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それでも出版社が「生き残る」としたら(COLUMN1)
 ついに噂のiPodの全貌が公開されて、ネットもマスコミも上を下への大騒ぎであります。ここに来て、すでに報道されているアマゾンのKindleをはじめ「電子出版」を普及させるための役者(インフラとデバイス)がいよいよ出揃った感があります。日本ではまだ普及以前の段階ですが、昨今の出版不況を脱出するための突破口は、もはや電子出版しかないというのは、衆目の一致するところではないでしょうか。
 さて、かねてから電子出版による「自主出版支援」に力を入れているアマゾンやアップル、ソニー(の米国法人)といった企業は、会社と出版契約を結んだ著者に対して、印税35%を支払うぞ、いやうちは50%支払う、それならうちは70%だ」という具合に、「印税率競争」をヒートアップさせて著者を引き込もうとしています。日本では印税率は通常8~10%なので、35%と聞いただけで耳がダンボ化する著者は多いでしょう。それが50%、70%ということになったら、「もう出版社は不要になった」と考える人が出たとしても不思議はないと思います。
 要するに、これまでは「紙の本」という物理的なパッケージとして著作を出版することしかできなかったので、著作の内容が完成したとしても、そこから製版→印刷→製本→取次→書店というプロセスを経なければ読者のもとへ届けることはできませんでした。特に重要なのが取次で、ここと取引することは素人にはとても敷居が高く、自分の本を書店に配本しようと思ったら、出版社が持つ書籍コードが必要でした。
 そうした出版プロセスの要に出版社(と社員編集者)が位置していたので、出版の窓口としてはどうしても必要な存在であったわけです(版元の編集者は、多くの場合は企画段階や執筆過程にもアドバイザーとして深く関与している。本によっては編集者が企画者そのものであって、執筆から完成まで編集者主導で制作される場合もある)。
 つまり「物理的な本」を作ろうとする限り、版元は必要でした。しかし電子出版になりますと、すべてがモニターに映る映像に過ぎませんので、物理的な実態がありません。すなわちネットに流して課金を回収するための窓口さえあれば、本の制作そのものは著者レベルでも十分可能なので、それなら出版社なんて不要だと考える人が出てきても不思議はないわけです。今流れている電子出版に関する記事の多くに、「もはや出版社は不要だ」という議論がくっついているのはそのためです。
 しかし、その場合「出版責任」は誰がとるのか、という問題が残ります。むろんそれは著者一人が背負えばよいと考える人もいるでしょうが、現実問題として、自分の書いた(描いた)ものに、本当の意味で最後まで責任を負える著者が、どれだけいるというのでしょうか。
「自分の発言や作品に責任を負う」ということは、生やさしいものではありません。ざっと考えても著作権問題や猥褻問題、名誉毀損、果ては「おまえの書いた●●という登場人物は俺だろう。おまえのパソコンで俺の脳波を毎日読み取って書いているんだろう」なんていう「電波」を受信する人の相手まで、場合によってはしなければならないということです。
 日本は言論の自由が憲法で保障されてはいますが、多くの場合それはタテマエに過ぎないことは、本を書いて出版したことのある人ならおわかりかと思います。たとえば普通に出版社が介在する本の場合、版元の編集者が、本の内容にうるさく口を出してきますが、これは、
(1) より売れる本にするため。
(2) 内容に出版社としての責任をとるため(そのことで出版責任を著者と分担する)。
という、主にふたつの理由で、そうしてくるわけです。特に重要なのが(2)でして、校正・校閲を含めた内容のクオリティ管理だけではなく、その内容に対するクレーム対応(著作権侵害、猥褻関係、名誉毀損その他)などのリスク管理も入ってきます。もちろん原理的には、著者がすべての責任を負う形で自由な内容の著作物を出版(公開)することは可能です。しかしその場合は「著者=編集者=出版社」ということになります。これの意味は、自分の著作を公開することによって生じるすべての責任(クレーム処理を含む)を負わなければならない、ということであります。
 アマゾンやアップルと著者がどのような出版契約を結ぶのか、まだ俺は具体的な契約書の内容を見ていないのでわからないんですが、アマゾンやアップルが、出版責任を著者と一緒に負うということは考えにくいです。もしそうする場合は、通常の版元と同様、内容に対する厳しいチェックが入ることは当然です。著者印税に35%から70%も支払うということは「当社では表現のリスク管理まではできませんから、何か問題が起きたら、当事者間で解決してね」ということではないかと思うのですが、実際のところどうなんでしょう。
 となると、出版物の内容からトラブルが発生した場合、普通に考えれば出版物のすべてにあらかじめ著者の連絡先表記を義務づけるか、またはクレーム元に連絡先を教えて「あとは当事者間で処理してくれ」と言ってくることになると思うのですが、どなたか詳しい方がいらっしゃいましたらご教授ください(英語が苦手なので、細かいニュアンスを読み取る自信がないのです)。
 つまり俺がいいたいことは、電子出版の時代になっても、出版責任の代行業としての出版社は生き残るのではないかということであります。
 日本で「自主出版」というと、コミケなど即売会向けのマンガ同人誌がまっさきに頭に浮かびますね。今回のキンドルやiPadの報道を見て「出版社死亡!」とはしゃいでいるのも、コミケの同人誌が念頭にあるんだと思います。実は俺も、出版社死亡?と頭の中で嬉しいような悲しいような複雑な思いが渦巻いたんですが、少し冷静になってから、上のようなことに思い立った次第です。
 実は、今回こういうエントリを書いたのは、友人のフリージャーナリストであるIさんとの会話がもとになっています。Iさんは昨年からキンドルやタブレットPCによる電子出版の時代が来ることを予見していて、たとえばキンドルの著者印税が35%だと発表されたときに、
「それでも自分は出版社と組みたい」
と言っていたわけです。なぜならIさんは在日朝鮮人問題や沖縄問題を取材している社会派のジャーナリストですので、取材の性質上裏社会の人間と接触することも多く、危険と常に隣り合わせだからです。
「俺の書いた記事で、人が死ぬかもしれない。反対に、こっちが殺される可能性だってある。出版社が防波堤になってくれなかったら、命がいくつあっても足りない」
というのが、Iさんが出版社と組みたい最大の理由です。つまり出版社には組織があり、法務部があって、フリーに危険な取材を任せるときは社としてのバックアップ体制をとりますからね。そういう体制がとれる出版社とでなくては、Iさんの仕事は成り立ちません。
そのためIさんは、キンドルで出版する場合も、著者(Iさん)が20%、出版社が15%の配分で出すことをいくつかの版元に打診しているそうです。つまり、出版社が窓口になって出版責任を分担するリスク代金が15%ということですね。(これ以外にも、取材や執筆のサポート料や、校閲料なども含んでいるらしい)。
 俺は、さんざんこのブログでも主張しているように、今ある出版界(紙出版)の枠組みは、遠からず崩壊すると思うんですよ。そして主流は電子出版に移行していくと思うんですが、その過程で、必ず「出版責任」を誰が担うのか、という問題が出てくると思うんですね。
 だから、俺が現時点で考えていることは、今ある出版社は一度解体して、編集者や営業マンがそれぞれ小さな「編集会社」や「営業会社」を作り、それぞれ看板を掲げて著者を顧客とした出版サポート業を営むという未来です。これまでは、出版社の編集者が著者に依頼して本を書いてもらっていましたが、
これからの出版は著者が編集者や営業マンを雇う時代になるかもしれない。
と俺は思うのです。クオリティの高い本を作って売ろうと思ったら、どうしても「本作りのプロ」の力は必要になるでしょうし、その中でも編集者は、弁護士や税理士のような役割になるかもしれません。いずれにせよ、版元や編集者抜きで出版するということは、弁護士抜きで裁判をしたり、税理士や会計士抜きで会社を経営するようなものだからです。
 これと同時に、これまで書いてきた出版責任を担うための出版社はおそらく残っていくのではないかと思います。



