予算は、マニフェストに盛り込まれた政策が歳出を膨らませた。子ども手当、農家に対する戸別所得補償、高校授業料の実質無償化などである。
こうしたバラマキを続けることは不可能だ。マニフェストへのこだわりを捨て、真の無駄減らしに取り組む必要がある。
歳入確保の面では、消費税率の引き上げが避けられない。毎年、1兆円規模で増え続ける社会保障費を賄う財源としても、消費税は極めて重要だ。
増税による景気への影響も懸念されるが、新首相は、増収分を医療・介護の充実などに回せば雇用が創出され、景気は良くなるとの見方を示している。
そう言う以上、夏の参院選で消費税率引き上げの是非を国民に問うてはどうか。理解を得たと判断すれば、景気動向に目配りしながら、具体案作りに入るべきだ。
参院選の公約取りまとめ作業と並行して進む、「中期財政フレーム」と「財政運営戦略」という二つの指針作りも重要である。
前者は11年度から3年間の予算の大枠を決め、後者は中長期的な財政運営の道筋を描くものだ。二つの指針の中身次第で、新首相のやる気が判断されよう。
提唱者が見る「G2」 米中摩擦、多国間で解消
ピーターソン国際経済研究所所長 フレッド・バーグステン氏
間もなく国内総生産(GDP)で日本を抜き、世界2位の経済大国となる中国。国際社会での発言力が高まるにつれ、国益重視の姿勢への批判も広がっている。米中関係は対決へとかじを切るのか。2年前、米中が連携して世界の政治・経済を主導するよう提唱したピーターソン国際経済研究所のフレッド・バーグステン所長は、最近の米中摩擦の解消には国際通貨基金(IMFなど多国間の枠組みでの論議が必要だと訴える。
――米中連携論は反響を呼びました。
「米中で世界を主導するG2という考え方を提唱した理由は極めて単純だ。今日の世界では米中の合意なしに物事は決まらない。多角的通商交渉ドーハ・ラウンドも、気候変動も、通貨システムもそうだ」
「まず米中が合意するなり、溝を小さくすれば、国際合意は得やすくなる。G2論は合意づくりへの非公式な土台を提供するためのものであり、G8やG20やIMFに取って代わるというのではない」
――ハーバード大のファーガソン教授は現在の米中関係をチャイメリカと呼びます。G2論と同じものですか。
「チャイメリカは米中の絡み合いを経済面で説明している。米国は消費者かつ借り手。中国は生産者かつ貸し手だ。彼は『長続きしない関係だ』と言っていた。G2はより規範的な概念だ。米中の経済は絡み合っていようといまいと世界経済の主要な部分を占めており、効率化のために協力すべきだ、ということだ」
――最近はむしろ米中の摩擦が目立っています。
「それでフォーリン・アフェアーズに新たな論文を発表した。金融危機の結果、米国への信頼は低下し、中国の地位は高まった。もともとそうなる傾向にあったが、危機により変化が加速した。米中の力関係が大きく変わり、中国は非協調的になった」
「金融危機を力強く乗り切ったのに人民元相場は固定したまま。国産品の愛用を打ち出す一方で、著作権保護に関する国際協定には従わない。『中国は持ちつ持たれつが分からない』というのが米政府の今の気分だ」
――中国は今後、独善的な方向に進みますか。
「中国の市場開放度はGDP比でみると、米国の2倍、日本の3倍だ。中国は極めて開放的な市場だし、世界経済と一体化している点は指摘しておきたい。金融危機で中国は輸出が減少し、経済成長率は年率10%から6%に下がった。6%成長だって大したものだが、中国には打撃だった」
「世界経済を損なう政策を選ぶと中国自身が不利益を被る。最も被害を受けるのは発展途上国だが、中国は途上国の代表を名乗っており、これらの国をむげにはできない」
――中国は経済問題を政治的に扱いすぎていませんか。
「大統領補佐官だった当時のキッシンジャー氏に『あらゆる経済摩擦には政治的原因があり、成果を出すには政治取引が必要だ』と提起したことがある」
――中国共産党の一党独裁は続くのですか。
「共産党支配が崩壊すると中国経済を文字通り崩壊させ、国際経済にも悪影響を及ぼす。専制体制から自由体制への緩やかな変化が望ましい。移動や職業選択の自由など、中国人の自由さは以前に比べて格段に高まった。言論の自由だって、最近の中国人はグーグル問題を盛んに論議している。ただ、台湾、チベット、共産党の問題は駄目だ。だから『軟着陸した』とはまだ言えないが、専制支配ではなくなりつつある」
――中国はアジア市場における独占的な地位を得ようとしています。
「その通りだ。アジア自由貿易圏やアジア通貨基金には至らないだろうが、方向としてはアジア経済ブロックが形成され始めている。私はアジア太平洋経済協力会議(APEC)の生みの親の一人だが、アジア太平洋の経済統合は歓迎する。だが、アジアの発展に寄与してきた欧米、とりわけ米国を排除するのであれば認められない。アジアから締め出されれば米国経済への影響は計り知れない。カギを握るのは日本の動向だ」
――米中摩擦はどうすれば改善しますか。
「中国市場の一段の開放だが、簡単ではない。最後は人民元相場の問題になるからだ。1971年のニクソン・ショックに先立ち、米政府が貿易に課徴金をかけ、円切り上げにつなげたことを日本人なら覚えているはずだ。85年のプラザ合意も事例として似ている。米下院で25%の課徴金の法案が可決されていた。仕組みとして欧州にも適用されるが、標的は日本だった。中国を標的とした第3の事例が起きるかもしれない」
――摩擦を激化させるだけではないですか。
「だからIMFと世界貿易機関(WTO)で活発に論議すべきだ。市場開放には多国間の手続きが必要だ。第1、第2の事例と異なるのは、中国との貿易赤字を抱えるのは欧州や日本も同じという点。米国は中国に対峙(たいじ)するグループづくりに真剣に取り組むべきだ。欧米、日本、韓国だけでなく、他のアジアの国を参加させることができれば最適だ」
――中国の経済成長はいつまで続くとみていますか。
「控えめに見ても、向こう10年間は年率8~10%成長が続く。中国には農村部に豊富な労働力がまだまだいる。30年前に70%だった農村人口は現在は50%だが、長期的には20%ぐらいになるだろう。日本が3%ほどで韓国が8%だから、もっと減るかもしれない。1次産業から2次、3次産業に移行すると1人当たりの生産性は15倍になる」
「国有企業の民営化もまだ半分程度だ。民営化すれば従業員の生産性は2倍になる。エネルギーの自給率低下、環境汚染、貸し倒れ増加などの問題は出てくるだろうが、成長の二大要素はマイナスを補ってあまりあるとみている」
――農村人口が減ると食糧を賄えますか。一人っ子政策による急速な高齢化も予想されます。
「中国政府も10年前までは食糧自給を掲げていたが、今や誰も言わなくなった。付加価値の高い野菜や果物を生産し、小麦は輸入する方針に転換した。100年前の米国とほぼ同じ変化が起きている。農村人口の都市部への移動は30年ほどかかり、その間は高齢化も目立たない。向こう20年ぐらいは影響ないだろう」
「もちろん共産党支配が吹っ飛べばどんな変化が起きるか分からず、この予想はすべて成り立たなくなるが」
カシオ、日立、NECの合弁会社の勝算は 山崎社長に聞く
6月1日に、カシオ日立モバイルコミュニケーションズとの統合により生まれ変わったNECカシオモバイルコミュニケーションズ。NEC、カシオ、日立製作所の携帯電話事業が1社になり、この新会社の下で端末を開発する。新会社はどの方向を目指すのか。NEC出身の山崎耕司社長に話を聞いた。
NECにないものを持つ2社と合弁
――ようやくカシオ日立と事業を統合し、新会社としてスタートした。3社の合弁によって期待できるシナジーについて改めて聞きたい。
カシオ日立との話がまとまるまで、NECは様々な会社との統合を検討してきた。他社と一緒にやるからには、かなりの痛みを伴う一方で、絶対に成功しなくてはならない。下手な統合をして失敗でもしたら、二度とはい上がれなくなるとの覚悟があった。
カシオは耐水性・耐衝撃性に優れた携帯電話の「G’zOne(ジーズワン)」やデジタルカメラ「EXILIM(エクシリム)」といったブランドを持ち、海外への確固とした販路を持つ。さらにKDDIとの関係が強固だ。NECはかつてCDMA2000系の携帯電話を手掛けようとして、あきらめた経緯がある。NECが持っていないものが、カシオにはあった。
日立には技術力とブランド力がある。夏商戦にKDDIが発売する「beskey(ベスキー)」は、日立らしい家電文化から生まれたモデルといえる。NECではデザインの視点からキーの設計を考えるが、「使う人の視点」はあまり無かったかもしれない。beskeyのように文字入力のしやすさからキーを取り換える発想は思いつかなかった。家電を作ってきた日立だからこそ生まれた製品と言える。
合弁により、日立の技術力とアイデア、カシオの耐水性・耐衝撃性とブランド力に、NECの通信技術やデザイン、薄型設計という長所を組み合わせて、水平展開をしていきたい。
KDDI向けは機種数増を目指す
――これまでカシオと日立が展開してきたKDDI向けラインアップはどうするのか
KDDIはシャープや京セラ、東芝、ソニー・エリクソンなど、サプライヤーが多い。その中でカシオや日立の商品バリエーションは少なかったとみている。
機種数の少なさは、開発陣を強化すれば解決できるだろう。EXILIMケータイをNECの技術力によってさらに薄型化するなどの取り組みを強化したい。
NECはKDDIと、次世代携帯規格「LTE」のインフラ構築で付き合いがある。KDDIのサプライヤーの中でポジションを拡大していきたい。
ドコモ向けは3Dとスマートフォン
――主力となるNTTドコモ向け端末の方針は。
1つは画像系の強化がある。今後は3次元(3D)がはやると思っている。これに備え、液晶や画像処理に力を入れる。
もう一つがスマートフォン。すべての携帯電話がスマートフォンに置き換わるわけではないが、取り組みは重要だ。
スマートフォンの拡大で期待しているのが端末を「安く作れる」という点だ。現在はほとんどのスマートフォンは海外メーカーが納入しているが、開発コストの低い端末を作るため、我々も手掛ける必要がある。
その中では、現行の携帯電話が使うプラットホームではなく、米グーグルの「Android」などのスマートフォン系のプラットホームを活用するだろう。これなら安価に端末を開発できるだけでなく、横展開も可能になる。
ドコモの端末ラインアップでは、富士通の「らくらくホン」が全体の15%のシェアを持っている。こういった安価でシンプルで使いやすい機種をAndroidで開発することも考えている。
ソフトバンクは通話特化型端末で勝負
――ソフトバンクモバイル向けはどうか。
米アップルの「iPhone」が圧倒的に売れており、国内メーカーはシャープが有力だ。安価モデルはパナソニックモバイルコミュニケーションズや韓国・サムスン電子に加えて、夏商戦に中国のZTEが参入してきた。
ここでは「740N」、「741N」といった子ども向けや通話特化型端末で勝負していきたい。NTTドコモ向けに提供している高機能携帯電話はプラットフォームが変更になったため、ソフトバンクモバイルに横展開しにくくなってきた。従来の通話特化型だけでなく、今年度中にほかの通信事業者向けに開発したスマートフォンを横展開して、ソフトバンクモバイルに納入していきたい。
SIMロック解除にも対策を用意
――6月には携帯電話機のSIMロック解除に関するガイドラインが決まろうとしている。この方向はメーカーの追い風になるのか
メーカーとしては、本音はなかなか言いにくい。ただ、ビジネスにはなると思っている。ドコモもソフトバンクモバイルも、SIMロック解除に対応できる端末を用意しなくてはいけない。
ここで重要になるのが740Nに代表される通話とSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)しかできない電話機だ。これならSIMロックを外しても大きな影響は出ない。音声だけしか扱えず、1人当たりの平均月額収入(ARPU)も高くないので、通信事業者も導入しやすいのではないか。
3年後は国内シェア1位目指す
――先日の夏商戦向け新製品発表会では「新会社が目指すもの」として2年以内に「驚きのある製品」、3年で国内シェア1位、4年で出荷台数2000万台、8年で5000万台、年数は明示しないが最終的には1億台という目標を明確に掲げていた。その狙いは。
あれは私の思いを話したものだ。ただし決して思いつきの数字ではない。
3社統合の準備の中で社内を見ていると、デザインチームや研究所に、これまでの体制にはなかったものが生まれつつあるように感じた。これが驚きのある製品につながる要素だが、製品に落とし込むまでには、これから1年半から2年近くかかってしまう。
3年で国内シェア1位は簡単ではないが、実現不可能な目標でもない。700万台後半を確保し、他社からユーザーを奪えれば達成できる数字だ。国内で1位を奪えないようでは海外に進出する資格はない。
海外でまず注力するのが北米市場だ。さらにCDMA2000のネットワークがあるメキシコと豪州が続く。ただし日本市場にそれらの市場を足しても2000万台には届かない。欧州のテレフォニカなどを加えることで達成していきたい。
5000万台を目指すにはインドや中国を攻めていく必要があるだろう。8年先は遠すぎるが、4年を過ぎたあたりを想定しておきたい。5000万台の販売台数があれば、他の海外メーカーとも対等に話し合える立場になるだろう。
従業員が輝ける環境を整える
かつてNECが中国に進出しようとしていた際、テレビのドキュメンタリー番組に取材されたことがあった。最近、当時のビデオを見返してみたら、生き生きとした表情をしている自分を見つけた。
自分はかつて「こんなケータイを作りたい」という願いで仕事をしてきた。同じように、従業員が輝いてケータイを開発できる環境を整備するのが経営者の使命だと感じている。
そんな環境で作ったケータイこそが、ユーザーから支持される。数字は後からついてくるのだ。夢を持っていないと、従業員がワクワクして働けない。その意味でも目標数字を掲げておくことは重要なのだ。
浜崎あゆみがソフトバンクCM出演決定! Twitterで孫社長に直談判「犬のお父さんと共演したい」
6月4日の深夜に信じられないサプライズが発生した。なんと、コミュニケーションサービス『Twitter』で歌手の浜崎あゆみさんが、ソフトバンクモバイル代表取締役社長・孫正義氏に「犬のお父さんと共演したいでございます」と直談判。なんと、テレビコマーシャル出演の確約をもらったのだ!
事の発端を説明しよう。浜崎さんは『Twitter』で孫社長に「始めまして、浜崎あゆみと申します。孫さんーっっっ犬のお父さんと共演したいでございます」とメッセージを書き込み。それに対して孫社長は「やりましょう」と即答したのである。
浜崎さんといえば、アジアの歌姫として有名な美人歌手。最近はSMAPの香取慎吾さんがソフトバンクモバイルのテレビコマーシャルに出演しているが、浜崎さんが出演することにより、新たなソフトバンクユーザーの獲得に貢献しそうである。
これに対しては他の『Twitter』ユーザーたちもびっくりしているようで、突然のサプライズに喜んでいるようである。もしかすると、どんどんこのようなサプライズが孫社長の周囲で発生してくるかもしれない?
