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ダウンロード違法化とBD課金の次にすべきこと(COLUMN)
おそらく今月、知財関連の政策で2つの重要な決定が行われることになる。それに関するメディアの報道は間違いなく表層的になるだろうが、実は決定された後の動きが、日本のコンテンツ産業の将来に大きく影響するのである。その意味をあらかじめ解説しておきたい。
■違法コンテンツのダウンロード違法化は前進
第1の決定は今国会に提出されている著作権法改正である。そこでの目玉は、ネット上にアップされている違法コンテンツをダウンロードする行為も違法化されることである。もちろん、対象は“違法と知りながら複製する”場合に限定されており、罰則規定もないため「万引きをしてはいけません」という常識的な注意書きと同じレベルの精神規定に止まっている、という問題は残る。
しかし、ネット上に違法コンテンツが蔓延し、そのコピー/ダウンロードによりコンテンツ業界が大きな被害を受けてきたことを考えると、日本の文化の衰退を防ぐための至極当たり前の規定がようやく法的にも整備されることになる。
おそらくネット狂信論者の人たちは引き続き反対を続けるのだろうが、まったく理解できないし、彼らの主張に正当性があるとは思えない。少なくとも、リアルの世界で同じ行為を行う人がほぼ皆無であることを考えれば、ネットだけ特別な世界であるかのように考えるのはおかしいと言わざるを得ないのではないか。
しかし、この法改正で一件落着とは言えない。本当の問題は、法改正後に関係者がどんなアクションをするかである。これについては、2つの論点があるだろう。
■業界と国が考えるべきことがある
1つは、罰則規定がなく精神規定に止まるなかで、違法化の条文にいかに実効性を持たせるかである。罰則規定がない以上、国がすぐにできることはほとんどない。従って、コンテンツ業界として対応することが必要になるであろう。例えば業界として違法コンテンツのアップロードとダウンロードの双方を頻繁に行っている者を徹底的に摘発する(アップロードの方が補足しやすいはず)などの断固たる態度を取ることが、リアルの世界で当たり前のマナーをネットでも普及させることにつながる。
もう1つは、国が今後さらに踏み込んだ規制をできるかである。例えばフランスでは、ISPに対して違法ダウンロードした可能性のあるユーザーの情報を政府に提出させることを義務づけるとともに、そうしたユーザーには2回まで警告し、3回違法ダウンロードをしたらネット接続を最大1年間切断する「スリーストライク法案」が議論されている。先週の議会では否決され、近々再度評決されるようである。
米国でも、ISPによる違法ダウンロードへの警告などの措置が議論されている。日本でも、単に違法コンテンツのダウンロードを違法化するだけでなく、これら欧米での取り組みに近い規定を設けるかどうかの検討を始める必要があるのではないか。
■ブルーレイに続き補償金の対象にすべきモノ
第2の重要な決定は、私的録音録画補償金の対象へのブルーレイ・ディスク(BD)の追加である。一部家電メーカーの強硬な反対もあり、昨年6月の大臣合意以降も経済産業省と文化庁の間でずっともめていた懸案であるが、ようやく決着しそうな情勢になってきた。結論は、大臣合意どおりに追加することとなりそうである。しかし、これも一件落着と考えるのはあまりに早計であろう。
私的録音録画補償金は、オリジナルと同じクオリティーのコピーが無制限に可能というデジタルの特性が、アーティストやコンテンツ制作者の所得機会を減少させることから、逸失所得を補填するために作られた制度である。
そうした観点から考えると、おそらく今後の録画媒体の主流となるブルーレイが対象に追加されることは間違いなく前進であるが、それは録画補償金に限定された話である。
一方の録音補償金を見ると、昔ながらのステレオは廃れてユーザーの音楽視聴手段は、iPodなどの携帯音楽プレーヤーやパソコンが中心となっている。にも関わらず、これらの機器は対象に追加されていない。これは明らかに不公平だろう。従って、ブルーレイを巡る1年越しの混乱が終わるのを契機に、録音補償金の問題についても改めて考え直す必要があるのではないか。
■コストとリスクの応分負担めざせ
私的録音録画補償金という制度自体の見直しも課題になる。この制度はインターネットが普及するはるか前の1992年に作られたもので、ネットを誰もが使えるという環境を前提にしていない。しかし、ネットがこれだけ普及した今日では、通信事業者やISPも家電メーカーと同様にコンテンツ流通/利用の恩恵を被っているのである。
即ち、コンテンツのバリューチェーン全体を考えると、ISPや「iTunes Store」などのプラットフォーム事業者、通信事業者などのインフラ事業者、家電メーカーなどの端末製造者、そしてユーザーがデジタルとネットの恩恵を受ける一方で、コンテンツ制作者だけが所得機会の減少などの被害を受けている。これは、コンテンツの供給システムにデジタルとネットという社会的なコストやリスクが反映されていないことにほかならない。
そうしたなかで旧来の制度を小手先で手直しするだけでは、コンテンツのビジネスモデルも進化しにくく、結果として文化が廃れるだけである。制度自体のパラダイムシフトが必要となっているのである。
文化庁は、コンテンツのバリューチェーンを踏まえ、そのステークホルダー全体が社会的なコストやリスクを応分に負担する制度の構築を目指すべきである。もしかしたら目指すべき将来の制度の最終的な理想型は“コピー回数無制限+コンテンツ税”といった形になるのかもしれない。
携帯電話、世界販売15%減 1―3月、新興国でも急ブレーキ
世界市場で携帯電話機の販売が急速に落ち込んでいる。米調査会社IDCによると、2009年1―3月の世界販売台数(出荷ベース)は前年同期比15.8%減と大幅なマイナスを記録した。世界的な金融・経済危機の影響から、先進国での落ち込みが激しいうえ、市場拡大が続いていた新興国などでも販売に急ブレーキがかかった。
携帯電話機の世界での販売台数は1―3月合計で約2億4500万台となった。昨年10―12月期の12.6%減に続く2期連続のマイナスで、減少幅はIDCが正式に調査を始めた04年以降で最大。08年前半までは中国やインドなど新興国の需要に支えられて15%前後の伸びを維持していたが、昨年半ば以降は減少に転じている。
不況に快走ハリウッド 今年の興行収入100億ドル突破見通し
世界にリセッション(景気後退)の嵐が吹き荒れるなか、今年の米ハリウッド映画の興行収入が100億ドル(約9956億円)の大台を突破する見通しになった。映画産業は歴史的にも不況からいち早く立ち直り、高成長を遂げた歴史があり、不況に対する強さを改めて裏付けた。
≪最速の収益ペース≫
映画業界の調査会社、メディア・バイ・ナンバーズによると今年のチケット売上高は4月中旬までに年率換算で前年比17%上昇。調査会社ボックス・オフィス・モジョによれば5月3日現在、興行収入が上位5本でいずれも1億ドルを上回っている。同社は今年の利益を前年比14%増と見込んでいる。収益の伸びは2002年以来、最速のペースだという。
同社の調べでは、米ドリームワークス・アニメーション制作の3Dアニメーション「モンスターVS.エイリアン」は、3日時点でチケット売上高が1億8240万ドルに達しており、09年の興行収入でトップクラスだ。モンスターがエイリアンから地球を守るという内容のこの映画は当初、今月後半の公開が予定されていたが、ジェームズ・キャメロン監督の3D映画「アバター」との競合を避けるため前倒しで公開された。
≪3Dでネット対抗≫
ハリウッドは好況不況、いずれの時代も乗り切ってきた。
米国で初めて映画館が盛況となったのは、1929年に株価が暴落して大不況に見舞われたときのことだ。しかしメディア・バイ・ナンバーズによると、最終的には減速する経済に飲み込まれ、週末興行成績は1932年までの2年間で3分の1に落ち込んだ。米映画制作大手フォックス・フィルム、パラマウント・ピクチャーズ、RKOラジオ・ピクチャーズは破綻(はたん)。ワーナー・ブラザーズは資産を手放した。映画評論家のレオナルド・マルティン氏は「業績の悪い会社は映画事業から脱落していった」と当時を振り返る。
1949年、53年、57年に起こった第二次世界大戦後の3回のリセッションや、80年、91年の経済停滞期にも興行収入は減少している。しかし今回のリセッションでは、第二次世界大戦後のリセッションとしては最長だった1973~75年や81~82年の不況時と同様の強さを見せている。
メディア・バイ・ナンバーズによると、観客動員数は4月19日までの時点で15%上昇。同社のポール・デルガラベディアン社長は興行収入が今年、100億ドルに達すると見積もっている。
ただ、インターネット技術の進歩により、今後、映画産業への逆風が強まる可能性もある。
カリフォルニア大学のヤン・クリストファー・ホラック教授(映画学)は、インターネットやケーブルテレビ、テレビゲームなど、室内の娯楽が増えたことを指摘。もっと深刻で長期間にわたる不況に直面すれば、ハリウッドも連勝し続けることはできないとの見方を示した。
技術的な集客という点で状況は1929年と似ている。当時のハリウッドはトーキー映画(音声付き映画)を導入したが、今年は家庭でまねできない多くの3D映画が公開されている。
【産経主張】中国海軍60周年 外洋型軍拡が緊張高める
創設60周年を迎えた中国海軍は、空母戦闘群の創設を視野に、さらなる飛躍を図っている。中国は海洋に「力の空白」が生じると、これに乗じて海軍艦艇を差し向ける傾向があり、日米は共同で抑止力の強化を図る必要がある。
中国海軍はすでに、台湾との紛争を想定した近海防衛型から、太平洋やインド洋にまで展開する外洋型に転換している。先月23日には、青島沖で初の国際観艦式を実施し、その作戦能力の高さを誇示した。
米露など14カ国から艦艇21隻が参加したものの、残念なことに日本の海自艦は招かれなかった。日中の信頼醸成を高めるという観点に立てば、遺憾なことである。
各国海軍代表を前に、軍事委主席の胡錦濤国家主席は「中国は防衛型の国防政策を堅持する。永遠に覇権を唱えず、軍拡競争をせず、いかなる国にも軍事的脅威にならない」と表明した。言葉の通りなら結構なことである。
だが、1992年の領海法で係争海域である南シナ海を「中国の海」であるとの意思を示した。第2段階では海洋調査船を派遣し、第3段階で海軍艦艇や航空機を差し向け力で領有を明示した。
つい最近も、米国の調査船が海南島の南120キロの公海上で、中国海軍の情報船を含む5隻から「危険な操船妨害」(米国防総省)を受けた。調査船は海南島に配備された中国原潜の音紋採取を行っていた。台湾海峡有事に派遣される空母の脅威となる中国潜水艦を警戒するためであろう。
米中両国は表向き、協調を叫んではいても、海面下では熾烈(しれつ)な戦いを進めている。米国防総省がまとめた2009年版の年次報告書「中国の軍事力」では、初めて中国が空母戦闘群の創設に動いていると指摘した。中国は20年までに複数の空母を建造する方針で、ロシアから艦載機「スホイ33」の購入を目指しているという。
国防省の黄雪平報道官は昨年、「空母は国家の総合力の表れ」と創設に意欲を示しており、胡主席のいう「軍事的脅威にならない」という姿勢とは矛盾する。中国がアジア諸国に広がる中国脅威論を打ち消すつもりなら、実際の行動で示すべきである。