地上波テレビ局は3Dのトレンドにどう向き合うべきか(COLUMN2)
 今年の米家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)2010」は、3D(3次元)テレビが昨年以上に話題の中心だった。一般家庭向け製品の発売や3Dコンテンツの放送なども決まり、テレビの新たなトレンドとして消費者に印象付けるのに見事に成功した。しかし、テレビ局は、果たして3Dに本気で向き合う必要があるのか。
 今年のCESで見た各社の3Dテレビは、精度やリアリティーが昨年から一段と上がっていた。ハードウエアの進化だけでなく、実際に何を見るのかという課題に対して、ソニーは米ディスカバリーコミュニケーションズとカナダのIMAX、パナソニックは米ディレクTVとそれぞれ組んでコンテンツ分野まで含めた普及拡大策を示した。また、パナソニックは2眼式、すなわちレンズが2つあるフルHD(ハイビジョン)の3Dカメラも発表し、制作現場から家庭用ディスプレーまでの一貫した供給体制で3Dの本格展開を狙おうとしている。
■メガネをかけて見るのに向くコンテンツとは
 3Dテレビの映像は確かに臨場感溢れてすばらしかった。しかし、ほぼすべての3Dテレビは立体視を得るためにメガネをかけなければならない。偏光レンズだったりアクティブシャッター方式だったりタイプはいろいろだが、とにかくメガネが必要だ。普及段階に入れば、今のような無骨なメガネではなく、洗練されたデザインの製品や普段からメガネをかけている人向けのアダプターレンズなども登場するかもしれないが、それでも技術的にメガネなしで済ますわけにはいかない。
 ではメガネをかけてまで見る価値が3Dにあるのかと問われたら、私はちゅうちょなく、「ある」と答えるだろう。懸念される疲労感も慣れのせいもあるのか年々改善してきているし、多くの人が映画館などで3Dの良さを体験していることも普及には追い風だ。
 ただ、家庭で特別なメガネをかけるというのは、非日常である。襟を正すとまではいわないが、本気で画面と対峙することになる。映画やドラマ、ゲームといったコンテンツには合っているが、バラエティー番組やニュースを見たりするには明らかに向かないし必要がない。
 CESの会場で3Dテレビを見た際、個人的に関心があったのは、3Dコンテンツを裸眼で見るとどうなるかということだった。各社の製品を比べてもみたが、やはりどれも画像が二重になったりぼやけたりしてとても見られたものではない。ディスプレー側で3Dコンテンツを2Dで表示するような切り替え機能を搭載した製品は登場していないし、技術的に可能でもコストが見合わないのだろう。つまり2D、3Dはコンテンツごと、あるいはテレビ放送なら番組ごとに送り手側が選択せざるを得ないということである。
■テレビ局はあわてて3Dを追う必要なし
 テレビ局の姿勢を見ると、BS局やケーブルテレビ以外は積極的に3Dテレビを推進しているという印象があまりないが、それは当然だ。3Dテレビに関する筆者の見方は、ちょうど1年前の本コラム「夢の3Dテレビがテレビ局に突きつける悪夢のシナリオ」で指摘したときから基本的に変わっていないが、テレビ局、なかでも地上波テレビ局にとっては決して味方にならない。
 地上波テレビ局には3Dに向く番組がそもそも少ないし、コストをかけて3Dコンテンツを制作し、視聴率を無視して流すこともできない。3Dテレビが普及してもディスプレーは地上波テレビ番組以外の3Dコンテンツに徐々に浸食されていくだけだろう。
 冷静に考えれば、3Dテレビは、白黒、カラー、HDというディスプレーや放送の進化の延長線上にある。メーカーや業界にとっては、新たな市場開拓のネタという以上の話ではない。しかも3Dの次には、2K4Kという高解像度、さらなる大画面化が控えている。
 ディスプレーやコンテンツのもたらす少なからざる経済効果は当然否定すべきではないが、技術革新の加速は製品やサービス寿命をどんどん短命にしている。最終的には消費者が判断する問題であるが、テレビ局が必要以上に3Dのトレンドを追いかける理由はあまりないのではないか。
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Toyota must regain public trust
The foundations of the public's trust in Toyota Motor Corp., a firm that takes great pride in the quality and safety of its vehicles, are being shaken.
The automaker recently announced the recall of 2.3 million cars following reports of malfunctioning accelerator pedals involving eight models made and sold in North America, including the Camry and Corolla.
The production and sale of these eight models have been suspended for the time being. A total of 1.9 million Toyota cars will also be recalled in China and certain European countries.
It was separately discovered last summer that the accelerator pedals of some Toyota models made and sold in North America could potentially fail to return to their original position due to the pedal becoming jammed between indentations on the cars' floor mats. The total number of cars subject to recalls, including those covered in the latest announcement, will exceed 7 million--more than Toyota's annual sales last year.
Criticism and distrust of Toyota cars are increasing in the United States. The U.S. Congress is planning to pursue matters related to the recall, including having senior officials of the company come to hearings next month.
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Toyota must act quickly
Toyota needs to take urgent measures. The automaker must tackle consumers' distrust at the root by repairing all of the cars with malfunctioning gas pedals as the first step to regaining the confidence of the public.
A U.S. auto parts company is reported to have produced the accelerator pedals found to malfunction. Toyota owners have been warned that wear and condensation can affect a pivot point at the top of the accelerator pedal arm, which may prevent the pedal from returning to its original position.
Toyota has admitted that the malfunction is the result of a design flaw. The auto parts maker could be held responsible for that flaw, but Toyota needs to closely examine itself to find out if there are any weak points in its quality control system, that resulted in the design flaw being overlooked.
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Insufficient focus on safety
Malfunctioning pedals have been found in Toyota cars manufactured and sold in Europe and other parts of the world, as well, because Toyota plants in nations outside of the United States have purchased auto parts from the same company.
In principle, each factory should procure the parts needed to build its cars from local manufacturers. However, auto parts makers have recently been setting up factories in countries where automakers have started operations. As a result, it has become common to see factories of an automaker in many different countries using parts manufactured by the same company.
Auto parts are increasingly becoming standardized, with the same part used in many different models. Cost-cutting achieved by streamlining the auto parts supply chain and bulk purchasing of parts has exacerbated the problem.
It is inevitable that Toyota will be seen as having been too focused on quickly streamlining its operations and expanding its global reach to pay sufficient attention to safety, the most important point for any automaker to be watchful of.
This problem does not only affect Toyota. Similar problems may hit other automobile companies, including Japanese makers. Japanese automakers should keep in mind that quality and safety form the foundations of public trust in the Japanese way of manufacturing.
ドコモ、iPad用「SIMカード」販売へ
 NTTドコモが、米アップルの新型情報端末「iPad(アイパッド)」の日本での発売に合わせ、「SIMカード」単体での販売を検討していることが30日、明らかになった。
 今後、海外で一般的なように、通信会社と携帯端末を利用者が自由に選ぶことができるきっかけになる可能性もある。
 国内の大手通信会社がSIMカードを単体で販売するのは初めて。ドコモは、アイパッド利用者の通信需要の取り込みを狙う。
 アイパッドは、電子書籍やゲームなどのコンテンツ(情報内容)を無線LANや携帯電話の通信機能を使って入手する仕組みだ。携帯電話の通信機能を使う機種は「SIMフリー」の仕様で、SIMカードを別途購入する必要がある。ドコモは、この機種が発売される6月以降に合わせてSIMカードを販売する方向だ。
 アイパッド向けSIMカードは、携帯電話用の半分程度の大きさで、携帯電話との互換性はない。だが、米グーグルもSIMカードを利用者が自由に差し替えて通信会社を選択できる携帯電話「ネクサス・ワン」の国内販売を予定している。このためドコモは、携帯電話向けのSIMカードの販売も検討している。今後、外国製の人気端末が普及すれば、端末と通信会社を利用者が自由に選択できるSIMフリーが、日本でも進む可能性がある。
 国内の携帯電話機は、例えば、ドコモの携帯電話機間ではSIMカードの差し替えが可能。しかし、ソフトバンクの電話機とは差し替えて使うことができない。
 ◆SIMカード=携帯電話番号や契約内容を識別する情報が記録された小型ICカード。これを携帯電話に差し込むことで初めて通信可能になる。日本の携帯電話機には、他の通信会社のSIMカードを差しても通信できない「SIMロック」がかけられている。海外の携帯電話機は、こうした制限がないものが一般的だ。複数の通信会社のSIMカードに対応した電話機は「SIMフリー」端末と呼ばれる。