「電子書籍は5年以内に紙の本を超える」とソニー幹部
ソニーの電子書籍事業部社長スティーブ・ハーバー氏は、「5年以内にデジタルコンテンツの売り上げが物理コンテンツより多くなる」と考えている。音楽、写真のデジタル化と同じパターンが、書籍市場で起きているという。ソニーは、電子書籍市場は「引き返せない段階」を過ぎたと考えており、ハーバー氏は出版社にパラダイムシフトが起きていると説いている。
また同氏は、iPadのような多機能タブレットと、ソニーの「Reader」のような電子書籍専用リーダーの共存は可能としている。「多くの人が携帯電話で写真を撮っているが、高画質の写真が撮りたいときはカメラを使う」のと同じように、電子書籍デバイスでも柔軟な使い分けがなされるとみている。
ソニーは年内に日本国内でReaderを発売する予定。またKDDI、凸版、朝日新聞と電子書籍会社を設立する。
「ONE PIECE」(ワンピース)58巻、初版は歴代記録更新の310万部
4日に発売となった「ONE PIECE」(ワンピース)コミックス第58巻だが、初版は310万部に。
これは、同57巻の300万部を上回るもので、またしても日本出版界全体での歴代最高記録を塗り替えた。
夢も不況に勝てず 宝くじ販売、9年ぶり1兆円割れ
09年度、家計悪化響く
全国の自治体が2009年度に発行した宝くじの販売総額は、08年度に比べ5.3%減の9875億円にとどまったことが分かった。1兆円割れは00年度以来9年ぶり。宝くじは不況に強いとされてきたが、08年秋のリーマン・ショック後の家計の急激な悪化が響いた。
販売額が9年ぶりに1兆円を割り、宝くじも不況に勝てなかった(5月12日、東京・銀座)
宝くじを販売する全国の都道府県と政令指定都市でつくる全国自治宝くじ事務協議会(事務局・東京都)によると、購入者が一つのくじで買う枚数を減らしたり、長年の宝くじファンだった高齢者が購入を控えたりするなどで、09年度の販売総額が減少した。バブル経済崩壊後の05年度に記録した販売総額のピーク(1兆1047億円)に比べて、1割以上減少している。
宝くじは自治体の財源の一つだが、税収との二重の収入減に陥っている。このため、全国の自治体は10年度、1等の当せん確率を高めた新型くじを売り出す予定。当せん金額を抑える一方、チャンスを身近に感じられる新商品で購買層を広げたい考えだ。
宝くじは販売額の約50%を当せん金に使い、約10%を経費に充てる。残り約40%は自治体の収益金となり、自治体の貴重な財源だ。ただ、宝くじを巡っては、政府の行政刷新会議が5月に実施した事業仕分けで、官僚OBが在籍する法人にお金が流れていることが問題視され、総務省が所管する日本宝くじ協会などの関連事業が「廃止」と判定されている。
「菅さんはつぶやいていません」 菅新首相名のツイッター書き込み頻発で民主党
民主党は5日、ミニブログ「ツイッター」で菅直人新首相(党代表)名の書き込みが頻発していることについて、「なりすましの書き込みであり、本人とは何らかかわりがない」と注意を呼びかけた。
台湾IT企業 iPad型端末に続々参入
台湾のIT(情報技術)各社が相次いで「iPad(アイパッド)」型の多機能携帯端末や電子書籍用端末に参入している。パソコン大手の宏碁(エイサー)などのほか、台達電子のように端末市場に新規参入する動きも出てきた。台北市で開催中の「台北電脳展(コンピューテックス台北)」では、各社が新端末でしのぎを削っている。
パソコン中堅の微星科技(MSI)が今年7~9月に欧米や台湾で発売する「WindPad(ウインドパッド)」は米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ7」を搭載した。画面は10型で価格は499~699ドル(約4万6千~6万5千円)。10~12月にはOSに米グーグルの「アンドロイド」を搭載した製品も発売する。
パソコン世界2位のエイサーは今年10~12月にiPad型の端末をまず米国、ドイツ、中国で発売。パソコン大手の華碩電脳(アスース)も来年1~3月に「EeePad(イーパッド)」の販売を始める。
電子書籍用端末の競争も激化しており、エイサー、アスースなどのほか、電子機器の電源で世界首位の台達電子は年内に発売する8型と13型のカラー液晶パネルを使った端末を出展した。台湾各社が自社製品を市場に迅速に投入できるのは、日米欧企業の電子端末を生産する台湾EMS(電子機器の受託製造サービス)の存在が大きい。
今年のコンピューテックスには中国メーカーのiPad型端末も登場。ウィンドウズ7を搭載した漢王科技(北京市)の「TouchPad(タッチパッド)」で、生産は台湾のEMSに委託している。
性描写規制、否決へ 都議会、民主など反対多数
悪質な性描写のある漫画などの販売方法を規制する東京都の青少年健全育成条例改正案について、都議会は「表現の自由を侵す恐れがある」などとする民主、共産などの反対多数で否決する見通しになった。都は漫画などの18歳未満の登場人物を「非実在青少年」と表記するなど批判のある表現を直して9月以降に再提出する方針。
改正案をめぐっては、石原慎太郎都知事も「非実在青少年」などの表記の不適切さを認めているが、「議会が部分修正すればよい」と表明。知事与党の自民、公明は最大会派民主と共同した修正案作りを模索してきた。
ただ、民主は「知事が不備を認めている改正案は一度撤回し、都が修正すべきだ」と提出側の責任を主張。このまま都と議会が譲らず会期末の16日を迎え、民主など知事野党が現在の案を反対多数で否決する公算が大きくなった。石原知事は否決後の再提出の考えを示している。
条例改正案は、悪質な性描写がある漫画を書店で別の陳列棚に置くことなどを業界に求めている。漫画家らは「萎縮につながる」「表現の自由を侵害する」などと反発している。
ハンガリーが財政再建策 東欧に危機飛び火か
ハンガリーの財政赤字が拡大する可能性が高まり、同国政府は週明けにも新たな財政再建策を公表する見通しになったと、ドイツ通信などが4日伝えた。欧米の金融市場では、ギリシャに端を発した欧州の財政危機が東欧に飛び火することへの懸念が広がり、対ドルでのユーロの急落につながった。
政府関係者によると、今年の同国の財政赤字は国内総生産(GDP)比7%以上になる見通しとなり、前政権の推計(3・8%)を大幅に上回りそうだという。
ハンガリーのオルバン首相の報道官は4日、社会党前政権時代に財政データが改竄(かいざん)されたと表明。これに対し、社会党関係者は反論した。
金融市場ではハンガリーの通貨フォリントも対ユーロで大幅下落し、1年ぶりの安値をつけた。
「イラ菅」に不安 米紙、外交は未知数
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は4日、菅直人新首相について、「イラ菅」と呼ばれる短気な人物でもあり、米軍普天間飛行場の移設問題でオバマ政権が日本政府に再び圧力をかければどのような反応を見せるか不安が残ると報じた。
同紙は、菅氏は厚生・福祉問題では実績があるが、外交問題での手腕は未知数だと指摘。今後、普天間問題で日米共同声明の履行に沖縄県民が激しく抵抗するのは確実で、政治パフォーマンスにたけた菅氏が実際に履行に踏み切るかどうか「疑問が残る」とした。
さらに米コロンビア大のカーチス教授の「菅氏は良好な日米関係を望むだろうが(米にとって)鳩山氏よりはるかに厳しい交渉相手」とのコメントを紹介した。
【ウォールストリートジャーナル社説】資源新税導入議論に見るオーストラリアの転換点
オーストラリア政府が提案する鉱物資源業界の「超過利潤(もうけすぎ分)」への課税をめぐり、議論は過熱する一方だ。同政府は、納税額に関して「根本的に不誠実」として鉱物資源会社を批判。これに反論する資源各社は、政府の統計データを「恥ずべきもの」と称している。こういった堂々巡りの議論で見落とされている重要な問題がある。30年にわたって自由主義的経済政策を享受してきた先進国、オーストラリアは、自由市場「香港」を目指すのか、あるいは社会主義国「フランス」に近付こうとしているのかということだ。
この数週間の発言を聞く限り、ラッド首相率いる労働党政権はフランス国旗を掲揚し始めたようだ。同首相とスワン財務相は、鉱物資源会社が「超過利潤」を得ており、「相応な額」を国に戻すべきと主張。階級間の対立という観点から40%の課税案を繰り返し説明している。それはつまり、いくら以上の利潤が「もうけすぎ」なのか、政治家が担ったこともない重労働の対価を誰が受け取るべきか、といったことを決定する権限は政府にある、ということだ。
Reuters
ケビン・ラッド豪首相
民間企業に勤めたことのある人なら、これはおかしいと思うはずだ。だが心配はいらない。オーストラリア政府には、このような提案はそれほど悪いアイデアではないと、指摘するヘンリー財務次官のようなエコノミストやキャリア官僚がいる(同次官は両方を兼ねる)。今月初め、ヘンリー次官は、政府の課税方針の論拠でもある、自らの経済モデルを概説し、「超過利潤税は正しく設計されれば増収につながるとともに、対内投資も増やす」と主張した。
ヘンリー次官が説いた経済モデルはいくつかの前提に基づいている。まずはオーストラリアの資源は、市場とは関わりなく固有の価値を有するという考えだ。この価値は、企業が掘り出して供給することで付加する価値とは区別される。また同次官は、政府がすでに開始されたプロジェクトに関して遡及(そきゅう)的に税制を変更しても、今後のプロジェクトが資金を調達しようとしたときに民間投資家や銀行が調達コストを引き上げることはないと見込んでいる。また企業は、成功したプロジェクトへの40%課税と同じように、失敗したプロジェクトに関する減税案を重視することも想定している。そしてもちろん、政府がきちんとすべてのバランスを保ち、投資の流れが継続することも前提としている。
もちろん現実はその通りにはいかないだろう。資源各社は課税案が実施されればどの程度のダメージを被り、事業運営にどの程度の調整が必要となるかを明らかにしようと必死だ。英豪系資源大手BHPビリトンは、南オーストラリア州オリンピックダム鉱山の200億ドル(約1.8兆円)規模の拡大計画を見直しており、株主配当を引き下げる可能性がある。豪フォーテスキューは西オーストラリア州の2件の鉄鉱石採掘プロジェクトを一時的に凍結した。クィーンズランド州の液化天然ガス大規模プロジェクトの延期も決まった。課税案が発表されてからオーストラリアドルは急落している。偶然でないことは明らかだ。
資源各社は、この激しい攻防から一歩も引かない構えだ。新税導入がオーストラリアの産業と国家としての競争力にどれほど大きな影響を及ぼすかを説明する大々的なメディアキャンペーンを開始した。BHPビリトンのジャック・ナッサー会長は、5月に入ってから株主に送った書簡でいみじくも指摘している。「危険なのは、ほかの国から、オーストラリアは安定性と競争力が後退し、長期投資には向かない国だと思われてしまうことだ。これが現実となれば、強力な経済基盤の構築を目指してきた長年の国民の努力が水泡に帰すことになるだろう」
ラッド政権は、この種の客観的で合理的な活動を「脅しのキャンペーン」と呼ぶ。とんでもないことだ。鉱物資源業界は、世界同時不況のなかオーストラリアを支え続け、18年連続のプラス成長のけん引役にもなってきた。この辺境の国が80年代以降、国際競争を戦い、有能な人材と資本を引き付けてきたのも鉱物資源業界のおかげだ。労働・自由いずれの政権であっても、その事実は変わらない。ラッド首相は、身内の労働党ですら長年疑問視してきた考えを押し通そうとしているのだ。
一般的なオーストラリア国民なら、こういった姿勢がこの数週間のラッド首相の支持率急落の要因であることを知っているはずだ。5月28日、政府は国民に新税の支持を呼びかける大がかりな宣伝キャンペーンを発表した。新税を支払うのはほかでもない納税者だ。
6月1日に、カシオ日立モバイルコミュニケーションズとの統合により生まれ変わったNECカシオモバイルコミュニケーションズ。NEC、カシオ、日立製作所の携帯電話事業が1社になり、この新会社の下で端末を開発する。新会社はどの方向を目指すのか。NEC出身の山崎耕司社長に話を聞いた。
NECにないものを持つ2社と合弁
――ようやくカシオ日立と事業を統合し、新会社としてスタートした。3社の合弁によって期待できるシナジーについて改めて聞きたい。
カシオ日立との話がまとまるまで、NECは様々な会社との統合を検討してきた。他社と一緒にやるからには、かなりの痛みを伴う一方で、絶対に成功しなくてはならない。下手な統合をして失敗でもしたら、二度とはい上がれなくなるとの覚悟があった。
カシオは耐水性・耐衝撃性に優れた携帯電話の「G’zOne(ジーズワン)」やデジタルカメラ「EXILIM(エクシリム)」といったブランドを持ち、海外への確固とした販路を持つ。さらにKDDIとの関係が強固だ。NECはかつてCDMA2000系の携帯電話を手掛けようとして、あきらめた経緯がある。NECが持っていないものが、カシオにはあった。
日立には技術力とブランド力がある。夏商戦にKDDIが発売する「beskey(ベスキー)」は、日立らしい家電文化から生まれたモデルといえる。NECではデザインの視点からキーの設計を考えるが、「使う人の視点」はあまり無かったかもしれない。beskeyのように文字入力のしやすさからキーを取り換える発想は思いつかなかった。家電を作ってきた日立だからこそ生まれた製品と言える。
合弁により、日立の技術力とアイデア、カシオの耐水性・耐衝撃性とブランド力に、NECの通信技術やデザイン、薄型設計という長所を組み合わせて、水平展開をしていきたい。
KDDI向けは機種数増を目指す
――これまでカシオと日立が展開してきたKDDI向けラインアップはどうするのか
KDDIはシャープや京セラ、東芝、ソニー・エリクソンなど、サプライヤーが多い。その中でカシオや日立の商品バリエーションは少なかったとみている。
機種数の少なさは、開発陣を強化すれば解決できるだろう。EXILIMケータイをNECの技術力によってさらに薄型化するなどの取り組みを強化したい。
NECはKDDIと、次世代携帯規格「LTE」のインフラ構築で付き合いがある。KDDIのサプライヤーの中でポジションを拡大していきたい。
ドコモ向けは3Dとスマートフォン
――主力となるNTTドコモ向け端末の方針は。
1つは画像系の強化がある。今後は3次元(3D)がはやると思っている。これに備え、液晶や画像処理に力を入れる。
もう一つがスマートフォン。すべての携帯電話がスマートフォンに置き換わるわけではないが、取り組みは重要だ。
スマートフォンの拡大で期待しているのが端末を「安く作れる」という点だ。現在はほとんどのスマートフォンは海外メーカーが納入しているが、開発コストの低い端末を作るため、我々も手掛ける必要がある。
その中では、現行の携帯電話が使うプラットホームではなく、米グーグルの「Android」などのスマートフォン系のプラットホームを活用するだろう。これなら安価に端末を開発できるだけでなく、横展開も可能になる。
ドコモの端末ラインアップでは、富士通の「らくらくホン」が全体の15%のシェアを持っている。こういった安価でシンプルで使いやすい機種をAndroidで開発することも考えている。
ソフトバンクは通話特化型端末で勝負
――ソフトバンクモバイル向けはどうか。
米アップルの「iPhone」が圧倒的に売れており、国内メーカーはシャープが有力だ。安価モデルはパナソニックモバイルコミュニケーションズや韓国・サムスン電子に加えて、夏商戦に中国のZTEが参入してきた。
ここでは「740N」、「741N」といった子ども向けや通話特化型端末で勝負していきたい。NTTドコモ向けに提供している高機能携帯電話はプラットフォームが変更になったため、ソフトバンクモバイルに横展開しにくくなってきた。従来の通話特化型だけでなく、今年度中にほかの通信事業者向けに開発したスマートフォンを横展開して、ソフトバンクモバイルに納入していきたい。
SIMロック解除にも対策を用意
――6月には携帯電話機のSIMロック解除に関するガイドラインが決まろうとしている。この方向はメーカーの追い風になるのか
メーカーとしては、本音はなかなか言いにくい。ただ、ビジネスにはなると思っている。ドコモもソフトバンクモバイルも、SIMロック解除に対応できる端末を用意しなくてはいけない。
ここで重要になるのが740Nに代表される通話とSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)しかできない電話機だ。これならSIMロックを外しても大きな影響は出ない。音声だけしか扱えず、1人当たりの平均月額収入(ARPU)も高くないので、通信事業者も導入しやすいのではないか。
3年後は国内シェア1位目指す
――先日の夏商戦向け新製品発表会では「新会社が目指すもの」として2年以内に「驚きのある製品」、3年で国内シェア1位、4年で出荷台数2000万台、8年で5000万台、年数は明示しないが最終的には1億台という目標を明確に掲げていた。その狙いは。
あれは私の思いを話したものだ。ただし決して思いつきの数字ではない。
3社統合の準備の中で社内を見ていると、デザインチームや研究所に、これまでの体制にはなかったものが生まれつつあるように感じた。これが驚きのある製品につながる要素だが、製品に落とし込むまでには、これから1年半から2年近くかかってしまう。
3年で国内シェア1位は簡単ではないが、実現不可能な目標でもない。700万台後半を確保し、他社からユーザーを奪えれば達成できる数字だ。国内で1位を奪えないようでは海外に進出する資格はない。
海外でまず注力するのが北米市場だ。さらにCDMA2000のネットワークがあるメキシコと豪州が続く。ただし日本市場にそれらの市場を足しても2000万台には届かない。欧州のテレフォニカなどを加えることで達成していきたい。
5000万台を目指すにはインドや中国を攻めていく必要があるだろう。8年先は遠すぎるが、4年を過ぎたあたりを想定しておきたい。5000万台の販売台数があれば、他の海外メーカーとも対等に話し合える立場になるだろう。
従業員が輝ける環境を整える
かつてNECが中国に進出しようとしていた際、テレビのドキュメンタリー番組に取材されたことがあった。最近、当時のビデオを見返してみたら、生き生きとした表情をしている自分を見つけた。
自分はかつて「こんなケータイを作りたい」という願いで仕事をしてきた。同じように、従業員が輝いてケータイを開発できる環境を整備するのが経営者の使命だと感じている。
そんな環境で作ったケータイこそが、ユーザーから支持される。数字は後からついてくるのだ。夢を持っていないと、従業員がワクワクして働けない。その意味でも目標数字を掲げておくことは重要なのだ。
浜崎あゆみがソフトバンクCM出演決定! Twitterで孫社長に直談判「犬のお父さんと共演したい」
6月4日の深夜に信じられないサプライズが発生した。なんと、コミュニケーションサービス『Twitter』で歌手の浜崎あゆみさんが、ソフトバンクモバイル代表取締役社長・孫正義氏に「犬のお父さんと共演したいでございます」と直談判。なんと、テレビコマーシャル出演の確約をもらったのだ!
