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孫社長vsNTT 「光」論争の内幕
 巨大NTTを分離・分割すべきか否か――。十年一日の議論に再び通信業界が大きく揺れている。論争の主役は当のNTTとソフトバンク社長の孫正義、そして孫への急接近ぶりが目を引く総務相の原口一博。どんな綱引きが行われているのか、内幕に迫る。
先送りされた決着
 「分離案は3案、適用するかどうかは1年後に再度検討する」。
 14日、午後7時から始まった総務省の作業部会「ICTタスクフォース」の会合。これまでタスクフォースは高速大容量の光通信回線を全国に普及させるため、他の事業者が使いやすいよう、NTTの東西地域会社が持つ家庭までの光アクセス回線網を分離させるかどうかを検討してきた。この日の会合は総務相の原口に提出する中間報告をまとめた。結論は「1年後」への先送り。決着は事実上見送られた。
 ことの発端は「クリスマスの大逆転」と業界で言われる昨年末。原口は「2015年をめどに日本のブロードバンド普及率を100%にする」という「光の道」構想を発表した。光のアクセス回線は全家庭の9割に敷設済みだが、実際の利用率は3割程度にとどまり、料金も高いとの指摘があることを受けたものだ。
 この構想のブレーンとなったのが孫。
 「原口さん、民の求めは高い志と清き姿勢。頑張って下さい」
 「日本を再生し、未来を拓く。孫さんの志にたくさんの勇気をいただいております」
 二人はツイッター上で急速に接近した。孫の目的はライバルであるNTTのアクセス回線を分離すること。その上で「アクセス新会社」を作り、競争会社がNTTと同じ条件で回線を借りて、安いサービスを提供できるようにする――という主張だ。
 原口はこれに呼応するように3月9日、「NTTの組織形態も含めて5月中旬に方向性を出すように」とタスクフォースに指示した。
 そもそも原口は昨年9月の大臣就任当初は「(NTT組織見直しは)周回遅れの議論。NTTの手足をもぎ取って飛べるのか」と親NTTのスタンスをとってきた。しかし10月にNTT西日本が同社しか知り得ない他社の顧客情報を代理店に漏らした不祥事が発覚。前後して国会でNTT労組から原口への献金問題が表面化すると、原口はNTTと距離を置き始めた。「大逆転」は親NTTから親「孫」への方針転換を意味する。
後手に回ったNTT
 NTTは完全に後手に回った。当初、30年来続くNTTの組織論争をわずか数か月で決着させられるはずがない、と高をくくっていた節がある。さらに、原口がNTT寄りだったことから「癒着」と言われるのを恐れ距離を置いたこともその背景にあった。さらに、孫が、光の道構想の実現手段としてアクセス分離という具体策を提示したのに対し、NTT社長の三浦惺は「組織論より利用者の利便を優先すべき」と同じ土俵に載ることを嫌ったため、その後の孫―原口の急接近を傍観するしかなかった。
 関係者の話では、原口と孫はこれまでに8回ほど、私的な勉強会に同席している。一方、NTTも三浦―原口会談をセットしようとしたが、断られつづけた。ようやく4月9日、面会が実現したが、その時間はわずか10分程度。やりとりは以下のようなものだった。
 原口「現在の電話回線を一気に光回線に切り替えることはできないのか」
 三浦「電話線は企業も個人も使っている。むりやり切り替える経済合理性がない」
 原口「光の道のために、NTTとして何ができるのか持ってきてほしい」
 原口は会談後、周辺にこう語った。「ソフトバンクはヒョウのように素早いが、NTTは象だ」――。光の道構想を支持し、NTTのアクセス分離を矢継ぎ早に提案する孫に比べれば、「できない理由」を並べる三浦は確かに鈍重に映る。
 原口はある民主党議員の朝食会でこうも話している。「(NTT再編問題について)7割の人はあれもできない、これもできないと、旧来の現状維持を主張する。残りの3割の方々は未来を開こうとしている」。「7割」とは再編を避けたいとするNTTを、「残り」はソフトバンクほかアクセス分離論者を指している。
 NTTが危機感を強めたのは4月20日。タスクフォースは孫、三浦、KDDI社長の小野寺正らを呼び、事業者の意見を聞いた。孫がアクセス分離を主張すると原口はパソコンで熱心にメモをとっていたが、三浦の番になるころには退席。退席の際には孫と握手をかわした。同日のツイッターでは、孫にあてて「本当にありがとうございました。情熱のほとばしるお話でした」と礼賛のメッセージを伝えた。
