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新春インタビュー:NTTドコモ 辻村氏に聞く2 新たな10年で変わるモバイルビジネス
モバイルIT業界が大きな転換期を迎えた2010年。これから日本のモバイル業界が向かうべき道はどこなのか。引き続き、業界のキーパーソン、NTTドコモの代表取締役副社長 辻村清行氏に聞く。
-2010年以降のモバイル業界のトレンドはどのようになっていくと予測されていますか。
辻村氏 いくつかのトレンドがあるとは思いますが、その中で重要なのは「ユーザーを取りまくスクリーン」をどう捉えるか、です。
これまで「テレビ」「PC」「ケータイ」が(ユーザーの周りにある)3大スクリーンだったわけですが、私はここに「デジタルフォトフレーム」と「カーナビ」が重要なスクリーンとして加わると考えています。
まず、デジタルフォトフレームですが、これは9~10インチのサイズで、単なるアルバム代わりだけでなく、(モバイル通信を通じて)ネット上のさまざまなコンテンツを表示したり、タッチパネルを搭載して電話などのコミュニケーションサービスを利用するような用途も考えられます。それは1つの(ネットサービスの)ウィンドウになり、ケータイの3インチ画面の小ささを補う存在になるでしょう。
そして、カーナビは言うまでもありませんが、クルマでの(ユーザーの)移動を支えるという点で重要なスクリーンになります。
-今までは3スクリーンだったものが、5スクリーン時代になる、と。
辻村氏 そう、5スクリーンです。そして、それらはFTTHや3Gによってインターネットにつながり、クラウドサービスで連携していきます。
-そのような時代に、ドコモはどのようなビジネスやサービスを考えるのでしょうか。
辻村氏 こうした複数の端末を利用する時代になると、UIやパーソナルデータの同期がとても重要になります。個々の端末でサービスのUIが異なったり、電話帳や写真などのパーソナル情報がバラバラに管理されていたりしたら、ユーザーにとっては使いにくいですよね。
そう考えますと、このようなマルチデバイスの環境で、いかに使いやすいクラウド型のサーバサービスを提供するかが重要になります。ここがドコモの仕事として大切になっていくのです。
-通信インフラのサービスだけでなく、ユーザーのパーソナルデータを預かったり、通信メディアや端末の違いを超えてデータやサービスを連携させる領域に踏み出す、ということですね。
辻村氏 そのとおりです。LTE時代になれば、サーバ側に多くのデータやコンテンツを保管し、ユーザーはそれをTPOに合わせてさまざまな端末から利用できるようになります。そう考えますと、モバイルのインフラをしっかりと構築しつつ、そういった(マルチデバイスが)連携する仕組みも作らなければなりません。ユーザーが5スクリーンのどの端末を使っても操作感が統一されており、パーソナルデータの同期がしっかりと取れている必要があります。
-まさしくクラウドの世界ですね。そこで重要になる要素は何でしょうか。
辻村氏 やはり確実で安全なユーザー認証技術ですね。そこで鍵になるのは、携帯電話の認証情報だと考えています。お客様が1人ずつ持っている回線契約に紐づく形で個人認証を行うのです。携帯電話は究極の個人認証番号を持っており、(その認証情報は)なりすましや不正利用ができません。ここがマルチデバイス時代における携帯電話キャリアの強みになっていくでしょう。
-マルチデバイス以外に、今後のモバイルビジネスで重要になる分野とはどのようなものでしょうか。
辻村氏 そうですね。まず最近話題のAR(拡張現実)は、今後さらに重要な分野になっていくでしょう。しかし、ここで重要なのは、ARは「広義のAR」と「狭義のAR」に分けて考えるべきだということです。
狭義のARは、ドコモでいう「直感検索」や「直感ナビ」のように、携帯カメラで撮影した映像にデジタルタグの情報が重なり合うようなものです。これはARの歴史では、とてもクラシカルなものですね。ビューワー的なARとでも言いましょうか。
-iPhoneなどで展開されている「セカイカメラ」もその範疇ですね。では広義のARとは?
辻村氏 広義のARは、現実空間の「見える部分」だけでなく、ユーザーの実空間での行動そのものを補強・強化していくものです。例えば、おサイフケータイやiコンシェルで、ユーザーの行動履歴を通じて提供される情報の最適化や選別を行う。これもまたARなのです。
-なるほど。実空間での行動を、サーバから提供されるコンテンツやサービスが支援する。これが広義のARというわけですね。しかし、そう考えますと、2004年のおサイフケータイ登場以降のドコモの取り組みの多くが、この広義のARに向かっていると言えそうです。
辻村氏 まさにそれを言いたいのです(笑) もちろん、直感検索・ナビのようにビューワー型のARも今後さらに進化し、さまざまなビジネスのチャレンジが起きるでしょう。しかし、実空間を補強するというARの本質的な可能性で考えますと、そういったビューワー型のサービスだけでなく、もっと広くARの可能性を捉えておいた方がいいと思います。ドコモはビューワー型のサービスにも取り組みますが、(おサイフケータイやiコンシェルを通じて)これら広義のARの開発に注力していきます。
-いよいよ2010年になり、新たな10年期が始まります。これまでの10年は1999年のiモード開始を受けた「iモードの時代」だったわけですが、次の10年はどのような時代になるとお考えですか。またモバイルIT業界はどのような姿勢で、この新たな時代を迎えるのでしょうか。
辻村氏 いくつか重要な視点があります。
まず、1つは“ネットワークを流れる情報量が爆発的に増えている”ことです。コンテンツやコミュニケーションのリッチ化が進んでおり、トラフィックの指数関数的な伸びは止められません。ですから、この爆発的に増えるデータ通信量をしっかりと受け止めるネットワークや周波数管理が必要で、それを実現するのがLTEです。LTEによるモバイル通信インフラの強化は不可避で、ドコモはこれを確実に行います。そして、LTEの立ち上げによって、クラウド型サービスやコンテンツサービスの世界観が大きく変わり、(モバイルインターネットのビジネスやサービスは)一歩先に行くことになるでしょう。
2つめは“リアルとの連携”です。おサイフケータイやiコンシェルはまさに代表的なものですが、今後(のモバイルビジネス)はリアルの事業者との連携が重要になっていきます。それにより広義のAR分野が開拓され、実空間とネットの世界が密接に結合していきます。これは2010年以降のモバイルビジネスにおける大きな特長になるでしょう。
そして3つめが“グローバリゼーション”ですね。例えばドコモでは、フランスやインドでiチャネルを提供したり、欧州で電子コミックの事業に取り組むなど、海外との連動を重視した施策をとっています。これからは日本で培ったモバイルビジネスの要素を、グローバルに展開できるチャンスなのです。
そこではiチャネルのようなシンプルなものもあれば、将来的にはおサイフケータイやiコンシェルといったものも考えられます。海外のスマートフォンやモバイルフォンの市場構造は、日本市場に近づいてきているのです。ですから、今まで日本でやってきた取り組みを、先行優位性を捉えて、その上で構築したビジネスやサービスの「どれを海外で展開していくか」という考え方が重要になってきます。
-日本の先行性を海外市場とどのように連動させるのか。その手綱を取ることが重要になりそうですね。
辻村氏 そうです。そこで重要なのは、日本のモバイル業界はこの10年で(独自の発展という)先行優位性を持っているということです。そのノウハウを、中国やインド、台湾をはじめとするアジア諸国や、欧米市場で、現地のパイプ(通信インフラや端末)を使って現地のビジネスとして提供する。コンテンツやアプリケーションの海外展開は十分に可能性がありますし、ドコモとしてもそれをサポートしていきたいと考えています。
コンテンツやモバイルサービスの先行性や優位性は明らかなので、日本のモバイルIT業界は海外市場と向き合う姿勢が大切です。この(海外進出の)動きはドコモも支援していきます。
新聞社系ポッドキャスト 採算合わず相次ぐ撤退(COLUMN)
5年ほど前から話題を呼んできたポッドキャスティングが、曲がり角を迎えつつある。ポッドキャスティングでニュース配信に取り組んできた中では「老舗」とも言える読売新聞社が撤退を表明したのだ。採算が合わないことが大きな理由とみられるが、有料化に舵を切り、活路を見いだしているケースも見られる。
インターネット上に公開されている音声ファイルを携帯オーディオプレーヤーにダウンロードして聴く「ポッドキャスティング」の名前が広まったのが2005年頃。既存の番組を容易に流用できるラジオ局に続いて、新聞各紙も、相次いで参入した。
「聴く日経」は採算ベースには乗る
読売新聞社では、05年10月、新聞記事の内容を吹き込んだものを平日朝に配信するサービスを開始。日経新聞でも、06年4月、関連会社の「ラジオNIKKEI」が同様のサービス「聴く日経」をスタートした。
ところが、「老舗」であるはずの読売新聞が、09年12月になって、12月29日を最後に、サービスを休止することを発表した。この理由が、
「最近の経済情勢を受けて事業の見直しを進める中で、当初の目的は達成できたと考えた」
というもの。事業が採算ベースに載らなかったことが背景にあるとみられる。
他社に目を転じても、苦戦している様子だ。
毎日新聞では、英字紙「毎日ウィークリー」の記事からコラムや英会話のレッスンを抜粋して配信する程度にとどまっており、事実上日本人読者のアクセスは望めない状況だ。また、朝日新聞では、06年に週刊朝日の山口一臣編集長が、取材の裏話などを披露する番組の配信をスタートしていたが、いつの間にか番組ページが消滅。遅くとも08年初頭には、サービスを終了したものとみられる。
一方、独自の展開で生き残りをかける社もある。
例えば前出の「聴く日経」は、無料だったコンテンツを09年4月から有料化(月額525円)。オーディオブックの制作を手がけ、「聴く日経」の配信を行っているオトバンク(東京都千代田区)によると、無料で利用していた人のうち、有料化後も10%が利用を続けているという。同社では、
「利用者は5000人を超えており、十分に採算ベースには乗っています。30代後半~50代前半の幅広い層にご利用いただいています。広告モデルでの運営が厳しい中での成功事例のひとつなのでは」
と話している。
動画の「産経新聞コレクション」も苦戦?
音声ではなく、動画配信を試みる社もある。産経新聞では、同社のブログ「iza!」の中に、「産経新聞コレクション」として、記者会見などの動画を掲載。「.wmv」という形式のファイルをダウンロードして、携帯ビデオプレーヤーで楽しめるようになっている。ただし、この「産経新聞コレクション」09年10月までは、ほぼ毎日更新されていたのだが、11月の入ってからの更新は、わずか1回。やはり、苦戦している様子だ。
これ以外にも、中国新聞(広島市)が「音声ニュース」として同様のサービスを行っているが、各社とも「ニュースを読む」という形でのサービスは、見直しを迫られる可能性もありそうだ。なお、前出のオトバンクによると、ポッドキャスティングでは、最近は「ノウハウ本、一般教養、文芸」(の内容を吹き込んだもの)が売れ筋なのだという。
モバイルIT業界が大きな転換期を迎えた2010年。これから日本のモバイル業界が向かうべき道はどこなのか。引き続き、業界のキーパーソン、NTTドコモの代表取締役副社長 辻村清行氏に聞く。
-2010年以降のモバイル業界のトレンドはどのようになっていくと予測されていますか。
辻村氏 いくつかのトレンドがあるとは思いますが、その中で重要なのは「ユーザーを取りまくスクリーン」をどう捉えるか、です。
これまで「テレビ」「PC」「ケータイ」が(ユーザーの周りにある)3大スクリーンだったわけですが、私はここに「デジタルフォトフレーム」と「カーナビ」が重要なスクリーンとして加わると考えています。
まず、デジタルフォトフレームですが、これは9~10インチのサイズで、単なるアルバム代わりだけでなく、(モバイル通信を通じて)ネット上のさまざまなコンテンツを表示したり、タッチパネルを搭載して電話などのコミュニケーションサービスを利用するような用途も考えられます。それは1つの(ネットサービスの)ウィンドウになり、ケータイの3インチ画面の小ささを補う存在になるでしょう。
そして、カーナビは言うまでもありませんが、クルマでの(ユーザーの)移動を支えるという点で重要なスクリーンになります。
-今までは3スクリーンだったものが、5スクリーン時代になる、と。
辻村氏 そう、5スクリーンです。そして、それらはFTTHや3Gによってインターネットにつながり、クラウドサービスで連携していきます。
-そのような時代に、ドコモはどのようなビジネスやサービスを考えるのでしょうか。
辻村氏 こうした複数の端末を利用する時代になると、UIやパーソナルデータの同期がとても重要になります。個々の端末でサービスのUIが異なったり、電話帳や写真などのパーソナル情報がバラバラに管理されていたりしたら、ユーザーにとっては使いにくいですよね。
そう考えますと、このようなマルチデバイスの環境で、いかに使いやすいクラウド型のサーバサービスを提供するかが重要になります。ここがドコモの仕事として大切になっていくのです。
-通信インフラのサービスだけでなく、ユーザーのパーソナルデータを預かったり、通信メディアや端末の違いを超えてデータやサービスを連携させる領域に踏み出す、ということですね。
辻村氏 そのとおりです。LTE時代になれば、サーバ側に多くのデータやコンテンツを保管し、ユーザーはそれをTPOに合わせてさまざまな端末から利用できるようになります。そう考えますと、モバイルのインフラをしっかりと構築しつつ、そういった(マルチデバイスが)連携する仕組みも作らなければなりません。ユーザーが5スクリーンのどの端末を使っても操作感が統一されており、パーソナルデータの同期がしっかりと取れている必要があります。
-まさしくクラウドの世界ですね。そこで重要になる要素は何でしょうか。
辻村氏 やはり確実で安全なユーザー認証技術ですね。そこで鍵になるのは、携帯電話の認証情報だと考えています。お客様が1人ずつ持っている回線契約に紐づく形で個人認証を行うのです。携帯電話は究極の個人認証番号を持っており、(その認証情報は)なりすましや不正利用ができません。ここがマルチデバイス時代における携帯電話キャリアの強みになっていくでしょう。
-マルチデバイス以外に、今後のモバイルビジネスで重要になる分野とはどのようなものでしょうか。
辻村氏 そうですね。まず最近話題のAR(拡張現実)は、今後さらに重要な分野になっていくでしょう。しかし、ここで重要なのは、ARは「広義のAR」と「狭義のAR」に分けて考えるべきだということです。
狭義のARは、ドコモでいう「直感検索」や「直感ナビ」のように、携帯カメラで撮影した映像にデジタルタグの情報が重なり合うようなものです。これはARの歴史では、とてもクラシカルなものですね。ビューワー的なARとでも言いましょうか。
-iPhoneなどで展開されている「セカイカメラ」もその範疇ですね。では広義のARとは?