事の発端を説明しよう。浜崎さんは『Twitter』で孫社長に「始めまして、浜崎あゆみと申します。孫さんーっっっ犬のお父さんと共演したいでございます」とメッセージを書き込み。それに対して孫社長は「やりましょう」と即答したのである。
浜崎さんといえば、アジアの歌姫として有名な美人歌手。最近はSMAPの香取慎吾さんがソフトバンクモバイルのテレビコマーシャルに出演しているが、浜崎さんが出演することにより、新たなソフトバンクユーザーの獲得に貢献しそうである。
これに対しては他の『Twitter』ユーザーたちもびっくりしているようで、突然のサプライズに喜んでいるようである。もしかすると、どんどんこのようなサプライズが孫社長の周囲で発生してくるかもしれない?
「電子書籍は5年以内に紙の本を超える」とソニー幹部
ソニーの電子書籍事業部社長スティーブ・ハーバー氏は、「5年以内にデジタルコンテンツの売り上げが物理コンテンツより多くなる」と考えている。音楽、写真のデジタル化と同じパターンが、書籍市場で起きているという。ソニーは、電子書籍市場は「引き返せない段階」を過ぎたと考えており、ハーバー氏は出版社にパラダイムシフトが起きていると説いている。
また同氏は、iPadのような多機能タブレットと、ソニーの「Reader」のような電子書籍専用リーダーの共存は可能としている。「多くの人が携帯電話で写真を撮っているが、高画質の写真が撮りたいときはカメラを使う」のと同じように、電子書籍デバイスでも柔軟な使い分けがなされるとみている。
ソニーは年内に日本国内でReaderを発売する予定。またKDDI、凸版、朝日新聞と電子書籍会社を設立する。
「ONE PIECE」(ワンピース)58巻、初版は歴代記録更新の310万部
4日に発売となった「ONE PIECE」(ワンピース)コミックス第58巻だが、初版は310万部に。
これは、同57巻の300万部を上回るもので、またしても日本出版界全体での歴代最高記録を塗り替えた。
夢も不況に勝てず 宝くじ販売、9年ぶり1兆円割れ
09年度、家計悪化響く
全国の自治体が2009年度に発行した宝くじの販売総額は、08年度に比べ5.3%減の9875億円にとどまったことが分かった。1兆円割れは00年度以来9年ぶり。宝くじは不況に強いとされてきたが、08年秋のリーマン・ショック後の家計の急激な悪化が響いた。
販売額が9年ぶりに1兆円を割り、宝くじも不況に勝てなかった(5月12日、東京・銀座)
宝くじを販売する全国の都道府県と政令指定都市でつくる全国自治宝くじ事務協議会(事務局・東京都)によると、購入者が一つのくじで買う枚数を減らしたり、長年の宝くじファンだった高齢者が購入を控えたりするなどで、09年度の販売総額が減少した。バブル経済崩壊後の05年度に記録した販売総額のピーク(1兆1047億円)に比べて、1割以上減少している。
宝くじは自治体の財源の一つだが、税収との二重の収入減に陥っている。このため、全国の自治体は10年度、1等の当せん確率を高めた新型くじを売り出す予定。当せん金額を抑える一方、チャンスを身近に感じられる新商品で購買層を広げたい考えだ。
宝くじは販売額の約50%を当せん金に使い、約10%を経費に充てる。残り約40%は自治体の収益金となり、自治体の貴重な財源だ。ただ、宝くじを巡っては、政府の行政刷新会議が5月に実施した事業仕分けで、官僚OBが在籍する法人にお金が流れていることが問題視され、総務省が所管する日本宝くじ協会などの関連事業が「廃止」と判定されている。
「菅さんはつぶやいていません」 菅新首相名のツイッター書き込み頻発で民主党
民主党は5日、ミニブログ「ツイッター」で菅直人新首相(党代表)名の書き込みが頻発していることについて、「なりすましの書き込みであり、本人とは何らかかわりがない」と注意を呼びかけた。
台湾IT企業 iPad型端末に続々参入
台湾のIT(情報技術)各社が相次いで「iPad(アイパッド)」型の多機能携帯端末や電子書籍用端末に参入している。パソコン大手の宏碁(エイサー)などのほか、台達電子のように端末市場に新規参入する動きも出てきた。台北市で開催中の「台北電脳展(コンピューテックス台北)」では、各社が新端末でしのぎを削っている。
パソコン中堅の微星科技(MSI)が今年7~9月に欧米や台湾で発売する「WindPad(ウインドパッド)」は米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ7」を搭載した。画面は10型で価格は499~699ドル(約4万6千~6万5千円)。10~12月にはOSに米グーグルの「アンドロイド」を搭載した製品も発売する。
パソコン世界2位のエイサーは今年10~12月にiPad型の端末をまず米国、ドイツ、中国で発売。パソコン大手の華碩電脳(アスース)も来年1~3月に「EeePad(イーパッド)」の販売を始める。
電子書籍用端末の競争も激化しており、エイサー、アスースなどのほか、電子機器の電源で世界首位の台達電子は年内に発売する8型と13型のカラー液晶パネルを使った端末を出展した。台湾各社が自社製品を市場に迅速に投入できるのは、日米欧企業の電子端末を生産する台湾EMS(電子機器の受託製造サービス)の存在が大きい。
今年のコンピューテックスには中国メーカーのiPad型端末も登場。ウィンドウズ7を搭載した漢王科技(北京市)の「TouchPad(タッチパッド)」で、生産は台湾のEMSに委託している。
性描写規制、否決へ 都議会、民主など反対多数
悪質な性描写のある漫画などの販売方法を規制する東京都の青少年健全育成条例改正案について、都議会は「表現の自由を侵す恐れがある」などとする民主、共産などの反対多数で否決する見通しになった。都は漫画などの18歳未満の登場人物を「非実在青少年」と表記するなど批判のある表現を直して9月以降に再提出する方針。
改正案をめぐっては、石原慎太郎都知事も「非実在青少年」などの表記の不適切さを認めているが、「議会が部分修正すればよい」と表明。知事与党の自民、公明は最大会派民主と共同した修正案作りを模索してきた。
ただ、民主は「知事が不備を認めている改正案は一度撤回し、都が修正すべきだ」と提出側の責任を主張。このまま都と議会が譲らず会期末の16日を迎え、民主など知事野党が現在の案を反対多数で否決する公算が大きくなった。石原知事は否決後の再提出の考えを示している。
条例改正案は、悪質な性描写がある漫画を書店で別の陳列棚に置くことなどを業界に求めている。漫画家らは「萎縮につながる」「表現の自由を侵害する」などと反発している。
ハンガリーが財政再建策 東欧に危機飛び火か
ハンガリーの財政赤字が拡大する可能性が高まり、同国政府は週明けにも新たな財政再建策を公表する見通しになったと、ドイツ通信などが4日伝えた。欧米の金融市場では、ギリシャに端を発した欧州の財政危機が東欧に飛び火することへの懸念が広がり、対ドルでのユーロの急落につながった。
政府関係者によると、今年の同国の財政赤字は国内総生産(GDP)比7%以上になる見通しとなり、前政権の推計(3・8%)を大幅に上回りそうだという。
ハンガリーのオルバン首相の報道官は4日、社会党前政権時代に財政データが改竄(かいざん)されたと表明。これに対し、社会党関係者は反論した。
金融市場ではハンガリーの通貨フォリントも対ユーロで大幅下落し、1年ぶりの安値をつけた。
「イラ菅」に不安 米紙、外交は未知数
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は4日、菅直人新首相について、「イラ菅」と呼ばれる短気な人物でもあり、米軍普天間飛行場の移設問題でオバマ政権が日本政府に再び圧力をかければどのような反応を見せるか不安が残ると報じた。
同紙は、菅氏は厚生・福祉問題では実績があるが、外交問題での手腕は未知数だと指摘。今後、普天間問題で日米共同声明の履行に沖縄県民が激しく抵抗するのは確実で、政治パフォーマンスにたけた菅氏が実際に履行に踏み切るかどうか「疑問が残る」とした。
さらに米コロンビア大のカーチス教授の「菅氏は良好な日米関係を望むだろうが(米にとって)鳩山氏よりはるかに厳しい交渉相手」とのコメントを紹介した。
【ウォールストリートジャーナル社説】資源新税導入議論に見るオーストラリアの転換点
オーストラリア政府が提案する鉱物資源業界の「超過利潤(もうけすぎ分)」への課税をめぐり、議論は過熱する一方だ。同政府は、納税額に関して「根本的に不誠実」として鉱物資源会社を批判。これに反論する資源各社は、政府の統計データを「恥ずべきもの」と称している。こういった堂々巡りの議論で見落とされている重要な問題がある。30年にわたって自由主義的経済政策を享受してきた先進国、オーストラリアは、自由市場「香港」を目指すのか、あるいは社会主義国「フランス」に近付こうとしているのかということだ。
この数週間の発言を聞く限り、ラッド首相率いる労働党政権はフランス国旗を掲揚し始めたようだ。同首相とスワン財務相は、鉱物資源会社が「超過利潤」を得ており、「相応な額」を国に戻すべきと主張。階級間の対立という観点から40%の課税案を繰り返し説明している。それはつまり、いくら以上の利潤が「もうけすぎ」なのか、政治家が担ったこともない重労働の対価を誰が受け取るべきか、といったことを決定する権限は政府にある、ということだ。
Reuters
ケビン・ラッド豪首相
民間企業に勤めたことのある人なら、これはおかしいと思うはずだ。だが心配はいらない。オーストラリア政府には、このような提案はそれほど悪いアイデアではないと、指摘するヘンリー財務次官のようなエコノミストやキャリア官僚がいる(同次官は両方を兼ねる)。今月初め、ヘンリー次官は、政府の課税方針の論拠でもある、自らの経済モデルを概説し、「超過利潤税は正しく設計されれば増収につながるとともに、対内投資も増やす」と主張した。
ヘンリー次官が説いた経済モデルはいくつかの前提に基づいている。まずはオーストラリアの資源は、市場とは関わりなく固有の価値を有するという考えだ。この価値は、企業が掘り出して供給することで付加する価値とは区別される。また同次官は、政府がすでに開始されたプロジェクトに関して遡及(そきゅう)的に税制を変更しても、今後のプロジェクトが資金を調達しようとしたときに民間投資家や銀行が調達コストを引き上げることはないと見込んでいる。また企業は、成功したプロジェクトへの40%課税と同じように、失敗したプロジェクトに関する減税案を重視することも想定している。そしてもちろん、政府がきちんとすべてのバランスを保ち、投資の流れが継続することも前提としている。
もちろん現実はその通りにはいかないだろう。資源各社は課税案が実施されればどの程度のダメージを被り、事業運営にどの程度の調整が必要となるかを明らかにしようと必死だ。英豪系資源大手BHPビリトンは、南オーストラリア州オリンピックダム鉱山の200億ドル(約1.8兆円)規模の拡大計画を見直しており、株主配当を引き下げる可能性がある。豪フォーテスキューは西オーストラリア州の2件の鉄鉱石採掘プロジェクトを一時的に凍結した。クィーンズランド州の液化天然ガス大規模プロジェクトの延期も決まった。課税案が発表されてからオーストラリアドルは急落している。偶然でないことは明らかだ。
資源各社は、この激しい攻防から一歩も引かない構えだ。新税導入がオーストラリアの産業と国家としての競争力にどれほど大きな影響を及ぼすかを説明する大々的なメディアキャンペーンを開始した。BHPビリトンのジャック・ナッサー会長は、5月に入ってから株主に送った書簡でいみじくも指摘している。「危険なのは、ほかの国から、オーストラリアは安定性と競争力が後退し、長期投資には向かない国だと思われてしまうことだ。これが現実となれば、強力な経済基盤の構築を目指してきた長年の国民の努力が水泡に帰すことになるだろう」
ラッド政権は、この種の客観的で合理的な活動を「脅しのキャンペーン」と呼ぶ。とんでもないことだ。鉱物資源業界は、世界同時不況のなかオーストラリアを支え続け、18年連続のプラス成長のけん引役にもなってきた。この辺境の国が80年代以降、国際競争を戦い、有能な人材と資本を引き付けてきたのも鉱物資源業界のおかげだ。労働・自由いずれの政権であっても、その事実は変わらない。ラッド首相は、身内の労働党ですら長年疑問視してきた考えを押し通そうとしているのだ。
一般的なオーストラリア国民なら、こういった姿勢がこの数週間のラッド首相の支持率急落の要因であることを知っているはずだ。5月28日、政府は国民に新税の支持を呼びかける大がかりな宣伝キャンペーンを発表した。新税を支払うのはほかでもない納税者だ。
E3接近=任天堂にはビッグサプライズも
ゲーム業界にとって最大のイベント「E3」(Electronic Entertainment Expo)の開幕が迫っている。今年はロサンゼルスで6月15-17日の日程で行われる予定だ。毎年9月ごろに開催される東京ゲームショウに独自イベントの兼ね合いもあって不参加の任天堂 も、E3には出展するため、注目度は高い。
今年のE3の目玉のひとつは、任天堂の次世代携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS(仮称)」だろう。同社は6月19日より、DSシリーズの値下げを行う。「E3」で次世代機のお披露目を終えたあとということで、買い控えを懸念してのものだが、次世代機への自信の高さもうかがえよう。
「3DS」はすでに業界初の「3D対応の携帯ゲーム機」として話題を集めているが、エース経済研究所の安田秀樹アナリストは「機器メーカーなど周辺取材をしているが、情報統制が過去の任天堂ゲーム機の例にないほど厳しい。3D以上に大掛かりなサプライズが残されているとみるのが適当だろう」とする。
04年に「ニンテンドーDS」を発表したときも、「2画面の携帯ゲーム機」との開示にとどめていたものを、04年E3でタッチパネルなどの詳細を公表した経緯がある。もともとE3はサプライズ発表の場でもあり、任天堂が何かしらの用意をしているとみるのは自然だ。
任天堂については携帯ゲーム機の「3D対応」などわずかな情報が提供されているだけで、「世界的なビッグタイトルを開発中」とのうわさがあるほかは目立った情報が出ていない。ただ、任天堂の据え置き型ゲーム機「Wii」に注目してみると、販売台数は10年3月期で世界累計販売台数は7000万台を超えたものの、前期比20%減の2053万台で、10年3月末の時点で世界累計販売台数が1億台を突破した「DS」シリーズの同13%減の2711万台と比較しても、伸びの鈍化が目立っている。
また、売上高からみると、携帯型が同10%減の3808億円に対し、据え置き型は同38%減の3784億円と大幅に減少。昨年9月にスリム型を発売したソニーの「プレイステーション3」に対抗するための不本意ともいえる値下げが響いた。今後の販売台数に懸念が残るうえ、売上高も大幅に縮小していることから、企業としても顧客としてもテコ入れが望まれる。これまで据え置き機ではマイナーチェンジをしてこなかった同社だけに、据え置き機の新たな情報も期待したいところだ。
ソニー、E3で「PSP2」の発表を取りやめか?11年以降発売か 「期待に水を差す結果のシナリオ」も
根強くうわさされるのがソニーも携帯機「PSP(プレイステーション・ポータブル)」の新型を発表して対抗するというもの。しかし、ここにきて業界では「今年のE3での発表は取りやめたようだ」との声が聞かれている。いわゆる「PSP2」は、もともとE3で何らかの発表を行う予定だったものの、水面下で発売シーズンを11年以降にする形で先送りしたために今回のE3での発表スケジュールからは外れた、という見方だ。ソニーからの正式なアナウンスはないためうわさの域を出ないが、期待に水を差す結果が待ち受けているシナリオも事前に想定しておきたい。
一方、日本で苦戦しながらも、グローバル市場では任天堂に次ぐシェアを持つマイクロソフトの「XBox360」では、「NATAL」(ナタル)に対応するラインアップを発表する予定だ。任天堂の「Wii」がリモコン型のモーションコントローラーでシェアトップの座を奪回してから、各社とも直感でゲーム操作を行うインターフェースに注力しているが、昨年のE3で公開されている「NATAL」は、ユーザーの体の動きを認識してゲーム操作を可能にするもので、操作するコントローラーのようなものは存在しない。新たな突破口となりうるか注目だ。
ただ、世界的にみてコンピューターゲーム市場は規模が縮小傾向にある。こうしたなか、各ゲーム会社がシフトしつつある携帯ゲーム機の分野では、「iPhone」など米アップル社の携帯端末が登場し、ハードメーカーの任天堂や、ソニー、マイクロソフトにとって、視界は良好といえないだろう。国内外を問わず、ゲームソフトメーカーも、「iPhone」や「iPad」への参入に前向きで、勢力図にも変化が訪れる可能性が高い。
DeNA、PC向けソーシャルゲームポータル「Yahoo!モバゲー」は10月スタート!