音楽産業の失敗に何も学ばなかった日本の出版業界(ニューズウィークCOLUMN)

 話題を呼んでいたアップルのタブレット端末iPadが27日、発表された。ほぼ予想どおりで、iPhoneを4倍に拡大したような感じだ。ソフトウェアもiPhone用アプリケーションがすべて動くので、日本でもソフトバンクが対応するだろう。問題は端末ではなく、iPadで読める本が日本にほとんどないことだ。
 アメリカの出版社は、アマゾンの電子端末「キンドル」による配信を積極的に進めており、昨年はAmazon.comでの電子書籍の販売部数が紙の書籍を上回った。iPadにもNYタイムズ、マグロウヒル、サイモン&シュースターなど大手の新聞・出版社がコンテンツを提供する予定だ。ところが日本では、キンドルも端末(英語版)は発売されたが、本は(一部のマンガを除いて)読めない。アマゾンは日本の出版社と交渉しているといわれるが、難航しているようだ。
 iPadについても同様の交渉が行なわれているが、いつ話がまとまるかわからないという。「日本でやろうとすると、取次(出版の卸売業者)を通して出版社のコンセンサスを得なければならない。しかし電子出版が普及すると取次は必要なくなるので、彼らがそういう話を進めるはずがない」と、ある関係者は嘆いていた。かといって出版社と個別に話を進めようとすると、取次から圧力がかかるという。
 日本の出版業界は委託販売という特殊なシステムになっているため、取次が流通を支配している。取次にさからって取り扱い部数が減らされると、中小出版社は苦境に陥るため、独自には動けないのだ。大手出版社は21社でアマゾンに対抗するグループを結成するが、彼らが配信システムをもっているわけではなく、既存の本との「共食い」を恐れて大胆な戦略は打ち出せない。このままでは、日米の情報格差は致命的に開いてしまう。
 インターネットは、既存のアナログ的ビジネスモデルを破壊する。音楽業界は「著作権」を盾にとってインターネットを拒否した結果、業界の外からやってきたアップルにネット配信のビジネスを奪われてしまった。アメリカの出版社はその教訓に学んで、電子出版をチャンスとして生かそうとしているが、日本の出版業界は音楽業界の失敗を繰り返そうとしているようだ。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶということわざがあるが、経験にも学ぶことのできない者を何と呼べばいいのだろうか。