辻村氏 広義のARは、現実空間の「見える部分」だけでなく、ユーザーの実空間での行動そのものを補強・強化していくものです。例えば、おサイフケータイやiコンシェルで、ユーザーの行動履歴を通じて提供される情報の最適化や選別を行う。これもまたARなのです。
-なるほど。実空間での行動を、サーバから提供されるコンテンツやサービスが支援する。これが広義のARというわけですね。しかし、そう考えますと、2004年のおサイフケータイ登場以降のドコモの取り組みの多くが、この広義のARに向かっていると言えそうです。
辻村氏 まさにそれを言いたいのです(笑) もちろん、直感検索・ナビのようにビューワー型のARも今後さらに進化し、さまざまなビジネスのチャレンジが起きるでしょう。しかし、実空間を補強するというARの本質的な可能性で考えますと、そういったビューワー型のサービスだけでなく、もっと広くARの可能性を捉えておいた方がいいと思います。ドコモはビューワー型のサービスにも取り組みますが、(おサイフケータイやiコンシェルを通じて)これら広義のARの開発に注力していきます。
-いよいよ2010年になり、新たな10年期が始まります。これまでの10年は1999年のiモード開始を受けた「iモードの時代」だったわけですが、次の10年はどのような時代になるとお考えですか。またモバイルIT業界はどのような姿勢で、この新たな時代を迎えるのでしょうか。
辻村氏 いくつか重要な視点があります。
まず、1つは“ネットワークを流れる情報量が爆発的に増えている”ことです。コンテンツやコミュニケーションのリッチ化が進んでおり、トラフィックの指数関数的な伸びは止められません。ですから、この爆発的に増えるデータ通信量をしっかりと受け止めるネットワークや周波数管理が必要で、それを実現するのがLTEです。LTEによるモバイル通信インフラの強化は不可避で、ドコモはこれを確実に行います。そして、LTEの立ち上げによって、クラウド型サービスやコンテンツサービスの世界観が大きく変わり、(モバイルインターネットのビジネスやサービスは)一歩先に行くことになるでしょう。
2つめは“リアルとの連携”です。おサイフケータイやiコンシェルはまさに代表的なものですが、今後(のモバイルビジネス)はリアルの事業者との連携が重要になっていきます。それにより広義のAR分野が開拓され、実空間とネットの世界が密接に結合していきます。これは2010年以降のモバイルビジネスにおける大きな特長になるでしょう。
そして3つめが“グローバリゼーション”ですね。例えばドコモでは、フランスやインドでiチャネルを提供したり、欧州で電子コミックの事業に取り組むなど、海外との連動を重視した施策をとっています。これからは日本で培ったモバイルビジネスの要素を、グローバルに展開できるチャンスなのです。
そこではiチャネルのようなシンプルなものもあれば、将来的にはおサイフケータイやiコンシェルといったものも考えられます。海外のスマートフォンやモバイルフォンの市場構造は、日本市場に近づいてきているのです。ですから、今まで日本でやってきた取り組みを、先行優位性を捉えて、その上で構築したビジネスやサービスの「どれを海外で展開していくか」という考え方が重要になってきます。
-日本の先行性を海外市場とどのように連動させるのか。その手綱を取ることが重要になりそうですね。
辻村氏 そうです。そこで重要なのは、日本のモバイル業界はこの10年で(独自の発展という)先行優位性を持っているということです。そのノウハウを、中国やインド、台湾をはじめとするアジア諸国や、欧米市場で、現地のパイプ(通信インフラや端末)を使って現地のビジネスとして提供する。コンテンツやアプリケーションの海外展開は十分に可能性がありますし、ドコモとしてもそれをサポートしていきたいと考えています。
コンテンツやモバイルサービスの先行性や優位性は明らかなので、日本のモバイルIT業界は海外市場と向き合う姿勢が大切です。この(海外進出の)動きはドコモも支援していきます。
新聞社系ポッドキャスト 採算合わず相次ぐ撤退(COLUMN)
5年ほど前から話題を呼んできたポッドキャスティングが、曲がり角を迎えつつある。ポッドキャスティングでニュース配信に取り組んできた中では「老舗」とも言える読売新聞社が撤退を表明したのだ。採算が合わないことが大きな理由とみられるが、有料化に舵を切り、活路を見いだしているケースも見られる。
インターネット上に公開されている音声ファイルを携帯オーディオプレーヤーにダウンロードして聴く「ポッドキャスティング」の名前が広まったのが2005年頃。既存の番組を容易に流用できるラジオ局に続いて、新聞各紙も、相次いで参入した。
「聴く日経」は採算ベースには乗る
読売新聞社では、05年10月、新聞記事の内容を吹き込んだものを平日朝に配信するサービスを開始。日経新聞でも、06年4月、関連会社の「ラジオNIKKEI」が同様のサービス「聴く日経」をスタートした。
ところが、「老舗」であるはずの読売新聞が、09年12月になって、12月29日を最後に、サービスを休止することを発表した。この理由が、
「最近の経済情勢を受けて事業の見直しを進める中で、当初の目的は達成できたと考えた」
というもの。事業が採算ベースに載らなかったことが背景にあるとみられる。
他社に目を転じても、苦戦している様子だ。
毎日新聞では、英字紙「毎日ウィークリー」の記事からコラムや英会話のレッスンを抜粋して配信する程度にとどまっており、事実上日本人読者のアクセスは望めない状況だ。また、朝日新聞では、06年に週刊朝日の山口一臣編集長が、取材の裏話などを披露する番組の配信をスタートしていたが、いつの間にか番組ページが消滅。遅くとも08年初頭には、サービスを終了したものとみられる。
一方、独自の展開で生き残りをかける社もある。
例えば前出の「聴く日経」は、無料だったコンテンツを09年4月から有料化(月額525円)。オーディオブックの制作を手がけ、「聴く日経」の配信を行っているオトバンク(東京都千代田区)によると、無料で利用していた人のうち、有料化後も10%が利用を続けているという。同社では、
「利用者は5000人を超えており、十分に採算ベースには乗っています。30代後半~50代前半の幅広い層にご利用いただいています。広告モデルでの運営が厳しい中での成功事例のひとつなのでは」
と話している。
動画の「産経新聞コレクション」も苦戦?
音声ではなく、動画配信を試みる社もある。産経新聞では、同社のブログ「iza!」の中に、「産経新聞コレクション」として、記者会見などの動画を掲載。「.wmv」という形式のファイルをダウンロードして、携帯ビデオプレーヤーで楽しめるようになっている。ただし、この「産経新聞コレクション」09年10月までは、ほぼ毎日更新されていたのだが、11月の入ってからの更新は、わずか1回。やはり、苦戦している様子だ。
これ以外にも、中国新聞(広島市)が「音声ニュース」として同様のサービスを行っているが、各社とも「ニュースを読む」という形でのサービスは、見直しを迫られる可能性もありそうだ。なお、前出のオトバンクによると、ポッドキャスティングでは、最近は「ノウハウ本、一般教養、文芸」(の内容を吹き込んだもの)が売れ筋なのだという。
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中国版「おサイフケータイ」利用者不在の陣取り合戦(COLUMN)
中国では最近、携帯電話を使った電子決済機能、いわゆる「おサイフケータイ」の規格を巡る通信キャリアと金融機関の主導権争いが激化している。少額決済での利用が今後大きく伸びると見込んだ各社が、それぞれの規格を中国での業界標準(デファクトスタンダード)にしようと躍起になっているからだ。
■前哨戦で早くも火花
中国携帯最大手のチャイナモバイルは10月13日、自社のおサイフケータイの規格概要を発表した。2010年5月に開幕する上海国際博覧会(上海万博)で携帯端末を使った決済サービスを本格導入し、敷地内でのチケット購入や飲食などの決済をすべて携帯でできるようにするという。
ライバルのチャイナユニコムも当然、準備を進めている。同じ上海で日本の「モバイルSuica」にあたるような交通系サービスを開始すると打ち上げるなど、一歩も引き下がらない様子だ。
決済インフラを握っている金融機関も黙っていない。クレジットカードやデビットカードで最大手の中国銀聯は、銀行向けの決済専用端末を開発すると発表した。通信キャリアが携帯ユーザーの囲い込みにより攻めようとしているのに対し、銀聯は大手金融機関と組んで決済インフラから自社規格を浸透させる戦略だ。いずれも携帯端末を使った少額決済市場での主導権を握ろうとした動きだ。
■主導権争いに勝者はいるのか
問題は、主導権争いをしている企業が、いずれも他社と互換性のない規格を市場の標準にしようとしていることだ。
チャイナモバイルは、将来主流となりそうな近距離無線通信技術の新規格「NFC(Near Field Communication)」とは一線を画し、携帯電話に内蔵して端末認証や情報管理に使う「Simカード」に通信機能を集約する「RFID-Sim」方式を採用した。NFCとは異なり、携帯端末のSimカードを取り替えれば、どの携帯でも利用できるようになる仕組みだ。一方のチャイナユニコムはNFCを採用し、端末にICチップを外付けしたりする方式を予定している。
どちらも自社サービスの利用者数を武器に、決済系のインフラを握っている金融機関から主導権を奪おうとしていることに変わりはない。ところが銀聯のような金融機関は、既得権益を手放すわけにはいかないと言わんばかりに、通信キャリアとの協力に消極的だ。
銀聯とチャイナユニコムは11月26日、オンライン決済や情報サービスなど幅広い分野で提携する文書に調印した。これには携帯による決済サービスでの事業協力も含まれているが、包括提携の一部にとどまっており調整は難航するだろうとも予想されている。
本格的におサイフケータイサービスを展開するには通信系と決済系の協業が不可欠で、既得権者同士の意地の張り合いに勝者はない。当面は落としどころを探るためのにらみ合いが続きそうだ。
■日本の経験に学べ
通信キャリアや金融機関がそれぞれの規格で業界のデファクトスタンダードを狙うのは結構だが、規格が乱立すれば戸惑うのは利用者だ。システムや読み取り装置、対応する携帯端末にかかる投資も莫大になる。おサイフケータイ先進国である日本では、システムを開発したNTTドコモが市場を育てるために、KDDIやソフトバンクなど他のキャリアにも規格や「おサイフケータイ」という名称をライセンス供与した。規格を一本化したことでサービス提供者や金融機関、インフラ業者も参入しやすくなり、消費者も利便性を享受できた。だからこそ市場が飛躍的に拡大したのだ。
中国もこの日本の経験に学ぶべきだ。不毛な規格争いや利用者の囲い込みは、市場立ち上げの妨げにしかならない。どの規格が最終的に標準となるのかはともかく、通信キャリアが金融機関としっかり協力関係を築かないと市場の育成もおぼつかなくなる。
■インフラ整備が急務
現在、中国ではクレジットカードが7000万枚、デビットカードに至っては15億枚も発行されている。ところが、それらのカードに対応したPOS(販売時点情報管理)対応機は、全国で200万台しかない。つまり、消費者のニーズにインフラが追いついていないのが現状だ。
どのスーパーでもレジの前に買い物客の長い列ができているし、公共料金の納付ネットワークも貧弱だ。その意味で、おサイフケータイの市場ニーズは非常に大きいといえよう。
普及のためには、セキュリティーの確保や関連法の整備など、消費者が安心して決済サービスを使える環境づくりも急務になる。特に今の中国は、携帯を使った詐欺事件が頻発したりモラルに欠けるサービス事業者が存在したりしており、消費者がおサイフケータイを常時使う環境にない。規格や決済インフラの共通化や消費者の安心を担保する法律の整備なしでは、おサイフケータイが決済システムの一翼を担うという将来像も絵に描いた餅に過ぎなくなる。
ビール販売、アサヒが世界4位と提携 まず香港で
ビール国内首位のアサヒビールは同業世界大手、カールスバーググループ(デンマーク)と海外販売で提携する。今月からまず香港でカールスバーグの営業網を活用し「スーパードライ」を販売、今後は他の国や地域でも提携拡大を検討する。国内飲料業界ではサントリーホールディングスも米ペプシコと組み今年から順次、中国全土で飲料を販売する。飲料各社は海外の成長市場の開拓を急いでおり、世界的な合従連衡が加速しそうだ。
カールスバーグはビールの販売量で世界4位。売上高は約1兆600億円とアサヒの約4分の3の規模。両社に資本関係はなく、今回初めて業務提携する。
韓国の貿易黒字、過去最高に 09年、対日赤字も19%減少
【ソウル=山口真典】韓国知識経済省が2日発表した2009年の貿易収支(暫定値)は409億8000万ドル(約3兆8100億円)の黒字だった。前年は11年ぶりに赤字となったが、逆に09年は黒字幅が過去最高を記録した。輸出は金融危機の影響で前年比14%減少したが、輸入が原油価格下落や内需不振により26%減少した。対日貿易赤字が前年比19%減の264億ドルに改善。対中国の黒字は308億ドルと同2倍以上に膨らんだ。
輸出品目別では鉄鋼や機械、自動車などが軒並み20%以上落ち込んだが、船舶と液晶部品は増加。半導体や自動車部品も中国の需要好調で小幅な減少にとどまった。対日貿易は農水産物や無線通信機器の輸出が増えたうえ、半導体製造用装置や家電用電子製品の輸入が30%以上減り貿易赤字が改善した。
日本経済再生 デフレ退治に全力投球せよ(1月3日付・読売社説)
日本経済は、金融危機と世界不況の嵐をひとまず乗り切ったが、今度はデフレの冷たい霧に包まれてしまった。中長期的には、少子高齢化や人口減少による経済規模の縮小という難題も控えている。
