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「通話料定額でauを元気にする」KDDI小野寺社長インタビュー
 昨年度の携帯電話契約の純増数が4番手に落ち込んだKDDI。サービス・端末とも目立つものが少なく、かつての勢いは失われたかに見えた。そんななか、起死回生とばかりに今夏商戦に投入するのが、音声通話定額サービスだ。果たして導入にあたってはどのような背景や戦略があったのか。KDDIの小野寺正社長に話を聞いた。
■インパクトを優先した「通話定額」
 KDDI(au)の「指定通話定額」は、指定した3人までのauの通話先に24時間定額で通話できるというもの。携帯業界では、ソフトバンクモバイルが2007年に同じキャリア同士の1~21時までの音声通話を定額にする「ホワイトプラン」を導入し、ユーザーの獲得を進めてきた。にもかかわらず、KDDIが今まで通話定額制に踏み切らなかった理由の1つは「社内の緩みにあった」と小野寺社長は話す。
 「(2006年の)番号ポータビリティー制度開始からしばらくユーザーの獲得が順調だったため、いつしか社内的に『緩み』が出ていた。(料金プランでも)積極的にイノベーションを起こさなかったため、『通話料金は、なんとなくソフトバンクが安いようだ』というイメージが世間に定着してしまった」
 今夏商戦で、料金競争をまず仕掛けてきたのはNTTドコモだった。4月28日にデータ通信料のパケット定額プラン「パケ・ホーダイ ダブル」の下限を月額1029円から490円に引き下げると発表したのだ。NTTドコモの発表から24時間と空けずにソフトバンクモバイルも追随し、同様の「パケットし放題2(仮称)」を発表した。これに対してKDDIは5月25日、パケット定額制の下限を他社よりさらに低い390円にしたうえで、指定通話定額を発表した。夏商戦では料金の安さで頭一つ抜け出すことに成功したといえるだろう。
 「とにかくもう一度、auを元気にしたかった。単純にNTTドコモを後追いして値下げするだけでは意味がない。パケット定額プランの下限を390円にするだけでなく、通話定額も390円で行けと指示した。かなりのお客様にとってインパクトのある料金になるはずだ」
 通話定額プランはかなり前から準備が進んでいたようだが、他社の動向などを計った結果、今回のタイミングとなったようだ。こだわったのは「2つの390円」というわかりやすさ。まずはテレビCMで2つの390円を訴求し「料金のことを詳しく知ってもらうためにauショップに足を運んでもらいたい」(小野寺社長)という。
■“余剰設備”を逆手にとる
 KDDIの通話定額プラン発表に対し、いまのところNTTドコモとソフトバンクモバイルは追随していない。24時間の通話定額はウィルコムとイー・モバイルも導入しているが、両社ともユーザーが少なくネットワークに余裕があるからこそ実現できるものなのだ。5400万ユーザーを抱えるNTTドコモ、2000万ユーザーのソフトバンクモバイルが、24時間の通話定額を導入するとなると、ネットワークに負荷がかかり、電話がつながりにくくなるなどのリスクが大きい。
 ではなぜ、3000万以上のユーザーを持つKDDIは24時間定額が可能なのだろうか。その答えは「周波数の切り替え」にあった。
 「幸か不幸か、KDDIは現在、使用する周波数を旧800MHz帯から新800MHz帯へと切り替える作業を行っていて、新800MHzと2GHzのそれぞれの基地局を整備している。インフラとしては二重投資だが、ネットワークのキャパシティーがダブルになるので、定額制で音声通話が増えても当面品質に問題がない」
 「(2012年に)切り替えが終了したときは新たにインフラを整備する必要があるだろうが、ユーザー数を見極めてから判断すればいい。時間的な余裕は充分にあり、ユーザーに(通話やデータ通信の)トラフィックで迷惑をかけることはない」
 KDDIは旧800MHzから新800MHzへの切り替えで5000億円以上の設備投資を行う。直接収益を生まない投資となるところだったが、結果としてネットワークのキャパシティーに余裕が生じ、通話定額という新たな武器を産むことができたのだ。
 とはいえ、通話定額制は収入面では100億円単位のマイナス要因になると予想される。パケット定額の下限も含めた390円という金額は、他社を下回る数字でインパクトを出すのが狙いだが、当初の計画より低い価格設定だという。果たして採算面で勝算はあるのか。
 「通話定額の利用が増えれば、確かに減収になる。だが、魅力ある料金プランなら、新しいユーザーを獲得できる。そこで収入を増やすことができる。これまでは減収になる要素をネガティブにとらえていたが、増収につなげるためのインパクトを優先させた」
■KCP+初期ユーザーのために「特別なこと」やりたい
 08年2月から順次導入してきたau端末の共通プラットフォーム「KCP+」は、KDDIが新規契約獲得で不振に陥った原因の1つとも言われる。もともとプラットフォームの共通化で、各メーカーの開発コストを下げ、端末の調達費用を抑えることを狙っていた。しかし、プラットフォームの品質が低い段階で端末に搭載してしまったため、製品化された後で不具合が続出。操作に対する反応速度も遅く、ユーザーの不満を招いた。
 「確かにKCP+の初期端末は、それ以前の機種に比べてパフォーマンスが落ちていたのは事実。だが、この春モデルからはリカバリーしていると思う」
 筆者も最近のモデルはようやくまともに使えるようになったとの印象を持っている。夏モデルでは、microSDHCカードへの対応やタッチパネル搭載など、他社に比べて見劣りしていた機能も追いついてきた。KCP+についてはプラットフォームとしての完成度をさらに高めるとともに、既存ユーザーに対するフォローも必要と考えているようだ。
 「初期端末のユーザーにとってKCP+はイメージがよくないと思うので、特別なことをやっていきたい。例えば、次の機種にグレードアップしやすいような施策を考えている」
 小野寺社長は「特別なこと」の詳細は明らかにしなかったが、何らかの施策を用意してくるとみられる。
■LTE導入は「頭が痛い」
  KDDIがかつて絶好調だったころは、他社に先駆けてパケット定額制を導入し、着うたなどのコンテンツでも業界をリードした。その原動力となったのが、「CDMA2000」をベースとした通信規格だ。日本ではKDDIを除く各社が第3世代サービスへの移行で「W-CDMA」を選択するなか、KDDIはCDMA2000というデータ通信に強いインフラを採用したからこそ、料金やサービスで差異化できた。
 一方、W-CDMAが世界的に普及すると、今度は国際的に端末を調達しやすいNTTドコモやソフトバンクモバイルが有利になっていく。差異化戦略が苦戦を招いているともいえるのだ。
 2012年以降、KDDIは次世代の通信規格として他社と同じ「LTE」を導入する。世界的に普及すると見られる技術を用いることでコスト面や端末調達力での不利は解消されるが、ネットワークでは差異化できず、「KDDIらしさ」が失われる恐れもある。
 LTE時代にどう存在感を打ち出していくかはKDDIの大きなテーマ。小野寺社長は「その点は、頭が痛いところ」と認め、サービスの開発や端末の多様化が重要になると話す。
 「4、5年前、携帯電話の市場は利便性だけで伸びていた。ユーザーは端末の選択肢が少なくても買ってくれた。昔の腕時計は正確に時刻を刻むだけでよかったが、今は様々なデザインやブランドがあり値段も数千円から数百万円まである。携帯電話も同じでニーズが多様化している。特定のターゲット層にあわせてバラエティーよく出すしかない。(08年1月にサービスを開始した)au Smart Sportはすでに100万契約を突破した。こういったところをさらに開拓していくつもりだ」
 「CDMA2000を使っていたとか次はLTEとかいう話は、ユーザーには関係のないこと。今までもKDDIがCDMA2000で、NTTドコモとソフトバンクモバイルがW-CDMAだと知っている人はあまりいない。方式がどうこうというのは事業者サイドからは重要だし、専門家からみればおもしろいと思うが。今後、LTEが入ってきたときに何をやるのか。ここが重要で、われわれも真剣に検討している」
 KDDIは12年までは現在のEV-DO Rev.Aをマルチキャリア化することで、通信速度を高速化させていき、12年にLTEを導入する計画を立てている。NTTドコモは10年にもLTEのサービスを開始する予定で、数年遅れての導入となる。小野寺社長は、この12年という時期には「2つの意味がある」と解説する。
 「1つは周波数の再編で、現在の800MHz帯では15MHz幅あるうち5MHzしか使えない。しかし、12年7月に再編が一段落すると800MHz帯で10MHz幅の連続した周波数が空き、KDDIがそれを有効活用できるメリットがある」
 もう1つの理由は端末。LTEは、12年ごろまではパソコン向けのデータ端末が中心で、携帯電話本体にLTEを安価に内蔵できるチップセットが開発されるのは難しいと見ているのだ。
 「幸いなことにKDDIグループにはモバイルWiMAXのUQコミュニケーションズがいるので、データ端末市場はUQに戦ってもらう。KDDI本体はLTEを携帯電話でどれだけ使ってもらえるかを重視したい」
■設備投資は携帯電話会社の生命線
 世界同時不況で多くの企業が業績悪化に苦しむなか、携帯各社は軒並み好決算を維持した。総務省は端末の販売制度を見直すことにより、メーカーの独自性や競争力を高めようと試みたが、結果は市場が縮小し端末メーカーが悲鳴を上げている状態だ。疲弊するメーカーと体力をつけるキャリアとの関係を小野寺社長はどう見ているのか。
 「なにもメーカーをいじめているつもりはない。携帯電話事業者はデータ通信量が増えたり、音声通話が増えたりすると、常に設備投資がいる。この設備投資ができなくなると携帯電話の進歩がなくなる。進歩をするための設備投資の余力がないと、事業者として失格だと思っている」
 かつて、KDDIも2兆2000億円の借金を抱え、返済を優先するために設備投資を絞った時期があった。しかし利用者の増加により通話中に頻繁に切れるようになったり、データ通信速度が遅くなったりする「ユーザーに迷惑のかかる投資抑制はやらなかった」と振り返る。
 「設備投資は重要。通信は固定も含めて、国民生活の重要インフラであり、ユーザーに迷惑をかけてはいけない。『お客様満足度』を上げないと、KDDIのイメージは悪くなる。それに対する設備投資は続けていく」