日本にとって南シナ海は中東原油を輸送する経済動脈である。ソマリア沖に護衛艦を2隻派遣するだけで与野党が足を引っ張り合う現状は国益を害するばかりだ。
おそらく今月、知財関連の政策で2つの重要な決定が行われることになる。それに関するメディアの報道は間違いなく表層的になるだろうが、実は決定された後の動きが、日本のコンテンツ産業の将来に大きく影響するのである。その意味をあらかじめ解説しておきたい。
■違法コンテンツのダウンロード違法化は前進
第1の決定は今国会に提出されている著作権法改正である。そこでの目玉は、ネット上にアップされている違法コンテンツをダウンロードする行為も違法化されることである。もちろん、対象は“違法と知りながら複製する”場合に限定されており、罰則規定もないため「万引きをしてはいけません」という常識的な注意書きと同じレベルの精神規定に止まっている、という問題は残る。
しかし、ネット上に違法コンテンツが蔓延し、そのコピー/ダウンロードによりコンテンツ業界が大きな被害を受けてきたことを考えると、日本の文化の衰退を防ぐための至極当たり前の規定がようやく法的にも整備されることになる。
おそらくネット狂信論者の人たちは引き続き反対を続けるのだろうが、まったく理解できないし、彼らの主張に正当性があるとは思えない。少なくとも、リアルの世界で同じ行為を行う人がほぼ皆無であることを考えれば、ネットだけ特別な世界であるかのように考えるのはおかしいと言わざるを得ないのではないか。
しかし、この法改正で一件落着とは言えない。本当の問題は、法改正後に関係者がどんなアクションをするかである。これについては、2つの論点があるだろう。
■業界と国が考えるべきことがある
1つは、罰則規定がなく精神規定に止まるなかで、違法化の条文にいかに実効性を持たせるかである。罰則規定がない以上、国がすぐにできることはほとんどない。従って、コンテンツ業界として対応することが必要になるであろう。例えば業界として違法コンテンツのアップロードとダウンロードの双方を頻繁に行っている者を徹底的に摘発する(アップロードの方が補足しやすいはず)などの断固たる態度を取ることが、リアルの世界で当たり前のマナーをネットでも普及させることにつながる。
もう1つは、国が今後さらに踏み込んだ規制をできるかである。例えばフランスでは、ISPに対して違法ダウンロードした可能性のあるユーザーの情報を政府に提出させることを義務づけるとともに、そうしたユーザーには2回まで警告し、3回違法ダウンロードをしたらネット接続を最大1年間切断する「スリーストライク法案」が議論されている。先週の議会では否決され、近々再度評決されるようである。
米国でも、ISPによる違法ダウンロードへの警告などの措置が議論されている。日本でも、単に違法コンテンツのダウンロードを違法化するだけでなく、これら欧米での取り組みに近い規定を設けるかどうかの検討を始める必要があるのではないか。
■ブルーレイに続き補償金の対象にすべきモノ
第2の重要な決定は、私的録音録画補償金の対象へのブルーレイ・ディスク(BD)の追加である。一部家電メーカーの強硬な反対もあり、昨年6月の大臣合意以降も経済産業省と文化庁の間でずっともめていた懸案であるが、ようやく決着しそうな情勢になってきた。結論は、大臣合意どおりに追加することとなりそうである。しかし、これも一件落着と考えるのはあまりに早計であろう。
私的録音録画補償金は、オリジナルと同じクオリティーのコピーが無制限に可能というデジタルの特性が、アーティストやコンテンツ制作者の所得機会を減少させることから、逸失所得を補填するために作られた制度である。
そうした観点から考えると、おそらく今後の録画媒体の主流となるブルーレイが対象に追加されることは間違いなく前進であるが、それは録画補償金に限定された話である。
一方の録音補償金を見ると、昔ながらのステレオは廃れてユーザーの音楽視聴手段は、iPodなどの携帯音楽プレーヤーやパソコンが中心となっている。にも関わらず、これらの機器は対象に追加されていない。これは明らかに不公平だろう。従って、ブルーレイを巡る1年越しの混乱が終わるのを契機に、録音補償金の問題についても改めて考え直す必要があるのではないか。
■コストとリスクの応分負担めざせ
私的録音録画補償金という制度自体の見直しも課題になる。この制度はインターネットが普及するはるか前の1992年に作られたもので、ネットを誰もが使えるという環境を前提にしていない。しかし、ネットがこれだけ普及した今日では、通信事業者やISPも家電メーカーと同様にコンテンツ流通/利用の恩恵を被っているのである。
即ち、コンテンツのバリューチェーン全体を考えると、ISPや「iTunes Store」などのプラットフォーム事業者、通信事業者などのインフラ事業者、家電メーカーなどの端末製造者、そしてユーザーがデジタルとネットの恩恵を受ける一方で、コンテンツ制作者だけが所得機会の減少などの被害を受けている。これは、コンテンツの供給システムにデジタルとネットという社会的なコストやリスクが反映されていないことにほかならない。
そうしたなかで旧来の制度を小手先で手直しするだけでは、コンテンツのビジネスモデルも進化しにくく、結果として文化が廃れるだけである。制度自体のパラダイムシフトが必要となっているのである。
文化庁は、コンテンツのバリューチェーンを踏まえ、そのステークホルダー全体が社会的なコストやリスクを応分に負担する制度の構築を目指すべきである。もしかしたら目指すべき将来の制度の最終的な理想型は“コピー回数無制限+コンテンツ税”といった形になるのかもしれない。
携帯電話、世界販売15%減 1―3月、新興国でも急ブレーキ
世界市場で携帯電話機の販売が急速に落ち込んでいる。米調査会社IDCによると、2009年1―3月の世界販売台数(出荷ベース)は前年同期比15.8%減と大幅なマイナスを記録した。世界的な金融・経済危機の影響から、先進国での落ち込みが激しいうえ、市場拡大が続いていた新興国などでも販売に急ブレーキがかかった。
携帯電話機の世界での販売台数は1―3月合計で約2億4500万台となった。昨年10―12月期の12.6%減に続く2期連続のマイナスで、減少幅はIDCが正式に調査を始めた04年以降で最大。08年前半までは中国やインドなど新興国の需要に支えられて15%前後の伸びを維持していたが、昨年半ば以降は減少に転じている。
不況に快走ハリウッド 今年の興行収入100億ドル突破見通し
世界にリセッション(景気後退)の嵐が吹き荒れるなか、今年の米ハリウッド映画の興行収入が100億ドル(約9956億円)の大台を突破する見通しになった。映画産業は歴史的にも不況からいち早く立ち直り、高成長を遂げた歴史があり、不況に対する強さを改めて裏付けた。
≪最速の収益ペース≫
映画業界の調査会社、メディア・バイ・ナンバーズによると今年のチケット売上高は4月中旬までに年率換算で前年比17%上昇。調査会社ボックス・オフィス・モジョによれば5月3日現在、興行収入が上位5本でいずれも1億ドルを上回っている。同社は今年の利益を前年比14%増と見込んでいる。収益の伸びは2002年以来、最速のペースだという。
同社の調べでは、米ドリームワークス・アニメーション制作の3Dアニメーション「モンスターVS.エイリアン」は、3日時点でチケット売上高が1億8240万ドルに達しており、09年の興行収入でトップクラスだ。モンスターがエイリアンから地球を守るという内容のこの映画は当初、今月後半の公開が予定されていたが、ジェームズ・キャメロン監督の3D映画「アバター」との競合を避けるため前倒しで公開された。
≪3Dでネット対抗≫
ハリウッドは好況不況、いずれの時代も乗り切ってきた。
米国で初めて映画館が盛況となったのは、1929年に株価が暴落して大不況に見舞われたときのことだ。しかしメディア・バイ・ナンバーズによると、最終的には減速する経済に飲み込まれ、週末興行成績は1932年までの2年間で3分の1に落ち込んだ。米映画制作大手フォックス・フィルム、パラマウント・ピクチャーズ、RKOラジオ・ピクチャーズは破綻(はたん)。ワーナー・ブラザーズは資産を手放した。映画評論家のレオナルド・マルティン氏は「業績の悪い会社は映画事業から脱落していった」と当時を振り返る。
1949年、53年、57年に起こった第二次世界大戦後の3回のリセッションや、80年、91年の経済停滞期にも興行収入は減少している。しかし今回のリセッションでは、第二次世界大戦後のリセッションとしては最長だった1973~75年や81~82年の不況時と同様の強さを見せている。
メディア・バイ・ナンバーズによると、観客動員数は4月19日までの時点で15%上昇。同社のポール・デルガラベディアン社長は興行収入が今年、100億ドルに達すると見積もっている。
ただ、インターネット技術の進歩により、今後、映画産業への逆風が強まる可能性もある。
カリフォルニア大学のヤン・クリストファー・ホラック教授(映画学)は、インターネットやケーブルテレビ、テレビゲームなど、室内の娯楽が増えたことを指摘。もっと深刻で長期間にわたる不況に直面すれば、ハリウッドも連勝し続けることはできないとの見方を示した。
技術的な集客という点で状況は1929年と似ている。当時のハリウッドはトーキー映画(音声付き映画)を導入したが、今年は家庭でまねできない多くの3D映画が公開されている。
【産経主張】中国海軍60周年 外洋型軍拡が緊張高める
創設60周年を迎えた中国海軍は、空母戦闘群の創設を視野に、さらなる飛躍を図っている。中国は海洋に「力の空白」が生じると、これに乗じて海軍艦艇を差し向ける傾向があり、日米は共同で抑止力の強化を図る必要がある。
中国海軍はすでに、台湾との紛争を想定した近海防衛型から、太平洋やインド洋にまで展開する外洋型に転換している。先月23日には、青島沖で初の国際観艦式を実施し、その作戦能力の高さを誇示した。
米露など14カ国から艦艇21隻が参加したものの、残念なことに日本の海自艦は招かれなかった。日中の信頼醸成を高めるという観点に立てば、遺憾なことである。
各国海軍代表を前に、軍事委主席の胡錦濤国家主席は「中国は防衛型の国防政策を堅持する。永遠に覇権を唱えず、軍拡競争をせず、いかなる国にも軍事的脅威にならない」と表明した。言葉の通りなら結構なことである。
だが、1992年の領海法で係争海域である南シナ海を「中国の海」であるとの意思を示した。第2段階では海洋調査船を派遣し、第3段階で海軍艦艇や航空機を差し向け力で領有を明示した。
つい最近も、米国の調査船が海南島の南120キロの公海上で、中国海軍の情報船を含む5隻から「危険な操船妨害」(米国防総省)を受けた。調査船は海南島に配備された中国原潜の音紋採取を行っていた。台湾海峡有事に派遣される空母の脅威となる中国潜水艦を警戒するためであろう。
米中両国は表向き、協調を叫んではいても、海面下では熾烈(しれつ)な戦いを進めている。米国防総省がまとめた2009年版の年次報告書「中国の軍事力」では、初めて中国が空母戦闘群の創設に動いていると指摘した。中国は20年までに複数の空母を建造する方針で、ロシアから艦載機「スホイ33」の購入を目指しているという。
国防省の黄雪平報道官は昨年、「空母は国家の総合力の表れ」と創設に意欲を示しており、胡主席のいう「軍事的脅威にならない」という姿勢とは矛盾する。中国がアジア諸国に広がる中国脅威論を打ち消すつもりなら、実際の行動で示すべきである。