安定成長の軌道に乗るか、それともデフレの圧力に屈して下り坂に迷い込むか。日本経済は岐路に立っている。政府・日銀は、政策を総動員してデフレを克服し、活路を開かねばならない。
◆格安競争に潜むワナ◆
政府は、2001年3月にデフレを認定した後、脱却宣言を出せないまま、昨年11月に再認定した。実際には、銀行破綻(はたん)が相次いだ金融不況から約10年、慢性デフレに沈んだままと言っていい。
とりわけ最近は、スーパーや量販店に1000円を切るジーンズが並び、飲料や持ち帰り弁当、牛丼チェーンなど食料品にも“格安戦線”が急拡大している。
消費者はできるだけ安く買いたいと考え、企業は売り上げ回復のため値下げする。それぞれにとっては合理的な行動が、デフレを悪化させる要因となる。
値下げ競争が激しくなると、企業は採算が悪化して利益が減る。このため、リストラや給与カットが広がり、さらに消費を冷やす悪循環が起きる。
経済統計を見ると、消費者物価の大幅な下落が続く一方で、労働者の月給はここ1年半、前年より減り続けている。
物価は安くなっても、それ以上に給料が下がり、リストラや倒産で多くの人が職を失う……。そんな「デフレスパイラル」が起き始めていないか、警戒が必要だ。
◆需要は35兆円足りない◆
デフレには、需要不足、金融収縮、通貨高の3大原因があり、今回は日本経済全体で35兆円もある需要不足が主因と見られる。
一昨年からの世界同時不況で海外需要が急減し、輸出企業を中心に、大幅な減産と雇用カットが加速した。輸出はアジア向けを中心に回復してきたが、ショック前のピークの7割ほどしかない。
設備や従業員を追加してまで増産する企業は少数派で、設備投資と雇用は回復が遅れている。新卒者の就職内定率は高校、大学とも記録的に落ち込み、就職氷河期の再来も心配だ。
過度の円高は、輸出産業を追い込み、輸入品の価格下落でデフレを悪化させる。政府は、市場介入をためらうべきではない。
持ち直してきた景気も、今年は景気対策の効果が薄れ、腰折れする懸念がある。当面は景気浮揚に即効性のある公共事業などでテコ入れを続けるべきだろう。
だが鳩山内閣は、「コンクリートから人へ」の政権公約にこだわり、来年度予算の公共事業を大幅に削った。これは、基幹産業が乏しい地方には特に打撃となる。
鳩山内閣は、子ども手当などの家計支援で、内需を刺激するとしている。だが、家計へのばらまきは貯蓄に回り、消費されにくい。景気対策として、効果的な予算の使い方とは言えまい。
財政は危機的だが、景気下支えの緊急措置として一定の国債増発もやむを得ない。増発による長期金利の上昇を防ぐために、日銀も国債買い入れの増額など、量的金融緩和の拡大で協調すべきだ。
財政出動だけで需要不足は穴埋めできない。企業が利益を上げ、それが従業員の給料や設備投資を増やす。そんな自律的成長を回復せねばならない。アジアなど外需の成長を取り込まないと、内需も頭打ちになる。
◆企業と家計を元気に◆
鳩山政権は、家計重視を掲げているが、企業を力づける政策は、あまりに手薄だ。
国際的に高い法人税実効税率の引き下げは、競争力強化のため、いずれ必要だろう。環境や省エネなど成長分野の研究・開発を後押しする施策も引き続き重要だ。
介護など高齢社会で伸びる事業の支援や規制緩和も新たな雇用を生み出す。
企業にも問題はある。いざなぎ景気を超えた長期好況で企業は巨額の利益を得たが、従業員への配分を抑えたため、消費は盛り上がりを欠いた。労働分配率を高め、内需の成長を後押しすれば、企業にもプラスになろう。
家計は、財政危機や医療、年金に対する不安から、過剰な貯蓄を抱えている。これも消費を冷やす要因である。社会保障費などの安定財源は消費税のほかにない。
景気回復後の消費税率引き上げを含め、財政再建計画を定めて将来不安を和らげるのも、広い意味での景気対策と言えよう。
与党内には、利子をゼロにするかわりに相続税を免除する「無利子非課税国債」構想もある。国は利払い負担なしで家計の“眠れる資金”を活用できる。経済立て直しに役立ててはどうか。
中国では最近、携帯電話を使った電子決済機能、いわゆる「おサイフケータイ」の規格を巡る通信キャリアと金融機関の主導権争いが激化している。少額決済での利用が今後大きく伸びると見込んだ各社が、それぞれの規格を中国での業界標準(デファクトスタンダード)にしようと躍起になっているからだ。
■前哨戦で早くも火花
中国携帯最大手のチャイナモバイルは10月13日、自社のおサイフケータイの規格概要を発表した。2010年5月に開幕する上海国際博覧会(上海万博)で携帯端末を使った決済サービスを本格導入し、敷地内でのチケット購入や飲食などの決済をすべて携帯でできるようにするという。
ライバルのチャイナユニコムも当然、準備を進めている。同じ上海で日本の「モバイルSuica」にあたるような交通系サービスを開始すると打ち上げるなど、一歩も引き下がらない様子だ。
決済インフラを握っている金融機関も黙っていない。クレジットカードやデビットカードで最大手の中国銀聯は、銀行向けの決済専用端末を開発すると発表した。通信キャリアが携帯ユーザーの囲い込みにより攻めようとしているのに対し、銀聯は大手金融機関と組んで決済インフラから自社規格を浸透させる戦略だ。いずれも携帯端末を使った少額決済市場での主導権を握ろうとした動きだ。
■主導権争いに勝者はいるのか
問題は、主導権争いをしている企業が、いずれも他社と互換性のない規格を市場の標準にしようとしていることだ。
チャイナモバイルは、将来主流となりそうな近距離無線通信技術の新規格「NFC(Near Field Communication)」とは一線を画し、携帯電話に内蔵して端末認証や情報管理に使う「Simカード」に通信機能を集約する「RFID-Sim」方式を採用した。NFCとは異なり、携帯端末のSimカードを取り替えれば、どの携帯でも利用できるようになる仕組みだ。一方のチャイナユニコムはNFCを採用し、端末にICチップを外付けしたりする方式を予定している。
どちらも自社サービスの利用者数を武器に、決済系のインフラを握っている金融機関から主導権を奪おうとしていることに変わりはない。ところが銀聯のような金融機関は、既得権益を手放すわけにはいかないと言わんばかりに、通信キャリアとの協力に消極的だ。
銀聯とチャイナユニコムは11月26日、オンライン決済や情報サービスなど幅広い分野で提携する文書に調印した。これには携帯による決済サービスでの事業協力も含まれているが、包括提携の一部にとどまっており調整は難航するだろうとも予想されている。
本格的におサイフケータイサービスを展開するには通信系と決済系の協業が不可欠で、既得権者同士の意地の張り合いに勝者はない。当面は落としどころを探るためのにらみ合いが続きそうだ。
■日本の経験に学べ
通信キャリアや金融機関がそれぞれの規格で業界のデファクトスタンダードを狙うのは結構だが、規格が乱立すれば戸惑うのは利用者だ。システムや読み取り装置、対応する携帯端末にかかる投資も莫大になる。おサイフケータイ先進国である日本では、システムを開発したNTTドコモが市場を育てるために、KDDIやソフトバンクなど他のキャリアにも規格や「おサイフケータイ」という名称をライセンス供与した。規格を一本化したことでサービス提供者や金融機関、インフラ業者も参入しやすくなり、消費者も利便性を享受できた。だからこそ市場が飛躍的に拡大したのだ。
中国もこの日本の経験に学ぶべきだ。不毛な規格争いや利用者の囲い込みは、市場立ち上げの妨げにしかならない。どの規格が最終的に標準となるのかはともかく、通信キャリアが金融機関としっかり協力関係を築かないと市場の育成もおぼつかなくなる。
■インフラ整備が急務
現在、中国ではクレジットカードが7000万枚、デビットカードに至っては15億枚も発行されている。ところが、それらのカードに対応したPOS(販売時点情報管理)対応機は、全国で200万台しかない。つまり、消費者のニーズにインフラが追いついていないのが現状だ。
どのスーパーでもレジの前に買い物客の長い列ができているし、公共料金の納付ネットワークも貧弱だ。その意味で、おサイフケータイの市場ニーズは非常に大きいといえよう。
普及のためには、セキュリティーの確保や関連法の整備など、消費者が安心して決済サービスを使える環境づくりも急務になる。特に今の中国は、携帯を使った詐欺事件が頻発したりモラルに欠けるサービス事業者が存在したりしており、消費者がおサイフケータイを常時使う環境にない。規格や決済インフラの共通化や消費者の安心を担保する法律の整備なしでは、おサイフケータイが決済システムの一翼を担うという将来像も絵に描いた餅に過ぎなくなる。
ビール販売、アサヒが世界4位と提携 まず香港で
ビール国内首位のアサヒビールは同業世界大手、カールスバーググループ(デンマーク)と海外販売で提携する。今月からまず香港でカールスバーグの営業網を活用し「スーパードライ」を販売、今後は他の国や地域でも提携拡大を検討する。国内飲料業界ではサントリーホールディングスも米ペプシコと組み今年から順次、中国全土で飲料を販売する。飲料各社は海外の成長市場の開拓を急いでおり、世界的な合従連衡が加速しそうだ。
カールスバーグはビールの販売量で世界4位。売上高は約1兆600億円とアサヒの約4分の3の規模。両社に資本関係はなく、今回初めて業務提携する。
韓国の貿易黒字、過去最高に 09年、対日赤字も19%減少
【ソウル=山口真典】韓国知識経済省が2日発表した2009年の貿易収支(暫定値)は409億8000万ドル(約3兆8100億円)の黒字だった。前年は11年ぶりに赤字となったが、逆に09年は黒字幅が過去最高を記録した。輸出は金融危機の影響で前年比14%減少したが、輸入が原油価格下落や内需不振により26%減少した。対日貿易赤字が前年比19%減の264億ドルに改善。対中国の黒字は308億ドルと同2倍以上に膨らんだ。
輸出品目別では鉄鋼や機械、自動車などが軒並み20%以上落ち込んだが、船舶と液晶部品は増加。半導体や自動車部品も中国の需要好調で小幅な減少にとどまった。対日貿易は農水産物や無線通信機器の輸出が増えたうえ、半導体製造用装置や家電用電子製品の輸入が30%以上減り貿易赤字が改善した。
日本経済再生 デフレ退治に全力投球せよ(1月3日付・読売社説)
日本経済は、金融危機と世界不況の嵐をひとまず乗り切ったが、今度はデフレの冷たい霧に包まれてしまった。中長期的には、少子高齢化や人口減少による経済規模の縮小という難題も控えている。
安定成長の軌道に乗るか、それともデフレの圧力に屈して下り坂に迷い込むか。日本経済は岐路に立っている。政府・日銀は、政策を総動員してデフレを克服し、活路を開かねばならない。
◆格安競争に潜むワナ◆
政府は、2001年3月にデフレを認定した後、脱却宣言を出せないまま、昨年11月に再認定した。実際には、銀行破綻(はたん)が相次いだ金融不況から約10年、慢性デフレに沈んだままと言っていい。
とりわけ最近は、スーパーや量販店に1000円を切るジーンズが並び、飲料や持ち帰り弁当、牛丼チェーンなど食料品にも“格安戦線”が急拡大している。
消費者はできるだけ安く買いたいと考え、企業は売り上げ回復のため値下げする。それぞれにとっては合理的な行動が、デフレを悪化させる要因となる。
値下げ競争が激しくなると、企業は採算が悪化して利益が減る。このため、リストラや給与カットが広がり、さらに消費を冷やす悪循環が起きる。
経済統計を見ると、消費者物価の大幅な下落が続く一方で、労働者の月給はここ1年半、前年より減り続けている。
物価は安くなっても、それ以上に給料が下がり、リストラや倒産で多くの人が職を失う……。そんな「デフレスパイラル」が起き始めていないか、警戒が必要だ。
◆需要は35兆円足りない◆
デフレには、需要不足、金融収縮、通貨高の3大原因があり、今回は日本経済全体で35兆円もある需要不足が主因と見られる。
一昨年からの世界同時不況で海外需要が急減し、輸出企業を中心に、大幅な減産と雇用カットが加速した。輸出はアジア向けを中心に回復してきたが、ショック前のピークの7割ほどしかない。
設備や従業員を追加してまで増産する企業は少数派で、設備投資と雇用は回復が遅れている。新卒者の就職内定率は高校、大学とも記録的に落ち込み、就職氷河期の再来も心配だ。
過度の円高は、輸出産業を追い込み、輸入品の価格下落でデフレを悪化させる。政府は、市場介入をためらうべきではない。
持ち直してきた景気も、今年は景気対策の効果が薄れ、腰折れする懸念がある。当面は景気浮揚に即効性のある公共事業などでテコ入れを続けるべきだろう。
だが鳩山内閣は、「コンクリートから人へ」の政権公約にこだわり、来年度予算の公共事業を大幅に削った。これは、基幹産業が乏しい地方には特に打撃となる。
鳩山内閣は、子ども手当などの家計支援で、内需を刺激するとしている。だが、家計へのばらまきは貯蓄に回り、消費されにくい。景気対策として、効果的な予算の使い方とは言えまい。
財政は危機的だが、景気下支えの緊急措置として一定の国債増発もやむを得ない。増発による長期金利の上昇を防ぐために、日銀も国債買い入れの増額など、量的金融緩和の拡大で協調すべきだ。
財政出動だけで需要不足は穴埋めできない。企業が利益を上げ、それが従業員の給料や設備投資を増やす。そんな自律的成長を回復せねばならない。アジアなど外需の成長を取り込まないと、内需も頭打ちになる。
◆企業と家計を元気に◆
鳩山政権は、家計重視を掲げているが、企業を力づける政策は、あまりに手薄だ。
国際的に高い法人税実効税率の引き下げは、競争力強化のため、いずれ必要だろう。環境や省エネなど成長分野の研究・開発を後押しする施策も引き続き重要だ。
介護など高齢社会で伸びる事業の支援や規制緩和も新たな雇用を生み出す。
企業にも問題はある。いざなぎ景気を超えた長期好況で企業は巨額の利益を得たが、従業員への配分を抑えたため、消費は盛り上がりを欠いた。労働分配率を高め、内需の成長を後押しすれば、企業にもプラスになろう。