 小野寺社長がインタビュー中に繰り返し強調したのは「ユーザーのイメージ」だ。料金体系やサービス、端末の性能で劣っているつもりはなかったが「他社にイメージ戦略で完敗していた。1年半前から実感してきた」と漏らす。
 今後は、価格の安さや端末の先進性、ネットワーク品質の高さなどを「総合的に訴求をしていく」という。小野寺社長は「言葉は悪いが、イメージだけよくするやり方はいくらでもある。実質が伴わないといけない」と語る。料金オプランや端末開発でようやく守勢を脱してきたことで、イメージ戦略でも攻めに出る時期にきたようだ。
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ゲームの体感系コントローラー競争はきっと盛り上がらない <COLUMN>
 家庭用ゲーム機3社の新しい競争の舞台としてコントローラーに注目が集まっている。米ロサンゼルスで6月2~4日に開催されたゲーム見本市「E3」では各社が体感系のコントロール技術を前面にアピールした。だが、ユーザーはどこまで付いて行くだろうか。
 任天堂の「Wii」は加速度センサー付きの体感系コントローラーという斬新な入力インターフェースで大きな成功を収め、さらに「Wii Fit」などのコンセプト提案型商品で体感系を発展させてきた。それから遅れること2年半。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)とマイクロソフトも任天堂の追撃を目標とするデバイスを発表してきた。
 しかし、私にはこの分野がメーンストリームとして「このまま盛り上がり続けるのだろうか」という、ぬぐいきれない疑念がある。それらのデバイスでどんな体験を得られるのかをユーザーが簡単に予測できてしまう「底が見える時期」に、そろそろ入り始めているように感じられるからだ。そのコントローラーのためにみんながお金を払うかという問題である。
■PS3、Xbox360の新技術が抱える課題
 SCEが発表した「プレイステーション3(PS3)」の新型コントローラーは、専用カメラ「PLAYSTATION Eye」と連動して体感的な操作を実現するという。E3の基調講演では、プロトタイプを使った技術デモを披露した。PLAYSTATION Eyeのカメラでコントローラーのライトを認識して位置情報を検出し、バットや弓のように使うという内容だ。
 発売は2010年春の予定だが、最大の課題は価格だろう。PS3にはキーボード、ワイヤレスヘッドセット、マイク機能も持つPLAYSTATION Eyeなどの周辺機器があるが、どれも5000円前後とそれなりに高く、あまり普及していない。新コントローラーも例えばPLAYSTATION Eyeとセットで6000円といった価格になるとすれば、よほど魅力的なソフトウエアでも出ない限り、ユーザーは振り向かないだろう。
 マイクロソフトはどうだろうか。E3で発表した「Project Natal」は、カメラ、空間の奥行きを認識するセンサー、マイクを組み合わせた専用ハードウエアだ。コントローラーなどのデバイスを必要とせず、人間の身体そのものの動きを捕捉して、各種の機能を割り当てられるという。格闘ゲームなども人の身振り手振りで楽しめるというわけだ。
 ただ、マイクロソフトが基調講演で流したイメージムービーは、ちょっとやりすぎという気がする。プレーヤーの身体の動きとテレビ画面の動きに一切ズレがないのだが、どんなに完成度の高いハードウエアでもここまで理想的に動作するとは思えない。
 レースゲームのシーンでは、子供がハンドルを持っているような格好をして腕を動かすだけで、車が遅延なく動いていた。これほどの精度はさすがにあり得ないだろうと思う。
 マイクロソフトはProject Natalの開発キットをゲーム会社向けにリリースすると発表したが、実際のソフトが出てこないと本当に使い物になるのかどうかイメージしにくい。価格帯もどの程度になるかわからないが、ユーザーが買う気になるかどうかはSCEの場合と同様、疑問符がつく。
 PS3とXbox360の新デバイスが実現する機能はまったく違うものだ。そのため、両ハードへのマルチプラットホーム戦略をとるゲーム会社は採用しにくいという別の問題もある。デバイスの特性をフルに引き出そうとすれば、専用タイトルとして開発するしかないが、多くの開発会社は当初は尻込みするだろう。
 どんなに魅力的な技術でも、一定のユーザー数を見込めなければゲーム市場では意味がない。どちらの新デバイスも、現時点では普及の確実性が見えないという点で弱い。
■Wiiコントローラーの手ごたえのなさ
 一方、任天堂はジャイロセンサーを搭載して傾きを検出する「Wiiモーションプラス」をスポーツゲーム「Wii Sports Resort」とともに6月25日に発売する。WiiモーションプラスはWiiコントローラーの機能をさらに拡張する付属デバイスだが、やはり同じ課題を抱えている。
 任天堂ホームページの「社長が訊く『Wiiモーションプラス』篇」の中で、岩田聡社長はWiiコントローラーについて、「ゲームの初心者の方でも楽しめるようにすることは実現できたのですが、ゲームを遊ぶことに、とても熱心な人たちからすると、『確かに間口が広くておもしろいし新鮮だけど、浅いよね』という評価をいただいたのも事実でした」と課題を述べ、Wiiモーションプラスでその奥行きを広げる狙いを語っている。
 ただ、Wiiの発売から2年半、私が実際に遊んで感じるようになったのは、この先どんな体感系の新デバイスが登場しても、それが広げようとする「体験」の内容と幅はある程度想像が付くだろうという思いだ。もちろん、最終的な製品としてのWii Sports Resortをきちんとプレーしたわけではないので断定はできないが、どんな経験ができるのかは何となく予測がつく。
 任天堂もE3で、Wiiモーションプラスの面白さをイメージムービーでアピールしていたが、当然ながらスポーツでもレースでも、実際にやるのとテレビ画面相手に疑似体験するのとでは大きな差がある。ゲームは映像と音響、コントローラーの振動を駆使してユーザーにフィードバックしようとするが、何か空を切っているような手ごたえのなさが常について回る。そのことに多くのユーザーが気が付き始めていると思う。
■逆方向に進化するゲームのコントローラー
 その根底には、ゲーム機のコントローラーが一般的なテクノロジーとは逆方向への進化をたどっているという特異性質がある。
 インターフェース論で有名なドナルド・A・ノーマン氏は著書「未来のモノのデザイン」で、「機械+人間」の共生的な関係とテクノロジーの進化について分析している。
 乗り物の例でいうと、まず車以前の「馬+騎手」では、お互いがコミュニケーションを取って、人間は馬が生物として発する様々な微細な情報を解釈しながら馬に命令する。この的確な共生関係により「危険を避けながらどこかに向かう」というパフォーマンスを出していた。
 その関係は「車+ドライバー」になっても変わらない。ドライバーは車から伝わる微細な振動やエンジン音などの様々な情報を解釈して、人間が機械に合わせるように運転してパフォーマンスをあげる。
 ところが、技術が進むにつれて、車が人間に伝える情報は次々に隠蔽されるようになり、機械側が自動的に判断する範囲が増える。例えば、電気自動車ではエンジン音や振動がないので加速の感覚をつかみにくい。人間が手足を動かして操作しなければならない部分はどんどん減っていく。
 ゲーム機の場合はこの進化の方向が反対だ。技術が発達するにつれて、ユーザーから機械に伝える情報を逆に増やしているのである。体感系コントローラーはまさに、ユーザーが手足を動かしてハードに入力する情報を増やす目的で登場している。
 しかし、出力側のテレビには大きな変化が起きているわけではない。機械が人に伝える情報はそれほど増えていないので、現実世界を真似れば真似るほど、フィードバックされる情報の物足りなさが浮かび上がる宿命にある。
 「マリオカートWii」を「Wiiハンドル」を使ってプレイするとき、ハンドルには実際の自動車のような負荷はかからない。可能であれば、エンジンの振動も路面のでこぼこも伝えたいというのが任天堂の開発者の思いだろうが、それでは業務用ゲーム機である。
 この問題にはPS3、Xbox360の新しいデバイスも同じく直面するだろう。Project Natalの何もない空中に手を伸ばしてバーチャルなハンドルを回すという体験が楽しいとは思えない。
■デバイスで勝負する時期はそろそろ終わり
 任天堂の体感系コントローラーがこれまで成功してきたのは、誰もが体験を想像できる「共通性」の高い分野を攻めたというアプローチの巧みさが大きい。例えば、「Wii Sports」シリーズには、誰もがよく知っている競技しか選択されていない。
 こうした分野では、ゲーム画面やコントローラーが提供する経験に限界があっても、ユーザー側の想像力で不足する刺激が補完されるという効果がある。ただ、ユーザーは早晩その事実を学習し、最初の驚きは急速に「飽き」に変わっていく。
 もちろん、誰もが想像力で補完できるような共通性を持つ新しいゲームを次々に開発していけば、新鮮さを保てるだろうが、そうした共通性はすでにかなり「消費」されている。後発デバイスになればなるほど、ユーザーに新しい驚きを提供するのは難しくなる。
 ただ、コントローラーの限界がユーザーに認知されることで、逆にゲーム開発者の本来のクリエイティビティーを活かすチャンスが生まれることもある。例えば誰もがもう終わりと思っていた「ゲームボーイ」の最後期に、通信ケーブルを利用して大成功を収めた「ポケモン」が登場したように、ハードの限界が見えることで逆に大ヒットタイトルが生まれることはよくある。
 今回のE3では、どのハードからもそういう可能性はまだ見えてこなかった。デバイスの目新しさで勝負する時期はそろそろ終わり、それを活かしたソフトで勝負する時期に移りつつあるように見える。