日本にとって南シナ海は中東原油を輸送する経済動脈である。ソマリア沖に護衛艦を2隻派遣するだけで与野党が足を引っ張り合う現状は国益を害するばかりだ。
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「番号持ち運び」不便解消…新携帯にメール転送、導入へ
携帯電話4社が、「電話番号の持ち運び制」の使い勝手の悪さを改善しようと、携帯メールを新しいメールアドレスに転送するサービスの導入を協議していることが4日、わかった。
今年度中の合意を目指し、転送サービスを始める方向で、携帯各社の契約者が一気に流動化する可能性もある。番号持ち運び制は2006年10月に導入されたが、アドレスは持ち運べず利用者の不満が多かった。
携帯メールのアドレスは、携帯会社ごとに「@」以下の部分が異なる。携帯会社を変えると、電話番号は同じでもアドレスが変わってしまうため、新アドレスを「メル友」などに知らせる必要がある。
携帯4社は、番号持ち運び制を使った契約者の古いアドレスに届いたメールを一定期間、新しいアドレスに自動転送する方向だ。同じ携帯会社の契約者間で電話番号をアドレス代わりに使う「ショートメッセージサービス(SMS)」も、他の携帯会社の契約者とやり取りできるようにする。
システム改修などの負担が生じるが、契約者の純増数が増えているソフトバンクモバイル、イー・モバイルが積極的で、最大手のNTTドコモも協力する方向という。
番号持ち運び制は、アドレスが変わることから期待されたほど利用されず、導入2年間の利用件数は、全契約者の5・5%にとどまっている。
米オバマ政権、雇用・利益の海外流出防止へ優遇税制見直し
【ワシントン=大隅隆】オバマ米大統領とガイトナー財務長官は4日の演説で、雇用や利益の海外流出を招く税制優遇などを見直すと発表した。海外への投資を実質的に優遇している現行税制を見直し、多国籍企業の租税回避なども厳格に監視する。向こう10年で2100億ドル(約20兆円)の税収増を目指すとしており、企業にとっては実質増税になる。
オバマ大統領は「現行税制は抜け穴が多すぎる」と指摘。「国内雇用の創出」を重視した税制の必要性を強調した。ただ、議会での審議の行方は不透明だ。
現行税制では、海外で得た利益に対する納税は先送りできる仕組みになっている。今回の税制改革では利益に対する税金を支払わなければ投資を優遇する税制を活用できないようにする。一連の税制改革の増収分(1000億ドル強)の一部は国内の研究開発を促進する別の税制の財源にあてる。
伊フィアット、クライスラーとGM欧州部門統合めざす
【フランクフルト=下田英一郎】伊フィアットは同社の自動車部門に、米クライスラーと独オペルなど米ゼネラル・モーターズ(GM)の欧州部門を統合する構想を表明した。クライスラーとはさきごろ資本提携に合意したばかり。今後米政府やGMと本格的な交渉に入る。実現すれば年間販売台数で約620万台(2008年実績ベース)となり、世界3位の独フォルクスワーゲン(VW)とほぼ並ぶ有力グループとなる。
フィアットのセルジオ・マルキオーネ最高経営責任者(CEO)は4日にベルリンで、ドイツのグッテンベルク経済技術相と会談し、同構想を伝えた。独政府はオペルへの金融支援を検討している。
GM欧州部門はオペルのほか英ボクソールや2月に経営破綻したスウェーデンのサーブを抱える。フィアットの構想では同社の自動車部門を分離し、クライスラー、GM欧州と統合。規模の拡大で生き残りを図る。統合新会社の売上高は年800億ユーロ(約10兆4000億円)、販売台数は世界3位のVW(627万台)と同じ水準になる。
次世代携帯開発、技術協力強化で一致 総務相、中国副首相と
【北京=高橋哲史】中国を訪問している鳩山邦夫総務相は4日、北京で中国の張徳江副首相と会談し、次世代携帯電話開発で技術協力を強化することで一致した。張副首相は「中国は6億人が携帯電話を使っており、ちょうど第三世代(3G)に移る」と説明。鳩山総務相は「日本には第3.9世代(3・9G)もある。ぜひ共同で研究を進めていきたい」と述べ、端末開発などで協力する考えを表明した。
ゆうちょ銀、投信仲介専門の郵便局 販売網5年で3000カ所に
日本郵政グループは投資信託の販売網を大幅に拡大する。今夏にも個別商品の勧誘を一切しない仲介専門の郵便局を新たに300カ所弱導入。5年間で投信を販売する既存の販売拠点と合わせて3000カ所程度に増やす。ゆうちょ銀行の店舗と郵便局を合わせた投信販売網は3メガバンクを大幅に上回り、地域金融機関も交えた販売競争が激しさを増しそうだ。
ゆうちょ銀が新たに導入するのは「準取り扱い郵便局(仮称)」。投信取引に必要な専用端末を置かず、顧客から投信口座開設などの依頼を受けた場合、投信を販売する最寄りのゆうちょ銀の店舗か郵便局に連絡して取引を仲介する。
ユーロ圏成長率、最悪4・0%のマイナス成長…09年予測
【ロンドン=是枝智】欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は4日、独仏伊などユーロ圏16か国の2009年の実質GDP(域内総生産)成長率が、1999年の欧州単一通貨ユーロが発足して以来、最悪の4・0%のマイナス成長になるとの見通しを発表した。
域外の予測は米国がマイナス2・9%、日本はマイナス5・3%で、世界同時不況の震源地だった米国よりも日欧経済の打撃が大きいことを示す内容となっている。
欧州委は前回1月の予想(1・9%減)を大幅に下方修正した。プラス0・4%と当初見ていた10年も、0・1%のマイナス成長に転じるとした。
英国なども含めたEU27か国でも09年は4・0%減、10年は0・1%減で、09年にプラス成長を維持できるのは27か国中、キプロス1国だけとなる。
主要国では、09年の成長率は、輸出依存度が大きいドイツが5・4%減と落ち込みが最も大きい。マイナス幅は、フランスが3・0%、イタリアは4・4%、英国で3・8%にそれぞれ拡大する。金融危機が続くアイルランドは9・0%減、通貨危機のハンガリーでは6・3%減、ラトビアなどバルト3国はいずれも10%を超えるマイナス成長になる厳しい内容だ。
IT製品強制認証、日米が中国に撤回要求 共同声明
【ワシントン=米山雄介】訪米中の二階俊博経済産業相は4日、米通商代表部(USTR)のカーク代表と会談し、共同声明を発表した。中国が来年5月に導入予定のIT(情報技術)セキュリティー製品の政府調達に関する強制認証制度について撤回を求めることを確認。保護主義の阻止や世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の早期妥結に日米が協力することでも一致した。
会談は、ワシントン市内のUSTRで約45分間開かれた。共同声明は「世界のすべての国々が金融・経済危機に引き続き注意して対応すべきだ」と明記。アジア太平洋地域の経済統合の強化に向け、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の運営でも、日米が緊密に連携していく意向を表明した。
日経社説 規制緩和で多様な保育サービス充実を・チェンジ!少子化(5/5)
「働きたいのに子どもを預ける先がない」。不況下の今春、こんな切実な声をしばしば聞いた。厚生労働省によれば、働きたいと望む女性がすべて就労する場合、保育所は100万人分、小学校低学年児を預かる学童保育は145万人分、受け入れを今より増やす必要があるという。
少子化を克服するには、働きながら安心して子どもを産み、育てられる環境の整備が欠かせない。規制を緩和し企業や非営利組織(NPO)の参入を促すなど、多様な保育サービスの充実を急ぐべきだ。
民間参入に実質的な壁
共働き家庭の数は専業主婦家庭を上回る。保育サービスのニーズが大きいのに供給が増えない原因の第一は、規制と公費の配分の偏りだ。株式会社やNPOは保育事業に自由に参入できるはずだが、実際には多くの障壁が参入を阻んでいる。
保育所を建てる際に、社会福祉法人には国や自治体から助成金が出るのに、民間には助成金が出ない。都道府県の認可を得て運営費を補助してもらうには、国が定める最低基準を満たす必要があるが、子ども1人当たりの面積や保育士の数、調理室の設置など細かい基準をすべてクリアするのは容易ではない。自治体によっては、基準を満たしていても民間保育所の認可を渋る例もある。
役所の認可外の保育所は、公的な助成なしで運営するしかない。これでは民間の参入は進まない。
公立や社会福祉法人の保育所だけで需要に応えるのは難しい。しかも認可保育所の多くは開園時間が短く、日曜・祝日は休みになるなど、働き方の多様化に対応していない。
こうした中で限られた財源を有効活用し、保育サービスを拡充する自治体もある。
山形県東根市は、子育て拠点「さくらんぼタントクルセンター」に設置した公立保育所の運営を昨年4月に株式会社に委託した。条件としたのは、1年365日いつでも受け入れる体制と、午後8時までの延長保育、夕食の提供などだ。
民営化で人件費など年間4000万円の経費を削減でき、その財源は未就学児の医療費無料化などに回せた。民間委託に不安を表明していた保護者も9割以上が満足している。
待機児童に悩む仙台市は2002年から独自に基準を設けて補助金を出す「せんだい保育室」の認定を始めた。駅前に立地し採光要件など国基準の一部が満たせないA型と、小規模でも開設できるB型がある。
A型は企業やNPO、B型は個人経営が中心だ。認定には1年の運営実績を評価して改善を指導するなど慎重を期している。補助金を出すことで利用料の上限を設け、親の負担を減らした。利用者との直接契約なので、各保育園がサービスに工夫をこらして競争している。
厚生労働省社会保障審議会は2月に保育制度改革の一次報告をまとめた。基準を満たせば自動的に認可することや、民間企業へ施設整備費を補助することなどを報告に盛り込んだが、既存の保育団体などは「保育の質の低下」を理由に反対している。
子どもの健全な成長や経営の安定に配慮するのは当然だが、規制を緩和し多様な事業体が知恵を競うことは保育の質の向上にもつながる。既得権益を守るための反対であってはならない。国はおおまかな目安を示し、自治体が実情に応じて独自に認可基準を決める形でいいはずだ。
縦割り行政の是正を
もう一点重要なのが、縦割りによる二重行政を是正し、子ども本位の保育体制をつくることだ。
保育所の待機児童が問題になる一方で、幼稚園には子どもが集まらない。国は両者の融合を図ろうと06年に認定こども園制度をスタートさせたが、幼稚園は文部科学省が保育所は厚労省が管轄したままだ。この制度は申請書類の枚数が増えただけでなんのメリットもないと不評で、約300件の認定にとどまっている。
そもそも同じ子どもを預かる施設を分ける必要があるのか。年齢や子の置かれた状況に応じ、必要な保育や教育を提供するのが望ましい。幼稚園教諭と保育士の資格見直しも含め、新たな体制を考えるべきだ。
最近、不足が大きな問題になっている小学校低学年児の放課後対策にしても、2つの省が重複して行っており無駄が多い。学校長が空き教室利用を拒む例もある。働く親から「小1の壁」と言われるほど要望の強い学童保育をどう充実するか、省庁の壁を越え迅速に対応すべきだ。
保育の充実には費用がかかる。国は補正予算に盛り込んだ「安心こども基金」で支援するとしているが、一時的な支出では不十分だ。無駄を省き必要な財源をどこから持ってくるか、中長期の対応も必要である。