「第2の独占」への懸念
 だが、この直後、中立的なタスクフォース構成員の有識者の中から異論が噴出した。ソフトバンクが提示した光回線敷設のための費用や「アクセス新会社」の収支計算があまりにも「大風呂敷」(北俊一野村総研上席コンサルタント)だったからだ。つまり、アクセス分離自体は競争促進のために議論の余地があるが、その結果生まれた新会社が投資インセンティブをもたない道路公団のような非効率な組織となり、公的資金が何度も投入されるような「第2の独占」になることを恐れているのだ。
 孫は「光の道整備のための費用は5年間で2.5兆円あるが、現在の電話回線の維持費は10年で3.9兆円。電話回線を撤去すれば十分まかなえる」と主張していた。だがこれは「前提となる年数が違っている上に、光回線の維持費というコストを無視している」とタスクフォースのある構成員は指摘する。同じく構成員でジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「大臣は孫社長の甘いアジテーションから一歩引いてほしい」と真っ正面から「光の道反対論」をブログで公表した。
 アクセス新会社自体の収益構造にも疑問符がつく。孫社長は「分離した新会社は大幅な利益がでる。株は現在のNTT株主に与えれば株主価値も増大する。NTTの雇用も維持できる」と力説した。だが、実際NTTの株を運用している米系機関投資家は「アクセスが分離されれば、NTTの企業価値は10分の1になる。ナショナルフラッグであるNTT株が下がれば日本売りはさらに加速する」と警告する。野村証券は「アクセス分離はNTT株主にとってネガティブ」とレポートを発表。NTTに対抗して光回線設備を敷いているCATV会社や電力系通信会社についても「これまで構築してきたアクセス網の優位生が脅かされる」として投資判断見直しの検討に入った。
 ソフトバンクがタスクフォースから提出を求められ、非公開を条件に出した「アクセス回線会社収支試算」という資料がある。それによると、新会社の売上高は約1兆円、営業利益は初年度の2011年に1600億円を見込むが、純利益ベースでは同年度に既存電話回線の撤去費などで1兆9000億円の特別損失を計上する。バークレイズ・キャピタル証券の津坂徹郎アナリストは「配当も出さず、税金を支払わない国策会社が成立するのか。光回線を貸し出すだけの会社に成長性はない」と指摘する。
 孫は「NTTもソフトバンクも、薩摩も長州もない。光の道を整備し、電子教科書や遠隔医療を津々浦々に広めることが、日本国の構造改革につながる」と大見栄を切る。だが、孫も心底こうした会社が立ちゆくとは思っていないだろう。「NTTさんがやればいい」として、みずからアクセス会社の経営にタッチするつもりはなさそうだ。
 あるタスクフォース構成員は「アクセス会社ができてしまえば、破綻寸前になろうと公的資金投入で維持されるだろう。そこから光回線を安くかりられる仕組みさえ残っていれば、ソフトバンクはiPhoneやiPadを使った上流のサービスを拡大させることができる――そう勘繰りたくなる」と話す。
迷走する作業部会
 光の道自体に疑問符をつける声が日に日に高まるにつれ、タスクフォースも迷走の色を強めた。
 40人近くが名を連ねるタスクフォースには光の道やNTT問題を専門的に検討する作業チーム、通称「4人組」がある。10日に開かれた4回目の会合。
 「大臣のメンツをたてるためにも、なんらかの案は出さなければならない。だが、こんな短期間でそもそも結論などだせない」
 無報酬で働く4人組は疲労の度合いを濃くしていた。そもそも原口はこのチームに顔を出したことがない。タスクフォースに顔を出すのもまれだ。大臣が何をしたいのかわからない。「わからないから、類推して議論するが、すぐあい路に陥る。忖度(そんたく)政治ですよ」。ある構成員はつぶやく。
 12日、原口と4人組の初めての会議が設定された。しかし、原口の都合で急きょキャンセル。「議論はさせるが、最後は政治主導で決めるという意思表示では。それなら我々の議論はなんなのか」。ある構成員は辞表を胸に忍ばせた。