家計は、財政危機や医療、年金に対する不安から、過剰な貯蓄を抱えている。これも消費を冷やす要因である。社会保障費などの安定財源は消費税のほかにない。
景気回復後の消費税率引き上げを含め、財政再建計画を定めて将来不安を和らげるのも、広い意味での景気対策と言えよう。
与党内には、利子をゼロにするかわりに相続税を免除する「無利子非課税国債」構想もある。国は利払い負担なしで家計の“眠れる資金”を活用できる。経済立て直しに役立ててはどうか。
グーグルも郷に従う 韓国ポータル競争、第2ラウンドの舞台(COLUMN)
検索サイト世界最大手の米グーグルは12月4日、韓国サイトのデザインを変えた。グーグルといえば検索だけに特化したシンプルなメーン画面が特徴だが、検索キーワードを入力する窓の下に、「人気トピック」「話題の人物」「人気ブログ」といった、韓国の他のポータルサイトのメーン画面にもあるメニューを追加した。これまでグーグルは世界各国で同じデザインの画面を通じてサービスを提供してきたが、韓国に限り、その世界共通のスタイルを捨てたのだ。
グーグルによると、韓国で市場調査をした際に、「検索結果の品質」には満足するが、「社会的イシューの把握」で満足できないという意見が多かったため、メーン画面を修正したという。グーグル側は「メーン画面変更は全世界で韓国語サイトだけ。広告のないさっぱりしたデザインと優秀な検索品質で、韓国ユーザーを満足させられることを期待している」と述べた。韓国サイトの訪問者数は11月27日の54万人から、12月4日には61万人に増加した。
■低迷するグーグルのシェア
しかし韓国のネット業界は、グーグルの冒険に注目してはいるものの、「メーン画面のメニューを増やすぐらいではユーザーに受け入れられないだろう」と厳しく評価している。
グーグル韓国の新しいメーン画面に表示される内容は、過去の検索結果からコンピューターが解析して決める。グーグルはこの方式について、「閲覧数に応じてトピックを表示しているので、より客観的な情報を提供できる」と主張する。
これに対し韓国の他のポータルサイトでは、複数の編集者がブログやニュースのコメントなどに目を通して、なにをメーン画面に表示するのかを選別している。ニュースの見出し編集は禁止されているが、ブログの書き込みは見出しを編集したり構成を変えたりして、利用者の注目度を高めようと競い合っている。雑誌やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)サイトと提携し、話題のコンテンツを提供してもらってもいる。韓国の検索ポータルは検索機能の高度化だけでなく、コンテンツの制作と流通にも深く関わっているのだ。
グーグルの努力にも関わらず、韓国の検索市場における同社のシェアは2%と低迷している。しかも、グーグルと過去3年間検索広告契約を結んでいた市場シェア2位のポータルサイト「DAUM」が、広告単価の高いオーバーチュアに乗り換えたことで、韓国国内での広告売り上げが大きく減った。グーグルの広告サービス「アドセンス」は個人ブログを中心に利用が広がっているものの、広告事業は順調とは言い難い状況である。
■韓国ポータルでNAVERが独走する理由
韓国のパソコン向け検索ポータルでは、「NAVER」がシェア約7割と他を圧倒している。NAVERを運営するNHNの2009年7~9月期の売上高は、前年同期比13%増の3332億ウォン(約254億円)。内訳は52%が検索広告、32%がゲームだった。ライバルであるDAUMを運営するダウムコミュニケーションの同じ期の売上高は641億ウォン(約49億円)と、NHNの5分の1でしかない。DAUMも会員数ではNAVERに負けていないが、売上高でここまで引き離される背景には、検索データベース(DB)の差に加え、検索利用件数の違いがあるといわれている。
「NAVERのサイトを見れば、ほしい情報が簡単に、見やすく手に入る」というユーザーの利便性を維持するため、NAVERは検索、口コミ、画像、動画、ブログ、SNS、Twitter(ツイッタ―)、ニュース、論文、専門資料など、ネット上に存在するあらゆる情報を1つの検索DBにまとめている。ホームページでは見つからない情報が、口コミサイトで見つかる可能性もあるからだ。その結果、NAVERは「レポートを書くときも、市場調査をするときも、まずNAVERに行けば大丈夫」というブランドを築いた。
■スマートフォン普及で変わる競争条件
ここ数年、NAVERの独走を止められる対抗馬は存在しなかった。しかし携帯電話サービスが第4世代に進化して有線のインターネットと遜色ない通信速度になれば、ネット利用の中心はパソコン向けのポータルサイトから、外出先からでも利用できるモバイルポータルサイトに変わっていくだろう。
韓国では今、大手企業やネット関連企業が社員に米アップルの「iPhone」や韓国サムスン電子製の「OMNIA」といった高機能携帯(スマートフォン)を支給し、インスタントメッセンジャーの活用などによって通信費の節約と業務効率化を同時に図っている。そうなれば当然、スマートフォンで使いやすいポータルサイトがより高い市場シェアを得ることになるだろう。
グーグルは韓国のパソコン向け市場ではNAVERの壁を越えられなかった。しかし、グーグル製の基本ソフト(OS)「Android(アンドロイド)」を搭載した携帯端末が2010年に発売されれば、その構図も変わるかもしれない。
グーグルは12月初め、モバイル向けを中心とする新しい検索技術を相次ぎ発表した。携帯のカメラで撮影した画像で情報を検索する「Google Goggles」、ユーザーの位置情報によって検索結果の順位を変える技術、中国語や日本語などに多言語化されつつある音声検索などは、韓国でもネットユーザーの関心を集めた。韓国のポータルサイトも相当な検索技術を持っているが、ここまでくるとグーグルには敵わないかもしれない。
■移り気なユーザー、チャンスはどこにも
NAVERやDAUMといった韓国の大手ポータルは、数年前から携帯端末向けのサービスも提供しているが、スマートフォンの普及とともに、携帯電話会社も子会社を通じてモバイルポータルの運営をてこ入れし始めた。
iPhoneを販売する韓国の携帯電話最大手KTは、子会社KTHが運営する携帯ポータル「Paran」のスマートフォン専用サイトをリニューアルした。中小店舗向けに顧客管理ソフトなどをネット経由でモバイル端末に提供するSaaS(サース)にも力を入れている。
SKテレコムの子会社で2300万人が加入する韓国最大のSNS「サイワールド」を運営するSKコミュニケーションズは、SNSを前面に出したモバイルポータルで勝負している。SKコミュニケーションズのポータルサイト「NATE」は検索シェアが5%台から7%台と、わずかながらも伸びている。
NAVERも座して待つつもりはない。モバイル向けの地図情報サービスでは、「交通」「自転車」「不動産」「山登り」など目的に応じて異なる地図を提供。個人に焦点を当てて、「何でも揃って使いやすい検索ポータル」というブランドを守ろうとしている。地図からお店情報を検索して無料で電話できるサービスも始めた。自分の電話番号を残すとお店に連絡が届き、その番号宛てに電話がかかってくるのでユーザー側は電話代を払う必要がないという仕組みだ。
韓国のネットユーザーは新しいもの好きだ。DAUMのSNSから「サイワールド」へ、そしてNAVERのブログへ移動していったように、少しでも便利なサイトがあれば、長年使っていたサイトでも未練なく捨てて他に移っていく。
検索も同じだ。NAVERが今は圧倒的に強くても、モバイルが前提になればグーグルをはじめDAUM、NATE、PARAN、Yahooなど、どこにユーザーが移っていくかわからない。iPhoneを引き金に始まった新たな競争は、韓国のインターネット産業全体に広がっていきそうだ。
紅白2年連続で視聴率40%超え
調査会社のビデオリサーチが2日、発表したデータによると、大みそかの第60回NHK紅白歌合戦の平均世帯視聴率は、総合テレビの関東地区で第1部(午後7時15分~8時55分)が37.1%、第2部(同9時~11時45分)が40.8%だった。第1部は前年(35.7%)を上回り、第2部は前年(42.1%)を下回ったものの、2年連続で40%台に乗せた。
関西地区は第1部34.9%(前年比0.5ポイント減)、第2部40.3%(同1.3ポイント減)だった。
同時間帯の民放番組(関東地区)では、TBS系の「格闘技史上最大の祭典Dynamite!!」の後半部分(午後9時から2時間)が16.7%、日本テレビ系の「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」の第1部(午後6時半から2時間半)が16.4%と健闘した。
また、1日の番組(関東地区)で、今年が見納めだったフジテレビ系の「新春かくし芸大会FOREVER」(午後6時から2時間54分)は9.2%だった。
【コラム】米アップルの小型パソコン発売のうわさ、過剰な期待は禁物
米アップルがタブレット(錠剤)のような超小型コンピューターを発売するといううわさが絶えない。期待するのは結構だが、服用には注意が必要だ。
このタブレット型パソコンは、電子書籍やテレビ番組向けと予想されている。同社は音楽管理ソフト「iTunes(アイチューンズ)」てこ入れ計画の一環としてテレビ放送網の取得を狙っており、タブレットの利用を視野に入れているもようだ。
うわさが実現したとしても、500~900ドル(約4万6000~8万3000円)の範囲内とみられる価格で直ちに大衆市場を魅了できるとは考えにくい。またCBSとウォルト・ディズニーは、このアップルのテレビ事業への参加を検討しているものの、他のメディア企業の関心は薄い。
もちろん、スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)の戦略に反した賭けは危険だ。アップルは価格を抑える可能性がある。当初499~599ドルでiPhone(アイフォーン)を発売したとき、売れ行きはさほどではなく、同社はすばやく399ドルに値下げした。しかし、売り上げが本当に伸びたのは、AT&Tと再交渉し、最廉価モデルの価格を199ドルに下げてからだ。
アップルの株価推移(単位:ドル、2000年~)
いずれ、タブレットを中心とした配信サービスを魅力的なものにするに足る数のエンターテインメント企業が加わる可能性もある。App Store(アップストア)やウェブブラウザーへのアクセスといった他の機能も盛り込めば、魅力が増すだろう。
アップルがイノベーションを続けていることは好材料だが、投資家はタブレットが目先の純利益を押し上げると期待しないほうがいい。当面の同社の成長は、引き続きアイフォーンが担いそうだ。タブレットへの期待からアップルの株を買うのは、馬の鼻先にリンゴのカートをつなぐような不合理な判断だ。
大手百貨店で初売り 実用品福袋が人気
全国の主要百貨店で2日、平成22年の「初売り」が行われ、大勢の買い物客でにぎわった。節約志向を反映し、実用品を詰め込んだ「お買い得福袋」が人気を集めた。
日本橋三越本店(東京都中央区)では、午前10時の開店前に8千人の行列ができ、予定を繰り上げて9時45分に開店。3万~4万円相当の衣料品(1万500円)や英国有名百貨店ハロッズ(5250円)の「新春福袋」が販売され、約2千枚用意した整理券が午前中にほぼなくなった。
西武池袋本店(東京都豊島区)も2万人の長蛇の列ができ、午前9時半の開店を15分早めた。ブランドの服を詰め込んだ福袋(平均1万円)を7千個用意したものの、わずか1時間弱で売り切れた。
西武によると、今年の特徴としてハム・ソーセージといった食品の福袋や鍋などのインテリア福袋も人気で「外食を控える内食志向を楽しんでいる傾向が見受けられる」という。
検索サイト世界最大手の米グーグルは12月4日、韓国サイトのデザインを変えた。グーグルといえば検索だけに特化したシンプルなメーン画面が特徴だが、検索キーワードを入力する窓の下に、「人気トピック」「話題の人物」「人気ブログ」といった、韓国の他のポータルサイトのメーン画面にもあるメニューを追加した。これまでグーグルは世界各国で同じデザインの画面を通じてサービスを提供してきたが、韓国に限り、その世界共通のスタイルを捨てたのだ。
グーグルによると、韓国で市場調査をした際に、「検索結果の品質」には満足するが、「社会的イシューの把握」で満足できないという意見が多かったため、メーン画面を修正したという。グーグル側は「メーン画面変更は全世界で韓国語サイトだけ。広告のないさっぱりしたデザインと優秀な検索品質で、韓国ユーザーを満足させられることを期待している」と述べた。韓国サイトの訪問者数は11月27日の54万人から、12月4日には61万人に増加した。
■低迷するグーグルのシェア
しかし韓国のネット業界は、グーグルの冒険に注目してはいるものの、「メーン画面のメニューを増やすぐらいではユーザーに受け入れられないだろう」と厳しく評価している。
グーグル韓国の新しいメーン画面に表示される内容は、過去の検索結果からコンピューターが解析して決める。グーグルはこの方式について、「閲覧数に応じてトピックを表示しているので、より客観的な情報を提供できる」と主張する。
これに対し韓国の他のポータルサイトでは、複数の編集者がブログやニュースのコメントなどに目を通して、なにをメーン画面に表示するのかを選別している。ニュースの見出し編集は禁止されているが、ブログの書き込みは見出しを編集したり構成を変えたりして、利用者の注目度を高めようと競い合っている。雑誌やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)サイトと提携し、話題のコンテンツを提供してもらってもいる。韓国の検索ポータルは検索機能の高度化だけでなく、コンテンツの制作と流通にも深く関わっているのだ。