上場企業10~12月期、経常益3期連続で拡大 日経集計
 企業業績の回復が一段と鮮明になってきた。日本経済新聞社の集計によると、上場企業の2009年10~12月期の経常利益(全産業ベース)は同7~9月期に比べ14%増と3四半期連続で拡大し、前年同期の2.2倍に達した。各国の景気刺激策などで息を吹き返した電機・自動車がけん引し、鉄鋼や化学など素材・部品にも増益業種のすそ野が広がっている。一方、建設・不動産など内需依存型の業種は不振が続き、業績の差が開いている。
 集計は29日までに決算発表した3月期決算企業438社(金融、新興3市場を除く)が対象。10年3月期通期の経常利益見通し額を合算すると全体の42%を占める。10~12月期に前年同期比で増益または黒字転換した企業は238社と7~9月期のほぼ2倍に増えた。



確定拠出年金、加入上限65歳に拡大へ
 政府は、企業年金の一種である企業型確定拠出年金について、加入資格の上限年齢を現行の60歳から65歳にまで引き上げることを決めた。
 加入者の老後の生活安定につなげるのが狙いで、資格年齢が上がれば拠出金の積立期間が延びて、将来受け取る年金額が増えることになる。政府は年齢制限引き上げのための確定拠出年金法改正案を通常国会に提出し、成立を目指す。
 定年延長や再雇用により、60歳以上の従業員を雇い続ける企業が増えている。企業に段階的に65歳までの雇用延長を義務づけた改正高年齢者雇用安定法が2006年度に施行されたためだ。ただ、現行では60歳を過ぎた従業員は企業年金から抜けなければならず、企業型確定拠出年金の上限年齢を65歳まで引き上げることが求められていた。



村田製作所、大容量コンデンサー参入 パソコン・家電向け開拓
 村田製作所は電気をためる電子部品、コンデンサーの大容量品に参入する。これまで小容量品を得意としていたため、コンデンサーの売上高に占める携帯電話向けの比率が4割と高かった。大容量品が使われるのはパソコンやデジタル家電などで、収益源を多様化する。2015年までに大容量品で200億円の売り上げを目指す。
 デジタルカメラのストロボなどに組み込む「電気二重層コンデンサー」を4月に発売する。容量は積層セラミックコンデンサーの数千倍。オーストラリアのベンチャー企業キャップ・エックスエックスと提携し、製品化した。



関電、愛知に風力発電所 新エネ導入、適地探し域外進出
 関西電力は電力供給域外の愛知県内に風力発電所を新設する。発電した電力は地元の中部電力に供給する見通し。電力会社は一定量の新エネルギー導入を義務付けられており、関電は域外でも発電に適した風が吹く場所を調査していた。風力発電所の建設では、東京電力が子会社を通じて全国展開中。限られた適地を巡り、競争が本格化しそうだ。
 関電は全額出資子会社の関電エネルギー開発(大阪市)を通じて風力発電所を開発・運営する。東京製鉄が昨年、愛知県田原市で稼働した工場敷地内の土地を借り受け、出力6000キロワットの発電所を建設する。発電した電力は全量を中部電力に売電する見込み。年間発電量は標準家庭4200軒の使用量にあたる1500万キロワット時程度。今春から建設を始め、2011年度後半に稼働させる予定。総工費は明らかにしていない。



中国「地域問題、協力に影響」 米、台湾へ武器売却
 【北京=佐藤賢、ワシントン=弟子丸幸子】米政府の台湾への武器売却計画は、中国が軍事交流の一時停止などを決定し、ネット規制や通商問題でぎくしゃくしていた米中関係の先行きに一段と不透明感を強めた。中国外務省は30日の談話で「重要な国際・地域問題での協力にも影響が避けられない」と指摘。米中政府はともに良好な関係の維持を基本方針にしているが、亀裂が深まれば国際情勢にも影を落としかねない。
 中国外務省が武器売却に「強烈な憤慨」を表明した談話を発表したのは30日午前3時(日本時間同4時)。事前通告があったとはいえ、未明に談話を出すのは異例だ。午後には国防省のほか全国人民代表大会(国会に相当)外事委員会や国務院台湾事務弁公室も非難談話を発表。複数の機関の相次ぐ反発からは、胡錦濤指導部が対米批判を明確にするよう指示を出した形跡がうかがえる。



