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「フリー」に挑む日経電子版の勇気ある社会実験(COLUMN1)
日本経済新聞社が3月23日に有料のニュースサイト「日本経済新聞 電子版」を始める。マスメディアが無料モデル(広告モデル)のネット事業でなかなか収益を上げられないなか、最適なビジネスモデルを探求しようとする重要な実験的取り組みだが、実現には試行錯誤と長い道のりが必要となるだろう。
■広告モデルの限界
私は、これまで無料で提供していたウェブサイトを有料の電子版に変えるという日経の決断を高く評価している。それは第一に、マスメディアがネット上で広告モデルを続けていても、絶対に儲からないことが明らかだからである。
ネット広告は大きく分けて、検索連動広告、ディスプレー広告(バナー、動画など)、その他(携帯広告など)の3種類に分かれる。その中で、圧倒的に収益性が高いのは検索連動広告である。広告スペースを供給する企業の数は限定されているし、アクセス数も圧倒的に多いからである。
これに対し、マスメディアのサイトはディスプレー広告が中心となるが、これでは大した収益を上げられない。日々凄まじい量の新たなウェブサイトが開設され、その分だけディスプレー広告のスペースも増えているからである。
実際、ディスプレー広告の単価は世界中で下がり続けているし、例えばネット先進国の米国では、今後5年は下がり続けるだろうと予測されている。これでは、マスメディアがネット上で無料モデルから十分な収益を上げることなど不可能である。
第二に、「ウェブ2.0」ブーム以来、ネット上では無料モデルが定着し、今や多くのユーザーにとってコンテンツは無料か低価格が当たり前となってしまった。違法コピー・違法ダウンロードの氾濫もあって、ネット上はリアルの世界顔負けのデフレ状態である。
しかし、コンテンツやニュースの制作には当然ながらコストがかかる。せっかく苦労して作っても、リアルの世界で売り上げが激減し、ネット上でも違法にコピーされて収益を得られないなら、誰もそんな割の悪い仕事をやらなくなるであろう。
その行く末は、文化とジャーナリズムという社会を支えるインフラの衰退であり、もうそれは現実のものとなりつつある。スペインの音楽産業を例に取れば、昨年のCD売り上げ上位50位までにスペインのアーティストが1人も入っていなかった。スペインの音楽文化の崩壊である。
だからこそ、ネット上をリアルの世界と同様のまともな“市場”としなければならないのであり、価値あるコンテンツの有料化はその第一歩である。
これら2つの点から、日経の電子版は米ニューズ・コーポレーションの米国などでの取り組みと同様に、非常に重要な社会実験と位置づけられるのである。
■お金を払うユーザーとは
ただ、この実験を成功させるのは容易ではない。無料に慣れ、デフレ下で生き抜く術を身に付けたユーザーは本当にシビアだからだ。「NHKオンデマンド」の失敗からも明らかなように、他の方法で無料で見られるものにお金を払う人は少ない。既存の課金制サイトでも、1カ月だけ入会してコンテンツを漁り、終わったらすぐ退会するというユーザーが多いのである。
今や、対価に見合った内容か利便性を提供できない限り、ユーザーが納得して料金を払い続けることはあり得ない。特にニュースは大変である。他のマスメディアが提供するコンテンツとの差別化が困難だからである。自社の紙の新聞と差別化し、かつ他メディアとも十分に違いのあるコンテンツを提供しなければ、ユーザーは納得しないだろう。
いろいろなコンテンツの世界に接していてつくづく感じるのだが、どんなコンテンツでもユーザーは1対9に分かれる。前者はヘビーユーザーで、そのコンテンツが大好きあるいは不可欠だからいくらでもお金を払う。後者はライトユーザーで、そのコンテンツは好きだがお金を払う気はなく、無料で楽しめればそれでオーケーという層である。
日経にとって、購読料金を払う10%はどういう層になるか。経済情報にもっとも強いメディアなので、ビジネスユーザーなのだろう。しかし、価格設定が高すぎれば、その層は5%とか3%に減るかもしれない。当然マーケティングは行なっているのであろうが、その結果どういう収支を想定しているのかは興味深いところである。
昨年9月以降、日経が民主党と鳩山政権に頻繁に贈っている言葉がある。政策転換を求めて、「君子豹変を恐れてはいけない」と言っているが、今回の電子版に関してこの言葉を忘れないでほしい。日経の取り組みは、ネットをまともなメディアとするための勇気ある重要な試みであるが、世界中の誰もまだ正解が分からない世界への突撃である。もし思った通りにユーザー数や収益などが推移しない場合は、価格やコンテンツ、機能などをどんどん変更して、最適なビジネスモデルを見つけるまで頑張り続けてほしいと、心底願っている。
日本のためにならない「FREE」礼賛論を疑え!(COLUMN2)
「週刊ダイヤモンド」3月13日号は、ベストセラー『FREE』を特集していました。しかし、私は『FREE』で述べられている考えが大嫌いです。そこで、『FREE』の何が問題かを説明したいと思います。
フリーランチはない
最初に、この本が説明しているフリーモデルの4分類というのは、別に取り立てて新しいものでも何でもありません。いわば、ビジネスの工夫、ビジネスモデルの組み方の問題であり、当たり前のことをさも斬新であるかのように説明しているだけです。
その意味では、“クラウド・コンピューティング”が、データセンターなどの既存のものを組み合わせただけで何も新しい技術要素はないのに、ネーミングだけで新しいソリューションであるかのように見せているのと同じです。ネーミングの勝利と言え、そうしたマーケティング戦略は評価せざるを得ません。
それにしても、殊更“タダ”を強調し、それがビジネスになるような錯覚を世に与えるのはいかがなものでしょうか。経済学を少しでも勉強したことがある人なら、「フリーランチはない」と聞いたことがあるはずです。そうした当たり前の原則がデジタルやネットの力で変わることなど、あり得ないのです。
まあその点はしょうがないにしても、この本には特に許容できない点が二つあります。
現実を覆い隠した広告ビジネス賛辞
第一は、4分類の一つにネット上での広告モデルを入れていることです。そのモデルは、ウェブ2.0時代に喧伝された「無料でコンテンツを提供し、たくさんの人を集めて広告収入を得る」という無料モデルと同じです。
しかし、米国では、ウェブ2.0のブームに乗せられて多くのメディア/コンテンツ企業がそのモデルを展開し、そのほぼすべてがまともな収益を得ることはできませんでした。無料モデルでまともな収益を得ることができたのは、たくさんのアクセスを集めて情報流通の独占を獲得できた一部のネット企業だけだったのです。
それはネット広告の特性からも明らかです。ネット上の広告は大別して、検索連動広告、ディスプレイ広告(バナー広告、動画広告など)、その他(クラシファイドなど)の3種類に分かれます。この中で、ディスプレイ広告の平均単価は継続的に下落しています。個人がブログを開設してもそこには広告スペースができる、つまりネット上でディスプレイ広告のスペースは無限に供給されるので、需要と供給の関係を考えれば当然のことです。
しかし、ネット上で無料モデルを展開しようと思ったら、検索サイト以外は基本的にこのディスプレイ広告に広告収入を依存せざるを得ません。それではまともな収益を得られるはずがないのです。
つまり、ネット上での広告モデルは、ネット上の情報流通で市場シェアを獲得したごく一部の企業のためのものなのです。そうしたネット上の広告ビジネスの現実をちゃんと説明せず、ウェブ2.0の夢よ再びといった煽り方をするというのは、いかがなものでしょうか。
デジタルはコンテンツをタダにしていない
もう一つ、それ以上に許容し難いことを『FREE』は改めて言っています。“デジタル化されたコンテンツは無料になる”(”content wants to be free”)という考えです。この認識は根本的に間違っており、こうした認識が前提にある限り、そこから派生するあらゆる考察は間違いであると言わざるを得ません。
デジタルやネットが普及したことで、情報/コンテンツの伝送や貯蔵のコストは確かにかなり低下しました。しかし、当たり前のことですが、情報/コンテンツの制作には依然としてかなりのコストがかかります。価値ある情報/コンテンツほど、ネット上でも無料になることなどあり得ないのです。
それでも、今はネット上には無料の情報/コンテンツがあふれています。しかし、デジタルやネットといった技術がそれらをタダにしたのではありません。違法コピー/ダウンロードや無料モデルといった、デジタルやネットを使う人の行為がタダにしているに過ぎないのです。
そうした現実を無視して、デジタルやネットが魔法のように多くのものをタダにしたかのような誤解を世間に与えるのは、ネット上で情報/コンテンツの流通しかやらず、かつそれで自分だけが儲かればいいと思っているシリコンバレーのネット企業関係者の勘違いか意図的な主張としか思えません。
情報/コンテンツのビジネスには“制作”と“伝達”という段階があり、ネットやネット企業が関わっているのは主に後者の“伝達”だけなのですが、『FREE』の論考もそこばかりに集中しているのです。一方で、これまでその両方の側面に関わってきたメディアやコンテンツ企業は“旧勢力”扱いされていますが、制作の部分は今でもそれらの企業が担っているのです。それなのに、“伝達”の部分が変わったから“制作”を担う者すべてが旧勢力というレッテル貼りを行なうのも、ひどい議論と思います。
米国での『FREE』評価
それでも、ウェブ2.0時代に多くのメディアやコンテンツ企業が無料モデルを採用した結果、今やユーザはネット上のコンテンツはタダで当たり前と思うようになりました。
『FREE』の主張はそうした風潮には合っています。
しかし、そうした“タダ”が蔓延した負の影響として、世界中で文化とジャーナリズムという社会のインフラが衰退しつつあることにも留意していただきたいと思います。フリーランチは存在せず、文化とジャーナリズムの衰退というタダの対価が明確になりつつあるのです。
米国の多くのメディアが、そして日本でも日本経済新聞社がネット上でのコンテンツの有料化(課金制度の導入)を始めようとしていますが、そうした動きは、“旧勢力”が生き延びようとしているだけはなく、文化とジャーナリズムを守ろうという社会的な使命感の反映でもあるのです。
私は、先週ニューヨークで開催された“メディア・サミット”というコンファランスに出席していました。米国のメディアやネット関係の経営者や著名人が集まってメディアの将来を議論する場なのですが、そこのパネル・ディスカッションに参加したメディア関係者は、『FREE』の主張などまったく相手にしていませんでした。
また、そこに参加していたある著名なネット/メディア評論家は、プライベートな会話の中で“『FREE』の主張はウェブ2.0の発想の単なる焼き直し、またネット・バブルを煽りたいだけだろう”とこき下ろしてました。
私もそうした認識は正しいと思います。『FREE』に乗せられてフリーランチの対価を払う側にならないよう、注意すべきではないでしょうか。ウェブ2.0のブームに乗せられたマスメディアやコンテンツ企業の轍を踏んではいけないのです。
日本経済新聞社が3月23日に有料のニュースサイト「日本経済新聞 電子版」を始める。マスメディアが無料モデル(広告モデル)のネット事業でなかなか収益を上げられないなか、最適なビジネスモデルを探求しようとする重要な実験的取り組みだが、実現には試行錯誤と長い道のりが必要となるだろう。
■広告モデルの限界
私は、これまで無料で提供していたウェブサイトを有料の電子版に変えるという日経の決断を高く評価している。それは第一に、マスメディアがネット上で広告モデルを続けていても、絶対に儲からないことが明らかだからである。
ネット広告は大きく分けて、検索連動広告、ディスプレー広告(バナー、動画など)、その他(携帯広告など)の3種類に分かれる。その中で、圧倒的に収益性が高いのは検索連動広告である。広告スペースを供給する企業の数は限定されているし、アクセス数も圧倒的に多いからである。
これに対し、マスメディアのサイトはディスプレー広告が中心となるが、これでは大した収益を上げられない。日々凄まじい量の新たなウェブサイトが開設され、その分だけディスプレー広告のスペースも増えているからである。
実際、ディスプレー広告の単価は世界中で下がり続けているし、例えばネット先進国の米国では、今後5年は下がり続けるだろうと予測されている。これでは、マスメディアがネット上で無料モデルから十分な収益を上げることなど不可能である。
第二に、「ウェブ2.0」ブーム以来、ネット上では無料モデルが定着し、今や多くのユーザーにとってコンテンツは無料か低価格が当たり前となってしまった。違法コピー・違法ダウンロードの氾濫もあって、ネット上はリアルの世界顔負けのデフレ状態である。
しかし、コンテンツやニュースの制作には当然ながらコストがかかる。せっかく苦労して作っても、リアルの世界で売り上げが激減し、ネット上でも違法にコピーされて収益を得られないなら、誰もそんな割の悪い仕事をやらなくなるであろう。
その行く末は、文化とジャーナリズムという社会を支えるインフラの衰退であり、もうそれは現実のものとなりつつある。スペインの音楽産業を例に取れば、昨年のCD売り上げ上位50位までにスペインのアーティストが1人も入っていなかった。スペインの音楽文化の崩壊である。
だからこそ、ネット上をリアルの世界と同様のまともな“市場”としなければならないのであり、価値あるコンテンツの有料化はその第一歩である。
これら2つの点から、日経の電子版は米ニューズ・コーポレーションの米国などでの取り組みと同様に、非常に重要な社会実験と位置づけられるのである。
■お金を払うユーザーとは
ただ、この実験を成功させるのは容易ではない。無料に慣れ、デフレ下で生き抜く術を身に付けたユーザーは本当にシビアだからだ。「NHKオンデマンド」の失敗からも明らかなように、他の方法で無料で見られるものにお金を払う人は少ない。既存の課金制サイトでも、1カ月だけ入会してコンテンツを漁り、終わったらすぐ退会するというユーザーが多いのである。
今や、対価に見合った内容か利便性を提供できない限り、ユーザーが納得して料金を払い続けることはあり得ない。特にニュースは大変である。他のマスメディアが提供するコンテンツとの差別化が困難だからである。自社の紙の新聞と差別化し、かつ他メディアとも十分に違いのあるコンテンツを提供しなければ、ユーザーは納得しないだろう。
いろいろなコンテンツの世界に接していてつくづく感じるのだが、どんなコンテンツでもユーザーは1対9に分かれる。前者はヘビーユーザーで、そのコンテンツが大好きあるいは不可欠だからいくらでもお金を払う。後者はライトユーザーで、そのコンテンツは好きだがお金を払う気はなく、無料で楽しめればそれでオーケーという層である。
日経にとって、購読料金を払う10%はどういう層になるか。経済情報にもっとも強いメディアなので、ビジネスユーザーなのだろう。しかし、価格設定が高すぎれば、その層は5%とか3%に減るかもしれない。当然マーケティングは行なっているのであろうが、その結果どういう収支を想定しているのかは興味深いところである。
昨年9月以降、日経が民主党と鳩山政権に頻繁に贈っている言葉がある。政策転換を求めて、「君子豹変を恐れてはいけない」と言っているが、今回の電子版に関してこの言葉を忘れないでほしい。日経の取り組みは、ネットをまともなメディアとするための勇気ある重要な試みであるが、世界中の誰もまだ正解が分からない世界への突撃である。もし思った通りにユーザー数や収益などが推移しない場合は、価格やコンテンツ、機能などをどんどん変更して、最適なビジネスモデルを見つけるまで頑張り続けてほしいと、心底願っている。
日本のためにならない「FREE」礼賛論を疑え!(COLUMN2)
「週刊ダイヤモンド」3月13日号は、ベストセラー『FREE』を特集していました。しかし、私は『FREE』で述べられている考えが大嫌いです。そこで、『FREE』の何が問題かを説明したいと思います。
フリーランチはない
最初に、この本が説明しているフリーモデルの4分類というのは、別に取り立てて新しいものでも何でもありません。いわば、ビジネスの工夫、ビジネスモデルの組み方の問題であり、当たり前のことをさも斬新であるかのように説明しているだけです。
その意味では、“クラウド・コンピューティング”が、データセンターなどの既存のものを組み合わせただけで何も新しい技術要素はないのに、ネーミングだけで新しいソリューションであるかのように見せているのと同じです。ネーミングの勝利と言え、そうしたマーケティング戦略は評価せざるを得ません。
それにしても、殊更“タダ”を強調し、それがビジネスになるような錯覚を世に与えるのはいかがなものでしょうか。経済学を少しでも勉強したことがある人なら、「フリーランチはない」と聞いたことがあるはずです。そうした当たり前の原則がデジタルやネットの力で変わることなど、あり得ないのです。
まあその点はしょうがないにしても、この本には特に許容できない点が二つあります。
現実を覆い隠した広告ビジネス賛辞
第一は、4分類の一つにネット上での広告モデルを入れていることです。そのモデルは、ウェブ2.0時代に喧伝された「無料でコンテンツを提供し、たくさんの人を集めて広告収入を得る」という無料モデルと同じです。