 ここに来て、出遅れていたNTTも反撃にでている。14日の朝、民主党の情報通信議員連盟が主催した孫の講演会が中止になった。「タスクフォースの同日に、孫の独演会をきくべきでない」――。ソフトバンクは「NTT労組系の議員から議連の事務局に圧力がかかったのでは」と見ている。民主党の指示母体であるNTT労組は17万票の組織票をもつ。「大臣がNTTに対して果敢な決断をしても、その後党内から抵抗勢力がつぶしにかかり、競争政策自体が台無しになるのが怖い」。総務省のある幹部はこう話す。長年の再編論議の中で培ったNTTの「政治力」は侮れない。
 高速のブロードバンド回線が低料金で利用できるようになれば、多様なサービスも広がり、利用者の生活や産業の活性化にもつながることは間違いない。そのためには公正な競争の促進は欠かせない。ただ、この10年間でネットの主役は固定回線から携帯・無線通信に移り、速度ではビット単位で1600倍のイノベーションが起きた。光回線が次の10年のインターネットの主役である保証はない。冷静な議論と長期的な視野を欠けば、光の道は、壮大な「回り道」になる可能性もある。
 原口は18日にタスクフォースの検討を受けた結論を発表する見通し。「政治主導」によるどんでん返しがなければ、少なくとも先送りした1年後までは綱引きは続く。



UQコム、WiMAX基地局を倍増 10年度800億円投資
 高速無線通信WiMAX(ワイマックス)を展開するKDDI系のUQコミュニケーションズ(東京・港)は2010年度に約800億円を投じて基地局を倍増する。モバイルパソコンやスマートフォン(高機能携帯電話)を使って屋外で高速インターネット通信が利用できる地域を3大都市圏の私鉄沿線や商業施設、地方都市などに一気に拡充する。利便性を高め、加入者数を4~5倍の70万~80万人に増やす。
 3月末時点で7013カ所の基地局を1万5000カ所まで増やす。当初は350億円かけて9000カ所まで増やす予定だった。スマートフォンやモバイルパソコンの普及で無線ブロードバンド(高速大容量)通信の需要が急速に高まっており、設備投資を前倒しした方が新規加入者の獲得につながると判断した。資金は主に借り入れでまかなう。
 昨年7月に商用サービスを開始した同社は、まず3大都市圏や政令指定都市を中心に基地局整備を進めてきた。今年度は首都圏の私鉄沿線など郊外のほか、主要都市の空白地帯を埋めながら整備を進める。都市部では大型基地局だけでなく、商業施設やオフィスビル、飲食店など屋内にも小型中継装置を設置し、利用できる場所を増やす。



証券各社、アジア進出競う 個人マネー取り込みへ
大和証券グループ、インド現法など400億円増資
 主要証券各社がアジア進出を加速している。大和証券グループが月内にも、香港やインドの現地法人などで約400億円の資本増強を実施するほか、みずほ証券は今夏をメドにインドで現地法人を設立する。アジアの株式市場は売買代金や新規株式公開(IPO)の増加が続き、日米欧を上回る成長を見せている。アジア市場でのシェアを高め、国内に偏る収益構造を改善するとともに、海外シフトを強める個人マネーの取り込みを目指す。
 大和は今月中にも香港、インド、シンガポールの現地法人で、それぞれ280億円、70億円、40億円の増資を実施。韓国でも今年度内に約100億円の増資をする方針だ。それぞれの現地法人の自己資本は1.7~5倍程度に増える。自己資本を増強すれば、株式引き受けや有価証券売買などの取引を拡大しやすくなる。
 アジアの現地法人の人員も現在の700人強から、2年後までに1100人程度に増やす。日本の証券会社では米リーマン・ブラザーズのアジア事業を買収した野村ホールディングスが5200人弱と、現地に進出する欧米の大手投資銀行と肩を並べる陣容を整えている。大和は現在10位以下の株式売買分野で、2年後に5位以内に入る目標を掲げる。
 みずほ証券は今夏にもインドで現地法人を設立し、まずM&A(合併・買収)助言の営業を始める。現地の証券取引所の会員資格を取得した後には、株式の売買業務にも参入する。韓国と台湾でも今年度中の進出を目指し、準備作業に入った。
 日本ではアジア地域の株式で運用する投資信託の残高が3月末時点で2兆1800億円(野村総合研究所調べ)と、前年同月末に比べ2.3倍に膨らんだ。ただ外資系が運用したり、現地の運用会社に委託したりする例も少なくない。自前で有価証券を売買・運用できる体制を拡充し、投資家の資金運用ニーズも取り込みたい考えだ。



