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IT革命に乗れず 民力低下 技術を過信、構想力欠く
iモード・ウォークマン 世界で敗れる
日本経済の長期低迷の理由は、銀行問題やデフレなどへの政策対応が遅れたことだけではない。戦後の高成長を支えた民間の活力が低下した影響も大きい。かつては世界をリードした日本の大企業のパワーが弱まる一方、成長分野に人やカネが移る新陳代謝も進まなかった。第2部「民力低下」では、こうした姿を検証するとともに、活力を取り戻すための教訓を探る。
1990年代の日本経済は「失われた10年」といわれたが、元気印の産業がなかったわけではない。その代表が携帯電話だ。NTTドコモは99年2月、世界初の携帯インターネットサービス「iモード」を投入した。手軽に扱える携帯メールは若者の心をつかみ、需要は爆発。iモードの利用者はわずか2年で2000万人を突破した。
特殊な日本市場
「世界中の企業がiモードの技術を欲しがっている」。当時のドコモ社長、立川敬二氏はこう豪語したが、必ずしも大げさな言葉ではなかった。「パソコンのIT革命は米国が主導したが、ケータイのIT革命は日本がリーダーになる」。10年続いた経済停滞への突破口として、こんな期待が官民挙げて高まった。
だが結果は空振り。日本のケータイは世界の流れとかけ離れた方向に進み、今では世界から孤立する「ガラパゴス化」現象が指摘される。
「日の丸ケータイ」の最初の挫折は2001年度だ。ドコモは米AT&Tワイヤレスなど欧米・アジアの携帯会社に出資し、iモードのファミリーづくりを狙った。だが直後に通信バブルが崩壊し、出資先企業の株価が暴落。ドコモは02年3月期に8000億円強の特別損失を計上し、株主の厳しい批判を浴びた。
投資の損失にとどまらず、肝心のサービスの普及も進まなかった。02年11月、ドコモは提携する仏ブイグテレコムとパリのシャンゼリゼ通りを“占拠”した。ビルのラッピング(包装)やバスの車体に「iモード」のロゴをあしらい、通りを埋め尽くした。
だが派手な広告戦略も奏功しない。ブイグのiモードサービスの加入者は100万人を超えるのが精いっぱいで、爆発的普及にはほど遠かった。豪州テルストラのように、iモードサービスを打ち切るキャリアも現れた。
技術の優位性がありながら、なぜ普及しなかったのか。理由の一つは、通信会社(キャリア)がサービス・技術の主導権を握る日本の通信市場の特殊性かもしれない。日本ではドコモが新サービスを始めれば、携帯メーカーが対応する新端末を一斉投入し、市場が活気づく。だが米欧ではノキアやモトローラなどのメーカーが主導権を握る。彼らはiモードに冷淡だった。
「国内メーカーに海外でiモード端末を売ってほしいと訴えたが、『うちはブランド力がない』などと言って尻込みした。通信はインフラと端末がクルマの両輪。いくら通信会社がインフラを高度化しても、端末が出そろわなければ、消費者にそっぽを向かれる」。ドコモで海外事業を統括してきた辻村清行副社長は敗因をこう分析する。
技術で先行しても、周囲を巻き込んで新市場を立ち上げる「ビジネス構想力」がなければ、ITの世界では標準化できない。「日本が優位」と見られながらもモノにできなかった点では、携帯音楽プレーヤーもよく似ている。
音楽配信及び腰
04年7月、ソニーは携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」を発表した。米アップルが01年に発売した「iPod」は音響機器の小型化で世界をリードしてきたソニーのお株を奪った。焦るソニーは「1年で抜き返す」と宣言し、ハードディスク搭載のウォークマンの開発を急いでいた。
だがウォークマンブランドを活用した巻き返しは失敗に終わった。アップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は新製品発表をすべて自分でこなし、誰よりも雄弁に個々の機能を語る。トップがセールスマンとして世界に発信するiPodとのアピール力の差は歴然。iPodの販売は9年間で2億5000万台を超えた。アップルは07年に「iPod touch」「iPhone」、10年に「iPad」を発売し、日本企業に水をあける。
なぜソニーはiPodをしのぐ製品を作れなかったか。
電機大手の幹部OBは「成功体験の枠をはみ出すものはやらない、やらせないという日本の旧弊を脱せなかった」と話す。例えばソニーはグループに音楽事業会社を抱え、CDの売れ行きに水を差すような音楽配信ビジネスには当初から及び腰だった。
一方、ジョブズ氏は「消費者の心をつかめば、ヒット曲がさらに増えて潤う」と音楽会社を説得して回った。音楽を配信する「iTunes」はその威力を発揮し、CDからネット配信へと音楽販売の構造転換を引き起こした。
アップル製品の多くは既存の技術の組み合わせだ。製造は主に中国に拠点を置く台湾企業に委託。自社はデザインと経営モデルの構築に徹し、ハードのほかに1200万もの楽曲を抱えるiTunesの手数料を得る。ハード中心の発想を捨てきれないソニーと比べ、ジョブズ氏のビジネス構想力は一回り大きい。
ソニーは70年代、家庭用VTR「ベータマックス」を米国で発売した際に、著作権法違反で訴えられた。だが当時の盛田昭夫会長は「VTRの普及は消費者に利益をもたらす」と米メディアや政治家に主張。最高裁まで争った末、「勝訴」をもぎ取った。
盛田氏を敬愛するというジョブズ氏もiTunesを立ち上げる際は音楽会社の説得に東奔西走した。だがアップルと対峙(たいじ)したソニーは著作権問題を盾に守りに回った。盛田氏の世代が持っていたエネルギーや行動力を後続の世代はいつの間にか失ってしまったのだろうか。
日本企業、存在感薄く
1980年代、日本の電機産業は主要分野で圧倒的存在だった。例えばNECは半導体とパソコンで世界シェアが1位だった。日立製作所はコンピューターのIBM、重電のゼネラル・エレクトリック(GE)、家電のRCAを兼ね合わせた優良企業だといわれていた。
それから20年以上を経た今、半導体とテレビで世界一の座にいるのは韓国のサムスン電子。パソコンや携帯電話も欧米企業が首位に立った。日本が辛うじてトップを守るのはデジタルカメラやビデオカメラなど、ほんの一部の製品だけだ。
電機ばかりではない。新日本製鉄は2009年の粗鋼生産量が前年の2位から7位以下に後退。日本のお家芸として27年連続で世界一だった日本の工作機械も09年は生産額で3位に転落した。代わりに頭角を現したのがアジア企業だ。新日鉄の上位に来た企業は中国の鉄鋼メーカーと韓国のポスコ。工作機械でも上位2カ国のうち、1つは中国だ。
自動車では昨年、トヨタ自動車が世界一になったが、独フォルクスワーゲン(VW)のヴィンターコーン社長は「もはや日本のメーカーに脅威を感じない」と語る。経済成長の中心が新興国市場に移ってから、中国、南米、アフリカでぶつかるのは韓国の現代自動車だという。
ダイナミズムがない 出井伸之・ソニー元会長
――日本企業はこの20年で地盤沈下したが、なかでも目立つのがエレクトロニクスの失速だ。
「日本の電機の勢いはソニーと松下電器産業(現パナソニック)が家庭用VTRで『ベータ対VHS』の規格争いを繰り広げたころがピークだった。1980年代限りで日本の時代は終わったのではないか。それ以降、デジタルエレクトロニクスの時代が来たが、日本からはグーグルやアマゾンのようなグローバルなIT企業が1社も生まれていない」
「一方で、軽い組み立て系の企業はまだ多く残っている。欧米でもかつては米RCAや独テレフンケンといった家電メーカーがたくさんあったが、今はなくなってしまっている。日本は古い産業が残りすぎだ」
――何が原因か。
「日本の産業構造はいつの間にか非常に硬直的になってしまった。年功序列や終身雇用の慣行は基本的に揺らいでおらず、『会社をつぶさないこと』が美徳だと思われている。銀行や半導体の業界で起こったように、経営がいよいよダメになると、合併で生き残ろうとするが、その場合でも思い切ったリストラには踏み込めず、M&Aの利益が享受できない。一言でいえば、古い企業を捨て、新しい企業を生み出すダイナミズムが欠落している」
――企業の経営の方向性に問題があるのか。
「国内市場のシェアを気にしすぎるのも、日本企業の問題点だ。国内では手広く事業をする一方、世界市場をにらんだ発想が弱い。例えば、半導体製造受託最大手のTSMCなどは創業時から世界展開を狙っていたが、日本ではそんな企業が少ない」
――かつて出井さんが率いたソニーは、携帯音楽プレーヤーで米アップルに遅れを取った。
「ソニー時代のことはあまり話す立場にないが、一般論でいえば、日本人全体にコンピューター・リテラシーが十分ではない。パソコンを通じて音楽を取り込むという、そもそもの発想が薄かった」
――政府には何を望むか。
「企業が育つ土壌をどうやってつくるのか、日本政府は考えたことがあるのだろうか。高い法人税や各種のこまごました規制はビジネスの大きな障壁だ。官僚をたたけばたたくほど、官僚は新たな規制や細則をつくり、官僚の力が強くなるというのが日本の特徴だ。その結果、日本に本社を置くコストは非常に高くつくようになった」
産業育成、戦略があいまい 西室泰三・東芝相談役
――この20年で最大の変化は何でしょう。
「韓国を筆頭に、東アジアの国や地域が台頭した。特に韓国は国の意志として日本に目標を定め、国づくりを進めた。エレクトロニクス産業はその中心に座り、政府と財閥が一体で育成を進めた」
「30年ほど前、サムスン電子の首脳から、ある家電分野に参入していいものかと相談を受けた。日本のシェアが世界の過半を握っていた分野であり、どう考えても当時の韓国に勝ち目はなかった。私は『やめた方がいい』と進言したが、彼は少し間をおいて『やっぱりやらせてもらいます。これはサムスンの採算の問題ではなく、国家の問題です』と答えた」
「1983年にはこんな光景にも出くわした。サムスンが初めて半導体のDRAM工場を立ち上げ、日本から唯一、私が招かれた。政府からは当時の全斗煥大統領が列席し、極めて短期間で竣工にこぎつけたサムスンのトップにその場で勲章を授与した。半導体も家電もみな国家戦略の位置づけだということがよく分かった」
――韓国は90年代に国際通貨基金(IMF)ショックを経験しました。
「過酷な条件を受け入れたが、企業はそれで強くなった。例えばサムスンは社員の数を5万人から3万人に減らした。40歳以上は役員を除き、原則解雇した。良い悪いは別にして、日本で人員を急激に減らそうとしたら、時間も費用も随分かかる。韓国は危機をてこに、政府主導で企業の体質やカルチャーを一気に変えることができた」
――日本の電機はこの20年、どうだったのでしょうか。
「リーマン・ショック以降、政府が成長戦略を主導していくと言い始めたが、それまでは国家戦略のようなものを欠いていた。電機大手は個々の企業益で事業を展開し、適度に国内市場が大きかったことで、メーカーの数も多いまま、産業全体で低収益構造を温存してしまった。」
――日本の技術がアジアにたくさん流出した点はどうでしょう。
「DVDの規格を日本主導で決めたあたりから加速した。日本側がやや理想に走り、技術をオープンにし過ぎた面もある。サムスンなどに対し、日本企業が『育てる』ことを目的に、技術を供与・開示してきたこともそうだ。それらが正しい判断だったかというと、私個人はしなくてよかったのではないかと考えている。国家戦略もなく、野放しにライバル企業を強くしてしまった」
――日本の電機産業が21世紀を勝ち抜くのに必要なことは。
「徹底的に最先端分野を切り開き、政府もそれをサポートすることだ。全体を見渡して、日本がまだ優位性を持つのはエレクトロニクス製品の製造装置や高機能材料だ。例えば、太陽電池、リチウムイオン電池の関連技術は日本の強みとして、韓国や中国の浸食を許してはならない」
iモード・ウォークマン 世界で敗れる
日本経済の長期低迷の理由は、銀行問題やデフレなどへの政策対応が遅れたことだけではない。戦後の高成長を支えた民間の活力が低下した影響も大きい。かつては世界をリードした日本の大企業のパワーが弱まる一方、成長分野に人やカネが移る新陳代謝も進まなかった。第2部「民力低下」では、こうした姿を検証するとともに、活力を取り戻すための教訓を探る。
1990年代の日本経済は「失われた10年」といわれたが、元気印の産業がなかったわけではない。その代表が携帯電話だ。NTTドコモは99年2月、世界初の携帯インターネットサービス「iモード」を投入した。手軽に扱える携帯メールは若者の心をつかみ、需要は爆発。iモードの利用者はわずか2年で2000万人を突破した。
特殊な日本市場
「世界中の企業がiモードの技術を欲しがっている」。当時のドコモ社長、立川敬二氏はこう豪語したが、必ずしも大げさな言葉ではなかった。「パソコンのIT革命は米国が主導したが、ケータイのIT革命は日本がリーダーになる」。10年続いた経済停滞への突破口として、こんな期待が官民挙げて高まった。
だが結果は空振り。日本のケータイは世界の流れとかけ離れた方向に進み、今では世界から孤立する「ガラパゴス化」現象が指摘される。
「日の丸ケータイ」の最初の挫折は2001年度だ。ドコモは米AT&Tワイヤレスなど欧米・アジアの携帯会社に出資し、iモードのファミリーづくりを狙った。だが直後に通信バブルが崩壊し、出資先企業の株価が暴落。ドコモは02年3月期に8000億円強の特別損失を計上し、株主の厳しい批判を浴びた。
投資の損失にとどまらず、肝心のサービスの普及も進まなかった。02年11月、ドコモは提携する仏ブイグテレコムとパリのシャンゼリゼ通りを“占拠”した。ビルのラッピング(包装)やバスの車体に「iモード」のロゴをあしらい、通りを埋め尽くした。
だが派手な広告戦略も奏功しない。ブイグのiモードサービスの加入者は100万人を超えるのが精いっぱいで、爆発的普及にはほど遠かった。豪州テルストラのように、iモードサービスを打ち切るキャリアも現れた。
技術の優位性がありながら、なぜ普及しなかったのか。理由の一つは、通信会社(キャリア)がサービス・技術の主導権を握る日本の通信市場の特殊性かもしれない。日本ではドコモが新サービスを始めれば、携帯メーカーが対応する新端末を一斉投入し、市場が活気づく。だが米欧ではノキアやモトローラなどのメーカーが主導権を握る。彼らはiモードに冷淡だった。
「国内メーカーに海外でiモード端末を売ってほしいと訴えたが、『うちはブランド力がない』などと言って尻込みした。通信はインフラと端末がクルマの両輪。いくら通信会社がインフラを高度化しても、端末が出そろわなければ、消費者にそっぽを向かれる」。ドコモで海外事業を統括してきた辻村清行副社長は敗因をこう分析する。
技術で先行しても、周囲を巻き込んで新市場を立ち上げる「ビジネス構想力」がなければ、ITの世界では標準化できない。「日本が優位」と見られながらもモノにできなかった点では、携帯音楽プレーヤーもよく似ている。
音楽配信及び腰
04年7月、ソニーは携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」を発表した。米アップルが01年に発売した「iPod」は音響機器の小型化で世界をリードしてきたソニーのお株を奪った。焦るソニーは「1年で抜き返す」と宣言し、ハードディスク搭載のウォークマンの開発を急いでいた。
だがウォークマンブランドを活用した巻き返しは失敗に終わった。アップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は新製品発表をすべて自分でこなし、誰よりも雄弁に個々の機能を語る。トップがセールスマンとして世界に発信するiPodとのアピール力の差は歴然。iPodの販売は9年間で2億5000万台を超えた。アップルは07年に「iPod touch」「iPhone」、10年に「iPad」を発売し、日本企業に水をあける。
なぜソニーはiPodをしのぐ製品を作れなかったか。
電機大手の幹部OBは「成功体験の枠をはみ出すものはやらない、やらせないという日本の旧弊を脱せなかった」と話す。例えばソニーはグループに音楽事業会社を抱え、CDの売れ行きに水を差すような音楽配信ビジネスには当初から及び腰だった。
一方、ジョブズ氏は「消費者の心をつかめば、ヒット曲がさらに増えて潤う」と音楽会社を説得して回った。音楽を配信する「iTunes」はその威力を発揮し、CDからネット配信へと音楽販売の構造転換を引き起こした。
アップル製品の多くは既存の技術の組み合わせだ。製造は主に中国に拠点を置く台湾企業に委託。自社はデザインと経営モデルの構築に徹し、ハードのほかに1200万もの楽曲を抱えるiTunesの手数料を得る。ハード中心の発想を捨てきれないソニーと比べ、ジョブズ氏のビジネス構想力は一回り大きい。
ソニーは70年代、家庭用VTR「ベータマックス」を米国で発売した際に、著作権法違反で訴えられた。だが当時の盛田昭夫会長は「VTRの普及は消費者に利益をもたらす」と米メディアや政治家に主張。最高裁まで争った末、「勝訴」をもぎ取った。
盛田氏を敬愛するというジョブズ氏もiTunesを立ち上げる際は音楽会社の説得に東奔西走した。だがアップルと対峙(たいじ)したソニーは著作権問題を盾に守りに回った。盛田氏の世代が持っていたエネルギーや行動力を後続の世代はいつの間にか失ってしまったのだろうか。
日本企業、存在感薄く
1980年代、日本の電機産業は主要分野で圧倒的存在だった。例えばNECは半導体とパソコンで世界シェアが1位だった。日立製作所はコンピューターのIBM、重電のゼネラル・エレクトリック(GE)、家電のRCAを兼ね合わせた優良企業だといわれていた。
それから20年以上を経た今、半導体とテレビで世界一の座にいるのは韓国のサムスン電子。パソコンや携帯電話も欧米企業が首位に立った。日本が辛うじてトップを守るのはデジタルカメラやビデオカメラなど、ほんの一部の製品だけだ。
電機ばかりではない。新日本製鉄は2009年の粗鋼生産量が前年の2位から7位以下に後退。日本のお家芸として27年連続で世界一だった日本の工作機械も09年は生産額で3位に転落した。代わりに頭角を現したのがアジア企業だ。新日鉄の上位に来た企業は中国の鉄鋼メーカーと韓国のポスコ。工作機械でも上位2カ国のうち、1つは中国だ。
自動車では昨年、トヨタ自動車が世界一になったが、独フォルクスワーゲン(VW)のヴィンターコーン社長は「もはや日本のメーカーに脅威を感じない」と語る。経済成長の中心が新興国市場に移ってから、中国、南米、アフリカでぶつかるのは韓国の現代自動車だという。
ダイナミズムがない 出井伸之・ソニー元会長
――日本企業はこの20年で地盤沈下したが、なかでも目立つのがエレクトロニクスの失速だ。
「日本の電機の勢いはソニーと松下電器産業(現パナソニック)が家庭用VTRで『ベータ対VHS』の規格争いを繰り広げたころがピークだった。1980年代限りで日本の時代は終わったのではないか。それ以降、デジタルエレクトロニクスの時代が来たが、日本からはグーグルやアマゾンのようなグローバルなIT企業が1社も生まれていない」