大手新聞社決算、広告・部数落ち込みで各社減収
 新聞全国紙5社の決算が出そろった。インターネットの普及や若年層の紙離れなどで新聞の販売部数が落ち込んだのに加え、昨年秋以降の急速な景気後退で広告収入が大きく減少し、そろって減収を記録するなど各社とも厳しい決算となった。このため、新たな収益源の確保に向け、ネット事業の強化などに取り組む構えをみせている。
 新聞事業の収支を示す単体の業績をみると、朝日新聞社と毎日新聞社が広告収入の落ち込みに経費削減が追いつかず、営業赤字に転落した。朝日が営業赤字を計上するのは初めて。毎日は最終損益でも15年ぶりの赤字となった。
 日本経済新聞社は、景気の悪化で経済情報を求める読者が増えたことで「部数は堅調に推移した」(広報グループ)ものの、広告収入の落ち込みが響いて減収減益となった。また、産経新聞社は、夕刊フジやサンケイスポーツの販売部数が減少し、単体の営業利益を大幅に減らした。連結業績のみを公表した読売新聞グループ本社も最終赤字を記録した。
 各社がそろって減収となったのは、広告収入の落ち込みが大きい。電通がまとめた年間広告費によると、新聞広告は平成12年をピークに減少し、昨年秋の経済危機で企業が広告出稿を抑えたことで、20年には前年比12・5%減と大幅な落ち込みをみせた。
 厳しい経営環境にさらされている各社では、新たな収益源を模索しており、ネット事業の強化などに取り組んでいる。ただ、ネット広告も単価の下落に見舞われており、収益の確保には課題を残している。