有機ELパネル、ソニーが販路拡大 放送局モニター・医療向け
 ソニーは有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)パネルの活用を拡大する。携帯電話向けの小型画面などに続き、放送業界で使うモニターを5月から販売。医療用などの販路も開拓する。より大型の製品にも搭載を広げて量産効果を出し、将来は家庭用有機ELテレビの本格普及もめざす。
 このほど7.4型の有機ELパネルを搭載した業務用モニターを発売した。有機ELは電圧をかけると有機物が自ら発光する仕組み。液晶に比べて色彩を忠実に表現でき、動きの速い映像の表示性能も優れる。
 価格は1台約36万円。映画やスポーツといったコンテンツ制作の際に映像を確認する用途を見込み、放送局や番組制作会社に販売する。研究や診断に活用する医療機関や、自動車のショールームの販路も開拓。17型や23型のより大型のモニターの商品化もめざす。
 ソニーは携帯電話や携帯音楽プレーヤーの画面などで子会社が生産する有機ELを使用している。11型の家庭用小型テレビも2007年に国内や欧米を中心に発売したが、国内では液晶テレビに比べて割高感が強いため販売を中断。コスト低減が課題となっている。



クラウド普及へ官民で推進組織 総務省、今秋に
 総務省はインターネット経由でソフトやサービスを利用する「クラウドコンピューティング」サービスの普及に向けて、今年秋に官民で推進組織を立ち上げる。一般の企業や地方自治体にも参加を呼びかけ、利用者の視点から有用なサービスのあり方を探る。同省は2015年にクラウド関連で2兆円の新市場を創出し、経済成長の柱に育てたい考えだ。
 内藤正光総務副大臣が主宰する総務省のスマート・クラウド研究会がこのほど、クラウドサービスに関する包括的な戦略をまとめた。政府や自治体など行政システムへの導入を促すための推進方針を今年度中に策定し、12年度にも運用を始める。医療や教育分野などでの普及支援策や、企業の利用を後押しするための優遇税制、規制緩和の検討を盛りこんだ。
 クラウドサービスを使えば自前のシステム負担を大幅に軽減できるといったメリットがあり、利用が急速に広がっている。ただ外部のコンピューターに情報を預けるため管理体制への不安も根強い。総務省は官民の推進組織を通じてこうした問題点などの解決策を探り、日本での普及促進や情報通信企業の育成に向けた環境づくりに取り組む。



法人税下げ、経産省提起…成長戦略5分野重点
 日本経済と国内産業の再生に向け経済産業省がまとめた成長戦略「産業構造ビジョン」が16日、明らかになった。
 法人税の実効税率を国際的な水準まで引き下げる必要性を、鳩山内閣の政府機関として初めて打ち出す。
 日本が官民一体で取り組むべき戦略分野としては、原子力発電や鉄道など「インフラ(社会基盤)輸出」、「医療・介護・健康・子育てサービス」など五つの産業を挙げた。
 産業構造ビジョンは、18日の産業構造審議会(経産相の諮問機関)の専門部会で検討し、6月1日に正式決定する。経産省は国家戦略室とともに、6月中にまとめる政府の新成長戦略の中心に位置づける考えだ。
 日本の産業を支える政策として、法人税引き下げを含む9項目を示している。
 日本の法人税実効税率は40・69%と高い。欧州が30%前後、アジアは25%以下である現状を踏まえ、「国際的水準を目指した引き下げ」の必要性を明記する。
 企業の収益力を高める産業再編を促すため、再就職や職業訓練を支援したり、友好的M&A(企業の合併・買収)の手続きを簡素化したりすることを掲げた。
 アジアの成長力を日本の成長に生かすことの重要性も指摘。インフラ整備に加え、中間所得層への商品売り込みを支援するような観点に立った新しい通商戦略が必要としている。
 さらに、投資先としての日本の魅力を高める政策にも重点を置いた。海外企業がアジア域内の統括・研究開発拠点を日本に設置するように、企業だけでなく、高い知識や技術を持つ人材への優遇措置も必要とし、関連政策の整備を進める。
 一方、戦略的に取り組む五つの産業分野も明記した。自動車など特定の輸出産業に頼らない多面的な産業構造への転換を打ち出している。インフラ輸出と社会保障関連産業に加え、「文化産業」、「次世代エネルギー」、ロボットなど「先端分野」を挙げている。



日経社説
最終回 異能や奇才を発掘し、育て、生かそう