グーグルの努力にも関わらず、韓国の検索市場における同社のシェアは2%と低迷している。しかも、グーグルと過去3年間検索広告契約を結んでいた市場シェア2位のポータルサイト「DAUM」が、広告単価の高いオーバーチュアに乗り換えたことで、韓国国内での広告売り上げが大きく減った。グーグルの広告サービス「アドセンス」は個人ブログを中心に利用が広がっているものの、広告事業は順調とは言い難い状況である。
■韓国ポータルでNAVERが独走する理由
韓国のパソコン向け検索ポータルでは、「NAVER」がシェア約7割と他を圧倒している。NAVERを運営するNHNの2009年7~9月期の売上高は、前年同期比13%増の3332億ウォン(約254億円)。内訳は52%が検索広告、32%がゲームだった。ライバルであるDAUMを運営するダウムコミュニケーションの同じ期の売上高は641億ウォン(約49億円)と、NHNの5分の1でしかない。DAUMも会員数ではNAVERに負けていないが、売上高でここまで引き離される背景には、検索データベース(DB)の差に加え、検索利用件数の違いがあるといわれている。
「NAVERのサイトを見れば、ほしい情報が簡単に、見やすく手に入る」というユーザーの利便性を維持するため、NAVERは検索、口コミ、画像、動画、ブログ、SNS、Twitter(ツイッタ―)、ニュース、論文、専門資料など、ネット上に存在するあらゆる情報を1つの検索DBにまとめている。ホームページでは見つからない情報が、口コミサイトで見つかる可能性もあるからだ。その結果、NAVERは「レポートを書くときも、市場調査をするときも、まずNAVERに行けば大丈夫」というブランドを築いた。
■スマートフォン普及で変わる競争条件
ここ数年、NAVERの独走を止められる対抗馬は存在しなかった。しかし携帯電話サービスが第4世代に進化して有線のインターネットと遜色ない通信速度になれば、ネット利用の中心はパソコン向けのポータルサイトから、外出先からでも利用できるモバイルポータルサイトに変わっていくだろう。
韓国では今、大手企業やネット関連企業が社員に米アップルの「iPhone」や韓国サムスン電子製の「OMNIA」といった高機能携帯(スマートフォン)を支給し、インスタントメッセンジャーの活用などによって通信費の節約と業務効率化を同時に図っている。そうなれば当然、スマートフォンで使いやすいポータルサイトがより高い市場シェアを得ることになるだろう。
グーグルは韓国のパソコン向け市場ではNAVERの壁を越えられなかった。しかし、グーグル製の基本ソフト(OS)「Android(アンドロイド)」を搭載した携帯端末が2010年に発売されれば、その構図も変わるかもしれない。
グーグルは12月初め、モバイル向けを中心とする新しい検索技術を相次ぎ発表した。携帯のカメラで撮影した画像で情報を検索する「Google Goggles」、ユーザーの位置情報によって検索結果の順位を変える技術、中国語や日本語などに多言語化されつつある音声検索などは、韓国でもネットユーザーの関心を集めた。韓国のポータルサイトも相当な検索技術を持っているが、ここまでくるとグーグルには敵わないかもしれない。
■移り気なユーザー、チャンスはどこにも
NAVERやDAUMといった韓国の大手ポータルは、数年前から携帯端末向けのサービスも提供しているが、スマートフォンの普及とともに、携帯電話会社も子会社を通じてモバイルポータルの運営をてこ入れし始めた。
iPhoneを販売する韓国の携帯電話最大手KTは、子会社KTHが運営する携帯ポータル「Paran」のスマートフォン専用サイトをリニューアルした。中小店舗向けに顧客管理ソフトなどをネット経由でモバイル端末に提供するSaaS(サース)にも力を入れている。
SKテレコムの子会社で2300万人が加入する韓国最大のSNS「サイワールド」を運営するSKコミュニケーションズは、SNSを前面に出したモバイルポータルで勝負している。SKコミュニケーションズのポータルサイト「NATE」は検索シェアが5%台から7%台と、わずかながらも伸びている。
NAVERも座して待つつもりはない。モバイル向けの地図情報サービスでは、「交通」「自転車」「不動産」「山登り」など目的に応じて異なる地図を提供。個人に焦点を当てて、「何でも揃って使いやすい検索ポータル」というブランドを守ろうとしている。地図からお店情報を検索して無料で電話できるサービスも始めた。自分の電話番号を残すとお店に連絡が届き、その番号宛てに電話がかかってくるのでユーザー側は電話代を払う必要がないという仕組みだ。
韓国のネットユーザーは新しいもの好きだ。DAUMのSNSから「サイワールド」へ、そしてNAVERのブログへ移動していったように、少しでも便利なサイトがあれば、長年使っていたサイトでも未練なく捨てて他に移っていく。
検索も同じだ。NAVERが今は圧倒的に強くても、モバイルが前提になればグーグルをはじめDAUM、NATE、PARAN、Yahooなど、どこにユーザーが移っていくかわからない。iPhoneを引き金に始まった新たな競争は、韓国のインターネット産業全体に広がっていきそうだ。
紅白2年連続で視聴率40%超え
調査会社のビデオリサーチが2日、発表したデータによると、大みそかの第60回NHK紅白歌合戦の平均世帯視聴率は、総合テレビの関東地区で第1部(午後7時15分~8時55分)が37.1%、第2部(同9時~11時45分)が40.8%だった。第1部は前年(35.7%)を上回り、第2部は前年(42.1%)を下回ったものの、2年連続で40%台に乗せた。
関西地区は第1部34.9%(前年比0.5ポイント減)、第2部40.3%(同1.3ポイント減)だった。
同時間帯の民放番組(関東地区)では、TBS系の「格闘技史上最大の祭典Dynamite!!」の後半部分(午後9時から2時間)が16.7%、日本テレビ系の「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」の第1部(午後6時半から2時間半)が16.4%と健闘した。
また、1日の番組(関東地区)で、今年が見納めだったフジテレビ系の「新春かくし芸大会FOREVER」(午後6時から2時間54分)は9.2%だった。
【コラム】米アップルの小型パソコン発売のうわさ、過剰な期待は禁物
米アップルがタブレット(錠剤)のような超小型コンピューターを発売するといううわさが絶えない。期待するのは結構だが、服用には注意が必要だ。
このタブレット型パソコンは、電子書籍やテレビ番組向けと予想されている。同社は音楽管理ソフト「iTunes(アイチューンズ)」てこ入れ計画の一環としてテレビ放送網の取得を狙っており、タブレットの利用を視野に入れているもようだ。
うわさが実現したとしても、500~900ドル(約4万6000~8万3000円)の範囲内とみられる価格で直ちに大衆市場を魅了できるとは考えにくい。またCBSとウォルト・ディズニーは、このアップルのテレビ事業への参加を検討しているものの、他のメディア企業の関心は薄い。
もちろん、スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)の戦略に反した賭けは危険だ。アップルは価格を抑える可能性がある。当初499~599ドルでiPhone(アイフォーン)を発売したとき、売れ行きはさほどではなく、同社はすばやく399ドルに値下げした。しかし、売り上げが本当に伸びたのは、AT&Tと再交渉し、最廉価モデルの価格を199ドルに下げてからだ。
アップルの株価推移(単位:ドル、2000年~)
いずれ、タブレットを中心とした配信サービスを魅力的なものにするに足る数のエンターテインメント企業が加わる可能性もある。App Store(アップストア)やウェブブラウザーへのアクセスといった他の機能も盛り込めば、魅力が増すだろう。
アップルがイノベーションを続けていることは好材料だが、投資家はタブレットが目先の純利益を押し上げると期待しないほうがいい。当面の同社の成長は、引き続きアイフォーンが担いそうだ。タブレットへの期待からアップルの株を買うのは、馬の鼻先にリンゴのカートをつなぐような不合理な判断だ。
大手百貨店で初売り 実用品福袋が人気
全国の主要百貨店で2日、平成22年の「初売り」が行われ、大勢の買い物客でにぎわった。節約志向を反映し、実用品を詰め込んだ「お買い得福袋」が人気を集めた。
日本橋三越本店(東京都中央区)では、午前10時の開店前に8千人の行列ができ、予定を繰り上げて9時45分に開店。3万~4万円相当の衣料品(1万500円)や英国有名百貨店ハロッズ(5250円)の「新春福袋」が販売され、約2千枚用意した整理券が午前中にほぼなくなった。
西武池袋本店(東京都豊島区)も2万人の長蛇の列ができ、午前9時半の開店を15分早めた。ブランドの服を詰め込んだ福袋(平均1万円)を7千個用意したものの、わずか1時間弱で売り切れた。
西武によると、今年の特徴としてハム・ソーセージといった食品の福袋や鍋などのインテリア福袋も人気で「外食を控える内食志向を楽しんでいる傾向が見受けられる」という。
キーワードは「停滞と変化」――2009年のモバイル業界を振り返る2(COLUMN)
「携帯電話」市場全体の流動性が低下し、閉塞感が漂う中で、堅実な成長を遂げたのがデータ通信市場だ。とりわけイー・モバイルとUQコミュニケーションズは、高速・大容量通信の"モバイルブロードバンド"をセールスポイントにし、小型・低価格なノートPC市場の拡大と歩調を合わせて成長した。
これら新興キャリアの動向を振り返りつつ、2010年の注目ポイントや期待についても述べたいと思う。
データ通信市場の拡大が追い風になったイー・モバイル
誤解を恐れずにいえば、2009年は「非携帯電話」分野がおもしろかった。「iPhone 3GS」などスマートフォン市場の芽吹きはその1つであるし、ネットブックなど小型ノートPCの市場が予想外に伸びたことも今年の特徴的な出来事といえる。
そして、この小型ノートPC市場の成長を追い風に、存在感を増したのが新興キャリアであるイー・モバイルだ。同社はデータ通信を重視したキャリアとして2007年からモバイル市場に参入し、2008年からデータ通信端末とセットでノートPCやネットブックを割引販売。家電量販店を通じて、さまざまなセット商品やキャンペーンでデータ通信端末を販売し、この分野での地歩を確立した。また、HSDPA/HSUPAの高速化やHSPA+の導入も積極的に行い、今年に入ってからも好調に契約者を獲得している。
イー・モバイルの強みは、データ通信を重視した特化型キャリアであることを生かして、積極的かつ集中的なマーケティングを行うところにある。昨年話題になった(そして物議を醸した)「100円PC」や、Wi-Fiルータ「Pocket WiFi」とニンテンドーDSやiPod touchとのセット販売はその一例といえる。
また同社のデータ通信サービスはISPサービスとセットになっており、初期設定や利用が比較的簡単であるなど、初心者向きであることも特長だ。最近の小型ノートPC市場の拡大で増えた、カジュアルなユーザー層にぴったりなのだ。
一方、これまでイー・モバイルの課題であったサービスエリアは、今年1年でずいぶんと改善された。筆者は仕事柄、全国あちこちを移動しているが、今年は政令指定都市級の市街地はもちろん、郊外やリゾート地でもイー・モバイルが使えるようになったと実感した。また屋内へも予想以上に電波が浸透しており、窓がある部屋ならば圏外になるということはほとんどなかった。しかし、その反面、東京都内のオフィス街や繁華街では、時間帯によって実効通信速度が著しく落ちることもあった。これはイー・モバイルのユーザーが急増していることの証左であるが、ここでしっかりと混雑対策ができるかどうかが重要な課題になっている。
そしてもう1つ、2010年に向けたイー・モバイルの課題が「スマートフォン」や「電話機型端末」のテコ入れだろう。これまではサービスエリアの拡大中であったこともあり、音声サービスを軸にした端末は、データ通信端末ほどの伸びが見られなかった。しかし、キャリアとしての収益拡大や事業モデルのバランスを考えると、データ通信サービス専業での成長は限界がある。とりわけ今後は、3G分野でドコモとの競争がさらに激化し、一方でUQコミュニケーションズが展開する「UQ WiMAX」の存在感も強くなってくる。音声サービスをしっかりと訴求し、大手3キャリアの中に独自のポジションが築けるかが、2010年の注目ポイントと言えそうだ。
2009年は準備期間――今後が期待のUQコミュニケーションズ
今年のデータ通信市場で、イー・モバイルの躍進と並んで注目だったのが、新たに割り当てられた2.5GHz帯の周波数を用いてモバイルWiMAXでのデータ通信サービスを展開するUQコミュニケーションズの新規参入だろう。同社のUQ WiMAXは、3G系のモバイルデータ通信サービスを超える実効速度と、PCとの親和性の高さがポイント。インテルが後押ししていることも手伝い、早いタイミングからモバイルWiMAXモジュール内蔵のノートPCが登場するなど、これまでの3Gキャリアとは異なるアプローチでデータ通信市場に参入してきた。
しかし、通信キャリアの常であるサービス開始初期の「エリアの狭さ」はUQ WiMAXでも例外ではない。とりわけサービス開始直後は基地局の制御ソフトウェアが安定しなかったことにより、通信品質はお世辞にもよい状態ではなかった。だが、今年10月頃からは都内のエリア品質が目に見えて向上しており、次第にビジネスシーンでも使えるサービスになってきた。UQコミュニケーションズによると、基地局設置のペースは上がってきており、エリア拡大は順調に進んでいるという。来年には屋内設置可能な小電力出力リピータも投入される予定なので、ドコモやイー・モバイルに大きく後れを取っている屋内エリアの拡大も進みそうだ。