首相、当初は「西川交代」…竹中・小泉コンビが封じ込め
 麻生首相は当初、日本郵政の西川善文社長を交代させる意向だった。
 首相の意を受けた鳩山氏は5月に入り、日本郵政の取締役人事を決める指名委員会の一部委員に「首相は西川氏を代えるつもりだ」と伝え、「西川辞任」に向けた多数派工作を始めた。
 しかし、直後から巻き返しにあう。
 指名委員会は、委員長を務める牛尾治朗・ウシオ電機会長を始め、郵政民営化など、小泉元首相が進めた構造改革に積極的な財界人が名を連ねる。そうした委員を通じて鳩山氏の動きを察知したのは、構造改革の旗振り役だった竹中平蔵・元総務相だった。
 竹中氏は小泉氏に相談した。小泉氏は2005年、竹中氏を通じて西川氏と知り合い、社長就任を要請した経緯がある。すぐに指名委の委員を「西川続投」で説得して回り、首相や鳩山氏の動きを封じ込めた。
 結局、指名委は5月18日、西川氏を続投させる方針を決めた。
アップル「iPhone 3G S」発売で割を食う米企業 <COLUMN>
 今週の米オンラインメディアはアップル「iPhone 3G S」の話題で持ちきりだ。新機能の詳しい解説や買い換えユーザー向けの料金プランといった情報があふれ、先週発売されたパームのiPhoneキラー「Pre」はすっかり影が薄くなってしまった。様々な対抗機種が登場するなか、米国ではiPhoneの独走が続いている。おかげで独占販売権を持つAT&Tも好調だが、メディアは今回もアップルを絶賛する一方、AT&Tには容赦ない批判をぶつけている。
■「iPhone 3G」発売時の二の舞に
 昨年の「iPhone 3G」から約1年。新モデルのiPhone 3G Sが6月8日にアップルの開発者向けイベント「WWDC 2009」で発表された。最後の「S」は、ソフトウエアかシークレットかなどと当て推量が飛び交ったが、AT&Tによれば「スピード」の略称だそうだ。新チップと大型メモリーを搭載し、処理速度は現行モデルの最高2倍に高まったという。
 アップルがサイトに掲載したビデオを見ると、確かにアプリケーションの起動が速くなり、サクサクと動いている。今回はカメラに自動焦点機能を加え、ビデオの撮影・編集もできる。また、iPhone OSも「3.0」にバージョンアップされ、待望のコピー・アンド・ペーストに横長キーボード、ブラウザー「Safari」の機能拡張と、改善点が盛り沢山だ。
 毎回、新機能でユーザーを魅了するiPhoneだが、その割を食っていつも不評を買うのが独占販売権を持つAT&Tだ。昨年7月の「iPhone 3G」のときは、無理を承知で端末発売に合わせて3Gサービスを開始した。しかし、十分なエリアをカバーできず、「信号は弱いし、バッテリーは早くなくなる。AT&Tは何をやっているのか」と逆に責められた。しかも、強気のiPhone料金プランがユーザーの不満を増幅させた。
 今回のiPhone 3G Sでも、AT&Tは6月19日の米国発売を前にIT関連メディアから厳しい論評を突きつけられている。AT&Tの対応が間に合わず、新端末が十分に機能を発揮できないためだ。
■7.2Mbpsへのアップグレードは今年中
 iPhone 3G Sは、アプリケーションの処理速度が向上しただけでなく、通信速度も米国で最速になる──はずだった。現行モデルは、同じ3Gといっても対応速度(下り)は最高1.8Mbpsまで。一方、今回の3G Sは、その4倍となる最高7.2MbpsのHSPAモードに対応する。これなら数MBの写真付きメールもスムーズに受信できる。しかし、今回もAT&Tのネットワーク整備は3G S発売に間に合わなかった。
 AT&Tの状況を調べてみると、4月に2カ所で7.2Mbpsの実験をおこない、現在はようやくアップグレードを開始したところ。アップグレード作業はハードの交換が必要なく、基地局のソフトウエアを更新すればよい。AT&Tは今年いっぱいで作業を終わらせる予定だが、米ユーザーは3G Sでパソコン並みのウェブを楽しむのを数カ月も待たされることになる。
 AT&TにしてみればiPhoneだけでなく、取り扱う3G端末すべてでHSPA-7.2Mbpsモードが機能するかどうかをチェックしなければならない。そう考えれば、アップルのために相当な無理をしているわけだが、iPhoneユーザーにそうした言い訳は通用しないようだ。
 ちなみに、AT&TはHSPA対応の今後について、本来なら7.2Mbpsの次に来る14.4Mbpsモードを飛び越して、HSPA+(28Mbps~42Mbps)に行こうかと悩んでいると、業界では噂されている。そんな話を耳にすると「ひょっとしたらiPhoneの次期モデルは14.4Mbpsではなく28Mbps対応を狙っているのか」と勘ぐりたくもなるほどだ。
■大容量コンテンツの送受信は制限
 米国ではiPhone OS 3.0の新機能で写真付きメールや音声メールなどを送れるMMS(マルチメディア・メッセージング)も、今のところ利用できない。これもAT&Tのネットワークの課題で、iPhoneユーザーのアカウントを手作業で修正する作業に追われているそうだ。当面は、iPhone 3G Sでビデオや写真を撮影しても、ネット経由で送受信するしかない。
 AT&Tはそのほかにも、ポッドキャストや音楽、ゲームなど10MBを超えるiPhoneコンテンツを3Gネットワーク経由でダウンロードさせていない。この理由はよくわかる。AT&Tに限らず、現在の携帯データ網はDSLや光ファイバーのような本格的なブロードバンド仕様に作られていない。大量のユーザーが少ない基地局を共有する構造であり、基地局とデータセンターを結ぶ回線も細い。iPhone 3G Sがトラフィックを占有すると、他のユーザーにしわ寄せが出るのだ。
 しかし、そうした技術的、経営的な問題はユーザーには関係ない。純粋にユーザー視点でみれば、「通信速度が向上した端末では大容量コンテンツが楽しめる」というのが本筋だろう。ただ、現実は厳しく、業界の予想では第4世代にならないとDSL並のブロードバンドは実現しないと言われている。それまではユーザーの不満を承知で、大容量のコンテンツ制限などを続けることになるだろう。
◇ ◇ ◇
 アップルは携帯電話事業者の事情を無視して、iPhoneの高速対応を進めている。ユーザーとアップルの間に挟まれ、米国のAT&Tにせよ、欧州のT-Mobileにせよ、ネットワークの拡張強化に奔走しているのが実情だ。その状況は、日本のソフトバンクモバイルにも当てはまるだろう。
 とはいえ、AT&TとしてはiPhone 3G Sを手放すわけにはいかない。現行モデルのiPhone 3Gは発売当初に40%を超えるマージンが得られた。その後、時間が経つにつれて売れ行きが落ちる一方で販売促進費が増えて、現在は30%を切るとも噂されている。だが新モデルの登場で4割台に復帰するに違いない。携帯事業は収益の柱であり、AT&Tとしてはネットワークのアップグレードなどで無理をしても、iPhone 3G Sに頼らざるを得ないのが本音だろう。