「一方で、軽い組み立て系の企業はまだ多く残っている。欧米でもかつては米RCAや独テレフンケンといった家電メーカーがたくさんあったが、今はなくなってしまっている。日本は古い産業が残りすぎだ」
――何が原因か。
「日本の産業構造はいつの間にか非常に硬直的になってしまった。年功序列や終身雇用の慣行は基本的に揺らいでおらず、『会社をつぶさないこと』が美徳だと思われている。銀行や半導体の業界で起こったように、経営がいよいよダメになると、合併で生き残ろうとするが、その場合でも思い切ったリストラには踏み込めず、M&Aの利益が享受できない。一言でいえば、古い企業を捨て、新しい企業を生み出すダイナミズムが欠落している」
――企業の経営の方向性に問題があるのか。
「国内市場のシェアを気にしすぎるのも、日本企業の問題点だ。国内では手広く事業をする一方、世界市場をにらんだ発想が弱い。例えば、半導体製造受託最大手のTSMCなどは創業時から世界展開を狙っていたが、日本ではそんな企業が少ない」
――かつて出井さんが率いたソニーは、携帯音楽プレーヤーで米アップルに遅れを取った。
「ソニー時代のことはあまり話す立場にないが、一般論でいえば、日本人全体にコンピューター・リテラシーが十分ではない。パソコンを通じて音楽を取り込むという、そもそもの発想が薄かった」
――政府には何を望むか。
「企業が育つ土壌をどうやってつくるのか、日本政府は考えたことがあるのだろうか。高い法人税や各種のこまごました規制はビジネスの大きな障壁だ。官僚をたたけばたたくほど、官僚は新たな規制や細則をつくり、官僚の力が強くなるというのが日本の特徴だ。その結果、日本に本社を置くコストは非常に高くつくようになった」
産業育成、戦略があいまい 西室泰三・東芝相談役
――この20年で最大の変化は何でしょう。
「韓国を筆頭に、東アジアの国や地域が台頭した。特に韓国は国の意志として日本に目標を定め、国づくりを進めた。エレクトロニクス産業はその中心に座り、政府と財閥が一体で育成を進めた」
「30年ほど前、サムスン電子の首脳から、ある家電分野に参入していいものかと相談を受けた。日本のシェアが世界の過半を握っていた分野であり、どう考えても当時の韓国に勝ち目はなかった。私は『やめた方がいい』と進言したが、彼は少し間をおいて『やっぱりやらせてもらいます。これはサムスンの採算の問題ではなく、国家の問題です』と答えた」
「1983年にはこんな光景にも出くわした。サムスンが初めて半導体のDRAM工場を立ち上げ、日本から唯一、私が招かれた。政府からは当時の全斗煥大統領が列席し、極めて短期間で竣工にこぎつけたサムスンのトップにその場で勲章を授与した。半導体も家電もみな国家戦略の位置づけだということがよく分かった」
――韓国は90年代に国際通貨基金(IMF)ショックを経験しました。
「過酷な条件を受け入れたが、企業はそれで強くなった。例えばサムスンは社員の数を5万人から3万人に減らした。40歳以上は役員を除き、原則解雇した。良い悪いは別にして、日本で人員を急激に減らそうとしたら、時間も費用も随分かかる。韓国は危機をてこに、政府主導で企業の体質やカルチャーを一気に変えることができた」
――日本の電機はこの20年、どうだったのでしょうか。
「リーマン・ショック以降、政府が成長戦略を主導していくと言い始めたが、それまでは国家戦略のようなものを欠いていた。電機大手は個々の企業益で事業を展開し、適度に国内市場が大きかったことで、メーカーの数も多いまま、産業全体で低収益構造を温存してしまった。」
――日本の技術がアジアにたくさん流出した点はどうでしょう。
「DVDの規格を日本主導で決めたあたりから加速した。日本側がやや理想に走り、技術をオープンにし過ぎた面もある。サムスンなどに対し、日本企業が『育てる』ことを目的に、技術を供与・開示してきたこともそうだ。それらが正しい判断だったかというと、私個人はしなくてよかったのではないかと考えている。国家戦略もなく、野放しにライバル企業を強くしてしまった」
――日本の電機産業が21世紀を勝ち抜くのに必要なことは。
「徹底的に最先端分野を切り開き、政府もそれをサポートすることだ。全体を見渡して、日本がまだ優位性を持つのはエレクトロニクス製品の製造装置や高機能材料だ。例えば、太陽電池、リチウムイオン電池の関連技術は日本の強みとして、韓国や中国の浸食を許してはならない」
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スマートフォンの時代 国内勢、海外に再進出 自らリスク、現地に密着
シャープと米マイクロソフトが組み、欧米市場への投入を発表したスマートフォン(高機能携帯電話)「KIN(キン)」。5月の発売から2カ月足らずで販売中止に追い込まれた。
シャープが中国市場に投入するスマートフォン
交流サイト(SNS)を利用する若年層を顧客に想定。価格も最大100ドルに抑えたが、米通信大手のベライゾンが販売不振から取り扱いを中止。これを見た英ボーダフォンも発売前に欧州での販売を取りやめた。
事業モデル転換
海外市場のハードルは高い。そこに日本の携帯電話メーカーが再び挑む。10月1日に携帯電話事業を統合する富士通と東芝。カシオ計算機、日立製作所、NECの携帯部門が合流したNECカシオモバイルコミュニケーションズ。三洋電機の携帯事業を買収した京セラ。再編で世界で戦う準備を進めてきた。
これまで国内メーカーは日本仕様の高機能機の開発を優先、日本市場にとどまっていても販売リスクは通信会社が負うため事業が成り立った。しかし、パソコンのように世界標準のソフトなどが使えるスマートフォンの登場がこの事業モデルに転換を迫る。「メーカーとの関係は弱まっていく」(NTTドコモの辻村清行副社長)と通信会社も方針を転換。米アップルや韓国サムスン電子など海外勢が国内に進出してくるだけに国内勢も海外市場を狙うしかない。
シャープは月内にも中国市場でスマートフォン2機種を発売する。価格は売れ筋の3万~4万円。生産を外部委託するほか、主要部品の液晶パネルも外部調達する。パーソナルソリューション事業推進本部の今矢明彦本部長は「競争の激しい中国市場ではユニークなうえ安価な端末が必要だ」と話す。
KINで得た教訓は販売戦略に生かす。通信会社依存の販売をやめ、販路に現地の量販店や大手代理店を使う。店舗には担当者を派遣する徹底ぶり。中国での当面の販売目標は年500万台だ。
NECカシオは2012年度の世界販売を1.6倍の1200万台に増やす目標を掲げる。北中米、オーストラリアで拡販を狙う同社の販売手法はシャープの逆。旧カシオが持っていた現地通信会社の販路を活用する。
NECは中国市場で失敗、06年に撤退した過去がある。当時、現地法人で携帯電話を担当していたのはNECカシオの山崎耕司社長。日本仕様の機能にこだわったことに加え、「現地量販店に言われるまま出荷し、在庫を積み上げてしまった」とふり返る。
「通信会社は販売量を定期的に報告するが、海外量販店では情報が正確に伝わらないケースがある」(携帯電話会社幹部)。シャープが販売店に担当者を派遣するのはこのリスクを避ける狙いもあるようだ。
世界と大きい差
野村総合研究所の小林慎和上級コンサルタントは海外市場で世界大手と戦うための条件として「販売網、ブランド力、コスト競争力の3つを磨くこと」と指摘する。
フィンランドのノキア(年間出荷4億3000万台)、サムスン電子(同2億台)、韓国LG電子(同1億台)。これに対し日本勢はトップの京セラでも1300万台。南米進出や北米でのスマートフォン投入を急ぐが差は大きい。3つの条件を満たそうと国内メーカーの試行錯誤が続く。
<パナソニック>楽天と提携 次世代テレビ開発へ
パナソニックが楽天と提携し、電子商取引に対応した次世代の薄型テレビを共同開発することが2日、明らかになった。プラズマテレビ「ビエラ」を大容量インターネットに接続し、簡単なリモコン操作で商品を購入できる機能を開発。パソコンのような複雑な操作をしなくても、国内最大のインターネット商店街「楽天市場」を高画質のテレビ動画で楽しめ、リモコンで商品を注文できるようにする。共同開発の次世代テレビは国内外で11年末に発売する。
両社は10月上旬に発表する。パナソニックは家族が集まる居間の中心に位置するテレビとリモコンの機能を高め、パソコンよりも簡単に使いこなせる先端機器とすることを目指している。03年にネットに接続できる薄型テレビを発売し、検索などパソコンに近い機能をテレビに持たせたところ、居間で電子商取引を楽しむ家族のニーズが高いことが判明。この分野のノウハウをもつ楽天に共同開発を打診した。
これに対して、楽天は「パナソニックのブランド力を借りて世界進出を拡大するチャンス」と快諾。楽天市場は食料品や化粧品など幅広い業種の約3万3000店が出店し、会員は全国に約6500万人いるものの、20~30歳代がユーザーの中心で、50歳代以上の顧客開拓が課題となっていた。テレビとリモコンの操作なら、パソコンになじみの薄い富裕層の中高年層も取り込めると判断した。
現在のパソコンは動画よりも静止画が中心。テレビであれば大量の動画配信が可能となり、パナソニックが得意とする3D(三次元)など高画質・大画面の動画でネットショッピングを楽しむことができる。楽天はビエラ向けに特化した楽天市場の配信も検討しており、専門チャンネルのテレビ通販などと合わせ、楽天が目指す「放送と通信の融合」が進む可能性がある。
楽天市場の売上高は8002億円(09年度)で、大手百貨店に匹敵する。居間で子どもからお年寄りまで、テレビを見ながらのネットショッピングが一般化すれば、将来的に日常の買い物もテレビのリモコンで済ますことができ、新たな「流通革命」が起きる可能性もある。
TSUTAYAレンタルDVD枚数過去最高も売上横ばい 中古本事業参入など生き残り戦略図る
東京都に本社を置くカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)は9月23日、全国で展開するTSUTAYAでレンタルしたDVDの枚数を集計した結果、2010年8月のDVD月間レンタル枚数が、6,212万609枚と史上最高記録を更新したと発表した。
これにより2010年1月から8月までのレンタル枚数は4億3000万枚を超え、2010年の年間のレンタル枚数も、過去最高の7億枚を突破し、過去最高の伸びとなる見込みだという。
同社ではこの要因として、「美男<イケメン>ですね。」をはじめとする韓国テレビドラマ作品のレンタル枚数が過去最高を記録するなど、10代~60代まで幅広い年代の方から視聴につながったことを挙げている。また「ジャガーノート」など、知る人ぞ知る面白い作品を発掘して提案する「TSUTAYA発掘良品」の展開作品のレンタルが、50代~60代のプレミアエイジの方を中心に強い支持を得ているという。
一方で、8月の既存店の売上高前年比で見ると、海外TVドラマの商品不足や旧作レンタル料金の価格引き下げ等の影響から、映像レンタル全体では前年比94.1%となっている。音楽レンタル全体では前年比111.1%。これらにコミックレンタルなどを含めたレンタル全体では98.0%となったと発表。このような背景からか、最近店舗によっては、韓流ドラマゾーンのスペースが依然より拡大しているようだとのユーザーの声も上がっている。
さらに、24日には中古本買取・販売を行う「ecobooks(エコブックス)」の1号店をTSUTAYA横浜みなとみらい店(神奈川県横浜市)内にオープンした。中古本事業を本格的に開始し、2010年度中に10店舗、今後5年以内に200店舗に展開する予定。
不況が続く中、TSUTAYAはレンタル業界での生き残りをかけて、韓流ゾーンの充実や中古買取・販売市場への進出など、さまざまな手を打っているようだ。
JTは無煙タイプ増産、コンビニは脱たばこ急ぐ
たばこ増税に伴い、1日からたばこが大幅値上げされた。過去最大の値上げとなったことで駆け込み需要が生まれ、今年度のたばこ税収は当初想定より増える見通しだ。一方、たばこ会社や販売店は、影響食い止めに躍起となっている。
財務省によると、2010年度のたばこ税収(国税と地方税の合計)は1兆9734億円の見込み。販売本数が前年度比17%減の1946億本に落ち込むが、単価が上がるため、値上げをしないと仮定した場合に比べ631億円の増収になるという。
ただ、前年度と比べると557億円の減少で、4年連続減となる見通しで、1990年度以来、20年ぶりに2兆円の大台を割り込みそうだ。
大幅値上げに伴う販売減が懸念される日本たばこ産業(JT)は、新商品の強化で愛煙家のつなぎとめを狙っている。
その切り札が無煙たばこ「ゼロスタイル・ミント」だ。「かぎたばこ」に分類され、国内での普及率はほぼゼロだった。
しかし、今年5月、都内限定で販売したところ、予想を上回る人気を博し、品薄状態が続いている。11月中にも増産体制を整え、パッケージのデザインも一新する計画で、同様の商品開発も急ぐ考えだ。たばこが主力商品のコンビニは、「たばこ以外の商品でお客を集められるかが勝負」(セブン―イレブン)として、脱たばこ戦略を急いでいる。高価格帯の自主企画商品(PB)の投入や高級デザートなどを強化し、年末までにはたばこ増税に伴うマイナスを取り戻したい考えだ。
駐日米大使 ツイッター発信開始
ルース駐日米大使は1日、ミニブログ「ツイッター」による発信を始めた。日本各地で見聞したことを自ら携帯情報端末に打ち込みリアルタイムでつぶやく。同大使はシリコンバレーで25年のキャリアを持つ企業弁護士出身でIT(情報技術)は得意分野だ。
【中日社説】
ドラゴンズ優勝 熱気を次につなげたい
2010年10月2日
白熱の競り合いにわいた今季のプロ野球に、ひとまず決着がついた。この熱気をポストシーズンゲーム、さらに来季へとつなげて、人気再興への軌道を確かなものとしてほしい。
一日、中日ドラゴンズのセ・リーグ制覇が決まった。パ・リーグは福岡ソフトバンクホークスが優勝を決めており、両リーグともまれに見る激戦となったレギュラーシーズンにようやく決着がついた。見ごたえあるシーズンだったと言っていい。
セは中日、阪神、巨人の三つどもえの優勝争い。パは五球団が小差でひしめき合う大混戦。今季はどちらも最終盤まで激しい競り合いが続いた。パは、一時優位に立った埼玉西武を最後にソフトバンクが大逆転するという劇的な展開。クライマックスシリーズ(CS)出場をかけた三位争いも、どう転ぶかわからない戦いでファンをハラハラドキドキさせた。
一方、セも上位三チームが一歩も譲らぬ大接戦を繰り広げた。中日は、百四十三試合を戦い、あと一試合のみを残す大詰めで優勝を決めた。最後の最後まで息をのむようなデッドヒートが演じられたのである。
ファンにとってはこたえられないシーズンとなったに違いない。何といっても白熱の競り合いほど勝負を面白くするものはない。それも、独自の個性や特長を持った多くのチームが頂点目指して互角の戦いを繰り広げることになれば、見る側はいっそう熱くなれる。それこそが長いペナントレースの醍醐味(だいごみ)というものだ。
この熱気を、ぜひともこれから始まるCS、日本シリーズへとつなげたい。そして来季は、それこそ全チームが上位争いから一歩も引かないような戦いを見せてほしい。そんなシーズンが実現できれば、間違いなく人気復活への大きな一歩となるはずだ。
グラウンド外の課題、難題は相変わらずだ。球団の経営問題。テレビ放映減少に象徴される注目度の低下。米メジャーリーグへのスター流出。対する改革はなかなか具体的に進まず、ここへ来てまたしても球団売却の動きも出てきている。
とはいえ、ファンを否応(いやおう)なくひきつける大熱戦は、必ずや上昇への突破口となり得る。個性を生かした多くのチームの競り合いは、共存共栄の将来像にもつながっていくだろう。改革と熱戦の両輪を、どちらも欠けることなく、力強く進めてほしい。
シャープと米マイクロソフトが組み、欧米市場への投入を発表したスマートフォン(高機能携帯電話)「KIN(キン)」。5月の発売から2カ月足らずで販売中止に追い込まれた。
シャープが中国市場に投入するスマートフォン
交流サイト(SNS)を利用する若年層を顧客に想定。価格も最大100ドルに抑えたが、米通信大手のベライゾンが販売不振から取り扱いを中止。これを見た英ボーダフォンも発売前に欧州での販売を取りやめた。
事業モデル転換
海外市場のハードルは高い。そこに日本の携帯電話メーカーが再び挑む。10月1日に携帯電話事業を統合する富士通と東芝。カシオ計算機、日立製作所、NECの携帯部門が合流したNECカシオモバイルコミュニケーションズ。三洋電機の携帯事業を買収した京セラ。再編で世界で戦う準備を進めてきた。
これまで国内メーカーは日本仕様の高機能機の開発を優先、日本市場にとどまっていても販売リスクは通信会社が負うため事業が成り立った。しかし、パソコンのように世界標準のソフトなどが使えるスマートフォンの登場がこの事業モデルに転換を迫る。「メーカーとの関係は弱まっていく」(NTTドコモの辻村清行副社長)と通信会社も方針を転換。米アップルや韓国サムスン電子など海外勢が国内に進出してくるだけに国内勢も海外市場を狙うしかない。
シャープは月内にも中国市場でスマートフォン2機種を発売する。価格は売れ筋の3万~4万円。生産を外部委託するほか、主要部品の液晶パネルも外部調達する。パーソナルソリューション事業推進本部の今矢明彦本部長は「競争の激しい中国市場ではユニークなうえ安価な端末が必要だ」と話す。
KINで得た教訓は販売戦略に生かす。通信会社依存の販売をやめ、販路に現地の量販店や大手代理店を使う。店舗には担当者を派遣する徹底ぶり。中国での当面の販売目標は年500万台だ。
NECカシオは2012年度の世界販売を1.6倍の1200万台に増やす目標を掲げる。北中米、オーストラリアで拡販を狙う同社の販売手法はシャープの逆。旧カシオが持っていた現地通信会社の販路を活用する。
NECは中国市場で失敗、06年に撤退した過去がある。当時、現地法人で携帯電話を担当していたのはNECカシオの山崎耕司社長。日本仕様の機能にこだわったことに加え、「現地量販店に言われるまま出荷し、在庫を積み上げてしまった」とふり返る。
「通信会社は販売量を定期的に報告するが、海外量販店では情報が正確に伝わらないケースがある」(携帯電話会社幹部)。シャープが販売店に担当者を派遣するのはこのリスクを避ける狙いもあるようだ。
世界と大きい差
野村総合研究所の小林慎和上級コンサルタントは海外市場で世界大手と戦うための条件として「販売網、ブランド力、コスト競争力の3つを磨くこと」と指摘する。
フィンランドのノキア(年間出荷4億3000万台)、サムスン電子(同2億台)、韓国LG電子(同1億台)。これに対し日本勢はトップの京セラでも1300万台。南米進出や北米でのスマートフォン投入を急ぐが差は大きい。3つの条件を満たそうと国内メーカーの試行錯誤が続く。
<パナソニック>楽天と提携 次世代テレビ開発へ
パナソニックが楽天と提携し、電子商取引に対応した次世代の薄型テレビを共同開発することが2日、明らかになった。プラズマテレビ「ビエラ」を大容量インターネットに接続し、簡単なリモコン操作で商品を購入できる機能を開発。パソコンのような複雑な操作をしなくても、国内最大のインターネット商店街「楽天市場」を高画質のテレビ動画で楽しめ、リモコンで商品を注文できるようにする。共同開発の次世代テレビは国内外で11年末に発売する。