UQ WiMAXのサービスはつながれば高速で快適であり、初期設定や接続の手順もシンプルで簡単だ。今後、エリア問題が解消していけば、カジュアルなモバイルインターネットの通信手段として広がる可能性がある。モバイルデータ通信のユーザー層を拡大し、市場の裾野を広げることができそうなのだ。そのためにもUQコミュニケーションズには、エリアの拡大と通信品質の向上をいち早く実現してもらいたいと思う。
村上春樹:ベストセラー 「1Q84」続編 4月刊行決定
村上春樹さんが09年に出版したベストセラー「1Q84(BOOK1・2)」の続編、BOOK3が4月に刊行されることが1日、明らかになった。版元の新潮社が毎日新聞など各紙に広告を出した。
「1Q84」は、女性の「青豆」と男性の「天吾」の2人の主人公の章が交互につづられる物語。タイトルはジョージ・オーウェルの作品『1984年』に由来する。昨年5月に発売後、224万部を発行し、単行本や新書などを合わせた年間売り上げでベストセラーに。1990年の集計開始以来、文芸書が1位になったのは初。作中に登場する音楽のCDや村上さんの過去の著作も売り上げを伸ばし、社会現象となった。
村上さんは続編について、昨年9月に毎日新聞に掲載されたインタビューでは「時期的にはなるべく早く、来年(10年)初夏を目安に出すことを考えています」と話していた。
インドの観光査証が空港で取得可能に 日本含む5カ国が対象
インド外務省は1日、日本を含む計5カ国からインドを訪れる観光客に対し、空港で査証(ビザ)を発給する試験的運用を同日から実施すると発表した。
同省によると、デリーやムンバイなどの空港で30日間滞在可能なシングル査証が取得できる。
査証取得の簡素化措置は、より多くの観光客招致が目的。対象国は日本以外に、シンガポール、ニュージーランド、ルクセンブルク、フィンランド。
シャープ、生態系保全へ「格付け」 事業部門や子会社を対象
シャープは事業部門や子会社が自然の生態系への影響をどう抑えようとしているか管理する新手法を導入する。2010年度から各部門の取り組みを点数にして3段階で格付けする。調達、生産、販売といった事業活動の段階ごとに温暖化ガス削減など約30のチェック項目を設け、進ちょく状況を管理する。グループ全体で環境対応を進め、企業ブランド力の向上に生かす。
生態系への影響を抑える「生物多様性保全」と呼ぶ取り組みを管理する。企業の関心は高まっているが、数値評価の仕組みをつくり全社に適用するのは珍しい。
神戸新聞社説
転換のあとに 20年の重み/新たな豊かさを再構築しよう
市民が吹かせた新しい風
大転換の先に、本当の明かりが見えてくるのだろうか。むしろ、日本はこのまま輝きを失っていくのかもしれない。
そんな気分が沈む2010年の年明けだ。景気や雇用の行方は不透明だし、政治も安定しない。世界第2の経済大国の座も風前のともしび…。とはいえ、ここでうつむき加減になっていては、歴史的な「チェンジ」も色あせる。大切なのは変化のあと。これまでの延長上ではない考え方で、明日に向かっていく1年にしたい。
◇ ◇
「コンクリートから人へ」。昨年の政権交代を象徴する民主党の旗印だ。
道路やハコモノばかりにお金を投じるのではなく、直接、家計に注いで支える。成長や産業優先から命や生活を大切にする方向へ。分かりやすい路線転換が、国民の支持を呼び起こした要因だろう。
ところが、ここにきて評価は揺れている。財源難で公約が十分達成できなかった。それ以上に、転換の向こうにある社会や暮らしのデザインが、いっこうに見えてこないもどかしさが原因ではないか。
成長至上を脱して
司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」がドラマ化されて話題になった。書店には幕末、明治期関連の本が数多く並ぶ。
大きな構想を抱いて坂を上った時代を思うと、今の日本は様相が違う。人口減が現実となり、高齢化は進む。資源豊かな新興国の追い上げは急だ。莫大(ばくだい)な借金を抱える国はなかなか身動きがとれない。
もはや「峠を越えたのか」という実感が、あの時代を生きた群像への関心やあこがれに通じているのかもしれない。
いつの間に、こんな袋小路に入り込んでしまったのだろう。山積する難題をたどっていけば、どうやら発端の多くが20年前ごろにあったらしいことに気づく。
右肩上がりの成長に終止符を打ったバブル崩壊。目につき始めた少子化の傾向。東西冷戦が終わり、グローバル化と中国の台頭がはっきりしてきたのも、気候変動問題が認識されだしたのも、この時期だ。
官も民も新たな時代の動きに対応しようとした。しかし、改革の遅れや問題の先送りなどが積もり積もって、今の閉塞(へいそく)感につながった面は否定できない。
とするなら、やるべきことは、はっきりしている。当然と思っていた拡大や成長至上の考え方から脱し、モノの数や量より生活の質、心の豊かさ、持続性に目を向け、21世紀にふさわしい社会を設計する。分かっていても十分できなかった切り替えに、今こそ本気で取り組まねばならない。
内外の政治や経済にチェンジが起きたあと、国が果たすべき役割だろう。
大事なのは、これが暮らしの中でも求められると受け止める姿勢ではないか。すでに社会の再構築を先取りする動きが起きている。まず、そこに目を向けたい。
たとえば、神戸・新長田のまちを歩いてみる。話題の鉄人28号のモニュメントを多くの人が見上げ、三国志に登場する主要人物の石像を見て回る姿も絶えない。新たな風を吹き込んだ「KOBE鉄人プロジェクト」は、地元の商店主らでつくったNPO法人である。
日本にNPOという言葉が紹介されたのも、やはり20年ほど前だった。阪神・淡路大震災を経て、1998年に特定非営利活動促進法が制定され、法人の数はいまや兵庫県内だけで1400を超えた。担う分野は福祉や環境、災害救援など幅広い。
これからの地域社会に欠かせないメンバーとして、確かな存在になっている。
ローカルから動く
20年、30年先を見通すのは簡単ではない。とりわけ、小さな芽がもつ可能性を正しく読み取るのは至難といえる。ただ、NPOに限らず、新たな社会に通じる糸口が足元にあることは間違いないだろう。
この先、人々の主要な関心分野として福祉、環境、医療、文化などの領域が発展する。千葉大教授の広井良典さんはそう指摘した上で「内容からしてローカルなコミュニティに基盤をおく性格のものであり、その『最適な空間的単位』は、他でもなくローカルなレベルにある」(「コミュニティを問いなおす」ちくま新書)と記す。
国のビジョンを待つだけでなく、地域からも「転換のあと」へ動きだしたい。
高齢化や人口減、環境面の制約をむしろ逆手にとって、質の高い暮らしへの道筋を探れないか。楽な坂ではないが、立ち止まって後ずさりはできない。まず、県内の兆しを訪ねることから始めよう。
「携帯電話」市場全体の流動性が低下し、閉塞感が漂う中で、堅実な成長を遂げたのがデータ通信市場だ。とりわけイー・モバイルとUQコミュニケーションズは、高速・大容量通信の"モバイルブロードバンド"をセールスポイントにし、小型・低価格なノートPC市場の拡大と歩調を合わせて成長した。
これら新興キャリアの動向を振り返りつつ、2010年の注目ポイントや期待についても述べたいと思う。
データ通信市場の拡大が追い風になったイー・モバイル
誤解を恐れずにいえば、2009年は「非携帯電話」分野がおもしろかった。「iPhone 3GS」などスマートフォン市場の芽吹きはその1つであるし、ネットブックなど小型ノートPCの市場が予想外に伸びたことも今年の特徴的な出来事といえる。
そして、この小型ノートPC市場の成長を追い風に、存在感を増したのが新興キャリアであるイー・モバイルだ。同社はデータ通信を重視したキャリアとして2007年からモバイル市場に参入し、2008年からデータ通信端末とセットでノートPCやネットブックを割引販売。家電量販店を通じて、さまざまなセット商品やキャンペーンでデータ通信端末を販売し、この分野での地歩を確立した。また、HSDPA/HSUPAの高速化やHSPA+の導入も積極的に行い、今年に入ってからも好調に契約者を獲得している。
イー・モバイルの強みは、データ通信を重視した特化型キャリアであることを生かして、積極的かつ集中的なマーケティングを行うところにある。昨年話題になった(そして物議を醸した)「100円PC」や、Wi-Fiルータ「Pocket WiFi」とニンテンドーDSやiPod touchとのセット販売はその一例といえる。
また同社のデータ通信サービスはISPサービスとセットになっており、初期設定や利用が比較的簡単であるなど、初心者向きであることも特長だ。最近の小型ノートPC市場の拡大で増えた、カジュアルなユーザー層にぴったりなのだ。
一方、これまでイー・モバイルの課題であったサービスエリアは、今年1年でずいぶんと改善された。筆者は仕事柄、全国あちこちを移動しているが、今年は政令指定都市級の市街地はもちろん、郊外やリゾート地でもイー・モバイルが使えるようになったと実感した。また屋内へも予想以上に電波が浸透しており、窓がある部屋ならば圏外になるということはほとんどなかった。しかし、その反面、東京都内のオフィス街や繁華街では、時間帯によって実効通信速度が著しく落ちることもあった。これはイー・モバイルのユーザーが急増していることの証左であるが、ここでしっかりと混雑対策ができるかどうかが重要な課題になっている。
そしてもう1つ、2010年に向けたイー・モバイルの課題が「スマートフォン」や「電話機型端末」のテコ入れだろう。これまではサービスエリアの拡大中であったこともあり、音声サービスを軸にした端末は、データ通信端末ほどの伸びが見られなかった。しかし、キャリアとしての収益拡大や事業モデルのバランスを考えると、データ通信サービス専業での成長は限界がある。とりわけ今後は、3G分野でドコモとの競争がさらに激化し、一方でUQコミュニケーションズが展開する「UQ WiMAX」の存在感も強くなってくる。音声サービスをしっかりと訴求し、大手3キャリアの中に独自のポジションが築けるかが、2010年の注目ポイントと言えそうだ。
2009年は準備期間――今後が期待のUQコミュニケーションズ
今年のデータ通信市場で、イー・モバイルの躍進と並んで注目だったのが、新たに割り当てられた2.5GHz帯の周波数を用いてモバイルWiMAXでのデータ通信サービスを展開するUQコミュニケーションズの新規参入だろう。同社のUQ WiMAXは、3G系のモバイルデータ通信サービスを超える実効速度と、PCとの親和性の高さがポイント。インテルが後押ししていることも手伝い、早いタイミングからモバイルWiMAXモジュール内蔵のノートPCが登場するなど、これまでの3Gキャリアとは異なるアプローチでデータ通信市場に参入してきた。
しかし、通信キャリアの常であるサービス開始初期の「エリアの狭さ」はUQ WiMAXでも例外ではない。とりわけサービス開始直後は基地局の制御ソフトウェアが安定しなかったことにより、通信品質はお世辞にもよい状態ではなかった。だが、今年10月頃からは都内のエリア品質が目に見えて向上しており、次第にビジネスシーンでも使えるサービスになってきた。UQコミュニケーションズによると、基地局設置のペースは上がってきており、エリア拡大は順調に進んでいるという。来年には屋内設置可能な小電力出力リピータも投入される予定なので、ドコモやイー・モバイルに大きく後れを取っている屋内エリアの拡大も進みそうだ。
UQ WiMAXのサービスはつながれば高速で快適であり、初期設定や接続の手順もシンプルで簡単だ。今後、エリア問題が解消していけば、カジュアルなモバイルインターネットの通信手段として広がる可能性がある。モバイルデータ通信のユーザー層を拡大し、市場の裾野を広げることができそうなのだ。そのためにもUQコミュニケーションズには、エリアの拡大と通信品質の向上をいち早く実現してもらいたいと思う。
村上春樹:ベストセラー 「1Q84」続編 4月刊行決定
村上春樹さんが09年に出版したベストセラー「1Q84(BOOK1・2)」の続編、BOOK3が4月に刊行されることが1日、明らかになった。版元の新潮社が毎日新聞など各紙に広告を出した。
「1Q84」は、女性の「青豆」と男性の「天吾」の2人の主人公の章が交互につづられる物語。タイトルはジョージ・オーウェルの作品『1984年』に由来する。昨年5月に発売後、224万部を発行し、単行本や新書などを合わせた年間売り上げでベストセラーに。1990年の集計開始以来、文芸書が1位になったのは初。作中に登場する音楽のCDや村上さんの過去の著作も売り上げを伸ばし、社会現象となった。
村上さんは続編について、昨年9月に毎日新聞に掲載されたインタビューでは「時期的にはなるべく早く、来年(10年)初夏を目安に出すことを考えています」と話していた。
インドの観光査証が空港で取得可能に 日本含む5カ国が対象
インド外務省は1日、日本を含む計5カ国からインドを訪れる観光客に対し、空港で査証(ビザ)を発給する試験的運用を同日から実施すると発表した。
同省によると、デリーやムンバイなどの空港で30日間滞在可能なシングル査証が取得できる。
査証取得の簡素化措置は、より多くの観光客招致が目的。対象国は日本以外に、シンガポール、ニュージーランド、ルクセンブルク、フィンランド。
シャープ、生態系保全へ「格付け」 事業部門や子会社を対象
シャープは事業部門や子会社が自然の生態系への影響をどう抑えようとしているか管理する新手法を導入する。2010年度から各部門の取り組みを点数にして3段階で格付けする。調達、生産、販売といった事業活動の段階ごとに温暖化ガス削減など約30のチェック項目を設け、進ちょく状況を管理する。グループ全体で環境対応を進め、企業ブランド力の向上に生かす。
生態系への影響を抑える「生物多様性保全」と呼ぶ取り組みを管理する。企業の関心は高まっているが、数値評価の仕組みをつくり全社に適用するのは珍しい。
神戸新聞社説
転換のあとに 20年の重み/新たな豊かさを再構築しよう
市民が吹かせた新しい風