しかし、米国では、ウェブ2.0のブームに乗せられて多くのメディア/コンテンツ企業がそのモデルを展開し、そのほぼすべてがまともな収益を得ることはできませんでした。無料モデルでまともな収益を得ることができたのは、たくさんのアクセスを集めて情報流通の独占を獲得できた一部のネット企業だけだったのです。
それはネット広告の特性からも明らかです。ネット上の広告は大別して、検索連動広告、ディスプレイ広告(バナー広告、動画広告など)、その他(クラシファイドなど)の3種類に分かれます。この中で、ディスプレイ広告の平均単価は継続的に下落しています。個人がブログを開設してもそこには広告スペースができる、つまりネット上でディスプレイ広告のスペースは無限に供給されるので、需要と供給の関係を考えれば当然のことです。
しかし、ネット上で無料モデルを展開しようと思ったら、検索サイト以外は基本的にこのディスプレイ広告に広告収入を依存せざるを得ません。それではまともな収益を得られるはずがないのです。
つまり、ネット上での広告モデルは、ネット上の情報流通で市場シェアを獲得したごく一部の企業のためのものなのです。そうしたネット上の広告ビジネスの現実をちゃんと説明せず、ウェブ2.0の夢よ再びといった煽り方をするというのは、いかがなものでしょうか。
デジタルはコンテンツをタダにしていない
もう一つ、それ以上に許容し難いことを『FREE』は改めて言っています。“デジタル化されたコンテンツは無料になる”(”content wants to be free”)という考えです。この認識は根本的に間違っており、こうした認識が前提にある限り、そこから派生するあらゆる考察は間違いであると言わざるを得ません。
デジタルやネットが普及したことで、情報/コンテンツの伝送や貯蔵のコストは確かにかなり低下しました。しかし、当たり前のことですが、情報/コンテンツの制作には依然としてかなりのコストがかかります。価値ある情報/コンテンツほど、ネット上でも無料になることなどあり得ないのです。
それでも、今はネット上には無料の情報/コンテンツがあふれています。しかし、デジタルやネットといった技術がそれらをタダにしたのではありません。違法コピー/ダウンロードや無料モデルといった、デジタルやネットを使う人の行為がタダにしているに過ぎないのです。
そうした現実を無視して、デジタルやネットが魔法のように多くのものをタダにしたかのような誤解を世間に与えるのは、ネット上で情報/コンテンツの流通しかやらず、かつそれで自分だけが儲かればいいと思っているシリコンバレーのネット企業関係者の勘違いか意図的な主張としか思えません。
情報/コンテンツのビジネスには“制作”と“伝達”という段階があり、ネットやネット企業が関わっているのは主に後者の“伝達”だけなのですが、『FREE』の論考もそこばかりに集中しているのです。一方で、これまでその両方の側面に関わってきたメディアやコンテンツ企業は“旧勢力”扱いされていますが、制作の部分は今でもそれらの企業が担っているのです。それなのに、“伝達”の部分が変わったから“制作”を担う者すべてが旧勢力というレッテル貼りを行なうのも、ひどい議論と思います。
米国での『FREE』評価
それでも、ウェブ2.0時代に多くのメディアやコンテンツ企業が無料モデルを採用した結果、今やユーザはネット上のコンテンツはタダで当たり前と思うようになりました。
『FREE』の主張はそうした風潮には合っています。
しかし、そうした“タダ”が蔓延した負の影響として、世界中で文化とジャーナリズムという社会のインフラが衰退しつつあることにも留意していただきたいと思います。フリーランチは存在せず、文化とジャーナリズムの衰退というタダの対価が明確になりつつあるのです。
米国の多くのメディアが、そして日本でも日本経済新聞社がネット上でのコンテンツの有料化(課金制度の導入)を始めようとしていますが、そうした動きは、“旧勢力”が生き延びようとしているだけはなく、文化とジャーナリズムを守ろうという社会的な使命感の反映でもあるのです。
私は、先週ニューヨークで開催された“メディア・サミット”というコンファランスに出席していました。米国のメディアやネット関係の経営者や著名人が集まってメディアの将来を議論する場なのですが、そこのパネル・ディスカッションに参加したメディア関係者は、『FREE』の主張などまったく相手にしていませんでした。
また、そこに参加していたある著名なネット/メディア評論家は、プライベートな会話の中で“『FREE』の主張はウェブ2.0の発想の単なる焼き直し、またネット・バブルを煽りたいだけだろう”とこき下ろしてました。
私もそうした認識は正しいと思います。『FREE』に乗せられてフリーランチの対価を払う側にならないよう、注意すべきではないでしょうか。ウェブ2.0のブームに乗せられたマスメディアやコンテンツ企業の轍を踏んではいけないのです。
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Real estate deflation must be stopped
The overall Japanese economy is seeing a faint glimmer of light at the end of the tunnel, but the nation's real estate market appears mired in continuing darkness.
Announced Thursday by the Land, Infrastructure, Transport and Tourism Ministry, land prices as of Jan. 1 fell an average of 6.1 percent from a year earlier at commercial locations and an average of 4.2 percent at residential locations.
Not only did these figures represent the second consecutive annual decline, they were larger than the drops recorded a year earlier, showing that the deflation of land prices is accelerating.
Land prices fell for 15 consecutive years beginning in 1992, when the collapse of the bubble economy began to make itself felt. They rose in 2007 and 2008, but celebration within the real estate industry that it finally had emerged from its long nightmare proved to be premature.
Dealt a crippling blow by the global financial crisis that began in autumn 2008, land prices started dropping once again and there has been no sign of an upturn since.
===
Domino effect of deflation
Falling land prices reduce the value of assets, thereby having a negative effect on individual consumption and other economic indexes. The government must start propping up the real estate market to bolster the economy.
Just how serious the most recent declines are is illustrated by the fact that out of more than 27,000 locations surveyed around the country, land prices increased from a year earlier at only seven--six residential locations and one commercial.
Land prices for both commercial and residential locations dropped in all the prefectures, but the rates of decline in the urban regions of Tokyo, Osaka and Nagoya were larger than those in rural areas.
This seems to be fallout from the bursting of a small bubble economy caused by the sharp increase of land prices at some locations in these urban regions in 2007 and 2008, when land prices rose overall.
The 10 largest drops at commercial locations as of Jan. 1 were all in business districts in Tokyo and Osaka, including Shimbashi in Tokyo's Minato Ward, where the price of land dropped 26.9 percent.
The ministry said in its analysis of the figures that the latest declines were due simply to low demand.
===
Govt must support industry
The ongoing financial crisis has made banks very particular about extending new loans, thereby halting the flow of funds necessary for real estate investment. In addition, the number of tenants is decreasing even for buildings in busy commercial areas, as evidenced by the closure of famous department stores due to a downturn in consumption.
What measures would be effective in this situation?
The government launched an eco point system for housing March 8, through which people who build houses or purchase condominiums that are energy-efficient receive eco points based on the purchase prices. The system appears to be having some success in heating up the ice-cold environment for housing investment.
Land price declines also mean lower costs for the condominium industry. We hope the industry will utilize this advantage and do its best to provide housing units at economical prices.
It is also essential for the government to implement measures to support the industry side, such as reducing taxes on real estate.
The overall Japanese economy is seeing a faint glimmer of light at the end of the tunnel, but the nation's real estate market appears mired in continuing darkness.
Announced Thursday by the Land, Infrastructure, Transport and Tourism Ministry, land prices as of Jan. 1 fell an average of 6.1 percent from a year earlier at commercial locations and an average of 4.2 percent at residential locations.
Not only did these figures represent the second consecutive annual decline, they were larger than the drops recorded a year earlier, showing that the deflation of land prices is accelerating.
Land prices fell for 15 consecutive years beginning in 1992, when the collapse of the bubble economy began to make itself felt. They rose in 2007 and 2008, but celebration within the real estate industry that it finally had emerged from its long nightmare proved to be premature.
Dealt a crippling blow by the global financial crisis that began in autumn 2008, land prices started dropping once again and there has been no sign of an upturn since.
===
Domino effect of deflation
Falling land prices reduce the value of assets, thereby having a negative effect on individual consumption and other economic indexes. The government must start propping up the real estate market to bolster the economy.
Just how serious the most recent declines are is illustrated by the fact that out of more than 27,000 locations surveyed around the country, land prices increased from a year earlier at only seven--six residential locations and one commercial.
Land prices for both commercial and residential locations dropped in all the prefectures, but the rates of decline in the urban regions of Tokyo, Osaka and Nagoya were larger than those in rural areas.
This seems to be fallout from the bursting of a small bubble economy caused by the sharp increase of land prices at some locations in these urban regions in 2007 and 2008, when land prices rose overall.
The 10 largest drops at commercial locations as of Jan. 1 were all in business districts in Tokyo and Osaka, including Shimbashi in Tokyo's Minato Ward, where the price of land dropped 26.9 percent.