両社は10月上旬に発表する。パナソニックは家族が集まる居間の中心に位置するテレビとリモコンの機能を高め、パソコンよりも簡単に使いこなせる先端機器とすることを目指している。03年にネットに接続できる薄型テレビを発売し、検索などパソコンに近い機能をテレビに持たせたところ、居間で電子商取引を楽しむ家族のニーズが高いことが判明。この分野のノウハウをもつ楽天に共同開発を打診した。
これに対して、楽天は「パナソニックのブランド力を借りて世界進出を拡大するチャンス」と快諾。楽天市場は食料品や化粧品など幅広い業種の約3万3000店が出店し、会員は全国に約6500万人いるものの、20~30歳代がユーザーの中心で、50歳代以上の顧客開拓が課題となっていた。テレビとリモコンの操作なら、パソコンになじみの薄い富裕層の中高年層も取り込めると判断した。
現在のパソコンは動画よりも静止画が中心。テレビであれば大量の動画配信が可能となり、パナソニックが得意とする3D(三次元)など高画質・大画面の動画でネットショッピングを楽しむことができる。楽天はビエラ向けに特化した楽天市場の配信も検討しており、専門チャンネルのテレビ通販などと合わせ、楽天が目指す「放送と通信の融合」が進む可能性がある。
楽天市場の売上高は8002億円(09年度)で、大手百貨店に匹敵する。居間で子どもからお年寄りまで、テレビを見ながらのネットショッピングが一般化すれば、将来的に日常の買い物もテレビのリモコンで済ますことができ、新たな「流通革命」が起きる可能性もある。
TSUTAYAレンタルDVD枚数過去最高も売上横ばい 中古本事業参入など生き残り戦略図る
東京都に本社を置くカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)は9月23日、全国で展開するTSUTAYAでレンタルしたDVDの枚数を集計した結果、2010年8月のDVD月間レンタル枚数が、6,212万609枚と史上最高記録を更新したと発表した。
これにより2010年1月から8月までのレンタル枚数は4億3000万枚を超え、2010年の年間のレンタル枚数も、過去最高の7億枚を突破し、過去最高の伸びとなる見込みだという。
同社ではこの要因として、「美男<イケメン>ですね。」をはじめとする韓国テレビドラマ作品のレンタル枚数が過去最高を記録するなど、10代~60代まで幅広い年代の方から視聴につながったことを挙げている。また「ジャガーノート」など、知る人ぞ知る面白い作品を発掘して提案する「TSUTAYA発掘良品」の展開作品のレンタルが、50代~60代のプレミアエイジの方を中心に強い支持を得ているという。
一方で、8月の既存店の売上高前年比で見ると、海外TVドラマの商品不足や旧作レンタル料金の価格引き下げ等の影響から、映像レンタル全体では前年比94.1%となっている。音楽レンタル全体では前年比111.1%。これらにコミックレンタルなどを含めたレンタル全体では98.0%となったと発表。このような背景からか、最近店舗によっては、韓流ドラマゾーンのスペースが依然より拡大しているようだとのユーザーの声も上がっている。
さらに、24日には中古本買取・販売を行う「ecobooks(エコブックス)」の1号店をTSUTAYA横浜みなとみらい店(神奈川県横浜市)内にオープンした。中古本事業を本格的に開始し、2010年度中に10店舗、今後5年以内に200店舗に展開する予定。
不況が続く中、TSUTAYAはレンタル業界での生き残りをかけて、韓流ゾーンの充実や中古買取・販売市場への進出など、さまざまな手を打っているようだ。
JTは無煙タイプ増産、コンビニは脱たばこ急ぐ
たばこ増税に伴い、1日からたばこが大幅値上げされた。過去最大の値上げとなったことで駆け込み需要が生まれ、今年度のたばこ税収は当初想定より増える見通しだ。一方、たばこ会社や販売店は、影響食い止めに躍起となっている。
財務省によると、2010年度のたばこ税収(国税と地方税の合計)は1兆9734億円の見込み。販売本数が前年度比17%減の1946億本に落ち込むが、単価が上がるため、値上げをしないと仮定した場合に比べ631億円の増収になるという。
ただ、前年度と比べると557億円の減少で、4年連続減となる見通しで、1990年度以来、20年ぶりに2兆円の大台を割り込みそうだ。
大幅値上げに伴う販売減が懸念される日本たばこ産業(JT)は、新商品の強化で愛煙家のつなぎとめを狙っている。
その切り札が無煙たばこ「ゼロスタイル・ミント」だ。「かぎたばこ」に分類され、国内での普及率はほぼゼロだった。
しかし、今年5月、都内限定で販売したところ、予想を上回る人気を博し、品薄状態が続いている。11月中にも増産体制を整え、パッケージのデザインも一新する計画で、同様の商品開発も急ぐ考えだ。たばこが主力商品のコンビニは、「たばこ以外の商品でお客を集められるかが勝負」(セブン―イレブン)として、脱たばこ戦略を急いでいる。高価格帯の自主企画商品(PB)の投入や高級デザートなどを強化し、年末までにはたばこ増税に伴うマイナスを取り戻したい考えだ。
駐日米大使 ツイッター発信開始
ルース駐日米大使は1日、ミニブログ「ツイッター」による発信を始めた。日本各地で見聞したことを自ら携帯情報端末に打ち込みリアルタイムでつぶやく。同大使はシリコンバレーで25年のキャリアを持つ企業弁護士出身でIT(情報技術)は得意分野だ。
【中日社説】
ドラゴンズ優勝 熱気を次につなげたい
2010年10月2日
白熱の競り合いにわいた今季のプロ野球に、ひとまず決着がついた。この熱気をポストシーズンゲーム、さらに来季へとつなげて、人気再興への軌道を確かなものとしてほしい。
一日、中日ドラゴンズのセ・リーグ制覇が決まった。パ・リーグは福岡ソフトバンクホークスが優勝を決めており、両リーグともまれに見る激戦となったレギュラーシーズンにようやく決着がついた。見ごたえあるシーズンだったと言っていい。
セは中日、阪神、巨人の三つどもえの優勝争い。パは五球団が小差でひしめき合う大混戦。今季はどちらも最終盤まで激しい競り合いが続いた。パは、一時優位に立った埼玉西武を最後にソフトバンクが大逆転するという劇的な展開。クライマックスシリーズ(CS)出場をかけた三位争いも、どう転ぶかわからない戦いでファンをハラハラドキドキさせた。
一方、セも上位三チームが一歩も譲らぬ大接戦を繰り広げた。中日は、百四十三試合を戦い、あと一試合のみを残す大詰めで優勝を決めた。最後の最後まで息をのむようなデッドヒートが演じられたのである。
ファンにとってはこたえられないシーズンとなったに違いない。何といっても白熱の競り合いほど勝負を面白くするものはない。それも、独自の個性や特長を持った多くのチームが頂点目指して互角の戦いを繰り広げることになれば、見る側はいっそう熱くなれる。それこそが長いペナントレースの醍醐味(だいごみ)というものだ。
この熱気を、ぜひともこれから始まるCS、日本シリーズへとつなげたい。そして来季は、それこそ全チームが上位争いから一歩も引かないような戦いを見せてほしい。そんなシーズンが実現できれば、間違いなく人気復活への大きな一歩となるはずだ。
グラウンド外の課題、難題は相変わらずだ。球団の経営問題。テレビ放映減少に象徴される注目度の低下。米メジャーリーグへのスター流出。対する改革はなかなか具体的に進まず、ここへ来てまたしても球団売却の動きも出てきている。
とはいえ、ファンを否応(いやおう)なくひきつける大熱戦は、必ずや上昇への突破口となり得る。個性を生かした多くのチームの競り合いは、共存共栄の将来像にもつながっていくだろう。改革と熱戦の両輪を、どちらも欠けることなく、力強く進めてほしい。
スマートフォンの時代 携帯3社、揺らぐ主導権 iモード型事業に限界
「失敗してもいい。スマートフォン(高機能携帯電話)をそろえろ」――。今年6月、KDDI社内に小野寺正社長兼会長の号令が飛んだ。スマートフォンに乗り遅れたKDDI。小野寺社長も自ら韓国に出向き、めぼしい端末を探しに現地メーカーを飛び回った。
ソフトバンクモバイルが米アップルの「iPhone(アイフォーン)」を発売した2008年。「テンキーで日本語を入力するのに慣れた日本市場にスマートフォンは合わない」と語っていた小野寺社長。今年9月、田中孝司専務が12月1日付で社長に昇格する人事を発表した記者会見では「従来型携帯に固執した面がある」と反省の弁が漏れた。
メーカー優位に
携帯電話各社がスマートフォンの調達を急いでいる。ソフトバンクはアイフォーン人気を背景に順調に加入者を増やす。今年度に入り契約純増数は5カ月連続トップでNTTドコモの2倍近い。スマートフォンの競争力が加入者獲得を左右する時代になった。
ドコモはアイフォーンの獲得競争に敗れてから対抗機種探しに奔走。開発を依頼した先は取引が一時中断していた英ソニー・エリクソンだった。今年4月に同社製「エクスペリア」を発売。今年10月には韓国サムスン電子、来春までに韓国LG電子など機種を増やす。
他社回線を借りてサービスを提供する日本通信。8月から新型アイフォーンをドコモ回線で使えるSIM(契約者識別モジュール)カードを発売した。新型アイフォーンは通信会社制限のない輸入品を使う。このサービスにはちょっとした事情がある。
「見切り発車でもかまわない」。今年春、ドコモの山田隆持社長はアップルの多機能端末「iPad(アイパッド)」の販売権獲得を狙い、事前に2万枚のSIMカードを調達。アップルにアピールした。結局、アイパッドもソフトバンクが獲得。無駄になるはずだった2万枚のSIMカードを日本通信に提供した。
かつて、メーカーを従え端末開発を主導してきた携帯電話会社の姿はない。ソニー・エリクソンの坂口立考副社長は「日本でしか売れない製品を作るのは経営上難しい。スマートフォンは世界商品だから日本に提供できた」と話す。
新収益源探る
スマートフォンが増えるほど携帯電話会社には別の悩みが生まれる。アップルの「アップストア」などスマートフォンで使うソフト配信サービスはメーカーが押さえる。収益性の高い「iモード」のような自らコンテンツを提供・課金する事業が成り立たず、携帯電話会社は回線だけの提供にとどまりかねない。「通信会社はユーザーを囲い込めなくなる」(バークレイズ・キャピタル証券の津坂徹郎アナリスト)
ソフトバンクの孫正義社長は新30年ビジョンを公表し「将来、携帯電話がグループの中核事業にあるとは限らない」と明言した。動画共有サイトの米ユーストリームへの出資など次の事業探しを続ける。
ドコモは通信回線上で自ら手がけられる付加価値サービスのタネを探そうと、米西海岸にある現地法人を拠点にネットベンチャーのリサーチに力を入れる。携帯電話各社はスマートフォン時代の明確な将来像をまだ描けていない。
新車、補助終了で急減速 冷え込み想定以上
9月登録車販売14カ月ぶり減 ホンダ・トヨタ、受注4割減
「エコカー補助金」制度の終了を受け、国内の新車販売に急ブレーキがかかっている。ハイブリッド車を中心に駆け込み需要の反動が大きく、9月の登録車(排気量660cc超)の販売台数は前年同月比4.1%減と、14カ月ぶりのマイナスとなった。減少に転じるのは10月からとの見方もあったが、制度が9月7日に打ち切られて以降、販売店から客足が遠のいた。想定を上回る冷え込みが続けば、景気の下押し要因となりそうだ。
「惨たんたる状況です」。名古屋市にあるトヨタ自動車の販売店は9月後半の状況をこう話す。週末も店を訪れるのは修理や点検の客が大半。新車目当ての客はぱったり途絶えたという。
日本自動車販売協会連合会(自販連)によると、9月の登録車の販売台数は4.1%減の30万8663台。補助金の効果が大きかった小型乗用車は、12.2%減の13万7728台だった。
補助金申請が殺到した1~7日は前年比で3倍となる約6万3000台を販売したが、中旬以降の不振が帳消しにした。「予想以上に早く反動減が表れた」(自販連)との受け止め方が多い。
9月の軽自動車の販売台数は4.6%増の16万3291台。9カ月連続の増加となったが「月の前半の貯金でなんとかプラスを確保した」(全国軽自動車協会連合会)。登録車と軽を合わせた総販売台数は0.1%減の47万1954台で、13カ月ぶりの減少だった。
ブランド別の販売ではトヨタ(レクサス除く)が6.9%減、ホンダが8.1%減。ハイブリッド車などエコカー比率の高いメーカーほど影響が大きい。日産自動車は6.8%増とプラスを維持した。7月に発売したタイ生産の小型車「マーチ」の好調が下支えした。
10月以降はさらに厳しい状況が予想される。ホンダでは9月の系列販売店の総受注台数が、前年同月比で約4割減少した。トヨタ(レクサス除く)も4割強減少したもようだ。反動減を最小限に食い止めようと、販売てこ入れに懸命だ。
ホンダは10月初旬、ハイブリッド車としては国内最安値となる159万円で、新型「フィットハイブリッド」を発売する。11月には軽自動車「ライフ」の新型車も出す。ホンダ本体から300人強を全国の販売店に出向させるほか、低金利の自動車ローンも用意する。
日産自動車は1日から、小型車「ティーダ」「キューブ」など3車種を対象に、1台あたり10万円の購入支援を始めた。
だが生産への影響は避けられない。9月の販売が2割減少したマツダは、広島県の本社工場と山口県の防府工場に合計4つある生産ラインのうち、10月は3ラインで休日出勤をゼロにする。9月は全ラインで休日出勤を実施したが、市場の急変を受けて減産する。トヨタも10月の国内生産台数は1日当たり、9月比で2割減の1万2000台程度とする方針だ。
ドコモとパイオニア、スマートフォンをカーナビとして利用
NTTドコモとパイオニアはスマートフォンをカーナビゲーションシステムとして使えるサービスを始める。ドコモのスマートフォンに専用のアプリケーションソフトを組み込み、携帯回線を使って道案内する仕組み。2010年度内のサービス開始を目指す。
パイオニアは自社が保有する地図や渋滞情報などのノウハウを提供。ドコモと共同で専用のアプリに仕立てて、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載したスマートフォンで使えるようにする。
パイオニアはスマートフォンを自動車内に設置しやすくする周辺機器も提供する。
ドコモは10月末から携帯電話回線を使った自動車向けの情報配信サービス「ドコモ ドライブネット」を開始する予定。月額料金は840円からで、専用アプリも同サービスに組み込む見通しだ。
スマートフォンを使ったカーナビサービスでは米アップルの「iPhone(アイフォーン)」向けのアプリが多数開発されており、カーナビの代用として利用者が増えている。携帯電話回線を使ったカーナビではナビタイムジャパンがKDDI(au)と組んで参入している。
ビジネスモデル見えず…岐路に立つスポーツコンテンツ
東京放送(TBS)ホールディングスがプロ野球、横浜ベイスターズの売却を検討していることは、従来のビジネスモデルが成り立たなくなったことを示した。一方、スポーツコンテンツの“集客力”はいまだ健在。多チャンネル化も背景に、スポーツ中継は一つの岐路に立っている。
球団経営に参画することで巨人戦の放映権を取得し、視聴率と球団人気の相乗効果を狙ったTBS。しかし、「夜7時から9時までプロ野球を見るというライフスタイルが変化した」(スポーツジャーナリストの玉木正之氏)ことも影響し、思い描いたプランは瓦解した。
だが、スポーツ中継が、有力なコンテンツである点は変わらない。昨年の年間視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)首位は、TBSが11月末に放送したプロボクシング「内藤大助×亀田興毅戦」の43・1%。以下ワールドベースボールクラシック、全日本フィギュアスケートなど、ベスト10の中にスポーツ6番組がランクインしている。
高い集客力ゆえの問題もある。民放連は9月16日、サッカーW杯南アフリカ大会で民放全体の収支が赤字になったことを明らかにした。「放映権料が大幅に値上がりした。でも買わないわけにいかない」(民放連の広瀬道貞会長)。国際スポーツイベントは、採算度外視とならざるを得ない現状が露呈した。
一方、多チャンネル化によってBSの巨人戦などの存在感は強まり、「スタートから終わりまでみたいというニーズで選ばれている」(日本テレビの舛方勝宏専務)という。視聴者ニーズはあるが、ビジネスモデルが見えない。ジレンマを抱えつつ、放送局の試行錯誤が続いている。
【産経主張】前部長ら逮捕 特捜は存亡をかけ出直せ
大阪地検特捜部の主任検事による証拠改竄(かいざん)事件は、直属の上司だった前特捜部長と同副部長の2人が犯人隠避容疑で逮捕される検察史上最悪の事態となった。
2人は容疑を否認しているというが、事の重大性に思い至らず、もみ消したのなら当然というしかない。職場でのゆがんだ自己保身が生んだ許されざる犯罪で、極めて深刻だ。
検察に対する国民の信頼は、完全に地に落ちた。深夜の記者会見で、伊藤鉄男最高検次長検事は「国民の皆さまに深くおわび申し上げる」と謝罪したが、最高検は事件の背景や動機などを徹底的に解明して、その反省を行動で示さなければならない。
組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)に地検検事正はかかわっていなかったのか。検事総長らの監督責任についても厳しく対処してもらいたい。
特捜部は東京、大阪、名古屋の3地検にしかなく、「最強の捜査機関」とされてきた。特捜部トップの部長は部下の捜査報告に対し、客観証拠など裏付け捜査が十分に尽くされているか検討し、疑問点があれば再捜査を命じるキーマンである。
特捜部は事件の内偵から逮捕・起訴まですべて独自に行う。その半面、検事が力を過信し、独善に陥りやすい弊害も指摘されている。そうした「現場の暴走」を食い止めるのも部長、副部長の重要な役目だ。それが今回、全く機能しなかった。
特に問題なのは、部下から改竄の情報を得ながら、特捜部長も副部長も敏感に反応できなかったことだ。この点だけでも、「法と正義の番人」として失格といわざるを得ない。しかも、2人は主任検事をかばい、もみ消しを図った。自分たちの保身に走った、と批判されても仕方ないだろう。
検察当局は今回の事件を大阪地検だけの問題とせず、検察組織全体の欠陥と受け止め、早急に特捜部捜査のチェック体制などを強化していくことが肝要だ。
絶望的な状況の中で、わずかな希望もある。それは改竄を知った同僚検事らが厳しく告発したことだ。報道によれば「公表すべきだと涙ながらに訴えた」という。
今日の事態に至ってもなお、国民の多くは巨悪を摘発できるのは特捜部しかない、と期待している。検察は存亡をかけて、この声に応えなければ未来はない。
「失敗してもいい。スマートフォン(高機能携帯電話)をそろえろ」――。今年6月、KDDI社内に小野寺正社長兼会長の号令が飛んだ。スマートフォンに乗り遅れたKDDI。小野寺社長も自ら韓国に出向き、めぼしい端末を探しに現地メーカーを飛び回った。