携帯電話4社が、「電話番号の持ち運び制」の使い勝手の悪さを改善しようと、携帯メールを新しいメールアドレスに転送するサービスの導入を協議していることが4日、わかった。
今年度中の合意を目指し、転送サービスを始める方向で、携帯各社の契約者が一気に流動化する可能性もある。番号持ち運び制は2006年10月に導入されたが、アドレスは持ち運べず利用者の不満が多かった。
携帯メールのアドレスは、携帯会社ごとに「@」以下の部分が異なる。携帯会社を変えると、電話番号は同じでもアドレスが変わってしまうため、新アドレスを「メル友」などに知らせる必要がある。
携帯4社は、番号持ち運び制を使った契約者の古いアドレスに届いたメールを一定期間、新しいアドレスに自動転送する方向だ。同じ携帯会社の契約者間で電話番号をアドレス代わりに使う「ショートメッセージサービス(SMS)」も、他の携帯会社の契約者とやり取りできるようにする。
システム改修などの負担が生じるが、契約者の純増数が増えているソフトバンクモバイル、イー・モバイルが積極的で、最大手のNTTドコモも協力する方向という。
番号持ち運び制は、アドレスが変わることから期待されたほど利用されず、導入2年間の利用件数は、全契約者の5・5%にとどまっている。
米オバマ政権、雇用・利益の海外流出防止へ優遇税制見直し
【ワシントン=大隅隆】オバマ米大統領とガイトナー財務長官は4日の演説で、雇用や利益の海外流出を招く税制優遇などを見直すと発表した。海外への投資を実質的に優遇している現行税制を見直し、多国籍企業の租税回避なども厳格に監視する。向こう10年で2100億ドル(約20兆円)の税収増を目指すとしており、企業にとっては実質増税になる。
オバマ大統領は「現行税制は抜け穴が多すぎる」と指摘。「国内雇用の創出」を重視した税制の必要性を強調した。ただ、議会での審議の行方は不透明だ。
現行税制では、海外で得た利益に対する納税は先送りできる仕組みになっている。今回の税制改革では利益に対する税金を支払わなければ投資を優遇する税制を活用できないようにする。一連の税制改革の増収分(1000億ドル強)の一部は国内の研究開発を促進する別の税制の財源にあてる。
伊フィアット、クライスラーとGM欧州部門統合めざす
【フランクフルト=下田英一郎】伊フィアットは同社の自動車部門に、米クライスラーと独オペルなど米ゼネラル・モーターズ(GM)の欧州部門を統合する構想を表明した。クライスラーとはさきごろ資本提携に合意したばかり。今後米政府やGMと本格的な交渉に入る。実現すれば年間販売台数で約620万台(2008年実績ベース)となり、世界3位の独フォルクスワーゲン(VW)とほぼ並ぶ有力グループとなる。
フィアットのセルジオ・マルキオーネ最高経営責任者(CEO)は4日にベルリンで、ドイツのグッテンベルク経済技術相と会談し、同構想を伝えた。独政府はオペルへの金融支援を検討している。
GM欧州部門はオペルのほか英ボクソールや2月に経営破綻したスウェーデンのサーブを抱える。フィアットの構想では同社の自動車部門を分離し、クライスラー、GM欧州と統合。規模の拡大で生き残りを図る。統合新会社の売上高は年800億ユーロ(約10兆4000億円)、販売台数は世界3位のVW(627万台)と同じ水準になる。
次世代携帯開発、技術協力強化で一致 総務相、中国副首相と
【北京=高橋哲史】中国を訪問している鳩山邦夫総務相は4日、北京で中国の張徳江副首相と会談し、次世代携帯電話開発で技術協力を強化することで一致した。張副首相は「中国は6億人が携帯電話を使っており、ちょうど第三世代(3G)に移る」と説明。鳩山総務相は「日本には第3.9世代(3・9G)もある。ぜひ共同で研究を進めていきたい」と述べ、端末開発などで協力する考えを表明した。
ゆうちょ銀、投信仲介専門の郵便局 販売網5年で3000カ所に
日本郵政グループは投資信託の販売網を大幅に拡大する。今夏にも個別商品の勧誘を一切しない仲介専門の郵便局を新たに300カ所弱導入。5年間で投信を販売する既存の販売拠点と合わせて3000カ所程度に増やす。ゆうちょ銀行の店舗と郵便局を合わせた投信販売網は3メガバンクを大幅に上回り、地域金融機関も交えた販売競争が激しさを増しそうだ。
ゆうちょ銀が新たに導入するのは「準取り扱い郵便局(仮称)」。投信取引に必要な専用端末を置かず、顧客から投信口座開設などの依頼を受けた場合、投信を販売する最寄りのゆうちょ銀の店舗か郵便局に連絡して取引を仲介する。
ユーロ圏成長率、最悪4・0%のマイナス成長…09年予測
【ロンドン=是枝智】欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は4日、独仏伊などユーロ圏16か国の2009年の実質GDP(域内総生産)成長率が、1999年の欧州単一通貨ユーロが発足して以来、最悪の4・0%のマイナス成長になるとの見通しを発表した。
域外の予測は米国がマイナス2・9%、日本はマイナス5・3%で、世界同時不況の震源地だった米国よりも日欧経済の打撃が大きいことを示す内容となっている。
欧州委は前回1月の予想(1・9%減)を大幅に下方修正した。プラス0・4%と当初見ていた10年も、0・1%のマイナス成長に転じるとした。
英国なども含めたEU27か国でも09年は4・0%減、10年は0・1%減で、09年にプラス成長を維持できるのは27か国中、キプロス1国だけとなる。
主要国では、09年の成長率は、輸出依存度が大きいドイツが5・4%減と落ち込みが最も大きい。マイナス幅は、フランスが3・0%、イタリアは4・4%、英国で3・8%にそれぞれ拡大する。金融危機が続くアイルランドは9・0%減、通貨危機のハンガリーでは6・3%減、ラトビアなどバルト3国はいずれも10%を超えるマイナス成長になる厳しい内容だ。
IT製品強制認証、日米が中国に撤回要求 共同声明
【ワシントン=米山雄介】訪米中の二階俊博経済産業相は4日、米通商代表部(USTR)のカーク代表と会談し、共同声明を発表した。中国が来年5月に導入予定のIT(情報技術)セキュリティー製品の政府調達に関する強制認証制度について撤回を求めることを確認。保護主義の阻止や世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の早期妥結に日米が協力することでも一致した。
会談は、ワシントン市内のUSTRで約45分間開かれた。共同声明は「世界のすべての国々が金融・経済危機に引き続き注意して対応すべきだ」と明記。アジア太平洋地域の経済統合の強化に向け、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の運営でも、日米が緊密に連携していく意向を表明した。
日経社説 規制緩和で多様な保育サービス充実を・チェンジ!少子化(5/5)
「働きたいのに子どもを預ける先がない」。不況下の今春、こんな切実な声をしばしば聞いた。厚生労働省によれば、働きたいと望む女性がすべて就労する場合、保育所は100万人分、小学校低学年児を預かる学童保育は145万人分、受け入れを今より増やす必要があるという。
少子化を克服するには、働きながら安心して子どもを産み、育てられる環境の整備が欠かせない。規制を緩和し企業や非営利組織(NPO)の参入を促すなど、多様な保育サービスの充実を急ぐべきだ。
民間参入に実質的な壁
共働き家庭の数は専業主婦家庭を上回る。保育サービスのニーズが大きいのに供給が増えない原因の第一は、規制と公費の配分の偏りだ。株式会社やNPOは保育事業に自由に参入できるはずだが、実際には多くの障壁が参入を阻んでいる。
保育所を建てる際に、社会福祉法人には国や自治体から助成金が出るのに、民間には助成金が出ない。都道府県の認可を得て運営費を補助してもらうには、国が定める最低基準を満たす必要があるが、子ども1人当たりの面積や保育士の数、調理室の設置など細かい基準をすべてクリアするのは容易ではない。自治体によっては、基準を満たしていても民間保育所の認可を渋る例もある。
役所の認可外の保育所は、公的な助成なしで運営するしかない。これでは民間の参入は進まない。
公立や社会福祉法人の保育所だけで需要に応えるのは難しい。しかも認可保育所の多くは開園時間が短く、日曜・祝日は休みになるなど、働き方の多様化に対応していない。
こうした中で限られた財源を有効活用し、保育サービスを拡充する自治体もある。
山形県東根市は、子育て拠点「さくらんぼタントクルセンター」に設置した公立保育所の運営を昨年4月に株式会社に委託した。条件としたのは、1年365日いつでも受け入れる体制と、午後8時までの延長保育、夕食の提供などだ。
民営化で人件費など年間4000万円の経費を削減でき、その財源は未就学児の医療費無料化などに回せた。民間委託に不安を表明していた保護者も9割以上が満足している。
待機児童に悩む仙台市は2002年から独自に基準を設けて補助金を出す「せんだい保育室」の認定を始めた。駅前に立地し採光要件など国基準の一部が満たせないA型と、小規模でも開設できるB型がある。
A型は企業やNPO、B型は個人経営が中心だ。認定には1年の運営実績を評価して改善を指導するなど慎重を期している。補助金を出すことで利用料の上限を設け、親の負担を減らした。利用者との直接契約なので、各保育園がサービスに工夫をこらして競争している。
厚生労働省社会保障審議会は2月に保育制度改革の一次報告をまとめた。基準を満たせば自動的に認可することや、民間企業へ施設整備費を補助することなどを報告に盛り込んだが、既存の保育団体などは「保育の質の低下」を理由に反対している。
子どもの健全な成長や経営の安定に配慮するのは当然だが、規制を緩和し多様な事業体が知恵を競うことは保育の質の向上にもつながる。既得権益を守るための反対であってはならない。国はおおまかな目安を示し、自治体が実情に応じて独自に認可基準を決める形でいいはずだ。
縦割り行政の是正を
もう一点重要なのが、縦割りによる二重行政を是正し、子ども本位の保育体制をつくることだ。
保育所の待機児童が問題になる一方で、幼稚園には子どもが集まらない。国は両者の融合を図ろうと06年に認定こども園制度をスタートさせたが、幼稚園は文部科学省が保育所は厚労省が管轄したままだ。この制度は申請書類の枚数が増えただけでなんのメリットもないと不評で、約300件の認定にとどまっている。
そもそも同じ子どもを預かる施設を分ける必要があるのか。年齢や子の置かれた状況に応じ、必要な保育や教育を提供するのが望ましい。幼稚園教諭と保育士の資格見直しも含め、新たな体制を考えるべきだ。
最近、不足が大きな問題になっている小学校低学年児の放課後対策にしても、2つの省が重複して行っており無駄が多い。学校長が空き教室利用を拒む例もある。働く親から「小1の壁」と言われるほど要望の強い学童保育をどう充実するか、省庁の壁を越え迅速に対応すべきだ。
保育の充実には費用がかかる。国は補正予算に盛り込んだ「安心こども基金」で支援するとしているが、一時的な支出では不十分だ。無駄を省き必要な財源をどこから持ってくるか、中長期の対応も必要である。
中国がアニメ産業の育成に躍起な理由(COLUMN)
「私の孫が見るテレビ番組といえば、『ウルトラマン』ばかり。もっと中国のアニメを見るべきだ」
これは今年3月末、中国の温家宝首相が湖北省のアニメ制作会社を視察した際に発した言葉だ。これをきっかけに、4月に入ってから中国のインターネット上で“ウルトラマンたたき”が一気に広がったのを、ご存知だろうか?