鳩山総務相が辞表提出、「潔く去るのがいいと判断」
 麻生首相は12日午前、首相官邸で鳩山総務相と約40分間会談し、日本郵政の社長人事について協議した。
 首相は西川善文社長を条件付きで続投させる考えを伝えた。鳩山氏はこれを受け入れず、同日午後に改めて首相と会談し、総務相の辞表を提出した。
 この問題をめぐっては、政府・与党内で次期衆院選への影響を懸念し、早期の事態収拾を求める声が強まっていた。麻生内閣の閣僚辞任は、中山成彬・前国土交通相、中川昭一・前財務・金融相に続き、3人目。衆院解散・総選挙に踏み切る時期を探る首相にとって、自らの盟友で重要閣僚の総務相辞任という事態が、大きな打撃となるのは必至だ。
 与党関係者によると、鳩山氏との会談で、首相は西川氏を続投させることを認めるよう促した。しかし、鳩山氏は「考えを変えるつもりはない」と拒否した。辞表提出後には記者団に、「仲間と相談して潔く去るのがいいのではと判断した。いずれ歴史が私の正しさを証明してくれるだろう」と語った。



日経平均終値、8カ月ぶり1万円台回復 154円高の1万135円
 12日の東京株式市場で日経平均株価は反発。大引けは前日比154円49銭(1.6%)高の1万135円82銭だった。昨年10月7日以来約8カ月ぶりに1万円台を回復した。国内景気の底入れ期待から、証券や小売り、建設といった内需株を中心に買いが膨らんだ。11日午前発表の中国の5月の工業生産高が好調だったため、後場は海運株などにも買いが広がり、日経平均は上げ幅を190円近くに拡大する場面があった。



楽天市場、10日の売上高が09年最高に
 楽天のネット通販サイト「楽天市場」の1日当たりの売上高が今年最高を記録した。直近は20億円程度で推移していたが、ポイントを最大10倍付与する企画などが奏功し、10日の売上高が30億円台半ばに達した。今週末にも同様のキャンペーンを実施し、記録更新を狙う。
 ポイント倍率が上がる企画は10日午前0時~11日午前3時の27時間限定で利用店舗の数に応じて実施した。価格を下げたデジタル家電やグルメ食材などがけん引したほか、通常は品薄の北海道生キャラメルなど人気商品を大量に投入したことも売り上げを押し上げた。



MS、欧州向け新OSは閲覧ソフトなしで出荷
 ソフトウエア最大手の米マイクロソフト(MS)は11日、今年10月に販売を始めるパソコン用の新基本ソフト(OS)「ウィンドウズ7」について、欧州向けについては同社のインターネット閲覧ソフト「インターネット・エクスプローラー(IE)」を搭載せずに出荷することを明らかにした。
 現行OSのウィンドウズ・ビスタなどにIEが無料で付属していることについて、欧州連合(EU)欧州委員会が独占的地位の利用に当たり、EU競争法違反の疑いがあると問題視していることに対応した。
 欧州委は音楽・映像再生ソフトの抱き合わせ販売などをめぐり、MSに対して2004年3月以降、3回にわたり累計約16億7000万ユーロ(約2300億円)の制裁金支払いを命令。IEについても適切な対応がなければ制裁手続きに入るとしていた。



ビックカメラ、新宿西口店内に「Appleショップ」を設置、13日にオープン
 ビックカメラは6月10日、ビックカメラ新宿西口店4階のMacコーナー内に「Appleショップ」を設置し、6月13日にオープンすると発表した。
 「Appleショップ」では、アップルブランドを印象付ける統一された売場デザインで、写真、ブログ、音楽といったMacならではのPCの楽しみ方をユーザーが体感できる。また、製品を熟知した「専門スタッフ」がデモンストレーションを行うなど、MacやiPodの魅力をわかりやすく紹介する。
 今回のオープンを記念して、同店では6月13~14日にかけてオープニングイベントを実施する。初日の13日に来店したユーザーには、先着で300名にアップルの記念品をプレゼントする。なお、今回の「Appleショップ」オープンは、同社の有楽町店本館、札幌店に次いで3店舗目。



Ask.jp、検索サービスを6月25日に終了
 アスク ドット ジェーピーは6月12日、検索サービス「Ask.jp」を終了することを発表した。法人向けソリューションに特化する事業再編を進めるという。
 Ask.jpのウェブ検索、ブログ検索、商品検索、カテゴリ検索が6月25日をもって終了する。広告メニューの販売は5月で終了している。
 今後は法人向けに、動画広告配信ソリューション、ビデオパネル、動画配信API、ウェブサイト構築/制作サービスを提供する。
 Ask.jpは2004年8月にベータ版を公開。正式サービスを2005年2月より提供していた。



米家計の負債、圧縮続く 1~3月、貸し渋りや消費抑制で
 【ワシントン=大隅隆】米国の家計負債の圧縮が本格化してきた。米連邦準備理事会(FRB)が11日発表した2009年1~3月期の資金循環統計によると、同期末の負債(季節調整済み)は2四半期連続で減少し13兆7949億ドル(約1350兆円)だった。前期比の減少率は年率換算で1.1%。金融機関の貸し渋りや消費支出の抑制を背景に、家計のバランスシート(貸借対照表)調整が本格化している。
 家計部門の負債のうち住宅ローンは10兆4618億ドルでほぼ横ばい。一方、カードローンや自動車ローンなどの消費者信用は年率で3%以上減った。
 企業部門も同0.3%減で1993年以来の減少。民間部門で債務調整が進む一方、連邦政府の債務は同22.6%増の6兆7214億ドルと大幅に増えた。州政府など地方自治体も4.9%増。民間部門のバランスシート調整の傷みを、政府部門が肩代わりして下支えする構図が浮き彫りになった。
エディオンとコジマ、資本提携へ--業界1位ヤマダを追う
 家電量販店2位のエディオン(本社・大阪市)と、同6位のコジマ(同宇都宮市)が資本提携することで最終調整していることが11日、明らかになった。世界的な経済危機による消費低迷と安売り競争を受け、提携によってメーカーからの仕入れや物流の効率化を進め、業界トップのヤマダ電機(同群馬県高崎市)を追う。
 両社の売上高(09年3月期)を合計すると1兆2628億円で、ヤマダの1兆8718億円に迫る勢力となる。関係者によると、両社はすでに株式を持ち合うことで大筋合意した。業務の効率化を進めながら、最終的に経営統合することも視野に入れている。月内にも発表する。
 エディオンは傘下に、中国地方で強い「デオデオ」や近畿地方の「ミドリ」、東海
地方の「エイデン」を持ち、西日本を中心に店舗を展開している。一方のコジマは地元の栃木県を地盤に、主に関東地方で強いとされ、両社は地盤を補い合うことが できる。家電量販店業界では、昨年10月に業界4位のビックカメラ(同東京)が同7位のベスト電器(同福岡市)に資本参加すると発表。トップのヤマダ電機が、首都圏が地盤の「ぷれっそホールディングス」を完全子会社化したり、業界5位のケーズホールディングス(同水戸市)が、宮城県が地盤の「デンコードー」を傘下に
収めたりするなど、再編が進んでいる。
 昨秋からの経済危機の影響で国内でも賃金や雇用環境が悪化、個人消費が低迷し、量販店の安売り競争は激しさを増している。両社が資本提携すれば、メーカーに大量購入を約束することで、仕入れ交渉を優位に進めることができるという利点がある。