ソフトバンクモバイルが米アップルの「iPhone(アイフォーン)」を発売した2008年。「テンキーで日本語を入力するのに慣れた日本市場にスマートフォンは合わない」と語っていた小野寺社長。今年9月、田中孝司専務が12月1日付で社長に昇格する人事を発表した記者会見では「従来型携帯に固執した面がある」と反省の弁が漏れた。
メーカー優位に
携帯電話各社がスマートフォンの調達を急いでいる。ソフトバンクはアイフォーン人気を背景に順調に加入者を増やす。今年度に入り契約純増数は5カ月連続トップでNTTドコモの2倍近い。スマートフォンの競争力が加入者獲得を左右する時代になった。
ドコモはアイフォーンの獲得競争に敗れてから対抗機種探しに奔走。開発を依頼した先は取引が一時中断していた英ソニー・エリクソンだった。今年4月に同社製「エクスペリア」を発売。今年10月には韓国サムスン電子、来春までに韓国LG電子など機種を増やす。
他社回線を借りてサービスを提供する日本通信。8月から新型アイフォーンをドコモ回線で使えるSIM(契約者識別モジュール)カードを発売した。新型アイフォーンは通信会社制限のない輸入品を使う。このサービスにはちょっとした事情がある。
「見切り発車でもかまわない」。今年春、ドコモの山田隆持社長はアップルの多機能端末「iPad(アイパッド)」の販売権獲得を狙い、事前に2万枚のSIMカードを調達。アップルにアピールした。結局、アイパッドもソフトバンクが獲得。無駄になるはずだった2万枚のSIMカードを日本通信に提供した。
かつて、メーカーを従え端末開発を主導してきた携帯電話会社の姿はない。ソニー・エリクソンの坂口立考副社長は「日本でしか売れない製品を作るのは経営上難しい。スマートフォンは世界商品だから日本に提供できた」と話す。
新収益源探る
スマートフォンが増えるほど携帯電話会社には別の悩みが生まれる。アップルの「アップストア」などスマートフォンで使うソフト配信サービスはメーカーが押さえる。収益性の高い「iモード」のような自らコンテンツを提供・課金する事業が成り立たず、携帯電話会社は回線だけの提供にとどまりかねない。「通信会社はユーザーを囲い込めなくなる」(バークレイズ・キャピタル証券の津坂徹郎アナリスト)
ソフトバンクの孫正義社長は新30年ビジョンを公表し「将来、携帯電話がグループの中核事業にあるとは限らない」と明言した。動画共有サイトの米ユーストリームへの出資など次の事業探しを続ける。
ドコモは通信回線上で自ら手がけられる付加価値サービスのタネを探そうと、米西海岸にある現地法人を拠点にネットベンチャーのリサーチに力を入れる。携帯電話各社はスマートフォン時代の明確な将来像をまだ描けていない。
新車、補助終了で急減速 冷え込み想定以上
9月登録車販売14カ月ぶり減 ホンダ・トヨタ、受注4割減
「エコカー補助金」制度の終了を受け、国内の新車販売に急ブレーキがかかっている。ハイブリッド車を中心に駆け込み需要の反動が大きく、9月の登録車(排気量660cc超)の販売台数は前年同月比4.1%減と、14カ月ぶりのマイナスとなった。減少に転じるのは10月からとの見方もあったが、制度が9月7日に打ち切られて以降、販売店から客足が遠のいた。想定を上回る冷え込みが続けば、景気の下押し要因となりそうだ。
「惨たんたる状況です」。名古屋市にあるトヨタ自動車の販売店は9月後半の状況をこう話す。週末も店を訪れるのは修理や点検の客が大半。新車目当ての客はぱったり途絶えたという。
日本自動車販売協会連合会(自販連)によると、9月の登録車の販売台数は4.1%減の30万8663台。補助金の効果が大きかった小型乗用車は、12.2%減の13万7728台だった。
補助金申請が殺到した1~7日は前年比で3倍となる約6万3000台を販売したが、中旬以降の不振が帳消しにした。「予想以上に早く反動減が表れた」(自販連)との受け止め方が多い。
9月の軽自動車の販売台数は4.6%増の16万3291台。9カ月連続の増加となったが「月の前半の貯金でなんとかプラスを確保した」(全国軽自動車協会連合会)。登録車と軽を合わせた総販売台数は0.1%減の47万1954台で、13カ月ぶりの減少だった。
ブランド別の販売ではトヨタ(レクサス除く)が6.9%減、ホンダが8.1%減。ハイブリッド車などエコカー比率の高いメーカーほど影響が大きい。日産自動車は6.8%増とプラスを維持した。7月に発売したタイ生産の小型車「マーチ」の好調が下支えした。
10月以降はさらに厳しい状況が予想される。ホンダでは9月の系列販売店の総受注台数が、前年同月比で約4割減少した。トヨタ(レクサス除く)も4割強減少したもようだ。反動減を最小限に食い止めようと、販売てこ入れに懸命だ。
ホンダは10月初旬、ハイブリッド車としては国内最安値となる159万円で、新型「フィットハイブリッド」を発売する。11月には軽自動車「ライフ」の新型車も出す。ホンダ本体から300人強を全国の販売店に出向させるほか、低金利の自動車ローンも用意する。
日産自動車は1日から、小型車「ティーダ」「キューブ」など3車種を対象に、1台あたり10万円の購入支援を始めた。
だが生産への影響は避けられない。9月の販売が2割減少したマツダは、広島県の本社工場と山口県の防府工場に合計4つある生産ラインのうち、10月は3ラインで休日出勤をゼロにする。9月は全ラインで休日出勤を実施したが、市場の急変を受けて減産する。トヨタも10月の国内生産台数は1日当たり、9月比で2割減の1万2000台程度とする方針だ。
ドコモとパイオニア、スマートフォンをカーナビとして利用
NTTドコモとパイオニアはスマートフォンをカーナビゲーションシステムとして使えるサービスを始める。ドコモのスマートフォンに専用のアプリケーションソフトを組み込み、携帯回線を使って道案内する仕組み。2010年度内のサービス開始を目指す。
パイオニアは自社が保有する地図や渋滞情報などのノウハウを提供。ドコモと共同で専用のアプリに仕立てて、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載したスマートフォンで使えるようにする。
パイオニアはスマートフォンを自動車内に設置しやすくする周辺機器も提供する。
ドコモは10月末から携帯電話回線を使った自動車向けの情報配信サービス「ドコモ ドライブネット」を開始する予定。月額料金は840円からで、専用アプリも同サービスに組み込む見通しだ。
スマートフォンを使ったカーナビサービスでは米アップルの「iPhone(アイフォーン)」向けのアプリが多数開発されており、カーナビの代用として利用者が増えている。携帯電話回線を使ったカーナビではナビタイムジャパンがKDDI(au)と組んで参入している。
ビジネスモデル見えず…岐路に立つスポーツコンテンツ
東京放送(TBS)ホールディングスがプロ野球、横浜ベイスターズの売却を検討していることは、従来のビジネスモデルが成り立たなくなったことを示した。一方、スポーツコンテンツの“集客力”はいまだ健在。多チャンネル化も背景に、スポーツ中継は一つの岐路に立っている。
球団経営に参画することで巨人戦の放映権を取得し、視聴率と球団人気の相乗効果を狙ったTBS。しかし、「夜7時から9時までプロ野球を見るというライフスタイルが変化した」(スポーツジャーナリストの玉木正之氏)ことも影響し、思い描いたプランは瓦解した。
だが、スポーツ中継が、有力なコンテンツである点は変わらない。昨年の年間視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)首位は、TBSが11月末に放送したプロボクシング「内藤大助×亀田興毅戦」の43・1%。以下ワールドベースボールクラシック、全日本フィギュアスケートなど、ベスト10の中にスポーツ6番組がランクインしている。
高い集客力ゆえの問題もある。民放連は9月16日、サッカーW杯南アフリカ大会で民放全体の収支が赤字になったことを明らかにした。「放映権料が大幅に値上がりした。でも買わないわけにいかない」(民放連の広瀬道貞会長)。国際スポーツイベントは、採算度外視とならざるを得ない現状が露呈した。
一方、多チャンネル化によってBSの巨人戦などの存在感は強まり、「スタートから終わりまでみたいというニーズで選ばれている」(日本テレビの舛方勝宏専務)という。視聴者ニーズはあるが、ビジネスモデルが見えない。ジレンマを抱えつつ、放送局の試行錯誤が続いている。
【産経主張】前部長ら逮捕 特捜は存亡をかけ出直せ
大阪地検特捜部の主任検事による証拠改竄(かいざん)事件は、直属の上司だった前特捜部長と同副部長の2人が犯人隠避容疑で逮捕される検察史上最悪の事態となった。
2人は容疑を否認しているというが、事の重大性に思い至らず、もみ消したのなら当然というしかない。職場でのゆがんだ自己保身が生んだ許されざる犯罪で、極めて深刻だ。
検察に対する国民の信頼は、完全に地に落ちた。深夜の記者会見で、伊藤鉄男最高検次長検事は「国民の皆さまに深くおわび申し上げる」と謝罪したが、最高検は事件の背景や動機などを徹底的に解明して、その反省を行動で示さなければならない。
組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)に地検検事正はかかわっていなかったのか。検事総長らの監督責任についても厳しく対処してもらいたい。
特捜部は東京、大阪、名古屋の3地検にしかなく、「最強の捜査機関」とされてきた。特捜部トップの部長は部下の捜査報告に対し、客観証拠など裏付け捜査が十分に尽くされているか検討し、疑問点があれば再捜査を命じるキーマンである。
特捜部は事件の内偵から逮捕・起訴まですべて独自に行う。その半面、検事が力を過信し、独善に陥りやすい弊害も指摘されている。そうした「現場の暴走」を食い止めるのも部長、副部長の重要な役目だ。それが今回、全く機能しなかった。
特に問題なのは、部下から改竄の情報を得ながら、特捜部長も副部長も敏感に反応できなかったことだ。この点だけでも、「法と正義の番人」として失格といわざるを得ない。しかも、2人は主任検事をかばい、もみ消しを図った。自分たちの保身に走った、と批判されても仕方ないだろう。
検察当局は今回の事件を大阪地検だけの問題とせず、検察組織全体の欠陥と受け止め、早急に特捜部捜査のチェック体制などを強化していくことが肝要だ。
絶望的な状況の中で、わずかな希望もある。それは改竄を知った同僚検事らが厳しく告発したことだ。報道によれば「公表すべきだと涙ながらに訴えた」という。
今日の事態に至ってもなお、国民の多くは巨悪を摘発できるのは特捜部しかない、と期待している。検察は存亡をかけて、この声に応えなければ未来はない。
三重苦にあえぐ任天堂が「ニンテンドー3DS」でも勝つ日
大安吉日だった9月29日は、任天堂関係者にとって悪夢のような一日になった。満を持して開催したはずの発表会中に、「ニンテンドー3DS」の誤報が元で株価が乱高下。そして、円高に加えて、3DSの発売日が来年の2月26日に決定したことを受けて、2011年3月期の連結売上高を1兆4000億円から1兆1000億円に、純利益を2000億円から900億円にそれぞれ下方修正すると発表、翌日も株価を下げた。①ソフトメーカーの体力不足、②任天堂ハード市場のバランスの悪さ、③外部環境の悪化、という三重苦を抱えた任天堂は、将来も業界のリーディングカンパニーであり続けられるのか。
任天堂の岩田聡社長は9月29日、同社のプレス向け発表会で、新型携帯用ゲーム機「ニンテンドー3DS」の日本での発売を2月26日、価格を2万5000円と発表した。ところが、その直後株価が急落。2時半過ぎには2万5000円まで急伸した株価が、3時には2万3000円まで急降下した。
この状況を会場内で耳にしたある業界関係者は「3DSの値段が高いということなのだろうか」と心配顔をしていた。確かに、マイクロソフトが11月20日に発売する、コントローラなしで遊べる家庭用ゲーム機「Xbox 360 4GB + キネクト(Kinect)」が2万9800円であることを考えると、「携帯ゲーム機に2万5000円は出せない」と考える人もいるだろう。
だが、この株価乱高下劇の原因は違っていた。実は2時半の時点で株価が急伸したのは一部報道が、「スーパーマリオ25周年記念バージョン ニンテンドーDSi LL」の「10月28日発売、価格は1万8000円」を3DS情報として間違えて誤報したことで、機関投資家などの大量の買い注文が入ったためだという。そして、岩田社長が発表会のステージ上で正式価格と発売日を発表した段階で、急落した。株価が下がるにしても上がるにしても、市場が誤報に振り回されたことに対して、任天堂関係者はやりきりない思いなのではないか。
今回の「ニンテンドー3DS」に関しては、報道合戦が繰り広げられていた。たとえば、公式発表2日前の27日にはドイツの日刊紙が「日本の発売日は11月11日、価格は200ユーロ(約2万2800円、1ユーロ114円計算)」と報道。ハード同時発売ソフトまで記載する手の込みようだった。ただし、この誤報の情報源は解雇を不服とする元開発系業界関係者という話もあるので、日刊紙側を責めるのは酷だろう。
ちなみに、ゲーム業界の場合、新ハードなどの機密情報は他業界と比較すると漏れやすい。たとえば、ソニーは携帯ゲーム機「PSPgo」の本体写真が事前に流出するなど、通常のビジネスシーンではありえない状況が起きた。3DSに関しては、事前報道が全部間違っていたことを考えると、任天堂は今回の情報管理に関しては面目を保ったと言えるだろう。
妙だったのは、株価だけでなく任天堂が開催した発表会会場も同様だった。通常、任天堂の発表会といえば熱気に溢れる感じになるのだが、どこかひんやりと冷めていた。
その空気の理由として、任天堂の2011年3月期通期予想の下方修正発表を挙げる向きもあるが、その必要性は7月の時点で指摘されており、修正が時間の問題であったことは業界関係者ならば周知の事実だ。それに、任天堂が業績を下方修正したところで、人の財布の心配をしている余裕は、現在のゲーム業界には全くない。自動車業界でいえば、業界トップのトヨタの心配をできるメーカーがないようなものだ。
発表会会場にいたある業界関係者は、冷えた空気の理由を3つ挙げてみせた。「3DSの発売時期が年末商戦期を超えたこと、価格が2万5000円と『Wii』の初期価格と同額であること、あと3Dに萌えないこと。世間では3Dテレビとか騒いでいるけど、最近はテレビも売れていないでしょ。3Dブームはたまごが孵化する前に終わっちゃったりして」。
3Dブームの行く末はともかく、たしかに、年末商戦期に売上の大半を稼ぐゲーム業界にとって、3DSの発売時期が年末商戦期を超えたことは痛い。任天堂自身も、2011年3月期通期予想の下方修正理由として、3DSの発売が2月になったことを挙げている。大手ソフトメーカーならなおさらだ。経営幹部らが「3DSに注力したところで今期決算に大きくプラスに働かないから、様子を見よう」と、判断する可能性は十分考えられる。
ましてや、任天堂株価が29日も続落している理由が、「価格が2万5000円とWiiの初期価格と同額であること」つまり、「3DSの値段は高い」というものであるなら、大手ソフトメーカー経営幹部らは「3DSがDSのように独自の市場を形成するまでには、時間がかかる」と判断し、ますます様子見気分が高まるのではないか。
そしてその場合、3DSの開発よりも初期投資が少なくて、目先儲かりそうなビジネス、たとえばSNS(ソーシャルネットワークサービス)用ゲームやアップル端末「iPod(touch)/ iPhone/ iPad」シリーズ、そして今十分ビジネスになっている、3DSではなく通常の「ニンテンドーDS」用か、ソニーの携帯用ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」用の開発に、大手ソフトメーカー経営幹部らは経営資源を割こうとするだろう。それは「理想的なゲームソフト開発とは」を問われたある企業幹部が、「(納期が)早いの、うまい(ゲームがおもしろい)の、(開発コストが)安いの」という、牛丼屋の有名なキャッチフレーズを挙げたことからも容易に推察できる。
この幹部には同情こそすれ、非難は当たらない。彼が牛丼屋のキャッチフレーズを口にした背景には、著しいソフトメーカーの体力低下と市場変化がある。日本の国産ソフトメーカーのほとんどは、ソニーの「プレイステーション2」による護送船団が終了した時期から、経営体力を落とした。それがはっきり出たのが2010年3月期決算で、あるソフトメーカー関係者は「前決算まではまだ“PS2の遺産”※があったが、それが全くなくなった」と話している。たとえ、3DSに可能性を感じていい企画を作れたとしても、とりあえず目先の利益確保を優先し、体力不足を理由に手を引くこともあるだろう。
※ PS2の遺産:地域によってはハード切り替えに時差が発生するため、前ハードの売上が続くケースがある。
その状況に拍車をかけるのが、任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」対サードパーティ(ハードを擁するメーカー以外のソフトメーカー)ビジネスの現状だ。任天堂は2010年3月期決算内に世界売上1000万本越えのソフトを3本たたき出した。「Wii Sprts Resort」(1358万本)、「Wii Fit Plus」(1016万本)、「New スーパーマリオブラザーズ Wii」(1055万本)である。
一方、ソニーの携帯用ゲーム機「PSP」市場を牽引する大人気シリーズ「モンスターハンター」を擁するカプコンは、「モンスターハンター3」をWiiに投入、出荷本数が100万本を超えたものの、出荷過多による大幅値下げ販売が頻発した。モンハンですら、Wii市場を牽引するまでに至っていない事実は、他メーカーに任天堂ハード参入に二の足を踏ませるのに十分だろう。
この「任天堂ハードにおいて、任天堂のソフト以外は売れない」というアンバランスな状況を、任天堂の岩田社長は29日の発表会上で認めている。そのうえで、新ハードが出る際、最初に市場を作っておくのがハードメーカーとしての任天堂の責務と考えているが、3DSビジネスではソフトメーカーと一緒にスタートダッシュを切る方針を明らかにした。
だが、Wiiで「任天堂のソフト以外は売れない」ことが、3DSビジネスに暗い影を落とすのだろうか? この問いについてある開発者は「市場性質が全く異なるので、一緒には考えないほうがいい。DSの成功体験を良く分析し、DSビジネスの延長線上で考える方がいいと思う。Wiiは自分も含め従来のゲーム開発者の手には負えないが、3DSは『任天堂のソフト以外は売れない』ことはないだろう。任天堂はWiiのことは考えず、自信を持ってやったらいいと思う」と、任天堂にエールを送る。
ここまでは、29日の任天堂発表会の内容を中心に説明したが、ここからは任天堂の外部環境に目を向けてみよう。
現在のゲーム業界は、任天堂とソニーの二強時代から、市場分散時代に入っている。ゲームで遊ぶことができる端末を挙げてみると、任天堂、ソニー、マイクロソフトなどのゲーム専用機メーカーのハードに加えて、従来の携帯ゲーム機やアップルのiPhoneのようなスマートフォン、あるいはiPadのようなタブレットPC、そしてiPod(touch)などがある。それにグリーやモバゲーなどのSNSサービスも人気を集めている。つまり、ハード主導型ではなく、コンテンツ主導型といえるだろう。そういう意味では、コンテンツ企業にとってよい状況のように見える。