「ウルトラマンの暴力は、まるで戦時中の日本人のように残虐だ」「ウルトラマンなんか、ぶっつぶせ」といった過激な書き込みが相次いだのだ。
その一方で、「ウルトラマンを越える面白い番組をもっと作って欲しい」「中国のアニメや実写が面白くないから、どうしても日本の番組を見たくなるのだ」といった意見も書き込まれた。
温家宝首相の発言は、「国産アニメ業界よ、もっと視聴者に喜ばれる番組を作れ」といった激励に聞こえる一方、「日本の人気番組の輸入を規制しているにもかかわらず、国産アニメがなかなか成長しない」という嘆きや苛立ちに聞こえなくもない。
発言の裏には、果たして権力闘争も絡む政治的背景があるのか否か、その真意は計り知れない。だが、中国では「首相の発言の引き合いに出されるほど日本の『ウルトラマン』やアニメの浸透度が高く、抜群に人気がある」ことは確かだ。
温家宝発言の背景にある日本アニメブームへの危機感
思えば、筆者の知る30代~40代の中国人男性たちも、皆「奥特曼」(ウルトラマンの中国語)の大ファンだ。彼らは幼い頃にテレビで見て夢中になり、「大きくなったらウルトラマンみたいに強くなりたいと思った」と、今でも目を輝かせながら言う。
幼い頃に同じ番組を見ていたというだけで、異国の人とは思えないほど意気投合し合えるのだから、テレビの持つ力は偉大だ。
「ウルトラマン」のような実写もの以外にも、中国では日本のアニメが大人気だ。1979年に中央電視台で放送された「鉄腕アトム」をはじめ、80年代には「一休さん」「母をたずねて三千里」「花の子ルンルン」、90年代には「ドラえもん」「スラムダンク」「クレヨンしんちゃん」などが放送され、大ブームとなっている。
中国の子供たちは日本のアニメを見て育ち、日本のアニメ産業は、国内のみならず中国や海外でも広く知られる存在となった。
このような日本アニメの華々しさを尻目に、中国がようやくアニメ産業の育成に乗り出したのは、2000年代に入ってからのことだった。
もともと中国アニメの歴史は日本よりも古く、1920年代に遡る。40年代には、上海で「西遊記」をベースにしたアニメが製作されたこともあった。業界関係者によると、「かの手塚治虫氏が中国アニメに触発された」という逸話も残っているぐらいである。
だが、文化大革命や経済発展の遅れなどの影響でアニメ産業は発達せず、欧米や日本に大きく水を空けられてしまった。その遅れを挽回しようと、政府は04年に「アニメ産業発展に関する若干の意見」を公布。アニメ産業の育成戦略を明確に打ち出したというわけだ。
これは、「第11次5ヵ年計画」(06~10年)の柱となる「国産自主技術、自主ブランドの育成・振興」にもつながる戦略であり、国産アニメの保護・発展を目的に、ゴールデンタイム(午後5時~8時)における海外アニメや実写の放送が禁止された。
他産業では、これまで外資の導入によって国内技術の向上を押し上げて来た中国だが、アニメ産業に関しては、海外製品を締め出して国産アニメを量産し、「国民にもっと国産アニメに目を向けてもらおう」という政策をとったのである。
アニメ産業育成のため、政府は国内17ヵ所に「アニメ産業基地」を設立。優遇措置を施して人材育成を行なったり、杭州で大々的にアニメ・フェスティバルを開催したりして来た。
その効果は大きかった。国のアニメ制作会社は02年の120社から06年には5400社へと急増し、市場規模も250億元(08年の中国政府統計)と飛躍的に伸びたのである。07年に中国国内で制作されたテレビアニメ制作量は約13万分と、前年比28%も増加しているほどだ。
作品は増えても質は向上せず
海賊版DVDばかりが売れる現実
しかし、一気に作品数やクリエーターの量は増えたものの、質の向上は“促成栽培”というわけには行かなかった。
テレビでヒットして映画化され、今年の旧正月に上映された「喜羊羊与灰太狼」が、国産アニメとして史上最高の興行収入を獲得したという明るいニュースはあったものの、市場規模はいまだ日本に及ばない。
残念ながら、日本やアメリカのアニメに対抗できるほど知名度が高い“ブランド”や“ヒーロー”は、まだ育っていないのが実状だ。
その理由は、いくつか考えられる。
第一に、中国のアニメキャラクターはこれまで歴史上の人物や神話などの物語からヒントを得て生まれたケースが多く、教育色や教訓色が強かったため、子供たちにとって「面白くない」ものが多かったことが挙げられる。
中国では、小説や映画でも「表現の自由」が制限されてきた経緯があり、それは今でも変わらない。そうした社会で育ったクリエーターたちが無意識のうちに自由な発想を持てないでいるという傾向もある。
第二に、知的財産問題が挙げられる。皮肉にも、ここ数年海外アニメを締め出して来たにもかかわらず、中国では相変わらず“海賊版DVD”が蔓延している。
そのため、国内アニメよりも海外アニメ(特に日本作品)の人気が依然として高く、テレビで放送されていない作品でも、海賊版やインターネットでダウンロードされてしまうという現象に悩まされて来た。
テレビ以外でも「面白い」アニメが見られる以上、視聴者がそちらに流れて行くのは当然だろう。
中国政府が国産アニメの育成を急ぐ背景には、「国産アニメ産業を整備して国民の意識を高めることにより、これまで批判されて続けてきた海賊版の撲滅にもつなげたい」という意向があるのだ。
中国にとって、知的財産権問題の改善は重要課題のため、逆に言えば「知財問題を解決しなければ、国内アニメ市場の正当な育成もままならない」ということになる。
今やメディアのコンテンツは、人やモノとは違い、インターネットを通じていとも簡単に「海を越えて」しまう。つまり、「知財問題とアニメの育成は表裏一体の問題」とも言えるのだ。
日本アニメの締め出しから合作へ
方向転換も模索する中国の悩み
しかし、ここに来て新たな動きも出始めている。それは、「日本のアニメを締め出すのではなく、逆にそれを積極的に受け入れて、自分たちも成長しよう」という試みだ。
たとえば、今年3月に行なわれた「東京国際アニメフェア2009」では、中国の文化部が大規模な出展を行ない、有力アニメ制作会社の作品を紹介すると共に、日中合作に向けたプロジェクトを発表した。
日中のアニメ業界に詳しいSTVジャパン(上海メディアグループの100%出資会社)コンテンツ・プロデューサーの佐々木潤二氏によると、「中国のアニメ専門学校から日本のアニメ専門学校への提携話なども相次いでいる」という。
このような動きに対して、日本のアニメ業界も食指を動かしている。
宮崎駿監督の作品が大ヒットし、今年2月には「つみきのいえ」(加藤久仁生監督)が米国アカデミー賞・短編映画賞を受賞するなど、日本のアニメ界は一見活況を呈しているかに見える。
だが、「日本のアニメ界を支えているのは中高年のクリエーターやアニメ作家たちであり、労働環境が厳しい業界の体質などもあって、クリエーターや作品の質が落ちている」(関係者)という見方もある。
そこで、国内市場は拡大の余地が見込めないため、「中国に活路を求めよう」という関係者が増えているのだ。
「日本のアニメ企業は知財問題がクローズアップされるようになって、中国進出に二の足を踏んでいる。しかし、今中国の若者に求められているコンテンツは、間違いなく『ジャパン』。日中が双方のよい面を認め合い、協力し合うことで、互いに垣根を越えた“内需拡大”を実現できるのではないか」
前出の佐々木プロデューサーは、こう指摘する。
部品や機械などの産業と違い、クリエイティブなコンテンツ産業は、国情や社会背景、文化などに影響され易い。そのため、情報交換や技術の伝承といった面で、難しい課題も残されている。
だが、ひとたびヒット商品を生み出せば、そこからキャラクターのフィギュア、文房具、衣服など数多くのライセンス商品が派生し、“ビッグチャンス”につながることは間違いない。
中国では、日本の週刊マンガ雑誌のように、毎週インターネット上の動画で連載を配信するサービスがあり、若者に絶大な人気を誇っている。また、中国で最も有名なポータルサイト「新浪」でも、無数の動画サイトを見ることができる。こうした日本には存在しないサービスも、日本企業にとっては魅力なのだ。
温家宝首相の発言により、今回図らずも内外で注目を浴びた中国アニメ産業の実態。今後、中国のアニメ業界はどうなって行くのだろうか? 5年後、10年後に、中国のアニメ業界から日本人も憧れるような“ヒーロー”が誕生する日が、果たして来るのだろうか?
盧前大統領聴取 変わらなかった韓国政治文化(5月4日付・読売社説)
韓国の最高検察庁が収賄容疑で盧武鉉前大統領を事情聴取した。
大統領在職中に、夫人と、実兄の娘婿が、有力後援者である靴製造会社会長から計600万ドル(約6億円)の外貨を受け取った不正資金供与疑惑に、盧武鉉氏が直接関与していたとの疑いだ。
盧武鉉氏は「在任中、カネの授受を私は知らなかった」と収賄容疑を否定していた。だが最高検は、発電所建設事業や企業買収への口利きを当て込む賄賂(わいろ)だった可能性もあるとみて追及した模様だ。
最高検は週内に、逮捕状請求の可否を決めるという。
韓国で検察当局から事情聴取された大統領経験者はこれで3人目だ。1995年に逮捕にまで至った全斗煥、盧泰愚両氏の場合は、収賄罪と反乱罪で、それぞれ無期懲役と懲役17年の実刑が確定し、後に赦免されている。
国家元首だった人物が収賄で取り調べられるというスキャンダルがまたも繰り返された。
14年前、日本円で300億円を超す巨額の収賄が糾弾された盧泰愚元大統領は、「在任当時の政治文化では避けられない一面もあった」と釈明したことがある。
問題は、強大な権限を持つ大統領の周辺で欲得ずくの怪しげなカネが乱舞するその「政治文化」が、その後も変わっていないように見えることだ。
2人の大統領経験者を断罪した金泳三元大統領は「カネは一切、受け取らない」と言明した。本人は無事でも、「小統領」と称されるほど人事に介入した次男は、企業から請託を受けた見返りに巨額の金品を受け取り逮捕された。
革新政権として登場した金大中元大統領も、3人の息子がそろって同様の容疑で摘発された。
盧武鉉氏の場合も、すでに企業買収に絡んで実兄が、今回の不正資金供与疑惑で側近だった元秘書官が逮捕されている。夫人と長男も事情聴取を受けている。
軍人政権や保守政権の「不正腐敗」を厳しく非難し、「清廉さ」や「道徳性」を強調して若い世代の支持を集めた左派政権といえども、権力の座につけば、例外ではなかったということだろう。
説明のつかないカネの授受が明るみに出たことで、盧武鉉氏の権威は失墜した。左派勢力の政治的な影響力も、相当そがれることになるに違いない。
地縁主義、血縁主義に支配されることなく政治資金の透明性をどう確保するか。保守派の李明博政権にとっても重い課題だろう。
「私の孫が見るテレビ番組といえば、『ウルトラマン』ばかり。もっと中国のアニメを見るべきだ」
これは今年3月末、中国の温家宝首相が湖北省のアニメ制作会社を視察した際に発した言葉だ。これをきっかけに、4月に入ってから中国のインターネット上で“ウルトラマンたたき”が一気に広がったのを、ご存知だろうか?