The ministry said in its analysis of the figures that the latest declines were due simply to low demand.
===
Govt must support industry
The ongoing financial crisis has made banks very particular about extending new loans, thereby halting the flow of funds necessary for real estate investment. In addition, the number of tenants is decreasing even for buildings in busy commercial areas, as evidenced by the closure of famous department stores due to a downturn in consumption.
What measures would be effective in this situation?
The government launched an eco point system for housing March 8, through which people who build houses or purchase condominiums that are energy-efficient receive eco points based on the purchase prices. The system appears to be having some success in heating up the ice-cold environment for housing investment.
Land price declines also mean lower costs for the condominium industry. We hope the industry will utilize this advantage and do its best to provide housing units at economical prices.
It is also essential for the government to implement measures to support the industry side, such as reducing taxes on real estate.
ゲーム開発者の平均年収、既婚率は 初の実態調査(COLUMN)
財団法人デジタルコンテンツ協会が、「デジタルコンテンツ制作の先端技術応用に関する調査研究委員会報告書」の平成21年度版を3月中に発表する。今回の報告書には、日本のゲーム開発者の就労実態を初めて本格的に調査した「ゲーム開発者の就労意識とキャリア形成の課題」という研究が盛り込まれた。藤原正仁氏(東京大学大学院情報学環研究員)がまとめたデータから見えてくる日本のゲーム開発者の実像とは。
■平均年収は518万4995円
調査によると、日本のゲーム開発者の平均像は、年齢33.79歳、年収518万4995円、勤続年数6.59年。給与の中央値は「400万円以上500万円未満」で、年齢構成は30歳代が52.8%を占めている。いずれも現場の開発者の実感にほぼ近い数字といえるのではないか。
これを国税庁の「平成20年分民間給与実態統計調査」と比較すると、ゲーム業界の年収は平均(約429万円)より約89万円高く、年齢も約11歳若い。一方で、平均勤続年数は約5年短くなっている。
職種別の年収では、プロデューサーが最も高く692万5000円。ディレクターが563万6279円、サウンドが559万625円、ネットワークエンジニアが522万5000円、プログラマーが464万1390円、グラフィッカーが423万8588円、プランナーが409万6340円、デバッカーが258万3333円という順になっている。
■日本ではプロデューサー、米国ではプログラマーが高い
今回の調査が興味深いのは、米United Business Mediaが、毎年行っている米国の給与調査と比較しやすい点だ。最新の「2009 Fall」によると、米国の平均年収はプログラマーが6万4500ドルと最も高く、サウンドが5万3269ドル、グラフィッカーが4万7692ドル、ゲームデザイナー(日本ではプランナーと呼ばれることが多い)が4万5896ドル、プロデューサーが4万5279ドル、品質管理(デバッカーなどを含む)が2万7894ドルという順になっている。米国は日本と違い、プログラマーの給与水準が一番高い。
これについて藤原氏は、米国では職務の専門性が高いほど給与水準が高くなる傾向がある一方、「日本のプロデューサーは平均勤続年数が高いことが影響している」と分析している。なお、米国の給与水準は総じて日本より高いが、社会保険制度が大きく違うため単純比較は難しいことに留意する必要がある。
転職経験は、「ある」という人が59.1%を占め、転職が日常茶飯事であることを裏付けている。企業規模別でみると、大企業では転職経験者が34.4%であるのに対して、中小企業では65.6%と跳ね上がっている。
転職経験者のうち前職がゲーム産業だった人は66%と多く、ゲーム産業内で開発者がぐるぐると動いていることがわかる。藤原氏は、「(結果的に)人材育成が行われていることが示唆される」としている。
■繁忙期が慢性化している日本
日本のゲーム産業の特徴としてしばしば語られてきたのが労働時間の長さだ。今回の調査でそれを初めて定量的に比較できるようになった。
国際ゲーム開発者協会(IGDA)は04年に、米国の開発者の労働・生活を中心に「生活の質白書(Quality of Life White Paper)」をまとめている。両者を比較すると、週の労働時間が55時間以上と応えた人の比率は日本が米国より7.6ポイント%高くなっている。
日米の差が特に顕著なのは、「繁忙期」と呼ばれる追い込みの期間だ。日本では、繁忙期の長さが「2ヶ月以上」と答えた人が43.6%に達しているのに対して、米国は「1~2週間未満」という回答が29.1%と最も多い。米国では短期間に集中した労働を要求される傾向がある一方、日本は繁忙期が慢性化していることが見てとれる。
■既婚者は30代で47%、40代で67%
調査でもう一つ目を引いたのが、既婚率の低さだ。既婚者は全体の40.7%で、年齢別に既婚率を見ると20代が9%、30代が47.8%、40代が67.9%、50代が62.5%となっている。05年の国勢調査の結果と比べると、各年代とも大幅に低い。子供があると答えた人も20.3%(男性21.6%、女性11.5%)と低く、藤原氏は「とりわけ女性が子供を育てながら働くことが困難な状況が示唆される」と指摘している。
現場を実際に見ても、ゲーム開発者はなかなか結婚できないという印象がある。繁忙期が常態化して長時間労働が続き、生活時間も一般企業とはズレがある。男性の比率が87.2%という調査結果からもわかるとおり男性中心の産業であり、開発の現場はチーム以外のスタッフと出会う機会もそれほど多くない。それが結果的に結婚を難しくしているのだろうと推測される。
■満足度は高いが、「生活の質」向上が課題
では、ゲーム開発者はこのような労働実態をどう受け止めているのだろうか。調査では、今の仕事に「満足」という人が46.8%と多く、「生涯、ゲーム産業で働く」と答えた人が59.7%に達している。労働実態はともあれ、クリエイティブな産業として開発者の満足度は高いことがうかがえる。
一方で、いくつかの課題も浮かび上がった。1つは、キャリア形成の方法が見えにくい点だ。藤原氏は、「転職者が多いという事実から、多くのゲーム開発者は、発言オプションを選択せずに、組織を離脱してしまっているのではなかろうか」「多くの開発者が仕事に満足を感じているが、勤続年数の短さや平均年齢の若さをみると、将来的なキャリアを描けないのが実情であろう」としている。
また、藤原氏は「長期労働時間が今後、労務問題として浮かび上がってくる」と予測している。これらは、開発者の主力が40歳代に入り始める今後に、より切実な課題になってくるとみられ、ゲーム産業全体で開発者の「生活の質」を高める必要に迫られている。
サムスン、さらに「奥地」へ 駐在員を公募、アフリカなど若手登用
韓国のサムスン電子はグアテマラやアンゴラ、スーダンなど、エレクトロニクス市場としては未開拓の地域に赴任する社員を社内公募により選出し始めた。従来は上司と本人が相談して決めていたが、意欲の高い人材に自ら手を挙げてもらうことで将来の成長市場の開拓を目指す。
公募の対象はアフリカのほか中東、中南米、旧ソ連地域の23カ国。ナイジェリアなど既に一定の購買が見込める国も入っているが、大半は極めて市場規模が小さく、1人で駐在する国もある。モザンビークとキューバ、シリアなどには今回初めて駐在員を置く。今週末に公募を締め切り、7月以降に派遣。30歳代前半の若手を中心に抜てきする。
北朝鮮、経済混乱の収拾見えず 4月9日に最高人民会議
【ソウル=山口真典】北朝鮮は20日、国会に相当する立法機関である最高人民会議の第12期第2回会議を4月9日に平壌で招集すると発表した。最高人民会議の開催は昨年4月以来1年ぶりで、同11月末にデノミ(通貨呼称単位の変更)を実施して以来初めて。生活必需品の価格が高騰し餓死者の急増も伝えられるなか、経済関連の法律や人事を討議し内部引き締めを図ると予想される。だが、効果的な経済再建策を示せる可能性は低く、混乱収拾策は見えない。
朝鮮中央放送の報道をラヂオプレスが伝えた。通常、春の最高人民会議は新年度予算の決定や首相の政府活動報告、財政相の財政報告が主要議題となる。前回は金正日総書記を国防委員長に再任し、側近を重用する国防委員会人事を実施した。
政府はデノミに続いて、外貨使用の禁止や総合市場(ヤミ市場)の取引規制などの経済改革を相次ぎ実施した。国営商店を通じた物資流通や価格統制の強化を狙ったものだったが、消費財不足や物価高騰の深刻化を招いた。
コメ、高級米ほど下落 コシヒカリ、1年で1割安
コメの価格が下落している。高級銘柄ほど値下がりが目立ち、新潟産コシヒカリの特売価格は去年の同じ時期より1割前後安い。コメ離れが続いているうえ景気低迷で外食需要などが振るわず全体の需給が緩和した。家計にとっては恩恵となるが、政府が新年度から始める農家への戸別所得補償制度の財政負担が膨らむ懸念もある。
最高級銘柄の新潟魚沼産コシヒカリの量販店価格は、5キロ2980~3880円程度。売れ筋の価格帯が前年同時期より400~500円程度(1割強)下がった。人気銘柄の新潟産コシヒカリ(一般品)も特売で5キロ1700円台と去年のセール時より200円(1割)安い。
志願者数、明大が初の首位 11年連続の早稲田抜く 入試改革が奏功
今年度の大学一般入試の志願者数で、明治大が前年度より9464人増の11万5700人となり、初めて首位になったことが20日、教育情報会社「大学通信」の調査で分かった。11年連続トップだった早稲田大は5651人減の11万5515人で、わずか185人の差だった。
明大は平成19年度から1度の受験で複数学部に同時出願が可能な「全学部統一入試」を導入。札幌や福岡など地方でも受験できるようにしたほか、今年度は科目数を減らした大学入試センター試験利用を一部で始めるなど積極的な入試改革に取り組んできた。
明大広報課は「入試の機会を広げてきたことなどが評価された」と胸を張り、大学通信は「明治の改革に加え、不況で難関の早稲田を避けたり、記念受験をやめたりした受験生が多かったことも原因」とみている。
新日石・新日鉱、設備削減2年前倒し 石油需要減見込む
新日本石油と新日鉱ホールディングスが4月1日に経営統合して誕生する「JXホールディングス」は、国内の石油精製設備の削減を大幅に加速する。2015年3月までに精製能力を約3割減らす従来計画を2年程度前倒しする。ガソリン需要などの低迷で国内の精製設備は約2割が余剰。国内精製能力の37%を握るJXが能力削減を急ぐことで、余剰設備の解消の動きが他社にも広がりそうだ。
統合会社の会長に就く西尾進路・新日石社長と、社長となる高萩光紀・新日鉱HD社長が能力削減を前倒しする方針を明らかにした。国内石油事業の収益を安定させる一方で、海外で新エネルギーや資源開発などに重点投資する。一連の施策は近く策定するJXとしての中期経営計画(10~12年度)に盛り込む。
上場企業の配当底入れ 下期総額5%増、増・復配の社数1.5倍
上場企業の配当が増加に転じる。2010年3月期の下期の配当総額は前年同期比5%増になる見通し。半期ベースの配当が増加するのは09年3月期の上期以来、3半期ぶり。増配もしくは復配する企業数も5割増となる。企業業績の回復に加え、金融不安が後退し手元資金の確保を優先していた企業が株主配分に力点を置くようになった。来期にかけても増加が続けば、株価や個人消費の押し上げ効果もありそうだ。