日経社説 危機の突破力を試す海外企業決算(1/31)
 米国をはじめとする世界の主要企業が、2009年10~12月期の業績を改善させている。リーマン・ショックが本格的に響いた08年10~12月期から1年後の決算は、企業が危機を突破する力を試している。
 09年10~12月期の米実質国内総生産(GDP)速報値(季節調整済み)は、前期比年率5.7%の高い伸びを示した。しかし、10%の失業率を考えれば、個人消費を中心に、景気の持続的な回復は疑問だ。
 それだけに、大企業が回復の軌道を固め、投資と雇用を増やすことが、マクロの観点からも欠かせない。
 米トムソン・ロイターの先週末の集計では、米主要500社の10~12月期の最終損益は前年同期の3倍になった。公的支援を受けた金融を除いても15%増えた。なかでもIT(情報技術)企業の復調が目を引く。
 グーグル、アップル、マイクロソフトなどが、10~12月期に最高益を更新した。新たに投入した新製品やサービスが、好調な業績を支えている。マイクロソフトは、昨年10月に発売したパソコン用の新しい基本ソフトが、増収に寄与した。
 人員を抑え気味だったグーグルは、昨年12月末の従業員数を1万9835人と、3カ月前より170人増やした。こうした例が広がれば、企業が人員を減らし業績を立て直す「雇用なき回復」から、利益と採用を同時に増やす「雇用を伴う回復」へと、転じる可能性も浮上する。
 素材産業は、新興国への展開力で明暗が分かれた。主力工場をアジアに配備し、現地の家電大手とテレビ生産で連携した、ガラス大手コーニングは大幅増益だった。対照的に国内市場に依存する鉄鋼大手USスチールは、赤字を4四半期続けた。
 そのアジアでは、韓国のサムスン電子が好調を保った。10~12月期を含む09年の営業利益は、約11兆ウォン(8500億円)と、08年に比べ90%強増えた。ウォン安の追い風に加え、不況期に設備投資を増やす戦略が、景気回復に向かう局面で実を結んだといえるだろう。
 景気の回復が鈍い欧州は、企業が事業構造の転換を急ぐ。オランダのフィリップスは、競争の激しい液晶パネル事業から撤退する一方、健康機器事業を広げた。これが奏功し、10~12月期は売上高が1年前に比べ5%減ったが、最終黒字に転じた。
 業績の好転は、各国の景気刺激策に助けられた面も大きい。世界的に対策の効果が薄れるとされる今年は、危機を突破した後の企業の実力が問われよう。日本企業にも、当てはまることである。
ツイッターで「特ダネ」予告 朝日新聞が試す速報競争とニュースの価値(COLUMN1)
 『朝刊の1面トップは「日航、上場廃止へ」。他紙が書いていなければ「特ダネ」となります。』――。1月11日の午前1時31分、ミニブログ「Twitter(ツイッター)」上で朝日新聞東京編集局(@asahi_tokyo)はその日の朝刊1面を予告した。既存のマスメディアがツイッターの速報性を生かした試みとしてネット上の反応は好意的であったが、同時にネット時代における特ダネをどうとらえるかという難しさも浮かび上がってきた。
 朝日新聞はツイッターを積極的に活用している既存メディアの1つだ。
 30万を超えるフォロワーを抱えるメインアカウント(@asahi)、ウェブサイトのアサヒコム編集部(@asahicom)、書評や出版関係(@asahi_book)、イベント(@asahi_event)が「つぶやき」を配信している。特ダネを予告した東京編集局は昨年11月4日に開設、「ニュースがわからん!」のキャラクターである「コブク郎」が編集局の様子やおすすめ記事を紹介するという設定で、編集局長室のメンバーが交代でつぶやいているという。 朝刊の1面トップは「日航、上場廃止へ」。他紙が書いていなければ「特ダネ」となります。それではきょうはこのへんで、おやすみなさい!!!!!
 この予告をサンフランシスコの空港で知ったという田端信太郎氏(ライブドアのメディア事業部長)はブログで、速報性とニュースバリューの点でインパクトがあったと評価し、『初回は「どれどれホントかな?」と、売店に買いに行く人が増えて、明日の部数は増えるかもしれないが、だんだん、Twitterフォローしてれば、いいじゃん・・となるのかも』と記している。
 ツイッターを活用していち早く日航の上場廃止を伝えたことは、ネットユーザーから評価が高かったが、朝日新聞の購読者からの声は「朝刊がポストに届くのが楽しみ」「翌朝読めるはずの記事を先に出したら購読している意味がない」と賛否が入り混じった。気になったのは、田端氏のブログに別のブロガーが書き込んだ「いま図書館で朝日新聞を読んでいるのですが、インターネットで書かれていること以上のことはなにもかかれていません」というコメントだ。
 日本の新聞は宅配(定期購読)が多いが、都心部では出勤途中の駅などで時々購入しているビジネスパーソンもいる。予告ツイッターは、未読者へのプロモーションとして有効利用できそうだが、コメントのようにつぶやき以上の内容が紙面に書かれていない場合は逆効果になる。筆者もツイッターで、紙を購入した人はいるかと尋ねたが、反応はなかった。速報はマスメディアにとって重要な競争だが、ウェブは無料だ。いくら他社に比べていち早く速報して業界的には勝っても、商品を買ってもらえなければ意味がない。
■業界ルールでは「特ダネ」だが・・・
 特ダネの定義も考えていく必要がある。
 「他紙が書いていなければ特ダネ」というのは、従来の業界の考えでいうならその通りだ。そのため、記者やカメラマン、編集者といった組織的なリソースをつぎ込んでいる。数日、もしくは数時間、場合によっては数分、他社よりも早く書くために……。自社だけが報じていないことは「特落ち」と呼ばれて不名誉なことだとされている。東京編集局のつぶやきも他社が書くかどうかが指標となっているが、違和感がある。
 例えば、特ダネをメーカーに置き換えて考えると新製品になるだろう。他社にない製品を発売することで消費者に魅力をアピールできるが、売れなければ意味はない。評価するのは他社ではなく消費者のはずだ。消費者によって価値が見出されれば市場が拡大し、競合他社から商品が投入される。ニュースの場合は、消費者不在のまま競争が行われ、事件報道のように業界のルールだけで市場が拡大することがある。
 さらに、ネットの登場によって情報を伝えるメディアが多様化し、いち早く情報を知らせるといった種類の特ダネ競争が激しくなっている。民主党政権になり一部の省庁の記者会見が生中継されるようになった。マスメディアのみで競争していた速報市場に、フリーランスのライターやネットメディアも参入している。人々は既存のマスメディアだけから情報を得ているわけではない。
■悩みながら試行錯誤
 情報の賞味期限が短くなっているのも課題となる。月刊誌が書籍やフォトマガジン化し、週刊誌は月刊誌へ、新聞は週刊誌へというように、より時間軸が長いメディアを参考にする動きが起きている。朝日新聞東京編集局は下記のようにつぶやき、悩みながら試行錯誤していることを明かしている。日航の記事について③ ネットの登場で新聞も様々な対応を迫られています。他紙より少しでも早くという「時(とき)ダネ」競争より、新聞が書かなければ表に出ないことを書くことが重要だと考えています。そのための組織も作りました。取材のエネルギーをどう高め紙面化するか、真剣に考えています。
 しかしながら、リソースは有限で、いち早く知らせるという取材手法と深い分析記事はそう簡単に両立できるものではない。何より現場が疲弊してしまう。両立させるなら、せめて分野を限定する必要があるだろう。他社が書くようなものではなく、すぐには書けない賞味期限の長い情報を提供するには、横並びの考えから脱却する必要がある。さらに、ネットと紙では、記事が消費され終わるまでの時間もバリューも変わってくる。
 ツイッターやウェブサイトでの速報と紙面をどう使い分け、どこで商品を買ってもらうのかを考えておかなければ、情報をタダで流すだけで、ビジネス的にさらに苦しくなるという悪循環を招くことになる。その前にまず、特ダネの指標を他社から読者の価値に基づいたものに変えていくことが必要だろう。