「ウルトラマンの暴力は、まるで戦時中の日本人のように残虐だ」「ウルトラマンなんか、ぶっつぶせ」といった過激な書き込みが相次いだのだ。
その一方で、「ウルトラマンを越える面白い番組をもっと作って欲しい」「中国のアニメや実写が面白くないから、どうしても日本の番組を見たくなるのだ」といった意見も書き込まれた。
温家宝首相の発言は、「国産アニメ業界よ、もっと視聴者に喜ばれる番組を作れ」といった激励に聞こえる一方、「日本の人気番組の輸入を規制しているにもかかわらず、国産アニメがなかなか成長しない」という嘆きや苛立ちに聞こえなくもない。
発言の裏には、果たして権力闘争も絡む政治的背景があるのか否か、その真意は計り知れない。だが、中国では「首相の発言の引き合いに出されるほど日本の『ウルトラマン』やアニメの浸透度が高く、抜群に人気がある」ことは確かだ。
温家宝発言の背景にある日本アニメブームへの危機感
思えば、筆者の知る30代~40代の中国人男性たちも、皆「奥特曼」(ウルトラマンの中国語)の大ファンだ。彼らは幼い頃にテレビで見て夢中になり、「大きくなったらウルトラマンみたいに強くなりたいと思った」と、今でも目を輝かせながら言う。
幼い頃に同じ番組を見ていたというだけで、異国の人とは思えないほど意気投合し合えるのだから、テレビの持つ力は偉大だ。
「ウルトラマン」のような実写もの以外にも、中国では日本のアニメが大人気だ。1979年に中央電視台で放送された「鉄腕アトム」をはじめ、80年代には「一休さん」「母をたずねて三千里」「花の子ルンルン」、90年代には「ドラえもん」「スラムダンク」「クレヨンしんちゃん」などが放送され、大ブームとなっている。
中国の子供たちは日本のアニメを見て育ち、日本のアニメ産業は、国内のみならず中国や海外でも広く知られる存在となった。
このような日本アニメの華々しさを尻目に、中国がようやくアニメ産業の育成に乗り出したのは、2000年代に入ってからのことだった。
もともと中国アニメの歴史は日本よりも古く、1920年代に遡る。40年代には、上海で「西遊記」をベースにしたアニメが製作されたこともあった。業界関係者によると、「かの手塚治虫氏が中国アニメに触発された」という逸話も残っているぐらいである。
だが、文化大革命や経済発展の遅れなどの影響でアニメ産業は発達せず、欧米や日本に大きく水を空けられてしまった。その遅れを挽回しようと、政府は04年に「アニメ産業発展に関する若干の意見」を公布。アニメ産業の育成戦略を明確に打ち出したというわけだ。
これは、「第11次5ヵ年計画」(06~10年)の柱となる「国産自主技術、自主ブランドの育成・振興」にもつながる戦略であり、国産アニメの保護・発展を目的に、ゴールデンタイム(午後5時~8時)における海外アニメや実写の放送が禁止された。
他産業では、これまで外資の導入によって国内技術の向上を押し上げて来た中国だが、アニメ産業に関しては、海外製品を締め出して国産アニメを量産し、「国民にもっと国産アニメに目を向けてもらおう」という政策をとったのである。
アニメ産業育成のため、政府は国内17ヵ所に「アニメ産業基地」を設立。優遇措置を施して人材育成を行なったり、杭州で大々的にアニメ・フェスティバルを開催したりして来た。
その効果は大きかった。国のアニメ制作会社は02年の120社から06年には5400社へと急増し、市場規模も250億元(08年の中国政府統計)と飛躍的に伸びたのである。07年に中国国内で制作されたテレビアニメ制作量は約13万分と、前年比28%も増加しているほどだ。
作品は増えても質は向上せず
海賊版DVDばかりが売れる現実
しかし、一気に作品数やクリエーターの量は増えたものの、質の向上は“促成栽培”というわけには行かなかった。
テレビでヒットして映画化され、今年の旧正月に上映された「喜羊羊与灰太狼」が、国産アニメとして史上最高の興行収入を獲得したという明るいニュースはあったものの、市場規模はいまだ日本に及ばない。
残念ながら、日本やアメリカのアニメに対抗できるほど知名度が高い“ブランド”や“ヒーロー”は、まだ育っていないのが実状だ。
その理由は、いくつか考えられる。
第一に、中国のアニメキャラクターはこれまで歴史上の人物や神話などの物語からヒントを得て生まれたケースが多く、教育色や教訓色が強かったため、子供たちにとって「面白くない」ものが多かったことが挙げられる。
中国では、小説や映画でも「表現の自由」が制限されてきた経緯があり、それは今でも変わらない。そうした社会で育ったクリエーターたちが無意識のうちに自由な発想を持てないでいるという傾向もある。
第二に、知的財産問題が挙げられる。皮肉にも、ここ数年海外アニメを締め出して来たにもかかわらず、中国では相変わらず“海賊版DVD”が蔓延している。
そのため、国内アニメよりも海外アニメ(特に日本作品)の人気が依然として高く、テレビで放送されていない作品でも、海賊版やインターネットでダウンロードされてしまうという現象に悩まされて来た。
テレビ以外でも「面白い」アニメが見られる以上、視聴者がそちらに流れて行くのは当然だろう。
中国政府が国産アニメの育成を急ぐ背景には、「国産アニメ産業を整備して国民の意識を高めることにより、これまで批判されて続けてきた海賊版の撲滅にもつなげたい」という意向があるのだ。
中国にとって、知的財産権問題の改善は重要課題のため、逆に言えば「知財問題を解決しなければ、国内アニメ市場の正当な育成もままならない」ということになる。
今やメディアのコンテンツは、人やモノとは違い、インターネットを通じていとも簡単に「海を越えて」しまう。つまり、「知財問題とアニメの育成は表裏一体の問題」とも言えるのだ。
日本アニメの締め出しから合作へ
方向転換も模索する中国の悩み
しかし、ここに来て新たな動きも出始めている。それは、「日本のアニメを締め出すのではなく、逆にそれを積極的に受け入れて、自分たちも成長しよう」という試みだ。
たとえば、今年3月に行なわれた「東京国際アニメフェア2009」では、中国の文化部が大規模な出展を行ない、有力アニメ制作会社の作品を紹介すると共に、日中合作に向けたプロジェクトを発表した。
日中のアニメ業界に詳しいSTVジャパン(上海メディアグループの100%出資会社)コンテンツ・プロデューサーの佐々木潤二氏によると、「中国のアニメ専門学校から日本のアニメ専門学校への提携話なども相次いでいる」という。
このような動きに対して、日本のアニメ業界も食指を動かしている。
宮崎駿監督の作品が大ヒットし、今年2月には「つみきのいえ」(加藤久仁生監督)が米国アカデミー賞・短編映画賞を受賞するなど、日本のアニメ界は一見活況を呈しているかに見える。
だが、「日本のアニメ界を支えているのは中高年のクリエーターやアニメ作家たちであり、労働環境が厳しい業界の体質などもあって、クリエーターや作品の質が落ちている」(関係者)という見方もある。
そこで、国内市場は拡大の余地が見込めないため、「中国に活路を求めよう」という関係者が増えているのだ。
「日本のアニメ企業は知財問題がクローズアップされるようになって、中国進出に二の足を踏んでいる。しかし、今中国の若者に求められているコンテンツは、間違いなく『ジャパン』。日中が双方のよい面を認め合い、協力し合うことで、互いに垣根を越えた“内需拡大”を実現できるのではないか」
前出の佐々木プロデューサーは、こう指摘する。
部品や機械などの産業と違い、クリエイティブなコンテンツ産業は、国情や社会背景、文化などに影響され易い。そのため、情報交換や技術の伝承といった面で、難しい課題も残されている。
だが、ひとたびヒット商品を生み出せば、そこからキャラクターのフィギュア、文房具、衣服など数多くのライセンス商品が派生し、“ビッグチャンス”につながることは間違いない。
中国では、日本の週刊マンガ雑誌のように、毎週インターネット上の動画で連載を配信するサービスがあり、若者に絶大な人気を誇っている。また、中国で最も有名なポータルサイト「新浪」でも、無数の動画サイトを見ることができる。こうした日本には存在しないサービスも、日本企業にとっては魅力なのだ。
温家宝首相の発言により、今回図らずも内外で注目を浴びた中国アニメ産業の実態。今後、中国のアニメ業界はどうなって行くのだろうか? 5年後、10年後に、中国のアニメ業界から日本人も憧れるような“ヒーロー”が誕生する日が、果たして来るのだろうか?
盧前大統領聴取 変わらなかった韓国政治文化(5月4日付・読売社説)
韓国の最高検察庁が収賄容疑で盧武鉉前大統領を事情聴取した。
大統領在職中に、夫人と、実兄の娘婿が、有力後援者である靴製造会社会長から計600万ドル(約6億円)の外貨を受け取った不正資金供与疑惑に、盧武鉉氏が直接関与していたとの疑いだ。
盧武鉉氏は「在任中、カネの授受を私は知らなかった」と収賄容疑を否定していた。だが最高検は、発電所建設事業や企業買収への口利きを当て込む賄賂(わいろ)だった可能性もあるとみて追及した模様だ。
最高検は週内に、逮捕状請求の可否を決めるという。
韓国で検察当局から事情聴取された大統領経験者はこれで3人目だ。1995年に逮捕にまで至った全斗煥、盧泰愚両氏の場合は、収賄罪と反乱罪で、それぞれ無期懲役と懲役17年の実刑が確定し、後に赦免されている。
国家元首だった人物が収賄で取り調べられるというスキャンダルがまたも繰り返された。
14年前、日本円で300億円を超す巨額の収賄が糾弾された盧泰愚元大統領は、「在任当時の政治文化では避けられない一面もあった」と釈明したことがある。
問題は、強大な権限を持つ大統領の周辺で欲得ずくの怪しげなカネが乱舞するその「政治文化」が、その後も変わっていないように見えることだ。
2人の大統領経験者を断罪した金泳三元大統領は「カネは一切、受け取らない」と言明した。本人は無事でも、「小統領」と称されるほど人事に介入した次男は、企業から請託を受けた見返りに巨額の金品を受け取り逮捕された。
革新政権として登場した金大中元大統領も、3人の息子がそろって同様の容疑で摘発された。
盧武鉉氏の場合も、すでに企業買収に絡んで実兄が、今回の不正資金供与疑惑で側近だった元秘書官が逮捕されている。夫人と長男も事情聴取を受けている。
軍人政権や保守政権の「不正腐敗」を厳しく非難し、「清廉さ」や「道徳性」を強調して若い世代の支持を集めた左派政権といえども、権力の座につけば、例外ではなかったということだろう。
説明のつかないカネの授受が明るみに出たことで、盧武鉉氏の権威は失墜した。左派勢力の政治的な影響力も、相当そがれることになるに違いない。
地縁主義、血縁主義に支配されることなく政治資金の透明性をどう確保するか。保守派の李明博政権にとっても重い課題だろう。
Diet should start review of Constitution ASAP
On Constitution Day today, we should return once more to the supreme law and contemplate the future of the nation.
The National Referendum Law, which stipulates the process to amend the Constitution, was approved at the Diet two years ago. The law is epochal because the people need it to revise the basic law at their own initiative.
Since the Diet approved the referendum bill, however, discussions on constitutional amendment have lost momentum. A distorted power arrangement in which the ruling coalition parties have a majority of seats in the House of Representatives, but the opposition bloc controls the House of Councillors has obtained in the Diet since the upper house election in July 2007.This situation has led to needless confrontations between the ruling and opposition parties. As a matter of priority, the nation's lawmakers have the responsibility to take bold measures at the earliest opportunity to deal with the ongoing global economic crisis.
But the Diet has been dragging its feet in discussing constitutional revision.
Issues related to the top law are raised every day at the Diet.
The roles of the upper and lower houses must be reviewed as soon as possible since it is a fact that the "divided Diet" situation often results in the two chambers malfunctioning.
===
SDF's hands tied
If you listen to Diet deliberations on the dispatch of Maritime Self-Defense Force vessels to counter pirates in waters off Somalia or on countermeasures for North Korea's test launch of a ballistic missile, it becomes apparent that the government's interpretation of the nation's right of collective self-defense prevents the Self-Defense Forces from working effectively because the interpretation asserts that Japan possesses but may not exercise its collective self-defense right.
With the Diet approval of the National Referendum Law in 2007, panels set up at both Diet houses were supposed to address details of constitutional revision for the three years prior to the law being put into force.
But the panels still exist only in name because the Diet has failed to decide provisions relating to them, including the number of their members.
The ruling bloc finally presented a bill on the panels' functions to the lower house Steering Committee last month.
But the panels still exist only in name because the Diet has failed to decide provisions relating to them, including the number of their members.
The ruling bloc finally presented a bill on the panels' functions to the lower house Steering Committee last month. But the opposition bloc is unwilling to discuss it.
The Democratic Party of Japan criticized the ruling bloc for railroading the bill into the deliberation phase, accusing it of making political capital out of the Constitution.
But we think the DPJ is wrong on this point. The national referendum law was a composite of two bills proposed respectively by the Liberal Democratic Party and the DPJ. Nevertheless, the DPJ opposed the national referendum bill at the time it was deliberated for political motives ahead of the upper house election.
===
DPJ playing politics
The DPJ has many members who support constitutional revision, including its President Ichiro Ozawa and Secretary General Yukio Hatoyama. The results of a Yomiuri Shimbun poll also show that a majority of DPJ supporters agree on the need to revise the top law.
Nonetheless, the party has shied away from discussions on constitutional amendment apparently to avoid intraparty conflicts in advance of the lower house election as some DPJ members remain cautious about revising the top law. It is also obvious that, with an eye on the forthcoming election, the DPJ has considered the political implications of the issue and has decided to give priority to its electoral alliance with the Social Democratic Party and the other parties that are keen to keep Constitution as is.
The panels have already wasted two years. In addition to constitutional revision, they should move ahead quickly on other pending issues they are tasked with dealing with, such as the creation of laws related to granting voting rights to 18- and 19-year-olds.
Both the ruling and opposition parties should put more effort into getting the constitutional panels functioning as soon as possible.
On Constitution Day today, we should return once more to the supreme law and contemplate the future of the nation.
The National Referendum Law, which stipulates the process to amend the Constitution, was approved at the Diet two years ago. The law is epochal because the people need it to revise the basic law at their own initiative.
Since the Diet approved the referendum bill, however, discussions on constitutional amendment have lost momentum. A distorted power arrangement in which the ruling coalition parties have a majority of seats in the House of Representatives, but the opposition bloc controls the House of Councillors has obtained in the Diet since the upper house election in July 2007.This situation has led to needless confrontations between the ruling and opposition parties. As a matter of priority, the nation's lawmakers have the responsibility to take bold measures at the earliest opportunity to deal with the ongoing global economic crisis.
But the Diet has been dragging its feet in discussing constitutional revision.
Issues related to the top law are raised every day at the Diet.
The roles of the upper and lower houses must be reviewed as soon as possible since it is a fact that the "divided Diet" situation often results in the two chambers malfunctioning.