3月期決算の上場企業で、03年度の下期から配当を比較できる2311社を対象に集計した。下期の配当総額は前年同期比5%増の2兆7917億円になりそうだ。対象企業のうち、17%にあたる397社が下期に増配もしくは復配を予定。増・復配企業数は前年同期比で5割増となった。一方、減配する企業は403社と半減する。
今度はサメ・サンゴ、国際取引制限案の討議へ
【ドーハ=是枝智、実森出】絶滅の恐れがある野生動物の国際取引を規制するワシントン条約の締約国会議は21日、フカヒレなどの原料となるサメ類(アカシュモクザメと類似種の計5種)や高知県の特産品である宝石サンゴの商取引を制限するかどうか討議に入る。同日中に採決する見通しだ。
いずれも米国や欧州連合(EU)が「厳重に規制しなければ絶滅の恐れがある」と主張。取引の全面禁止を提案したクロマグロとは異なり、輸出許可制の対象となる取引制限を求めている。
日本は「科学的根拠が乏しい」と反対しており、フカヒレ消費国の中国や漁業国のアラブ諸国も取引制限案の否決を目指す見通しだ。
漁業国の関係者は、サメ類の多くがマグロなどに交じって捕獲されるため、サメ類が制限されれば本来のマグロなどの漁獲にも影響が出ると懸念している。
宝石サンゴは浅海にあるサンゴ礁とは違い、深海に生息し、地中海などで多く採れる。日本では高知県や沖縄県などの特産品だ。
高金利通貨へ個人再び投資 豪ドルや南ア・ランド、上昇基調
外国為替市場で個人が高金利通貨への投資姿勢を強めている。金融危機後の世界経済の回復を見込み、オーストラリアドルや南アフリカランドなどの資源国通貨を買う動きが目立つ。ギリシャの財政不安の沈静化を背景に、いったん為替リスクを避けて円に戻した資金を再び外貨に振り向け始めた形だ。株価回復も高金利通貨投資の支援材料になっている。
19日時点の豪ドルの対円相場は1豪ドル=83円前後。市場関係者の間でギリシャなど南欧諸国の財政不安が強まった年明け以降、円を買い戻す動きが強まったが、ギリシャが自主的な財政再建に動き出したことで、最近は再び豪ドルが上昇基調を強めている。南アランドやニュージーランドドルも同じような値動きになっており、低金利通貨のドルやユーロとの二極化が鮮明だ。
財団法人デジタルコンテンツ協会が、「デジタルコンテンツ制作の先端技術応用に関する調査研究委員会報告書」の平成21年度版を3月中に発表する。今回の報告書には、日本のゲーム開発者の就労実態を初めて本格的に調査した「ゲーム開発者の就労意識とキャリア形成の課題」という研究が盛り込まれた。藤原正仁氏(東京大学大学院情報学環研究員)がまとめたデータから見えてくる日本のゲーム開発者の実像とは。
■平均年収は518万4995円
調査によると、日本のゲーム開発者の平均像は、年齢33.79歳、年収518万4995円、勤続年数6.59年。給与の中央値は「400万円以上500万円未満」で、年齢構成は30歳代が52.8%を占めている。いずれも現場の開発者の実感にほぼ近い数字といえるのではないか。
これを国税庁の「平成20年分民間給与実態統計調査」と比較すると、ゲーム業界の年収は平均(約429万円)より約89万円高く、年齢も約11歳若い。一方で、平均勤続年数は約5年短くなっている。
職種別の年収では、プロデューサーが最も高く692万5000円。ディレクターが563万6279円、サウンドが559万625円、ネットワークエンジニアが522万5000円、プログラマーが464万1390円、グラフィッカーが423万8588円、プランナーが409万6340円、デバッカーが258万3333円という順になっている。
■日本ではプロデューサー、米国ではプログラマーが高い
今回の調査が興味深いのは、米United Business Mediaが、毎年行っている米国の給与調査と比較しやすい点だ。最新の「2009 Fall」によると、米国の平均年収はプログラマーが6万4500ドルと最も高く、サウンドが5万3269ドル、グラフィッカーが4万7692ドル、ゲームデザイナー(日本ではプランナーと呼ばれることが多い)が4万5896ドル、プロデューサーが4万5279ドル、品質管理(デバッカーなどを含む)が2万7894ドルという順になっている。米国は日本と違い、プログラマーの給与水準が一番高い。
これについて藤原氏は、米国では職務の専門性が高いほど給与水準が高くなる傾向がある一方、「日本のプロデューサーは平均勤続年数が高いことが影響している」と分析している。なお、米国の給与水準は総じて日本より高いが、社会保険制度が大きく違うため単純比較は難しいことに留意する必要がある。
転職経験は、「ある」という人が59.1%を占め、転職が日常茶飯事であることを裏付けている。企業規模別でみると、大企業では転職経験者が34.4%であるのに対して、中小企業では65.6%と跳ね上がっている。
転職経験者のうち前職がゲーム産業だった人は66%と多く、ゲーム産業内で開発者がぐるぐると動いていることがわかる。藤原氏は、「(結果的に)人材育成が行われていることが示唆される」としている。
■繁忙期が慢性化している日本
日本のゲーム産業の特徴としてしばしば語られてきたのが労働時間の長さだ。今回の調査でそれを初めて定量的に比較できるようになった。
国際ゲーム開発者協会(IGDA)は04年に、米国の開発者の労働・生活を中心に「生活の質白書(Quality of Life White Paper)」をまとめている。両者を比較すると、週の労働時間が55時間以上と応えた人の比率は日本が米国より7.6ポイント%高くなっている。
日米の差が特に顕著なのは、「繁忙期」と呼ばれる追い込みの期間だ。日本では、繁忙期の長さが「2ヶ月以上」と答えた人が43.6%に達しているのに対して、米国は「1~2週間未満」という回答が29.1%と最も多い。米国では短期間に集中した労働を要求される傾向がある一方、日本は繁忙期が慢性化していることが見てとれる。
■既婚者は30代で47%、40代で67%
調査でもう一つ目を引いたのが、既婚率の低さだ。既婚者は全体の40.7%で、年齢別に既婚率を見ると20代が9%、30代が47.8%、40代が67.9%、50代が62.5%となっている。05年の国勢調査の結果と比べると、各年代とも大幅に低い。子供があると答えた人も20.3%(男性21.6%、女性11.5%)と低く、藤原氏は「とりわけ女性が子供を育てながら働くことが困難な状況が示唆される」と指摘している。
現場を実際に見ても、ゲーム開発者はなかなか結婚できないという印象がある。繁忙期が常態化して長時間労働が続き、生活時間も一般企業とはズレがある。男性の比率が87.2%という調査結果からもわかるとおり男性中心の産業であり、開発の現場はチーム以外のスタッフと出会う機会もそれほど多くない。それが結果的に結婚を難しくしているのだろうと推測される。
■満足度は高いが、「生活の質」向上が課題
では、ゲーム開発者はこのような労働実態をどう受け止めているのだろうか。調査では、今の仕事に「満足」という人が46.8%と多く、「生涯、ゲーム産業で働く」と答えた人が59.7%に達している。労働実態はともあれ、クリエイティブな産業として開発者の満足度は高いことがうかがえる。
一方で、いくつかの課題も浮かび上がった。1つは、キャリア形成の方法が見えにくい点だ。藤原氏は、「転職者が多いという事実から、多くのゲーム開発者は、発言オプションを選択せずに、組織を離脱してしまっているのではなかろうか」「多くの開発者が仕事に満足を感じているが、勤続年数の短さや平均年齢の若さをみると、将来的なキャリアを描けないのが実情であろう」としている。
また、藤原氏は「長期労働時間が今後、労務問題として浮かび上がってくる」と予測している。これらは、開発者の主力が40歳代に入り始める今後に、より切実な課題になってくるとみられ、ゲーム産業全体で開発者の「生活の質」を高める必要に迫られている。
サムスン、さらに「奥地」へ 駐在員を公募、アフリカなど若手登用
韓国のサムスン電子はグアテマラやアンゴラ、スーダンなど、エレクトロニクス市場としては未開拓の地域に赴任する社員を社内公募により選出し始めた。従来は上司と本人が相談して決めていたが、意欲の高い人材に自ら手を挙げてもらうことで将来の成長市場の開拓を目指す。
公募の対象はアフリカのほか中東、中南米、旧ソ連地域の23カ国。ナイジェリアなど既に一定の購買が見込める国も入っているが、大半は極めて市場規模が小さく、1人で駐在する国もある。モザンビークとキューバ、シリアなどには今回初めて駐在員を置く。今週末に公募を締め切り、7月以降に派遣。30歳代前半の若手を中心に抜てきする。
北朝鮮、経済混乱の収拾見えず 4月9日に最高人民会議
【ソウル=山口真典】北朝鮮は20日、国会に相当する立法機関である最高人民会議の第12期第2回会議を4月9日に平壌で招集すると発表した。最高人民会議の開催は昨年4月以来1年ぶりで、同11月末にデノミ(通貨呼称単位の変更)を実施して以来初めて。生活必需品の価格が高騰し餓死者の急増も伝えられるなか、経済関連の法律や人事を討議し内部引き締めを図ると予想される。だが、効果的な経済再建策を示せる可能性は低く、混乱収拾策は見えない。
朝鮮中央放送の報道をラヂオプレスが伝えた。通常、春の最高人民会議は新年度予算の決定や首相の政府活動報告、財政相の財政報告が主要議題となる。前回は金正日総書記を国防委員長に再任し、側近を重用する国防委員会人事を実施した。
政府はデノミに続いて、外貨使用の禁止や総合市場(ヤミ市場)の取引規制などの経済改革を相次ぎ実施した。国営商店を通じた物資流通や価格統制の強化を狙ったものだったが、消費財不足や物価高騰の深刻化を招いた。
コメ、高級米ほど下落 コシヒカリ、1年で1割安
コメの価格が下落している。高級銘柄ほど値下がりが目立ち、新潟産コシヒカリの特売価格は去年の同じ時期より1割前後安い。コメ離れが続いているうえ景気低迷で外食需要などが振るわず全体の需給が緩和した。家計にとっては恩恵となるが、政府が新年度から始める農家への戸別所得補償制度の財政負担が膨らむ懸念もある。
最高級銘柄の新潟魚沼産コシヒカリの量販店価格は、5キロ2980~3880円程度。売れ筋の価格帯が前年同時期より400~500円程度(1割強)下がった。人気銘柄の新潟産コシヒカリ(一般品)も特売で5キロ1700円台と去年のセール時より200円(1割)安い。
志願者数、明大が初の首位 11年連続の早稲田抜く 入試改革が奏功
今年度の大学一般入試の志願者数で、明治大が前年度より9464人増の11万5700人となり、初めて首位になったことが20日、教育情報会社「大学通信」の調査で分かった。11年連続トップだった早稲田大は5651人減の11万5515人で、わずか185人の差だった。
明大は平成19年度から1度の受験で複数学部に同時出願が可能な「全学部統一入試」を導入。札幌や福岡など地方でも受験できるようにしたほか、今年度は科目数を減らした大学入試センター試験利用を一部で始めるなど積極的な入試改革に取り組んできた。
明大広報課は「入試の機会を広げてきたことなどが評価された」と胸を張り、大学通信は「明治の改革に加え、不況で難関の早稲田を避けたり、記念受験をやめたりした受験生が多かったことも原因」とみている。
新日石・新日鉱、設備削減2年前倒し 石油需要減見込む
新日本石油と新日鉱ホールディングスが4月1日に経営統合して誕生する「JXホールディングス」は、国内の石油精製設備の削減を大幅に加速する。2015年3月までに精製能力を約3割減らす従来計画を2年程度前倒しする。ガソリン需要などの低迷で国内の精製設備は約2割が余剰。国内精製能力の37%を握るJXが能力削減を急ぐことで、余剰設備の解消の動きが他社にも広がりそうだ。
統合会社の会長に就く西尾進路・新日石社長と、社長となる高萩光紀・新日鉱HD社長が能力削減を前倒しする方針を明らかにした。国内石油事業の収益を安定させる一方で、海外で新エネルギーや資源開発などに重点投資する。一連の施策は近く策定するJXとしての中期経営計画(10~12年度)に盛り込む。
上場企業の配当底入れ 下期総額5%増、増・復配の社数1.5倍
上場企業の配当が増加に転じる。2010年3月期の下期の配当総額は前年同期比5%増になる見通し。半期ベースの配当が増加するのは09年3月期の上期以来、3半期ぶり。増配もしくは復配する企業数も5割増となる。企業業績の回復に加え、金融不安が後退し手元資金の確保を優先していた企業が株主配分に力点を置くようになった。来期にかけても増加が続けば、株価や個人消費の押し上げ効果もありそうだ。
3月期決算の上場企業で、03年度の下期から配当を比較できる2311社を対象に集計した。下期の配当総額は前年同期比5%増の2兆7917億円になりそうだ。対象企業のうち、17%にあたる397社が下期に増配もしくは復配を予定。増・復配企業数は前年同期比で5割増となった。一方、減配する企業は403社と半減する。
今度はサメ・サンゴ、国際取引制限案の討議へ