「モバゲータウン」を運営している株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は、品川インターシティにて、ソーシャルゲームデベロッパーを対象にしたプライベートフォーラム「モバゲーオープンプラットフォームForum2010」を開催した。
DeNAの代表取締役社長兼CEOの南場智子氏や、ヤフー株式会社の代表取締役社長井上雅博氏らが登壇し、ヤフーとDeNAが提携して展開するPC向けのソーシャルゲーム専門新プラットフォーム「Yahoo!モバゲー」の概要や、DeNAの今後の事業展開などを紹介した。会場には、多くのデベロッパーが参加し、会場の両脇にずらりと立ち見が出るほどの盛況だった。
「オープン化して4カ月、ユーザーさんはオープン化の前よりもハッピーになった」とDeNA代表取締役社長兼CEOの南場智子氏は笑顔で報告した。これまで携帯ゲームのポータルサイト「モバゲータウン」を中心に事業を拡大してきたDeNAは、2010年に「モバゲーAPI」をオープン化してソーシャルゲームへ舵を切った。フォーラムの冒頭、南場氏は、オープン化の結果が予想以上だと語った。
オープン化以来、「モバコイン」というモバゲータウンのゲームマネーは急激な伸びで拡大しており、月の売り上げが1億円を超える企業が複数現われている。今回のフォーラムでは、さらなる展開として「X-device(クロスデバイス)」、「X-border(クロスボーダー)」という2つの戦略が提示された。「携帯を超える」と南場氏が言うこのキーワードは、携帯、スマートフォン、PC、タブレットなど、複数のデバイスでユーザが楽しめるようなゲームのシームレス化を目指すというもの。IDを共有したり、APIやライブラリを整備していくことで、多言語にも対応した世界規模の市場に日本のポジションを築いていくという壮大な構想だ。
日本において戦略の目玉となるのは、今年の4月に発表された「Yahoo!モバゲー」だ。「これまで日本でだけ、なぜPC向けのソーシャルゲームが携帯向けほど拡大していないのか? それはヤフーとモバゲーが組んでいなかったからです」と南場氏は語る。
世界市場では5月にiPhone/iPad向けのゲームポータルサイト「Mini Nation」をスタートして、日本で人気の携帯向けソーシャルゲーム「怪盗ロワイヤル」の海外版「Bandit Nation」などをサービスしている。他にも3Dアバターなど、モバゲーで人気のある要素をiPhone向けに最適化して提供している。日本でPCの市場形成を目指すのとは逆に、世界では、英語圏のスマートフォンや中国の携帯市場など、これから拡大が予想されるなモバイル市場へ勝負を挑んでいく。
■ 「Yahoo!モバゲー」と「モバゲータウン」が連動した形で遊べるゲームを提供
「Yahoo!モバゲーは略すとヤバゲーになるため、ずっと(仮)がついていましたが、もう諦めました。この名前で皆さんに親しんでいただきたい(笑)」と語ったのは、ヤフー株式会社代表取締役社長の井上雅博氏。井上氏は、「Yahoo!モバゲー」でソーシャルゲームに参入する意気込みと意義をヤフーの側から説明した。
現在、世界のソーシャルゲーム市場は4,000億円ほどに成長しており、今後も高い成長が見込まれている。だが、そのなかでモバイルの占めるシェアは、アメリカでは8%、イギリスでは12%にすぎない。中国でも1億人いるというソーシャルゲームユーザーの大半はPCのユーザーが占めている。しかし日本では、ソーシャルゲームはイコール携帯ゲームというほどにモバイルが主流だ。
井上氏は、日本にも潜在的にはPCのソーシャルゲーム市場があるのではないかと言う。携帯のソーシャルゲームは10代から20代の若者がメインユーザーだが、海外ではソーシャルゲームのユーザーは30代から40代と少し年齢層が高い。年齢層が高いと、それだけ1人当たりが使う金額は大きくなるので、日本でもPCのソーシャルゲームのプラットフォームが作れたら、マーケットとして期待が持てるのではないかというのが、今回ヤフーが提携を進めた理由だ。ヤフーとしては、日本におけるPC向けソーシャルゲームの中核を担うプラットフォームになりたいという野望もある。
サービスが始まると、「Yahoo! JAPAN」のTOPページや「Yahoo!メール」、「Yahoo!メッセンジャー」、「Yahoo!ゲーム」にソーシャルゲームのアクティビティやフィードが表示されるようになる。また、ローンチ時期に合わせて、TVCMも含めた総額10億円規模のプロモーションを行なう予定だ。
DeNAの守安氏は「ソーシャルゲーム市場の成長は予想以上」と言う。1年前にオープン化を決めた頃には、3年程度で1,000億円規模の市場になるだろうと想定していた。しかし、その目標は2010年度中には越えていきそうだ、と守安氏。「スマートフォンやPCのユーザーをきっちりと取りこめていけば、普通に見積もって2,000億円、うまくいけば3,000億円というマーケットができるのではないか」と予想している。2009年度の、家庭用ゲームのソフトウェアのみの市場が約3,200億円なので、「2、3年後には家庭用ゲームとソーシャルゲームの市場規模が同じくらいになっているのではないか」と語った。
だた、ソーシャルゲーム市場を拡大してくためには、その地盤となるコミュニティの成長が重要だ。「単純にトラフィックをぶつければ成長できるという簡単なものではなく、いかにユーザーのニーズにあったコミュニティを提供できるかが重要」と守安氏。そのためには、すでに出来上がっている「モバゲータウン」のコミュニティと、「Yahoo!モバゲー」のコミュニティを連動したゲームを提供して欲しい、と参加したデベロッパーに訴えた。モバゲーの3Dアバターを使った、PC向けのソーシャルゲームもすでに複数のタイトルが開発をスタートさせているらしい。
富士フイルム、デジカメ開発集約 携帯用部品参入
富士フイルムはデジタルカメラの開発部門を再編する。宮城県にあるデジカメ本体の開発・購買部門を7月に、レンズ開発拠点を置くさいたま市に移転する。デジカメの中核部品である光学レンズの開発と、画像センサー開発や本体設計を密接に連携させる体制を整え、製品の競争力強化につなげる。開発機能の一体化などを契機に、携帯電話用カメラモジュール(複合部品)事業にも参入する。
現在、レンズの開発・生産は全額出資子会社のフジノン(さいたま市)が担い、デジカメ本体の製品開発、購買、品質保証の本拠は宮城県大和町にある。既にフジノンを7月1日付で本体に統合することを決めており、同時にデジカメの開発機能を集約する。レンズ設計にデジカメ開発部門が深く関与するなど、技術者間の連携を深め、開発効率を向上させる。
中国銀聯カード決済使わないで!米ビザ要請
【北京=幸内康】クレジットカード世界最大手の米ビザが、中国のカード決済機関「中国銀聯」との提携カードについて、8月以降、中国国外では銀聯の決済システムを使わないよう加盟金融機関に要請した。
欧米や中国のメディアが4日までに報じた。
カード利用の際にビザが1~2%の外国為替手数料を取るのに対し銀聯は無料なため、利用者は銀聯で決済する傾向にある。ビザの異例ともいえる要請は拡大する銀聯に収益基盤を脅かされかねないとの危機感があると見られる。
銀聯は中国人民銀行(中央銀行)の傘下にあり、中国国内のカード決済業務を独占している。銀聯は海外進出にも積極的で、約90か国・地域以上に独自ネットワークを拡大している。
英が高速鉄道計画見直し、日立への発注白紙か
【ロンドン=是枝智】英国内で幹線鉄道の旧式車両を高速鉄道車両に切り替える政府の計画について、ハモンド英運輸相が白紙に戻す可能性が高まっていると、4日付の英紙フィナンシャル・タイムズが報じた。
その場合、優先交渉権を得ていた日立製作所などの企業連合への発注はキャンセルされる見通しだ。受注総額は75億ポンド(約1兆円)にのぼる大型事業だけに、日立には打撃となりそうだ。
高速鉄道計画では、日立連合が最大1400両の車両の販売と、20~30年間の保守業務を担う予定だった。しかし、景気低迷などを受けて今年2月、前政権が計画の見直しを表明していた。新政権は3日に別の新型車両導入計画の凍結を決めており、日立が関与する計画も影響は避けられない見通しだという。
アナリストが読む菅政権の隠れたリスク
菅直人氏が衆参両院の指名を受け、第94代首相に就任する運びとなった。市場では菅新首相のこれまでの言動などから、「財政再建」「円安」「金融緩和」が新たな経済政策のキーワードになるとの見方が多い。だが、有力エコノミストらが今週に入って出した関連リポートからは、新政権の別の断面も見えてくる。
クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは4日付けのリポート「新政権を不安定化させる3つのリスク要因」で、財政再建路線には危うさがつきまとうと指摘する。新政権は消費税の早期増税を排除しないスタンスを明確にする可能性があるが、それは同時に「より大きな政府を志向する」というメッセージにほかならない。だが、こうした路線が国民からの理解を得られるかどうかは不透明なうえ、高所得者優遇の性格がある消費税増税に賛成する層と、民主党の支持基盤には大きなギャップがある。このため、「新政権による消費税早期増税論には政情不安定化のリスクが内包されていると考えるべきであろう」としている。
「円安」と「金融緩和」も一筋縄ではいかない恐れがある。第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは4日付けのリポート「菅直人首相の経済政策見通し~問われる財政再建の本気度合い~」で、「菅首相の志向として円安という考えはあるのかもしれないが、そのファクターが相場形成で大きな支配力を持っている訳ではない」とクギをさす。実際、菅氏による1月7日の「円安」発言のあと、円相場は一時1ドル=93円台まで下落したが、持続性はなかったという。また、菅氏が推進する意見を持っているとされるインフレターゲットについても、「当面は、日銀に対して次々にアイデアを出させるためのたたき台」として利用する可能性があるものの、「先行き原油高騰などが進み、コストプッシュ・インフレの現実味が高まる」ような状況になれば、柔軟に路線を変更すると熊野氏は予想する。
そもそも、足元の政治状況をかんがみると、菅氏が政策にじっくり取り組む余裕があるかどうもかも不透明。日興コーディアル証券の末沢豪謙チーフストラテジストは4日付けの「菅政権誕生へ、短命政権に打ち止めを」で、「7月11日に参院選投開票、8月末が米軍普天間飛行場移設詳細決定期限、9月には民主党代表選と新首相が乗り越えなければならないハードルは多い」と指摘する。当面の政治的な課題は「ひとまず参議院選挙を勝ち抜いて、政権基盤をしっかり強化できるかどうか」(熊野氏)。そこを乗り越えた場合でも、民主党内には「構造改革と対米外交」、「社会安定と多方面外交」と重視する政策が異なる2つのグループが存在するため、最大公約数的な政権運営を続けない限り、「政権の安定性を維持することはかなり困難になる」(白川氏)懸念がある。
7月の参院選後には連立政権が新たな形となる可能性も浮上している。モルガン・スタンレーMUFG証券のロバート・フェルドマン経済調査部長は3日に「参院選予測:政策転換は期待薄くも可能性あり」というリポートを配布した。7月の参院選での民主党の獲得議席は93~107と現在の116議席を下回り、国民新党も議席を減らす可能性があると分析。さらに、衆議院の連立議席は313と参議院で否決された法案を再議決して成立させるには不十分で連立組み替えの必要性が生じる。フェルドマン氏は最も可能性が高いのが「民主党+公明党+新党改革(民公改)」で、「政治的なハードルを乗り越えれば、民主党+みんなの党(民みな)の連立もあり得る」と予想する。政策面では「民公改」の場合、さほど大きな変化はなさそうだが、「民みな」なら「政策は市場寄りの生産性向上策に大きく振れ、日銀に対して積極的な金融緩和を促す圧力が高まる可能性がある」としている。
【東京新聞社説】
漫画性描写規制 仕切り直して論議を
どぎつい子どもの性描写がある漫画などの販売を規制する東京都青少年健全育成条例改正案をめぐり、都議会での賛否が割れている。「表現の自由」を守りつつ規制できるよう知恵を絞り直せ。
子ども相手の強姦(ごうかん)や近親相姦といった性的な暴力や虐待が、社会的に許されるかのように描いた漫画やアニメ、ゲームソフトは子どもの目に触れないよう遠ざけておきたい。そんな親心をくんだのが都側の改正案だ。
過激な性描写の悪影響から子どもを守りたいのは市民共通の思いだが、最大限尊重されるべき表現の自由が侵されかねない方法では理解は得られまい。「創作活動を萎縮(いしゅく)させる」と漫画家や出版業界が反発するのもうなずける。
改正案の趣旨はこうだ。服装や所持品、学年、背景などから十八歳未満と分かるキャラクターの性行為を「みだりに性的対象として肯定的に描写し、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害する」作品は、成人コーナーに並べて子どもに販売しないよう事業者に自主規制を求める。
さらに「強姦など著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写した」作品が一般の書棚に並んでいれば、都は「不健全図書」に指定して成人コーナーに移動させ、子どもへの販売を禁じるという。
異論が噴出したのは、読み手の主観に左右されがちな性描写そのものをベースに販売規制の網を掛けようとする仕組みだからだ。
登場人物の年齢をどう見分けるのか。容姿やせりふ、場面はどのようにでも描くことができる。作品を読んだ未熟な子どもが行為をまねたり、性意識がゆがめられたりする恐れがあると都側は強調するが、その科学的根拠はない。
「みだりに」「肯定的に」「健全な判断能力」「著しく社会規範に反する」など条文にはあいまいな文言が目立ち、恣意(しい)的な運用も懸念される。
都側はそんな表現規制を安易に持ち出す前に、既に定着している不健全図書指定制度で対応すれば足りよう。子どもの性的感情を刺激したり、残虐性を助長したり、自殺や犯罪を誘発する作品はとうに規制対象なのだから。
ただ、漫画家や出版業界も表現の自由を享受するためにこそ、商業主義を排して都側と議論を深めてほしい。身の回りにあふれる性描写について、大人が学校や家庭、地域で子どもとコミュニケーションを図り、耐性を養う環境づくりも大切だろう。
【産経主張】菅新首相 国の針路正し危機打開を ばらまき政権公約を撤回せよ
第94代首相に指名された菅直人氏には国家の針路を正し、国難を打開することを強く求めたい。
8カ月余りで崩壊した鳩山政権は迷走を続け、国益を大きく損なった。国民は民主党政治は信頼に値しないと突き放した。
副総理・財務相として内閣に参画していた菅氏は、こうした危機に手をこまねいていたのではなかったか。所管外とはいえ米軍普天間飛行場移設問題に関与しようとしなかったのは、待ちの姿勢と批判されても仕方ない。
これからは国家と国民の平和と繁栄に関する最高の責務を負うこととなる。「この国を立て直すのが第一の仕事」と語ったように国政への信頼を取り戻すことに全力を挙げなくてはならない。
◆小沢氏は完全退場を
菅氏は官房長官に仙谷由人国家戦略担当相、幹事長に枝野幸男行政刷新担当相を充てる方向で調整している。打破すべきは小沢一郎幹事長への権力集中に伴って続いてきた独裁的な党運営である。小沢氏と距離を置いていた人材を内閣と党の中枢に据え、小沢氏の影響力を排除することは当然である。
小沢氏は政治とカネをめぐる問題で国民の信を失ってしまったことを潔く認め、鳩山由紀夫首相を見習って、政界からの引退を決断すべきである。
菅氏は党の政策調査会復活も掲げた。政調会長を閣僚として処遇したいとも述べた。二重権力と呼ばれた政策決定システムを刷新する姿勢を貫いてもらいたい。
国を立て直す最重要課題の一つが、鳩山政権によって破綻(はたん)寸前まで悪化した財政の再建にあることは明らかだ。ユーロ不安で政府債務の信用リスクが問われている中、債務残高の対GDP(国内総生産)比が181%と先進国で突出している日本は、常に経済崩壊に直結する金利急騰リスクにさらされているからである。