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SDF's hands tied
If you listen to Diet deliberations on the dispatch of Maritime Self-Defense Force vessels to counter pirates in waters off Somalia or on countermeasures for North Korea's test launch of a ballistic missile, it becomes apparent that the government's interpretation of the nation's right of collective self-defense prevents the Self-Defense Forces from working effectively because the interpretation asserts that Japan possesses but may not exercise its collective self-defense right.
With the Diet approval of the National Referendum Law in 2007, panels set up at both Diet houses were supposed to address details of constitutional revision for the three years prior to the law being put into force.
But the panels still exist only in name because the Diet has failed to decide provisions relating to them, including the number of their members.
The ruling bloc finally presented a bill on the panels' functions to the lower house Steering Committee last month.
But the panels still exist only in name because the Diet has failed to decide provisions relating to them, including the number of their members.
The ruling bloc finally presented a bill on the panels' functions to the lower house Steering Committee last month. But the opposition bloc is unwilling to discuss it.
The Democratic Party of Japan criticized the ruling bloc for railroading the bill into the deliberation phase, accusing it of making political capital out of the Constitution.
But we think the DPJ is wrong on this point. The national referendum law was a composite of two bills proposed respectively by the Liberal Democratic Party and the DPJ. Nevertheless, the DPJ opposed the national referendum bill at the time it was deliberated for political motives ahead of the upper house election.
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DPJ playing politics
The DPJ has many members who support constitutional revision, including its President Ichiro Ozawa and Secretary General Yukio Hatoyama. The results of a Yomiuri Shimbun poll also show that a majority of DPJ supporters agree on the need to revise the top law.
Nonetheless, the party has shied away from discussions on constitutional amendment apparently to avoid intraparty conflicts in advance of the lower house election as some DPJ members remain cautious about revising the top law. It is also obvious that, with an eye on the forthcoming election, the DPJ has considered the political implications of the issue and has decided to give priority to its electoral alliance with the Social Democratic Party and the other parties that are keen to keep Constitution as is.
The panels have already wasted two years. In addition to constitutional revision, they should move ahead quickly on other pending issues they are tasked with dealing with, such as the creation of laws related to granting voting rights to 18- and 19-year-olds.
Both the ruling and opposition parties should put more effort into getting the constitutional panels functioning as soon as possible.
次世代携帯に1兆円投資、4社が5年で 基地局や基幹通信網
NTTドコモなど携帯電話4社は高速データ通信を主用途とする「第3.9世代携帯電話」のインフラ整備に、5年間で総額約1兆円を投資する。過去5兆円をかけて整備してきた現行の第3世代携帯電話のインフラを一部活用しながら、新サービスに必要な基地局などを新規導入する。消費者への浸透が進む2010年代前半にかけて、設備のほか通信端末、サービスなどにも関連需要が広がりそうだ。
総務省は7日に3.9世代の免許申請を締め切る。ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルの4社は提出する申請書類に投資計画などを盛り込む。総務省は今夏にも免許を交付する予定。
政府、円借款の事業期間を半減 インフラ整備、手続き簡略化
政府は政府開発援助(ODA)の中核事業である円借款の仕組みを見直す。発展途上国のインフラ整備で、調査から融資実行を経て完成まで平均7年かかっている事業期間を半分程度に短縮する。返済不要な無償資金協力や民間の投融資と組み合わせる「混合型援助」も推進。道路、電気などの基礎インフラだけでなく、病院や学校などの施設建設まで一体的に支援する。早ければ来年度から実施し、日本の国際貢献をアピールする。
円借款は日本のODAの約半分を占める重要な外交手段。相手国や受注企業から、返済能力や案件の有効性に関する審査が煩雑との不満がでているのを踏まえ、手続きを簡略化し、期間を圧縮する。
首相、都議選より衆院選を優先 世襲制限に慎重姿勢
【プラハ=山内菜穂子】麻生太郎首相は3日夜(日本時間4日未明)の同行記者団との懇談で、衆院解散・総選挙の時期について「60日(ルールでの衆院再可決)などいろいろなことを考えないといけない」と述べ、国会での審議次第との認識を示した。その上で「衆院の選挙と都議選どちらが優先するかと言えば衆院だ」と述べ、7月12日投開票の東京都議選との同日選もあり得るとの見方を示した。
首相は民主党との党首討論について「今回は向こう(民主党)が申し込んできたやに聞いている。予算審議に支障をきたさないならぜひやりたい」と強調。さらに総選挙の争点については、安全保障体制や景気対策などを挙げた上で「国の将来にどちらの党がより責任を持てるか、将来にどちらが不安感がないか、いろいろな争点のつくり方がある」と述べた。
国会議員の世襲制限については「良い人を選び出す制度を考えるのが大事。開かれた政党として多くの人が出られる制度じゃないといけない」と述べ、争点とするのには慎重な見方を示した。
「諸君!」最終号で「正論」にエール
1日発売された「諸君!」6月号に、同日発売でライバル誌である「正論」6月号の広告が掲載された。休刊する「諸君!」の最終号でエールの交換が実現した。
広告はカラー見開き2ページ。「『諸君!』の40年に深甚なる敬意を表します。惜別の思いを決意にかえ、『正論』は“保守”の松明を掲げ続けます」とのメッセージに加え、「諸君!」を創刊した当時の文芸春秋の社長で名編集者とうたわれた池島信平氏のエッセーから「これからは保守派でゆきましょう」とのくだりを引用した。
広告のコピーを考えた上島嘉郎正論編集長は「正論」6月号に「『諸君!』休刊に思うこと」と題した一文を載せ、「社の枠を超えての“戦友”でもあった」と休刊を惜しんだ。今後の保守論壇について「勝負としての論争の場をつくることが“仕事”だと思っている」と決意を示した。
新型インフル発生情報、4月10日に入手 WHO、分析体制に問題
【ジュネーブ=藤田剛】世界保健機関(WHO)は、メキシコで新型インフルエンザが発生していることを示唆する情報を4月10日時点でインターネットの監視システムから入手していたことを明らかにした。ただ、入院した患者がすべて回復していたうえ、4月3日からは新しい事例が報告されていなかったため、実際の対策は取らずにメキシコなどから情報収集を続けたという。
その後インフルエンザとは別の「コロナウイルス」が原因という誤情報が入り、混乱。また、人の間で流行している季節性インフルエンザの可能性を排除できず、情報を分析する体制に問題があることが分かった。
「豚肉輸入規制は不当」WTOが声明
【ジュネーブ=藤田剛】世界貿易機関(WTO)は世界保健機関(WHO)や国連食糧農業機関(FAO)と連名で、新型インフルエンザの発生を理由に「豚とその関連食品に輸入制限措置を取ることは正当性がない」との声明を発表した。声明は「衛生的に取り扱われた豚肉と関連製品は感染源にならない」と強調し、各国に冷静な対応を取るよう呼び掛けた。
メキシコからの豚の輸入を制限する動きは各国に広がっており、メキシコはこうした措置を取る国々をWTOに提訴する方針を示している。
フォルクスワーゲン、ポルシェ買収を検討か 独メディア報道
【フランクフルト=下田英一郎】複数の独メディアは3日までに、欧州自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)が親会社の独ポルシェの自動車部門の買収を検討していると報じた。ポルシェはVW子会社化に伴う資金負担や主力の高級スポーツ車の販売不振で資金繰りが悪化しているとの見方がある。VWへの自動車事業売却で資金を調達し債務の返済などを進める狙いとみられる。
ポルシェはカタール政府とも出資交渉しているもよう。ただ、VWによるポルシェの自動車事業買収も含め、具体的な方策についてポルシェのオーナー一族内部でも意見が統一しておらず、実現性については微妙だ。
ポルシェは昨年3月、当時31%を出資していたVWの子会社化を表明。今年1月に50.8%まで引き上げ子会社化した。買収資金確保のため100億ユーロ(約1兆3700億円)規模の資金調達を繰り返してきたが、新車販売の低迷などからここにきて資金繰りが悪化。銀行団もポルシェへの融資に対して慎重な姿勢を見せ始めているとされる。
地方債務、5年ぶり増 追加対策で財政負担 09年度見込み
2009年度の地方の債務残高が5年ぶりに増加に転じることが確実になった。国の追加経済対策に伴う地方負担や景気後退による税収減に対応して、地方債の発行増を余儀なくされるためだ。地方の債務残高は公共事業の抑制などで減少してきたが、今後は改めて財政悪化の懸念が台頭し、住民サービスの低下を招く恐れもある。成長につながるかを見極めたうえで、効率的な資金の使い道が求められそうだ。
地方の債務残高は、自治体が出す地方債や、水道や交通事業などを営む公営企業の借金のうち自治体が普通会計で負担する分、国の交付税特別会計の地方が負担する債務で構成する。09年度の債務残高は当初197兆円と前年度に比べ横ばいで推移する見込みだったが、地方債の発行増で198兆円程度へと1兆円規模で膨らむ公算がある。
日経社説 人口危機の克服へ緩やかな出生目標を・チェンジ!少子化(5/4)
昨年、日本国内で生まれた日本人の赤ちゃんは109万2000人だった。亡くなった人は114万3000人なので、人口は1年間に5万1000人の自然減を記録したことになる。減少数は前年の約2.8倍である。
世界的な金融経済危機への対応に追われている間にも、もうひとつの重大な危機である人口減少が着実に忍び寄っている。経済危機の悪影響は民間の消費、投資の急減速、また企業収益や賃金の落ち込みというかたちで目に見えやすいので、対応策も素早く打ち出しやすい。
維持できぬ社会保障