【ドーハ=是枝智、実森出】絶滅の恐れがある野生動物の国際取引を規制するワシントン条約の締約国会議は21日、フカヒレなどの原料となるサメ類(アカシュモクザメと類似種の計5種)や高知県の特産品である宝石サンゴの商取引を制限するかどうか討議に入る。同日中に採決する見通しだ。
いずれも米国や欧州連合(EU)が「厳重に規制しなければ絶滅の恐れがある」と主張。取引の全面禁止を提案したクロマグロとは異なり、輸出許可制の対象となる取引制限を求めている。
日本は「科学的根拠が乏しい」と反対しており、フカヒレ消費国の中国や漁業国のアラブ諸国も取引制限案の否決を目指す見通しだ。
漁業国の関係者は、サメ類の多くがマグロなどに交じって捕獲されるため、サメ類が制限されれば本来のマグロなどの漁獲にも影響が出ると懸念している。
宝石サンゴは浅海にあるサンゴ礁とは違い、深海に生息し、地中海などで多く採れる。日本では高知県や沖縄県などの特産品だ。
高金利通貨へ個人再び投資 豪ドルや南ア・ランド、上昇基調
外国為替市場で個人が高金利通貨への投資姿勢を強めている。金融危機後の世界経済の回復を見込み、オーストラリアドルや南アフリカランドなどの資源国通貨を買う動きが目立つ。ギリシャの財政不安の沈静化を背景に、いったん為替リスクを避けて円に戻した資金を再び外貨に振り向け始めた形だ。株価回復も高金利通貨投資の支援材料になっている。
19日時点の豪ドルの対円相場は1豪ドル=83円前後。市場関係者の間でギリシャなど南欧諸国の財政不安が強まった年明け以降、円を買い戻す動きが強まったが、ギリシャが自主的な財政再建に動き出したことで、最近は再び豪ドルが上昇基調を強めている。南アランドやニュージーランドドルも同じような値動きになっており、低金利通貨のドルやユーロとの二極化が鮮明だ。
電子書籍化がもたらすパラダイムシフトを真剣に考えてみる(COLUMN)
電子出版が登場したのは1980年代の初頭であり、ずいぶん歴史は長い。しかし、ケータイ小説や携帯コミックが小さな成功をした以外は、本格的な普及も定着もないままにずるずるときたというのが実態でしょう。そのために電子出版に関しては懐疑的な人もきっと多いと思います。
しかし、昨年にアマゾンの電子ブックリーダーKindleが登場し、さらにバーンズ&ノーブルがnookで参戦、またアップルのiPadの発表で一気に火がついたという感があります。古くから電子ブックリーダーを手がけながら、話題に取り残された感のあった米国SONYも、このところ新聞社との提携を一挙に進め、さらにiPadに対抗するタブレットPCを開発しようという動きもてきました。
いずれも米国ではじまった流れですが、黒船がやってくる、業界の危機だ、逆に苦境に立つ出版社の救いになるという期待感など、さまざまな思いが入り交じって議論が起こってきています。
しかし、どのように技術やビジネスのイノベーションが進むかによって、電子出版の普及や成長速度は変わるのでしょうが、確実に書籍や雑誌を取りまく出版ビジネスが塗り替わっていくことだけは間違いありません。いや出版のビジネスだけでなく、やがて人びとの文化そのものをも大きく変えてしまうだろことは想像に難くありません。また、この電子出版がもたらす構造変化を想像できない人の中には、電子書籍販売はアマゾンなど米国資本がリーダーシップを取っており、日本の活字文化を衰退させるという奇妙な議論まで飛び出す始末で思わず失笑してしまいます。
書籍の消耗品化が起こってきた
電子出版がどうなるかを考える際に、重要なことは、その前提としての書籍の消費構造に大きな変化が起こってきたかどうかに注目する必要があります。実は書籍の電子化が必然だという大きな時代の変化が起こってきています。
かつては書籍はストックされるものでした。しかし今は違います。書籍はどんどん消耗品になってきたのです。もちろん今でも蔵書を楽しむという人はいるでしょう。しかし、ストック財から買って読めばもう手元にはいらないという消耗品化が起こってきているということです。
古書籍市場の変化でこのことがよくわかります。いったん読むと古書籍店に売ってしまい、よほどのものしか手元に残さない人が増えました。だから古書籍での書籍流通量が増えました。ストック財としての付加価値がなくなったために、ブックオフのように本を値踏みしないで買い取るというビジネスも成り立つようになりました。
古書籍店の経営者の人たちはその変化を痛いほど感じています。値打ちがあり高く売れる書籍がどんどん減って、販売価格が下がり、また人びとが求める書籍が多岐に渡ってきたために、それに応える在庫を持たなければ経営が成り立たなくなってきています。
新刊本でも出版される数は増えたのですが、店頭に置かれても長くは持ちません。あっという間に店頭から消えていきます。書籍のデジタル化は、そういったフロー型の書籍消費にはいかにもフィットしています。電子書籍に変わってもなんら問題がない、というよりはそれでタイムリーに読みたいものが購入でき、価格が下がったほうが読者にとってはありがたいということです。
もし、書籍をストックする、つまり書棚に並べて所蔵することに価値を見いだしている人が多ければ電子書籍普及のハードルは高いのですが、そうではないということです。
プレイヤー(市場の担い手)が揃ってきた
いったん電子書籍を利用するとその良さがわかります。しかし、これまでの電子出版には致命的な欠陥がありました。電子ブックリーダーがなかったからでしょうか。違います。売られている書籍の種類が少なく、読みたい本、買いたい本がが揃っていなかったのです。電子書籍リーダーに注目が集まっていますが、電子ブックリーダーは確かに需要を喚起し,市場を広げる役割を果たしますが、この市場の鍵を握るプレイヤーではないと思っています。電子書籍はPCで読もうが、書籍リーダーで読もうが、iPhoneなどのスマートフォンであってもいいのです。それは利用に応じて選択すればいいし、それぞれが便利になればいいだけのことです。
電子書籍の市場が成り立つ重要な鍵を握っているのは、書籍コンテンツを集積させるパワーを持ったプレイヤーの登場です。そこにいけばどのような書籍も手にはいる、著作権管理が行われており、検索もできる、つまり書籍コンテンツのアグリゲーターが登場してくるかどうかです。きっと販売も握るでしょう。
やっと、その役割を担える役者が揃ってきました。アマゾン、グーグル、アップル、米国SONY、バーンズ&ノーブル、いや日本は言語が違うので、今からでも日本発の企業が出現しても遅くはないかもしれません。
楽天さんあたりがやらないのでしょうか。ただアグリゲーターが海外資本であっても、別に日本の文化が壊れるわけではありません。壊れるとすれば既存の業界の常識や秩序、また業界そのものです。
不幸なことに日本は著作権についての態度が保守的であったり、出版社をまとめることができる取次店が自らのビジネス基盤を揺るがしかねない電子書籍に本気でチャレンジするかどうかも不透明です。もたついているうちに米国発の企業に押さえられてしまうということになってしまうのでしょうか。
総務省、文部科学省、経済産業省の3省が、本や雑誌をデジタル化した電子書籍の普及に向けて、国内ルールを定める官民合同の研究会を発足させたようですが、公的な図書館所蔵の書籍のデジタル化も睨めば、政府や地方自治体とも連携して育てていくというのもおかしくはありません。しかし成否は、業界利益や業界保護からの視点、供給側の視点ではではなく、ユーザー目線から発想できるかどうかにかかっています。
出版のハードルが下がり、業界構造が激変する
新聞も、雑誌も、書籍も、しょせん印刷という装置に頼っているビジネスです。コンテンツ産業という顔と、印刷という装置産業の顔の持つヤヌスの神みたいな産業です。印刷にはコストがかかり、出版する際の資金負担となり、売れなければ回収できないというリスクとなってきます。それが参入障壁ともなり、出版ビジネスの秩序が成り立っています。その根底が崩れてくるということです。
出版社の役割も大きく変わります。出版社は、コンテンツの編集をサポートするコンサルタントの役割とその書籍を売るための仕掛け人、つまりマーケティング・エージェンシーとしての役割が大きくなってきます。その役割を担えるかどうかで淘汰が始まるでしょう。
電子書籍でまずは売り出し、人気があれば紙の書籍を追加して発行するというマーケティングもできるようになります。個人でも出版することができるでしょうし、また個人の出版コーディネーターが生まれてくる可能性も高いと思います。いずれにしても、誰でもコンテンツさえ創ることができれば、出版ができる時代がやってきて、それまでの業界秩序や業界常識は壊れていきます。きっとフリー(無料)の書籍も大量に登場してくるでしょう。どうなるとブログとの際が怪しくなってきます。
ロングテールが可能になる
書籍もモノである限り在庫や物流が必要であり、いくらロングテールだといっても、際限なく在庫しておくと在庫を抱えるコストが膨大にかかってきて現実的には不可能です。いくら大型書店でも、必要な本が揃っているとは限らず、取り寄せるか、アマゾンや楽天で買うということになります。しかし、デジタルの世界は、ストレージのコストがどんどん下がってきているので、電子化すれば、あらゆる書籍を在庫しておくことが可能になってきます。
ただ、情報化、スピード化が進むので、旬で人気のある本が今より売上を占めるということが起こってきてもおかしくありません。しかし逆に、少ししか売れない本でもいつでも手に入るようになります。
便利になり、価格が下がれば書籍流通量は増える
印刷された書籍はそれなりの良さもありますが不便さもあります。第一は検索できません。確かに読んだことがあるけれど、うろ覚えでどの本に書かれていたかを探すのに一苦労することがあり、また結局はわからなかったということもあります。それは膨大な情報が流れている現代では致命傷です。
書籍の検索では、グーグルがチャレンジしていますが、アマゾンでも「なか見!検索?」のないものがまだまだ多く、売る気がないのだろうか、それなら書店でも立ち読み禁止でビニールカバーすればと思ってしまいます。
第二に、引用したり、資料として重要なページを保存・整理したくとも、またキーボードを叩かないといけません。切り抜きができない、タグではなく付箋では探すのも大変だということです。
第三に、場所が変わると本を持ち運ばなければ読めないという不便さがあります。書籍が電子化されれば、PCや電子ブックリーダー、またスマートフォンが書棚になり、どこでも読みたい本が読めるようになります。さらに価格が下がれば、書籍の流通量が増えていきます。本を買う頻度も買う人も増えるだろうということです。そこが音楽との決定的な違いです。音楽は気に入ったものがある程度あれば、それをリピートして聴きますが、書籍はリピートして読むこともありますが、新しい書籍を読むという人のほうが多いからです。
電子書籍も、現状ではまだ紙の書籍の文化を引きずっていて、ページめくりがあったり、著作権を過度に意識して、本来の電子書籍の良さを損ねているというのが現実でしょうが、やがてそれも変わっていくものと思います。すくなくとも縦書きから横書きへという変化ぐらいは起こってきそうです。
紙と電子は併存するが、この衝撃は大きい
デジタル化の流れで一変してしまった例としては写真の世界があります。銀塩フィルムや銀塩プリントがなくなったわけではありませんが、しかし銀塩フイルムや銀塩プリントの市場規模は激減してしまいました。銀塩の世界では、コダックと富士フイルム2社の独壇場でしたが、デジタル化によって、プレイヤーが増えました。デジタルカメラ、カメラ付き携帯、プリンター、あるいはセルフプリントサービス、写真の加工ソフトやアルバムソフト、Flickrなどのネットの共有サイト、デジタルフォトフレーム、ほんとうに多岐に渡るプレイヤーが出てきました。また重要なことは写真を撮る人、あるいはシャッターを切る回数、ショット数は飛躍的に伸びたことです。銀塩フイルムのよさ、デジタルのよさがそれぞれが棲み分けられてきているように感じます。しかしコダックや富士フイルム、あるいは全国に広がっていたDPE店、写真店を含めた写真業界が受けた打撃が大きかったことは言うまでもありません。
決して、すべての書籍がデジタルだけになるとは思えません。紙の書籍と電子書籍が併存していきます。しかし紙の書籍の市場は確実に侵食され、市場が縮小し、激しい淘汰が起こってきます。問題は、その変化をうまく利用できるかできないかでしょう。
さらに、デジタル化が進めば、つまり誰でも出版できる時代がくれば、きっと新しいプレイヤーが登場してきます。電子出版にチャレンジしようとしているアゴラのように。つねに革新は、古いマーケットのプレイヤーからではなく、周辺から起こってくるものです。古い業界のプレイヤーは、古いパラダイムからなかなか抜け出せないというのが世の常です。
著作権問題も、それをまったく意に介しない著作者がきっとでてきます。そういった新しい人たちが、読者のニーズに素直に応えて、古いパラダイムを塗り替えていくことになるのではないでしょうか。
電子出版が登場したのは1980年代の初頭であり、ずいぶん歴史は長い。しかし、ケータイ小説や携帯コミックが小さな成功をした以外は、本格的な普及も定着もないままにずるずるときたというのが実態でしょう。そのために電子出版に関しては懐疑的な人もきっと多いと思います。