菅氏も財政再建に意欲を示した。だが、問題は今月中に策定する財政健全化目標でどこまで具体的道筋を示せるかだ。そのカギを握るのは消費税である。
消費税率見直しの4年間凍結を主張していた鳩山首相は退陣した。議論はしやすくなるが、参院選を控えて与党内に反対論が根強いうえ、菅氏自身が引き上げの必要性を表明するだけでその時期や幅に言及していない。
財政健全化目標は基礎的財政収支の赤字削減にしろ債務残高対GDP比圧縮にしろ、中期と長期の目標数値を示さねばならない。その目標実行の担保として、消費税を中心とした増税の具体的スケジュールは不可欠なのだ。
増税したとしても医療・介護など成長分野に支出し、税収増によって財政を再建するという菅氏のバラ色の手法も疑問が残る。その効果が上がるまで財政破綻は待ってくれないし、机上の計算が一つ狂えば目も当てられまい。
まず、ばらまき政権公約を撤回し、増税を堅実な財政健全化につなげる。それが成長の阻害要因を取り除く最大の政策である。菅氏は鳩山政権で国家戦略担当相、財務相として成長戦略の迷走と財政悪化に深くかかわった責任をもっと自覚せねばならない。
◆郵政法案合意は問題
菅氏は国民新党との連立継続を決めたが、郵政民営化に逆行する郵政法案について「速やかな成立を期す」と確認したことは問題だ。首相として最初の政策判断が問題の法案にゴーサインを出すものでは、政治の方向性が変わらないことを印象づけるだけだ。
亀井静香郵政改革・金融相との協議では、社民党も入った昨年9月の3党合意を引き継ぐことも確認した。連立離脱した社民党に引き続き政権への協力を求める布石だろう。
だが、連立離脱の原因となった普天間問題で社民党が辺野古移設に同意することはあり得まい。安全保障政策の明確な不一致が残っているのになぜ連携なのか。「選挙至上主義」は残念だ。
それより、日米合意に沿って8月末までに代替施設の位置や工法を確定する作業に全力を挙げるべきだ。沖縄の強い反対の中で難しい作業だが、米国との約束を果たし同盟を堅持せねばならない。
不安材料は、北朝鮮による拉致問題への対応だ。拉致実行犯である辛光洙(シン・ガンス)容疑者らの釈放嘆願書に菅氏が署名したことがあるからだ。個別名まで確認する余裕はなかったなどと釈明しているが、明確に謝罪すべきだ。対北制裁問題で毅然(きぜん)とした姿勢を示すかどうか注視したい。
ゲーム業界にとって最大のイベント「E3」(Electronic Entertainment Expo)の開幕が迫っている。今年はロサンゼルスで6月15-17日の日程で行われる予定だ。毎年9月ごろに開催される東京ゲームショウに独自イベントの兼ね合いもあって不参加の任天堂 も、E3には出展するため、注目度は高い。
今年のE3の目玉のひとつは、任天堂の次世代携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS(仮称)」だろう。同社は6月19日より、DSシリーズの値下げを行う。「E3」で次世代機のお披露目を終えたあとということで、買い控えを懸念してのものだが、次世代機への自信の高さもうかがえよう。
「3DS」はすでに業界初の「3D対応の携帯ゲーム機」として話題を集めているが、エース経済研究所の安田秀樹アナリストは「機器メーカーなど周辺取材をしているが、情報統制が過去の任天堂ゲーム機の例にないほど厳しい。3D以上に大掛かりなサプライズが残されているとみるのが適当だろう」とする。
04年に「ニンテンドーDS」を発表したときも、「2画面の携帯ゲーム機」との開示にとどめていたものを、04年E3でタッチパネルなどの詳細を公表した経緯がある。もともとE3はサプライズ発表の場でもあり、任天堂が何かしらの用意をしているとみるのは自然だ。
任天堂については携帯ゲーム機の「3D対応」などわずかな情報が提供されているだけで、「世界的なビッグタイトルを開発中」とのうわさがあるほかは目立った情報が出ていない。ただ、任天堂の据え置き型ゲーム機「Wii」に注目してみると、販売台数は10年3月期で世界累計販売台数は7000万台を超えたものの、前期比20%減の2053万台で、10年3月末の時点で世界累計販売台数が1億台を突破した「DS」シリーズの同13%減の2711万台と比較しても、伸びの鈍化が目立っている。
また、売上高からみると、携帯型が同10%減の3808億円に対し、据え置き型は同38%減の3784億円と大幅に減少。昨年9月にスリム型を発売したソニーの「プレイステーション3」に対抗するための不本意ともいえる値下げが響いた。今後の販売台数に懸念が残るうえ、売上高も大幅に縮小していることから、企業としても顧客としてもテコ入れが望まれる。これまで据え置き機ではマイナーチェンジをしてこなかった同社だけに、据え置き機の新たな情報も期待したいところだ。
ソニー、E3で「PSP2」の発表を取りやめか?11年以降発売か 「期待に水を差す結果のシナリオ」も
根強くうわさされるのがソニーも携帯機「PSP(プレイステーション・ポータブル)」の新型を発表して対抗するというもの。しかし、ここにきて業界では「今年のE3での発表は取りやめたようだ」との声が聞かれている。いわゆる「PSP2」は、もともとE3で何らかの発表を行う予定だったものの、水面下で発売シーズンを11年以降にする形で先送りしたために今回のE3での発表スケジュールからは外れた、という見方だ。ソニーからの正式なアナウンスはないためうわさの域を出ないが、期待に水を差す結果が待ち受けているシナリオも事前に想定しておきたい。
一方、日本で苦戦しながらも、グローバル市場では任天堂に次ぐシェアを持つマイクロソフトの「XBox360」では、「NATAL」(ナタル)に対応するラインアップを発表する予定だ。任天堂の「Wii」がリモコン型のモーションコントローラーでシェアトップの座を奪回してから、各社とも直感でゲーム操作を行うインターフェースに注力しているが、昨年のE3で公開されている「NATAL」は、ユーザーの体の動きを認識してゲーム操作を可能にするもので、操作するコントローラーのようなものは存在しない。新たな突破口となりうるか注目だ。
ただ、世界的にみてコンピューターゲーム市場は規模が縮小傾向にある。こうしたなか、各ゲーム会社がシフトしつつある携帯ゲーム機の分野では、「iPhone」など米アップル社の携帯端末が登場し、ハードメーカーの任天堂や、ソニー、マイクロソフトにとって、視界は良好といえないだろう。国内外を問わず、ゲームソフトメーカーも、「iPhone」や「iPad」への参入に前向きで、勢力図にも変化が訪れる可能性が高い。
DeNA、PC向けソーシャルゲームポータル「Yahoo!モバゲー」は10月スタート!
「モバゲータウン」を運営している株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は、品川インターシティにて、ソーシャルゲームデベロッパーを対象にしたプライベートフォーラム「モバゲーオープンプラットフォームForum2010」を開催した。
DeNAの代表取締役社長兼CEOの南場智子氏や、ヤフー株式会社の代表取締役社長井上雅博氏らが登壇し、ヤフーとDeNAが提携して展開するPC向けのソーシャルゲーム専門新プラットフォーム「Yahoo!モバゲー」の概要や、DeNAの今後の事業展開などを紹介した。会場には、多くのデベロッパーが参加し、会場の両脇にずらりと立ち見が出るほどの盛況だった。
「オープン化して4カ月、ユーザーさんはオープン化の前よりもハッピーになった」とDeNA代表取締役社長兼CEOの南場智子氏は笑顔で報告した。これまで携帯ゲームのポータルサイト「モバゲータウン」を中心に事業を拡大してきたDeNAは、2010年に「モバゲーAPI」をオープン化してソーシャルゲームへ舵を切った。フォーラムの冒頭、南場氏は、オープン化の結果が予想以上だと語った。
オープン化以来、「モバコイン」というモバゲータウンのゲームマネーは急激な伸びで拡大しており、月の売り上げが1億円を超える企業が複数現われている。今回のフォーラムでは、さらなる展開として「X-device(クロスデバイス)」、「X-border(クロスボーダー)」という2つの戦略が提示された。「携帯を超える」と南場氏が言うこのキーワードは、携帯、スマートフォン、PC、タブレットなど、複数のデバイスでユーザが楽しめるようなゲームのシームレス化を目指すというもの。IDを共有したり、APIやライブラリを整備していくことで、多言語にも対応した世界規模の市場に日本のポジションを築いていくという壮大な構想だ。
日本において戦略の目玉となるのは、今年の4月に発表された「Yahoo!モバゲー」だ。「これまで日本でだけ、なぜPC向けのソーシャルゲームが携帯向けほど拡大していないのか? それはヤフーとモバゲーが組んでいなかったからです」と南場氏は語る。
世界市場では5月にiPhone/iPad向けのゲームポータルサイト「Mini Nation」をスタートして、日本で人気の携帯向けソーシャルゲーム「怪盗ロワイヤル」の海外版「Bandit Nation」などをサービスしている。他にも3Dアバターなど、モバゲーで人気のある要素をiPhone向けに最適化して提供している。日本でPCの市場形成を目指すのとは逆に、世界では、英語圏のスマートフォンや中国の携帯市場など、これから拡大が予想されるなモバイル市場へ勝負を挑んでいく。
■ 「Yahoo!モバゲー」と「モバゲータウン」が連動した形で遊べるゲームを提供
「Yahoo!モバゲーは略すとヤバゲーになるため、ずっと(仮)がついていましたが、もう諦めました。この名前で皆さんに親しんでいただきたい(笑)」と語ったのは、ヤフー株式会社代表取締役社長の井上雅博氏。井上氏は、「Yahoo!モバゲー」でソーシャルゲームに参入する意気込みと意義をヤフーの側から説明した。
現在、世界のソーシャルゲーム市場は4,000億円ほどに成長しており、今後も高い成長が見込まれている。だが、そのなかでモバイルの占めるシェアは、アメリカでは8%、イギリスでは12%にすぎない。中国でも1億人いるというソーシャルゲームユーザーの大半はPCのユーザーが占めている。しかし日本では、ソーシャルゲームはイコール携帯ゲームというほどにモバイルが主流だ。
井上氏は、日本にも潜在的にはPCのソーシャルゲーム市場があるのではないかと言う。携帯のソーシャルゲームは10代から20代の若者がメインユーザーだが、海外ではソーシャルゲームのユーザーは30代から40代と少し年齢層が高い。年齢層が高いと、それだけ1人当たりが使う金額は大きくなるので、日本でもPCのソーシャルゲームのプラットフォームが作れたら、マーケットとして期待が持てるのではないかというのが、今回ヤフーが提携を進めた理由だ。ヤフーとしては、日本におけるPC向けソーシャルゲームの中核を担うプラットフォームになりたいという野望もある。
サービスが始まると、「Yahoo! JAPAN」のTOPページや「Yahoo!メール」、「Yahoo!メッセンジャー」、「Yahoo!ゲーム」にソーシャルゲームのアクティビティやフィードが表示されるようになる。また、ローンチ時期に合わせて、TVCMも含めた総額10億円規模のプロモーションを行なう予定だ。
DeNAの守安氏は「ソーシャルゲーム市場の成長は予想以上」と言う。1年前にオープン化を決めた頃には、3年程度で1,000億円規模の市場になるだろうと想定していた。しかし、その目標は2010年度中には越えていきそうだ、と守安氏。「スマートフォンやPCのユーザーをきっちりと取りこめていけば、普通に見積もって2,000億円、うまくいけば3,000億円というマーケットができるのではないか」と予想している。2009年度の、家庭用ゲームのソフトウェアのみの市場が約3,200億円なので、「2、3年後には家庭用ゲームとソーシャルゲームの市場規模が同じくらいになっているのではないか」と語った。
だた、ソーシャルゲーム市場を拡大してくためには、その地盤となるコミュニティの成長が重要だ。「単純にトラフィックをぶつければ成長できるという簡単なものではなく、いかにユーザーのニーズにあったコミュニティを提供できるかが重要」と守安氏。そのためには、すでに出来上がっている「モバゲータウン」のコミュニティと、「Yahoo!モバゲー」のコミュニティを連動したゲームを提供して欲しい、と参加したデベロッパーに訴えた。モバゲーの3Dアバターを使った、PC向けのソーシャルゲームもすでに複数のタイトルが開発をスタートさせているらしい。
富士フイルム、デジカメ開発集約 携帯用部品参入
富士フイルムはデジタルカメラの開発部門を再編する。宮城県にあるデジカメ本体の開発・購買部門を7月に、レンズ開発拠点を置くさいたま市に移転する。デジカメの中核部品である光学レンズの開発と、画像センサー開発や本体設計を密接に連携させる体制を整え、製品の競争力強化につなげる。開発機能の一体化などを契機に、携帯電話用カメラモジュール(複合部品)事業にも参入する。
現在、レンズの開発・生産は全額出資子会社のフジノン(さいたま市)が担い、デジカメ本体の製品開発、購買、品質保証の本拠は宮城県大和町にある。既にフジノンを7月1日付で本体に統合することを決めており、同時にデジカメの開発機能を集約する。レンズ設計にデジカメ開発部門が深く関与するなど、技術者間の連携を深め、開発効率を向上させる。
中国銀聯カード決済使わないで!米ビザ要請
【北京=幸内康】クレジットカード世界最大手の米ビザが、中国のカード決済機関「中国銀聯」との提携カードについて、8月以降、中国国外では銀聯の決済システムを使わないよう加盟金融機関に要請した。
欧米や中国のメディアが4日までに報じた。
カード利用の際にビザが1~2%の外国為替手数料を取るのに対し銀聯は無料なため、利用者は銀聯で決済する傾向にある。ビザの異例ともいえる要請は拡大する銀聯に収益基盤を脅かされかねないとの危機感があると見られる。
銀聯は中国人民銀行(中央銀行)の傘下にあり、中国国内のカード決済業務を独占している。銀聯は海外進出にも積極的で、約90か国・地域以上に独自ネットワークを拡大している。
英が高速鉄道計画見直し、日立への発注白紙か
【ロンドン=是枝智】英国内で幹線鉄道の旧式車両を高速鉄道車両に切り替える政府の計画について、ハモンド英運輸相が白紙に戻す可能性が高まっていると、4日付の英紙フィナンシャル・タイムズが報じた。
その場合、優先交渉権を得ていた日立製作所などの企業連合への発注はキャンセルされる見通しだ。受注総額は75億ポンド(約1兆円)にのぼる大型事業だけに、日立には打撃となりそうだ。
高速鉄道計画では、日立連合が最大1400両の車両の販売と、20~30年間の保守業務を担う予定だった。しかし、景気低迷などを受けて今年2月、前政権が計画の見直しを表明していた。新政権は3日に別の新型車両導入計画の凍結を決めており、日立が関与する計画も影響は避けられない見通しだという。
アナリストが読む菅政権の隠れたリスク
菅直人氏が衆参両院の指名を受け、第94代首相に就任する運びとなった。市場では菅新首相のこれまでの言動などから、「財政再建」「円安」「金融緩和」が新たな経済政策のキーワードになるとの見方が多い。だが、有力エコノミストらが今週に入って出した関連リポートからは、新政権の別の断面も見えてくる。
クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは4日付けのリポート「新政権を不安定化させる3つのリスク要因」で、財政再建路線には危うさがつきまとうと指摘する。新政権は消費税の早期増税を排除しないスタンスを明確にする可能性があるが、それは同時に「より大きな政府を志向する」というメッセージにほかならない。だが、こうした路線が国民からの理解を得られるかどうかは不透明なうえ、高所得者優遇の性格がある消費税増税に賛成する層と、民主党の支持基盤には大きなギャップがある。このため、「新政権による消費税早期増税論には政情不安定化のリスクが内包されていると考えるべきであろう」としている。