米紙サイト有料化大コケ?日経「電子新聞」不安な門出(COLUMN2)
世界的に新聞社の業績が「右肩下がり」の状態が続く中、米国ではウェブサイトの有料化で収入源を得ようとする新聞社も現れた。ところが、各紙とも「連戦連敗」が確実な情勢だ。国内でも複数の新聞社が有料の「電子新聞」創刊を表明しているが、「購読料が割高だ」との声もあがっている。日米とも「厳しい船出」ということになりそうだ。
新聞業界での経営危機が日本より深刻だとされる米国では、落ち込みが続く販売・広告以外の収入源を求める取り組みでも、日本の一歩先を行っている。
サービスに加入したのは3か月でわずか35人
例えば、米ニューヨークを拠点にする日刊紙「ニュースデイ」は、2009年10月28日、ウェブサイトの有料化に踏み切った。紙媒体の購読者と傘下のケーブルテレビ加入者は引き続き読めるが、それ以外の読者は週に5ドル(450円)または年に260ドル(23400円)の購読料が必要だ。ところが、米ニューヨーク・オブザーバーが10年1月26日に報じたところによると、ここ3か月でサービスに加入したのは、わずか35人。ニュースデイでは
「(同紙の販売対象エリアである)ロングアイランド住民の75%は、(サイトに無料でアクセスする権利がある)紙媒体の購読者かケーブルテレビの加入者だ」
と、ウェブサイトの利用はあまり低下しないとの見方を示しているものの、ウェブサイトへのアクセスは激減。ニールセン・メディア・オンラインの調べによると、有料化直前の09年10月には220万あったアクセスが、有料化後の09年12月には、150万にまで減少。これとあわせて、広告も減少したという。
なお、有料化にあたって、ウェブサイトのリニューアルに400万ドル(3億6000万円)が投じられたという。有料化で購読者数がほとんど増えなかったことからすると、有料化は現段階では「大コケ」ということになりそうだ。
ニューヨーク・タイムズ紙も、07年に一度取りやめていた記事への課金を11年に再開する方針を明らかにしているが、こちらにも暗雲がたちこめている。ニールセン・オンラインの調べによると、09年12月の同紙ウェブサイトのユニークユーザー数は1484万9000人で、前年同期比で18.4%も落ち込みを見せている。同サイトは、一定のアクセス数を超えた利用者に対して課金されることになっており、具体的な料金はまだ発表されていないが、有料化が大幅に利用者を減らし、当て込んでいた課金収入も少なくなるリスクをはらんでいることは間違いない。
「デイリースポーツ」電子版2月1日に創刊
そんな中、国内でも、続々と「有料電子新聞」の創刊が計画されている。スポーツ紙「デイリースポーツ」(神戸市)は、紙媒体の内容をそのままPC上で読める「デイリー電子版」を2月1日に創刊。全国のタイガースファン向けに訴求したい考えで、月額1980円だ。
一方、日経新聞は「電子版(Web刊)」を10年春に創刊する。PCとケータイの両方からアクセスでき、「My日経」と呼ばれるカスタマイズ機能も備えた。購読料はまた発表されていないが、電子版だけを契約すると月額4000円で、月額4300円の紙媒体とあわせて契約した場合、「紙媒体プラス1000円」で電子版も読めるになるものとみられている。
日経新聞は09年決算(単体ベース)では売上高が前年比9.6%減の約1790億円で、約60億円の営業赤字を計上してもおり、「後に引けない状況」。だが、前出の米媒体よりも価格設定に割高感があるのは否めず、経営面で成功するのは至難の業と予測されている。