しかし、昨年にアマゾンの電子ブックリーダーKindleが登場し、さらにバーンズ&ノーブルがnookで参戦、またアップルのiPadの発表で一気に火がついたという感があります。古くから電子ブックリーダーを手がけながら、話題に取り残された感のあった米国SONYも、このところ新聞社との提携を一挙に進め、さらにiPadに対抗するタブレットPCを開発しようという動きもてきました。
いずれも米国ではじまった流れですが、黒船がやってくる、業界の危機だ、逆に苦境に立つ出版社の救いになるという期待感など、さまざまな思いが入り交じって議論が起こってきています。
しかし、どのように技術やビジネスのイノベーションが進むかによって、電子出版の普及や成長速度は変わるのでしょうが、確実に書籍や雑誌を取りまく出版ビジネスが塗り替わっていくことだけは間違いありません。いや出版のビジネスだけでなく、やがて人びとの文化そのものをも大きく変えてしまうだろことは想像に難くありません。また、この電子出版がもたらす構造変化を想像できない人の中には、電子書籍販売はアマゾンなど米国資本がリーダーシップを取っており、日本の活字文化を衰退させるという奇妙な議論まで飛び出す始末で思わず失笑してしまいます。
書籍の消耗品化が起こってきた
電子出版がどうなるかを考える際に、重要なことは、その前提としての書籍の消費構造に大きな変化が起こってきたかどうかに注目する必要があります。実は書籍の電子化が必然だという大きな時代の変化が起こってきています。
かつては書籍はストックされるものでした。しかし今は違います。書籍はどんどん消耗品になってきたのです。もちろん今でも蔵書を楽しむという人はいるでしょう。しかし、ストック財から買って読めばもう手元にはいらないという消耗品化が起こってきているということです。
古書籍市場の変化でこのことがよくわかります。いったん読むと古書籍店に売ってしまい、よほどのものしか手元に残さない人が増えました。だから古書籍での書籍流通量が増えました。ストック財としての付加価値がなくなったために、ブックオフのように本を値踏みしないで買い取るというビジネスも成り立つようになりました。
古書籍店の経営者の人たちはその変化を痛いほど感じています。値打ちがあり高く売れる書籍がどんどん減って、販売価格が下がり、また人びとが求める書籍が多岐に渡ってきたために、それに応える在庫を持たなければ経営が成り立たなくなってきています。
新刊本でも出版される数は増えたのですが、店頭に置かれても長くは持ちません。あっという間に店頭から消えていきます。書籍のデジタル化は、そういったフロー型の書籍消費にはいかにもフィットしています。電子書籍に変わってもなんら問題がない、というよりはそれでタイムリーに読みたいものが購入でき、価格が下がったほうが読者にとってはありがたいということです。
もし、書籍をストックする、つまり書棚に並べて所蔵することに価値を見いだしている人が多ければ電子書籍普及のハードルは高いのですが、そうではないということです。
プレイヤー(市場の担い手)が揃ってきた
いったん電子書籍を利用するとその良さがわかります。しかし、これまでの電子出版には致命的な欠陥がありました。電子ブックリーダーがなかったからでしょうか。違います。売られている書籍の種類が少なく、読みたい本、買いたい本がが揃っていなかったのです。電子書籍リーダーに注目が集まっていますが、電子ブックリーダーは確かに需要を喚起し,市場を広げる役割を果たしますが、この市場の鍵を握るプレイヤーではないと思っています。電子書籍はPCで読もうが、書籍リーダーで読もうが、iPhoneなどのスマートフォンであってもいいのです。それは利用に応じて選択すればいいし、それぞれが便利になればいいだけのことです。
電子書籍の市場が成り立つ重要な鍵を握っているのは、書籍コンテンツを集積させるパワーを持ったプレイヤーの登場です。そこにいけばどのような書籍も手にはいる、著作権管理が行われており、検索もできる、つまり書籍コンテンツのアグリゲーターが登場してくるかどうかです。きっと販売も握るでしょう。
やっと、その役割を担える役者が揃ってきました。アマゾン、グーグル、アップル、米国SONY、バーンズ&ノーブル、いや日本は言語が違うので、今からでも日本発の企業が出現しても遅くはないかもしれません。
楽天さんあたりがやらないのでしょうか。ただアグリゲーターが海外資本であっても、別に日本の文化が壊れるわけではありません。壊れるとすれば既存の業界の常識や秩序、また業界そのものです。
不幸なことに日本は著作権についての態度が保守的であったり、出版社をまとめることができる取次店が自らのビジネス基盤を揺るがしかねない電子書籍に本気でチャレンジするかどうかも不透明です。もたついているうちに米国発の企業に押さえられてしまうということになってしまうのでしょうか。
総務省、文部科学省、経済産業省の3省が、本や雑誌をデジタル化した電子書籍の普及に向けて、国内ルールを定める官民合同の研究会を発足させたようですが、公的な図書館所蔵の書籍のデジタル化も睨めば、政府や地方自治体とも連携して育てていくというのもおかしくはありません。しかし成否は、業界利益や業界保護からの視点、供給側の視点ではではなく、ユーザー目線から発想できるかどうかにかかっています。
出版のハードルが下がり、業界構造が激変する
新聞も、雑誌も、書籍も、しょせん印刷という装置に頼っているビジネスです。コンテンツ産業という顔と、印刷という装置産業の顔の持つヤヌスの神みたいな産業です。印刷にはコストがかかり、出版する際の資金負担となり、売れなければ回収できないというリスクとなってきます。それが参入障壁ともなり、出版ビジネスの秩序が成り立っています。その根底が崩れてくるということです。
出版社の役割も大きく変わります。出版社は、コンテンツの編集をサポートするコンサルタントの役割とその書籍を売るための仕掛け人、つまりマーケティング・エージェンシーとしての役割が大きくなってきます。その役割を担えるかどうかで淘汰が始まるでしょう。
電子書籍でまずは売り出し、人気があれば紙の書籍を追加して発行するというマーケティングもできるようになります。個人でも出版することができるでしょうし、また個人の出版コーディネーターが生まれてくる可能性も高いと思います。いずれにしても、誰でもコンテンツさえ創ることができれば、出版ができる時代がやってきて、それまでの業界秩序や業界常識は壊れていきます。きっとフリー(無料)の書籍も大量に登場してくるでしょう。どうなるとブログとの際が怪しくなってきます。
ロングテールが可能になる
書籍もモノである限り在庫や物流が必要であり、いくらロングテールだといっても、際限なく在庫しておくと在庫を抱えるコストが膨大にかかってきて現実的には不可能です。いくら大型書店でも、必要な本が揃っているとは限らず、取り寄せるか、アマゾンや楽天で買うということになります。しかし、デジタルの世界は、ストレージのコストがどんどん下がってきているので、電子化すれば、あらゆる書籍を在庫しておくことが可能になってきます。
ただ、情報化、スピード化が進むので、旬で人気のある本が今より売上を占めるということが起こってきてもおかしくありません。しかし逆に、少ししか売れない本でもいつでも手に入るようになります。
便利になり、価格が下がれば書籍流通量は増える
印刷された書籍はそれなりの良さもありますが不便さもあります。第一は検索できません。確かに読んだことがあるけれど、うろ覚えでどの本に書かれていたかを探すのに一苦労することがあり、また結局はわからなかったということもあります。それは膨大な情報が流れている現代では致命傷です。
書籍の検索では、グーグルがチャレンジしていますが、アマゾンでも「なか見!検索?」のないものがまだまだ多く、売る気がないのだろうか、それなら書店でも立ち読み禁止でビニールカバーすればと思ってしまいます。
第二に、引用したり、資料として重要なページを保存・整理したくとも、またキーボードを叩かないといけません。切り抜きができない、タグではなく付箋では探すのも大変だということです。
第三に、場所が変わると本を持ち運ばなければ読めないという不便さがあります。書籍が電子化されれば、PCや電子ブックリーダー、またスマートフォンが書棚になり、どこでも読みたい本が読めるようになります。さらに価格が下がれば、書籍の流通量が増えていきます。本を買う頻度も買う人も増えるだろうということです。そこが音楽との決定的な違いです。音楽は気に入ったものがある程度あれば、それをリピートして聴きますが、書籍はリピートして読むこともありますが、新しい書籍を読むという人のほうが多いからです。
電子書籍も、現状ではまだ紙の書籍の文化を引きずっていて、ページめくりがあったり、著作権を過度に意識して、本来の電子書籍の良さを損ねているというのが現実でしょうが、やがてそれも変わっていくものと思います。すくなくとも縦書きから横書きへという変化ぐらいは起こってきそうです。
紙と電子は併存するが、この衝撃は大きい
デジタル化の流れで一変してしまった例としては写真の世界があります。銀塩フィルムや銀塩プリントがなくなったわけではありませんが、しかし銀塩フイルムや銀塩プリントの市場規模は激減してしまいました。銀塩の世界では、コダックと富士フイルム2社の独壇場でしたが、デジタル化によって、プレイヤーが増えました。デジタルカメラ、カメラ付き携帯、プリンター、あるいはセルフプリントサービス、写真の加工ソフトやアルバムソフト、Flickrなどのネットの共有サイト、デジタルフォトフレーム、ほんとうに多岐に渡るプレイヤーが出てきました。また重要なことは写真を撮る人、あるいはシャッターを切る回数、ショット数は飛躍的に伸びたことです。銀塩フイルムのよさ、デジタルのよさがそれぞれが棲み分けられてきているように感じます。しかしコダックや富士フイルム、あるいは全国に広がっていたDPE店、写真店を含めた写真業界が受けた打撃が大きかったことは言うまでもありません。
決して、すべての書籍がデジタルだけになるとは思えません。紙の書籍と電子書籍が併存していきます。しかし紙の書籍の市場は確実に侵食され、市場が縮小し、激しい淘汰が起こってきます。問題は、その変化をうまく利用できるかできないかでしょう。
さらに、デジタル化が進めば、つまり誰でも出版できる時代がくれば、きっと新しいプレイヤーが登場してきます。電子出版にチャレンジしようとしているアゴラのように。つねに革新は、古いマーケットのプレイヤーからではなく、周辺から起こってくるものです。古い業界のプレイヤーは、古いパラダイムからなかなか抜け出せないというのが世の常です。
著作権問題も、それをまったく意に介しない著作者がきっとでてきます。そういった新しい人たちが、読者のニーズに素直に応えて、古いパラダイムを塗り替えていくことになるのではないでしょうか。
電波枠は1つ 携帯向けマルチメディア放送、2陣営の完成度(COLUMN)
2011年7月のアナログテレビ放送停波に伴い、周波数の再編が予定されている。特に注目されるのが、移動体端末向けのマルチメディア放送だ。総務省ではVHF帯に14.5MHzの帯域幅を用意するが、事実上は1事業者分の枠しかない。免許申請や審査はこれからで、夏には事業者が決定する。参入に名乗りを上げた2社は3月に入ってそれぞれ、技術の進捗状況をメディア関係者に公開した。
■コンセプトの紹介に終始した「mmbi」
名乗りを上げた2社とは、NTTドコモやフジテレビジョン、日本テレビ放送網 などの在京民放テレビ局、伊藤忠商事などが出資する「マルチメディア放送(mmbi)」と、KDDIと米クアルコムが出資する「メディアフロージャパン企画」である。
mmbiの技術は、地上デジタル放送の規格である「ISDB-T方式」をベースにしている。ストリーミングによるライブ番組や、レコメンド機能を応用したファイル配信などを予定している。
3月8日にmmbiが開催したサービス説明会は、どちらかといえばコンセプトの紹介に終始していた。NTTドコモのAndroid(アンドロイド)端末「HT-03A」を使って、本体を傾けると番組が切り替わるなど加速度センサーを多用したユーザーインターフェースのアピールに力を入れた。同じ番組を携帯端末からテレビに切り替えて続けて視聴するデモもあったが、“マルチメディアらしい”サービスを体感できるまでには至っていなかった。
■メディアフローは実際のイメージを提示
一方、実際のサービスイメージを具体的に示して見せたのがメディアフロージャパン企画だ。同社は08年11月から、沖縄県のユビキタス特区で実証実験を展開している。那覇市と豊見城市の3カ所に送信局を設置し、半径3~4キロメートルのエリアで実際に電波を送出してきた。09年11月からはストリーミング放送に加えてファイルの自動蓄積配信やニュースおよび株価、交通情報のリアルタイム配信などを実験している。実際に居住者に試してもらい、それぞれのサービスの需要も調査している。