「円安」と「金融緩和」も一筋縄ではいかない恐れがある。第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは4日付けのリポート「菅直人首相の経済政策見通し~問われる財政再建の本気度合い~」で、「菅首相の志向として円安という考えはあるのかもしれないが、そのファクターが相場形成で大きな支配力を持っている訳ではない」とクギをさす。実際、菅氏による1月7日の「円安」発言のあと、円相場は一時1ドル=93円台まで下落したが、持続性はなかったという。また、菅氏が推進する意見を持っているとされるインフレターゲットについても、「当面は、日銀に対して次々にアイデアを出させるためのたたき台」として利用する可能性があるものの、「先行き原油高騰などが進み、コストプッシュ・インフレの現実味が高まる」ような状況になれば、柔軟に路線を変更すると熊野氏は予想する。
そもそも、足元の政治状況をかんがみると、菅氏が政策にじっくり取り組む余裕があるかどうもかも不透明。日興コーディアル証券の末沢豪謙チーフストラテジストは4日付けの「菅政権誕生へ、短命政権に打ち止めを」で、「7月11日に参院選投開票、8月末が米軍普天間飛行場移設詳細決定期限、9月には民主党代表選と新首相が乗り越えなければならないハードルは多い」と指摘する。当面の政治的な課題は「ひとまず参議院選挙を勝ち抜いて、政権基盤をしっかり強化できるかどうか」(熊野氏)。そこを乗り越えた場合でも、民主党内には「構造改革と対米外交」、「社会安定と多方面外交」と重視する政策が異なる2つのグループが存在するため、最大公約数的な政権運営を続けない限り、「政権の安定性を維持することはかなり困難になる」(白川氏)懸念がある。
7月の参院選後には連立政権が新たな形となる可能性も浮上している。モルガン・スタンレーMUFG証券のロバート・フェルドマン経済調査部長は3日に「参院選予測:政策転換は期待薄くも可能性あり」というリポートを配布した。7月の参院選での民主党の獲得議席は93~107と現在の116議席を下回り、国民新党も議席を減らす可能性があると分析。さらに、衆議院の連立議席は313と参議院で否決された法案を再議決して成立させるには不十分で連立組み替えの必要性が生じる。フェルドマン氏は最も可能性が高いのが「民主党+公明党+新党改革(民公改)」で、「政治的なハードルを乗り越えれば、民主党+みんなの党(民みな)の連立もあり得る」と予想する。政策面では「民公改」の場合、さほど大きな変化はなさそうだが、「民みな」なら「政策は市場寄りの生産性向上策に大きく振れ、日銀に対して積極的な金融緩和を促す圧力が高まる可能性がある」としている。
【東京新聞社説】
漫画性描写規制 仕切り直して論議を
どぎつい子どもの性描写がある漫画などの販売を規制する東京都青少年健全育成条例改正案をめぐり、都議会での賛否が割れている。「表現の自由」を守りつつ規制できるよう知恵を絞り直せ。
子ども相手の強姦(ごうかん)や近親相姦といった性的な暴力や虐待が、社会的に許されるかのように描いた漫画やアニメ、ゲームソフトは子どもの目に触れないよう遠ざけておきたい。そんな親心をくんだのが都側の改正案だ。
過激な性描写の悪影響から子どもを守りたいのは市民共通の思いだが、最大限尊重されるべき表現の自由が侵されかねない方法では理解は得られまい。「創作活動を萎縮(いしゅく)させる」と漫画家や出版業界が反発するのもうなずける。
改正案の趣旨はこうだ。服装や所持品、学年、背景などから十八歳未満と分かるキャラクターの性行為を「みだりに性的対象として肯定的に描写し、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害する」作品は、成人コーナーに並べて子どもに販売しないよう事業者に自主規制を求める。
さらに「強姦など著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写した」作品が一般の書棚に並んでいれば、都は「不健全図書」に指定して成人コーナーに移動させ、子どもへの販売を禁じるという。
異論が噴出したのは、読み手の主観に左右されがちな性描写そのものをベースに販売規制の網を掛けようとする仕組みだからだ。
登場人物の年齢をどう見分けるのか。容姿やせりふ、場面はどのようにでも描くことができる。作品を読んだ未熟な子どもが行為をまねたり、性意識がゆがめられたりする恐れがあると都側は強調するが、その科学的根拠はない。
「みだりに」「肯定的に」「健全な判断能力」「著しく社会規範に反する」など条文にはあいまいな文言が目立ち、恣意(しい)的な運用も懸念される。
都側はそんな表現規制を安易に持ち出す前に、既に定着している不健全図書指定制度で対応すれば足りよう。子どもの性的感情を刺激したり、残虐性を助長したり、自殺や犯罪を誘発する作品はとうに規制対象なのだから。
ただ、漫画家や出版業界も表現の自由を享受するためにこそ、商業主義を排して都側と議論を深めてほしい。身の回りにあふれる性描写について、大人が学校や家庭、地域で子どもとコミュニケーションを図り、耐性を養う環境づくりも大切だろう。
【産経主張】菅新首相 国の針路正し危機打開を ばらまき政権公約を撤回せよ
第94代首相に指名された菅直人氏には国家の針路を正し、国難を打開することを強く求めたい。
8カ月余りで崩壊した鳩山政権は迷走を続け、国益を大きく損なった。国民は民主党政治は信頼に値しないと突き放した。
副総理・財務相として内閣に参画していた菅氏は、こうした危機に手をこまねいていたのではなかったか。所管外とはいえ米軍普天間飛行場移設問題に関与しようとしなかったのは、待ちの姿勢と批判されても仕方ない。
これからは国家と国民の平和と繁栄に関する最高の責務を負うこととなる。「この国を立て直すのが第一の仕事」と語ったように国政への信頼を取り戻すことに全力を挙げなくてはならない。
◆小沢氏は完全退場を
菅氏は官房長官に仙谷由人国家戦略担当相、幹事長に枝野幸男行政刷新担当相を充てる方向で調整している。打破すべきは小沢一郎幹事長への権力集中に伴って続いてきた独裁的な党運営である。小沢氏と距離を置いていた人材を内閣と党の中枢に据え、小沢氏の影響力を排除することは当然である。
小沢氏は政治とカネをめぐる問題で国民の信を失ってしまったことを潔く認め、鳩山由紀夫首相を見習って、政界からの引退を決断すべきである。
菅氏は党の政策調査会復活も掲げた。政調会長を閣僚として処遇したいとも述べた。二重権力と呼ばれた政策決定システムを刷新する姿勢を貫いてもらいたい。
国を立て直す最重要課題の一つが、鳩山政権によって破綻(はたん)寸前まで悪化した財政の再建にあることは明らかだ。ユーロ不安で政府債務の信用リスクが問われている中、債務残高の対GDP(国内総生産)比が181%と先進国で突出している日本は、常に経済崩壊に直結する金利急騰リスクにさらされているからである。
菅氏も財政再建に意欲を示した。だが、問題は今月中に策定する財政健全化目標でどこまで具体的道筋を示せるかだ。そのカギを握るのは消費税である。
消費税率見直しの4年間凍結を主張していた鳩山首相は退陣した。議論はしやすくなるが、参院選を控えて与党内に反対論が根強いうえ、菅氏自身が引き上げの必要性を表明するだけでその時期や幅に言及していない。
財政健全化目標は基礎的財政収支の赤字削減にしろ債務残高対GDP比圧縮にしろ、中期と長期の目標数値を示さねばならない。その目標実行の担保として、消費税を中心とした増税の具体的スケジュールは不可欠なのだ。
増税したとしても医療・介護など成長分野に支出し、税収増によって財政を再建するという菅氏のバラ色の手法も疑問が残る。その効果が上がるまで財政破綻は待ってくれないし、机上の計算が一つ狂えば目も当てられまい。
まず、ばらまき政権公約を撤回し、増税を堅実な財政健全化につなげる。それが成長の阻害要因を取り除く最大の政策である。菅氏は鳩山政権で国家戦略担当相、財務相として成長戦略の迷走と財政悪化に深くかかわった責任をもっと自覚せねばならない。
◆郵政法案合意は問題
菅氏は国民新党との連立継続を決めたが、郵政民営化に逆行する郵政法案について「速やかな成立を期す」と確認したことは問題だ。首相として最初の政策判断が問題の法案にゴーサインを出すものでは、政治の方向性が変わらないことを印象づけるだけだ。
亀井静香郵政改革・金融相との協議では、社民党も入った昨年9月の3党合意を引き継ぐことも確認した。連立離脱した社民党に引き続き政権への協力を求める布石だろう。
だが、連立離脱の原因となった普天間問題で社民党が辺野古移設に同意することはあり得まい。安全保障政策の明確な不一致が残っているのになぜ連携なのか。「選挙至上主義」は残念だ。
それより、日米合意に沿って8月末までに代替施設の位置や工法を確定する作業に全力を挙げるべきだ。沖縄の強い反対の中で難しい作業だが、米国との約束を果たし同盟を堅持せねばならない。
不安材料は、北朝鮮による拉致問題への対応だ。拉致実行犯である辛光洙(シン・ガンス)容疑者らの釈放嘆願書に菅氏が署名したことがあるからだ。個別名まで確認する余裕はなかったなどと釈明しているが、明確に謝罪すべきだ。対北制裁問題で毅然(きぜん)とした姿勢を示すかどうか注視したい。
ドコモ・フジテレビ陣営 総務省に携帯向け次世代放送の全国展開計画書を提出
NTTドコモやフジテレビジョン、ニッポン放送など国内10社が出資するマルチメディア放送(mmbi、東京都千代田区)は4日、総務省に対し、2011年度にも始まる「携帯端末向けマルチメディア放送」について、全国向けの放送インフラを展開する事業計画書を提出したと発表した。
週明け7日には“対抗馬”となるKDDI陣営も事業計画書を総務省に提出する見通しで、携帯国内大手2陣営による免許争奪戦が本格化する。総務省はこの放送インフラ事業者を7月にも1陣営に絞り込む方針。
ドコモ陣営のmmbiは、現在のワンセグを発展させた国産技術「ISDB-Tmm」方式により、次世代の放送・通信サービスを実現するとしている。
mmbiはドコモに加え、フジテレビ、ニッポン放送、日本テレビなど放送6社、総合商社2社や電通の計10社が出資。ドコモ陣営が描くサービス概要は、放送電波で放送番組や電子書籍などを自動的に携帯電話などの端末にデータを蓄積し、月額数百円程度で楽しめるようにする。1週間にニュースや音楽ライブなど300種類のコンテンツ(情報の内容)を配信する方針だ。
一方、KDDI陣営は、米クアルコムとともに米国で商用サービスが始まっている「メディアフロー」方式による事業化を目指す動きをみせている。
AT&TがiPhoneのパケット定額廃止、日本は大丈夫? 「悩ましい問題」とソフトバンク孫社長
米国でiPhoneを独占販売するキャリア・AT&Tが、iPhoneのパケット定額制廃止を発表したことを受け、「日本のiPhoneのパケット定額はどうなる?」とユーザーの間で不安が広がっている。
ソフトバンクモバイルの孫正義社長のTwitterにも、「ソフトバンクはそんなことない(パケット定額をやめない)ですよね?」といった不安の声が殺到。孫社長は「悩ましい問題」と答えるにとどめた。
AT&Tは6月7日からパケット通信の定額プランを廃止(既存ユーザーは定額制を継続可能)。基本料金である程度のデータ通信ができ、一定基準を超えると従量制料金に移行するプランに変更する。定額制ユーザーのパケット通信量の増大を受けた措置とみられる。
この報道を受け、孫社長のTwitterには「日本は追随しませんよね?」「ソフトバンクはそんなことないですよね?」といった不安の声が殺到。孫社長は3日夜、「悩ましい問題。(パケット通信量の増大は)世界中の携帯事業会社の経営者の悩みです」と回答し、パケット定額の存廃については明言を避けた。
「割れ厨みたいなトラフィック占拠野郎は規制すべきだと思うが、一般人は定額制を維持してほしい」という意見に対しても、「2%のユーザーが全体の50%くらいの通信容量を占拠しています」と答えている。
ソフトバンクモバイル広報部に4日、パケット定額制の廃止の具体的な計画があるか聞いてみたとろ、「ない」という回答だった。
同社は昨年12月から、パケット通信料が極端に多いごく一部のユーザーに対して通信速度の制限を行っており、NTTドコモやKDDI(au)も同様な措置を採っている(各キャリアが実施する、パケット通信の速度制限)。
「mixiフォト」の写真投稿枚数、1日で150万枚
ミクシィは4日、SNS「mixi」において提供を開始したソーシャルフォトコミュニケーションサービス「mixiフォト」の写真投稿枚数が、同サービスの提供開始から1日で150万枚を超えたと発表した。
「mixiフォト」は、投稿した写真をマイミクシィらと共有できるサービス。従来の「フォトアルバム」機能に代わる新サービスとして、3日に提供開始が発表されたばかり。
「mixiフォト」の保存容量は無制限(ただし、月間アップロード容量は一部制限あり)。Flashベースのアップローダーやビューワー(「フォトビュー」モード)により、大量の写真を簡単に投稿したり、これまでよりも高解像度の写真を快適に閲覧できるようになっている。
マイクロソフトCEO「主役はパソコン」 アップルに反論
米マイクロソフト(MS)のスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)は3日、米ロサンゼルス郊外で開かれたIT(情報技術)関連のイベントに登壇し、「パソコンの形や技術が進歩し、定義が変わっても、汎用性の高いパソコンが人々の生活の中核を担い続ける」と強調した。
バルマーCEOは、競合する米アップルのスティーブ・ジョブズCEOが同じイベントで1日、「パソコン需要はいずれ減少する」と発言したことに反論。アップルが4月に投入し、人気を博している多機能携帯端末「iPad」について「パソコンの一種だ」とし、MSはパソコン用の基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」を軸に様々な機器を連携させる戦略で反撃するとした。
アップルのジョブズCEOは1日、「パソコンはトラックのようだ。(様々な荷物を運べるが)すべての人には必要ない」と指摘。車が様々な形に発展したように、パソコンも残るとしたうえで、「高機能携帯電話(スマートフォン)やiPadのような製品が主流となる」との考えを示した。
マック DS向けにポケモンの無料ゲームを配信
日本マクドナルドは4日、同社店舗内で実施している、携帯ゲーム「ニンテンドーDS」向けの無料コンテンツ(情報の中身)配信サービス「マックで DS」で、人気ゲーム「ポケモン」のゲーム配信サービスを18日~7月14日に行うと発表した。子供に人気のあるポケモンの無料ゲーム配信を通じ、家族連れの来店を促す狙いがある。
配信するのは、DS本体があれば楽しめるマックオリジナルゲーム「ポケモンえいがクイズ ゾロアークをさがせ!」。7月10日に映画「劇場版ポケットモンスターダイヤモンド・パール 幻影の覇者 ゾロアーク」が公開されるのに合わせてキャンペーンとして展開する。マックの店舗内に設置されたDSエリアでDSを立ち上げれば、配信を受けられるが、同エリア内でしかプレイできない。
配信ゲームを1回遊ぶごとに、ハンバーガーかオレンジジュース(Sサイズ)のどちらかの特別招待券を1日1回もれなく配信プレゼントする。期間内には何度でも利用可能で、子連れ客の来店頻度を高める考えという。
丸善 小城社長 電子書籍取り込み、収益確保
「電子書籍の影響について騒ぎ過ぎだ」。丸善の小城武彦社長は苦笑いする。音楽配信の拡大でCD販売店が減少したのと同様に、電子書籍が書店の経営を脅かすとの見方が多い。だが小城社長は「音楽再生に機器が必要なCDとは異なり、本はそれ自身を読むことができる商品だから、電子化の影響は小さい」とみる。
ただ、ここにきて書籍流通を効率的な仕組みに改めようと一部の書店などが動き始めたことについては「電子書籍の登場が業界を後押しした面がある」。利益率の低さなどが書店経営の課題となっているが、「電子書籍も取り込んで収益を確保していく」と話していた。
TAC、iPad向けに資格試験対策本を配信
資格学校運営のTACは、米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」に資格試験対策の電子書籍を配信するサービスを始めた。朝日出版社や中央経済社など4社と連携し、紙の書籍より安い料金で全8冊を閲覧できるようにした。