大転換の先に、本当の明かりが見えてくるのだろうか。むしろ、日本はこのまま輝きを失っていくのかもしれない。
そんな気分が沈む2010年の年明けだ。景気や雇用の行方は不透明だし、政治も安定しない。世界第2の経済大国の座も風前のともしび…。とはいえ、ここでうつむき加減になっていては、歴史的な「チェンジ」も色あせる。大切なのは変化のあと。これまでの延長上ではない考え方で、明日に向かっていく1年にしたい。
◇ ◇
「コンクリートから人へ」。昨年の政権交代を象徴する民主党の旗印だ。
道路やハコモノばかりにお金を投じるのではなく、直接、家計に注いで支える。成長や産業優先から命や生活を大切にする方向へ。分かりやすい路線転換が、国民の支持を呼び起こした要因だろう。
ところが、ここにきて評価は揺れている。財源難で公約が十分達成できなかった。それ以上に、転換の向こうにある社会や暮らしのデザインが、いっこうに見えてこないもどかしさが原因ではないか。
成長至上を脱して
司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」がドラマ化されて話題になった。書店には幕末、明治期関連の本が数多く並ぶ。
大きな構想を抱いて坂を上った時代を思うと、今の日本は様相が違う。人口減が現実となり、高齢化は進む。資源豊かな新興国の追い上げは急だ。莫大(ばくだい)な借金を抱える国はなかなか身動きがとれない。
もはや「峠を越えたのか」という実感が、あの時代を生きた群像への関心やあこがれに通じているのかもしれない。
いつの間に、こんな袋小路に入り込んでしまったのだろう。山積する難題をたどっていけば、どうやら発端の多くが20年前ごろにあったらしいことに気づく。
右肩上がりの成長に終止符を打ったバブル崩壊。目につき始めた少子化の傾向。東西冷戦が終わり、グローバル化と中国の台頭がはっきりしてきたのも、気候変動問題が認識されだしたのも、この時期だ。
官も民も新たな時代の動きに対応しようとした。しかし、改革の遅れや問題の先送りなどが積もり積もって、今の閉塞(へいそく)感につながった面は否定できない。
とするなら、やるべきことは、はっきりしている。当然と思っていた拡大や成長至上の考え方から脱し、モノの数や量より生活の質、心の豊かさ、持続性に目を向け、21世紀にふさわしい社会を設計する。分かっていても十分できなかった切り替えに、今こそ本気で取り組まねばならない。
内外の政治や経済にチェンジが起きたあと、国が果たすべき役割だろう。
大事なのは、これが暮らしの中でも求められると受け止める姿勢ではないか。すでに社会の再構築を先取りする動きが起きている。まず、そこに目を向けたい。
たとえば、神戸・新長田のまちを歩いてみる。話題の鉄人28号のモニュメントを多くの人が見上げ、三国志に登場する主要人物の石像を見て回る姿も絶えない。新たな風を吹き込んだ「KOBE鉄人プロジェクト」は、地元の商店主らでつくったNPO法人である。
日本にNPOという言葉が紹介されたのも、やはり20年ほど前だった。阪神・淡路大震災を経て、1998年に特定非営利活動促進法が制定され、法人の数はいまや兵庫県内だけで1400を超えた。担う分野は福祉や環境、災害救援など幅広い。
これからの地域社会に欠かせないメンバーとして、確かな存在になっている。
ローカルから動く
20年、30年先を見通すのは簡単ではない。とりわけ、小さな芽がもつ可能性を正しく読み取るのは至難といえる。ただ、NPOに限らず、新たな社会に通じる糸口が足元にあることは間違いないだろう。
この先、人々の主要な関心分野として福祉、環境、医療、文化などの領域が発展する。千葉大教授の広井良典さんはそう指摘した上で「内容からしてローカルなコミュニティに基盤をおく性格のものであり、その『最適な空間的単位』は、他でもなくローカルなレベルにある」(「コミュニティを問いなおす」ちくま新書)と記す。
国のビジョンを待つだけでなく、地域からも「転換のあと」へ動きだしたい。
高齢化や人口減、環境面の制約をむしろ逆手にとって、質の高い暮らしへの道筋を探れないか。楽な坂ではないが、立ち止まって後ずさりはできない。まず、県内の兆しを訪ねることから始めよう。
新春インタビュー・NTTドコモ 辻村氏に聞く:2010年以降、スマートフォンとケータイは近づいていく
2009年から2010年にかけて、日本のモバイルIT業界は大きな転換期に入ってきている。
例えば2009年を振り返ってみれば、Appleの「iPhone 3GS」を代表とするスマートフォンや、ノートPCとデータ通信端末とのセット商品が新市場として着実に成長。一方で、既存の携帯電話市場でも、おサイフケータイの一般普及が始まり、iコンシェルのような生活支援型のサービスが台頭するなど、変化の多い年であった。モバイルITの市場は、より幅広く多様な分野に、そのビジネスの領域を拡大しようとしている。景況悪化という逆風に耐えながら、モバイルITビジネスの変化が感じられたのが2009年でもあった。
そして2010年。携帯電話を中心としたモバイルIT業界はどこに向かうのか。NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏に話を聞いた。
-2009年は携帯電話ビジネス全体に転機が見えはじめた年でもありました。昨年を振り返って、どのようにご覧になっていますか。
辻村清行氏 端末販売市場に関しては、お客様の買い替え期間の長期化の影響もあり、販売台数が下がる傾向が顕著になりました。しかし、水面下では特徴的な出来事もいくつかありました。
その1つが「スマートフォンが売れ始めた」ということです。これは(Appleの)iPhone 3GSの躍進に代表されていますが、AndroidやBlackBerryも堅調に伸びています。スマートフォン市場が最初に立ち上がった年として(2009年は)記録されるでしょう。
そして、もう1つ特徴的だったのが、データ通信端末の需要が伸びたことです。これはNetbookなど割安なノートPCが普及したことが背景にあります。この分野ではイー・モバイルと(ドコモが)競合していますが、積極的に拡販をするなど力を入れています。
-これまでの10年はハンドセット(携帯電話端末)の時代でした。それが今、変わり始めています。携帯電話以外にビジネスの裾野が広がってきていると言えるのでしょうか。
辻村氏 新しい要素が重要になってきていますね。
その上で、これから(2010年以降)がどうなってくるかというと、私は「スマートフォンがさらに重要になる」と思っています。例えば、ドコモとしては複数のメーカーのAndroid端末を市場に投入していきます。バージョンアップのサポートやアプリケーション環境の充実にも力を入れていき、スマートフォンを後押ししていきます。そのような中で、スマートフォン市場の充実が図れていくのではないかと考えているのです。
-スマートフォン市場の裾野の拡大も必要ですね。一部のITリテラシーが高い人たち向けのものではなく、「普通のユーザー」が使えるようにならなければなりません。スマートフォンはもっと簡単に、分かりやすくなる必要があります。
辻村氏 日本で一般的な携帯電話のニーズをいかにスマートフォンに取り込むか。これは重要ですね。例えば我々としては、いずれiモードメールなどiモードの主要なサービスをスマートフォンに移植したいと考えています。また、これは技術的な課題もあり断言できませんが、Androidにおサイフケータイが搭載される可能性もある。スマートフォンのボリュームが今後増えることを考えると、おサイフケータイの必要性は高くなり、対応を考えていかなければならなくなるでしょう。今後のスマートフォンは、従来の日本の携帯電話と機能やサービスの差をどのようにして減らしていくのか、という考え方が重要になります。
-従来型の携帯電話とスマートフォンの垣根を低くするわけですね。
辻村氏 ええ。あくまで将来の予想という観点では、従来型の携帯電話がAndroidなどLinuxベースのオープンOSで作られるようになるシナリオも考えられるわけです。全体的な流れとしては、これまでの携帯電話とスマートフォンの差は縮小していくでしょう。当面は両者は併走していくわけですが、もしかしたらいつか両者の差がなくなり、統合するような形になることも考えられるわけです。
もちろん、現状を鑑みますと、1億台以上の携帯電話の大半が従来型の携帯電話です。しかしこの状況は変わっていくでしょう。私は今後数年かけて、従来型の携帯電話とスマートフォンは近づいていくと考えています。
-現在のトレンドで見ますと、ハイエンドモデルへの関心の一部がスマートフォンに向かっているように感じますが。
辻村氏 確かにそういう見方はできるかもしれませんが、PRIMEシリーズとスマートフォンを比べた時に決定的に異なるのは「コンテンツのセキュリティ」です。例えば、ダウンロード購入した音楽コンテンツは(携帯電話の外に)持ち出せないとか、音楽・映像をはじめ、多くのコンテンツで著作権管理や(不正利用防止の)セキュリティ確保をしっかりと行っているのです。
一方で、スマートフォンなどオープンOSの世界は、iPhoneなど特定の企業がプラットフォーム管理を徹底しているケースを除けば、ダウンロードコンテンツの管理・セキュリティが、PRIMEシリーズなど従来型の携帯電話ほどきちんとできていません。この点は両者の違いになっており、特にコンテンツプロバイダーから見た時に重要な差になっています。
-確かにスマートフォンが今後一般化するためには、iPhoneのようにしっかりとしたコンテンツ流通プラットフォームや著作権の管理が必要ですね。AndroidやWindows Phoneの世界は、“ビジネスの場”としての整備が、これまでの携帯コンテンツ市場やiPhone市場よりも出遅れています。
辻村氏 スマートフォンも今後DRMが強化されていく流れになるでしょう。現状では(コンテンツ管理は)従来型の携帯電話の方が優れていますが、ここでもやはりスマートフォンとの差は将来的には小さくなっていくでしょう。
-スマートフォンを一般ユーザー層向けに展開するにあたり、China Mobile(中国移動)の「OPhone」のようなモデルをどのように見ていますか。
辻村氏 OPhoneのようなモデルは、ドコモからも(将来的に)投入していく考えです。AndroidやWindows PhoneはオープンOSなわけですけれど、そこに(キャリアの)DRMやコンテンツ流通の仕組みを載せたものが出てくるのは、今後の流れだと考えています。
-ドコモもスマートフォン向けのコンテンツ配信サービスを立ち上げると表明しています。
辻村氏 ええ、それは今年度内を目処に進めています。お客様がコンテンツを探しやすい環境が必要です。また将来的にはユーザー認証や課金の仕組みも(ドコモとしても)整備していく必要があるでしょう。
-2009年はスマートフォンが注目を浴びたとともに、従来型の携帯電話の世界でも、「おサイフケータイ利用の広がり」や、行動支援型サービス「iコンシェル」の普及など、新たな時代を感じさせるトピックスも多数ありました。
辻村氏 おっしゃるとおりです。おサイフケータイとiコンシェルは広く普及し、ドコモにとっても戦略的なセグメントになっています。
まずiコンシェルですが、こちらはオートGPSを搭載し、位置情報と行動支援を組み合わせたサービスになりました。私はiコンシェルは、iモードのような(重要なプラットフォームとしての)発展をしていくと考えています。
-iコンシェルのコンテンツも増加し、実際に利用していても「便利だ」と実感するシーンが増えました。
辻村氏 サービスの普及やコンテンツの増加を見ていても、(iコンシェルは)iチャネル以上のペースです。しかし、iコンシェルはまだ完全ではありません。現在のコンテンツはどちらかというと全国向けのサービスが多いのですが、iコンシェルが真価を発揮するのは(ローカル性の高い)「地域密着型のコンテンツ」です。まだまだ(iコンシェル上のビジネスが)発展していく余地は多くあるのです。
iコンシェルは今のところテキスト情報が中心ですが、今後は画像や動画の活用といったマルチメディア化も考えています。そうするとパーソナル性とローカル性を兼ね備えた新たなメディアとして発展する可能性が高い。
-そうなればARPU向上にも貢献しそうですね。
辻村氏 ええ、データARPU向上ではBeeTVなど動画配信のアプローチがあり、これらも成功していますが、私は(iコンシェルの)生活支援型サービスでも定額制加入率向上と上限額までの利用促進ができると考えています。ユーザー1人1人が便利だと感じていただける、こうした生活密着型サービスを充実させる。その結果として(ドコモの)データARPUも向上するというのが重要です。
-その方向性で考えますと、私が最近のドコモで戦略的に重要だと考えているのが、(デジタル地図サービス会社の)ゼンリンデータコムへの出資です。行動支援や生活密着を考える上で、地図とナビゲーションは最もベーシックな機能になります。ドコモが“デジタル地図を取り込み”、その上でiコンシェルのサービスを強化させているのは、将来に向けての重要な取り組みだと見ています。
辻村氏 そのとおりです。地図・行動支援・位置情報の3つを我々は戦略的にサービスに取り込んでいますが、それはドコモが(次のフェーズで)重視する生活支援に結びついているからです。
むろん、エンターテインメントのコンテンツも20~30代を中心としたお客様向けには重要なのですが、今後はもっと幅広く、多くのお客様にモバイルインターネットのサービスを使っていただきたい。そう考えますと、生活支援のコンテンツやサービスが使いやすく提供されることが大切なのです。その1つの答えであり取り組みが、iコンシェルなのです。
-おサイフケータイはいかがでしょうか。
辻村氏 これまでおサイフケータイというと、電子マネーや交通ICというイメージだったのですが、2009年から「リアルとの連携」で幅広く使われるようになってきました。さまざまなサービスやビジネスで、リアルとの接点が作れる。いわば、橋の役割をするのがモバイルFeliCaチップなのです。