 アニメなどの日本文化を産業化しようとする試みが盛んだ。独創性や創造力がカギになる。異能の人物や奇才をどう発掘、活用するか。生きた文化が勝負の異能経済では何が花開くか予測できない。才能の自由市場こそが求められる。
 埼玉県久喜市の鷲宮神社に今年、45万人の初詣で客が訪れた。4年前の5倍に増えた理由は、女子高校生の日常を描くテレビアニメ「らき☆すた」。中心となる4人組のうち2人が神主の娘という設定で、モデルになったこの神社も毎回登場する。
自動車ショーに匹敵
 このアニメは「Lucky Star」の題でインターネットを通じ海外にもファンを広げた。ファンが登場人物を描いて神社に奉納した絵馬には、英語や中国語、韓国語の書き込みも珍しくない。
 かつて米国は映像文化を通じて米国のライフスタイルを世界に浸透させた。ホームドラマを見た日本人は大型冷蔵庫やマイカーにあこがれ、青春映画を通じコカ・コーラやジーンズにしびれた。ジャズやロックにもなじみ、ニューヨークやロサンゼルスをいつか観光したいと願った。
 いま日本のアニメや漫画は、当時の米国映画と同じ位置にある。パリで毎夏開かれる漫画やアニメの見本市「ジャパンエキスポ」に、昨年は16万人が集まった。米国やアジアでも同じような催しが人を集める。
 アニメ人気はファッションにも波及し始めた。作品に登場する服を扱うネットの通信販売では、1~2割が海外からの注文という店もある。キャラクター商品の代表「ハローキティ」をあしらった雑貨もアジアや欧州の女性たちが愛用する。
 文化の競争力を支えるのは人材だ。若者が才能を発揮できる場が欠かせない。同人誌や自作模型の即売会は日本各地で盛り上がり、海外からの参加者も多い。出版社や雑貨会社もここで人材を探す。ある漫画同人誌の即売会は56万人を集め、東京モーターショーの62万人に迫る。
 自由と創造性が成長につながるのは、出版やファッションなど一部の文化系産業だけではない。
 米国の都市経済学者リチャード・フロリダ氏は「国や企業の競争力の源泉は人々の創造性だ」と分析する。映像・デザインから商品開発、科学、金融まで、創造性にあふれる人を世界中から集めた米国。従業員が「カイゼン活動」を通じ、最大限の創造性を発揮したかつてのトヨタ自動車。これらはその好例という。
 今の日本企業は手元の「才」を十分に生かしているだろうか。
 iPodなどのヒット商品を生んだ米アップルはデザインを競争力の柱に据える。少数精鋭のデザイン部門に勤める西堀晋氏は、かつて松下電器産業(現パナソニック)の社員だった。独創的なラジカセなどを世に出したが、1998年に退職。京都でカフェを経営しつつ個性的な音響機器や生活雑貨を作る中でアップルにスカウトされ、渡米した。
 日本人デザイナーが日本企業から安い料金で受注しようと上海にデザイン事務所を構えたら、実際には「高額を払っても日本人による質の高いデザインを求めたい」という中国企業からの注文が増えた。デザイン部門を日本の大手企業が縮小する一方で、韓国のサムスン電子などは強化している――デザイン産業の動向に詳しい紺野登・多摩大学大学院教授は、こう警鐘を鳴らす。
成長の種を捨てるな
 創造性を生かした成功例はもちろんある。昔風の外観で当たった日産自動車の「キューブ」。開発では、女性担当者が技術者を連れ、原宿の若者を見せて回った。「速い」車を作りたい技術者に、最近の若い男性の「のんびり」志向を服やふるまいから感じ取ってもらったのだ。
 資生堂の化粧品「マジョリカマジョルカ」は10代後半から20歳前後の女性に支持された。魔法や魔女を主題に、中世の紋章のような模様をつけ、名は呪文(じゅもん)風。透明感と高級感を訴える通常の化粧品の売り方とは逆だ。幻想小説に通じる印象は20代の女性社員が中心となってつくった。
 書店チェーンのヴィレッジヴァンガードコーポレーションは、若い店員に本と雑貨を組み合わせた売り場を自由奔放に作らせる。飲食店経営のダイヤモンドダイニングは、店長予定者らのひらめきをもとに店名や料理を決めている。若者の本離れや外食業不振の中で、両社とも増収増益を続けている。
 単発的なヒットや新進企業の取り組みをどう広げるか。長期停滞といわれる時代に、内外でかえって日本人の創造性に関心が高まった。せっかくの好機を生かす企業の知恵が問われる。
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