サービスはIT関連のセブンシーズ・テックワークス(東京・新宿)を通じて実施する。TACの「行政書士」や「宅地建物取引主任者」、中央経済社の「国際会計検定」用の対策本などを選んだ。
不況の影響で資格取得を目指す人は増えているという。
アパレルのオリゾンティが民事再生法申請 「インタープラネット」などのブランド
ファッションブランド「インタープラネット」などを持つアパレル会社のオリゾンティ(大阪市西区)と、その親会社であるTRIPホールディングス(東京都港区)が東京地裁に民事再生法の適用を申請したことが4日、分かった。帝国データバンクによると、負債額はオリゾンティ約84億円、TRIP約32億円。スポンサー候補企業として2グループが名乗りをあげており、2グループに対する事業譲渡を視野に再建を目指す方針。
オリゾンティはもともとワールドの一部門が分社化されて設立。2007年3月にTRIP傘下に入り、現在はTRIPの全額出資子会社となっている。自社ブランド「インタープラネット」や輸入ブランド「ヴィヴィアン・ウエストウッド」などのブランド名を冠した店舗を百貨店などに展開している。
ピーク時の99年3月期には約116億円の年間売上高があったが、消費不振や競争の激化などから2009年3月期には年売上高が約91億にまで落ち込んでいた。
【菅首相誕生】第94代首相に菅直人氏、組閣は8日、官房長官には仙谷氏、幹事長に枝野氏
民主党は4日の両院議員総会で、菅直人副総理・財務相(63)を新代表に選出した。菅氏は午後の衆参両院本会議で、退陣した鳩山由紀夫首相(党代表)の後継の第94代、61人目の首相に選出された。首相任命式と閣僚の認証式は8日になる。また、新内閣の官房長官には仙谷由人国家戦略担当相が内定。幹事長には枝野幸男行政刷新担当相を起用する方針を固めた。
衆院本会議での投票結果は、菅氏313票、谷垣禎一氏116票、山口那津男氏21票、志位和夫氏9票、福島瑞穂氏7票、渡辺喜美氏5票、平沼赳夫氏5票、舛添要一氏1票。党代表選で菅氏は291票を獲得、129票の樽床(たるとこ)伸二衆院環境委員長(50)を大差で下した。投票総数は422票(無効2票)。
菅氏は代表選後、国民新党の亀井静香代表と会談し、連立政権継続で合意。今国会で審議中の郵政改革法案について「速やかな成立を期す」とした。
財政再建、調整難航も…公約「消費税」明記焦点
民主党代表に選出された菅副総理・財務相は、財務相就任後、44・3兆円と過去最大にまで膨らんだ国債発行額の抑制を目指す財政再建を政策の柱として打ち出している。
代表就任により、民主党が最終調整している参院選公約に消費税の増税が明記される可能性が高まるが、小沢幹事長を中心に増税に否定的な議員が多く、党内調整が難航する可能性もある。
「リーマン・ショックで税収が大きく下がり、無駄の削減は思ったほどのスピードで実現できなかった」
菅氏は3日夜の記者会見で、政策の財源は行政の無駄削減で確保できるとした衆院選政権公約(マニフェスト)の見通しが甘かったことを認めた。
その上で、国債発行額の増大については、「無限に借金が増えるような方向性を正していけると思っている」と述べたことで、党内では「首相として、消費税を含む歳入改革に取り組む意欲を示した」(中堅)という受け止めが広がっている。
菅氏は元々、消費税増税に積極的なわけではなかったが、今年1月の財務相就任後、「ギリシャの財政危機への対応などで国際会議に出席するなど、実務経験を積む中で、財政再建や消費税への理解を深めた」(財務省幹部)とされる。
2月には「消費税論議は2011年度以降」としていた考えを事実上、軌道修正し、論議を前倒しすることを表明。5月に11年度の新規国債発行額を「44・3兆円」以下に抑え込む考えを打ち出した。国債発行を抑制すれば、子ども手当などマニフェストに掲げた政策をすべて実施するのは困難で、党内では選挙を控える参院側を中心に反発を招いた。
元々、財政再建派には仙谷国家戦略相や玄葉光一郎衆院財務金融委員長など、小沢氏と距離を置く議員が多く、今回の代表選での菅氏支持層とも重なっている。
これに対し、小沢氏は「第一に取り組むのは、無駄をやめる決断」との立場で、財政再建をめぐる考えの違いは「親小沢」対「反小沢」の党内対立につながるという見方もある。
民主党は参院選公約を週明けに最終決定する方針だ。参院選に向け、党内融和を優先して増税論を封印するか、マニフェストを修正して増税方針を示すか、難しい判断を迫られることになりそうだ。
株、「菅首相」で円高株安の修正余地探る 中国の動向気掛かり
4日午前の日経平均株価は節目の1万円まであと約38円に迫る場面があった。鳩山由紀夫首相の後継に菅直人副総理・財務相が就けば、金融・株式市場で「円高→株安」の流れが修正するとの期待感が引き続き強いためだ。ただ、日本株は外部環境に左右されやすいだけに、上値余地は米国や中国株の動向次第との声も聞かれた。
菅氏が民主党代表に選ばれた。菅氏はこれまで円安志向と受け止められる発言があったほか、日銀による一連の追加金融緩和策を働き掛けた経緯がある。市場では「マーケットとの温度差が小さい」(立花証券の平野憲一執行役員)との評価が大勢だ。
米商品先物取引委員会(CFTC)が公表する円(対ドル)の売買動向によると、投機筋(非商業部門)は昨年12月や今年3月に日銀が金融緩和に動いた局面などで敏感に円売り・ドル買いに動いている。菅首相が誕生すれば「少なくとも円を買いにくい雰囲気が強まる」(大手証券の情報担当者)とみられており、為替の水準訂正に伴う株高を期待する声が広がっている。
円相場は現在、1ドル=92円台、1ユーロ=113円前後で推移している。主力企業の想定レートをみるとそれぞれ90円、120円程度の企業が多い。一方、1円の変動による営業損益の感応度ではユーロよりもドルの方がはるかに大きい。例えばトヨタは1円の円高で営業損益の影響度が対ユーロで50億円、対ドルは300億円だ。「仮に円高・ユーロ安が続いても対ドルで円安傾向となれば為替要因による収益圧迫懸念は解消される」(平野氏)。日経平均は早晩、節目の1万円を回復し、25日移動平均(1万0218円、3日時点)をメドに戻りを試すとの指摘があった。
ただ、ユーロ安円高による業績懸念がひとまず薄れても外部要因への警戒感は続いている。気掛かりは世界経済のけん引役である中国だ。ユーロ安は主要通貨に対して進んでいるが、「中国は米国以上に欧州向けに輸出しており、その影響が懸念される」(いちよし投資顧問の秋野充成運用部長)。中国・上海株も調整機運が強い。消費者物価指数(CPI)の上昇率が政府の許容範囲を超えるとの観測があり、金融引き締め懸念は根強いという。「日経平均は5月下旬の安値からリバウンド局面にあることは事実だが、外部環境の霧がすべて晴れたわけではない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長)。株価の本格回復には不安材料を時間をかけて消化していく必要があるとの声は多い。
iPhone新モデルは“ハードル”を超えられるのか?(COLUMN)
Appleのスティーブ・ジョブズCEOは6月7日に次世代iPhoneを発表するとみられるが、この新型がアナリストや消費者をうならせるには、マルチメディアコンテンツと機能の新たな基準を打ち立てなければならない。
Appleの課題は、業界を変えるほどの革新を考え出すことかもしれない。iPhoneは既に、同社の主な利益成長エンジンになるほどの文句なしのヒット商品になっており、同社の株価は過去最高に達しているからだ。iPadが発売早々、多くの人から「既に新しい市場を作った」と言われるほど成功していることも、この課題を難しくしている。
好評を博しているGoogleのAndroid搭載端末との競争も高まっており、Appleはさらなるレベルの引き上げを迫られている。
「iPhone 4.0が登場すれば、Appleは優位を保てるだろう。それが昨年と同じくらいたやすいかと聞かれれば、答えはノーだ。Androidは大きく前進したと思う」とGartnerのアナリスト、カロリーナ・ミラネシ氏は語る。
昨年は、Research In Motion(RIM)がAppleの一番のライバルだった。RIMのスマートフォン「BlackBerry」は依然として多くの企業に選ばれているが、BlackBerryが対処してきたセキュリティの懸念がiPhoneでも取り除かれるに伴って、Appleは法人市場にも踏み込んでいる。
Appleによると、Fortune 100社のうち70%以上がiPhoneを導入しているか、試験的に使っている。
しかし、iPhoneの主なターゲットは――当面のところ――依然として消費者であり、この市場で、次第にHTC、Motorola、Samsung ElectronicsなどのメーカーのAndroid携帯と接戦を演じるようになっている。
長期的には、投資家はiPhoneが中国などの世界市場に広がることや、Appleの価格戦略、iPhoneがいつAT&T以外の米国キャリアから販売されるのかに注目している。
このところの忙しいスケジュールに続き、ジョブズ氏は7日にはAppleの開発者会議でステージに立つ。Wall Street Journalは、このイベントで第4世代iPhoneが正式に発表されると予想している。
新型iPhoneは従来よりも高速で、ストレージが拡大し、画質とバッテリー駆動時間が向上し、前面カメラが付く可能性が高い。どれもいい強化策だが、競争力を大きく増すものではない。
「スティーブ(ジョブズ氏)と一緒にクールなものがステージに登場するだろうが、結局、一般的な機能だということは分かっている」とBroadpoint AmTechのアナリスト、ブライアン・マーシャル氏は言う。
マルチタスクなど、iPhoneユーザーが長らく求めてきた機能も追加される。
増えるライバル
2007年に登場したiPhoneが現在のスマートフォン市場を作り上げたことは間違いないだろう。iPhoneが作り出した「型」――およそ4インチのタッチスクリーンで多数のアプリに手早くアクセスできる――はWeb対応携帯の標準になった。
だがその後、市場にはライバルも増えた。特にAndroid搭載のスタイリッシュなスマートフォンが台頭している。
「Androidは唯一の真の競争相手だ」とRodman & Renshawのアナリスト、アショク・クマー氏は語る。
「Nokiaの地位は弱体化し続けている。RIMはまだ消費者市場では勢力を伸ばせていない。Microsoftは結局、小さ過ぎ、遅過ぎるということになりそうだ」
モバイルOSではNokiaのSymbianが世界市場でトップであり、RIMがナンバー2となっているが、両者ともシェアが減少していると、Gartnerは報告している。
iPhoneの世界シェアは1~3月に急進し、15%を超えて3位になった。Androidは4位で、前年から大幅に伸びてシェア10%に近づいた。
ミラネシ氏は、iPhoneは世界各国、特に欧州で好調だが、アジアにはかなり成長の余地があるとしている。アジアは競争が激しく、スマートフォンが好まれるかは地域によって大きく異なる。
iPhoneは約90カ国で150社を超えるキャリアから販売されている。昨四半期のiPhoneの販売台数は875万台。同製品はAppleの売上高の40%を占め、利益率は約60%という。
ウォール街のアナリストの多くは、iPhoneが2011年までに、早ければ今秋にもVerizonからも販売されると予測している。Appleは7日のイベントではVerizonの件を発表しない見込みだ。
AT&Tはネットワーク品質に関してiPhoneユーザーから批判されているが、ジョブズ氏は今週、夏には改善されるだろうと語った。
AT&Tは2日、モバイルデータサービスの新規加入者には無制限プランを提供しないと発表した。これにより、ネットワークへの負荷が高いダウンロードを減らして、一部地域で通信速度を改善できるかもしれない。
Piper Jaffrayのアナリスト、クリストファー・ラーセン氏は、この発表がAppleのイベントの数日前だったのは偶然ではないと指摘する。この発表は、AT&TがiPhoneの独占販売契約を引き延ばす一助となるかもしれない。
Appleが高い利益率を誇っていることから、新型iPhoneおよび旧モデルの価格設定も注目されている。現在の最新モデルであるiPhone 3GSはAT&Tの販売奨励金付きで199ドルから。その前のモデルiPhone 3Gは99ドル。
多くの人は、7日の発表にサプライズはないのではないかと考えているが、Appleのことなので、それは誰にも分からない。うわさでは、WebベースのiTunesやApple TVの新版などが登場すると言われている。
NTTドコモやフジテレビジョン、ニッポン放送など国内10社が出資するマルチメディア放送(mmbi、東京都千代田区)は4日、総務省に対し、2011年度にも始まる「携帯端末向けマルチメディア放送」について、全国向けの放送インフラを展開する事業計画書を提出したと発表した。
週明け7日には“対抗馬”となるKDDI陣営も事業計画書を総務省に提出する見通しで、携帯国内大手2陣営による免許争奪戦が本格化する。総務省はこの放送インフラ事業者を7月にも1陣営に絞り込む方針。
ドコモ陣営のmmbiは、現在のワンセグを発展させた国産技術「ISDB-Tmm」方式により、次世代の放送・通信サービスを実現するとしている。
mmbiはドコモに加え、フジテレビ、ニッポン放送、日本テレビなど放送6社、総合商社2社や電通の計10社が出資。ドコモ陣営が描くサービス概要は、放送電波で放送番組や電子書籍などを自動的に携帯電話などの端末にデータを蓄積し、月額数百円程度で楽しめるようにする。1週間にニュースや音楽ライブなど300種類のコンテンツ(情報の内容)を配信する方針だ。
一方、KDDI陣営は、米クアルコムとともに米国で商用サービスが始まっている「メディアフロー」方式による事業化を目指す動きをみせている。
AT&TがiPhoneのパケット定額廃止、日本は大丈夫? 「悩ましい問題」とソフトバンク孫社長
米国でiPhoneを独占販売するキャリア・AT&Tが、iPhoneのパケット定額制廃止を発表したことを受け、「日本のiPhoneのパケット定額はどうなる?」とユーザーの間で不安が広がっている。
ソフトバンクモバイルの孫正義社長のTwitterにも、「ソフトバンクはそんなことない(パケット定額をやめない)ですよね?」といった不安の声が殺到。孫社長は「悩ましい問題」と答えるにとどめた。
AT&Tは6月7日からパケット通信の定額プランを廃止(既存ユーザーは定額制を継続可能)。基本料金である程度のデータ通信ができ、一定基準を超えると従量制料金に移行するプランに変更する。定額制ユーザーのパケット通信量の増大を受けた措置とみられる。
この報道を受け、孫社長のTwitterには「日本は追随しませんよね?」「ソフトバンクはそんなことないですよね?」といった不安の声が殺到。孫社長は3日夜、「悩ましい問題。(パケット通信量の増大は)世界中の携帯事業会社の経営者の悩みです」と回答し、パケット定額の存廃については明言を避けた。
「割れ厨みたいなトラフィック占拠野郎は規制すべきだと思うが、一般人は定額制を維持してほしい」という意見に対しても、「2%のユーザーが全体の50%くらいの通信容量を占拠しています」と答えている。
ソフトバンクモバイル広報部に4日、パケット定額制の廃止の具体的な計画があるか聞いてみたとろ、「ない」という回答だった。
同社は昨年12月から、パケット通信料が極端に多いごく一部のユーザーに対して通信速度の制限を行っており、NTTドコモやKDDI(au)も同様な措置を採っている(各キャリアが実施する、パケット通信の速度制限)。
「mixiフォト」の写真投稿枚数、1日で150万枚
ミクシィは4日、SNS「mixi」において提供を開始したソーシャルフォトコミュニケーションサービス「mixiフォト」の写真投稿枚数が、同サービスの提供開始から1日で150万枚を超えたと発表した。
「mixiフォト」は、投稿した写真をマイミクシィらと共有できるサービス。従来の「フォトアルバム」機能に代わる新サービスとして、3日に提供開始が発表されたばかり。