このリアルとの連携は、生活支援型サービスにおいてとても重要です。iコンシェルでもトルカの活用をしていますが、おサイフケータイとiコンシェルは対になっていると言えます。
-iコンシェルが登場したことで、おサイフケータイの活用領域が広がったのは確かですね。特にトルカ更新はCRMの在り方を変えてしまうポテンシャルがある。
辻村氏 ええ、そしてこういった「リアルとの連携」はPCではできません。ネットブックなどモバイルノートPCでもできないでしょう。行動支援サービスのiコンシェルと、おサイフケータイを対で持っているケータイだからこそできるものなのです。
-特におサイフケータイは、今のところiPhoneでもまねできていない領域ですね。そして、ほぼ確実にスマートフォンも、(非接触ICを用いた)リアル連携の世界観を取り入れることになる。
辻村氏 それがNFCなのかどうかは情勢を見守らないとわかりませんが、スマートフォンも非接触ICを取り入れていかないと、リアル連携のサービスに進めません。この方向性は(世界のトレンドとしても)確かだと思います。スマートフォンも、リアルと結びついていかなければダメなのです。なぜなら、リアルと連携できることが、(PCインターネットに対する)モバイルインターネットの大きな可能性ですから。
-GoogleがAndroidでモバイルに進出してきたのも、彼らが「リアルとの連携」を重視してきたからです。そう考えると、非接触ICはGPSに並んで、リアル連携の重要な要素技術と言えます。
辻村氏 私はよく講演などで「鳥の眼、蟻の眼」という話をするのですが、Googleがこれまでやってきたのは“鳥の眼”の世界なんです。膨大な情報を俯瞰し、目的の情報を見つけるという意味で。一方の“蟻の目”は、ケータイの世界ですね。非常に低い位置にあるのですが、ミクロで(利用者にとって)重要な情報を提供するのです。
この“鳥の眼”と“蟻の目”はどちらが優れているというものではなく、今後は連携し、対になっていくものです。
2009年から2010年にかけて、日本のモバイルIT業界は大きな転換期に入ってきている。
例えば2009年を振り返ってみれば、Appleの「iPhone 3GS」を代表とするスマートフォンや、ノートPCとデータ通信端末とのセット商品が新市場として着実に成長。一方で、既存の携帯電話市場でも、おサイフケータイの一般普及が始まり、iコンシェルのような生活支援型のサービスが台頭するなど、変化の多い年であった。モバイルITの市場は、より幅広く多様な分野に、そのビジネスの領域を拡大しようとしている。景況悪化という逆風に耐えながら、モバイルITビジネスの変化が感じられたのが2009年でもあった。
そして2010年。携帯電話を中心としたモバイルIT業界はどこに向かうのか。NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏に話を聞いた。
-2009年は携帯電話ビジネス全体に転機が見えはじめた年でもありました。昨年を振り返って、どのようにご覧になっていますか。
辻村清行氏 端末販売市場に関しては、お客様の買い替え期間の長期化の影響もあり、販売台数が下がる傾向が顕著になりました。しかし、水面下では特徴的な出来事もいくつかありました。
その1つが「スマートフォンが売れ始めた」ということです。これは(Appleの)iPhone 3GSの躍進に代表されていますが、AndroidやBlackBerryも堅調に伸びています。スマートフォン市場が最初に立ち上がった年として(2009年は)記録されるでしょう。
そして、もう1つ特徴的だったのが、データ通信端末の需要が伸びたことです。これはNetbookなど割安なノートPCが普及したことが背景にあります。この分野ではイー・モバイルと(ドコモが)競合していますが、積極的に拡販をするなど力を入れています。
-これまでの10年はハンドセット(携帯電話端末)の時代でした。それが今、変わり始めています。携帯電話以外にビジネスの裾野が広がってきていると言えるのでしょうか。
辻村氏 新しい要素が重要になってきていますね。
その上で、これから(2010年以降)がどうなってくるかというと、私は「スマートフォンがさらに重要になる」と思っています。例えば、ドコモとしては複数のメーカーのAndroid端末を市場に投入していきます。バージョンアップのサポートやアプリケーション環境の充実にも力を入れていき、スマートフォンを後押ししていきます。そのような中で、スマートフォン市場の充実が図れていくのではないかと考えているのです。
-スマートフォン市場の裾野の拡大も必要ですね。一部のITリテラシーが高い人たち向けのものではなく、「普通のユーザー」が使えるようにならなければなりません。スマートフォンはもっと簡単に、分かりやすくなる必要があります。
辻村氏 日本で一般的な携帯電話のニーズをいかにスマートフォンに取り込むか。これは重要ですね。例えば我々としては、いずれiモードメールなどiモードの主要なサービスをスマートフォンに移植したいと考えています。また、これは技術的な課題もあり断言できませんが、Androidにおサイフケータイが搭載される可能性もある。スマートフォンのボリュームが今後増えることを考えると、おサイフケータイの必要性は高くなり、対応を考えていかなければならなくなるでしょう。今後のスマートフォンは、従来の日本の携帯電話と機能やサービスの差をどのようにして減らしていくのか、という考え方が重要になります。
-従来型の携帯電話とスマートフォンの垣根を低くするわけですね。
辻村氏 ええ。あくまで将来の予想という観点では、従来型の携帯電話がAndroidなどLinuxベースのオープンOSで作られるようになるシナリオも考えられるわけです。全体的な流れとしては、これまでの携帯電話とスマートフォンの差は縮小していくでしょう。当面は両者は併走していくわけですが、もしかしたらいつか両者の差がなくなり、統合するような形になることも考えられるわけです。
もちろん、現状を鑑みますと、1億台以上の携帯電話の大半が従来型の携帯電話です。しかしこの状況は変わっていくでしょう。私は今後数年かけて、従来型の携帯電話とスマートフォンは近づいていくと考えています。
-現在のトレンドで見ますと、ハイエンドモデルへの関心の一部がスマートフォンに向かっているように感じますが。
辻村氏 確かにそういう見方はできるかもしれませんが、PRIMEシリーズとスマートフォンを比べた時に決定的に異なるのは「コンテンツのセキュリティ」です。例えば、ダウンロード購入した音楽コンテンツは(携帯電話の外に)持ち出せないとか、音楽・映像をはじめ、多くのコンテンツで著作権管理や(不正利用防止の)セキュリティ確保をしっかりと行っているのです。
一方で、スマートフォンなどオープンOSの世界は、iPhoneなど特定の企業がプラットフォーム管理を徹底しているケースを除けば、ダウンロードコンテンツの管理・セキュリティが、PRIMEシリーズなど従来型の携帯電話ほどきちんとできていません。この点は両者の違いになっており、特にコンテンツプロバイダーから見た時に重要な差になっています。
-確かにスマートフォンが今後一般化するためには、iPhoneのようにしっかりとしたコンテンツ流通プラットフォームや著作権の管理が必要ですね。AndroidやWindows Phoneの世界は、“ビジネスの場”としての整備が、これまでの携帯コンテンツ市場やiPhone市場よりも出遅れています。
辻村氏 スマートフォンも今後DRMが強化されていく流れになるでしょう。現状では(コンテンツ管理は)従来型の携帯電話の方が優れていますが、ここでもやはりスマートフォンとの差は将来的には小さくなっていくでしょう。
-スマートフォンを一般ユーザー層向けに展開するにあたり、China Mobile(中国移動)の「OPhone」のようなモデルをどのように見ていますか。
辻村氏 OPhoneのようなモデルは、ドコモからも(将来的に)投入していく考えです。AndroidやWindows PhoneはオープンOSなわけですけれど、そこに(キャリアの)DRMやコンテンツ流通の仕組みを載せたものが出てくるのは、今後の流れだと考えています。
-ドコモもスマートフォン向けのコンテンツ配信サービスを立ち上げると表明しています。
辻村氏 ええ、それは今年度内を目処に進めています。お客様がコンテンツを探しやすい環境が必要です。また将来的にはユーザー認証や課金の仕組みも(ドコモとしても)整備していく必要があるでしょう。
-2009年はスマートフォンが注目を浴びたとともに、従来型の携帯電話の世界でも、「おサイフケータイ利用の広がり」や、行動支援型サービス「iコンシェル」の普及など、新たな時代を感じさせるトピックスも多数ありました。
辻村氏 おっしゃるとおりです。おサイフケータイとiコンシェルは広く普及し、ドコモにとっても戦略的なセグメントになっています。
まずiコンシェルですが、こちらはオートGPSを搭載し、位置情報と行動支援を組み合わせたサービスになりました。私はiコンシェルは、iモードのような(重要なプラットフォームとしての)発展をしていくと考えています。
-iコンシェルのコンテンツも増加し、実際に利用していても「便利だ」と実感するシーンが増えました。
辻村氏 サービスの普及やコンテンツの増加を見ていても、(iコンシェルは)iチャネル以上のペースです。しかし、iコンシェルはまだ完全ではありません。現在のコンテンツはどちらかというと全国向けのサービスが多いのですが、iコンシェルが真価を発揮するのは(ローカル性の高い)「地域密着型のコンテンツ」です。まだまだ(iコンシェル上のビジネスが)発展していく余地は多くあるのです。
iコンシェルは今のところテキスト情報が中心ですが、今後は画像や動画の活用といったマルチメディア化も考えています。そうするとパーソナル性とローカル性を兼ね備えた新たなメディアとして発展する可能性が高い。
-そうなればARPU向上にも貢献しそうですね。
辻村氏 ええ、データARPU向上ではBeeTVなど動画配信のアプローチがあり、これらも成功していますが、私は(iコンシェルの)生活支援型サービスでも定額制加入率向上と上限額までの利用促進ができると考えています。ユーザー1人1人が便利だと感じていただける、こうした生活密着型サービスを充実させる。その結果として(ドコモの)データARPUも向上するというのが重要です。
-その方向性で考えますと、私が最近のドコモで戦略的に重要だと考えているのが、(デジタル地図サービス会社の)ゼンリンデータコムへの出資です。行動支援や生活密着を考える上で、地図とナビゲーションは最もベーシックな機能になります。ドコモが“デジタル地図を取り込み”、その上でiコンシェルのサービスを強化させているのは、将来に向けての重要な取り組みだと見ています。
辻村氏 そのとおりです。地図・行動支援・位置情報の3つを我々は戦略的にサービスに取り込んでいますが、それはドコモが(次のフェーズで)重視する生活支援に結びついているからです。
むろん、エンターテインメントのコンテンツも20~30代を中心としたお客様向けには重要なのですが、今後はもっと幅広く、多くのお客様にモバイルインターネットのサービスを使っていただきたい。そう考えますと、生活支援のコンテンツやサービスが使いやすく提供されることが大切なのです。その1つの答えであり取り組みが、iコンシェルなのです。
-おサイフケータイはいかがでしょうか。
辻村氏 これまでおサイフケータイというと、電子マネーや交通ICというイメージだったのですが、2009年から「リアルとの連携」で幅広く使われるようになってきました。さまざまなサービスやビジネスで、リアルとの接点が作れる。いわば、橋の役割をするのがモバイルFeliCaチップなのです。
このリアルとの連携は、生活支援型サービスにおいてとても重要です。iコンシェルでもトルカの活用をしていますが、おサイフケータイとiコンシェルは対になっていると言えます。
-iコンシェルが登場したことで、おサイフケータイの活用領域が広がったのは確かですね。特にトルカ更新はCRMの在り方を変えてしまうポテンシャルがある。
辻村氏 ええ、そしてこういった「リアルとの連携」はPCではできません。ネットブックなどモバイルノートPCでもできないでしょう。行動支援サービスのiコンシェルと、おサイフケータイを対で持っているケータイだからこそできるものなのです。
-特におサイフケータイは、今のところiPhoneでもまねできていない領域ですね。そして、ほぼ確実にスマートフォンも、(非接触ICを用いた)リアル連携の世界観を取り入れることになる。
辻村氏 それがNFCなのかどうかは情勢を見守らないとわかりませんが、スマートフォンも非接触ICを取り入れていかないと、リアル連携のサービスに進めません。この方向性は(世界のトレンドとしても)確かだと思います。スマートフォンも、リアルと結びついていかなければダメなのです。なぜなら、リアルと連携できることが、(PCインターネットに対する)モバイルインターネットの大きな可能性ですから。
-GoogleがAndroidでモバイルに進出してきたのも、彼らが「リアルとの連携」を重視してきたからです。そう考えると、非接触ICはGPSに並んで、リアル連携の重要な要素技術と言えます。
辻村氏 私はよく講演などで「鳥の眼、蟻の眼」という話をするのですが、Googleがこれまでやってきたのは“鳥の眼”の世界なんです。膨大な情報を俯瞰し、目的の情報を見つけるという意味で。一方の“蟻の目”は、ケータイの世界ですね。非常に低い位置にあるのですが、ミクロで(利用者にとって)重要な情報を提供するのです。
この“鳥の眼”と“蟻の目”はどちらが優れているというものではなく、今後は連携し、対になっていくものです。