東芝、半導体生産見直し 効率低い旧式ライン閉鎖
 東芝は大幅な赤字となっている半導体部門の事業構造改革に着手する。生産効率の低い旧式のラインを全国で6カ所程度閉鎖・縮小し、2010年3月期に約1000億円の固定費を削減する。同社は主力製品の一つであるシステムLSI(大規模集積回路)事業を分社する方針を1月に発表。他社との経営統合を模索してきたが、分社を見送りコスト削減を優先する。
 閉鎖する生産ラインは半導体回路を焼き付けるシリコンウエハーの直径が150ミリ以下と小さく、生産効率の低い設備が対象。生産能力が余剰になっているシステムLSIの工場を中心に設備の売却や廃棄を進める。



ヤマト運輸、電子マネー決済を全国に拡充
 ヤマト運輸は11日、電子マネーによる決済サービスを拡充すると発表した。16日から全国約3900カ所の営業所でビットワレット(東京・品川)の電子マネー「Edy(エディ)」、セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco(ナナコ)」が利用できる。今秋にはイオンの「WAON(ワオン)」も利用できるようにする。
 これまでは東京23区内の約570カ所の直営店で試験的にEdyによる決済サービスをしていた。顧客の利便性の向上に加えて業務の効率化が見込めることから、複数の電子マネーによる全国展開に踏み切る。来年以降は宅配便のドライバーが持ち歩く端末を改良し、顧客の自宅でも電子マネーを使えるようにする。



新型インフル警戒水準、最高の「6」 WHOが宣言
 【ジュネーブ=藤田剛】世界保健機関(WHO)は11日、新型インフルエンザの警戒水準(フェーズ)を最高度の「6」に引き上げ、世界的大流行(パンデミック)が発生したと宣言した。同時に健康被害の深刻度に関する基準を新設し、「中度」であると発表した。
 チャン事務局長は記者会見で「これは2009インフルエンザ・パンデミックである」と表明した。新型インフルエンザの世界的大流行は1968年に発生した「香港風邪」以来41年ぶり。ただ今回は弱毒性のため、チャン事務局長は「国境を閉鎖したり、国際的な貿易や移動を妨げる必要はない」と明言。現段階では経済や社会に与える影響は限定的なものになりそうだ。
 世界全体の感染者数は2万7000人を超え、WHOによると10日時点の感染確認国は74、死者は141人に達した。メキシコから始まった感染は北半球から南半球に拡大し、特にオーストラリアでは持続的感染が確認され、WHOは「6」の条件が整ったと判断した。



IMF債購入、新興国が拡大 中ロに続きブラジルが表明
 【ニューヨーク=山下茂行】基軸通貨である米ドル中心の外貨運用を多様化する動きが新興国に広がってきた。国際通貨基金(IMF)債の購入についてロシアや中国に続いて10日にはブラジルも意向を表明、3カ国合計で購入額は700億ドル(6兆8000億円)に達する見通しだ。IMF債はSDR(特別引き出し権)建てになる可能性が高く、各国は購入と並行して外貨準備による米国債の保有を絞るとみられる。米長期金利の押し上げ要因にもなりそうだ。
 金融危機で途上国支援の資金が足りなくなっているIMFは5月に金融市場で流通する債券を初めて発行すると発表していた。SDRはドル、ユーロ、円、英ポンドの4通貨で構成する合成通貨単位。インドとともに有力な新興4カ国を意味するBRICsのうち3カ国が6月になって相次ぎ購入を表明した。ロシア中央銀行は同時に米国債を売却する方針も示した。



概算要求基準、7月初旬に 財務省、決定前倒し検討
 財務省は11日、2010年度予算の大枠となる概算要求基準(シーリング)を7月初旬にも決定する調整に入った。3日か7日が軸。7月下旬から8月にずれ込むことが多い近年としては異例の早さだ。「8月総選挙」が取りざたされるなど政治日程が不透明な中で、予算編成作業への政局の影響を最小限に抑える狙いがあるとみられる。
 「平成」になった1989年以降、財務省(旧大蔵省)が7月初旬までに概算要求基準を策定できた年は3回しかない。今年は政府が経済財政運営の基本方針(骨太の方針09)を23日に決定する予定。同省は政府・与党内の調整を前提に、1週間程度で基準策定にこぎつける日程を有力視している。



国際会計基準、15年にも義務化めざす 会計審
 金融庁の企業会計審議会(長官の諮問機関)は11日、欧州を中心に世界100カ国以上で使われている国際会計基準を日本に導入するスケジュールを盛り込んだ中間報告をまとめ、2015~16年に上場企業の連結決算での義務化を目指す方針を明らかにした。最終決定は12年まで持ち越すものの、義務化を段階的に進めることも検討する。欧米との会計統一を目指す姿勢を鮮明にしたが、国際基準への移行に際し企業は決算作成の手間が重くなる可能性がある。
 会計審は月内にも総会を開き、金融庁長官に答申する。企業が日本基準か国際基準かを選べる「任意適用」制度を、すでにスタートしている10年3月期から導入することも決定。この日は財務諸表作りの細目を盛り込んだ財務諸表等規則案も公表した。
 1月末に公表した中間報告書案では義務化の時期を明記せず、12年から「最低3年間準備が必要」との表現にとどめていた。ただ上場企業や監査法人の受け入れ準備が必要なため、報告書では明確に「15~16年」と盛り込んだ。



首相、西川氏続投で調整 郵政社長人事、総務相の対応焦点
 麻生太郎首相は11日、日本郵政の西川善文社長を再任させる方向で調整する意向を固めた。再任を認めないとしてきた鳩山邦夫総務相が受け入れない場合は更迭も辞さない構えで、今後は鳩山氏の対応が焦点になる。鳩山、西川両氏の対立は郵政民営化問題を巡る政府・与党内の路線対立に拍車をかけており、次期衆院選への影響を最小限に抑えるためには早期収拾が必要と判断した。
 首相は11日、首相官邸で記者団に「いよいよやらなければならないと思ったら自分で判断しなきゃいかんと思っている。早く結論を出した方がいいのではないかという感じはする」と問題解決を急ぐ考えを表明した。