「mixiフォト」の保存容量は無制限(ただし、月間アップロード容量は一部制限あり)。Flashベースのアップローダーやビューワー(「フォトビュー」モード)により、大量の写真を簡単に投稿したり、これまでよりも高解像度の写真を快適に閲覧できるようになっている。
マイクロソフトCEO「主役はパソコン」 アップルに反論
米マイクロソフト(MS)のスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)は3日、米ロサンゼルス郊外で開かれたIT(情報技術)関連のイベントに登壇し、「パソコンの形や技術が進歩し、定義が変わっても、汎用性の高いパソコンが人々の生活の中核を担い続ける」と強調した。
バルマーCEOは、競合する米アップルのスティーブ・ジョブズCEOが同じイベントで1日、「パソコン需要はいずれ減少する」と発言したことに反論。アップルが4月に投入し、人気を博している多機能携帯端末「iPad」について「パソコンの一種だ」とし、MSはパソコン用の基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」を軸に様々な機器を連携させる戦略で反撃するとした。
アップルのジョブズCEOは1日、「パソコンはトラックのようだ。(様々な荷物を運べるが)すべての人には必要ない」と指摘。車が様々な形に発展したように、パソコンも残るとしたうえで、「高機能携帯電話(スマートフォン)やiPadのような製品が主流となる」との考えを示した。
マック DS向けにポケモンの無料ゲームを配信
日本マクドナルドは4日、同社店舗内で実施している、携帯ゲーム「ニンテンドーDS」向けの無料コンテンツ(情報の中身)配信サービス「マックで DS」で、人気ゲーム「ポケモン」のゲーム配信サービスを18日~7月14日に行うと発表した。子供に人気のあるポケモンの無料ゲーム配信を通じ、家族連れの来店を促す狙いがある。
配信するのは、DS本体があれば楽しめるマックオリジナルゲーム「ポケモンえいがクイズ ゾロアークをさがせ!」。7月10日に映画「劇場版ポケットモンスターダイヤモンド・パール 幻影の覇者 ゾロアーク」が公開されるのに合わせてキャンペーンとして展開する。マックの店舗内に設置されたDSエリアでDSを立ち上げれば、配信を受けられるが、同エリア内でしかプレイできない。
配信ゲームを1回遊ぶごとに、ハンバーガーかオレンジジュース(Sサイズ)のどちらかの特別招待券を1日1回もれなく配信プレゼントする。期間内には何度でも利用可能で、子連れ客の来店頻度を高める考えという。
丸善 小城社長 電子書籍取り込み、収益確保
「電子書籍の影響について騒ぎ過ぎだ」。丸善の小城武彦社長は苦笑いする。音楽配信の拡大でCD販売店が減少したのと同様に、電子書籍が書店の経営を脅かすとの見方が多い。だが小城社長は「音楽再生に機器が必要なCDとは異なり、本はそれ自身を読むことができる商品だから、電子化の影響は小さい」とみる。
ただ、ここにきて書籍流通を効率的な仕組みに改めようと一部の書店などが動き始めたことについては「電子書籍の登場が業界を後押しした面がある」。利益率の低さなどが書店経営の課題となっているが、「電子書籍も取り込んで収益を確保していく」と話していた。
TAC、iPad向けに資格試験対策本を配信
資格学校運営のTACは、米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」に資格試験対策の電子書籍を配信するサービスを始めた。朝日出版社や中央経済社など4社と連携し、紙の書籍より安い料金で全8冊を閲覧できるようにした。
サービスはIT関連のセブンシーズ・テックワークス(東京・新宿)を通じて実施する。TACの「行政書士」や「宅地建物取引主任者」、中央経済社の「国際会計検定」用の対策本などを選んだ。
不況の影響で資格取得を目指す人は増えているという。
アパレルのオリゾンティが民事再生法申請 「インタープラネット」などのブランド
ファッションブランド「インタープラネット」などを持つアパレル会社のオリゾンティ(大阪市西区)と、その親会社であるTRIPホールディングス(東京都港区)が東京地裁に民事再生法の適用を申請したことが4日、分かった。帝国データバンクによると、負債額はオリゾンティ約84億円、TRIP約32億円。スポンサー候補企業として2グループが名乗りをあげており、2グループに対する事業譲渡を視野に再建を目指す方針。
オリゾンティはもともとワールドの一部門が分社化されて設立。2007年3月にTRIP傘下に入り、現在はTRIPの全額出資子会社となっている。自社ブランド「インタープラネット」や輸入ブランド「ヴィヴィアン・ウエストウッド」などのブランド名を冠した店舗を百貨店などに展開している。
ピーク時の99年3月期には約116億円の年間売上高があったが、消費不振や競争の激化などから2009年3月期には年売上高が約91億にまで落ち込んでいた。
【菅首相誕生】第94代首相に菅直人氏、組閣は8日、官房長官には仙谷氏、幹事長に枝野氏
民主党は4日の両院議員総会で、菅直人副総理・財務相(63)を新代表に選出した。菅氏は午後の衆参両院本会議で、退陣した鳩山由紀夫首相(党代表)の後継の第94代、61人目の首相に選出された。首相任命式と閣僚の認証式は8日になる。また、新内閣の官房長官には仙谷由人国家戦略担当相が内定。幹事長には枝野幸男行政刷新担当相を起用する方針を固めた。
衆院本会議での投票結果は、菅氏313票、谷垣禎一氏116票、山口那津男氏21票、志位和夫氏9票、福島瑞穂氏7票、渡辺喜美氏5票、平沼赳夫氏5票、舛添要一氏1票。党代表選で菅氏は291票を獲得、129票の樽床(たるとこ)伸二衆院環境委員長(50)を大差で下した。投票総数は422票(無効2票)。
菅氏は代表選後、国民新党の亀井静香代表と会談し、連立政権継続で合意。今国会で審議中の郵政改革法案について「速やかな成立を期す」とした。
財政再建、調整難航も…公約「消費税」明記焦点
民主党代表に選出された菅副総理・財務相は、財務相就任後、44・3兆円と過去最大にまで膨らんだ国債発行額の抑制を目指す財政再建を政策の柱として打ち出している。
代表就任により、民主党が最終調整している参院選公約に消費税の増税が明記される可能性が高まるが、小沢幹事長を中心に増税に否定的な議員が多く、党内調整が難航する可能性もある。
「リーマン・ショックで税収が大きく下がり、無駄の削減は思ったほどのスピードで実現できなかった」
菅氏は3日夜の記者会見で、政策の財源は行政の無駄削減で確保できるとした衆院選政権公約(マニフェスト)の見通しが甘かったことを認めた。
その上で、国債発行額の増大については、「無限に借金が増えるような方向性を正していけると思っている」と述べたことで、党内では「首相として、消費税を含む歳入改革に取り組む意欲を示した」(中堅)という受け止めが広がっている。
菅氏は元々、消費税増税に積極的なわけではなかったが、今年1月の財務相就任後、「ギリシャの財政危機への対応などで国際会議に出席するなど、実務経験を積む中で、財政再建や消費税への理解を深めた」(財務省幹部)とされる。
2月には「消費税論議は2011年度以降」としていた考えを事実上、軌道修正し、論議を前倒しすることを表明。5月に11年度の新規国債発行額を「44・3兆円」以下に抑え込む考えを打ち出した。国債発行を抑制すれば、子ども手当などマニフェストに掲げた政策をすべて実施するのは困難で、党内では選挙を控える参院側を中心に反発を招いた。
元々、財政再建派には仙谷国家戦略相や玄葉光一郎衆院財務金融委員長など、小沢氏と距離を置く議員が多く、今回の代表選での菅氏支持層とも重なっている。
これに対し、小沢氏は「第一に取り組むのは、無駄をやめる決断」との立場で、財政再建をめぐる考えの違いは「親小沢」対「反小沢」の党内対立につながるという見方もある。
民主党は参院選公約を週明けに最終決定する方針だ。参院選に向け、党内融和を優先して増税論を封印するか、マニフェストを修正して増税方針を示すか、難しい判断を迫られることになりそうだ。
株、「菅首相」で円高株安の修正余地探る 中国の動向気掛かり
4日午前の日経平均株価は節目の1万円まであと約38円に迫る場面があった。鳩山由紀夫首相の後継に菅直人副総理・財務相が就けば、金融・株式市場で「円高→株安」の流れが修正するとの期待感が引き続き強いためだ。ただ、日本株は外部環境に左右されやすいだけに、上値余地は米国や中国株の動向次第との声も聞かれた。
菅氏が民主党代表に選ばれた。菅氏はこれまで円安志向と受け止められる発言があったほか、日銀による一連の追加金融緩和策を働き掛けた経緯がある。市場では「マーケットとの温度差が小さい」(立花証券の平野憲一執行役員)との評価が大勢だ。
米商品先物取引委員会(CFTC)が公表する円(対ドル)の売買動向によると、投機筋(非商業部門)は昨年12月や今年3月に日銀が金融緩和に動いた局面などで敏感に円売り・ドル買いに動いている。菅首相が誕生すれば「少なくとも円を買いにくい雰囲気が強まる」(大手証券の情報担当者)とみられており、為替の水準訂正に伴う株高を期待する声が広がっている。
円相場は現在、1ドル=92円台、1ユーロ=113円前後で推移している。主力企業の想定レートをみるとそれぞれ90円、120円程度の企業が多い。一方、1円の変動による営業損益の感応度ではユーロよりもドルの方がはるかに大きい。例えばトヨタは1円の円高で営業損益の影響度が対ユーロで50億円、対ドルは300億円だ。「仮に円高・ユーロ安が続いても対ドルで円安傾向となれば為替要因による収益圧迫懸念は解消される」(平野氏)。日経平均は早晩、節目の1万円を回復し、25日移動平均(1万0218円、3日時点)をメドに戻りを試すとの指摘があった。
ただ、ユーロ安円高による業績懸念がひとまず薄れても外部要因への警戒感は続いている。気掛かりは世界経済のけん引役である中国だ。ユーロ安は主要通貨に対して進んでいるが、「中国は米国以上に欧州向けに輸出しており、その影響が懸念される」(いちよし投資顧問の秋野充成運用部長)。中国・上海株も調整機運が強い。消費者物価指数(CPI)の上昇率が政府の許容範囲を超えるとの観測があり、金融引き締め懸念は根強いという。「日経平均は5月下旬の安値からリバウンド局面にあることは事実だが、外部環境の霧がすべて晴れたわけではない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長)。株価の本格回復には不安材料を時間をかけて消化していく必要があるとの声は多い。
iPhone新モデルは“ハードル”を超えられるのか?(COLUMN)
Appleのスティーブ・ジョブズCEOは6月7日に次世代iPhoneを発表するとみられるが、この新型がアナリストや消費者をうならせるには、マルチメディアコンテンツと機能の新たな基準を打ち立てなければならない。
Appleの課題は、業界を変えるほどの革新を考え出すことかもしれない。iPhoneは既に、同社の主な利益成長エンジンになるほどの文句なしのヒット商品になっており、同社の株価は過去最高に達しているからだ。iPadが発売早々、多くの人から「既に新しい市場を作った」と言われるほど成功していることも、この課題を難しくしている。
好評を博しているGoogleのAndroid搭載端末との競争も高まっており、Appleはさらなるレベルの引き上げを迫られている。
「iPhone 4.0が登場すれば、Appleは優位を保てるだろう。それが昨年と同じくらいたやすいかと聞かれれば、答えはノーだ。Androidは大きく前進したと思う」とGartnerのアナリスト、カロリーナ・ミラネシ氏は語る。
昨年は、Research In Motion(RIM)がAppleの一番のライバルだった。RIMのスマートフォン「BlackBerry」は依然として多くの企業に選ばれているが、BlackBerryが対処してきたセキュリティの懸念がiPhoneでも取り除かれるに伴って、Appleは法人市場にも踏み込んでいる。
Appleによると、Fortune 100社のうち70%以上がiPhoneを導入しているか、試験的に使っている。
しかし、iPhoneの主なターゲットは――当面のところ――依然として消費者であり、この市場で、次第にHTC、Motorola、Samsung ElectronicsなどのメーカーのAndroid携帯と接戦を演じるようになっている。
長期的には、投資家はiPhoneが中国などの世界市場に広がることや、Appleの価格戦略、iPhoneがいつAT&T以外の米国キャリアから販売されるのかに注目している。
このところの忙しいスケジュールに続き、ジョブズ氏は7日にはAppleの開発者会議でステージに立つ。Wall Street Journalは、このイベントで第4世代iPhoneが正式に発表されると予想している。
新型iPhoneは従来よりも高速で、ストレージが拡大し、画質とバッテリー駆動時間が向上し、前面カメラが付く可能性が高い。どれもいい強化策だが、競争力を大きく増すものではない。
「スティーブ(ジョブズ氏)と一緒にクールなものがステージに登場するだろうが、結局、一般的な機能だということは分かっている」とBroadpoint AmTechのアナリスト、ブライアン・マーシャル氏は言う。
マルチタスクなど、iPhoneユーザーが長らく求めてきた機能も追加される。
増えるライバル
2007年に登場したiPhoneが現在のスマートフォン市場を作り上げたことは間違いないだろう。iPhoneが作り出した「型」――およそ4インチのタッチスクリーンで多数のアプリに手早くアクセスできる――はWeb対応携帯の標準になった。
だがその後、市場にはライバルも増えた。特にAndroid搭載のスタイリッシュなスマートフォンが台頭している。
「Androidは唯一の真の競争相手だ」とRodman & Renshawのアナリスト、アショク・クマー氏は語る。
「Nokiaの地位は弱体化し続けている。RIMはまだ消費者市場では勢力を伸ばせていない。Microsoftは結局、小さ過ぎ、遅過ぎるということになりそうだ」
モバイルOSではNokiaのSymbianが世界市場でトップであり、RIMがナンバー2となっているが、両者ともシェアが減少していると、Gartnerは報告している。
iPhoneの世界シェアは1~3月に急進し、15%を超えて3位になった。Androidは4位で、前年から大幅に伸びてシェア10%に近づいた。
ミラネシ氏は、iPhoneは世界各国、特に欧州で好調だが、アジアにはかなり成長の余地があるとしている。アジアは競争が激しく、スマートフォンが好まれるかは地域によって大きく異なる。
iPhoneは約90カ国で150社を超えるキャリアから販売されている。昨四半期のiPhoneの販売台数は875万台。同製品はAppleの売上高の40%を占め、利益率は約60%という。
ウォール街のアナリストの多くは、iPhoneが2011年までに、早ければ今秋にもVerizonからも販売されると予測している。Appleは7日のイベントではVerizonの件を発表しない見込みだ。
AT&Tはネットワーク品質に関してiPhoneユーザーから批判されているが、ジョブズ氏は今週、夏には改善されるだろうと語った。
AT&Tは2日、モバイルデータサービスの新規加入者には無制限プランを提供しないと発表した。これにより、ネットワークへの負荷が高いダウンロードを減らして、一部地域で通信速度を改善できるかもしれない。
Piper Jaffrayのアナリスト、クリストファー・ラーセン氏は、この発表がAppleのイベントの数日前だったのは偶然ではないと指摘する。この発表は、AT&TがiPhoneの独占販売契約を引き延ばす一助となるかもしれない。
Appleが高い利益率を誇っていることから、新型iPhoneおよび旧モデルの価格設定も注目されている。現在の最新モデルであるiPhone 3GSはAT&Tの販売奨励金付きで199ドルから。その前のモデルiPhone 3Gは99ドル。
多くの人は、7日の発表にサプライズはないのではないかと考えているが、Appleのことなので、それは誰にも分からない。うわさでは、WebベースのiTunesやApple TVの新版などが登場すると言われている。