だが、その中でもソフトメーカーにとって確実にビジネスになるのは、前述の通り任天堂のDSとソニーのPSPだ。ゲーム専用機以外のビジネスはまだ開拓期のため、利益を見込めない。スマートフォンやグリーやモバゲーへの参入コストは低いが、利益は薄利なうえ利益の定着まで時間がかかる。しばらくは、DSとPSPで食いつなぎたいというのがソフトメーカーの本音だろう。
PSP陣営で今年の年末商戦期に注目を集めそうなのは、カプコンの「モンスターハンターポータブル 3rd」(12月1日発売予定、5800円)だ。前作は400万本を超えているため、PSP市場活性への期待は高まっている。
また、スクウェア・エニックスもPSP用ソフト「ロード オブ アルカナ」(10月14日発売予定、6800円)の無料体験版の「ロード オブ アルカナ -序章 殺戮者への扉-」で100万ダウンロードを達成、ソニーにとってはいいニュースとなった。
そのソニーは今後、現行PSPの後継機の発売を予定している。詳細はまだ明らかになっていないが、ある関係者は「機能はかなりいいと聞いているが、ソニーがゲーム機を狙っているのか、それともアップルのiPod/iPhone/iPadのような方向性なのかで、評価は違ってくるだろう」と話す。「ニンテンドー3DS」価格評価は、PSP後継機の機能と価格で相対的に固まりそうだ。
一方で、マイクロソフトの家庭用ゲーム機「Xbox360 キネクト」にも注目が集まっている。ある関係者によれば、史上最高の20万人越えの入場者数を記録して閉幕した「東京ゲームショウ2010」の会期前後、マイクロソフトにはマスコミからの取材依頼が殺到、「Xbox360 キネクト」関係のテレビ系露出は20番組を超えたという。マイクロソフト関係者も「東京ゲームショウでもご家族やカップルなど、今までにないお客様にも遊んでいただけるなど、大変よい手応えを感じている」と話す。
高評価の基礎のひとつが、バンダイナムコゲームスの「体で答える新しい脳トレ」(キネクトと同発売日、6279円)で、東京ゲームショウで遊んだ人からも「とてもわかりやすい」と好評だった。そのためか、「Xbox360 キネクト」はすでに予約がいっぱいで打ち切られている店舗もあるという。マイクロソフトはキネクトで悲願のゲーム国内市場形成に至るのか注目だ。
このように、任天堂にとってお世辞にもいいとは言えない外部環境ではあるが、逆風ばかりが吹いているわけではない。たとえば、ポケモンの「ポケットモンスター ブラック・ホワイト」(4800円)は、発売初日に255万本を売った勢いのまま、3DS不在の年末商戦を駆け抜けていきそうだ。この225万本について岩田社長は「日本のゲームソフトの歴史上最大の初週売上。今回のような過去最高の初週販売数を記録できた背景には、プラットフォームの普及台数が最大化した時点で、『ポケットモンスター』の完全新作が発売できた」ためと分析している。
また、東京ゲームショウに出展された、レベルファイブの「二ノ国 漆黒の魔導士」(12月9日発売予定、6800円)の評判もよく、このツートップがDS市場を牽引する可能性は高い。ジブリアニメのあたたかみが再現できている点は、ジブリアニメファンに高い評価を受けるだろう。
岩田社長は就活学生向けメッセージで「昨日と同じ提案ではお客様に満足していただけないという厳しい業界で、常に新しくユニークな挑戦を今後も継続し、柔軟にそして前向きに活躍できる人材が未来の任天堂を創っていく」と述べているが、逆に言えばそういう会社でないと、生活必需品を作っていない企業は生き残れないことを示唆している。
現状に安住せず過去の栄光にもすがらず、常に挑戦し続け前進すること。その状態をキープできるのであれば、どんな外部環境であっても任天堂は大丈夫なのではないかと、筆者は楽観視している。
パナソニック「LUMIX」ブランドの携帯電話を発売へ
パナソニックは1日、同社のデジタルカメラのブランド「LUMIX(ルミックス)」を冠した携帯電話を今年度中に発売すると発表した。高画質とともに、カメラの開発で培った操作性をアピールし、シェア拡大を狙う。
新製品「LUMIX Phone(ルミックスフォン)」には、ルミックスの高画質を支える技術や画像補整技術を採用。タッチパネルの操作で撮影した写真をすぐにメールに添付し、ブログ投稿できる仕組みにした。
これまでは薄型テレビ「ビエラ」との連携をうたった携帯電話を投入していたが、ワンセグ機能が標準化したことから、人気のカメラブランドを押し出すことで他社との差別化を図る考えだ。
「LUMIX Phone」は幕張メッセ(千葉市)で5日に開幕する家電見本市「CEATEC JAPAN2010」に参考出品される。ルミックスフォン専用のサイトも1日、開設された。
ベクター、Androidアプリマーケット「AndroApp」をプレオープン
株式会社ベクターは1日、Androidアプリマーケット「AndroApp」をプレオープンし、無料アプリの配布を開始した。
「AndroApp」は、Androidアプリの作者向けに提供している「ベクター・スマートフォンサービス」に登録されたアプリを掲載するアプリマーケット。キーワード検索、カテゴリー検索、ランキングなどの各種機能を備え、アプリのレビューなどの規格を随時行う。
現在はプレオープンとして、無料アプリを中心とした機能に限定した公開となっており、12月のグランドオープンに向け、会員機能の追加や、有料アプリの取り扱いなどを行う予定。
「Qpod」「Piku」月間訪問者が200万人突破、共同購入型クーポン利用動向
ネットレイティングス株式会社は1日、共同購入型クーポンサイトの「Qpod(クーポッド)」と「Piku(ピク)」の訪問者数がそれぞれ200万人を突破したと発表した。調査は、8月における日本の家庭と職場でのインターネット利用動向をまとめたもの。
共同購入型クーポンサイトは、規定の購入者数に達した場合に対象商品の割引クーポンが取得できるサービス。8月における訪問者数を見ると、Qpodは237万人に、Pikuは201万人となっていた。
各クーポンサイトを訪問する直前に閲覧していたサイトでは、「げん玉」や「ECナビ」などのポイント系サイトが上位にランクインし、クーポンサイトの会員登録を行うことで各ポイント系サイトのポイントが獲得できるプロモーションが行われていたことが伺えた。
ミルモ、Xperia向け電子書籍アプリ配信
ミルモは、NTTドコモのソニー・エリクソン製スマートフォン「Xperia」(SO-01B)向けに、電子書籍アプリ「millmoBook Player for PlayNow」の配信を開始した。
「millmoBook Player for PlayNow」は、Xperiaに対応した電子書籍アプリ。電子書籍配信ストア「デジコミストア」からダウンロードした電子書籍が楽しめる。ミルモでは、ソニー・エリクソンのWebアプリ「PlayNow」を経由して、Android Marketでアプリを提供する。
電子書籍アプリの利用料は無料。電子書籍コンテンツは105円~ダウンロードできる。
尖閣漁船衝突「政府対応は不適切」7割、内閣支持率も急落48・5% 本社・FNN合同世論調査
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)は、沖縄・尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件を受けて、9月30日に緊急の合同世論調査を実施した。事件に対する日本政府の一連の対応を、70・5%が「不適切」と回答し、中国漁船船長の突然の釈放などに世論が厳しい評価を下していることがわかった。これを受け、菅直人内閣の支持率は前回調査(9月18、19日実施)の64・2%から15・7ポイント急落し、48・5%となった。
民主党代表選で再選を決め、内閣改造で人心を一新したこともあり、政権発足後、最高を記録していた内閣支持率は、今回の外交・安全保障問題での稚拙な対応で、8月段階の水準まで落ち、政権の足下を揺さぶる結果となった。
調査結果によると、事件への対応で62・3%が「菅政権へのイメージが悪くなった」と答えた。81・4%は菅政権の対応が「弱腰といわれても仕方ないと思う」と回答。事件対応をめぐって「日本は圧力をかければ屈するとのイメージを持たれる懸念がある」とした人も78・8%にのぼり、菅政権の事件対応への評価は、きわめて厳しかった。
「派遣法改正案、修正も」細川厚労相
細川律夫厚生労働相は1日の記者会見で、先の通常国会で継続審議となった労働者派遣法改正案について「(修正は)今は考えていないが、国会でどう対応するか、与党とも相談して考えていく余地はある」と述べ、今後の議論次第では修正する可能性もあるとの考えを示した。
派遣法改正案は労働者保護の強化を目的に製造業派遣や登録型派遣を原則禁止としており、自民党などが過度の規制強化に当たるなどとして反対している。
また1日からの臨時国会で、厚労省が成立を優先する法案として、派遣法改正案のほか、既に廃止が決まっている独立行政法人「雇用・能力開発機構」の廃止法案の二つを挙げた。
たばこ 大幅値上げ ため息、決断、工夫… 小売店は閑散
増税に伴うたばこの値段が1日、大幅に引き上げられた。4年ぶりの値上げで、幅は過去最大。前日まで駆け込み需要に沸いた小売店やコンビニでは、買い求める客の姿も少なく、一転して閑散とした。禁煙者が増え、長期的には医療費の減少が期待される一方、葉タバコ農家やたばこ各社からは悲鳴も上がる。値上げを機に「たばこ離れ」はぐんと進みそうだ。
◇売店
JR新宿駅の売店の女性店員は「今日は全然売れない」と嘆く。午前8時過ぎまでに売れたのは10箱ほど。普段の約3分の1に落ち込んだ。銘柄の値段シールは今朝張り替えたばかり。400円台の表示が並び、「これだけ高いとやめちゃうよね」と苦笑した。
同駅西口前の喫煙スポットには出勤途中のサラリーマンらが集まった。東京都豊島区の会社員、吉田国宏さん(50)は買いだめした3カートンを吸い終わったら、禁煙するつもりだ。「値上げは家計に響く。やめようと思っていたのでいいきっかけです」と話す。一方、横浜市港北区の男性会社員(58)は「食事と一緒でやめられない。1箱の値段が1000円になったら禁煙を考えるよ」と話し、一服を楽しんだ。
◇メーカー
たばこ各社は、値上げした1日以降、大幅な販売減を見込む。1箱当たり110~140円という大幅な値上げショックに伴うたばこ離れに歯止めをかけようと、人気銘柄のブランドイメージや味・香りを向上させる取り組みを急ぐ。
国内たばこ首位の日本たばこ産業(JT)は「値上げ後の価格水準でも納得して吸ってもらえるように味に磨きをかける」と説明。500億円以上を投資して生産設備を充実、たばこの風味を向上させたり、パッケージを高級感があるデザインに変更し、カッコよさを演出するなど、さまざまな工夫を凝らす計画だ。
また、都市部を中心に屋外など公共の場での喫煙スペースを確保し、愛煙家が一服しやすい環境を整えたいとしている。
嫌煙の風潮が強まる中での今回の大幅値上げは、業界にとって「過去にない逆風」で、メーカー関係者は「値上げにもめげず、吸い続けてくれる愛煙家を大事にしていくしかない」とため息を漏らす。
大阪地検前特捜部長と前副部長の逮捕状を請求
郵便不正事件を巡る証拠品のフロッピーディスク(FD)改ざん事件で、最高検は1日、大阪地検特捜部の主任検事・前田恒彦容疑者(43)(逮捕)の上司だった大坪弘道・前部長(57)(現・京都地検次席検事)と佐賀元明・前副部長(49)(現・神戸地検特別刑事部長)を犯人隠避容疑で逮捕する方針を固め、逮捕状を請求した。
最高検の調べでは、大坪前部長と佐賀前副部長は今年1~2月、前田容疑者から「FDを故意に改ざんした」と報告を受けながら、小林敬(たかし)・大阪地検検事正と玉井英章前次席検事(現・大阪高検次席検事)に「故意ではなく、問題ない」と虚偽の報告したほか、FDの調査を行わず、改ざんを隠蔽(いんぺい)した疑い。
最高検の聴取に対し、大坪前部長と佐賀前副部長は、いずれも「前田容疑者から『故意ではない』との報告を受け、過失だと思っていた」などと説明していた。
大安吉日だった9月29日は、任天堂関係者にとって悪夢のような一日になった。満を持して開催したはずの発表会中に、「ニンテンドー3DS」の誤報が元で株価が乱高下。そして、円高に加えて、3DSの発売日が来年の2月26日に決定したことを受けて、2011年3月期の連結売上高を1兆4000億円から1兆1000億円に、純利益を2000億円から900億円にそれぞれ下方修正すると発表、翌日も株価を下げた。①ソフトメーカーの体力不足、②任天堂ハード市場のバランスの悪さ、③外部環境の悪化、という三重苦を抱えた任天堂は、将来も業界のリーディングカンパニーであり続けられるのか。
任天堂の岩田聡社長は9月29日、同社のプレス向け発表会で、新型携帯用ゲーム機「ニンテンドー3DS」の日本での発売を2月26日、価格を2万5000円と発表した。ところが、その直後株価が急落。2時半過ぎには2万5000円まで急伸した株価が、3時には2万3000円まで急降下した。
この状況を会場内で耳にしたある業界関係者は「3DSの値段が高いということなのだろうか」と心配顔をしていた。確かに、マイクロソフトが11月20日に発売する、コントローラなしで遊べる家庭用ゲーム機「Xbox 360 4GB + キネクト(Kinect)」が2万9800円であることを考えると、「携帯ゲーム機に2万5000円は出せない」と考える人もいるだろう。
だが、この株価乱高下劇の原因は違っていた。実は2時半の時点で株価が急伸したのは一部報道が、「スーパーマリオ25周年記念バージョン ニンテンドーDSi LL」の「10月28日発売、価格は1万8000円」を3DS情報として間違えて誤報したことで、機関投資家などの大量の買い注文が入ったためだという。そして、岩田社長が発表会のステージ上で正式価格と発売日を発表した段階で、急落した。株価が下がるにしても上がるにしても、市場が誤報に振り回されたことに対して、任天堂関係者はやりきりない思いなのではないか。
今回の「ニンテンドー3DS」に関しては、報道合戦が繰り広げられていた。たとえば、公式発表2日前の27日にはドイツの日刊紙が「日本の発売日は11月11日、価格は200ユーロ(約2万2800円、1ユーロ114円計算)」と報道。ハード同時発売ソフトまで記載する手の込みようだった。ただし、この誤報の情報源は解雇を不服とする元開発系業界関係者という話もあるので、日刊紙側を責めるのは酷だろう。
ちなみに、ゲーム業界の場合、新ハードなどの機密情報は他業界と比較すると漏れやすい。たとえば、ソニーは携帯ゲーム機「PSPgo」の本体写真が事前に流出するなど、通常のビジネスシーンではありえない状況が起きた。3DSに関しては、事前報道が全部間違っていたことを考えると、任天堂は今回の情報管理に関しては面目を保ったと言えるだろう。
妙だったのは、株価だけでなく任天堂が開催した発表会会場も同様だった。通常、任天堂の発表会といえば熱気に溢れる感じになるのだが、どこかひんやりと冷めていた。
その空気の理由として、任天堂の2011年3月期通期予想の下方修正発表を挙げる向きもあるが、その必要性は7月の時点で指摘されており、修正が時間の問題であったことは業界関係者ならば周知の事実だ。それに、任天堂が業績を下方修正したところで、人の財布の心配をしている余裕は、現在のゲーム業界には全くない。自動車業界でいえば、業界トップのトヨタの心配をできるメーカーがないようなものだ。
発表会会場にいたある業界関係者は、冷えた空気の理由を3つ挙げてみせた。「3DSの発売時期が年末商戦期を超えたこと、価格が2万5000円と『Wii』の初期価格と同額であること、あと3Dに萌えないこと。世間では3Dテレビとか騒いでいるけど、最近はテレビも売れていないでしょ。3Dブームはたまごが孵化する前に終わっちゃったりして」。
3Dブームの行く末はともかく、たしかに、年末商戦期に売上の大半を稼ぐゲーム業界にとって、3DSの発売時期が年末商戦期を超えたことは痛い。任天堂自身も、2011年3月期通期予想の下方修正理由として、3DSの発売が2月になったことを挙げている。大手ソフトメーカーならなおさらだ。経営幹部らが「3DSに注力したところで今期決算に大きくプラスに働かないから、様子を見よう」と、判断する可能性は十分考えられる。
ましてや、任天堂株価が29日も続落している理由が、「価格が2万5000円とWiiの初期価格と同額であること」つまり、「3DSの値段は高い」というものであるなら、大手ソフトメーカー経営幹部らは「3DSがDSのように独自の市場を形成するまでには、時間がかかる」と判断し、ますます様子見気分が高まるのではないか。
そしてその場合、3DSの開発よりも初期投資が少なくて、目先儲かりそうなビジネス、たとえばSNS(ソーシャルネットワークサービス)用ゲームやアップル端末「iPod(touch)/ iPhone/ iPad」シリーズ、そして今十分ビジネスになっている、3DSではなく通常の「ニンテンドーDS」用か、ソニーの携帯用ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」用の開発に、大手ソフトメーカー経営幹部らは経営資源を割こうとするだろう。それは「理想的なゲームソフト開発とは」を問われたある企業幹部が、「(納期が)早いの、うまい(ゲームがおもしろい)の、(開発コストが)安いの」という、牛丼屋の有名なキャッチフレーズを挙げたことからも容易に推察できる。
この幹部には同情こそすれ、非難は当たらない。彼が牛丼屋のキャッチフレーズを口にした背景には、著しいソフトメーカーの体力低下と市場変化がある。日本の国産ソフトメーカーのほとんどは、ソニーの「プレイステーション2」による護送船団が終了した時期から、経営体力を落とした。それがはっきり出たのが2010年3月期決算で、あるソフトメーカー関係者は「前決算まではまだ“PS2の遺産”※があったが、それが全くなくなった」と話している。たとえ、3DSに可能性を感じていい企画を作れたとしても、とりあえず目先の利益確保を優先し、体力不足を理由に手を引くこともあるだろう。
※ PS2の遺産:地域によってはハード切り替えに時差が発生するため、前ハードの売上が続くケースがある。
その状況に拍車をかけるのが、任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」対サードパーティ(ハードを擁するメーカー以外のソフトメーカー)ビジネスの現状だ。任天堂は2010年3月期決算内に世界売上1000万本越えのソフトを3本たたき出した。「Wii Sprts Resort」(1358万本)、「Wii Fit Plus」(1016万本)、「New スーパーマリオブラザーズ Wii」(1055万本)である。