ケータイ専用「BeeTV」絶好調  テレビ業界に衝撃走る(COLUMN)
エイベックスとNTTドコモが提供しているケータイ専用チャンネルの「BeeTV」が絶好のスタートを切った。サービスを開始して1か月が過ぎ、総ダウンロード数で1000万件を突破した。独自のコンテンツにこだわり、また広告に頼らない有料配信のビジネスモデルが注目されたが、「テレビのコンテンツに頼らないのが勝因。ワンセグ携帯は大きく水をあけられるだろう」(三菱総合研究所・情報通信政策研究グループの中村秀治氏)と評価も高く、新たなケータイ・コンテンツへの期待が膨らんでいる。
1か月で総ダウンロード1000万件を突破
YouTubeやニコニコ動画など、いまや動画はパソコンや携帯電話から簡単に見ることができて、どこでも楽しめる。最近では電車の中で見たいテレビ番組を、ワンセグ機能を使ってイヤホンをしながら見ている人も増えてきた。
そこに登場したのが、エイベックスのケータイ専用チャンネル「BeeTV」だ。提携先のNTTドコモ(ドコモ動画)で見ることができる。
BeeTVは8チャンネル・21番組を、月々315円を支払えば楽しめる。メニューにはバラエティやドラマ、トークショーとテレビ番組とほとんど変わらぬラインナップだが、ケータイ専用のコンテンツとして制作され、1番組3~8分程度と短いのが特徴だ。
エイベックスによると、配信している番組の総ダウンロード数は1000万件を突破した。「会員数については現在集計中でお話できません」(BeeTV広報)としているが、2009年5月1日のスタートから、月末には30万人を突破したとされる。
三菱総合研究所・情報通信政策研究グループの中村秀治氏は、好調の要因を「コンテンツの品質が高い」ことにあるとみている。BeeTVは、ケータイでテレビ番組を見るワンセグとの違いを明確にして、オリジナルにこだわり、テレビ番組と一線を画したところがユーザーの支持につながったようだ。
ドコモ・ユーザーも増える?
中村氏は「ケータイのコンテンツは15分でCMが入るテレビ番組では長く、7分程度という時間はちょうどいい」という。
番組は当初からコンテンツの2次使用、3次使用を意識したつくりで、初期の制作コストを抑えている。さらに、たとえば100万人のユーザーが見るようになれば、年間売上げは36億円となり、コンテンツ制作にそのうちの10億円をかけられるとしたら、今後ますます高品質のコンテンツが提供できるはずだ。
中村氏は「既存のテレビ局が1回1回の放送にこだわったビジネスモデルでもたついていると、コンテンツの制作や活用で大きく水をあけられる可能性がある。いまだに上手に活用できないワンセグ機能も危うい」と指摘している。
一方、BeeTVはドコモとau、ソフトバンクモバイルのユーザー獲得争いにも影響しそう。BeeTVを見るには、ドコモの「パケ放題」への加入が前提。技術面でも「ドコモは映像を見るためのネットワーク回線の質も高く、BeeTVのような映像配信はauやソフトバンクモバイルではすぐには難しい」(中村氏)と、ドコモの先行メリットは小さくないようだ。
ドコモが905iシリーズ以降の携帯端末の液晶画面を統一したことも、BeeTVの成功を引き出しているとみている。
一般に、「ケータイ・ビジネスは有料ではもうからない」とされた。BeeTVがそんな定説を覆すかもしれない。
「速さ向上」が売りの新iPhone アップルらしい進化 <COLUMN>
 6月8日、アップルの開発者向けイベント「WWDC 2009」が恒例の基調講演とともに開幕した。話題は1年ぶりの刷新となる「iPhone 3G」の新製品だ。
■朝6時に1500人が列
 昨年のWWDCでは現在病気療養中のスティーブ・ジョブズCEOが登壇。華々しくiPhone 3Gが世界デビューするとともに、会場にはめでたく日本採用キャリアとなったソフトバンクモバイルの孫正義社長も姿を見せるなど、お祭りムードに包まれていた。
 今年は4月末からの新型インフルエンザ騒動によって、日本人の来場者が若干減ったようにも見えたが、実際には14万円程度もするチケットがかなり早い段階で完売。むしろ、例年以上に力のこもった開発者が多数を占めていたように思う。
 基調講演当日、すでに朝6時の段階で会場には1500人ほどが行列をなしていた。ジョブズCEOが登壇しなくても、開発者たちに熱烈に支持されているのがいまのアップルなのだ。
 昨年はiPhone 3Gが登場するという「祭り」的な要素が強かったWWDCだが、今年はむしろ「ビジネス」としての広がりを感じる場となっていた。
 その背景にあるのはアプリケーションソフトの販売プラットフォーム「App Store」の成功だ。昨年7月に始まり、すでにアプリの数は5万本以上。4月までに10億ダウンロードを突破し、携帯電話の世界に新たなビジネスモデルを生み出した。
 ノキアが「Ovi Store」、マイクロソフトが「ウィンドウズ・マーケット・プレイス」、グーグルが「アンドロイド・マーケット」といった類似サービスで追随してきたことを考えると、間違いなくアップルがアプリ販売の仕組みに先鞭をつけたことになる。アップルのフィリップ・シラー副社長はアプリ数を比較する棒グラフを背に「ほかのサービスは(規模が)小さすぎて見えない」と余裕の表情だった。
■新ソフト「3.0」で可能性広がる
 今回、アップルは新しいソフトウエアバージョンとして「3.0」を披露した(6月17日より配布予定)。これにより、本体を横にすると大きなキーボードを表示したり、コピー&ペーストを使えるようになったりと、使い勝手が大幅に向上する。新しいAPIの供給でアプリのなかで課金できる仕組みも整い、携帯アプリケーションの可能性がさらに広がるようになる。
 基調講演では、3.0を使ったいくつかのデモが披露された。ゲームや電子書籍だけでなく、血糖値を測定できる医療アプリやカーナビの代用となるものまで、幅広いジャンルのアプリが紹介された。
 特にカーシェアリングを展開するZipcarのデモは目を引いた。iPhoneのGPS機能を使い、周辺にあるクルマを検索して、そのまま予約して決済までする。手続きが完了すれば、あとはクルマをiPhoneを使って解錠し、そのまま乗り込んで使えるというところまで披露してみせた。もはやiPhone1台があれば、人をいっさい介することなくサービスを提供できるようになったのだ。
 日本では、まだ世間に影響を与えるほどの販売台数に至っていないせいか、まだエンターテインメント端末としか見られない傾向が強い。しかし、米国ではすでに初代発売から2年が経過していることもあり、着実に普及し生活に根ざしたサービスが相次いでいる。
 米国の動向を見ていると、日本でも今後、リアルの日常生活と連動する便利なアプリが出てきてもおかしくないし、ビジネスチャンスととらえる企業が増えてほしいと期待したくなる。
■処理速度を売りにする携帯電話は初めて
 今回、アップルは新製品「iPhone 3G S」を発表した(携帯電話の世界ではかつてNTTドコモが503iSといったようにセカンドモデルとして「S」を利用していた。またウィルコムにはW-ZERO3〔es〕というのもあった。端末のネーミングにおいても、日本はガラパゴスどころか世界の先を行っていたのだ)。
 iPhone 3G Sの開発担当者は「SはスピードのSだ」と説明した。実際、通信速度は7.2MbpsのHSDPA対応となり、チップセットの向上で電子メールの処理やアプリケーションの動作、ウェブページの表示が速くなっている。現行iPhone 3Gに比べて平均で2倍高速化されているという。
 開発者が速さを自慢する様子は、同じく高速化され「Proシリーズ」に格上げされたノートパソコン「MacBook」を説明する開発担当者の姿と何ら変わらなかった。これまで100回以上、日本で携帯電話メーカーの開発担当者から新製品を紹介されてきたが、「本体の処理速度向上」を売りにした携帯電話は一つもなかった。従来機種からの「速さ向上」を売りにする携帯電話はiPhone 3G Sが初めてかもしれない。2007年に社名から「コンピュータ」を取ったアップルではあるが、携帯電話を作ってもコンピューターメーカーには変わりないのだ。
■インターフェースに「らしさ」
 アップルは高速化を実現するとともに、上位モデルに3メガピクセルのオートフォーカスカメラを搭載し、動画撮影にも対応させた。電子コンパスも載せてきた。
 3メガピクセルのカメラは、すでに10メガピクセル時代に突入した日本の携帯電話と比べれば数年遅れたスペックではある。しかし、大きな画面との組み合わせと、動画編集のしやすさはアップルらしいと言えるだろう。
 カメラの焦点は、被写体のピントを合わせたい部分に指を置くだけで合う。静止画だけでなく動画にも対応する。画面中に四角が表示されて、どこにピントが合ったかが確認できる。
 動画も、その場で一部のシーンを切り出して、メールや「YouTube」に送るといった操作が可能だ。スペックだけを訴求するのではなく、ちゃんと「使おう」という気にさせるユーザーインターフェースに仕上がっている。
 電子コンパスにより方角も確認できるようになった。地図アプリは、向いた方向に合わせて地図表示も変化する。面白いのが現在地を示す点の先に放射線状のビームのような表示が出るところ。これは方角の精度を表しており、広がっていれば精度が落ちており、細ければしっかりと方角が確認できているという合図になる。
 現行iPhoneでも現在地を測位すると、精度が低い時は大きな円、精度が上がると小さな点で現在地を表示する。まさに似たようなわかりやすい表示方法で、精度をユーザーに伝えているのだ。
■日本でのテザリング非対応は残念
 今回、アップルは「S」を投入したことにより、下位モデルとの差別化にも成功している。
 現行機種の2モデルの差は8GBと16GBという容量の差でしかなく、あとは「ホワイトの本体色を選ぶなら16GB」という程度のものでしかない。そのため、「自分はそんなに使わないから8GBを買う」という購入者も多かった(使ってみると意外にたくさんデータを保存するので、16GBを買っておけばよかったと後悔するユーザーも多い)。
 新製品ではハードウエアスペックに差がついたので、ユーザーにとってはどちらのモデルがいいかを選びやすくなった。ただ、ソフトバンクモバイルの「実質0円」キャンペーンにひかれて店頭に行ったら、ついつい高いスペックがほしくなって買ってしまうということもありそうだ。
 基調講演を聞き、日本でiPhoneを使うユーザーの立場として気持ちが晴れなかったのが「テザリング機能」だ。
 iPhone 3Gでは3.0バージョンの新仕様として、本体をモデム代わりにしてノートパソコンからインターネットに接続できる「テザリング機能」を盛り込んだ。
 しかし、ソフトバンクモバイルでは「非対応」で、検討する余地もないようだ。国内では、4キャリアで唯一、自社網でパソコン向け定額制を実現できてないのだから無理もないだろう。これまでソフトバンクモバイルは、日本でのiPhone普及に向け、絵文字への対応をアップルにアピールしたり、充電とワンセグ受信が可能なデバイスを用意したりするなど、様々に努力し成果も出してきた。しかし、このときばかりは「NTTドコモでiPhoneが発売されていたら」と、落胆しまった。
 とはいえ、既存のiPhone 3Gユーザーはまずは17日(日本では時差で18日になる可能性がある)のソフトウエアアップデートを心待ちにしよう。細かな操作性の向上により、iPhoneに対する満足度も高まるはずだ。
 スピードの魅力に負けて、新製品に買い換えたいところではあるが、1年近い「残債」を抱えているとなると、気軽に機種変更できないのが、悩ましいところだ。