日経社説 トヨタは信頼回復できるか(1/30)
 世界の自動車販売にやや明るい兆しが出てきた中で、最大手のトヨタ自動車が最も得意とするはずの品質・安全問題で揺れている。
 米国で販売したクルマに、アクセルペダルの不具合が見つかり、約230万台の大型リコール(回収・無償修理)に踏み切った。
 当該の8車種には「カムリ」や「カローラ」といった代表的なクルマが含まれ、改良の準備が整うまで8車種の生産・販売を米市場で一時的に停止することも発表した。
 欧州や中国など米国外でも最大200万台規模のリコールが必要になる可能性もある。
 さらに、これとは別に、昨年の夏以来、米国で問題となっているフロアマット関連でも改修措置の対象車を広げると発表し、対象車は530万台まで拡大した。
 アクセルペダルとフロアマットの対象車は一部重複しているが、世界全体で600万台を超えるクルマが改修対象となる見通しだ。
 問題が拡大した一つの背景は、近年進んだ部品の共通化だ。車種が違っても共通部品の比率を増やせば、コスト低減につながるが、一方で部品に欠陥があれば、改修対象のクルマの台数は膨れあがる。
 現地生産や現地調達の拡大も事業のグローバル化を進めるうえで不可欠のテーマだが、従来つきあいのなかった部品会社との取引が増えれば、品質管理の難しさも増す。
 部品共通化や現地化は世界的な流れであるだけに、他の自動車会社にとっても十分な注意が必要だ。
 トヨタをはじめとする日本車が世界で躍進した背景には、品質への信頼が大きかった。だが、近年は米国車や韓国車なども品質向上が進み、優位性が縮小しているのが実態だ。
 品質・安全問題がいたずらに長期化すれば、それだけブランドイメージも損なわれる。
 市民の安全を守るために、欠陥ゼロのクルマを目指すのは当然だが、仮に欠陥車を出してしまった場合は、徹底した対策をとって不安を一日も早く解消することが大切だ。
 メーカーにとって基本中の基本である安全・品質問題で信頼を取り戻すことが、トヨタ復活への欠かせない第一歩である。
グーグルがアンドロイド携帯をゲーム開発者に無料配布 GDCを読む(2)(COLUMN)
 3月9~13日に米サンフランシスコで開催される「ゲーム開発者会議(GDC)2010」。今年の目玉の1つになりそうなのが、グーグルの大胆なプロモーション戦略だ。GDCの参加者に、「Android(アンドロイド)」携帯を無料で配布するという。1月に発売されたばかりの「Nexus One」か、米モトローラ製「Droid」のどちらかが手に入ることになる。
 今年のGDCでは、恒例となっている家庭用ゲーム機メーカー3社(任天堂、ソニー・コンピュータエンタテインメント、マイクロソフト)の基調講演が行われるかどうかまだ発表されていない。どうやらGDCで大きな発表はせず、6月のゲーム展示会「E3」にぶつけようとしているようだ。
■大盤振る舞いの狙いとは
 新型ハードの話が出てこないと、開発者カンファレンスも盛り上がりに欠けざるを得ない。その物足りなさをアンドロイド携帯のプロモーションが埋め合わせることになりそうだ。この無料配布のアナウンスがあるまで、GDCにおけるアンドロイド携帯への注目度は高くなかったが、にわかに存在感を増したかたちだ。
 携帯を無料で手に入れるには、アンドロイド関連の講演に出席することが条件になっている。面白いのは、アンドロイドだけでなくアップルの「iPhone」関連の講演に参加してもらえる点だ。人数はおそらく数千人に上るだろう。Nexus OneのSIMロックフリー版は529ドル(約4万8000円)だから、仮に3000台を用意するとしても約1億5000万円規模のキャンペーンということになる。
 もちろん、グーグルには狙いがある。関係者によると、グーグルはアンドロイド携帯を普及させるキラーアプリケーションとしてゲームへの関心を強めているようだ。iPhoneの人気を牽引しているのもゲームであり、ゲーム開発者をアンドロイド携帯により多く取り込もうと考えている。
 一方、ゲーム開発者もiPhone向けゲームの販売価格が約2ドルと低いことにうんざりしており、より高い収益が見込める移植先のプラットフォームを探している。アンドロイド携帯とiPhoneはともにスマートフォンでハード性能が近く、マルチプラットフォーム化すれば開発効率を上げられる。グーグルとしては、ゲーム開発者をアンドロイド携帯に引き付ける手っ取り早い手段として、端末の大盤振る舞いを考えたようだ。
■ゲーム開発者の評価
 ただ、現状ではゲーム開発者のアンドロイド携帯に対する評価はそれほど高いものではない。昨年のGDCでも現地で取材した限りでは、アンドロイドに期待する声はないに等しかった。
 それは、そもそも販売台数がまだiPhoneほど多くないうえ、アップルのアプリ販売システム「App Store」にあたるグーグル「アンドロイド・マーケット」のビジネススキームが十分に確立されていないという弱点を抱えているためだ。
 アンドロイド・マーケットでは、ゲームの購入後24時間以内であれば返品できるといった課金システムの問題点が指摘されてきたが、現在に至るまでまったく解消されていない。そのせいもあり、アンドロイド向けのゲームアプリ販売で成功したという事例はあまり聞こえてこない。
 例えば、米ゲーム大手のエレクトロニック・アーツは、08年のアンドロイド・マーケット開設と同時に3タイトルを投入したが、その後は1タイトルしか追加していない。一方、iPhone向けのゲームは40タイトルに及んでおり、力の入れ加減の差がはっきりわかる。
■アップルの問題も浮き彫りに
 ただ、ここにきてアンドロイド携帯と対比されるかたちで、アップルの姿勢やiPhone、App Storeが抱える問題も浮き彫りになってきた。開発者の不満や批判の的になっているポイントは2つある。
(1)iPhoneではアプリを開発しやすいアドビシステムズの「Flash」が動作しない
(2)iPhoneのアプリ内課金(In-App Purchase)のポリシーが不明瞭で利用しにくい
 アップルがiPhone上でFlashを動作させたくない理由は明白だ。今、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の「Facebook」や「mixi」などで人気を集めるソーシャルゲームの大半は、Flashの技術を採用している。Flashは端末にゲーム用アプリを入れる必要がなく、ブラウザーでゲームのデータを読み込むことができる。つまり、iPhoneをFlashに対応させると、開発者にApp Storeを経由せずにゲームを提供する道を開くことになるのだ。
 しかもFlashは課金システムを乗せることも可能で、有料の勝手サイトをつくることもできる。アップルの強みは、App Storeですべてのアプリの流通チャネルを握り、30%の手数料を確実に稼げる点にある。これはビジネスモデルの根幹であり、簡単には手放せない部分だろう。
 一方、アンドロイド携帯は最新機種であればFlashに完全対応している。SNSで人気のある数々のソーシャルゲームの移植も容易で、潜在的な可能性は大きい。実のところ、iPhoneでFlashが利用できるようになるときは、そう遠くないとは見られている。それでも、アップルが何らかの制限はかけてくると考えるのが自然だ。
■アプリ内課金に慎重なスタンス
 2つめのアプリ内課金のポリシー問題とは、次のようなものだ。
 多くの企業は今、ネット経由で提供するゲームの課金方法として、「アイテム課金」や「ポイント方式」といったモデルに注目している。ゲーム自体は無料にしてユーザー数を最大化し、継続的にプレーするユーザーへのアイテム販売や付加サービスで収益を上げる方法だ。
 日本でもっともiPhone向けゲームに積極的なハドソンは、1月に無料の麻雀ゲーム「ネットジャン狂」の提供開始を用意している。コンピューターを相手にする一人用の麻雀として完成度が高く、無料で遊べる。しかし、ネット上で他のプレーヤーと遊ぶには有料のポイントをチャージして、1プレイごとに使うシステムになっている。
 ハドソンは当初、昨年12月中の開始を目指していたが、アップルの審査に時間がかかっているようだ。公式サイトでは1月スタートとなっているが、配信はまだ始まっていない。
 アップルは、審査で何をチェックしているのかをゲーム会社に対して詳しく説明しないことが多い。審査終了までの期間もあまり公開されていない。現時点では、アプリ内課金に対して、アップルが極めて慎重な立場をとっていると想像する以外にない。
■GDCが試金石に
 これに対して、グーグル携帯は、アンドロイド・マーケットと競合するようなアプリ配信システムや課金方法を各企業が勝手に展開することができる。
 ポイントを購入してプレーするゲームは、パソコン用のオンラインゲームでは珍しくない。例えば、日本でもっとも成功している麻雀ゲームの1つといわれるシグナルトークの「Maru-Jan」は、1ゲーム80円程度に設定している。米国で人気のあるソーシャルゲームでもポイント方式は一般的だ。
 アプリの販売だけで収益を出すのは現状では難しいが、ポイント方式やアイテム課金と組み合わせれば可能性はある。この点では、アップルよりグーグルの方に分があるといえるだろう。
 端末配布のプロモーション効果があるとはいえ、GDCでのアンドロイド関連の講演は全体で1つしかなく、まだまだ心許ない印象はぬぐえない。講演者は、グーグル日本法人のクリス・プルーエット氏で、様々な家庭用ゲーム機向けゲーム開発でキャリアを積んだ後に、グーグルに転職した。スマートフォン向けの関連講演のほとんどがiPhoneというなかで、アンドロイド携帯がどこまで話題を集めるかは、ゲーム産業における将来性を占う意味でも注目されそうだ。
 なお、グーグルのプロモーションの詳細は「GDC 2010」(英文サイト)内に掲載されている(http://www.gdconf.com/news/gdc/gdc_2010_google_reveal_android_1.html)。