一方、ソニーの携帯用ゲーム機「PSP」市場を牽引する大人気シリーズ「モンスターハンター」を擁するカプコンは、「モンスターハンター3」をWiiに投入、出荷本数が100万本を超えたものの、出荷過多による大幅値下げ販売が頻発した。モンハンですら、Wii市場を牽引するまでに至っていない事実は、他メーカーに任天堂ハード参入に二の足を踏ませるのに十分だろう。
この「任天堂ハードにおいて、任天堂のソフト以外は売れない」というアンバランスな状況を、任天堂の岩田社長は29日の発表会上で認めている。そのうえで、新ハードが出る際、最初に市場を作っておくのがハードメーカーとしての任天堂の責務と考えているが、3DSビジネスではソフトメーカーと一緒にスタートダッシュを切る方針を明らかにした。
だが、Wiiで「任天堂のソフト以外は売れない」ことが、3DSビジネスに暗い影を落とすのだろうか? この問いについてある開発者は「市場性質が全く異なるので、一緒には考えないほうがいい。DSの成功体験を良く分析し、DSビジネスの延長線上で考える方がいいと思う。Wiiは自分も含め従来のゲーム開発者の手には負えないが、3DSは『任天堂のソフト以外は売れない』ことはないだろう。任天堂はWiiのことは考えず、自信を持ってやったらいいと思う」と、任天堂にエールを送る。
ここまでは、29日の任天堂発表会の内容を中心に説明したが、ここからは任天堂の外部環境に目を向けてみよう。
現在のゲーム業界は、任天堂とソニーの二強時代から、市場分散時代に入っている。ゲームで遊ぶことができる端末を挙げてみると、任天堂、ソニー、マイクロソフトなどのゲーム専用機メーカーのハードに加えて、従来の携帯ゲーム機やアップルのiPhoneのようなスマートフォン、あるいはiPadのようなタブレットPC、そしてiPod(touch)などがある。それにグリーやモバゲーなどのSNSサービスも人気を集めている。つまり、ハード主導型ではなく、コンテンツ主導型といえるだろう。そういう意味では、コンテンツ企業にとってよい状況のように見える。
だが、その中でもソフトメーカーにとって確実にビジネスになるのは、前述の通り任天堂のDSとソニーのPSPだ。ゲーム専用機以外のビジネスはまだ開拓期のため、利益を見込めない。スマートフォンやグリーやモバゲーへの参入コストは低いが、利益は薄利なうえ利益の定着まで時間がかかる。しばらくは、DSとPSPで食いつなぎたいというのがソフトメーカーの本音だろう。
PSP陣営で今年の年末商戦期に注目を集めそうなのは、カプコンの「モンスターハンターポータブル 3rd」(12月1日発売予定、5800円)だ。前作は400万本を超えているため、PSP市場活性への期待は高まっている。
また、スクウェア・エニックスもPSP用ソフト「ロード オブ アルカナ」(10月14日発売予定、6800円)の無料体験版の「ロード オブ アルカナ -序章 殺戮者への扉-」で100万ダウンロードを達成、ソニーにとってはいいニュースとなった。
そのソニーは今後、現行PSPの後継機の発売を予定している。詳細はまだ明らかになっていないが、ある関係者は「機能はかなりいいと聞いているが、ソニーがゲーム機を狙っているのか、それともアップルのiPod/iPhone/iPadのような方向性なのかで、評価は違ってくるだろう」と話す。「ニンテンドー3DS」価格評価は、PSP後継機の機能と価格で相対的に固まりそうだ。
一方で、マイクロソフトの家庭用ゲーム機「Xbox360 キネクト」にも注目が集まっている。ある関係者によれば、史上最高の20万人越えの入場者数を記録して閉幕した「東京ゲームショウ2010」の会期前後、マイクロソフトにはマスコミからの取材依頼が殺到、「Xbox360 キネクト」関係のテレビ系露出は20番組を超えたという。マイクロソフト関係者も「東京ゲームショウでもご家族やカップルなど、今までにないお客様にも遊んでいただけるなど、大変よい手応えを感じている」と話す。
高評価の基礎のひとつが、バンダイナムコゲームスの「体で答える新しい脳トレ」(キネクトと同発売日、6279円)で、東京ゲームショウで遊んだ人からも「とてもわかりやすい」と好評だった。そのためか、「Xbox360 キネクト」はすでに予約がいっぱいで打ち切られている店舗もあるという。マイクロソフトはキネクトで悲願のゲーム国内市場形成に至るのか注目だ。
このように、任天堂にとってお世辞にもいいとは言えない外部環境ではあるが、逆風ばかりが吹いているわけではない。たとえば、ポケモンの「ポケットモンスター ブラック・ホワイト」(4800円)は、発売初日に255万本を売った勢いのまま、3DS不在の年末商戦を駆け抜けていきそうだ。この225万本について岩田社長は「日本のゲームソフトの歴史上最大の初週売上。今回のような過去最高の初週販売数を記録できた背景には、プラットフォームの普及台数が最大化した時点で、『ポケットモンスター』の完全新作が発売できた」ためと分析している。
また、東京ゲームショウに出展された、レベルファイブの「二ノ国 漆黒の魔導士」(12月9日発売予定、6800円)の評判もよく、このツートップがDS市場を牽引する可能性は高い。ジブリアニメのあたたかみが再現できている点は、ジブリアニメファンに高い評価を受けるだろう。
岩田社長は就活学生向けメッセージで「昨日と同じ提案ではお客様に満足していただけないという厳しい業界で、常に新しくユニークな挑戦を今後も継続し、柔軟にそして前向きに活躍できる人材が未来の任天堂を創っていく」と述べているが、逆に言えばそういう会社でないと、生活必需品を作っていない企業は生き残れないことを示唆している。
現状に安住せず過去の栄光にもすがらず、常に挑戦し続け前進すること。その状態をキープできるのであれば、どんな外部環境であっても任天堂は大丈夫なのではないかと、筆者は楽観視している。
パナソニック「LUMIX」ブランドの携帯電話を発売へ
パナソニックは1日、同社のデジタルカメラのブランド「LUMIX(ルミックス)」を冠した携帯電話を今年度中に発売すると発表した。高画質とともに、カメラの開発で培った操作性をアピールし、シェア拡大を狙う。
新製品「LUMIX Phone(ルミックスフォン)」には、ルミックスの高画質を支える技術や画像補整技術を採用。タッチパネルの操作で撮影した写真をすぐにメールに添付し、ブログ投稿できる仕組みにした。
これまでは薄型テレビ「ビエラ」との連携をうたった携帯電話を投入していたが、ワンセグ機能が標準化したことから、人気のカメラブランドを押し出すことで他社との差別化を図る考えだ。
「LUMIX Phone」は幕張メッセ(千葉市)で5日に開幕する家電見本市「CEATEC JAPAN2010」に参考出品される。ルミックスフォン専用のサイトも1日、開設された。
ベクター、Androidアプリマーケット「AndroApp」をプレオープン
株式会社ベクターは1日、Androidアプリマーケット「AndroApp」をプレオープンし、無料アプリの配布を開始した。
「AndroApp」は、Androidアプリの作者向けに提供している「ベクター・スマートフォンサービス」に登録されたアプリを掲載するアプリマーケット。キーワード検索、カテゴリー検索、ランキングなどの各種機能を備え、アプリのレビューなどの規格を随時行う。
現在はプレオープンとして、無料アプリを中心とした機能に限定した公開となっており、12月のグランドオープンに向け、会員機能の追加や、有料アプリの取り扱いなどを行う予定。
「Qpod」「Piku」月間訪問者が200万人突破、共同購入型クーポン利用動向
ネットレイティングス株式会社は1日、共同購入型クーポンサイトの「Qpod(クーポッド)」と「Piku(ピク)」の訪問者数がそれぞれ200万人を突破したと発表した。調査は、8月における日本の家庭と職場でのインターネット利用動向をまとめたもの。
共同購入型クーポンサイトは、規定の購入者数に達した場合に対象商品の割引クーポンが取得できるサービス。8月における訪問者数を見ると、Qpodは237万人に、Pikuは201万人となっていた。
各クーポンサイトを訪問する直前に閲覧していたサイトでは、「げん玉」や「ECナビ」などのポイント系サイトが上位にランクインし、クーポンサイトの会員登録を行うことで各ポイント系サイトのポイントが獲得できるプロモーションが行われていたことが伺えた。
ミルモ、Xperia向け電子書籍アプリ配信
ミルモは、NTTドコモのソニー・エリクソン製スマートフォン「Xperia」(SO-01B)向けに、電子書籍アプリ「millmoBook Player for PlayNow」の配信を開始した。
「millmoBook Player for PlayNow」は、Xperiaに対応した電子書籍アプリ。電子書籍配信ストア「デジコミストア」からダウンロードした電子書籍が楽しめる。ミルモでは、ソニー・エリクソンのWebアプリ「PlayNow」を経由して、Android Marketでアプリを提供する。
電子書籍アプリの利用料は無料。電子書籍コンテンツは105円~ダウンロードできる。
尖閣漁船衝突「政府対応は不適切」7割、内閣支持率も急落48・5% 本社・FNN合同世論調査
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)は、沖縄・尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件を受けて、9月30日に緊急の合同世論調査を実施した。事件に対する日本政府の一連の対応を、70・5%が「不適切」と回答し、中国漁船船長の突然の釈放などに世論が厳しい評価を下していることがわかった。これを受け、菅直人内閣の支持率は前回調査(9月18、19日実施)の64・2%から15・7ポイント急落し、48・5%となった。
民主党代表選で再選を決め、内閣改造で人心を一新したこともあり、政権発足後、最高を記録していた内閣支持率は、今回の外交・安全保障問題での稚拙な対応で、8月段階の水準まで落ち、政権の足下を揺さぶる結果となった。
調査結果によると、事件への対応で62・3%が「菅政権へのイメージが悪くなった」と答えた。81・4%は菅政権の対応が「弱腰といわれても仕方ないと思う」と回答。事件対応をめぐって「日本は圧力をかければ屈するとのイメージを持たれる懸念がある」とした人も78・8%にのぼり、菅政権の事件対応への評価は、きわめて厳しかった。
「派遣法改正案、修正も」細川厚労相
細川律夫厚生労働相は1日の記者会見で、先の通常国会で継続審議となった労働者派遣法改正案について「(修正は)今は考えていないが、国会でどう対応するか、与党とも相談して考えていく余地はある」と述べ、今後の議論次第では修正する可能性もあるとの考えを示した。
派遣法改正案は労働者保護の強化を目的に製造業派遣や登録型派遣を原則禁止としており、自民党などが過度の規制強化に当たるなどとして反対している。
また1日からの臨時国会で、厚労省が成立を優先する法案として、派遣法改正案のほか、既に廃止が決まっている独立行政法人「雇用・能力開発機構」の廃止法案の二つを挙げた。
たばこ 大幅値上げ ため息、決断、工夫… 小売店は閑散
増税に伴うたばこの値段が1日、大幅に引き上げられた。4年ぶりの値上げで、幅は過去最大。前日まで駆け込み需要に沸いた小売店やコンビニでは、買い求める客の姿も少なく、一転して閑散とした。禁煙者が増え、長期的には医療費の減少が期待される一方、葉タバコ農家やたばこ各社からは悲鳴も上がる。値上げを機に「たばこ離れ」はぐんと進みそうだ。
◇売店
JR新宿駅の売店の女性店員は「今日は全然売れない」と嘆く。午前8時過ぎまでに売れたのは10箱ほど。普段の約3分の1に落ち込んだ。銘柄の値段シールは今朝張り替えたばかり。400円台の表示が並び、「これだけ高いとやめちゃうよね」と苦笑した。
同駅西口前の喫煙スポットには出勤途中のサラリーマンらが集まった。東京都豊島区の会社員、吉田国宏さん(50)は買いだめした3カートンを吸い終わったら、禁煙するつもりだ。「値上げは家計に響く。やめようと思っていたのでいいきっかけです」と話す。一方、横浜市港北区の男性会社員(58)は「食事と一緒でやめられない。1箱の値段が1000円になったら禁煙を考えるよ」と話し、一服を楽しんだ。
◇メーカー
たばこ各社は、値上げした1日以降、大幅な販売減を見込む。1箱当たり110~140円という大幅な値上げショックに伴うたばこ離れに歯止めをかけようと、人気銘柄のブランドイメージや味・香りを向上させる取り組みを急ぐ。
国内たばこ首位の日本たばこ産業(JT)は「値上げ後の価格水準でも納得して吸ってもらえるように味に磨きをかける」と説明。500億円以上を投資して生産設備を充実、たばこの風味を向上させたり、パッケージを高級感があるデザインに変更し、カッコよさを演出するなど、さまざまな工夫を凝らす計画だ。
また、都市部を中心に屋外など公共の場での喫煙スペースを確保し、愛煙家が一服しやすい環境を整えたいとしている。
嫌煙の風潮が強まる中での今回の大幅値上げは、業界にとって「過去にない逆風」で、メーカー関係者は「値上げにもめげず、吸い続けてくれる愛煙家を大事にしていくしかない」とため息を漏らす。
大阪地検前特捜部長と前副部長の逮捕状を請求
郵便不正事件を巡る証拠品のフロッピーディスク(FD)改ざん事件で、最高検は1日、大阪地検特捜部の主任検事・前田恒彦容疑者(43)(逮捕)の上司だった大坪弘道・前部長(57)(現・京都地検次席検事)と佐賀元明・前副部長(49)(現・神戸地検特別刑事部長)を犯人隠避容疑で逮捕する方針を固め、逮捕状を請求した。
最高検の調べでは、大坪前部長と佐賀前副部長は今年1~2月、前田容疑者から「FDを故意に改ざんした」と報告を受けながら、小林敬(たかし)・大阪地検検事正と玉井英章前次席検事(現・大阪高検次席検事)に「故意ではなく、問題ない」と虚偽の報告したほか、FDの調査を行わず、改ざんを隠蔽(いんぺい)した疑い。
最高検の聴取に対し、大坪前部長と佐賀前副部長は、いずれも「前田容疑者から『故意ではない』との報告を受け、過失だと思っていた」などと説明していた。
スマートフォンにワンセグ機能など搭載 NTTドコモ
NTTドコモは2010年度内に携帯端末向け地上デジタル放送「ワンセグ」と電子マネーの「おサイフケータイ」機能を搭載したスマートフォン(高機能携帯電話)2種を投入する。スマートフォンは日本独自の機能を搭載していなかったが、契約者からの要望が多かったことに対応する。
機能を搭載するのは10年冬~11年春に発売するモデル。シャープと、10月に事業統合する富士通・東芝の2社が端末を供給する。米グーグルの基本ソフト(OS)アンドロイドを搭載したスマートフォンで、タッチパネルで操作する。富士通・東芝のモデルは防水対応となるもようだ。
日本製ケータイがなくなる日
「日本の携帯電話がガラパゴス化した」といわれて久しいが、いつまでこの状態が続くのだろう。といっても、日本のケータイがガラパゴスを脱して世界に飛躍する日を想像しているのではない。逆に最後の楽園だったはずの日本国内市場も外資メーカーに席巻され、日本企業が携帯電話の端末事業から総撤退という事態もあり得るのではないか。そんな危機感を覚えざるを得ないのだ。
最近、NTTドコモの経営幹部と話す機会があった。この人はドコモの生え抜き的存在で、端末メーカーとの付き合いも長いが、「今日本メーカーは生き残れるかどうかの瀬戸際」という。
ガラパゴス化のいわれた日本市場だが、実は「外来種」もじわじわと勢力を伸ばしている。2009年度のシェアでみると、外資系(ソニー・エリクソンを含む)のシェアは15%程度。自動車市場における「輸入車」シェアのほぼ4、5倍に当たる数字であり、米アップルの高機能携帯電話(スマートフォン)「iPhone(アイフォーン)」のように存在感のある機種も目立つ。
NTTドコモは今秋から韓国サムスン電子製のスマートフォンを発売する。自ら発光する有機ELを使ったディスプレーは液晶とはひと味違う美しさがあり、「目の肥えた日本のユーザーもこれには驚くだろう。相当話題になるはず」とこの幹部はいう。
一方で日本勢はいまひとつ元気がない。再編の動きはあるが、これが本格的な反転のきっかけになるのか、長い衰退プロセスの中の1局面なのかは何とも言い難い。
おそらく数がモノを言うケータイの世界で、成熟化の進む日本市場にしがみついて生き残っていける可能性はそう大きくはない。ドコモの幹部によれば、「今が日本メーカーが世界に出て行く最後のチャンス」という。幸い端末のOS(基本ソフト)ではグーグルの「アンドロイド」がほぼ世界標準の座を確立しつつある。アップルのように独自のソフト技術がなくても、「アンドロイド」を使えば、世界に通用する端末ができる。
パソコンとの類比で考えればわかりやすいが、パソコンでも世界標準の「ウィンドウズ」を搭載したソニーや東芝のノート型パソコンが世界で売れてきた。技術の主導権、収益の主導権はマイクロソフトやグーグルが握るとしても、日本メーカーが得意のものづくりの技をいかして、ソニーの「VAIO」のような独自の端末をつくれば、日本製ケータイが世界に飛躍できるかもしれない。
だが、このチャンスを逃せばどうなるか。ドコモ幹部は「日本のケータイ産業は米国のテレビ産業のようになってしまうかもしれない」と不気味な予言をする。RCAやジーナスなどかつては米国にも多数のテレビメーカーがあったが、今ではどれも残っておらず、産業そのものが消えてなくなってしまった。
アメリカ人はテレビ大好きで、「テレビの前にいる時間が最も長い国民」といわれるが、彼らにテレビ受像機を供給しているのは、米国企業ではない。これと同じ事態が、「ケータイ大好き」の私たち日本人にも起こるのだろうか。それを避けるために残された時間は少ない。
東芝、有機ELパネルの量産計画を撤回 中小型液晶に注力
東芝は子会社の中小型液晶パネルメーカー、東芝モバイルディスプレイの有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)パネル量産計画を白紙撤回する。有機ELの開発を担当していた技術者などを新型液晶パネルの開発に充てる。中小型液晶パネルに経営資源を集約し、今後激化が予想される競争に備える。国内電機大手の系列企業が有機ELパネルの生産を取りやめることで、韓国メーカーの存在感が一段と高まる可能性もある。
有機ELパネルの量産をにらみ、研究・開発に参加していた数十人の技術者を液晶パネル部門に移す。リーマン・ショック後の業績悪化を受け大型の設備投資が難しくなったことや、今年に入って一時急回復した液晶パネルの需要に応えるため計画見直しを決めた。
今後は中小型液晶パネル事業を(1)車載(2)携帯電話、スマートフォン(高機能型携帯電話)(3)ファクトリーオートメーション(FA)(4)アミューズメント――の4分野に集約して収益力を高める。
東芝は照明用の有機ELの研究を川崎市の研究所で続けているが、パネルからは一時撤退する形になる。東芝モバイルディスプレイは東芝とパナソニックとの共同出資会社だった2008年に、約160億円を投じて石川県の自社工場に有機ELの量産ラインを新設。携帯電話用の2型有機ELパネルを月150万枚生産する計画だった。