NTTドコモ:「ドラゴンボール」「NANA」フランスでケータイマンガ配信 香港、台湾でも
 NTTドコモや集英社は11日、「ドラゴンボール」や「ナルト」「NANA」などの人気マンガをフランス、台湾と香港などで携帯電話向けに配信することを明らかにした。
 フランスでは同日からNTTドコモの欧州法人と仏の携帯電話事業者「ブイグテレコム」と協力し、マンガ配信サイト「マンガモード」を開設、「ドラゴンボール」などのフランス語版のマンガを配信する。台湾と香港では7月から配信予定。



社民、民主と連立目指す方針
 社民党は11日午前の常任幹事会で、次期衆院選後に民主党中心の政権が誕生した場合、連立参加を目指す方針を決めた。近く民主、国民新両党と共通政策について協議を始める見通し。重野安正幹事長は記者会見で「新たな政権をどうするかという議論に参加していく方向だ」と述べた。
 重野氏は民主党と共通する政策について郵政民営化や労働者派遣法制の見直しなどを挙げた上で、「何を目指すかという点について(民主党に)言うべきことがある」と強調した。連立参加のあり方については次期衆院選後に判断する。



格安タクシー、値上げも 規制強化法、今国会成立へ
 「初乗り500円」などの格安タクシーが今年秋以降、相次いで値上げする可能性が出てきた。タクシー事業への規制を強める特別措置法案が運賃規制を強める修正を加えたうえで今国会で成立する見通しになったためだ。運賃の引き上げが広がれば、利用者不在との批判も出そうだ。
 特措法案は10日の衆院国土交通委員会で全会一致で可決された。与野党が合意した法案修正ではタクシー運賃について、道路運送法が定める「適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないもの」との表現を一部削除して「適正な原価に適正な利潤を加えたもの」に改めた。



米日刊紙「USAトゥデー」、電子版を有料配信 8月から
 【ニューヨーク=武類雅典】米国最大の日刊紙「USAトゥデー」が8月から新聞の体裁を取った電子版の有料配信を始めることが明らかになった。AP通信が報じた。電子版は契約者に対して電子メールで配信する。価格など詳細は不明だが、紙の新聞よりも若干安くするという。既存のウェブサイトは無料を維持する見通し。
 USAトゥデーは新聞最大手ガネットの傘下で、発行部数は210万超。



カシオ、米国向けにEXILIMブランドのタフネスケータイ
 カシオ計算機は、米Verizon Wireless向けに、光学3倍ズームの510万画素カメラを搭載し、耐衝撃・防水仕様などを備えた「EXILIM Phone C721」を供給する。
 「EXILIM Phone C721」は、カシオのデジタルカメラブランドを冠した米国市場向けのタフネスケータイ。回転2軸ヒンジ機構を採用し、ディスプレイを露出したまま、折りたためる。
 CDMA2000 1xEV-DO Rev.A方式に対応し、BREWやブラウザ(WAP)、ナビゲーションサービス、音楽・動画配信サービスが利用できる。
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