同社が採用する「MediaFLO」は、クアルコムが開発したモバイルマルチメディア放送用の技術だ。米国ではベライゾン・ワイヤレスやAT&TがUHF帯を使って、地上波テレビと同じ内容を流す「サイマル放送」を中心にサービスを提供している。日本ではすでに「ワンセグ」が地上デジタルテレビのサイマル放送を提供している。そのため、MediaFLOの日本での実証実験では、ストリーミングに加えて、クリップキャスト(蓄積型放送)やIPデータキャスティングなどに注力している。
■起伏が多い地形の沖縄で実験重ねる
MediaFLOは米国ではUHF帯を使っているが、日本ではVHF帯を使うため電波の飛び方が若干異なる。KDDIは携帯電話事業者としてUHF帯のノウハウを多く持つが、VHF帯での経験は少ない。このため起伏のある地形の沖縄で、VHF帯の11チャンネルを使った試験を実践して、ネットワーク特性や干渉、混信対策の実績を積んだという(沖縄は10チャンネルを琉球放送が、12チャンネルをNHK教育が使っているため、混信対策が必要になってくる)。
クアルコムは携帯電話関連技術を豊富に持っており、MediaFLOにもモバイル機器でテレビコンテンツを快適に視聴するための技術を盛り込んだ。例えば、送信信号から目的の番組だけを間欠受信することで省電力化する技術や、約1.5秒間隔でチャンネルを次々に変える「ザッピング」が可能な技術を取り入れた。伝送データが劣化しても映像をきれいなまま保持し、音声を継続して聴取できる仕様も備える。
■法定速度ぎりぎりの高速でも乱れがない
メディアフロージャパン企画が公開した実験は、KDDIの「W64SA」をベースとした携帯電話端末を配布し、市街地と高速道路をバスで走ってコンテンツを体験するというものだった。端末はMediaFLOだけでなくワンセグの受信も可能で、音楽やドラマのストリーミングのほか、最大100MBの大容量コンテンツの受信にも対応する。また、電子書籍や映像などを様々なファイル形式で受信できる「クリップキャスト」、ニュースや株価などをリアルタイムで受信する「IPデータキャスティング」を1つのメニュー画面から自在に操れるようになっていた。
ストリーミング配信は毎秒30コマ、512Kbpsの高品質映像にも対応する。携帯電話端末からコードをつなぎ、バスの車内に設置されたテレビに映像を出力していたが、快適に視聴できた。高速道路を法定速度ぎりぎりの高速で走っても、映像が乱れることはなく、送出元が市内に設置された送信局から高速道路向けに設置された送信局へと切り替わった場面でも、乱れや途切れはなかった。
IPデータキャスティングは「沖縄では特に渋滞情報の評判がいい。クルマが主な移動手段なので、かなり便利に感じられたようだ」(メディアフロージャパン企画の増田和彦社長)という。
クリップキャストは放送波を使うため、大容量コンテンツの配信でもパケット料金は不要である。コンテンツは暗号化しておき、ユーザーが第3世代携帯電話(3G)回線経由で復号鍵を購入すれば、暗号を解除してコンテンツを閲覧できる。実験端末は、音楽や映像、電子書籍のコンテンツをKDDIの「LISMOプレイヤー」で再生することができ、すぐにでも商用化できそうなレベルとなっていた。
■通信に進出する放送事業者の救世主となるか
沖縄県での実証実験や海外展示会での試作機を見る限り、今のところ完成度の高さはMediaFLOに軍配が上がる。mmbiも同様のコンセプトを語ってはいるが、報道関係者に具体的なものをアピールできていない。
広告収入の落ち込みにあえぐテレビ局は、番組関連コンテンツのネット販売に積極的な姿勢を見せている。ラジオ局もリスナーの減少に危機感を抱き、パソコン向けのサイマル放送「radiko(ラジコ)」を3月15日にスタートさせるなど、放送業界が一体となってネットへの進出を強化している。
ワンセグは普及率は高まったものの、オリンピックや一部のスポーツ中継といっ特別な番組があるときだけ使うという人が多い。その反省を生かして新たなビジネスチャンスを作るという意味でも、移動体向けマルチメディア放送に課せられた役割は大きいだろう。
首都圏3生協が合併検討、国内最大に 別の3生協も13年で合意
生活協同組合3位のコープとうきょう(東京・中野)と5位のさいたまコープ(さいたま市)、7位のちばコープ(千葉市)の首都圏大手3生協が2013年をメドとした合併の検討に入った。合計の事業高(売上高)は3600億円と、現在首位のコープこうべ(神戸市)を超え、国内最大の生協が誕生する。さらに4位のコープかながわ(横浜市)は静岡県と山梨県の生協と13年に合併することで合意した。不況で業績が低迷する中、生協も大型再編の時代を迎えた。
県境を越えた生協の合併を認める改正生協法が08年4月に施行されてから初の大型再編となる。
東芝など企業連合、インド都市整備受注へ 政府が側面支援
東芝、三菱重工業、日立製作所、日揮を中心とした日本の企業連合は、インド政府がデリー―ムンバイ間で進める4都市のインフラ整備事業を受注する。次世代送電網「スマートグリッド」や水道事業などを手掛ける。横浜市と北九州市もリサイクル事業の運営主体として参加する。新興国のインフラ需要は先進国の受注競争が激しく、劣勢が目立った日本も政府の支援姿勢が強まってきた。
経済産業省が23日、公募に応じた10の企業連合のうち、技術力などを勘案して4連合を正式に選ぶ見込み。4つの企業連合にはNECや京セラ、東京電力、東京ガスなど計17社が参加。外国企業ではシンガポールの大手水処理会社ハイフラックスが加わっている。今回の案件について政府は「最大限支援する」(直嶋正行経産相)構えで、貿易保険の付与や国際協力銀行(JBIC)の活用なども検討する。
日清紡、太陽光パネル製造装置2工場の計画凍結 価格下落で
日清紡ホールディングスは太陽光発電パネル製造装置の生産計画を縮小する。2010年度以降、愛知県岡崎市に新設する予定だった2つの工場建設について計画を凍結する。製造装置は需要減もあって販売単価が下落しており、事業範囲を関連素材に拡大して生き残りを目指す。需要拡大が期待される太陽光発電の関連市場でも、競争の激化を受けて事業の再構築を迫られる例が出始めている。
傘下の日清紡メカトロニクスは太陽電池に電極を付けたり、表面をガラスで覆ってフレームをつけたりなど、パネルを完成させる工程の機器を製造し、国内外で販売する大手メーカー。岡崎市に年間100億円相当の製造装置を生産できる専用工場を3棟建設する計画を打ち出していた。
白物家電生産額の減少続く、日本電機工業会10年度国内見通し
日本電機工業会(JEMA)は19日、ルームエアコンや冷蔵庫、洗濯機など白物家電の国内生産額見通しを発表した。2010年度の国内生産は前年度見込み比1.6%減の1兆5497億円の見込みで、4年連続の前年度割れになりそうだ。国内需要の低迷に加え、海外への生産移管が引き続き進むとみられる。
09年度見込みは前年度比8.4%減の1兆5757億円。「エコポイント制度」の追い風を受けた冷蔵庫が14.5%伸びたほか、空気清浄機も好調だった。半面、夏が天候不順だった影響などでエアコンは15.5%減となった。住宅着工の長期低迷も打撃となった。
3月末までの予定だったエコポイント制度は年末まで延長され、需要の下支え効果を期待できる。JEMAは10年度の国内生産額の減少幅が09年度より小さくなるとみているが、回復には時間がかかりそうだ。
南アジアで水資源の争奪戦過熱、成長続く中印の発電利用が拡大
【ニューデリー=長沢倫一郎】南アジアで河川の水を巡る政府間の対立が激しさを増している。経済成長に不可欠な電力の確保へインドや中国は水力発電所の建設を競い、これによって干ばつ時などに十分な水量を確保できなくなると懸念する下流の国が反発する構図だ。水資源の争奪戦にはカシミール地方の領有権問題や食料増産に向けた農業用水の需要の高まりなども絡み、地域対立の火種となっている。
印インディアン・エクスプレス紙によると、パキスタンのバシール外務次官は2月25日にニューデリーで開いたラオ印外務次官との会談で、カシミール地方での水力発電所の建設中止を迫った。
サムスン電子、2ケタ成長狙う 10年連結
【ソウル=尾島島雄】韓国のサムスン電子は19日、ソウル市内で定時株主総会を開いた。崔志成(チェ・ジソン)社長兼最高経営責任者(CEO)は経営報告で2010年の連結業績に関して「2けたの成長を目標にする」と述べ、136兆2900億ウォン(約11兆円)だった09年の売上高から10%以上の上積みを目指す考えを示した。
営業利益は、10兆9200億ウォンだった昨年と「同水準以上を達成する」と表明した。18兆4000億ウォン程度とみられる設備投資と研究開発投資の合計額については「弾力的に対応する」と語り、5兆5000億ウォンとする半導体メモリーの投資計画を積み増す可能性も出てきた。
議案では役員人事を承認、社内3人、社外4人で構成する取締役会の報酬総額の限度額を520億ウォン(約42億円)とすることを決めた。内外9人で構成した09年の取締役の報酬実績は434億ウォン。李健熙(イ・ゴンヒ)前会長の退職金も含まれるもようで、社内取締役の1人当たりの報酬は数億円とみられる。
西松・ハザマ、相次ぎ人員削減 受注低迷で
準大手ゼネコン(総合建設会社)の西松建設とハザマは19日、人員削減を実施するとそれぞれ発表した。西松は900人程度、ハザマは150人程度を早期退職などで削減する。準大手では五洋建設も早期退職者の募集を始めている。受注の長期低迷を受け、事業規模に見合った人員体制にスリム化する動きが加速してきた。
西松は3月末時点で満35歳以上59歳未満の従業員が対象に、600人程度の早期退職者を募集する。派遣社員などを加えた人員削減の規模は900人程度となる。非正規を含む従業員の約25%が削減の対象になり、年間の人件費は70億円程度の減少になる。ハザマは満50歳以上の正社員を対象に、4月から6月まで早期退職を募集する。正社員の7%にあたる人員削減で、年10億円程度の人件費減となる。
西松とハザマは同日、2010年3月期の業績予想を下方修正した。西松の連結最終損益は435億円の赤字(前期は25億円の黒字)、ハザマは18億円の赤字(同10億円の黒字)になりそうだ。国内の建設受注高が想定を下回り、海外工事の一部で採算が悪化する。
対中貿易赤字、米の統計「実際より3割多い」 中国商務省
米側統計が示す「対中貿易赤字」は実際より約3割多い――。中国商務省は19日、米商務省と共同で実施した米中の貿易統計の食い違いをめぐるこんな研究結果を明らかにした。香港経由の貨物を「中国発」とみなすかどうかなどの違いで、両者の統計に大きな差が生じていると結論づけた。
米国は中国に貿易黒字を削減する手段として、人民元相場を切り上げるよう圧力を強めている。中国側には今回の研究結果を「米国が言うほど中国の貿易黒字は大きくない」と反論する材料に使う思惑があるようだ。
研究によると、2006年の「米国の対中輸入額」は「中国の対米輸出額」より843億ドル(約7兆6000億円)多かった。中国から香港や韓国、メキシコなどを経由して米国に届いた貨物について、米側統計は「中国からの輸入」に計上しているのに対し、中国側統計は「米国への輸出」に算入しておらず、両者の差が広がったという。
ロシア版シリコンバレー、モスクワ近郊に建設
【モスクワ=坂井光】ロシアのメドベージェフ大統領はロシア版シリコンバレーの建設地をモスクワ市近郊のスコルコボにすることを表明した。政府は同地を科学技術の集積地として発展させる計画。有力紙ベドモスチは日本のインフラ関連企業が施設建設で参加する可能性があると報じるなど、受注競争も始まった。
大統領はエネルギー依存の産業構造から脱却するため、IT(情報技術)、バイオ、核エネルギーなどに関する新技術開発と商業化を目的とする新たな拠点をロシア版シリコンバレーと位置付け、建設地を探していた。今年後半に設計が始まるが、完成時期や投資規模などは明らかにしていない。
ロシアにはすでに科学技術発展を後押しする4つの特別経済地域がある。スコルコボは高官の別荘やゴルフ場などがある高級地だけに「資金の無駄遣い」「利権誘導」との批判があり、効果を疑問視する声も根強い。
2011年7月のアナログテレビ放送停波に伴い、周波数の再編が予定されている。特に注目されるのが、移動体端末向けのマルチメディア放送だ。総務省ではVHF帯に14.5MHzの帯域幅を用意するが、事実上は1事業者分の枠しかない。免許申請や審査はこれからで、夏には事業者が決定する。参入に名乗りを上げた2社は3月に入ってそれぞれ、技術の進捗状況をメディア関係者に公開した。
■コンセプトの紹介に終始した「mmbi」
名乗りを上げた2社とは、NTTドコモやフジテレビジョン、日本テレビ放送網 などの在京民放テレビ局、伊藤忠商事などが出資する「マルチメディア放送(mmbi)」と、KDDIと米クアルコムが出資する「メディアフロージャパン企画」である。
mmbiの技術は、地上デジタル放送の規格である「ISDB-T方式」をベースにしている。ストリーミングによるライブ番組や、レコメンド機能を応用したファイル配信などを予定している。