有機ELパネルは液晶に比べ高精細で薄くできるため、次世代技術として注目を集めていたが、画質改善など液晶パネルの技術革新もあり、有機ELパネルは市場の立ち上がりが遅れていた。
有機EL市場は韓国サムスン電子のグループ企業が世界シェアの7割近くを握る。11年には「5.5世代」と呼ばれる大型の生産ラインが完成する予定で、スマートフォンやテレビ向けパネルの量産を進める。日本ではソニーが07年に11型の有機ELテレビを発売したが、後継機を出さないまま生産を終えている。
ゲームソフト、交流サイト向け急拡大 時価総額、「据え置き型」を逆転も
ゲームソフト会社の収益構造が変化している。据え置き型ゲーム機向けソフトの販売が低迷する一方、携帯電話で楽しむ交流型ゲームソフトが人気を集めている。携帯ゲームサイトを運営するディー・エヌ・エーなどの収益は急拡大しており、既存のゲームソフト会社との間で時価総額の逆転現象も起こっている。
「パッケージ型のゲームソフト販売は厳しい状況だ」。セガサミーホールディングスの吉沢秀男上席執行役員は顔を曇らす。2010年4~9月期のソフト販売見込みを、期初の632万本から500万本に引き下げた。通期のソフト売上高は前期比32%減の529億円にとどまる。バンダイナムコホールディングスなども同様で、新作ソフトの販売不調に悩み、高額な開発費を吸収できない。
主要ゲームソフト6社の11年3月期の営業利益は計1367億円と前期比5割弱増えそうだが、直近ピークの07年3月期のまだ7割強。任天堂の今期の営業利益は41%減の2100億円とピークの前々期の4割弱で、据え置き型では稼ぎにくくなっている。
ゲーム専門誌のエンターブレイン(東京・千代田)によると、09年の国内家庭用ゲームソフト市場は3262億円と、08年から2%縮小。景気悪化による個人消費の低迷に加え、携帯電話でゲームを楽しむ利用者が増えたからだ。
特に「ソーシャルゲーム」と呼ぶ、サイト上の知人とやり取りするゲームの人気が高い。パッケージソフトのように1回買ったら終わりではなく、ゲームは無料で始めるが、遊び進むには「アイテム」を買う必要がある仕組みだ。
携帯ゲームの交流サイト(SNS)を運営する企業はこの課金収入をけん引役に業績を急拡大している。「モバゲータウン」を運営するディーエヌエの4~6月期の連結純利益は前年同期比3.7倍の65億円、グリーの単独税引き利益は2.2倍の31億円。両社ともに宝物の奪い合いや魚釣りのゲームが好評。パッケージを作る必要がなく、開発費も少なくて済み、営業利益率は約5割に達する。
ゲーム市場の地殻変動は株式市場の評価にも表れている。ディーエヌエの時価総額は3832億円と最も大きい。グリーも3086億円と、今やセガサミー(3614億円)を除く主要ソフト会社を上回る。
最近ではゲームソフト会社も相次ぎSNS向けのゲーム提供に乗り出している。パッケージソフトの先細りを見越した動きで、バンナムHDの石川祝男社長は「スマートフォンやSNSなどへのコンテンツ活用を加速する」と宣言。既存ソフト会社の中でも積極的なハドソンは「四半期に3本程度のペースでSNS向けソフトを出したい」(石垣誠一執行役員)という。
もっとも、携帯ゲーム市場では「専業」のソフト会社が強みを発揮する。パッケージ型ゲームソフトのさらなる需要低下が見込まれるなか、新市場でいかに早く足場を確保するかが既存のゲームソフト会社の今後の収益を左右しそうだ。
ソニー、富士通に画像センサー生産委託
技術の国外流出防ぐ
ソニーはデジタルカメラや携帯電話の画像撮影に使うCMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーを富士通に生産委託する。CMOSセンサーは市場が急拡大しているが、海外大手との価格競争も激しい。ソニーは海外のファウンドリー(半導体受託生産会社)に委託すると先端技術流出の懸念があると判断。CMOSセンサーで直接競合しない国内勢同士の連携により低コストの生産体制づくりを目指す。
ソニーはCMOSセンサー出荷量で世界6位。シリコンウエハーに換算すると月1万6千枚の生産能力を持つ。10年度中にも、シリコンウエハー換算で月数千枚の規模で生産を富士通に委託する。製造コストの低減度合いをみながら委託量の増加も検討する。
富士通は半導体子会社である富士通セミコンダクターの三重工場(三重県桑名市)で受託する。同工場はシステムLSI(大規模集積回路)の主力拠点。CMOSセンサーと製造工程で共通する部分が多く、ラインをほぼそのまま使えるため、量産効果で生産コストを低減できる。
数百に及ぶ製造工程のうち、ソニーは汎用性の高い8~9割の工程を委託する。残りはソニーの独自技術を生かすため自社内にとどめる。ソニーの技術者が富士通に出向き、製造工程に関する情報を提供して量産を支援。富士通から半完成品を受け取り、最終仕上げを施して製品化する。
ソニーは2011年度末までに400億円を投じて自社でも生産能力を4割増強する計画だ。増産と富士通への生産委託を組み合わせ、台湾や中国、米国などのファウンドリーをコスト削減に活用する他社に対抗する。
これまでも半導体子会社であるソニーセミコンダクタ九州(福岡市)の熊本テクノロジーセンター(熊本県菊陽町)で、07年度から3年で約600億円投じ、CMOSセンサーを能力増強・増産してきた。世界大手に対抗するには単独での能力増強や増産だけでは限界があると判断した。
米アップルの高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)4」に最新型のCMOSセンサーを供給する米オムニビジョン・テクノロジーズはファンドリーの世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)に生産委託してコストを削減している。ソニーは富士通との連携で先端技術を国内に囲い込む戦略だ。
電通がIT投資ファンド100億円 ネット広告を強化
電通は10月1日にデジタル関連分野を対象とする100億円の投資ファンドを設ける。国内外で技術力の高いベンチャー企業や外部企業との共同事業に投資する。同社のデジタル分野のファンドでは過去最大の規模。成長分野であるインターネット広告事業の競争力強化を急ぐ。
新設する「電通デジタル・ファンド」はデジタルコンテンツの流通や交流サイト(SNS)、デジタル機器などIT(情報技術)関連の幅広い企業と事業が投資対象。日本国内だけでなく、中国や欧米など各地で投資する。優れた投資先は子会社化する方針だ。
グループのデジタル関連企業を統括する子会社、電通デジタル・ホールディングスの藤田明久取締役が運用責任者となる。藤田氏はNTTドコモと電通が設立した携帯電話向け広告大手のディーツーコミュニケーションズ(D2C、東京・港)の社長を務め、日本の携帯向け広告市場の立ち上げにかかわってきた。
電通のネット広告などデジタル関連の国内売上高は約1500億円(2009年度、グループ会社の単純合計)。13年度には売上高2500億円を目指す。
TBS、ベイスターズの売却検討 住生活Gと交渉へ
TBSグループがプロ野球の横浜ベイスターズ(横浜市)を売却する方向で検討し、住設機器最大手の住生活グループが買収に名乗りを上げていることが30日、明らかになった。今後、TBSグループが保有する同球団の7割近い株式の売却価格などを巡り、交渉が進む見通し。6年ぶりにプロ野球球団のオーナー企業が変更される可能性が高まった。
TBSグループは同球団を2002年にマルハから140億円で取得。現在はグループで計69.2%の株式を保有する。球団経営は放映権料収入と観客数の低迷で不振が続き、同グループは本業の放送事業収入などから毎年約20億円を広告宣伝費として補てんしてきた。だが放送事業も最近は不振に陥り、球団が経営の重荷になってきていた。
一方、住生活はトステムやINAXを傘下に持つが、グループとしての知名度が低く、それをどう高めるかが課題。同社首脳は30日夜、日本経済新聞の取材に対して「金融機関を通じて横浜ベイスターズを取得しないかという打診があった。ブランド価値の向上につながるかどうかを見極めながら検討を進めたい」と述べた。
トヨタの国内受注、9月は4割減 補助金終了響く
トヨタ自動車の国内系列販売店の総受注台数が9月に前年同月比で4割強減少したことが30日明らかになった。政府によるエコカー補助金の申請受け付けが9月7日分までで終了したのを受け、高級車や大型車を中心に落ち込んだ。需要の反動減が長引けば、トヨタの国内生産や部品・素材など関連産業に影響が広がる可能性がある。
高級車ブランド「レクサス」を除くトヨタブランドの登録車の受注が29日までに同4割強減った。30日の受注分を含めても同程度の減少になったもよう。高級車や多目的スポーツ車(SUV)などの大型車が不振だったようだ。小型車は比較的健闘しているが、高水準の販売を続けてきたハイブリッド車「プリウス」は減速している。
トヨタの8月までの国内新車販売(登録)台数は13カ月連続で前年を上回った。エコカー補助金終了前の駆け込み需要で8月までに受注した分の登録が多かったため、9月の販売台数は前年同月を上回ったもようだ。登録に先行する指標となる販売店の受注台数の落ち込みで、10月の販売台数は15カ月ぶりに減少に転じる公算が大きい。
トヨタはエコカー補助金終了後の販売減を見込み、10月の1日当たり国内生産台数を9月比で2割減の1万2000台程度とする計画。購入客への現金還元など販売テコ入れ策を講じているが、需要低迷が長引けば一層の生産台数絞り込みを迫られる可能性もある。
KDDIとJCOM、コンテンツ配信で提携
KDDIは2月に資本参加したジュピターテレコム(JCOM)と、携帯電話とCATV放送、映画を連動させたコンテンツ配信で提携する。第1弾としてKDDIが制作・公開している映画「ラブコメ」を10日にJCOMやKDDI系のCATVで無料放送する。携帯電話でも関連ドラマを配信し、3つのメディアを連携させることで相互に需要を開拓する。
ラブコメは女優の香理奈さんらが出演する恋愛映画で、9月25日に全国公開した。KDDIは7月から携帯で週1回5分間のプロローグドラマを有料配信し、販促を進めていた。CATVではJCOMなど合計83社のコミュニティチャンネルで放送する。11月には好きな時間に視聴できるビデオ・オン・デマンド(VOD)も提供する。料金は420~525円。
CATV各社が運営するコミュニティチャンネルは地域情報番組を独自に制作しているが、採算は厳しい。優良番組の放送で視聴率を高め、広告収入を増やす。映画などの配信で携帯のデータ通信収入も拡大を目指す。KDDIとJCOMは今回の提携を新たな事業モデルと位置づけ、スポンサー企業も開拓する。
たばこ大幅値上げでも一服できず、年末には再び増税議論
過去最大のたばこ税の増税が1日から実施されることで、国と地方合わせて約640億円の増収になる見込みだ。受動喫煙防止を訴える厚生労働省は2年連続の増税を狙うが、値上げを機に禁煙する人はかなりの数に上るとみられ、財務省からは「これ以上の値上げはむしろ減収効果の方が大きくなる」との悲鳴も上がっている。
たばこの販売数量は平成15年度に3千億本を切って以降、前年度比2~5%のペースで減り続けている。財務省の試算では、今回の増税がなかった場合でも22年度の販売本数は6%減。増税の影響を加味すると17%減の1946億本まで急落する見通しで、たばこ税の税収も年々減っている。
それだけに640億円の増収は政府にとって貴重な存在となるが、増税が行きすぎると消費者の「たばこ離れ」を加速させかねない。財務省では「今回の値上げがギリギリの価格ではないか」と一段の増税には慎重だ。
逆に、厚労省は「税収よりも国民の健康が大切だ」と反論。22年度に続き、23年度の税制改正要望でもたばこ税増税を要望した。
WHO(世界保健機関)は喫煙による健康被害を防ぐため、たばこ価格を引き上げる規制強化を各国に求めている。実際に欧米では1箱当たり500~1千円超に達し、日本の増税後の価格(400~440円)と比べても格段に高い。厚労省はかねて「日本でも中長期的には600~700円まで上げる必要がある」と主張している。
三菱総合研究所の平野公康主任研究員は「現状の価格ではWHOから圧力がかかり続ける。今回の増税で打ち止めにはならないだろう」と予測。「財政より健康」の流れは強まりそうで、今回の増税後も愛煙家が“一服”できる状況にはなりそうにない。
エクソン、国内GS撤退…営業権を順次売却
石油世界最大手の米エクソン・モービルが、国内のガソリンスタンド(GS)を運営する石油の小売り事業から段階的に撤退することが30日、明らかになった。
エクソンは国内で「エッソ」「モービル」「ゼネラル」の3ブランドを展開し、系列GSの数は4000以上を抱え、「エネオス」ブランドのJXホールディングス(約1万2000)に次ぐ国内2位だ。ガソリンなどの需要減に歯止めがかからないため、地域ごとにガソリンなどを運ぶ物流や販売部門の営業権を売却する。石油元売り大手が小売り事業から撤退するのは初めて。
関係者によると、すでに九州地区の営業権売却に向けた入札手続きを進めており、複数の大手商社系の石油販売会社が名乗りを上げている。他の地域でも順次売却を進めると見られる。
米フェースブックとリクルート、就職サイトに交流機能 OBなど検索
世界最大の交流サイト(SNS)、米フェースブックはリクルートの就職情報サイト「リクナビ2012」と連携し、大学生の就職活動を支援するサービスを始める。利用者が、大学や志望業界が同じ学生やOBを会員から検索して情報交換しやすいようにする。フェースブックは実名を公開するSNSで世界的に成長しているが、国内では学生を突破口に本格展開に乗り出す。
日本限定のパソコン向けサービス「コネクションサーチ」を1日にも始める。フェースブックが特定の国・地域に特化したサービスを展開するのは珍しい。
利用者はリクナビの個人ページからフェースブックに会員登録。学校名と志望業界を選択すると、条件に合うフェースブック会員について志望業界が同じ「同級生」「OB」などの項目別に表示される。メールなどで就職活動に関する情報交換やOB・OG訪問などのきっかけを作れる。中途採用などでの展開も検討する。
ねじれ臨時国会 懸案処理へ与野党は歩み寄れ(10月1日付・読売社説)
政党間で議論を尽くす「熟議の民主主義」で衆参ねじれ国会を乗り切る――。そう主張する菅首相の本気度と手腕が、厳しく問われよう。
秋の臨時国会が、きょう召集される。今年度補正予算案の審議が、ねじれ国会の行方を占う重大な試金石となる。
菅政権は、与野党が法案・政策ごとに連携する部分連合を模索する方針だが、簡単ではない。民主党が打診した補正予算案の事前協議は野党に拒否された。24日の衆院北海道5区の補選を控え、自民党などに協調ムードはない。
一方で、円高・デフレ対策や雇用拡大など補正予算案の必要性や内容では、与野党の主張はかなり共通している。衆参ねじれという政治の事情で、日本経済の足を引っ張ることは許されない。与野党は合意形成に努力すべきだ。
その一義的な責任は無論、政府・与党側にある。補正予算案に野党の要望を反映させるという当面の対応にとどまらず、野党が求める民主党の政権公約の抜本的な見直しに踏み込むことが必要だ。
子ども手当や高速道路無料化などのバラマキ政策は、国民の支持も少なく、財源不足で破綻(はたん)状態にある。公約の「原点回帰」を訴えた小沢一郎元代表を党代表選で破ったことで、菅首相が公約を見直す環境は整っているはずだ。
臨時国会のもう一つの焦点は、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件である。野党側は、菅政権を揺さぶる格好の材料と見ている。
菅首相は30日の衆院予算委員会の集中審議で、那覇地検による中国人船長釈放について「捜査への介入は一切ない」と強調した。
政治介入を否定する政府の説明は、無理がある。日本側が船長を逮捕、拘置延長しながら、拘置期限前に突然釈放した場当たり的な対応の背景には、中国側の強硬姿勢への誤算も否定できない。
野党が、民主党政権の対中外交は拙劣だと追及したいのは、一応理解できる。だが、単なる政府批判の繰り返しは、菅政権の内外の信頼を貶(おとし)め、中国を利するだけで結果的に国益を害しかねない。
今後、尖閣諸島という領土を守るために具体的にどうするか、という建設的な議論が望まれる。
首相が来週のアジア欧州会議出席を国会日程より優先したのは、尖閣問題に関する日本の立場を国際社会に訴えるうえで妥当だ。
北沢防衛相も、12日の東南アジア諸国連合拡大防衛相会議に出席を希望している。野党は、国益を重視して出席を認めるべきだ。
NTTドコモは2010年度内に携帯端末向け地上デジタル放送「ワンセグ」と電子マネーの「おサイフケータイ」機能を搭載したスマートフォン(高機能携帯電話)2種を投入する。スマートフォンは日本独自の機能を搭載していなかったが、契約者からの要望が多かったことに対応する。
機能を搭載するのは10年冬~11年春に発売するモデル。シャープと、10月に事業統合する富士通・東芝の2社が端末を供給する。米グーグルの基本ソフト(OS)アンドロイドを搭載したスマートフォンで、タッチパネルで操作する。富士通・東芝のモデルは防水対応となるもようだ。
日本製ケータイがなくなる日
「日本の携帯電話がガラパゴス化した」といわれて久しいが、いつまでこの状態が続くのだろう。といっても、日本のケータイがガラパゴスを脱して世界に飛躍する日を想像しているのではない。逆に最後の楽園だったはずの日本国内市場も外資メーカーに席巻され、日本企業が携帯電話の端末事業から総撤退という事態もあり得るのではないか。そんな危機感を覚えざるを得ないのだ。
最近、NTTドコモの経営幹部と話す機会があった。この人はドコモの生え抜き的存在で、端末メーカーとの付き合いも長いが、「今日本メーカーは生き残れるかどうかの瀬戸際」という。
ガラパゴス化のいわれた日本市場だが、実は「外来種」もじわじわと勢力を伸ばしている。2009年度のシェアでみると、外資系(ソニー・エリクソンを含む)のシェアは15%程度。自動車市場における「輸入車」シェアのほぼ4、5倍に当たる数字であり、米アップルの高機能携帯電話(スマートフォン)「iPhone(アイフォーン)」のように存在感のある機種も目立つ。
NTTドコモは今秋から韓国サムスン電子製のスマートフォンを発売する。自ら発光する有機ELを使ったディスプレーは液晶とはひと味違う美しさがあり、「目の肥えた日本のユーザーもこれには驚くだろう。相当話題になるはず」とこの幹部はいう。
一方で日本勢はいまひとつ元気がない。再編の動きはあるが、これが本格的な反転のきっかけになるのか、長い衰退プロセスの中の1局面なのかは何とも言い難い。
おそらく数がモノを言うケータイの世界で、成熟化の進む日本市場にしがみついて生き残っていける可能性はそう大きくはない。ドコモの幹部によれば、「今が日本メーカーが世界に出て行く最後のチャンス」という。幸い端末のOS(基本ソフト)ではグーグルの「アンドロイド」がほぼ世界標準の座を確立しつつある。アップルのように独自のソフト技術がなくても、「アンドロイド」を使えば、世界に通用する端末ができる。