高速無料化、地方に限定 1600キロ、6月めど実施
 国土交通省は29日、高速道路の無料化について、2010年度は山陰道(島根県)など全国約35区間、1600~1700キロを対象とする方針を固めた。昨年末の10年度予算編成で予算が大幅に削減されたため、東名高速など大都市圏を通る交通量の多い区間は対象から外れた。対象外の区間には車種ごとに上限を設ける新料金体系を導入する。国交省は6月をめどに実施する方針だ。
 前原誠司国交相が2月2日に詳しい内容を発表する。無料化の対象区間は▽北海道横断道▽日本海沿岸東北道(秋田県、山形県)▽山陰道(島根県)▽南九州西回り道(熊本県)▽沖縄道など。



トヨタ、欧州は最大180万台リコール 不具合、世界で700万台超に
 【パリ=古谷茂久】トヨタ自動車は29日、欧州で販売した「ヤリス(日本名ヴィッツ)」「オーリス」「アベンシス」など8車種、最大180万台を対象にリコール(回収・無償修理)を実施すると発表した。原因は米国での大量リコールと同じアクセルペダルの不具合としている。トヨタは米国のほか中国でもリコールの実施を決めている。米国での自主改修分を含め、昨年秋以降に明らかになった不具合の対象台数は世界で700万台を超えるのは確実だ。
 米国でのリコールの台数は約230万台。アクセルペダルがフロアマットに引っかかる恐れがある問題でも約535万台の自主改修に乗り出している。リコールと自主改修の対象車種には重複があるが、中国と欧州の分を加えると700万台超と、トヨタ単体の昨年の世界販売台数(698万台)を上回る規模になる。



自動車生産、国内は33年ぶり800万台割れ 09年、中国下回る
 日本自動車工業会が29日発表した2009年の国内自動車生産は、前年比31.5%減の793万4516台となった。日本は中国を下回り4年ぶりに自動車生産で世界2位に後退した。日本は06年に米国を上回って以来、生産世界一が続いていた。国内市場は今後も大きな成長は見込めず、自動車大手各社は中国など新興国に販売の重点を移している。国内を輸出基地とする生産体制の見直しが一段と進みそうだ。
 09年は中国が前年比48.3%増の約1379万台と大きく伸ばし世界最大の自動車生産国に成長。米国は約570万台となり、3位だった。



<ドラゴンクエスト6>100万本出荷 15年ぶりリメークのDS版
 スクウェア・エニックスは29日、人気RPGをリメークした「ドラゴンクエスト6 幻の大地」(DS、28日発売)が100万本を出荷したことを明らかにした。
 「ドラゴンクエスト」は、ゲームクリエーターの堀井雄二さんのシナリオ、マンガ家の鳥山明さんのキャラクターデザインで、86年の第1作からシリーズ累計5300万本以上を出荷している。 
 「6」は95年にスーパーファミコンで発売されたゲームで、今回が初のリメーク。4作目「導かれし者たち」、5作目「天空の花嫁」に続く「天空シリーズ3部作」の最後を飾る作品で、主人公が二つの大地が存在するという不思議な世界を行き来し、旅の途中で出会う個性的な仲間たちと力を合わせて、大魔王に立ち向かうという物語。



中国の人民元建てA株市場、時価総額で東証上回る 09年末
 【重慶=戸田敬久】中国民間シンクタンク、中国上場企業時価総額管理研究センターによると、2009年末の上海・深セン証券取引所に上場する人民元建てA株の時価総額は24.3兆元(約318兆円)と東京証券取引所(308兆円)を上回ったことが分かった。中国市場では非上場の国有企業などの新規株式公開(IPO)計画が目白押しで、東証との格差がさらに開く可能性がある。
 08年1月に上海と深セン証取の上場企業の時価総額合計が一時、東証を上回った。その後は中国株バブルの崩壊で東証が逆転したが、相場回復や新規大型銘柄の上場などで09年に上海・深センが再度逆転した。同センターはリポートで「中国A株市場は米国に次ぐ世界2位の市場に成長した」と強調した。ただ東証では政府保有株など市場に流通しない株式は算出から除外している。
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