これに対し人口危機、つまり少子化と高齢化の同時加速がもたらす悪影響は、すぐには表面化しない。とくに少子化が引き起こす生産年齢人口の減少は消費者、生産者、納税者の減少と同義であり、中長期で日本経済の成長力を阻む。
加えて、未曽有の水準に悪化した国や地方自治体の財政の再建を難しくし、年金や医療・介護保険など社会保障制度の持続性を脅かす。国力を保ち、国際社会での日本の存在感を示すためにも、少子化の流れを変える行動が必要なときである。
国立社会保障・人口問題研究所が2006年末に公表した将来人口推計(中位推計)は、日本の将来像について惨状を映し出す。
最初の難所は21年後、戦後生まれの団塊の世代が80歳をすぎる30年だ。総人口は1億1522万人。うち75歳以上の後期高齢者が20%を占め、15歳未満の子供は10%にとどまる。
その25年後の55年はもっと惨めだ。8993万人の総人口のうち後期高齢者が27%、子供は8%だ。出生数は45万7000人にすぎず、生産年齢人口は総人口の半数しかいない。
国内の経済活動は勢いを失い、過重な税や社会保障の負担が現役世代にのしかかる。年金制度を根本から改革しなければ高齢者への支給が行き詰まるのは明らかだ。今の出生低迷がもたらす当然の帰結である。
今、英国の総人口は日本の約半数だ。英政府の推計をもとにすると、移民政策と出生向上策が功を奏し、60年後に日本と逆転する可能性がある。今を生きる日本人として座して見ているわけにはいくまい。
まず一人ひとりが健全な危機感を共有する必要がある。そして国民合意のうえで、女性1人が生涯を通じて産むであろう子供数の推計値である合計特殊出生率について、長期にわたってゆるやかな目標を定める決断がいるのではなかろうか。
日本の出生率は団塊ジュニア世代が誕生した1970年代前半をすぎると、一貫して下がり続けてきた。74年までは総人口を横ばいに保てる水準に踏みとどまっていたが、93年に1.5を下回り、03年に初めて1.2台に落ち込んだ。人口学では出生率が1.3に満たない状態を超少子化と呼ぶ。06年以降は再び1.3台を回復しているが、日本がいつ超少子化国に逆戻りするか、予断を許さない状況である。
国立人口問題研の出生動向基本調査(05年)の結果によると、夫婦に聞いた理想の子供数は平均2.48人、予定する子供数は同2.11人だ。ごくふつうの夫婦は2人以上の子供を望んでいるのに、実際の出生率はそれを大きく下回る。
この「出生希望格差」を小さくしていく努力が国、自治体だけでなく企業経営者にも足りない。子育てという「労働」に対する家族間の協力も十分とはいえない。
これから10年が勝負
いうまでもなく子供を持つ持たないの選択は自由である。産みたいと切望しても子を授からない夫婦もいる。40万組を上回る夫婦らが不妊治療を受けているとみられる現実もある。そうした人に十分に配慮するのは当然だ。それを大前提としたうえで、目標を定めることが少子化克服への第一歩になる。
総合研究開発機構(NIRA)は2段構えの提案をしている。まず10年程度かけて出生率を1.6に回復させ、その間に年金制度や税制の再設計をする。その後、50年にかけて2.0強に戻していけば、総人口は9000万人での安定が望める。最初の10年が勝負どころだ。
日本は戦前、戦中の出産報国政策の苦い経験を持つ。「産めよ、殖やせよ」である。もちろん新しい目標は国家による強制ではない。国や自治体、また会社が若い夫婦に寄り添う姿勢を鮮明にし、彼、彼女らが理想を追い求めるのに必要な政策を成し遂げるための指針である。
フランスなど国民が強い意志をもって少子化の克服に取り組んできた国は着実に成果を出している。日本人もそれを手本とすべきである。
NTTドコモなど携帯電話4社は高速データ通信を主用途とする「第3.9世代携帯電話」のインフラ整備に、5年間で総額約1兆円を投資する。過去5兆円をかけて整備してきた現行の第3世代携帯電話のインフラを一部活用しながら、新サービスに必要な基地局などを新規導入する。消費者への浸透が進む2010年代前半にかけて、設備のほか通信端末、サービスなどにも関連需要が広がりそうだ。
総務省は7日に3.9世代の免許申請を締め切る。ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルの4社は提出する申請書類に投資計画などを盛り込む。総務省は今夏にも免許を交付する予定。
政府、円借款の事業期間を半減 インフラ整備、手続き簡略化
政府は政府開発援助(ODA)の中核事業である円借款の仕組みを見直す。発展途上国のインフラ整備で、調査から融資実行を経て完成まで平均7年かかっている事業期間を半分程度に短縮する。返済不要な無償資金協力や民間の投融資と組み合わせる「混合型援助」も推進。道路、電気などの基礎インフラだけでなく、病院や学校などの施設建設まで一体的に支援する。早ければ来年度から実施し、日本の国際貢献をアピールする。
円借款は日本のODAの約半分を占める重要な外交手段。相手国や受注企業から、返済能力や案件の有効性に関する審査が煩雑との不満がでているのを踏まえ、手続きを簡略化し、期間を圧縮する。
首相、都議選より衆院選を優先 世襲制限に慎重姿勢
【プラハ=山内菜穂子】麻生太郎首相は3日夜(日本時間4日未明)の同行記者団との懇談で、衆院解散・総選挙の時期について「60日(ルールでの衆院再可決)などいろいろなことを考えないといけない」と述べ、国会での審議次第との認識を示した。その上で「衆院の選挙と都議選どちらが優先するかと言えば衆院だ」と述べ、7月12日投開票の東京都議選との同日選もあり得るとの見方を示した。
首相は民主党との党首討論について「今回は向こう(民主党)が申し込んできたやに聞いている。予算審議に支障をきたさないならぜひやりたい」と強調。さらに総選挙の争点については、安全保障体制や景気対策などを挙げた上で「国の将来にどちらの党がより責任を持てるか、将来にどちらが不安感がないか、いろいろな争点のつくり方がある」と述べた。
国会議員の世襲制限については「良い人を選び出す制度を考えるのが大事。開かれた政党として多くの人が出られる制度じゃないといけない」と述べ、争点とするのには慎重な見方を示した。
「諸君!」最終号で「正論」にエール
1日発売された「諸君!」6月号に、同日発売でライバル誌である「正論」6月号の広告が掲載された。休刊する「諸君!」の最終号でエールの交換が実現した。
広告はカラー見開き2ページ。「『諸君!』の40年に深甚なる敬意を表します。惜別の思いを決意にかえ、『正論』は“保守”の松明を掲げ続けます」とのメッセージに加え、「諸君!」を創刊した当時の文芸春秋の社長で名編集者とうたわれた池島信平氏のエッセーから「これからは保守派でゆきましょう」とのくだりを引用した。
広告のコピーを考えた上島嘉郎正論編集長は「正論」6月号に「『諸君!』休刊に思うこと」と題した一文を載せ、「社の枠を超えての“戦友”でもあった」と休刊を惜しんだ。今後の保守論壇について「勝負としての論争の場をつくることが“仕事”だと思っている」と決意を示した。
新型インフル発生情報、4月10日に入手 WHO、分析体制に問題
【ジュネーブ=藤田剛】世界保健機関(WHO)は、メキシコで新型インフルエンザが発生していることを示唆する情報を4月10日時点でインターネットの監視システムから入手していたことを明らかにした。ただ、入院した患者がすべて回復していたうえ、4月3日からは新しい事例が報告されていなかったため、実際の対策は取らずにメキシコなどから情報収集を続けたという。
その後インフルエンザとは別の「コロナウイルス」が原因という誤情報が入り、混乱。また、人の間で流行している季節性インフルエンザの可能性を排除できず、情報を分析する体制に問題があることが分かった。
「豚肉輸入規制は不当」WTOが声明
【ジュネーブ=藤田剛】世界貿易機関(WTO)は世界保健機関(WHO)や国連食糧農業機関(FAO)と連名で、新型インフルエンザの発生を理由に「豚とその関連食品に輸入制限措置を取ることは正当性がない」との声明を発表した。声明は「衛生的に取り扱われた豚肉と関連製品は感染源にならない」と強調し、各国に冷静な対応を取るよう呼び掛けた。
メキシコからの豚の輸入を制限する動きは各国に広がっており、メキシコはこうした措置を取る国々をWTOに提訴する方針を示している。
フォルクスワーゲン、ポルシェ買収を検討か 独メディア報道
【フランクフルト=下田英一郎】複数の独メディアは3日までに、欧州自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)が親会社の独ポルシェの自動車部門の買収を検討していると報じた。ポルシェはVW子会社化に伴う資金負担や主力の高級スポーツ車の販売不振で資金繰りが悪化しているとの見方がある。VWへの自動車事業売却で資金を調達し債務の返済などを進める狙いとみられる。
ポルシェはカタール政府とも出資交渉しているもよう。ただ、VWによるポルシェの自動車事業買収も含め、具体的な方策についてポルシェのオーナー一族内部でも意見が統一しておらず、実現性については微妙だ。
ポルシェは昨年3月、当時31%を出資していたVWの子会社化を表明。今年1月に50.8%まで引き上げ子会社化した。買収資金確保のため100億ユーロ(約1兆3700億円)規模の資金調達を繰り返してきたが、新車販売の低迷などからここにきて資金繰りが悪化。銀行団もポルシェへの融資に対して慎重な姿勢を見せ始めているとされる。
地方債務、5年ぶり増 追加対策で財政負担 09年度見込み
2009年度の地方の債務残高が5年ぶりに増加に転じることが確実になった。国の追加経済対策に伴う地方負担や景気後退による税収減に対応して、地方債の発行増を余儀なくされるためだ。地方の債務残高は公共事業の抑制などで減少してきたが、今後は改めて財政悪化の懸念が台頭し、住民サービスの低下を招く恐れもある。成長につながるかを見極めたうえで、効率的な資金の使い道が求められそうだ。
地方の債務残高は、自治体が出す地方債や、水道や交通事業などを営む公営企業の借金のうち自治体が普通会計で負担する分、国の交付税特別会計の地方が負担する債務で構成する。09年度の債務残高は当初197兆円と前年度に比べ横ばいで推移する見込みだったが、地方債の発行増で198兆円程度へと1兆円規模で膨らむ公算がある。
日経社説 人口危機の克服へ緩やかな出生目標を・チェンジ!少子化(5/4)
昨年、日本国内で生まれた日本人の赤ちゃんは109万2000人だった。亡くなった人は114万3000人なので、人口は1年間に5万1000人の自然減を記録したことになる。減少数は前年の約2.8倍である。
世界的な金融経済危機への対応に追われている間にも、もうひとつの重大な危機である人口減少が着実に忍び寄っている。経済危機の悪影響は民間の消費、投資の急減速、また企業収益や賃金の落ち込みというかたちで目に見えやすいので、対応策も素早く打ち出しやすい。
維持できぬ社会保障
これに対し人口危機、つまり少子化と高齢化の同時加速がもたらす悪影響は、すぐには表面化しない。とくに少子化が引き起こす生産年齢人口の減少は消費者、生産者、納税者の減少と同義であり、中長期で日本経済の成長力を阻む。
加えて、未曽有の水準に悪化した国や地方自治体の財政の再建を難しくし、年金や医療・介護保険など社会保障制度の持続性を脅かす。国力を保ち、国際社会での日本の存在感を示すためにも、少子化の流れを変える行動が必要なときである。
国立社会保障・人口問題研究所が2006年末に公表した将来人口推計(中位推計)は、日本の将来像について惨状を映し出す。
最初の難所は21年後、戦後生まれの団塊の世代が80歳をすぎる30年だ。総人口は1億1522万人。うち75歳以上の後期高齢者が20%を占め、15歳未満の子供は10%にとどまる。
その25年後の55年はもっと惨めだ。8993万人の総人口のうち後期高齢者が27%、子供は8%だ。出生数は45万7000人にすぎず、生産年齢人口は総人口の半数しかいない。
国内の経済活動は勢いを失い、過重な税や社会保障の負担が現役世代にのしかかる。年金制度を根本から改革しなければ高齢者への支給が行き詰まるのは明らかだ。今の出生低迷がもたらす当然の帰結である。
今、英国の総人口は日本の約半数だ。英政府の推計をもとにすると、移民政策と出生向上策が功を奏し、60年後に日本と逆転する可能性がある。今を生きる日本人として座して見ているわけにはいくまい。
まず一人ひとりが健全な危機感を共有する必要がある。そして国民合意のうえで、女性1人が生涯を通じて産むであろう子供数の推計値である合計特殊出生率について、長期にわたってゆるやかな目標を定める決断がいるのではなかろうか。
日本の出生率は団塊ジュニア世代が誕生した1970年代前半をすぎると、一貫して下がり続けてきた。74年までは総人口を横ばいに保てる水準に踏みとどまっていたが、93年に1.5を下回り、03年に初めて1.2台に落ち込んだ。人口学では出生率が1.3に満たない状態を超少子化と呼ぶ。06年以降は再び1.3台を回復しているが、日本がいつ超少子化国に逆戻りするか、予断を許さない状況である。
国立人口問題研の出生動向基本調査(05年)の結果によると、夫婦に聞いた理想の子供数は平均2.48人、予定する子供数は同2.11人だ。ごくふつうの夫婦は2人以上の子供を望んでいるのに、実際の出生率はそれを大きく下回る。
この「出生希望格差」を小さくしていく努力が国、自治体だけでなく企業経営者にも足りない。子育てという「労働」に対する家族間の協力も十分とはいえない。
これから10年が勝負
いうまでもなく子供を持つ持たないの選択は自由である。産みたいと切望しても子を授からない夫婦もいる。40万組を上回る夫婦らが不妊治療を受けているとみられる現実もある。そうした人に十分に配慮するのは当然だ。それを大前提としたうえで、目標を定めることが少子化克服への第一歩になる。
総合研究開発機構(NIRA)は2段構えの提案をしている。まず10年程度かけて出生率を1.6に回復させ、その間に年金制度や税制の再設計をする。その後、50年にかけて2.0強に戻していけば、総人口は9000万人での安定が望める。最初の10年が勝負どころだ。
日本は戦前、戦中の出産報国政策の苦い経験を持つ。「産めよ、殖やせよ」である。もちろん新しい目標は国家による強制ではない。国や自治体、また会社が若い夫婦に寄り添う姿勢を鮮明にし、彼、彼女らが理想を追い求めるのに必要な政策を成し遂げるための指針である。
フランスなど国民が強い意志をもって少子化の克服に取り組んできた国は着実に成果を出している。日本人もそれを手本とすべきである。