パソコンとの類比で考えればわかりやすいが、パソコンでも世界標準の「ウィンドウズ」を搭載したソニーや東芝のノート型パソコンが世界で売れてきた。技術の主導権、収益の主導権はマイクロソフトやグーグルが握るとしても、日本メーカーが得意のものづくりの技をいかして、ソニーの「VAIO」のような独自の端末をつくれば、日本製ケータイが世界に飛躍できるかもしれない。
だが、このチャンスを逃せばどうなるか。ドコモ幹部は「日本のケータイ産業は米国のテレビ産業のようになってしまうかもしれない」と不気味な予言をする。RCAやジーナスなどかつては米国にも多数のテレビメーカーがあったが、今ではどれも残っておらず、産業そのものが消えてなくなってしまった。
アメリカ人はテレビ大好きで、「テレビの前にいる時間が最も長い国民」といわれるが、彼らにテレビ受像機を供給しているのは、米国企業ではない。これと同じ事態が、「ケータイ大好き」の私たち日本人にも起こるのだろうか。それを避けるために残された時間は少ない。
東芝、有機ELパネルの量産計画を撤回 中小型液晶に注力
東芝は子会社の中小型液晶パネルメーカー、東芝モバイルディスプレイの有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)パネル量産計画を白紙撤回する。有機ELの開発を担当していた技術者などを新型液晶パネルの開発に充てる。中小型液晶パネルに経営資源を集約し、今後激化が予想される競争に備える。国内電機大手の系列企業が有機ELパネルの生産を取りやめることで、韓国メーカーの存在感が一段と高まる可能性もある。
有機ELパネルの量産をにらみ、研究・開発に参加していた数十人の技術者を液晶パネル部門に移す。リーマン・ショック後の業績悪化を受け大型の設備投資が難しくなったことや、今年に入って一時急回復した液晶パネルの需要に応えるため計画見直しを決めた。
今後は中小型液晶パネル事業を(1)車載(2)携帯電話、スマートフォン(高機能型携帯電話)(3)ファクトリーオートメーション(FA)(4)アミューズメント――の4分野に集約して収益力を高める。
東芝は照明用の有機ELの研究を川崎市の研究所で続けているが、パネルからは一時撤退する形になる。東芝モバイルディスプレイは東芝とパナソニックとの共同出資会社だった2008年に、約160億円を投じて石川県の自社工場に有機ELの量産ラインを新設。携帯電話用の2型有機ELパネルを月150万枚生産する計画だった。
有機ELパネルは液晶に比べ高精細で薄くできるため、次世代技術として注目を集めていたが、画質改善など液晶パネルの技術革新もあり、有機ELパネルは市場の立ち上がりが遅れていた。
有機EL市場は韓国サムスン電子のグループ企業が世界シェアの7割近くを握る。11年には「5.5世代」と呼ばれる大型の生産ラインが完成する予定で、スマートフォンやテレビ向けパネルの量産を進める。日本ではソニーが07年に11型の有機ELテレビを発売したが、後継機を出さないまま生産を終えている。
ゲームソフト、交流サイト向け急拡大 時価総額、「据え置き型」を逆転も
ゲームソフト会社の収益構造が変化している。据え置き型ゲーム機向けソフトの販売が低迷する一方、携帯電話で楽しむ交流型ゲームソフトが人気を集めている。携帯ゲームサイトを運営するディー・エヌ・エーなどの収益は急拡大しており、既存のゲームソフト会社との間で時価総額の逆転現象も起こっている。
「パッケージ型のゲームソフト販売は厳しい状況だ」。セガサミーホールディングスの吉沢秀男上席執行役員は顔を曇らす。2010年4~9月期のソフト販売見込みを、期初の632万本から500万本に引き下げた。通期のソフト売上高は前期比32%減の529億円にとどまる。バンダイナムコホールディングスなども同様で、新作ソフトの販売不調に悩み、高額な開発費を吸収できない。
主要ゲームソフト6社の11年3月期の営業利益は計1367億円と前期比5割弱増えそうだが、直近ピークの07年3月期のまだ7割強。任天堂の今期の営業利益は41%減の2100億円とピークの前々期の4割弱で、据え置き型では稼ぎにくくなっている。
ゲーム専門誌のエンターブレイン(東京・千代田)によると、09年の国内家庭用ゲームソフト市場は3262億円と、08年から2%縮小。景気悪化による個人消費の低迷に加え、携帯電話でゲームを楽しむ利用者が増えたからだ。
特に「ソーシャルゲーム」と呼ぶ、サイト上の知人とやり取りするゲームの人気が高い。パッケージソフトのように1回買ったら終わりではなく、ゲームは無料で始めるが、遊び進むには「アイテム」を買う必要がある仕組みだ。
携帯ゲームの交流サイト(SNS)を運営する企業はこの課金収入をけん引役に業績を急拡大している。「モバゲータウン」を運営するディーエヌエの4~6月期の連結純利益は前年同期比3.7倍の65億円、グリーの単独税引き利益は2.2倍の31億円。両社ともに宝物の奪い合いや魚釣りのゲームが好評。パッケージを作る必要がなく、開発費も少なくて済み、営業利益率は約5割に達する。
ゲーム市場の地殻変動は株式市場の評価にも表れている。ディーエヌエの時価総額は3832億円と最も大きい。グリーも3086億円と、今やセガサミー(3614億円)を除く主要ソフト会社を上回る。
最近ではゲームソフト会社も相次ぎSNS向けのゲーム提供に乗り出している。パッケージソフトの先細りを見越した動きで、バンナムHDの石川祝男社長は「スマートフォンやSNSなどへのコンテンツ活用を加速する」と宣言。既存ソフト会社の中でも積極的なハドソンは「四半期に3本程度のペースでSNS向けソフトを出したい」(石垣誠一執行役員)という。
もっとも、携帯ゲーム市場では「専業」のソフト会社が強みを発揮する。パッケージ型ゲームソフトのさらなる需要低下が見込まれるなか、新市場でいかに早く足場を確保するかが既存のゲームソフト会社の今後の収益を左右しそうだ。
ソニー、富士通に画像センサー生産委託
技術の国外流出防ぐ
ソニーはデジタルカメラや携帯電話の画像撮影に使うCMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーを富士通に生産委託する。CMOSセンサーは市場が急拡大しているが、海外大手との価格競争も激しい。ソニーは海外のファウンドリー(半導体受託生産会社)に委託すると先端技術流出の懸念があると判断。CMOSセンサーで直接競合しない国内勢同士の連携により低コストの生産体制づくりを目指す。
ソニーはCMOSセンサー出荷量で世界6位。シリコンウエハーに換算すると月1万6千枚の生産能力を持つ。10年度中にも、シリコンウエハー換算で月数千枚の規模で生産を富士通に委託する。製造コストの低減度合いをみながら委託量の増加も検討する。
富士通は半導体子会社である富士通セミコンダクターの三重工場(三重県桑名市)で受託する。同工場はシステムLSI(大規模集積回路)の主力拠点。CMOSセンサーと製造工程で共通する部分が多く、ラインをほぼそのまま使えるため、量産効果で生産コストを低減できる。
数百に及ぶ製造工程のうち、ソニーは汎用性の高い8~9割の工程を委託する。残りはソニーの独自技術を生かすため自社内にとどめる。ソニーの技術者が富士通に出向き、製造工程に関する情報を提供して量産を支援。富士通から半完成品を受け取り、最終仕上げを施して製品化する。
ソニーは2011年度末までに400億円を投じて自社でも生産能力を4割増強する計画だ。増産と富士通への生産委託を組み合わせ、台湾や中国、米国などのファウンドリーをコスト削減に活用する他社に対抗する。
これまでも半導体子会社であるソニーセミコンダクタ九州(福岡市)の熊本テクノロジーセンター(熊本県菊陽町)で、07年度から3年で約600億円投じ、CMOSセンサーを能力増強・増産してきた。世界大手に対抗するには単独での能力増強や増産だけでは限界があると判断した。
米アップルの高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)4」に最新型のCMOSセンサーを供給する米オムニビジョン・テクノロジーズはファンドリーの世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)に生産委託してコストを削減している。ソニーは富士通との連携で先端技術を国内に囲い込む戦略だ。
電通がIT投資ファンド100億円 ネット広告を強化
電通は10月1日にデジタル関連分野を対象とする100億円の投資ファンドを設ける。国内外で技術力の高いベンチャー企業や外部企業との共同事業に投資する。同社のデジタル分野のファンドでは過去最大の規模。成長分野であるインターネット広告事業の競争力強化を急ぐ。
新設する「電通デジタル・ファンド」はデジタルコンテンツの流通や交流サイト(SNS)、デジタル機器などIT(情報技術)関連の幅広い企業と事業が投資対象。日本国内だけでなく、中国や欧米など各地で投資する。優れた投資先は子会社化する方針だ。
グループのデジタル関連企業を統括する子会社、電通デジタル・ホールディングスの藤田明久取締役が運用責任者となる。藤田氏はNTTドコモと電通が設立した携帯電話向け広告大手のディーツーコミュニケーションズ(D2C、東京・港)の社長を務め、日本の携帯向け広告市場の立ち上げにかかわってきた。
電通のネット広告などデジタル関連の国内売上高は約1500億円(2009年度、グループ会社の単純合計)。13年度には売上高2500億円を目指す。
TBS、ベイスターズの売却検討 住生活Gと交渉へ
TBSグループがプロ野球の横浜ベイスターズ(横浜市)を売却する方向で検討し、住設機器最大手の住生活グループが買収に名乗りを上げていることが30日、明らかになった。今後、TBSグループが保有する同球団の7割近い株式の売却価格などを巡り、交渉が進む見通し。6年ぶりにプロ野球球団のオーナー企業が変更される可能性が高まった。
TBSグループは同球団を2002年にマルハから140億円で取得。現在はグループで計69.2%の株式を保有する。球団経営は放映権料収入と観客数の低迷で不振が続き、同グループは本業の放送事業収入などから毎年約20億円を広告宣伝費として補てんしてきた。だが放送事業も最近は不振に陥り、球団が経営の重荷になってきていた。
一方、住生活はトステムやINAXを傘下に持つが、グループとしての知名度が低く、それをどう高めるかが課題。同社首脳は30日夜、日本経済新聞の取材に対して「金融機関を通じて横浜ベイスターズを取得しないかという打診があった。ブランド価値の向上につながるかどうかを見極めながら検討を進めたい」と述べた。
トヨタの国内受注、9月は4割減 補助金終了響く
トヨタ自動車の国内系列販売店の総受注台数が9月に前年同月比で4割強減少したことが30日明らかになった。政府によるエコカー補助金の申請受け付けが9月7日分までで終了したのを受け、高級車や大型車を中心に落ち込んだ。需要の反動減が長引けば、トヨタの国内生産や部品・素材など関連産業に影響が広がる可能性がある。
高級車ブランド「レクサス」を除くトヨタブランドの登録車の受注が29日までに同4割強減った。30日の受注分を含めても同程度の減少になったもよう。高級車や多目的スポーツ車(SUV)などの大型車が不振だったようだ。小型車は比較的健闘しているが、高水準の販売を続けてきたハイブリッド車「プリウス」は減速している。
トヨタの8月までの国内新車販売(登録)台数は13カ月連続で前年を上回った。エコカー補助金終了前の駆け込み需要で8月までに受注した分の登録が多かったため、9月の販売台数は前年同月を上回ったもようだ。登録に先行する指標となる販売店の受注台数の落ち込みで、10月の販売台数は15カ月ぶりに減少に転じる公算が大きい。
トヨタはエコカー補助金終了後の販売減を見込み、10月の1日当たり国内生産台数を9月比で2割減の1万2000台程度とする計画。購入客への現金還元など販売テコ入れ策を講じているが、需要低迷が長引けば一層の生産台数絞り込みを迫られる可能性もある。
KDDIとJCOM、コンテンツ配信で提携
KDDIは2月に資本参加したジュピターテレコム(JCOM)と、携帯電話とCATV放送、映画を連動させたコンテンツ配信で提携する。第1弾としてKDDIが制作・公開している映画「ラブコメ」を10日にJCOMやKDDI系のCATVで無料放送する。携帯電話でも関連ドラマを配信し、3つのメディアを連携させることで相互に需要を開拓する。
ラブコメは女優の香理奈さんらが出演する恋愛映画で、9月25日に全国公開した。KDDIは7月から携帯で週1回5分間のプロローグドラマを有料配信し、販促を進めていた。CATVではJCOMなど合計83社のコミュニティチャンネルで放送する。11月には好きな時間に視聴できるビデオ・オン・デマンド(VOD)も提供する。料金は420~525円。
CATV各社が運営するコミュニティチャンネルは地域情報番組を独自に制作しているが、採算は厳しい。優良番組の放送で視聴率を高め、広告収入を増やす。映画などの配信で携帯のデータ通信収入も拡大を目指す。KDDIとJCOMは今回の提携を新たな事業モデルと位置づけ、スポンサー企業も開拓する。
たばこ大幅値上げでも一服できず、年末には再び増税議論
過去最大のたばこ税の増税が1日から実施されることで、国と地方合わせて約640億円の増収になる見込みだ。受動喫煙防止を訴える厚生労働省は2年連続の増税を狙うが、値上げを機に禁煙する人はかなりの数に上るとみられ、財務省からは「これ以上の値上げはむしろ減収効果の方が大きくなる」との悲鳴も上がっている。
たばこの販売数量は平成15年度に3千億本を切って以降、前年度比2~5%のペースで減り続けている。財務省の試算では、今回の増税がなかった場合でも22年度の販売本数は6%減。増税の影響を加味すると17%減の1946億本まで急落する見通しで、たばこ税の税収も年々減っている。
それだけに640億円の増収は政府にとって貴重な存在となるが、増税が行きすぎると消費者の「たばこ離れ」を加速させかねない。財務省では「今回の値上げがギリギリの価格ではないか」と一段の増税には慎重だ。
逆に、厚労省は「税収よりも国民の健康が大切だ」と反論。22年度に続き、23年度の税制改正要望でもたばこ税増税を要望した。
WHO(世界保健機関)は喫煙による健康被害を防ぐため、たばこ価格を引き上げる規制強化を各国に求めている。実際に欧米では1箱当たり500~1千円超に達し、日本の増税後の価格(400~440円)と比べても格段に高い。厚労省はかねて「日本でも中長期的には600~700円まで上げる必要がある」と主張している。
三菱総合研究所の平野公康主任研究員は「現状の価格ではWHOから圧力がかかり続ける。今回の増税で打ち止めにはならないだろう」と予測。「財政より健康」の流れは強まりそうで、今回の増税後も愛煙家が“一服”できる状況にはなりそうにない。
エクソン、国内GS撤退…営業権を順次売却
石油世界最大手の米エクソン・モービルが、国内のガソリンスタンド(GS)を運営する石油の小売り事業から段階的に撤退することが30日、明らかになった。
エクソンは国内で「エッソ」「モービル」「ゼネラル」の3ブランドを展開し、系列GSの数は4000以上を抱え、「エネオス」ブランドのJXホールディングス(約1万2000)に次ぐ国内2位だ。ガソリンなどの需要減に歯止めがかからないため、地域ごとにガソリンなどを運ぶ物流や販売部門の営業権を売却する。石油元売り大手が小売り事業から撤退するのは初めて。
関係者によると、すでに九州地区の営業権売却に向けた入札手続きを進めており、複数の大手商社系の石油販売会社が名乗りを上げている。他の地域でも順次売却を進めると見られる。
米フェースブックとリクルート、就職サイトに交流機能 OBなど検索
世界最大の交流サイト(SNS)、米フェースブックはリクルートの就職情報サイト「リクナビ2012」と連携し、大学生の就職活動を支援するサービスを始める。利用者が、大学や志望業界が同じ学生やOBを会員から検索して情報交換しやすいようにする。フェースブックは実名を公開するSNSで世界的に成長しているが、国内では学生を突破口に本格展開に乗り出す。
日本限定のパソコン向けサービス「コネクションサーチ」を1日にも始める。フェースブックが特定の国・地域に特化したサービスを展開するのは珍しい。
利用者はリクナビの個人ページからフェースブックに会員登録。学校名と志望業界を選択すると、条件に合うフェースブック会員について志望業界が同じ「同級生」「OB」などの項目別に表示される。メールなどで就職活動に関する情報交換やOB・OG訪問などのきっかけを作れる。中途採用などでの展開も検討する。
ねじれ臨時国会 懸案処理へ与野党は歩み寄れ(10月1日付・読売社説)
政党間で議論を尽くす「熟議の民主主義」で衆参ねじれ国会を乗り切る――。そう主張する菅首相の本気度と手腕が、厳しく問われよう。
秋の臨時国会が、きょう召集される。今年度補正予算案の審議が、ねじれ国会の行方を占う重大な試金石となる。
菅政権は、与野党が法案・政策ごとに連携する部分連合を模索する方針だが、簡単ではない。民主党が打診した補正予算案の事前協議は野党に拒否された。24日の衆院北海道5区の補選を控え、自民党などに協調ムードはない。
一方で、円高・デフレ対策や雇用拡大など補正予算案の必要性や内容では、与野党の主張はかなり共通している。衆参ねじれという政治の事情で、日本経済の足を引っ張ることは許されない。与野党は合意形成に努力すべきだ。
その一義的な責任は無論、政府・与党側にある。補正予算案に野党の要望を反映させるという当面の対応にとどまらず、野党が求める民主党の政権公約の抜本的な見直しに踏み込むことが必要だ。
子ども手当や高速道路無料化などのバラマキ政策は、国民の支持も少なく、財源不足で破綻(はたん)状態にある。公約の「原点回帰」を訴えた小沢一郎元代表を党代表選で破ったことで、菅首相が公約を見直す環境は整っているはずだ。
臨時国会のもう一つの焦点は、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件である。野党側は、菅政権を揺さぶる格好の材料と見ている。
菅首相は30日の衆院予算委員会の集中審議で、那覇地検による中国人船長釈放について「捜査への介入は一切ない」と強調した。
政治介入を否定する政府の説明は、無理がある。日本側が船長を逮捕、拘置延長しながら、拘置期限前に突然釈放した場当たり的な対応の背景には、中国側の強硬姿勢への誤算も否定できない。
野党が、民主党政権の対中外交は拙劣だと追及したいのは、一応理解できる。だが、単なる政府批判の繰り返しは、菅政権の内外の信頼を貶(おとし)め、中国を利するだけで結果的に国益を害しかねない。
今後、尖閣諸島という領土を守るために具体的にどうするか、という建設的な議論が望まれる。
首相が来週のアジア欧州会議出席を国会日程より優先したのは、尖閣問題に関する日本の立場を国際社会に訴えるうえで妥当だ。
北沢防衛相も、12日の東南アジア諸国連合拡大防衛相会議に出席を希望している。野党は、国益を重視して出席を認めるべきだ。