3月8日にmmbiが開催したサービス説明会は、どちらかといえばコンセプトの紹介に終始していた。NTTドコモのAndroid(アンドロイド)端末「HT-03A」を使って、本体を傾けると番組が切り替わるなど加速度センサーを多用したユーザーインターフェースのアピールに力を入れた。同じ番組を携帯端末からテレビに切り替えて続けて視聴するデモもあったが、“マルチメディアらしい”サービスを体感できるまでには至っていなかった。
■メディアフローは実際のイメージを提示
一方、実際のサービスイメージを具体的に示して見せたのがメディアフロージャパン企画だ。同社は08年11月から、沖縄県のユビキタス特区で実証実験を展開している。那覇市と豊見城市の3カ所に送信局を設置し、半径3~4キロメートルのエリアで実際に電波を送出してきた。09年11月からはストリーミング放送に加えてファイルの自動蓄積配信やニュースおよび株価、交通情報のリアルタイム配信などを実験している。実際に居住者に試してもらい、それぞれのサービスの需要も調査している。
同社が採用する「MediaFLO」は、クアルコムが開発したモバイルマルチメディア放送用の技術だ。米国ではベライゾン・ワイヤレスやAT&TがUHF帯を使って、地上波テレビと同じ内容を流す「サイマル放送」を中心にサービスを提供している。日本ではすでに「ワンセグ」が地上デジタルテレビのサイマル放送を提供している。そのため、MediaFLOの日本での実証実験では、ストリーミングに加えて、クリップキャスト(蓄積型放送)やIPデータキャスティングなどに注力している。
■起伏が多い地形の沖縄で実験重ねる
MediaFLOは米国ではUHF帯を使っているが、日本ではVHF帯を使うため電波の飛び方が若干異なる。KDDIは携帯電話事業者としてUHF帯のノウハウを多く持つが、VHF帯での経験は少ない。このため起伏のある地形の沖縄で、VHF帯の11チャンネルを使った試験を実践して、ネットワーク特性や干渉、混信対策の実績を積んだという(沖縄は10チャンネルを琉球放送が、12チャンネルをNHK教育が使っているため、混信対策が必要になってくる)。
クアルコムは携帯電話関連技術を豊富に持っており、MediaFLOにもモバイル機器でテレビコンテンツを快適に視聴するための技術を盛り込んだ。例えば、送信信号から目的の番組だけを間欠受信することで省電力化する技術や、約1.5秒間隔でチャンネルを次々に変える「ザッピング」が可能な技術を取り入れた。伝送データが劣化しても映像をきれいなまま保持し、音声を継続して聴取できる仕様も備える。
■法定速度ぎりぎりの高速でも乱れがない
メディアフロージャパン企画が公開した実験は、KDDIの「W64SA」をベースとした携帯電話端末を配布し、市街地と高速道路をバスで走ってコンテンツを体験するというものだった。端末はMediaFLOだけでなくワンセグの受信も可能で、音楽やドラマのストリーミングのほか、最大100MBの大容量コンテンツの受信にも対応する。また、電子書籍や映像などを様々なファイル形式で受信できる「クリップキャスト」、ニュースや株価などをリアルタイムで受信する「IPデータキャスティング」を1つのメニュー画面から自在に操れるようになっていた。
ストリーミング配信は毎秒30コマ、512Kbpsの高品質映像にも対応する。携帯電話端末からコードをつなぎ、バスの車内に設置されたテレビに映像を出力していたが、快適に視聴できた。高速道路を法定速度ぎりぎりの高速で走っても、映像が乱れることはなく、送出元が市内に設置された送信局から高速道路向けに設置された送信局へと切り替わった場面でも、乱れや途切れはなかった。
IPデータキャスティングは「沖縄では特に渋滞情報の評判がいい。クルマが主な移動手段なので、かなり便利に感じられたようだ」(メディアフロージャパン企画の増田和彦社長)という。
クリップキャストは放送波を使うため、大容量コンテンツの配信でもパケット料金は不要である。コンテンツは暗号化しておき、ユーザーが第3世代携帯電話(3G)回線経由で復号鍵を購入すれば、暗号を解除してコンテンツを閲覧できる。実験端末は、音楽や映像、電子書籍のコンテンツをKDDIの「LISMOプレイヤー」で再生することができ、すぐにでも商用化できそうなレベルとなっていた。
■通信に進出する放送事業者の救世主となるか
沖縄県での実証実験や海外展示会での試作機を見る限り、今のところ完成度の高さはMediaFLOに軍配が上がる。mmbiも同様のコンセプトを語ってはいるが、報道関係者に具体的なものをアピールできていない。
広告収入の落ち込みにあえぐテレビ局は、番組関連コンテンツのネット販売に積極的な姿勢を見せている。ラジオ局もリスナーの減少に危機感を抱き、パソコン向けのサイマル放送「radiko(ラジコ)」を3月15日にスタートさせるなど、放送業界が一体となってネットへの進出を強化している。
ワンセグは普及率は高まったものの、オリンピックや一部のスポーツ中継といっ特別な番組があるときだけ使うという人が多い。その反省を生かして新たなビジネスチャンスを作るという意味でも、移動体向けマルチメディア放送に課せられた役割は大きいだろう。
首都圏3生協が合併検討、国内最大に 別の3生協も13年で合意
生活協同組合3位のコープとうきょう(東京・中野)と5位のさいたまコープ(さいたま市)、7位のちばコープ(千葉市)の首都圏大手3生協が2013年をメドとした合併の検討に入った。合計の事業高(売上高)は3600億円と、現在首位のコープこうべ(神戸市)を超え、国内最大の生協が誕生する。さらに4位のコープかながわ(横浜市)は静岡県と山梨県の生協と13年に合併することで合意した。不況で業績が低迷する中、生協も大型再編の時代を迎えた。
県境を越えた生協の合併を認める改正生協法が08年4月に施行されてから初の大型再編となる。
東芝など企業連合、インド都市整備受注へ 政府が側面支援
東芝、三菱重工業、日立製作所、日揮を中心とした日本の企業連合は、インド政府がデリー―ムンバイ間で進める4都市のインフラ整備事業を受注する。次世代送電網「スマートグリッド」や水道事業などを手掛ける。横浜市と北九州市もリサイクル事業の運営主体として参加する。新興国のインフラ需要は先進国の受注競争が激しく、劣勢が目立った日本も政府の支援姿勢が強まってきた。
経済産業省が23日、公募に応じた10の企業連合のうち、技術力などを勘案して4連合を正式に選ぶ見込み。4つの企業連合にはNECや京セラ、東京電力、東京ガスなど計17社が参加。外国企業ではシンガポールの大手水処理会社ハイフラックスが加わっている。今回の案件について政府は「最大限支援する」(直嶋正行経産相)構えで、貿易保険の付与や国際協力銀行(JBIC)の活用なども検討する。
日清紡、太陽光パネル製造装置2工場の計画凍結 価格下落で
日清紡ホールディングスは太陽光発電パネル製造装置の生産計画を縮小する。2010年度以降、愛知県岡崎市に新設する予定だった2つの工場建設について計画を凍結する。製造装置は需要減もあって販売単価が下落しており、事業範囲を関連素材に拡大して生き残りを目指す。需要拡大が期待される太陽光発電の関連市場でも、競争の激化を受けて事業の再構築を迫られる例が出始めている。
傘下の日清紡メカトロニクスは太陽電池に電極を付けたり、表面をガラスで覆ってフレームをつけたりなど、パネルを完成させる工程の機器を製造し、国内外で販売する大手メーカー。岡崎市に年間100億円相当の製造装置を生産できる専用工場を3棟建設する計画を打ち出していた。
白物家電生産額の減少続く、日本電機工業会10年度国内見通し
日本電機工業会(JEMA)は19日、ルームエアコンや冷蔵庫、洗濯機など白物家電の国内生産額見通しを発表した。2010年度の国内生産は前年度見込み比1.6%減の1兆5497億円の見込みで、4年連続の前年度割れになりそうだ。国内需要の低迷に加え、海外への生産移管が引き続き進むとみられる。
09年度見込みは前年度比8.4%減の1兆5757億円。「エコポイント制度」の追い風を受けた冷蔵庫が14.5%伸びたほか、空気清浄機も好調だった。半面、夏が天候不順だった影響などでエアコンは15.5%減となった。住宅着工の長期低迷も打撃となった。
3月末までの予定だったエコポイント制度は年末まで延長され、需要の下支え効果を期待できる。JEMAは10年度の国内生産額の減少幅が09年度より小さくなるとみているが、回復には時間がかかりそうだ。
南アジアで水資源の争奪戦過熱、成長続く中印の発電利用が拡大
【ニューデリー=長沢倫一郎】南アジアで河川の水を巡る政府間の対立が激しさを増している。経済成長に不可欠な電力の確保へインドや中国は水力発電所の建設を競い、これによって干ばつ時などに十分な水量を確保できなくなると懸念する下流の国が反発する構図だ。水資源の争奪戦にはカシミール地方の領有権問題や食料増産に向けた農業用水の需要の高まりなども絡み、地域対立の火種となっている。
印インディアン・エクスプレス紙によると、パキスタンのバシール外務次官は2月25日にニューデリーで開いたラオ印外務次官との会談で、カシミール地方での水力発電所の建設中止を迫った。
サムスン電子、2ケタ成長狙う 10年連結
【ソウル=尾島島雄】韓国のサムスン電子は19日、ソウル市内で定時株主総会を開いた。崔志成(チェ・ジソン)社長兼最高経営責任者(CEO)は経営報告で2010年の連結業績に関して「2けたの成長を目標にする」と述べ、136兆2900億ウォン(約11兆円)だった09年の売上高から10%以上の上積みを目指す考えを示した。
営業利益は、10兆9200億ウォンだった昨年と「同水準以上を達成する」と表明した。18兆4000億ウォン程度とみられる設備投資と研究開発投資の合計額については「弾力的に対応する」と語り、5兆5000億ウォンとする半導体メモリーの投資計画を積み増す可能性も出てきた。
議案では役員人事を承認、社内3人、社外4人で構成する取締役会の報酬総額の限度額を520億ウォン(約42億円)とすることを決めた。内外9人で構成した09年の取締役の報酬実績は434億ウォン。李健熙(イ・ゴンヒ)前会長の退職金も含まれるもようで、社内取締役の1人当たりの報酬は数億円とみられる。
西松・ハザマ、相次ぎ人員削減 受注低迷で
準大手ゼネコン(総合建設会社)の西松建設とハザマは19日、人員削減を実施するとそれぞれ発表した。西松は900人程度、ハザマは150人程度を早期退職などで削減する。準大手では五洋建設も早期退職者の募集を始めている。受注の長期低迷を受け、事業規模に見合った人員体制にスリム化する動きが加速してきた。
西松は3月末時点で満35歳以上59歳未満の従業員が対象に、600人程度の早期退職者を募集する。派遣社員などを加えた人員削減の規模は900人程度となる。非正規を含む従業員の約25%が削減の対象になり、年間の人件費は70億円程度の減少になる。ハザマは満50歳以上の正社員を対象に、4月から6月まで早期退職を募集する。正社員の7%にあたる人員削減で、年10億円程度の人件費減となる。
西松とハザマは同日、2010年3月期の業績予想を下方修正した。西松の連結最終損益は435億円の赤字(前期は25億円の黒字)、ハザマは18億円の赤字(同10億円の黒字)になりそうだ。国内の建設受注高が想定を下回り、海外工事の一部で採算が悪化する。
対中貿易赤字、米の統計「実際より3割多い」 中国商務省
米側統計が示す「対中貿易赤字」は実際より約3割多い――。中国商務省は19日、米商務省と共同で実施した米中の貿易統計の食い違いをめぐるこんな研究結果を明らかにした。香港経由の貨物を「中国発」とみなすかどうかなどの違いで、両者の統計に大きな差が生じていると結論づけた。
米国は中国に貿易黒字を削減する手段として、人民元相場を切り上げるよう圧力を強めている。中国側には今回の研究結果を「米国が言うほど中国の貿易黒字は大きくない」と反論する材料に使う思惑があるようだ。
研究によると、2006年の「米国の対中輸入額」は「中国の対米輸出額」より843億ドル(約7兆6000億円)多かった。中国から香港や韓国、メキシコなどを経由して米国に届いた貨物について、米側統計は「中国からの輸入」に計上しているのに対し、中国側統計は「米国への輸出」に算入しておらず、両者の差が広がったという。
ロシア版シリコンバレー、モスクワ近郊に建設
【モスクワ=坂井光】ロシアのメドベージェフ大統領はロシア版シリコンバレーの建設地をモスクワ市近郊のスコルコボにすることを表明した。政府は同地を科学技術の集積地として発展させる計画。有力紙ベドモスチは日本のインフラ関連企業が施設建設で参加する可能性があると報じるなど、受注競争も始まった。
大統領はエネルギー依存の産業構造から脱却するため、IT(情報技術)、バイオ、核エネルギーなどに関する新技術開発と商業化を目的とする新たな拠点をロシア版シリコンバレーと位置付け、建設地を探していた。今年後半に設計が始まるが、完成時期や投資規模などは明らかにしていない。
ロシアにはすでに科学技術発展を後押しする4つの特別経済地域がある。スコルコボは高官の別荘やゴルフ場などがある高級地だけに「資金の無駄遣い」「利権誘導」との批判があり、効果を疑問視する声も根強い。